以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る加工装置2の斜視図である。図2は、第1実施形態に係る流体受け部52及びセンサ部54の配置を示す斜視図である。なお、図2においては、一部の構成要素をブロックにて示す。以下の説明に用いられるX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は、互いに垂直であるものとする。
図1に示すように、切削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備えている。基台4の前方の角部には、開口4aが形成されており、この開口4a内には、昇降機構(不図示)によって昇降するカセットエレベータ6aが設けられている。カセットエレベータ6aの上面には、複数の被加工物11を収容するためのカセット6bが載せられる。なお、図1では、説明の便宜上、カセット6bの輪郭のみを示している。
被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハである。この被加工物11の表面側は、格子状に配列された分割予定ライン(ストリート)によって複数の領域に区画されており、各領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイスが形成されている。
被加工物11の裏面側には、被加工物11よりも径の大きい粘着テープ(ダイシングテープ)13が貼付されている。粘着テープ13の外周部分は、環状のフレーム15に固定されている。このように、フレーム15の開口に張られた粘着テープ13によって被加工物11が支持されることで、被加工物ユニット17が形成されている。カセット6bには、この被加工物ユニット17が収容される。
なお、本実施形態では、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハを被加工物11としているが、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる被加工物11を用いることもできる。また、デバイスの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
カセットエレベータ6aの側方には、X軸方向(加工送り方向)に長い開口4bが形成されている。開口4b内には、ボールネジ式のX軸移動機構(加工送りユニット)10と、X軸移動機構10の上部を覆う蛇腹状カバー12とが配置されている。
X軸移動機構10は、X軸移動テーブル(不図示)を備えており、このX軸移動テーブルはX軸方向に移動可能である。なお、このX軸移動テーブルの上部は、テーブルカバー10aによって覆われている。
X軸移動テーブル上には、被加工物11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)14が、テーブルカバー10aから露出する態様で配置されている。チャックテーブル14は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、Z軸方向(鉛直方向)に概ね平行な回転軸の周りに回転することができる。
チャックテーブル14は、上述したX軸移動機構10によってX軸移動テーブルとともにX軸方向に移動する(加工送り)。チャックテーブル14の上面の一部は、被加工物11を保持するための保持面14aである。
保持面14aは、X軸方向及びY軸方向(割り出し送り方向)に対して概ね平行に形成され、チャックテーブル14の内部に形成された吸引路(不図示)等を介して真空ポンプ等の吸引手段(不図示)に接続されている。なお、チャックテーブル14の周囲には、粘着テープ13を介して被加工物11を支持する環状のフレーム15を四方から固定するための4個のクランプ16が設けられている。
開口4bの上方には、上述した被加工物ユニット17をチャックテーブル14等へと搬送するための搬送ユニット(不図示)が配置されている。搬送ユニットで搬送された被加工物ユニット17の被加工物11は、例えば、表面側が上方に露出するようにチャックテーブル14の保持面14aに載せられる。
開口4bに隣接する位置には、片持ち梁状の支持構造20が配置されている。支持構造20の前面上部には、加工ユニット(切削ユニット)18をY軸方向及びZ軸方向に移動させる加工ユニット移動機構(割り出し送りユニット、切り込み送りユニット)22が設けられている。
加工ユニット移動機構22は、支持構造20の前面に配置されY軸方向に概ね平行な一対のY軸ガイドレール24を備えている。Y軸ガイドレール24には、加工ユニット移動機構22を構成するY軸移動プレート26がスライド可能に取り付けられている。
Y軸移動プレート26の裏面(後面)側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール24に概ね平行なY軸ボールネジ28が螺合されている。
Y軸ボールネジ28の一端部には、Y軸パルスモータ(不図示)が連結されている。Y軸パルスモータでY軸ボールネジ28を回転させれば、Y軸移動プレート26は、Y軸ガイドレール24に沿ってY軸方向に移動する。
Y軸移動プレート26の表面(前面)には、Z軸方向に概ね平行な一対のZ軸ガイドレール30が設けられている。Z軸ガイドレール30には、Z軸移動プレート32がスライド可能に取り付けられている。
Z軸移動プレート32の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール30に平行なZ軸ボールネジ34が螺合されている。
Z軸ボールネジ34の一端部には、Z軸パルスモータ36が連結されている。Z軸パルスモータ36でZ軸ボールネジ34を回転させれば、Z軸移動プレート32は、Z軸ガイドレール30に沿ってZ軸方向に移動する。
Z軸移動プレート32の下部には、加工ユニット18が設けられている。加工ユニット18は、Y軸方向に対して平行な回転軸となるスピンドル(不図示)と、スピンドルを部分的に収容する筒状のスピンドルハウジング38aとを備える。
スピンドルハウジング38aは、いわゆるエアベアリングによってスピンドルを回転可能に支持することができる。スピンドルハウジング38aの外部に露出するスピンドルの一端側には、ブレードマウント38bを介して切削ブレードが装着される。
加工ユニット18は、さらに、スピンドルに連結されたモータを含む回転駆動源(不図示)を備える。この回転駆動源は、ブレードマウント38bとは反対側であるスピンドルの他端側に位置する。
高速に回転させた切削ブレードを被加工物11に対して切り込ませながら、切削ブレードと被加工物11とを相対的に移動させることで、加工ユニット18は、この移動の経路に沿って被加工物11を切削加工できる。
X軸方向において加工ユニット18に隣接する位置には、チャックテーブル44によって保持される被加工物11を撮像するための撮像ユニット(カメラユニット)80が設けられている。撮像された被加工物11の画像は、被加工物11と加工ユニット18との位置合わせ等に利用される。
開口4bに対して開口4aと反対側の位置には、開口4cが設けられている。開口4c内には、加工後の被加工物11等を洗浄するために用いられ、洗浄装置8を構成する洗浄ユニット40が配置されている。加工ユニット18において加工された被加工物11は、チャックテーブル14から洗浄ユニット40へ搬送ユニットにより搬送されて洗浄される。
図2に示すように、洗浄ユニット40は、洗浄チャンバ48を備えている。被加工物11等が収容される空間を形成する洗浄チャンバ48の空間内には、被加工物11を吸引保持して回転する円盤状のチャックテーブル(保持テーブル)44が配置されている。
チャックテーブル44の上面の中央領域は、多孔質セラミックス等で形成された保持面44aとなっている。保持面44aは、チャックテーブル44の内部に形成された流路(不図示)等を介して真空ポンプ等の吸引手段と接続されており、吸引手段の負圧により被加工物11は保持面44aに吸引保持される。
チャックテーブル44の下部には、Z軸方向に平行なスピンドル44bを介してモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、チャックテーブル44は、この回転駆動源の回転力で、スピンドル44bの軸心周りに回転する。
このチャックテーブル44には、被加工物ユニット17における環状のフレーム15を四方から挟持して固定する4個のクランプ46が設けられている。また、チャックテーブル44の上方には、概略L字形状の洗浄アーム42cの一端側に接続された第1の洗浄ノズル42aと、概略L字形状の洗浄アーム42dの一端側に接続された第2の洗浄ノズル42bとが配置されている。
洗浄ノズル42(42a及び42b)は、下方のチャックテーブル44に対向する噴射口を備えている。第1の洗浄ノズル42aは、高圧ポンプを介して洗浄水供給源に接続された高圧洗浄用の洗浄ノズルであり、例えば5MPaから10MPaの所定の値に加圧した純水を、噴射口から柱状に噴射する。
一方で、第2の洗浄ノズル42bは、洗浄水供給源及び気体供給源に接続された二流体用の洗浄ノズルである。第2の洗浄ノズル42bは、圧力が0.1MPaから1MPaの所定の値に調節された純水と、空気又は窒素ガス等の気体とを混合した上で、気液混合された二流体を、柱状に又は所定の噴射角度で噴射口から噴射する。
洗浄アーム42c及び42dの他端側には、揺動機構(不図示)が連結されており、被加工物11の洗浄時には、洗浄ノズル42は、チャックテーブル44の上方においてチャックテーブル44の径方向に揺動される。洗浄アーム42cは洗浄アーム42dに比べて長いので、第1の洗浄ノズル42aの回転半径は第2の洗浄ノズル42bの回転半径よりも大きくなる。
洗浄ユニット40において被加工物11を洗浄するときには、被加工物11の加工により発生した加工屑の種類に応じて、第1の洗浄ノズル42a及び第2の洗浄ノズル42bのいずれか一方が適切に選択される。洗浄ノズル42から被加工物11の表面(上面)に対して水等の流体が噴射されることにより、被加工物11に付着した加工屑が除去される。なお、洗浄ノズル42は、被加工物11に付着した水分を乾燥させるための流体(エアー)を噴射するエアーノズル(不図示)をさらに有してもよく、これに代えて、第1の洗浄ノズル42a、第2の洗浄ノズル42b及びエアーノズルのうちいずれか1つ又は2つを有してもよい。
本実施形態の洗浄ユニット40は、チャックテーブル44の外部、即ち、保持面44aの外周領域44cよりも外に設けられたセンサ部54を有する。なお、外周領域44cとは、チャックテーブル44の表面に露出している領域であって、保持面44aの外周に設けられた円環状の領域である。
ただし、センサ部54は、外周領域44cよりも外であれば、チャックテーブル44の側面等に接して設けられてもよい。センサ部54は、洗浄ノズル42及びチャックテーブル44等と同様に、洗浄チャンバ48内に設けられる。
本実施形態においては、センサ部54とチャックテーブル44とを一体として設けずにセンサ部54をチャックテーブル44の外部に設けるので、チャックテーブル44にセンサ部54を埋め込む必要がない。それゆえ、洗浄ユニット40において、既存のチャックテーブル44をそのまま利用できる。
センサ部54は、Z軸方向において洗浄ノズル42に対向する円盤状の板部材である流体受け部52を有する。流体受け部52が洗浄ノズル42から噴射される流体を受けることで、流体受け部52には振動が発生する。流体受け部52に発生する振動は、例えば、材料の変形等に伴い、材料の内部に蓄えられていた歪みエネルギーが放出されることにより生じた弾性波である。
このような弾性波が放出される現象は、アコースティック・エミッション(Acoustic Emission、以下単にAEと略記する)として知られている。この弾性波は、数十kHzから数MHz程度の比較的高い周波数を有する。なお、本明細書においては、弾性波がAEにより生じたことを明示するべく、この弾性波をAE波と略記する場合がある。
流体受け部52の下面(即ち、洗浄ノズル42とは反対側の面)側には、筐体部56が設けられる。筐体部56の内部には、流体受け部52の下面に接する状態で振動センサが設けられている。振動センサは、流体受け部52と、流体受け部52の下方に設けられた円筒形状の筐体部56とにより、外部環境から保護される。
振動センサは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等を用いた圧電素子を有する振動センサ、及び、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサ等である。本実施形態では、振動センサとして、圧電素子を有するAEセンサを用いる。流体受け部52において生じた振動は、AE波としてAEセンサに検出されて、電圧信号に変換される。
なお、流体受け部52の上面は、チャックテーブル44の上面とほぼ同じ高さ位置に設けられる。流体受け部52の上面から洗浄ノズル42の下端までのZ軸方向の第1距離は、チャックテーブル44の上面から洗浄ノズル42の下端までのZ軸方向の第2距離と同じあり、例えば10mmである。
これにより、流体受け部52が流体から受ける力と、チャックテーブル44上に配置された被加工物11が流体から受ける力とを同程度にできるので、第1距離と第2距離とが著しく異なる場合に比べて、洗浄ノズル42から噴射される流体が流体受け部52に及ぼす力が異常であるか否かをより正確に判定できる。
図1に示すように、基台4の上方には、基台4の上方を覆うカバー4dが設けられている。このカバー4dの上方の角部には、判定ユニット50を構成する制御部58が設けられる。制御部58は、CPU又はプロセッサ、及び、メモリー等で構成される。制御部58は、判定ユニット50の構成要素であるセンサ部54に電気的に接続している。
制御部58のメモリーには、事前に設定された振動の許容範囲が格納されている。制御部58は、センサ部54で検出された振動(本実施形態では、AE波に対応する電圧信号の電圧値の平均値)を算出し、この平均値をメモリーに格納されている振動の許容範囲(本実施形態では、予め設定された電圧値の許容範囲)と比較する。
AE波に対応する電圧信号の電圧値の平均値は、洗浄ノズル42から噴射される流体が流体受け部52に及ぼす力に対応する。例えば、流体が流体受け部52に及ぼす力が大きいほど、電圧値の平均値は大きくなり、流体が流体受け部52に及ぼす力が小さいほど、電圧値の平均値は小さくなる。
そこで、本実施形態の制御部58は、AE波に対応する電圧信号に基づいて、流体が流体受け部52に及ぼす力が許容範囲であるか否かを判定する。なお、流体が流体受け部52に及ぼす力が許容範囲であるとは、仮に被加工物11へ流体を噴射した場合に、被加工物11に損傷等が生じないことを意味する。
被加工物11に損傷等が生じない場合、洗浄ノズル42から噴射される流体が流体受け部52に及ぼす力が被加工物11の洗浄に適していると見なしてよい。このように、制御部58は、AE波に対応する電圧信号に基づいて、洗浄ノズル42から流体受け部52に噴射される流体が流体受け部52に及ぼす力が、被加工物11の洗浄に適しているか否かを判定する。
例えば、制御部58は、検出された電圧信号における電圧値の平均値が予め設定された電圧値の範囲内である場合に、流体が流体受け部52に及ぼす力が許容範囲(即ち、正常)であり、洗浄ノズル42から噴射される流体は被加工物11の洗浄に適していると判定する。
これに対して、制御部58は、検出された電圧信号における電圧値の平均値が予め設定された電圧値の範囲外である場合に、流体が流体受け部52に及ぼす力が許容範囲外(即ち、異常)であり、洗浄ノズル42から噴射される流体は被加工物11の洗浄に適していないと判定する。
検出された電圧値の平均値が予め設定された電圧値の範囲内である場合、チャックテーブル44上に配置された被加工物11に噴射される流体は、被加工物11を損傷させず、破壊もしない。さらに、この場合、加工屑等を十分に除去できるだけの洗浄効果も得られる。
これに対して、検出された電圧値の平均値が予め設定された電圧値の範囲外である場合には、チャックテーブル44上に配置された被加工物11に噴射される流体は、被加工物11を損傷又は破壊する可能性がある。又は、加工屑等を十分に除去できるだけの洗浄効果が得られないこともある。
例えば、検出された電圧値の平均値が予め設定された電圧値の上限値よりも高い場合、被加工物11に噴射される流体が、被加工物11を損傷又は破壊する可能性がある。また例えば、検出された電圧値の平均値が予め設定された電圧値の下限値よりも低い場合、被加工物11に噴射される流体によっては、加工屑等を十分に除去できない可能性がある。
制御部58は、このように、振動センサで検出した振動を予め設定された振動の許容範囲と比較した比較結果に基づいて、洗浄ノズル42から噴射される流体が流体受け部52に及ぼす力が被加工物11の洗浄に適しているか否かを判定する判定部として機能する。
被加工物11の加工中に、噴射される流体が流体受け部52に及ぼす力が許容範囲であるか否かを判定することにより、被加工物11の洗浄前に、噴射される流体が被加工物11の洗浄に適しているか否かを判定できる。
このように、噴射される流体が被加工物11の洗浄に適しているか否かを事前に判定できるので、被加工物11の加工後に速やか且つ適切に、被加工物11を洗浄できる。それゆえ、被加工物11の加工後に、当該判定を行う場合に比べて、加工及び洗浄を合わせた合計時間を短縮することができ、作業効率を向上できる。
また、本実施形態においては、洗浄に用いる流体のエアー及び水の体積比ではなく、センサ部54で得られる電圧信号に基づいて、洗浄ノズル42から噴射される流体が流体受け部52に及ぼす力が被加工物11の洗浄に適しているか否かを判定する。
それゆえ、エアー及び水の体積比に応じて被加工物が損傷又は破損するか否かを定量的に評価することが難しい二流体の場合であっても、洗浄ノズル42から噴射される流体が被加工物11にどのような影響を及ぼすか定量的に判定又は予測することができる。
図1に示すように、制御部58は、上述のような判定の結果をオペレーターに報知するための報知部70に接続しており、報知部70の動作を制御する。報知部70は、カバー4dの上面に設けられた警告灯72と、カバー4dの側面に設けられた操作画面74と、スピーカー(不図示)とを含む。
報知部70は、制御部58及びセンサ部54と共に、判定ユニット50を構成する。制御部58は上述のように判定部として機能するので、判定ユニット50は洗浄ユニット40が被加工物11の洗浄に適しているか否かを判定できる。なお、判定ユニット50は、洗浄ユニット40と共に、加工装置2の一部である洗浄装置8を構成している。
センサ部54において検出された振動が許容範囲外であり、洗浄ノズル42から噴射される流体が流体受け部52に及ぼす力が被加工物11の洗浄に適していないと制御部(判定部)58が判定した場合に、報知部70はオペレーターに対して警告情報を報知する。
例えば、報知部70は、警告灯72の発光と、操作画面74の警告表示と、スピーカー(不図示)からの通知音とのいずれか一種類以上を用いてオペレーターに警告情報を報知することができる。
これにより、オペレーターは、センサ部54で検出された振動が許容範囲外であったことを知ることができ、洗浄ユニット40を用いた被加工物11の洗浄を中止する等の処置をとることができる。
オペレーターは、流体が流体受け部52に及ぼす力が異常となった原因を特定し、洗浄ユニット40を修理又は調整してもよい。修理又は調整後に、再度、センサ部54を用いて、流体が流体受け部52に及ぼす力が正常となり、被加工物11の洗浄に適していることを確認してもよい。
なお、センサ部54で検出された振動が許容範囲であると判定された場合に、警告灯72、操作画面74及びスピーカーのいずれか一種類以上により、洗浄ユニット40が正常である旨を報知してもよい。これにより、オペレーターは安心して作業を継続できる。
本実施形態に係るセンサ部54のより具体的な構造について説明する。図3は、センサ部54の分解斜視図である。センサ部54は、例えば、樹脂又は絶縁性セラミックス等の絶縁性を有する材料で形成された円筒形状の筐体部56を有する。
この筐体部56の一端部には、筐体部56の一方側の開口を閉じる円盤状の流体受け部52が設けられている。また、筐体部56の他端部には、筐体部56の他方側の開口を閉じる円盤状の蓋部60が設けられている。
蓋部60は、例えば、筐体部56と類似する材料で形成される。一方、流体受け部52は、被加工物11と同じ材料で、かつ被加工物11と同じ厚さに形成されることが好ましい。これにより、被加工物11の洗浄に近い条件で振動を評価できる。ただし、筐体部56、流体受け部52及び蓋部60の、材質、形状及び厚み等の条件に特段の制限はない。
筐体部56、流体受け部52、蓋部60によって閉じられた空間内には、筐体部56の内径よりも小さい外径を持つ概略円柱形状の振動センサ64が配置されている。振動センサ64は、上述の空間内において樹脂により封止され、筐体部56に対して固定される。
蓋部60の外側には、振動センサ64に接続された配線を筐体部56から外部へ導く配線導出部62が設けられる。配線導出部62は、円筒形状を有し、蓋部60から突出して設けられる。配線導出部62も、筐体部56及び蓋部60と同様に、絶縁性を有する材料で形成されている。
振動センサ64の底部には、円盤状の第1の電極板64aが設けられており、振動センサ64は、この第1の電極板64aが流体受け部52の内側の面に接した状態で筐体部56に固定される。
AE波は固体中での減衰に比べて空気中での減衰が大きいので、流体受け部52と振動センサ64の第1の電極板64aとを離して固定すると、振動センサ64がAE波を検出することが難くなる。それゆえ、体受け部52と第1の電極板64aとを接して設けることが望ましい。
振動センサ64の側部には、円柱形状の振動センサ64の高さ方向と平行に延伸する棒状の第1の接続部64bが設けられている。第1の接続部64bの一端は、円盤状の第1の電極板64aの縁部に接続している。また、第1の接続部64bの他端は、振動センサ64の蓋部60側の端面に接するように延伸方向を略90度変えて当該端面上にも設けられる。
第1の接続部64bの蓋部60側の他端には、円柱形状の第1の端子部64cが接続する。第1の端子部64cの第1の接続部64bとは反対側の端部には、第1の配線64dが接続する。
振動センサ64の蓋部60側の端面には、切り欠き部を有する円盤状の第2の電極板66aが設けられる。即ち、第2の電極板66aの切り欠き部には、第1の接続部64bの一部が第2の電極板66aとは接触しない態様で設けられる。
第2の電極板66aは、第1の接続部64bから離れているので、両者は電気的に分離されている。第2の電極板66aの蓋部60側には、円柱形状の第2の端子部66bが接続する。第2の端子部66bの第2の電極板66aとは反対側の端部には、第2の配線66cが接続する。
第2の電極板66aには、振動センサ64の主要部分である圧電素子の一端が電気的に接続しており、第1の電極板64aには、当該圧電素子の他端が電気的に接続している。圧電素子は、例えば、概略円柱形状の圧電材料を有する。
圧電材料は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、ニオブ酸鉛、ニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウム等である。圧電材料には円柱形状の高さ方向に沿って直流電界(例えば、数kV/mm)が予め印加され、これにより圧電材料には直流電界の印加方向に沿って分極が生じている。
流体受け部52で発生したAE波は、振動センサ64の圧電材料において歪を生じさせる。この歪みは電圧信号として、円筒形状の配線導出部62の貫通孔を通る第1の配線64d及び第2の配線66cを介して、制御部58へ送られる。
洗浄ノズル42が流体受け部52に及ぼす力と、振動センサ64に生じる電圧信号との関係について調査するために第1の実験を行った。図4(A)及び図4(B)は、二流体洗浄ノズルである第2の洗浄ノズル42bから流体受け部52へ流体を噴射した場合に、センサ部54から得られた電圧信号を測定したグラフである。
図4(A)及び図4(B)において、縦軸は電圧mVであり、横軸は時間secである。図4(A)は、条件A(エアーの圧力0.2MPa、水の流量200ml/min)におけるセンサ部54からの電圧信号(電圧値の平均値350mV)を示すグラフであり、図4(B)は、条件B(エアーの圧力0.4MPa、水の流量200ml/min)におけるセンサ部54からの電圧信号(電圧値の平均値650mV)を示すグラフである。
第1の実験においては、第2の洗浄ノズル42bから5sec間、流体受け部52へ流体を噴射した。また、振動センサ64に生じた電圧信号を30points/secのサンプリング・レートで測定した。条件Aに比べてエアーの圧力を2倍にした条件Bにおいては、電圧信号の平均値が約1.86倍(=650mV/350mV)になった。
なお、第1の実験において、電圧信号における電圧値の平均値とは、5sec間、30points/secのサンプリング・レートで電圧信号を取得した上で、冒頭の1secと末尾の1secとを除いた3sec間の電圧値の平均値である。
このようにエアーの圧力を上げると、流体受け部52へかかる力が大きくなり、流体受け部52から生じるAE波の振幅も大きくなったと考えられる。それゆえ、エアーの圧力を上げると、振動センサ64が発生する電圧信号における電圧値の平均値が大きくなったと考えられる。
エアーの圧力及び水の流量と、振動センサ64に生じる電圧信号との関係について調査するために第2の実験を行った。図5は、エアーの圧力及び水の流量に応じた、センサ部54からの電圧信号における電圧値の平均値を示すグラフである。縦軸は電圧(mV)であり、横軸は時間(sec)である。縦軸の目盛りは、100mVである。
第2の実験においては、所定の圧力及び流量で、二流体洗浄ノズルである第2の洗浄ノズル42bから流体受け部52に流体を噴射した。また、インクを付着させたシリコンウェーハを洗浄ユニット40のチャックテーブル44に固定し、流体受け部52に流体を噴射した条件と同じ圧力及び流量で、流体を噴射して洗浄し、インクが薄くなった度合いを評価した。
各サンプルの条件は以下の通りである。括弧の左側はエアーの圧力を示し、括弧の中央は水の流量を示し、括弧の右側はセンサ部54からの電圧信号における電圧値の平均値を示す。なお、上述の図4(A)は下記の#5に対応し、上述の図4(B)は下記の#1に対応する。
#1:(0.4MPa,200ml/min,650mV)
#2:(0.1MPa,800ml/min,600mV)
#3:(0.1MPa,600ml/min,520mV)
#4:(0.2MPa,600ml/min,620mV)
#5:(0.2MPa,200ml/min,350mV)
#6:(0.6MPa,600ml/min,800mV)
サンプル#1から#4においては、シリコンウェーハに付着したインクが十分に除去された。また、サンプル#1から#4においては、シリコンウェーハに損傷等が生じなかった。
これに対して、サンプル#5においては、シリコンウェーハに付着したインクは十分には除去されなかった。つまり、サンプル#5においては、洗浄ユニット40における洗浄力が弱過ぎたと言える。洗浄力が弱過ぎる場合、被加工物11の洗浄時に被加工物11から加工屑が十分に除去されず、洗浄が不十分となる恐れがある。
また、サンプル#6においては、シリコンウェーハに付着したインクは十分に除去されたものの、シリコンウェーハに亀裂が生じた。つまり、サンプル#6においては、洗浄ユニット40における洗浄力が強過ぎたと言える。
第2の実験の結果を踏まえると、例えば、サンプル#1から#4における電圧信号の平均値が含まれる約520mVから約720mVまでの幅約200mVを、上述した予め設定された許容範囲(即ち、予め設定された電圧値の許容範囲)とすることができる。
この許容範囲は、上述のように洗浄ノズル42から流体受け部52に流体を噴射する場合において、洗浄ユニット40の洗浄力を判定するために利用される。例えば、電圧信号の平均値が許容範囲よりも低いサンプル#5の場合は、洗浄力が弱いと判定でき、電圧信号の平均値が許容範囲よりも高いサンプル#6の場合は、洗浄力が強いと判定できる。
洗浄ユニット40の洗浄力が(a1)強い、(b1)許容範囲(即ち、適切)である、又は(c1)弱いことは、振動センサ64により検出した電圧信号の電圧値の平均値が、(a2)電圧値の許容範囲よりも高い、(b2)当該許容範囲である、又は(c2)当該許容範囲よりも低いことと一対一に対応する。
それゆえ、制御部58は、洗浄ユニット40の洗浄力が弱過ぎであるか、又は、強過ぎであるかを洗浄前に判定することもできる。報知部70は、電圧信号に基づいて洗浄ノズル42から噴射される流体が洗浄に適していない旨の警告情報を報知することに加えて、洗浄ユニット40の洗浄力が弱過ぎであるか又は強過ぎであるかをオペレーターに報知してもよい。
また、他の判定手法として、制御部58は、種々の(i)流体を噴射するエアーの圧力、(ii)噴射される流体の流量、及び、(iii)予め設定された電圧値の許容範囲、を有するテーブルを予め有し、当該テーブルに基づいて洗浄力を判定してもよい。
この場合に、(iii)予め設定された電圧値の許容範囲は、(i)エアーの圧力及び(ii)流体の流量に応じて個別に定めてよく、第2の実験で得られたように一定としてもよい。例えば、判定ユニット50は、上述のように電圧値の平均値を算出し、当該平均値が(i)エアーの圧力及び(ii)流体の流量に応じて個別に定められた電圧値の許容範囲であるか否かを判定する。
図6は、洗浄装置8の洗浄力評価方法を含む、被加工物11の洗浄方法を説明するフロー図である。まず、洗浄ユニット40の洗浄ノズル42をZ軸方向において流体受け部52と対向する位置に移動させ、所定時間、洗浄ノズル42から流体受け部52に流体を噴射する(S10)。
次に、流体受け部52の振動(即ち、センサ部54で検出され、制御部58で算出された電圧信号の電圧値の平均値)が、予め設定された許容範囲(即ち、予め設定された電圧値の許容範囲)であるか否かを、制御部58が判定する(S20)。
流体受け部52の振動が予め設定された許容範囲である場合(S20でYES)、報知部70により洗浄ユニット40が正常動作(即ち、流体が流体受け部52に及ぼす力が正常)である旨をオペレーターに報知する(S30)。ただし、当該オペレーターへの報知(S30)は、必須の段階ではなく、省略してもよい。
次に、搬送ユニットによりチャックテーブル14から洗浄ユニット40のチャックテーブル44に被加工物11を移動する(S40)。その後、被加工物11を洗浄ユニット40で洗浄する(S50)。
一方、流体受け部52の振動が予め設定された許容範囲外である場合(S20でNO)、報知部70により洗浄ユニット40が異常動作(即ち、流体が流体受け部52に及ぼす力が異常)である旨をオペレーターに報知する(S40)。その後、洗浄ユニット40の修理又は調整等を行う(S70)。修理又は調整後に、再度、洗浄力評価を行う(S20)。
洗浄装置8の洗浄力評価は、被加工物11を洗浄ユニット40において洗浄する前であって、被加工物11を加工ユニット18で加工している間に行うことができる。洗浄力評価は、被加工物11の加工中に、定期的に(即ち、所定の時間間隔で複数回)行ってもよい。
これにより、噴射される流体の力の適性を事前に判定できるので、被加工物11の加工の後に噴射される流体の力の適性を判定する場合に比べて、加工及び洗浄を合わせた合計時間を短縮することができ、作業効率を向上できる。
なお、被加工物11の洗浄後に、再度、流体受け部52への流体の噴射(S10)及び流体受け部52の振動が予め設定された許容範囲であるか否かの判定(S20)を行うことで、洗浄装置8の洗浄力評価を行ってもよい。これにより、被加工物11の洗浄が適切であったか否かを事後的に確認できる。
なお、第1実施形態においては、センサ部54はチャックテーブル44の外部に設けられているので、仮に、洗浄力評価中に洗浄ユニット40のチャックテーブル44上に被加工物11を配置しても、流体受け部52に噴射される流体は被加工物11には直接噴射されない。
そこで、洗浄力評価方法の変形例として、チャックテーブル44に被加工物11を移動した(S40)後に、流体受け部52に流体を噴射し(S10)、次いで、流体受け部52の振動が予め設定された許容範囲であるか否かを判定(S20)してもよい。この変形例においては、S40をS10とS20との間に行う以外は、第1実施形態と同じである。
図7は、第2実施形態に係る流体受け部52及びセンサ部54の配置を示す斜視図である。なお、図7においては、図2と同様に一部の構成要素をブロックにて示す。本実施形態では、流体受け部52が、洗浄ユニット40におけるチャックテーブル44の一部に設けられている。特に、流体受け部52は、クランプ46等が設けられる保持面44aの外周領域44cに露出して設けられる。
センサ部54の筐体部56は、チャックテーブル44に埋め込まれる態様で設けられる。センサ部54は、洗浄ノズル42から流体受け部52に流体を噴射する(S10)ときには、制御部58にケーブル等を介して接続されている。
ただし、被加工物11を洗浄ユニット40で洗浄する(S50)ときには、洗浄ユニット40のチャックテーブル44を回転させるので、センサ部54に接続されているケーブル等をセンサ部54から分離する。なお、センサ部54は、制御部58に電圧信号を送信可能な形態で無線接続してもよい。例えば、センサ部54は無線通信により検出した電圧信号を制御部58へ送信する。
本実施形態においても第1実施形態と同様に、判定ユニット50は、洗浄ユニット40が被加工物11の洗浄に適しているか否かを判定でき、また、洗浄装置8の洗浄力評価を行うことができる。その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。