JP2007009376A - 特殊ポリエステルマルチ中空繊維 - Google Patents

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正洋 小西
Takeshi Masuda
剛 益田
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Abstract

【課題】 色の深みと鮮明性を呈する20〜50%の中空率を有するポリエステルマルチ中空繊維を提供すること。
【解決手段】 中空率が20〜50%、沸水収縮率が15〜70%、最大強力点伸度が100〜150%である部分配向(POY)ポリエステルマルチ中空繊維であって、ポリエステル中には含金属リン化合物(a)及びアルカリ土類金属化合物(b)からなる微細孔形成剤が配合されている。微細孔形成剤は0.5〜3モル%の含金属リン化合物(a)と、該含金属リン化合物に対して0.5〜1.2倍モルのアルカリ土類金属化合物(b)とを予め反応させることなく添加したものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、特殊ポリエステル中空繊維マルチフィラメント及びその製造方法に関するものである。更に詳しくは、アルカリ減量処理することにより、特殊な微細孔が形成され、着色した際に、色の深みと鮮明性を有する特殊ポリエステル中空繊維マルチフィラメント及び該特殊ポリエステル中空繊維マルチフィラメントを安定な工程調子で効率的に製造する方法に関するものである。
ポリエステル繊維は、強伸度特性も良好でそのイージーケア性などから衣料用途に好んで用いられてきた。しかし、従来からポリエステル繊維は羊毛や絹の如き天然繊維或いはレーヨン、アセテート、アクリルなどの化学繊維や合成繊維に比較して染色(着色)した際に、色に深みがないため、発色性、鮮明性に劣る欠点がある。
一方、近年、繊維の中心部に中空を有する合成繊維(中空繊維)は、保温性、嵩高性、軽量性などにおいて優れた性能を有するため、幅広い用途に使用されている。そして、この合成繊維の中空率を大きくすることによって、保温性、嵩高性、軽量性のような性能を向上させることが可能となる。そこで、より高い中空率を有する中空繊維が強く要望されている。
この要望に対応するために、高い中空率を有する中空繊維を製造するには、非常に狭い円弧状スリットが穿設された吐出孔を有する紡糸口金が慣用されている。そして、このような円弧状スリット孔としては、例えば、特開昭49−41625号公報(特許文献1)、実開昭62−175078号公報(特許文献2)などに提案されているように円弧状スリット孔の両端部に、突出流路、丸形状突出流路、丸形状流路を設けたものが公知である。これらの中空繊維用紡糸口金を用いれば、均一な中空断面を有する中空繊維を得ることができる。
しかしながら、近年、ポリエステル繊維にこの中空繊維の製造手段を適用しようとするとき、紡糸工程では、後工程での使用において延伸糸、混繊糸、仮撚加工糸として非常に幅広く用いることが可能な未延伸中間配向糸を製造するには、紡糸ドラフト比を高くする、いわゆる高速製糸することが必要であるが、かかる領域においては紡糸ドラフト比が高くなることに伴い繊維の配向度が極めて増大し、後工程で製品を染色した場合に、色に深みがなく、発色性、鮮明性に劣るという問題を抱えている。
特開昭49−41625号公報、 実開昭62−175078号公報
本発明は、上記従来技術の有する問題を背景になされたもので、従来技術の欠点を排除し、改善された色の深みと鮮明性を呈するポリエステル中空繊維マルチフィラメント及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ポリエステルフィラメント中に、特定の微細孔形成剤が配合されたポリエステルマルチ中空繊維にあって、色の深みと鮮明性を呈することを究明し、本発明に到達した。
かかる本発明の課題は、下記(1)で表される微細孔形成剤が配合されたポリエステル組成物からなり、特定範囲内の中空率、沸水収縮率及び最大強力点伸度をもつ本発明の部分配向ポリエステル中空繊維マルチフィラメントにより達成できることが見出された。
すなわち、本発明は、
下記(1)で表される、微細孔形成剤が配合されたポリエステル組成物からなる部分配向ポリエステル中空繊維マルチフィラメントであって、該ポリエステル中空繊維マルチフィラメントは、下記(1)乃至(4)の条件:
(1)該ポリエステル組成物は、ポリエステルの合成が完了するまでの任意の段階において、ポリエステルを構成する酸成分に対し0.5〜3モル%の下記一般式[A]で表わされる含金属リン化合物(a)と、該含金属リン化合物に対して0.5〜1.2倍モルのアルカリ土類金属化合物(b)と、を上記含金属リン化合物(a)と予め反応させることなく添加して得られるものであり、
(2)該ポリエステル中空繊維の中空率が20〜50%であり、
(3)該ポリエステル中空繊維の沸水収縮率が15〜70%であり、しかも、
(4)ポリエステル中空繊維マルチフィラメントの最大強力点伸度は100〜150%であること、
を同時に満足することを特徴とする特殊ポリエステル中空繊維マルチフィラメントである。
Figure 2007009376
そして、かかる本発明の特殊ポリエステル中空繊維マルチフィラメントは、ポリエステルの合成が完了するまでの任意の段階において、該ポリエステルを構成する酸成分に対し0.5〜3モル%の範囲で、下記一般式[A]で表わされる含金属リン化合物(a)と、該含金属リン化合物に対して0.5〜1.2倍モルのアルカリ土類金属化合物(b)と、を上記含金属リン化合物(a)と予め反応させることなく添加したポリエステル組成物を、複数のスリットからなる吐出孔を有する紡糸口金を用い、吐出線速度7〜14cm/secの範囲で溶融ポリマーを吐出し、冷却固化したポリマー糸条を該紡糸口金面から40〜200cm下方の位置で集束した後、2500〜4000m/分の速度で引取ることにより、沸水収縮率が15〜70%、中空率が20〜50%であって、しかも最大強力点伸度が100〜150%であるポリエステル中空繊維マルチフィラメントを得ることを特徴とする製造方法によって、安定的かつ効率的に製造することができる。
Figure 2007009376
以上のごとき本発明のポリエステル中空繊維マルチフィラメントは、ポリエステル中に上記の如き特定の微細孔形成剤が配合されているので、この中空繊維をアルカリ性溶液で処理することにより発現する微細孔により、染色による色の深みと鮮明性が向上するうえ、好適な20〜50%の中空率と相俟って、ポリエステル中空繊維マルチフィラメントを含む布帛からなる製品は、一層優れた色の深みと鮮明性を呈することとなる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明で用いられるポリエステルは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、少くなくとも1種のグリコール、好ましくはエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールから選ばれた少なくとも1種のアルキレングリコールを主たる対象とし、なかんずくポリエチレンテレフタレートが好ましい。
このようなポリエステルには、本発明の目的を阻害しない範囲内、好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下の範囲内で従来公知の共重合成分が含まれていてもよく、例えば、イソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、ρ−オキシ安息香酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1.4−シクロヘキサンジカルボン酸の如き芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸を挙げることができる。また、上記グリコール以外のイゾール化合物としては、例えば、シクロヘキサン−1.4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSの如き脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物及びポリオキシアルキレングリコール等を挙げることができる。
本発明に供するポリエステルは公知の方法によって合成したものでよい。例えば、ポリエチレンテレフタレートについて説明すれば、通常、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルの如きテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させてテレフタル酸のグリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させる第1段階の反応と、第1段階の反応生成物を減圧下において加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第2段階の反応によって製造される。
本発明の微細孔形成剤を含有するポリエステルは、上記ポリエステルの合成時に下記一般式[A]で表される含金属リン化合物(a)及びアルカリ土類金属化合物(b)を添加して得られたものである。
つまり、ポリエステルの合成が完了するまでの任意の段階で、該ポリエステルを構成する酸成分に対して、微細孔形成剤として0.5〜3モル%量の下記一般式[A]で表わされる含金属リン化合物(a)と、該含金属リン化合物に対して0.5〜1.2倍モルのアルカリ土類金属化合物(b)と、を予め反応させることなく前記ポリエステルの合成時に添加する。
Figure 2007009376
この重縮合によって得られたポリエステルは、紡糸工程を含む製糸段階まで微細孔は潜在的であって、中空繊維をアルカリ溶液で処理することによって、微細孔が発現するものである。
なお、微細孔形成剤において、上記含金属リン化合物に代えて、R及び/又はRが金属(特にアルカリ金属、アルカリ土類金属)で置換したリン化合物を使用したのでは、得られるポリエステル繊維に生成する微細孔が大きくなって、目的とする鮮明化効果が得られず、中空繊維として耐フィブリル性にも劣るようになる。
上記含金属リン化合物を製造するには、通常対応する正リン酸エステル(モノ、ジ又はトリ)と所定量の対応する金属の化合物とを溶媒の存在下加熱反応させることによって容易に得られる。この際溶媒として、対象ポリエステルの原料として使用するグリコールを使用するのが好ましい。
上記含金属リン化合物と併用するアルカリ土類金属化合物(b)としては、上記含金属リン化合物と反応してポリエステルに不溶性の塩を形成するものであれば特に制限はなく、アルカリ土類金属の酢酸塩、蓚酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩、ステアリン酸塩のような有機カルボン酸塩、硼酸塩、珪酸塩、炭酸塩、重炭酸塩の如き無機酸塩、塩化物のようなハロゲン化物、エチレンジアミン4酢酸錯塩のようなキレート化合物、水酸化物、酸化物、メチラート、エチラート、グリコレート等のアルコラート類及びフェノラート等を挙げることができる。特にエチレングリコールに可溶性である有機カルボン酸塩、ハロゲン化物、キレート化合物、アルコラートが好ましく、なかでも有機カルボン酸塩が特に好ましい。上記のアルカリ土類金属化合物は1種のみ単独で使用しても、また2種以上併用してもよい。
上記含金属リン化合物(a)及びアルカリ土類金属化合物(b)を添加するに当って、最終的に得られるポリエステル繊維に優れた色の深みとその摩擦耐久性を与えるためには、含金属リン化合物の使用量及び該リン化合物の使用量に対するアルカリ土類金属化合物の使用量の比を特定する必要がある。即ち、本発明で使用する含金属リン化合物の添加量はあまりに少ないと最終的に得られるポリエステル繊維の色の深みが不充分になり、この量を多くするに従って色の深みは増加するが、あまりに多くなるともはや色の深みは著しい向上を示さず、かえって耐摩擦耐久性が低下し、そのうえ充分な重合度と高い軟化点を有するポリエステルを得ることが困難となり、更に紡糸時に糸切れが多発するというトラブルを発生する。
このような理由から、含金属リン化合物の添加量はポリエステルを構成する酸成分に対して0.5〜3モル%の範囲にすべきであり、特に0.6〜2モル%の範囲が好ましい。
またアルカリ土類金属化合物の添加量が含金属リン化合物の添加量に対して0.5倍モルより少ない量では、得られるポリエステル繊維の色の深みが不充分であり、その上重縮合速度が低下し高重合度のポリエステルを得ることが困難となり、また、生成ポリエステルの軟化点が大幅に低下するようになる。逆に含金属リン化合物に対して1.2倍モルを超える量のアルカリ土類金属化合物を使用すると、ポリエステルに不溶性の粒子が粗大化し、この粗大粒子の生成により、色の深みは改善されるどころか、かえって視感濃度が低下するようになる。このため、含金属リン化合物に対するアルカリ土類金属化合物の添加量は、0.5〜1.2倍モルの範囲にすべきであり、特に0.5〜1.0倍モルの範囲が好ましい。
上記含金属リン化合物と上記アルカリ土類金属化合物とは予め反応させることなくポリエステル反応系に添加する必要がある。こうすることによって、不溶性粒子をポリエステル中に均一な超微粒子状態で生成せしめることができるようになる。予め外部で上記含金属リン化合物とアルカリ土類金属化合物とを反応させて不溶性粒子とした後にポリエステル反応系に添加した場合は、ポリエステル中での不溶性粒子を均等に生成することが困難となる。しかもポリエステル中に粗大凝集粒子が含有されるようになるため、最終的に得られるポリエステル繊維の色の深みを改善する効果は認められなくなる。したがって、上記の含金属リン化合物(a)とアルカリ土類金属化合物(b)とは予め反応させることなくポリエステル反応系に添加すべきである。
上記の含金属リン化合物及びアルカリ土類金属化合物の添加は、それぞれポリエステルの合成が完了するまでの任意の段階において、任意の順序で行うことができる。もっとも、含金属リン化合物のみを第1段階の反応が未終了の段階で添加したのでは、第1段階の反応の完結が阻害されることがある。アルカリ土類金属化合物のみを第1段階の反応終了前に添加すると、この反応がエステル化反応のときは、この反応中粗大粒子が発生する傾向があり、エステル交換反応のときは、その反応が異常に速く進行し突沸現象を引起すことがある。この現象を回避するには第一段階における添加量を、その20重量%程度以下にするのが好ましい。
アルカリ土類金属化合物の少なくとも80重量%及び含金属リン化合物全量の添加時期は、ポリエステルの合成第1段階の反応が実質的に終了した段階以降であることが好ましい。また、含金属リン化合物及びアルカリ土類金属化合物の添加時期が、第2段階の反応が充分に進行した段階では、不溶性粒子の凝集、粗大化が生じ難く、最終的に得られるポリエステル繊維の色の深みが不充分となる傾向がある。したがって、添加時期は第2段階の反応混合物の極限粘度が0.3に到達する以前であることが好ましい。
本発明においては、第1段階の反応に公知の触媒を使用することができるが、上記アルカリ土類金属化合物の中で第1段階の反応、特にエステル交換反応の触媒能を有するものがあり、かかる化合物を使用する場合は別に触媒を使用することを要さず、このアルカリ土類金属化合物を第1段階の反応開始前又は反応中に添加して、触媒としても兼用することができるが、前述した如く突沸現象を引起すことがあるので、その使用量は添加するアルカリ土類金属化合物の全量の20重量%未満にとどめるのが好ましい。
以上説明したように、上記の含金属リン化合物の特定量と、該リン化合物に対して特定量比のアルカリ土類金属化合物と、を予め反応させることなくポリエステル反応系に添加し、しかる後ポリエステルの合成を完了することによって、高重合度、高軟化点及び良好な製糸化工程通過性(高歩留)を有し、布帛等に加工した後アルカリ減量処理を施し、微細孔を発現した場合、染色による最終的な色の深みとの摩擦耐久性に共に優れたポリエステル繊維を得ることができる。
次に、本発明のポリエステル中空繊維マルチフィラメントについて説明する。
本発明のポリエステル中空繊維マルチフィラメントは、沸水収縮率が15〜70%であって、しかも、そのポリエステル中空繊維の中空率が20〜50%であることが必要である。さらにこの中空繊維は、その最大強力点伸度が100〜150%であることが必要である。
該沸水収縮率が15%未満あるいは最大強力点伸度が100%未満の場合は、該繊維の結晶領域が増大しているため、剛直な繊維構造となって通常の延伸、混繊、仮撚加工条件下では中空繊維の割れが発生し易くなる。その結果、中空繊維の最大の特徴である布帛における充分な保温性、嵩高性、軽量性といった性能を発現させることが出来ない。一方、沸水収縮率が70%を超える場合あるいは最大強力点伸度が150%を超える場合は、その繊維構造が不安定となるため、その物性が変化しやすく、延伸、混繊、仮撚加工用のポリエステルマルチフィラメントとして使用することはできない。
このような特性と断面形状を有するポリエステル中空繊維マルチフィラメントは、延伸糸、混繊糸、仮撚加工糸とするための後加工で受ける衝撃に耐え、延伸糸、混繊糸、仮撚加工糸の布帛に充分な保温性、嵩高性、軽量性を発現させる性能をもっている。しかし、通常のポリエステルから形成されたポリエステル中空繊維マルチフィラメントは、後工程で得られる延伸糸、混繊糸、仮撚加工糸を用いた布帛において、色に深みがないため発色性、鮮明性に劣る。
何故、このような現象が生じるのか、その原因はよく判らない。しかしながら、沸水収縮率が15〜70%であって、かつ、中空率が20〜50%、最大強力点伸度が100〜150%である特性を有するポリエステル中空繊維マルチフィラメントを製造するには、紡糸速度が2500m/分以上の高速製糸が必要であり、高速製糸に伴い紡糸ドラフト比(紡糸ノズル断面積/紡糸後繊維断面積)が高くなり、繊維配向度が極めて高くなる。特に中空繊維の場合、中空繊維の外周部ではその繊維配向度は著しく高くなるため、後工程で得られる延伸糸、混繊糸、仮撚加工糸において、染料の吸収性能が著しく劣り、結果として、色に深みがないため発色性、鮮明性に劣るものと推定される。
このような問題を解決するためには、紡糸ドラフト比を下げ、繊維配向度を下げることが一般的に知られている。ところが、この公知の手法では、得られるポリエステル中空繊維マルチフィラメントの中空率が20%未満となり、中空率の低いかような中空繊維を加工して得た延伸糸、混繊糸、仮撚加工糸の布帛では、充分な保温性、嵩高性、軽量性のごとき性能を発現させることが出来ない。
前記微細孔形成剤を含有するポリエステルを用いれば、ポリエステル中空繊維マルチフィラメントの中空率が50%を超える場合でも、優れた発色性、鮮明性を有することが可能である。しかしながら、中空率が高いことに起因する中空繊維の割れ等により、中空繊維の中空成形性が不安定になるうえ、ポリエステル中空繊維マルチフィラメントを溶融紡糸により製造する際の工程調子が著しく低下し、生産効率が低減する。
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面によって説明する。
図1(a)(b)は、それぞれ、本発明の方法で用いる中空繊維製造用の紡糸口金吐出孔の例を示した模式図であり、図中の1は紡糸孔の円周配置直径(PCD)を表わす。また、図2は、本発明で定義した中空割れを説明するための中空繊維断面の一態様を示した模式図である。図3は本発明の方法で用いる溶融紡糸巻き取り設備の一態様を示した模式図であって、図中の2は紡糸口金、3は恒温領域部材、4はクロスフロー式紡糸筒、5は給油ガイド(集束位置)、6は第1ゴデットローラー、7は第2ゴデットローラーを示し、8はポリエステル中空繊維マルチフィラメント糸パッケージを示している。
本発明によれば、ポリエステル中空繊維マルチフィラメントは、溶融紡糸するに際のポリエステル重合体として、上記の微細孔形成剤が配合されているポリエステル組成物を用い、それを溶融した後、複数のスリットからなる吐出孔を有する紡糸口金2を用いて、吐出線速度7〜14cm/secの範囲で溶融ポリマーを吐出する。溶融ポリマー流が、恒温領域部材3で囲まれた領域を通過した後、図のように、クロスフロー式紡糸筒4内で冷却風を吹き付け、冷却固化したポリマー糸条を該紡糸口金面から40〜200cm下方の位置に設けた給油ガイド5で集束した後、第1ゴデットローラー6と第2ゴデットローラー7により2500〜4000m/分の範囲内の一定速度で引取って、ワインダーによりパッケージ8として巻き取られ、所定の製品となる。
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。また、実施例中の「部」は特に断らない限り重量部を意味する。
(1)固有粘度
オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定した。
(2)中空率(%)
紡糸巻き取りしたポリエステルマルチフィラメントの断面写真(560倍)をとり、図2の如き中空破れが認められる断面を除き、各単糸断面の中空部面積(A)及び断面を囲む面積(B)を測定し、下記式で計算し、全測定値の平均値を中空率(%)とした。
中空率(%)=A/B×100
(3)最大点伸度(El)
市販の機械的強伸度試験機であるテンシロン引張試験機を用いて得られた荷伸曲線から求めた。なお、試料長20cm、伸長伸度20%/分とした。
(4)沸水収縮率(BWS)
試料を100℃温水中において30分間非拘束状態で熱処理した時の収縮量を、試料長に対するパーセントで表す。
(5)中空破れ発生率(%)
上記(2)で得た断面写真で、中空破れのある単糸断面を数え、全単糸断面に占める割合(%)を中空破れ発生率とした。
(6)紡糸断糸率(%)
人為的あるいは機械的要因に起因する断糸を除き、規定重量のパッケージ完巻き終了毎に発生した断糸回数を記録し、下記式で紡糸断糸率を計算した。
紡糸断糸率(%)=断糸回数/紡糸稼動錘数×100
(7)色の深み
色の深みを示す尺度としては、深色度(K/S)を用いた。この値はサンプル布の分光反射率(R)を島津RC−330型自記分光光度計にて測定し、次に示すクベルカームンク(KubelkaMunk)の式から求めた。この値が大きいほど深色効果が大きいことを示す。
K/S=(1−R)/2R
なお、Kは吸収係数、Sは散乱係数を示す。
[実施例1〜3、比較例1〜2]
テレフタル酸ジメチル100部、エチレングリコール60部、酢酸カルシウム1水塩0.06部(テレフタル酸ジメチルに対して0.066モル%)をエステル交換缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下4時間かけて140℃から230℃まで昇温して生成するメタノールを系外に留去しながらエステル交換反応を行った。
続いて、得られた反応生成物に、0.5部のリン酸トリメチル(テレフタル酸ジメチルに対して0.693モル%)と0.31部の酢酸カルシウム1水塩(リン酸トリメチルに対して0.5倍モル)とを8.5部のエチレングリコール中で120℃の温度において、全還流下60分間反応せしめて調整したリン酸ジエステルカルシウム塩の透明溶液9.31部に室温下0.57部の酢酸カルシウム1水塩(リン酸トリメチルに対して0.9倍モル)を溶解せしめて得たリン酸ジエステルカルシウム塩と酢酸カルシウムとの混合透明溶液9.88部を添加し、次いで三酸化アンチモン0.04部を添加して重合缶に移した。
次いで1時間かけて760mmHgから1mmHgまで減圧し、同時に1時間30分かけて230℃から285℃まで昇温した。1mmHg以下の減圧下、重合温度285℃で更に3時間、合計4時間30分重合して固有粘度0.641、軟化点259℃のポリマーを得た。反応終了後ポリマーを常法に従いペレット化した。
このペレットを140℃で5時間乾燥した後、スクリュー式押出機を装備した溶融紡糸設備にて溶融し、294℃に保たれたスピンブロックに導入し、冷却固化されたポリエチレンテレフタレートの固有粘度(ηf)が0.62となるような滞留時間とし、紡糸フィルタで濾過し、図1(a)に示す形状で、各々表1に示す吐出線速度で吐出孔を24孔穿設した紡糸口金を用い吐出した。
次いで、吐出されたポリマー流を、図3に示す如くクロスフロータイプの紡糸筒から送風される25℃の冷却風により冷却固化し、紡糸口金面から600mmの位置(集束長)に設置されたメタリングノズル式給油ガイドで油剤を付与しつつ、フィラメント束として集束し、1対のゴデットローラーを介して、10kgのポリエステルマルチフィラメントパッケージとして巻き取った(繊度84dtex、フィラメント数24)。
この時の紡糸速度、及び得られた品質を表1に示す。
中空率が50%を超える条件下では中空割れが増大し、紡糸断糸が多発し、紡糸巻き取りが困難となり運転を中止した。また、沸水収縮率が15%未満の場合、及び最大点伸度が100%未満の場合も紡糸断糸が多発し、紡糸巻き取りが困難となり運転を中止した。
実施例2で得られた中空繊維を、延伸倍率1.7倍で延伸加工を行い、繊度56dtexの中空延伸糸とした。得られた中空延伸糸を筒編に編立て常法にしたがって染色したが、仕上げした編地は、色の深みと鮮明性を呈するものであった。その結果を表2に示す。
なお、沸水収縮率が70%を超える場合、及び最大点伸度が150%を超える場合は、安定した延伸加工を施すことが困難であった。
[比較例3]
ペレットとして、固有粘度が0.64で、酸化チタンを0.3重量%含有したポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例2と同様に溶融紡糸などを行った。その結果を表2に示す。染色、仕上げした編地は、色の深みと鮮明性が劣る結果となった。
Figure 2007009376
Figure 2007009376
本発明によれば、ポリエステル中空繊維中に微細孔形成剤が配合されているので、この中空繊維をアルカリ性溶液で処理することにより発現する微細孔により、染色による色の深みと鮮明性が向上するうえ、好適な20〜50%の中空率と相俟って、ポリエステル中空繊維マルチフィラメントを含む布帛からなる製品は、一層優れた色の深みと鮮明性を呈することとなり、各種衣料用途等に好適に使用できる。
本発明で用いる紡糸口金吐出孔の一態様を示した模式図。 本発明で定義した中空割れを説明するための中空糸断面の一態様を示した模式図。 本発明で用いる溶融紡糸巻き取り設備の一態様を示した模式図。
符号の説明
1 円周配置直径(PCD)
2 紡糸口金
3 恒温領域部材
4 クロスフロー式紡糸筒
5 給油ガイド(集束位置)
6 第1ゴデットローラー
7 第2ゴデットローラー
8 ポリエステル中空糸パッケージ

Claims (2)

  1. 下記(1)で表される、微細孔形成剤が配合されたポリエステル組成物からなる部分配向ポリエステル中空繊維マルチフィラメントであって、該ポリエステル中空繊維マルチフィラメントは、下記(1)乃至(4)の条件:
    (1)該ポリエステル組成物は、ポリエステルの合成が完了するまでの任意の段階において、ポリエステルを構成する酸成分に対し0.5〜3モル%の下記一般式[A]で表わされる含金属リン化合物(a)と、該含金属リン化合物に対して0.5〜1.2倍モルのアルカリ土類金属化合物(b)と、を上記含金属リン化合物(a)と予め反応させることなく添加して得られるものであり、
    (2)該ポリエステル中空繊維の中空率が20〜50%であり、
    (3)該ポリエステル中空繊維の沸水収縮率が15〜70%であり、しかも、
    (4)ポリエステル中空繊維マルチフィラメントの最大強力点伸度は100〜150%であること、
    を同時に満足することを特徴とする特殊ポリエステル中空繊維マルチフィラメント。
    Figure 2007009376
    上記式[A]中、R及びRは一価の有機基であって、R及びRは同一でも異なっていてもよく、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、nはMがアルカリ金属の場合は1であり、Mがアルカリ土類金属の場合は1/2である。
  2. ポリエステルの合成が完了するまでの任意の段階において、該ポリエステルを構成する酸成分に対し0.5〜3モル%の範囲で、下記一般式[A]で表わされる含金属リン化合物(a)と、該含金属リン化合物に対して0.5〜1.2倍モルのアルカリ土類金属化合物(b)と、を上記含金属リン化合物(a)と予め反応させることなく添加したポリエステル組成物を、複数のスリットからなる吐出孔を有する紡糸口金を用い、吐出線速度7〜14cm/secの範囲で溶融ポリマーを吐出し、冷却固化したポリマー糸条を該紡糸口金面から40〜200cm下方の位置で集束した後、2500〜4000m/分の速度で引取ることにより、沸水収縮率が15〜70%、中空率が20〜50%であって、しかも最大強力点伸度が100〜150%であるポリエステル中空繊維マルチフィラメントを得ることを特徴とする特殊ポリエステル中空繊維マルチフィラメントの製造方法。
    Figure 2007009376
    上記式[A]中、R及びRは一価の有機基であって、R及びRは同一でも異なっていてもよく、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、nはMがアルカリ金属の場合は1であり、Mがアルカリ土類金属の場合は1/2である。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN102220656A (zh) * 2011-04-25 2011-10-19 江苏鹰翔化纤股份有限公司 一种新型的细旦涤纶预取向丝制备工艺
CN105908271A (zh) * 2016-06-21 2016-08-31 浙江华欣新材料股份有限公司 具有中空截面的彩色涤纶丝的生产方法

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