本発明は、細胞標的化分子であって、それぞれの細胞標的化分子が、1)志賀毒素ファミリーの少なくとも1つのメンバーのAサブユニットに由来する少なくとも1つの志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、2)少なくとも1つの細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合領域、並びに3)少なくとも1つのCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを含み、それぞれの細胞標的化分子が、少なくとも1つのCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを、細胞外の位置から、細胞のMHCクラスI提示経路に送達することができる、細胞標的化分子及びその組成物の様々な実施形態を提供する。本発明のそれぞれの細胞標的化分子に関して、少なくとも1つの結合領域は、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドに対して異種である。本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態に関して、少なくとも1つの志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来領域を有し、(ii)少なくとも1つの内在性B細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ領域の破壊を含み、(iii)A1断片由来領域のカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフを含む。本発明のそれぞれの細胞標的化分子に関して、少なくとも1つのCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴは、(i)志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドに対して異種であり、(ii)志賀毒素A1断片領域及び/又は志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドに組み込まれていない又は挿入されていない(例えば、本発明の細胞標的化分子の例示的な実施形態の図示例を示す、図1を参照)。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態に関して、細胞標的化分子を細胞に投与することにより、(i)細胞による細胞標的化分子の内在化、及び(ii)細胞による細胞表面上でのMHCクラスI分子と複合体化したCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴの提示がもたらされる。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態に関して、細胞標的化分子を、細胞標的化分子の結合領域により結合される細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞に投与することにより、細胞による細胞表面上でのMHCクラスI分子と複合体化したCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴの提示がもたらされる。ある特定のさらなる実施形態において、細胞を免疫細胞の存在下に置くことにより、さらに、トランスでの免疫細胞応答、免疫細胞(例えば、細胞毒性Tリンパ球)による細胞の細胞間結合、及び/又は免疫細胞の細胞間作用を介して誘導される細胞死がもたらされる。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態に関して、細胞標的化分子を、細胞標的化分子の結合領域により結合される細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞を含む脊索動物に投与することにより、前記細胞のうちの少なくとも一部による、細胞表面上でのMHCクラスI分子と複合体化したCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴの提示がもたらされる。ある特定のさらなる実施形態において、結果としては、さらに、トランスでの免疫細胞応答、例えば、免疫細胞によるこれらの細胞のうちの少なくとも一部の細胞間結合、及び/又は免疫細胞(例えば、細胞毒性Tリンパ球)の細胞間作用を介して誘導される細胞死などが挙げられる。
本発明の細胞標的化分子は、送達されたCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴがMHCクラスI分子と複合体化して標的細胞表面上に提示されるように、脊索動物内の任意の有核標的細胞に様々なCD8+T細胞エピトープを標的化送達するために使用することができる。標的細胞は、例えば、新生物細胞、感染細胞、細胞内病原体を保有する細胞、及び他の望ましくない細胞など、様々な型のものであり得、標的細胞は、インビトロ又はインビボのいずれかにおいて、本発明の細胞標的化分子によって標的化され得る。加えて、本発明は、様々な細胞標的化分子であって、標的細胞のMHCクラスI提示経路への異種CD8+T細胞エピトープの細胞内送達が可能であり、同時に、これらの細胞標的化分子の細胞外インビボ忍容性を改善することが可能である、プロテアーゼ切断耐性志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、細胞標的化分子を提供する。本発明のある特定の細胞標的化分子は、所与の投薬量において非特異的毒性をもたらす可能性が低減されているため、治療剤及び/又は診断剤のいずれかとして脊索動物に投与することに関する改善された有用性を有する。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴは、直接的又は間接的のいずれかで、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及び/又は結合領域に融合されている。本発明の細胞標的化分子のある特定のさらなる実施形態において、CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴは、直接的又は間接的のいずれかで、ペプチド結合を介して、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及び/又は結合領域に融合されている。ある特定のさらなる実施形態において、CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴは、直接的又は間接的のいずれかで、ペプチド結合を介して、遺伝子融合体として、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及び/又は結合領域に融合されている。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、結合領域、志賀毒素エフェクターポリペプチド、及びCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを含む、ポリペプチドを含む。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、2つ又は3つ以上のポリペプチド鎖を含む結合領域を含み、CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴは、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含むポリペプチド及び2つ又は3つ以上のポリペプチド鎖のうちの1つに融合されている。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴは、志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドのカルボキシ末端と会合した分子部分を含む。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分は、結合領域を含む。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドのカルボキシ末端と会合した分子部分を含み、ここで、分子部分は、細胞毒性である。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、少なくとも1つのアミノ酸を含む分子部分を含み、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、分子部分の少なくとも1つのアミノ酸残基に連結されている。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分及び志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、融合されて、連続的なポリペプチドを形成している。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態に関して、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、細胞のMHCクラスI分子へのCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴの送達に加えて、1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクター機能を示すことができる。本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態に関して、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、志賀毒素エフェクターポリペプチドが存在する細胞の初期エンドソーム区画から細胞のMHCクラスI分子へのCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴの送達に加えて、1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクター機能を示すことができる。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態に関して、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、半数阻害濃度(IC50)値が10,000ピコモル以下のリボソーム阻害活性を示すことができる。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドの酵素活性を変化させる、志賀毒素ファミリーのメンバーの天然に存在するAサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含み、この変異は、少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失、挿入、又は置換から選択される。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドの酵素活性を変化させる天然に存在するAサブユニットに対する変異は、変異を有さない志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドによって示される細胞毒性を低減又は除去する。
番号1~20と番号付けされた実施形態のセットを参照しながら、本発明の細胞標的化分子の様々な実施形態を、以下に説明する。
実施形態セット番号1-組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープ及びオーバーラップしない脱免疫化された部分領域を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む細胞標的化分子
本発明は、細胞標的化分子であって、それぞれが(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)実施形態セット番号1の脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含む、細胞標的化分子を提供する(例えば、この実施形態セット番号1の細胞標的化分子の4つの例示的な実施形態の図示例を示す、図1を参照)。例えば、セット番号1のある特定の実施形態は、細胞標的化分子であって、(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)(a)少なくとも1つの挿入された又は組み込まれた異種エピトープ、並びに(b)組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープとオーバーラップしない、少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ領域を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含む、細胞標的化分子である。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、異種T細胞エピトープは、CD8+T細胞エピトープ、例えば、ヒト免疫系に関するものなどである。ある特定のさらなる実施形態に関して、異種T細胞エピトープは、細胞のMHCクラスI分子によって提示されることが可能である。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、細胞死を引き起こすこと、及び/又は細胞表面上での提示のために、組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープをMHCクラスI分子に送達することのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそれぞれ野生型志賀毒素A1断片を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第2の細胞標的化分子などと同程度か又はそれよりも良好な細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態に関して、細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する分子部分を含む。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、脊索動物に導入された場合に、参照分子、例えば、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそれぞれ野生型志賀毒素A1断片及び/又はそのA1断片領域のカルボキシ末端における野生型志賀毒素フューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第2の細胞標的化分子などと比較して、インビボ忍容性及び/又は安定性の改善を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、細胞毒性ではなく、分子部分が、細胞毒性である。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、直接的又は間接的のいずれかで、一緒に連結されている。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、結合領域は、免疫グロブリン型の結合領域を含むポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、自律的なVHドメイン、単一ドメイン抗体断片(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科動物由来の重鎖抗体ドメイン(VHH又はVHドメイン断片)、軟骨魚類由来の重鎖抗体ドメイン(VHH又はVHドメイン断片)、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR,immunoglobulin new antigen receptor)、VNAR断片、一本鎖可変断片(scFv)、抗体可変断片(Fv)、相補性決定領域3断片(CDR3)、拘束FR3-CDR3-FR4ポリペプチド(FR3-CDR3-FR4)、Fd断片、小モジュラー免疫医薬(SMIP,small modular immunopharmaceutical)ドメイン、抗原結合断片(Fab)、アルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP,Armadillo repeat polypeptide)、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)、テネイシンIII型ドメイン(TNfn3)、アンキリン反復モチーフドメイン、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR-A)、リポカリン(アンチカリン)、クニッツドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-B結晶由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン(アフィリン)、Sac7d由来ポリペプチド(アフィチン)、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、改変された抗体模倣体、並びに例えば、重鎖及び軽鎖の相対的な配向又は順序が、逆転又は反転しているなど、結合機能を保持する前述のもののいずれかのあらゆる遺伝子操作された対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、(i)野生型志賀毒素A1断片又は野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドと同程度の触媒活性レベル、(ii)半数阻害濃度(IC50)値が10,000ピコモル以下のリボソーム阻害活性、及び/又は(iii)有意なレベルの志賀毒素の触媒活性を示すことができる。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子及び/又はその志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素A1断片又は野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む参照細胞標的化分子と同程度の細胞内経路決定効率を示すことができ、並びに/又は細胞のエンドソーム開始位置から小胞体及び/又はサイトゾルへの有意なレベルの細胞内経路決定活性を示すことができる。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子を、細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞に投与することにより、細胞標的化分子は、その細胞の死を引き起こすことができる。ある特定のさらなる実施形態において、細胞外標的生体分子の存在又はレベルに関して異なる2種の異なる細胞型の集団に本発明の細胞標的化分子を投与することにより、細胞標的化分子は、細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合していない細胞型に対するCD50の少なくとも3倍又はそれ未満のCD50で、細胞毒性細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞型に細胞死をもたらすことが可能である。ある特定の実施形態に関して、そのメンバーが細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子に物理的に結合している第1の細胞集団、及びそのメンバーが結合領域のいずれの細胞外標的生体分子にも物理的に結合していない第2の細胞集団に本発明の細胞標的化分子を投与することにより、前記第1の細胞集団のメンバーに対する細胞標的化分子の細胞毒性効果が、前記第2の細胞集団のメンバーに対する細胞毒性効果に比べて少なくとも3倍大きい。ある特定の実施形態に関して、そのメンバーが有意な量の細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子に物理的に結合している第1の細胞集団、及びそのメンバーが有意な量の結合領域のいずれの細胞外標的生体分子にも物理的に結合していない第2の細胞集団に本発明の細胞標的化分子を投与することにより、前記第1の細胞集団のメンバーに対する細胞標的化分子の細胞毒性効果が、前記第2の細胞集団のメンバーに対する細胞毒性効果に比べて少なくとも3倍大きい。ある特定の実施形態に関して、第1の標的生体分子陽性細胞集団、及びそのメンバーが細胞表面において有意な量の細胞標的化分子の結合領域の標的生体分子を発現しない第2の細胞集団に本発明の細胞標的化分子を投与することにより、第1の細胞集団のメンバーに対する細胞標的化分子の細胞毒性効果が、第2の細胞集団のメンバーに対する細胞毒性効果に比べて少なくとも3倍大きい。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、半数阻害濃度(CD50)値が300nM以下の細胞毒性を示すことができる、及び/又は有意なレベルの志賀毒素の細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、MHCクラスI分子による結合したエピトープの細胞表面上での提示のために、組み込まれた又は挿入された異種CD8+T細胞エピトープを細胞のMHCクラスI提示経路に送達することができる。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端と会合した分子部分を含む。ある特定の実施形態において、分子部分は、結合領域を含むか又はそれからなる。ある特定の実施形態において、分子部分は、少なくとも1つのアミノ酸を含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、分子部分の少なくとも1つのアミノ酸残基に連結されている。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、融合されて、連続的なポリペプチドを形成している。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端と会合した細胞毒性分子部分をさらに含む。ある特定の実施形態に関して、細胞毒性分子部分は、細胞毒性剤、例えば、熟練した作業者に公知の及び/又は本明細書に記載される、低分子化学療法剤、抗新生物剤、細胞毒性抗生物質、アルキル化剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、及び/又はチューブリン阻害剤などである。ある特定のさらなる実施形態に関して、細胞毒性分子部分は、10,000pM未満、5,000pM未満、1,000pM未満、500pM未満、又は200pM未満の濃度で細胞毒性である。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、結合領域は、CD20、CD22、CD40、CD74、CD79、CD25、CD30、HER2/neu/ErbB2、EGFR、EpCAM、EphB2、前立腺特異的膜抗原、Cripto、CDCP1、エンドグリン、線維芽細胞活性化タンパク質、ルイス-Y、CD19、CD21、CS1/SLAMF7、CD33、CD52、CD133、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、チロシン-プロテインキナーゼ膜貫通型受容体(ROR1又はNTRKR1)、炭酸脱水酵素IX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、ガングリオシドルイス-Y2、VEGFR、アルファVベータ3、アルファ5ベータ1、ErbB1/EGFR、Erb3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANK、FAP、テネイシン、CD64、メソテリン、BRCA1、MART-1/メランA、gp100、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、NY-ESO-1、CDK-4、ベータ-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE6、SART-1、PRAME、癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ、EphA2、HER3/ErbB-3、MUC1、MART-1/メランA、gp100、チロシナーゼ関連抗原、HPV-E7、エプスタイン-バーウイルス抗原、Bcr-Abl、アルファ-フェトプロテイン抗原、17-A1、膀胱腫瘍抗原、SAIL、CD38、CD15、CD23、CD45(タンパク質チロシンホスファターゼ受容体C型)、CD53、CD88、CD129、CD183、CD191、CD193、CD244、CD294、CD305、C3AR、FceRIa、ガレクチン-9、IL-1R(インターロイキン-1受容体)、mrp-14、NKG2Dリガンド、プログラム死-リガンド1(PD-L1)、シグレック-8、シグレック-10、CD49d、CD13、CD44、CD54、CD63、CD69、CD123、TLR4、FceRIa、IgE、CD107a、CD203c、CD14、CD68、CD80、CD86、CD105、CD115、F4/80、ILT-3、ガレクチン-3、CD11a-c、GITRL、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子(ペプチドと複合体化していてもよい)、CD284(TLR4)、CD107-Mac3、CD195(CCR5)、HLA-DR、CD16/32、CD282(TLR2)、CD11c、及び前述のもののいずれかのあらゆる免疫原性断片からなる群から選択される細胞外標的生体分子に結合することができる。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、結合領域は、直接的又は間接的のいずれかで、ジスルフィド結合ではない少なくとも1つの共有結合によって志賀毒素エフェクターポリペプチドに連結されている。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、直接的又は間接的のいずれかで、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端に融合されて、単一の連続的なポリペプチドを形成している。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、免疫グロブリン型の結合領域である。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、最小のフューリン切断部位中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含む。ある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、最小のフューリン切断部位の少なくとも1つのアミノ酸残基の一部又はすべてとオーバーラップする配列のアミノ末端の短縮化ではない。ある特定の実施形態において、最小のフューリン切断部位中の変異は、フューリン切断モチーフR/Y-x-x-Rにおける少なくとも1つのアミノ酸残基のアミノ酸欠失、挿入、及び/又は置換である。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する少なくとも1つの変異を含み、この変異は、1)志賀毒素のAサブユニット(配列番号1~2及び4~6)の248~251、又は2)志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3及び7~18)の247~250に天然に位置する領域、又はあらゆる志賀毒素Aサブユニットにおける等価なアミノ酸配列位置において、少なくとも1つのアミノ酸残基を変更する。ある特定のさらなる実施形態において、変異は、正電荷を有さないアミノ酸残基によるアルギニン残基のアミノ酸残基置換である。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそれぞれ野生型志賀毒素A1断片を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第2の細胞標的化分子などの細胞毒性と同程度の細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、結合領域は、配列番号39~245のうちのいずれかに示されるペプチド又はポリペプチドを含む。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、配列番号252~255及び288~748のうちのいずれかに示されるポリペプチドを含むか又はそれから本質的になり、細胞標的化分子は、アミノ末端メチオニン残基を含んでいてもよい。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、結合領域は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、分子部分は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分は、結合領域を含む。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する結合領域及び/又は分子部分を含む。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び/又は分子部分の質量は、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上である。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性(例えば、細胞毒性及び/又は細胞内経路決定)を保持する限り、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する結合領域を含む。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性を保持する限り、例えば、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する分子部分などを含む、比較的大きな分子部分内に含まれる。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端は、細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端及び/又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、細胞標的化分子のアミノ末端の近位に位置していない。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、結合領域が志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の近位に位置しないように、細胞標的化分子内で物理的に配列又は配向されている。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子内で、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端よりも、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端のより近位に位置している。ある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、アミノ末端を有し、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、第3の細胞標的化分子であって、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、第3の細胞標的化分子のアミノ末端又はその近位に配置されていない、第3の細胞標的化分子のものよりも、高い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、第3の細胞標的化分子の細胞毒性と比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示す。ある特定のさらなる実施形態に関して、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第3の細胞標的化分子の細胞毒性の3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。ある特定のさらなる実施形態において、第3の細胞標的化分子は、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まない。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端は、細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端及び/又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、細胞標的化分子のアミノ末端の近位に位置していない。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、結合領域が志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の近位に位置しないように、細胞標的化分子内で物理的に配列又は配向されている。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子内で、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端よりも、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端のより近位に位置している。ある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合に、アミノ末端を有し、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、第3の細胞標的化分子であって、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、第3の細胞標的化分子のアミノ末端又はその近位に配置されていない、第3の細胞標的化分子の細胞毒性と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、第3の細胞標的化分子は、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まない。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端は、細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端及び/又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、細胞標的化分子のアミノ末端の近位に位置していない。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、結合領域が志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の近位に位置しないように、細胞標的化分子内で物理的に配列又は配向されている。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子内で、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端よりも、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端のより近位に位置している。ある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、低い細胞毒性効力を示し(すなわち、ある特定の陽性標的細胞型に導入された場合に、1000nM、500nM、100nM、75nM、又は50nMの細胞標的化分子濃度で、細胞集団の1%の細胞死よりも高い細胞毒性を示すことができない)、細胞に導入された場合に、アミノ末端を有し、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、第3の細胞標的化分子であって、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、第3の細胞標的化分子のアミノ末端又はその近位に配置されていない、第3の細胞標的化分子の細胞毒性と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、第3の細胞標的化分子は、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まない。
実施形態セット番号1のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子又はそのポリペプチド成分は、KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフを含む。ある特定のさらなる実施形態に関して、カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号750)、HDEF(配列番号751)、HDEL(配列番号752)、RDEF(配列番号753)、RDEL(配列番号754)、WDEL(配列番号755)、YDEL(配列番号756)、HEEF(配列番号757)、HEEL(配列番号758)、KEEL(配列番号759)、REEL(配列番号760)、KAEL(配列番号761)、KCEL(配列番号762)、KFEL(配列番号763)、KGEL(配列番号764)、KHEL(配列番号765)、KLEL(配列番号766)、KNEL(配列番号767)、KQEL(配列番号768)、KREL(配列番号769)、KSEL(配列番号770)、KVEL(配列番号771)、KWEL(配列番号772)、KYEL(配列番号773)、KEDL(配列番号774)、KIEL(配列番号775)、DKEL(配列番号776)、FDEL(配列番号777)、KDEF(配列番号778)、KKEL(配列番号779)、HADL(配列番号780)、HAEL(配列番号781)、HIEL(配列番号782)、HNEL(配列番号783)、HTEL(配列番号784)、KTEL(配列番号785)、HVEL(配列番号786)、NDEL(配列番号787)、QDEL(配列番号788)、REDL(配列番号789)、RNEL(配列番号790)、RTDL(配列番号791)、RTEL(配列番号792)、SDEL(配列番号793)、TDEL(配列番号794)、SKEL(配列番号795)、STEL(配列番号796)、及びEDEL(配列番号797)からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まないことを除いて本細胞標的化分子からなる第4の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、高い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、参照分子、例えば、第4の細胞標的化分子などと比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はよりも高い細胞毒性などを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第4の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。
実施形態セット番号2-カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフ及び組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、細胞標的化分子
本発明は、細胞標的化分子であって、それぞれが(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)挿入された又は組み込まれた異種エピトープを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(iii)カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフとを含む、細胞標的化分子を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、(a)少なくとも1つの細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域、(b)組み込まれた又は挿入された異種エピトープを含む志賀毒素エフェクターポリペプチド、及び(c)KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフを含む。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、異種T細胞エピトープは、CD8+T細胞エピトープ、例えば、ヒト免疫系に関するものなどである。ある特定のさらなる実施形態に関して、異種T細胞エピトープは、細胞のMHCクラスI分子によって提示されることが可能である。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、細胞死を引き起こすこと、及び/又は細胞表面上での提示のために、組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープをMHCクラスI分子に送達することのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。
実施形態セット番号2のある特定の実施形態において、カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号750)、HDEF(配列番号751)、HDEL(配列番号752)、RDEF(配列番号753)、RDEL(配列番号754)、WDEL(配列番号755)、YDEL(配列番号756)、HEEF(配列番号757)、HEEL(配列番号758)、KEEL(配列番号759)、REEL(配列番号760)、KAEL(配列番号761)、KCEL(配列番号762)、KFEL(配列番号763)、KGEL(配列番号764)、KHEL(配列番号765)、KLEL(配列番号766)、KNEL(配列番号767)、KQEL(配列番号768)、KREL(配列番号769)、KSEL(配列番号770)、KVEL(配列番号771)、KWEL(配列番号772)、KYEL(配列番号773)、KEDL(配列番号774)、KIEL(配列番号775)、DKEL(配列番号776)、FDEL(配列番号777)、KDEF(配列番号778)、KKEL(配列番号779)、HADL(配列番号780)、HAEL(配列番号781)、HIEL(配列番号782)、HNEL(配列番号783)、HTEL(配列番号784)、KTEL(配列番号785)、HVEL(配列番号786)、NDEL(配列番号787)、QDEL(配列番号788)、REDL(配列番号789)、RNEL(配列番号790)、RTDL(配列番号791)、RTEL(配列番号792)、SDEL(配列番号793)、TDEL(配列番号794)、SKEL(配列番号795)、STEL(配列番号796)、及びEDEL(配列番号797)からなる群から選択される。
実施形態セット番号2のある特定の実施形態において、組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープは、(i)配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの1~15;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの3~14;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの26~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの27~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの39~48;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの42~48;並びに配列番号1~18のうちのいずれかの53~66、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域、(ii)配列番号1~18のうちのいずれかの94~115;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの141~153;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの140~156;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの179~190;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの179~191;配列番号3の204;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの205;並びに配列番号3及び7~18のうちのいずれかの210~218、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域、並びに(iii)配列番号3及び7~18のうちのいずれかの240~260;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの243~257;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの254~268;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの262~278;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの281~297;並びに配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域からなる、天然に位置する志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域を破壊する。
実施形態セット番号2のある特定のさらなる実施形態において、異種エピトープは、細胞のMHCクラスI分子によって提示されることが可能なCD8+T細胞エピトープである。ある特定のさらなる実施形態において、異種エピトープは、組み込まれており、志賀毒素エフェクターポリペプチドが有するアミノ酸残基の総数が、その由来となる野生型志賀毒素ポリペプチド領域が有するものと同じになるように、野生型志賀毒素ポリペプチド領域における同等の数のアミノ酸残基を置き換えている。上記のもののいずれかのある特定のさらなる実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、ポリペプチドが存在する細胞のサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、及び細胞毒性から選択される少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能を示すことができる。
実施形態セット番号2のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まないことを除いて本細胞標的化分子からなる第5の細胞標的化分子のものよりも、高い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、第5の細胞標的化分子と比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第5の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。
実施形態セット番号2のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、MHCクラスI分子による結合したエピトープの細胞表面上での提示のために、組み込まれた又は挿入された異種CD8+T細胞エピトープを細胞のMHCクラスI提示経路に送達することができる。
実施形態セット番号2のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、組み込まれた又は挿入された異種エピトープに起因して、脱免疫化されている。ある特定のさらなる実施形態において、細胞標的化分子は、参照分子、例えば、細胞標的化分子に存在する1つ又は2つ以上の組み込まれた又は挿入されたエピトープが欠如していることを除いて本細胞標的化分子からなる第6の細胞標的化分子などと比較して、より低い相対的な抗原性及び/又は相対的な免疫原性を示すことができる。
実施形態セット番号2のある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、第5の細胞標的化分子などの細胞毒性と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。
実施形態セット番号3-(i)組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープ及び(ii)破壊されたフューリン切断モチーフを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、細胞標的化分子
本発明は、細胞標的化分子であって、それぞれが(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)挿入された又は組み込まれた異種エピトープを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(iii)破壊されたフューリン切断モチーフとを含む、細胞標的化分子を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)(a)挿入された又は組み込まれた異種エピトープ、(b)カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来領域、及び(c)A1断片領域のカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含む。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、異種T細胞エピトープは、CD8+T細胞エピトープ、例えば、ヒト免疫系に関するものなどである。ある特定のさらなる実施形態に関して、異種T細胞エピトープは、細胞のMHCクラスI分子によって提示されることが可能である。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、細胞死を引き起こすこと、及び/又は細胞表面上での提示のために、組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープをMHCクラスI分子に送達することのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそのA1断片領域のカルボキシ末端に野生型志賀毒素フューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第2の細胞標的化分子などと同程度か又はそれよりも良好な細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号3のある特定の実施形態において、組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープは、(i)配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの1~15;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの3~14;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの26~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの27~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの39~48;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの42~48;並びに配列番号1~18のうちのいずれかの53~66、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域、(ii)配列番号1~18のうちのいずれかの94~115;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの141~153;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの140~156;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの179~190;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの179~191;配列番号3の204;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの205;並びに配列番号3及び7~18のうちのいずれかの210~218、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域、並びに(iii)配列番号3及び7~18のうちのいずれかの240~260;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの243~257;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの254~268;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの262~278;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの281~297;並びに配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域からなる、天然に位置する志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域を破壊する。
実施形態セット番号3のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含み、この変異は、志賀毒素のAサブユニット(配列番号1~2及び4~6)の248~251、又は志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3及び7~18)の247~250に天然に位置する領域、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域において、少なくとも1つのアミノ酸残基を変更する。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフの最小のフューリン切断部位中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含む。ある特定のさらなる実施形態において、最小のフューリン切断部位は、コンセンサスアミノ酸配列R/Y-x-x-R及び/又はR-x-x-Rによって表される。
実施形態セット番号3のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する分子部分を含む。
実施形態セット番号3のある特定の実施形態において、結合領域は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。
実施形態セット番号3のある特定の実施形態において、分子部分は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分は、結合領域を含む。
実施形態セット番号3のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する結合領域及び/又は分子部分を含む。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び/又は分子部分の質量は、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上である。
実施形態セット番号3のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性(例えば、細胞毒性及び/又は細胞内経路決定)を保持する限り、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する結合領域を含む。
実施形態セット番号3のある特定の実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性を保持する限り、例えば、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する分子部分などを含む、比較的大きな分子部分内に含まれる。
実施形態セット番号3のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフ中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対するアミノ酸残基の置換を含む。ある特定のさらなる実施形態において、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基の置換は、アラニン、グリシン、プロリン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンからなる群から選択される正電荷を有さないアミノ酸残基によるアルギニン残基の置換である。ある特定の実施形態において、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基の置換は、ヒスチジンでのアルギニン残基の置換である。
実施形態セット番号3のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそれぞれ野生型志賀毒素A1断片及び/又はそのA1断片領域のカルボキシ末端における野生型志賀毒素フューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第7の細胞標的化分子の細胞毒性と同程度の細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、第7の細胞標的化分子によって示される細胞毒性の、0.1倍、0.5倍、又は0.75倍から、1.2倍、1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、4倍、又は5倍の範囲である細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号3のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、脊索動物に導入された場合に、第7の細胞標的化分子のインビボ忍容性と比較して、インビボ忍容性の改善を示すことができる。
実施形態セット番号3のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、組み込まれた又は挿入された異種エピトープに起因して、脱免疫化されている。ある特定のさらなる実施形態において、細胞標的化分子は、参照分子、例えば、細胞標的化分子に存在する1つ又は2つ以上の組み込まれた又は挿入されたエピトープが欠如していることを除いて本細胞標的化分子からなる第8の細胞標的化分子などと比較して、より低い相対的な抗原性及び/又は相対的な免疫原性を示すことができる。
実施形態セット番号3のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、フューリン切断モチーフの破壊に起因して、脱免疫化されている。ある特定のさらなる実施形態において、細胞標的化分子は、フューリン切断モチーフが野生型であること及び/又はすべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分が野生型志賀毒素A1断片からなることを除いて本細胞標的化分子からなる第9の細胞標的化分子と比較して、より低い相対的な抗原性及び/又は相対的な免疫原性を示すことができる。
実施形態セット番号4-志賀毒素エフェクターポリペプチドをアミノ末端又はその近位に含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープを含む、細胞標的化分子
本発明は、細胞標的化分子であって、それぞれが(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)挿入された又は組み込まれた異種エピトープを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、ポリペプチドのアミノ末端又はその近位にある、細胞標的化分子を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)ポリペプチド成分と、(iii)挿入された又は組み込まれた異種エピトープを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、結合領域が志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の近位に位置しないように、細胞標的化分子内で物理的に配列又は配向されている。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子内で、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端よりも、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端のより近位に位置している。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、細胞標的化分子のアミノ末端の近位に位置していない。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、異種T細胞エピトープは、CD8+T細胞エピトープ、例えば、ヒト免疫系に関するものなどである。ある特定のさらなる実施形態に関して、異種T細胞エピトープは、細胞のMHCクラスI分子によって提示されることが可能である。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、細胞死を引き起こすこと、及び/又は細胞表面上での提示のために、組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープをMHCクラスI分子に送達することのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。
実施形態セット番号4のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、アミノ末端を有し、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む、第10の細胞標的化分子であって、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域が、第10の細胞標的化分子のアミノ末端又はその近位に配置されていない、第10の細胞標的化分子のものよりも、高い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、第10の細胞標的化分子と比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第10の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。
実施形態セット番号4のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、MHCクラスI分子による結合したエピトープの細胞表面上での提示のために、組み込まれた又は挿入された異種CD8+T細胞エピトープを細胞のMHCクラスI提示経路に送達することができる。
実施形態セット番号4のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、組み込まれた又は挿入された異種エピトープに起因して、脱免疫化されている。ある特定のさらなる実施形態において、細胞標的化分子は、参照分子、例えば、細胞標的化分子に存在する1つ又は2つ以上の組み込まれた又は挿入されたエピトープが欠如していることを除いて本細胞標的化分子からなる第11の細胞標的化分子などと比較して、より低い相対的な抗原性及び/又は相対的な免疫原性を示すことができる。
実施形態セット番号4のある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、第10の細胞標的化分子などの細胞毒性と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。
実施形態セット番号5-破壊されたフューリン切断モチーフを含む脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、細胞標的化分子
本発明は、細胞標的化分子であって、それぞれが(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)破壊されたフューリン切断モチーフを含む脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含む、細胞標的化分子を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)(a)カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来領域、(b)A1断片領域のカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフ、並びに(c)少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域を含む、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含む。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、及び/又は細胞死を引き起こすことのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそのA1断片領域のカルボキシ末端に野生型志賀毒素フューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第2の細胞標的化分子などと同程度か又はそれよりも良好な細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号5のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの1~15;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの3~14;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの26~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの27~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの39~48;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの42~48;並びに配列番号1~18のうちのいずれかの53~66;配列番号1~18のうちのいずれかの94~115;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの141~153;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの140~156;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの179~190;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの179~191;配列番号3の204;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの205;並びに配列番号3及び7~18のうちのいずれかの210~218;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの240~260;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの243~257;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの254~268;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの262~278;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの281~297、並びに配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域からなる、天然に位置する志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域における、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する変異を含む。ある特定のさらなる実施形態において、少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域の一部又はすべてとオーバーラップするアミノ酸残基のカルボキシ末端の短縮化である破壊は存在しない。
実施形態セット番号5のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含み、この変異は、志賀毒素のAサブユニット(配列番号1~2及び4~6)の248~251、又は志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3及び7~18)の247~250に天然に位置する領域、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域において、少なくとも1つのアミノ酸残基を変更する。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフの最小のフューリン切断部位中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含む。ある特定のさらなる実施形態において、最小のフューリン切断部位は、コンセンサスアミノ酸配列R/Y-x-x-R及び/又はR-x-x-Rによって表される。
実施形態セット番号5のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する分子部分を含む。
実施形態セット番号5のある特定の実施形態において、結合領域は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。
実施形態セット番号5のある特定の実施形態において、分子部分は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分は、結合領域を含む。
実施形態セット番号5のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する結合領域及び/又は分子部分を含む。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び/又は分子部分の質量は、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上である。
実施形態セット番号5のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性(例えば、細胞毒性及び/又は細胞内経路決定)を保持する限り、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する結合領域を含む。
実施形態セット番号5のある特定の実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性を保持する限り、例えば、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する分子部分などを含む、比較的大きな分子部分内に含まれる。
実施形態セット番号5のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフ中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対するアミノ酸残基の置換を含む。ある特定のさらなる実施形態において、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基の置換は、アラニン、グリシン、プロリン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンからなる群から選択される正電荷を有さないアミノ酸残基によるアルギニン残基の置換である。ある特定の実施形態において、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基の置換は、ヒスチジンでのアルギニン残基の置換である。
実施形態セット番号5のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそれぞれ野生型志賀毒素A1断片及び/又はそのA1断片領域のカルボキシ末端における野生型志賀毒素のフューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第12の細胞標的化分子などの細胞毒性と同程度の細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、第12の細胞標的化分子によって示される細胞毒性の、0.1倍、0.5倍、又は0.75倍から、1.2倍、1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、4倍、又は5倍の範囲である細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号4のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、脊索動物に導入された場合に、第12の細胞標的化分子のインビボ忍容性と比較して、インビボ忍容性の改善を示すことができる。
実施形態セット番号4のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、フューリン切断モチーフの破壊に起因して、脱免疫化されている。ある特定のさらなる実施形態において、細胞標的化分子は、フューリン切断モチーフが野生型であること及び/又はすべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分が野生型志賀毒素A1断片からなることを除いて本細胞標的化分子からなる参照細胞標的化分子、例えば、第12の細胞標的化分子などと比較して、より低い相対的な抗原性及び/又は相対的な免疫原性を示すことができる。
実施形態セット番号4のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、配列番号252~255、259~271、274~278、及び288~748のうちのいずれかに示されるポリペプチドを含むか又はそれから本質的になり、細胞標的化分子は、アミノ末端メチオニン残基を含んでいてもよい。
実施形態セット番号6-カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフ及び脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、細胞標的化分子
本発明は、細胞標的化分子であって、それぞれが(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(iii)カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフとを含む、細胞標的化分子を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域を含む、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(iii)KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフとを含む。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、及び/又は細胞死を引き起こすことのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。
実施形態セット番号6のある特定の実施形態において、カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号750)、HDEF(配列番号751)、HDEL(配列番号752)、RDEF(配列番号753)、RDEL(配列番号754)、WDEL(配列番号755)、YDEL(配列番号756)、HEEF(配列番号757)、HEEL(配列番号758)、KEEL(配列番号759)、REEL(配列番号760)、KAEL(配列番号761)、KCEL(配列番号762)、KFEL(配列番号763)、KGEL(配列番号764)、KHEL(配列番号765)、KLEL(配列番号766)、KNEL(配列番号767)、KQEL(配列番号768)、KREL(配列番号769)、KSEL(配列番号770)、KVEL(配列番号771)、KWEL(配列番号772)、KYEL(配列番号773)、KEDL(配列番号774)、KIEL(配列番号775)、DKEL(配列番号776)、FDEL(配列番号777)、KDEF(配列番号778)、KKEL(配列番号779)、HADL(配列番号780)、HAEL(配列番号781)、HIEL(配列番号782)、HNEL(配列番号783)、HTEL(配列番号784)、KTEL(配列番号785)、HVEL(配列番号786)、NDEL(配列番号787)、QDEL(配列番号788)、REDL(配列番号789)、RNEL(配列番号790)、RTDL(配列番号791)、RTEL(配列番号792)、SDEL(配列番号793)、TDEL(配列番号794)、SKEL(配列番号795)、STEL(配列番号796)、及びEDEL(配列番号797)からなる群から選択される。
実施形態セット番号6のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの1~15;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの3~14;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの26~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの27~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの39~48;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの42~48;並びに配列番号1~18のうちのいずれかの53~66;配列番号1~18のうちのいずれかの94~115;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの141~153;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの140~156;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの179~190;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの179~191;配列番号3の204;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの205;並びに配列番号3及び7~18のうちのいずれかの210~218;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの240~260;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの243~257;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの254~268;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの262~278;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの281~297、並びに配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域からなる、天然に位置する志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域における、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する変異を含む。ある特定のさらなる実施形態において、少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域の一部又はすべてとオーバーラップするアミノ酸残基のカルボキシ末端の短縮化である破壊は存在しない。
実施形態セット番号6のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まないことを除いて本細胞標的化分子からなる第13の細胞標的化分子のものよりも、高い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、第13の細胞標的化分子と比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第13の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。
実施形態セット番号6のある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、第13の細胞標的化分子などの細胞毒性と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。
実施形態セット番号7-細胞標的化分子のアミノ末端又はその近位に脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、細胞標的化分子
本発明は、細胞標的化分子であって、それぞれが(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、アミノ末端又はその近位にある、細胞標的化分子を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)ポリペプチド成分と、(iii)少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域を含む、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、結合領域が志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の近位に位置しないように、細胞標的化分子内で物理的に配列又は配向されている。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子内で、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端よりも、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端のより近位に位置している。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、細胞標的化分子のアミノ末端の近位に位置していない。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、及び/又は細胞死を引き起こすことのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。
実施形態セット番号7のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの11~15;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの3~14;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの26~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの27~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの39~48;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの42~48;並びに配列番号1~18のうちのいずれかの53~66;配列番号1~18のうちのいずれかの94~115;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの141~153;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの140~156;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの179~190;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの179~191;配列番号3の204;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの205;並びに配列番号3及び7~18のうちのいずれかの210~218;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの240~260;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの243~257;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの254~268;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの262~278;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの281~297、並びに配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域からなる、天然に位置する志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域における、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する変異を含む。ある特定のさらなる実施形態において、少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域の一部又はすべてとオーバーラップするアミノ酸残基のカルボキシ末端の短縮化である破壊は存在しない。
実施形態セット番号7のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、アミノ末端を有し、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む、第14の細胞標的化分子であって、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域が、第14の細胞標的化分子のアミノ末端又はその近位に配置されていない、第14の細胞標的化分子のものよりも、高い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、第14の細胞標的化分子と比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第14の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。
実施形態セット番号7のある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、第14の細胞標的化分子などの細胞毒性と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。
実施形態セット番号7のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、配列番号252~255、259~271、274~278、及び288~748のうちのいずれかに示されるポリペプチドを含むか又はそれから本質的になり、細胞標的化分子は、アミノ末端メチオニン残基を含んでいてもよい。
実施形態セット番号8-カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフ及び破壊されたフューリン切断モチーフを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、細胞標的化分子
本発明は、細胞標的化分子であって、それぞれが(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)破壊されたフューリン切断モチーフを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(iii)カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフとを含む、細胞標的化分子を提供する。本発明は、細胞標的化分子であって、それぞれが(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)破壊されたフューリン切断モチーフを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(iii)KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフとを含む、細胞標的化分子を提供する。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、及び/又は細胞死を引き起こすことのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそのA1断片領域のカルボキシ末端に野生型志賀毒素フューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第2の細胞標的化分子などと同程度か又はそれよりも良好な細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号8のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含み、この変異は、志賀毒素のAサブユニット(配列番号1~2及び4~6)の248~251、又は志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3及び7~18)の247~250に天然に位置する領域、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域において、少なくとも1つのアミノ酸残基を変更する。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフの最小のフューリン切断部位中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含む。ある特定のさらなる実施形態において、最小のフューリン切断部位は、コンセンサスアミノ酸配列R/Y-x-x-R及び/又はR-x-x-Rによって表される。
実施形態セット番号8のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する分子部分を含む。
実施形態セット番号8のある特定の実施形態において、結合領域は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。
実施形態セット番号8のある特定の実施形態において、分子部分は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分は、結合領域を含む。
実施形態セット番号8のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する結合領域及び/又は分子部分を含む。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び/又は分子部分の質量は、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上である。
実施形態セット番号8のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性(例えば、細胞毒性及び/又は細胞内経路決定)を保持する限り、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する結合領域を含む。
実施形態セット番号8のある特定の実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性を保持する限り、例えば、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する分子部分などを含む、比較的大きな分子部分内に含まれる。
実施形態セット番号8のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフ中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対するアミノ酸残基の置換を含む。ある特定のさらなる実施形態において、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基の置換は、アラニン、グリシン、プロリン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンからなる群から選択される正電荷を有さないアミノ酸残基によるアルギニン残基の置換である。ある特定の実施形態において、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基の置換は、ヒスチジンでのアルギニン残基の置換である。
実施形態セット番号8のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まないことを除いて本細胞標的化分子からなる第15の細胞標的化分子のものよりも、高い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、第15の細胞標的化分子と比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第15の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。
実施形態セット番号8のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、脊索動物に導入された場合に、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそれぞれ野生型志賀毒素A1断片及び/又はそのA1断片領域のカルボキシ末端における野生型志賀毒素フューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第16の細胞標的化分子のインビボ忍容性と比較して、インビボ忍容性の改善を示すことができる。
実施形態セット番号8のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、フューリン切断モチーフの破壊に起因して、脱免疫化されている。ある特定のさらなる実施形態において、細胞標的化分子は、フューリン切断モチーフが野生型であること及び/又はすべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分が野生型志賀毒素A1断片からなることを除いて本細胞標的化分子からなる参照細胞標的化分子、例えば、第16の細胞標的化分子などと比較して、より低い相対的な抗原性及び/又は相対的な免疫原性を示すことができる。
実施形態セット番号8のある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、第15の細胞標的化分子などの細胞毒性と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。
実施形態セット番号9-細胞標的化分子のアミノ末端又はその近位にフューリン切断耐性志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、細胞標的化分子
本発明は、細胞標的化分子であって、それぞれが(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)その志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端が、細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端及び/又はその近位にある、細胞標的化分子を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)アミノ末端を有する志賀毒素エフェクターポリペプチド及びカルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来領域と、(iii)A1断片領域のカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフとを含み、結合領域は、志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、細胞標的化分子のアミノ末端の近位に位置していない。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、結合領域が志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の近位に位置しないように、細胞標的化分子内で物理的に配列又は配向されている。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子内で、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端よりも、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端のより近位に位置している。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、細胞標的化分子のアミノ末端の近位に位置していない。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、及び/又は細胞死を引き起こすことのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそのA1断片領域のカルボキシ末端に野生型志賀毒素フューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第17の細胞標的化分子などと同程度か又はそれよりも良好な細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号9のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含み、この変異は、志賀毒素のAサブユニット(配列番号1~2及び4~6)の248~251、又は志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3及び7~18)の247~250に天然に位置する領域、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域において、少なくとも1つのアミノ酸残基を変更する。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフの最小のフューリン切断部位中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含む。ある特定のさらなる実施形態において、最小のフューリン切断部位は、コンセンサスアミノ酸配列R/Y-x-x-R及び/又はR-x-x-Rによって表される。
実施形態セット番号9のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する分子部分を含む。
実施形態セット番号9のある特定の実施形態において、結合領域は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。
実施形態セット番号9のある特定の実施形態において、分子部分は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分は、結合領域を含む。
実施形態セット番号9のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する結合領域及び/又は分子部分を含む。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び/又は分子部分の質量は、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上である。
実施形態セット番号9のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性(例えば、細胞毒性及び/又は細胞内経路決定)を保持する限り、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する結合領域を含む。
実施形態セット番号9のある特定の実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性を保持する限り、例えば、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する分子部分などを含む、比較的大きな分子部分内に含まれる。
実施形態セット番号9のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフ中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対するアミノ酸残基の置換を含む。ある特定のさらなる実施形態において、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基の置換は、アラニン、グリシン、プロリン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンからなる群から選択される正電荷を有さないアミノ酸残基によるアルギニン残基の置換である。ある特定の実施形態において、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基の置換は、ヒスチジンでのアルギニン残基の置換である。
実施形態セット番号9のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、アミノ末端を有し、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む、第18の細胞標的化分子であって、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域が、第18の細胞標的化分子のアミノ末端又はその近位に配置されていない、第18の細胞標的化分子のものよりも、高い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、第18の細胞標的化分子と比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第18の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。
実施形態セット番号9のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、脊索動物に導入された場合に、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそれぞれ野生型志賀毒素A1断片及び/又はそのA1断片領域のカルボキシ末端における野生型志賀毒素のフューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第19の細胞標的化分子のインビボ忍容性と比較して、インビボ忍容性の改善を示すことができる。
実施形態セット番号9のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、フューリン切断モチーフの破壊に起因して、脱免疫化されている。ある特定のさらなる実施形態において、細胞標的化分子は、フューリン切断モチーフが野生型であること及び/又はすべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分が野生型志賀毒素A1断片からなることを除いて本細胞標的化分子からなる参照細胞標的化分子、例えば、第19の細胞標的化分子などと比較して、より低い相対的な抗原性及び/又は相対的な免疫原性を示すことができる。
実施形態セット番号9のある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、第19の細胞標的化分子などの細胞毒性と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。
実施形態セット番号9のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、配列番号252~255、259~271、274~278、及び288~748のうちのいずれかに示されるポリペプチドを含むか又はそれから本質的になり、細胞標的化分子は、アミノ末端メチオニン残基を含んでいてもよい。
実施形態セット番号10-カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフ及び細胞標的化分子のアミノ末端又はその近位における志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、細胞標的化分子
本発明は、細胞標的化分子であって、それぞれが(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフと、(iii)志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端が、細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端及び/又はその近位にある、細胞標的化分子を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフと、(iii)ポリペプチド成分と、(iv)志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端は、細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端及び/又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、結合領域が志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の近位に位置しないように、細胞標的化分子内で物理的に配列又は配向されている。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子内で、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端よりも、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端のより近位に位置している。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、細胞標的化分子のアミノ末端の近位に位置していない。
ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、及び/又は細胞死を引き起こすことのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。
実施形態セット番号10のある特定の実施形態において、カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号750)、HDEF(配列番号751)、HDEL(配列番号752)、RDEF(配列番号753)、RDEL(配列番号754)、WDEL(配列番号755)、YDEL(配列番号756)、HEEF(配列番号757)、HEEL(配列番号758)、KEEL(配列番号759)、REEL(配列番号760)、KAEL(配列番号761)、KCEL(配列番号762)、KFEL(配列番号763)、KGEL(配列番号764)、KHEL(配列番号765)、KLEL(配列番号766)、KNEL(配列番号767)、KQEL(配列番号768)、KREL(配列番号769)、KSEL(配列番号770)、KVEL(配列番号771)、KWEL(配列番号772)、KYEL(配列番号773)、KEDL(配列番号774)、KIEL(配列番号775)、DKEL(配列番号776)、FDEL(配列番号777)、KDEF(配列番号778)、KKEL(配列番号779)、HADL(配列番号780)、HAEL(配列番号781)、HIEL(配列番号782)、HNEL(配列番号783)、HTEL(配列番号784)、KTEL(配列番号785)、HVEL(配列番号786)、NDEL(配列番号787)、QDEL(配列番号788)、REDL(配列番号789)、RNEL(配列番号790)、RTDL(配列番号791)、RTEL(配列番号792)、SDEL(配列番号793)、TDEL(配列番号794)、SKEL(配列番号795)、STEL(配列番号796)、及びEDEL(配列番号797)からなる群から選択される。
実施形態セット番号10のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、アミノ末端を有し、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む、第20の細胞標的化分子であって、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域が、第20の細胞標的化分子のアミノ末端若しくはその近位に配置されていない、第20の細胞標的化分子のものよりも高い、並びに/又はKDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まないことを除いて本細胞標的化分子からなる第21の細胞標的化分子のものよりも高い、細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、第20の細胞標的化分子は、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まない。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、参照分子、例えば、第20及び/又は第21の細胞標的化分子などと比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第20及び/又は第21の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。
実施形態セット番号10のある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、第20及び/又は第21の細胞標的化分子などの細胞毒性と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。
本発明の多価細胞標的化分子
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、多価である。ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、2つ又は3つ以上の結合領域を含み、ここで、それぞれの結合領域は、同じ細胞外標的生体分子の細胞外部分に特異的に結合することができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、多価細胞標的化分子を、標的生体分子と物理的に結合しており、多価細胞標的化分子の2つ又は3つ以上の結合領域により結合される細胞外部分を有する、細胞集団に投与することにより、多価細胞標的化分子の一価標的結合分子成分を、同等の量、質量、又はモル濃度で、同じ条件下において、同じ標的陽性細胞集団に投与することにより得られる細胞毒性効果よりも、高い細胞毒性効果がもたらされ、解離定数(KD)によって測定した場合、一価標的結合分子成分と多価細胞標的化分子との間で、標的結合において、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、7.5倍、10倍、又はそれより高い倍率変化がある。実施形態セット番号11-組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープ及びオーバーラップしない脱免疫化された部分領域を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、多価細胞標的化分子
本発明は、多価細胞標的化分子であって、(i)それぞれが同じ標的生体分子の細胞外部分に特異的に結合することができる、2つ又は3つ以上の結合領域と、(ii)少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含む、多価細胞標的化分子を提供する。例えば、ある特定の実施形態のセット番号11は、多価細胞標的化分子であって、(i)それぞれが同じ細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる、2つ又は3つ以上の結合領域と、(ii)(a)少なくとも1つの挿入された又は組み込まれた異種エピトープ、(b)少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ領域を含む、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含み、異種エピトープが、組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープとオーバーラップしない、多価細胞標的化分子である。ある特定のさらなる実施形態に関して、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、多価細胞標的化分子を、2つ又は3つ以上の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合しており、2つ又は3つ以上の結合領域により結合される細胞外部分を有する、複数の細胞に、5パーセント、10パーセント、20パーセント、35パーセント、50パーセント、65パーセント、75パーセント、及び/又は80パーセントの細胞表面占有率と同等の多価細胞標的化分子濃度で投与することにより、多価細胞標的化分子の大半が、細胞に適した生理学的温度及び/又は摂氏約37℃で、約15時間、10時間、5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、30分間、又はそれ以内に、複数の細胞に内在化される。ある特定のさらなる実施形態において、異種T細胞エピトープは、CD8+T細胞エピトープ、例えば、ヒト免疫系に関するものなどである。ある特定のさらなる実施形態に関して、異種T細胞エピトープは、細胞のMHCクラスI分子によって提示されることが可能である。ある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の多価細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、カスパーゼ活性化を引き起こすこと、細胞死を引き起こすこと、及び/又は細胞表面上での提示のために、組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープをMHCクラスI分子に送達することのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、多価細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、同じ種類の細胞に導入された参照分子の細胞毒性と同程度か又はそれよりも高い細胞毒性を示すことができる。参照分子の非限定的な例としては、第2の細胞標的化分子、例えば、(1)所望の多価細胞標的化分子の2つ若しくは3つ以上の結合領域のうちの1つのみ、及び多価細胞標的化分子の同じ志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のうちの1つ若しくは2つ以上を含む、一価の第2の細胞標的化分子、並びに/又は(2)その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそれぞれ野生型志賀毒素A1断片を含むことを除いて本多価細胞標的化分子からなる多価の第3の細胞標的化分子などが挙げられる。
少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのそれぞれは、ポリペプチド領域の境界及び/又は物理的なポリペプチド末端に関係なく、アミノ末端を有する。
ある特定の実施形態において、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片領域及び/又は志賀毒素A1断片由来領域を含む。ある特定の実施形態において、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片領域及び/又は志賀毒素A1断片由来領域を含む。ある特定のさらなる実施形態において、多価細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてが、それぞれ、カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片領域及び/又は志賀毒素A1断片由来領域を含む。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、多価細胞標的化分子は、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドの志賀毒素A1断片領域及び/又は志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する、分子部分を含む。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態に関して、本発明の多価細胞標的化分子は、脊索動物に導入された場合に、参照分子、例えば、第4の細胞標的化分子であって、第4の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のうちの少なくとも1つが野生型志賀毒素A1断片及び/又はそのA1断片領域若しくは志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端における野生型志賀毒素フューリン切断部位を含むことを除いて本多価細胞標的化分子からなる第4の細胞標的化分子などと比較して、インビボ忍容性及び/又は安定性の改善を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、(1)分子部分に対してアミノ末端側に位置する脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドはすべてが、細胞毒性ではなく、(2)分子部分が、細胞毒性である。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つと、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドとが、直接的又は間接的のいずれかで、一緒に連結されて、例えば、融合されるなどして、連続的なポリペプチドを形成している(例えば、図1を参照)。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域のすべてが、直接的又は間接的のいずれかで、それぞれ、多価細胞標的化分子の脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド成分に連結されている(例えば、図1を参照)。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域のすべて、並びに脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのすべてが、直接的又は間接的のいずれかで、一緒に連結されて、例えば、融合されるなどして、連続的なポリペプチドを形成している(例えば、図1を参照)。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つは、免疫グロブリン型の結合領域を含むポリペプチドを含む。特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つは、自律的なVHドメイン、単一ドメイン抗体断片(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科動物由来の重鎖抗体ドメイン(VHH又はVHドメイン断片)、軟骨魚類由来の重鎖抗体ドメイン(VHH又はVHドメイン断片)、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変断片(scFv)、抗体可変断片(Fv)、相補性決定領域3断片(CDR3)、拘束FR3-CDR3-FR4ポリペプチド(FR3-CDR3-FR4)、Fd断片、小モジュラー免疫医薬(SMIP)ドメイン、抗原結合断片(Fab)、アルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP)、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)、テネイシンIII型ドメイン(TNfn3)、アンキリン反復モチーフドメイン、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR-A)、リポカリン(アンチカリン)、クニッツドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-B結晶由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド(アフィチン)、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、改変抗体模倣物、及び結合機能を保持する前述のもののいずれかのあらゆる遺伝子操作された対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む。ある特定の実施形態において、多価細胞標的化分子の2つ又は3つ以上の結合領域のそれぞれは、免疫グロブリン型の結合領域を含むプリペプチド、及び/又は自律的なVHドメイン、単一ドメイン抗体断片(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科動物由来の重鎖抗体ドメイン(VHH又はVHドメイン断片)、軟骨魚類由来の重鎖抗体ドメイン(VHH又はVHドメイン断片)、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR,immunoglobulin new antigen receptor)、VNAR断片、一本鎖可変断片(scFv)、抗体可変断片(Fv)、相補性決定領域3断片(CDR3)、拘束FR3-CDR3-FR4ポリペプチド(FR3-CDR3-FR4)、Fd断片、小モジュラー免疫医薬(SMIP,small modular immunopharmaceutical)ドメイン、抗原結合断片(Fab)、アルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP,Armadillo repeat polypeptide)、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)、テネイシンIII型ドメイン(TNfn3)、アンキリン反復モチーフドメイン、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR-A)、リポカリン(アンチカリン)、クニッツドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-B結晶由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド(アフィチン)、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、改変された抗体模倣体、及び結合機能を保持する前述のもののいずれかのあらゆる遺伝子操作された対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む。
ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、2つ又は3つ以上のタンパク質性成分(例えば、タンパク質サブユニット)を含み、ここで、それぞれのタンパク質性成分は、(a)2つ又は3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つを含み、(b)少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのうちの1つ又は2つ以上を含んでいてもよい。ある特定のさらなる実施形態において、それぞれのタンパク質性成分は、(1)2つ又は3つ以上の結合領域のうちの1つのみ、及び(2)1つのみの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、厳密に2つのタンパク質性成分を含む。
ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、2つ又は3つ以上の成分を含み、ここで、少なくとも1つの成分は、1つ又は2つ以上の非共有結合による相互作用を通じて多価細胞標的化分子と会合している。ある特定のさらなる実施形態において、複数の成分のうちの少なくとも1つは、タンパク質性である。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、直接的又は間接的のいずれかで、1つ又は2つ以上の非共有結合による相互作用を通じて互いに会合している、2つ又は3つ以上のタンパク質性成分を含む。ある特定のさらなる実施形態において、それぞれのタンパク質性成分は、(1)2つ又は3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つ、及び(2)少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのうちの少なくとも1つを含む。
ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、脱免疫化されているか脱免疫化されていないかに関係なく、2つ又は3つ以上の志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、2つ又は3つ以上のタンパク質性成分(例えば、タンパク質サブユニット)を含み、ここで、それぞれのタンパク質性成分は、(a)2つ又は3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つを含み、(b)1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクターポリペプチドを含んでいてもよい。ある特定のさらなる実施形態において、それぞれのタンパク質性成分は、(1)2つ又は3つ以上の結合領域のうちの1つのみ、及び(2)1つのみの志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、2つ又は3つ以上の成分(例えば、タンパク質性成分)を含み、ここで、少なくとも1つの成分は、1つ又は2つ以上の非共有結合による相互作用を通じて多価細胞標的化分子と会合している。ある特定のさらなる実施形態において、それぞれのタンパク質性成分は、(1)2つ又は3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つ、及び(2)少なくとも1つの志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。
ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片領域及び/又は志賀毒素A1断片由来領域を含む。ある特定のさらなる実施形態において、多価細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてが、それぞれ、カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片領域及び/又は志賀毒素A1断片由来領域を含む。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態に関して、本発明の多価細胞標的化分子は、(i)野生型志賀毒素A1断片又は野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドと同程度の触媒活性レベル、(ii)半数阻害濃度(IC50)値が10,000ピコモル以下のリボソーム阻害活性、及び/又は(iii)有意なレベルの志賀毒素の触媒活性を示すことができる。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態に関して、本発明の多価細胞標的化分子及び/又はその少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素A1断片又は野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む参照細胞標的化分子と同程度の細胞内経路決定効率を示すことができ、並びに/又は細胞のエンドソーム開始位置から小胞体及び/又はサイトゾルへの有意なレベルの細胞内経路決定活性を示すことができる。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態に関して、本発明の多価細胞標的化分子を、多価細胞標的化分子の2つ又は3つ以上の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞に投与することにより、多価細胞標的化分子は、その細胞の死を引き起こすことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の多価細胞標的化分子を、物理的に結合している細胞外標的生体分子の存在又はレベルが異なる細胞型の2つの異なる集団に投与することにより、多価細胞標的化分子は、多価細胞標的化分子の2つ又は3つ以上の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞型に対して、多価細胞標的化分子の2つ又は3つ以上の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合していない細胞型に対するCD50の少なくとも3倍又はそれ未満のCD50で細胞死を引き起こすことができる。ある特定の実施形態に関して、本発明の多価細胞標的化分子を、メンバーが多価細胞標的化分子の2つ又は3つ以上の結合領域の細胞外標的生体分子に物理的に結合している第1の細胞集団、及びメンバーが2つ又は3つ以上の結合領域のいずれの細胞外標的生体分子にも物理的に結合していない第2の細胞集団に投与したとき、前記第1の細胞集団のメンバーに対する多価細胞標的化分子の細胞毒性効果は、前記第2の細胞集団のメンバーに対する細胞毒性効果と比べて、少なくとも3倍高い。ある特定の実施形態に関して、本発明の多価細胞標的化分子を、メンバーが、有意な量の、多価細胞標的化分子の2つ又は3つ以上の結合領域の細胞外標的生体分子に物理的に結合している第1の細胞集団、及びメンバーが、有意な量の、2つ又は3つ以上の結合領域のいずれの細胞外標的生体分子にも物理的に結合していない第2の細胞集団に投与したとき、前記第1の細胞集団のメンバーに対する多価細胞標的化分子の細胞毒性効果は、前記第2の細胞集団のメンバーに対する細胞毒性効果と比べて、少なくとも3倍高い。ある特定の実施形態に関して、本発明の多価細胞標的化分子を、第1の標的生体分子陽性細胞集団、及びメンバーが細胞表面上に有意な量の多価細胞標的化分子の2つ又は3つ以上の結合領域の標的生体分子を発現しない第2の細胞集団に投与したとき、第1の細胞集団のメンバーに対する多価細胞標的化分子の細胞毒性効果は、第2の細胞集団のメンバーに対する細胞毒性効果と比べて、少なくとも3倍高い。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態に関して、本発明の多価細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、半数阻害濃度(CD50)値が300ナノモル(nM)以下の細胞毒性を示すことができる、及び/又は有意なレベルの志賀毒素の細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態に関して、本発明の多価細胞標的化分子は、MHCクラスI分子による結合したエピトープの細胞表面上での提示のために、組み込まれた又は挿入された異種CD8+T細胞エピトープを細胞のMHCクラスI提示経路に送達することができる。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、多価細胞標的化分子は、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端と会合した分子部分を含む。ある特定の実施形態において、分子部分は、1つ又は2つ以上、2つ又は3つ以上の結合領域を含むか又はそれからなる。ある特定の実施形態において、分子部分は、少なくとも1つのアミノ酸を含み、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、直接的又は間接的のいずれかで、分子部分の少なくとも1つのアミノ酸残基に連結されている。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分及び少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、直接的又は間接的のいずれかで、融合されて、連続的なポリペプチドを形成している。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分は、それぞれが、直接的又は間接的のいずれかで、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドに融合されて、連続的なポリペプチドを形成している。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、多価細胞標的化分子は、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端と会合した細胞毒性分子部分をさらに含む。ある特定の実施形態において、細胞毒性分子部分は、細胞毒性剤、例えば、熟練した作業者に公知の及び/又は本明細書に記載される、低分子化学療法剤、抗新生物剤、細胞毒性抗生物質、細胞毒性抗感染剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、及び/又はチューブリン阻害剤などである。ある特定のさらなる実施形態において、細胞毒性分子部分は、10,000ピコモル(pM)未満、5,000pM未満、1,000pM未満、500pM未満、又は200pM未満の濃度で細胞毒性である。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域のそれぞれは、CD20、CD22、CD40、CD74、CD79、CD25、CD30、HER2/neu/ErbB2、EGFR、EpCAM、EphB2、前立腺特異的膜抗原、Cripto、CDCP1、エンドグリン、線維芽細胞活性化タンパク質、ルイス-Y、CD19、CD21、CS1/SLAMF7、CD33、CD52、CD133、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、チロシン-プロテインキナーゼ膜貫通型受容体(ROR1又はNTRKR1)、炭酸脱水酵素IX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、ガングリオシドルイス-Y2、VEGFR、アルファVベータ3、アルファ5ベータ1、ErbB1/EGFR、Erb3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANK、FAP、テネイシン、CD64、メソテリン、BRCA1、MART-1/メランA、gp100、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、NY-ESO-1、CDK-4、ベータ-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE6、SART-1、PRAME、癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ、EphA2、HER3/ErbB-3、MUC1、MART-1/メランA、gp100、チロシナーゼ関連抗原、HPV-E7、エプスタイン-バーウイルス抗原、Bcr-Abl、アルファ-フェトプロテイン抗原、17-A1、膀胱腫瘍抗原、SAIL、CD38、CD15、CD23、CD45(タンパク質チロシンホスファターゼ受容体C型)、CD53、CD88、CD129、CD183、CD191、CD193、CD244、CD294、CD305、C3AR、FceRIa、ガレクチン-9、IL-1R(インターロイキン-1受容体)、mrp-14、NKG2Dリガンド、プログラム死-リガンド1(PD-L1)、シグレック-8、シグレック-10、CD49d、CD13、CD44、CD54、CD63、CD69、CD123、TLR4、FceRIa、IgE、CD107a、CD203c、CD14、CD68、CD80、CD86、CD105、CD115、F4/80、ILT-3、ガレクチン-3、CD11a-c、GITRL、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子(ペプチドと複合体化していてもよい)、CD284(TLR4)、CD107-Mac3、CD195(CCR5)、HLA-DR、CD16/32、CD282(TLR2)、CD11c、及び前述のもののいずれかのあらゆる免疫原性断片からなる群から選択される細胞外標的生体分子に結合することができる。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域のうちの1つ又は2つ以上は、直接的又は間接的のいずれかで、ジスルフィド結合ではない少なくとも1つの共有結合によって、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのうちの少なくとも1つに連結されている。ある特定のさらなる実施形態において、多価細胞標的化分子の2つ又は3つ以上の結合領域のうちの1つ又は2つ以上は、直接的又は間接的のいずれかで、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端に融合されて、単一の連続的なポリペプチドを形成している。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つは、免疫グロブリン型の結合領域を含む。ある特定のさらなる実施形態において、多価細胞標的化分子の2つ又は3つ以上の結合領域のすべてが、それぞれ、免疫グロブリン型の結合領域を含む。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、最小のフューリン切断部位中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含む。ある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、最小のフューリン切断部位の少なくとも1つのアミノ酸残基の一部又はすべてとオーバーラップする配列のアミノ末端の短縮化ではない。ある特定の実施形態において、最小のフューリン切断部位中の変異は、フューリン切断モチーフR/Y-x-x-Rにおける少なくとも1つのアミノ酸残基のアミノ酸欠失、挿入、及び/又は置換である。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する少なくとも1つの変異を含み、この変異は、志賀毒素のAサブユニット(配列番号1~2及び4~6)の248~251、又は志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3及び7~18)の247~250に天然に位置する領域、又はあらゆる志賀毒素Aサブユニットにおける等価なアミノ酸配列位置において、少なくとも1つのアミノ酸残基を変更する。ある特定のさらなる実施形態において、変異は、正電荷を有さないアミノ酸残基によるアルギニン残基のアミノ酸残基置換である。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つは、配列番号39~245のうちのいずれかに示されるペプチド又はポリペプチドを含む。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、配列番号252~255及び288~748のうちのいずれかに示されるポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、2つのタンパク質を含むか又はそれから本質的になり、それぞれのタンパク質は、配列番号252~255及び288~748に示されるポリペプチドのうちのいずれかから選択され、それぞれのタンパク質は、アミノ末端メチオニン残基をさらに含んでいてもよい。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのうちの少なくとも1つの、A1断片領域又は志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つは、多価細胞標的化分子に存在するすべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のA1断片領域又はA1断片由来領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。ある特定のさらなる実施形態において、多価細胞標的化分子に存在する志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のそれぞれのA1断片領域又はA1断片由来領域のカルボキシ末端のそれぞれは、2つ又は3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つによって、立体的にカバーされる。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、分子部分は、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのうちの少なくとも1つの、A1断片領域及び/又は志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端を、立体的にカバーする。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分は、2つ又は3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つを含む。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、分子部分は、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのうちの少なくとも1つの、A1断片領域及び/又は志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端を、立体的にカバーする。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分は、多価細胞標的化分子に存在するすべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のA1断片領域又はA1断片由来領域のカルボキシ末端を、立体的にカバーする。ある特定のさらなる実施形態において、多価細胞標的化分子に存在する志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のそれぞれのA1断片領域又はA1断片由来領域のカルボキシ末端のそれぞれは、分子部分のうちの少なくとも1つによって、立体的にカバーされる。ある特定のさらなる実施形態において、多価細胞標的化分子に存在する分子部分のそれぞれは、2つ又は3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つを含む。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、2つ若しくは3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つ、並びに/又は少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドの志賀毒素A1断片領域及び/若しくは志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する分子部分を含む。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び/又は分子部分の質量は、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上である。ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、2つ若しくは3つ以上の結合領域、並びに/又は多価細胞標的化分子内で、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドの志賀毒素A1断片領域及び/若しくは志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側の位置に位置する分子部分を含む。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、多価細胞標的化分子は、多価細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性(例えば、細胞毒性、細胞内経路決定、及び/又は細胞内在化動態パラメーター)を保持する限り、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する結合領域を含む。実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域は、多価細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性(例えば、細胞毒性、細胞内経路決定、及び/又は細胞内在化動態パラメーター)を保持する限り、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の組合せ質量を有する。ある特定のさらなる実施形態において、多価細胞標的化分子の2つ又は3つ以上の結合領域のそれぞれは、多価細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性(例えば、細胞毒性、細胞内経路決定、及び/又は細胞内在化動態パラメーター)を保持する限り、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する結合領域を含む。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つは、多価細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性を保持する限り、比較的大きな分子部分、例えば、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する分子部分などに含まれる。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、2つ又は3つ以上の結合領域のいずれと比べても、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端のより近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む多価細胞標的化分子の成分の同じポリペプチド鎖内に含まれる2つ又は3つ以上の結合領域はいずれも、そのポリペプチド鎖内に含まれる少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、そのポリペプチド鎖のアミノ末端の近位に位置しない。ある特定の実施形態において、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端は、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端及び/又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、多価細胞標的化分子に存在するすべての志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端は、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端及び/又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域、及び少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、多価細胞標的化分子内で、2つ又は3つ以上の結合領域のいずれも、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のカルボキシ末端と比べて、その志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の近位に位置しないように、物理的に配列又は配向されている。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域のいずれも、少なくとも1つの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分と比べて、多価細胞標的化分子のいずれのアミノ末端にも近位に位置しない。ある特定の実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域は、多価細胞標的化分子内で、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端よりも、その脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端のより近位に連結されている。ある特定の実施形態において、すべての脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、そのポリペプチド成分の同じポリペプチド鎖内に含まれる2つ又は3つ以上の結合領域のいずれと比べても、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端のより近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域、及び少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、多価細胞標的化分子内で、2つ又は3つ以上の結合領域がいずれも、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のカルボオキシ末端に比べて、いずれのその志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のアミノ末端の近位にも位置しないように、物理的に配列又は配向されている。ある特定の実施形態において、すべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分の同じポリペプチド鎖内に含まれる2つ又は3つ以上の結合領域のいずれと比べても、そのポリペプチド成分のアミノ末端のより近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域は、多価細胞標的化分子内で、2つ又は3つ以上の結合領域がいずれも、すべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のカルボキシ末端と比べて、いずれのその志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のアミノ末端の近位に位置しないように、物理的に配列又は配向されている。ある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の多価細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、アミノ末端を有するポリペプチド成分を含み、多価細胞標的化分子と同じ2つ又は3つ以上の結合領域及び同じ脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、第5の細胞標的化分子であって、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドが、第5の細胞標的化分子のポリペプチド成分の物理的なアミノ末端若しくはその近位に配置されていない、第5の細胞標的化分子、又は多価細胞標的化分子と同じ2つ若しくは3つ以上の結合領域及び同じ志賀毒素エフェクターポリペプチド成分を含む、第6の細胞標的化分子であって、2つ若しくは3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つが、すべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分と比べて、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端のより近位にある、第6の細胞標的化分子などのものよりも、高い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、第4の細胞標的化分子の細胞毒性と比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示す。ある特定のさらなる実施形態に関して、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第5及び/又は第6の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合に、第5及び/又は第6の細胞標的化分子の細胞内経路決定効率と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、第5及び/又は6の細胞標的化分子は、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まない。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端は、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端及び/又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、多価細胞標的化分子に存在するすべての志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端は、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端及び/又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、2つ又は3つ以上の結合領域のいずれと比べても、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端により近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む多価細胞標的化分子のポリペプチド成分の同じポリペプチド鎖内に含まれる2つ又は3つ以上の結合領域はいずれも、そのポリペプチド鎖内に含まれる少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、そのポリペプチド鎖のアミノ末端の近位に位置しない。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域、及び少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、多価細胞標的化分子内で、2つ又は3つ以上の結合領域のいずれも、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のカルボキシ末端と比べて、その志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の近位に位置しないように、物理的に配列又は配向されている。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域のいずれも、少なくとも1つの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分と比べて、多価細胞標的化分子のいずれのアミノ末端にも近位に位置しない。ある特定の実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域は、多価細胞標的化分子内で、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端よりも、その脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端のより近位に連結されている。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域のいずれも、少なくとも1つの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分と比べて、多価細胞標的化分子のいずれのアミノ末端にも近位に位置しない。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域は、多価細胞標的化分子内で、少なくとも1つの志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端よりも、その志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端により近位に連結されている。ある特定の実施形態において、すべての脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、そのポリペプチド成分の同じポリペプチド鎖内に含まれる2つ又は3つ以上の結合領域のいずれと比べても、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端のより近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域、及び少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、多価細胞標的化分子内で、2つ又は3つ以上の結合領域がいずれも、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のカルボオキシ末端に比べて、いずれのその志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のアミノ末端の近位にも位置しないように、物理的に配列又は配向されている。ある特定の実施形態において、すべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分の同じポリペプチド鎖内に含まれる2つ又は3つ以上の結合領域のいずれと比べても、そのポリペプチド成分のアミノ末端のより近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域は、多価細胞標的化分子内で、2つ又は3つ以上の結合領域がいずれも、すべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のカルボキシ末端と比べて、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のアミノ末端の近位に位置しないように、物理的に配列又は配向されている。ある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、参照分子、例えば、アミノ末端を有し、多価細胞標的化分子と同じ2つ又は3つ以上の結合領域及び同じ志賀毒素エフェクターポリペプチド成分を含む、第7の多価細胞標的化分子であって、志賀毒素エフェクターポリペプチド成分がいずれも、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端及び/又はその近位にない、第7の細胞標的化分子などの細胞毒性と比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示す。ある特定のさらなる実施形態に関して、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第7の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合に、第7の細胞標的化分子の細胞内経路決定効率と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、第7の細胞標的化分子は、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まない。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域は、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端の近位に位置しない。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、多価細胞標的化分子内で、2つ又は3つ以上の結合領域が、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の近位に位置しないように、物理的に配列又は配向されている。ある特定のさらなる実施形態において、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む多価細胞標的化分子の成分の同じポリペプチド鎖内に含まれる2つ又は3つ以上の結合領域はいずれも、そのポリペプチド鎖内に含まれる少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、そのポリペプチド鎖のアミノ末端の近位に位置しない。ある特定のさらなる実施形態において、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端は、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端及び/又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、多価細胞標的化分子に存在するすべての志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端は、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端及び/又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域、及び少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、多価細胞標的化分子内で、2つ又は3つ以上の結合領域のいずれも、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のカルボキシ末端と比べて、その志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の近位に位置しないように、物理的に配列又は配向されている。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域のいずれも、少なくとも1つの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分と比べて、多価細胞標的化分子のいずれのアミノ末端にも近位に位置しない。ある特定の実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域は、多価細胞標的化分子内で、少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端よりも、その脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端のより近位に連結されている。ある特定の実施形態において、すべての脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、そのポリペプチド成分の同じポリペプチド鎖内に含まれる2つ又は3つ以上の結合領域のいずれと比べても、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端のより近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域、及び少なくとも1つの脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、多価細胞標的化分子内で、2つ又は3つ以上の結合領域がいずれも、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のカルボオキシ末端に比べて、いずれのその志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のアミノ末端の近位にも位置しないように、物理的に配列又は配向されている。ある特定の実施形態において、すべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分の同じポリペプチド鎖内に含まれる2つ又は3つ以上の結合領域のいずれと比べても、そのポリペプチド成分のアミノ末端のより近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域は、多価細胞標的化分子内で、2つ又は3つ以上の結合領域がいずれも、すべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のカルボキシ末端と比べて、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のアミノ末端の近位に位置しないように、物理的に配列又は配向されている。ある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、参照分子、例えば、アミノ末端を有するポリペプチド成分を有し、多価細胞標的化分子と同じ2つ又は3つ以上の結合領域及び同じ志賀毒素エフェクターポリペプチド成分を含む、第8の多価細胞標的化分子であって、2つ又は3つ以上の結合領域のうちの少なくとも1つが、すべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のそれぞれと比べて、多価細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端の近位に位置する、第8の多価細胞標的化分子などの細胞毒性と比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示す。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合に、第8の細胞標的化分子の細胞内経路決定効率と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、第8の細胞標的化分子は、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まない。
実施形態セット番号11のある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子及び/又はそのポリペプチド成分は、KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフを含む。ある特定のさらなる実施形態において、カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号750)、HDEF(配列番号751)、HDEL(配列番号752)、RDEF(配列番号753)、RDEL(配列番号754)、WDEL(配列番号755)、YDEL(配列番号756)、HEEF(配列番号757)、HEEL(配列番号758)、KEEL(配列番号759)、REEL(配列番号760)、KAEL(配列番号761)、KCEL(配列番号762)、KFEL(配列番号763)、KGEL(配列番号764)、KHEL(配列番号765)、KLEL(配列番号766)、KNEL(配列番号767)、KQEL(配列番号768)、KREL(配列番号769)、KSEL(配列番号770)、KVEL(配列番号771)、KWEL(配列番号772)、KYEL(配列番号773)、KEDL(配列番号774)、KIEL(配列番号775)、DKEL(配列番号776)、FDEL(配列番号777)、KDEF(配列番号778)、KKEL(配列番号779)、HADL(配列番号780)、HAEL(配列番号781)、HIEL(配列番号782)、HNEL(配列番号783)、HTEL(配列番号784)、KTEL(配列番号785)、HVEL(配列番号786)、NDEL(配列番号787)、QDEL(配列番号788)、REDL(配列番号789)、RNEL(配列番号790)、RTDL(配列番号791)、RTEL(配列番号792)、SDEL(配列番号793)、TDEL(配列番号794)、SKEL(配列番号795)、STEL(配列番号796)、及びEDEL(配列番号797)からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まないことを除いて本細胞標的化分子からなる第9の細胞標的化分子などのものよりも、高い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、参照分子、例えば、第9の細胞標的化分子などと比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第9の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。
ある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の多価細胞標的化分子は、低い細胞毒性効力を示し(すなわち、ある特定の陽性標的細胞型に導入された場合に、1000nM、500nM、100nM、75nM、又は50nMの多価細胞標的化分子濃度で、細胞集団の1%細胞死より高い細胞毒性を示すことができない)、細胞に導入された場合に、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、及び/又は第9の細胞標的化分子の細胞内経路決定効率と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。
実施形態セット番号12-カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフ及び組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、多価細胞標的化分子
本発明は、多価細胞標的化分子であって、それぞれが(i)それぞれが同じ標的生体分子の細胞外部分に特異的に結合することができる、2つ又は3つ以上の結合領域と、(ii)挿入された又は組み込まれた異種エピトープを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(iii)カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフとを含む、多価細胞標的化分子を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、(i)それぞれが細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる、2つ又は3つ以上の結合領域と、(ii)組み込まれた又は挿入された異種エピトープを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(iii)KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフとを含む。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定の実施形態において、異種エピトープは、CD8+T細胞エピトープ、例えば、ヒト免疫系に関するものなどである。ある特定のさらなる実施形態に関して、異種CD8+T細胞エピトープは、細胞のMHCクラスI分子によって提示されることが可能である。実施形態セット番号12のある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、細胞死を引き起こすこと、及び/又は細胞表面上での提示のために、組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープをMHCクラスI分子に送達することのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。
実施形態セット番号12のある特定の実施形態において、カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号750)、HDEF(配列番号751)、HDEL(配列番号752)、RDEF(配列番号753)、RDEL(配列番号754)、WDEL(配列番号755)、YDEL(配列番号756)、HEEF(配列番号757)、HEEL(配列番号758)、KEEL(配列番号759)、REEL(配列番号760)、KAEL(配列番号761)、KCEL(配列番号762)、KFEL(配列番号763)、KGEL(配列番号764)、KHEL(配列番号765)、KLEL(配列番号766)、KNEL(配列番号767)、KQEL(配列番号768)、KREL(配列番号769)、KSEL(配列番号770)、KVEL(配列番号771)、KWEL(配列番号772)、KYEL(配列番号773)、KEDL(配列番号774)、KIEL(配列番号775)、DKEL(配列番号776)、FDEL(配列番号777)、KDEF(配列番号778)、KKEL(配列番号779)、HADL(配列番号780)、HAEL(配列番号781)、HIEL(配列番号782)、HNEL(配列番号783)、HTEL(配列番号784)、KTEL(配列番号785)、HVEL(配列番号786)、NDEL(配列番号787)、QDEL(配列番号788)、REDL(配列番号789)、RNEL(配列番号790)、RTDL(配列番号791)、RTEL(配列番号792)、SDEL(配列番号793)、TDEL(配列番号794)、SKEL(配列番号795)、STEL(配列番号796)、及びEDEL(配列番号797)からなる群から選択される。
実施形態セット番号12のある特定の実施形態において、挿入された又は組み込まれた異種T細胞エピトープは、(i)配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの1~15;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの3~14;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの26~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの27~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの39~48;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの42~48;並びに配列番号1~18のうちのいずれかの53~66、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域、(ii)配列番号1~18のうちのいずれかの94~115;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの141~153;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの140~156;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの179~190;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの179~191;配列番号3の204;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの205;並びに配列番号3及び7~18のうちのいずれかの210~218、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域、並びに(iii)配列番号3及び7~18のうちのいずれかの240~260;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの243~257;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの254~268;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの262~278;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの281~297;並びに配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域からなる、天然に位置する志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域を破壊する。
実施形態セット番号12のある特定のさらなる実施形態に関して、異種エピトープは、細胞のMHCクラスI分子によって提示されることが可能なCD8+T細胞エピトープである。ある特定のさらなる実施形態において、異種エピトープは、組み込まれており、志賀毒素エフェクターポリペプチドが有するアミノ酸残基の総数が、その由来となる野生型志賀毒素ポリペプチド領域が有するものと同じになるように、野生型志賀毒素ポリペプチド領域における同等の数のアミノ酸残基を置き換えている。上記のもののいずれかのある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、ポリペプチドが存在する細胞のサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、及び細胞毒性から選択される少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能を示すことができる。
実施形態セット番号12のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まないことを除いて本細胞標的化分子からなる第5の細胞標的化分子のものよりも、高い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、第5の細胞標的化分子と比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第5の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。
実施形態セット番号12のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、MHCクラスI分子による結合したエピトープの細胞表面上での提示のために、組み込まれた又は挿入された異種CD8+T細胞エピトープを細胞のMHCクラスI提示経路に送達することができる。
実施形態セット番号12のある特定の実施形態に関して、細胞標的化分子は、組み込まれた又は挿入された異種エピトープに起因して、脱免疫化されている。ある特定のさらなる実施形態において、細胞標的化分子は、参照分子、例えば、細胞標的化分子の1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分に存在する1つ又は2つ以上の組み込まれた又は挿入されたエピトープが欠如していることを除いて本細胞標的化分子からなる第6の細胞標的化分子などと比較して、より低い相対的な抗原性及び/又は相対的な免疫原性を示すことができる。
実施形態セット番号12のある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、第5の細胞標的化分子などの細胞内経路決定効率と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。
実施形態セット番号13-(i)組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープ及び(ii)A1断片由来領域のカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、多価細胞標的化分子
本発明は、多価細胞標的化分子であって、それぞれが(i)それぞれが同じ標的生体分子の細胞外部分に特異的に結合することができる、2つ又は3つ以上の結合領域と、(ii)挿入された又は組み込まれた異種エピトープを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(iii)破壊されたフューリン切断モチーフとを含む、多価細胞標的化分子を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)(a)挿入された又は組み込まれた異種エピトープ、(b)カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来領域、及び(c)A1断片由来領域のカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含む。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)(a)挿入された又は組み込まれた異種エピトープ、(b)カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片領域、及び(c)A1断片領域のカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含む。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、異種エピトープは、CD8+T細胞エピトープ、例えば、ヒト免疫系に関するものなどである。ある特定のさらなる実施形態に関して、異種T細胞エピトープは、細胞のMHCクラスI分子によって提示されることが可能である。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、細胞死を引き起こすこと、及び/又は細胞表面上での提示のために、組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープをMHCクラスI分子に送達することのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のうちの少なくとも1つがそのA1断片領域のカルボキシ末端に野生型志賀毒素フューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第2の細胞標的化分子などと同程度か又はそれよりも高い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそのA1断片領域のカルボキシ末端に野生型志賀毒素フューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第2の細胞標的化分子と同程度か又はそれよりも高い細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号13のある特定の実施形態において、挿入された又は組み込まれた異種エピトープは、(i)配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの1~15;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの3~14;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの26~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの27~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの39~48;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの42~48;並びに配列番号1~18のうちのいずれかの53~66、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域、(ii)配列番号1~18のうちのいずれかの94~115;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの141~153;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの140~156;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの179~190;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの179~191;配列番号3の204;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの205;並びに配列番号3及び7~18のうちのいずれかの210~218、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域、並びに(iii)配列番号3及び7~18のうちのいずれかの240~260;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの243~257;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの254~268;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの262~278;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの281~297;並びに配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域からなる、天然に位置する志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域を破壊する。
実施形態セット番号13のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含み、この変異は、志賀毒素のAサブユニット(配列番号1~2及び4~6)の248~251、又は志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3及び7~18)の247~250に天然に位置する領域、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域において、少なくとも1つのアミノ酸残基を変更する。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフの最小のフューリン切断部位中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含む。ある特定のさらなる実施形態において、最小のフューリン切断部位は、コンセンサスアミノ酸配列R/Y-x-x-R及び/又はR-x-x-Rによって表される。
実施形態セット番号13のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域又は志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する分子部分を含む。
実施形態セット番号13のある特定の実施形態において、結合領域は、A1断片領域又は志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。
実施形態セット番号13のある特定の実施形態において、分子部分は、A1断片領域又は志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分は、結合領域を含む。
実施形態セット番号13のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域又は志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する結合領域及び/又は分子部分を含む。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び/又は分子部分の質量は、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上である。
実施形態セット番号13のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性(例えば、細胞毒性及び/又は細胞内経路決定)を保持する限り、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する結合領域を含む。
実施形態セット番号13のある特定の実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性を保持する限り、例えば、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する分子部分などを含む、比較的大きな分子部分内に含まれる。
実施形態セット番号13のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフ中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対するアミノ酸残基の置換を含む。ある特定のさらなる実施形態において、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基の置換は、アラニン、グリシン、プロリン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンからなる群から選択される正電荷を有さないアミノ酸残基によるアルギニン残基の置換である。ある特定の実施形態において、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基の置換は、ヒスチジンでのアルギニン残基の置換である。
実施形態セット番号13のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそれぞれ野生型志賀毒素A1断片並びに/又はそのA1断片領域及び/若しくは志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端における野生型志賀毒素フューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第7の細胞標的化分子の細胞毒性と同程度の細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合、第7の細胞標的化分子によって示される細胞毒性の、0.1倍、0.5倍、又は0.75倍から、1.2倍、1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、4倍、又は5倍の範囲である細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号13のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、脊索動物に導入された場合、第7の細胞標的化分子のインビボ忍容性と比較して、インビボ忍容性の改善を示すことができる。分子部分が毒性ではなく、分子部分が結合領域を含む、実施形態に関して、細胞標的化分子は、脊索動物に導入された場合に、細胞標的化分子のすべての結合領域が、直接的又は間接的のいずれかで、志賀毒素エフェクターポリペプチドの志賀毒素A1断片領域及び/又は志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側の位置で、その志賀毒素エフェクターポリペプチドと会合又は連結されている場合に限り、第7の細胞標的化分子のインビボ忍容性と比較して、インビボ忍容性の改善を示すことができる。
実施形態セット番号13のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、組み込まれた又は挿入された異種エピトープに起因して、脱免疫化されている。ある特定のさらなる実施形態において、細胞標的化分子は、参照分子、例えば、細胞標的化分子に存在する1つ又は2つ以上の組み込まれた又は挿入されたエピトープが欠如していることを除いて本細胞標的化分子からなる第8の細胞標的化分子などと比較して、より低い相対的な抗原性及び/又は相対的な免疫原性を示すことができる。
実施形態セット番号13のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、フューリン切断モチーフの破壊に起因して、脱免疫化されている。ある特定のさらなる実施形態において、細胞標的化分子は、フューリン切断モチーフが野生型であること及び/又はすべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分が野生型志賀毒素A1断片からなることを除いて本細胞標的化分子からなる第9の細胞標的化分子と比較して、より低い相対的な抗原性及び/又は相対的な免疫原性を示すことができる。
実施形態セット番号14-志賀毒素エフェクターポリペプチドをアミノ末端又はその近位に含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープを含む、多価細胞標的化分子
本発明は、多価細胞標的化分子であって、それぞれが(i)それぞれが同じ標的生体分子の細胞外部分に特異的に結合することができる、2つ又は3つ以上の結合領域と、(ii)挿入された又は組み込まれた異種エピトープを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、ポリペプチドのアミノ末端又はその近位にある、多価細胞標的化分子を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)ポリペプチド成分と、(iii)挿入された又は組み込まれた異種エピトープを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含み、ここで、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、結合領域が志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の近位に位置しないように、細胞標的化分子内で物理的に配列又は配向されている。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子内で、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端よりも、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端のより近位に位置している。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、細胞標的化分子のアミノ末端の近位に位置していない。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、異種T細胞エピトープは、CD8+T細胞エピトープ、例えば、ヒト免疫系に関するものなどである。ある特定のさらなる実施形態に関して、異種T細胞エピトープは、細胞のMHCクラスI分子によって提示されることが可能である。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、細胞死を引き起こすこと、及び/又は細胞表面上での提示のために、組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープをMHCクラスI分子に送達することのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。
実施形態セット番号14のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、アミノ末端を有し、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む、第10の細胞標的化分子であって、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域が、第10の細胞標的化分子のアミノ末端又はその近位に配置されていない、第10の細胞標的化分子のものよりも、高い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、第10の細胞標的化分子と比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第10の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。
実施形態セット番号14のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、MHCクラスI分子による結合したエピトープの細胞表面上での提示のために、組み込まれた又は挿入された異種CD8+T細胞エピトープを細胞のMHCクラスI提示経路に送達することができる。
実施形態セット番号14のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、組み込まれた又は挿入された異種エピトープに起因して、脱免疫化されている。ある特定のさらなる実施形態において、細胞標的化分子は、参照分子、例えば、細胞標的化分子に存在する1つ又は2つ以上の組み込まれた又は挿入されたエピトープが欠如していることを除いて本細胞標的化分子からなる第11の細胞標的化分子などと比較して、より低い相対的な抗原性及び/又は相対的な免疫原性を示すことができる。
実施形態セット番号14のある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、第10の細胞標的化分子などの細胞毒性と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。
実施形態セット番号15-破壊されたフューリン切断モチーフを含む脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、多価細胞標的化分子
本発明は、多価細胞標的化分子であって、それぞれが(i)それぞれが同じ標的生体分子の細胞外部分に特異的に結合することができる、2つ又は3つ以上の結合領域と、(ii)破壊されたフューリン切断モチーフを含む脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含む、多価細胞標的化分子を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)(a)カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来領域、(b)A1断片領域のカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフ、並びに(c)少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域を含む、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含む。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、及び/又は細胞死を引き起こすことのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそのA1断片領域のカルボキシ末端に野生型志賀毒素フューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第2の細胞標的化分子などと同程度か又はそれよりも良好な細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号15のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの1~15;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの3~14;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの26~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの27~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの39~48;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの42~48;並びに配列番号1~18のうちのいずれかの53~66;配列番号1~18のうちのいずれかの94~115;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの141~153;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの140~156;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの179~190;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの179~191;配列番号3の204;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの205;並びに配列番号3及び7~18のうちのいずれかの210~218;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの240~260;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの243~257;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの254~268;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの262~278;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの281~297、並びに配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域からなる、天然に位置する志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域における、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する変異を含む。ある特定のさらなる実施形態において、少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域の一部又はすべてとオーバーラップするアミノ酸残基のカルボキシ末端の短縮化である破壊は存在しない。
実施形態セット番号15のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含み、この変異は、志賀毒素のAサブユニット(配列番号1~2及び4~6)の248~251、又は志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3及び7~18)の247~250に天然に位置する領域、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域において、少なくとも1つのアミノ酸残基を変更する。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフの最小のフューリン切断部位中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含む。ある特定のさらなる実施形態において、最小のフューリン切断部位は、コンセンサスアミノ酸配列R/Y-x-x-R及び/又はR-x-x-Rによって表される。
実施形態セット番号15のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する分子部分を含む。
実施形態セット番号15のある特定の実施形態において、結合領域は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。
実施形態セット番号15のある特定の実施形態において、分子部分は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分は、結合領域を含む。
実施形態セット番号15のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する結合領域及び/又は分子部分を含む。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び/又は分子部分の質量は、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上である。
実施形態セット番号15のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性(例えば、細胞毒性及び/又は細胞内経路決定)を保持する限り、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する結合領域を含む。
実施形態セット番号15のある特定の実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性を保持する限り、例えば、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する分子部分などを含む、比較的大きな分子部分内に含まれる。
実施形態セット番号15のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフ中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対するアミノ酸残基の置換を含む。ある特定のさらなる実施形態において、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基の置換は、アラニン、グリシン、プロリン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンからなる群から選択される正電荷を有さないアミノ酸残基によるアルギニン残基の置換である。ある特定の実施形態において、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基の置換は、ヒスチジンでのアルギニン残基の置換である。
実施形態セット番号15のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、細胞に導入された場合、参照分子、例えば、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそれぞれ野生型志賀毒素A1断片及び/又はそのA1断片領域のカルボキシ末端における野生型志賀毒素のフューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第12の細胞標的化分子などの細胞毒性と同程度の細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、第12の細胞標的化分子によって示される細胞毒性の、0.1倍、0.5倍、又は0.75倍から、1.2倍、1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、4倍、又は5倍の範囲である細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号15のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、脊索動物に導入された場合に、第12の細胞標的化分子のインビボ忍容性と比較して、インビボ忍容性の改善を示すことができる。
実施形態セット番号15のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、フューリン切断モチーフの破壊に起因して、脱免疫化されている。ある特定のさらなる実施形態において、細胞標的化分子は、フューリン切断モチーフが野生型であること及び/又はすべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分が野生型志賀毒素A1断片からなることを除いて本細胞標的化分子からなる参照細胞標的化分子、例えば、第12の細胞標的化分子などと比較して、より低い相対的な抗原性及び/又は相対的な免疫原性を示すことができる。
実施形態セット番号15のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、配列番号252~255、259~271、274~278、及び288~748のうちのいずれかに示されるポリペプチドのうちのいずれかから選択される2つのタンパク質を含み、アミノ末端メチオニン残基を含んでいてもよい。
実施形態セット番号16-カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフ及び脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、多価細胞標的化分子
本発明は、多価細胞標的化分子であって、それぞれが(i)それぞれが同じ標的生体分子の細胞外部分に特異的に結合することができる、2つ又は3つ以上の結合領域と、(ii)脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(iii)カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフとを含む、多価細胞標的化分子を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域を含む、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(iii)KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフとを含む。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、及び/又は細胞死を引き起こすことのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。
実施形態セット番号16のある特定の実施形態において、カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号750)、HDEF(配列番号751)、HDEL(配列番号752)、RDEF(配列番号753)、RDEL(配列番号754)、WDEL(配列番号755)、YDEL(配列番号756)、HEEF(配列番号757)、HEEL(配列番号758)、KEEL(配列番号759)、REEL(配列番号760)、KAEL(配列番号761)、KCEL(配列番号762)、KFEL(配列番号763)、KGEL(配列番号764)、KHEL(配列番号765)、KLEL(配列番号766)、KNEL(配列番号767)、KQEL(配列番号768)、KREL(配列番号769)、KSEL(配列番号770)、KVEL(配列番号771)、KWEL(配列番号772)、KYEL(配列番号773)、KEDL(配列番号774)、KIEL(配列番号775)、DKEL(配列番号776)、FDEL(配列番号777)、KDEF(配列番号778)、KKEL(配列番号779)、HADL(配列番号780)、HAEL(配列番号781)、HIEL(配列番号782)、HNEL(配列番号783)、HTEL(配列番号784)、KTEL(配列番号785)、HVEL(配列番号786)、NDEL(配列番号787)、QDEL(配列番号788)、REDL(配列番号789)、RNEL(配列番号790)、RTDL(配列番号791)、RTEL(配列番号792)、SDEL(配列番号793)、TDEL(配列番号794)、SKEL(配列番号795)、STEL(配列番号796)、及びEDEL(配列番号797)からなる群から選択される。
実施形態セット番号16のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの1~15;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの3~14;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの26~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの27~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの39~48;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの42~48;並びに配列番号1~18のうちのいずれかの53~66;配列番号1~18のうちのいずれかの94~115;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの141~153;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの140~156;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの179~190;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの179~191;配列番号3の204;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの205;並びに配列番号3及び7~18のうちのいずれかの210~218;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの240~260;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの243~257;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの254~268;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの262~278;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの281~297、並びに配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域からなる、天然に位置する志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域における、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する変異を含む。ある特定のさらなる実施形態において、少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域の一部又はすべてとオーバーラップするアミノ酸残基のカルボキシ末端の短縮化である破壊は存在しない。
実施形態セット番号16のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まないことを除いて本細胞標的化分子からなる第13の細胞標的化分子のものよりも、高い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、第13の細胞標的化分子と比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第13の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。
実施形態セット番号16のある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合、参照分子、例えば、第13の細胞標的化分子などの細胞毒性と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。
実施形態セット番号17-細胞標的化分子のアミノ末端又はその近位に脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、多価細胞標的化分子
本発明は、多価細胞標的化分子であって、それぞれが(i)それぞれが同じ標的生体分子の細胞外部分に特異的に結合することができる、2つ又は3つ以上の結合領域と、(ii)脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、アミノ末端又はその近位にある、多価細胞標的化分子を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)ポリペプチド成分と、(iii)少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域を含む、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、結合領域が志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の近位に位置しないように、細胞標的化分子内で物理的に配列又は配向されている。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子内で、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端よりも、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端のより近位に位置している。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、細胞標的化分子のアミノ末端の近位に位置していない。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、及び/又は細胞死を引き起こすことのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。
実施形態セット番号17のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの1~15;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの3~14;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの26~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの27~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの39~48;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの42~48;並びに配列番号1~18のうちのいずれかの53~66;配列番号1~18のうちのいずれかの94~115;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの141~153;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの140~156;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの179~190;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの179~191;配列番号3の204;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの205;並びに配列番号3及び7~18のうちのいずれかの210~218;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの240~260;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの243~257;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの254~268;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの262~278;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの281~297、並びに配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域からなる、天然に位置する志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域における、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する変異を含む。ある特定のさらなる実施形態において、少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域の一部又はすべてとオーバーラップするアミノ酸残基のカルボキシ末端の短縮化である破壊は存在しない。
実施形態セット番号17のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、アミノ末端を有し、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む、第14の細胞標的化分子であって、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域が、第14の細胞標的化分子のアミノ末端又はその近位に配置されていない、第14の細胞標的化分子のものよりも、高い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、第14の細胞標的化分子と比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第14の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。
実施形態セット番号17のある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合、参照分子、例えば、第14の細胞標的化分子などの細胞毒性と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。
実施形態セット番号17のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、配列番号252~255、259~271、274~278、及び288~748のうちのいずれかに示されるポリペプチドのうちのいずれかから選択される2つのタンパク質を含み、アミノ末端メチオニン残基を含んでいてもよい。
実施形態セット番号18-カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフ及び破壊されたフューリン切断モチーフを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、多価細胞標的化分子
本発明は、多価細胞標的化分子であって、それぞれが(i)それぞれが同じ標的生体分子の細胞外部分に特異的に結合することができる、2つ又は3つ以上の結合領域と、(ii)破壊されたフューリン切断モチーフを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(iii)カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフとを含む、多価細胞標的化分子を提供する。本発明は、細胞標的化分子であって、それぞれが(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)破壊されたフューリン切断モチーフを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(iii)KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフとを含む、細胞標的化分子を提供する。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、及び/又は細胞死を引き起こすことのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそのA1断片領域のカルボキシ末端に野生型志賀毒素フューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第2の細胞標的化分子などと同程度か又はそれよりも良好な細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号18のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含み、この変異は、志賀毒素のAサブユニット(配列番号1~2及び4~6)の248~251、又は志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3及び7~18)の247~250に天然に位置する領域、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域において、少なくとも1つのアミノ酸残基を変更する。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフの最小のフューリン切断部位中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含む。ある特定のさらなる実施形態において、最小のフューリン切断部位は、コンセンサスアミノ酸配列R/Y-x-x-R及び/又はR-x-x-Rによって表される。
実施形態セット番号18のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する分子部分を含む。
実施形態セット番号18のある特定の実施形態において、結合領域は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。
実施形態セット番号18のある特定の実施形態において、分子部分は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分は、結合領域を含む。
実施形態セット番号18のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する結合領域及び/又は分子部分を含む。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び/又は分子部分の質量は、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上である。
実施形態セット番号18のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性(例えば、細胞毒性及び/又は細胞内経路決定)を保持する限り、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する結合領域を含む。
実施形態セット番号18のある特定の実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性を保持する限り、例えば、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する分子部分などを含む、比較的大きな分子部分内に含まれる。
実施形態セット番号18のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフ中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対するアミノ酸残基の置換を含む。ある特定のさらなる実施形態において、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基の置換は、アラニン、グリシン、プロリン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンからなる群から選択される正電荷を有さないアミノ酸残基によるアルギニン残基の置換である。ある特定の実施形態において、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基の置換は、ヒスチジンでのアルギニン残基の置換である。
実施形態セット番号18のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まないことを除いて本細胞標的化分子からなる第15の細胞標的化分子のものよりも、高い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、第15の細胞標的化分子と比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第15の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。
実施形態セット番号18のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、脊索動物に導入された場合に、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそれぞれ野生型志賀毒素A1断片及び/又はそのA1断片領域のカルボキシ末端における野生型志賀毒素フューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第16の細胞標的化分子のインビボ忍容性と比較して、インビボ忍容性の改善を示すことができる。
実施形態セット番号18のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、フューリン切断モチーフの破壊に起因して、脱免疫化されている。ある特定のさらなる実施形態において、細胞標的化分子は、フューリン切断モチーフが野生型であること及び/又はすべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分が野生型志賀毒素A1断片からなることを除いて本細胞標的化分子からなる参照細胞標的化分子、例えば、第16の細胞標的化分子などと比較して、より低い相対的な抗原性及び/又は相対的な免疫原性を示すことができる。
実施形態セット番号18のある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合、参照分子、例えば、第15の細胞標的化分子などの細胞毒性と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。
実施形態セット番号19-細胞標的化分子のアミノ末端又はその近位にフューリン切断耐性志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、多価細胞標的化分子
本発明は、多価細胞標的化分子であって、それぞれが(i)それぞれが同じ標的生体分子の細胞外部分に特異的に結合することができる、2つ又は3つ以上の結合領域と、(ii)その志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端が、細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端及び/又はその近位にある、多価細胞標的化分子を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)アミノ末端を有する志賀毒素エフェクターポリペプチド及びカルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来領域と、(iii)A1断片領域のカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフとを含み、結合領域は、志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、細胞標的化分子のアミノ末端の近位に位置していない。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、結合領域が志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の近位に位置しないように、細胞標的化分子内で物理的に配列又は配向されている。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子内で、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端よりも、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端のより近位に位置している。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、細胞標的化分子のアミノ末端の近位に位置していない。ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、及び/又は細胞死を引き起こすことのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそのA1断片領域のカルボキシ末端に野生型志賀毒素フューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第17の細胞標的化分子などと同程度か又はそれよりも良好な細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号19のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含み、この変異は、志賀毒素のAサブユニット(配列番号1~2及び4~6)の248~251、又は志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3及び7~18)の247~250に天然に位置する領域、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域において、少なくとも1つのアミノ酸残基を変更する。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフの最小のフューリン切断部位中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含む。ある特定のさらなる実施形態において、最小のフューリン切断部位は、コンセンサスアミノ酸配列R/Y-x-x-R及び/又はR-x-x-Rによって表される。
実施形態セット番号19のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する分子部分を含む。
実施形態セット番号19のある特定の実施形態において、結合領域は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。
実施形態セット番号19のある特定の実施形態において、分子部分は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分は、結合領域を含む。
実施形態セット番号19のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する結合領域及び/又は分子部分を含む。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び/又は分子部分の質量は、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上である。
実施形態セット番号19のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性(例えば、細胞毒性及び/又は細胞内経路決定)を保持する限り、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する結合領域を含む。
実施形態セット番号19のある特定の実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性を保持する限り、例えば、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する分子部分などを含む、比較的大きな分子部分内に含まれる。
実施形態セット番号19のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフ中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対するアミノ酸残基の置換を含む。ある特定のさらなる実施形態において、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基の置換は、アラニン、グリシン、プロリン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンからなる群から選択される正電荷を有さないアミノ酸残基によるアルギニン残基の置換である。ある特定の実施形態において、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基の置換は、ヒスチジンでのアルギニン残基の置換である。
実施形態セット番号19のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、アミノ末端を有し、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む、第18の細胞標的化分子であって、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域が、第18の細胞標的化分子のアミノ末端又はその近位に配置されていない、第18の細胞標的化分子のものよりも、高い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、第18の細胞標的化分子と比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第18の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。
実施形態セット番号19のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、脊索動物に導入された場合に、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそれぞれ野生型志賀毒素A1断片及び/又はそのA1断片領域のカルボキシ末端における野生型志賀毒素のフューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第19の細胞標的化分子のインビボ忍容性と比較して、インビボ忍容性の改善を示すことができる。
実施形態セット番号19のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、フューリン切断モチーフの破壊に起因して、脱免疫化されている。ある特定のさらなる実施形態において、細胞標的化分子は、フューリン切断モチーフが野生型であること及び/又はすべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分が野生型志賀毒素A1断片からなることを除いて本細胞標的化分子からなる参照細胞標的化分子、例えば、第19の細胞標的化分子などと比較して、より低い相対的な抗原性及び/又は相対的な免疫原性を示すことができる。
実施形態セット番号19のある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、第19の細胞標的化分子などの細胞毒性と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。
実施形態セット番号19のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、配列番号252~255、259~271、274~278、及び288~748のうちのいずれかに示されるポリペプチドのうちのいずれかから選択される2つのタンパク質を含み、アミノ末端メチオニン残基を含んでいてもよい。
実施形態セット番号20-カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフ及び細胞標的化分子のアミノ末端又はその近位における志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、多価細胞標的化分子
本発明は、多価細胞標的化分子であって、それぞれが(i)それぞれが同じ標的生体分子の細胞外部分に特異的に結合することができる、2つ又は3つ以上の結合領域と、(ii)カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフと、(iii)志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端が、細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端及び/又はその近位にある、多価細胞標的化分子を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、(i)細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、(ii)KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフと、(iii)ポリペプチド成分と、(iv)志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端は、細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端及び/又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、結合領域が志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の近位に位置しないように、細胞標的化分子内で物理的に配列又は配向されている。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子内で、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端よりも、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端のより近位に位置している。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、細胞標的化分子のアミノ末端の近位に位置していない。
ある特定のさらなる実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能、例えば、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体及び/又はサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、並びに/又は細胞毒性を引き起こすことなどを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に入ること、リボソーム機能を阻害すること、細胞分裂停止を引き起こすこと、及び/又は細胞死を引き起こすことのうちの1つ又は2つ以上を行うことができる。
実施形態セット番号20のある特定の実施形態において、カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号750)、HDEF(配列番号751)、HDEL(配列番号752)、RDEF(配列番号753)、RDEL(配列番号754)、WDEL(配列番号755)、YDEL(配列番号756)、HEEF(配列番号757)、HEEL(配列番号758)、KEEL(配列番号759)、REEL(配列番号760)、KAEL(配列番号761)、KCEL(配列番号762)、KFEL(配列番号763)、KGEL(配列番号764)、KHEL(配列番号765)、KLEL(配列番号766)、KNEL(配列番号767)、KQEL(配列番号768)、KREL(配列番号769)、KSEL(配列番号770)、KVEL(配列番号771)、KWEL(配列番号772)、KYEL(配列番号773)、KEDL(配列番号774)、KIEL(配列番号775)、DKEL(配列番号776)、FDEL(配列番号777)、KDEF(配列番号778)、KKEL(配列番号779)、HADL(配列番号780)、HAEL(配列番号781)、HIEL(配列番号782)、HNEL(配列番号783)、HTEL(配列番号784)、KTEL(配列番号785)、HVEL(配列番号786)、NDEL(配列番号787)、QDEL(配列番号788)、REDL(配列番号789)、RNEL(配列番号790)、RTDL(配列番号791)、RTEL(配列番号792)、SDEL(配列番号793)、TDEL(配列番号794)、SKEL(配列番号795)、STEL(配列番号796)、及びEDEL(配列番号797)からなる群から選択される。
実施形態セット番号20のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、アミノ末端を有し、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む、第20の細胞標的化分子であって、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域が、第20の細胞標的化分子のアミノ末端若しくはその近位に配置されていない、第20の細胞標的化分子のものよりも高い、並びに/又はKDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まないことを除いて本細胞標的化分子からなる第21の細胞標的化分子のものよりも高い、細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、第20の細胞標的化分子は、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まない。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、参照分子、例えば、第20及び/又は第21の細胞標的化分子などと比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第20及び/又は第21の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。
実施形態セット番号20のある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合、参照分子、例えば、第20及び/又は第21の細胞標的化分子などの細胞毒性と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。
実施形態セット番号1~番号20のさらなる実施形態
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴは、直接的又は間接的のいずれかで、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は結合領域に融合されている。ある特定のさらなる実施形態において、細胞標的化分子は、結合領域、志賀毒素エフェクターポリペプチド、及び異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを含む一本鎖ポリペプチドを含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、結合領域は、2つ又は3つ以上のポリペプチド鎖を含み、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴは、直接的又は間接的のいずれかで、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含むポリペプチド及び結合領域の2つ又は3つ以上のポリペプチド鎖のうちの1つに融合されている。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞標的化分子内で志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は結合領域に対してカルボキシ末端側に位置する異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを含む。ある特定のさらなる実施形態において、細胞標的化分子は、細胞標的化分子内で志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は結合領域に対してカルボキシ末端側に位置する2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ以上の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、カルボキシ末端の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態に関して、結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している標的細胞に細胞標的化分子を投与することにより、細胞標的化分子は、CD8+免疫細胞による標的細胞の細胞間結合を引き起こすことができる。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子を、結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している標的細胞に投与することにより、細胞標的化分子は、CD8+免疫細胞による標的細胞の細胞間結合を引き起こすことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している標的細胞に本発明の細胞標的化分子を投与することにより、細胞標的化分子は、標的細胞の死を引き起こすことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、そのメンバーが結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している第1の細胞集団、及びそのメンバーが結合領域のいずれの細胞外標的生体分子とも物理的に結合していない第2の細胞集団に本発明の細胞標的化分子を投与することにより、前記第1の細胞集団のメンバーに対する細胞標的化分子の細胞毒性効果が、前記第2の細胞集団のメンバーに対する細胞毒性効果に比べて少なくとも3倍大きい。ある特定のさらなる実施形態において、細胞標的化分子は、配列番号252~255、259~278、及び288~748のいずれかのポリペプチドを含むか又はそれから本質的になる。ある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素エフェクターポリペプチドの酵素活性を変化させる、志賀毒素ファミリーのメンバーの天然に存在するAサブユニットに対する変異を含み、この変異は、少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失、挿入、又は置換から選択される。ある特定のさらなる実施形態において、変異は、毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性を低減又は除去する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失、挿入、又は置換から選択される。ある特定の実施形態において、結合領域は、CD8+エピトープ-ペプチドが結合領域に対して自家であるか異種であるかに関係なく、異種CD8+T細胞エピトープカーゴを含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、直接的又は間接的のいずれかで、例えば、熟練した作業者に公知のリンカーを介するなどにより、結合領域に融合されている。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する分子部分を含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来領域を有し、A1断片領域のカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフをさらに含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、(i)野生型志賀毒素A1断片若しくは野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドと同程度の触媒活性レベル、(ii)半数阻害濃度(IC50)値が10,000ピコモル以下のリボソーム阻害活性、及び/又は(iii)有意なレベルの志賀毒素の触媒活性を示すことができる。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合、半数阻害濃度(CD50)値が300nM以下の細胞毒性を示すことができる、及び/又は有意なレベルの志賀毒素の細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、低い細胞毒性効力を表す(すなわちある特定の陽性標的細胞型に導入された場合、1000nM、500nM、100nM、75nM、又は50nMの細胞標的化分子濃度で細胞集団の1%細胞死より大きい細胞毒性を示すことができない)。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子又はそのポリペプチド成分は、KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフを含む。ある特定のさらなる実施形態に関して、カルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号750)、HDEF(配列番号751)、HDEL(配列番号752)、RDEF(配列番号753)、RDEL(配列番号754)、WDEL(配列番号755)、YDEL(配列番号756)、HEEF(配列番号757)、HEEL(配列番号758)、KEEL(配列番号759)、REEL(配列番号760)、KAEL(配列番号761)、KCEL(配列番号762)、KFEL(配列番号763)、KGEL(配列番号764)、KHEL(配列番号765)、KLEL(配列番号766)、KNEL(配列番号767)、KQEL(配列番号768)、KREL(配列番号769)、KSEL(配列番号770)、KVEL(配列番号771)、KWEL(配列番号772)、KYEL(配列番号773)、KEDL(配列番号774)、KIEL(配列番号775)、DKEL(配列番号776)、FDEL(配列番号777)、KDEF(配列番号778)、KKEL(配列番号779)、HADL(配列番号780)、HAEL(配列番号781)、HIEL(配列番号782)、HNEL(配列番号783)、HTEL(配列番号784)、KTEL(配列番号785)、HVEL(配列番号786)、NDEL(配列番号787)、QDEL(配列番号788)、REDL(配列番号789)、RNEL(配列番号790)、RTDL(配列番号791)、RTEL(配列番号792)、SDEL(配列番号793)、TDEL(配列番号794)、SKEL(配列番号795)、STEL(配列番号796)、及びEDEL(配列番号797)からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まないことを除いて本細胞標的化分子からなる第22の細胞標的化分子などの細胞毒性より大きい細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、参照分子、例えば、第22の細胞標的化分子などと比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第22の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの挿入された又は組み込まれた異種エピトープをさらに含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つ、2つ、又は3つの破壊された内在性B細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ領域をさらに含む。ある特定のさらなる実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つ、2つ、又は3つの内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域の破壊を含む。ある特定のさらなる実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの挿入された又は組み込まれた異種エピトープとオーバーラップしない少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ領域をさらに含む。
実施形態番号1~番号20のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端は、細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端及び/又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、志賀毒素エフェクターポリペプチドと比べて、細胞標的化分子のアミノ末端の近位に位置していない。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、結合領域が志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の近位に位置しないように、細胞標的化分子内で物理的に配列又は配向されている。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子内で、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端よりも、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端のより近位に位置している。ある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞毒性ではなく、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、アミノ末端を有し、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、第23の細胞標的化分子であって、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、第3の細胞標的化分子のアミノ末端又はその近位に配置されていない、第23の細胞標的化分子などの細胞毒性と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、より良好に最適化された細胞毒性効力を有する細胞毒性、例えば、第23の細胞標的化分子の細胞毒性と比較して、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれよりも高い細胞毒性などを示す。ある特定のさらなる実施形態に関して、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によってアッセイした場合、第2の標的陽性細胞集団に対する第23の細胞標的化分子の細胞毒性よりも、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも高い。ある特定のさらなる実施形態において、第23の細胞標的化分子は、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まない。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの1~15;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの3~14;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの26~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの27~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの39~48;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの42~48;並びに配列番号1~18のうちのいずれかの53~66;配列番号1~18のうちのいずれかの94~115;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの141~153;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの140~156;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの179~190;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの179~191;配列番号3の204;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの205;並びに配列番号3及び7~18のうちのいずれかの210~218;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの240~260;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの243~257;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの254~268;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの262~278;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの281~297、並びに配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域からなる、天然に位置する志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域における、破壊をさらに含む。ある特定のさらなる実施形態において、少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域の一部又はすべてとオーバーラップするアミノ酸残基のカルボキシ末端の短縮化である破壊は存在しない。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、天然に位置する志賀毒素Aサブユニットのアミノ酸残基の群:L49、D197、D198、R204、及びR205から選択されるB細胞免疫原性アミノ酸残基に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する変異をさらに含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープは、(i)配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの1~15;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの3~14;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの26~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの27~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの39~48;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの42~48;並びに配列番号1~18のうちのいずれかの53~66、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域、(ii)配列番号1~18のうちのいずれかの94~115;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの141~153;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの140~156;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの179~190;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの179~191;配列番号3の204;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの205;並びに配列番号3及び7~18のうちのいずれかの210~218、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域、並びに(iii)配列番号3及び7~18のうちのいずれかの240~260;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの243~257;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの254~268;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの262~278;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの281~297;並びに配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域からなる、天然に位置する志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域を破壊する。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの1~15;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの3~14;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの26~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの27~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの39~48;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの42~48;並びに配列番号1~18のうちのいずれかの53~66、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域(ここで、少なくとも1つの破壊されたエピトープ領域の一部又はすべてとオーバーラップする配列のアミノ末端短縮化である破壊はない)、(ii)配列番号1~18のうちのいずれかの94~115;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの141~153;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの140~156;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの179~190;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの179~191;配列番号3の204;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの205;並びに配列番号3及び7~18のうちのいずれかの210~218、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域(ここで、少なくとも1つの破壊されたエピトープ領域の一部若しくはすべてとオーバーラップする配列のアミノ末端短縮化である破壊はない)からなる、天然に位置する志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域における、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する変異を含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(ii)配列番号1~18のうちのいずれかの94~115;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの141~153;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの140~156;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの179~190;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの179~191;配列番号3の204;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの205;並びに配列番号3及び7~18のうちのいずれかの210~218、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域からなる、天然に位置する志賀毒素Aサブユニットの群から選択される少なくとも1つの内在性エピトープ領域の破壊を含む。
実施形態セット番号2~番号11のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、異種MHCクラスI制限T細胞エピトープを含まない。MHCクラスI制限T細胞エピトープは、当業界において公知であるか、又は熟練した作業者であれば予測が可能である。異種という用語は、野生型志賀毒素Aサブユニット、例えば、所望の志賀毒素エフェクターポリペプチドに最も密接に関連する野生型志賀毒素Aサブユニットなどに天然に存在しない、MHCクラスI制限T細胞エピトープを指す。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上の内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域の破壊を含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、1つ又は2つ以上の破壊は、野生型志賀毒素Aサブユニットに対するアミノ酸残基の置換を含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、1つ又は2つ以上の内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域は、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する複数のアミノ酸残基の置換を含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つの破壊は、内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域における、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する複数のアミノ酸残基の置換を含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、少なくとも1つの破壊は、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上のアミノ酸残基の置換を含み、少なくとも1つの置換は、配列番号1若しくは配列番号2の1;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の4;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の6;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の8;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の9;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の11;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の12;配列番号1若しくは配列番号2の33;配列番号1若しくは配列番号2の43;配列番号1若しくは配列番号2の44;配列番号1若しくは配列番号2の45;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の46;配列番号1若しくは配列番号2の47;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の48;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の49;配列番号1若しくは配列番号2の50;配列番号1若しくは配列番号2の51;配列番号1若しくは配列番号2の53;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の54;配列番号1若しくは配列番号2の55;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の56;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の57;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の58;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の59;配列番号1若しくは配列番号2の60;配列番号1若しくは配列番号2の61;配列番号1若しくは配列番号2の62;配列番号1若しくは配列番号2の84;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の88;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の94;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の96;配列番号1若しくは配列番号2の104;配列番号1若しくは配列番号2の105;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の107;配列番号1若しくは配列番号2の108;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の109;配列番号1若しくは配列番号2の110;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の111;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の112;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の141;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の147;配列番号1若しくは配列番号2の154;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の179;配列番号1若しくは配列番号2の180;配列番号1若しくは配列番号2の181;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の183;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の184;配列番号1若しくは配列番号2の185;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の186;配列番号1若しくは配列番号2の187;配列番号1若しくは配列番号2の188;配列番号1若しくは配列番号2の189;配列番号3の197;配列番号1若しくは配列番号2の198;配列番号3の204;配列番号1若しくは配列番号2の205;配列番号1若しくは配列番号2の247;配列番号3の247;配列番号1若しくは配列番号2の248;配列番号3の250;配列番号1若しくは配列番号2の251;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の264;配列番号1若しくは配列番号2の265;及び配列番号1若しくは配列番号2の286;又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価なアミノ酸残基からなる群から選択される、天然に位置する志賀毒素Aサブユニットのアミノ酸残基で生じていてもよい。ある特定のさらなる実施形態において、少なくとも2つの破壊は、それぞれ、配列番号1若しくは配列番号2の1;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の4;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の8;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の9;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の11;配列番号1若しくは配列番号2の33;配列番号1若しくは配列番号2の43;配列番号1若しくは配列番号2の45;配列番号1若しくは配列番号2の47;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の48;配列番号1若しくは配列番号2の49;配列番号1若しくは配列番号2の53;配列番号1若しくは配列番号2の55;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の58;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の59;配列番号1若しくは配列番号2の60;配列番号1若しくは配列番号2の61;配列番号1若しくは配列番号2の62;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の94;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の96;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の109;配列番号1若しくは配列番号2の110;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の112;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の147;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の179;配列番号1若しくは配列番号2の180;配列番号1若しくは配列番号2の181;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の183;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の184;配列番号1若しくは配列番号2の185;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の186;配列番号1若しくは配列番号2の187;配列番号1若しくは配列番号2の188;配列番号1若しくは配列番号2の189;配列番号3の204;配列番号1若しくは配列番号2の205;配列番号1若しくは配列番号2の247;配列番号3の247;配列番号3の250;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の264;配列番号1若しくは配列番号2の265;及び配列番号1若しくは配列番号2の286;又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価なアミノ酸残基からなる群から選択される、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する少なくとも1つのアミノ酸残基の置換を含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの1~15;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの3~14;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの26~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの27~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの39~48;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの42~48;及び配列番号1~18のうちのいずれかの53~66、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域(ここで、少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域のうちの一部又はすべてとオーバーラップするアミノ酸残基のアミノ末端短縮化である破壊はない)、(ii)配列番号1~18のうちのいずれかの94~115;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの141~153;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの140~156;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの179~190;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの179~191;配列番号3の204;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの205;及び配列番号3及び7~18のうちのいずれかの210~218、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域(ここで、少なくとも1つの破壊された内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域のうちの一部又はすべてとオーバーラップするアミノ酸残基のカルボキシ末端短縮化である破壊はない)からなる群から選択される少なくとも3つの内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域の破壊を含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも2つの内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域の破壊を含み、ここで、それぞれの破壊は、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の置換を含み、内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域は、配列番号3及び7~18うちのいずれかの3~14;配列番号3及び7~18うちのいずれかの26~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの27~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの39~48;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの42~48;配列番号1~18のうちのいずれかの53~66;又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその派生物における等価な領域からなる、天然に位置する志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープは、本明細書に記載されるいずれの内在性B細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ領域も破壊しない。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、少なくとも1つの破壊は、DからA、DからG、DからV、DからL、DからI、DからF、DからS、DからQ、DからM、DからR、EからA、EからG、EからV、EからL、EからI、EからF、EからS、EからQ、EからN、EからD、EからM、EからR、FからA、FからG、FからV、FからL、FからI、GからA、GからP、HからA、HからG、HからV、HからL、HからI、HからF、HからM、IからA、IからV、IからG、IからC、KからA、KからG、KからV、KからL、KからI、KからM、KからH、LからA、LからV、LからG、LからC、NからA、NからG、NからV、NからL、NからI、NからF、PからA、PからG、PからF、RからA、RからG、RからV、RからL、RからI、RからF、RからM、RからQ、RからS、RからK、RからH、SからA、SからG、SからV、SからL、SからI、SからF、SからM、TからA、TからG、TからV、TからL、TからI、TからF、TからM、TからS、VからA、VからG、YからA、YからG、YからV、YからL、YからI、YからF、YからM、及びYからTからなる群から選択される、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の置換を含む。ある特定のさらなる実施形態において、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の置換は、DからA、DからG、DからV、DからL、DからI、DからF、DからS、DからQ、EからA、EからG、EからV、EからL、EからI、EからF、EからS、EからQ、EからN、EからD、EからM、EからR、GからA、HからA、HからG、HからV、HからL、HからI、HからF、HからM、KからA、KからG、KからV、KからL、KからI、KからM、KからH、LからA、LからG、NからA、NからG、NからV、NからL、NからI、NからF、PからA、PからG、PからF、RからA、RからG、RからV、RからL、RからI、RからF、RからM、RからQ、RからS、RからK、RからH、SからA、SからG、SからV、SからL、SからI、SからF、SからM、TからA、TからG、TからV、TからL、TからI、TからF、TからM、TからS、YからA、YからG、YからV、YからL、YからI、YからF、及びYからMからなる群から選択される。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、破壊のうちの少なくとも1つは、K1からA、G、V、L、I、F、M、及びH;T4からA、G、V、L、I、F、M、及びS;D6からA、G、V、L、I、F、S、Q、及びR;S8からA、G、V、I、L、F、及びM;T9からA、G、V、I、L、F、M、及びS;S9からA、G、V、L、I、F、及びM;K11からA、G、V、L、I、F、M、及びH;T12からA、G、V、I、L、F、M、S、及びK;S12からA、G、V、I、L、F、及びM;S33からA、G、V、L、I、F、M、及びC;S43からA、G、V、L、I、F、及びM;G44からA又はL;S45からA、G、V、L、I、F、及びM;T45からA、G、V、L、I、F、及びM;G46からA及びP;D47からA、G、V、L、I、F、S、M、及びQ;N48からA、G、V、L、M、及びF;L49からA、V、C、及びG;Y49からA、G、V、L、I、F、M、及びT;F50からA、G、V、L、I、及びT;A51;D53からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;V54からA、G、I、及びL;R55からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;G56からA及びP;I57からA、G、V、及びM;L57からA、V、C、G、M、及びF;D58からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;P59からA、G、及びF;E60からA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、T、及びR;E61からA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、及びR;G62からA;R84からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;V88からA及びG;I88からA、V、C、及びG;D94からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;S96からA、G、V、I、L、F、及びM;T104からA、G、V、L、I、F、M;及びN;A105からL;T107からA、G、V、L、I、F、M、及びP;S107からA、G、V、L、I、F、M、及びP;L108からA、V、C、及びG;S109からA、G、V、I、L、F、及びM;T109からA、G、V、I、L、F、M、及びS;G110からA;S112からA、G、V、L、I、F、及びM;D111からA、G、V、L、I、F、S、Q、及びT;S112からA、G、V、L、I、F、及びM;D141からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;G147からA;V154からA及びG;R179からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;T180からA、G、V、L、I、F、M、及びS;T181からA、G、V、L、I、F、M、及びS;D183からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;D184からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;L185からA、G、V及びC;S186からA、G、V、I、L、F、及びM;G187からA;R188からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;S189からA、G、V、I、L、F、及びM;D197からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;D198からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;R204からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R205からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;S247からA、G、V、I、L、F、及びM;Y247からA、G、V、L、I、F、及びM;R248からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R250からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R251からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;D264からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;G264からA;並びにT286からA、G、V、L、I、F、M、及びSからなる群から選択される、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の置換を含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、脊索動物に導入された場合に、参照分子、例えば、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそれぞれ野生型志賀毒素A1断片及び/又はそのA1断片領域のカルボキシ末端における野生型志賀毒素フューリン切断部位を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第24の細胞標的化分子と比較して、インビボ忍容性及び/又は安定性の改善を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、細胞毒性ではなく、分子部分が、細胞毒性である。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、直接的又は間接的のいずれかで、一緒に連結されている。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、結合領域は、少なくとも1つのペプチド及び/又はポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、免疫グロブリン型の結合領域であるか又はそれを含む。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、自律的なVHドメイン、単一ドメイン抗体断片(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科動物由来の重鎖抗体ドメイン(VHH又はVHドメイン断片)、軟骨魚類由来の重鎖抗体ドメイン(VHH又はVHドメイン断片)、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変断片(scFv)、抗体可変断片(Fv)、相補性決定領域3断片(CDR3)、拘束FR3-CDR3-FR4ポリペプチド(FR3-CDR3-FR4)、Fd断片、小モジュラー免疫医薬(SMIP)ドメイン、抗原結合断片(Fab)、アルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP)、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)、テネイシンIII型ドメイン(TNfn3)、アンキリン反復モチーフドメイン、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR-A)、リポカリン(アンチカリン)、クニッツドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-B結晶由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド(アフィチン)、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、改変された抗体模倣体、並びに結合機能を保持する前述のもののいずれかのあらゆる遺伝子操作された対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、(i)野生型志賀毒素A1断片又は野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドと同程度の触媒活性レベル、(ii)半数阻害濃度(IC50)値が10,000ピコモル以下のリボソーム阻害活性、及び/又は(iii)有意なレベルの志賀毒素の触媒活性を示すことができる。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子及び/又はその志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素A1断片又は野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む参照細胞標的化分子と同程度の細胞内経路決定効率を示すことができ、並びに/又は細胞のエンドソーム開始位置から小胞体及び/又はサイトゾルへの有意なレベルの細胞内経路決定活性を示すことができる。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子を、細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞に投与することにより、細胞標的化分子は、その細胞の死を引き起こすことができる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子を、細胞外標的生体分子の存在又はレベルが異なる細胞型の2つの異なる集団に投与することにより、細胞標的化分子は、細胞毒性細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞型に対して、細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合していない細胞型に対するCD50の少なくとも3倍又はそれ未満のCD50で細胞死を引き起こすことができる。ある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子を、メンバーが細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子に物理的に結合している第1の細胞集団、及びメンバーが結合領域のいずれの細胞外標的生体分子にも物理的に結合していない第2の細胞集団に投与することにより、前記第1の細胞集団のメンバーに対する細胞標的化分子の細胞毒性効果が、前記第2の細胞集団のメンバーに対する細胞毒性効果と比べて、少なくとも3倍高い。ある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子を、メンバーが有意な量の細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子に物理的に結合している第1の細胞集団、及びメンバーが有意な量の結合領域のいずれの細胞外標的生体分子にも物理的に結合していない第2の細胞集団に投与することにより、前記第1の細胞集団のメンバーに対する細胞標的化分子の細胞毒性効果が、前記第2の細胞集団のメンバーに対する細胞毒性効果と比べて、少なくとも3倍高い。ある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子を、第1の標的生体分子陽性細胞集団、及びメンバーが細胞表面上に有意な量の細胞標的化分子の結合領域の標的生体分子を発現しない第2の細胞集団に投与したとき、第1の細胞集団のメンバーに対する細胞標的化分子の細胞毒性効果は、第2の細胞集団のメンバーに対する細胞毒性効果と比べて、少なくとも3倍高い。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、半数阻害濃度(CD50)値が300nM以下の細胞毒性を示すことができる、及び/又は有意なレベルの志賀毒素の細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、MHCクラスI分子による結合したエピトープの細胞表面上での提示のために、組み込まれた又は挿入された異種CD8+T細胞エピトープを細胞のMHCクラスI提示経路に送達することができる。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端と会合した分子部分を含む。ある特定の実施形態において、分子部分は、結合領域を含むか又はそれからなる。ある特定の実施形態において、分子部分は、少なくとも1つのアミノ酸を含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、分子部分の少なくとも1つのアミノ酸残基に連結されている。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、融合されて、連続的なポリペプチドを形成している。
実施形態セット番号1~20のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端と会合した細胞毒性分子部分をさらに含む。ある特定の実施形態に関して、細胞毒性分子部分は、細胞毒性剤、例えば、熟練した作業者に公知の及び/又は本明細書に記載される、低分子化学療法剤、抗新生物剤、細胞毒性抗生物質、アルキル化剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、及び/又はチューブリン阻害剤などである。ある特定のさらなる実施形態に関して、細胞毒性分子部分は、10,000pM未満、5,000pM未満、1,000pM未満、500pM未満、又は200pM未満の濃度で細胞毒性である。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、結合領域は、CD20、CD22、CD40、CD74、CD79、CD25、CD30、HER2/neu/ErbB2、EGFR、EpCAM、EphB2、前立腺特異的膜抗原、Cripto、CDCP1、エンドグリン、線維芽細胞活性化タンパク質、ルイス-Y、CD19、CD21、CS1/SLAMF7、CD33、CD52、CD133、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、チロシン-プロテインキナーゼ膜貫通型受容体(ROR1又はNTRKR1)、炭酸脱水酵素IX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、ガングリオシドルイス-Y2、VEGFR、アルファVベータ3、アルファ5ベータ1、ErbB1/EGFR、Erb3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANK、FAP、テネイシン、CD64、メソテリン、BRCA1、MART-1/メランA、gp100、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、NY-ESO-1、CDK-4、ベータ-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE6、SART-1、PRAME、癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ、EphA2、HER3/ErbB-3、MUC1、MART-1/メランA、gp100、チロシナーゼ関連抗原、HPV-E7、エプスタイン-バーウイルス抗原、Bcr-Abl、アルファ-フェトプロテイン抗原、17-A1、膀胱腫瘍抗原、SAIL、CD38、CD15、CD23、CD45(タンパク質チロシンホスファターゼ受容体C型)、CD53、CD88、CD129、CD183、CD191、CD193、CD244、CD294、CD305、C3AR、FceRIa、ガレクチン-9、IL-1R(インターロイキン-1受容体)、mrp-14、NKG2Dリガンド、プログラム死-リガンド1(PD-L1)、シグレック-8、シグレック-10、CD49d、CD13、CD44、CD54、CD63、CD69、CD123、TLR4、FceRIa、IgE、CD107a、CD203c、CD14、CD68、CD80、CD86、CD105、CD115、F4/80、ILT-3、ガレクチン-3、CD11a-c、GITRL、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子(ペプチドと複合体化していてもよい)、CD284(TLR4)、CD107-Mac3、CD195(CCR5)、HLA-DR、CD16/32、CD282(TLR2)、CD11c、及び前述のもののいずれかのあらゆる免疫原性断片からなる群から選択される細胞外標的生体分子に結合することができる。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、結合領域は、直接的又は間接的のいずれかで、ジスルフィド結合ではない少なくとも1つの共有結合により志賀毒素エフェクターポリペプチドに連結されている。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、直接的又は間接的のいずれかで、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端に融合されて、単一の連続的なポリペプチドを形成している。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、免疫グロブリン型の結合領域である。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、最小のフューリン切断部位中に、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含む。ある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、最小のフューリン切断部位の少なくとも1つのアミノ酸残基の一部又はすべてとオーバーラップする配列のアミノ末端の短縮化ではない。ある特定の実施形態において、最小のフューリン切断部位中の変異は、フューリン切断モチーフR/Y-x-x-Rにおける少なくとも1つのアミノ酸残基のアミノ酸欠失、挿入、及び/又は置換である。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する少なくとも1つの変異を含み、この変異は、志賀毒素のAサブユニット(配列番号1~2及び4~6)の248~251、又は志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3及び7~18)の247~250に天然に位置する領域、又はあらゆる志賀毒素Aサブユニットにおける等価なアミノ酸配列位置において、少なくとも1つのアミノ酸残基を変更する。ある特定のさらなる実施形態において、変異は、正電荷を有さないアミノ酸残基によるアルギニン残基のアミノ酸残基置換である。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のすべてがそれぞれ野生型志賀毒素A1断片を含むことを除いて本細胞標的化分子からなる第25の細胞標的化分子などの細胞毒性と同程度の細胞毒性を示すことができる。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、1つ又は2つ以上の結合領域は、配列番号39~245のうちのいずれかに示されるペプチド又はポリペプチドを含む。
実施形態セット番号11~番号20のある特定の実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域は、配列番号39~245のうちのいずれかに示されるペプチド又はポリペプチドを含む。実施形態セット番号11~番号20のある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の結合領域は、それぞれ、配列番号39~245のうちのいずれかに示される同じペプチド又はポリペプチドを含む。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態は、配列番号19~255、259~278、及び288~748のうちのいずれかを含む。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態は、配列番号252~255、259~278、及び288~748のうちのいずれかに示されるアミノ酸配列によって表されるポリペプチドを含むか又はそれから本質的になる。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、少なくとも1つの結合領域は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、分子部分は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。ある特定のさらなる実施形態において、分子部分は、結合領域を含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対してカルボキシ末端側に位置する結合領域及び/又は分子部分を含む。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域及び/又は分子部分の質量は、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上である。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性(例えば、細胞毒性及び/又は細胞内経路決定)を保持する限り、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する結合領域を含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、結合領域は、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素生物活性を保持する限り、例えば、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれ以上の質量を有する分子部分などを含む、比較的大きな分子部分内に含まれる。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、低い細胞毒性効力を示し(すなわち、ある特定の陽性標的細胞型に導入された場合に、1000nM、500nM、100nM、75nM、又は50nMの細胞標的化分子濃度で、細胞集団の1%細胞死より高い細胞毒性を示すことができない)、細胞に導入された場合に、参照分子、例えば、アミノ末端を有し、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、第26の細胞標的化分子であって、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、第3の細胞標的化分子のアミノ末端又はその近位に配置されていない、第26の細胞標的化分子などの細胞毒性と比較して、より高い細胞外空間から小胞体及び/又はサイトゾルの細胞内区画への細胞内経路決定効率を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態において、第26の細胞標的化分子は、KDELファミリーのいずれのカルボキシ末端の小胞体保持/回収シグナルモチーフも含まない。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、ある特定のさらなる実施形態において、分子部分は、天然に存在する志賀毒素の志賀毒素A2断片由来のペプチド及び/又はポリペプチドを含む。
本発明の実施形態は、すべての天然に存在する志賀ホロトキシン又は志賀毒素Aサブユニットをカバーすることを意図するものではない。実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、天然に存在する志賀毒素Bサブユニットを含まない。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、天然の志賀毒素Bサブユニットの機能的な結合ドメインを含むか又はそれから本質的になるいかなるポリペプチドも含まない。それよりもむしろ、本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、志賀毒素Aサブユニット由来領域は、細胞標的化を実現するために異種結合領域と機能的に会合している。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、実施形態セット番号1~番号20の上記のすべてのバリエーションについて、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴが、配列番号25に示されるポリペプチドを含まないか又はそれからならないという条件によって制限される。実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、実施形態セット番号1~番号20の上記のすべてのバリエーションについて、本発明の細胞標的化分子が、SLT-1A(配列番号1)における天然の53位に組み込まれたCD8+T細胞エピトープ-ペプチドGILGFVFTL(配列番号25)を含む志賀毒素エフェクターポリペプチドを含まないという条件によって制限される。実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、実施形態セット番号1~番号20の上記のすべてのバリエーションについて、本発明の細胞標的化分子が、配列番号25に示されるポリペプチドを含まないという条件によって制限される。実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、実施形態セット番号1~番号20の上記のすべてのバリエーションについて、本発明の細胞標的化分子が、任意の組み込まれた又は挿入されたCD8+T細胞エピトープを含むいずれの志賀毒素エフェクターポリペプチドも含まないという条件によって制限される。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、実施形態セット番号1~番号20の上記のすべてのバリエーションについて、本発明の細胞標的化分子が、配列番号247に示されるリンカーを含まない(ここで、リンカーは、直接的又は間接的のいずれかで、結合領域と志賀毒素エフェクターポリペプチドとの間に融合されており、結合領域は、志賀毒素エフェクターポリペプチドに対してアミノ末端側に位置する)という条件によって制限される。実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、実施形態セット番号1~番号20の上記のすべてのバリエーションについて、本発明の細胞標的化分子が、配列番号247に示されるリンカーを含まない(ここで、リンカーは、結合領域と志賀毒素エフェクターポリペプチドとの間に融合されている)という条件によって制限される。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、実施形態セット番号1~番号20の上記のすべてのバリエーションについて、本発明の細胞標的化分子が、配列番号259~278及び287のうちのいずれかに示されるポリペプチドを含まないか又はそれから本質的にならないという条件によって制限される。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、結合領域と志賀毒素エフェクターポリペプチドとの間に融合されたいかなる異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴも含まず、結合領域は、志賀毒素エフェクターに対してアミノ末端側に位置する。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、結合領域と志賀毒素エフェクターポリペプチドとの間に融合されたいかなる異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴも含まない。
実施形態セット番号1~番号20の本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態に関して、標的細胞は、樹状細胞型などのプロフェッショナル抗原提示細胞ではない。本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態に関して、結合領域の細胞外標的生体分子は、プロフェッショナル抗原提示細胞によって発現されない。本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態に関して、結合領域の細胞外標的生体分子は、有意な量で、プロフェッショナル抗原提示細胞と物理的に会合していない。本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態に関して、結合領域の細胞外標的生体分子は、プロフェッショナル抗原提示細胞と物理的に会合していない。本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態に関して、結合領域の標的生体分子は、治療を受ける脊索動物対象において、有意な量で、いずれのプロフェッショナル抗原提示細胞の細胞表面上にも発現されない。
実施形態セット番号1~番号20の本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴは、志賀毒素エフェクターポリペプチドの志賀毒素A1断片由来領域のいずれのアミノ酸残基とも直接的に会合していない。本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴは、志賀毒素エフェクターポリペプチドのいずれの内部アミノ酸残基とも直接的に会合しておらず、これは、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端又はカルボキシ末端のいずれかのアミノ酸残基が、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴに直接的に連結され得ることを意味する。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、結合領域は、アミノ酸残基19~183に対応するヒトCD4の断片を含まない。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、I型膜貫通糖タンパク質であるヒトCD4の断片を含まない。ある特定のさらなる実施形態において、結合領域は、ヒト免疫細胞表面の補助受容体の断片を含まない。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、免疫細胞表面の受容体の断片を含むカルボキシ末端の結合領域を含まない。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも2つの組み込まれた又は挿入された異種エピトープを含む。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、以下のセット:(1)R248H及びR251H、(2)R248G及びR251G、(3)A246G、S247A、A253G、及びS254A、並びに(4)A246G、S247A、R248G、R251G、A253G、及びS254Aから選択される野生型志賀毒素Aサブユニットに対するアミノ酸残基の置換のセットを含まない。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素Aサブユニット中の247~252に天然に位置する領域の欠失を含まない。実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素Aサブユニット中の245~247及び253~255に天然に位置する領域の欠失を含まない。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素エフェクターポリペプチドの酵素活性を変化させる、志賀毒素ファミリーのメンバーの天然に存在するAサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異を含み、この変異は、少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失、挿入、又は置換から選択される。ある特定のさらなる実施形態において、天然に存在するAサブユニットに対する変異は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性活性を低減又は除去するが、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの他の志賀毒素エフェクター機能、例えば、細胞内在化を促進すること及び/又はある特定の細胞内区画への細胞内経路決定を指示することなどを保持する。ある特定のさらなる実施形態において、天然に存在するAサブユニットに対する変異は、少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、例えば、配列番号1~18におけるA231E、N75A、Y77S、Y114S、E167D、R170A、R176K、W202A、及び/又はW203Aなどから選択される。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)サイトゾル、小胞体、及びリソソームから選択される、志賀毒素エフェクターポリペプチドが存在する細胞の細胞内区画への経路決定、(ii)志賀毒素エフェクターポリペプチドが存在する細胞の初期エンドソーム区画からプロテアソームへのエピトープ-カーゴの細胞内送達、並びに/又は(iii)志賀毒素エフェクターポリペプチドが存在する細胞の初期エンドソーム区画からMHCクラスI分子へのエピトープの細胞内送達を行うことができる。ある特定のさらなる実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素エフェクターポリペプチドが存在する細胞の表面上でのMHCクラスI分子による提示のために、CD8+T細胞エピトープを細胞内送達することができる。
ある特定の実施形態において、本発明の分子は、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端側の位置及び/又は志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に、いかなる追加の抗原を表示する外因性物質及び/又は異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴも含まない。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、結合領域は、リガンドを含まない。実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、結合領域は、ケモカイン又はTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL,TNF-related apoptosis-inducing ligand)も、その受容体結合断片も含まない。実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、結合領域は、ヒトケモカイン又はヒトTRAILも、その受容体結合断片も含まない。実施形態セット番号1~番号20の実施形態において、免疫グロブリン型の結合領域は、リガンドも、その受容体結合断片も含まない。実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、免疫グロブリン型の結合領域は、ケモカイン又はTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)も、その受容体結合断片も含まない。実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、結合領域は、ヒトCCケモカインも、その受容体結合断片も含まない。実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、結合領域は、ヒトCCケモカインCCL2を含まない(Bose S et al., Arch Pharm Res 36: 1039-50 (2013)を参照)。実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、結合領域は、ヒトCCケモカインCCL2も、その受容体結合断片も、及びStxAのアミノ酸75~247からなるカルボキシ末端の志賀毒素エフェクターポリペプチドも含まない。本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、結合領域は、StxA(配列番号2)のアミノ酸75~247からなるカルボキシ末端の志賀毒素エフェクターポリペプチドに融合した、ヒトCCケモカインCCL2も、その受容体結合断片も含まない。実施形態セット番号1~番号20の実施形態において、結合領域は、ヒトTRAILも、その受容体結合断片も含まない。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、配列番号252~255、259~278、及び288~748のうちのいずれかのポリペプチドを含むか又はそれから本質的になる。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、配列番号25及び/又は配列番号247を含まない。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、配列番号287を含まないか又はそれから本質的にならない。
実施形態セット番号1~番号20のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、実施形態セット番号1~20の上記のすべてのバリエーションについて、本発明の細胞標的化分子が、配列番号287に示されるポリペプチドを含まないか又はそれから本質的にならないという条件によって制限される。
本発明はまた、本発明の細胞標的化分子及び少なくとも1つの医薬上許容される賦形剤又は担体を含む医薬組成物、並びに本明細書にさらに記載される本発明の方法におけるそのような細胞標的化分子又はそれを含む組成物の使用を提供する。本発明のある特定の実施形態は、本発明のいずれかの細胞標的化分子及び少なくとも1つの医薬上許容される賦形剤又は担体を含む、医薬組成物である。
本発明のある特定の実施形態のなかでも、上述の本発明の細胞標的化分子、並びに情報、例えば、細胞型、組織、器官、疾患、障害、状態、及び/又は患者に関する診断上有用な情報を収集するための検出促進剤のうちのいずれかを含む、診断用組成物が挙げられる。ある特定のさらなる実施形態は、検出促進剤が、異種エピトープ-ペプチドカーゴであり、細胞標的化分子が、異種エピトープ-ペプチドカーゴを含む、本発明の細胞標的化分子である。
本発明の細胞標的化分子及び組成物以外に、本発明の細胞標的化分子又はそのタンパク質成分をコードすることができるポリヌクレオチドが、本発明の範囲内であり、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び本発明の発現ベクターを含む宿主細胞も同様である。発現ベクターを含む宿主細胞は、例えば、本発明の細胞標的化分子又はそのタンパク質成分若しくは断片を、組換え発現によって産生するための方法で使用され得る。
本発明はまた、固体基板に固定された、いずれかの本発明の物質の組成物も包含する。本発明の物質の組成物のこのような配設は、例えば、本明細書に記載される分子スクリーニング方法において、利用され得る。
本発明のある特定の実施形態のなかでも、細胞のMHCクラスI分子による提示が可能なCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを細胞に送達する方法であって、細胞を本発明の細胞標的化分子及び/又はそれらの組成物(例えば、本発明の医薬品又は診断用組成物)と接触させるステップを含む、方法が挙げられる。
本発明のある特定の実施形態のなかでも、細胞が、外来的に投与されたCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴをMHCクラスI分子と複合体化して提示するように誘導する方法であって、細胞を、インビトロ又はインビボのいずれかで、CD8+T細胞エピトープを含む本発明の細胞標的化分子及び/又はその組成物(例えば、そのような本発明の細胞標的化分子を含む本発明の医薬組成物又は診断用組成物)と接触させるステップを含む、方法が挙げられる。
本発明のある特定の実施形態のなかでも、CD8+T細胞エピトープMHCクラスI分子複合体を介して、標的細胞に対する免疫細胞媒介性応答を誘導する方法であって、標的細胞を、インビトロ又はインビボのいずれかで、CD8+T細胞エピトープをカーゴとして含む本発明の細胞標的化分子及び/又はその組成物(例えば、そのような本発明の細胞標的化分子を含む本発明の医薬組成物又は診断用組成物)と接触させるステップを含む、方法が挙げられる。ある特定のさらなる実施形態に関して、免疫応答は、CD8+免疫細胞によるサイトカインの分泌、細胞毒性Tリンパ球(CTL)に誘導される標的細胞における増殖の停止、CTLに誘導される標的細胞の壊死、CTLに誘導される標的細胞のアポトーシス、免疫細胞に媒介される標的細胞以外の細胞の細胞殺滅からなる群から選択される。
本発明のある特定の実施形態のなかでも、CD8+免疫細胞と標的細胞との細胞間結合を引き起こす方法であって、標的細胞を、CD8+免疫細胞の存在下において本発明の細胞標的化分子と接触させるステップ、又は標的細胞を1つ又は2つ以上のCD8+免疫細胞と接触させる後続のステップを含む、方法が挙げられる。ある特定の実施形態に関して、接触ステップは、インビトロで生じる。ある特定の他の実施形態に関して、接触ステップは、例えば、細胞標的化分子を脊索動物、脊椎動物、及び/又は哺乳動物に投与することなどによって、インビボで生じる。ある特定の実施形態に関して、細胞間結合は、インビトロで生じる。ある特定の実施形態に関して、細胞間結合は、インビボで生じる。
本発明のある特定の実施形態のなかでも、脊索動物内の組織の場所に「シーディング」するための本発明の細胞標的化分子を含む組成物が挙げられる。
ある特定の実施形態に関して、本発明の方法は、脊索動物内の組織の場所を「シーディング」するためであって、脊索動物に、本発明の細胞標的化分子、本発明の医薬組成物、及び/又は本発明の診断用組成物を投与するステップを含む、方法が挙げられる。ある特定のさらなる実施形態に関して、本方法は、悪性の、罹患した、及び/又は炎症を起こした組織を含む脊索動物内の組織の場所を「シーディング」するための方法である。ある特定のさらなる実施形態に関して、本方法は、罹患した組織、腫瘤、がん性の増殖、腫瘍、感染した組織、又は異常な細胞塊からなる群から選択される組織を含む脊索動物内の組織の場所を「シーディング」するための方法である。ある特定の実施形態に関して、脊索動物内の組織の場所を「シーディング」するための方法は、脊索動物に、MHCクラスI複合体において細胞標的化分子の標的細胞によって天然に提示されないペプチド、標的細胞によって発現されるいずれのタンパク質中にも天然に存在しないペプチド、標的細胞のトランスクリプトーム及び/又はプロテオーム中に天然に存在しないペプチド、シーディングしようとする部位の細胞外の微小環境中に天然に存在しないペプチド、及び標的化しようとする腫瘤又は感染組織部位に天然に存在しないペプチドからなる群から選択される異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを含む本発明の細胞標的化分子を投与するステップを含む。
さらに、本発明は、細胞を殺滅する方法であって、細胞を、本発明の細胞標的化分子又は本発明の細胞標的化分子を含む医薬組成物と接触させるステップを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態に関して、細胞を接触させるステップは、インビトロで生じる。ある特定の他の実施形態に関して、細胞を接触させるステップは、インビボで生じる。細胞を殺滅する方法のさらなる実施形態に関して、本方法は、細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子の細胞外における存在及び/又は発現レベルに関して異なる細胞の混合物を接触させた場合に、他の細胞及び/又は細胞型よりも優先的に細胞及び/又は細胞型を選択的に殺滅することができる。
本発明はさらに、疾患、障害、及び/又は状態の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、それを必要とする患者に、本発明の細胞標的化分子を含む組成物又は医薬組成物の治療有効量を投与するステップを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態に関して、本発明のこの方法を使用して治療しようとする疾患、障害、又は状態は、がん、腫瘍、増殖異常、免疫障害、又は微生物感染から選択される。この方法のある特定の実施形態に関して、治療しようとするがんは、骨がん、乳がん、中枢/末梢神経系がん、消化器がん、生殖細胞がん、腺がん、頭頸部がん、血液がん、腎臓から尿道のがん、肝臓がん、肺/胸膜がん、前立腺がん、肉腫、皮膚がん、及び子宮がんからなる群から選択される。この方法のある特定の実施形態に関して、治療しようとする免疫障害は、アミロイド症、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、糖尿病、移植片拒絶反応、移植片対宿主病、橋本甲状腺炎、溶血尿毒症症候群、HIV関連の疾患、紅斑性狼瘡、多発性硬化症、結節性多発性動脈炎、多発関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強皮症、敗血症性ショック、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、及び脈管炎からなる群から選択される疾患に関連する免疫障害である。
本発明のある特定の実施形態のなかでも、がん、腫瘍、増殖異常、免疫障害、又は微生物感染の治療又は予防のための、本発明の細胞標的化分子を含む組成物が挙げられる。本発明のある特定の実施形態のなかでも、がん、腫瘍、増殖異常、免疫障害、又は微生物感染の治療又は予防のための医薬品の製造における、本発明の物質の組成物の使用が挙げられる。
がん、腫瘍、増殖異常、及び/又は免疫障害の治療又は予防のための本発明のいずれかの組成物の使用は、本発明の範囲内である。
本発明のある特定の実施形態は、免疫療法を使用して患者におけるがんを治療する方法であって、それを必要とする患者に、本発明の細胞標的化分子及び/又は医薬組成物を投与するステップを含む、方法を含む。
がん、腫瘍、増殖異常、及び/又は免疫障害の治療又は予防のための本発明のいずれかの物質の組成物の使用は、本発明の範囲内である。本発明のある特定の実施形態のなかでも、がん、腫瘍、増殖異常、免疫障害、及び/又は微生物感染を治療又は予防するための本発明の細胞標的化分子及び/又はその医薬組成物が挙げられる。本発明のある特定の実施形態のなかでも、がん、腫瘍、増殖異常、免疫障害、又は微生物感染を治療又は予防するための医薬品の製造における本発明の細胞標的化分子及び/又はその医薬組成物の使用が挙げられる。
本発明のある特定の実施形態のなかでも、本発明の細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞に1つ又は2つ以上の追加の外因性物質を送達するための、本発明の細胞標的化分子を含む組成物が挙げられる。本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態は、本発明の細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞に、1つ又は2つ以上の追加の外因性物質を送達するために使用してもよい。加えて、本発明は、細胞の内部に外因性物質を送達するための方法であって、細胞を、インビトロ又はインビボのいずれかで、本発明の細胞標的化分子、医薬組成物、及び/又は診断用組成物と接触させるステップを含む、方法を提供する。本発明はさらに、細胞の内部への外因性物質の送達を、それを必要とする患者において行うための方法であって、患者に、本発明の細胞標的化分子を投与するステップを含み、標的細胞が、本発明の細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している、方法を提供する。
疾患、障害、及び/又は状態の診断、予後予測、及び/又は特徴付けのための本発明のいずれかの組成物(例えば、細胞標的化分子、医薬組成物、又は診断用組成物)の使用は、本発明の範囲内である。
本発明のある特定の実施形態のなかでも、本発明の細胞標的化分子及び/又は診断用組成物を使用して細胞を検出する方法であって、細胞を、前記細胞標的化分子及び/又は診断用組成物と接触させるステップ、並びに前記細胞標的化分子及び/又は診断用組成物の存在を検出するステップを含む、方法が挙げられる。ある特定の実施形態に関して、細胞を接触させるステップはインビトロで行われる。ある特定の実施形態に関して、細胞を接触させるステップはインビボで行われる。ある特定の実施形態に関して、細胞を検出するステップはインビトロで行われる。ある特定の実施形態に関して、細胞を検出するステップはインビボで行われる。
例えば、本発明の診断用組成物は、脊索動物対象に、検出促進剤を含む本発明の細胞標的化分子を含む組成物を投与し、次いで、インビトロ又はインビボのいずれかで、本発明の細胞標的化分子及び/又は異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴの存在を検出することによって、インビボで細胞を検出するために使用してもよい。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態は、本発明の細胞標的化分子の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞への追加の外因性物質の送達のために利用してもよい。加えて、本発明は、細胞の内部に外因性物質を送達するための方法であって、細胞を、インビトロ又はインビボのいずれかで、本発明の細胞標的化分子、医薬組成物、及び/又は診断用組成物と接触させるステップを含む、方法を提供する。本発明はさらに、患者において、細胞の内部に外因性物質を送達するための方法であって、患者に、本発明の細胞標的化分子(細胞毒性活性を有する又は有さない)を投与するステップを含み、標的細胞が、細胞標的化分子の細胞外標的生体分子と物理的に結合している、方法を提供する。
本発明のある特定の実施形態のなかでも、細胞のMHCクラスI分子による提示が可能なT細胞エピトープ-ペプチドカーゴを細胞に送達する方法であって、細胞を、異種T細胞エピトープ-ペプチドカーゴと会合した本発明の細胞標的化分子及び/又はその組成物(例えば、本発明の医薬組成物又は診断用組成物)と接触させるステップを含む、方法が挙げられる。
本発明のある特定の実施形態のなかでも、脊索動物内の組織の場所を「シーディング」するための方法であって、脊索動物に、本発明の細胞標的化分子、本発明の医薬組成物、及び/又は本発明の診断用組成物を投与するステップを含む、方法が挙げられる。ある特定のさらなる実施形態において、組織の場所を「シーディング」するための本発明の方法は、悪性の、罹患した、又は炎症を起こした組織を含む組織の場所を「シーディング」するための方法である。ある特定のさらなる実施形態において、組織の場所を「シーディング」するための本発明の方法は、罹患した組織、腫瘤、がん性の増殖、腫瘍、感染した組織、又は異常な細胞塊からなる群から選択される組織を含む組織の場所を「シーディング」するための方法である。ある特定のさらなる実施形態において、組織の場所を「シーディング」するための本発明の方法は、脊索動物に、MHCクラスI複合体において細胞標的化分子の標的細胞によって天然に提示されないペプチド、標的細胞によって発現されるいずれのタンパク質中にも天然に存在しないペプチド、標的細胞のプロテオーム中に天然に存在しないペプチド、シーディングしようとする部位の細胞外の微小環境中に天然に存在しないペプチド、及び標的化しようとする腫瘤又は感染した組織部位中に天然に存在しないペプチドからなる群から選択される異種T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを含む本発明の細胞標的化分子、本発明の医薬組成物、又は本発明の診断用組成物を投与することを含む。
疾患、障害、及び/又は状態の診断、予後予測、及び/又は特徴付けのための本発明のいずれかの物質の組成物の使用は、本発明の範囲内である。本発明のある特定の実施形態のなかでも、疾患、障害、又は状態の診断、予後予測、又は特徴付けにおいて有用な情報を収集するために、検出促進剤を含む本発明の細胞標的化分子及び/又は本発明の組成物(例えば診断用組成物)を使用する方法が挙げられる。本発明のある特定の実施形態のなかでも、本発明の細胞標的化分子及び/又は診断用組成物を使用して、細胞(又はその細胞内区画)を検出する方法であって、細胞を、細胞標的化分子及び/又は診断用組成物と接触させるステップ、並びに前記細胞標的化分子及び/又は診断用組成物の存在を検出するステップを含む、方法が挙げられる。ある特定の実施形態において、細胞を接触させるステップは、インビトロで行われる。ある特定の実施形態において、細胞を接触させるステップは、インビボで行われる。ある特定の実施形態において、細胞を検出するステップは、インビトロで行われる。ある特定の実施形態において、細胞を検出するステップは、インビボで行われる。ある特定のさらなる実施形態において、本方法は、生物に細胞標的化分子を投与した後に、1つ又は2つ以上のイメージング手順を使用して、その生物における細胞標的化分子の位置を検出することを含む。例えば、本明細書に記載される検出促進剤を取り込んだ本発明の細胞標的化分子を使用して、疾患を、本発明の関連する医薬組成物によって治療できる可能性があるとして特徴付けることができる。例えば、本発明のある特定の細胞標的化分子及びそれらの組成物(例えば、本発明の医薬組成物及び診断用組成物)、並びに本発明の方法を使用して、患者が本発明の医薬組成物に応答するグループに属するかどうかを決定することができる。例えば、本発明のある特定の細胞標的化分子及びそれらの組成物を使用して、送達された異種エピトープ-ペプチドカーゴを細胞表面上に提示する細胞を同定すること、及び/又は本発明の細胞標的化分子により送達された異種エピトープ-ペプチドカーゴを提示する細胞を含有する対象を同定することができる。
本発明のある特定の実施形態のなかでも、本発明の分子を産生する方法であって、細菌細胞-壁タンパク質ドメインの相互作用、例えばP.マグヌス(P. magnus)由来のプロテインL又はそれらの派生物及び結合ドメイン断片などを使用して、本発明の分子又はそのポリペプチド成分を精製するステップを含む、方法が挙げられる。ある特定のさらなる実施形態において、本方法の精製ステップは、配列番号29~38に示されるポリペプチドのうちのいずれかを含むか又はそれから本質的になる志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。
本発明のある特定の実施形態のなかでも、本発明の物質の組成物を含み、任意選択で使用説明書、追加の試薬、及び/又は医薬送達デバイスを含むキットが挙げられる。キットは、試料又は対象中で細胞型(例えば、腫瘍細胞)を検出するための試薬及び他のツールをさらに含んでいてもよい。
これら及び他の本発明の特色、態様及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面に関してよりよく理解されるようになると予想される。上述した本発明の要素は、以降、組合せ又は除去の目的について全く述べられていなくても、本発明の他の実施形態を作製するために自由に個々に組み合わせたり又は除去したりすることができる。
本発明は、例示的な非限定的な実施形態、及び添付の図面への参照を使用して、下記でより詳細に説明される。しかしながらこの発明は、多くの様々な形態を具体化することができ、以下に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。そうではなく、この開示が十分であり、当業者に本発明の範囲を伝えられるように、これらの実施形態は提供される。本発明をより容易に理解できるように、以下である特定の用語を定義する。追加の定義が本発明の詳細な説明中に見出される場合もある。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、単数形及び複数形の指示対象の両方を含む。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、用語「及び/又は」は、2つの種、A及びBを指す場合、A及びBの少なくとも1つを意味する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、用語「及び/又は」は、2つより多くの種、例えばA、B、及びCを指す場合、A、B、若しくはCの少なくとも1つ、又はA、B、若しくはCのあらゆる組合せの少なくとも1つを意味する(それぞれの種は単数又は複数の可能性がある)。
本明細書にわたり、言葉「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変化形は、必然的に述べられている整数(又は要素)又は整数(又は要素)の群を含むが、他のあらゆる整数(又は要素)又は整数(又は要素)の群も排除されないことと理解されるものとする。
本明細書にわたり、用語「含む(including)」は、「限定されないが、~が挙げられる」を意味するのに使用される。「含む(including)」及び「限定されないが、~が挙げられる」は、同義的に使用される。
用語「アミノ酸残基」又は「アミノ酸」は、タンパク質、ポリペプチド、及び/又はペプチドに取り込まれているアミノ酸への言及を含む。用語「ポリペプチド」は、アミノ酸又はアミノ酸残基のあらゆるポリマーを含む。用語「ポリペプチド配列」は、物理的にポリペプチドを構成する一連のアミノ酸又はアミノ酸残基を指す。「タンパク質」は、1つ又は2つ以上のポリペプチド又はポリペプチド「鎖」を含む高分子である。「ペプチド」は、合計およそ15~20アミノ酸残基未満のサイズを有する小さいポリペプチドである。用語「アミノ酸配列」は、長さに応じてペプチド又はポリペプチドを物理的に構成する一連のアミノ酸又はアミノ酸残基を指す。別段の指定がない限り、本明細書で開示されたポリペプチド及びタンパク質配列は、アミノ末端からカルボキシ末端にそれらの順番を表示するのに、左から右へ記載される。
用語「アミノ酸」、「アミノ酸残基」、「アミノ酸配列」、又はポリペプチド配列は、天然に存在するアミノ酸(L及びDイソステレオマーを含む)を含み、別段の限定がない限り、共通の天然アミノ酸と類似の方式で機能できる天然アミノ酸の公知のアナログ、例えばセレノシステイン、ピロリシン、N-ホルミルメチオニン、ガンマ-カルボキシグルタメート、ヒドロキシプロリンヒプシン、ピログルタミン酸、及びセレノメチオニンも含む(例えば、Young T, Schultz P, J Biol Chem 285: 11039-44 (2010);Davis L, Chin J, Nat Rev Mol Cell Biol 13: 168-82 (2012);Bohike N, Budisa N, FEMS Microbiol Lett 35: 133-44 (2014);Chin J, Annu Rev Biochem 83: 379-408 (2014);Nagata K et al., Bioinformatics 30: 1681-9 (2014);Pott M et al., ACS Chem Biol 9: 2815-22 (2014);Ho J et al., ACS Synth Biol 5: 163-71 (2016);Wang Y, Tsao M, Chembiochem 17: 2234-9 (2016)を参照)。本明細書で述べられるアミノ酸は、表Aで示されるような簡略名によって記載される。
成句「保存的置換」は、ペプチド、ペプチド領域、ポリペプチド領域、タンパク質、又は分子のアミノ酸残基に関して、全体的なペプチド、ペプチド領域、ポリペプチド領域、タンパク質、又は分子の機能及び構造を実質的に変更しない、ペプチド、ペプチド領域、ポリペプチド領域、タンパク質、又は分子のアミノ酸組成における変化を指す(Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W. H. Freeman and Company, New York (2nd ed., 1992))を参照)。
本発明の目的に関して、成句「由来の」は、ポリペプチド又はポリペプチド領域を指す場合、ポリペプチド又はポリペプチド領域が、「親の」タンパク質に元々見出される非常に類似したアミノ酸配列を含み、「親の」分子のある特定の機能及び構造が実質的に保存される限り、現時点で元のポリペプチド又はポリペプチド領域に対するある特定のアミノ酸残基の付加、欠失、短縮化、再配列、又は他の変更含む可能性があることを意味する。熟練した作業者であれば、当業界において公知の技術、例えば、タンパク質配列アライメントソフトウェアを使用してポリペプチド又はポリペプチド領域の由来となる親の分子を同定できると予想される。
本発明の目的に関して、用語「末端」、「アミノ末端」、又は「カルボキシ末端」は、ポリペプチド領域に関して、その領域の外側に追加のアミノ酸残基がペプチド結合によって連結されているかどうかに関係なく、その領域の局所的な境界を指す。言い換えれば、ポリペプチド領域の末端は、その領域が他のペプチド又はポリペプチドに融合されているかどうかを問わない。例えば、2つのタンパク質領域、例えばペプチド又はポリペプチドを含む結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む融合タンパク質は、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域のアミノ酸残基251で終わるカルボキシ末端を有する志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を有していてもよいが、別のタンパク質領域、例えば結合領域の始まりを示す252位のアミノ酸残基へのペプチド結合が残基251を含む。この例において、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域のカルボキシ末端は、融合タンパク質の末端ではなく内部領域の境界を示す残基251を指す。したがって、ポリペプチド領域の場合、用語「末端」、「アミノ末端」、及び「カルボキシ末端」は、境界が物理的な末端であるか、又はより大きい、連続したポリペプチド鎖内に組み込まれた内部位置であるかにかかわらず、ポリペプチド領域の境界を指すのに使用される。
特許請求された発明の目的に関して、さらに志賀毒素ポリペプチド配列又は志賀毒素由来のポリペプチドに関して、用語「野生型」は、一般的に、例えば病原菌などの生きた種に見出される天然に存在する志賀毒素タンパク質配列を指し、その志賀毒素タンパク質配列は、最も高頻度で生じるバリアントの1つである。これは、統計学的に有効な数の少なくとも1つの志賀毒素タンパク質バリアントを含む所与の種の天然に存在する個々の生物をサンプリングした場合、天然に存在するもののその種の個々の生物の1パーセント未満で見出されるまれにしか生じない志賀毒素タンパク質配列とは対照的である。その天然環境を除去した天然分離株のクローン性の拡張(分離株が、生物学的な配列情報を含む生物であるか又は分子であるかに関係なく)は、クローン性の拡張が、その種の天然に存在する集団に存在しない新しい配列多様性を導入したり及び/又は配列バリアントの相対的比率を互いに変化させたりしない限り、天然に存在する必要条件を変更しない。
特許請求された発明に関する用語「会合する」、「会合すること」、「連結された」、又は「連結すること」は、2つ又は3つ以上の分子の要素が合体、結合、接続、若しくはそれ以外の方法で結合して単一分子を形成している状況、又は2つの分子間の会合、連結、結合、及び/若しくは他のあらゆる接続を作り出すことによって互いに会合した2つの分子を作製し、単一分子を形成する作用を指す。例えば、用語「連結された」は、単一分子が形成されるように1つ又は2つ以上の原子の相互作用によって会合した2つ又は3つ以上の要素を指す場合もあり、原子の相互作用は、共有結合及び/又は非共有結合によるものであってもよい。2つの要素間の共有結合による会合の非限定的な例としては、ペプチド結合及びシステイン間のジスルフィド結合が挙げられる。2つの分子要素間の非共有結合による会合の非限定的な例としては、イオン結合が挙げられる。
本発明の目的に関して、用語「連結された」は、単一分子が形成されるように1つ又は2つ以上の原子の相互作用によって会合した2つ又は3つ以上の分子の要素を指し、原子の相互作用は、少なくとも1つの共有結合を含む。本発明の目的に関して、用語「連結すること」は、上述したような連結された分子を作り出す作用を指す。
本発明の目的に関して、用語「融合した」は、少なくとも1つの共有結合によって会合した2つ又は3つ以上のタンパク質要素を指し、少なくとも1つの共有結合は、ペプチド結合がカルボキシル酸基の炭素原子の参加を含むか又は例えばα-炭素、β-炭素、γ-炭素、σ-炭素などの別の炭素原子を含むかどうかに関係なくペプチド結合である。一緒に融合した2つのタンパク質要素の非限定的な例としては、例えば、得られた分子が単一の連続的なポリペプチドになるようにペプチド結合を介してポリペプチドに融合したアミノ酸、ペプチド、又はポリペプチドが挙げられる。本発明の目的に関して、用語「融合すること」は、上述したような融合した分子、例えば、翻訳されたときに単一のタンパク質性分子を産生する遺伝学的領域の組換え融合から生成した融合タンパク質などを作り出す作用を指す。
記号「::」は、その前及びその後のポリペプチド領域が物理的に一緒に連結されて連続的なポリペプチドを形成していることを意味する。
本明細書にわたり、用語「二重特異性」は、異なる細胞外標的生体分子に結合する分子、又はオーバーラップしないエピトープかオーバーラップするエピトープかに関係なく、2つ若しくは3つ以上の異なるエピトープで、同じ細胞外標的生体分子に結合する分子(例えば、二価二重パラトープ分子)を含むものと理解される。
用語「発現される」、「発現すること」、又は「発現する」、及びそれらの文法上の変化形は、本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチド又は核酸のタンパク質への翻訳を指す。発現されたタンパク質は、細胞内に留まって細胞表面の膜の要素になる場合もあるし、又は細胞外空間に分泌される場合もある。
本明細書で使用される場合、少なくとも1つの細胞表面で有意な量の細胞外標的生体分子を発現する細胞は、「標的陽性細胞」又は「標的+細胞」であり、特定された細胞外標的生体分子に物理的に結合している細胞である。有意な量の標的生体分子は、以下に定義される。
記号「α」は、本明細書で使用される場合、記号の後に続く生体分子に結合することができる免疫グロブリン型の結合領域の略記である。記号「α」は、記号の後に続く生体分子に結合するその能力に基づく免疫グロブリン型の結合領域の機能的な特徴を指すのに使用され、解離定数(KD)によって記載される結合親和性は10-5又はそれ未満である。
本明細書で使用される場合、用語「重鎖可変(VH)ドメイン」又は「軽鎖可変(VL)ドメイン」はそれぞれ、あらゆる抗体VH又はVLドメイン(例えばヒトVH又はVLドメイン)、加えて対応する天然の抗体(例えば天然のマウスVH又はVLドメイン由来のヒト化VH又はVLドメイン)の少なくとも定性的な抗原結合能力を保持するあらゆるそれらの派生物を指す。VH又はVLドメインは、3つのCDR又はABRを途中に有する「フレームワーク」領域からなる。フレームワーク領域は、抗原のエピトープへの特異的結合のためにCDR又はABRを並べるのに役立つ。アミノ末端からカルボキシ末端へ、VH及びVLドメインの両方は、以下のフレームワーク(FR)及びCDR領域又はABR領域:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4;又は同様にFR1、ABR1、FR2、ABR2、FR3、ABR3、及びFR4を含む。用語「HCDR1」、「HCDR2」、又は「HCDR3」は、本明細書で使用される場合、それぞれVHドメイン中のCDR1、2、又は3を指すのに使用され、用語「LCDR1」、「LCDR2」、及び「LCDR3」は、それぞれVLドメイン中のCDR1、2、又は3を指すのに使用される。本明細書で使用される場合、用語「HABR1」、「HABR2」、又は「HABR3」は、それぞれVHドメイン中のABR1、2、又は3を指すのに使用され、用語「LABR1」、「LABR2」、又は「LABR3」は、それぞれVLドメイン中のCDR1、2、又は3を指すのに使用される。ラクダ科動物のVHH断片、軟骨魚類のIgNAR、VNAR断片、ある特定の単一ドメイン抗体、及びそれらの派生物に関して、同じベースの配列:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む単一の重鎖可変ドメインが存在する。用語「HCDR1」、「HCDR2」、又は「HCDR3」は、本明細書で使用される場合、それぞれ単一の重鎖可変ドメイン中のCDR1、2、又は3を指すのに使用される場合もある。
本発明の目的に関して、用語「エフェクター」は、細胞毒性、生物学的なシグナル伝達、酵素による触媒作用、細胞内経路決定、並びに/又はアロステリック作用及び/若しくは1つ又は2つ以上の因子の動員をもたらす分子間結合などの生物活性を提供することを意味する。例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素、志賀毒素成分、及び/又はそれらの断片に存在する、1つ又は2つ以上の生物活性を提供する。
本発明の目的に関して、成句「志賀毒素エフェクターポリペプチド」、「志賀毒素エフェクターポリペプチド領域」、及び「志賀毒素エフェクター領域」は、志賀毒素ファミリーのメンバーの少なくとも1つの志賀毒素Aサブユニット由来のポリペプチド又はポリペプチド領域を指し、ポリペプチド又はポリペプチド領域は、少なくとも1つの志賀毒素の機能を表すことができる。
本発明の目的に関して、結合領域を説明する用語「異種」は、結合領域が、天然に存在する志賀毒素とは異なる源に由来することを意味し、例えば、ポリペプチドである異種結合領域は、いかなる天然の志賀毒素の一部としても天然に見出されないポリペプチドである。
本発明の目的に関して、CD8+T細胞エピトープを説明する用語「異種」は、CD8+T細胞エピトープが、(1)天然に存在する志賀毒素のAサブユニットとは異なる源に由来する、例えば、異種ポリペプチドは、天然の志賀毒素のいかなるAサブユニットの一部としても天然に見出されず、(2)先行技術の志賀毒素エフェクターポリペプチドとは異なる源に由来することを意味する。例えば、本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、CD8+T細胞エピトープ-ペプチドに関する用語「異種」は、修飾しようとする細胞標的化分子(親分子)中に最初に生じなかったが、本明細書に記載される埋込み、融合、挿入、及び/若しくはアミノ酸置換のプロセスにより付加されたか又は修飾された細胞標的化分子を作製するための任意の他の改変手段によって付加されたかにかかわらず、分子に付加された、ペプチド配列を指す。その結果、元の修飾されていない細胞標的化分子にとって外来であるCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを含む修飾された細胞標的化分子が得られ、すなわち、CD8+T細胞エピトープは、修飾されていない細胞標的化分子(親分子)には存在していなかった。「異種」CD8+T細胞エピトープは、結合領域に対して自家又は異種であり得る。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープはまた、細胞標的化分子の結合領域成分にとっても異種であり、例えば、異種エピトープは、結合領域の結合活性に必要ではなく、結合領域の結合活性を提供する最小限の結合領域構造体の構造の一部ではないものである。例えば、ある免疫グロブリンに天然に存在しないCD8+T細胞エピトープは、免疫グロブリン型結合領域の結合活性に必要ではなく、免疫グロブリン型結合領域の結合活性を提供する最小限の結合領域構造体の構造の一部でない場合、その免疫グロブリンに由来する免疫グロブリン型結合領域にとって異種である。
特許請求された発明の目的に関して、CD8+T細胞エピトープを説明する用語「異種」は、(1)天然に存在する志賀毒素のAサブユニット及び(2)異種成分を含む細胞標的化分子の結合領域とは異なる源のものを意味する。本発明の細胞標的化分子の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、野生型志賀毒素A1断片;天然に存在する志賀毒素A1断片;及び/又は細胞標的化分子の成分として使用される先行技術の志賀毒素エフェクターポリペプチドにすでに存在しているものではないCD8+T細胞エピトープ-ペプチドである。
特許請求された発明の目的に関して、CD8+免疫細胞による「細胞間結合」という成句は、CD8+免疫細胞が、例えば、他の細胞の殺滅、他の免疫細胞の動員及び活性化(例えば、サイトカイン分泌)、CD8+免疫細胞の成熟、CD8+免疫細胞の活性化などに関与する応答など、CD8+免疫細胞による免疫応答の活性化を示す様式で、異なる細胞に応答すること(例えば、1つ又は2つ以上のpMHC Iを提示しているその他のものを感作することによって)を指す。
本明細書で使用される場合、用語「CD8+T細胞エピトープを送達する」は、分子の機能的な活性を説明する場合、分子が、細胞内においてCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを含む分子のタンパク質部分のプロテアソームによる切断を引き起こすのに適した細胞内区画に局在化する生物活性を提供することを意味する。分子の「CD8+T細胞エピトープを送達する」機能は、分子を外部から投与した細胞の細胞表面上において、分子のCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴのMHC提示を観察することによってアッセイすることができ、又はこのアッセイは、そのエンドソーム区画の1つ又は2つ以上に分子を含有する細胞を用いて開始された。一般的に、CD8+T細胞エピトープをプロテアソームに送達する分子の能力は、「CD8+T細胞エピトープを送達する」分子の最初の位置が細胞の初期エンドソーム区画であり、次いで分子がエピトープ-ペプチドを細胞のプロテアソームに送達することが実験的に示される場合に決定することができる。しかしながら、「CD8+T細胞エピトープを送達する」能力はまた、分子の最初の位置が細胞外であり、エピトープを細胞内及び細胞のプロテアソームに送達することが直接的又は間接的のいずれかで実験的に示される場合でも決定することができる。例えば、ある特定の「CD8+T細胞エピトープを送達する」分子は、例えば、細胞へのエンドサイトーシスによる侵入の後などに、その細胞のエンドソーム区画を通過する。代替として、「CD8+T細胞エピトープを送達する」活性は、「CD8+T細胞エピトープを送達する」分子が細胞に入りT細胞エピトープ-ペプチドを細胞のプロテアソームに送達するのではなく、分子の最初の位置が細胞外であり、そのため分子が細胞のいずれのエンドソーム区画にも入らない場合にも観察することができ、これはなぜなら「CD8+T細胞エピトープを送達する」分子が、そのCD8+T細胞エピトープ-ペプチド成分のプロテアソームによる切断をもたらすのに適した細胞内区画への経路決定にそれ自身を方向付けたためと予想される。
本発明の目的に関して、志賀毒素エフェクター機能は、志賀毒素Aサブユニット由来のポリペプチド領域によって付与された生物活性である。志賀毒素エフェクター機能の非限定的な例としては、細胞の侵入を促進すること;脂質膜の変形;細胞内在化を促進すること;クラスリン媒介エンドサイトーシスを刺激すること;例えばゴルジ、小胞体、及びサイトゾルなどの様々な細胞内区画への細胞内経路決定を指示すること;カーゴを用いて細胞内経路決定を指示すること;リボソーム機能を阻害すること;触媒活性、例えばN-グリコシダーゼ活性、及びリボソームを触媒的に阻害することなど;タンパク質合成を低減すること、カスパーゼ活性化を誘導すること、エフェクターカスパーゼを活性化すること、細胞増殖抑制作用を実現すること、並びに細胞毒性が挙げられる。志賀毒素の触媒活性としては、例えば、リボソーム不活性化、タンパク質合成阻害、N-グリコシダーゼ活性、ポリヌクレオチド:アデノシングリコシダーゼ活性、RNアーゼ活性、及びDNAアーゼ活性が挙げられる。志賀毒素は、リボソーム不活性化タンパク質(RIP)である。RIPは、核酸、ポリヌクレオシド、ポリヌクレオチド、rRNA、ssDNA、dsDNA、mRNA(及びポリA)、及びウイルス核酸を脱プリン化することができる(例えば、Barbieri L et al., Biochem J 286: 1-4 (1992);Barbieri L et al., Nature 372: 624 (1994);Ling J et al., FEBS Lett 345: 143-6 (1994);Barbieri L et al., Biochem J 319: 507-13 (1996);Roncuzzi L, Gasperi-Campani A, FEBS Lett 392: 16-20 (1996);Stirpe F et al., FEBS Lett 382: 309-12 (1996);Barbieri L et al., Nucleic Acids Res 25: 518-22 (1997);Wang P, Tumer N, Nucleic Acids Res 27: 1900-5 (1999);Barbieri L et al., Biochim Biophys Acta 1480: 258-66 (2000);Barbieri L et al., J Biochem 128: 883-9 (2000);Brigotti M et al., Toxicon 39: 341-8 (2001);Brigotti M et al., FASEB J 16: 365-72 (2002);Bagga S et al., J Biol Chem 278: 4813-20 (2003);Picard D et al., J Biol Chem 280: 20069-75 (2005)を参照)。いくつかのRIPは、抗ウイルス活性及びスーパーオキシドジスムターゼ活性を示す(Erice A et al., Antimicrob Agents Chemother 37: 835-8 (1993);Au T et al., FEBS Lett 471: 169-72 (2000);Parikh B, Tumer N, Mini Rev Med Chem 4: 523-43 (2004);Sharma N et al., Plant Physiol 134: 171-81 (2004))。志賀毒素の触媒活性は、インビトロとインビボの両方で観察されている。志賀毒素エフェクター活性のためのアッセイの非限定的な例は、例えば、タンパク質合成阻害活性、脱プリン活性、細胞増殖の阻害、細胞毒性、スーパーコイルDNAの緩和活性、及びヌクレアーゼ活性などの様々な活性を測定する。
志賀毒素エフェクター機能の保持は、本明細書で使用される場合、同じ条件下における野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド対照(例えば志賀毒素A1断片)又は野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば志賀毒素A1断片)を含む細胞標的化分子と同程度の、適切な定量的アッセイによって測定された再現性のある志賀毒素の機能的な活性のレベルを示すことができることを指す。リボソーム不活性化又はリボソーム阻害の志賀毒素エフェクター機能に関して、保持された志賀毒素エフェクター機能は、例えば熟練した作業者公知の及び/又は本明細書に記載されるアッセイを使用することなどによるインビトロの環境で、10,000ピコモル(pM)以下のIC50を表すことである。標的陽性細胞殺滅アッセイにおける細胞毒性の志賀毒素エフェクター機能に関して、保持された志賀毒素エフェクター機能は、例えば熟練した作業者公知の及び/又は本明細書に記載されるアッセイを使用することによって示されるような、適切な細胞外標的生体分子の細胞型及びその発現に応じて、1,000ナノモル(nM)以下のCD50を表すことである。
特許請求された発明の目的に関して、用語「同等な(equivalent)」は、リボソーム阻害に関して、同じ条件下における参照分子(例えば、第2の細胞標的化分子又は第3の細胞標的化分子)の活性の10%以内又はそれ未満を再現性よく示す、適切な定量的アッセイによって測定された再現性のあるリボソーム阻害活性の実験的に測定されたレベルを意味する。
特許請求された発明の目的に関して、用語「同等な(equivalent)」は、細胞毒性に関して、同じ条件下における参照分子(例えば、第2の細胞標的化分子又は第3の細胞標的化分子)の活性の10%以内又はそれ未満を再現性よく示す、適切な定量的アッセイによって測定された再現性のある細胞毒性の実験的に測定されたレベルを意味する。
本明細書で使用される場合、用語「弱化した」は、細胞毒性に関して、分子が、同じ条件下において参照分子によって表されるCD50の10倍~100倍のCD50を表すか又は表したことを意味する。
いくつかの試料について、IC50又はCD50のいずれかの正確な値は、正確な曲線のあてはめに必要なデータポイントを収集することができないために入手が難しい場合がある。例えば、理論上、所与の試料の一連の濃度で50%より大きいリボソーム阻害又は細胞死がそれぞれ起こらない場合、IC50もCD50も決定することができない。例示的な志賀毒素エフェクター機能アッセイ、例えば実施例で説明されるアッセイなどからのデータの分析で説明されるような正確に曲線をあてはめるには不十分なデータは、実際の志賀毒素エフェクター機能を代表するものとして考慮すべきではない。
志賀毒素エフェクター機能における活性を検出できないことは、細胞の侵入、細胞内経路決定、及び/又は酵素活性の欠如というより、不適切な発現、ポリペプチドフォールディング、及び/又はポリペプチド安定性による可能性がある。志賀毒素エフェクター機能のためのアッセイは、有意な量の志賀毒素エフェクター機能活性を測定するのに本発明の細胞標的化分子をそれほど多く必要としない場合がある。エフェクター機能が低いか又はない根本的な原因がタンパク質発現又は安定性に関連することが実験的に決定される程度に、当業者は、志賀毒素の機能的なエフェクター活性を回復させ測定が可能になるように、当業界において公知のタンパク質化学及び分子工学技術を使用してこのような要因を相殺することができる。例として、不適切な細胞ベースの発現は、異なる発現制御配列を使用することによって相殺される場合もあるし、不適切なポリペプチドフォールディング及び/又は安定性は、末端配列を安定化すること、又はタンパク質などの3次元構造を安定化させる非エフェクター領域中の補償的な変異によって利益を得る場合もある。個々の志賀毒素機能について新しいアッセイが利用可能となった場合、志賀毒素エフェクター領域又はポリペプチドは、それらの志賀毒素エフェクター機能の何らかのレベルに関して、例えば、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドのある特定の倍の活性の範囲内であることについて、分析することができる。意味のある活性の差の例としては、例えば、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドの1000倍若しくは100倍以下の活性を有するか、又は機能性ノックダウン若しくはノックアウト志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較して3倍~30倍以上の活性を有する、志賀毒素エフェクター領域がある。
ある特定の志賀毒素エフェクター機能、例えば細胞内経路決定機能は、容易に測定可能ではない。例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチドが細胞毒性にならないこと及び/又は異種CD8+T細胞エピトープを送達できないことが不適切な細胞内経路決定に起因するかどうかを区別する慣例的な定量的アッセイはないが、試験が利用可能である場合に、適切な野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較してあらゆる有意なレベルの細胞内経路決定について志賀毒素エフェクターポリペプチドを分析することができる。しかしながら、本発明の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターのポリペプチド成分が、野生型志賀毒素Aサブユニットコンストラクトと同程度又は同等な細胞毒性を表す場合、細胞内経路決定活性レベルは、それぞれ少なくとも試験された条件下で野生型志賀毒素Aサブユニットコンストラクトの細胞内経路決定活性レベルと同程度又は同等であると推論される。
個々の志賀毒素の機能のための新しいアッセイが利用可能になる場合、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む細胞標的化分子は、それらの志賀毒素エフェクター機能のあらゆるレベルに関して、例えば野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドの活性の1000倍若しくは100倍以内又はそれ未満であること、又は機能的にノックアウトされた志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較して3倍から30倍又はそれより大きい活性を示すことに関して分析することができる。
十分な細胞内経路決定は、細胞毒性アッセイ、例えばT細胞エピトープ提示に基づく又はサイトゾル及び/又は小胞体に局在化した標的基質に関与する志賀毒素エフェクター機能に基づく細胞毒性アッセイなどで細胞標的化分子の志賀毒素細胞毒性活性レベルを観察することによって単に推測することができる。
「有意な」志賀毒素エフェクター機能の保持は、本明細書で使用される場合、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド対照(例えば志賀毒素A1断片)と同程度の、適切な定量的アッセイによって測定された再現性のある志賀毒素の機能的な活性のレベルを表すことができることを指す。インビトロでのリボソーム阻害の場合、有意な志賀毒素エフェクター機能は、アッセイで使用されるリボソーム源(例えば細菌、古細菌、又は真核(藻類、真菌、植物、又は動物)源)に応じて300pM以下のIC50を示すことである。これは、触媒的に破壊されたSLT-1A1-251二重変異体(Y77S/E167D)の100,000pMのおよそのIC50と比較して有意に大きい阻害である。実験細胞培養における標的陽性細胞殺滅アッセイにおける細胞毒性の場合、有意な志賀毒素エフェクター機能は、結合領域及び細胞型の標的生体分子、特に、評価される分子によって標的化された適切な細胞外標的生体分子及び/又は細胞外のエピトープのその細胞型の発現及び/又は細胞表面表示に応じて、100、50、30nM、又はそれ未満のCD50を示すことである。これは、細胞株に応じて100~10,000nMのCD50を有する細胞標的化結合領域を含まない志賀毒素Aサブユニット単独(又は野生型志賀毒素A1断片)と比較して有意により大きい適切な標的陽性細胞集団に対する細胞毒性である。
本発明の目的に関して、さらに本発明の分子の志賀毒素エフェクター機能に関して、用語「適度な活性」は、天然に存在する志賀毒素を含む分子に関して本明細書において定義されるような少なくとも中程度のレベル(例えば11倍~1,000倍以内)の志賀毒素エフェクター活性を示すことを指し、志賀毒素エフェクター活性は、内在化効率、サイトゾルへの細胞内経路決定効率、標的細胞による送達されたエピトープの提示、リボソーム阻害、及び細胞毒性からなる群から選択される。細胞毒性に関して、志賀毒素エフェクター活性の適度なレベルは、野生型志賀毒素コンストラクトの1,000倍以内であること、例えば、野生型志賀毒素コンストラクト(例えば野生型志賀毒素A1断片を含む細胞標的化分子)が0.5nMのCD50を表す場合、500nM以下のCD50を示すことを含む。
本発明の目的に関して、及び本発明の分子の細胞毒性に関して、用語「最適な」は、野生型志賀毒素A1断片(例えば志賀毒素Aサブユニット又はある特定のそれらの短縮型バリアント)及び/又は天然に存在する志賀毒素を含む分子の細胞毒性の2、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍以内の志賀毒素触媒ドメインが媒介する細胞毒性のレベルを指す。
注目すべきことに、志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性が、野生型志賀毒素Aサブユニット又はそれらの断片と比較して低減される場合であっても、実際には、生物活性を弱化した志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用する適用は、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用するのと等しく又はそれより高く有効であり得るが、これは、最も高い効力のバリアントは望ましくない作用を表す可能性があるが、そのような作用は細胞毒性効力が低減されたバリアントにおいて最小化されるか又は低減されるためである。野生型志賀毒素は非常に強力であり、毒素が与えられた細胞のサイトゾルにわずか1つの毒素分子が到達した後、又は場合により毒素が与えられた細胞にわずか40個の毒素分子が内在化した後に、毒素が与えられた細胞を殺滅することができる。例えば細胞内経路決定又は細胞毒性などの志賀毒素エフェクター機能が野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較して顕著に低減した志賀毒素エフェクターポリペプチドは、それでもなお、例えば標的化された細胞を殺滅すること、異種エピトープ送達、並びに/又は特異的な細胞及びそれらの細胞内区画の検出を含む適用などの実際の適用に十分に強力であり得る。加えて、ある特定の活性が低減した志賀毒素エフェクターポリペプチドは、標的細胞のある特定の細胞内配置又は細胞内区画にカーゴ(例えば追加の外因性物質又はT細胞エピトープ)を送達するのに特に有用な場合もある。
用語「選択的な細胞毒性」は、分子の細胞毒性活性に関して、生体分子標的陽性細胞集団(例えば標的化された細胞型)と非標的化バイスタンダー細胞集団(例えば生体分子標的陰性細胞型)との間の細胞毒性の相対レベルを指し、これは、細胞毒性の選択性の測定基準、又は標的化された細胞と非標的化細胞との殺滅の優先性の指標を提供するための、非標的化細胞型のCD50に対する標的化された細胞型の半数細胞毒性濃度(CD50)の比率として表すことができる。
所与の細胞外標的生体分子(又は所与の標的生体分子の細胞外エピトープ)の細胞表面表示及び/又は密度は、本発明のある特定の細胞標的化分子を最も好適に使用することができる適用に影響を与えることができる。所与の標的生体分子の細胞表面表示及び/又は密度における細胞間の差は、本発明の所与の細胞標的化分子の細胞内在化の効率及び/又は細胞毒性効力を、定量的及び定性的の両方で変更することができる。細胞周期又は細胞分化における異なるポイントにおいて、標的生体分子陽性細胞間で、又は同じ細胞においてでも、所与の標的生体分子の細胞表面表示及び/又は密度を大幅に変更することができる。特定の細胞又は細胞集団における所与の標的生体分子及び/又は所与の標的生体分子のある特定の細胞外エピトープの合計の細胞表面表示は、蛍光活性化細胞分類(FACS)フローサイトメトリーを含む方法などの熟練した作業者公知の方法を使用して決定することができる。
本発明の目的に関して、成句「細胞の表面上に天然に存在する標的生体分子」は、それ自体の内部機序を使用して標的生体分子を発現し、それ自体の内部機序を使用して細胞表面に標的生体分子を局在化させ、結果として、標的生体分子が、その細胞と物理的に結合し、標的生体分子の少なくとも一部が、細胞外空間から、すなわち、細胞の表面上で接触可能となっている、細胞を意味する。
本明細書で使用される場合、用語「破壊された」、「破壊」、又は「破壊すること」、及び文法上のその変化形は、ポリペプチド領域又はポリペプチド内の機構に関して、領域内の又は破壊された機構を構成する少なくとも1つのアミノ酸の変更を指す。アミノ酸の変更は、例えばポリペプチドのアミノ酸配列を変更する欠失、逆位、挿入、又は置換などの様々な変異を含む。アミノ酸の変更はまた、例えばアミノ酸官能基における1つ又は2つ以上の原子の変更、又はアミノ酸官能基への1つ又は2つ以上の原子の付加などの化学的変化も含む。
「脱免疫化された」は、本明細書で使用される場合、脊索動物への投与後、例えば野生型ペプチド領域、ポリペプチド領域、又はポリペプチドなどの参照分子と比較して低減した抗原性及び/又は免疫原性の見込みを意味する。これは、参照分子と比較して1つ又は2つ以上のデノボ、抗原性及び/又は免疫原性エピトープが導入されているにもかかわらず、全体的な抗原性及び/又は免疫原性の見込みが低減していることを含む。ある特定の実施形態に関して、「脱免疫化された」は、分子が、哺乳動物への投与後に、例えば野生型志賀毒素A1断片などのその由来となった「親の」分子と比較して低減した抗原性及び/又は免疫原性を表することを意味する。ある特定の実施形態において、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、参照分子と比較して相対的な抗原性を示すことが可能であり、例えば定量的ELISA又はウエスタンブロット分析のような熟練した作業者公知の及び/又は本明細書に記載されるアッセイなどの同じアッセイによって測定された同じ条件下における参照分子の抗原性より、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又はそれより大きく低減された抗原性を示すことができる。ある特定の実施形態において、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、参照分子と比較して相対的な免疫原性を表すことが可能であり、例えば所与のタイムポイントで分子の非経口投与を受けた後の哺乳動物中で産生された抗分子抗体の定量的な測定のような熟練した作業者公知の及び/又は本明細書に記載されるアッセイなどの同じアッセイによって測定された同じ条件下における参照分子の免疫原性より、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、99%、又はそれより大きく低減された免疫原性を示すことができる。例示的な細胞標的化分子の相対的な免疫原性は、数日間、数週間、及び/又は数カ月間の期間にわたる繰り返しの非経口投与の後に、細胞標的化分子に対する適応免疫反応(例えば、インビボ抗体応答)又は自然免疫反応についてのアッセイを使用して判定することができる。
例示的な細胞標的化分子の相対的な免疫原性は、長期間にわたる(over periods of many)繰り返しの非経口投与の後にインビボにおける細胞標的化分子に対する抗体応答のためのアッセイを使用して決定された。
本発明の目的に関して、成句「CD8+T細胞で過免疫された」は、細胞標的化分子が、生きた脊索動物中の有核の脊索動物細胞の内部に存在する場合、CD8+T細胞の抗原性又は免疫原性に関して、いずれの異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドも含まない同じ分子と比較して増加した抗原性及び/又は免疫原性の見込みを有することを意味する。
用語「組み込まれた」及び文法上のその変化形は、T細胞エピトープ又はT細胞エピトープ-ポリペプチドのペプチド成分に関して、開始のポリペプチド領域と同じアミノ酸残基総数を共有する新しいポリペプチド配列を生成するための、ポリペプチド領域内における異なるアミノ酸での1つ又は2つ以上のアミノ酸の内部の置き換えを指す。したがって、用語「組み込まれた」は、いかなる追加のアミノ酸、ペプチド、又はポリペプチド成分の開始のポリペプチドへのいかなる外部からの末端融合も、いかなる追加のアミノ酸残基のいかなる追加の内部挿入も含まないが、既存のアミノ酸の置換のみを含む。内部の置き換えは、単にアミノ酸残基の置換によって、又は一連の置換、欠失、挿入、及び/若しくは逆位によって達成することができる。1つ又は2つ以上のアミノ酸の挿入が使用される場合、組み込まれたT細胞エピトープをもたらすためには、挿入とは別に同数の近位のアミノ酸を欠失させなければならない。これは、本発明のポリペプチド内に含有されるT細胞エピトープに関する用語「挿入された」の使用とは対照的であり、この用語は、ポリペプチド内部への1つ又は2つ以上のアミノ酸の挿入を指し、その結果として開始のポリペプチドと比較してアミノ酸残基数が増加した新しいポリペプチドが生じる。
用語「挿入された」及び文法上のその変化形は、ポリペプチド内に含有されるT細胞エピトープに関して、ポリペプチド内への1つ又は2つ以上のアミノ酸の挿入を指し、その結果として開始のポリペプチドと比較してアミノ酸残基数が増加した新しいポリペプチド配列が生じる。
本発明の目的に関して、成句「アミノ末端の近位」は、本発明の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の位置を参照した場合、細胞標的化分子が本明細書で言及される適切なレベルの志賀毒素エフェクター機能活性(例えば、ある特定のレベルの細胞毒性効力)を示すことができる限り、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の少なくとも1つのアミノ酸残基が、細胞標的化分子のアミノ末端の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又はそれより多くのアミノ酸残基以内、例えば18~20アミノ酸残基までである距離を指す。したがって本発明のある特定の実施形態に関して、アミノ末端を志賀毒素エフェクターポリペプチドに融合させたいずれのアミノ酸残基も、志賀毒素エフェクターポリペプチドの機能的な活性が本明細書で必要な適切な活性レベルより低く低減されるようにいずれの志賀毒素エフェクター機能を低減させないと予想される(例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域のアミノ末端の近くで構造に立体的に干渉することによって)。
本発明の目的に関して、成句「アミノ末端のより近位」は、本発明の細胞標的化分子内の志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の配置を別の成分(例えば、細胞を標的化する、結合領域、分子部分、及び/又は追加の外因性物質)と比較して参照した場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の少なくとも1つのアミノ酸残基が、他の参照された成分と比較して、本発明の細胞標的化分子の直鎖状のポリペプチド成分のアミノ末端により近い配置を指す。
本発明の目的に関して、成句「志賀毒素ファミリーのメンバーの1つのAサブユニット由来の活性な酵素ドメイン」は、触媒性のリボソーム不活性化メカニズムを介してタンパク質合成を阻害する能力を有することを指す。天然に存在する志賀毒素の酵素活性は、例えば生きた細胞の非存在下におけるRNA翻訳を含むインビトロでのアッセイ、又は生きた細胞におけるRNA翻訳を含むインビボでのアッセイなどの熟練した作業者公知のアッセイを使用して、タンパク質の翻訳を阻害する能力と定義される場合がある。熟練した作業者公知の及び/又は本明細書に記載されるアッセイを使用して、志賀毒素の酵素活性の効力は、例えばリボソームニッキングアッセイなどによりリボソームRNA(rRNA)に対するN-グリコシダーゼ活性を観察することによって直接的にアセスメントしてもよいし、及び/又はリボソーム機能及び/又はタンパク質合成の阻害を観察することによって間接的にアセスメントしてもよい。
本発明の目的に関して、用語「志賀毒素A1断片領域」は、志賀毒素A1断片から本質的になるか及び/又は志賀毒素の志賀毒素A1断片由来のポリペプチド領域を指す。
本発明の目的に関して、用語「末端」、「アミノ末端」、又は「カルボキシ末端」は、細胞標的化分子に関して、細胞標的化分子のポリペプチド鎖(例えば、単一の連続的なポリペプチド鎖)の最後のアミノ酸残基を一般的に指す。細胞標的化分子は1つより多くのポリペプチド又はタンパク質を含む可能性があることから、本発明の細胞標的化分子は、複数のアミノ末端及びカルボキシ末端を含む可能性がある。例えば、細胞標的化分子の「アミノ末端」は、ポリペプチドのアミノ末端の終わりの部分を示すポリペプチド鎖の第1のアミノ酸残基と定義される場合があり、これは、一般的に、開始のアミノ酸残基がいずれのアミノ酸残基とのペプチド結合も有さず、開始のアミノ酸残基の主鎖のアミノ基を含むか、又はN-アルキル化されたアルファアミノ酸残基のクラスのメンバーである開始のアミノ酸残基にとって等価な窒素を含むことを特徴とする。同様に、細胞標的化分子の「カルボキシ末端」は、ポリペプチドのカルボキシル末端の終わりの部分を示すポリペプチド鎖の最後のアミノ酸残基と定義される場合があり、これは、一般的に、最後のアミノ酸残基が、その主鎖のカルボキシル基のアルファ-炭素にペプチド結合によって連結されたいずれのアミノ酸残基も有さないことを特徴とする。
本発明の目的に関して、成句「志賀毒素A1断片由来領域」は、志賀毒素エフェクターポリペプチドのすべて又は一部を指し、この領域は、天然に存在する志賀毒素A1断片又はその短縮形に相同なポリペプチド、例えば、SLT-1A(配列番号1)のアミノ酸75~239、StxA(配列番号2)のアミノ酸75~239、若しくは(配列番号3)のアミノ酸77~238、又は志賀毒素ファミリーのメンバーの別のAサブユニットにおける等価な領域からなるか又はそれを含むポリペプチドなどからなる。「志賀毒素A1断片由来領域」のカルボキシ末端は、天然に存在する志賀毒素A1断片と比べて、(1)天然に存在する志賀毒素A1断片との相同性を共有するカルボキシ末端のアミノ酸残基で終わるものとして、(2)A1断片及びA2断片のジャンクションで終わるものとして、(3)フューリン切断部位若しくは破壊されたフューリン切断部位で終わるものとして、並びに/又は(4)志賀毒素A1断片のカルボキシ末端短縮形、すなわち、天然に存在する志賀毒素A1断片との相同性を共有するカルボキシ末端のアミノ酸残基で終わるものとして、定義される。
本発明の目的に関して、成句「志賀毒素A1断片のカルボキシ末端領域」は、天然に存在する志賀毒素A1断片由来のポリペプチド領域を指し、この領域は、疎水性残基(例えば、StxA-A1及びSLT-1A1のV236、並びにSLT-2A1のV235)で始まり、それに続いて疎水性残基があり、さらにこの領域は、志賀毒素A1断片ポリペプチド間で保存されたフューリン切断部位で終わり、天然の志賀毒素AサブユニットにおけるA1断片とA2断片との間のジャンクションで終わる。本発明の目的に関して、志賀毒素A1断片のカルボキシ末端領域は、志賀毒素A1断片ポリペプチドのカルボキシ末端由来のペプチド領域、例えば、志賀毒素A1断片のカルボキシ末端を含むか又はそれから本質的になるペプチド領域などを含む。志賀毒素A1断片のカルボキシ末端由来のペプチド領域の非限定的な例としては、志賀毒素Aサブユニットバリアント(配列番号1~2及び4~6)における、236位から、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、又は251位まで;及びSLT-2Aバリアント(配列番号3及び7~18)における、235位から、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、又は250位までの天然に位置するアミノ酸残基配列が挙げられる。
本発明の目的に関して、成句「A1断片ポリペプチドのカルボキシ末端の近位」は、連結された分子部分及び/又は結合領域に関して、志賀毒素A1断片ポリペプチドの最後の残基を定義するアミノ酸残基から、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12アミノ酸残基以内であることを指す。
本発明の目的に関して、成句「A1断片由来の領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする」は、A1断片由来の領域のカルボキシ末端中のアミノ酸残基、例えば、志賀毒素Aバリアント(配列番号1~2及び4~6)における236~251位又はSLT-2Aバリアント(配列番号3及び7~18)における235~250位のいずれか1つにおける天然に位置するアミノ酸残基由来のアミノ酸残基などに連結及び/又は融合した、サイズが4.5kDaであるか又はそれより大きいあらゆる分子部分(例えば、免疫グロブリン型の結合領域)を含む。本発明の目的に関して、成句「A1断片由来の領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする」はまた、A1断片由来の領域のカルボキシ末端中のアミノ酸残基、例えば、A1断片由来の領域の最後のアミノ酸及び/又は志賀毒素エフェクターポリペプチドに対するカルボキシ末端のアミノ酸残基などに連結及び/又は融合した、サイズが4.5kDaであるか又はそれより大きいあらゆる分子部分(例えば、免疫グロブリン型の結合領域)も含む。本発明の目的に関して、成句「A1断片由来の領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする」はまた、A1断片由来の領域のカルボキシ末端の細胞による認識、例えば真核細胞のERAD機構による認識などを物理的に防ぐ、サイズが4.5kDaであるか又はそれより大きいあらゆる分子部分(例えば、免疫グロブリン型の結合領域)も含む。
本発明の目的に関して、結合領域、例えば、少なくとも40アミノ酸を含むポリペプチドを含む、及びA1断片由来の領域を含む志賀毒素エフェクターポリペプチド領域のカルボキシ末端に連結されている(例えば、融合されている)免疫グロブリン型の結合領域などは、「A1断片由来の領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする」分子部分である。
本発明の目的に関して、結合領域、例えば、少なくとも40アミノ酸を含むポリペプチドを含む、及びA1断片由来の領域を含む志賀毒素エフェクターポリペプチド領域のカルボキシ末端に連結されている(例えば、融合されている)免疫グロブリン型の結合領域などは、「A1断片由来の領域のカルボキシ末端を妨害する」分子部分である。
本発明の目的に関して、用語「志賀毒素ファミリーのメンバーのA1断片」は、志賀毒素Aサブユニット間で保存されており、野生型志賀毒素Aサブユニット中でA1断片とA2断片との間に配置されたフューリン切断部位でフューリンによりタンパク質分解された後の志賀毒素Aサブユニットの残存したアミノ末端断片を指す。
特許請求された発明の目的に関して、成句「A1断片領域のカルボキシ末端におけるフューリン切断モチーフ」は、志賀毒素Aサブユニット間で保存されており、天然に存在する志賀毒素Aサブユニット中のA1断片とA2断片との間でジャンクションを架橋する特異的なフューリン切断モチーフを指す。
本発明の目的に関して、成句「A1断片領域のカルボキシ末端の近位におけるフューリン切断部位」は、A1断片領域又はA1断片由来の領域中の最後のアミノ酸残基を定義するアミノ酸残基から、1、2、3、4、5、6、7未満の、又はそれより多くのアミノ酸残基の距離内のアミノ酸残基を有するあらゆる同定可能なフューリン切断部位を指し、例えば、A1断片領域又はA1断片由来の領域のカルボキシ末端に配置されている、例えば、例えば本発明の細胞標的化分子の分子部分などの分子の別の成分へのA1断片由来の領域の連結部の近位に配置されているフューリン切断モチーフを含む。
本発明の目的に関して、成句「破壊されたフューリン切断モチーフ」は、(i)本明細書で説明される特定のフューリン切断モチーフ、及び(ii)参照分子と比較してフューリン切断が低減した分子、例えば、同じ条件下における同じアッセイで観察された参照分子のフューリン切断より30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、又はそれ未満(切断なしの場合の100%を含む)の、再現性よく観察されるフューリン切断の低減を示す分子を付与することができる、変異及び/又は短縮化を含む、フューリン切断モチーフを指す。参照分子と比較したフューリン切断のパーセンテージは、参照分子の切断された材料:切断されていない材料で割った所望の分子の切断された材料:切断されていない材料の比率として表すことができる(例えば、国際公開第2015/191764号パンフレット、米国特許第2016/0177284号明細書を参照)。好適な参照分子の非限定的な例としては、野生型志賀毒素フューリン切断モチーフ並びに/又は本明細書で説明されるフューリン切断部位を含むある特定の分子、並びに/又は以下の実施例で使用される分子が挙げられる。
本発明の目的に関して、成句「フューリン切断耐性」は、分子又はそれらの特定のポリペプチド領域が、本明細書に記載される方法を使用することなどによる熟練した作業者にとって利用可能ないずれかの手段によってアッセイした場合、(i)野生型志賀毒素Aサブユニットにおける志賀毒素A1断片のカルボキシ末端、又は(ii)A1断片とA2断片との間のジャンクションに天然に位置する、天然に存在するフューリン切断部位が破壊されていないコンストラクトの志賀毒素A1断片由来の領域のカルボキシ末端より少ないフューリン切断を再現性よく示すことを意味する。
本発明の目的に関して、成句「志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニット由来の活性な酵素ドメイン」は、志賀毒素の酵素活性に基づき触媒によるリボソームの不活性化を介してタンパク質合成を阻害する能力を有するポリペプチド構造を指す。タンパク質合成の阻害活性及び/又は触媒によるリボソームの不活性化を示す分子構造の能力は、様々な熟練した作業者公知のアッセイ、例えば、生きた細胞の非存在下におけるRNA翻訳アッセイを含むインビトロでのアッセイ、又はインビボでの生きた細胞のリボソームを含むアッセイを使用して観察することができる。例えば、熟練した作業者公知のアッセイを使用して、志賀毒素の酵素活性に基づく分子の酵素活性は、例えばリボソームニッキングアッセイなどのリボソームRNA(rRNA)に対するN-グリコシダーゼ活性を観察することによって直接的に、並びに/又はリボソーム機能、RNA翻訳、及び/若しくはタンパク質合成の阻害を観察することによって間接的にアセスメントすることができる。
「組合せ」は、本明細書で志賀毒素エフェクターポリペプチドに関して使用される場合、各部分領域が(1)内在性エピトープ又はエピトープ領域における破壊及び(2)志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフの少なくとも1つを含む、2つ又は3つ以上の部分領域を含む志賀毒素エフェクターポリペプチドを説明する。
本明細書で使用される場合、細胞標的化分子に関する用語「多価」は、2つ又は3つ以上の高親和性結合領域を含む、個々の標的結合分子又は複数の標的結合分子、例えば、2つ又は3つ以上の結合領域を含むタンパク質などを指し、ここで、それぞれ個々の結合領域は、標的生体分子の細胞外部分に対して、1リットル当たり10-5~10-12モルの解離定数を有する。
本明細書で使用される場合、タンパク質及び/又はタンパク質性分子の説明に関する用語「単量体」は、その2次構造又は3次構造にかかわらず、単一のポリヌクレオチド鋳型からリボソームによって合成され得る、単一の連続的なポリペプチドからなるポリペプチド成分を1つだけ含む分子を指し、これには、後に環状構造を形成する連続的な直鎖状ポリペプチドが含まれる。対照的に、多量体分子は、一緒になって、単一のポリヌクレオチド鋳型からリボソームによって合成され得る単一の連続的なポリペプチドを形成しない、2つ又は3つ以上のポリペプチド(例えば、サブユニット)を含む。
本明細書で使用される場合、タンパク質及び/又はタンパク質性分子の説明に関する用語「多量体」は、一緒に会合される及び/又は一緒に連結される2つ又は3つ以上の個々のポリペプチド成分を含む分子、例えば、それぞれがそれ自体の連続的なポリペプチドである、2つの成分からなる分子を指す。例えば、分子の成分間での会合又は連結には、1)1つ若しくは2つ以上の非共有結合による相互作用、2)1つ若しくは2つ以上の翻訳後の共有結合による相互作用、3)1つ若しくは2つ以上の共有結合による化学的コンジュゲーション、及び/又は4)1つ若しくは2つ以上の共有結合による相互作用を挙げることができ、これらは、2つ又は3つ以上のポリペプチド成分の配列の結果得られる、非線形ポリペプチド、例えば、分岐状又は環状ポリペプチド構造などを含む単一の分子をもたらす。単一のポリヌクレオチド鋳型からリボソームによって合成される単一の連続的なポリペプチドにおける1つ又は2つ以上のペプチド結合のタンパク質分解切断の結果として、2つの非連続的なポリペプチドを含む分子は、「単量体」ではなく「多量体」である。
本発明は、例示的な非限定的な実施形態、及び添付の図面への参照を使用して、下記でより詳細に説明される。しかしながらこの発明は、多くの様々な形態を具体化することができ、以下に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。そうではなく、この開示が十分であり、当業者に本発明の範囲を伝えられるように、これらの実施形態は提供される。
導入
感染状態の模倣を誘導することによって、様々な有益な免疫応答を局所的に活性化するため及び標的化される細胞(例えば、腫瘍細胞)に外来物であるとして特異的に印を付けるために、特に、高度に免疫原性の感染病原体由来の外来性エピトープを使用することにより、患者内で、悪性細胞(例えば、腫瘍細胞)及び/又は悪性組織の場所(例えば、腫瘍)に対して特異的に感染様免疫反応を誘導することによって、免疫系の力を利用することが可能であり得る。或いは、このアプローチは、高度に免疫原性のネオエピトープ(感染病原体若しくは非感染病原体のいずれかに由来する)又は非感染病原体由来の高度に免疫原性の非自己エピトープ、例えば、腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原、及び植物、真菌などに由来する分子などを使用してもよい。
本発明は、高度に免疫原性のCD8+T細胞抗原、例えば、ペプチド-エピトープなどを、脊索動物細胞のMHCクラスI提示系に送達するために、志賀毒素Aサブユニット由来のポリペプチドがそれ自体の細胞内経路決定を行う能力を利用する。本発明は、異種CD8+T細胞エピトープを、標的細胞のMHCクラスI系に送達し、送達されたエピトープの細胞表面上での提示をもたらすことができる、様々な例示的な志賀毒素Aサブユニット由来のコンストラクトを提供し、ここで、志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、(1)脱免疫化、(2)プロテアーゼ感受性の低減、及び/又は(3)組み込まれたT細胞エピトープを提供する変異の組合せを含む。MHCクラスI分子との複合体で細胞表面上に提示されたある特定のペプチド-エピトープは、CD8+エフェクターT細胞に、提示細胞を殺滅するように、並びに局所領域において他の免疫応答を刺激するように、シグナルを伝達することができる。したがって、本発明は、特定の標的細胞を、例えば、MHCクラスI経路によるある特定のCD8+T細胞エピトープ-ペプチドの提示を介して、殺滅させる、志賀毒素Aサブユニット由来の細胞標的化分子を提供する。本発明の細胞標的化分子は、例えば、細胞殺滅分子、細胞毒性治療薬、治療用送達剤、及び診断用分子として利用することができる。
I.本発明の細胞標的化分子の一般的な構造
本発明の細胞標的化分子は、それぞれが1)細胞標的化結合領域と、2)志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドと、3)志賀毒素A1断片領域に組み込まれていない又は挿入されておらず、分子の志賀毒素Aサブユニット及び結合領域にとって異種である、CD8+T細胞エピトープ-ペプチドとを含む。この系は、任意の数の多様なCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを、本発明の細胞標的化分子によって標的細胞のMHCクラスI提示経路に送達するためのカーゴとして使用することができるという点で、モジュール式である。
A.本発明の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の一般的な構造
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子は、少なくとも1つの、野生型志賀毒素Aサブユニット由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドを含むが、1つ又は2つ以上の構造改変、例えば、短縮化及び/又はアミノ酸残基の置換のような変異などを含む。ある特定の実施形態に関して、本発明は、以下の志賀毒素エフェクターポリペプチド部分領域:(1)脱免疫化された部分領域、(2)志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に近いプロテアーゼ切断耐性の部分領域、及び(3)T細胞エピトープ-ペプチドの組み込まれた又は挿入された部分領域のうちの2つ又は3つ以上の組合せを含む、改善された志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを改変することを含む。
本発明の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、1つ又は2つ以上の志賀毒素機能を示すことができる、志賀毒素ファミリーの志賀毒素Aサブユニットメンバーに由来するポリペプチドである。本発明における使用に適切であるか、又は当業界で公知の技術を使用して改変して本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドにするための親ポリペプチドとして使用するのに適切な、多数の志賀毒素エフェクターポリペプチドがある(例えば、Cheung M et al., Mol Cancer 9: 28 (2010)、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレットを参照)。志賀毒素機能としては、例えば、細胞に入るのを促進すること、細胞内在化を増加させること、逆行性輸送を指示すること、細胞内経路決定を指示すること、エンドソーム区画からサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、細胞内分解を回避すること、リボソームを触媒的に不活性化すること、細胞毒性をもたらすこと、及び細胞分裂停止作用をもたらすことが挙げられる。
タンパク質毒素の志賀毒素ファミリーは、構造的及び機能的に関連する様々な天然に存在する毒素、例えば、志賀毒素、志賀様毒素1、及び志賀様毒素2で構成される(Johannes L, Romer W, Nat Rev Microbiol 8:105-16 (2010))。志賀毒素ファミリーのホロトキシンメンバーは、いくつかの宿主細胞の表面上に存在する特定のスフィンゴ糖脂質に優先的に結合する標的化ドメイン、及び細胞の内部に入ればリボソームを永久に不活性化することが可能な酵素ドメインを含有する(Johannes L, Romer W, Nat Rev Microbiol 8:105-16 (2010))。志賀毒素ファミリーのメンバーは、同じ全体構造及び作用機序を共有している(Engedal N et al., Microbial Biotech 4: 32-46 (2011))。例えば、Stx、SLT-1、及びSLT-2は、無細胞系において区別できない酵素活性を提示する(Head S et al., J Biol Chem 266:3617-21 (1991);Tesh V et al., Infect Immun 61:3392-402 (1993);Brigotti M et al., Toxicon 35:1431-7 (1997))。
志賀毒素ファミリーは、志賀赤痢菌(S. dysenteriae)血清型1から単離した真性志賀毒素(Stx)、腸管出血性大腸菌(E. coli)の血清型から単離した志賀様毒素1バリアント(SLT1又はStx1又はSLT-1又はSlt-I)、並びに腸管出血性大腸菌の血清型から単離した志賀様毒素2バリアント(SLT2又はStx2又はSLT-2)を含む。SLT1は、1つのアミノ酸残基だけがStxと異なっており、両方ともベロ細胞毒素又はベロ毒素(VT)と称されてきた(O’Brien A, Curr Top Microbiol Immunol 180: 65-94 (1992))。SLT1及びSLT2バリアントは一次アミノ酸配列レベルで互いに約53~60%しか類似していないにもかかわらず、それらは、志賀毒素ファミリーのメンバーに共通する酵素活性及び細胞毒性の機構を共有している(Johannes L, Romer W, Nat Rev Microbiol 8:105-16 (2010))。既定のサブタイプStx1a、Stx1c、Stx1d、Stx1e、Stx2a-g、及びStx2dactなど、39種を上回る異なる志賀毒素が、説明されている(Scheutz F et al., J Clin Microbiol 50: 2951-63 (2012);Probert W et al., J Clin Microbiol 52: 2346-51 (2014))。志賀毒素をコードする遺伝子は、遺伝子水平伝播を介して細菌種間で伝播し得るため、志賀毒素ファミリーのメンバーは、通常、いずれの細菌種にも制限されない(Strauch E et al., Infect Immun 69: 7588-95 (2001);Bielaszewska M et al., Appl Environ Micrbiol 73: 3144-50 (2007);Zhaxybayeva O, Doolittle W, Curr Biol 21: R242-6 (2011);Kruger A, Lucchesi P, Microbiology 161: 451-62 (2015))。種間伝播の例として、志賀毒素は、患者から単離されたヘモリチカス(A. haemolyticus)の株において発見されている(Grotiuz G et al., J Clin Microbiol 44: 3838-41 (2006))。志賀毒素をコードするポリヌクレオチドが新しい亜種又は種に入ると、志賀毒素のアミノ酸配列は、遺伝的浮動及び/又は選択圧力によりわずかな配列バリエーションを生じる可能性があるが、依然として、志賀毒素ファミリーのメンバーに共通する細胞毒性の機構を保持すると推測される(Scheutz F et al., J Clin Microbiol 50: 2951-63 (2012)を参照)。
1.脱免疫化された志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド
ある特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、野生型志賀毒素、野生型志賀毒素ポリペプチド、及び/又は野生型ポリペプチド配列のみを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドなどと比較して、脱免疫化されている。本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、それぞれが、脊索動物にそのポリペプチドを投与した後の志賀毒素エフェクターポリペプチドの抗原性及び/又は免疫原性の見込みを低減するために、少なくとも1つの推定上の内在性エピトープ領域の破壊を含む。志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は志賀毒素Aサブユニットポリペプチドは、天然に存在するかどうかにかかわらず、本明細書に記載される方法、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、及び/若しくは国際公開第2016/196344号パンフレットに記載される方法、並びに/又は熟練した作業者に公知の方法によって、脱免疫化することができ、ここで、結果として得られる分子は、1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニット機能を保持する。
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、その天然の志賀毒素Bサブユニットのいずれの形態からも解離された志賀毒素Aサブユニットに由来するポリペプチドを含むか又はそれから本質的になる。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素Bサブユニットの細胞標的化ドメインを含まない。原型的な志賀毒素は、天然には、志賀毒素Bサブユニットを介してヒト細胞表面受容体であるグロボトリアオシルセラミド(Gb3、Gb3Cer、又はCD77)及びグロボテトラオシルセラミド(Gb4又はGb4Cer)を標的とするが、これにより、標的化する細胞型が限定されること、並びに血管内皮細胞、ある特定の腎臓上皮細胞、及び/又は呼吸器上皮細胞を不要に標的化する可能性があることにより、潜在的な用途が著しく制限される(Tesh V et al., Infect Immun 61: 3392-402 (1993);Ling H et al., Biochemistry 37: 1777-88 (1998);Bast D et al., Mol Microbiol 32: 953-60 (1999);Rutjes N et al., Kidney Int 62: 832-45 (2002);Shimizu T et al., Microb Pathog 43: 88-95 (2007);Pina D et al., Biochim Biophys Acta 1768: 628-36 (2007);Shin I et al., BMB Rep 42: 310-4 (2009);Zumbrun S et al., Infect Immun 4488-99 (2010);Engedal N et al., Microb Biotechnol 4: 32-46 (2011);Gallegos K et al., PLoS ONE 7: e30368 (2012);Stahl A et al., PLoS Pathog 11: e1004619 (2015))。Gb3及びGb4は、様々な血管床由来の多形核白血球及びヒト内皮細胞など様々な健常な細胞型の細胞膜の細胞外側の膜に存在する一般的な中性のスフィンゴ脂質である。本発明の細胞標的化分子は、天然の志賀毒素Bサブユニットの機能的な結合ドメインを含むか又はそれから本質的になるいかなるポリペプチドも含まない。むしろ、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、細胞標的化を実現するために、異種結合領域と機能的に会合され得る。
ある特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、完全長志賀毒素Aサブユニット(例えば、配列番号1~18のいずれか1つ)を含むか又はそれから本質的になり得るが、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットが、それらのアミノ末端に、除去されると成熟志賀毒素Aサブユニットを生じ、熟練した作業者に認識可能な約22個のアミノ酸のシグナル配列を含有する前駆体形態を含み得ることに留意されたい。他の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、完全長志賀毒素Aサブユニットよりも短い短縮型志賀毒素Aサブユニット、例えば、当技術分野で公知の短縮形を含むか又はそれから本質的になる(例えば、国際公開第WO2014/164693号パンフレット;同第WO2015/113005号パンフレット;同第WO2015/113007パンフレット;同第WO2015/138452パンフレット;同第WO2015/191764号パンフレットを参照)。
ある特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、内在性エピトープ又はエピトープ領域、例えば、B細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープなどの破壊を含む。ある特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、本明細書に記載される少なくとも1つの内在性エピトープ領域の破壊を含み、この破壊は、脊索動物にそのポリペプチドを投与した後の志賀毒素エフェクターポリペプチドの抗原性及び/又は免疫原性の見込みを低減し、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニット機能、例えば、有意なレベルの志賀毒素の細胞毒性などを示すことができる。
用語「破壊された」又は「破壊」は、本明細書でエピトープ領域に関して使用される場合、エピトープ領域における少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失、逆転したアミノ酸残基のうちの少なくとも1つがエピトープ領域中にある2つ又は3つ以上のアミノ酸残基の逆位、エピトープ領域への少なくとも1つのアミノ酸の挿入、及びエピトープ領域中の少なくとも1つのアミノ酸残基の置換を指す。変異によるエピトープ領域の破壊は、非標準アミノ酸及び/又は非天然アミノ酸でのアミノ酸置換を含む。エピトープ領域は、代替として、エピトープ領域中の少なくとも1つのアミノ酸をマスクする共有結合で連結された化学構造の付加によるアミノ酸の改変を含む変異、例えば、ペグ化(Zhang C et al., BioDrugs 26:209-15 (2012)を参照)、低分子アジュバント(Flower D, Expert Opin Drug Discov 7:807-17 (2012))、及び部位特異的なアルブミン化(albumination)(Lim S et al., J Control Release 207-93 (2015))によって破壊されてもよい。
ある特定のエピトープ領域及び破壊は、本明細書において、配列表に記載される天然の志賀毒素Aサブユニットの具体的なアミノ酸位置を参照して示されるが、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットは、それらのアミノ末端に、除去されると成熟志賀毒素Aサブユニットを生じ、熟練した作業者に認識可能である、約22個のアミノ酸のシグナル配列を含有する前駆体形態を含み得ることに留意されたい。さらに、ある特定のエピトープ領域の破壊は、本明細書において、特定のアミノ酸(例えば、セリン残基の場合はS)が天然の志賀毒素Aサブユニット内で天然に存在する特定の位置(例えば、アミノ末端から33位のセリン残基の場合はS33)に続いて、考察されている具体的な変異においてその残基と置換されるアミノ酸(例えばS33Iは、アミノ末端から33のアミノ酸残基におけるイソロイシンによるセリンのアミノ酸置換を表す)を参照して示される。
ある特定の実施形態において、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号、及び/又は国際公開第2016/196344号に記載される少なくとも1つのエピトープ領域の破壊を含む。
ある特定の実施形態において、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの1~15;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの3~14;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの26~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの27~37;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの39~48;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの42~48;並びに配列番号1~18のうちのいずれかの53~66;配列番号1~18のうちのいずれかの94~115;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの141~153;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの140~156;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの179~190;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの179~191;配列番号3の204;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの205;並びに配列番号3及び7~18のうちのいずれかの210~218;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの240~260;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの243~257;配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの254~268;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの262~278;配列番号3及び7~18のうちのいずれかの281~297;並びに配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかの285~293;又は志賀毒素Aサブユニットポリペプチド、保存された志賀毒素エフェクターポリペプチド部分領域、及び/若しくは非天然の志賀毒素エフェクターポリペプチド配列における等価な領域からなる、天然に位置するアミノ酸の群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも1つの破壊を含む、完全長志賀毒素Aサブユニット(例えば、SLT-1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、若しくはSLT-2A(配列番号3)、又はそれらのバリアント(例えば、配列番号4~18))を含むか又はそれから本質的になる。
ある特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、短縮型志賀毒素Aサブユニットを含むか又はそれから本質的になる。志賀毒素Aサブユニットの短縮化は、志賀毒素エフェクター機能に影響を及ぼすことなく、エピトープ領域全体の欠失をもたらす可能性がある。有意な酵素活性を示すことが示された最小の志賀毒素Aサブユニット断片は、StxAの残基75~247で構成されるポリペプチドであった(Al-Jaufy A et al., Infect Immun 62: 956-60 (1994))。SLT-1A、StxA、又はSLT-2Aのカルボキシ末端を短縮化してアミノ酸1~251にすることにより、2つの予測されたB細胞エピトープ領域、2つの予測されたCD4陽性(CD4+)T細胞エピトープ、及び1つの予測された非連続的なB細胞エピトープが除去される。SLT-1A、StxA、又はSLT-2Aのアミノ末端を短縮化して75~293にすることにより、少なくとも3つの予測されたB細胞エピトープ領域、及び3つの予測されたCD4+T細胞エピトープが除去される。SLT-1A、StxA、又はSLT-2Aのアミノ末端及びカルボキシ末端の両方を短縮化して75~251にすることにより、少なくとも5つの予測されたB細胞エピトープ領域、4つの推定上のCD4+T細胞エピトープ、及び1つの予測された非連続的なB細胞エピトープが欠失する。
ある特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、提供されたエピトープ領域中に、少なくとも1つの変異、例えば、欠失、挿入、逆位、又は置換を有する完全長又は短縮型志賀毒素Aサブユニットを含んでいてもよく、又はそれから本質的になっていてもよい。ある特定のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、エピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸の欠失を含む破壊を含む。ある特定のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、エピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸の挿入を含む破壊を含む。ある特定のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、アミノ酸の逆位を含む破壊を含み、ここで、少なくとも1つの逆転したアミノ酸は、エピトープ領域内にある。ある特定のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、変異、例えば、非標準アミノ酸又は化学修飾された側鎖を有するアミノ酸へのアミノ酸置換を含む、破壊を含む。単一のアミノ酸置換の多数の例を、以下の実施例に提供する。
ある特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、天然の配列と比較して、A、G、V、L、I、P、C、M、F、S、D、N、Q、H、及びKからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、1つ又は2つ以上の変異を有する、完全長又は短縮型志賀毒素Aサブユニットを含んでいてもよく、又はそれから本質的になっていてもよい。ある特定のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、天然の配列と比較して、単一の変異を有する完全長又は短縮型志賀毒素Aサブユニットを含んでいてもよく、又はそれから本質的になっていてもよく、ここで、置換は、DからA、DからG、DからV、DからL、DからI、DからF、DからS、DからQ、EからA、EからG、EからV、EからL、EからI、EからF、EからS、EからQ、EからN、EからD、EからM、EからR、GからA、HからA、HからG、HからV、HからL、HからI、HからF、HからM、KからA、KからG、KからV、KからL、KからI、KからM、KからH、LからA、LからG、NからA、NからG、NからV、NからL、NからI、NからF、PからA、PからG、PからF、RからA、RからG、RからV、RからL、RからI、RからF、RからM、RからQ、RからS、RからK、RからH、SからA、SからG、SからV、SからL、SからI、SからF、SからM、TからA、TからG、TからV、TからL、TからI、TからF、TからM、TからS、YからA、YからG、YからV、YからL、YからI、YからF、及びYからMからなる群から選択される。
ある特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、天然のアミノ酸残基配列と比較して、免疫原性残基の及び/又はエピトープ領域内での少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、1つ又は2つ以上の変異を有する完全長又は短縮型志賀毒素Aサブユニットを含むか又はそれから本質的になり、ここで、少なくとも1つの置換は、配列番号1又は配列番号2の1;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の4;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の8;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の9;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の11;配列番号1又は配列番号2の33;配列番号1又は配列番号2の43;配列番号1又は配列番号2の44;配列番号1又は配列番号2の45;配列番号1又は配列番号2の46;配列番号1又は配列番号2の47;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の48;配列番号1又は配列番号2の49;配列番号1又は配列番号2の50;配列番号1又は配列番号2の51;配列番号1又は配列番号2の53;配列番号1又は配列番号2の54;配列番号1又は配列番号2の55;配列番号1又は配列番号2の56;配列番号1又は配列番号2の57;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の58;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の59;配列番号1又は配列番号2の60;配列番号1又は配列番号2の61;配列番号1又は配列番号2の62;配列番号1又は配列番号2の84;配列番号1又は配列番号2の88;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の94;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の96;配列番号1又は配列番号2の104;配列番号1又は配列番号2の105;配列番号1又は配列番号2の107;配列番号1又は配列番号2の108;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の109;配列番号1又は配列番号2の110;配列番号1又は配列番号2の111;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の112;配列番号1又は配列番号2の141;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の147;配列番号1又は配列番号2の154;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の179;配列番号1又は配列番号2の180;配列番号1又は配列番号2の181;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の183;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の184;配列番号1又は配列番号2の185;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の186;配列番号1又は配列番号2の187;配列番号1又は配列番号2の188;配列番号1又は配列番号2の189;配列番号1又は配列番号2の198;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;配列番号3の241;配列番号1又は配列番号2の242;配列番号1又は配列番号2の247;配列番号3の247;配列番号1又は配列番号2の248;配列番号3の250;配列番号1又は配列番号2の251;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の264;配列番号1又は配列番号2の265;及び配列番号1又は配列番号2の286からなる群から選択される、天然に位置するアミノ酸の群に生じる。
ある特定のさらなる実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、免疫原性残基の及び/又はエピトープ領域内での少なくとも1つの置換を有する完全長又は短縮型志賀毒素Aサブユニットを含むか又はそれから本質的になり、ここで、少なくとも1つのアミノ酸置換は、以下の天然の位置:配列番号1又は配列番号2の1;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の4;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の8;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の9;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の11;配列番号1又は配列番号2の33;配列番号1又は配列番号2の43;配列番号1又は配列番号2の44;配列番号1又は配列番号2の45;配列番号1又は配列番号2の46;配列番号1又は配列番号2の47;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の48;配列番号1又は配列番号2の49;配列番号1又は配列番号2の50;配列番号1又は配列番号2の51;配列番号1又は配列番号2の53;配列番号1又は配列番号2の54;配列番号1又は配列番号2の55;配列番号1又は配列番号2の56;配列番号1又は配列番号2の57;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の58;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の59;配列番号1又は配列番号2の60;配列番号1又は配列番号2の61;配列番号1又は配列番号2の62;配列番号1又は配列番号2の84;配列番号1又は配列番号2の88;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の94;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の96;配列番号1又は配列番号2の104;配列番号1又は配列番号2の105;配列番号1又は配列番号2の107;配列番号1又は配列番号2の108;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の109;配列番号1又は配列番号2の110;配列番号1又は配列番号2の111;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の112;配列番号1又は配列番号2の141;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の147;配列番号1又は配列番号2の154;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の179;配列番号1又は配列番号2の180;配列番号1又は配列番号2の181;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の183;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の184;配列番号1又は配列番号2の185;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の186;配列番号1又は配列番号2の187;配列番号1又は配列番号2の188;配列番号1又は配列番号2の189;配列番号1又は配列番号2の198;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;配列番号3の241;配列番号1又は配列番号2の242;配列番号1又は配列番号2の247;配列番号3の247;配列番号1又は配列番号2の248;配列番号3の250;配列番号1又は配列番号2の251;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の264;配列番号1又は配列番号2の265;並びに配列番号1又は配列番号2の286のうちのいずれかに位置する天然に存在するアミノ酸に対する非保存的アミノ酸(例えば、下記の表Bを参照)へのものである。
ある特定のさらなる実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、K1からA、G、V、L、I、F、M、及びH;T4からA、G、V、L、I、F、M、及びS;D6からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;S8からA、G、V、I、L、F、及びM;T8からA、G、V、I、L、F、M、及びS;T9からA、G、V、I、L、F、M、及びS;S9からA、G、V、L、I、F、及びM;K11からA、G、V、L、I、F、M、及びH;T12からA、G、V、I、L、F、M、及びS;S33からA、G、V、L、I、F、及びM;S43からA、G、V、L、I、F、及びM;G44からA及びL;S45からA、G、V、L、I、F、及びM;T45からA、G、V、L、I、F、及びM;G46からA及びP;D47からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;N48からA、G、V、L、及びM;L49からA又はG;F50;A51からV;D53からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;V54からA、G、及びL;R55からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;G56からA及びP;I57からA、G、M、及びF;L57からA、G、M、及びF;D58からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;P59からA、G、及びF;E60からA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、及びR;E61からA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、及びR;G62からA;D94からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;R84からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;V88からA及びG;I88からA、G、及びV;D94;S96からA、G、V、I、L、F、及びM;T104からA、G、V、I、L、F、M、及びS;A105からL;T107からA、G、V、I、L、F、M、及びS;S107からA、G、V、L、I、F、及びM;L108からA、G、及びM;S109からA、G、V、I、L、F、及びM;T109からA、G、V、I、L、F、M、及びS;G110からA;D111からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;S112からA、G、V、L、I、F、及びM;D141からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;G147からA;V154からA及びG;R179からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;T180からA、G、V、L、I、F、M、及びS;T181からA、G、V、L、I、F、M、及びS;D183からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;D184からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;L185からA、G、及びV;S186からA、G、V、I、L、F、及びM;G187からA;R188からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;S189からA、G、V、I、L、F、及びM;D197からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;D198からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;R204からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R205からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;C242からA、G、V、及びS;S247からA、G、V、I、L、F、及びM;Y247からA、G、V、L、I、F、及びM;R248からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R250からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R251からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;C262からA、G、V、及びS;D264からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;G264からA;並びにT286からA、G、V、L、I、F、M、及びSからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を有する完全長又は短縮型志賀毒素Aサブユニットを含むか又はそれから本質的になる。
ある特定のさらなる実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、以下のアミノ酸置換K1A、K1M、T4I、D6R、S8I、T8V、T9I、S9I、K11A、K11H、T12K、S33I、S33C、S43N、G44L、S45V、S45I、T45V、T45I、G46P、D47M、D47G、N48V、N48F、L49A、F50T、A51V、D53A、D53N、D53G、V54L、V54I、R55A、R55V、R55L、G56P、I57F、I57M、D58A、D58V、D58F、P59A、P59F、E60I、E60T、E60R、E61A、E61V、E61L、G62A、R84A、V88A、D94A、S96I、T104N、A105L、T107P、L108M、S109V、T109V、G110A、D111T、S112V、D141A、G147A、V154A、R179A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184A、D184F、L185V、L185D、S186A、S186F、G187A、G187T、R188A、R188L、S189A、D198A、R204A、R205A、C242S、S247I、Y247A、R248A、R250A、R251A、又はD264A、G264A、T286A、及び/又はT286Iのうちの少なくとも1つを有する完全長又は短縮型志賀毒素Aサブユニットを含むか又はそれから本質的になる。これらのエピトープを破壊する置換を組み合わせて、志賀毒素エフェクター機能を保持すると同時に、エピトープ領域1つ当たり複数の置換、及び/又は複数のエピトープ領域の破壊を有する、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを形成してもよい。例えば、天然に位置するK1A、K1M、T4I、D6R、S8I、T8V、T9I、S9I、K11A、K11H、T12K、S33I、S33C、S43N、G44L、S45V、S45I、T45V、T45I、G46P、D47M、D47G、N48V、N48F、L49A、F50T、A51V、D53A、D53N、D53G、V54L、V54I、R55A、R55V、R55L、G56P、I57F、I57M、D58A、D58V、D58F、P59A、P59F、E60I、E60T、E60R、E61A、E61V、E61L、G62A、R84A、V88A、D94A、S96I、T104N、A105L、T107P、L108M、S109V、T109V、G110A、D111T、S112V、D141A、G147A、V154A、R179A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184A、D184F、L185V、L185D、S186A、S186F、G187A、G187T、R188A、R188L、S189A、D198A、R204A、R205A、C242S、S247I、Y247A、R248A、R250A、R251A、又はD264A、G264A、T286A、及び/又はT286Iにおける置換を、可能であれば、天然に位置する残基K1A、K1M、T4I、D6R、S8I、T8V、T9I、S9I、K11A、K11H、T12K、S33I、S33C、S43N、G44L、S45V、S45I、T45V、T45I、G46P、D47M、D47G、N48V、N48F、L49A、F50T、A51V、D53A、D53N、D53G、V54L、V54I、R55A、R55V、R55L、G56P、I57F、I57M、D58A、D58V、D58F、P59A、P59F、E60I、E60T、E60R、E61A、E61V、E61L、G62A、R84A、V88A、D94A、S96I、T104N、A105L、T107P、L108M、S109V、T109V、G110A、D111T、S112V、D141A、G147A、V154A、R179A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184A、D184F、L185V、L185D、S186A、S186F、G187A、G187T、R188A、R188L、S189A、D198A、R204A、R205A、C242S、S247I、Y247A、R248A、R250A、R251A、又はD264A、G264A、T286A、及び/又はT286Iにおける置換と組み合わせて、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを作り出してもよい。
本明細書に記載される脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド部分領域及び/又はエピトープを破壊する変異のいずれも、単独で使用してもよいし、又は本発明の方法を含む本発明のそれぞれ個々の実施形態と組み合わせて使用してもよい。
2.プロテアーゼ切断耐性志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド
ある特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来領域、及び(2)志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフを含む。志賀毒素成分と、細胞標的化分子の他の成分、例えば、細胞標的化結合領域との間の接続の安定性を改善することにより、例えば、タンパク質分解の結果などとして、接続の破壊及び細胞標的化の損失により引き起こされる非特異的な毒性を低減することによって、生物に投与した後のそれらの毒性プロファイルを改善することができる。
志賀毒素ファミリーのメンバーの志賀毒素Aサブユニットは、志賀毒素の機能にとって重要なそれらのA1断片領域のカルボキシ末端に、保存されたフューリン切断部位を含む。フューリン切断部位モチーフ及びフューリン切断部位は、熟練した作業者により、標準的な技術を使用して、及び/又は本明細書に記載の情報を使用することによって同定することができる。
志賀毒素の細胞毒性のモデルは、中毒化された細胞におけるフューリンによる志賀毒素Aサブユニットの細胞内タンパク質分解性プロセシングが、1)志賀ホロトキシンの残部からのA1断片の遊離、2)A1断片のカルボキシ末端における疎水性ドメインを露出させることによる、小胞体からのA1断片の離脱、及び3)A1断片の酵素による活性化に必須であるモデルである(Johannes L, Romer W, Nat Rev Microbiol 8: 105-16 (2010)を参照)。中毒化された細胞の小胞体におけるA2断片及び志賀ホロトキシンの成分の残部からの志賀毒素A1断片の効率的な遊離は、サイトゾルへの効率的な細胞内経路決定、最大の酵素活性、効率的なリボソーム不活性化、及び最適な細胞毒性、すなわち、野生型志賀毒素と同程度の細胞毒性の達成に必須である(例えば、国際公開第2015/191764号パンフレット及びそこに記載の参考文献を参照)。
志賀毒素による中毒化の間、Aサブユニットは、保存されたアルギニン残基(例えば、StxA及びSLT-1Aバリアントにおける251位のアルギニン残基、並びにStx2A及びSLT-2Aバリアントにおける250位のアルギニン残基)のカルボキシ結合で、フューリンによって、タンパク質分解により切断される。志賀毒素Aサブユニットのフューリン切断は、エンドソーム及び/又はゴルジ区画において生じる。フューリンは、試験したすべてのヒト組織において広範な種類の細胞型によって、及びほとんどの動物細胞によって発現される、特化したセリンエンドプロテアーゼである。フューリンは、最小の二塩基性コンセンサスモチーフR-x-(R/K/x)-Rにおいて中心にあることが多い、接触可能なモチーフを含むポリペプチドを切断する。志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットは、保存され、表面に露出された伸長したループ構造(例えば、StxA及びSLT-1Aにおける242~261、並びにSLT-2における241~260)を含み、フューリンによって切断される保存されたS-R/Y-x-x-Rモチーフを伴う。StxAにおいてアミノ酸残基242~261に位置する表面に露出された伸長したループ構造は、最小のフューリン切断モチーフR-x-x-Rの側方の特徴を含め、フューリンによって誘導されるStxAの切断に必要である。
志賀毒素Aサブユニット及び志賀毒素エフェクターポリペプチドにおけるフューリン切断モチーフ及びフューリン切断部位は、熟練した作業者により、標準的な方法を使用して、及び/又は本明細書に記載の情報を使用することによって同定することができる。フューリンは、最小のコンセンサスモチーフR-x-x-Rを切断する(Schalken J et al., J Clin Invest 80: 1545-9 (1987);Bresnahan P et al., J Cell Biol 111: 2851-9 (1990);Hatsuzawa K et al., J Biol Chem 265: 22075-8 (1990);Wise R et al., Proc Natl Acad Sci USA 87: 9378-82 (1990);Molloy S et al., J Biol Chem 267: 16396-402 (1992))。これと一致して、多くのフューリン阻害剤は、モチーフR-x-x-Rを含むペプチドを含む。フューリンの合成阻害剤の例は、ペプチドR-V-K-Rを含む分子である(Henrich S et al., Nat Struct Biol 10: 520-6 (2003))。一般的に、2つのアミノ酸残基によって分離した2つの正電荷を有するアミノ酸を有する表面接触可能な二塩基性アミノ酸モチーフを含むペプチド又はタンパク質は、モチーフ内の最後の塩基性アミノ酸のカルボキシ結合で切断が起こるフューリン切断に対して感受性であると予測することができる。
フューリンによって切断される基質内のコンセンサスモチーフは、ある程度の特異性で同定されている。フューリン切断部位モチーフは、Schechter I, Berger, A, Biochem Biophys Res Commun 32: 898-902 (1968)に記載されている命名法を使用して、P14~P6’と標識することができる、20個の連続的なアミノ酸残基の領域を含むと説明されている(Tian S et al., Int J Mol Sci 12: 1060-5 (2011))。この命名法によれば、フューリン切断部位は、P1と表記されるアミノ酸残基のカルボキシ結合にあり、フューリン切断モチーフのアミノ酸残基は、この基準となるP1残基からアミノ末端に向かって進む方向で、P2、P3、P4などと番号付けされる。基準となるP1残基からカルボキシ末端に向かって進むモチーフのアミノ酸残基は、P2’、P3’、P4’などのようにプライム記号を伴って番号付けされる。この命名法を使用すると、P6~P2’の領域が、フューリンの酵素ドメインによって結合されたフューリン切断モチーフのコア基質を表す。2つのフランキング領域P14~P7及びP3’~P6’は、それらの間に位置するコアのフューリン切断部位への接触可能性を増加するように、極性アミノ酸残基が豊富になっていることが多い。
一般的なフューリン切断部位は、P4-P3-P2-P1に相当するコンセンサスモチーフR-x-x-Rによって記載されることが多く、ここで、「R」は、アルギニン残基を表し(上述の表Aを参照)、ダッシュ「-」は、ペプチド結合を表し、小文字の「x」は、任意のアミノ酸残基を表す。しかしながら、他の残基及び位置により、フューリン切断モチーフのさらなる定義を補助してもよい。わずかにより洗練されたフューリン切断部位のコンセンサスモチーフは、P4-P3-P2-P1に相当するコンセンサスモチーフR-x-[K/R]-R(ここで、フォワードスラッシュ「/」は、「又は」を意味し、同じ位置における代替的なアミノ酸残基を分配する)として報告されることが多いが、これは、フューリンが、このモチーフを含有する基質の切断に対して強い優先性を有することが観察されたためである。
最小のフューリン切断部位R-x-x-Rに加えて、ある特定の位置においてある特定のアミノ酸残基への優先性を有するそれよりも大きいフューリン切断モチーフが、説明されている。様々な公知のフューリン基質を比較することによって、20アミノ酸残基長のフューリン切断部位モチーフにおけるアミノ酸残基について、ある特定の物理化学的な特性が、特徴付けられている。フューリン切断モチーフのP6~P2’領域は、フューリンの酵素ドメインと物理的に相互作用するコアのフューリン切断部位を表す。2つのフランキング領域P14~P7及びP3’~P6’は、それらの間に配置されたコアのフューリン切断部位の表面接続可能性を増加するように、親水性であり、極性アミノ酸残基が豊富であることが多い。
一般的に、P5位~P1位のフューリン切断モチーフ領域は、正電荷及び/又は高い等電点を有するアミノ酸残基を含む傾向にある。特に、P1位は、フューリンのタンパク質分解の位置の指標であり、一般的にアルギニンによって占められているが、この位置に他の正電荷を有するアミノ酸残基が存在する場合もある。P2位及びP3位は、可動性アミノ酸残基によって占められる傾向にあり、特に、P2は、アルギニン、リシン、又は時にはグリシンのような極めて小さな可動性アミノ酸残基によって占められる傾向にある。P4位は、フューリン基質内の正電荷を有するアミノ酸残基によって占められる傾向にある。しかしながら、P4位が、脂肪族アミノ酸残基によって占められている場合、正電荷を有する官能基の欠如は、P5位及び/又はP6位に配置された正電荷を有する残基によって補うことができる。P1’位及びP2’位は、一般的に、脂肪族及び/又は疎水性アミノ酸残基によって占められており、P1’位は、最も一般的にはセリンによって占められている。
2つの親水性フランキング領域は、極性、親水性であり、より小さいアミノ酸官能基を有するアミノ酸残基によって占められる傾向にあるが、ある特定の検証されたフューリン基質では、フランキング領域は、いかなる親水性アミノ酸残基も含有しない(Tian S, Biochem Insights 2: 9-20 (2009)を参照)。
天然の志賀毒素Aサブユニットにおいて、志賀毒素A1断片とA2断片との間のジャンクションに見出される、20アミノ酸残基のフューリン切断モチーフ及びフューリン切断部位は、ある特定の志賀毒素において、よく特徴付けられている。例えば、StxA(配列番号2)及びSLT-1A(配列番号1)においては、このフューリン切断モチーフは、L238~F257に天然に位置しており、SLT-2A(配列番号3)においては、このフューリン切断モチーフは、V237~Q256に天然に位置している。本明細書に記載されるアミノ酸相同性、実験、及び/又はフューリン切断アッセイに基づいて、熟練した作業者は、他の天然の志賀毒素Aサブユニット又は志賀毒素エフェクターポリペプチドにおけるフューリン切断モチーフを同定することができ、この場合、モチーフは、実際のフューリン切断モチーフであるか、又は真核細胞内でそれらの分子がフューリンにより切断された後に、A1及びA2断片の産生をもたらすと予測される。
ある特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来のポリペプチド、及び(2)志賀毒素A1断片由来のポリペプチドのカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフを含む。志賀毒素A1断片由来のポリペプチドのカルボキシ末端は、熟練した作業者により、当技術分野において公知の技術を使用することによって同定することができ、例えば、タンパク質配列アライメントソフトウェアなどを使用することによって、(i)天然に存在する志賀毒素とともに保存されたフューリン切断モチーフ、(ii)天然に存在する志賀毒素とともに保存された表面に露出した伸長したループ、及び/又は(iii)ERADシステムによって認識することが可能な主として疎水性のアミノ酸残基のストレッチ(すなわち疎水性「パッチ」)を同定することができる。
本発明のプロテアーゼ切断耐性志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)その志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端においてすべてのフューリン切断モチーフが完全に欠如していてもよいし、並びに/又は(2)その志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端及び/若しくは志賀毒素A1断片のカルボキシ末端由来の領域に、破壊されたフューリン切断モチーフを含んでいてもよい。フューリン切断モチーフの破壊としては、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基への様々な変更、例えば、翻訳後修飾、アミノ酸官能基中の1つ若しくは2つ以上の原子の変更、アミノ酸官能基への1つ若しくは2つ以上の原子の付加、非タンパク質性部分への会合、及び/又は例えば結果として分岐したタンパク質性構造が生じるアミノ酸残基、ペプチド、ポリペプチドへの連結などが挙げられる。
プロテアーゼ切断耐性志賀毒素エフェクターポリペプチドは、本明細書に記載される方法、国際公開第2015/191764号パンフレット及び国際公開第2016/196344号パンフレットに記載される方法、並びに/又は熟練した作業者に公知の方法を使用して、天然に存在するか又はしないかにかかわらず、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は志賀毒素Aサブユニットポリペプチドから作り出すことができ、結果として得られる分子は、それでもなお1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニット機能を保持する。
フューリン切断部位又はフューリン切断モチーフに関する本発明の目的に関して、用語「破壊」又は「破壊された」は、天然に存在するフューリン切断部位及び/又はフューリン切断モチーフからの変更、例えば、野生型志賀毒素Aサブユニット又は野生型ポリペプチド配列のみを含む野生型志賀毒素Aサブユニット由来のポリペプチドのフューリン切断と比較して、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端、又はそれらに由来する同定可能な領域の近傍におけるフューリン切断の低減を引き起こす変異などを指す。フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基への変更としては、例えばフューリン切断モチーフの欠失、挿入、逆位、置換、及び/又はカルボキシ末端短縮化などのフューリン切断モチーフ中の変異、並びに、例えば、アミノ酸残基の官能基に分子をコンジュゲート又は連結することを含むグリコシル化、アルブミン化などの結果としての翻訳後修飾が挙げられる。フューリン切断モチーフは理論上約20アミノ酸残基で構成されることから、これらの20個の位置のいずれか1つの1つ又は2つ以上のアミノ酸残基に関与する変更、改変、変異、欠失、挿入、及び/又は短縮化が、フューリン切断の感受性の低減を引き起こす可能性がある(Tian S et al., Sci Rep 2:261 (2012))。フューリン切断部位及び/又はフューリン切断モチーフの破壊は、他のプロテアーゼ、例えば、トリプシン及び哺乳動物の血管系に共通する細胞外プロテアーゼなどによる切断に対する耐性を増加させる可能性もあるし、又は増加させない可能性もある。所与のプロテアーゼの切断感受性に対する所与の破壊の作用は、熟練した作業者により、当業界において公知の技術を使用して試験することができる。
本発明の目的に関して、「破壊されたフューリン切断モチーフ」は、天然の志賀毒素Aサブユニットにおいて、志賀毒素A1断片とA2断片領域との間のジャンクションに見出され、志賀毒素Aサブユニットのフューリン切断によりA1断片及びA2断片の産生が生じるように配置された、保存されたフューリン切断モチーフを表す20アミノ酸残基の領域に由来する1つ又は2つ以上のアミノ酸残基への変更を含む、フューリン切断モチーフであり、ここで、破壊されたフューリン切断モチーフは、熟練した作業者に公知の及び/又は本明細書に記載される適切なアッセイを使用して、フューリン切断をモニターできる程度に十分に大きいサイズを有するカルボキシ末端のポリペプチドに融合した野生型志賀毒素A1断片領域を含む参照分子と比較して、実験的に再現可能な方式で、低減されたフューリン切断を示す。
フューリン切断部位及びフューリン切断モチーフを破壊させることができる変異のタイプの例は、アミノ酸残基の欠失、挿入、短縮化、逆位、並びに/又は、非標準アミノ酸及び/若しくは非天然アミノ酸との置換を含む、置換である。加えて、フューリン切断部位及びフューリン切断モチーフは、例えば、ペグ化、低分子アジュバントの結合、及び/又は部位特異的なアルブミン化などの結果として部位又はモチーフ中の少なくとも1つのアミノ酸をマスクする共有結合で連結された構造の付加によるアミノ酸の修飾を含む変異によって、破壊することができる。
フューリン切断モチーフが、変異及び/又は非天然アミノ酸残基の存在によって破壊されている場合、ある特定の破壊されたフューリン切断モチーフは、いずれかのフューリン切断モチーフに関連していると容易に認識できない可能性があるが、しかしながら、志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端は、認識可能であると予想され、破壊されていなければそのフューリン切断モチーフがどこに配置されるかを定義すると予想される。例えば、破壊されたフューリン切断モチーフは、志賀毒素Aサブユニット及び/又は志賀毒素A1断片と比較して、カルボキシ末端の短縮化に起因して、フューリン切断モチーフのアミノ酸残基を20個未満含んでいてもよい。
ある特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来のポリペプチド、及び(2)志賀毒素A1断片のポリペプチド領域のカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフを含み、ここで、志賀毒素エフェクターポリペプチド(及びそれを含む任意の細胞標的化分子)は、参照分子、例えば、A1断片のカルボキシ末端及び/又はA1断片とA2断片との間に保存されたフューリン切断モチーフを含む野生型志賀毒素ポリペプチドなどと比較して、よりフューリン切断耐性である。例えば、参照分子と比較した1つの分子のフューリン切断の低減は、以下の実施例に記載されているインビトロのフューリン切断アッセイを使用し、同じ条件を使用して実行し、次いで切断の結果生じるあらゆる断片のバンド密度の定量を実行してフューリン切断の変化を定量的に測定することにより決定することができる。
ある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比較して、インビトロ及び/又はインビボでのフューリン切断に対して、より耐性である。
一般的に、本発明の細胞標的化分子のプロテアーゼ切断感受性は、それを、そのフューリン切断耐性の志賀毒素エフェクターポリペプチドが志賀毒素A1断片を含む野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドで置き換えられている同じ分子と比較することによって試験される。ある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフを含む本発明の分子は、そのカルボキシ末端においてペプチド又はポリペプチドに融合した野生型志賀毒素A1断片を含む参照分子、例えば、以下の実施例に記載される参照分子SLT-1A-WT::scFv1::C2(配列番号278)などと比較して、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、又はそれ以上のインビトロにおけるフューリン切断の低減を示す。
いくつかのフューリン切断モチーフの破壊が、説明されている。例えば、最小のR-x-x-Rモチーフ中で2つの保存されたアルギニンをアラニンに変異させることにより、フューリン及び/又はフューリン様プロテアーゼによるプロセシングが完全にブロックされた(例えば、Duda A et al., J Virology 78: 13865-70 (2004)を参照)。フューリン切断部位モチーフは、理論上、約20個のアミノ酸残基で構成されるため、これらの20個のアミノ酸残基位置のうちのいずれかの1つ又は2つ以上に関与するある特定の変異により、フューリン切断が無効となり得るか又はフューリン切断効率が低減され得る(例えば、Tian S et al., Sci Rep 2: 261 (2012)を参照)。
ある特定の実施形態において、本発明の分子は、志賀毒素ファミリーのメンバーの少なくとも1つのAサブユニットに由来する志賀毒素エフェクターポリペプチドを含み、ここで、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素Aサブユニットの保存された高度に接触可能なプロテアーゼ切断感受性ループに由来する1つ又は2つ以上のアミノ酸における破壊を含む。例えば、StxA及びSLT-1Aにおいては、この高度に接触可能なプロテアーゼ感受性ループは、アミノ酸残基242~261に天然に位置しており、SLT-2Aにおいては、この保存されたループは、アミノ酸残基241~260に天然に位置している。ポリペプチド配列の相同性に基づいて、熟練した作業者は、他の志賀毒素Aサブユニットにおいて、この保存された高度に接触可能なループ構造を同定することができる。このループにおけるアミノ酸残基へのある特定の変異により、ループ内のある特定のアミノ酸残基のタンパク質分解による切断に対する接触可能性を低減することができ、これにより、フューリン切断感受性が低減され得る。
ある特定の実施形態において、本発明の分子は、志賀毒素Aサブユニット間で保存された表面に露出したプロテアーゼ感受性ループに変異を含む破壊されたフューリン切断モチーフを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の分子は、志賀毒素Aサブユニットのこのプロテアーゼ感受性ループに変異を含む破壊されたフューリン切断モチーフを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドを含み、この変異は、フューリン切断感受性が低減されるように、ループ内のある特定のアミノ酸残基の表面接触可能性を低減する。
ある特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの破壊されたフューリン切断モチーフは、例えば、最小のフューリン切断モチーフR/Y-x-x-Rの1位及び4位におけるアミノ酸残基など、コンセンサスアミノ酸残基P1及びP4の一方又は両方の存在、位置、又は官能基に関する破壊を含む。例えば、最小のフューリンコンセンサス部位R-x-x-Rにおける2個のアルギニン残基の一方又は両方をアラニンに変異させることは、フューリン切断モチーフを破壊し、その部位におけるフューリン切断を防止すると予想される。同様に、最小のフューリン切断モチーフR-x-x-Rにおけるアルギニン残基の一方又は両方のアミノ酸残基を熟練した作業者に公知のいずれかの非保存的アミノ酸残基に置換することは、モチーフのフューリン切断感受性を低減させると予想される。特に、アルギニンから、例えば、A、G、P、S、T、D、E、Q、N、C、I、L、M、V、F、W、及びYなどの正電荷を有さないいずれかの非塩基性アミノ酸残基へのアミノ酸残基の置換により、破壊されたフューリン切断モチーフが生じると予想される。
ある特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの破壊されたフューリン切断モチーフは、コンセンサスアミノ酸残基P4からP1の間隔において、2以外の介在するアミノ酸残基の数に関する破壊を含み、それにより、P4及び/又はP1のいずれかが異なる位置に変化し、P4及び/又はP1の記号が除去される。例えば、最小のフューリン切断部位のフューリン切断モチーフ又はコアのフューリン切断モチーフ内の欠失は、フューリン切断モチーフのフューリン切断感受性を低減すると予想される。
ある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比較して、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の置換を含む。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、最小のフューリン切断部位R/Y-x-x-R中に1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の置換を含み、例えば、StxA及びSLT-1A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドについては、任意の正電荷を有さないアミノ酸残基で置換された天然に位置するアミノ酸残基R248及び/又は任意の正電荷を有さないアミノ酸残基で置換されたR251、並びにSLT-2A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドについては、任意の正電荷を有さないアミノ酸残基で置換された天然に位置するアミノ酸残基Y247及び/又は任意の正電荷を有さないアミノ酸残基で置換されたR250などを含む。
ある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、破壊されていない最小のフューリン切断部位R/Y-x-x-Rを含むが、その代わりに破壊されたフランキング領域を含み、例えば、241~247及び/又は252~259に天然に位置するフューリン切断モチーフのフランキング領域における1つ又は2つ以上のアミノ酸残基におけるアミノ酸残基置換などを含む。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフのP1~P6領域に位置するアミノ酸残基のうちの1つ又は2つ以上の置換;P1’を、例えば、R、W、Y、F、及びHなどの嵩高な(bulky)アミノ酸に変異させること;並びにP2’を、極性及び親水性アミノ酸残基に変異させること;並びにフューリン切断モチーフのP1’~P6’領域に配置されたアミノ酸残基のうちの1つ又は2つ以上を、1つ又は2つ以上の嵩高な及び疎水性アミノ酸残基で置換することを含む。
ある特定の実施形態において、フューリン切断モチーフの破壊は、フューリン切断モチーフ内に少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失、挿入、逆位、及び/又は変異を含む。ある特定の実施形態において、本発明のプロテアーゼ切断耐性志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素のAサブユニット(配列番号1~2及び4~6)の248~251、志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3及び7~18)の247~250、又は保存された志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/若しくは非天然の志賀毒素エフェクターポリペプチド配列における等価な位置に天然に位置するアミノ酸配列の破壊を含み得る。ある特定のさらなる実施形態において、プロテアーゼ切断耐性志賀毒素エフェクターポリペプチドは、フューリン切断モチーフ内の少なくとも1つのアミノ酸の欠失を含む、破壊を含む。ある特定のさらなる実施形態において、プロテアーゼ切断耐性志賀毒素エフェクターポリペプチドは、プロテアーゼ切断モチーフ領域内の少なくとも1つのアミノ酸の挿入を含む、破壊を含む。ある特定のさらなる実施形態において、プロテアーゼ切断耐性志賀毒素エフェクターポリペプチドは、アミノ酸の逆位を含む、破壊を含み、ここで、少なくとも1つの逆転したアミノ酸は、プロテアーゼモチーフ領域内にある。ある特定のさらなる実施形態において、プロテアーゼ切断耐性志賀毒素エフェクターポリペプチドは、変異、例えば、非標準アミノ酸又は化学修飾された側鎖を有するアミノ酸へのアミノ酸置換を含む、破壊を含む。単一のアミノ酸置換の例を、以下の実施例に提供する。
本発明の分子のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフ内のカルボキシ末端のアミノ酸残基の9個、10個、11個、又は12個以上の欠失を含む。これらの実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断部位又は最小のフューリン切断モチーフを含まないと予想される。言い換えれば、ある特定の実施形態は、A1断片領域のカルボキシ末端においてフューリン切断部位が欠如している。
ある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比較して、アミノ酸残基の欠失及びアミノ酸残基の置換の両方を含む。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、最小のフューリン切断部位R/Y-x-x-R中に1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の欠失及び置換を含み、例えば、StxA及びSLT-1A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドについては、任意の正電荷を有さないアミノ酸残基で置換された天然に位置するアミノ酸残基R248及び/又は任意の正電荷を有さないアミノ酸残基で置換されたR251、並びにSLT-2A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドについては、任意の正電荷を有さないアミノ酸残基で置換された天然に位置するアミノ酸残基Y247及び/又は任意の正電荷を有さないアミノ酸残基で置換されたR250などを含む。
ある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比較して、アミノ酸残基の欠失及びアミノ酸残基の置換、並びにカルボキシ末端の短縮化を含む。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、最小のフューリン切断部位R/Y-x-x-R中に1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の欠失及び置換を含み、例えば、StxA及びSLT-1A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドについては、任意の正電荷を有さないアミノ酸残基で置換された天然に位置するアミノ酸残基R248及び/又は任意の正電荷を有さないアミノ酸残基で置換されたR251、並びにSLT-2A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドについては、任意の正電荷を有さないアミノ酸残基で置換された天然に位置するアミノ酸残基Y247及び/又は任意の正電荷を有さないアミノ酸残基で置換されたR250などを含む。
ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比較して、最小のフューリン切断部位R/Y-x-x-R内のアミノ酸置換とカルボキシ末端の短縮化の両方、例えば、StxA及びSLT-1A由来志賀毒素エフェクターポリペプチドについては、天然でのアミノ酸位置249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、又は292以上で終わる短縮化、並びに、適切な場合には、任意の正電荷を有さないアミノ酸残基で置換された天然に位置するアミノ酸残基R248及び/又はR251を含むこと;SLT-2A由来志賀毒素エフェクターポリペプチドについては、天然でのアミノ酸位置248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、又は292以上で終わる短縮化、並びに、適切な場合には、任意の正電荷を有さないアミノ酸残基で置換された天然に位置するアミノ酸残基Y247及び/又はR250を含むことを含む。
ある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、挿入されたアミノ残基がデノボのフューリン切断部位を作り出さない限り、野生型志賀毒素Aサブユニットと比較して、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の挿入を含む。ある特定の実施形態において、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の挿入は、最小のフューリン切断部位R/Y-x-x-R中のアルギニン残基間、例えば、StxA及びSLT-1A由来のポリペプチドが249若しくは250に1つ若しくは2つ以上のアミノ酸残基の挿入を含む場合には、したがってR248とR251との間、又はSLT-2A由来のポリペプチドが248若しくは249に1つ若しくは2つ以上のアミノ酸残基の挿入を含む場合には、したがってY247とR250との間の天然の間隔を破壊する。
ある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比較して、アミノ酸残基の挿入及びカルボキシ末端の短縮化の両方を含む。ある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比較して、アミノ酸残基の挿入及びアミノ酸残基の置換の両方を含む。ある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比較して、アミノ酸残基の挿入及びアミノ酸残基の欠失の両方を含む。
ある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比較して、アミノ酸残基の欠失、アミノ酸残基の挿入、及びアミノ酸残基の置換を含む。
ある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比較して、アミノ酸残基の欠失、挿入、置換、及びカルボキシ末端の短縮化を含む。
ある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドは、ペプチド結合によって、アミノ酸、ペプチド、及び/又はポリペプチドを含む分子部分に直接的に融合されており、ここで、融合した構造は、単一の連続的なポリペプチドを含む。これらの融合の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフに続くアミノ酸配列は、融合のジャンクションにおいてデノボのフューリン切断部位を作り出さないものとする。
上述のプロテアーゼ切断耐性志賀毒素エフェクターポリペプチドの破壊されたフューリン切断モチーフのいずれも、単独で使用してもよいし、又は本発明の方法を含む本発明のそれぞれ個々の実施形態と組み合わせて使用してもよい。
3.T細胞で過免疫された志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド
ある特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、組み込まれた又は挿入されたエピトープ-ペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態において、エピトープ-ペプチドは、異種T細胞エピトープ-ペプチド、例えば、志賀毒素Aサブユニットにとって異種とみなされるエピトープなどである。ある特定のさらなる実施形態において、エピトープ-ペプチドは、CD8+T細胞エピトープである。ある特定のさらなる実施形態において、CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、10-4モル濃度以下の解離定数(KD)を特徴とするMHCクラスI分子への結合親和性を有する、及び/又は得られたMHCクラスI-エピトープ-ペプチド複合体は、10-4モル濃度以下の解離定数(KD)を特徴とするT細胞受容体(TCR,T-cell receptor)への結合親和性を有する。
ある特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープ、例えば、ヒトCD8+T細胞エピトープなどを含む。ある特定のさらなる実施形態において、異種T細胞エピトープは、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの由来となる天然に存在する志賀毒素ポリペプチド又は親の志賀毒素エフェクターポリペプチドにおいて同定可能な内在性エピトープ又はエピトープ領域(例えば、B細胞エピトープ及び/又はCD4+T細胞エピトープ)を破壊するように、組み込まれるか又は挿入される。
本発明のある特定の実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチド(及びそれを含むあらゆる細胞標的化分子)は、例えば、例として、野生型志賀毒素ポリペプチドと比較して、CD8+T細胞で過免疫されている。本発明のCD8+T細胞で過免疫された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、それぞれ、T細胞エピトープ-ペプチドを含む。過免疫された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、本明細書に記載される方法、国際公開第2015/113007号パンフレットに記載される方法、及び/又は熟練した作業者に公知の方法を使用して、天然に存在するか又はしないかにかかわらず、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は志賀毒素Aサブユニットポリペプチドから作り出すことができ、結果として得られた分子は、それでもなお1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニット機能を保持する。
特許請求された発明の目的に関して、T細胞エピトープは、抗原性ペプチドで構成される分子構造であり、直鎖状のアミノ酸配列によって表すことができる。一般的に、T細胞エピトープは、8~11個のアミノ酸残基のサイズを有するペプチドである(Townsend A, Bodmer H, Annu Rev Immunol 7: 601-24 (1989))が、しかしながら、ある特定のT細胞エピトープ-ペプチドは、8よりも小さいか又は11よりも大きいアミノ酸長の長さを有する(例えば、Livingstone A, Fathman C, Annu Rev Immunol 5: 477-501 (1987);Green K et al., Eur J Immunol 34: 2510-9 (2004)を参照)。ある特定の実施形態において、組み込まれた又は挿入されたエピトープは、少なくとも7アミノ酸残基長である。ある特定の実施形態において、組み込まれた又は挿入されたエピトープは、Stone J et al., Immunology 126: 165-76 (2009)に記載の式を使用して計算した場合、10mM未満(例えば、1~100μM)のKDを特徴とする結合親和性でTCRと結合する。しかしながら、注目すべきことに、MHC-エピトープとTCRとの間の所与の範囲内の結合親和性は、例えば、MHC-ペプチド-TCR複合体の安定性、MHC-ペプチド密度、及びCD8などのTCR補因子のMHC非依存性機能のような要因による、抗原性及び/又は免疫原性(例えば、Al-Ramadi B et al., J Immunol 155: 662-73 (1995)を参照)とは関係ない場合がある(Valitutti S et al., J Exp Med 183: 1917-21 (1996);Baker B et al., Immunity 13: 475-84 (2000);Hornell T et al., J Immunol 170: 4506-14 (2003);Faroudi M et al., Proc Natl Acad Sci USA 100: 14145-50 (2003);Woolridge L et al., J Immunol 171: 6650-60 (2003);Purbhoo M et al., Nat Immunol 5: 524-30 (2004))。
異種T細胞エピトープは、野生型志賀毒素Aサブユニット、天然に存在する志賀毒素Aサブユニット、並びに/又は本明細書に記載される方法、国際公開第2015/113007号パンフレット及び/若しくは国際公開第2016/196344号パンフレットに記載される方法、並びに/又は熟練した作業者に公知の方法による改変のための源のポリペプチドとして使用される親の志賀毒素エフェクターポリペプチド中にすでに存在していないエピトープである。
例えば、源のポリペプチド内に1つ若しくは2つ以上のアミノ酸置換を作り出すプロセス、源のポリペプチドに1つ若しくは2つ以上のアミノ酸を融合させるプロセス、源のポリペプチドに1つ若しくは2つ以上のアミノ酸を挿入するプロセス、源のポリペプチドにペプチドを連結するプロセス、及び/又は上述のプロセスの組合せを含む、熟練した作業者に公知の多数の方法を介して、異種T細胞エピトープ-ペプチドを、源のポリペプチドに取り込ませることができる。このような方法の結果、1つ又は2つ以上の組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープ-ペプチドを含む源のポリペプチドの改変されたバリアントが作り出される。
T細胞エピトープは、本発明で使用するための多数の源の分子から選択されてもよいし、又はそれらに由来していてもよい。T細胞エピトープは、様々な天然に存在するタンパク質から作り出されてもよいし、又はそれらに由来していてもよい。T細胞エピトープは、哺乳動物にとって外来の様々な天然に存在するタンパク質、例えば微生物のタンパク質などから作り出されてもよいし、又はそれらに由来していてもよい。T細胞エピトープは、変異したヒトタンパク質及び/又は悪性ヒト細胞によって異常に発現されるヒトタンパク質から作り出されてもよいし、又はそれらに由来していてもよい。T細胞エピトープは、合成的に作り出されてもよいし、又は合成分子に由来していてもよい(例えば、Carbone F et al., J Exp Med 167:1767-9 (1988);Del Val M et al., J Virol 65:3641-6 (1991);Appella E et al., Biomed Pept Proteins Nucleic Acids 1:177-84 (1995);Perez S et al., Cancer 116:2071-80 (2010)を参照)。
いずれのT細胞エピトープ-ペプチドも、本発明の異種T細胞エピトープとして使用されることが企図されるが、所望の特性に基づいて、ある特定のエピトープを選択することができる。脊椎動物に投与するためのCD8+T細胞で過免疫された志賀毒素エフェクターポリペプチドを作り出すことが、本発明の1つの目的であり、これは、異種T細胞エピトープが、高度に免疫原性であり、細胞の表面上でMHCクラスI分子と複合体化したことが提示されたときにインビボでロバストな免疫応答を惹起することができることを意味する。ある特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、CD8+T細胞エピトープである1つ又は2つ以上の組み込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープを含む。異種CD8+T細胞エピトープを含む、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、CD8+T細胞で過免疫された志賀毒素エフェクターポリペプチドとみなされる。
本発明のT細胞エピトープ成分は、脊椎動物の免疫応答を惹起できることがすでに公知の多数の源の分子から選択されてもよいし、又はそれらに由来していてもよい。T細胞エピトープは、脊椎動物にとって外来の様々な天然に存在するタンパク質、例えば、病原微生物のタンパク質及び非自己がん抗原などに由来していてもよい。特に、感染性微生物は、公知の抗原性及び/又は免疫原性特性を有する多数のタンパク質を含有し得る。さらに、感染性微生物は、公知の抗原性及び/又は免疫原性の部分領域又はエピトープを有する多数のタンパク質を含有し得る。
例えば、哺乳動物宿主を伴う細胞内病原体のタンパク質は、T細胞エピトープの源である。よく研究された抗原性のタンパク質又はペプチドを有する、多数の細胞内病原体、例えば、ウイルス、細菌、真菌、及び単細胞真核生物がある。T細胞エピトープは、ヒトウイルス又は他の細胞内病原体、例えば、マイコバクテリウム属(mycobacterium)のような細菌、トキソプラズマ属(toxoplasmae)のような真菌、及びトリパノソーマ属(trypanosomes)のような原生生物などから選択又は同定することができる。
例えば、ヒトに対して感染性であるウイルス由来のウイルスタンパク質の免疫原性ウイルスペプチド成分が、多数存在する。多数のヒトT細胞エピトープが、A型インフルエンザウイルス由来のタンパク質中のペプチド、例えば、タンパク質HA糖タンパク質FE17、S139/1、CH65、C05、ヘマグルチニン1(HA1)、ヘマグルチニン2(HA2)、非構造タンパク質1及び2(NS1及びNS2)、マトリックスタンパク質1及び2(M1及びM2)、核タンパク質(NP)、ノイラミニダーゼ(NA))中のペプチドなどにマッピングされており、これらのペプチドの多くは、例えば、エキソビボのアッセイを使用することによって、ヒト免疫応答を惹起することが示されている。同様に、多数のヒトT細胞エピトープは、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)由来のタンパク質のペプチド成分、例えば、タンパク質pp65(UL83)、UL128~131、前初期1(IE-1;UL123)、糖タンパク質B、外被タンパク質中のペプチドにマッピングされており、これらのペプチドの多くは、例えば、エキソビボのアッセイを使用することによって、ヒト免疫応答を惹起することが示されている。
別の例として、ヒトにおける多くの免疫原性がん抗原がある。がんのCD8+T細胞エピトープ及び/又は腫瘍細胞抗原は、熟練した作業者により、例えば差次的なゲノミクス、差次的なプロテオミクス、イムノプロテオミクス、予測とそれに次ぐ検証、及び逆の遺伝学的トランスフェクションのような遺伝学的アプローチなどの当業界において公知の技術を使用して同定することができる(例えば、Admon A et al., Mol Cell Proteomics 2:388-98 (2003);Purcell A, Gorman J, Mol Cell Proteomics 3:193-208 (2004);Comber J, Philip R, Ther Adv Vaccines 2:77-89 (2014)を参照)。ヒトがん及び/又は腫瘍細胞において生じることがすでに同定又は予測された多くの抗原性及び/又は免疫原性のT細胞エピトープがある。例えば、T細胞エピトープは、一般的に変異されるか又は新生細胞中で過剰発現されるヒトタンパク質、例えばALK、CEA、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(GnT-V)、HCA587、HER-2/neu、MAGE、メラン-A/MART-1、MUC-1、p53、及びTRAG-3などにおいて予測されている(van der Bruggen P et al., Science 254:1643-7 (1991);Kawakami Y et al., J Exp Med 180:347-52 (1994);Fisk B et al., J Exp Med 181:2109-17 (1995);Guilloux Y et al., J Exp Med 183:1173 (1996);Skipper J et al., J Exp Med 183:527 (1996);Brossart P et al., 93:4309-17 (1999);Kawashima I et al., Cancer Res 59:431-5 (1999);Papadopoulos K et al., Clin Cancer Res 5:2089-93 (1999);Zhu B et al., Clin Cancer Res 9:1850-7 (2003);Li B et al., Clin Exp Immunol 140:310-9 (2005);Ait-Tahar K et al., Int J Cancer 118:688-95 (2006);Akiyama Y et al., Cancer Immunol Immunother 61:2311-9 (2012)を参照)。加えて、ヒトがん細胞由来のT細胞エピトープの合成バリアントが作り出されている(例えば、Lazoura E, Apostolopoulos V, Curr Med Chem 12:629-39 (2005);Douat-Casassus C et al., J Med Chem 50:1598-609 (2007)を参照)。
あらゆるT細胞エピトープを本発明のポリペプチド及び分子において使用することができるが、ある特定のT細胞エピトープが、それらの公知の及び/又は実験的に決定された特徴に基づいて好ましい場合がある。例えば、多くの種において、そのゲノムにおけるMHC対立遺伝子は、複数のMHC-I分子バリアントをコードする。MHCクラスIタンパク質多型は、CD8+T細胞による抗原-MHCクラスI複合体の認識に影響を与える可能性があることから、ある特定のMHCクラスI多型、及び/又は異なる遺伝子型を有するT細胞によって認識される、ある特定の抗原-MHCクラスI複合体の能力に関する知見に基づいて、T細胞エピトープを本発明で使用するために選択することができる。
免疫原性であり、MHCクラスIにより制限される、及び/又は特定のヒト白血球抗原(HLA,human leukocyte antigen)バリアントと適合することが公知の明確に定義されたペプチド-エピトープがある。ヒトにおける適用又はヒト標的細胞が関与する適用のために、熟練した作業者により、当業界において公知の標準的な技術を使用して、HLAクラスI制限エピトープを選択又は同定することができる。ペプチドのヒトMHCクラスI分子に結合する能力は、推定上のT細胞エピトープの免疫原性の見込みを予測するのに使用することができる。ペプチドのヒトMHCクラスI分子に結合する能力は、ソフトウェアツールを使用してスコア付けすることができる。ある特定のヒト集団においてより優勢な対立遺伝子によってコードされるHLAバリアントのペプチド選択性に基づいて、T細胞エピトープは、本発明の異種T細胞エピトープ成分として使用するために選択されてもよい。例えば、ヒト集団は、個体ごとにHLA遺伝子の対立遺伝子が多様であることに起因して、MHCクラスI分子のアルファ鎖に関して多型性である。ある特定のT細胞エピトープは、特定のHLA分子、例えば、HLA-A対立遺伝子グループのHLA-A2及びHLA-A3によってコードされる一般的に存在するHLAバリアントなどによって、より効率的に提示される可能性がある。
本発明の異種T細胞エピトープ成分として使用するためのT細胞エピトープを選択する場合、エピトープの生成及び受け入れ可能なMHCクラスI分子への輸送に影響を与える可能性がある複数の要因、例えば、標的細胞中の以下の因子:プロテアソーム、ERAAP/ERAP1、タパシン、及びTAPの存在及びエピトープ特異性などが、考慮され得る。
本発明の異種T細胞エピトープ成分として使用するためのT細胞エピトープを選択する場合、標的化しようとする細胞型又は細胞集団中に存在するMHCクラスI分子に最もよく適合するエピトープが、選択され得る。異なるMHCクラスI分子は、特定のペプチド配列への優先的な結合を示し、特定のペプチド-MHCクラスIバリアント複合体は、エフェクターT細胞のT細胞受容体(TCR)によって特異的に認識される。熟練した作業者は、本発明において使用される異種T細胞エピトープの選択を最適化するために、MHCクラスI分子の特異性及びTCR特異性に関する知見を使用することができる。
加えて、MHCクラスI提示のための複数の免疫原性T細胞エピトープは、例えば、例として、複数のT細胞エピトープを同時に標的化送達するのに使用するために、同じ本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドに組み込まれていてもよい。複数のCD8+T細胞エピトープを含む、本発明の細胞標的化分子の例は、配列番号253である。
4.志賀毒素エフェクターポリペプチドにおける部位特異的コンジュゲーション部位
本発明の分子のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、固有のアミノ酸残基、例えば、システイン、リシン、セレノシステイン、又はピロリン-カルボキシ-リシン残基などを含み、これらは、直接的又は間接的のいずれかで、例えば、哺乳動物に投与した場合に、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む細胞標的化分子に所望の特性を付与する細胞標的化分子改変剤を含む、標的化送達のための薬剤又はカーゴに、連結されていてもよい(例えば、国際公開第2018/106895号パンフレットを参照)。そのような志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む分子は、志賀毒素機能、例えば、細胞内在化の刺激、効率的な細胞内経路決定の指示、及び/又は強力な細胞毒性などを保持しながら、他の分子に連結するための、部位特異的な位置、例えば、分子内の固有のアミノ酸残基などを備えてもよい。ある特定のさらなる実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、直接的又は間接的のいずれかで、固有のアミノ酸残基を介して、例えば、固有のアミノ酸の官能基などを介して、別の部分、薬剤、及び/又はカーゴに、コンジュゲートされる(例えば、国際公開第2018/106895号パンフレットを参照)。
B.送達のための異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴ
本発明の細胞標的化分子は、それぞれが、それらそれぞれの志賀毒素エフェクターポリペプチド及び結合領域にとって異種であり、志賀毒素エフェクターポリペプチド成分に組み込まれていない若しくは挿入されていない、1つ又は2つ以上のCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを含む。
特許請求された発明の目的に関して、CD8+T細胞エピトープ(MHCクラスIエピトープ又はMHCクラスIペプチドとしても知られる)は、抗原性ペプチドで構成される分子構造体であり、直鎖状のアミノ酸配列によって表すことができる。一般的に、CD8+T細胞エピトープは、8~11アミノ酸残基のサイズを有するペプチドである(Townsend A, Bodmer H, Annu Rev Immunol 7:601-24 (1989))。しかしながら、ある特定のCD8+T細胞エピトープは、アミノ酸長さが8よりより小さいか又は11より大きい長さを有する(例えば Livingstone A, Fathman C, Annu Rev Immunol 5:477-501 (1987);Green K et al., Eur J Immunol 34:2510-9 (2004)を参照)。
CD8+T細胞エピトープは、少なくとも1つの個体の免疫系によって認識可能な分子構造、すなわち、抗原性ペプチドである。本発明の細胞標的化分子の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴは、実質的にいずれのCD8+T細胞エピトープから選択してもよい。ある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴは、10-4モル濃度以下の解離定数(KD)を特徴とするMHCクラスI分子への結合親和性を有する、及び/又は得られたMHCクラスI-エピトープ-ペプチド複合体は、10-4モル濃度以下の解離定数(KD)を特徴とするT細胞受容体(TCR)への結合親和性を有する。
T細胞エピトープは、上述のように、結合親和性によって経験的に特徴付けることができる。T細胞エピトープの最も重要な構造エレメントは、熟練した作業者に公知のアッセイ、例えば、アラニンスキャニング変異生成及び結合親和性実験の組合せなどを使用して、同定し、さらに分析することができるが、これらは、結晶構造分析又は他の経験的な構造データも考慮し得る。一部の事例において、エピトープ-ペプチド内のアミノ酸残基の一部又はすべての、エピトープ-MHC複合体及び/又はエピトープ-MHC-TCR複合体へのエネルギー寄与を、推測又は計算することができる。ある特定の残基/位置は、結合親和性の決定基であるか又は中性であるかのいずれかと考えるか又は分類することができる。さらに、決定基である残基/位置/構造を、接触を決定するもの、特異性を決定するもの、及び/又は親和性を決定するものとしてさらに分類することができる(例えば、Langman R, Mol Immunol 37: 555-61 (2000);Greenspan N, Adv Cancer Res 80: 147-87 (2001);Cohn M, Mol Immunol 42: 651-5 (2005)を参照)。ある特定のCD8+T細胞エピトープは、コンセンサスアミノ酸配列によって表すことができ、これにより、アミノ酸の同一性及び/又は配置に関して何らかのバリエーションが可能となる。
本発明のある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、少なくとも7アミノ酸残基の長さである。本発明のある特定の実施形態において、CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、Stone J et al., Immunology 126: 165-76 (2009)に記載の式を使用して計算した場合、10ミリモル(mM)未満(例えば、1~100μM)のKDを特徴とする結合親和性でTCRと結合する。しかしながら、注目すべきことに、MHC-エピトープとTCRとの間の所与の範囲内の結合親和性は、例えばMHC I-ペプチド-TCR複合体安定性、MHC I-ペプチド密度、及びCD8などのTCR補因子のMHC非依存性の機能のような要因による抗原性及び/又は免疫原性(例えばAl-Ramadi B et al., J Immunol 155:662-73 (1995)を参照)と関係ない場合がある(Baker B et al., Immunity 13:475-84 (2000);Hornell T et al., J Immunol 170:4506-14 (2003);Woolridge L et al., J Immunol 171:6650-60 (2003))。
T細胞エピトープは、本発明で使用するための多数の源の分子から選択されてもよいし、又はそれらに由来していてもよい。T細胞エピトープは、様々な天然に存在するタンパク質から作り出されてもよいし、又はそれらに由来していてもよい。T細胞エピトープは、哺乳動物にとって外来の様々な天然に存在するタンパク質、例えば、微生物のタンパク質などから作り出されてもよいし、又はそれらに由来していてもよい。T細胞エピトープは、変異したヒトタンパク質及び/又は悪性ヒト細胞によって異常に発現されるヒトタンパク質から作り出されてもよいし、又はそれらに由来していてもよい。T細胞エピトープは、合成的に作り出されてもよいし、又は合成分子に由来していてもよい(例えば、Carbone F et al., J Exp Med 167: 1767-9 (1988);Del Val M et al., J Virol 65: 3641-6 (1991);Appella E et al., Biomed Pept Proteins Nucleic Acids 1: 177-84 (1995);Perez S et al., Cancer 116: 2071-80 (2010)を参照)。
本発明の細胞標的化分子のCD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、例えば、ヒト病原体、典型的には、最も一般的な病原性ウイルス及び細菌に由来する十分に特徴付けられた免疫原性エピトープなど、様々な公知の抗原から選択され得る。
CD8+T細胞エピトープは、例えば、遺伝学的アプローチ、ライブラリースクリーニング、及びMHCクラスI分子を提示する細胞をペプチドから溶出し、それらを質量分析法によって配列決定することなど、熟練した作業者に公知の逆免疫法(reverse immunology method)によって同定することができる(例えば、Van Der Bruggen P et al., Immunol Rev 188: 51-64 (2002)を参照)。
追加として、既知の対照と比較した、所定のMHCクラスI対立遺伝子についての三元MHC-ペプチド複合体を安定化させるペプチドの能力の測定に基づいた他のMHC I-ペプチド結合アッセイが、開発されている(例えば、ProImmune社、Sarasota, FL, U.S.のMHC I-ペプチド結合アッセイ)。このようなアプローチは、推定上のCD8+T細胞エピトープ-ペプチドの有効性を予測すること又は既知のCD8+T細胞エピトープに関する経験上の根拠を裏付けるのに役立ち得る。
どのようなCD8+T細胞エピトープも、本発明の異種CD8+T細胞エピトープとして使用されるものとして予期されるが、所望の特性に基づきある特定のCD8+T細胞エピトープを選択することができる。CD8+T細胞で過免疫された細胞標的化分子を作り出すことが1つの目的であり、これは、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドが、細胞の表面上でMHCクラスI分子と複合体化したことが提示されたときにインビボでロバストな免疫応答を惹起することができるため、高度に免疫原性であることを意味する。
CD8+T細胞エピトープは、脊椎動物の免疫応答を惹起できることがすでに公知の多数の源の分子に由来していてもよい。CD8+T細胞エピトープは、脊椎動物にとって外来の様々な天然に存在するタンパク質、例えば病原微生物のタンパク質及び非自己がん抗原などに由来していてもよい。特定には、感染性微生物は、公知の抗原性及び/又は免疫原性特性を有する多数のタンパク質を含有し得る。さらに、感染性微生物は、公知の抗原性及び/若しくは免疫原性の部分領域又はエピトープを有する多数のタンパク質を含有し得る。CD8+T細胞エピトープは、例えば、がん細胞によって発現される変異型タンパク質など、変異型ヒトタンパク質及び/又は悪性ヒト細胞によって異常に発現されるヒトタンパク質に由来し得る(例えば、Sjoblom T et al., Science 314: 268-74 (2006);Wood L et al., Science 318: 1108-13 (2007);Jones S et al., Science 321: 1801-6 (2008);Parsons D et al., Science 321: 1807-12 (2008);Wei X et al., Nat Genet 43: 442-6 (2011);Govindan R et al., Cell 150: 1121-34 (2012);Vogelstein B et al., Science 339: 1546-58 (2013);Boegel S et al., Oncoimmunology 3: e954893 (2014)を参照)。
CD8+T細胞エピトープは、ペプチド、タンパク質のペプチド成分、及びタンパク質に由来するペプチドを含む、哺乳動物の免疫応答を惹起できることがすでに公知の多数の源の分子から選択されてもよいし、又はそれらに由来していてもよい。例えば、哺乳類宿主を伴う細胞内病原体のタンパク質は、CD8+T細胞エピトープの源である。よく研究された抗原性のタンパク質又はペプチドを有する、多数の細胞内病原体、例えばウイルス、細菌、真菌、及び単細胞真核生物などがある。CD8+T細胞エピトープは、ヒトウイルス又は他の細胞内病原体、例えばマイコバクテリウム属(mycobacterium)のような細菌、トキソプラズマ属(toxoplasmae)のような真菌、及びトリパノソーマ属(trypanosomes)のような原生生物などから選択又は同定することができる。
例えば、ヒトに感染するウイルス由来の公知のウイルスタンパク質の免疫原性ウイルスペプチド成分が、多数存在する。多数のヒトCD8+T細胞エピトープが、A型インフルエンザウイルス由来のタンパク質中のペプチド、例えばタンパク質HA糖タンパク質FE17、S139/1、CH65、C05、ヘマグルチニン1(HA1)、血球凝着素2(HA2)、非構造タンパク質1及び2(NS1及びNS2)、マトリックスタンパク質1及び2(M1及びM2)、核タンパク質(NP)、ノイラミニダーゼ(NA))中のペプチドなどにマッピングされており、これらのペプチドの多くが、例えばエクスビボのアッセイを使用することによって、ヒト免疫応答を惹起することが示されている(例えば、Assarsson E et al, J Virol 82: 12241-51 (2008); Alexander J et al., Hum Immunol 71: 468-74 (2010); Wang M et al., PLoS One 5: e10533 (2010); Wu J et al., Clin Infect Dis 51: 1184-91 (2010); Tan P et al., Human Vaccin 7: 402-9 (2011); Grant E et al., Immunol Cell Biol 91: 184-94 (2013); Terajima M et al., Virol J 10: 244 (2013)を参照)。同様に、多数のヒトCD8+T細胞エピトープが、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)由来のタンパク質のペプチド成分、例えばタンパク質pp65(UL83)、UL128~131、前初期1(IE-1;UL123)、糖タンパク質B、外被タンパク質中のペプチドなどにマッピングされており、これらのペプチドの多くが、例えばエクスビボのアッセイを使用することによって、ヒト免疫応答を惹起することが示されている(例えば、Schoppel K et al., J Infect Dis 175: 533-44 (1997); Elkington R et al, J Virol 77: 5226-40 (2003); Gibson L et al., J Immunol 172: 2256-64 (2004); Ryckman B et al., J Virol 82: 60-70 (2008); Sacre K et al., J Virol 82: 10143-52 (2008)を参照)。
別の例として、ヒトにおける多くの免疫原性がん抗原がある。がん及び/又は腫瘍細胞抗原のCD8+T細胞エピトープは、熟練した作業者により、当業界において公知の技術、例えば、差次的なゲノミクス、差次的なプロテオミクス、イムノプロテオミクス、予測とそれに次ぐ検証、及び逆の遺伝学的トランスフェクションのような遺伝学的アプローチなどを使用して、同定することができる(例えば、Admon A et al., Mol Cell Proteomics 2: 388-98 (2003);Purcell A, Gorman J, Mol Cell Proteomics 3: 193-208 (2004);Comber J, Philip R, Ther Adv Vaccines 2: 77-89 (2014)を参照)。ヒトがん及び/又は腫瘍細胞において生じることがすでに同定されているか又は予測されている多くの抗原性及び/又は免疫原性のT細胞エピトープがある。例えば、T細胞エピトープは、一般的に変異されるか又は新生細胞中で過剰発現されるヒトタンパク質、例えば、ALK、CEA、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(GnT-V)、HCA587、HER-2/neu、MAGE、メラン-A/MART-1、MUC-1、p53、及びTRAG-3などにおいて予測されている(van der Bruggen P et al., Science 254: 1643-7 (1991);Kawakami Y et al., J Exp Med 180: 347-52 (1994);Fisk B et al., J Exp Med 181: 2109-17 (1995);Guilloux Y et al., J Exp Med 183: 1173 (1996);Skipper J et al., J Exp Med 183: 527 (1996);Brossart P et al., 93: 4309-17 (1999);Kawashima I et al., Cancer Res 59: 431-5 (1999);Papadopoulos K et al., Clin Cancer Res 5: 2089-93 (1999);Zhu B et al., Clin Cancer Res 9: 1850-7 (2003);Li B et al., Clin Exp Immunol 140: 310-9 (2005);Ait-Tahar K et al., Int J Cancer 118: 688-95 (2006);Akiyama Y et al., Cancer Immunol Immunother 61: 2311-9 (2012)を参照)。加えて、ヒトがん細胞由来のT細胞エピトープの合成バリアントが作り出されている(例えば、Lazoura E, Apostolopoulos V, Curr Med Chem 12: 629-39 (2005);Douat-Casassus C et al., J Med Chem 50: 1598-609 (2007)を参照)。
異種CD8+T細胞エピトープと関連する用語「カーゴ」は、本明細書において、異種CD8+T細胞エピトープが、志賀毒素エフェクターポリペプチドの志賀毒素A1断片由来領域に組み込まれていない若しくは挿入されていないこと、又は志賀毒素エフェクターポリペプチド成分内に組み込まれていない若しくは挿入されていないことを強調して、使用される(例えば、国際公開第2015/113005号パンフレットを参照)。したがって、本発明の細胞標的化分子は、複数の異種CD8+T細胞エピトープを含み得るが、カーゴであるのは1つのみであり、これは、他の異種CD8+T細胞エピトープが、細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の志賀毒素A1断片領域に組み込まれている又は挿入されているためである。
あらゆる異種CD8+T細胞エピトープを本発明の組成物及び方法において使用することができるが、ある特定のCD8+T細胞エピトープが、それらの公知の及び/又は実験的に決定された特徴に基づいて好ましい場合がある。ヒトCD8+T細胞応答を惹起する免疫原性ペプチド-エピトープは、熟練した作業者に公知の技術を使用して説明されている及び/又は同定することができる(例えば、Kalish R, J Invest Dermatol 94: 108S-111S (1990);Altman J et al., Science 274: 94-6 (1996);Callan M et al., J Exp Med 187: 1395-402 (1998);Dunbar P et al., Curr Biol 8: 413-6 (1998);Sourdive D et al., J Exp Med 188: 71-82 (1998);Collins E et al., J Immunol 162: 331-7 (1999);Yee C et al., J Immunol 162: 2227-34 (1999);Burrows S et al., J Immunol 165: 6229-34 (2000);Cheuk E et al., J Immunol 169: 5571-80 (2002);Elkington R et al, J Virol 77: 5226-40 (2003);Oh S et al., Cancer Res 64: 2610-8 (2004);Hopkins L et al., Hum Immunol 66: 874-83 (2005);Assarsson E et al, J Virol 12241-51 (2008);Semeniuk C et al., AIDS 23: 771-7 (2009);Wang X et al., J Vis Exp 61: 3657 (2012);Song H et al., Virology 447: 181-6 (2013);Chen L et al., J Virol 88: 11760-73 (2014)を参照)。
多くの種において、MHC遺伝子は、複数のMHC-I分子バリアントをコードする。MHCクラスIタンパク質多型は、CD8+T細胞による抗原-MHCクラスI複合体の認識に影響を与える可能性があることから、ある特定のMHCクラスI多型、及び/又は異なる遺伝子型のT細胞によって認識される、ある特定の抗原-MHCクラスI複合体の能力に関する知見に基づき、異種T細胞エピトープを選択することができる。
免疫原性MHCクラスIにより制限される及び/又は特異的なヒト白血球抗原(HLA,human leukocyte antigen)バリアントと適合することが公知の明確に定義されたペプチド-エピトープがある。ヒトにおける適用又はヒト標的細胞の関与のために、熟練した作業者により、当業界において公知の標準的な技術を使用して、HLAクラスI制限エピトープを選択又は同定することができる。ペプチドのヒトMHCクラスI分子に結合する能力は、推定上のCD8+T細胞エピトープの免疫原性の見込みを予測するのに使用することができる。ペプチドのヒトMHCクラスI分子に結合する能力は、ソフトウェアツールを使用してスコア付けすることができる。ある特定のヒト集団においてより優勢な対立遺伝子によってコードされたHLAバリアントのペプチド選択性に基づいて、CD8+T細胞エピトープは、本発明のCD8+異種のT細胞エピトープ成分として使用するために選択されてもよい。例えば、ヒト集団は、MHCクラスI分子のアルファ鎖に関して多形性であり、可変の対立遺伝子は、HLA遺伝子によってコードされる。ある特定のT細胞エピトープは、特異的なHLA分子、例えばHLA-A対立遺伝子グループのHLA-A2及びHLA-A3によってコードされた一般的に存在するHLAバリアントなどによってより効率的に提示される可能性がある。
本発明の細胞標的化分子の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチド成分として使用するためにCD8+T細胞エピトープを選ぶ場合、標的化しようとする細胞型又は細胞集団中に存在するMHCクラスI分子に最もよく適合するCD8+エピトープが選択され得る。異なるMHCクラスI分子は、特定のペプチド配列への優先的な結合を示し、特定のペプチド-MHCクラスIバリアント複合体は、エフェクターT細胞のTCRによって特異的に認識される。熟練した作業者は、本発明で使用される異種T細胞エピトープの選択を最適化するために、MHCクラスI分子の特異性及びTCR特異性に関する知見を使用することができる。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、異種ポリペプチド、例えば、抗原又は抗原性タンパク質などに含まれる。ある特定のさらなる実施形態において、異種ポリペプチドは、27kDa、28kDa、29kDa、又は30kDaを上回らない。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、2つ又は3つ以上の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態において、すべての異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドを合わせたサイズは、27kDa、28kDa、29kDa、又は30kDaを上回らない。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、標準型プロテアソームと比較して、免疫プロテアソーム(immunoproteasome)、中間プロテアソーム(intermediate proteasome)、及び/又は胸腺プロテアソーム(thymoproteasome)を多く有する細胞においてより良好にプロセシングされるが、しかしながら、他の実施形態では逆の場合もある。
本発明の細胞標的化分子の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチド成分として使用するためのCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを選択する場合、例えば、標的細胞中の以下の因子:プロテアソーム、ERAAP/ERAP1、タパシン、及びTAPのエピトープ特異性など、CD8+T細胞エピトープの生成及び受け入れ可能なMHCクラスI分子への輸送に影響を与える可能性のある、MHCクラスI提示系における複数の要因が考慮され得る(例えば、Akram A, Inman R, Clin Immunol 143: 99-115 (2012)を参照)。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、中間プロテアソームによってインタクトな形態でタンパク質分解によりプロセシングされるだけである(例えば、Guillaume B et al., Proc Natl Acad Sci USA 107: 18599-604 (2010);Guillaume B et al., J Immunol 189: 3538-47 (2012)を参照)。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、標準型プロテアソーム、免疫プロテアソーム、中間プロテアソーム、及び/又は胸腺プロテアソームによって破壊されず、これは、細胞型、サイトカイン環境、組織の場所などにも依存し得る(例えば、Morel S et al., Immunity 12: 107-17 (2000);Chapiro J et al., J Immunol 176: 1053-61 (2006);Guillaume B et al., Proc Natl Acad Sci U.S.A. 107: 18599-604 (2010);Dalet A et al., Eur J Immunol 41: 39-46 (2011);Basler M et al., J Immunol 189: 1868-77 (2012);Guillaume B et al., J Immunol 189: 3538-47 (2012)を参照)。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、例えば、インビボでは所与の対象又は遺伝子型群又は前述のものに由来する細胞においてCD8+CTL応答を惹起するのが「弱い」など、「弱い」エピトープであると考えられる(例えば、Cao W et al., J Immunol 157: 505-11 (1996)を参照)。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、腫瘍細胞エピトープ、例えば、NY-ESO-1 157-165Aなどである(例えば、Jager E et al. J Exp Med 187: 265-70 (1998)を参照)。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、ユビキチン化を増加させるために、そのアミノ末端に嵩高な又は荷電した残基を有するように修飾されている(例えば、Grant E et al., J Immunol 155: 3750-8 (1995);Townsend A et al., J Exp Med 168: 1211-24 (1998);Kwon Y et al., Proc Natl Acad Sci U.S.A. 95: 7898-903 (1998)を参照)。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、タンパク質分解による切断の可能性を増加させるために、そのカルボキシ末端に疎水性アミノ酸残基を有するように修飾されている(例えば、Driscoll J et al., Nature 365: 262-4 (1993);Gaczynska M et al., Nature 365: 264-7 (1993)を参照)。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、Tレジトープ(Tregitope)である。Tレジトープは、免疫抑制結果を誘導することができるエピトープ-ペプチドとして機能的に定義される。天然に存在するTレジトープの例としては、ヒト免疫グロブリンG重鎖定常領域の部分領域(Fc)及びFabが挙げられる(例えば、Sumida T et al., Arthritis Rheum 40: 2271-3 (1997);Bluestone J, Abbas A, Nat Rev Immunol 3: 253-7 (2003);Hahn B et al., J Immunol 175: 7728-37 (2005);Durinovic-Bello I et al., Proc Natl Acad Sci USA 103: 11683-8 (2006);Sharabi A et al., Proc Natl Acad Sci USA 103: 8810-5 (2006);De Groot A et al., Blood 112: 3303-11 (2008);Sharabi A et al., J Clin Immunol 30: 34-4 (2010);Mozes E, Sharabi A, Autoimmun Rev 10: 22-6 (2010)を参照)。
本発明の細胞標的化分子の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドの位置は、一般的に、制限されない。本発明のある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、志賀毒素A1断片由来領域に対してカルボキシ末端側の位置で、細胞標的化分子に連結されている。
ある特定の実施形態において、細胞標的化分子は、2つ又は3つ以上の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態において、複数の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、異なる種、例えば、異なる微生物種などに由来する。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、1つの細菌及び1つのウイルスに由来するか、又は2つ若しくは3つ以上の異なる細菌種に由来する(例えば、Engelhorn M et al., Mol Ther 16: 773-81 (2008)を参照)。ある特定のさらなる実施形態において、2つ又は3つ以上の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、微生物及びヒトがん細胞に由来する。
C.細胞標的化結合領域
本発明の細胞標的化分子は、細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる細胞標的化結合領域を含む。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子の結合領域は、標的生体分子の細胞外部分(例えば細胞外標的生体分子)に高親和性で特異的に結合することができる、ドメイン、分子部分、又は薬剤などの細胞標的化成分である。熟練した作業者に公知の、又は熟練した作業者により当業界において公知の技術を使用して発見され得る多数のタイプの結合領域がある。例えば、本明細書に記載される必要な結合特徴を示すあらゆる細胞標的化成分が、本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態における結合領域として使用することができる。
標的生体分子の細胞外部分は、分子が細胞と物理的に結合している場合、例えば標的生体分子が細胞によって細胞表面に発現されている場合に細胞外環境に露出したその構造の一部を指す。この状況において、細胞外環境に露出したとは、標的生体分子の一部が、例えば、抗体又は抗体より小さい少なくとも結合部分、例えば単一ドメイン抗体ドメイン、ナノボディ、ラクダ科動物又は軟骨魚類由来の重鎖抗体ドメイン、一本鎖可変断片、又は多数の免疫グロブリンへの改変された代替足場などによって利用可能であることを意味する(以下を参照)。細胞に物理的に結合している標的生体分子の一部の細胞外環境への露出又はその利用しやすさは、熟練した作業者により、当業界において周知の方法を使用して実験的に決定することができる。
本発明の細胞標的化分子の結合領域は、例えばリガンド、ペプチド、免疫グロブリン型の結合領域、モノクローナル抗体、改変された抗体派生物、又は抗体の改変された代替物であり得る。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子の結合領域は、標的生体分子の細胞外部分に高親和性で特異的に結合することができるタンパク質性の部分である。本発明の細胞標的化分子の結合領域は、1つ又は2つ以上の様々なペプチド性部分又はポリペプチド部分、例えば無作為に生成したペプチド配列、天然に存在するリガンド又はそれらの派生物、免疫グロブリン由来のドメイン、免疫グロブリンドメインの代替物として合成的に改変された足場などを含んでいてもよい(例えば、国際公開第2005/092917号パンフレット;国際公開第2007/033497号パンフレット;Cheung M et al., Mol Cancer 9:28 (2010);米国特許出願公開第2013/196928号明細書;国際公開第2014/164693号パンフレット;国際公開第2015/113005号パンフレット;国際公開第2015/113007号パンフレット;国際公開第2015/138452号パンフレット;国際公開第2015/191764号パンフレットを参照)。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、細胞外標的生体分子を選択的及び特異的に結合することができる1つ又は2つ以上のポリペプチドを含む結合領域を含む。
特異的な細胞型に、それらの結合特徴、例えばある特定のリガンド、モノクローナル抗体、改変された抗体派生物、及び改変された抗体代替物などを介して分子を標的化するのに有用な、当業界において公知の多数の結合領域がある。
1つの特異的な、ただし非限定的な態様によれば、本発明の細胞標的化分子の結合領域は、細胞外標的生体分子、一般的には細胞表面受容体への結合機能を保持する天然に存在するリガンド又はそれらの派生物を含む。例えば、当業界において公知の様々なサイトカイン、増殖因子、及びホルモンを使用して、同起源のサイトカイン受容体、増殖因子受容体、又はホルモン受容体を発現する特異的な細胞型の細胞表面に、本発明の細胞標的化分子を標的化することができる。リガンドのある特定の非限定的な例(括弧内に代替の名称を示す)としては、アンギオゲニン、B細胞活性化因子(BAFF,B-cell activating factor,APRIL)、コロニー刺激因子(CSF,colony stimulating factor)、上皮増殖因子(EGF,epidermal growth factor)、線維芽細胞増殖因子(FGF,fibroblast growth factor)、血管内皮増殖因子(VEGF,vascular endothelial growth factor)、インスリン様増殖因子(IGF,insulin-like growth factor)、インターフェロン、インターロイキン(例えばIL-2、IL-6、及びIL-23)、神経増殖因子(NGF,nerve growth factor)、血小板由来増殖因子、トランスフォーミング増殖因子(TGF,transforming growth factor)、及び腫瘍壊死因子(TNF,tumor necrosis factor)が挙げられる。
本発明の細胞標的化分子のある特定の他の実施形態によれば、結合領域は、細胞外標的生体分子と結合することができる合成リガンドを含む(例えばLiang S et al., J Mol Med 84:764-73 (2006);Ahmed S et al., Anal Chem 82:7533-41 (2010);Kaur K et al., Methods Mol Biol 1248:239-47 (2015)を参照)。
ある特定の実施形態において、結合領域は、ペプチドミメティクス、例えばAAペプチド、ガンマ-AAペプチド、及び/又はスルホノ-γ-AAペプチドなどを含む(例えば、Pilsl L、Reiser O、Amino Acids 41:709-18 (2011);Akram O et al., Mol Cancer Res 12:967-78 (2014);Wu H et al., Chemistry 21:2501-7 (2015);Teng P et al., Chemistry 2016 Mar 4を参照)。
1つの具体的な、ただし非限定的な態様によれば、結合領域は、免疫グロブリン型の結合領域を含んでいてもよい。用語「免疫グロブリン型の結合領域」は、本明細書で使用される場合、例えば抗原又はエピトープなどの1つ又は2つ以上の標的生体分子と結合することが可能なポリペプチド領域を指す。結合領域は、標的分子に結合するそれらの能力によって機能的に定義される場合がある。免疫グロブリン型の結合領域は、一般的に抗体又は抗体様構造に由来するが、他の源由来の代替足場もこれらの用語の範囲内であると予期される。
免疫グロブリン(Ig)タンパク質は、Igドメインとして公知の構造ドメインを有する。Igドメインは、長さが約70~110アミノ酸残基の範囲であり、2つのベータシートに典型的に7~9個の逆平行ベータ鎖が配列されてサンドイッチ様構造を形成する特徴的なIg-フォールドを有する。Igフォールドは、サンドイッチの内部表面と鎖中のシステイン残基間の高度に保存されたジスルフィド結合とにおける疎水性アミノ酸相互作用によって安定化されている。Igドメインは、可変(IgV又はV-セット)、定常(IgC又はC-セット)又は中間(IgI又はI-セット)であり得る。いくつかのIgドメインは、それらのエピトープに結合する抗体の特異性にとって重要な、「相補性決定領域(complementary determining region)」とも称される相補性決定領域(CDR,complementarity determining region)と会合していてもよい。Ig様ドメインはまた、非免疫グロブリンタンパク質にも見出され、それに基づきタンパク質のIgスーパーファミリーのメンバーとして分類される。HUGO遺伝子命名法委員会(HGNC,HUGO Gene Nomenclature Committee)は、Ig様ドメインを含有するファミリーのメンバーのリストを提供している。
免疫グロブリン型の結合領域は、抗体又はそれらの抗原結合断片のポリペプチド配列であってもよく、そのアミノ酸配列は、例えば分子工学又はライブラリースクリーニングによる選択によって天然の抗体又は非免疫グロブリンタンパク質のIg様ドメインのアミノ酸配列から変更されている。免疫グロブリン型の結合領域の生成における組換えDNA技術及びインビトロのライブラリースクリーニングの適切性のために、抗体を再設計して、例えばより小さいサイズ、細胞の侵入、又はインビボの用途及び/若しくは治療用途に関する他の改善などの所望の特徴を得ることができる。多くの可能なバリエーションがあり、たった1つのアミノ酸の変化から例えば可変領域の完全なデザイン変化まで多岐にわたっていてもよい。典型的には、抗原結合特徴を改善する、可変領域の安定性を改善する、又は免疫原性応答の可能性を低減するためには、可変領域における変化がなされると予想される。
本発明の成分として予期される多数の免疫グロブリン型の結合領域がある。ある特定の実施形態において、免疫グロブリン型の結合領域は、免疫グロブリンの結合領域、例えば細胞外標的生体分子と結合することが可能な抗体パラトープなどに由来する。ある特定の他の実施形態において、免疫グロブリン型の結合領域は、いずれの免疫グロブリンドメインにも由来しないが、細胞外標的生体分子への高親和性結合を提供することによって免疫グロブリンの結合領域のように機能する改変されたポリペプチドを含む。この改変されたポリペプチドは、本明細書に記載される免疫グロブリン由来の相補性決定領域を含むか又はそれから本質的になるポリペプチド足場を含む場合がある。
また、ポリペプチドをそれらの高親和性結合特徴を介して特異的な細胞型に標的化するのに有用な、従来技術における多数の結合領域もある。本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、結合領域は、自律的なVHドメイン、単一ドメイン抗体ドメイン(sdAb)、ラクダ科動物由来の重鎖抗体ドメイン(VHH断片又はVHドメイン断片)、ラクダ科動物VHH断片又はVHドメイン断片由来の重鎖抗体ドメイン、軟骨魚類由来の重鎖抗体ドメイン、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変(scFv)断片、ナノボディ、重鎖及びCH1ドメインからなるFd断片、抗体可変ドメイン(Fv)断片、並べ替えられたFv(pFv)、一本鎖Fv-CH3ミニボディ、二量体CH2ドメイン断片(CH2D)、Fc抗原結合ドメイン(Fcab)、単離された相補性決定領域3(CDR3)断片、拘束フレームワーク領域3、CDR3、フレームワーク領域4(FR3-CDR3-FR4)ポリペプチド、小モジュラー免疫医薬(SMIP)ドメイン、scFv-Fc融合体、1アームの一本鎖Fabコンストラクト、多量体scFv断片(二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体)、ジスルフィド安定化抗体可変(Fv)断片、VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなるジスルフィド安定化抗原結合(Fab)断片、二価ナノボディ、二価ミニボディ、二価F(ab’)2断片(Fab二量体)、二重特異性タンデムVHH断片、二重特異性タンデムscFv断片、二重特異性ナノボディ、二重特異性ミニボディ、1アームの一本鎖Fabヘテロ二量体二重特異性コンストラクト、並びにその結合機能性を保持する前述のもののあらゆる遺伝子操作された対応物を含む群から選択される、免疫グロブリンドメインを含む(Brinkmann U et al., J Mol Biol 268: 107-17 (1997);Worn A, Pluckthun A, J Mol Biol 305: 989-1010 (2001);Xu L et al., Chem Biol 9: 933-42 (2002);Wikman M et al., Protein Eng Des Sel 17: 455-62 (2004);Binz H et al., Nat Biotechnol 23: 1257-68 (2005);Hey T et al., Trends Biotechnol 23 :514-522 (2005);Holliger P, Hudson P, Nat Biotechnol 23: 1126-36 (2005);Gill D, Damle N, Curr Opin Biotech 17: 653-8 (2006);Koide A, Koide S, Methods Mol Biol 352: 95-109 (2007);Byla P et al., J Biol Chem 285: 12096 (2010);Zoller F et al., Molecules 16: 2467-85 (2011);Alfarano P et al., Protein Sci 21: 1298-314 (2012);Madhurantakam C et al., Protein Sci 21: 1015-28 (2012);Varadamsetty G et al., J Mol Biol 424: 68-87 (2012);Reichen C et al., J Struct Biol 185: 147-62 (2014);Schanzer J et al., J Biol Chem 289: 18693-706 (2014))。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子の結合領域は、自律的なVHドメイン(例えば、ラクダ、マウス、又はヒト源などに由来する)、単一ドメイン抗体ドメイン(sdAb)、ラクダ科動物由来の重鎖抗体ドメイン(VHH断片又はVHドメイン断片)、ラクダ科動物VHH断片又はVHドメイン断由来の重鎖抗体ドメイン、軟骨魚類由来の重鎖抗体ドメイン、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変(scFv)断片、ナノボディ、VHドメインを含む「ラクダ化(camelized)」又は「ラクダ化(camelised)」足場、重鎖及びCH1ドメインからなるFd断片、一本鎖Fv-CH3ミニボディ、二量体CH2ドメイン断片(CH2D)、Fc抗原結合ドメイン(Fcab)、単離された相補性決定領域3(CDR3)断片、拘束フレームワーク領域3、CDR3、フレームワーク領域4(FR3-CDR3-FR4)ポリペプチド、小モジュラー免疫医薬(SMIP)ドメイン、scFv-Fc融合体、多量体scFv断片(二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体)、ジスルフィド安定化抗体可変(Fv)断片(dsFv)、VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなるジスルフィド安定化抗原結合(Fab)断片、ジスルフィド安定化重鎖及び軽鎖を含む一本鎖可変領域断片(sc-dsFv)、二価ナノボディ、二価ミニボディ、二価F(ab’)2断片(Fab二量体)、二重特異性タンデムVHH断片、二重特異性タンデムscFv断片、二重特異性ナノボディ、二重特異性ミニボディ、並びにそのパラトープ及び結合機能を保持する、前述のもののあらゆる遺伝子操作された対応物を含む群から選択される(Ward E et al., Nature 341: 544-6 (1989);Davies J, Riechmann L, Biotechnology (NY) 13: 475-9 (1995);Reiter Y et al., Mol Biol 290: 685-98 (1999);Riechmann L, Muyldermans S, J Immunol Methods 231: 25-38 (1999);Tanha J et al., J Immunol Methods 263: 97-109 (2002);Vranken W et al., Biochemistry 41: 8570-9 (2002);Dottorini T et al., Biochemistry 43: 622-8 (2004);Jespers L et al., J Mol Biol 337: 893-903 (2004);Jespers L et al., Nat Biotechnol 22: 1161-5 (2004);Spinelli S et al., FEBS Lett 564: 35-40 (2004);To R et al., J Biol Chem 280: 41395-403 (2005);Tanha J et al., Protein Eng Des Sel 19: 503-9 (2006);Saerens D et al., Curr Opin Pharmacol 8: 600-8 (2008);Dimitrov D, MAbs 1: 26-8 (2009);Chen I et al., Mol Biosyst 6: 1307-15 (2010);Huang Y et al., J Biol Chem 285: 7880-91 (2010);Lee et al., Biochem Biophys Res Commun 411: 348-53 (2011);Ahmad Z et al., Clin Dev Immunol 2012: 980250 (2012);Baral T et al., PLoS One 7: e30149 (2012);Weiner L, Cell 148: 1081-4 (2012)を参照)。
ある特定の実施形態において、本発明の分子の結合領域は、多価及び二重特異性であるが、特異性は、単一の標的に対するものである、すなわち、二重特異性は、同じか又は単一の細胞外標的生体分子上に存在する異なる細胞外エピトープに結合する、異なる結合領域に起因するものである(例えば、Schanzer J et al., Antimicrob Agents Chemother 55: 2369-78 (2011)を参照)。
免疫グロブリンドメイン及び/又は断片は、システイン残基及び/若しくはジスルフィド結合の付加若しくは除去並びに/又は他の残基の修飾によって、本発明の細胞標的化分子において細胞標的化部分として使用するために、改変され得る(例えば、Young N et al., FEBS Lett 377: 135-9 (1995);Wirtz P, Steipe B, Protein Sci 8: 2245-50 (1999);Barthelemy P et al., J Biol Chem 283: 3639-54 (2008);Arabi-Ghahroudi M et al., Protein Eng Des Sel 22: 59-66 (2009);Zhao J et al., Int J Mol Sci 12: 1-11 (2010);Duan Y et al., Mol Immunol 51: 188-96 (2012);Kim D et al., Protein Eng Des Sel 25: 581-9 (2012) Gil D, Schrum A, Adv Biosci Biotechnol 4: 73-84 (2013)を参照)。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、ドメイン内ジスルフィド結合、例えば、ある特定の免疫グロブリンのB及びF β鎖間に天然に見出されるジスルフィド結合、並びに/又は免疫グロブリンの重鎖と軽鎖若しくは免疫グロブリン由来の重鎖と軽鎖との間のジスルフィド結合などを有する、免疫グロブリンドメイン及び/又はIg-フォールド構造を含む、免疫グロブリン型の結合領域を含む。しかしながら、本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、分子は、ドメイン内ジスルフィド結合又は1つ若しくは2つ以上の免疫グロブリン型結合領域内の任意のドメイン内ジスルフィド結合を含まない場合であっても、非常に安定している(例えば、Proba K et al., Biochemistry 37: 13120-7 (1998);Worn A, Pluckthun A, Biochemistry 37: 13120-7 (1998);Worn A, Pluckthun A, FEBS Lett 427: 357-61 (1998);Ramm K et al., J Mol Biol 290: 535-46 (1999);Tanaka T, Rabbitts T, J Mol Biol 376: 749-57 (2008)を参照)。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、可溶性を改善するため、安定性を改善するため、及び/又はそれ以外では結合領域を「ラクダ化」するために、ある特定のラクダ科動物VHH「四分染色体」変異により改変されている、免疫グロブリン由来の免疫グロブリン型結合領域を含む(例えば、Vincke C et al., J Biol Chem 284: 3273-84 (2009);Perchiacca J et al., Proteins 79: 2637-47 (2011);Gil D, Schrum A, Adv Biosci Biotechnol 4: 73-84 (2013)を参照)。
熟練した作業者は、当業界において公知の多数のアプローチを使用して、免疫グロブリンドメイン及び/若しくは断片を含むか、又はそれ以外では免疫グロブリン由来の成分を含む、分子の凝集を最小化及び/又は予防することができる(例えば、Jespers L et al., Nat Biotechnol 22: 1161-5 (2004);Daugherty A, Mrsny R, Adv Drug Deliv Rev 58: 686-706 (2006);Christ D et al., Protein Eng Des Sel 20: 413-6 (2007);Wang W et al., J Pharma Sci 96: 1-26 (2007);Famm K et al., J Mol Biol 376: 926-31 (2008);Arabi-Ghahroudi M et al., Protein Eng Des Sel 22: 59-66 (2009);Wang X et al., MAbs 1: 254-267 (2009);Dudgeon K et al., Proc Natl Acad Sci USA 109: 10879-84 (2012);Kim D et al., Methods Mol Biol 911: 355-72 (2012);Perchiacca J et al., Protein Eng Des Sel 25: 591-601 (2012);Schaefer J, Pluckthun A, J Mol Biol 417: 309-335 (2012);Buchanan A et al., MAbs 5: 255-62 (2013);Lee C et al., Trends Biotechnol 31: 612-20 (2013);Tiller T et al., MAbs 5: 445-470 (2013);Kim D et al., Biochim Biophys Acta 1844: 1983-2001 (2014);Perchiacca J et al., Protein Eng Des Sel 27: 29-39 (2014);Rouet R et al., FEBS Lett 588: 269-77 (2014);Swift J et al., Protein Eng Des Sel 27: 405-9 (2014);Enever C et al., Protein Eng Des Sel 28: 59-68 (2015)を参照)。
熟練した作業者は、分子間ジスルフィド結合の付加又は維持を使用して、本発明の細胞標的化分子のある特定の結合領域を安定化することができる(例えば、Glockshuber R et al., Biochemistry 29: 1362-7 (1990);Stanfield R et al., Science 305: 1770-3 (2004);Hagihara Y et al., J Biol Chem 282: 36489-95 (2007);Chan P et al., Biochemistry 47: 11041-54 (2008);Saerens D et al., J Mol Biol 478-88 (2008);Hussack G et al., PLoS One 6: e28218 (2011);Govaert J et al., J Biol Chem 287: 1970-9 (2012);Kim D et al., Protein Eng Des Sel 25: 581-9 (2012);Gil D, Schrum A, Adv Biosci Biotechnol 4: 73-84 (2013);McConnell A et al., Protein Eng Des Sel 25: 581-9 (2013);Feige M et al., Proc Natl Acad Sci USA 111: 8155-60 (2014);Hagihara Y, Saerens D, Biochim Biophys Acta 1844: 2016-2023 (2014);Kim D et al., Mabs 6: 219-35 (2014)を参照)。
例えば、ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、例えば、ジスルフィド安定化scFv、Fv断片、若しくはFab(例えば、Reiter Y et al., J Biol Chem 269: 18327-31 (1994);Kuan C, Pastan I, Biochemistry 35: 2872-7 (1996);Almog O et al., Proteins 31: 128-38 (1998);Schoonjans R et al., J Immunol 165: 7050-7 (2000);Olafsen T et al., Protein Eng Des Sel 17: 21-7 (2004);Gil D, Schrum A, Adv Biosci Biotechnol 4: 73-84 (2013);米国出願第20120283418号明細書を参照)、塩基ループ接続(例えば、Brinkmann U et al., J Mol Biol 268: 107-17 (1997)を参照)、並びに/又は他の修飾、例えば、荷電した残基(charged reside)、グリカン、及び/若しくは免疫グロブリンドメイン短縮化の付加などの他の修飾(例えば、Gong R et al., Mol Pharm 10: 2642-52 (2013);Lee C et al., Trends Biotechnol 31: 612-20 (2013);Goldman E et al., Protein Expr Purif 95: 226-32 (2014)を参照)を使用することなどによって、望ましくない分子間会合、多量体、及び/又は凝集体の形成を最小化するように改変されている。
本発明のある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、例えば、scFvの重鎖領域及び軽鎖領域を連結させる、短いリンカー(典型的には、12未満のアミノ酸残基)及び/又はジスルフィド安定化リンカーを使用することなどによって、凝集しないように改変されているscFvである、免疫グロブリン型の結合領域を含む(例えば、Brinkmann U et al., Proc Natl Acad Sci USA 90: 7538-42 (1993);Whitlow M et al., Protein Engineering 6: 989-95 (1993);Reiter Y et al., Biochemistry 33: 5451-9 (1994);Gong R et al., Molecular Pharmaceutics 10: 2642-52 (2013)を参照)。
本発明の細胞標的化分子の結合領域として使用することができる、免疫グロブリンの定常領域由来のポリペプチド、例えば、改変された二量体Fcドメイン、単量体Fc(mFc)、scFv-Fc、VHH-Fc、CH2ドメイン、単量体CH3sドメイン(mCH3s)、合成的にリプログラミングされた免疫グロブリンドメイン、及び/又は免疫グロブリンドメインとリガンドとのハイブリッド融合体を含む、様々な結合領域がある(Hofer T et al., Proc Natl Acad Sci USA 105: 12451-6 (2008);Xiao J et al., J Am Chem Soc 131: 13616-8 (2009);Xiao X et al., Biochem Biophys Res Commun 387: 387-92 (2009);Wozniak-Knopp G et al., Protein Eng Des Sel 23 289-97 (2010);Gong R et al., PLoS ONE 7: e42288 (2012);Wozniak-Knopp G et al., PLoS ONE 7: e30083 (2012);Ying T et al., J Biol Chem 287: 19399-408 (2012);Ying T et al., J Biol Chem 288: 25154-64 (2013);Chiang M et al., J Am Chem Soc 136: 3370-3 (2014);Rader C, Trends Biotechnol 32: 186-97 (2014);Ying T et al., Biochimica Biophys Acta 1844: 1977-82 (2014))。
ある特定の他の実施形態によると、結合領域は、従来的な免疫グロブリンに由来するのではなく、免疫系の一部として機能する細胞膜結合型受容体に由来する、免疫グロブリンドメインを含む。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子の細胞標的化結合領域は、一本鎖T細胞受容体可変断片(scTv)、一本鎖TCR(scTCR)、ジスルフィド安定化T細胞受容体可変断片(dsTv)、及び/又はT細胞受容体可変断片ジスルフィド安定化Fvヘテロ二量体(TCR dsFvヘテロ二量体)を含むか又はそれから本質的になる。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子の細胞標的化結合領域は、可溶性一本鎖T細胞受容体可変断片(可溶性scTv)及び/又はTCR dsFvヘテロ二量体である(例えば、Novotny J et al., Proc Natl Acad Sci USA 88: 8646-50 (1991);Soo Hoo, W et al., Proc Natl Acad Sci USA 89: 4759-63 (1992);Shusta E et al., J Mol Biol 292: 949-56 (1999);Holler P et al., Proc Natl Acad Sci USA 97: 5387-92 (2000);Boulter J et al., Protein Eng 16: 707-11 (2003);Li Y et al., Nat Biotechnol 23: 349-54 (2005);Weber K et al., Proc Natl Acad Sci USA 102: 19033-8 (2005);Dunn S et al., Protein Sci 15: 710-21 (2006);Richman S, Kranz D, Biomol Eng 24: 361-73 (2007);Varela-Rohena A et al., Nat Med 14: 1390-5 (2008);Sadelain M et al., Curr Opin Immunol 21: 215-23 (2009);Aggen D et al., Protein Eng Des Sel 24: 361-72 (2011);国際公開第1999060120号パンフレット;国際公開第2001057211号パンフレット;国際公開第2003020763号パンフレット;米国特許第7,329,731号明細書を参照)。ほとんどの免疫グロブリンとは異なり、天然に存在するscTvは、典型的に、中等度の親和性で、エピトープ-ペプチド-MHCタンパク質複合体に結合する。scTvは、単独で、そのような細胞表面標的(すなわち、pMHCの形態で細胞に物理的に結合している細胞外標的生体分子)に結合するが、scTvはまた、エフェクター分子、例えば、毒素タンパク質と融合した場合にも、細胞標的化のための結合特異性を保持することができる(例えば、Epel M et al., Cancer Immunol Immunother 51: 563-73 (2002)を参照)。そのようなscTvは、高い親和性結合、特異性、及び選択性で、新しい標的を認識するように改変することができるが、標的は、典型的に、脊椎動物細胞の表面上に提示されるMHCタンパク質-非自己エピトープ-ペプチド複合体である。しかしながら、胸腺選択の際に欠失されている天然に存在するTCRは、高い親和性で、自己エピトープ-MHC複合体に結合することが多い。さらに、scTvは、所望される結合相互作用の親和性及び/又は安定性を改善させるように、その可変ドメインにおいて変異されていてもよい(例えば、Shusta E et al., Nat Biotechnol 18: 754-9 (2000);Richman S et al., Mol Immunol 46: 902-16 (2009)を参照)。scTCRにおける可溶性を増加させる変異及び/又はTCR不変領域における非天然のジスルフィド結合の導入によりdsTCRを作成することにより、scTvの安定性及びフォールディング特徴を大幅に増加させることができる(例えば、Molloy P et al., Curr Opin Pharmacol 5: 438-43 (2005)、国際公開第2003020763号パンフレットを参照)。加えて、scTCRのドメインのアミノからカルボキシまでの配向を、Vαドメイン-リンカー-Vβドメインの配向にすることによって、scTvの安定性及び産生を改善することができる(Loset G et al., Protein Eng Des Sel 20: 461-72 (2007);Richman S et al., Mol Immunol 46: 902-16 (2009))。様々な変異の導入によっても、宿主細胞系、例えば、酵母細胞において、発現を改善することができる(例えば、Richman S et al., Mol Immunol 46: 902-16 (2009)を参照)。
ある特定の他の実施形態によれば、結合領域は、免疫グロブリンドメインへの改変された代替足場を含む。例えば標的生体分子の高親和性の及び特異的な結合などの免疫グロブリン由来の構造に対して類似の機能的な特徴を示す改変された代替足場が当業界において公知であり、ある特定の免疫グロブリンドメインに、例えばより大きい安定性又は低減した免疫原性などの改善された特徴を提供することができる。一般的に、免疫グロブリンへの代替足場は、20キロダルトン(kDa)未満であり、単一のポリペプチド鎖からなり、システイン残基を欠失しており、相対的に高い熱力学的な安定性を示す。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、免疫グロブリン型結合領域は、改変されたアルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP);改変されたフィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型(10Fn3)ドメイン(モノボディ、AdNectin(商標)、又はAdNexin(商標));改変されたテネイシン由来テネイシンIII型ドメイン(Centryn(商標));改変されたアンキリン反復モチーフ含有ポリペプチド(DARPin(商標));改変された低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR-A)(Avimer(商標));リポカイン(アンチカリン);改変されたプロテアーゼ阻害因子由来クニッツドメイン;改変されたプロテインA由来Zドメイン(Affibody(商標));改変されたガンマ-B結晶由来の足場又は改変されたユビキチン由来の足場(Affilin);Sac7d由来のポリペプチド(Nanoffitin(登録商標)又はアフィチン);改変されたFyn由来SH2ドメイン(Fynomer(登録商標));及び改変された抗体模倣体、並びにその結合機能性を保持する前述のもののあらゆる遺伝子操作された対応物を含む群から選択される(Worn A, Pluckthun A, J Mol Biol 305: 989-1010 (2001);Xu L et al., Chem Biol 9: 933-42 (2002);Wikman M et al., Protein Eng Des Sel 17: 455-62 (2004);Binz H et al., Nat Biotechnol 23: 1257-68 (2005);Hey T et al., Trends Biotechnol 23 :514-522 (2005);Holliger P, Hudson P, Nat Biotechnol 23: 1126-36 (2005);Gill D, Damle N, Curr Opin Biotech 17: 653-8 (2006);Koide A, Koide S, Methods Mol Biol 352: 95-109 (2007);Byla P et al., J Biol Chem 285: 12096 (2010);Zoller F et al., Molecules 16: 2467-85 (2011);Alfarano P et al., Protein Sci 21: 1298-314 (2012);Madhurantakam C et al., Protein Sci 21: 1015-28 (2012);Varadamsetty G et al., J Mol Biol 424: 68-87 (2012))。
例えば、CD20を発現する細胞に対して高親和性結合を呈する改変されたFn3(CD20)結合領域足場が存在する(Natarajan A et al., Clin Cancer Res 19: 6820-9 (2013))。
例えば、細胞外受容体HER2に結合する多数の代替足場が同定されている(例えば、Wikman M et al., Protein Eng Des Sel 17:455-62 (2004);Orlova A et al. Cancer Res 66:4339-8 (2006);Ahlgren S et al., Bioconjug Chem 19:235-43 (2008);Feldwisch J et al., J Mol Biol 398:232-47 (2010);米国特許第5,578,482号明細書;5,856,110号明細書;5,869,445号明細書;5,985,553号明細書;6,333,169号明細書;6,987,088号明細書;7,019,017号明細書;7,282,365号明細書;7,306,801号明細書;7,435,797号明細書;7,446,185号明細書;7,449,480号明細書;7,560,111号明細書;7,674,460号明細書;7,815,906号明細書;7,879,325号明細書;7,884,194号明細書;7,993,650号明細書;8,241,630号明細書;8,349,585号明細書;8,389,227号明細書;8,501,909号明細書;8,512,967号明細書;8,652,474号明細書;及び米国特許出願公開第20110059090号明細書を参照)。代替の抗体様式に加えて、抗体様の結合能力は、非タンパク質性化合物、例えばオリゴマー、RNA分子、DNA分子、炭水化物、及びグリコカリックスカリックスアレーン(例えばSansone F, Casnati A, Chem Soc Rev 42:4623-39 (2013)を参照)又は部分的にタンパク質性の化合物、例えばペプチドと結合したフェノール-ホルムアルデヒド環状オリゴマー及びカリックスアレーン-ペプチド組成物など(例えば米国特許第5,770,380号明細書を参照)によって付与することができる。
ある特定の実施形態において、例えば、保管中又は投与後であるが標的細胞に到達する前の、不安定性を回避するために、プロテアーゼ耐性免疫グロブリンドメイン及び/又は合成的に安定化されたscFv断片を使用することが、好ましい場合がある(例えば、Ewert S et al., Methods 34: 184-99 (2004);Honegger et al., Protein Eng Des Sel 22: 135-47 (2009);Miller et al., Protein Eng Des Sel 23: 549-57 (2010);Hussack G et al., Protein Eng Des Sel 27: 191-8 (2014)を参照)。
上記した結合領域構造はいずれも、結合領域成分が細胞外標的生体分子に対して10-5~10-12モル/リットル、好ましくは200ナノモル濃度(nM)未満の解離定数を有する限り、本発明の細胞標的化分子の成分として使用してもよい。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、標的生体分子の細胞外部分又は細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域に連結及び/又は融合した、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。細胞外標的生体分子は、例えば本明細書に記載される基準などの多数の基準に基づき選択してもよい。
結合領域によって結合した細胞外標的生体分子
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子の結合領域は、標的生体分子の細胞外部分又は細胞外標的生体分子に特異的に結合することができ、好ましくは所望の細胞型、例えばがん細胞、腫瘍細胞、形質細胞、感染細胞、又は細胞内病原体を内包する宿主細胞などの表面と物理的に結合しているタンパク質領域を含む。好ましくは、標的化される細胞型は、MHCクラスI分子を発現するであろう。本発明の細胞標的化分子の結合領域によって結合した標的生体分子としては、がん細胞、免疫細胞、及び/又は例えばウイルス、細菌、真菌、プリオン、若しくは原生動物などの細胞内病原体に感染した細胞に過剰な比率で又は独占的に存在するバイオマーカーを挙げることができる。
用語「標的生体分子」は、本発明の細胞標的化分子の結合領域と結合して、その結果として特異的な細胞、細胞型、及び/又は多細胞生物内の位置への細胞標的化分子の標的化が生じる生体分子、一般的には、例えば糖付加などの翻訳後修飾によって改変されたタンパク質性分子又はタンパク質を指す。
本発明の目的に関して、用語「細胞外」は、標的生体分子に関して、その構造の少なくとも一部が細胞外環境に露出した生体分子を指す。細胞外環境への露出又は標的生体分子の細胞に結合した部分への利用しやすさは、熟練した作業者により当業界において周知の方法を使用して実験的に決定することができる。細胞外標的生体分子の非限定的な例としては、細胞膜成分、膜貫通タンパク質、細胞膜に固定された生体分子、細胞表面に結合した生体分子、及び分泌された生体分子が挙げられる。
本発明に関して、成句「物理的に結合している」は、標的生体分子を説明するのに使用される場合、共有結合及び/又は非共有結合による分子間相互作用により標的生体分子又はそれらの一部を細胞の外側に結合させることを意味し、例えば、単一の相互作用それぞれのエネルギーが概して少なくとも約1~5キロカロリーの、標的生体分子と細胞との間の複数の非共有結合による相互作用(例えば、静電結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性力など)である。すべての内在性膜タンパク質が、細胞膜に物理的に結合していることを見出すことができ、表在性膜タンパク質も同様である。例えば、細胞外標的生体分子は、膜貫通領域、脂質アンカー、グリコリピドアンカーを含む場合もあるし、及び/又は前述のもののいずれか1つを含む因子と非共有結合によって(例えば非特異的な疎水性相互作用及び/又は脂質結合相互作用を介して)会合している場合もある。
標的生体分子の細胞外部分としては、改変されていないポリペプチド、生化学的な官能基及びグリコリピドの付加によって改変されたポリペプチドを含む、様々なエピトープを挙げることができる(例えば米国特許第5,091,178号明細書;欧州特許第2431743号明細書を参照)。
本発明の細胞標的化分子の結合領域は、例えばそれらの標的生体分子の細胞型特異的な発現、それらの標的生体分子の特異的な細胞型に関する物理的な局在化、及び/又はそれらの標的生体分子の特性などの多数の基準に基づき設計又は選択することができる。例えば、本発明のある特定の細胞標的化分子は、1つの種の1つのみの細胞型又は多細胞生物中の1つのみの細胞型によって細胞表面で独占的に発現される細胞表面の標的生体分子と結合することが可能な結合領域を含む。細胞外標的生体分子は、本質的に内在化されているか又は本発明の細胞標的化分子と相互作用したときに容易に内在化されることが望ましいが、必須ではない。
熟練した作業者であれば、志賀毒素エフェクターポリペプチドと会合及び/又は結合させて、本発明の細胞標的化分子を産生するのに好適な結合領域を設計又は選択するのに、あらゆる所望の標的生体分子を使用できることを認識しているものと予想される。
本発明の細胞標的化分子の一般構造は、様々な多様な細胞標的化結合領域を、多様な標的細胞型のMHCクラスI系への様々なエピトープの多様な標的化及び送達を提供するために、様々な志賀毒素エフェクターポリペプチド及びCD8+T細胞エピトープ-ペプチドとともに使用することができるという点で、モジュール式である。本発明の細胞標的化分子(例えば、タンパク質)は、細胞標的化分子のタンパク質性成分のカルボキシ末端に、カルボキシ末端小胞体保持/回収シグナルモチーフ、例えば、アミノ酸KDEL(配列番号750)などをさらに含んでもよい(例えば、国際特許出願第PCT/US2015/19684号明細書を参照)。
D.本発明の細胞標的化分子の成分を接続する連結
個々の細胞標的化結合領域、志賀毒素エフェクターポリペプチド、CD8+T細胞エピトープカーゴ、及び/又は本発明の細胞標的化分子の他の成分は、好適には、当業界において周知の及び/又は本明細書に記載される1つ又は2つ以上のリンカーを介して互いに連結されていてもよい(例えば、国際公開第WO2014/164693号パンフレット;国際公開第WO2015/113005号パンフレット;国際公開第WO2015/113007号パンフレット;国際公開第WO2015/138452号パンフレット;国際公開第WO2015/191764号パンフレットを参照)。結合領域の個々のポリペプチド下位成分、例えば重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、CDR、及び/又はABR領域が、好適には、当業界において周知の及び/又は本明細書に記載される1つ又は2つ以上のリンカーを介して互いに連結されていてもよい。本発明のタンパク質性成分、例えば多連鎖の結合領域は、好適には、当業界において周知の1つ又は2つ以上のリンカーを介して、互いに又は本発明の他のポリペプチド成分に連結されていてもよい。本発明のペプチド成分、例えば、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴは、好適には、1つ又は2つ以上のリンカー、例えば当業界において周知のタンパク質性リンカーなどを介して、本発明の別の成分に連結されていてもよい。
好適なリンカーは、一般的に、本発明の各ポリペプチド成分を、いかなるリンカー又はそれと会合した別の成分も用いずに個別に産生されたポリペプチド成分に非常に類似した3次元構造にフォールディングさせることができるリンカーである。好適なリンカーとしては、単一のアミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、及び上述のもののいずれも含まないリンカー、例えば様々な非タンパク質性炭素鎖などが挙げられ、分岐状か又は環状かは問わない(例えば、Alley S et al., Bioconjug Chem 19: 759-65 (2008);Ducry L, Stump B, Bioconjug Chem 21: 5-13 (2010)を参照)。
好適なリンカーは、タンパク質性であってもよく、1つ又は2つ以上のアミノ酸、ペプチド、及び/又はポリペプチドを含んでいてもよい。タンパク質性のリンカーは、組換え融合タンパク質及び化学的に連結されたコンジュゲートの両方にとって好適である。タンパク質性のリンカーは、典型的には約2~約50アミノ酸残基、例えば約5~約30又は約6~約25アミノ酸残基を有する。選択されるリンカーの長さは、例えばリンカーが選択される理由となる所望の1つ又は複数の特性などの様々な要因に依存すると予想される。ある特定の実施形態において、リンカーは、タンパク質性であり、本発明のタンパク質成分の末端の近くに、典型的には末端から約20アミノ酸以内に連結されている。多くの場合、適切なタンパク質性リンカーは、可動性のためのグリシン及び/又はセリンのストレッチを、1つ又は2つ以上の荷電残基、例えば、可溶性のためのグルタミン酸及び/又はリシン残基などと組み合わせて含む(例えば、Whitlow M et al., Protein Engineering 6: 989-95 (1993)を参照)。
好適なリンカーは、例えば化学的リンカーなどの非タンパク質性であり得る。
本発明の細胞標的化分子の成分の連結に好適な方法は、その結合が、細胞標的化結合領域の結合能力、及び/又は適切な場合は所望の志賀毒素エフェクター機能を実質的に妨害しない限り、本明細書に記載されるアッセイを含む適切なアッセイによって測定された場合にそのような連結を達成するための目下当業界において公知のあらゆる方法によってなされ得る。例えば、ジスルフィド結合及びチオエーテル結合を使用して、本発明の細胞標的化分子の2つ又は3つ以上のタンパク質性成分を連結してもよい。
本発明の細胞標的化分子の目的に関して、具体的な順番又は方向は、成分について、明記されていない限り固定されない。志賀毒素エフェクターポリペプチド、異種CD8+T細胞エピトープカーゴ、結合領域、及びあらゆる任意選択のリンカーの配列は、具体的に述べられていない限り、互いに関連して、又は細胞標的化分子全体で、固定されない(例えば、図1を参照)。一般的に、本発明の細胞標的化分子の成分は、結合領域、志賀毒素エフェクターポリペプチド、及び異種CD8+T細胞エピトープの所望の活性が除去されないのであれば、どのような順番で配列されてもよい。
II.本発明の細胞標的化分子の具体的な構造バリエーションの例
本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、細胞標的化結合領域、並びに志賀毒素A1断片領域及び/又は志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドに組み込まれていない又は挿入されていない異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを含む。CD8+T細胞エピトープカーゴを標的細胞のMHCクラスI提示経路に送達する能力を有する細胞標的化分子は、原理的には、結果として得られる細胞標的化分子が、少なくとも志賀毒素エフェクター、細胞標的化部分、又はそれらの構造上の組合せによって提供される細胞内在化能力(例えば、エンドサイトーシスによるものなど)を有する限り、及び志賀毒素エフェクターポリペプチド成分又は全体としての細胞標的化分子構造が、標的細胞内に入ると、T細胞エピトープ-ペプチドを標的細胞のMHCクラスI提示経路に送達するのに適した細胞内区画、例えば、サイトゾル又は小胞体(ER)などへの十分な細胞内経路決定を提供する限り、任意の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドを、細胞標的化結合領域及び志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドの任意の組合せに連結させることによって作り出すことができる。
本発明の細胞標的化分子は、それぞれ、志賀毒素ファミリーのメンバーの少なくとも1つのAサブユニットに由来する少なくとも1つの志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを含む。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、短縮型志賀毒素Aサブユニットを含むか又はそれから本質的になる。志賀毒素Aサブユニットの短縮化は、例えば、触媒活性及び細胞毒性などの志賀毒素エフェクター機能に影響することなく、エピトープ全体及び/若しくはエピトープ領域、B細胞エピトープ、CD4+T細胞エピトープ、並びに/又はフューリン切断部位の欠失を生じ得る。完全な酵素活性を示すことが示された最小の志賀毒素Aサブユニット断片は、Slt1Aの残基1~239で構成されるポリペプチドであった(LaPointe P et al., J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。有意な酵素活性を示すことが示された最小の志賀毒素Aサブユニット断片は、StxAの残基75~247で構成されるポリペプチドであった(Al-Jaufy A et al., Infect Immun 62: 956-60 (1994))。
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、一般的に、完全長志賀毒素Aサブユニットより小さくあり得るが、本発明の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(SLT-1A(配列番号1)又はStxA(配列番号2)の)アミノ酸位置77~239のポリペプチド領域、又は志賀毒素ファミリーのメンバーの他のAサブユニットにおけるその等価物(例えば、(配列番号3及び7~18)の77~238)を維持する必要があり得る。例えば、本発明の分子のある特定の実施形態において、志賀毒素由来の本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1~2及び4~6のうちのいずれかのアミノ酸75~251、1~241、1~251、及び1~261から選択されるアミノ酸配列によって表されるポリペプチドを含み得るか又はそれから本質的になり得る。同様に、志賀毒素2由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号3及び7~18のうちのいずれかのアミノ酸75~250、1~241、1~250、及び1~260から選択されるアミノ酸配列によって表されるポリペプチドを含み得るか又はそれから本質的になり得る。
野生型志賀毒素Aサブユニットポリペプチドに由来するとはいえ、本発明の分子のある特定の実施形態に関して、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットとは、最大で1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、又は41個以上のアミノ酸残基(ただし、少なくとも85%、90%、95%、99%、又はそれ以上のアミノ酸配列同一性を保持するアミノ酸残基の数よりは多くないアミノ酸残基)が異なる。
本発明は、本発明の細胞標的化分子のバリアントであって、前記志賀毒素エフェクターポリペプチドが、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットと、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、又は41個以上のアミノ酸残基だけ、又は最高それまでのアミノ酸残基(ただし、少なくとも85%、90%、95%、99%、又はそれ以上のアミノ酸配列同一性を保持するバリアントにおける異なるアミノ酸残基の数より多くないアミノ酸残基)が異なる、バリアントをさらに提供する。したがって、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来する、本発明の分子は、少なくとも85%、90%、95%、99%、又はそれ以上のアミノ酸配列同一性が、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットに対して維持される限り、最初の配列からの付加、欠失、短縮化、又は他の変更を含み得、例えば、志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端において、破壊されたフューリン切断モチーフがある。
したがって、ある特定の実施形態において、本発明の分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、天然に存在する志賀毒素Aサブユニット(例えば、配列番号1~18のいずれか1つ)に対する少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.7%の全配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれから本質的になり、例えば、志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端において、破壊されたフューリン切断モチーフがある。
本発明の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドの完全長又は短縮型のいずれも、その志賀毒素由来ポリペプチドが、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットと比較して、1つ又は2つ以上の変異(例えば、置換、欠失、挿入、又は反転)を含む。志賀毒素エフェクターポリペプチドが、宿主細胞形質転換、トランスフェクション、感染、若しくは導入の周知の方法によるか、又は志賀毒素エフェクターポリペプチドと連結した細胞標的化結合領域により媒介される内在化によるかのいずれかにより、細胞への侵入後に細胞毒性を保持するのに十分な、野生型志賀毒素Aサブユニットとの配列同一性を有することが、本発明のある特定の実施形態において好ましい。酵素活性に最も重要な志賀毒素Aサブユニットの領域は、配列番号1~18のうちのいずれかなど、バリアントに応じて、アミノ酸残基137/138~209/210の周辺に位置する、活性部位である。志賀毒素Aサブユニットにおける酵素活性及び/又は細胞毒性にとって最も重要な残基は、とりわけ、以下の残基位置にマッピングされている:アスパラギン-75、チロシン-77、グルタミン酸-167、アルギニン-170、及びアルギニン-176(Di R et al., Toxicon 57: 525-39 (2011))。本発明の実施形態のいずれか1つにおいて、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、StxA、SLT-1Aにおける位置77、167、170、及び176、又は典型的には強力な細胞毒性活性に必要とされる志賀毒素ファミリーの他のメンバーにおける等価の保存された位置に見出されるものなどの位置に、1つ又は2つ以上の保存されたアミノ酸を維持することが、必ずしもではないが、好ましくあり得る。細胞死を引き起こす本発明の細胞毒性細胞標的化分子の能力、例えば、それの細動毒性は、当技術分野においてよく知られたいくつかのアッセイのいずれか1つ又は2つ以上を使用して測定され得る。
単一のpMHC I複合体の提示ですら、細胞溶解のためのCTLによる提示細胞の細胞間結合に十分であるため、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較して細胞内経路決定の志賀毒素エフェクター機能が相当に低減されている志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む本発明の細胞標的化分子でも、依然として、それらの異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを標的細胞のMHCクラスI提示経路に、例えば、CD8+免疫細胞の細胞間結合を伴う免疫応答の誘導及び/又は特定の細胞型のある特定の細胞内区画の検出に十分な量などで、送達することが可能な場合がある(Sykulev Y et al., Immunity 4: 565-71 (1996))。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来のポリペプチド、及び(2)志賀毒素A1断片由来のポリペプチドのカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフを含む。志賀毒素A1断片由来のポリペプチドのカルボキシ末端は、熟練した作業者により、当技術分野において公知の技術を使用することによって同定することができ、例えば、タンパク質配列アライメントソフトウェアなどを使用することによって、(i)天然に存在する志賀毒素とともに保存されたフューリン切断モチーフ、(ii)天然に存在する志賀毒素とともに保存された表面に露出した伸長したループ、及び/又は(iii)ERADシステムによって認識することが可能な主として疎水性のアミノ酸残基のストレッチ(すなわち疎水性「パッチ」)を同定することができる。
本発明の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)その志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端においてすべてのフューリン切断モチーフが完全に欠失していてもよいし、並びに/又は(2)その志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端及び/若しくは志賀毒素A1断片のカルボキシ末端由来の領域に、破壊されたフューリン切断モチーフを含んでいてもよい。フューリン切断モチーフの破壊としては、フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基への様々な変更、例えば、翻訳後修飾、アミノ酸官能基中の1つ若しくは2つ以上の原子の変更、アミノ酸官能基への1つ若しくは2つ以上の原子の付加、非タンパク質性部分への会合、及び/又は例えば結果として分岐したタンパク質性構造が生じるアミノ酸残基、ペプチド、ポリペプチドへの連結などが挙げられる。例えば、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴの、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドの志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端との連結は、連結しているエピトープ-ペプチドがない参照分子と比較して志賀毒素エフェクターポリペプチドのフューリン切断の低減をもたらし得る。
プロテアーゼ切断耐性志賀毒素エフェクターポリペプチドは、本明細書に記載される方法、国際公開第WO2015/191764号パンフレットで説明された方法、及び/又は熟練した作業者に公知の方法を使用して、天然に存在するか又はしないかにかかわらず、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は志賀毒素Aサブユニットポリペプチドから作り出すことができ、得られた分子は、それでもなお1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニット機能を保持する。
フューリン切断部位又はフューリン切断モチーフに関する本発明の目的に関して、用語「破壊」又は「破壊された」は、天然に存在するフューリン切断部位及び/又はフューリン切断モチーフからの変更、例えば、野生型志賀毒素Aサブユニット又は野生型ポリペプチド配列のみを含む野生型志賀毒素Aサブユニット由来のポリペプチドのフューリン切断と比較して、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端、又はそれに由来する同定可能な領域の近位におけるフューリン切断の低減を引き起こす変異などを指す。フューリン切断モチーフ中のアミノ酸残基への変更としては、例えば、フューリン切断モチーフの欠失、挿入、逆位、置換、及び/又はカルボキシ末端短縮化などのフューリン切断モチーフ中の変異、並びに、例えば、アミノ酸残基の官能基に分子をコンジュゲート又は連結することを含むグリコシル化、アルブミン化などの結果としての翻訳後修飾が挙げられる。フューリン切断モチーフは、理論上、約20アミノ酸残基で構成されることから、これらの20個の位置のうちのいずれかの1つ又は2つ以上のアミノ酸残基に関与する変更、改変、変異、欠失、挿入、及び/又は短縮化は、フューリン切断の感受性の低減を引き起こす可能性がある(Tian S et al., Sci Rep 2: 261 (2012))。
本発明の目的に関して、「破壊されたフューリン切断モチーフ」は、天然の志賀毒素Aサブユニットにおいて志賀毒素A1断片とA2断片領域との間のジャンクションに見出される保存されたフューリン切断モチーフを表す志賀毒素Aサブユニットのフューリン切断によりA1断片及びA2断片の産生が生じるように配置された20アミノ酸残基の領域に由来する1つ又は2つ以上のアミノ酸残基への変更を含むフューリン切断モチーフであり、破壊されたフューリン切断モチーフは、熟練した作業者に公知の及び/又は本明細書に記載される適切なアッセイを使用してフューリン切断をモニターできる程度に十分に大きいサイズを有するカルボキシ末端のポリペプチドに融合した野生型志賀毒素A1断片領域を含む参照分子と比較して、実験的に再現可能な方式で低減されたフューリン切断を呈する。
フューリン切断部位及びフューリン切断モチーフを破壊させることができる変異のタイプの例は、アミノ酸残基の欠失、挿入、短縮化、逆位、並びに/又は、非標準アミノ酸及び/若しくは非天然アミノ酸との置換を含む、置換である。加えて、フューリン切断部位及びフューリン切断モチーフは、例えば、ペグ化、低分子アジュバントの結合、及び/又は部位特異的なアルブミン化などの結果として、部位又はモチーフ中の少なくとも1つのアミノ酸をマスクする共有結合で連結された構造の付加によるアミノ酸の修飾を含む変異によって、破壊することができる。
フューリン切断モチーフが、変異及び/又は非天然アミノ酸残基の存在によって破壊されている場合、ある特定の破壊されたフューリン切断モチーフは、いずれかのフューリン切断モチーフに関連していると容易に認識できない可能性がある。しかしながら、志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端は、認識可能であると予想され、破壊されていなければそのフューリン切断モチーフがどこに配置されるかを定義すると予想される。例えば、破壊されたフューリン切断モチーフは、志賀毒素Aサブユニット及び/又は志賀毒素A1断片と比較して、カルボキシ末端の短縮化により、20個未満のフューリン切断モチーフのアミノ酸残基を含んでいてもよい。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来のポリペプチド、及び(2)志賀毒素A1断片ポリペプチド領域のカルボキシ末端における破壊されたフューリン切断モチーフを含み、細胞標的化分子は、例えば、野生型の志賀毒素ポリペプチド成分のみ又はA1断片とA2断片との間に保存されたフューリン切断モチーフを有する志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のみを含む関連分子などの参照分子と比較して、よりフューリン切断耐性である。例えば、参照分子と比較した1つの分子のフューリン切断の低減は、国際公開第WO2015/191764号パンフレットに記載されているインビトロのフューリン切断アッセイを使用し、同じ条件を使用して実行し、次いで切断の結果生じるあらゆる断片のバンド密度の定量を実行してフューリン切断の変化を定量的に測定することにより決定することができる。
一般的に、本発明の細胞標的化分子のプロテアーゼ切断感受性は、それを、志賀毒素A1断片を含む野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド成分でそのフューリン切断耐性の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分が置き換えられている同じ分子と比較することによって、試験される。ある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフを含む本発明の分子は、そのカルボキシ末端においてペプチド又はポリペプチドに融合した野生型志賀毒素A1断片を含む参照分子と比較して、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、又はそれ以上のインビトロにおけるフューリン切断の低減を示す。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素Aサブユニットの保存された高度に利用可能なプロテアーゼ切断感受性ループ由来の1つ又は2つ以上のアミノ酸における破壊を含む。ある特定のさらなる実施形態において、志賀毒素Aサブユニット間で保存された表面に露出したプロテアーゼ感受性ループにおいて変異を含む破壊されたフューリン切断モチーフを含む志賀毒素エフェクターポリペプチド。ある特定のさらなる実施形態において、変異は、フューリン切断感受性が低減されるように、ループ内のある特定のアミノ酸残基の表面における利用しやすさを低減する。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドの破壊されたフューリン切断モチーフは、例えば、最小のフューリン切断モチーフR/Y-x-x-Rの1位及び4位におけるアミノ酸残基など、コンセンサスアミノ酸残基P1及びP4の一方又は両方の存在、位置、又は官能基に関する破壊を含む。例えば、最小のフューリンコンセンサス部位R-x-x-Rにおける2個のアルギニン残基の一方又は両方をアラニンに変異させることは、その部位でのフューリン切断を低減又は停止させることによってフューリン切断モチーフを破壊させると予想される。例えば、一方又は両方のアルギニン残基をヒスチジンに変異させることによって、フューリン切断の低減が生じると予想される。同様に、最小のフューリン切断モチーフR-x-x-Rにおけるアルギニン残基の一方又は両方のアミノ酸残基を熟練した作業者公知のいずれかの非保存的アミノ酸残基に置換することは、モチーフのフューリン切断感受性を低減させると予想される。特に、アルギニンから、例えばA、G、P、S、T、D、E、Q、N、C、I、L、M、V、F、W、及びYなどの正電荷を有さないいずれかの非塩基性アミノ酸残基へのアミノ酸残基の置換により、破壊されたフューリン切断モチーフが生じると予想される。
ある特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの破壊されたフューリン切断モチーフは、コンセンサスアミノ酸残基P4からP1の間隔において、2以外の介在するアミノ酸残基の数に関する破壊を含み、それにより、P4及び/又はP1のいずれかが異なる位置に変化し、P4及び/又はP1の記号が除去される。例えば、最小のフューリン切断部位のフューリン切断モチーフ又はコアのフューリン切断モチーフ内の欠失は、フューリン切断モチーフのフューリン切断感受性を低減すると予想される。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比較して、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の置換を含む。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、最小のフューリン切断部位R/Y-x-x-R中に1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の置換を含み、例えば、StxA及びSLT-1A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドの場合、いずれかの正電荷を有さないアミノ酸残基で置換された天然に位置するアミノ酸残基R248及び/又はいずれかの正電荷を有さないアミノ酸残基で置換されたR251;並びにSLT-2A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドの場合、いずれかの正電荷を有さないアミノ酸残基で置換された天然に位置するアミノ酸残基Y247及び/又はいずれかの正電荷を有さないアミノ酸残基で置換されたR250などを含む。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、破壊されていない最小のフューリン切断部位R/Y-x-x-Rを含むが、その代わりに破壊されたフランキング領域を含み、例えば、例として241~247及び/又は252~259に天然に位置するフューリン切断モチーフのフランキング領域における1つ又は2つ以上のアミノ酸残基におけるアミノ酸残基置換などを含む。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフのP1~P6領域に位置するアミノ酸残基の1つ又は2つ以上の置換;P1’を、例えばR、W、Y、F、及びHなどの嵩高なアミノ酸に変異させること;並びにP2’を、極性及び親水性アミノ酸残基に変異させること;並びにフューリン切断モチーフのP1’~P6’領域に配置されたアミノ酸残基の1つ又は2つ以上を、1つ又は2つ以上の嵩高な及び疎水性アミノ酸残基で置換することを含む。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比べて、フューリン切断モチーフ中の少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失、挿入、逆位、及び/又は置換を含む。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、志賀毒素のAサブユニット(配列番号1~2及び4~6)の248~251、志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3及び7~18)の247~250、又は保存された志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/若しくは非天然の志賀毒素エフェクターポリペプチド配列における等価な位置に天然に位置する、アミノ酸配列の破壊を含む。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、例えば、非標準アミノ酸又は化学修飾された側鎖を有するアミノ酸へのアミノ酸置換などの変異を含む、破壊を含む。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフ内の少なくとも1つのアミノ酸の欠失を含む、破壊を含む。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断モチーフ内のカルボキシ末端のアミノ酸残基の9個、10個、11個、又は12個以上の欠失を含む。これらの実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、フューリン切断部位又は最小のフューリン切断モチーフを含まないと予想される。言い換えれば、ある特定の実施形態は、A1断片領域のカルボキシ末端においてフューリン切断部位が欠失している。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比較して、アミノ酸残基の欠失及びアミノ酸残基の置換、並びにカルボキシ末端の短縮化を含む。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、最小のフューリン切断部位R/Y-x-x-R内に1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の欠失及び置換を含む。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比較して、最小のフューリン切断部位R/Y-x-x-R内のアミノ酸置換とカルボキシ末端の短縮化の両方、例えば、StxA及びSLT-1A由来志賀毒素エフェクターポリペプチドについて、天然でのアミノ酸位置249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、又は292以上で終わる短縮化、並びに、適切な場合には、任意の正電荷を有さないアミノ酸残基で置換された、天然に位置するアミノ酸残基R248及び/又はR251を含むこと;SLT-2A由来志賀毒素エフェクターポリペプチドについて、天然でのアミノ酸位置248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、又は292以上で終わる短縮化、並びに、適切な場合には、任意の正電荷を有さないアミノ酸残基で置換された、天然に位置するアミノ酸残基Y247及び/又はR250を含むことを含む。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比較して、アミノ酸残基の欠失及びアミノ酸残基の置換の両方を含む。ある特定のさらなる実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、最小のフューリン切断部位R/Y-x-x-R内に1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の欠失及び置換を含む。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、破壊されたフューリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比較して、アミノ酸残基の欠失、アミノ酸残基の挿入、アミノ酸残基の置換、及び/又はカルボキシ末端の短縮化を含む。
本発明の細胞標的化分子は、それぞれが、任意の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の志賀毒素A1断片領域に組み込まれていない又は挿入されていない1つ又は2つ以上の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを含む。ある特定の実施形態において、CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、ヒトにおいて抗原性及び/又は免疫原性のエピトープである。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子のCD8+T細胞エピトープ-ペプチド成分は、例えば、ヒトに感染するウイルスに由来する抗原など、ヒトに感染する微生物病原体の分子に由来する8~11アミノ酸長のペプチドを含むか又はそれから本質的になる。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子のCD8+T細胞エピトープ-ペプチド成分は、配列番号19~28に示されるペプチドのいずれか1つを含むか又はそれから本質的になる。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴは、例えばジスルフィド結合などのチオール連結を介して細胞標的化分子に連結されている。ある特定のさらなる実施形態において、チオール連結は、システインとシステインのジスルフィド結合である。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴは、例えば、SLT-2A(配列番号3)のC241又はStxA(配列番号2)若しくはSLT-1A(配列番号1)の242など、細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のシステイン残基の官能基が関与するジスルフィド結合を介して、細胞標的化分子に連結されている。ある特定のさらなる実施形態において、システイン残基は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端のカルボキシ末端側に位置している(例えば、SLT-2A(配列番号3)のC260又はStxA(配列番号2)若しくはSLT-1A(配列番号1)のC261のシステイン残基)。
本発明の細胞標的化分子は、少なくとも1つの細胞標的化結合領域を含む。本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態のなかでも、結合領域は、がん細胞又は腫瘍細胞の細胞表面上における表面抗原への特異的で高親和性の結合に関して選択される免疫グロブリン型ポリペプチドに由来し、この場合、抗原は、発現ががん細胞又は腫瘍細胞に制限される(Glokler J et al., Molecules 15:2478-90 (2010);Liu Y et al., Lab Chip 9: 1033-6 (2009)を参照)。他の実施形態によれば、結合領域は、がん細胞の細胞表面上における表面抗原への特異的で高親和性の結合に関して選択され、この場合、抗原は、非がん細胞と比較して、がん細胞によって過剰発現されるか又は優先的に発現される。いくつかの代表的な標的生体分子としては、これらに限定されないが、以下に列挙した、がん及び/又は特定の免疫細胞型に関連する標的が挙げられる。
がん細胞に関連する細胞外エピトープに高親和性で結合する多くの免疫グロブリン型の結合領域が熟練した作業者に公知であり、例えば、以下の標的生体分子:アネキシンAI、B3黒色腫抗原、B4黒色腫抗原、CD2、CD3、CD4、CD19、CD20(Bリンパ球抗原タンパク質CD20)、CD22、CD25(インターロイキン-2受容体IL2R)、CD30(TNFRSF8)、CD37、CD38(環状ADPリボースヒドロラーゼ)、CD40、CD44(ヒアルロナン受容体)、ITGAV(CD51)、CD56、CD66、CD70、CD71(トランスフェリン受容体)、CD73、CD74(HLA-DR抗原関連の不変鎖)、CD79、CD98、エンドグリン(END、CD105)、CD106(VCAM-1)、CD138、ケモカイン受容体タイプ4(CDCR-4、フーシン、CD184)、CD200、インスリン様増殖因子1受容体(CD221)、ムチン1(MUC1、CD227、CA6、CanAg)、基底細胞接着分子(B-CAM、CD239)、CD248(エンドシアリン、TEM1)、腫瘍壊死因子受容体10b(TNFRSF10B、CD262)、腫瘍壊死因子受容体13B(TNFRSF13B、TACI、CD276)、血管内皮増殖因子受容体2(KDR、CD309)、上皮細胞接着分子(EpCAM、CD326)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2、Neu、ErbB2、CD340)、がん抗原15-3(CA15-3)、がん抗原19-9(CA19-9)、がん抗原125(CA125、MUC16)、CA242、癌胎児性抗原関連細胞接着分子(例えばCEACAM3(CD66d)及びCEACAM5)、癌胎児性抗原タンパク質(CEA)、コリン輸送体様タンパク質4(SLC44A4)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSP4、MCSP、NG2)、CTLA4、デルタ様タンパク質(例えばDLL3、DLL4)、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼタンパク質(例えばENPP3)、エンドセリン受容体(ETBR)、上皮増殖因子受容体(EGFR、ErbB1)、葉酸受容体(FOLR、例えばFRα)、G-28、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、HLA-Dr10、HLA-DRB、ヒト上皮増殖因子受容体1(HER1)、HER3/ErbB-3、エフリンタイプB受容体2(EphB2)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP/セプラーゼ)、グアニリルシクラーゼc(GCC)、インスリン様増殖因子1受容体(IGF1R)、インターロイキン2受容体(IL-2R)、インターロイキン6受容体(IL-6R)、インテグリンアルファ-Vベータ-3(αVβ3)、インテグリンアルファ-Vベータ-5(αvβ5)、インテグリンアルファ-5ベータ-1(α5β1)、L6、亜鉛輸送体(LIV-1)、MPG、黒色腫関連抗原1タンパク質(MAGE-1)、黒色腫関連抗原3(MAGE-3)、メソテリン(MSLN)、メタロレダクターゼSTEAP1、MPG、MS4A、NaPi2b、ネクチン(例えばネクチン-4)、p21、p97、ポリオウイルス受容体様4(PVRL4)、プロテアーゼ活性化受容体(例えばPAR1)、前立腺特異的膜抗原タンパク質(PSMA)、SLIT及びNTRK様タンパク質(例えばSLITRK6)、トーマス-フリーデンライヒ(Thomas-Friedenreich)抗原、膜貫通糖タンパク質(GPNMB)、栄養膜糖タンパク質(TPGB、5T4、WAIF1)、及び腫瘍関連のカルシウムシグナルトランスデューサー(TACSTD、例えばTrop-2、EGP-1など)のいずれか1つと結合する結合領域などがある(例えばLui B et al., Cancer Res 64:704-10 (2004);Novellino L et al., Cancer Immunol Immunother 54:187-207 (2005);Bagley R et al., Int J Oncol 34:619-27 (2009);Gerber H et al., mAbs 1:247-53 (2009);Beck A et al., Nat Rev Immunol 10:345-52 (2010);Andersen J et al., J Biol Chem 287:22927-37 (2012);Nolan-Stevaux O et al., PLoS One 7:e50920 (2012);Rust S et al., Mol Cancer 12:11 (2013)を参照)。この標的生体分子のリストは、非限定的であることが意図される。熟練した作業者であれば、本発明の細胞標的化分子の成分として使用するのに好適であり得る結合領域を設計又は選択するために、がん細胞又は他の所望の細胞型と関連するあらゆる所望の標的生体分子を使用できることを認識していよう。
がん細胞と強く関連し、公知の免疫グロブリン型の結合領域によって高親和性で結合される他の標的生体分子の例としては、BAGEタンパク質(B黒色腫抗原)、基底細胞接着分子(BCAM又はルセラン式血液型糖タンパク質)、膀胱腫瘍抗原(BTA)、SAIL(C16orf54)、がん精巣抗原NY-ESO-1、がん精巣抗原LAGEタンパク質、CD19(Bリンパ球抗原タンパク質CD19)、CD21(補体受容体-2又は補体3d受容体)、CD26(ジペプチジルペプチダーゼ-4、DPP4、又はアデノシンデアミナーゼ複合タンパク質2)、CD33(シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン-3)、CD52(CAMPATH-1抗原)、CD56、CS1(SLAMファミリー7番又はSLAMF7)、細胞表面A33抗原タンパク質(gpA33)、エプスタイン-バーウイルス抗原タンパク質、GAGE/PAGEタンパク質(黒色腫関連がん/精巣抗原)、肝細胞増殖因子受容体(HGFR又はc-Met)、MAGEタンパク質、T細胞1タンパク質によって認識される黒色腫抗原(MART-1/メランA、MARTI)、ムチン、優先的に発現される黒色腫抗原(PRAME)タンパク質、前立腺特異的抗原タンパク質(PSA)、前立腺幹細胞抗原タンパク質(PSCA)、終末糖化産物受容体(RAGE)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、及びウィルムス腫瘍抗原が挙げられる。
がん細胞と強く関連する他の標的生体分子の例は、炭酸脱水酵素IX(CA9/CAIIX)、クローディンタンパク質(CLDN3、CLDN4)、エフリンタイプA受容体3(EphA3)、葉酸結合タンパク質(FBP)、ガングリオシドGM2、インスリン様増殖因子受容体、インテグリン(例えばCD11a-c)、核因子カッパBの受容体活性剤(RANK)、受容体チロシン-プロテインキナーゼerB-3、腫瘍壊死因子受容体10A(TRAIL-R1/DR4)、腫瘍壊死因子受容体10B(TRAIL-R2)、テネイシンC、及びCD64(FcγRI)である(Hough C et al., Cancer Res 60:6281-7 (2000);Thepen T et al., Nat Biotechnol 18:48-51 (2000);Pastan I et al., Nat Rev Cancer 6:559-65 (2006);Pastan, Annu Rev Med 58:221-37 (2007);Fitzgerald D et al., Cancer Res 71:6300-9 (2011);Scott A et al., Cancer Immun 12: 14-22 (2012)を参照)。この標的生体分子のリストは、非限定的であることが意図される。
加えて、予期される標的生体分子の多数の他の例があり、例えば、標的生体分子に関して、ADAMメタロプロテイナーゼ(例えばADAM-9、ADAM-10、ADAM-12、ADAM-15、ADAM-17)、ADP-リボシルトランスフェラーゼ(ART1、ART4)、抗原F4/80、骨髄間質抗原(BST1、BST2)、ブレイクポイントクラスター領域-c-abl腫瘍遺伝子(BCR-ABL)タンパク質、C3aR(補体成分3a受容体)、CD7、CD13、CD14、CD15(ルイスX又はステージ特異的胎児抗原1)、CD23(FCイプシロンRII)、CD45(タンパク質チロシンホスファターゼ受容体C型)、CD49d、CD53、CD54(細胞間接着分子1)、CD63(テトラスパニン)、CD69、CD80、CD86、CD88(補体成分5a受容体1)、CD115(コロニー刺激因子1受容体)、IL-1R(インターロイキン-1受容体)、CD123(インターロイキン-3受容体)、CD129(インターロイキン9受容体)、CD183(ケモカイン受容体CXCR3)、CD191(CCR1)、CD193(CCR3)、CD195(ケモカイン受容体CCR5)、CD203c、CD225(インターフェロン誘導膜貫通タンパク質1)、CD244(ナチュラルキラー細胞受容体2B4)、CD282(Toll様受容体2)、CD284(Toll様受容体4)、CD294(GPR44)、CD305(白血球関連免疫グロブリン様受容体1)、エフリンA型受容体2(EphA2)、FceRIa、ガレクチン-9、アルファ-フェトプロテイン抗原17-A1タンパク質、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ(HAAH)、免疫グロブリン様転写ILT-3、リゾホスファチジルグリセロール(lysophosphatidlglycerol)アシルトランスフェラーゼ1(LPGAT1/IAA0205)、リソソーム関連膜タンパク質(LAMP、例えばCD107)、メラニン細胞タンパク質PMEL(gp100)、骨髄関連タンパク質-14(mrp-14)、NKG2Dリガンド(例えば、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、UL-16結合タンパク質、H-60、Rae-1、及びそれらのホモログ)、受容体チロシン-プロテインキナーゼerbB-3、SARTタンパク質、スカベンジャー受容体(例えばCD64及びCD68)、シグレック(シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン)、シンデカン(例えばSDC1又はCD138)、チロシナーゼ、チロシナーゼ(tyrosinease)関連タンパク質1(TRP-1)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2)、チロシナーゼ関連抗原(TAA)、APO-3、BCMA、CD2、CD3、CD4、CD8、CD18、CD27、CD28、CD29、CD41、CD49、CD90、CD95(Fas)、CD103、CD104、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD152(CTLA-4)、ケモカイン受容体、補体タンパク質、サイトカイン受容体、組織適合性タンパク質、ICOS、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-ベータ、c-myc、オステオプロテゲリン、PD-1、RANK、TACI、TNF受容体スーパーファミリーメンバー(TNF-R1、TNFR-2)、Apo2/TRAIL-R1、TRAIL-R2、TRAIL-R3、及びTRAIL-R4などであり(Scott A et al., Cancer Immunity 12: 14 (2012);Cheever M et al., Clin Cancer Res 15:5323-37 (2009)を参照)、ここに記載した標的生体分子は非限定的な例であることに留意されたい。
ある特定の実施形態において、結合領域は、免疫系の細胞型の細胞表面に特異的に高親和性で結合することが可能な免疫グロブリン型の結合領域を含むか又はそれから本質的になる。例えば、免疫細胞表面の因子に結合する免疫グロブリン型の結合ドメインが公知であり、例えば、CD1、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD9、CD10、CD11、CD12、CD13、CD14、CD15、CD16、CD17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD40、CD41、CD56、CD61、CD62、CD66、CD95、CD117、CD123、CD235、CD146、CD326、インターロイキン-1受容体(IL-1R)、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、核因子カッパBの受容体活性剤(RANKL)、SLAM関連タンパク質(SAP)、及びTNFSF18(腫瘍壊死因子リガンド18又はGITRL)などである。
本発明の分子における使用に想定される標的生体分子及び結合領域のさらなる例については、国際公開第2005/92917号パンフレット、国際公開第2007/033497号パンフレット、米国特許出願公開第2009/156417号明細書、日本国特許第4339511号明細書、欧州特許第1727827号明細書、独国特許第602004027168号明細書、欧州特許第1945660号明細書、日本国特許第4934761号明細書、欧州特許第2228383号明細書、米国特許出願公開第2013/196928号明細書、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、米国特許第2015/259428号明細書、62/168,758号明細書、62/168,759号明細書、62/168,760号明細書、62/168,761号明細書、62/168,762号明細書、62/168,763号明細書、及び国際特許出願第PCT/US2016/016580号明細書を参照されたい。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態は、細胞毒性の細胞標的化融合タンパク質である。ある特定のさらなる実施形態は、配列番号19~255及び288~748に示されるポリペプチドのうちの1つを含むか又はそれから本質的になる細胞標的化分子である。ある特定のさらなる実施形態は、配列番号252~255及び288~748に示されるポリペプチドのうちの1つを含むか又はそれから本質的になる細胞標的化分子である。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、例えば、免疫毒素又はリガンド-毒素融合体などの融合タンパク質である。本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態は、細胞毒性が低減されているか又は非細胞毒性の細胞標的化融合タンパク質である。ある特定の実施形態は、配列番号252~255及び288~748に示されるポリペプチドを含むか又はそれから本質的になり、さらに、志賀毒素エフェクターポリペプチド成分に、配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3のA231E、N75A、Y77S、Y114S、E167D、R170A、R176K、及び/若しくはW203Aからなる群から選択される天然に位置する残基又は志賀毒素Aサブユニットにおける等価なアミノ酸残基を変更する1つ又は2つ以上のアミノ酸置換を含む、細胞標的化分子である。ある特定のさらなる実施形態は、配列番号258、260、268、270、及び278に示されるポリペプチドのうちの1つを含むか又はそれから本質的になる細胞標的化分子である。
脊索動物に投与した後の本発明の細胞標的化分子の半減期を変更するために、ポリエチレングリコール分子、免疫グロブリンFc領域、免疫グロブリン定常ドメイン、不活性化したFc領域、及び/又はサルベージ受容体結合エピトープを、熟練した作業者に公知の標準的な技術を使用して、分子に取り込んでもよい(例えば、米国特許第5,739,277号明細書、米国特許第7,083,784号明細書、米国特許第7,348,004号明細書、米国出願第2008/422112号明細書、国際公開第2010/033279号パンフレット、国際公開第2013/012733号パンフレット、米国特許第9,790,268号明細書を参照)。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、それぞれが同じ標的生体分子の細胞外部分に結合することができる2つ又は3つ以上の結合領域が、志賀毒素エフェクターポリペプチドと会合して、本発明の多価細胞標的化分子が産生される。
ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、又は22個の個々の結合領域を含む。
本発明の多価細胞標的化分子は、様々な多価構造体を含み得る。例えば、多価構造体は、本発明の多価細胞標的化分子を形成するために、様々な成分を一緒にさせるように、共有結合及び/又は非共有結合による相互作用を使用して、作り出すことができる。ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、2つ又は3つ以上のタンパク質性サブユニットの多量体複合体、例えば、例として、二量体、三量体、四量体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体などである。
ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、多価細胞標的化分子の2つ又は3つ以上の成分が、化学的に連結されているか又は一緒にコンジュゲートされているため、2つ又は3つ以上の結合領域を含む。例えば、化学的リンカーを使用して、2つ又は3つ以上の標的結合タンパク質を一緒にコンジュゲートして、多価細胞標的化分子を形成することができる(例えば、Wolff E et al., Cancer Res 53: 2560-5 (1993);Ghetie M et al., Proc Natl Acad Sci USA 94: 7509-14 (1997);Ghetie M et al., Blood 97: 1392-8 (2001)を参照)。
本発明の多価細胞標的化分子のある特定の実施形態は、同一であってもよいし又は同一でなくてもよい、2つ又は3つ以上の成分分子を含む、多量体構造体を含む。本明細書で使用される場合、命名法(X)nは、成分(X)のコピーを整数個(n)含むか又はそれからなる分子を指す。例えば、2つの同一な一価標的結合ポリペプチドサブユニットを含む、二量体タンパク質は、ホモ二量体又は(標的結合単量体)2と称することができる。別の例は、それぞれのタンパク質が、3つ又は4つ以上の同一なポリペプチド「X」サブユニットを含む、多価タンパク質の混合物であり、これは、(X)2+nと称され、ここで、「n」は、正の整数であり、「2+n」の値は、存在するタンパク質分子のタンパク質1個当たりの結合領域の数を表し、したがって、複数の異なる多価タンパク質種が単一のタンパク質組成物中に存在することを示す。
本発明の多価細胞標的化分子のある特定の実施形態は、多量体であり、2つ又は3つ以上の標的結合分子から構成される、例えば、ホモ二量体、ホモ三量体、及びホモ四量体などである。例えば、2つ又は3つ以上の一価標的結合ポリペプチドを組み合わせて、本発明の多価細胞標的化分子を形成してもよい。
ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、それぞれが、多価細胞標的化分子の結合領域のうちの少なくとも1つを含む、2つ又は3つ以上の成分を含むが、これは、2つ又は3つ以上の成分間でのドメイン交換により生じる非共有結合による分子間会合により、多量体構造を有する多価細胞標的化分子が生じるためである(例えば、図1Bを参照)。例えば、免疫グロブリンドメイン間でのタンパク質ドメイン交換は、正確な多量体構造体を産生する機構として、改変及び最適化され得る(例えば、Holliger P et al., Proc Natl Acad Sci USA 90: 6444-8 (1993);Arndt K et al., Biochemistry 37: 12918-26 (1998)を参照)。
熟練した作業者であれば、様々なscFvに基づくポリペプチド相互作用を使用して、本発明の多量体多価細胞標的化分子、例えば、例として、scFvに基づく二量体、三量体、四量体複合体などを改変することができる。例えば、scFvにおけるリンカーの長さは、非共有結合に基づく多量体多価構造体の自発的なアセンブリに影響を及ぼし得る。一般的に、任意のリンカーの非存在を含め、12アミノ酸以下のリンカーは、鎖内ドメイン対合よりも分子間ドメイン交換を優先することにより、scFvを含むポリペプチド又はタンパク質の、高分子量の種への多量体化を促進する(例えば、Huston J et al., Methods Enzymol 203: 46-88 (1991);Holliger P et al., Proc Natl Acad Sci USA 90: 6444-8 (1993);Stemmer W et al., Biotechniques 14: 256-65 (1993);Whitlow M et al., Protein Eng 6: 989-95 (1993);Desplancq D et al., Protein Eng 7: 1027-33 (1994);Whitlow M et al., Protein Eng 7: 1017-26 (1994);Alfthan K et al., Protein Eng 8: 725-31 (1995);Iliades P et al., FEBS Lett 409: 437-41 (1997);Kortt A et al., Biomol Eng 18: 95-108 (2001);Todorovska A et al., J Immunol Methods 248: 47-66 (2001);Tomlinson I, Holliger P et al., Methods Enzymol 326: 461-79 (2001);Dolezal O et al., Protein Eng 16: 47-56 (2003)を参照)。しかしながら、リンカーを全く有さないか又は例として15アミノ酸残基長のリンカーを有するscFvは、多量体化し得る(Whitlow M et al., Protein Eng 6: 989-95 (1993);Desplancq D et al., Protein Eng 7: 1027-33 (1994);Whitlow M et al., Protein Eng 7, 1017-26 (1994);Alfthan K et al., Protein Eng 8: 725-31 (1995))。熟練した作業者は、当業界で公知の及び/又は本明細書に記載される技術を使用して、作り出される及び/又は精製される多量体構造体を同定することができる。
加えて、追加の共有結合を有する改変された構造体を使用して、自発的にアセンブルする多量体構造体を安定化することができる(例えば、Glockshuber R et al., Biochemistry 29: 1362-7 (1990)を参照)。例えば、特定の位置におけるシステイン残基の導入を使用して、例えば、以下のアミノ酸残基:GGGGC(配列番号799)及びSGGGGC(配列番号800)を付加することなどによって、Cys-二重特異性抗体、scFv’多量体、VHH多量体、VNAR多量体、及びIgNAR多量体などのジスルフィド安定化構造体を作り出すことができる(Tai M et al., Biochemistry 29: 8024-30 (1990);Caron P et al., J Exp Med 176: 1191-5 (1992);Shopes B, J Immunol 148: 2918-22 (1992);Adams G et al., Cancer Res 53: 4026-34 (1993);McCartney J et al., Protein Eng 18: 301-14 (1994);Perisic O et al., Structure 2: 1217-26 (1994);George A et al., Proc Natl Acad Sci USA 92: 8358-62 (1995);Tai M et al., Cancer Res (Suppl) 55: 5983-9 (1995);Olafsen T et al., Protein Eng Des Sel 17: 21-7 (2004))。したがって、熟練した作業者は、ジスルフィド架橋を使用して、及び/又はある特定のジスルフィド架橋の位置を制御するためにある特定の位置におけるシステイン残基を付加若しくは除去することによって、本発明の多価細胞標的化分子を作り出す又は安定化することができる。
ある特定の実施形態において、本発明の標的結合分子の多価構造体は、同じ標的生体分子の細胞外部分に結合する2つ又は3つ以上の免疫グロブリンドメインを含む。ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、単一の連続的なポリペプチド鎖を含み得るか又はそれからなり得る。例えば、タンデムscFv(taFv)、一本鎖二重特異性抗体(scDb)、及びタンデム二重特異性抗体(tanDb若しくはTandab)と称されることも多い一本鎖二価scFvは、単一の連続的なポリペプチドから作り出された多価結合タンパク質を表す(例えば、Mack M et al., Proc Natl Acad Sci USA 92: 7021-5 (1995);Kipriyanov S et al., J Mol Biol 293: 41-56 (1999);Cochlovius, B et al., Cancer Res 60: 4336-41 (2000);Volkel T et al., Protein Eng 14: 815-23 (2001);Jendreyko N et al., J Biol Chem 278: 47812-9 (2003);Kipriyanov S et al., J Mol Biol 330: 99-111 (2003);Miller K et al., J Immunol 170: 4854-61 (2003);Meng R et al., Clin Cancer Res 10: 1274-81 (2004);Schlereth B et al., Cancer Res 65: 2882-9 (2005);Huang T, Morrison S, J Pharmacol Exp Ther 316: 983-91 (2006);Liu X et al., Int Immunopharmacol 6: 791-9 (2006);Shen J et al., J Biol Chem 281: 10706-14 (2006);Shen J et al., J Immunol Methods 318: 65-74 (2007);Wu C et al., Nat Biotech 25: 1290-7 (2007);Li B et al., Cancer Res 68: 2400-8 (2008)を参照)。
ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、2つの免疫グロブリン領域間での免疫グロブリンドメイン交換会合を必要とする2つの免疫グロブリン領域間のジスルフィド結合など、リンカーに対して近位であるか遠位であるかに関係なく、2つ又は3つ以上の結合領域間のリンカー、並びに結合領域の成分間の1つ又は2つ以上のジスルフィド結合の両方を含む(例えば、Glockshuber R et al., Biochemistry. 29: 1362-7 (1990)を参照)。
或いは、2つ又は3つ以上のポリペプチド鎖は、自己会合するか又は互いと多量体化する、ペプチド及び/又はポリペプチドドメインを使用して、一緒に連結されてもよい(例えば、米国特許第6,329,507号明細書;Wang L et al., Protein Eng Des Sel 26: 417-23 (2013)を参照)。例えば、免疫グロブリンドメイン、例えば、scFv、自律的VHドメイン、VHH、VNAR、及びIgNARなどを含む、多価タンパク質を構築するために、カルボキシ末端の多量体化ドメインの付加が、使用されている。熟練した作業者に公知の自己会合するドメインの例としては、免疫グロブリン定常ドメイン(例えば、ノブ-イントゥー-ホール、静電ステアリング、及びIgG/IgA鎖交換)、免疫グロブリンFab鎖(例えば、(Fab-scFv)2及び(Fab’ scFv)2)、免疫グロブリンFcドメイン(例えば、(scDiabody-Fc)2、(scFv-Fc)2、及びscFv-Fc-scFv)、免疫グロブリンCHXドメイン、免疫グロブリンCH1~3領域、免疫グロブリンCH3ドメイン(例えば、(scDiabody-CH3)2、LDミニボディ、及びFlex-ミニボディ)、免疫グロブリンCH4ドメイン、CHCLドメイン、両親媒性ヘリックスバンドル(例えば、scFv-HLX)、ヘリックス-ターン-ヘリックスドメイン(例えば、scFv-dHlx)、ロイシンジッパー及び軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質を含むコイルドコイル構造(例えば、scZIP)、Aキナーゼアンカータンパク質(AKAP)アンカリングドメイン(AD)と組み合わせたcAMP-依存性タンパク質キナーゼ(PKA)二量体化及びドッキングドメイン(DDD)(「ドック-アンド-ロック」又は「DNL」とも称される)、ストレプトアビジン、ベロ毒素B多量体化ドメイン、p53由来の四量体化領域、並びにbarnase-barstar相互作用ドメインが挙げられる(Pack P, Pluckthun A, Biochemistry 31: 1579-84 (1992);Holliger P et al., Proc Natl Acad Sci USA 90: 6444-8 (1993);Kipriyanov S et al., Hum Antibodies Hybridomas 6: 93-101 (1995);de Kruif J, Logtenberg T, J Biol Chem 271: 7630-4 (1996);Hu S et al., Cancer Res 56: 3055-61 (1996);Kipriyanov S et al., Protein Eng 9: 203-11 (1996);Rheinnecker M et al., J Immunol 157: 2989-97 (1996);Tershkikh A et al., Proc Natl Acad Sci USA 94: 1663-8 (1997);Muller K et al., FEBS Lett 422: 259-64 (1998);Cloutier S et al., Mol Immunol 37: 1067-77 (2000);Li S et al., Cancer Immunol Immunother 49: 243-52 (2000);Schmiedl A et al., Protein Eng 13: 725-34 (2000);Schoonjans R et al., J Immunol 165: 7050-7 (2000);Borsi L et al., Int J Cancer 102: 75-85 (2002);Deyev S et al., Nat Biotechnol 21: 1486-92 (2003);Wong W, Scott J, Nat Rev Mol Cell Biol 5: 959-70 (2004);Zhang J et al., J Mol Biol 335: 49-56 (2004);Baillie G et al., FEBS Letters 579: 3264-70 (2005);Rossi E et al., Proc Natl Acad Sci USA 103: 6841-6 (2006);Simmons D et al., J Immunol Methods 315: 171-84 (2006);Braren I et al., Biotechnol Appl Biochem 47: 205-14 (2007);Chang C et al., Clin Cancer Res 13: 5586-91s (2007);Liu M et al., Biochem J 406: 237-46 (2007);Zhang J et al., Protein Expr Purif 65: 77-82 (2009);Bell A et al., Cancer Lett 289: 81-90 (2010);Iqbal U et al., Br J Pharmacol 160: 1016-28 (2010);Asano R et al., FEBS J 280: 4816-26 (2013);Gil D, Schrum A, Adv Biosci Biotechnol 4: 73-84 (2013))。
ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子の構造は、抗体又はFab断片から改変されている。例えば、多価細胞標的化分子は、熟練した作業者に公知のアプローチを使用して改変することができる(例えば、Shuford W et al., Science 252: 724-7 (1991);Caron P et al., J Exp Med 176: 1191-5 (1992);Shopes B, J Immunol 148: 2918-22 (1992);Wolff E et al., Cancer Res 53: 2560-5 (1993)を参照)。
本発明の多価細胞標的化分子のある特定の実施形態において、多価細胞標的化分子のすべての細胞標的化結合領域は、同一である、及び/又は同じ結合特異性を共有している。そのような実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、単一特異性である、すなわち、同じ細胞外標的生体分子、同じ標的生体分子におけるオーバーラップする細胞外エピトープ、及び/又は標的生体分子における同じ細胞外エピトープに高い親和性で結合する結合領域を含む。2つの結合領域が、1つの標的生体分子の同じ細胞外部分に結合するかどうかは、熟練した作業者によって、利用可能な方法、例えば、競合的結合アッセイを使用して経験的に、又は公知のエピトープ及び/若しくは免疫化したペプチド配列のオーバーラップに基づいて予測的に、決定することができる。
ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、オーバーラップしないかオーバーラップするかにかかわらず、同一でないエピトープに高い親和性で結合する結合領域を含み得る。本発明の多価細胞標的化分子は、オーバーラップしないエピトープに対する高い結合親和性を有する結合領域を含み得る。本発明の多重特異性多価細胞標的化分子は、2つ又は3つ以上の異なる結合領域、例えば、2つの異なるscFv、VHH、VNAR、及び/又はIgNARなどを、二重特異性抗体、三重特異性抗体、タンデム形態(タンデムdi-scFv、タンデムtri-scFv、及びscFv-Fcタンデムを含む)、一本鎖二重特異性抗体(scDb)、タンデムFv、二重特異性scFv(Bis-scFv)、scFv2(Fab’)3、四量体(scFv2)2、scFv2-Fc、並びに異なる特異性を有するscFv、VHH、VNAR、及び/又はIgNARとの組合せなどで使用して、作り出すことができる(Adams G et al., Cancer Res 53: 4026-34 (1993);Mallender W et al., J Biol Chem 269: 199-206 (1994);Todorovska A et al., J Immunol Methods 248: 47-66 (2001);Korn T et al., J Gene Med 6: 642-51 (2004);Lu D et al., J Biol Chem 280: 19665-72 (2005);Schneider M et al., Eur J Immunol 35: 987-95 (2005);Wittel U et al., Nucl Med Biol 32: 157-64 (2005);Semenyuk E et al., Biochimie 89: 31-8 (2007))。
ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、それ自体と又は別のタンパク質と多量体化して、多量体構造体を形成する、単一の連続的なポリペプチド成分を含み得る。例えば、タンデムscFv(taFv)、一本鎖二重特異性抗体(scDb)、及びタンデム二重特異性抗体(tanDb又はTandab)と称されることも多い一本鎖二価scFvは、単一の連続的なポリペプチド鎖として発現させることができる(Mack M et al., Proc Natl Acad Sci USA 92: 7021-5 (1995);Kipriyanov S et al., J Mol Biol 293: 41-56 (1999);Cochlovius, B et al., Cancer Res 60: 4336-41 (2000);Volkel T et al., Protein Eng 14: 815-23 (2001);Kipriyanov S et al., J Mol Biol 330: 99-111 (2003);Schlereth B et al., Cancer Res 65: 2882-9 (2005))。これらの多価構造体は、多量体化して、より高次、より高価数の構造体、例えば、四価F(ab’)2、(taFv)2、及び(scDb)2構造体などになるように、改変させてもよい(Todorovska A et al., J Immunol Methods 248: 47-66 (2001)を参照)。
可変領域の分子間対合に起因して、非共有結合による相互作用によって連結された2つのscFvを含む構造体、例えば、二重特異性抗体、ミニ抗体、及び二価ミニ抗体などが、熟練した作業者に公知であり、これらはすべてが、単一特異性又は二重特異性のいずれかであり得る(Holliger, P et al., Proc Natl Acad Sci USA 90: 6444-8 (1993);Pack P et al., Biotechnology (NY) 11: 1217-7 (1993);Tai M et al., Cancer Res (Suppl) 55: 5983-9 (1995);Atwell J et al., Mol Immunol 33: 1301-12 (1996);Rheinnecker M et al., J Immunol 157: 2989-97 (1996);Schier R et al., J Mol Biol 255: 28-43 (1996);Adams G et al., Br J Cancer 77: 1405-12 (1998);Todorovska A et al., J Immunol Methods 248: 47-66 (2001);Buhler P et al., Cancer Immunol Immunother 57: 43-52 (2008))。多数のscFv単量体が、自己会合に起因して、天然に多量体又はオリゴマー(例えば、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体)を形成することが観察されており、3~12アミノ酸残基のリンカーを含むscFv構造体では、大半の形態が、二量体である(Essig N et al., J Mol Biol 234: 897-901 (1993);Griffiths A et al., EMBO J 12: 725-34 (1993);Holliger P et al., Proc Natl Acad Sci USA 90: 6444-8 (1993);Whitlow M et al., Protein Eng 6: 989-95 (1993);Desplancq D et al., Protein Eng 7: 1027-33 (1994);Whitlow M et al., Protein Eng 7, 1017-26 (1994);Kortt A et al., Protein Eng 10: 423-33 (1997);Arndt K et al., Biochemistry 37: 12918-26 (1998);Atwell J et al., Protein Eng 12: 597-604 (1999))。
一般的に、5~10アミノ酸残基以下の比較的短いリンカーを有するscFv構造体は、ホモ二量体化する傾向がより高い(Arndt K et al., Biochemistry 37: 12918-26 (1988);Holliger P et al., Proc Natl Acad Sci USA 90: 6444-8 (1993);Perisic O et al., Structure 2: 1217-26 (1994);Atwell J et al., Mol Immunol 33: 1301-12 (1996);Iliades P et al., FEBS Lett 409: 437-41 (1997);Kortt A et al., Protein Eng 10: 423-33 (1997);Metzger D et al., Protein Eng 10: 423-33 (1997);Pei X et al., Proc Natl Acad Sci USA 94: 9637-42 (1997);Atwell J et al., Protein Eng 12: 597-604 (1999);Denton G et al., Cancer Immunol Immunother 48: 29-38 (1999);Le Gall F et al., FEBS Lett 453: 164-8 (1999);Atwell J et al., Protein Eng 12: 597-604 (1999);Dolezal, O et al., Protein Eng 13: 565-74 (2000);Nielsen U et al., Cancer Res 60: 6434-40 (2000);Todorovska A et al., J Immunol Methods 248: 47-66 (2001);Wu A et al., Protein Eng 14: 1025-33 (2001);Arndt M et al., FEBS Lett 578: 257-61 (2004);Le Gall F et al., J Immunol Methods 285: 111-27 (2004))。対照的に、少なくとも12アミノ酸残基を含むリンカーを有するscFvは、主として、単量体を形成し、自発的多量体化を受けるのは、ごくわずかな画分だけである(Nielsen U et al., Cancer Res 60: 6434-40 (2000);Denton G et al., Cancer Immunol Immunother 48: 29-38 (1999);Kortt A et al., Biomol Eng 18: 95-108 (2001);Volkel T et al., Protein Eng 14: 815-23 (2001))。
3アミノ酸残基以下のリンカーの使用により、二量体形態よりも大きな高次構造体への多量体化が促進され得る。scFvが、3残基未満のリンカーを有する場合、三量体化が優先され得る(Iliades P et al., FEBS Lett 409: 437-41 (1997));Kortt A et al., Biomol Eng 18: 95-108 (2001);Todorovska A et al., J Immunol Methods 248: 47-66 (2001);Arndt M et al., FEBS Lett 578: 257-61 (2004))。さらに、非常に短いリンカー、例えば、2アミノ酸残基以下のリンカーを有するscFvは、三量体並びに/又は三量体及び四量体の混合物を形成することが多い(Pei X et al., Proc Natl Acad Sci USA 94: 9637-42 (1997);Hudson P, Kortt A, J Immunol Methods 231: 177-89 (1999);Dolezal O et al., Protein Eng 13: 565-74 (2000);Power B et al., Protein Sci 12: 734-47 (2003);Le Gall F et al., J Immunol Methods 285: 111-27 (2004))。短いリンカーを有するある特定の配設において、四量体が、優先される場合がある(Dolezal O et al., Protein Eng 13: 565-74 (2003);Arndt M et al., FEBS Lett 578: 257-61 (2004))。多量体構造体は、任意のリンカーが欠如した、すなわち、0アミノ酸残基長のリンカーを有する、scFvによって形成されてもよい。例えば、VHの前にVLを有する可変ドメインの直接的な連結では、四量体の形成が優先され得るが(Iliades P et al., FEBS Lett 409: 437-41 (1997))、一方でVLの前にVHがある場合は、三量体が優先され得る(Kortt A et al., Protein Eng 10: 423-33 (1997))。
リンカーの長さに加えて、可変ドメインの配向が、多量体化の特徴に影響を及ぼし得る(Huston J et al., Proc Natl Acad Sci USA 85, 5879-83 (1988);Padlan E, Mol Immunol 31: 169-217 (1994);Kortt A et al., Protein Eng 10: 423-33 (1997);Dolezal, O et al., Protein Eng 13: 565-74 (2000);Carmichael J et al., J Mol Biol 326: 341-51 (2003);Arndt M et al., FEBS Lett 578: 257-61 (2004))。VL-VHの配向は、より拘束性が高いため、VL-VHの配向が、逆の配向よりも高分子量のオリゴマーを形成する傾向を強く示すことが示唆されている(Kortt A et al., Protein Eng 10: 423-33 (1997);Dolezal, O et al., Protein Eng 13: 565-74 (2000);Pluckthun A, Pack P, Immunotechnology 3: 83-105 (1997))。
同じリンカーは、VH及びVLの配向に応じて、例えば、二量体形態と三量体形態との相対的な比率に影響を及ぼすなど、scFvの多量体化に対するその作用における変動性を示している(Le Gall F et al., FEBS Lett 453: 164-8 (1999);Arndt M et al., FEBS Lett 578: 257-61 (2004);Le Gall F et al., J Immunol Methods 285: 111-27 (2004))。
ラクダ科動物のVHH免疫グロブリンドメインは、特定のヒンジ及び共有結合により連結した複数のVHH鎖(タンデム)を使用して多量体化されている(Fraile S et al., Mol Microbiol 53: 1109-21 (2004);Zhang J et al., J Mol Biol 335: 49-56 (2004))。軟骨魚類由来の免疫グロブリンドメイン、例えば、IgNARは、ある特定のヒンジ又はシステインに媒介されるジスルフィド結合安定化を使用して、多量体化されている(例えば、Simmons et al., J Immunol Methods 315: 171-84 (2006)を参照)。
したがって、様々な免疫グロブリンドメインを含む多価細胞標的化分子の生成は、共有結合又は非共有結合のいずれかによる分子改変戦略、例えば、一本鎖タンデム配設が関与する共有結合による戦略、システイン媒介性ジスルフィド結合安定化の多量体が関与する共有結合による戦略、並びに/又は二量体化ドメイン、リンカーの選択、及び/若しくは可変ドメインの順序が関与する非共有結合による戦略などによって、制御され得る。複数の戦略(例えば、リンカー関連の非共有結合による多量体化及び共有結合によるジスルフィド結合安定化)を、本発明の多価細胞標的化分子である構造体を作り出す際に、組み合わせてもよい(例えば、Lu D et al., J Immunol Methods 279: 219-32 (2003)を参照)。
ある特定の適用のために、本発明の組成物における多価細胞標的化分子のすべての細胞標的化分子に対する相対的な比率の安定性は、組成物の有効性にとって重要であり得る。例えば、ある特定の医療適用において、本発明の多価細胞標的化分子の、一価細胞標的化分子に対する相対的な比率の安定性が、重要であり得る。ある特定の適用において、二価細胞標的化分子の、より高い価数の細胞標的化分子に対する相対的な比率の安定性が、重要であり得る。ある特定の適用において、二価細胞標的化分子の、非二価細胞標的化分子に対する相対的な比率の安定性が、重要であり得る。
ある特定の実施形態に関して、本発明の多価細胞標的化分子の成分のうちの一部又はすべての制御された多量体化の、1つ又は2つ以上のステップを使用して、本発明の組成物を産生することができる。
ある特定の適用に関して、細胞標的化分子の望ましくない凝集及び/又は多量体化を最小化すること又はそれ以外では制御することは、本発明のある特定の組成物にとって重要であり得る。例えば、ある特定のタンパク質性治療薬では、治療用分子の凝集及び/又は多量体化は、ある特定の状況において、タンパク質性治療薬のレシピエントにおいて、望ましくない免疫応答の危険性を増加させ得る。特に、細胞標的化分子が凝集及び/又は多量体化してより高分子量の複合体となることにより、ある特定の細胞標的化分子組成物をある特定のレシピエントに投与した後に、望ましくない免疫応答の危険性が増加し得る。加えて、ミスフォールディングしたタンパク質及び分解されたタンパク質産物は、それらの適切にフォールディングされている対応物と比較して、免疫原性の増加を示し得る。
これらの理由のすべてに関して、また特定の適用に応じて、熟練した作業者は、1)本発明の組成物の多価細胞標的化分子の安定性、並びに2)本発明の組成物中に存在する異なる細胞標的化分子の比の安定性を考慮する必要性が存在するかどうかを理解すると予想される。例えば、ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子及びその組成物は、制御された多量体化及び/又はある特定の精製ステップの結果である。同様に、ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、ある特定の多量体化の可能性を除去又は低減するように改変されることが予想される。ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、例えば、8、4、2、-4、-10、-20、又は-25℃で水溶液中などのある特定の保管条件下などにおいて、望ましくない凝集体の形成を回避するように設計されると予想される。
本発明の組成物のある特定の適用に関して、本発明の組成物中の、1)高分子量の多価細胞標的化分子(例えば、175、180、190、200、若しくは250kDaを上回るか、又はそれ以上の分子)、2)高度に多価の細胞標的化分子(すなわち、5個若しくは6個以上の細胞標的化結合領域を含む分子)、3)番号1を示す高分子量の多価細胞標的化分子である、細胞標的化分子の多量体、及び/若しくは番号2を示す高度に多価の細胞標的化分子(例えば、細胞標的化分子の、ある特定の大きな非共有結合による多量体)、3)ミスフォールディングしたタンパク質(例えば、ミスフォールディングした細胞標的化タンパク質若しくはそのタンパク質成分)、並びに/又は4)分解産物(例えば、多価細胞標的化分子のタンパク質性成分の望ましくないタンパク質断片、例えば、志賀毒素エフェクター領域若しくは細胞標的化結合領域のポリペプチド断片など)の量を最小化することが望ましい場合がある。例えば、上記に番号1~番号4として列挙された分子の種類のうちのいずれかの量を最小化させる理論的根拠は、ある特定の量のこれらの分子の存在により、例えば、これらの分子の存在により新しいエピトープが出現すること、又はレシピエントの免疫系によって外来物であるとより容易に同定される反復的モチーフを形成することなどによって、本発明の組成物のレシピエントにおける望ましくない抗原性反応及び/又は免疫原性反応の可能性が増加し得る、医療適用についてのものであり得る。
熟練した作業者は、日常的な方法を使用して、本発明の多価細胞標的化分子及び/又は本発明の組成物中に存在する分子の多量体化状態を評価することができる。熟練した作業者は、日常的な方法を使用して、本発明の組成物中に存在する細胞標的化分子の凝集体、高分子量の細胞標的化タンパク質多量体、ミスフォールディングした細胞標的化タンパク質、及び細胞標的化タンパク質の分解産物の存在又は相対的な比率を最小化することができる。
本発明の組成物のある特定の実施形態において、多価細胞標的化分子の二価、三価、及び/又は四価の形態の相対的な比率は、さらなる精製により、一価細胞標的化タンパク質、より高分子量の細胞標的化分子、ミスフォールディングした細胞標的化タンパク質、及び/又はタンパク質分解産物を除去することなどによって、最大化される。
熟練した作業者は、日常的な方法を使用して、本発明の多価細胞標的化分子及びその組成物を作出することができる。熟練した作業者は、日常的な方法を使用して、細胞標的化分子の様々な多量体形態の比率、例えば、共有結合により連結された多量体多価細胞標的化分子の、非共有結合により連結された多量体多価細胞標的化分子に対する比率などを含む、本発明の組成物中のある特定の多価細胞標的化分子の、他の分子に対する相対的な比率を安定化することができる(例えば、Gil D, Schrum A, Adv Biosci Biotechnol 4: 73-84 (2013)、国際公開第2005000898号パンフレットを参照)。例えば、本発明の組成物中の細胞標的化分子の多量体化は、例えば、本発明の組成物中に存在する細胞標的化分子の様々な成分及び/又はサブユニットを連結及び/又は会合させるためのある特定のリンカーを選択することなどによって、制御及び/又は最小化することができる。例えば、ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子の細胞標的化結合領域は、例えば、ジスルフィド安定化scFv、Fv断片、若しくはFab(例えば、Reiter Y et al., J Biol Chem 269: 18327-31 (1994);Kuan C, Pastan I, Biochemistry 35: 2872-7 (1996);Almog O et al., Proteins 31: 128-38 (1998);Schoonjans R et al., J Immunol 165: 7050-7 (2000);Olafsen T et al., Protein Eng Des Sel 17: 21-7 (2004);Gil D, Schrum A, Adv Biosci Biotechnol 4: 73-84 (2013);米国出願第20120283418号明細書を参照)、塩基ループ接続(例えば、Brinkmann U et al., J Mol Biol 268: 107-17 (1997)を参照)、並びに/又は他の修飾、例えば、荷電した残基、グリカン、及び/若しくは免疫グロブリンドメイン短縮化(例えば、Gong R et al., Mol Pharm 10: 2642-52 (2013);Lee C et al., Trends Biotechnol 31: 612-20 (2013)を参照)を使用することなどによって、望ましくない分子間会合、多量体、及び/又は凝集体の形成を最小化するように改変されている。
本発明のある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子は、例えば、scFvの重鎖領域及び軽鎖領域を連結させる、短いリンカー(典型的には、12アミノ酸残基未満)及び/又はジスルフィド安定化リンカーを使用することなどによって、凝集しないように改変されているscFvである、細胞標的化結合領域を含む(例えば、Brinkmann U et al., Proc Natl Acad Sci USA 90: 7538-42 (1993);Whitlow M et al., Protein Engineering 6: 989-95 (1993);Reiter Y et al., Biochemistry 33: 5451-9 (1994);Gong R et al., Molecular Pharmaceutics 10: 2642-52 (2013)を参照)。
ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子組成物は、2よりも大きい価数を有するある特定の多価細胞標的化分子の、他の細胞標的化分子に対する比率を最小化する。ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子組成物は、相対的な割合が組成物中の全細胞標的化分子の15%、10%、7.5%、5%、2%、1%、又はそれ以下となる、4よりも大きい価数を有する多価細胞標的化分子を含む。ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子組成物は、他の細胞標的化分子に対する相対的な割合が組成物中の全細胞標的化分子の15%、10%、7.5%、5%、2%、1%、又はそれ以下となる、3よりも大きい価数を有する細胞標的化分子を含む。ある特定の実施形態において、本発明の多価細胞標的化分子組成物は、割合が組成物中の全細胞標的化分子の15%、10%、7.5%、5%、2%、1%、又はそれ以下となる、2よりも大きい価数を有する細胞標的化分子を含む。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、厳密に2つの細胞標的化結合領域を有する多価細胞標的化分子の、全細胞標的化分子に対する相対的な比率を、最大化する。したがって、ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、組成物中の全細胞標的化分子の80%、85%、88%、90%、92%、93%、又はそれ以上となる比率の、2つのみの細胞標的化結合領域を有する細胞標的化分子を含む。
ある特定の適用に関して、例えば、例として、形成中、保管中(例えば、8、4、2、-4、-10、-20、若しくは-25℃で水溶液中での保管など)、及び/又はレシピエントへの投与後の分解を最小化するために、本発明の多価組成物中の多価細胞標的化分子の安定性(例えば、多価細胞標的化分子の成分及び/又はサブユニット間の会合及び/又は連結の安定性)を維持することが望ましい場合がある。熟練した作業者は、周知の方法を使用して、例えば、例として、志賀毒素エフェクターポリペプチドと結合領域との間の高安定性連結を使用すること、並びに/又は多価細胞標的化分子の成分、領域、若しくは部分領域間、又は一価細胞標的化タンパク質間のジスルフィド連結を改変して、本発明の多価細胞標的化タンパク質を生成することによって、本発明の多価細胞標的化分子の成分又はサブユニットの分離を最小化することができる(例えば、Gil D, Schrum A, Adv Biosci Biotechnol 4: 73-84 (2013)を参照)。熟練した作業者は、分子間ジスルフィド結合の付加又は維持を使用して、本発明の多価細胞標的化分子のある特定の細胞標的化結合領域を安定化することができる(例えば、Glockshuber R et al., Biochemistry 29: 1362-7 (1990);Stanfield R et al., Science 305: 1770-3 (2004);Hagihara Y et al., J Biol Chem 282: 36489-95 (2007);Chan P et al., Biochemistry 47: 11041-54 (2008);Saerens D et al., J Mol Biol 478-88 (2008);Hussack G et al., PLoS One 6: e28218 (2011);Govaert J et al., J Biol Chem 287: 1970-9 (2012);Kim D et al., Protein Eng Des Sel 25: 581-9 (2012);Gil D, Schrum A, Adv Biosci Biotechnol 4: 73-84 (2013);McConnell A et al., Protein Eng Des Sel 25: 581-9 (2013);Feige M et al., Proc Natl Acad Sci USA 111: 8155-60 (2014);Hagihara Y, Saerens D, Biochim Biophys Acta 1844: 2016-2023 (2014);Kim D et al., Mabs 6: 219-35 (2014)を参照)。
ある特定の実施形態において本発明の多価細胞標的化分子は、ドメイン内ジスルフィド結合、例えば、ある特定の免疫グロブリンのB及びF β鎖間に天然に見出されるジスルフィド結合、並びに/又は免疫グロブリンの重鎖と軽鎖又は免疫グロブリン由来の重鎖と軽鎖との間のジスルフィド結合などを有する、免疫グロブリンドメイン及び/又はIg-フォールド構造を含む、細胞標的化結合領域を含む。しかしながら、本発明の多価細胞標的化分子のある特定の実施形態において、分子は、ドメイン内ジスルフィド結合又は1つ若しくは2つ以上の細胞標的化結合領域内の任意のドメイン内ジスルフィド結合を含まない場合であっても、非常に安定している(例えば、Proba K et al., Biochemistry 37: 13120-7 (1998);Worn A, Pluckthun A, Biochemistry 37: 13120-7 (1998);Worn A, Pluckthun A, FEBS Lett 427: 357-61 (1998);Ramm K et al., J Mol Biol 290: 535-46 (1999);Tanaka T, Rabbitts T, J Mol Biol 376: 749-57 (2008)を参照)。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、異なるポリペプチド鎖の志賀毒素エフェクターポリペプチド領域内に含まれる2つ又は3つ以上のシステイン残基間の1つ又は2つ以上のジスルフィド結合を有する多価細胞標的化分子を含む。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、5つのジスルフィド結合を有するタンパク質性二量体多価細胞標的化分子、例えば、1)免疫グロブリン由来の細胞標的化結合領域1つ当たり2つのジスルフィド結合を示す、4つの分子内ジスルフィド結合(ここで、それぞれのジスルフィド結合にはシステイン残基の対が関与し、それぞれの対の一方のシステイン残基は、免疫グロブリン重鎖由来ドメイン内にあり、対の他方のシステイン残基は、免疫グロブリン軽鎖由来ドメイン内にある)、並びに2)2つの志賀毒素エフェクター領域を架橋する1つの分子間ジスルフィド結合(ここで、ジスルフィド結合は、システイン残基の対の間に生じ、対のそれぞれのシステイン残基は、志賀毒素エフェクター領域内にあるが、これらの志賀毒素エフェクター領域は、本発明の多価細胞標的化タンパク質の異なるサブユニットを示す異なるポリペプチド鎖内にある)を含む、二量体多価細胞標的化分子を含む。
本発明の多価細胞標的化分子のある特定の実施形態は、細胞毒性の細胞標的化融合タンパク質である。ある特定のさらなる実施形態は、配列番号252~255、259~278、及び288~748に示されるポリペプチドのうちの2つ又は3つ以上を含むか又はそれから本質的になる、細胞標的化分子である。
本発明の目的に関して、具体的な順序又は配向は、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び2つ又は3つ以上の結合領域について、互いに、又は本発明の多価細胞標的化分子全体に対して、固定されていない。本発明の多価細胞標的化分子の成分は、任意の順序で配列され得るが、ただし、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドの所望される活性、とりわけ、細胞標的化分子が標的を発現する細胞に結合する能力、細胞標的化分子が標的細胞に内在化する能力、及び志賀毒素エフェクターポリペプチド成分がCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴをこの成分が存在する細胞のMHCクラスI経路に送達する能力が、除去されていないことを条件とする。他の所望される活性としては、多価細胞標的化分子に、例えば、細胞内在化を急速に誘導する能力、効率的な内在化を引き起こす能力、所望される細胞内区画への細胞内経路決定を行う能力、細胞分裂停止を引き起こす能力、細胞毒性を引き起こす能力、標的を発現する細胞を選択的に殺滅させる能力、外因性物質を細胞の内部に送達する能力、疾患、障害、若しくは状態を診断する能力、並びに/又は疾患、障害、若しくは状態の治療をそれを必要とする患者において行う能力を提供することが挙げられる。
本発明の細胞標的化分子は、それぞれ、細胞の表面上に発現される標的生体分子など、細胞と物理的に会合している少なくとも1つの細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる、細胞標的化結合領域を含む。この一般的な構造は、任意の数の多様な細胞標的化部分を、本発明の細胞標的化分子の結合領域として使用することができるという点で、モジュール式である。標的生体分子の任意の細胞外部分に対する機能性結合部位を含有し、さらにより好ましくは、高親和性で(例えば、10-9モル/リットル未満のKDによって示される)標的生体分子に結合することができる、本発明の細胞標的化分子の断片、バリアント、及び/又は派生物を使用することは、本発明の範囲内である。例えば、本発明は、ヒトタンパク質に結合することができるポリペプチド配列を提供するが、10-5~10-12モル/リットル、好ましくは200nM未満の解離定数(KD)で、標的生体分子の細胞外部分に結合する任意の結合領域が、本発明の細胞標的化分子の作製及び本発明の方法での使用において代用され得る。
III.本発明の細胞標的化分子の一般的な機能
本発明の細胞標的化分子は、例えば、細胞表面マーカーの発現に基づいて特定の細胞型を標的化し、標的細胞に入り、その異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを、MHCクラスI経路に細胞内送達し、細胞表面での標的細胞によるCD8+T細胞エピトープ-ペプチドの提示をもたらすことによって、細胞標的化細胞毒性分子、治療用分子、細胞標識化分子、及び診断用分子として使用することができる。
ある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、脊索動物に投与した後に、以下のうちの1つ又は2つ以上を提供する:1)標的化された細胞、例えば、感染細胞及び/又は新生物細胞の強力かつ選択的な殺滅、2)細胞標的化分子が細胞外空間、例えば、脊索動物の循環系に存在する間の細胞標的化結合領域と志賀毒素エフェクターポリペプチド成分との間の連結安定性(例えば、国際公開第2015/191764号パンフレットを参照)、3)低レベルのオフターゲット細胞死及び/又は望まれない組織損傷(例えば、国際公開第2015/191764号パンフレットを参照)、並びに4)例えば、組織の場所、例えば、腫瘤におけるCD8+CTLの動員及び免疫刺激性サイトカインの局所的放出などの望ましい免疫応答を刺激するために標的細胞のMHCクラスI分子によって細胞表面に提示するための異種CD8+T細胞エピトープカーゴの細胞標的化送達。さらに、標的細胞による送達された異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドの提示は、これらの提示細胞にpMHC Iで印をつけ、これは、例えば、診断情報などの情報を収集する目的で検出することができる。
本発明の細胞標的化分子は、例えば、CD8+T細胞エピトープ-カーゴの標的化送達、免疫応答刺激、標的化された細胞殺滅、標的化された細胞増殖の阻害、生物学的情報の収集、及び/又は健康状態の改善を含む、多様な用途において有用である。本発明の細胞標的化分子は、例えば、がん、免疫障害、及び微生物感染を含む、様々な疾患の診断又は治療のために特定の細胞型をインビボで標的化することを伴う用途において、治療用分子及び/又は診断用分子として、例えば、細胞標的化非毒性送達媒体;細胞標的化細胞毒性治療用分子;及び/又は細胞標的化診断用分子などとして、有用である。本発明のある特定の細胞標的化分子は、腫瘍又はがんを罹患した脊索動物を、特に、CD8+T細胞媒介性機構が関与するその脊索動物の抗腫瘍免疫の有効性を増強することによって治療するために使用することができる(例えば、Ostrand-Rosenberg S, Curr Opin Immunol 6: 722-7 (1994);Pietersz G et al., Cell Mol Life Sci 57: 290-310 (2000);Lazoura E et al., Immunology 119: 306-16 (2006)を参照)。
実施形態に応じて、本発明の細胞標的化分子は、以下の特徴又は機能性のうちの1つ又は2つ以上を提供する:(1)インビボでのCD8+T細胞免疫応答の刺激、(2)脱免疫化(例えば、国際公開第WO2015/113005号パンフレット、国際公開第WO2015/113007号パンフレット及び国際公開第WO2015/191764号パンフレットを参照)、(3)プロテアーゼ切断耐性(例えば、国際公開第WO2015/191764号パンフレット及び国際公開第WO2015/191764号パンフレットを参照)、(4)ある特定の濃度での強力な細胞毒性、(5)選択的な細胞毒性、(6)ある特定の用量若しくは投薬量での多細胞生物における低いオフターゲット毒性(例えば、国際公開第WO2015/191764号パンフレット及び国際公開第WO2015/191764号パンフレットを参照)、及び/又は(7)さらなる材料(例えば、核酸又は検出促進剤)からなるカーゴの細胞内送達。本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態は、その分子が、本明細書に記載される特性又は機能性の2つ又は3つ以上を有するため、多機能性である。本発明の細胞標的化分子のある特定のさらなる実施形態は、単一分子において、前述の特性及び機能性の全部を提供する。
本発明の治療用細胞標的化分子の作用機序としては、志賀毒素エフェクター機能による直接的な標的細胞の殺滅、細胞間免疫細胞媒介性プロセスによる間接的な細胞殺滅、及び/又はレシピエントの免疫系を「CD8+T細胞エピトープシーディング」の結果として、ある特定の細胞及び組織の場所、例えば、腫瘤を拒絶するように訓練することが挙げられる。
A.標的細胞のMHCクラスI提示経路への異種CD8+T細胞エピトープカーゴの送達
本発明の細胞標的化分子の主要な機能の1つは、脊索動物細胞によるMHCクラスI提示のための1つ又は2つ以上の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドの細胞標的化送達である。本発明の細胞標的化分子は、実質的にあらゆる脊索動物標的細胞への実質的にあらゆるCD8+T細胞エピトープカーゴの一般的な送達媒体として使用するためのモジュール足場である。標的化送達は、細胞標的化分子がある特定の標的細胞に特異的に結合し、標的細胞に入り、インタクトな異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴをMHCクラスI提示経路に入るのに適した細胞内区画に送達することを要する。本発明の細胞標的化分子を使用した標的細胞のMHCクラスI提示経路へのCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴの送達は、標的細胞が、細胞表面上にMHCクラスI分子と会合したエピトープ-ペプチドを提示するように誘導するのに使用することができる。
免疫原性MHCクラスIエピトープ、例えば、公知のウイルス抗原に由来するものを、本発明の細胞標的化分子の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴとして使用することにより、脊索動物の免疫細胞の有益な機能を例えばインビトロで、及び/又は脊索動物の免疫系をインビボで、刺激するための、免疫刺激性抗原の標的化送達及び提示を達成することができる。
脊索動物において、MHCクラスI複合体による免疫原性CD8+T細胞エピトープの提示により、提示細胞をCTL媒介性細胞溶解による殺滅の標的とし、免疫細胞が微小環境を変更するように促進し、脊索動物内の標的細胞部位にさらに多くの免疫細胞を動員するためのシグナル伝達を行うことができる。本発明のある特定の細胞標的化分子は、生理学的条件下において、送達されたT細胞エピトープがMHCクラスI分子と複合体化して提示されるように、その異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを標的脊索動物細胞のMHCクラスI経路に送達することができる。これは、細胞標的化分子を細胞外空間、例えば、血管の内腔などに外来的に投与し、次いで、細胞標的化分子が標的細胞を発見し、その細胞に入り、細胞内にそのCD8+T細胞エピトープカーゴを送達するのを可能にすることによって、達成され得る。脊索動物内の標的細胞によるCD8+T細胞エピトープの提示は、脊索動物内の標的細胞に直接的な応答及び/又は標的細胞の組織の場所における全般的な応答を含む、免疫応答をもたらし得る。
本発明の細胞標的化分子のこれらのCD8+T細胞エピトープカーゴ送達及びMHCクラスI提示の機能の用途は、広範である。例えば、脊索動物において、細胞へのCD8+エピトープの送達及びその細胞による送達されたエピトープのMHCクラスI提示は、CD8+エフェクターT細胞の細胞間結合を引き起こすことができ、CTLによる標的細胞の殺滅及び/又は免疫刺激性サイトカインの分泌をもたらし得る。
本発明の細胞標的化分子は、外来的に投与したときに、脊索動物の有核細胞によるMHCクラスI提示のために、1つ又は2つ以上のCD8+T細胞エピトープカーゴを送達することができる。ある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、特定の細胞型の細胞表面に会合した細胞外標的生体分子に結合し、かつそれらの細胞に入ることができる。標的化された細胞型に内在化されると、本発明の細胞標的化分子は、CD8+T細胞エピトープカーゴをMHCクラスI提示経路に送達することができ、本発明の細胞標的化分子のある特定のさらなる実施形態は、志賀毒素エフェクターポリペプチド成分(触媒的に活性であるか、細胞毒性が低減されているか、又は非毒性であるかに関係なく)の経路を細胞のサイトゾルに決定することができる。
ある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞外空間から、1つ又は2つ以上の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを標的細胞のプロテアソームに送達することができる。その後、送達されたCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴは、タンパク質分解性プロセシングを受け、標的細胞の表面上のMHCクラスI経路によって提示され得る。ある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、細胞標的化分子と会合している異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを、細胞の表面上でのMHCクラスI分子によるエピトープ-ペプチドの提示のために、細胞のMHCクラスI分子に送達することができる。ある特定の実施形態に関して、細胞を本発明の細胞標的化分子と接触させることにより、細胞標的化分子は、細胞標的化分子と会合している異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを、細胞の表面上でのMHCクラスI分子によるエピトープ-ペプチドの提示のために、細胞のMHCクラスI分子に送達することができる。
ある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、脊索動物対象に投与することにより、対象における特定の標的細胞によるMHCクラスI提示のために、1つ又は2つ以上の異種CD8+T細胞エピトープカーゴを標的化送達することができる。
原理的には、いずれのCD8+T細胞エピトープ-ペプチドも、本発明の細胞標的化分子における使用に選択することができる。したがって、本発明の細胞標的化分子は、標的細胞の表面を、選択したエピトープ-ペプチドと複合体化したMHCクラスI分子で標識するのに有用である。
哺乳類生物におけるあらゆる有核細胞は、MHCクラスI分子と複合体化した免疫原性CD8+T細胞エピトープペプチドをMHCクラスI経路によりそれらの細胞外表面上に提示する能力を有し得る。加えて、T細胞エピトープ認識の感受性は、非常に鋭いため、免疫応答をもたらすために提示されるMHC-Iペプチド複合体はごく少数しか必要とされず、例えば、単一の複合体の提示だけでも、CD8+エフェクターT細胞の細胞間結合にとって十分であり得る(Sykulev Y et al., Immunity 4: 565-71 (1996))。本発明の細胞標的化分子の標的細胞は、実質的にあらゆる有核の脊索動物細胞型であり得、必ずしも免疫細胞及び/又はプロフェッショナル抗原提示細胞である必要はない。プロフェッショナル抗原提示細胞の例としては、樹状細胞、マクロファージ、及び機能的MHCクラスII系を有する特化した上皮細胞が挙げられる。実際、本発明の細胞標的化分子の好ましい実施形態は、プロフェッショナル抗原提示細胞を標的としない。1つの理由としては、本発明の細胞標的化分子の投与の結果として生じる望ましくない免疫応答が、例えば、細胞標的化分子内のエピトープを認識する抗細胞標的化分子抗体など、細胞標的化分子自体を対象とする体液性応答となることである。したがって、プロフェッショナル抗原提示細胞及びある特定の免疫細胞型は、本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態によって標的化されることがなく、これは、これらの細胞による本発明の細胞標的化分子の取り込みが、細胞標的化分子に存在する、特に、志賀毒素エフェクターポリペプチド成分及び/又は抗原性カーゴに存在するが結合領域にも含まれる、CD4+T細胞及びB細胞エピトープの認識をもたらし得るためである。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態によるCD8+T細胞エピトープを送達する能力は、様々な条件下において、及び非標的化傍観者(bystander)細胞の存在下、例えば、エキソビボで操作された標的細胞、インビトロで培養された標的細胞、インビトロで培養された組織試料内の標的細胞、又は多細胞生物内のようなインビボ設定における標的細胞などの存在下において、達成され得る。
本発明の細胞標的化分子が、設計された通りに機能するためには、細胞標的化分子は、1)標的細胞に入り、2)そのCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを、MHCクラスI経路に入るのに適した細胞内の場所に局在化させる必要がある。一般的に、本発明の細胞標的化分子は、例えば、例として、細胞標的化分子が細胞外標的生体分子に結合することを含む天然のプロセスに起因して、エンドサイトーシスによって標的細胞内への内在化を達成する。本発明の細胞標的化分子が内在化されると、この分子は、典型的に、初期エンドソーム区画、例えば、エンドサイトーシス小胞などに存在し、リソソーム又は後期エンドソームにおける破壊が運命づけられるであろう。細胞標的化分子は、T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを含む細胞標的化分子の少なくとも一部分が、別の細胞内区画へと脱出するように、完全な離隔及び分解を回避しなければならない。さらに、標的細胞は、MHCクラスI分子を発現するか、又はMHCクラスI分子を発現するよう誘導できるかのいずれかでなければならない。
MHCクラスI分子の発現は、MHCクラスI分子と複合体化した異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチド(本発明の細胞標的化分子によってカーゴとして送達される)の細胞表面提示のために、天然である必要はない。本発明のある特定の実施形態に関して、標的細胞は、熟練した作業者に公知の方法を使用して、例えば、IFN-γでの処置などによって、MHCクラスI分子を発現するように誘導することができる。
一般的に、本発明の細胞標的化分子は、それらのCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを標的細胞のサイトゾル区画のプロテアソームに局在化することによって、MHCクラスI経路送達を達成する。しかしながら、ある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、異種CD8+エピトープ-ペプチドを、エピトープ-ペプチドがサイトゾル区画に一度も入らず及び/又はエピトープ-ペプチドがプロテアソームによるタンパク質分解性プロセシングを受けることなく、MHCクラスI提示経路に送達することができる。
本発明のある特定の実施形態に関して、標的細胞は、例えば、IFN-γ及び/又はTNF-αでの処置など、熟練した作業者に公知の方法を使用して、異なるプロテアソームサブユニット及び/又はプロテアソームサブタイプを発現するように誘導することができる。これは、プロテアソーム及びプロテアソームサブタイプのペプチダーゼ活性の相対レベルを変更することなどによって、細胞に送達されたCD8+エピトープペプチドのタンパク質分解性プロセシングの位置及び/又は相対効率を変更し得る。
本発明の細胞標的化分子のCD8+T細胞エピトープ送達機能は、当技術分野において熟練した作業者に公知の及び/又は本明細書に記載される様々な標準方法により検出し、かつモニターすることができる。例えば、本発明の細胞標的化分子の、CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを送達し、かつ標的細胞のMHCクラスI系によるこのペプチドの提示を駆動させる能力は、様々なインビトロ及びインビボのアッセイを使用して調べることができ、そのアッセイには、例えば、MHCクラスI/ペプチド複合体(pMHC I)の直接的検出/可視化、T細胞ペプチドのMHCクラスI分子に対する結合親和性の測定、及び/又は、例えば、細胞傷害性Tリンパ球(CTL,cytotoxic T-lymphocyte)応答をモニターすることによる標的細胞上のpMHC I提示の機能的影響の測定が挙げられる(例えば、下記の実施例参照)。
本発明の細胞標的化分子のCD8+T細胞エピトープカーゴ送達機能をモニターし、定量するためのある特定のアッセイは、インビトロ又はエキソビボでの特定のpMHC Iの直接的な検出を伴う。pMHC Iの直接的可視化及び定量化のための一般的な方法は、熟練した作業者に公知の様々な免疫検出試薬を含む。例えば、特異的なモノクローナル抗体は、特定のpMHC Iを認識するように発生させることができる。同様に、TCR-STAR試薬(Altor Bioscience Corp.社, Miramar, FL, U.S.)などの可溶性多量体T細胞受容体は、特異的なpMHC Iを直接的に可視化し、又は定量化するために使用することができる(Zhu X et al., J Immunol 176: 3223-32 (2006);例えば、下記の実施例を参照)。これらの特異的mAb又は可溶性多量体T細胞受容体は、例えば、免疫組織化学法、フローサイトメトリー、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA,enzyme-linked immunosorbent assay)を含む、様々な検出方法と共に使用され得る。
pMHCの直接的同定及び定量化のための代替方法は、マススペクトル法分析、例えば、ProPresent Antigen Presentation Assay(ProImmune, Inc.社, Sarasota, FL, U.S.)(そのアッセイにおいて、ペプチド-MHCクラスI複合体が細胞の表面から抽出され、その後、そのペプチドが、精製され、シーケンシングマススペクトル法により同定される)を含む(Falk K et al., Nature 351: 290-6 (1991))。
本発明の細胞標的化分子のCD8+T細胞エピトープ送達及びMHCクラスI提示機能をモニターするためのある特定のアッセイは、MHCクラスIとペプチドの結合及び安定性をモニターするためのコンピュータ的及び/又は実験的方法を含む。ペプチドのMHCクラスI対立遺伝子に対する結合応答を予測するために熟練した作業者が用いるのに、いくつかのソフトウェアプログラムが利用可能であり、例えば、The Immune Epitope Database and Analysis Resource(IEDB)分析リソースMHC-I結合予測コンセンサスツール(Analysis Resource MHC-I binding prediction Consensus tool)(Kim Y et al., Nucleic Acid Res 40: W525-30 (2012))である。いくつかの実験的アッセイが日常的に適用されており、例えば、結合動態を定量化及び/又は比較する細胞表面結合アッセイ及び/又は表面プラズモン共鳴アッセイである(Miles K et al., Mol Immunol 48: 728-32 (2011))。
或いは、細胞表面上でのpMHC I提示の結果の測定は、その特異的な複合体に対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答をモニターすることにより実施することができる。これらの測定は、CTLのMHCクラスI四量体又は五量体試薬での直接的標識を含む。四量体又は五量体は、主要組織適合抗原複合体(MHC,Major Histocompatibility Complex)対立遺伝子とペプチドの複合体によって決定される特定の特異性のT細胞受容体と直接的に結合する。追加として、インターフェロンガンマ又はインターロイキンなどの放出されたサイトカインのELISA又は酵素結合免疫スポット(ELIspot,enzyme-linked immunospot)による定量化は、一般的に、特異的CTL応答を同定するためにアッセイされる。CTLの細胞傷害性能力は、いくつかのアッセイを使用して測定することができ、そのアッセイには、古典的51クロム(Cr)遊離アッセイ又は代替の非放射性細胞傷害性アッセイ(例えば、Promega Corp社., Madison, WI, U.S.から入手可能なCytoTox96(登録商標)非放射性キット及びCellTox(商標)CellTiter-GLO(登録商標)キット)、Granzyme B ELISpot、カスパーゼ活性アッセイ、又はLAMP-1転位置フローサイトメトリーアッセイが挙げられる。標的細胞の殺滅を特異的にモニターするために、カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE,carboxyfluorescein diacetate succinimidyl ester)を用いて、インビトロ又はインビボ調査のために所望の細胞集団を容易かつ迅速に標識し、エピトープ特異的CSFE標識標的細胞の殺滅をモニターすることができる(Durward M et al., J Vis Exp 45 pii 2250 (2010))。
MHCクラスI提示に対するインビボ応答は、MHCクラスI/抗原促進物質(例えば、ペプチド、タンパク質、又は不活性化/弱毒化ウイルスワクチン)を投与し、続いて、活性物質(例えば、ウイルス)での誘発、及びその物質に対する応答を、典型的にはワクチン接種をしていない対照と比較して、モニターすることにより追跡することができる。エクスビボでの試料は、前に記載された方法(例えば、CTL細胞傷害性アッセイ及びサイトカイン放出の定量化)と類似した方法でCTL活性をモニターすることができる。
生物におけるMHCクラスI提示に続いて、逆免疫法を行ってもよい。例えば、HLA-A、HLA-B、及び/又はHLA-C分子複合体が、抗原Xを含む本発明の細胞標的化分子で中毒化した細胞から、溶解後に、免疫親和性を使用して単離され(例えば、抗MHC I抗体「プルダウン」精製)、会合したペプチド(すなわち、単離したpMHC Iによって結合されたペプチド)が、精製された複合体から回収される。回収されたペプチドは、シーケンシングマススペクトル法により分析される。マススペクトル法データは、外因性(非自己)ペプチド(抗原X)の配列及び(「自己」又は非免疫原性ペプチドを表す)ヒトについてのinternational protein indexからなるタンパク質データベースライブラリーに対して比較される。そのペプチドは、確率データベースによる有意性によりランク付けされる。検出された抗原性(非自己)ペプチド配列が列挙される。データは、誤ったヒットを減らすためにスクランブル化デコイデータベースに対して検索することにより検証される(例えば、Ma B, Johnson R, Mol Cell Proteomics 11: O111.014902 (2012)参照)。結果は、CD8+T細胞抗原X由来のどのペプチドが、細胞標的化分子で中毒化された標的細胞の表面上にMHC I複合体で提示されているかを示し得る。
B.細胞殺滅:直接的に標的化された志賀毒素細胞毒性及び/又はCTLの動員を介して間接的に標的化された細胞媒介性細胞毒性
本発明の細胞標的化分子は、1)提示及びCTLの細胞間結合のための、MHCクラスI提示経路へのCD8+T細胞エピトープカーゴの細胞型特異的送達、並びに2)サイトゾルへの強力な志賀毒素細胞毒性の細胞型特異的送達を提供し得る。これらの複数の細胞毒性機構は、直接的な(例えば、志賀毒素の触媒作用に媒介される)標的細胞殺滅及び間接的な(例えば、CTLに媒介される)標的細胞殺滅の両方を提供することなどによって、相互補完的であり得る。
ある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、ある特定の濃度において細胞毒性である。本発明の細胞標的化分子は、間接的な細胞殺滅機構(例えば、CD8+免疫細胞の細胞間結合による)及び/又は直接的な細胞殺滅機構(例えば、細胞内毒素エフェクター活性による)が関与する用途において使用することができる。志賀毒素は、真核生物細胞を殺滅するように適合されているため、志賀毒素Aサブユニット由来のポリペプチドを使用して設計された細胞毒性の細胞標的化分子は、強力な細胞殺滅活性を示し得る。活性な酵素ドメインを含む志賀毒素Aサブユニット及びその派生物は、細胞のサイトゾルに入ると、真核生物細胞を殺滅させることができる。細胞標的化結合領域及び異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドと、脱免疫化されたプロテアーゼ切断耐性志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドとの融合は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの触媒活性及び細胞毒性活性を著しく低減させることなく達成することができる(以下の実施例を参照)。したがって、本発明のある特定の細胞標的化分子は、(1)本発明の細胞標的化分子による異種CD8+エピトープカーゴの送達の結果としての間接的な免疫細胞媒介性殺滅、及び(2)本発明の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の機能的活性を介した直接的な殺滅という少なくとも2つの冗長な標的細胞殺滅機構を提供し得る。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態に関して、分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している標的細胞を接触させることにより、細胞標的化分子は、標的細胞の死を引き起こすことができる。細胞殺滅の機構は、例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチドの酵素活性による直接的なもの、又は免疫細胞媒介性機構、例えば、CTLに媒介される標的細胞の細胞溶解による間接的なものであり得、エキソビボで操作された標的細胞、インビトロで培養された標的細胞、インビトロで培養された組織試料内の標的細胞、又はインビボの標的細胞など、標的細胞の様々な条件下におけるものであり得る。
標的生体分子の発現は、本発明の細胞標的化分子による標的化された細胞殺滅のために、天然である必要はない。標的生体分子の細胞表面発現は、感染の結果、病原体の存在、及び/又は細胞内微生物病原体の存在であり得る。標的生体分子の発現は、例えば、ウイルス発現ベクター(例えば、アデノウイルス系、アデノ随伴ウイルス系、及びレトロウイルス系参照)での感染後の強制又は誘導された発現によるなど、人工的であり得る。標的生体分子の誘導された発現の例は、オールトランスレチノイン酸及び様々な合成レチノイド、又は任意のレチノイン酸受容体(RAR,retinoic acid receptor)アゴニストのようなレチノイドへ曝された細胞のCD38発現の上方制御である(Drach J et al., Cancer Res 54: 1746-52 (1994);Uruno A et al., J Leukoc Biol 90: 235-47 (2011))。別の例において、CD20、HER2、及びEGFR発現は、細胞を電離放射線に曝すことにより、誘導され得る(Wattenberg M et al., Br J Cancer 110: 1472-80 (2014))。さらに、PSMA発現は、アンドロゲン欠乏に応答して上方制御される(例えば、Chang S et al., Cancer 88: 407-15 (2000);Meller B et al., EJNMMI Res 5: 66 (2015)参照)。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態に関して、細胞標的化分子は、分子の異種CD8+T細胞エピトープカーゴの送達の結果、標的細胞による送達されたエピトープ-ペプチドのMHCクラスI提示、及び免疫細胞に媒介される標的細胞の殺滅がもたらされるため、細胞毒性である。
本発明のある特定の細胞標的化分子は、例えば、CD8+免疫細胞に媒介される標的細胞殺滅の刺激など、間接的な細胞殺滅機構が関与する用途において使用され得る。免疫刺激性非自己抗原、例えば、高い免疫原性を有する既知のウイルスエピトープ-ペプチドなどの標的細胞による提示は、標的細胞を破壊し、より多くの免疫細胞を生物内の標的細胞部位へ動員するように、他の免疫細胞へシグナルを伝達することができる。ある特定の条件下において、MHCクラスI複合体標的による免疫原性CD8+エピトープ-ペプチドの細胞表面提示は、CD8+CTL媒介性細胞溶解による殺滅のために、提示細胞を殺滅するように免疫系を刺激する。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態に関して、分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞を接触させることにより、細胞標的化分子は、例えば、標的細胞による1つ又は2つ以上のT細胞エピトープの提示及びその後のCTLの動員などにより、細胞の死を間接的に引き起こすことができる。
加えて、脊索動物内では、標的細胞による本発明の細胞標的化分子によって送達されたCD8+T細胞エピトープカーゴの提示は、局所領域に対する免疫刺激並びに/又は局所領域及び/若しくはその脊索動物の全身にわたるある特定の悪性細胞の免疫寛容の破壊という追加の機能性を提供し得る。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態に関して、結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞を接触させることにより、本発明の細胞標的化分子は、例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチド又は本明細書に記載される細胞毒性剤の酵素活性などにより、細胞の死を直接的に引き起こすことができる。ある特定の条件下において、本発明のある特定の細胞標的化分子は、触媒的に活性な志賀毒素エフェクターポリペプチド成分を含むため、細胞毒性であるが、これは、非常に迅速に機能するため、細胞標的化分子によるMHCクラスI提示経路への任意の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドの送達のいずれの機能的結果の観察も防止されてしまうが、しかしながら、特許請求される細胞標的化分子の範囲内に包含されるものであり、そのような細胞標的化分子は、外来的に投与したときに、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを、細胞外空間から細胞のMHCクラスI提示経路に送達することができるはずである。
加えて、志賀毒素エフェクターポリペプチドの触媒活性に基づいた細胞毒性を示す本発明の細胞毒性細胞標的化分子は、志賀毒素エフェクターに基づいた細胞毒性を低減又は除去するために、熟練した作業者により、慣例的な方法を使用して、酵素不活性なバリアントへ改変され得る。結果として得られる「不活性化」細胞標的化分子は、異種CD8+T細胞エピトープを標的細胞のMHCクラスI系に送達する能力及びそれに続くMHCクラスI分子による標的細胞の表面上での送達されたCD8+T細胞エピトープ-ペプチドの提示により、なお細胞毒性である場合もそうでない場合もある。
ある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、低い細胞毒性を示すか細胞毒性を示さず、したがって、本明細書において、「非細胞毒性及び/又は低減細胞毒性」と称される。ある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子は、低い細胞毒性を示すか細胞毒性を示さず、「非細胞毒性」及び/又は「低減細胞毒性バリアント」と称され得る。例えば、本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態は、有意なレベルの志賀毒素に基づく細胞毒性を示さず、ここで、1,000nM未満、500nM未満、100nM未満、75nM未満、50nM未満の用量において、例えば、例として、熟練した作業者に公知の及び/又は本明細書に記載されるアッセイによって測定される場合、適切な参照分子と比較して、有意な量の細胞死は存在しない。ある特定のさらなる実施形態に関して、本発明の多価細胞標的化分子は、哺乳動物レシピエント1キログラム(kg)当たり1~100マイクログラム(μg)の投薬量において、いずれの毒性も示さない。低減細胞毒性バリアントは、ある特定の濃度又は投薬量において、依然として細胞毒性であり得るが、低減された細胞毒性を示し、例えば、例として、ある特定の状況において、有意なレベルの志賀毒素細胞毒性を示すことができない。本発明のある特定の細胞標的化分子は、例えば、本明細書に記載される例示的な置換を含め、志賀毒素Aサブユニット及び/又は志賀毒素エフェクターポリペプチドを不活性化するための、熟練した作業者に公知の1つ又は2つ以上のアミノ酸置換の付加などによって、非細胞毒性又は低減細胞毒性にすることができる。本発明の細胞標的化分子の非細胞毒性及び低減細胞毒性のバリアントは、ある特定の状況において、細胞毒性の高いバリアントよりも、異種CD8+T細胞エピトープ及び/又は追加の外因性物質の送達により適切な場合がある。
感染状態の模倣を誘導することによって、様々な有益な免疫応答を局所的に活性化するため及び標的化される細胞(例えば、腫瘍細胞)に外来物であるとして特異的に印を付けるために、特に、例えば、高度に免疫原性の感染病原体由来の外来性エピトープを使用することなどにより、患者内で、悪性細胞(例えば、腫瘍細胞)及び/又は悪性組織の場所(例えば、腫瘍)に対して特異的に感染様免疫反応を誘導する、介入による治療上の利点のために、免疫系の力を利用することが可能であり得る。或いは、このアプローチは、高度に免疫原性のネオエピトープ(感染病原体若しくは非感染病原体のいずれかに由来する)又は非感染病原体由来の高度に免疫原性の非自己エピトープ、例えば、腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原、及び植物、真菌などに由来する分子などを使用してもよい。さらに、エピトープ-ペプチドカーゴの選択によって、免疫系がどの細胞又は組織を刺激するかを指示することが可能であり得る。例えば、内在性の非自己腫瘍抗原(例えば、Boon T, van der Bruggen P, J Exp Med 183: 725-9 (1996);Vonderheide R et al., Immunity 10: 673-9 (1999);Van Der Bruggen P et al., Immunol Rev 188: 51-64 (2002);Schreurs M et al., Cancer Immunol Immunother 54: 703-12 (2005);Adotevi O et al., Clin Cancer Res 12: 3158-67 (2006);Valentino M et al., J Immunol Methods 373: 111-26 (2011)を参照)を使用して標的化細胞に印を付けると、同じか又は関連する腫瘍-エピトープを提示する非標的化細胞に対する免疫応答が誘導され得るが、非感染がん患者においてウイルス性エピトープを使用して標的化細胞に印を付けることにより、エピトープが送達され、十分な量及び十分な期間エピトープが提示されている細胞のみに、免疫応答を限定することができる。加えて、エピトープ-ペプチドカーゴの選択によって、誘導される免疫応答の種類を指示することが可能であり得る。例えば、内在性の非自己腫瘍抗原を使用して標的化細胞に印を付けると、同じか又は関連する腫瘍-エピトープを提示する非標的化細胞に対する抗がん免疫応答が誘導され得るが、非感染がん患者においてウイルス性エピトープを使用して標的化細胞に印を付けることにより、エピトープが送達され、十分な量及び十分な期間エピトープが提示されている細胞のみに、抗ウイルス型免疫応答を限定することができる。
本発明は、CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを脊索動物における標的細胞に送達し、免疫応答を引き起こすことを伴う免疫治療方法であって、脊索動物に、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。ある特定のさらなる実施形態に関して、免疫応答は、CD8+免疫細胞によるサイトカインの分泌、標的細胞におけるCTL誘導性増殖停止、標的細胞のCTL誘導性壊死、標的細胞のCTL誘導性アポトーシス、組織の場所における非特異的な細胞死滅、分子間エピトープ拡散、悪性細胞型に対する免疫寛容の破壊、及び悪性細胞型に対する脊索動物の持続的な免疫の獲得からなる群から選択される細胞間免疫細胞応答である(例えば、Matsushita H et al., Cancer Immunol Res 3: 26-36 (2015)を参照)。これらの免疫応答は、熟練した作業者に公知の技術を使用して検出及び/又は定量化することができる。例えば、CD8+免疫細胞は、免疫刺激性サイトカイン、例えば、IFN-γ、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα,tumor necrosis factor alpha)、マクロファージ炎症性タンパク質-1ベータ(MIP-1β,macrophage inflammatory protein-1 beta)、IL-17、IL-4、IL-22、及びIL-2などのインターロイキンなどを放出し得る(例えば、以下の実施例、Seder R et al., Nat Rev Immunol 8: 247-58 (2008)を参照)。IFN-γは、MHCクラスI分子の発現を増加させ、新生物細胞をCTL媒介性の細胞殺滅に対して感受性にすることができる(Vlkova V et al., Oncotarget 5: 6923-35 (2014))。炎症性サイトカインは、サイトカイン放出細胞に対して無関係のTCR特異性を有する傍観者T細胞を刺激することができる(例えば、Tough D et al., Science 272: 1947-50 (1996)を参照)。活性化されたCTLは、エピトープ-MHCクラスI複合体を提示する細胞の近傍にある細胞を、近傍の細胞がペプチド-MHCクラスI複合体レパートリーを提示するかどうかに関係なく、無差別に殺滅させ得る(Wiedemann A et al., Proc Natl Acad Sci USA 103: 10985-90 (2006))。したがって、ある特定のさらなる実施形態に関して、免疫応答は、近傍細胞が本発明の細胞標的化分子によって送達されたCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを全く提示していない場合、及び殺滅される近傍細胞に物理的に結合している細胞標的化分子の結合領域のいずれの細胞外標的生体分子の存在にも関係のない、免疫細胞によって媒介される近傍細胞の殺滅からなる群から選択される、細胞間免疫細胞応答である。
標的細胞であるか単に標的細胞の近傍にある細胞かにかかわらず、CTLによる溶解を受けた細胞における非自己エピトープの存在は、細胞間エピトープ拡散の機構による標的細胞における非自己エピトープの認識を含め、免疫系によって外来物として認識及び標的化され得る(McCluskey J et al., Immunol Rev 164: 209-29 (1998);Vanderlugt C et al., Immunol Rev 164: 63-72 (1998);Vanderlugt C, Miller S, Nat Rev Immunol 2: 85-95 (2002)を参照)。近傍細胞としては、例えば、がん関連の線維芽細胞、間葉幹細胞、腫瘍関連内皮細胞、及び未成熟骨髄由来抑制細胞など、非新生物細胞を挙げることができる。例えば、がん細胞は、コーディング配列中に平均で25~500個の非同義変異を有し得る(例えば、Fritsch E et al., Cancer Immunol Res 2: 522-9 (2014)を参照)。がんドライバー変異及び非ドライバー変異のいずれも、がん細胞の変異状況の一部であり、これは、細胞1個当たり多数の非自己エピトープに対応し、平均の腫瘍は、10又は11以上の非自己エピトープを有し得る(例えば、Segal N et al., Cancer Res 68: 889-92 (2008)を参照)。例えば、腫瘍タンパク質p53の変異体形態は、非自己エピトープを含有し得る(例えば、Vigneron N et al., Cancer Immun 13: 15 (2013)を参照)。加えて、変異型自己タンパク質などの非自己エピトープの存在は、これらの新しいエピトープに特異的なメモリー細胞の産生をもたらし得る。本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態は、標的化された組織の場所においてサンプリングされる樹状細胞を増加させ得るため、細胞内抗原による免疫系の交差抗原刺激の可能性が、増加し得る(例えば、Chiang C et al., Expert Opin Biol Ther 15: 569-82 (2015)を参照)。したがって、異種CD8+T細胞エピトープカーゴの細胞標的化分子の送達及びそのエピトープのMHCクラスI提示の結果として、本発明の細胞標的化分子によって送達されたエピトープ以外の非自己エピトープによるものを含め、非自己抗原を含有する標的細胞及び他の近傍細胞は、免疫系によって拒絶され得る。このような機構により、例えば、細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子を発現しない腫瘍細胞に対する抗腫瘍免疫が誘導され得る。
サイトカイン分泌及び/又はT細胞活性化を伴う免疫応答は、脊索動物内のある場所の免疫微小環境の調節をもたらし得る。本発明の方法は、免疫細胞、例えば、腫瘍関連マクロファージ、T細胞、Tヘルパー細胞、抗原提示細胞、及びナチュラルキラー細胞などに対する制御性恒常性を変化させるために、脊索動物内の組織の場所の微小環境を変更するのに使用され得る。
ある特定の実施形態に関して、本発明の方法は、例えば、メモリーT細胞の発達及び/又は腫瘍微小環境に対する変更などによって、脊索動物対象における抗腫瘍細胞免疫を増強させるため及び/又は脊索動物における持続的な抗腫瘍免疫を作り出すために使用することができる。
本発明の細胞標的化分子又はその医薬組成物のある特定の実施形態は、脊索動物内のある場所に、免疫系を刺激して、その場所をより強力に規制するため及び/又は免疫阻害性シグナル、例えば、アネルギー誘導シグナルを緩和するために、非自己CD8+T細胞エピトープ-ペプチド提示細胞を「シーディング」するのに使用することができる。この本発明の「シーディング」方法のある特定のさらなる実施形態において、場所は、腫瘤又は感染した組織部位である。本発明のこの「シーディング」方法のある特定の実施形態において、非自己CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、細胞標的化分子の標的細胞によってまだ提示されていないペプチド、標的細胞によって発現されるあらゆるタンパク質中に存在しないペプチド、標的細胞のプロテオーム又はトランスクリプトーム中に存在しないペプチド、シーディングしようとする部位の細胞外の微環境中に存在しないペプチド、及び標的化しようとする腫瘤又は感染した組織部位中に存在しないペプチドからなる群から選択される。
この「シーディング」方法は、免疫細胞による細胞間認識及び下流の免疫応答の活性化のために、1つ又は2つ以上のMHCクラスI提示されたCD8+T細胞エピトープ(pMHC I)で脊索動物内の1つ又は2つ以上の標的細胞を標識するように機能する。本発明の細胞標的化分子の細胞内在化、細胞内経路決定、及び/又はMHCクラスIエピトープ送達の機能を利用することにより、送達されたCD8+T細胞エピトープを提示する標的細胞は、脊索動物の免疫細胞の免疫監視機構によって認識され、CD8+T細胞、例えば、CTLなどによる、提示標的細胞の細胞間結合をもたらすことができる。本発明の細胞標的化分子を使用したこの「シーディング」方法は、細胞標的化分子によって送達されたT細胞エピトープを提示しているかどうかにかかわらず、例えば、分子間エピトープ拡散及び/又は人工的に送達されたエピトープとは対照的な内在性抗原の提示に基づく標的細胞の免疫寛容の破壊などの結果として、免疫細胞に媒介される標的細胞殺滅を刺激することができる。本発明の細胞標的化分子を使用したこの「シーディング」方法は、ナイーブT細胞によって外来物として認識される及び/又はメモリーT細胞によって非自己としてすでに認識可能である(すなわち、リコール抗原)のいずれかであるエピトープの検出に基づいて、シーディングされた微小環境内、例えば、腫瘤又は感染組織部位などにおいて細胞に対する適応免疫応答を誘導することによって、ワクチン接種効果(新しいエピトープの曝露)及び/又はワクチン接種追加免疫効果(エピトープ再曝露)を提供し得る。この「シーディング」方法はまた、脊索動物内において、末梢的又は全身的のいずれかで、標的細胞集団、腫瘤、罹患組織部位、及び/又は感染組織部位に対する免疫寛容の破壊も誘導し得る。
脊索動物内の部位又は場所における死滅又は壊死性の腫瘍細胞の存在は、局所化された免疫刺激作用をもたらし得る。例えば、死滅又は壊死性の腫瘍細胞は、因子、例えば、高移動度群のタンパク質及び/又はATPなどを放出し得、これが、免疫細胞の免疫原性の成熟を刺激し得る。腫瘍の場所のシーディングはまた、腫瘍細胞の原形質膜におけるERタンパク質(例えば、カルレティキュレン)の異所的発現も誘導又は増加させ得、これにより、その部位におけるMHCクラス抗原提示及び腫瘍細胞のファゴサイトーシスが促進/増加され得る。
1つ又は2つ以上の抗原性及び/又は免疫原性CD8+T細胞エピトープで脊索動物内の場所をシーディングするステップを含む本発明のある特定の方法は、局所的に又は全身に投与されるかどうかにかかわらず、ある特定の抗原に対する免疫応答を刺激するために免疫学的なアジュバントの投与と組み合わせてもよく、例えば本発明の組成物と、サイトカイン、細菌産物、又は植物のサポニンのような1つ又は2つ以上の免疫学的なアジュバントとの共投与などである。本発明の方法で使用するのに適している可能性がある免疫学的なアジュバントの他の例としては、アルミニウム塩及び油、例えばミョウバン、水酸化アルミニウム、鉱油、スクアレン、パラフィン油、落花生油、及びチメロサールなどが挙げられる。
本発明のある特定の方法は、脊索動物におけるナイーブCD8+T細胞の免疫原性交差提示及び/又は交差抗原刺激の促進を伴う。本発明のある特定の方法に関して、交差抗原刺激は、本発明の細胞標的化分子によって引き起こされる標的細胞の死及び/又は死の手段の結果として、免疫監視機構に対して死ぬ標的細胞又は死んだ標的細胞における細胞内抗原の曝露が促進されるようになることで生じる。
単一の本発明の細胞標的化分子によって複数の異種CD8+T細胞エピトープ(カーゴとして又は志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の組み込まれた又は挿入された領域としてのいずれかで)が送達され得るため、本発明の細胞標的化分子の単一の実施形態は、例えば、異なるHLA対立遺伝子を有するヒトにおいてなど、異なるMHCクラスI分子バリアントを有する同じ種の異なる個々の脊索動物において、治療的に有効であり得る。本発明のある特定の実施形態のこの能力により、単一の細胞標的化分子において、MHCクラスI分子の多様性及び多型性に基づいて、異なる対象の亜集団において異なる治療有効性を有する異なるCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを組み合わせることが可能となり得る。例えば、ヒトMHCクラスI分子、HLAタンパク質は、遺伝学的祖先、例えば、アフリカ人(サハラ以南)、アメリカンインディアン、コーカソイド、モンゴロイド、ニューギニア及びオーストラリア人、又は太平洋諸島系住民に基づいて、ヒトの間で異なる。
ヒト集団の大部分が、CMV抗原に反応するように抗原刺激されたCD8+T細胞の特定のセットを有し、生涯にわたり無症状を維持するように慢性的なCMV感染を絶えず抑制しているため、CMV抗原由来の異種CD8+T細胞エピトープを送達できる本発明の細胞標的化分子が、特に有用であり得る。加えて、高齢のヒトは、例えば、CMVに対してより焦点の定まっている可能性のある免疫監視、並びにより高齢のヒトにおけるT細胞抗原受容体レパートリー及び相対CTLレベルの組成によって示されるような、CMVに関する適応免疫系における加齢関連の変化により、CMV CD8+T細胞エピトープにさらにより迅速かつ強力に反応し得る(例えば、Koch S et al., Ann N Y Acad Sci 1114: 23-35 (2007);Vescovini R et al., J Immunol 184: 3242-9 (2010);Cicin-Sain L et al., J Immunol 187: 1722-32 (2011);Fulop T et al., Front Immunol 4: 271 (2013);Pawelec G, Exp Gerontol 54: 1-5 (2014)を参照)。
C.細胞型の間での選択的細胞毒性
本発明のある特定の細胞標的化分子は、非標的化傍観者細胞の存在下での特定の標的細胞の選択的殺滅に使用される。免疫原性CD8+T細胞エピトープカーゴの送達の標的を標的細胞のMHCクラスI経路に向けることにより、その後の送達されたCD8+T細胞エピトープの提示及びエピトープを提示している標的細胞のCTL媒介性細胞溶解のTCR特異的制御は、非標的化細胞の存在下において、選択された細胞型を優先的に殺滅することに限定され得る。加えて、様々な志賀毒素エフェクターポリペプチドの強力な細胞毒性活性による標的細胞の殺滅は、免疫原性T細胞エピトープカーゴ及び細胞毒性毒素エフェクターポリペプチドの同時送達により、標的細胞を優先的に殺滅することに限定され得る。
ある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子を細胞型の混合物へ投与することにより、細胞標的化分子は、細胞外標的生体分子と物理的に結合していない細胞型と比較して、細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞を選択的に殺滅することができる。
ある特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子を細胞型の混合物へ投与することにより、細胞毒性細胞標的化分子は、細胞外標的生体分子と物理的に結合していない細胞型と比較して、細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞を選択的に殺滅することができる。ある特定の実施形態に関して、本発明の細胞毒性細胞標的化分子は、2つ又は3つ以上の異なる細胞型の混合物内で特定の細胞型の死を選択的又は優先的に引き起こすことができる。これは、標的生体分子を発現しない「傍観者」細胞型と比べて3倍大きい細胞毒性効果など、高い優先性で細胞毒性活性の標的を特定の細胞型へ向けることを可能にする。或いは、結合領域の標的生体分子の発現は、標的生体分子が、十分低い量で発現される、及び/又は標的にされることになっていない細胞型と低量で物理的に結合している場合には、1つの細胞型に排他的なものでない場合がある。これは、有意な量の標的生体分子を発現しないか又は有意な量の標的生体分子と物理的に結合していない「傍観者」細胞型と比べて3倍大きい細胞毒性効果など、高い優先性で特定の細胞型の標的化細胞殺滅を可能にする。
ある特定のさらなる実施形態に関して、細胞毒性細胞標的化分子を2つの異なる細胞型集団へ投与することにより、細胞毒性細胞標的化分子は、半数細胞毒性濃度(CD50)により定義されるような細胞死を、メンバーが細胞毒性細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子を発現する標的細胞集団に、メンバーが細胞毒性細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子を発現しない細胞集団への同じ細胞毒性細胞標的化分子のCD50用量の少なくとも3分の1の用量で、引き起こすことができる。
ある特定の実施形態に関して、細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞型集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性活性は、結合領域のいずれの細胞外標的生体分子とも物理的に結合していない細胞型集団に対する細胞毒性活性よりも少なくとも3倍高い。本発明によれば、選択的細胞毒性は、(a)結合領域の標的生体分子と物理的に結合している特定の細胞型の細胞集団への細胞毒性の、(b)結合領域の標的生体分子と物理的に結合していない細胞型の細胞集団への細胞毒性に対する比率(a/b)によって定量化され得る。ある特定の実施形態に関して、細胞毒性比率は、結合領域の標的生体分子と物理的に結合している細胞又は細胞型の集団について、結合領域の標的生体分子と物理的に結合していない細胞又は細胞型の集団と比較して、少なくとも3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、250倍、500倍、750倍、又は1000倍高い選択的細胞毒性を示す。
特定の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子の優先的細胞殺滅機能又は選択的細胞毒性は、本発明の細胞標的化分子に存在する追加の外因性材料(例えば、細胞毒性材料)及び/又は異種CD8+T細胞エピトープによるものであり、必ずしも、細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の触媒活性の結果とは限らない。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態に関して、細胞標的化分子を脊索動物に投与することにより、細胞標的化分子は、標的細胞の近傍にある非標的化細胞及び/又は共通の悪性条件を共有することで標的細胞と関連している非標的化細胞の死を引き起こし得ることに留意することが重要である。脊索動物内での標的細胞によるある特定のT細胞エピトープの提示は、CTLに媒介される標的細胞の殺滅、並びに送達されたエピトープを提示していないが、エピトープ提示細胞の近傍にある他の細胞の殺滅をもたらし得る。さらに、脊索動物における標的化腫瘍細胞によるある特定のT細胞エピトープの提示は、分子間でのエピトープ拡散、腫瘍微小環境の刺激性状態への再プログラミング、アネルギー又は標的細胞若しくはそれらを含む損傷した組織に対する脱感作の除去による既存の免疫細胞の放出、並びに非自己腫瘍抗原に対する対象の免疫系の寛容に関する生理学的状態の克服をもたらし得る(以下のX.細胞標的化分子の使用方法の節などを参照)。
本発明の細胞標的化分子の脊索動物への投与は、特定の細胞型を、例えば、標的化された細胞型及び/又はエピトープを提示する他の細胞型を殺滅させるために、エピトープが細胞標的化分子によって送達されたか、投与前にすでに存在していたかに関係なく、特定のエピトープに限定して標的化するCTLの形式での免疫系の作用/刺激などを介して、「クリアランス」するために、インビボで使用することができる。
D.追加の外因性材料の標的細胞の内部への送達
細胞殺滅を指向することに加えて、本発明の細胞標的化分子は、追加の外因性材料を標的細胞の内部に送達するために使用してもよい。追加の外因性材料の送達は、例えば、細胞毒性、細胞分裂阻害性、及び免疫系刺激、免疫細胞標的化、情報収集、及び/又は診断機能のために使用してもよい。本発明の細胞毒性細胞標的化分子の非細胞毒性バリアント、又は任意で毒性バリアントは、細胞標的化分子の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞の内部へ追加の外因性材料を送達するため及び/又はその細胞の内部を標識するために使用され得る。標的生体分子を少なくとも1つの細胞表面に発現する様々な型の細胞及び/又は細胞集団は、外因性材料を受けるために、本発明の細胞標的化分子によって標的にされ得る。
本発明の細胞標的化分子は、その非毒性形態を含め、その結合領域によって認識される細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞に入ることができるため、本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態は、追加の外因性材料を標的細胞型の内部へ送達するために使用することができる。ある意味では、本発明の細胞標的化分子全体が、細胞に入ると予想される外因性物質であることから、「追加の」外因性物質は、コアの細胞標的化分子そのもの以外の連結されている外因性物質である。ある特定の状況においてCTL媒介性細胞殺滅を刺激しない異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドを含む、本発明の非毒性細胞標的化分子は、それでもなお、MHCクラスI提示による細胞殺滅をもたらすのではなく、例えば、個体における免疫系機能、MHCクラスIバリアントの発現、及びある特定の細胞におけるMHCクラスI系の操作性に関するものなど、情報収集を可能にする、「無害の」CD8+T細胞エピトープ-ペプチドを送達するのに有用であり得る。
「追加の外因性物質」は、本明細書で使用される場合、一般的に天然の標的細胞内には存在しない及び/又は望ましくないほど低いレベルで存在することが多い1つ又は2つ以上の分子を指し、ここで、本発明のタンパク質は、細胞の内部にこのような物質を特異的に輸送するのに使用することができる。追加の外因性物質の非限定的な例は、細胞毒性剤、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、検出促進剤、及び小分子化学療法剤である。
追加の外因性物質の送達のための本発明のタンパク質のある特定の実施形態において、追加の外因性物質は、例えば、小分子化学療法剤、細胞毒性抗生物質、アルキル化剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、及び/又はチューブリン阻害剤などの細胞毒性剤である。細胞毒性剤の非限定的な例としては、アジリジン、シスプラチン、テトラジン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ビンカアルカロイド、タキサン、カンプトテシン、エトポシド、ドキソルビシン、ミトキサントロン、テニポシド、ノボビオシン、アクラルビシン、アントラサイクリン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ドラスタチン、マイタンシン、ドセタキセル、アドリアマイシン、カリケアマイシン、オーリスタチン、ピロロベンゾジアゼピン、カルボプラチン、5-フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン、マイトマイシンC、パクリタキセル、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア(BCNU)、リファンピシン、シスプラチン、メトトレキサート、及びゲムシタビンが挙げられる。
ある特定の実施形態において、追加の外因性物質は、酵素を含むタンパク質又はポリペプチドを含む。ある特定の他の実施形態において、追加の外因性物質は、例えば低分子阻害RNA(siRNA,small inhibiting RNA)又はマイクロRNA(miRNA)として機能するリボ核酸などの核酸である。ある特定の実施形態において、追加の外因性物質は、細菌タンパク質、ウイルスタンパク質、がんにおいて変異したタンパク質、がんにおいて異常に発現されるタンパク質、又はT細胞相補性決定領域に由来する抗原などの抗原である。例えば、外因性物質としては、細菌に感染した抗原提示細胞に特徴的な抗原などの抗原、及び外因性抗原として機能することができるT細胞相補性決定領域が挙げられる。外因性物質のさらなる例としては、酵素など、抗原性ペプチドよりも大きなポリペプチド及びタンパク質が挙げられる。
ある特定の実施形態において、追加の外因性物質は、アポトーシス促進性ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質、例えば、BCL-2、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-3若しくはカスパーゼ-6の断片)、シトクロム、グランザイムB、アポトーシス誘導因子(AIF,apoptosis-inducing factor)、BAX、tBid(短縮型Bid)、及びそれらのアポトーシス促進性断片又は派生物などを含む(例えば、Ellerby H et al., Nat Med 5: 1032-8 (1999);Mai J et al., Cancer Res 61: 7709-12 (2001);Jia L et al., Cancer Res 63: 3257-62 (2003);Liu Y et al., Mol Cancer Ther 2: 1341-50 (2003);Perea S et al., Cancer Res 64: 7127-9 (2004);Xu Y et al., J Immunol 173: 61-7 (2004);Dalken B et al., Cell Death Differ 13: 576-85 (2006);Wang T et al., Cancer Res 67: 11830-9 (2007);Kwon M et al., Mol Cancer Ther 7: 1514-22 (2008);Shan L et al., Cancer Biol Ther 11: 1717-22 (2008);Qiu X et al., Mol Cancer Ther 7: 1890-9 (2008);Wang F et al., Clin Cancer Res 16: 2284-94 (2010);Kim J et al., J Virol 85: 1507-16 (2011)を参照)。
ある特定の活性が低減した志賀毒素エフェクターポリペプチドは、標的細胞のある特定の細胞内位置又は細胞内区画に追加の外因性物質を送達するのに特に有用な場合がある。
E.診断機能のための情報収集
本発明の細胞標的化分子は、情報収集機能に使用してもよい。本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態は、細胞表面上でMHCクラスI分子と複合体化した異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチド(本発明の細胞標的化分子によって送達される)を認識するpMHC Iに特異的な抗体を使用した特定のpMHC I提示細胞のイメージングに使用され得る。加えて、本発明のある特定の細胞標的化分子は、特定の細胞、細胞型、及び/又は細胞集団のインビトロ及び/又はインビボでの検出に使用される。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される細胞標的化分子は、診断及び治療の両方、又は診断のみに使用される。
当技術分野において公知の検出促進剤を本発明の様々な細胞標的化分子にコンジュゲートする能力は、がん、腫瘍、増殖異常、免疫、及び感染細胞の検出に有用な組成物を提供する。本発明の細胞標的化分子のこれらの診断用実施形態は、当技術分野において公知の様々なイメージング技術及びアッセイによる情報収集に使用され得る。例えば、本発明の細胞標的化分子の診断用実施形態は、患者又は生検試料における個々のがん細胞、免疫細胞、又は感染細胞の細胞内小器官(例えば、エンドサイトーシス、ゴルジ、小胞体、及びサイトゾルの区画)のイメージングによる情報収集に使用され得る。
様々な種類の情報が、診断用か他の用途かにかかわらず、本発明の細胞標的化分子の診断用実施形態を使用して収集され得る。この情報は、例えば、新生物細胞のサブタイプを診断すること、特定の細胞型におけるMHCクラスI経路及び/若しくはTAP系の機能性を決定すること、特定の細胞型におけるMHCクラスI経路及び/若しくはTAP系の機能性の経時的な変化を決定すること、患者の疾患の治療感受性を決定すること、抗新生物治療の進行を経時的にアッセイすること、免疫調節治療の進行を経時的にアッセイすること、抗菌治療の進行を経時的にアッセイすること、移植材料において感染細胞の存在を評価すること、移植材料において望ましくない細胞型の存在を評価すること、並びに/又は腫瘤の外科的切除後の残存腫瘍細胞の存在を評価することにおいて有用であり得る。
例えば、本発明の細胞標的化分子の診断用バリアントを使用して収集された情報を使用して患者の亜集団を確認することができ、その後、個々の患者を、それらの診断用実施形態を使用して明らかにされたそれらの固有の特性に基づいて亜集団へ分類することができる。例えば、特定の医薬又は治療の有効性は、患者の亜集団を定義するために使用される基準の1つの種類となり得る。例えば、本発明の特定の細胞毒性細胞標的化分子の非毒性診断用バリアントは、どの患者が、同じ本発明の細胞標的化分子の細胞毒性バリアントに対して陽性に応答すると予測される患者のクラス又は亜集団に入るかを識別するために使用され得る。したがって、本発明の細胞毒性細胞標的化分子の非毒性バリアントを含め、本発明の細胞標的化分子を使用した患者の同定、患者の層別化、及び診断のための関連方法は、本発明の範囲内であるとみなされる。
IV.本発明の細胞標的化分子のタンパク質成分のポリペプチド配列におけるバリエーション
熟練した作業者であれば、例えば、標的細胞に外来的に投与した後に異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを標的細胞のMHCクラスI提示経路に送達することに関する細胞標的化分子の全体的な構造及び機能を維持することによって、上述の本発明の細胞標的化分子、及び前述のもののいずれかをコードするポリヌクレオチドに、それらの生物活性を減弱させることなくバリエーションをもたせることができることを認識するであろう。例えば、いくつかの修飾により、発現を促進する、精製を容易にする、薬物動態特性を改善する、及び/又は免疫原性を改善することができる。そのような修飾は、熟練した作業者には周知であり、例えば、開始部位を提供するためにアミノ末端に付加されるメチオニン、都合良く配置された制限部位又は終止コドンを作製するためにいずれかの末端に配置される追加のアミノ酸、並びに便宜的な検出及び/又は精製を提供するためにいずれか末端に融合された生化学的親和性タグが挙げられる。ポリペプチドの免疫原性を改善するための一般的な修飾は、ポリペプチドの産生後に、細菌宿主系において産生中にホルミル化され得る開始メチオニン残基を取り除くことであり、これは、例えば、N-ホルミルメチオニン(fMet,N-formylmethionine)の存在が脊索動物において望ましくない免疫応答を誘導する可能性があるためである。
本発明の細胞標的化分子の実施形態のある特定のバリエーションにおいて、結合領域のある特定の細胞標的化機能性は、標的生体分子の結合の特異性及び選択性が有意に保存されるように、維持されなければならない。本発明の細胞標的化分子の実施形態のある特定のバリエーションにおいて、志賀毒素エフェクターポリペプチドのある特定の生物活性、例えば、細胞内在化の誘導、ある特定の細胞内区画(MHCクラスI経路に入るのに適した区画など)への細胞内経路決定、及び/又は外因性物質を標的細胞のある特定の細胞内区画へ送達する能力は、保存される必要があり得る。
生化学的タグ又は他の部分の配列など、追加のアミノ酸残基をアミノ末端及び/又はカルボキシ末端に含むこともまた、本明細書において企図される。追加のアミノ酸残基は、例えば、クローニング、発現、翻訳後修飾、合成、精製、検出、及び/又は投与の促進を含む、様々な目的のために使用され得る。生化学的タグ及び部分の非限定的な例は、キチン結合タンパク質ドメイン、エンテロペプチダーゼ切断部位、第Xa因子切断部位、FIAsHタグ、FLAGタグ、緑色蛍光タンパク質(GFP,green fluorescent protein)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ部分、HAタグ、マルトース結合タンパク質ドメイン、mycタグ、ポリヒスチジンタグ、ReAsHタグ、strep-タグ、strep-タグII、TEVプロテアーゼ部位、チオレドキシンドメイン、トロンビン切断部位、及びV5エピトープタグである。
上述の実施形態のある特定のものにおいて、本発明の細胞標的化分子のタンパク質配列又はそのポリペプチド成分は、タンパク質又はポリペプチド成分への1つ又は2つ以上の保存的アミノ酸置換の導入により、多様であるが、これは、送達及び/又は送達されたCD8+T細胞エピトープの細胞表面MHCクラスI提示が、熟練した作業者に公知及び/又は本明細書に記載されるアッセイを使用して検出されるように、細胞標的化分子が、標的細胞に外来的に投与した後にその異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを標的細胞のMHCクラスI提示系に送達する能力を保持する限りにおいてである。
本明細書で使用される場合、用語「保存的置換」は、1つ又は2つ以上のアミノ酸が、別の生物学的に類似したアミノ酸残基によって置き換えられることを意味する。例としては、アミノ酸残基を、類似した特性を有するアミノ酸残基、例えば、小型アミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸、及び芳香族アミノ酸と置換することが挙げられる(例えば、以下の表Bを参照)。内在性哺乳類ペプチド及びタンパク質に通常は見出されない残基での保存的置換の例は、アルギニン又はリジン残基の、例えば、オルニチン、カナバニン、アミノエチルシステイン、又は別の塩基性アミノ酸での保存的置換である。ペプチド及びタンパク質における表現型的にサイレントな置換に関するさらなる情報については、例えば、Bowie J et al., Science 247: 1306-10 (1990)を参照されたい。
上記の表Bにおける保存的置換スキームにおいて、アミノ酸の例示的な保存的置換は、物理化学的性質により以下のようにグループ化される:I:中性、親水性;II:酸及びアミド;III:塩基性;IV:疎水性;V:芳香族、嵩高のアミノ酸、VI親水性非荷電、VII脂肪族非荷電、VIII無極性非荷電、IXシクロアルケニル結合型、X疎水性、XI極性、XII小型、XIII回転可能、及びXIV可動性。例えば、保存的アミノ酸置換には以下が挙げられる:1)SがCの代わりに用いられ得る;2)M又はLがFの代わりに用いられ得る;3)YがMの代わりに用いられ得る;4)Q又はEがKの代わりに用いられ得る;5)N又はQがHの代わりに用いられ得る;及び6)HがNの代わりに用いられ得る。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子(例えば、細胞標的化融合タンパク質)は、本明細書に列挙されるポリペプチド配列と比較して、多くとも20個、15個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、又は1個のアミノ酸残基置換を有する、本発明のポリペプチド領域の機能的断片又はバリアントを含み得るが、これは、それを含む細胞標的化分子が、その異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを標的細胞のMHCクラスI提示経路に送達することができる限りにおいてである。本発明の細胞標的化分子のバリアントは、変化した細胞毒性、変化した細胞分裂停止効果、変化した免疫原性、及び/又は変化した血清半減期など、所望される特性を達成するために、結合領域又は志賀毒素エフェクターポリペプチド成分内などにおいて1つ若しくは2つ以上のアミノ酸を変更すること又は1つ若しくは2つ以上のアミノ酸を欠失若しくは挿入することによって、本発明の細胞標的化タンパク質のポリペプチド成分を変化させた結果として、本発明の範囲内である。本発明の細胞標的化分子又はそのポリペプチド成分は、シグナル配列をさらに伴ってもよく、又は伴わなくてもよい。
したがって、ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子の結合領域は、当技術分野で公知のコンピュータ相同性プログラムによってアライメントが行われたアライメント配列と比較した場合に、本明細書に列挙されるか又はそれ以外のすでに公知の結合領域に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.7%の全体的な配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれから本質的になるが、これは、結合領域が、例えば、標的生体分子に対して10-5~10-12モル/リットルのKDを呈するなど、細胞標的化分子の成分として、妥当な量の細胞外標的生体分子結合特異性及び親和性を呈する限りにおいてである。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド領域は、当技術分野で公知のコンピュータ相同性プログラムによってアライメントが行われたアライメント配列と比較して、天然に存在する毒素、例えば、配列番号1~18のいずれか1つなどの志賀毒素Aサブユニットなどに対して、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.7%の全体的な配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれから本質的になるが、これは、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、細胞標的化分子の成分として、必要とされるレベルの、細胞標的化分子の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを少なくとも1つの標的細胞型のMHCクラスI提示経路に細胞内送達することと関連する志賀毒素エフェクター機能を呈する限りにおいてである。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの酵素活性及び/又は細胞毒性が変更又は変化していてもよいが、これは、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、細胞標的化分子の成分として、必要とされるレベルの、細胞標的化分子のCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを少なくとも1つの標的細胞型のMHCクラスI提示経路に細胞内送達することと関連する志賀毒素エフェクター機能を呈する限りにおいてである。この変化は、志賀毒素エフェクターポリペプチド又は変更された志賀毒素エフェクターポリペプチドが成分である細胞標的化分子の細胞毒性の変化をもたらす場合ももたらさない場合もある。志賀毒素の酵素活性及び細胞毒性の両方が、変異又は短縮化によって変更、低減、又は除去され得る。可能性のある変更としては、短縮化、欠失、逆位、挿入、再配列、及び置換からなる群から選択される、志賀毒素エフェクターポリペプチドに対する変異が挙げられるが、これは、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、細胞標的化分子の成分として、必要とされるレベルの、細胞標的化分子の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを少なくとも1つの標的細胞型のMHCクラスI提示経路に細胞内送達することと関連する志賀毒素エフェクター機能を保持する限りにおいてである。
志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットの細胞毒性は、変異又は短縮化によって、変更、低減、又は除去され得る。本発明の細胞標的化分子は、それぞれが、志賀毒素エフェクターポリペプチドの触媒活性に関係なく、細胞標的化分子の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを少なくとも1つの標的細胞型のMHCクラスI提示経路に送達する能力をそれぞれの細胞標的化分子に提供する、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド領域を含む。以下の実施例に示されるように、志賀毒素エフェクターポリペプチドの触媒活性及び細胞毒性は、融合型異種CD8+T細胞エピトープを標的細胞型のMHCクラスI提示経路に送達する能力を本発明の細胞標的化分子に提供するのに必要とされる他の志賀毒素エフェクター機能とは無関係であり得る。したがって、本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、例えば、野生型志賀毒素Aサブユニットと比べて、酵素活性に関与する1つ又は2つ以上の重要な残基におけるアミノ酸残基の変異の存在によってなど、減弱又は無効となった志賀毒素細胞毒性を呈するように改変されている。これにより、志賀毒素の細胞毒性機能によって直接的に標的細胞を殺滅させることのない本発明の細胞標的化分子が得られる。細胞毒性志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を欠いているこのような本発明の細胞標的化分子は、1)標的細胞によるMHCクラスI提示のための異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドの送達による細胞殺滅、2)異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドを標的細胞のMHCクラスI系に送達した結果としての、標的細胞に対する望ましい細胞間免疫細胞応答の刺激、及び/又は3)標的細胞には必要とされる機序が欠損していない場合に標的細胞を特定のCD8+T細胞エピトープ-ペプチド/MHCクラスI分子複合体で標識することを実行するのに有用である。
志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットの触媒活性及び/又は細胞毒性活性は、変異又は短縮化によって、減弱又は除去され得る。志賀毒素Aサブユニットにおいて酵素活性及び/又は細胞毒性にとって最も重要な残基は、とりわけ、以下の残基位置にマッピングされている:アスパラギン-75、チロシン-77、グルタミン酸-167、アルギニン-170、アルギニン-176、及びトリプトファン-203(Di R et al., Toxicon 57:525-39 (2011))。特に、グルタミン酸-E167からリジンへの変異及びアルギニン-176からリジンへの変異を含有するStx2Aの二重変異体コンストラクトは、完全に不活性化されたが、一方で、Stx1及びStx2における多くの単一変異は、細胞毒性の10分の1への低減を示した。標識された位置、チロシン-77、グルタミン酸-167、アルギニン-170、チロシン-114、及びトリプトファン-203は、Stx、Stx1、及びStx2の触媒活性にとって重要であることが示されている(Hovde C et al., Proc Natl Acad Sci USA 85: 2568-72 (1988);Deresiewicz R et al., Biochemistry 31: 3272-80 (1992);Deresiewicz R et al., Mol Gen Genet 241: 467-73 (1993);Ohmura M et al., Microb Pathog 15: 169-76 (1993);Cao C et al., Microbiol Immunol 38: 441-7 (1994);Suhan M, Hovde C,, Infect Immun 66: 5252-9 (1998))。グルタミン酸-167及びアルギニン-170の両方を変異させることにより、無細胞リボソーム不活性化アッセイにおいて、Slt-I A1の酵素活性が除去された(LaPointe P et al., J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。小胞体におけるSlt-I A1のデノボ発現を使用する別のアプローチにおいて、グルタミン酸-167及びアルギニン-170の両方を変異させることにより、その発現レベルでのSlt-I A1断片の細胞毒性が除去された(LaPointe P et al., J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
さらに、Stx1Aの1~239又は1~240への短縮化により、その細胞毒性が低減され、同様に、Stx2Aの保存的疎水性残基への短縮化により、その細胞毒性が低減された。志賀毒素Aサブユニットにおいて、真核生物リボソームとの結合及び/又は真核生物リボソーム阻害にとって最も重要な残基は、とりわけ、以下の残基位置にマッピングされている:アルギニン-172、アルギニン-176、アルギニン-179、アルギニン-188、チロシン-189、バリン-191、及びロイシン-233(McCluskey A et al., PLoS One 7: e31191 (2012))。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、志賀毒素Aサブユニット(例えば、配列番号1~18のいずれか1つ)に由来する成分に由来するか又はそれを含む志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素ポリペプチド配列からの変更、例えば、以下のアミノ酸残基置換のうちの1つ又は2つ以上などを含む:75位のアスパラギン、77位のチロシン、114位のチロシン、167位のグルタミン酸、170位のアルギニン、176位のアルギニン、202位のトリプトファン、及び/又は203位のトリプトファンの置換。そのような置換の例は、先行技術に基づいて熟練した作業者に公知であり、例えば、75位におけるアスパラギンからアラニンへの置換、77位におけるチロシンからセリンへの置換、114位におけるチロシンからアラニンへの置換、167位におけるグルタミン酸からアスパラギン酸への置換、170位におけるアルギニンからアラニンへの置換、176位におけるアルギニンからリジンへの置換、及び/又は203位におけるトリプトファンからアラニンへの置換である。志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドの酵素活性及び/又は細胞毒性を増強するか又は低減するかのいずれかである他の変異は、本発明の範囲内であり、周知の技術及び本明細書に開示されるアッセイを使用して決定され得る。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子又はそのタンパク質性成分は、例えば、リン酸化、アセチル化、グリコシル化、アミド化、ヒドロキシル化、及び/又はメチル化など、1つ又は2つ以上の翻訳後修飾を含む(例えば、Nagata K et al., Bioinformatics 30: 1681-9 (2014)を参照)。
本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態において、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の酵素活性を増加させるために、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基が、変異、挿入、又は欠失され得るが、これは、細胞標的化分子が、その異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを標的細胞のMHCクラスI提示経路に送達することができる限りにおいてである。例えば、Stx1Aにおける残基位置アラニン-231をグルタミン酸へ変異させることにより、インビトロにおけるその酵素活性が増加した(Suhan M, Hovde C, Infect Immun 66: 5252-9 (1998))。
本発明の細胞標的化分子は、1つ又は2つ以上の追加の作用物質とコンジュゲートさせてもよく、作用物質としては、本明細書に記載される作用物質を含む、当技術分野で公知の治療剤及び/又は診断剤を挙げることができる。
V.本発明の細胞標的化分子の産生、製造、及び精製
本発明の細胞標的化分子は、当業者に周知の生化学的改変技術を使用して、産生することができる。例えば、本発明の細胞標的化分子及び/又はそのタンパク質成分は、標準的な合成方法によって、組換え発現系の使用によって、又は他のあらゆる好適な方法によって製造することができる。したがって、本発明のある特定の細胞標的化分子及びそのタンパク質成分は、例えば、(1)標準的な固相又は液相手法を使用して、段階的に又は断片のアセンブリのいずれかによって、タンパク質のポリペプチド又はポリペプチド成分を合成し、最終的なポリペプチド又はタンパク質化合物産物を単離及び精製すること;(2)宿主細胞中で本発明の細胞標的化分子のポリペプチド又はポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチドを発現させ、宿主細胞又は宿主細胞培養物から発現産物を回収すること;又は(3)本発明の細胞標的化分子のポリペプチド又はポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチドを無細胞で、インビトロで発現させ、発現産物を回収することを含む方法によって、又は(1)、(2)若しくは(3)の方法のあらゆる組合せを含む、多数の方法によって合成し、ペプチド成分の断片を得て、それに続き断片を合体させて(例えばライゲートして)ペプチド成分を得て、ペプチド成分を回収することができる。例えば、ポリペプチド及び/又はペプチドの成分は、例えば、N,N’-ジシクロヘキシカルボジイミド及びN-エチル-5-フェニル-イソオキサゾリウム-3’-スルホネート(ウッドワード試薬K)などのカップリング試薬を使用して、一緒にライゲーションすることができる。
本発明の細胞標的化分子又は細胞標的化分子のタンパク質性成分を、固相又は液相ペプチド合成を用いて合成することが好ましい場合もある。本発明の細胞標的化分子及びその成分は、標準的な合成方法によって好適に製造することができる。したがって、ペプチドは、例えば、標準的な固相又は液相手法によって、段階的に又は断片のアセンブリのいずれかによってペプチドを合成すること、及び最終的なペプチド産物を単離及び精製することを含む方法によって合成することができる。この文脈において、国際公開第1998/11125号パンフレット、又はとりわけ、Fields G et al., Principles and Practice of Solid-Phase Peptide Synthesis(Synthetic Peptides, Grant G, ed., Oxford University Press, U.K., 2nd ed., 2002)及びそこに記載された合成例を参照することができる。
融合タンパク質である本発明の細胞標的化分子は、当技術分野で周知の組換え技術を使用して調製(産生及び精製)することができる。一般的に、コード化されたポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換された又はトランスフェクトされた宿主細胞を培養して、細胞培養物からタンパク質を回収することによってタンパク質を調製するための方法は、例えば、Sambrook J et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, U.S., 1989); Dieffenbach C et al., PCR Primer: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., U.S., 1995)に記載されている。任意の好適な宿主細胞を、本発明の細胞標的化タンパク質又は本発明の細胞標的化分子のタンパク質性成分の産生に使用することができる。宿主細胞は、本発明の細胞標的化分子及び/又はそのタンパク質成分の発現を駆動させる、1つ又は2つ以上の発現ベクターが安定に若しくは一過的にトランスフェクトされた、形質形質転換された、導入された、又はそれに感染した細胞であり得る。加えて、本発明の細胞標的化分子は、例えば変化した細胞毒性、変化した細胞増殖抑制作用、及び/又は変化した血清中半減期などの所望の特性を達成するために、1つ若しくは2つ以上のアミノ酸の変更又は1つ若しくは2つ以上のアミノ酸の欠失又は挿入を引き起こす本発明の細胞標的化タンパク質又は本発明の細胞標的化分子のタンパク質性成分をコードするポリヌクレオチドの改変によって産生することもできる。
本発明の細胞標的化分子を産生するように選択することができる多種多様の発現系がある。例えば、本発明の細胞標的化タンパク質の発現のための宿主生物としては、原核生物、例えば大腸菌及び枯草菌(B. subtilis)、真核細胞、例えば酵母及び糸状菌(filamentous fungi)(S.セレビジエ(S. cerevisiae)、P.パストリス(P. pastoris)、アワモリコウジカビ(A. awamori)、及びK.ラクティス(K. lactis)など)、藻類(コナミドリムシ(C. reinhardtii)など)、昆虫細胞株、哺乳類細胞(CHO細胞など)、植物細胞株、及び真核生物、例えばトランスジェニック植物(シロイヌナズナ(A. thaliana)及びベンサミアナタバコ(N. benthamiana)など)が挙げられる(例えば、Zarschler K et al., Microbial Cell Factories 12: 97 (2013)を参照)。
したがって、本発明はさらに、上記で列挙された方法に従って、また(i)本発明の分子若しくは本発明の細胞標的化分子のポリペプチド成分の一部若しくはすべてをコードするポリヌクレオチド、(ii)好適な宿主細胞若しくは無細胞発現系に導入される場合、本発明の分子若しくはそのポリペプチド成分の一部若しくはすべてをコードすることができる本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び/又は(iii)本発明のポリヌクレオチド又は発現ベクターを含む宿主細胞を使用して、本発明の細胞標的化分子を産生するための方法も提供する。
組換え技術を使用して宿主細胞又は無細胞系中でタンパク質が発現される場合、高い純度を有するか又は実質的に均一な調製物を得るために、例えば宿主細胞成分などの他の成分から所望のタンパク質を分離すること(又は精製すること)が有利である。精製は、例えば遠心分離技術、抽出技術、クロマトグラフ及び分画技術(例えばゲルろ過によるサイズ分離、汚染物質を除去するための、イオン交換カラム、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、シリカ又は例えばDEAEなどのカチオン交換樹脂でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、及びプロテインAセファロースクロマトグラフィーによる電荷分離)、及び沈殿技術(例えばエタノール沈殿又は硫酸アンモニウム沈殿)などの当業界において周知の方法によって達成することができる。本発明の細胞標的化分子の純度を増加させるために、多数の生化学精製技術を使用することができる。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、ホモ多量体形態(例えば、2つ又は3つ以上の同一な本発明の細胞標的化分子の安定な複合体)又はヘテロ二量体形態(例えば、2つ又は3つ以上の同一でない本発明の細胞標的化分子の安定な複合体)で精製されてもよい。
以下の実施例は、本発明の細胞標的化分子又はそのポリペプチド成分を産生するための方法の非限定的な例、並びに本発明の例示的な細胞標的化分子の産生の具体的ではあるが非限定的な態様の説明である。
VI.本発明の細胞標的化分子を含む医薬品及び診断用組成物
本発明は、以下のさらなる詳細で説明される状態、疾患、障害、又は症状(例えばがん、悪性腫瘍、非悪性腫瘍、増殖異常、免疫障害、及び微生物感染)を治療又は予防するための、単独で、又は医薬組成物中で1つ若しくは2つ以上の追加の治療剤と組み合わせて使用するための、細胞標的化分子を提供する。本発明はさらに、本発明の細胞標的化分子、又は薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和物を、本発明に従って、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤、又はビヒクルと一緒字含む医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、本発明の細胞標的化分子のホモ多量体及び/又はヘテロ多量体の形態を含んでいてもよい。医薬組成物は、以下のさらなる詳細で説明される疾患、状態、障害、又は症状を治療する、緩和する、又は予防する方法において有用であろう。このような疾患、状態、障害、又は症状のそれぞれは、本発明に係る医薬組成物の使用に関して別個の実施形態であることが想定される。本発明はさらに、以下でより詳細に説明される本発明に係る少なくとも1つの治療方法で使用するための医薬組成物を提供する。
用語「患者」及び「対象」は、本明細書で使用される場合、同義的に使用され、少なくとも1つの疾患、障害、又は状態の症状、徴候、及び/又は兆しを呈する、あらゆる生物、一般的には脊椎動物、例えばヒト及び動物などを指す。これらの用語は、哺乳動物、例えば非限定的な例として霊長類、家畜動物(例えばウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、コンパニオンアニマル(例えばネコ、イヌなど)及び実験動物(例えばマウス、ウサギ、ラットなど)を含む。
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」及びその文法上の変化形は、有益な又は所望の臨床結果を得るためのアプローチを指す。この用語は、状態、障害若しくは疾患の発症若しくは進行速度を遅延させること、それに関連する症状を低減若しくは軽減すること、状態の完全若しくは部分寛解をもたらすこと、又は上記したもののいずれかのいくつかの組合せを指す場合もある。本発明の目的に関して、有益な又は所望の臨床結果としては、これらに限定されないが、検出可能か又は検出不可能かにかかわらず、症状の低減又は軽減、疾患の程度の減縮、疾患の状態の安定化(例えば悪化させないこと)、疾患の進行の遅延又は減速、病状の緩和又は一時的緩和、及び緩解(部分的か又は総合的かにかかわらず)が挙げられる。「治療する」、「治療すること」、又は「治療」はまた、治療を受けない場合に予測される生存期間に対して生存を延長することを意味する場合もある。したがって治療が必要な対象(例えばヒト)は、すでに問題の疾患又は障害に罹患している対象であってもよい。用語「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、治療がなされない場合と比較した、病理学的な状態又は症状の重症度の増加の阻害又は低減を含み、関連する疾患、障害、又は状態の完全な停止を伴うことを必ずしも意味しない。腫瘍及び/又はがんに関して、治療は、全体的な腫瘍負荷量及び/又は個々の腫瘍サイズの低減を含む。
本明細書で使用される場合、用語「予防する」、「予防すること」、「予防」及びその文法上の変化形は、状態、疾患、障害の発症を予防するための、又は状態、疾患、若しくは障害の病状を変更するためのアプローチを指す。したがって、「予防」は、防止措置又は予防措置を指す場合もある。本発明の目的に関して、有益な又は所望の臨床結果としては、これらに限定されないが、検出可能か又は検出不可能かにかかわらず、疾患の症状、進行又は発症の予防又は減速が挙げられる。したがって予防が必要な対象(例えばヒト)は、まだ問題の疾患又は障害に罹患していない対象であってもよい。用語「予防」は、治療がなされない場合と比較して疾患の発症を減速することを含み、関連する疾患、障害又は状態の永続的な予防を伴うことを必ずしも意味しない。したがって状態を「予防すること」又はその「予防」は、ある特定の文脈において、その状態を発症するリスクを低減すること、又はその状態に関連する症状の発症を予防すること若しくは遅延させることを指す場合がある。
「有効量」又は「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、対象において少なくとも1つの所望の治療作用、例えば標的とする状態の予防若しくは治療、又は有利には状態に関連する症状の軽減をもたらす組成物(例えば治療用組成物、又は薬剤)の量又は用量である。最も望ましい治療有効量は、それらを必要とする所与の対象ごとの、当業者によって選択される特定の治療の望ましい効能をもたらすと予想される量である。この量は、熟練した作業者によって理解される様々な要因に応じて様々であると予想され、このような要因としては、これらに限定されないが、治療用化合物(活性、薬物動態学、薬力学、及び生物学的利用率など)の特徴、対象の生理学的な状態(年齢、性別、疾患のタイプ、疾患の段階、全身の状態、与えられた投薬量に対する応答性、及び薬物療法のタイプなど)、調合物中の薬学的に許容される1つ又は複数の担体の性質、及び投与経路が挙げられる。臨床及び薬理学分野における熟練者は、慣例的な実験を介して、すなわち化合物の投与に対する対象の応答をモニターすること、及びそれに応じて投薬量を調整することによって、治療有効量を決定することができよう(例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro A, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, U.S., 19th ed., 1995)を参照)。
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含んでいてもよい。薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例としては、アルギニン、アルギニンスルフェート、クエン酸、グリセロール、塩酸、マンニトール、メチオニン、ポリソルベート、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、ソルビトール、スクロース、トレハロース、及び/又は水が挙げられる。ある特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、水性担体及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む。ある特定の他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、塩及び/又は粉末、例えば、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、フリーズドライ、凍結乾燥、乾燥、及び/又は低温乾燥させた組成物などを含む。本発明の医薬組成物のある特定の実施形態において、賦形剤は、例えば、哺乳動物に投与した後及び/又は反復投与した後などに、細胞標的化分子の免疫原性及び/又は免疫原性能力を低減及び/又は制限するように機能する。
本発明の医薬組成物は、1つ又は2つ以上のアジュバント、例えば、緩衝剤、張度調節剤(等張剤)、抗酸化剤、界面活性剤、安定剤、保存剤、乳化剤、低温保護剤、湿潤剤、及び/又は分散剤、又は当業者に周知の他の添加剤、例えば、結合剤などを含み得る。ある特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、水性担体及び薬学的に許容されるアジュバント若しくは他の添加剤を含む。ある特定の他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、塩及び/又は粉末、例えば、薬学的に許容されるアジュバント又は他の添加剤を含む、フリーズドライ、凍結乾燥、乾燥、及び/又は低温乾燥させた組成物などを含む。薬学的に適切な安定剤の非限定的な例としては、ヒトアルブミン、並びにポリソルベート、例えば、ポリオキシエチレン(20)モノラウリン酸ソルビタン(ポリソルベート20)、ポリオキシエチレン(20)モノパルミチン酸ソルビタン(ポリソルベート40)、ポリオキシエチレン(20)モノステアリン酸ソルビタン(ポリソルベート60)、及び(ポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタン(ポリソルベート80)などが挙げられる。
本発明の医薬組成物は、1つ又は2つ以上の薬学的に許容される緩衝剤を含み得る。適切な緩衝剤の非限定的な例としては、酢酸塩、クエン酸塩、クエン酸、ヒスチジン、リン酸塩、クエン酸ナトリウム、及びコハク酸塩の緩衝剤が挙げられる。ある特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される緩衝剤を含む水性担体を含む。ある特定の他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、塩及び/又は粉末、例えば、薬学的に許容される緩衝剤を含む、フリーズドライ、凍結乾燥、乾燥、及び/又は低温乾燥させた組成物などを含む。
本発明の医薬組成物は、1つ又は2つ以上の薬学的に許容される等張剤又は張度調節剤を含み得る。適切な等張剤の非限定的な例としては、糖(例えば、デキストロース)、糖アルコール、塩化ナトリウムなどが挙げられる。適切な糖のさらなる例としては、スクロース及びトレハロースなどの二糖類が挙げられる。例示的な薬学的に許容される糖アルコールとしては、グリセロール、マンニトール、及びソルビトールが挙げられる。ある特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、水性担体及び薬学的に許容される等張剤を含む。ある特定の他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、塩及び/又は粉末、例えば、薬学的に許容される等張剤を含む、フリーズドライ、凍結乾燥、乾燥、及び/又は低温乾燥させた組成物などを含む。
本発明の医薬組成物は、1つ又は2つ以上の薬学的に許容される抗酸化剤を含み得る。例示的な薬学的に許容される抗酸化剤としては、水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、メチオニン、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA,butylated hydroxyanisole)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT,butylated hydroxytoluene)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;及び金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA,ethylenediamine tetraacetic acid)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。ある特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、水性担体及び薬学的に許容される抗酸化剤を含む。ある特定の他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、塩及び/又は粉末、例えば、薬学的に許容される抗酸化剤を含む、フリーズドライ、凍結乾燥、乾燥、及び/又は低温乾燥させた組成物などを含む。
本発明の医薬組成物は、1つ又は2つ以上の薬学的に許容される界面活性剤及び/又は乳化剤(emulsifying agent)(乳化剤(emulsifier))を含み得る。適切な界面活性剤及び/又は乳化剤の非限定的な例としては、ポリソルベート、例えば、ポリオキシエチレン(20)モノラウリン酸ソルビタン(ポリソルベート20)、ポリオキシエチレン(20)モノパルミチン酸ソルビタン(ポリソルベート40)、ポリオキシエチレン(20)モノステアリン酸ソルビタン(ポリソルベート60)、及び(ポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタン(ポリソルベート80)などが挙げられる。ある特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、水性担体並びに薬学的に許容される界面活性剤及び/又は乳化剤を含む。ある特定の他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、塩及び/又は粉末、例えば、薬学的に許容される界面活性剤及び/又は乳化剤を含む、フリーズドライ、凍結乾燥、乾燥、及び/又は低温乾燥させた組成物などを含む。1つ又は2つ以上の界面活性剤及び/又は乳化剤はまた、本発明の医薬組成物において、本発明の細胞標的化分子の凝集の予防を補助するのに望ましい場合がある。本発明の医薬組成物は、1つ又は2つ以上の薬学的に許容される保存剤を含み得る。例えば、微生物の存在の予防は、滅菌手順、並びに本発明の組成物中に様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを包含することの両方によって確実にすることができる。
本発明の医薬組成物は、1つ又は2つ以上の薬学的に許容される、低温保護剤(cryoprotectant)又は低温保護剤(cryogenic protectant)とも称される、低温保護剤(cryoprotective agent)を含み得る。適切な低温保護剤の非限定的な例としては、エチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、スクロース、及びトレハロースが挙げられる。ある特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、水性担体及び薬学的に許容される低温保護剤を含む。ある特定の他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、塩及び/又は粉末、例えば、薬学的に許容される低温保護剤を含む、フリーズドライ、凍結乾燥、乾燥、及び/又は低温乾燥させた組成物などを含む。
加えて、注射用医薬形態の持続吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩、モノステアリン酸アルミニウム、及び/又はゼラチンなどの包含によってもたらされる可能性がある。
別の態様において、本発明は、本発明の異なるポリペプチド及び/若しくは細胞標的化分子、又は前述の物質のいずれかのエステル、塩、若しくはアミドの1つ又は組合せ、並びに少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。
本発明の医薬組成物のpHは、酸若しくは塩基、例えば、塩酸若しくは水酸化ナトリウム、又は酢酸塩、クエン酸塩、クエン酸、ヒスチジン、クエン酸ナトリウム、コハク酸塩、リン酸塩などを含む緩衝剤を用いて、調整することができる。本発明の医薬組成物において使用するための薬学的に許容される溶媒又は担体の非限定的な例としては、本発明の細胞標的化分子を含む水溶液、並びに緩衝剤、例えば、クエン酸塩、ヒスチジン、リン酸塩、若しくはコハク酸塩などでそれぞれpH5.0、6.0、7.0、若しくは4.0に調節されたものが挙げられる。本発明のある特定の実施形態には、本発明の前述の溶媒及び/又は担体のうちの1つを含む組成物が含まれる。
皮内又は皮下適用に使用される溶液又は懸濁液である本発明の医薬組成物は、典型的には、滅菌希釈剤、例えば、注射用水、塩類溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒;抗細菌剤、例えば、ベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、メチオニン、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、及びリン酸;界面活性剤、例えば、ポリソルベート;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、及びリン酸塩の緩衝剤;並びに張度調節剤、例えば、デキストロース、グリセロール、マンニトール、塩化ナトリウム、ソルビトール、スクロース、及びトレハロースなどのうちの1つ又は2つ以上を含む。このような調製物は、ガラス又はプラスチックで作製された、アンプル、使い捨てのシリンジ、又は複数回投与用のバイアル中に封入されていてもよい。
滅菌注射用溶液は、上述した成分の1つ又は組合せを含む適切な溶媒中に本発明のタンパク質又は細胞標的化分子を必要な量で取り込むこと、必要に応じて、それに続き滅菌精密ろ過することによって調製することができる。分散液は、分散媒及び他の成分、例えば、上述したものを含有する、滅菌ビヒクルに活性化合物を取り込むことによって調製することができる。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末のケースにおいて、調製方法は、それらの滅菌ろ過した溶液からあらゆる追加の所望の成分に加えて活性成分の粉末を生じさせる真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。ある特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、ソルビトール、トレハロース、クエン酸ナトリウム、及びポリソルベート-20を含む粉末を含み、グリセロール及び/又はメチオニンをさらに含んでいてもよい。ある特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、クエン酸ナトリウム、トレハロース、及びポリソルベート-20を含み、グリセロール及び/又はメチオニンをさらに含んでいてもよい。
ある特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、ソルビトール、クエン酸ナトリウム、及びポリソルベート-20を含み、アルブミン、グリセロール、及び/又はメチオニンをさらに含んでいてもよい。ある特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、ソルビトール、ヒスチジン、及びポリソルベート-20を含み、アルブミン、グリセロール、及び/又はメチオニンをさらに含んでいてもよい。
本発明の医薬組成物の調合物は、都合のよい形態として単位剤形で提供してもよいし、薬学分野において周知の方法のいずれかによって調製してもよい。このような形態において、組成物は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に分割される。単位剤形は、パッケージ化された調製物であってもよく、パッケージは、個別の量の調製物、例えば、バイアル又はアンプル中に個包装された錠剤、カプセル剤、及び粉末剤を含有する。単位剤形はまた、カプセル剤、カシェ剤、又は錠剤それ自体であってもよいし、又は適切な数のこれらのパッケージ化された形態のいずれかであってもよい。単位剤形は、単回用量の注射可能な形態で、例えば、ペンの形態で提供されてもよい。組成物は、あらゆる適切な投与の経路及び手段のために製剤化されていてもよい。本明細書に記載される医薬組成物及び治療用分子にとっては、皮下又は経皮の投与様式が、特に適切であり得る。
治療用組成物は、典型的には滅菌されており、製造及び貯蔵条件下で安定である。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高い薬物濃度に好適な他の秩序だった構造として製剤化されてもよい。担体は、例えば、水、アルコール、例えばエタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、又はあらゆる好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であり得る。適した流動性は、例えば、当業界において周知の製剤化学に従い、例えばレシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液のケースでは必要な粒度の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。ある特定の実施形態において、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトールなど、又は塩化ナトリウムが組成物において望ましい場合がある。注射用組成物の持続吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物に包含させることによってもたらされる可能性がある。
皮内又は皮下適用に使用される溶液又は懸濁液は、典型的には、滅菌希釈剤、例えば、注射用水、塩類溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒;抗細菌剤、例えば、ベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩;並びに張度調節剤、例えば、塩化ナトリウム又はデキストロースなどのうちの1つ又は2つ以上を含む。pHは、酸若しくは塩基、例えば、塩酸若しくは水酸化ナトリウム、又はクエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩などを含む緩衝剤を用いて、調整することができる。このような調製物は、ガラス又はプラスチックで作製された、アンプル、使い捨てのシリンジ、又は複数回投与用のバイアル中に封入されていてもよい。
滅菌注射用溶液は、上述した成分の1つ又は組合せを含む適切な溶媒中に本発明の細胞標的化分子を必要な量で取り込むこと、必要に応じて、それに続き滅菌精密ろ過することによって調製することができる。分散液は、分散媒及び他の成分、例えば、上述したものを含有する、滅菌ビヒクルに活性化合物を取り込むことによって調製することができる。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末のケースにおいて、調製方法は、それらの滅菌ろ過した溶液からあらゆる追加の所望の成分に加えて活性成分の粉末を生じさせる真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。
本発明の細胞標的化分子の治療有効量を、例えば、静脈内、皮膚、又は皮下注射によって投与されるように設計する場合、結合剤は、パイロジェンフリーの非経口的に許容できる水溶液の形態であろう。適切なpH、等張性、安定性などを考慮した、非経口的に許容できるタンパク質溶液を調製するための方法は、当業界における能力の範囲内である。静脈内、皮膚、又は皮下注射にとって好ましい医薬組成物は、結合剤に加えて、等張ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、デキストロース注射、デキストロース及び塩化ナトリウム注射、乳酸リンゲル注射用のビヒクル、又は当業界で公知の他のビヒクルを含有するであろう。本発明の医薬組成物はまた、当業者に周知の安定剤、保存剤、緩衝剤、抗酸化剤、又は他の添加剤を含有していてもよい。
本明細書の他所で説明されるように、本発明の細胞標的化分子又はその組成物(例えば、医薬組成物又は診断用組成物)は、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化した送達系を含む、制御放出製剤など、急速な放出から本発明の細胞標的化分子を保護する担体を用いて調製され得る。生分解性生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を使用することができる。このような調合物を調製するための多くの方法は、特許化されているか又は一般的に当業者に公知である(例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems (Robinson J, ed., Marcel Dekker, Inc., NY, U.S., 1978を参照)。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物(例えば医薬組成物又は診断用組成物)は、インビボにおける所望の分配を確実にするように製剤化することができる。例えば、血液脳関門は、多くの大きい及び/又は親水性化合物を排除する。特定のインビボにおける位置に本発明の治療的分子又は組成物を標的化するために、これを、例えば、特定の細胞又は器官に選択的に輸送される1つ又は2つ以上の部分を含み得るリポソーム中に製剤化することができ、それによって、標的化された薬物送達が強化される。例示的な標的化部分としては、葉酸塩又はビオチン;マンノシド;抗体;サーファクタントプロテインA受容体;p120カテニンなどが挙げられる。
医薬組成物は、インプラント又は微粒子系として使用されるように設計された非経口調合物を含む。インプラントの例は、例えば、エマルジョン、イオン交換樹脂、及び可溶性塩溶液などの高分子又は疎水性成分で構成されるデポ製剤である。微粒子系の例は、マイクロスフェア、マイクロ粒子、ナノカプセル、ナノスフェア、及びナノ粒子である。制御放出製剤は、イオンに感受性を有するポリマー、例えば、リポソーム、ポロキサマー(polaxamer)407、及びヒドロキシアパタイトなどを使用して調製されてもよい。
本発明の医薬組成物は、産生される組成物が、エマルジョン、リポソーム、ニオソーム、ポリマーナノ粒子、及び/又は固体脂質ナノ粒子(SLN)を含むように、当業界で公知の技術を使用して産生することができる(例えば、Lakshmi P et al., Venereal Leprol 73: 157-161 (2007);A Revolution in Dosage Form Design and Development, Recent Advances in Novel Drug Carrier Systems (Sezer A, ed., InTech, 2012)を参照)。
本発明の診断用組成物は、本発明の細胞標的化分子及び1つ又は2つ以上の検出促進剤を含む。同位体、色素、比色剤、コントラスト増強剤、蛍光剤、生物発光剤、及び磁気性の物質などの様々な検出促進剤が、当技術分野で公知である。これらの薬剤は、必要とされる機能的活性が保持される限り、任意の適切な位置で、本発明の細胞標的化分子に取り込まれていてもよい。例えば、検出促進剤の連結又は取り込みは、本発明の細胞標的化分子のアミノ酸残基を介するものであってもよく、又はリンカー及び/若しくはキレート化剤を介するものを含め、当業界において公知のいくつかのタイプの連結を介するものであってもよい。本発明の診断用組成物中の結合促進剤と細胞標的化分子との会合は、スクリーニング、アッセイ、診断手順、及び/又は撮像技術において、細胞標的化分子の存在、及び/又は細胞標的化分子が内在化された後のその標的細胞の検出を可能にするような方式である。
情報収集方法のための、例えば生物の疾患、障害、又は状態に対する診断及び/又は予後予測用途などのための、本発明の細胞標的化分子に機能するように関連、又は連結できる、熟練した作業者公知の多数の検出促進剤がある。例えば、検出促進剤としては、蛍光色素(例えば、Alexa680、インドシアニングリーン、及びCy5.5)などのイメージ増強コントラスト剤、11C、13N、15O、18F、32P、51Mn、52mMn、52Fe、55Co、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、72As、73Se、75Br、76Br、82mRb、83Sr、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、110In、111In、120I、123I、124I、125I、131I、154Gd、155Gd、156Gd、157Gd、158Gd、177Lu、186Re、188Re、及び223Rなどの同位体及び放射性核種;クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジウム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、又はエルビウム(III)などの常磁性イオン;ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、及びビスマス(III)などの金属;リポソームなどの超音波コントラスト増強剤;バリウム、ガリウム、及びタリウム化合物などの放射線不透過性物質が挙げられる。検出促進剤は、中間官能基、例えば、2-ベンジルDTPA、PAMAM、NOTA、DOTA、TETA、それらのアナログなどのキレート化剤、及び前述のもののいずれかの機能的等価物を使用して、直接的又は間接的に取り込まれ得る。
その技術分野において、熟練した作業者に公知の多数のイメージングアプローチ、例えば、医療の場で一般的に使用される非侵襲的なインビボのイメージング技術、例えばコンピュータ断層撮影イメージング(CTスキャニング)、光学的イメージング(直接、蛍光、及び生物発光イメージングを含む)、磁気共鳴イメージング(MRI,magnetic resonance imaging)、ポジトロンエミッショントモグラフィー(PET,positron emission tomography)、単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT,single-photon emission computed tomography)、超音波、及びX線コンピュータ断層撮影イメージングなどがある。
成句「診断上十分な量」は、利用される特定のアッセイ又は診断技術による情報収集目的にとって十分な検出及び正確な測定をもたらす量を指す。一般的に、生物全体のインビボにおける診断的使用での診断上十分な量は、対象ごとに対象1キログラム(kg)当たり0.001mg~1mg(mg/kg)の非累積用量の、細胞標的化分子に連結された検出促進剤であろう。しかしながら、生物全体のインビボにおける診断的使用での診断上十分な量は、対象ごとに対象1キログラム(kg)当たり0.0001mg~10mg(mg/kg)の非累積用量の、細胞標的化分子に連結された検出促進剤であってもよい。典型的には、これらの情報収集方法で使用される本発明の細胞標的化分子の量は、可能な限り低いものであるが、ただし、依然として診断上十分な量であることを条件とする。例えば、インビボにおける生物中での検出の場合、対象に投与される本発明の細胞標的化分子又は診断用組成物の量は、実現可能な限り低いであろう。
VII.本発明の細胞標的化分子を含む医薬品及び/又は診断用組成物の産生又は製造
本発明の細胞標的化分子のいずれかの薬学的に許容される塩又は溶媒和物は、同様に本発明の範囲内である。
用語「溶媒和物」は、本発明の文脈において、溶質(この場合、本発明に係る細胞標的化分子又はそれらの薬学的に許容される塩)と溶媒とで形成される規定の化学量論の複合体を指す。この文脈において溶媒は、例えば、水、エタノール、又は別の薬学的に許容される、典型的には低分子の有機化学種、例えば、これらに限定されないが、酢酸又は乳酸であってもよい。問題の溶媒が水である場合、このような溶媒和物は通常、水和物と称される。
本発明の細胞標的化分子、又はそれらの塩は、貯蔵又は投与のために調製された医薬組成物として製剤化してもよく、医薬組成物は、典型的には、薬学的に許容される担体中に本発明の化合物又はそれらの塩の治療有効量を含む。用語「薬学的に許容される担体」は、標準的な製剤用担体のいずれかを含む。治療的用途のための薬学的に許容される担体は薬学分野において周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co. (A. Gennaro, ed., 1985))で説明されている。「薬学的に許容される担体」は、本明細書で使用される場合、ありとあらゆる生理学的に許容できる、すなわち適合性の、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗微生物剤、等張剤、及び吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される担体又は希釈剤としては、経口、直腸、経鼻又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、及び経皮を含む)投与に好適な調合物で使用されるものが挙げられる。例示的な薬学的に許容される担体としては、滅菌注射用溶液又は分散液の即時調製のための、滅菌水溶液又は分散液及び滅菌粉末が挙げられる。本発明の医薬組成物で採用される可能性がある好適な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物、植物油、例えばオリーブ油、並びに注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルが挙げられる。適した流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液のケースでは必要な粒度の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。ある特定の実施形態において、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば注射又は注入による)に好適である。選択される投与経路に応じて、低いpHや特定の投与経路で患者に投与した場合に活性なタンパク質が遭遇する可能性がある他の自然の不活性化条件の作用から化合物を保護することを意図した材料で、タンパク質又は他の医薬品成分をコーティングしてもよい。
本発明の医薬組成物の調合物は、都合のよい形態として単位剤形で提供してもよいし、薬学分野において周知の方法のいずれかによって調製してもよい。このような形態において、組成物は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に分割される。単位剤形は、パッケージ化された調製物であってもよく、パッケージは、個別の量の調製物、例えば、バイアル又はアンプル中に個包装された錠剤、カプセル剤、及び粉末剤を含有する。単位剤形はまた、カプセル剤、カシェ剤、又は錠剤それ自身であってもよいし、又は適切な数のこれらのパッケージ化された形態のいずれかであってもよい。単位剤形は、単回用量の注射可能な形態で、例えばペンの形態で提供されてもよい。組成物は、あらゆる好適な投与の経路及び手段のために製剤化されていてもよい。本明細書に記載される医薬組成物及び治療用分子にとっては、皮下又は経皮の投与様式が特に好適であり得る。
本発明の医薬組成物はまた、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバントを含有していてもよい。微生物の存在の予防は、滅菌手順と、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの包含の両方によって確実にすることができる。また、組成物への例えば糖、塩化ナトリウムなどなどの等張剤も望ましい場合がある。加えて、注射用医薬形態の持続吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤の包含によってもたらされる可能性がある。
本発明の医薬組成物はまた、薬学的に許容される抗酸化剤を含んでいてもよい。例示的な薬学的に許容される抗酸化剤は、水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;油溶性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA,butylated hydroxyanisole)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT,butylated hydroxytoluene)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;及び金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA,ethylenediamine tetraacetic acid)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などである。
別の態様において、本発明は、本発明の異なる細胞標的化分子、又は前述の物質のいずれかのエステル、塩若しくはアミドの1つ又は組合せ、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
治療用組成物は、典型的には滅菌されており、製造及び保管の条件下において安定である。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高い薬物濃度に好適な他の秩序だった構造として製剤化されてもよい。担体は、例えば、水、アルコール、例えば、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、又はあらゆる適切な混合物を含有する溶媒又は分散媒であり得る。適した流動性は、例えば、当業界において周知の製剤化学に従い、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液のケースでは必要な粒度の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。ある特定の実施形態において、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムが、組成物において望ましい場合がある。注射用組成物の持続吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物に包含させることによってもたらされる可能性がある。
皮内又は皮下適用に使用される溶液又は懸濁液は、典型的には、滅菌希釈剤、例えば注射用水、塩類溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒など;抗細菌剤、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベンなど;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムなど;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸など;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩など;及び張度調節剤、例えば、塩化ナトリウム又はデキストロースなどの1つ又は2つ以上を含む。pHは、例えば塩酸若しくは水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基、又はクエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩などを含む緩衝剤で調整することができる。このような調製物は、ガラス又はプラスチックで作製された、アンプル、使い捨てのシリンジ又は複数回投与用のバイアル中に封入されていてもよい。
滅菌注射用溶液は、上述した成分の1つ又は組合せを含む適切な溶媒中に本発明の細胞標的化分子を必要な量で取り込むこと、必要に応じて、それに続き滅菌精密ろ過することによって調製することができる。分散液は、分散媒及び例えば上述したものなどの他の成分を含有する滅菌ビヒクルに活性化合物を取り込むことによって調製することができる。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末のケースにおいて、調製方法は、それらの滅菌ろ過した溶液からあらゆる追加の所望の成分に加えて活性成分の粉末を生じさせる真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。
本発明の細胞標的化分子の治療有効量を、例えば静脈内、皮膚又は皮下注射によって投与されるように設計する場合、結合剤は、パイロジェンフリーの非経口的に許容できる水溶液の形態であろう。適切なpH、等張性、安定性などを考慮した、非経口的に許容できるタンパク質溶液を調製するための方法は、当業界における能力の範囲内である。静脈内、皮膚、又は皮下注射にとって好ましい医薬組成物は、結合剤に加えて、等張ビヒクル、例えば塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、デキストロース注射、デキストロース及び塩化ナトリウム注射、乳酸リンゲル注射用のビヒクル、又は当業界で公知の別のビヒクルを含有するであろう。本発明の医薬組成物はまた、当業者周知の安定剤、保存剤、緩衝剤、抗酸化剤、又は他の添加剤を含有していてもよい。
本明細書の他所で説明されるように、本発明の細胞標的化分子又は組成物(例えば、医薬組成物又は診断用組成物)は、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化した送達系を含む、制御放出製剤など、急速な放出から細胞標的化分子を保護する担体を用いて調製され得る。生分解性生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などが使用されてもよい。このような調合物を調製するための多くの方法は、特許化されているか又は一般的に当業者公知である(例えばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems (Robinson J, ed., Marcel Dekker, Inc., NY, U.S., 1978)を参照)。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物(例えば医薬又は診断用組成物)は、インビボにおける所望の分配を確実にするように製剤化することができる。例えば、血液脳関門は、多くの大きい及び/又は親水性化合物を排除する。特定のインビボにおける位置に本発明の治療的細胞標的化分子又は組成物を標的化するために、それは、例えば、特定の細胞又は臓器に選択的に輸送される1つ又は2つ以上の部分を含み得るリポソーム中に製剤化されてもよく、そのようにして標的化された薬物送達が強化される。例示的な標的部分としては、葉酸塩又はビオチン;マンノシド;抗体;サーファクタントプロテインA受容体;p120カテニンなどが挙げられる。
医薬組成物は、インプラント又は微粒子系として使用されるように設計された非経口調合物を含む。インプラントの例は、例えばエマルジョン、イオン交換樹脂、及び可溶性塩溶液などの高分子又は疎水性成分で構成されるデポ製剤である。微粒子系の例は、マイクロスフェア、微粒子、ナノカプセル、ナノスフェア、及びナノ粒子である(例えばHonda M et al., Int J Nanomedicine 8:495-503 (2013);Sharma A et al., Biomed Res Int 2013:960821 (2013);Ramishetti S, Huang L, Ther Deliv 3:1429-45 (2012)を参照)。放出制御製剤は、イオンに感受性を有するポリマー、例えばリポソーム、ポロキサマー(polaxamer)407、及びヒドロキシアパタイトなどを使用して調製されてもよい。
VII.本発明のポリヌクレオチド、発現ベクター、及び宿主細胞
本発明の細胞標的化分子及びそれらのポリペプチド成分の他にも、本発明のポリペプチド及び細胞標的化分子、又はそれらの機能的部分をコードするポリヌクレオチドも本発明の範囲内に包含される。用語「ポリヌクレオチド」は、用語「核酸」と同等であり、これらのそれぞれは、デオキシリボ核酸(DNA)のポリマー、リボ核酸(RNA)のポリマー、ヌクレオチドアナログを使用して生成されたこれらのDNA又はRNAのアナログ、並びにそれらの派生物、断片及びホモログの1つ又は2つ以上を含む。本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖、二本鎖、又は三本鎖であり得る。このようなポリヌクレオチドは、例えば、RNAコドンの3番目の位置で許容されることがわかっているゆらぎを考慮に入れた、それでもなお異なるRNAコドンと同じアミノ酸をコードする例示的なタンパク質をコードすることができるすべてのポリヌクレオチドを含むことが具体的に開示されている(Stothard P, Biotechniques 28:1102-4 (2000)を参照)。
一態様において、本発明は、本発明の細胞標的化分子(例えば、融合タンパク質)、又はそのポリペプチド断片若しくは派生物をコードする、ポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドとしては、例えば、タンパク質のアミノ酸配列のうちの1つを含むポリペプチドに、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又はそれ以上の同一性のポリペプチドをコードする核酸配列を挙げることができる。本発明はまた、本発明の細胞標的化分子、又はそれらのポリペプチド断片若しくは派生物、又はあらゆるこのような配列のアンチセンス若しくは相補物をコードするポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドも含む。
本発明の細胞標的化分子の派生物又はアナログとしては、とりわけ、例えば、同じサイズのポリヌクレオチド若しくはポリペプチド配列に対して、又はアライメントが当技術分野で公知のコンピュータ相同性プログラムによって行われたアライメント配列と比較した場合に、少なくとも約45%、50%、70%、80%、95%、98%、又はさらには99%の同一性(好ましい同一性は80~99%)で、本発明のポリヌクレオチド、細胞標的化分子、又は細胞標的化分子のポリペプチド成分に実質的に相同な領域を有するポリヌクレオチド(又はポリペプチド)分子が挙げられる。例示的なプログラムは、Smith T, Waterman M, Adv Appl Math 2:482-9 (1981)のアルゴリズムを使用するデフォルト設定を使用した、GAPプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、UNIX用バージョン8、Genetics Computer Group、University Research Park、Madison、WI、U.S.)である。また、本発明の細胞標的化分子をコードする配列の相補物を、ストリンジェントな条件下(例えばAusubel F et al., Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, New York, NY, U.S., 1993)を参照)及びそれより低い条件下でハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドも包含される。ストリンジェントな条件は当業者公知であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons, NY, U.S., Ch. Sec. 6.3.1-6.3.6 (1989))で見出すことができる。
本発明はさらに、本発明の範囲内のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。本発明の細胞標的化分子、又はそのポリペプチド成分をコードすることができるポリヌクレオチドは、発現ベクターを産生するための当業界において周知の材料及び方法を使用して、細菌プラスミド、ウイルスベクター及びファージベクターを含む公知のベクターに挿入されてもよい。このような発現ベクターは、あらゆる最適な宿主細胞又は無細胞発現系(例えばpTxb1及びpIVEX2.3)中で予期される本発明の細胞標的化分子の産生を維持するのに必要なポリヌクレオチドを含むであろう。具体的なタイプの宿主細胞又は無細胞発現系と共に使用するための発現ベクターを含む具体的なポリヌクレオチドは、当業者周知であり、慣例的な実験を使用して決定してもよいし、又は購入してもよい。
用語「発現ベクター」は、本明細書で使用される場合、直鎖状又は環状の、1つ又は2つ以上の発現ユニットを含むポリヌクレオチドを指す。用語「発現ユニット」は、所望のポリペプチドをコードし、宿主細胞における核酸セグメントの発現をもたらすことができるポリヌクレオチドセグメントを示す。発現ユニットは、典型的には、転写プロモーター、所望のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム、及び転写ターミネーターをすべて機能するような立体位置で含む。発現ベクターは、1つ又は2つ以上の発現ユニットを含有する。したがって、本発明の文脈において、本発明の細胞標的化分子(例えば、T細胞エピトープ-ペプチドに融合した志賀毒素エフェクターポリペプチドを用いて遺伝子組換えしたscFv)をコードする発現ベクターは、単一のポリペプチド鎖につき少なくとも1つの発現ユニットを含むが、一方で、例えば、2つ又は3つ以上のポリペプチド鎖を含むタンパク質(例えば、1つの鎖がVLドメインを含み、第2の鎖が毒素エフェクター領域に連結されたVHドメインを含む)は、少なくとも2つの発現ユニットを含み、すなわちタンパク質の2つのポリペプチド鎖のそれぞれにつき1つの発現ユニットを含む。本発明の多連鎖の細胞標的化タンパク質の発現のために、各ポリペプチド鎖の発現ユニットは、異なる発現ベクターに別々に含有されていてもよい(例えば発現は、各ポリペプチド鎖の発現ベクターが導入された単一の宿主細胞で達成することができる)。
ポリペプチド及びタンパク質の一過性の又は安定な発現を指示することが可能な発現ベクターは当業界において周知である。発現ベクターとしては、一般的に、これらに限定されないが、異種シグナル配列又はペプチド、複製起点、1つ又は2つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列の1つ又は2つ以上が挙げられ、これらのそれぞれは当業界において周知である。採用可能な任意選択の調節制御配列、統合配列、及び有用なマーカーが当業界において公知である。
無細胞系を使用して、本発明の細胞標的化分子を産生することができる(例えば、Jaing X et al., FEBS Lett 514: 290-4 (2002);Kawasaki T et al., Eur J Biochem 270: 4780-6 (2003);Ali M et al., J Biosci Bioeng 99: 181-6 (2005);Galeffi P et al., J Transl Med 4: 39 (2006);Han Y et al., Biotechnol Prog 22: 1084-9 (2006);Schenk J et al., Biochimie 89: 1304-11 (2007);Oh I et al., Bioproc Biosyst Eng 33 127-32 (2010);Merk H et al., BioTechniques 53: 153-60 (2012);Stech M et al., J Biotechnol 164: 220-31 (2012);Yin G et al., mAbs 4: 217-25 (2012);Groff D et al., mAbs 6: 671-8 (2014);Stech M et al., Eng Life Sci 14: 387-98 (2014);Stech M, Kubick S, Antibodies 4: 12-33 (2015);Thoring L et al., Sci Rep 7: 11710 (2017);Stech M et al., Sci Rep 7: 12030 (2017)を参照)。
用語「宿主細胞」は、発現ベクターの複製又は発現を維持することができる細胞を指す。宿主細胞は、原核細胞、例えば大腸菌又は真核細胞(例えば酵母、昆虫、両生類、鳥類、又は哺乳動物細胞)であり得る。本発明のポリヌクレオチドを含む、又は本発明の細胞標的化分子、又はそのポリペプチド成分を産生することが可能な宿主細胞株の生成及び単離は、当業界において公知の標準的な技術を使用して達成することができる。
本発明の範囲内の細胞標的化分子は、本明細書に記載されるポリペプチド及びタンパク質のバリアント又は派生物であってもよく、これらは、例えば宿主細胞によるより最適な発現などの所望の特性を達成するのにそれをより好適にすることができる1つ又は2つ以上のアミノ酸の変更、又は1つ又は2つ以上のアミノ酸の欠失若しくは挿入によって、ポリペプチド及び/又はタンパク質をコードするポリヌクレオチドを改変することによって産生される。
IX.送達デバイス及びキット
ある特定の実施形態において、本発明は、それらを必要とする対象に送達するための、例えば医薬組成物などの1つ又は2つ以上の本発明の物質の組成物を含むデバイスに関する。したがって、本発明の1つ又は2つ以上の化合物を含む送達デバイスは、静脈内、皮下、筋肉内又は腹膜内注射;経口投与;経皮投与;経肺又は経粘膜投与;インプラント、浸透圧ポンプ、カートリッジ又はマイクロポンプによる投与を含む様々な送達方法によって、又は当業者によって認識されている他の手段によって、本発明の物質の組成物を患者に投与するのに使用することができる。
また、少なくとも1つの本発明の物質の組成物、並びに任意選択でパッケージ及び使用説明書を含むキットも本発明の範囲内である。キットは、薬物投与及び/又は診断情報収集に有用であり得る。本発明のキットは、少なくとも1つの追加の試薬(例えば、標準、マーカーなど)を含んでいてもよい。キットは、典型的には、キット内容物の意図される使用を示すラベルを含む。キットは、試料又は対象中で細胞型(例えば腫瘍細胞)を検出するための、又は患者が、本発明の細胞標的化分子、又はその組成物、又は本明細書に記載される本発明の関連する方法を利用する治療戦略に応答するグループに属するかどうかを診断するための試薬及び他のツールをさらに含んでいてもよい。
X.本発明の細胞標的化分子並びにそれらの医薬組成物及び/若しくは診断用組成物を使用するための方法
一般的に、本発明の目的は、例えばある特定のがん、腫瘍、増殖異常、免疫障害、又は本明細書で述べられるさらなる病態などの疾患、障害、及び状態の予防及び/又は治療に使用することができる、薬理活性薬剤、加えてそれを含む組成物を提供することである。したがって、本発明は、標的細胞のMHCクラスI提示経路へのCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴの送達、特定の細胞の標的化殺滅、特定のpMHC Iでの標的細胞の細胞表面の標識及び/又は標的細胞の特定の内部区画の標識、診断情報の収集、並びに本明細書に記載される疾患、障害、及び状態の治療に、本発明の細胞標的化分子、医薬組成物、及び診断用組成物を使用する方法を提供する。例えば、本発明の方法は、がん、がんの発生、腫瘍の発生、転移、及び/又はがん疾患の再発を予防又は治療するための免疫療法として使用することができる。
特定には、本発明の目的は、現在のところ当業界において公知の薬剤、組成物、及び/又は方法と比較して一定の利点を有する、このような薬理学的に活性な薬剤、組成物、及び/又は方法を提供することである。したがって、本発明は、特定されたタンパク質配列により特徴付けた細胞標的化分子並びにそれらの医薬組成物を使用する方法を提供する。例えば、配列番号4~255、259~278、及び288~748に記載のポリペプチド配列のいずれかは、以下の方法又は熟練した作業者公知の細胞標的化分子を使用するためのあらゆる方法で、例えば国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、米国特許第2015/259428号明細書、米国特許第2014/965882号明細書、国際公開第2016/196344号パンフレット、国際公開第2017/019623号パンフレット、及び国際公開第2018/106895号パンフレットで説明される様々な方法などで使用される細胞標的化分子の成分としてとりわけ利用される場合がある。
本発明は、CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを細胞に送達する方法であって、細胞を、インビトロ又はインビボのいずれかで、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物と接触させるステップを含む、方法を提供する。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、接触ステップの後に、インビトロ細胞培養物において又は生きた脊索動物内でインビボにおいてのいずれかで、この細胞の、免疫細胞、例えば、CD8+T細胞及び/又はCTLなどによる細胞間結合を引き起こす。生物体内における標的細胞によるCD8+T細胞エピトープの提示は、生物体内における標的細胞及び/又はその全般的な場所へのロバストな免疫応答の活性化をもたらし得る。したがって、提示のためのCD8+T細胞エピトープカーゴの標的化送達は、治療レジメ及び/又はワクチン接種戦略中にCD8+T細胞応答を活性化するための機構として利用され得る。
本発明は、脊索動物細胞のMHCクラスI提示経路に、CD8+T細胞エピトープ-ペプチドを送達する方法であって、細胞を、インビトロ又はインビボのいずれかで、本発明の細胞標的化分子、医薬組成物、及び/又は診断用組成物と接触させるステップを含む、方法を提供する。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、接触ステップの後に、インビトロ細胞培養物において又は脊索動物内でインビボにおいてのいずれかで、この細胞の、免疫細胞、例えば、CD8+T細胞及び/又はCTLなどによる細胞間結合を引き起こす。
本発明の細胞標的化分子を使用した標的細胞のMHCクラスI提示経路へのCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴの送達は、標的細胞が、細胞表面上にMHCクラスI分子と会合したエピトープ-ペプチドを提示するように誘導するのに使用することができる。脊索動物において、MHCクラスI複合体による免疫原性CD8+T細胞エピトープの提示により、提示細胞をCTL媒介性細胞溶解による殺滅に感受性にし、免疫細胞が微小環境を変更するように誘導し、脊索動物内の標的細胞部位にさらに多くの免疫細胞を動員するためのシグナル伝達を行うことができる。したがって、本発明の細胞標的化分子及びその組成物は、細胞を本発明の細胞標的化分子と接触させることにより、特定の細胞型を殺滅するのに使用することができる、及び/又は脊索動物において免疫応答を刺激するのに使用することができる。
MHCクラスIエピトープ、例えば、公知のウイルス抗原に由来するものを改変して細胞標的化分子にすることにより、例えばインビトロで脊索動物の免疫細胞の有益な機能及び/又はインビボで脊索動物の免疫系の有益な機能を利用及び指示するために、免疫刺激性抗原の標的化送達及び提示を使用することができる。これは、細胞標的化分子を細胞外空間、例えば、血管の内腔などに外来的に投与し、次いで、細胞標的化分子が標的細胞を発見し、その細胞に入り、細胞内にそのCD8+T細胞エピトープカーゴを送達するのを可能にすることによって、達成され得る。本発明の細胞標的化分子のこれらのCD8+T細胞エピトープカーゴ送達及びMHCクラスI提示の機能の用途は、広範である。例えば、脊索動物において、細胞へのCD8+エピトープカーゴの送達及びその細胞による送達されたエピトープのMHCクラスI提示は、CD8+エフェクターT細胞の細胞間結合を引き起こすことができ、CTLによる標的細胞の殺滅及び/又は免疫刺激性サイトカインの分泌をもたらし得る。
本発明のある特定の実施形態は、免疫治療方法であって、それを必要とする患者に、本発明の細胞標的化分子及び/又は医薬組成物を投与するステップを含む、方法である。ある特定のさらなる実施形態において、免疫治療方法は、患者において有益な免疫応答を刺激することによって、疾患、障害、及び/又は状態(例えば、がん、腫瘍、増殖異常、免疫障害、及び/又は微生物感染)を治療する方法である。
本発明のある特定の実施形態は、がんを治療する免疫治療方法であって、それを必要とする患者に、本発明の細胞標的化分子及び/又は医薬組成物を投与するステップを含む、方法である。ある特定のさらなる実施形態において、本方法は、患者に、アジュバント及び/又はマイクロバイオーム変更剤を投与する追加のステップを含む(例えば、Vetizou M et al., Science 350: 1079-84 (2015);Ayelet S et al., Science 350: 1084-9 (2015);米国出願第2015/352206号明細書;国際公開第2016/063263号パンフレットを参照)。
本発明は、CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴを脊索動物における標的細胞に送達し、免疫応答を引き起こすことを伴う免疫治療方法であって、脊索動物に、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。ある特定のさらなる実施形態に関して、免疫応答は、CD8+免疫細胞によるサイトカインの分泌、標的細胞におけるCTL誘導性増殖停止、標的細胞のCTL誘導性壊死、標的細胞のCTL誘導性アポトーシス、組織の場所における非特異的な細胞死、分子間エピトープ拡散、悪性細胞型に対する免疫寛容の破壊、及び悪性細胞型に対する脊索動物の持続的な免疫の獲得からなる群から選択される細胞間免疫細胞応答である(例えば、Matsushita H et al., Cancer Immunol Res 3: 26-36 (2015)を参照)。これらの免疫応答は、熟練した作業者に公知の技術を使用して検出及び/又は定量化することができる。例えば、CD8+免疫細胞は、免疫刺激性サイトカイン、例えば、IFN-γ、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα,tumor necrosis factor alpha)、マクロファージ炎症性タンパク質-1β(MIP-1β,macrophage inflammatory protein-1 beta)、IL-17、IL-4、IL-22、及びIL-2などのインターロイキンなどを放出し得る(例えば、以下の実施例;Seder R et al., Nat Rev Immunol 8: 247-58 (2008)を参照)。IFN-γは、MHCクラスI分子の発現を増加させ、新生物細胞をCTL媒介性の細胞殺滅に対して感受性にすることができる(Vlkova V et al., Oncotarget 5: 6923-35 (2014))。炎症性サイトカインは、サイトカイン放出細胞に対して無関係のTCR特異性を有する傍観者T細胞を刺激することができる(例えば、Tough D et al., Science 272: 1947-50 (1996)を参照)。活性化されたCTLは、エピトープ-MHCクラスI複合体を提示する細胞の近傍にある細胞を、近傍の細胞がペプチド-MHCクラスI複合体レパートリーを提示するかどうかに関係なく、無差別に殺滅させ得る(Wiedemann A et al., Proc Natl Acad Sci USA 103: 10985-90 (2006))。したがって、ある特定のさらなる実施形態に関して、免疫応答は、近傍細胞が本発明の細胞標的化分子によって送達されたCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを全く提示していない場合、及び殺滅される近傍細胞に物理的に結合している細胞標的化分子の結合領域のいずれの細胞外標的化生体分子の存在にも関係のない、免疫細胞によって媒介される近傍細胞の殺滅からなる群から選択される、細胞間免疫細胞応答である。
標的細胞であるか単に標的細胞の近傍にある細胞かにかかわらず、CTLによる溶解を受けた細胞における非自己エピトープの存在は、分子間エピトープ拡散の機構による標的細胞における非自己エピトープの認識を含め、免疫系によって外来物として認識及び標的化され得る(McCluskey J et al., Immunol Rev 164: 209-29 (1998);Vanderlugt C et al., Immunol Rev 164: 63-72 (1998);Vanderlugt C, Miller S, Nat Rev Immunol 2: 85-95 (2002)を参照)。近傍細胞としては、非新生物細胞、例えば、がん関連線維芽細胞、間葉幹細胞、腫瘍関連内皮細胞、及び未成熟骨髄由来サプレッサー細胞などを挙げることができる。例えば、がん細胞は、コーディング配列中に平均で25~500個の非同義変異を有し得る(例えば、Fritsch E et al., Cancer Immunol Res 2: 522-9 (2014)を参照)。がんドライバー変異及び非ドライバー変異のいずれも、がん細胞の変異状況の一部であり、これは、細胞1個当たり多数の非自己エピトープに対応し、平均の腫瘍は、10個又は11個以上の非自己エピトープを有し得る(例えば、Segal N et al., Cancer Res 68: 889-92 (2008)を参照)。例えば、腫瘍タンパク質p53の変異体形態は、非自己エピトープを含有し得る(例えば、Vigneron N et al., Cancer Immun 13: 15 (2013)を参照)。加えて、変異型自己タンパク質などの非自己エピトープの存在は、これらの新しいエピトープに特異的なメモリー細胞の産生をもたらし得る。本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態は、標的化された組織の場所においてサンプリングされる樹状細胞を増加させ得るため、細胞内抗原による免疫系の交差抗原刺激の可能性が、増加し得る(例えば、Chiang C et al., Expert Opin Biol Ther 15: 569-82 (2015)を参照)。したがって、細胞標的化分子による異種CD8+T細胞エピトープカーゴの送達及びそのエピトープのMHCクラスI提示の結果として、本発明の細胞標的化分子によって送達されたエピトープ以外の非自己エピトープによるものを含め、非自己抗原を含有する標的細胞及び他の近傍細胞は、免疫系によって拒絶され得る。このような機構により、例えば、細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子を発現しない腫瘍細胞に対する抗腫瘍免疫が誘導され得る。
サイトカイン分泌及び/又はT細胞活性化を伴う免疫応答は、脊索動物内のある場所の免疫微小環境の調節をもたらし得る。本発明の方法は、例えば、腫瘍関連マクロファージ、T細胞、Tヘルパー細胞、抗原提示細胞、及びナチュラルキラー細胞などの免疫細胞に対する制御性恒常性を変化させるために、脊索動物内の組織の場所の微小環境を変更するのに使用され得る。
ある特定の実施形態に関して、本発明の方法は、例えば、メモリーT細胞の発達及び/又は腫瘍微小環境に対する変更などによって、脊索動物対象における抗腫瘍細胞免疫の増強及び/又は脊索動物における持続的な抗腫瘍免疫を作り出すのに使用することができる。
本発明の細胞標的化分子又はその医薬組成物のある特定の実施形態は、脊索動物内のある場所に、免疫系を刺激して、その場所をより強力に規制するため及び/又は免疫阻害性シグナル、例えば、アネルギー誘導シグナルを緩和するために、非自己CD8+T細胞エピトープ-ペプチド提示細胞を「シーディング」するのに使用することができる。本発明のこの「シーディング」方法のある特定のさらなる実施形態において、この場所は、腫瘤又は感染組織部位である。本発明のこの「シーディング」方法のある特定の実施形態において、非自己CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、細胞標的化分子の標的細胞によってまだ提示されていないペプチド、標的細胞によって発現されるあらゆるタンパク質中に存在しないペプチド、標的細胞のプロテオーム又はトランスクリプトーム中に存在しないペプチド、シーディングしようとする部位の細胞外微小環境中に存在しないペプチド、及び標的化しようとする腫瘤又は感染組織部位中に存在しないペプチドからなる群から選択される。
この「シーディング」方法は、免疫細胞による細胞間認識及び下流の免疫応答の活性化のために、1つ又は2つ以上のMHCクラスI提示されたCD8+T細胞エピトープ(pMHC I)で脊索動物内の1つ又は2つ以上の標的細胞を標識するように機能する。本発明の細胞標的化分子の細胞内在化、細胞内経路決定、及び/又はMHCクラスIエピトープ送達の機能を利用することにより、送達されたCD8+T細胞エピトープを提示する標的細胞は、脊索動物の免疫細胞の免疫監視機構によって認識され、CD8+T細胞、例えば、CTLなどによる、提示標的細胞の細胞間結合をもたらすことができる。本発明の細胞標的化分子を使用するこの「シーディング」方法は、細胞標的化分子によって送達されたT細胞エピトープを提示しているかどうかにかかわらず、例えば、細胞間エピトープ拡散及び/又は人工的に送達されたエピトープとは対照的な内在性抗原の提示に基づく標的細胞の免疫寛容の破壊などの結果として、免疫細胞に媒介される標的細胞殺滅を刺激することができる。本発明の細胞標的化分子を使用したこの「シーディング」方法は、ナイーブT細胞によって外来物として認識される及び/又はメモリーT細胞によって非自己としてすでに認識可能である(すなわち、リコール抗原)のいずれかであるエピトープの検出に基づいて、シーディングされた微小環境内、例えば、腫瘤又は感染組織部位などにおいて細胞に対する適応免疫応答を誘導することによって、ワクチン接種効果(新しいエピトープの曝露)及び/又はワクチン接種追加免疫効果(エピトープ再曝露)を提供し得る。この「シーディング」方法はまた、脊索動物内において、末梢的又は全身的のいずれかで、標的細胞集団、腫瘤、罹患組織部位、及び/又は感染組織部位に対する免疫寛容の破壊も誘導し得る。
脊索動物内の部位又は場所における死滅又は壊死性の腫瘍細胞の存在は、局所化された免疫刺激作用をもたらし得る。例えば、死滅又は壊死性の腫瘍細胞は、因子、例えば、高移動度群のタンパク質及び/又はATPなどを放出し得、これが、免疫細胞の免疫原性の成熟を刺激し得る。腫瘍の場所のシーディングはまた、腫瘍細胞の原形質膜におけるERタンパク質(例えば、カルレティキュレン)の異所的発現も誘導又は増加させ得、これにより、その部位におけるMHCクラス抗原提示及び腫瘍細胞のファゴサイトーシスが促進/増加され得る。
1つ又は2つ以上の抗原性及び/又は免疫原性CD8+T細胞エピトープで脊索動物内の場所をシーディングするステップを含む本発明のある特定の方法は、局所的に又は全身に投与されるかどうかにかかわらず、ある特定の抗原に対する免疫応答を刺激するために免疫学的なアジュバントの投与と組み合わせてもよく、例えば、本発明の組成物と、サイトカイン、細菌産物、又は植物のサポニンのような1つ又は2つ以上の免疫学的なアジュバントとの共投与などである。本発明の方法で使用するのに適切であり得る免疫学的なアジュバントの他の例としては、アルミニウム塩及び油、例えば、ミョウバン、水酸化アルミニウム、鉱油、スクアレン、パラフィン油、落花生油、及びチメロサールなどが挙げられる。
本発明のある特定の方法は、脊索動物におけるナイーブCD8+T細胞の免疫原性交差提示及び/又は交差抗原刺激の促進を伴う。本発明のある特定の方法に関して、交差抗原刺激は、本発明の細胞標的化分子によって引き起こされる標的細胞の死及び/又は死の手段の結果として、免疫監視機構に対する死滅している標的細胞又は死滅した標的細胞における細胞内抗原の曝露が促進されるようになることで生じる。
単一の本発明の細胞標的化分子によって複数の異種CD8+T細胞エピトープ(カーゴとして又は志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の組み込まれた又は挿入された領域としてのいずれかで)が送達され得るため、本発明の細胞標的化分子の単一の実施形態は、例えば、異なるHLA対立遺伝子を有するヒトにおいてなど、異なるMHCクラスI分子バリアントを有する同じ種の異なる個々の脊索動物において、治療的に有効であり得る。本発明のある特定の実施形態のこの能力により、単一の細胞標的化分子において、MHCクラスI分子の多様性及び多型性に基づいて、異なる対象の亜集団において異なる治療有効性を有する異なるCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを組み合わせることが可能となり得る。例えば、ヒトMHCクラスI分子、HLAタンパク質は、遺伝学的祖先、例えば、アフリカ人(サハラ以南)、アメリカンインディアン、コーカソイド、モンゴロイド、ニューギニア及びオーストラリア人、又は太平洋諸島系住民に基づいて、ヒトの間で異なる。
ヒト集団の大部分が、CMV抗原に反応するように抗原刺激されたCD8+T細胞の特定のセットを有し、生涯にわたり無症状を維持するように慢性的なCMV感染を絶えず抑制しているため、CMV抗原由来の異種CD8+T細胞エピトープを送達することができる本発明の細胞標的化分子が、特に有用であり得る。加えて、高齢のヒトは、例えば、CMVに対してより焦点の定まっている可能性のある免疫監視、並びにより高齢のヒトにおけるT細胞抗原受容体レパートリー及び相対CTLレベルの組成によって示されるような、CMVに関する適応免疫系における加齢関連の変化により、CMV CD8+T細胞エピトープにさらにより迅速かつ強力に反応し得る(例えば、Koch S et al., Ann N Y Acad Sci 1114: 23-35 (2007);Vescovini R et al., J Immunol 184: 3242-9 (2010);Cicin-Sain L et al., J Immunol 187: 1722-32 (2011);Fulop T et al., Front Immunol 4: 271 (2013);Pawelec G, Exp Gerontol 54: 1-5 (2014)を参照)。
本発明は、細胞を殺滅する方法であって、細胞を、インビトロ又はインビボのいずれかで、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物と接触させるステップを含む、方法を提供する。本発明の細胞標的化分子及び医薬組成物は、細胞を、特許請求された物質の組成物の1つと接触させることにより、特定の細胞型を殺滅するのに使用することができる。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物は、異なる細胞型の混合物、例えばがん細胞、感染細胞、及び/又は血液系細胞を含む混合物などにおいて、特定の細胞型を殺滅するのに使用することができる。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物は、異なる細胞型の混合物において、がん細胞を殺滅するのに使用することができる。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物は、移植前組織など、異なる細胞型の混合物において、特定の細胞型を殺滅するのに使用することができる。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物は、治療目的の投与前の組織材料など、細胞型の混合物において、特定の細胞型を殺滅するのに使用することができる。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物は、ウイルス又は微生物に感染した細胞を選択的に殺滅するか、又はそれ以外の方法で、細胞表面生体分子などの特定の細胞外標的生体分子を発現する細胞を選択的に殺滅するのに使用することができる。本発明の細胞標的化分子及び医薬組成物は、様々な用途を有し、このような用途としては、例えば、インビトロ又はインビボのいずれかで組織から不要な細胞型を枯渇させることにおける使用、抗ウイルス剤としての使用、抗寄生虫剤としての使用、及び移植組織から不要な細胞型を取り除くことにおける使用が挙げられる。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子及び/又は医薬組成物は、治療目的の投与前の組織材料、例えば、移植前の組織など、異なる細胞型の混合物において、特定の細胞型を殺滅するのに使用することができる。ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物は、ウイルス又は微生物に感染した細胞を選択的に殺滅するか、又はそれ以外の方法で、細胞表面生体分子などの特定の細胞外標的生体分子を発現する細胞を選択的に殺滅するのに使用することができる。
本発明は、細胞の殺滅を、それを必要とする患者において行う方法であって、患者に、少なくとも1つの本発明の細胞標的化分子又はそれらの医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。本発明の細胞標的化分子、又はそれらの医薬組成物のある特定の実施形態は、感染細胞と物理的に結合していることが見出された細胞外生体分子を標的化することによって、患者において感染細胞を殺滅するのに使用することができる。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子又はその医薬組成物は、がん細胞又は腫瘍細胞と物理的に結合していることが見出された細胞外生体分子を標的化することによって、患者においてがん細胞を殺滅するのに使用することができる。用語「がん細胞」又は「がん性細胞」は、異常に促進された及び/又は無秩序な様式で増殖及び分裂する様々な新生物細胞を指し、これは、当業者には明らかであろう。用語「腫瘍細胞」は、悪性細胞及び非悪性細胞の両方を含む。一般的に、がん及び/又は腫瘍は、治療及び/又は予防を受ける余地のある疾患、障害、又は状態と定義することができる。本発明の方法及び組成物によって利益を得る可能性があるがん細胞及び/又は腫瘍細胞で構成されるがん及び腫瘍(悪性又は良性のいずれか)は、当業者には明らかであろう。新生物細胞は、無秩序な増殖、分化の欠如、局所的な組織浸潤、血管新生、及び転移の1つ又は2つ以上に関連することが多い。ある特定のがん細胞及び/又は腫瘍細胞を標的化する本発明の方法及び組成物によって利益を得る可能性があるがん及び/又は腫瘍(悪性又は良性のいずれか)の結果生じる疾患、障害、及び状態は、当業者には明らかであろう。
本発明の細胞標的化分子及び組成物のある特定の実施形態は、一般的に分裂が遅く、化学療法及び放射線のようながん療法に対する耐性を有する、がん幹細胞、腫瘍幹細胞、前がん状態の発がん性細胞、及び腫瘍始原細胞を殺滅するのに使用することができる。例えば、急性骨髄性白血病(AML,acute myeloid leukemia)は、本発明を用いて、AML幹細胞及び/又は休眠中のAML前駆細胞を殺滅することにより治療することができる(例えばShlush L et al., Blood 120:603-12 (2012)を参照)。がん幹細胞はしばしば、細胞表面の標的、例えば、本発明の細胞標的化分子のある特定の実施形態のある特定の結合領域の標的となり得るCD44、CD200、及び他の本明細書で列挙したものなどを過剰発現する(例えばKawasaki B et al., Biochem Biophys Res Commun 364:778-82 (2007);Reim F et al., Cancer Res 69:8058-66 (2009)を参照)。
固有の志賀毒素Aサブユニットベースの作用機序のために、本発明の物質の組成物は、例えば、化学療法、免疫療法、放射線、幹細胞移植、及び免疫チェックポイント阻害剤などの他の療法とそれらとの組合せを含む方法で、又は他の療法との補足的な様式で、並びに/又は化学療法抵抗性/放射線抵抗性及び/若しくは静止腫瘍細胞/腫瘍始原細胞/幹細胞に対して有効な方法で、より効果的に使用することができる。同様に、本発明の物質の組成物は、他の細胞標的化療法と組み合わせて、同じ疾患、障害、又は状態のための同じエピトープ以外のオーバーラップしない又は異なる標的を標的とすることを含む方法でより効果的に使用することができる。
本発明の細胞標的化分子又はそれらの医薬組成物のある特定の実施形態は、免疫細胞と物理的に結合していることが見出された細胞外生体分子を標的化することによって、患者において免疫細胞(健常であるか又は悪性であるかにかかわらず)を殺滅するのに使用することができる。
本発明の細胞標的化分子又はその医薬組成物を、細胞集団(例えば、骨髄)から悪性細胞及び/又は新生物細胞を取り除き、次いで、標的細胞を枯渇させた材料を、それを必要とする患者に再注入する目的で利用することは、本発明の範囲内である。
加えて、本発明は、患者における疾患、障害、又は状態を治療する方法であって、それを必要とする患者に、本発明の細胞標的化分子、又はそれらの医薬組成物の少なくとも1つの治療有効量を投与するステップを含む、方法を提供する。この方法を使用して治療され得る予期される疾患、障害、及び状態としては、がん、悪性腫瘍、非悪性腫瘍、増殖異常、免疫障害、及び微生物感染が挙げられる。「治療上有効な投薬量」の本発明の組成物の投与は、疾患の症状の重症度における減少、疾患の無症状期間の頻度及び持続時間における増加、又は疾患の苦痛による欠陥又は能力障害の予防をもたらすことができる。
本発明の組成物の治療有効量は、投与経路、治療する対象のタイプ、及び検討中の具体的な患者の身体的特徴に依存すると予想される。この量を決定するためのこれらの要因及びそれらの関係は、医療分野における熟練した技術者に周知である。この量及び投与方法は、最適な効能を達成するために調整することができ、体重、食事、並行する薬物療法のような要因、及び医療分野における当業者に周知の他の要因に依存する可能性がある。ヒトでの使用に最も適切な投薬の程度及び用量レジメンは、本発明により得られた結果によって導かれてもよいし、適切に設計された臨床試験で確認されてもよい。有効な投薬量及び治療プロトコールは、実験動物で低い用量から開始して、次いで作用をモニターしながら投薬量を増加させ、同様に投薬レジメンを系統的に変化させる従来の手段によって決定することができる。所与の対象にとって最適な投薬量を決定するときに、臨床医は多数の要因を考慮に入れることができる。このような考慮は、当業者公知である。
許容できる投与経路は、これらに限定されないが、エアロゾル、経腸、経鼻、経眼、経口、非経口、直腸、経膣、又は経皮(例えばクリーム剤、ゲル剤若しくは軟膏剤の局所投与、又は経皮パッチ剤による)を含む、当業界において公知のあらゆる投与経路を指す場合もある。「非経口投与」は、典型的には意図される作用部位への、又はそれと連通する部位への注射に関連し、眼窩下、注入、動脈内、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、腹膜内、肺内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、子宮内、静脈内、クモ膜下、被膜下、皮下、経粘膜、又は経気管投与が挙げられる。
本発明の医薬組成物を投与するために、投薬量範囲は、一般的に、対象の体重1キログラム当たり約0.001~10ミリグラム(mg/kg)及びそれより多く、通常は0.001~0.5mg/kgである。例示的な投薬量は、体重1kg当たり0.01mg、体重1kg当たり0.03mg、体重1kg当たり0.07mg、体重1kg当たり0.09mg若しくは体重1kg当たり0.1mg、又は1~10mg/kgの範囲内であってもよい。例示的な治療計画は、1日1回若しくは2回の投与、又は週1回若しくは2回の投与、2週ごとに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、月1回、2若しくは3ヶ月ごとに1回、又は3~6ヶ月ごとに1回である。特定の患者ごとに治療上の利益を最大化するために、必要に応じて、投薬量は、熟練した健康管理の専門家により選択され再調整されてもよい。
本発明の医薬組成物は、典型的には同じ患者に複数回投与されると予想される。単回投薬間のインターバルは、例えば2~5日おき、1週間おき、1ヶ月おき、2若しくは3ヶ月おき、6ヶ月おき、又は1年おきであってもよい。また投与間のインターバルは、対象又は患者中の血中レベル又は他のマーカーの調節に基づき不規則であってもよい。本発明の組成物のための投薬レジメンは、体重1kg当たり1mg又は体重1kg当たり3mgの静脈内投与で、2~4週間ごとに6回の投薬で組成物を投与すること、次いで3ヶ月ごとに体重1kg当たり3mg又は体重1kg当たり1mg投与することを含む。
本発明の医薬組成物は、1つ又は2つ以上の投与経路を介して、当業界において公知の様々な方法の1つ又は2つ以上を使用して投与してもよい。熟練した作業者であれば理解されるように、投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に応じて様々であろう。本発明の細胞標的化分子、医薬組成物、及び診断用組成物のための投与経路としては、例えば静脈内、筋肉内、皮内、腹膜内、皮下、脊髄、又は他の非経口投与経路が挙げられ、例えば注射又は注入による投与経路である。他の実施形態に関して、本発明の細胞標的化分子、医薬組成物、及び診断用組成物は、非経口以外の経路によって投与されてもよく、例えば、局所、表皮、又は粘膜の投与経路、例えば、鼻腔内、経口、経膣、直腸内、舌下、又は局所などによって投与されてもよい。
本発明の治療用細胞標的化分子又はその医薬組成物は、当技術分野において公知の様々な医療用デバイスの1つ又は2つ以上を用いて投与されてもよい。例えば、一実施形態において、本発明の医薬組成物は、無針の皮下注射デバイスを用いて投与されてもよい。本発明において有用な周知のインプラント及びモジュールの例は、当業界において、例えば、制御された速度での送達のための移植可能なマイクロ注入ポンプ;経皮投与するためのデバイス;正確な注入速度で送達するための注入ポンプ;連続的な薬物送達のための可変流量の移植可能な注入デバイス;及び浸透性薬物送達システムなどが挙げられる。これらの及び他のこのようなインプラント、送達系、及びモジュールは、当業者公知である。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物は、単独で、又は他の化合物若しくは医薬組成物と組み合わせて、治療を必要とする患者などの対象において、インビトロ又はインビボで細胞集団に投与した場合に強力な細胞殺滅活性を示すことができる。特定の細胞型に対する高親和性結合領域を使用して、異種CD8+T細胞エピトープカーゴと会合した志賀毒素エフェクターポリペプチドの送達を標的化することによって、志賀毒素エフェクター及び/又はCD8+T細胞エピトープ提示に媒介される細胞殺滅活性を、生物内のある特定の細胞型、例えば、ある特定のがん細胞、新生物細胞、悪性細胞、非悪性腫瘍細胞、又は感染細胞などを特異的及び選択的に殺滅するように限定することができる。
本発明の細胞標的化分子、又はその医薬組成物は、単独で、又は1つ又は2つ以上の他の治療剤又は診断剤と組み合わせて投与されてもよい。併用療法は、治療しようとする特定の患者、疾患又は状態に基づき選択される少なくとも1つの他の治療剤と組み合わせた、本発明の細胞標的化分子、又はそれらの医薬組成物を含んでいてもよい。他のこのような薬剤の例としては、とりわけ、細胞毒性剤、抗がん剤又は化学療法剤、抗炎症剤又は増殖抑制剤、抗微生物剤又は抗ウイルス剤、増殖因子、サイトカイン、鎮痛薬、治療活性を有する小分子又はポリペプチド、一本鎖抗体、古典的な抗体又はそれらの断片、又は1つ又は2つ以上のシグナル伝達経路をモジュレートする核酸分子、及び治療的又は防止的処置レジメンを補うか又はそれ以外の方法で有益な可能性がある類似のモジュレートする治療的分子が挙げられる。
本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物での患者の治療は、好ましくは、標的化された細胞の細胞死及び/又は標的化された細胞の増殖の阻害を引き起こす。そのようなものとして、本発明の細胞標的化分子、及びそれらを含む医薬組成物は、とりわけ、がん、腫瘍、増殖異常、免疫障害、及び感染細胞などの、標的細胞を殺滅すること又は枯渇させることが有益であり得る様々な病理学的障害を治療するための方法において有用であろう。本発明は、ある特定の細胞型の新形成及び/又は望ましくない増殖を含む、細胞増殖の抑制及び細胞障害の治療のための方法を提供する。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子及び医薬組成物を使用して、がん、腫瘍(悪性及び良性)、増殖異常、免疫障害、及び微生物感染を治療又は予防することができる。さらなる態様において、上記したエクスビボの方法を上記したインビボの方法と組み合わせて、骨髄移植レシピエントにおける拒絶を治療又は予防する、及び免疫寛容を達成するための方法を提供することができる。
別の態様において、本発明の細胞標的化分子及び医薬組成物のある特定の実施形態は、内分泌調節剤であり、それらにより、内分泌腺分泌過少、内分泌腺分泌過剰、及び/又は内分泌腺腫瘍によって引き起こされる内分泌障害の獲得、発症、又は結果を治療及び/又は予防することができることを意味する。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、ホルモン又はホルモン類似体である結合領域を含む。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、内分泌腺細胞を標的化し、それを殺滅させることによって、内分泌腺分泌過剰を低減する方法において、使用される。本発明の細胞標的化分子及び/又は医薬組成物は、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物の治療有効量をそれらを必要とする患者に投与するステップを含む、内分泌疾患を治療する方法において利用することができる。ある特定のさらなる実施形態において、治療しようとする疾患は、甲状腺機能亢進症及び/又は副甲状腺機能亢進症である。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子及び医薬組成物は、免疫調節剤であり、それらにより、免疫障害の獲得、発症、又は結果を治療及び/又は予防することができることを意味する。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、T細胞受容体(TCR)である細胞外標的生体分子に結合する結合領域を含む。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、MHCクラスI四量体である結合領域を含む。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞標的化分子は、自己免疫障害に関与する特定のCD8+細胞毒性Tリンパ球の活性及び/又は生存性を低減する方法において使用される。本発明の細胞標的化分子及び/又は医薬組成物は、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物の治療有効量を、それらを必要とする患者に投与するステップを含む、免疫障害を治療する方法において利用することができる。ある特定のさらなる実施形態において、治療しようとする障害は、例えば、同種移植関連疾患の結果としてなど、CD8+Tリンパ球の組織破壊の結果である。
本発明の細胞標的化分子及び医薬組成物は、一般的には抗新生物剤であり、それらが、増殖を阻害すること及び/又はがん若しくは腫瘍細胞の死滅を引き起こすことによって新生物又は悪性細胞の発症、成熟、又は蔓延を治療及び/又は予防することができることを意味する。ある特定の実施形態において、本発明は、例えばヒトなどの哺乳動物対象における悪性腫瘍又は新生物及び他の血液細胞関連のがんを治療するための方法であって、それらを必要とする対象に、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物の治療有効量を投与するステップを含む、方法を提供する。
別の態様において、本発明の細胞標的化分子及び医薬組成物のある特定の実施形態は、抗微生物剤であり、それらが、微生物学的な病原性感染、例えばウイルス、細菌、真菌、プリオン、又は原生動物によって引き起こされる感染などの獲得、発症、又は結果を治療及び/又は予防することができることを意味する。
本発明の細胞標的化分子及び/又は医薬組成物は、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物の治療有効量をそれらを必要とする患者に投与することを含む、がんを治療する方法に利用することができる。本発明の方法のある特定の実施形態において、治療されるがんは、骨がん(例えば多発性骨髄腫又はユーイング肉腫)、乳がん、中枢/末梢神経系がん(例えば脳腫瘍、神経線維腫症、又は膠芽腫)、消化器がん(例えば胃がん又は結腸直腸がん)、生殖細胞がん(例えば卵巣がん及び睾丸がん)、腺がん(例えば膵臓がん、副甲状腺がん、褐色細胞腫、唾液腺がん、又は甲状腺がん)、頭頸部がん(例えば鼻咽頭がん、口腔がん、又は咽頭がん)、血液がん(例えば白血病、リンパ腫、又は骨髄腫)、腎臓から尿道のがん(例えば腎臓がん及び膀胱がん)、肝臓がん、肺/胸膜がん(例えば中皮腫、小細胞肺癌、又は非小細胞肺癌)、前立腺がん、肉腫(例えば血管肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、又は滑膜肉腫)、皮膚がん(例えば基底細胞癌、扁平上皮癌、又は黒色腫)、及び子宮がんからなる群から選択される。
本発明の細胞標的化分子及び医薬組成物は、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物の治療有効量を、それらを必要とする患者に投与することを含む、免疫障害を治療する方法に利用することができる。本発明の方法のある特定の実施形態において、免疫障害は、アミロイド症、強直性脊椎炎、喘息、自閉症、心臓発生、クローン病、糖尿病、エリテマトーデス、胃炎、移植片拒絶反応、移植片対宿主病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、溶血尿毒症症候群、HIV関連の疾患、紅斑性狼瘡、リンパ増殖性障害、多発性硬化症、重症筋無力症、神経炎症、結節性多発性動脈炎、多発関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強皮症、敗血症性ショック、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、脈管炎からなる群から選択される疾患と関連する炎症と関連している。
本発明のある特定の実施形態のなかでも、本発明の細胞標的化分子を、がん、腫瘍、他の増殖異常、免疫障害、及び/又は微生物感染を治療又は予防するための医薬組成物又は医薬品の成分として使用することが挙げられる。例えば、患者の皮膚上に現れる免疫障害は、炎症を低減させるために、このような医薬品で治療されてもよい。別の例において、皮膚腫瘍は、腫瘍サイズを低減する又は腫瘍を完全に除去するために、このような医薬品で治療されてもよい。
本発明のある特定の実施形態のなかでも、本発明の細胞標的化分子、医薬組成物、及び/又は診断用組成物を、疾患、状態、及び/又は障害に関する情報収集の目的で、使用する方法が挙げられる。例えば、本発明の細胞標的化分子は、ある特定のpMHC Iに特異的な抗体を使用して、腫瘍細胞によるpMHC I提示をイメージングするために使用してもよい。本発明の細胞標的化分子で処置した後にこのような標識された標的細胞を検出することにより、抗原プロセシング及びMHCクラスI提示に対する標的化細胞型の適格性に関する読取り値、並びに本発明の細胞標的化分子の診断用バリアントからの読取り値と組み合わせた場合には標的細胞集団中のこのような適格性の標的細胞の割合を得ることができる。
本発明のある特定の実施形態のなかでも、疾患、状態及び/又は障害に関する情報収集の目的で細胞型の存在を検出するために、本発明の細胞標的化分子、医薬組成物、及び/又は診断用組成物を使用する方法が挙げられる。本方法は、アッセイ又は診断技術によって分子を検出するために、細胞を、診断上十分な量の本発明の細胞標的化分子と接触させることを含む。成句「診断上十分な量」は、利用される特定のアッセイ又は診断技術による情報収集目的にとって十分な検出及び正確な測定をもたらす量を指す。一般的に、生物全体のインビボの診断的使用にとって診断上十分な量は、対象ごとに対象1kg当たり0.01mg~10mgの検出促進剤が連結された本発明の細胞標的化分子の非累積な用量であろう。典型的には、これらの情報収集方法で使用される本発明の細胞標的化分子の量は、それでもなお診断上十分な量であるという条件で、できる限り低いであろう。例えば、インビボにおける生物中での検出の場合、対象に投与される本発明の細胞標的化分子又は診断用組成物の量は、実現可能な限り低いであろう。
検出促進剤と組み合わせた本発明の細胞標的化分子の細胞型特異的な標的化は、本発明の分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞を検出及びイメージングする方法を提供する。或いは、細胞標的化分子により送達された異種CD8+T細胞エピトープカーゴの提示は、本発明の細胞標的化分子を内在化した細胞を検出及びイメージングする手段を提供し得る。本発明の細胞標的化分子及び診断用組成物を使用して細胞をイメージングすることは、当技術分野において公知のあらゆる好適な技術によって、インビトロ又はインビボで実行することができる。診断情報は、生物の全身イメージングを含む当業界において公知の様々な方法を使用して、又は生物から採取したエクスビボの試料を使用して収集することができる。本明細書において使用される用語「試料」は、これらに限定されないが、例えば血液、尿、血清、リンパ液、唾液、肛門分泌物、膣分泌物、及び精液などの流体、並びに生検手順により得られた組織などの多数の物を指す。例えば、様々な検出促進剤は、例えば磁気共鳴イメージング(MRI)、光学的方法(例えば直接、蛍光、及び生物発光イメージング)、ポジトロンエミッショントモグラフィー(PET)、単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、超音波、X線コンピュータ断層撮影、及び上述のものの組合せなどの技術による、非侵襲的なインビボでの腫瘍イメージングに利用することができる(総論に関して、Kaur S et al., Cancer Lett 315:97-111 (2012)を参照)。
本発明のある特定の実施形態のなかでも、新生物細胞及び/又は免疫細胞型の内部を標識又は検出するために本発明の細胞標的化分子、医薬組成物、及び/又は診断用組成物を使用する方法が挙げられる(例えば、Koyama Y et al., Clin Cancer Res 13: 2936-45 (2007);Ogawa M et al., Cancer Res 69: 1268-72 (2009);Yang L et al., Small 5: 235-43 (2009)を参照)。これは、特定の細胞型の内部区画が検出のために標識されるように、本発明のある特定の細胞標的化分子が、特定の細胞型に入り、逆行性細胞内輸送を介して、細胞内での経路を特定の細胞内区画に決定する能力に基づき得る。これは、インサイチュで患者の細胞に実行してもよいし、又は生物から取り出された細胞及び組織、例えば生検材料にインビトロで実行してもよい。
本発明の診断用組成物を使用して、本発明の関連する医薬組成物によって治療できる可能性があるとして疾患、障害、又は状態を特徴付けることができる。本発明のある特定の物質の組成物を使用して、患者が、本明細書に記載される本発明の細胞標的化分子、又はその組成物、又は本発明の関連する方法を利用する治療戦略に応答するグループに属するかどうか、又は本発明の送達デバイスを使用するのによく適しているかどうかを決定することができる。
本発明の診断用組成物は、疾患、例えばがんをよりよく特徴付けるために、例えば遠隔転移、不均質性、及びがん進行のステージをモニターするために、それが検出された後に使用してもよい。疾患、障害又は感染の表現型の評価は、治療の意思決定中の予後及び予測を助けることができる。疾患再発において、ある特定の本発明の方法を使用して、それが局所か又は全身の問題かを決定することができる。
本発明の診断用組成物は、例えば低分子薬物、生物学的な薬物、又は細胞ベースの療法などの治療のタイプを問わず、治療に対する応答をアセスメントするのに使用することができる。例えば、本発明の診断用組成物のある特定の実施形態は、腫瘍サイズの変化、抗原陽性細胞集団の数及び分布などの変化を測定すること、又はすでに患者に施された療法によって標的化された抗原とは異なるマーカーをモニターすることに使用することができる(Smith-Jones P et al., Nat. Biotechnol 22:701-6 (2004);Evans M et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 108:9578-82 (2011)を参照)。
本発明の診断用組成物は、標的細胞型においてMHCクラスI系の機能性を評価するために使用してもよい。例えば、感染細胞、腫瘍細胞、又はがん細胞などのある特定の悪性細胞は、それらのMHCクラスI提示経路に変更、欠損、及び混乱を呈し得る。これは、インビトロ又はインビボで研究することができる。本発明の診断用組成物は、生物内の標的細胞集団における個々の細胞間でのMHCクラスI提示における変化をモニターするのに使用することができるか、又は生物、腫瘍生検などにおけるMHCクラスI提示が欠損した標的細胞の割合を計数若しくは判定するのに使用することができる。
細胞型の存在を検出するのに使用される方法のある特定の実施形態は、例えば、骨がん(例えば多発性骨髄腫又はユーイング肉腫)、乳がん、中枢/末梢神経系がん(例えば脳腫瘍、神経線維腫症、又は膠芽腫)、消化器がん(例えば胃がん又は結腸直腸がん)、生殖細胞がん(例えば卵巣がん及び睾丸がん、腺がん(例えば膵臓がん、副甲状腺がん、褐色細胞腫、唾液腺がん、又は甲状腺がん)、頭頸部がん(例えば鼻咽頭がん、口腔がん、又は咽頭がん)、血液がん(例えば白血病、リンパ腫、又は骨髄腫)、腎臓から尿道のがん(例えば腎臓がん及び膀胱がん)、肝臓がん、肺/胸膜がん(例えば中皮腫、小細胞肺癌、又は非小細胞肺癌)、前立腺がん、肉腫(例えば血管肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、又は滑膜肉腫)、皮膚がん(例えば基底細胞癌、扁平上皮癌、又は黒色腫)、子宮がん、AIDS、アミロイド症、強直性脊椎炎、喘息、自閉症、心臓発生、クローン病、糖尿病、エリテマトーデス、胃炎、移植片拒絶反応、移植片対宿主病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、溶血尿毒症症候群、HIV関連の疾患、紅斑性狼瘡、リンパ増殖性障害、多発性硬化症、重症筋無力症、神経炎症、結節性多発性動脈炎、多発関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強皮症、敗血症性ショック、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、脈管炎、細胞増殖、炎症、白血球活性化、白血球接着、白血球走化性、白血球成熟、白血球遊走、ニューロンの分化、急性リンパ芽球性白血病(ALL,acute lymphoblastic leukemia)、T細胞急性リンパ球性白血病/リンパ腫(ALL)、急性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病(AML,acute myeloid leukemia)、B細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL,B-cell chronic lymphocytic leukemia)、B細胞性前リンパ球性リンパ腫、バーキットリンパ腫(BL,Burkitt's lymphoma)、慢性リンパ球性白血病(CLL,chronic lymphocytic leukemia)、慢性骨髄性白血病(CML-BP)、慢性骨髄性白血病(CML,chronic myeloid leukemia)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ヘアリーセル白血病(HCL,hairy cell leukemia)、ホジキンリンパ腫(HL,Hodgkin's Lymphoma)、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、リンパ形質細胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、多発性骨髄腫(MM,multiple myeloma)、ナチュラルキラー細胞白血病、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL,Non-Hodgkin's lymphoma)、プラズマ細胞性白血病、形質細胞腫、原発性滲出液リンパ腫、前リンパ球性白血病、前骨髄球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、脾性辺縁帯リンパ腫、T細胞リンパ腫(TCL,T-cell lymphoma)、重鎖病、単クローン性免疫グロブリン血症、単クローン性免疫グロブリン沈着症、骨髄異形成症候群(MDS,myelodusplastic syndromes)、くすぶり型多発性骨髄腫、及びワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症などの疾患、障害、及び状態に関する情報を収集するのに使用することができる。
ある特定の実施形態において、本発明の細胞標的化分子、又はそれらの医薬組成物は、診断及び治療の両方に、又は診断単独に使用される。いくつかの状況において、治療で使用するための本発明の細胞標的化分子を選択する前に、対象及び/又は例えば治療が必要な患者などの対象からの罹患した組織で発現されるHLAバリアント及び/又はHLA対立遺伝子を決定又は検証することが望ましい。一部の状況において、個々の対象に関して、どの細胞標的化分子又はその組成物を本発明の方法において使用するかを選択する前に、ある特定のCD8+T細胞エピトープの免疫原性を判定することが望ましいであろう。
本発明は、前述の構造及び機能、特に、CD8+T細胞エピトープカーゴの送達を特定の細胞に細胞外標的化する機能、及びそれに続く細胞表面上でのMHCクラスI分子と複合体化した送達されたCD8+T細胞エピトープカーゴの提示のための、CD8+T細胞エピトープカーゴのMHCクラスI経路への細胞内送達の機能を含む細胞標的化分子の以下の非限定的な例によってさらに例証される。
[実施例]
脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、これらのポリペプチドが存在する細胞による提示のために、免疫原性エピトープ-ペプチドを送達するように改変することができる。さらに、フューリン切断抵抗性がある脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、標的細胞による提示のために、免疫原性エピトープ-ペプチドを送達するように改変することもできる。そのような脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む細胞標的化分子は、特定の細胞へのエピトープの標的化送達を提供し、脊索動物において細胞型に特異的な免疫刺激性エピトープの提示を伴う用途で使用することができる。脊索動物におけるMHCクラスI系によるT細胞免疫原性エピトープの提示は、CD8+CTL媒介性溶解による殺滅の標的をエピトープ提示細胞とし、その近傍において他の免疫応答も刺激することができる。
実施例において、CD8+T細胞抗原を、脱免疫化及びフューリン切断抵抗性志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを含む細胞標的化分子に融合させた。これらの融合ポリペプチドは、すべて、開始ポリペプチド足場への少なくとも1つのペプチドの付加を伴い、志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の内部にいずれかの異種CD8+T細胞エピトープを組み込むことも挿入することも必要としないが、他の組み込まれた又は挿入された異種CD8+T細胞エピトープが、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドに存在していてもよい。したがって、本発明のある特定の例示的な細胞標的化分子において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、さらにフューリン切断抵抗性であってもよい及び/又は1つ若しくは2つ以上の組み込まれた又は挿入されたCD8+T細胞エピトープを含んでもよい、脱免疫化志賀毒素ポリペプチドからなる。
以下の実施例は、(1)細胞標的のための免疫グロブリン型結合領域、(2)脱免疫化及びフューリン切断抵抗性の志賀毒素エフェクターポリペプチド、及び(3)志賀毒素エフェクターポリペプチド領域に組み込まれてもなく、挿入されてもいない、融合型異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドからなるカーゴを含む、本発明の例示的な細胞標的化分子について説明する。これらの本発明の例示的な細胞標的化分子は、標的化された細胞型によって発現される標的生体分子に結合し、標的化された細胞に入る。次いで、内在化された例示的な細胞標的化分子は、それらの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の経路をサイトゾルへと効果的に決定し、リボソーム阻害により標的細胞を直接殺滅させてもよい。
実施例は、例示的な細胞標的化分子が、標的細胞内で、その融合型異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴをMHCクラスI経路に送達し、標的細胞の表面上でのT細胞エピトープ-ペプチドの提示をもたらしたことを以下に示している。標的細胞による、MHCクラスI分子に送達されたT細胞エピトープ複合体の細胞表面での提示は、CD8+エフェクターT細胞に、エピトープを提示している標的細胞を殺滅するように、並びにエピトープ提示標的細胞の近傍において他の免疫応答を刺激するように、シグナルを伝達し得る。
実施例1において以下に示されるように、本発明の細胞標的化分子は、外来的に投与した場合に、標的化されたヒトがん細胞による提示のために異種T細胞エピトープ-ペプチドをMHCクラスI経路に送達することが可能であった。本発明の2つの細胞標的化分子は、これらの脱免疫化及びフューリン切断抵抗性志賀毒素エフェクターポリペプチド成分により、標的発現ヒトがん細胞を特異的に殺滅することが可能であったこともまた、実施例1-2において以下に示されている。本発明の他の2つの細胞標的化分子は、ヒトPBMC共培養実験における免疫細胞の作用により、標的発現ヒトがん細胞を殺滅することが可能であったことも、さらに実施例2において以下に示されている。加えて、実施例2は、本発明の触媒活性細胞標的化分子が、いずれかの異種CD8+T細胞エピトープカーゴを欠いている触媒活性参照分子より、ヒトPBMCと共培養した標的発現ヒトがん細胞を多く殺滅できることを示し、直接的な細胞殺滅と間接的な細胞間T細胞殺滅機構の両方を誘導することが、適切なMHCクラスIエピトープ特異的制限T細胞の存在下でより多くの標的細胞殺滅を達成できることを示唆している。
脱活性及びフューリン切断抵抗性志賀毒素Aサブユニット由来のポリペプチド及び融合型T細胞エピトープ-ペプチドを含む細胞標的化分子
細胞標的化分子が作製され、試験される。細胞標的化分子は、それぞれ、1)細胞標的化結合領域、2)フューリン切断抵抗性であってもよい脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチド、及び3)志賀毒素エフェクターポリペプチド領域に組み込まれてもなく、挿入されてもいない、融合型異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドからなる少なくとも1つのT細胞エピトープ-ペプチドカーゴを含む。これまでにも、志賀毒素Aサブユニット由来の細胞標的化分子が構築されており、細胞内在化を促進し、これらの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の、サイトゾルへの細胞内経路決定を直接指示することが示されている(例えば、国際公開第WO2014/164680号パンフレット、同第WO2014/164693号パンフレット、同第WO2015/138435号パンフレット、同第WO2015/138452号パンフレット、同第WO2015/113005号パンフレット、同第WO2015/113007号パンフレット、同第WO2015/191764号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレット、及び同第WO2018/106895号パンフレットを参照)。志賀毒素A1フラグメント由来の成分に組み込まれても、挿入されてもいない、かつ志賀毒素Aサブユニット成分に対して異種である少なくとも1つのT細胞エピトープ-ペプチドをそれぞれ有する新規な細胞標的化分子を作製するために、これらの脱免疫化及び/又はフューリン切断抵抗性志賀毒素Aサブユニット由来の細胞標的化分子のモジュールポリペプチド成分に、T細胞エピトープ-ペプチドを融合する(国際公開第WO2017/019623号パンフレットを参照)。
この実施例において以下に示されるように、本発明の細胞標的化タンパク質は、外来的に投与した場合に、標的化されたヒトがん細胞による提示のために異種T細胞エピトープ-ペプチドをMHCクラスI経路に送達することが可能であった。本発明の細胞標的化タンパク質は、その脱免疫化及びフューリン切断抵抗性志賀毒素エフェクターポリペプチド成分により、標的発現ヒトがん細胞を特異的に殺滅することが可能であったこともまた、この実施例において以下に示されている。この実施例の例示的な細胞標的化タンパク質の細胞標的化結合領域は、特定の細胞型の表面に物理的に結合している細胞外標的生体分子に対する高親和性結合を呈することが可能である。この実施例の例示的な細胞標的化タンパク質は、それらの細胞標的化結合領域の標的生体分子を発現する細胞を選択的に標的化し、これらの標的細胞に内在化することが可能である。
I.本発明の例示的な細胞標的化分子の構築
当技術分野で公知の技術を使用して、タンパク質性リンカーによって分離される1)脱免疫化されたフューリン切断耐性志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及び2)細胞標的化結合領域ポリペプチドを含む親細胞標的化タンパク質のポリペプチド成分のアミノ末端(N末端)又はカルボキシ末端(C末端)に、ヒトCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを遺伝子融合することによって、例示的な細胞標的化融合タンパク質を作製する。融合したCD8+T細胞エピトープカーゴは、一般的にヒトに感染するウイルスを起源とするいくつかのT細胞エピトープ-ペプチドの中から選択される。結果として得られた細胞標的化融合タンパク質は、それぞれが、細胞標的化結合領域ポリペプチド、脱免疫化されたフューリン切断耐性志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、及び融合型異種CD8+T細胞エピトープカーゴを含む単一の連続するポリペプチドを含むように構築される。
本発明の細胞標的化分子は、(1)細胞標的のための免疫グロブリン型結合領域、(2)脱免疫化及びフューリン切断抵抗性の志賀毒素エフェクターポリペプチド、及び(3)志賀毒素エフェクターポリペプチド領域に組み込まれてもなく、挿入されてもいない、融合型異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドからなるカーゴを含むことができる。3つの成分は、すべて、従来技術から選択され得る又は当業者に公知の日常的な方法を使用して作製され得る(例えば、国際公開第WO2014/164680号パンフレット、同第WO2014/164693号パンフレット、同第WO2015/138435号パンフレット、同第WO2015/138452号パンフレット、同第WO2015/113005号パンフレット、同第WO2015/113007号パンフレット、同第WO2015/191764号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレット及び同第WO2018/106895号パンフレットを参照)。
免疫グロブリン型結合領域は、前に、国際公開第WO2014/164680号パンフレット、同第WO2014/164693号パンフレット、同第WO2015/138435号パンフレット、同第WO2015/138452号パンフレット、同第WO2015/113005号パンフレット、同第WO2015/113007号パンフレット、同第WO2015/191764号パンフレット及び同第WO2016/196344号パンフレットにおいて記載されている。
脱免疫化及びフューリン切断抵抗性志賀毒素エフェクターポリペプチドは、前に、国際公開第WO2015/113007号パンフレット、同第WO2015/191764号パンフレット及び同第WO2016/196344号パンフレットにおいて記載されている。
異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、前に、国際公開第WO2015/113005号パンフレット及び同第WO2016/196344号パンフレットにおいて記載されている。
この実施例では、タンパク質性リンカーが成分を連結するために従来技術から選択される。
この実施例の細胞標的化分子のすべての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、SLT-1Aのアミノ酸1~251(配列番号1)に由来し、これらのうちのいくつかは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比べて、例えば、脱免疫化置換及び/又は置換フューリン切断モチーフ破壊変異(例えば、国際公開第WO2015/113007号パンフレット、同第WO2015/191764号パンフレット及び同第WO 2016/196344号パンフレットを参照)など、2つ又は3つ以上のアミノ酸残基置換を含有していた。本発明の細胞標的化分子の例示的な志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、配列番号29~38である。
この実施例の実験において試験された細胞標的化分子は、すべて、細菌系において産生され、当業者に公知の技術を使用してカラムクロマトグラフィーによって精製された。
この実施例において産生及び試験された本発明の例示的な細胞標的化分子は、SLT-1A-DI-FR::scFv1::C2(配列番号252)であった。本発明のこの例示的な細胞標的化融合タンパク質は、一本鎖可変フラグメント成分(scFv1)を含む細胞標的化結合領域、脱免疫化及びフューリン切断抵抗性志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド成分(SLT-1A-DI-FR)、並びに結合領域に融合されたヒトCD8+T細胞エピトープ-ペプチド(C2)を含んでいた。免疫グロブリン型結合領域scFv1は、ある特定のヒトがん細胞の表面に物理的に結合した、ある特定の細胞表面標的生体分子に高親和性で結合している一本鎖可変フラグメントである。この実施例の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、SLT-1A-DI-FR(配列番号29)であった。融合型カーゴとして選択されたエピトープ-ペプチドC2(配列番号21)は、免疫原性であることが知られていた。細胞標的化分子SLT-1A-DI-FR::scFv1::C2(配列番号252)を、細菌系において産生し、当業者に公知の技術を使用してカラムクロマトグラフィーにより精製した。
精製の後、細胞標的化分子SLT-1A-DI-FR::scFv1::C2(配列番号252)の多量体の状態は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及びドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)の両方を変性条件下で使用して試験した。
SLT-1A-DI-FR::scFv1タンパク質(配列番号258)の試料は、24mLの総容量を有するSuperdex 200 30/300カラム(GE Healthcare社、Little Chalfont、Buckinghamshire、U.K.)を使用するSECにより分析した。試料をカラムにロードし、少なくとも24mLの緩衝液をカラムに流し込み、その間に紫外線(UV)検出器が、タンパク質の溶出を280nmでの吸光度によりモニターして、ミリ吸光単位(mAu)で報告した。サイズ排除クロマトグラフィーに使用されるマトリックスの中を通って流れたとき、小さな分子量を有する分子は大きな分子と比較して遅くなり、したがって、小さな分子は、大きな分子より長いサイズ排除クロマトグラフィー保持時間を呈する。同じカラム及び条件を有するサイズ排除クロマトグラフィーに付された公知の分子質量のタンパク質の溶出速度を参照として使用して、天然条件下のSLT-1A-DI-FR::scFv1タンパク質(配列番号258)試料の分子質量を推定した。
分析したSLT-1A-DI-FR::scFv1タンパク質(配列番号258)試料は、13.2mLの保持に相当する主要ピークを生成し、これは、公知の質量の参照タンパク質に基づいて、約110キロダルトン(kDa)の分子質量に相当し(図4)、これは、それぞれ55kDaの質量を有する2つのポリペプチドを含む110kDaのホモ二量体タンパク質と一致した。このSEC分析によって、SLT-1A-DI-FR::scFv1::C2タンパク質(配列番号252)の試料は、ほぼ同じサイズであることが測定により分かり、それぞれ55kDaの質量を有する2つのポリペプチドからなるおよそ110kDaの分子と一致すると思われる(以下を参照)。
SLT-1A-DI-FR::scFv1::C2(配列番号252)及びSLT-1A-DI-FR::scFv1(配列番号258)のタンパク質試料を4~20%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル(Lonza社、Basel、CH)に等量でロードし、変性条件下で電気泳動した(図5)。得られたゲルをクーマシー染色により分析した。分子量(MW,molecular weight)マーカー(ProSeive(商標)QuadColor(商標)、Lonza社、Basel、CH)を、ゲルにロードしたタンパク質の概算分子量を示すためにロードした。これらの変性条件下では、任意の多量体タンパク質複合体がモノマーポリペプチドに解離することが予測された。SLT-1A-DI-FR::scFv1::C2及びSLT-1A-DI-FR::scFv1試料は、両方とも約55kDaの見かけ分子量のバンドを形成し(図5)、これは、それぞれ508及び500アミノ酸を有するSLT-1A-DI-FR::scFv1::C2(配列番号252)及びSLT-1A-DI-FR::scFv1(配列番号258)のいずれかに予測されるタンパク質質量の概算分子量に相当する。
II.結合領域及びT細胞エピトープ-ペプチドの融合後の志賀毒素機能の保持に関する、細胞標的化分子の志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド成分の試験
例示的な細胞標的化タンパク質が、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドの融合後に、志賀毒素Aサブユニットエフェクター機能の保持に関して試験される。分析した志賀毒素Aサブユニットエフェクター機能は、細胞毒性であり、推論としてサイトゾルへの細胞内経路決定の自己指示である。
本発明の例示的な細胞標的化分子の細胞毒性活性の試験
本発明の例示的な細胞標的化分子の細胞毒性活性が、組織培養細胞ベース毒性アッセイを使用して測定される。同種細胞集団において細胞の半数を殺滅する、外来的に投与される細胞標的化分子の濃度(半数細胞毒性濃度)を、本発明のある特定の細胞標的化分子に関して判定した。それぞれの細胞標的化分子の結合領域の標的生体分子に関して、標的生体分子陽性細胞又は標的生体分子陰性細胞のいずれかを含む細胞殺滅アッセイを使用して、例示的な細胞標的化分子の細胞毒性が試験される。
この実施例に使用された標的細胞(細胞株A、B及びC)は、ATCC(Manassas VA社、U.S.)又はDSMZ(The Leibniz Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulture社)(Braunschweig、DE)から入手可能な不死化ヒトがん細胞であった。
細胞殺滅アッセイは、次のように行った。ヒト腫瘍細胞株の細胞を、384ウェルプレートにおいて、20μLの細胞培養培地中に播種した(典型的には、接着細胞については1ウェル当たり2×103個の細胞で、タンパク質添加の前日に播種し、又は懸濁細胞については1ウェル当たり7.5×103個の細胞で、タンパク質添加と同日に播種した)。試験しようとするタンパク質の10倍希釈系列を、適切な緩衝液中に調製し、5μLの希釈物又は陰性対照としては緩衝液のみを、細胞に添加した。細胞培養培地のみを含む対照ウェルを、ベースライン補正として使用した。細胞試料を、タンパク質又は緩衝液のみとともに、37℃で3又は5日間、5%二酸化炭素(CO2)雰囲気下においてインキュベートした。全細胞生存又は生存率パーセントを、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(G7573、Promega社、Madison、WI、U.S.)を製造業者の使用説明書に従って使用し、相対発光単位(RLU)で測定される発光読取り値を使用して判定した。
実験ウェルの生存率パーセントを、以下の等式を使用して計算した:(試験RLU-平均培地RLU)÷(平均細胞RLU-平均培地RLU)×100。生存率パーセントに対するタンパク質濃度の対数を、Prism(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)においてプロットし、log(阻害剤)対応答(3パラメーター)の分析を使用して、試験したタンパク質の半数細胞毒性濃度(CD50)値を判定した。可能な場合は、試験したそれぞれの例示的な細胞標的化タンパク質についてCD50値を計算した。
細胞標的化分子の結合領域の標的生体分子を有意な量で発現する細胞(標的陽性細胞)に対する細胞殺滅活性を、任意の細胞表面に物理的に結合されている細胞標的化分子の結合領域のいかなる標的生体分子のいかなる有意な量でも示さない細胞(標的陰性細胞)に対する細胞殺滅活性と比較することによって、所与の細胞標的化分子の細胞毒性活性の特異性を判定した。これは、分析されている細胞標的化分子の標的生体分子の細胞表面発現が陽性であった細胞集団に対する本発明の所与の細胞標的化分子の半数細胞毒性濃度を判定し、次いで、同じ細胞標的化分子の濃度範囲を使用して、細胞標的化分子の標的生体分子の細胞表面発現が陰性であった細胞集団に対する半数細胞毒性濃度の判定を試みることによって、達成した。一部の実験において、最大量の志賀毒素を含有する分子で処置した標的陰性細胞は、「緩衝液のみ」の陰性対照と比較して、生存率にいかなる変化も示さなかった。
上述の細胞殺滅アッセイを使用して試験した様々な分子の細胞毒性活性レベルを、表1に報告する。表1に報告されるように、このアッセイにおいて試験した本発明の例示的な細胞標的化タンパク質は、強力な細胞毒性を呈した。異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドを志賀毒素由来の細胞標的化タンパク質に融合することにより、細胞毒性に変化が生じることはない可能性があるが、一部の例示的な細胞標的化タンパク質は、いずれの融合型異種エピトープ-ペプチドも含まない、由来元である親タンパク質と比較して、低減された細胞毒性を呈した(表1)。実施例において報告されるように、参照分子の測定されたCD50値の10倍以内のCD50値を呈する分子は、その参照分子のものと同程度の細胞毒性活性を呈するとみなす。具体的には、標的陽性細胞集団に対して、同じ結合領域及び野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、SLT-1A-WT(配列番号279))を含むが、いずれの融合型異種T細胞エピトープ-ペプチドも含まない参照細胞標的化分子の同じ細胞型に対するCD50値の10倍以内のCD50値を呈する本発明のいずれの例示的な細胞標的化分子も、本明細書において、「野生型と同程度である」と称される。標的陽性細胞集団に対して、同じ結合領域及び同じ志賀毒素エフェクターポリペプチドを含むが、いずれの融合型異種T細胞エピトープ-ペプチドも含まない参照分子の10倍から100倍以内のCD50値を呈した細胞標的化分子は、本明細書において、活性であるが「減弱化された」と称される。
表1及び図2は、SLT-1A-DI-FR::scFv1::C2(配列番号252)が、融合型抗原C2を欠いている親タンパク質(配列番号258)と類似した細胞毒性活性により、3つの異なる標的陽性細胞型に細胞毒性を呈することを示す。
III.エピトープ-ペプチドの送達及び標的細胞による送達されたエピトープ-ペプチドの細胞表面提示の試験
T細胞エピトープの送達の成功は、特定の細胞表面のMHCクラスI分子/エピトープ複合体(pMHC I)を検出することによって判定することができる。細胞標的化タンパク質が、標的細胞のMHCクラスI提示経路に融合型T細胞エピトープを送達することができるかどうかを試験するために、特定のエピトープと複合体化したヒトMHCクラスI分子を検出するアッセイを利用した。フローサイトメトリー法を使用して、T細胞エピトープ(脱免疫化及びフューリン切断抵抗性志賀毒素Aサブユニット由来の細胞標的化分子に融合している)の送達及び標的細胞の表面上におけるMHCクラスI分子と複合体化した送達されたT細胞エピトープ-ペプチドの細胞外提示を実証した。このフローサイトメトリー法は、それぞれが異なるエピトープ-ヒトHLA複合体に高親和性で結合する可溶性ヒトT細胞受容体(TCR)多量体試薬(Soluble T-Cell Antigen Receptor STAR(商標)Multimer、Altor Bioscience社、Miramar、FL、U.S.)を利用する。
それぞれのSTAR(商標)TCR多量体試薬は、特定のT細胞受容体に由来し、選択されたTCRが特定のMHCクラスI分子に関連して提示される特定のペプチドを認識する能力に基づいた特定のペプチド-MHC複合体の検出を可能にする。これらのTCR多量体は、ビオチニル化されており、ストレプトアビジンと多量体化している、組換えヒトTCRから構成されている。TCR多量体は、フィコエリトリン(PE、phycoerythrin)で標識する。これらのTCR多量体試薬は、ヒト細胞の表面上に提示される特定のペプチド-MHCクラスI複合体の検出を可能にするが、これは、それぞれの可溶性TCR多量体型が、様々な条件下において特定のペプチド-MHC複合体を認識し、安定に結合するためである(Zhu X et al., J Immunol 176: 3223-32 (2006))。これらのTCR多量体試薬は、細胞の表面上に提示されるペプチド-MHCクラスI複合体のフローサイトメトリーによる特定及び定量化を可能にする。
TCR CMV-pp65-PE STAR(商標)多量体試薬(Altor Bioscience社、Miramar、FL、U.S.)を、この実施例で使用した。HLA-A2を発現するヒト細胞によるヒトCMV C2ペプチド(NLVPMVATV(配列番号21))のMHCクラスI経路提示は、ヒトHLA-A2と複合体化したCMV-pp65エピトープ-ペプチド(残基495~503、NLVPMVATV(配列番号21))の高親和性認識を示し、PEで標識されている、TCR CMV-pp65-PE STAR(商標)多量体試薬を用いて検出することができる。
当技術分野で公知の標準的なフローサイトメトリー法を使用して、標的細胞が、それらの細胞表面上にHLA-A2 MHCクラスI分子及びこの実施例で使用した細胞標的化タンパク質の細胞外標的生体分子の両方を発現することを確認した。一部の実験では、ヒトHLA-A2の発現を増強するように、ヒトがん細胞をヒトインターフェロンガンマ(IFN-γ)で事前処置した。
標的細胞のセットを、カルボキシ末端の融合型ウイルス性CD8+T細胞エピトープを含む細胞標的化分子であるSLT-1A-DI-FR::scFv1::C2(配列番号252)の外来的な投与によって処置したか、又はいずれの融合型異種ウイルス性エピトープ-ペプチドも含まない陰性対照の細胞標的化融合タンパク質であるSLT-1A-DI-FR::scFv1(配列番号258)の外来的な投与によって処置した。これらの実験において使用した細胞標的化分子及び参照分子は、両方とも触媒的に活性な細胞毒性の細胞標的化分子であった。これらの処置は、志賀毒素に対する細胞型特異的感受性を考慮して他者により使用されたものと類似の細胞標的化分子濃度のものであった(例えば、国際公開第WO2015/113005号パンフレットを参照)。処置した細胞を、次いで、37℃及び5%二酸化炭素の雰囲気を含む標準的な条件下において4~16時間インキュベートして、脱免疫化及びフューリン切断抵抗性志賀毒素エフェクターポリペプチドによって媒介される中毒を起こさせた。次いで、細胞を洗浄し、TCR CMV-pp65-PE STAR(商標)多量体試薬とともにインキュベートして、C2ペプチド-HLA-A2複合体提示細胞を「染色」した。
対照として、標的細胞のセットを、3つの条件で処置した:1)いずれの処置も行わない(「未処置」)、すなわち、細胞には緩衝液のみを添加し、いずれの外因性分子の添加も行わない、2)CMV C2ペプチド(CMV-pp65、アミノ酸495~503:配列NLVPMVATV(配列番号21)、BioSynthesis社、Lewisville、TX、U.S.により合成)の外来的投与、及び/又は3)ペプチドローディング増強剤(「PLE」、Altor Bioscience社、Miramar、FL、U.S.)と組み合わせたCMV C2ペプチド(上述の(配列番号21))の外来的投与。PLE処置と組み合わせたC2ペプチド(配列番号21)は、外来的ペプチドローディングを可能にし、陽性対照として機能した。適切なMHCクラスIハプロタイプを呈する細胞は、細胞外空間から(すなわち、適用されたペプチドの細胞内在化の非存在下で)又はB2-ミクログロブリン及び他の成分の混合物であるPLEの存在下において、適切な外来的に適用されるペプチドを強制的にロードすることができる。
処置後に、すべての細胞セットを洗浄し、TCR CMV-pp65-PE STAR(商標)多量体試薬とともに氷上で1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、試料の蛍光を、Accuri(商標)C6フローサイトメーター(BD Biosciences社、San Jose、CA、U.S.)を使用してフローサイトメトリーによって測定して、集団中の細胞に結合した任意のTCR CMV-pp65-PE STAR(商標)多量体の存在(本明細書において「染色」と称される場合がある)を検出し、相対発光単位(RLU)で定量化した。
表2及び図4~8は、細胞表面のC2エピトープ/HLA-A2 MHCクラスI分子の複合体を検出するTCR STAR(商標)アッセイを使用した実験による結果を示す。それぞれの実験に関して、未処置対照試料を使用して、未処置対照の細胞から「陽性」ゲートに入る細胞が1%未満であるゲートを用いて陽性細胞集団及び陰性細胞集団を特定した(バックグラウンドシグナルを表す)。次いで同じゲートを、他の試料に適用して、各試料の陽性集団を特徴付けた。このアッセイにおける陽性細胞は、TCR-CMV-pp65-PE STAR(商標)試薬によって結合され、上述の陽性ゲートに数えられた細胞であった。
図3において、フローサイトメトリーのヒストグラムを、Y軸における細胞計数(細胞の数又は単に「計数」)、及びX軸におけるTCR CMV-pp65 STAR(商標)多量体PE染色シグナルを表す相対蛍光単位(RFU,relative fluorescent unit)とともに示す(対数目盛)。黒色の線は、未処置細胞のみの試料の結果を示し、灰色の線は、陰性対照(いずれのウイルス性エピトープ-ペプチドも欠いている親細胞標的化タンパク質のみでの処置)又は本発明の特定の例示的な細胞標的化タンパク質での処置の結果を示す。図3において、上部パネルは、未処置細胞試料の結果を黒色の線を使用して示し、融合型抗原を有する細胞標的化分子SLTA-1A-DI-FR::scFv1::C2処置試料の結果を灰色の線を使用して示す。図3において、中部パネルは、未処置細胞試料の結果を黒色の線を使用して示し、いずれの融合型エピトープ-ペプチドも含まない対照タンパク質SLTA-1A-DI-FR::scFv1の結果を灰色の線を使用して示す。図3において、下部パネルは、いずれの融合型エピトープ-ペプチドも含まない対照タンパク質SLTA-1A-DI-FR::scFv1の結果を黒色の線を使用して示し、融合型エピトープを有する細胞標的化分子SLTA-1A-DI-FR::scFv1::C2処置試料の結果を灰色の線を使用して示す。
表2及び図3において見られるように、本発明の例示的な細胞標的化タンパク質(配列番号252)で処置した細胞試料は、処置した細胞の表面上に、C2エピトープ/HLA-A2 MHCクラスI分子複合体の発現を呈した。対照的に、陰性対照としていずれの融合型T細胞エピトープ-ペプチドも含有しない親細胞標的化タンパク質SLT-1A-DI-FR::scFv1(配列番号258)で処置した細胞は、処置した細胞集団において細胞の5パーセント未満の陽性細胞染色を示した(表2、図3)。測定したわけではないが、プロセシング効率及び動態に起因して、「細胞標的化タンパク質」処置試料において単一の時点で検出される提示されたC2エピトープ/HLA-A2複合体の割合は、本発明の所与の例示的な細胞標的化タンパク質による送達後のC2エピトープ/HLA-A2提示の見込まれる最大数を正確に反映しない場合もあり得る
細胞標的化分子で処置した標的細胞の細胞表面上におけるヒトMHCクラスI分子(C2エピトープ-ペプチド/HLA-A2)と複合体化したT細胞エピトープC2(配列番号21)の検出は、この融合型エピトープ-ペプチドC2(配列番号21)を含む例示的な細胞標的化タンパク質SLT-1A-DI-FR::scFv1::C2(配列番号252)及び脱免疫化フューリン切断抵抗性志賀毒素エフェクターポリペプチドが、標的細胞に入り、十分な細胞内経路決定を行い、標的細胞による表面提示のために十分なC2(配列番号21)エピトープをMHCクラスI経路に送達することが可能であったことを示した。
IV.本発明の細胞標的化分子によって送達されたT細胞エピトープのMHCクラスI提示によって引き起こされる、細胞毒性T細胞に媒介される中毒化された標的細胞の細胞溶解及び他の免疫応答の試験
この実施例において、当技術分野で公知の標準的なアッセイを使用して、本発明の例示的な細胞標的化分子によって送達されたT細胞エピトープの標的細胞によるMHCクラスI提示の機能的結果を調査する。調査する機能的結果には、CTL活性化(例えば、シグナルカスケード誘導)、CTLに媒介される標的細胞殺滅、及びCTLによるCTLサイトカイン放出が含まれる。
CTLに基づく細胞毒性アッセイを使用して、エピトープ提示の結果を評価する。このアッセイは、組織培養した標的細胞及びT細胞を含む。標的細胞を、III.エピトープ-ペプチドの送達及び標的細胞表面での提示の試験の節などで上述のように本発明の例示的な細胞標的化分子で中毒化する。簡単に述べると、標的陽性細胞を、標準条件下において、本発明の細胞標的化分子を含む、異なる外来的に投与した分子とともに、20時間インキュベートする。次に、処置した標的細胞にCTLを添加し、インキュベートして、CTLが、エピトープ-ペプチド/MHCクラスI複合体(pMHC I)を提示する任意の標的細胞を認識し、それに結合できるようにする。次いで、標的細胞へのCTLの結合、CTLに媒介される細胞溶解によるエピトープ提示標的細胞の殺滅、及びIFN-γ又はインターロイキンなどのサイトカインの放出を含む、pMHC I認識に関するある特定の機能的結果を、ELISA又はELISPOTによって、熟練した作業者に公知の標準的な方法を使用して調査する。
本発明の例示的な細胞標的化分子によって送達されたエピトープを提示する標的化がん細胞による細胞表面エピトープ提示に応答したT細胞の細胞間結合の機能的結果を評価するために、当業者に公知のアッセイを行った。インビトロでの細胞間免疫細胞結合アッセイからの結果は、志賀毒素エフェクターポリペプチドに媒介される標的陽性がん細胞への融合型エピトープ-ペプチドの送達及びそれに続く標的化がん細胞によるエピトープの細胞表面提示が、機能的結果、特に、PBMCによるIFN-γ分泌を伴う免疫細胞の細胞間結合をもたらし得ることを示す。
当業者に公知の日常的なアッセイを行って、志賀毒素由来の細胞標的化分子により送達されたエピトープを示す標的化がん細胞による細胞表面エピトープ提示を認識した後の細胞間T細胞活性化を評価する。このインビトロでのT細胞結合アッセイは、志賀毒素エフェクターポリペプチドに媒介される標的陽性がん細胞への融合型エピトープ-ペプチドの送達及びそれに続く標的化がん細胞によるエピトープの細胞表面提示が、T細胞の細胞間結合及びT細胞活性化の細胞内細胞シグナル伝達特徴をもたらし得ることを示す。
加えて、エピトープ-ペプチド/MHCクラスI複合体(pMHC I)を提示する標的細胞によるCTLの活性化は、市販入手可能なCTL応答アッセイ、例えば、CytoTox96(登録商標)非放射性アッセイ(Promega社、Madison、WI、U.S.)、Granzyme B ELISpotアッセイ(Mabtech社、Cincinnati、OH、U.S.)、カスパーゼ活性アッセイ、及びLAMP-1転移フローサイトメトリーアッセイを使用して、定量化する。標的細胞のCTL媒介性殺滅を特に監視するために、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、carboxyfluorescein succinimidyl ester)を、当該技術分野で説明されているように、インビトロ及びインビボでの調査で標的細胞に使用する(例えば、Durward M et al., J Vis Exp 45 pii 2250 (2010)を参照)。
要約すると、これらの結果は、志賀毒素エフェクター機能、特に、細胞内経路決定が、融合型エピトープ-ペプチドがカルボキシ末端に存在するにもかかわらず、かつ多数の変異が志賀毒素由来成分に存在して、脱免疫化及びプロテアーゼ切断抵抗性を提供しているにもかかわらず、高いレベルで保持され得ることを示す。さらに、いくつかの細胞標的化分子は、エピトープ-カーゴ提示細胞との細胞間T細胞結合を刺激するようなエピトープ-MHCクラスI提示のレベルをもたらすのに十分なエピトープカーゴの送達を示した。
志賀毒素Aサブユニット由来のポリペプチド及び融合型T細胞エピトープ-ペプチドを含む細胞標的化分子
志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド領域及び融合型T細胞エピトープ-ペプチド領域を含む細胞標的化融合型タンパク質の作製
この実施例の細胞標的化融合タンパク質は、国際公開第WO2015/113005号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレット及び/又はPCT/US2016/043902号に記載された、細胞標的化結合領域ポリペプチド、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、タンパク質性リンカー及びヒトCD8+T細胞エピトープを含んだ。
当技術分野で公知の技術を使用して、タンパク質性リンカーによって分離される1)志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及び2)細胞標的化結合領域ポリペプチドを含む親細胞標的化タンパク質のポリペプチド成分のアミノ末端(N末端)又はカルボキシ末端(C末端)に、ヒトCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを遺伝子融合することによって、細胞標的化融合タンパク質を作製した。融合したCD8+T細胞エピトープは、一般的にヒトに感染するウイルスを起源とするタンパク質のいくつかのT細胞エピトープ-ペプチドの中から選択した。この実施例の、ある特定の細胞標的化融合タンパク質は、それぞれが、細胞標的化結合領域ポリペプチド、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、及び融合型異種CD8+T細胞エピトープを含む単一の連続するポリペプチドを含むように構築した。
この実施例において産生及び試験された本発明の例示的な細胞標的化分子は、SLT-1A-DI-1::scFv8::C2(配列番号256)、「不活性SLT-1A-DI-4::scFv6::(C2)3」(配列番号253)及び「不活性SLT-1A-DI-1::scFv8::C2」(配列番号254)であった。この実施例において産生し、試験した他の細胞標的化分子には、次のものが含まれた:C2::SLT-1A::scFv2(配列番号267)、「不活性C2::SLT-1A::scFv2」(配列番号268)、SLT-1A::scFv1::C2(配列番号278)、SLT-1A::scFv2::C2(配列番号269)、「不活性SLT-1A::scFv2::C2」(配列番号270)、F2::SLT-1A::scFv2(配列番号271)、scFv3::F2::SLT-1A(配列番号272)、scFv4::F2::SLT-1A(配列番号273)、SLT-1A::scFv5::C2(配列番号274)、SLT-1A::scFv6::F2(配列番号275)、「不活性SLT-1A::scFv6::F2」(配列番号276)、SLT-1A::scFv7::C2(配列番号277)、及びC1::SLT-1A::scFv1(配列番号260)、C1-2::SLT-1A::scFv1(配列番号261)、C3::SLT-1A::scFv1(配列番号262)、C24::SLT-1A::scFv1(配列番号263)、SLT-1A::scFv1::C1(配列番号268)、SLT-1A::scFv1::C24-2(配列番号264)、SLT-1A::scFv1::E2(配列番号265)、並びにSLT-1A::scFv1::F3(配列番号266)。これらの細胞標的化融合タンパク質は、それぞれ、一本鎖可変断片(scFv)を含む細胞標的化結合領域、志賀様毒素1のAサブユニット(SLT-1A)に由来する志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、及び結合領域又は志賀毒素エフェクターポリペプチドのいずれかに融合されたヒトCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを含んでいた。
この実施例の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド領域はすべて、SLT-1A(配列番号1)のアミノ酸1~251からなるか又はそれに由来しており、そのうちいくつかは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比べて、例えば、触媒ドメイン不活性化置換E167D、C242S、及び/又はフューリン切断耐性をもたらす置換R248A/R251A(例えば、国際公開第WO2015/191764号パンフレット;国際公開第WO2016/196344号パンフレットを参照)など、2つ又は3つ以上のアミノ酸残基置換を含有していた。この実施例の本発明の例示的な細胞標的化分子の志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド成分は、SLT-1A-DI-1(配列番号30)、「不活性LT-1A-DI-1」(配列番号35)及び「不活性SLT-1A-DI-4」(配列番号38)を含み、これらは触媒活性であり得る又は修飾されて低減した触媒活性を有し得る(例えば、配列番号33を参照)。この実施例で使用される場合、細胞標的化分子の命名「不活性」は、E167D置換を有する志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド成分のみを含む分子を指す。この単一のアミノ酸残置換は、例えば10000倍などに、志賀毒素Aサブユニット触媒活性を減弱化し得る。
免疫グロブリン型結合領域scFv1、scFv2、scFv3、scFv4、scFv5、scFv6、scFv7、及びscFv8は、それぞれ、ある特定のヒトがん細胞の表面に物理的に結合している、ある特定の細胞表面の標的生体分子に高親和性で結合した一本鎖可変断片である。scFv1及びscFv2の両方は、同じ細胞外標的生体分子に高い親和性及び特異性で結合する。scFv3及びscFv5の両方は、同じ細胞外標的生体分子に高い親和性及び特異性で結合する。scFv6、scFv7及びscFv8の3つは、すべて、同じ細胞外標的生体分子に高い親和性及び特異性で結合する。scFv1、scFv3、scFv4及びscFv6のどれも、同じ細胞外標的生体分子を標的にしない。
この実施例の実験において試験した細胞標的化分子は、参照細胞標的化分子を含め、すべて、細菌系において産生され、熟練した作業者に公知の技術を使用してカラムクロマトグラフィーによって精製された。
結合領域及びT細胞エピトープ-ペプチドの融合後の志賀毒素機能の保持に関する、細胞標的化分子の志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド成分の試験
細胞標的化タンパク質を、異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドの融合後に、志賀毒素Aサブユニットエフェクター機能の保持に関して試験した。分析した志賀毒素Aサブユニットエフェクター機能は、触媒作用による真核生物リボソームの不活性化、細胞毒性、及び推論としてサイトゾルへの細胞内経路決定の自己指示であった。少なくとも7種類の細胞標的化タンパク質が、いずれの異種T細胞エピトープ-ペプチド又は追加のポリペプチド部分にも融合されていない野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドと同程度の触媒活性を呈した。
1.本発明の細胞標的化分子のリボソーム阻害能力の試験
細胞標的化分子の志賀毒素Aサブユニット由来の志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の触媒活性を、リボソーム阻害アッセイを使用して試験した。
TNT(登録商標)Quick Coupled Transcription/Translation Kit(L1170 Promega社、Madison、WI、U.S.)を使用して、無細胞インビトロタンパク質翻訳アッセイを使用して、この実施例の細胞標的化タンパク質のリボソーム不活性化能力を判定した。このキットは、Luciferase T7 Control DNA(L4821 Promega社、Madison、WI、U.S.)及びTNT(登録商標)Quick Master Mixを含む。リボソーム活性反応物を、製造業者の指示書に従って調製した。試験する志賀毒素由来の細胞標的化タンパク質の10倍希釈系列を、適切な緩衝液中に調製し、各希釈物に対して、同一のTNT反応混合成分系列を作製した。希釈系列中の各試料を、Luciferase T7 Control DNAとともにTNT反応混合物のそれぞれと合わせた。被験試料を、摂氏30度(℃)で1.5時間インキュベートした。インキュベーションの後、Luciferase Assay Reagent(E1483 Promega、Madison、WI、U.S.)をすべての被験試料に添加し、ルシフェラーゼタンパク質翻訳量を、製造業者の指示書に従って発光により測定した。
翻訳阻害レベルを、相対発光単位に対する総タンパク質の対数変換した濃度の非線形回帰分析によって判定した。統計ソフトウェア(GraphPad Prism、San Diego、CA、U.S.)を使用して、半数阻害濃度(IC50)値を、用量応答阻害の項目でPrismソフトウェアのlog(阻害剤)対応答(3パラメーター)の関数[Y=最低値+((最高値-最低値)/(1+10^(X-Log IC50)))]を使用して、各試料に関して計算した。1回又は2回以上の実験によりそれぞれの志賀毒素由来の細胞標的化タンパク質のIC50値を計算したが、これを、ピコモル(pM)単位で表3に示す。野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、SLT-1A-WT(配列番号279))を含む陽性対照分子の10倍以内のIC50を呈した細胞標的化分子は、本明細書において、野生型と同程度のリボソーム阻害活性を呈するとみなす。
表3に示されるように、細胞標的化タンパク質は、陽性対照:1)野生型志賀毒素Aサブユニットポリペプチド配列のみを含む「SLT-1A-WTのみ」ポリペプチド(配列番号279)、及び2)scFv結合領域に融合されているが、いずれの融合型異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドも含まないSLT-1A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチド、例えば、SLT-1A::scFv1(配列番号280)、SLT-1A::scFv2(配列番号281)、SLT-1A::scFv5(配列番号283)、又はSLT-1A::scFv6(配列番号284)を含む細胞標的化タンパク質と同程度の強力なリボソーム阻害を呈した。
2.本発明の細胞標的化分子の細胞毒性活性の試験
細胞標的化分子の細胞毒性活性を、組織培養細胞ベースの毒性アッセイを使用して測定した。同種細胞集団において細胞の半数を殺滅する、外来的に投与される細胞標的化分子の濃度(半数細胞毒性濃度)を、ある特定の細胞標的化分子に関して判定した。それぞれの細胞標的化分子の結合領域の標的生体分子に関して、標的生体分子陽性細胞又は標的生体分子陰性細胞のいずれかを含む細胞殺滅アッセイを使用して、細胞標的化分子の細胞毒性を試験した。
細胞殺滅アッセイは、次のように行った。ヒト腫瘍細胞株の細胞を、384ウェルプレートにおいて、20μLの細胞培養培地中に播種した(典型的には、付着細胞については1ウェル当たり2×103個の細胞で、タンパク質添加の前日に播種し、又は懸濁細胞については1ウェル当たり7.5×103個の細胞で、タンパク質添加と同日に播種した)。試験しようとするタンパク質の10倍希釈系列を、適切な緩衝液中に調製し、5μLの希釈物又は陰性対照としては緩衝液のみを、細胞に添加した。細胞培養培地のみを含む対照ウェルを、ベースライン補正として使用した。細胞試料を、タンパク質又は緩衝液のみとともに、37℃で3又は5日間、5%二酸化炭素(CO2)雰囲気下においてインキュベートした。全細胞生存又は生存率パーセントを、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(G7573、Promega社、Madison、WI、U.S.)を製造業者の使用説明書に従って使用し、相対発光単位(RLU)で測定される発光読取り値を使用して判定した。
実験ウェルの生存率パーセントを、以下の等式を使用して計算した:(試験RLU-平均培地RLU)/(平均細胞RLU-平均培地RLU)×100。生存率パーセントに対するタンパク質濃度の対数を、Prism(GraphPad Prism、San Diego、CA、U.S.)においてプロットし、log(阻害剤)対応答(3パラメーター)の分析を使用して、試験したタンパク質の半数細胞毒性濃度(CD50)値を判定した。可能な場合は、試験したそれぞれの細胞標的化タンパク質についてCD50値を計算した。
細胞標的化分子の結合領域の標的生体分子を有意な量で発現する細胞(標的陽性細胞)に対する細胞殺滅活性を、任意の細胞表面に物理的に結合されている細胞標的化分子の結合領域のいかなる標的生体分子のいかなる有意な量でも示さない細胞(標的陰性細胞)に対する細胞殺滅活性と比較することによって、所与の細胞標的化分子の細胞毒性活性の特異性を判定した。これは、分析されている細胞標的化分子の標的生体分子の細胞表面発現が陽性であった細胞集団に対する所与の細胞標的化分子の半数細胞毒性濃度を判定し、次いで、同じ細胞標的化分子の濃度範囲を使用して、細胞標的化分子の標的生体分子の細胞表面発現が陰性であった細胞集団に対する半数細胞毒性濃度の判定を試みることによって、達成した。一部の実験において、最大量の志賀毒素を含有する分子で処置した標的陰性細胞は、「緩衝液のみ」の陰性対照と比較して、生存率にいかなる変化も示さなかった。
上述の細胞殺滅アッセイを使用して試験した様々な分子の細胞毒性活性レベルを、表4に報告する。表4に報告されるように、このアッセイにおいて試験した細胞標的化タンパク質は、強力な細胞毒性を呈した。異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドを志賀毒素由来の細胞標的化タンパク質に融合することにより、細胞毒性に変化が生じることはない可能性があるが、一部の細胞標的化タンパク質は、いずれの融合型異種エピトープ-ペプチドも含まない、由来元である親タンパク質と比較して、低減された細胞毒性を呈した(表4)。実施例において報告されるように、参照分子の測定されたCD50値の10倍以内のCD50値を呈する分子は、その参照分子のものと同程度の細胞毒性活性を呈するとみなす。具体的には、標的陽性細胞集団に対して、同じ結合領域及び野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、SLT-1A-WT(配列番号279))を含むがいずれの融合型異種T細胞エピトープ-ペプチドも含まない参照細胞標的化分子の同じ細胞型に対するCD50値の10倍以内のCD50値を呈するいずれの細胞標的化分子も、本明細書において、「野生型と同程度である」と称される。標的陽性細胞集団に対して、同じ結合領域及び同じ志賀毒素エフェクターポリペプチドを含むが、いずれの融合型異種T細胞エピトープ-ペプチドも含まない参照分子の10倍から100倍以内のCD50値を呈した細胞標的化分子は、本明細書において、活性であるが「減弱化された」と称される。
試験した細胞標的化タンパク質はすべて、標的陽性細胞を強力に殺滅させたが(表4)、同じ投薬量において、標的陰性細胞を同程度の割合で殺滅させることはなかった(例えば、図6及び7を参照)。図6及び7は、細胞標的化タンパク質SLT-1A::scFv1::C2(配列番号278)の特異的細胞毒性が、標的を発現する細胞に対してのみ特異的であり(図6)、標的陰性細胞に対しては試験した濃度範囲全体で特異的ではなかった(図7)ことを示す図である。標的陰性細胞に対する細胞標的化タンパク質のCD50値は、試験した細胞標的化タンパク質の濃度範囲からは計算できなかったが、これは、試験した最も高い濃度において、細胞生存率に相当な減少が存在しない場合には正確な曲線が生成できないためであった(例えば、図7を参照)。
エピトープ-ペプチドの送達及び標的細胞表面での送達されたエピトープ-ペプチドの提示の試験
T細胞エピトープの送達の成功は、特定の細胞表面のMHCクラスI分子/エピトープ複合体(pMHC I)を検出することによって判定することができる。細胞標的化タンパク質が、標的細胞のMHCクラスI提示経路に融合型T細胞エピトープを送達することができるかどうかを試験するために、特定のエピトープと複合体化したヒトMHCクラスI分子を検出するアッセイを利用した。フローサイトメトリー法を使用して、T細胞エピトープ(志賀毒素Aサブユニット由来の細胞標的化分子に融合している)の送達及び標的細胞の表面上におけるMHCクラスI分子と複合体化した送達されたT細胞エピトープ-ペプチドの細胞外提示を実証した。このフローサイトメトリー法は、それぞれが異なるエピトープ-ヒトHLA複合体に高親和性で結合する可溶性ヒトT細胞受容体(TCR、T-cell receptor)多量体試薬(Soluble T-Cell Antigen Receptor STAR(商標)Multimer、Altor Bioscience社、Miramar、FL、U.S.)を利用する。
それぞれのSTAR(商標)TCR多量体試薬は、特定のT細胞受容体に由来し、選択されたTCRが特定のMHCクラスI分子に関連して提示される特定のペプチドを認識する能力に基づいた特定のペプチド-MHC複合体の検出を可能にする。これらのTCR多量体は、ビオチニル化されており、ストレプトアビジンと多量体化している、組換えヒトTCRから構成されている。TCR多量体は、フィコエリトリン(PE、phycoerythrin)で標識する。これらのTCR多量体試薬は、ヒト細胞の表面上に提示される特定のペプチド-MHCクラスI複合体の検出を可能にするが、これは、それぞれの可溶性TCR多量体型が、様々な条件下において特定のペプチド-MHC複合体を認識し、安定に結合するためである(Zhu X et al., J Immunol 176: 3223-32 (2006))。これらのTCR多量体試薬は、細胞の表面上に提示されるペプチド-MHCクラスI複合体のフローサイトメトリーによる特定及び定量化を可能にする。
TCR CMV-pp65-PE STAR(商標)多量体試薬(Altor Bioscience社、Miramar、FL、U.S.)を、この実施例で使用した。HLA-A2を発現するヒト細胞によるヒトCMV C2ペプチド(NLVPMVATV(配列番号21))のMHCクラスI経路提示は、ヒトHLA-A2と複合体化したCMV-pp65エピトープ-ペプチド(残基495~503、NLVPMVATV)の高親和性認識を示し、PEで標識されている、TCR CMV-pp65-PE STAR(商標)多量体試薬を用いて検出することができる。
この実施例において使用した標的細胞(標的陽性細胞株B、D、E、F、G、H、I、J、及びK)は、ATCC(Manassas VA、U.S.)又はDSMZ(The Leibniz Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulture)(Braunschweig、DE))から入手可能な不死化ヒトがん細胞であった。当技術分野で公知の標準的なフローサイトメトリー法を使用して、標的細胞が、それらの細胞表面上にHLA-A2 MHCクラスI分子及びこの実施例で使用した細胞標的化タンパク質の細胞外標的生体分子の両方を発現することを確認した。一部の実験では、ヒトHLA-A2の発現を増強するように、ヒトがん細胞をヒトインターフェロンガンマ(IFN-γ)で事前処置した。
標的細胞のセットを、カルボキシ末端の融合型ウイルス性CD8+T細胞エピトープを含む細胞標的化分子:SLT-1A::scFv1::C2(配列番号278)、「不活性SLT-1A::scFv2::C2」(配列番号270)、SLT-1A::scFv5::C2(配列番号273)、及びSLT-1A::scFv7::C2(配列番号277)の外来的な投与によって処置したか、又はいずれの融合型異種ウイルス性エピトープ-ペプチドも含まない陰性対照の細胞標的化融合タンパク質(SLT-1A::scFv1(配列番号280)、SLT-1A::scFv2(配列番号282)、「不活性SLT-1A::scFv2」(配列番号281)、SLT-1A::scFv5(配列番号283)、若しくはSLT-1A::scFv7(配列番号286))の外来的な投与によって処置した。これらの実験において使用した細胞標的化分子及び参照分子には、触媒的に活性な細胞毒性の細胞標的化分子、並びに志賀毒素エフェクターポリペプチド成分はすべてが、志賀毒素Aサブユニット及び志賀毒素の触媒活性を大幅に低減させる変異E167Dを含んでいたことを意味する「不活性化」細胞標的化分子の両方が含まれる。これらの処置は、志賀毒素に対する細胞型特異的感受性を考慮して他者により使用されたものと類似の細胞標的化分子濃度で行った(例えば、国際公開第WO2015/113005号パンフレットを参照)。処置した細胞を、次いで、37℃及び5%二酸化炭素の雰囲気を含む標準的な条件下において4~16時間インキュベートして、志賀毒素エフェクターポリペプチドによって媒介される中毒を起こさせた。次いで、細胞を洗浄し、TCR CMV-pp65-PE STAR(商標)多量体試薬とともにインキュベートして、C2ペプチド-HLA-A2複合体提示細胞を「染色」した。
対照として、標的細胞のセットを、3つの条件で処置した:1)いずれの処置も行わない(「未処置」)、すなわち、細胞には緩衝液のみを添加し、いずれの外因性分子の添加も行わない、2)CMV C2ペプチド(CMV-pp65、アミノ酸495~503:配列NLVPMVATV(配列番号21)、BioSynthesis社、Lewisville、TX、U.S.により合成)の外来的投与、及び/又は3)ペプチドローディング増強剤(「PLE」、Altor Biosicence社、Miramar、FL、U.S.)と組み合わせたCMV C2ペプチド(上述の(配列番号21))の外来的投与。C2ペプチド(配列番号21)とPLEとの組合せ処置は、外来的ペプチドローディングを可能にし、陽性対照として機能した。適切なMHCクラスIハプロタイプを呈する細胞は、細胞外空間から(すなわち、適用されたペプチドの細胞内在化の非存在下で)又はB2-ミクログロブリン及び他の成分の混合物であるPLEの存在下において、適切な外来的に適用されるペプチドを強制的にロードすることができる。
処置後に、すべての細胞セットを洗浄し、TCR CMV-pp65-PE STAR(商標)多量体試薬とともに氷上で1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、試料の蛍光を、Accuri(商標)C6フローサイトメーター(BD Biosciences社、San Jose、CA、U.S.)を使用してフローサイトメトリーによって測定して、集団中の細胞に結合した任意のTCR CMV-pp65-PE STAR(商標)多量体の存在(本明細書において「染色」と称される場合がある)を検出し、相対発光単位(RLU)で定量化した。
表5及び図8~12は、細胞表面のC2エピトープ/HLA-A2 MHCクラスI分子の複合体を検出するTCR STAR(商標)アッセイを使用した実験による結果を示す。それぞれの実験に関して、未処置対照試料を使用して、未処置対照の細胞から「陽性」ゲートに入る細胞が1%未満であるゲートを用いて陽性細胞集団及び陰性細胞集団を特定した(バックグラウンドシグナルを表す)。同じゲートを、他の試料に適用して、各試料の陽性集団を特徴付けた。このアッセイにおける陽性細胞は、TCR-CMV-pp65-PE STAR(商標)試薬によって結合され、上述の陽性ゲートに数えられた細胞であった。図8及び図10~12において、フローサイトメトリーのヒストグラムを、Y軸における計数(細胞の数)、及びX軸におけるTCR CMV-pp65 STAR(商標)多量体PE染色シグナルを表す相対蛍光単位(RFU,relative fluorescent unit)とともに示す(対数目盛)。黒色の線は、未処置細胞のみの試料の結果を示し、灰色の線は、陰性対照(いずれのウイルス性エピトープ-ペプチドも含まない親細胞標的化タンパク質のみでの処置)又は特定の細胞標的化タンパク質での処置の結果を示す。図8、11、及び12において、上部パネルは、未処置細胞試料の結果を黒色の線を使用して示し、細胞標的化分子処置試料の結果を灰色の線を使用して示す。図8、11、及び12において、下部パネルは、未処置細胞試料の結果を黒色の線を用いて示し、いずれの融合型エピトープ-ペプチドも含まない対照タンパク質の結果を灰色の線を使用して示す。図10において、上部パネルは、4時間のインキュベーションの結果を示し、下部パネルは16時間のインキュベーションの結果を示す。表5において、C2エピトープ-ペプチド-HLA-A2 MHCクラスI分子複合体の染色が陽性であった、処置セット中の細胞の割合を示す。表5はまた、各処置セットについて、対応する平均蛍光強度指数(「iMFI」、陽性集団の蛍光に陽性パーセントを乗じたもの)をRFUで示す。
表5及び図8~12において見られるように、例示的な細胞標的化タンパク質で処置した細胞試料は、インキュベーション期間に応じて、処置した細胞の大半の表面上に、C2エピトープ/HLA-A2 MHCクラスI分子複合体の発現を呈した。外因性細胞標的化タンパク質SLT-1A::scFv1::C2(配列番号278)又は「不活性SLT-1A::scFv2::C2」(配列番号270)、SLT-1A::scFv5::C2(配列番号274)、及びSLT-1A::scFv7::C2(配列番号277)で処置した細胞は、分析した試料における細胞の33~95%において、細胞表面C2エピトープ/HLA-A2複合体に関する陽性シグナルを示した(表5)。対照的に、陰性対照としていずれの融合型T細胞エピトープ-ペプチドも含有しない親細胞標的化タンパク質で処置した細胞は、処置した細胞集団において細胞の5パーセント又はそれ以下の陽性細胞染色を示した(表5、図8~12)。
この実施例の細胞標的化タンパク質で処置した細胞は大半が細胞表面上にC2エピトープ/HLA-A2複合体を提示したが、「未処置」細胞集団内の細胞は5パーセント又はそれ以下が、C2エピトープ/HLA-A2複合体のTCR STAR(商標)染色を示した(表5、図8、図10)。陽性対照処置は、ペプチドローディング増強剤の存在下において、外因性C2エピトープ-ペプチド(配列番号21)のみをローディングするということのみに起因して、集団内の細胞の99%の強力な染色を示した(図9)。測定したわけではないが、プロセシング効率及び動態に起因して、「細胞標的化タンパク質」処置試料において単一の時点で検出される提示されたC2エピトープ/HLA-A2複合体の割合は、所与の細胞標的化タンパク質による送達後のC2エピトープ/HLA-A2提示の見込まれる最大数を正確に反映しない場合もあり得る。
細胞標的化分子で処置した標的細胞の細胞表面上におけるヒトMHCクラスI分子(C2エピトープ-ペプチド/HLA-A2)と複合体化したT細胞エピトープC2(配列番号21)の検出は、この融合型エピトープ-ペプチド(C2(配列番号21))を含む細胞標的化タンパク質(SLT-1A::scFv1::C2(配列番号278)、「不活性SLT-1A::scFv2::C2」(配列番号270)、SLT-1A::scFv5::C2(配列番号274)、及びSLT-1A::scFv7::C2(配列番号277))が、標的細胞に入り、十分な細胞内経路決定を行い、標的細胞表面による表面提示のために十分なC2(配列番号21)エピトープをMHCクラスI経路に送達することが可能であったことを示した。
本発明の細胞標的化分子によって送達されたT細胞エピトープのMHCクラスI提示によって引き起こされる、細胞毒性T細胞に媒介される中毒化された標的細胞の細胞溶解及び他の免疫応答の試験
この実施例において、当技術分野で公知の標準的なアッセイを使用して、例示的な細胞標的化分子によって送達されたT細胞エピトープの標的細胞によるMHCクラスI提示の機能的結果を調査する。調査する機能的結果には、CTL活性化(例えば、シグナル伝達カスケード誘導)、CTLに媒介される標的細胞殺滅、及びCTLによるCTLサイトカイン放出が含まれる。
CTLに基づく細胞毒性アッセイを使用して、エピトープ提示の結果を評価する。このアッセイは、組織培養した標的細胞及びT細胞を含む。標的細胞を、この実施例の「エピトープ-ペプチドの送達及び標的細胞表面での提示の試験」の下位節などで上述されているように例示的な細胞標的化分子で中毒化する。簡単に述べると、標的陽性細胞を、標準条件下において、細胞標的化分子を含む、異なる外来的に投与した分子とともに、20時間インキュベートする。次に、処置した標的細胞にCTLを添加し、インキュベートして、CTLが、エピトープ-ペプチド/MHCクラスI複合体(pMHC I)を提示する任意の標的細胞を認識し、それに結合できるようにする。次いで、標的細胞へのCTLの結合、CTLに媒介される細胞溶解によるエピトープ提示標的細胞の殺滅、及びIFN-γ又はインターロイキンなどのサイトカインの放出を含む、pMHC I認識に関するある特定の機能的結果を、ELISA又はELISPOTによって、熟練した作業者に公知の標準的な方法を使用して調査する。
細胞標的化分子によって送達されたエピトープを提示する標的化がん細胞による細胞表面エピトープ提示に応答したT細胞の細胞間結合の機能的結果を評価するために、アッセイを行った。
図13及び表6は、製造業者の使用説明書に従って使用したインターフェロンガンマELIspotアッセイ(Mabtech社、Cincinnati、OH、U.S.)の結果を示す。このELISPOTアッセイは、各スポットがIFN-γ分泌細胞を示すとして、IFN-γ分泌を定量化するのに使用することができる。簡単に述べると、標的陽性細胞株Gの細胞試料を、リン酸緩衝食塩水(PBS,phosphate buffered saline)緩衝液のみ(「緩衝液のみ」)、「不活性SLT-1A::scFv2::C2」(配列番号270)、又は参照分子「不活性SLT-1A::scFv2」(配列番号282)のいずれかとともに、20時間インキュベートした。試料をPBSで洗浄し、Cellular Technology Limited社(Shaker Heights、OH、U.S.)から入手したヒトPBMC(HLA-A2血清型)を前もってローディングしたELISPOTプレートに添加した。プレートをさらに24時間インキュベートした後、MabTech社のインターフェロンガンマELIspotアッセイキットの説明書に従ってスポットを検出し、ELISPOTプレートリーダー(Zellnet Consulting社、Fort Lee、NJ、U.S.)を使用して定量化した。
表6及び図13の結果は、細胞株Gの細胞を細胞標的化分子「不活性SLT-1A::scFv2::C2」(配列番号270)とともにインキュベートすることにより、緩衝液のみで処置した細胞試料を使用して決定されたバックグラウンドシグナル又は参照分子「不活性SLT-1A::scFv2」(配列番号282)で処置した試料細胞からのルシフェラーゼシグナルよりも高いPBMCルシフェラーゼ活性シグナルが得られたことを示す。このインビトロでの細胞間免疫細胞結合アッセイからの結果は、志賀毒素エフェクターポリペプチドに媒介される標的陽性がん細胞への融合型エピトープ-ペプチドの送達及びそれに続く標的化がん細胞によるエピトープの細胞表面提示が、機能的結果、特に、PBMCによるIFN-γ分泌を伴う免疫細胞の細胞間結合をもたらし得ることを示した。
エフェクターT細胞が特定のエピトープ-MHC-I複合体を認識すると、T細胞は、活性化T細胞の核因子(NFAT,nuclear factor of activated T-cell)転写因子のサイトゾルから核内への移行を駆動する細胞内シグナル伝達カスケードを開始し得、NFAT応答要素(RE,response element)を含む遺伝子の発現の刺激をもたらし得る(例えば、Macian F, Nat Rev Immunol 5: 472-84 (2005)を参照)。F2ペプチド/ヒトHLA A2 MHCクラスI分子複合体を特異的に認識するヒトT細胞受容体を発現するように改変されたJ76 T細胞株(Berdien B et al., Hum Vaccin Immunother 9: 1205-16 (2013))に、NFAT-REによって制御されるルシフェラーゼ発現ベクター(pGL4.30[luc2P/NFAT-RE/Hygro]、カタログ番号E8481、Promega社、Madison、WI、U.S.)をトランスフェクトした。ルシフェラーゼレポーターをトランスフェクトしたJ76 TCR特異的細胞は、HLA-A2/F2エピトープ-ペプチド(配列番号25)複合体を提示する細胞を認識し、次いで、発現ベクターのNFAT-REに結合するNFAT転写因子によって、ルシフェラーゼの発現が刺激され得る。トランスフェクトしたJ76細胞におけるルシフェラーゼ活性レベルは、標準的なルシフェラーゼ基質を添加し、続いて光検出器を使用して発光レベルを読み取ることによって、定量化することができる。
細胞標的化分子によって送達されたエピトープを提示する標的化がん細胞による細胞表面エピトープ提示の認識後の細胞間T細胞活性化を評価するために、アッセイを行った。簡単に述べると、細胞株Fの細胞試料を、「不活性SLT-1A::scFv6::F2」(配列番号276)、参照分子「不活性SLT-1A::scFv6」(配列番号285)、又は緩衝液単独とともに6時間インキュベートし、次いで、洗浄した。続いて、ルシフェラーゼレポーターをトランスフェクトしたJ76 T細胞を、それぞれの試料と混合し、細胞の混合物を18時間インキュベートした。次に、One-Glo(商標)Luciferase Assay System試薬(Promega社、Madison、WI、U.S.)を使用して、ルシフェラーゼ活性を測定した。図14及び表7は、この細胞間T細胞結合アッセイの結果を示す。
表7及び図14の結果は、細胞標的化分子「不活性SLT-1A::scFv6::F2」(配列番号276)とともにインキュベートすることにより、「緩衝液のみ」で処置した細胞を使用して決定されたバックグラウンドルシフェラーゼ活性シグナル又は陰性対照分子「不活性SLT-1A::scFv6」(配列番号285)で処置した細胞試料からのルシフェラーゼ活性よりも高いルシフェラーゼ活性レベルが得られたことを示す。このインビトロでのT細胞結合アッセイは、志賀毒素エフェクターポリペプチドに媒介される標的陽性がん細胞への融合型エピトープ-ペプチドの送達及びそれに続く標的化がん細胞によるエピトープの細胞表面提示が、T細胞の細胞間結合及びT細胞活性化の細胞内細胞シグナル伝達読取り値特徴をもたらし得ることを示した。
エフェクターT細胞が特定のエピトープ-MHC-I複合体を認識するとき、T細胞は、エフェクターサイトカイン(例えば、IFN-γ)分泌を促進する及び/又は特定のエピトープ-MHC-I複合体を提示する細胞の細胞内免疫細胞媒介殺滅をもたらす、細胞内シグナル伝達カスケードを開始することができる。アッセイを行って、細胞標的化分子により送達されたエピトープを示す標的化がん細胞による細胞表面エピトープ提示を認識した後の、IFN-γのT細胞分泌及びCD8+T細胞媒介細胞毒性を評価した。このアッセイは、本発明の細胞標的化分子により前処置された腫瘍細胞と、特定のpMHC Iを認識することができるT細胞、すなわち、別の提示細胞の表面上のペプチド-MHCクラスI分子複合体を特異的に認識するT細胞受容体を発現するT細胞を含む、末梢血単核細胞(PBMC,peripheral blood mononuclear cell)との共インキュベーションを伴う。
共インキュベーション細胞間T細胞アッセイを次のように行って、IFN-γ分泌及び標的細胞殺滅を測定した。scFv6が結合している細胞外分子に対して標的陽性である細胞株Iの細胞を、500nMの「不活性SLT-1A-DI-4::scFv6::(C2)3」(配列番号253)又はPBSのみ(「緩衝液のみ」)のいずれかとともに37℃で4時間、5パーセントCO2の雰囲気下においてインキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、HLA-A02/C2血清陽性であるPBMCを含有する培地と合わせた。共培養する前に、PBMCをC2ペプチド(配列番号21)の存在下での1~2週間の培養拡大によりC2制限T細胞を強化して、約1~5パーセントのC2反応性T細胞の頻度を得た(これらのPBMCは、本明細書において「C2制限PBMC」と称される)。標的化腫瘍細胞及びC2制限PBMCを、5つのPBMCに対して1つの標的陽性腫瘍細胞(5:1)の比により37℃で24時間、5パーセントのCO2雰囲気下において共インキュベートした。上清を採取し、サイトカイン特異的IFN-γ ELISA Kit(Biolegend社、San Diego、CA、U.S.)を製造会社の使用説明書に従って使用して、IFN-γ濃度を測定した。加えて、上清を採取した後、接着標的陽性腫瘍細胞を洗浄してPBMCを除去し、残った接着細胞の細胞生存率を、製造会社の使用説明書に従ってCellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(G7573、Promega社、Madison、WI、U.S.)により評価した。図15及び16は、IFN-γ分泌及び腫瘍細胞の細胞生存率を測定して細胞間のT細胞認識及び結合をアッセイする、細胞標的化分子処置細胞株I及びHLA-A02/C2ペプチド複合体検出PBMC(C2制限PBMC)の共インキュベーションアッセイの結果を示す。
図15は、IFN-γ ELISAアッセイの結果を示す。結果は、「緩衝液のみ」ではなく、細胞標的化分子「不活性SLT-1A-DI-4::scFv6::(C2)3」(配列番号253)とともにインキュベートした後の腫瘍標的細胞(細胞株I)とC2制限PBMCとの共培養が、IFN-γ分泌の検出によって示されるように、PBMCにおいてT細胞の活性化をもたらすことを示す。
図16は、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assayの結果をRLUによる測定で示す。結果は、「緩衝液のみ」ではなく、細胞標的化分子「不活性SLT-1A-DI-4::scFv6::(C2)3」(配列番号253)とともにインキュベートした後の腫瘍標的細胞(細胞株I)とC2制限PBMCとの共培養が、接着腫瘍標的細胞の生存率パーセントの低減によって示されるように、PBMCにおいて細胞毒性Tリンパ球の活性化及び標的細胞死滅をもたらすことを示す。
IFN-γ ELISA及びCellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viabilityアッセイのデータは、志賀毒素エフェクターポリペプチドに媒介される標的陽性腫瘍細胞への融合型エピトープ-ペプチドの送達及びそれに続く腫瘍細胞におるエピトープの細胞表面提示が、特定のT細胞の活性化をもたらして、エフェクターサイトカインを放出させ、標的腫瘍細胞の死滅を引き起こし得ることを示す(図15~16を参照)。
E:Tの比が5:1で一定に保たれており、細胞標的化分子の濃度が変動した又はPBMCがC2制限PBMCで強化された、別の共培養腫瘍細胞生存率アッセイを行った。使用された細胞は上記と同じものであり、標的細胞は細胞株Iの腫瘍細胞であり、PBMCはC2制限されていた。結果を緩衝液のみの対照と比較した。標的化腫瘍細胞及びC2制限PBMCを、37℃で24時間、5パーセントのCO2雰囲気下において共インキュベートした。接着標的陽性腫瘍細胞を洗浄してPBMCを除去し、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assayを上述のように行った。表8は、この共培養腫瘍細胞生存率アッセイの結果を示し、試験した「不活性SLT-1A-DI-4::scFv6::(C2)3」(配列番号253)の投与濃度は、2μM、0.5μM及び0.125μMに下降的に変動した。データは、IncuCyte(登録商標)S3 Live-Cell Analysis System(EssenBioscience社、Ann Arbor、MI、U.S.)により測定して、接着細胞の生存率のパーセントにおける低減を0時点(ベースライン生存率)に正規化して表す。IncuCyte(登録商標)S3 Live-Cell画像化研究では、細胞を標準的な96ウェル組織培養プレートに播種し、標準的な条件下において培養した。データを、製造会社から提供された標準的なプロトコールにより、ウェル1つ当たり4つまでの画像から、位相、赤色及び緑色の蛍光による読取り値として得た。この試料における比較には、関連するC2ペプチド(配列番号253)との共培養の前に1週間培養拡大した、又は関連するC2ペプチド(配列番号21)との共培養の前に1週間培養拡大したPBMCを5:1のE:Tで含むことが含まれる。
表8のデータは、本発明の細胞標的化分子により誘導された標的腫瘍細胞死滅の量が、標的腫瘍細胞に投与された細胞標的化分子の濃度及びPBMCの強化に依存していることを示す。「不活性SLT-1A-DI-4::scFv6::(C2)3」(配列番号253)により前処置された標的陽性腫瘍細胞及びC2制限PBMCの共培養は、接着標的腫瘍細胞生存率パーセントに約35~65パーセントの低減をもたらした。0.125μMの低さの細胞標的化分子濃度では、35パーセントを超える接着標的細胞がC2制限PBMC試料において殺滅された。この効果は用量依存的であり、細胞標的化分子濃度の0.5μM及び2μMは、細胞生存率にそれぞれ約50及び65パーセントの低減を誘導した。表8の結果は、標的細胞に投与された細胞標的化分子の濃度が全体的なT細胞活性化及びそれに続く標的腫瘍細胞の殺滅に影響を与えることを示す。
上記の実験において、PBMCと腫瘍細胞の比は5対1であった。このPBMCエフェクター細胞と標的細胞(「E:T」)の比が変動する追加の実験を行った。標的腫瘍細胞(細胞株I)を「不活性SLT-1A-DI-4::scFv6::(C2)3」(配列番号253)と500nMの濃度により37℃で4時間、5パーセントのCO2の雰囲気下においてインキュベートし、続いてPBMCと様々なE:T比により37℃で3日間、5パーセントのCO2の雰囲気下において共培養した。表9は、共培養の80時間後にIncuCyte(登録商標)S3 Live-Cell Analysis Systemによるコンフルエンスで測定した、このアッセイにおける細胞生存率の結果を示す。データは、アッセイエンドポイントでの緩衝液のみの対照に対する生存率パーセントとして表す。比較は、PBMCと標的細胞の様々なE:T比(E:T=5:1、1:1、0.5:1及び0.1:1)の存在下における固定用量の細胞標的化分子又は「緩衝液のみ」による処置の文脈による条件を示している。
表9のデータは、本発明の細胞標的化分子により誘導された標的腫瘍細胞死滅の量がE:T比に依存していることを示す。表9は、E:T比の5:1で接着細胞生存率に少なくとも60パーセントの低減が観察されたことを報告する。したがって、60パーセントを超える接着標的細胞が、80時間後に殺滅された。PBMCの低減比が大きいほど、少ない接着細胞が80時間後に殺滅された。低いE:T比(1:1及び0.5:1)で試験すると、40パーセント未満の接着標的細胞が殺滅された。緩衝液のみの対照では、20パーセント未満の接着標的細胞が最高のE:T比の5:1で殺滅された。表8及び9の結果は、標的腫瘍細胞に対するPBMCの比及び標的腫瘍細胞に投与された細胞標的化分子の濃度の両方が、本発明の細胞標的化分子とのインキュベーションにより誘導された腫瘍細胞細胞毒性の機構に寄与していることを示し、多量の細胞標的化分子及び/又はPBMCは、両方とも標的細胞死滅の増加と相関していることを示す。
抗原特異的T細胞活性化は、近隣細胞との相互作用及び免疫細胞クラスター形成表現型の増加と関連している(例えば、Butz E, Bevan M, Immunity 8: 167-75 (1998)を参照)。このことを調査するため、別の共インキュベーション細胞間T細胞アッセイを次のように行って、MHCクラスI分子と複合体化した送達C2エピトープを提示する標的細胞に応答してクラスター形成するリンパ球を測定した。標的細胞(細胞株I)を、上述のように500nMの「不活性SLT-1A-DI-4::scFv6::(C2)3」(配列番号253)と24時間インキュベートし、次いでC2制限PBMCと共インキュベートした。これらの実験において、PBMCにおけるPBMCエフェクターを、培養ウェル内で細胞の数及び位置を追跡するのに使用される膜透過性色素であるカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で前標識した。共インキュベートした後、培養ウェル中の個別のPBMCを、IncuCyte(登録商標)S3 Live-Cell Analysis System(EssenBioscience社、Ann Arbor、MI、U.S.)を使用して4~6時間毎に画像化した。CFSE陽性細胞の総数及びCFSEシグナルの平均強度を、製造会社のプロトコールを使用してIncuCyte(登録商標)S3ソフトウェアスートにより計算した。免疫細胞クラスター(100ミクロンを超えるCFSE陽性細胞クラスター)をPrism(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)によりプロットし、これらの実験の結果を図17に示す。
図17は、標的細胞株I及びC2制限PBMCの共インキュベーション細胞間結合アッセイの結果を、リンパ球クラスター形成の測定により示す。図17の結果は、腫瘍細胞と、「緩衝液のみ」ではなく、細胞標的化分子「不活性SLT-1A-DI-4::scFv6::(C2)3」(配列番号253)とのインキュベーションが、PBMCにおける細胞クラスター形成の活性化をもたらすことを、100ミクロンを超えるサイズのクラスターへの細胞の凝集を測定することによって示す。加えて、これらのPBMC細胞クラスターは長時間の持続性を示し、本発明の細胞標的化分子による処置が、共培養により長期T細胞結合を促進し得ることを実証している(少なくとも140時間の持続期間を示す図17を参照)。
これまでの実験データの大部分は、例示的な細胞標的化分子「不活性SLT-1A-DI-4::scFv6::(C2)3」(配列番号253)に基づいている。ここでは、別の例示的な細胞標的化分子「不活性SLT-1A-DI-1::scFv8::C2」(配列番号254)を試験した実験結果を報告する。
共インキュベーション細胞間T細胞アッセイを次のように行って、腫瘍細胞を「不活性SLT-1A-DI-1::scFv8::C2」(配列番号254)で処置することにより誘導された細胞間T細胞結合(例えば、標的腫瘍細胞殺滅)の誘導を定量化した。scFv8が結合している細胞外分子に対してそれぞれ標的陽性である細胞株I、J又はKの細胞を、100nM又は500nMの「不活性SLT-1A-DI-1::scFv8::C2」(配列番号254)又は「緩衝液のみ」のいずれかとともに37℃で4時間、5パーセントCO2の雰囲気下においてインキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、「C2制限PBMC」を含有する培地と合わせた。標的化腫瘍細胞及びC2制限PBMCを、5つのC2制限PBMCに対して1つの標的陽性腫瘍細胞(5:1)の比により37℃で24時間、5パーセントのCO2雰囲気下において共インキュベートした。上清を採取し、サイトカイン特異的IFN-γ ELISA Kit(Biolegend社、San Diego、CA、U.S.)を製造会社の使用説明書に従って使用して、IFN-γ濃度を測定した。上清を採取した後、接着標的陽性腫瘍細胞を洗浄してPBMCを除去し、残った接着細胞の細胞生存率を、製造会社の使用説明書に従ってCellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(G7573、Promega社、Madison、WI、U.S.)によりRLUで評価した。対照として、並行実験を、100nM及び500nMの細胞標的化分子「不活性SLT-1A-DI-1::scFv8」(配列番号256)により行い、これは、いずれかのC2エピトープ(配列番号21)成分を欠いているが、それ以外は「不活性SLT-1A-DI-1::scFv8::C2」(配列番号254)と100%の同一性を共有する。
図18及び19は、これらの共インキュベーションアッセイの結果を、標的陽性腫瘍細胞株I、J及びKを使用し、異なる濃度で試験した細胞標的化分子を使用して示す。結果は、標的陽性腫瘍細胞を「不活性SLT-1A-DI-1::scFv8::C2」(配列番号254)とともにインキュベートすること及びC2制限PBMCと共インキュベーションすることが、IFN-γ分泌により測定してT細胞活性化をもたらし(図18)、PBMCによる腫瘍細胞殺滅を誘導し(図19)、両方の効果が細胞標的化分子濃度依存的に生じることを示す。結果は、「緩衝液のみ」又はC2エピトープ-ペプチドを欠いている陰性対照細胞標的化分子「不活性SLT-1A-DI-1::scFv8」(配列番号256)のいずれも、試験した用量にかかわらず、48時間の共培養後にIFN-γ分泌を誘導できなかった(図18)又は96時間の共培養の間に標的細胞死滅を誘導できなかった(図19)ことを示す。さらに、これらのデータは、本発明の1つの例示的な細胞標的化分子が、一連の異なる腫瘍細胞型に、提示が細胞間T細胞結合及び標的化T細胞の作用による標的細胞殺滅をもたらすように、CD8+T細胞エピトープをMHC I提示にために送達することに成功する能力を示す。
これまでの実験データの大部分は、本発明の例示的な細胞標的化分子の「不活性」形態に基づいている。ここでは、本発明の例示的な細胞標的化分子の「活性形態」を試験した実験結果を報告する。活性細胞標的化分子は、本明細書の実施例において、触媒活性である志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む細胞標的化分子を指すために使用される。例示的な細胞標的化分子SLT-1A-DI-1::scFv8::C2(配列番号255)は、1つのアミノ酸のみがアミノ酸置換E168Dと異なる点において「不活性SLT-1A-DI-1::scFv8::C2」(配列番号254)と非常に緊密に関連している(この分子は全体的に99.8%の同一性を共有し、志賀毒素エフェクターポリペプチド成分間では99.6%の同一性を共有する)。SLT-1A-DI-1::scFv8::C2(配列番号255)は、野生型志賀毒素A1フラグメントと同程度の触媒活性を有し、それが存在する細胞を殺滅できる志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドに関して、本明細書において活性であるとみなす。
共インキュベーション細胞間T細胞アッセイは、腫瘍細胞を本発明の活性細胞標的化分子で処理して誘導された細胞間T細胞結合(例えば、標的腫瘍細胞殺滅及びT細胞活性化)を定量化するため、活性SLT-1A-DI-1::scFv8::C2(配列番号255)を使用して上述のように行った。簡単に述べると、細胞株Iの細胞を「緩衝液のみ」又は30若しくは100nMの細胞標的化分子SLT-1A-DI-1::scFv8::C2(配列番号255)とともに4時間にわたって前インキュベートし、次いでC2制限PBMCと37℃48~96時間、5パーセントのCO2雰囲気下において共培養した。陰性対照として、並行実験を、30nM又は100nMの細胞標的化分子SLT-1A-DI-1::scFv8(配列番号257)により行い、これは、いずれかのC2エピトープ(配列番号21)成分を欠いているが、それ以外はSLT-1A-DI-1::scFv8::C2(配列番号255)と100%の同一性を共有する。図20は、共インキュベーションアッセイの結果を示す。
上清を共培養の48時間後に採取し、上述のサイトカイン特異的IFN-γ ELISAアッセイを使用して、IFN-γ濃度を測定した。図20は、IFN-γ ELISAアッセイの結果を示す。96時間の共培養の後、接着標的陽性腫瘍細胞を洗浄してPBMCを除去し、残った接着細胞の細胞生存率を、上述のCellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assayを使用して評価した。図20は、上述のIncuCyte(登録商標)S3 Live-Cell Analysis Systemを使用してRLUでコンフルエンスを測定することによって、接着細胞生存率アッセイの結果を示す。
図20に示されている結果は、本発明の細胞標的化分子の触媒活性形態が、より直接的な作用機構:リボソーム阻害による細胞殺滅及びプログラム細胞死の誘導を超えるIFN-γ分泌及び免疫細胞依存性標的細胞殺滅の誘導を測定すると、T細胞活性化の促進において不活性細胞標的化分子と類似して機能し得ることを示す。これらの結果は、協調的に機能してより多くの標的細胞死滅をMHCクラスIエピトープ特異的制限PBMCの存在下で誘導し得る少なくとも2つの特有の作用機構により、免疫活性化を促進し、標的腫瘍細胞殺滅を誘導する、本発明の例示的な細胞標的化分子の能力を示す。
加えて、エピトープ-ペプチド/MHCクラスI複合体(pMHC I)を提示する標的細胞によるCTLの活性化は、市販入手可能なCTL応答アッセイ、例えば、CytoTox96(登録商標)非放射性アッセイ(Promega、Madison、WI、U.S.)、グランザイムB ELISpotアッセイ(Mabtech社、Cincinnati、OH、U.S.)、カスパーゼ活性アッセイ、及びLAMP-1転移フローサイトメトリーアッセイを使用して、定量化する。標的細胞のCTL媒介性殺滅を特に監視するために、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、carboxyfluorescein succinimidyl ester)を、当該技術分野で説明されているように、インビトロ及びインビボでの調査で標的細胞に使用する(例えば、Durward M et al., J Vis Exp 45 pii 2250 (2010)を参照されたい)。
志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及びCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを含む黒色腫細胞標的化分子
この実施例において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは上述のように志賀様毒素1のAサブユニット(SLT-1A)に由来し、アミノ酸残基置換が脱免疫化(例えば、国際公開第WO2015/113005号パンフレット、同第WO2015/113007号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレットを参照)、CD8+T細胞超免疫化(例えば、国際公開第WO2015/113005号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレットを参照)、及び例えばR248A/R251A(国際公開第WO2015/191764号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレット)などのフューリン切断抵抗性を付与する。ヒトCD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、MHC I分子結合予測、HLA型、すでに特徴決定されている免疫原性、及び/又はC1-2エピトープ-ペプチドGLDRNSGNY(配列番号20)などの上述の容易に利用可能な試薬に基づいて選択される。タンパク質性結合領域は、黒色腫細胞に結合するSLA-1Aエフェクターポリペプチドに挿入される(例えば、Cheung M et al., Mol Cancer 9: 28 (2010)を参照)。
黒色腫細胞標的化融合タンパク質の構築及び産生
志賀毒素エフェクターポリペプチド及びCD8+T細胞エピトープを一緒に融合させて、CD8+T細胞エピトープが志賀毒素エフェクターポリペプチドに組み込まれても、挿入されてもいないような単一の連続ポリペプチドを形成する。
黒色種細胞標的化分子のインビトロ特徴の判定
黒色種細胞へのこの実施例の細胞標的化分子の結合特徴は、蛍光に基づいたフローサイトメトリーによって判定する。陽性細胞に対するこの実施例のある特定の黒色種細胞標的化融合タンパク質のBmaxを測定して、およそ50,000~200,000MFIであり、KDは、0.01~100nMの範囲内である。
この実施例の黒色種細胞標的化融合タンパク質のリボソーム不活性化能力は、前の実施例において上述された無細胞インビトロタンパク質翻訳によって判定する。無細胞タンパク質合成におけるこの実施例の細胞標的化分子の阻害効果は、有意なものである。ある特定の黒色腫細胞標的化融合タンパク質では、この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成のIC50は、およそ0.1~100pMである。
黒色腫細胞標的化分子のCD8+エピトープ-ペプチドカーゴ送達機能の判定
T細胞エピトープの送達の成功は、特定の細胞表面のMHCクラスI分子/エピトープ複合体(pMHC I)を検出することによって判定することができる。細胞標的化分子が、標的細胞のMHCクラスI提示経路にCD8+T細胞エピトープカーゴを送達することができるかどうかを試験するために、特定のエピトープと複合体化したヒトMHCクラスI分子を検出する日常的なアッセイ、例えば、実施例1及び2に記載された1つ又は2つ以上のアッセイなどを利用した。
黒色腫細胞標的化融合タンパク質で処置された黒色腫細胞は、インキュベーション持続期間に応じて多くの場合に大部分の処置された細胞の細胞表面にC1-2エピトープ/MHCクラスI複合体の陽性シグナルを示す。細胞標的化分子処置標的細胞の細胞表面上のヒトMHCクラスI分子と複合体化したT細胞エピトープ(例えば、C1-2(配列番号20))の検出は、細胞標的化分子が、標的黒色腫細胞に入り、十分な細胞内経路決定を行い、標的細胞による表面提示のために十分なCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴをMHCクラスI経路に送達できることを示す。
細胞殺滅アッセイを使用する黒色腫細胞標的化分子の細胞毒性の判定
この実施例の黒色腫細胞標的化融合タンパク質の細胞毒性の特徴は、黒色腫細胞を使用する前の実施例に上述された一般的な細胞殺滅アッセイにより判定する。この実施例の細胞標的化分子のCD50値は、細胞株に応じて黒色腫細胞でおよそ0.01~100nMである。加えて、送達されたCD8+T細胞エピトープを提示する黒色腫標的細胞への分子間CD8+T細胞結合及びこの実施例の黒色腫細胞標的化融合タンパク質の細胞毒性の誘導は、当業者に公知である及び/又は本明細書に記載されたアッセイを使用して、CTL媒介細胞毒性をもたらす異種CD8+T細胞エピトープの送達及び提示による間接的な細胞毒性について調査する。
動物モデルを使用する黒色腫細胞標的化分子のインビボ効果の判定
動物モデルを使用して、黒色腫細胞に対するこの実施例のある特定の黒色腫細胞標的化融合タンパク質のインビボ効果を判定する(例えば、Cheung M et al., Mol Cancer 9: 28 (2010)を参照)。様々な系統のマウスを使用して、マウスにおけるヒト黒色腫細胞に対するこの実施例の黒色腫細胞標的化融合タンパク質の静脈内投与の効果を試験する。細胞殺滅効果は、直接的な細胞毒性、並びに当業者に公知である及び/又は本明細書に記載されたアッセイを使用して、CTL媒介細胞毒性をもたらすCD8+T細胞エピトープの送達及び提示による間接的な細胞毒性の両方について調査する。この実施例の細胞標的化分子の「不活性」バリアント(例えば、E167D)を使用して、細胞標的化分子のいずれかの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の触媒活性の非存在下において、CD8+T細胞エピトープ送達による間接的細胞毒性を調査してもよい。
志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及びCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを含むMHC-エピトープ複合体標的化細胞標的化分子
この実施例において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは上述のように志賀様毒素1のAサブユニット(SLT-1A)に由来し、アミノ酸残基置換が脱免疫化(例えば、国際公開第WO2015/113005号パンフレット、同第WO2015/113007号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレットを参照)、CD8+T細胞超免疫化(例えば、国際公開第WO2015/113005号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレットを参照)、及び例えばR248A/R251A(国際公開第WO2015/191764号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレット)などのフューリン切断抵抗性を付与する。ヒトCD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、MHC I分子結合予測、HLA型、すでに特徴決定されている免疫原性、及び/又はC1-2エピトープ-ペプチドGLDRNSGNY(配列番号20)などの上述の容易に利用可能な試薬に基づいて選択される。タンパク質性結合領域は、例えばWT1 ab1(米国特許出願第2014/294841号)などの特定のエピトープ-ペプチドMHC分子複合体に特異的なT受容体様抗体由来であり、ウィルムス腫瘍遺伝子タンパク質(WT1)エピトープ-ペプチドRMFPNAPYL(配列番号798)に結合したHLA-A0201に特異的に結合することができる。HLA-A2-WT1複合体は、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫(MM)、急性リンパ茅球性白血病(ALL)、急性骨髄球性(myeloid)/骨髄性(myelogenous)白血病(AML)及び骨髄異形成症候群(MDS)がん細胞などの、様々ながん型により発現され得る。
MHC-エピトープ複合体標的化細胞標的化融合タンパク質の構築及び産生
免疫グロブリン型結合領域αHLA-WTR1、志賀毒素エフェクターポリペプチド及びCD8+T細胞エピトープを一緒に融合させて、「SLT-1A::C1-2::αHLA-WT1」又は「SLT-1A::αHLA-WT1::C1-2」などの単一の連続ポリペプチドを形成し、得られたポリペプチドのカルボキシ末端にKDEL(配列番号750)を付加してもよい。
MHC-エピトープ複合体標的化細胞標的化分子のインビトロ特徴の判定
特定のMHC I分子-エピトープ複合体陽性細胞及び陰性細胞へのこの実施例の細胞標的化分子の結合特徴は、蛍光に基づいたフローサイトメトリーによって判定する。陽性細胞に対するこの実施例のある特定のMHC-エピトープ複合体標的化細胞標的化融合タンパク質のBmaxを測定して、およそ50,000~200,000MFIであり、KDは0.01~100nMの範囲内であるが、このアッセイにおいて対応するMHC-エピトープ複合体陰性細胞には有意に結合しない。
この実施例のMHC-エピトープ複合体標的化細胞標的化融合タンパク質のリボソーム不活性化能力は、前の実施例において上述された無細胞インビトロタンパク質翻訳によって判定する。無細胞タンパク質合成におけるこの実施例の細胞標的化分子の阻害効果は、有意なものである。ある特定のMHC-エピトープ複合体標的化細胞標的化融合タンパク質では、この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成のIC50は、およそ0.1~100pMである。
MHC-エピトープ複合体標的化細胞標的化分子のCD8+エピトープ-ペプチドカーゴ送達機能の判定
T細胞エピトープの送達の成功は、特定の細胞表面のMHCクラスI分子/エピトープ複合体(pMHC I)を検出することによって判定することができる。細胞標的化分子が、標的細胞のMHCクラスI提示経路にCD8+T細胞エピトープカーゴを送達することができるかどうかを試験するために、特定のエピトープと複合体化したヒトMHCクラスI分子を検出する日常的なアッセイ、例えば、実施例1及び2に記載された1つ又は2つ以上のアッセイなどを利用した。
MHC-エピトープ複合体標的化細胞標的化融合タンパク質で処置された細胞は、インキュベーション持続期間に応じて多くの場合に大部分の処置された細胞の細胞表面にC1-2エピトープ/MHCクラスI複合体の陽性シグナルを示す。細胞標的化分子処置標的細胞の細胞表面上のヒトMHCクラスI分子と複合体化したT細胞エピトープC1-2(配列番号20)の検出は、細胞標的化分子が、標的細胞に入り、十分な細胞内経路決定を行い、標的細胞による表面提示のために十分なCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴをMHCクラスI経路に送達できることを示す。
細胞殺滅アッセイを使用するMHC-エピトープ複合体標的化細胞標的化分子の細胞毒性の判定
この実施例のMHC-エピトープ複合体標的化細胞標的化融合タンパク質の細胞毒性の特徴は、特定のMHC-エピトープ複合体陽性細胞を使用して、前の実施例に上述された一般的な細胞殺滅アッセイにより判定する。加えて、この実施例の同じMHC-エピトープ複合体標的化細胞標的化融合タンパク質の選択的細胞毒性の特徴は、対応するMHC-エピトープ複合体陰性細胞を適切なMHC-エピトープ複合体陽性細胞に対する比較として使用して、同じ一般的な細胞殺雌アッセイにより判定する。この実施例の細胞標的化分子のCD50値は、細胞株に応じてMHC-エピトープ複合体陽性細胞でおよそ0.01~100nMである。この実施例のMHC-エピトープ複合体標的化細胞標的化融合タンパク質のCD50値は、細胞表面に適切なMHC-エピトープ複合体を発現する細胞と比較して、細胞表面に適切なMHC-エピトープ複合体を発現しない細胞ではおよそ10~10,000倍大きい(細胞毒性が少ない)。加えて、C1-2提示標的細胞への分子間CD8+T細胞結合及びこの実施例のMHC-エピトープ複合体標的化細胞標的化融合タンパク質の細胞毒性の誘導は、当業者に公知である及び/又は本明細書に記載されたアッセイを使用して、CTL媒介細胞毒性をもたらす異種CD8+T細胞エピトープの送達及び提示による間接的な細胞毒性について調査する。
動物モデルを使用するMHC-エピトープ複合体標的化細胞標的化分子のインビボ効果の判定
動物モデルを使用して、新生物細胞に対するこの実施例のある特定のMHC-エピトープ複合体標的化細胞標的化融合タンパク質のインビボ効果を判定する。様々な系統のマウスを使用して、マウスにおける特定のMHC-エピトープ複合体陽性細胞に対するこの実施例のMHC-エピトープ複合体標的化細胞標的化融合タンパク質の静脈内投与の効果を試験する。細胞殺滅効果は、直接的な細胞毒性、並びに当業者に公知である及び/又は本明細書に記載されたアッセイを使用して、CTL媒介細胞毒性をもたらすCD8+T細胞エピトープの送達及び提示による間接的な細胞毒性の両方について調査する。この実施例の細胞標的化分子の「不活性」バリアント(例えば、E167D)を使用して、細胞標的化分子のいずれかの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の触媒活性の非存在下において、CD8+T細胞エピトープ送達による間接的細胞毒性を調査してもよい。
志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及びCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを含むIL-2R標的化細胞標的化分子
この実施例において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは上述のように志賀様毒素1のAサブユニット(SLT-1A)に由来し、アミノ酸残基置換が脱免疫化(例えば、国際公開第WO2015/113005号パンフレット、同第WO2015/113007号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレットを参照)、CD8+T細胞超免疫化(例えば、国際公開第WO2015/113005号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレットを参照)、及び例えばR248A/R251A(国際公開第WO2015/191764号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレット)などのフューリン切断抵抗性を付与する。ヒトCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを、MHC I分子結合予測、HLA型、すでに特徴付けられている免疫原性、及び/又は上述のような容易に入手可能な試薬、例えば、C1-2エピトープ-ペプチドGLDRNSGNY(配列番号20)に基づいて選択する。タンパク質性の結合領域は、ヒトインターロイキン2受容体(IL-2R)のリガンド(サイトカインインターロイキン2又はIL-2)に由来し、これは、ヒトIL-2Rの細胞外部分に特異的に結合することができる。IL-2Rは、T細胞及びナチュラルキラー細胞などの様々な免疫細胞型によって発現される細胞表面受容体である。
IL-2Rを標的とする細胞標的化融合タンパク質の構築及び産生
リガンド型結合領域αIL-2R、志賀毒素エフェクターポリペプチド、及びCD8+T細胞エピトープを、一緒に融合して、単一の連続的なポリペプチド、「C1-2::SLT-1A::IL-2」又は「IL-2::C1-2::SLT-1A」を形成し、得られたポリペプチドのカルボキシ末端に、KDEL(配列番号750)を付加してもよい。
IL-2Rを標的とする細胞標的化分子のインビトロ特徴の判定
IL-2R陽性細胞及びIL-2R陰性細胞に対するこの実施例の細胞標的化分子の結合特徴を、蛍光に基づくフローサイトメトリーによって判定する。陽性細胞に対する、この実施例のIL-2Rを標的とするある特定の細胞標的化融合タンパク質のBmaxを測定すると、およそ50,000~200,000MFIであり、KDは、0.01~100nMの範囲内であるが、このアッセイにおいてIL-2R陰性細胞に対する有意な結合は存在しない。
この実施例のIL-2Rを標的とする細胞標的化融合タンパク質のリボソーム不活性化能力を、前述の実施例に記載のように、無細胞インビトロタンパク質翻訳において判定する。無細胞タンパク質合成に対するこの実施例の細胞標的化分子の阻害効果は、有意である。IL-2Rを標的とするある特定の細胞標的化融合タンパク質に関して、この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するIC50は、およそ0.1~100pMである。
IL-2R標的化細胞標的化分子のCD8+エピトープ-ペプチドカーゴ送達機能の判定
T細胞エピトープの送達の成功は、特定の細胞表面のMHCクラスI分子/エピトープ複合体(pMHC I)を検出することによって判定することができる。細胞標的化分子が、標的細胞のMHCクラスI提示経路にCD8+T細胞エピトープカーゴを送達することができるかどうかを試験するために、特定のエピトープと複合体化したヒトMHCクラスI分子を検出する日常的なアッセイ、例えば、実施例1及び2に記載された1つ又は2つ以上のアッセイなどを利用した。
IL-2R標的化細胞標的化融合タンパク質で処置された細胞は、インキュベーション持続期間に応じて多くの場合に大部分の処置された細胞の細胞表面にC1-2エピトープ/MHCクラスI複合体の陽性シグナルを示す。細胞標的化分子処置標的細胞の細胞表面上のヒトMHCクラスI分子と複合体化したT細胞エピトープC1-2(配列番号20)の検出は、細胞標的化分子が、標的細胞に入り、十分な細胞内経路決定を行い、標的細胞による表面提示のために十分なCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴをMHCクラスI経路に送達できることを示す。
細胞殺滅アッセイを使用したIL-2Rを標的とする細胞標的化分子の細胞毒性の判定
この実施例のIL-2Rを標的とする細胞標的化融合タンパク質の細胞毒性特徴を、前述の実施例に記載のように、IL-2R陽性細胞を使用して、一般的な細胞殺滅アッセイによって判定する。加えて、この実施例のIL-2Rを標的とする同じ細胞標的化融合タンパク質の選択的細胞毒性の特徴を、IL-2R陰性細胞を使用して、IL-2R陽性細胞との比較として、同じ一般的な細胞殺滅アッセイによって判定する。この実施例の細胞標的化分子のCD50値は、細胞株に応じて、IL-2R陽性細胞ではおよそ0.01~100nMである。この実施例のIL-2Rを標的とする細胞標的化融合タンパク質のCD50値は、細胞表面上にIL-2Rを発現する細胞と比較して、細胞表面上にIL-2Rを発現しない細胞では、およそ10~10,000倍高い(細胞毒性が低い)。加えて、CD8+T細胞とC1-2提示標的細胞との分子間結合及びこの実施例のIL-2Rを標的とする細胞標的化融合タンパク質の細胞毒性の誘導を、熟練した作業者に公知の及び/又は本明細書で説明されるアッセイを使用して、異種CD8+T細胞エピトープ送達及びCTL媒介性細胞毒性をもたらす提示による間接的な細胞毒性に関して調査する。
動物モデルを使用したIL-2Rを標的とする細胞標的化分子のインビボでの効果の判定
動物モデルを使用して、新生物細胞に対するこの実施例のIL-2Rを標的とするある特定の細胞標的化融合タンパク質のインビボでの効果を判定する。様々なマウス株を使用して、マウスにおけるIL-2R陽性細胞に対する、この実施例のIL-2Rを標的とする細胞標的化融合タンパク質の静脈内投与の効果を試験する。細胞殺滅効果を、熟練した作業者に公知の及び/又は本明細書で説明されるアッセイを使用して、直接的な細胞毒性、並びにCD8+T細胞エピトープ送達及びCTL媒介性細胞毒性をもたらす提示による間接的な細胞毒性の両方に関して調査する。この実施例の細胞標的化分子の「不活性」バリアント(例えば、E167D)を使用して、細胞標的化分子のあらゆる志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の触媒活性の不在下におけるCD8+T細胞エピトープ送達による間接的な細胞毒性を調査してもよい。
志賀毒素エフェクターポリペプチド及び異種CD8+T細胞エピトープを含む、CEAを標的とする細胞標的化分子
成人したヒトにおける癌胎児性抗原(CEA)の発現は、がん細胞、例えば、乳房、結腸、肺、膵臓、及び胃の腺癌などと関連している。この実施例において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは上述のように志賀毒素のAサブユニット(StxA)(配列番号2)に由来し、アミノ酸残基置換が脱免疫化(例えば、国際公開第WO2015/113005号パンフレット、同第WO2015/113007号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレットを参照)、CD8+T細胞超免疫化(例えば、国際公開第WO2015/113005号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレットを参照)、及び例えばR248A/R251A(国際公開第WO2015/191764号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレット)などのフューリン切断抵抗性を付与する。ヒトCD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、MHC I分子結合予測、HLA型、すでに特徴付けられている免疫原性、及び/又は上述のような容易に入手可能な試薬に基づいて選択され、例えば、国際公開第2015/113005号パンフレット及び国際公開第2016/196344号パンフレットに記載のF3-エピトープILRGSVAHK(配列番号26)である。ヒト癌胎児性抗原(CEA、carcinoembryonic antigen)上の細胞外抗原に特異的かつ高親和性で結合する、免疫グロブリン型結合領域αCEA、例えば、Pirie C et al., J Biol Chem 286: 4165-72 (2011)に記載されるような第10ヒトフィブロネクチンIII型ドメインに由来する結合領域C743。
CEAを標的とする細胞標的化分子の構築、産生、及び精製
志賀毒素エフェクターポリペプチド、αCEA結合領域ポリペプチド、及び異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドを、熟練した作業者に公知の標準的な方法を使用して、作動可能に一緒に連結させて、本発明の細胞標的化分子を形成する。例えば、StxA::αCEA::F3、StxA::F3::αCEA、αCEA::StxA::F3、F3::αCEA::StxA、αCEA::F3::StxA、及びF3::StxA::αCEAのうちの1つ又は2つ以上をコードするポリヌクレオチドを発現させることによって、融合タンパク質を産生させるが、これらは、それぞれ、融合型タンパク質性成分の間に本明細書に記載される1つ又は2つ以上のタンパク質性リンカーを有していてもよい。CEAを標的とするこれらの例示的な融合タンパク質の発現は、前述の実施形態に記載のように、細菌及び/又は無細胞タンパク質翻訳系のいずれかを使用して達成する。
CEAを標的とする例示的な細胞標的化融合タンパク質のインビトロでの特徴の判定
CEA陽性細胞及びCEA陰性細胞に対するこの実施例の細胞標的化分子の結合特徴を、蛍光に基づくフローサイトメトリーによって判定する。CEA陽性細胞に対するStxA::αCEA::F3、StxA::F3::αCEA、αCEA::StxA::F3、F3::αCEA::StxA、αCEA::F3::StxA、及びF3::StxA::αCEAのBmaxを、それぞれ測定すると、およそ50,000~200,000MFIであり、KDは、0.01~100nMの範囲内であるが、このアッセイにおいてCEA陰性細胞に対する有意な結合は存在しない。
この実施例の融合タンパク質のリボソーム不活性化能力を、前述の実施例に記載のように、無細胞インビトロタンパク質翻訳において判定する。この実施例の細胞毒性融合タンパク質の、無細胞タンパク質合成に対する阻害効果は、有意である。StxA::αCEA::F3、StxA::F3::αCEA、αCEA::StxA::F3、F3::αCEA::StxA、αCEA::F3::StxA、及びF3::StxA::αCEAに関して測定した、この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するIC50値は、それぞれ、およそ0.1~100pMである。
CEA標的化細胞標的化分子のCD8+エピトープ-ペプチドカーゴ送達機能の判定
T細胞エピトープの送達の成功は、特定の細胞表面のMHCクラスI分子/エピトープ複合体(pMHC I)を検出することによって判定することができる。細胞標的化分子が、標的細胞のMHCクラスI提示経路にCD8+T細胞エピトープカーゴを送達することができるかどうかを試験するために、特定のエピトープと複合体化したヒトMHCクラスI分子を検出する日常的なアッセイ、例えば、実施例1及び2に記載された1つ又は2つ以上のアッセイなどを利用した。
CEA標的化細胞標的化融合タンパク質で処置された細胞は、インキュベーション持続期間に応じて多くの場合に大部分の処置された細胞の細胞表面にF3エピトープ/MHCクラスI複合体の陽性シグナルを示す。細胞標的化分子処置標的細胞の細胞表面上のヒトMHCクラスI分子と複合体化したCD8+T細胞エピトープF3(配列番号26)の検出は、細胞標的化分子が、標的細胞に入り、十分な細胞内経路決定を行い、標的細胞による表面提示のために十分なCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴをMHCクラスI経路に送達できることを示す。
細胞殺滅アッセイを使用したCEAを標的とする例示的な細胞標的化融合タンパク質の細胞毒性の判定
この実施例の細胞標的化分子の細胞毒性特徴を、前述の実施例に記載のように、CEA陽性細胞を使用して、一般的な細胞殺滅アッセイによって判定する。加えて、CEAを標的とする例示的な細胞標的化融合タンパク質の選択的細胞毒性特徴を、CEA陰性細胞を使用して、CEA抗原陽性細胞との比較として、同じ一般的な細胞殺滅アッセイによって判定する。StxA::αCEA::F3、StxA::F3::αCEA、αCEA::StxA::F3、F3::αCEA::StxA、αCEA::F3::StxA、及びF3::StxA::αCEAに関して測定したCD50値は、細胞株に応じて、CEA陽性株ではおよそ0.01~100nMである。この実施例のCEAを標的とする細胞標的化融合タンパク質のCD50値は、細胞表面上にCEAを発現する細胞と比較して、細胞表面上にCEAを発現しない細胞では、およそ10~10,000倍高い(細胞毒性が低い)。加えて、CD8+T細胞とF3提示標的細胞との分子間結合、並びにStxA::αCEA::F3、StxA::F3::αCEA、αCEA::StxA::F3、F3::αCEA::StxA、αCEA::F3::StxA、及びF3::StxA::αCEAの細胞毒性の誘導を、熟練した作業者に公知の及び/又は本明細書で説明されるアッセイを使用して、異種CD8+T細胞エピトープ送達及びCTL媒介性細胞毒性をもたらす提示による間接的な細胞毒性に関して調査する。
動物モデルを使用したCEAを標的とする例示的な細胞標的化融合タンパク質のインビボでの効果の判定
動物モデルを使用して、新生物細胞に対するCEAを標的とする例示的な融合タンパク質のインビボでの効果を判定する。様々なマウス株を使用して、CEAを細胞表面に発現するヒト新生物細胞を注入したマウスに静脈内投与した後の細胞標的化融合タンパク質StxA::αCEA::F3、StxA::F3::αCEA、αCEA::StxA::F3、F3::αCEA::StxA、αCEA::F3::StxA、及びF3::StxA::αCEAの異種移植片腫瘍に対する効果を試験する。細胞殺滅を、熟練した作業者に公知の及び/又は本明細書で説明されるアッセイを使用して、直接的な細胞毒性、並びにCD8+T細胞エピトープカーゴ送達及びCTL媒介性細胞毒性をもたらす提示による間接的な細胞毒性の両方に関して調査する。この実施例の細胞標的化分子の「不活性」バリアント(例えば、E167D)を使用して、細胞標的化分子のあらゆる志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の触媒活性の不在下におけるCD8+T細胞エピトープ送達によって引き起こされる間接的な細胞毒性を調査してもよい。
志賀毒素エフェクターポリペプチド及び異種CD8+T細胞エピトープを含む、HER2を標的とする細胞標的化分子
HER2の過剰発現は、乳房、結腸直腸、子宮内膜、食道、胃、頭頸部、肺、卵巣、前立腺、膵臓、及び精巣生殖細胞の腫瘍細胞において観察されている。この実施例において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは上述のようにStxAのAサブユニット(配列番号2)に由来し、アミノ酸残基置換が脱免疫化(例えば、国際公開第WO2015/113005号パンフレット、同第WO2015/113007号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレットを参照)、CD8+T細胞超免疫化(例えば、国際公開第WO2015/113005号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレットを参照)、及び例えばR248A/R251A(国際公開第WO2015/191764号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレット)などのフューリン切断抵抗性を付与する。ヒトCD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、MHC I分子結合予測、HLA型、すでに特徴付けられている免疫原性、及び/又は上述のような容易に入手可能な試薬に基づいて選択され、例えば、国際公開第2015/113005号パンフレット及び国際公開第2016/196344号パンフレットに記載のC3-エピトープGVMTRGRLK(配列番号22)である。ヒトHER2の細胞外部分に結合する結合領域αHER2は、熟練した作業者に公知の入手可能な免疫グロブリン型ポリペプチドからスクリーニング又は選択することによって、生成される(例えば、HER2の細胞外エピトープに高親和性で結合するアンキリン反復DARPin(商標)G3(Goldstein R et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 42: 288-301(2015))を参照)。
HER2を標的とする細胞標的化分子の構築、産生、及び精製
志賀毒素エフェクターポリペプチド、αHER2結合領域ポリペプチド、及び異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドを、熟練した作業者に公知の標準的な方法を使用して、作動可能に一緒に連結させて、本発明の細胞標的化分子を形成する。例えば、StxA::αHER2::C3、StxA::C3::αHER2、αHER2::StxA::C3、C3::αHER2::StxA、αHER2::C3::StxA、及びC3::StxA::αHER2のうちの1つ又は2つ以上をコードするポリヌクレオチドを発現させることによって、融合タンパク質を産生させるが、これらは、それぞれ、本明細書に記載される1つ又は2つ以上のタンパク質性リンカーを融合型タンパク質性成分の間に有していてもよい。HER2を標的とするこれらの例示的な融合タンパク質の発現は、前述の実施例に記載のように、細菌及び/又は無細胞タンパク質翻訳系のいずれかを使用して達成する。
HER2を標的とする例示的な細胞標的化融合タンパク質のインビトロでの特徴の判定
HER2陽性細胞及びHER2陰性細胞に対するこの実施例の細胞標的化分子の結合特徴を、蛍光に基づくフローサイトメトリーによって判定する。HER2陽性細胞に対するStxA::αHER2::C3、StxA::C3::αHER2、αHER2::StxA::C3、C3::αHER2::StxA、αHER2::C3::StxA、及びC3::StxA::αHER2のBmaxを、それぞれ測定すると、およそ50,000~200,000MFIであり、KDは、0.01~100nMの範囲内であるが、このアッセイにおいてHER2陰性細胞に対する有意な結合は存在しない。
この実施例の融合タンパク質のリボソーム不活性化能力を、前述の実施例に記載のように、無細胞インビトロタンパク質翻訳において判定する。この実施例の細胞毒性融合タンパク質の、無細胞タンパク質合成に対する阻害効果は、有意である。StxA::αHER2::C3、StxA::C3::αHER2、αHER2::StxA::C3、C3::αHER2::StxA、αHER2::C3::StxA、及びC3::StxA::αHER2に関して測定した、この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するIC50値は、それぞれ、およそ0.1~100pMである。
HER2標的化細胞標的化分子のCD8+エピトープ-ペプチドカーゴ送達機能の判定
T細胞エピトープの送達の成功は、特定の細胞表面のMHCクラスI分子/エピトープ複合体(pMHC I)を検出することによって判定することができる。細胞標的化分子が、標的細胞のMHCクラスI提示経路にCD8+T細胞エピトープカーゴを送達することができるかどうかを試験するために、特定のエピトープと複合体化したヒトMHCクラスI分子を検出する日常的なアッセイ、例えば、実施例1及び2に記載された1つ又は2つ以上のアッセイなどを利用した。
HER2標的化細胞標的化融合タンパク質で処置された細胞は、インキュベーション持続期間に応じて多くの場合に大部分の処置された細胞の細胞表面にC3エピトープ/MHCクラスI複合体の陽性シグナルを示す。細胞標的化分子処置標的細胞の細胞表面上のヒトMHCクラスI分子と複合体化したCD8+T細胞エピトープC3(配列番号22)の検出は、細胞標的化分子が、標的細胞に入り、十分な細胞内経路決定を行い、標的細胞による表面提示のために十分なCD8+T細胞エピトープ-ペプチドカーゴをMHCクラスI経路に送達できることを示す。
細胞殺滅アッセイを使用したHER2を標的とする例示的な細胞標的化融合タンパク質の細胞毒性の判定
この実施例の細胞標的化分子の細胞毒性特徴を、前述の実施例に記載のように、HER2陽性細胞を使用して、一般的な細胞殺滅アッセイによって判定する。加えて、HER2を標的とする例示的な細胞標的化融合タンパク質の選択的細胞毒性特徴を、HER2陰性細胞を使用して、HER2抗原陽性細胞との比較として、同じ一般的な細胞殺滅アッセイによって判定する。StxA::αHER2::C3、StxA::C3::αHER2、αHER2::StxA::C3、C3::αHER2::StxA、αHER2::C3::StxA、及びC3::StxA::αHER2に関して測定したCD50値は、細胞株に応じて、HER2陽性細胞ではおよそ0.01~100nMである。この実施例のHER2を標的とする細胞標的化融合タンパク質のCD50値は、細胞表面上にHER2を発現する細胞と比較して、細胞表面上にHER2を発現しない細胞では、およそ10~10,000倍高い(細胞毒性が低い)。加えて、CD8+T細胞とC3提示標的細胞との分子間結合、並びにStxA::αHER2::C3、StxA::C3::αHER2、αHER2::StxA::C3、C3::αHER2::StxA、αHER2::C3::StxA、及びC3::StxA::αHER2の細胞毒性の誘導を、熟練した作業者に公知の及び/又は本明細書で説明されるアッセイを使用して、異種CD8+T細胞エピトープ送達及びCTL媒介性細胞毒性をもたらす提示による間接的な細胞毒性に関して調査する。
動物モデルを使用したHER2を標的とする例示的な細胞標的化融合タンパク質のインビボでの効果の判定
動物モデルを使用して、新生物細胞に対するHER2を標的とする例示的な融合タンパク質のインビボでの効果を判定する。様々なマウス株を使用して、HER2を細胞表面に発現するヒト新生物細胞を注入したマウスに静脈内投与した後の細胞標的化融合タンパク質StxA::αHER2::C3、StxA::C3::αHER2、αHER2::StxA::C3、C3::αHER2::StxA、αHER2::C3::StxA、及びC3::StxA::αHER2の異種移植片腫瘍に対する効果を試験する。細胞殺滅を、熟練した作業者に公知の及び/又は本明細書で説明されるアッセイを使用して、直接的な細胞毒性、並びにCD8+T細胞エピトープカーゴ送達及びCTL媒介性細胞毒性をもたらす提示による間接的な細胞毒性の両方に関して調査する。この実施例の細胞標的化分子の「不活性」バリアント(例えば、E167D)を使用して、細胞標的化分子のあらゆる志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の触媒活性の不在下におけるCD8+T細胞エピトープ送達によって引き起こされる間接的な細胞毒性を調査してもよい。
それぞれが志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及び志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド成分のカルボキシ末端側に位置する1つ又は2つ以上の異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドを含む、様々な細胞型を標的とする細胞標的化分子
この実施例において、3つのタンパク質性構造体を互いに会合させて、本発明の例示的な細胞標的化分子を形成する。この実施例において、志賀毒素エフェクターポリペプチドは上述のようにSLT-1AのAサブユニット(配列番号1)に由来し、アミノ酸残基置換が脱免疫化(例えば、国際公開第WO2015/113005号パンフレット、同第WO2015/113007号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレットを参照)、CD8+T細胞超免疫化(例えば、国際公開第WO2015/113005号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレットを参照)、及び例えばR248A/R251A(国際公開第WO2015/191764号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレット)などのフューリン切断抵抗性を付与する。1つ又は2つ以上のCD8+T細胞エピトープ-ペプチドは、例えば、MHC I分子結合予測、HLA型、すでに特徴付けられている免疫原性、及び/又は本明細書で説明される容易に入手可能な試薬などに基づいて、選択される。結合領域成分は、表10の列1から選択される分子に由来する免疫グロブリン型ドメインに由来し、これは、表10の列2に示される細胞外標的生体分子に結合する。
当該技術に公知の試薬及び技術を使用して、3つの成分:1)リガンド又は免疫グロブリン由来結合領域、2)志賀毒素エフェクターポリペプチド及び3)CD8+T細胞エピトープ-ペプチド又は少なくとも1つの異種CD8+T細胞エピトープ-ペプチドを含むより大きなポリペプチドを、互いに会合させて、本発明の細胞標的化分子を形成し、CD8+T細胞エピトープ-ペプチドが、破壊されたフューリン切断モチーフを含んでいてもよい志賀毒素エフェクターポリペプチドの志賀毒素A1フラグメント領域のカルボキシ末端側に位置している。この実施例の例示的な細胞標的化分子を、前述の実施例に記載のように、適切な細胞外標的生体分子を発現する細胞を使用して試験する。この実施例の例示的な細胞標的化分子は、例えば、表10の列3に示される疾患、状態、及び/又は障害を診断及び治療するために使用され得る。
本発明の一部の実施形態を、例示の目的で記載しているが、本発明が、本発明の趣旨から逸脱すること又は特許請求の範囲を逸脱することなく、多数の修正、変更、及び適合を伴って、並びに当業者の技能の範囲内である多数の等価物又は代替的な解決策の使用を伴って、実施され得ることは明らかであろう。
すべての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれ個別の刊行物、特許、又は特許出願が具体的かつ個別に参照によりその全体が組み込まれると示されるのと同程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。国際特許出願公開第WO2014/164693号パンフレット、同第WO2014/164680号パンフレット、同第WO2015/138435号パンフレット、同第WO2015/138452号パンフレット、同第WO2015/113005号パンフレット、同第WO2015/113007号パンフレット、同第WO2015/191764号パンフレット、同第WO2016/196344号パンフレット、及び同第WO2017/019623号パンフレット、は、それぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。米国特許出願公開第US2007/298434号明細書、同第2009/156417号明細書、同第2013/196928号明細書、同第2016/177284号明細書、同第2017/143814号明細書、及び同第2017/275382号明細書の開示は、それぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。国際特許出願公開第WO2018/106895号パンフレットの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に引用されるGenBank(National Center for Biotechnology Information、U.S.)より電子的に利用可能なアミノ酸配列及びヌクレオチド配列のすべての生物学的配列情報の完全な開示は、それぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。