本発明に係る充電方法及び充電装置によって充電される酸化銀二次電池は、好適には銀-亜鉛アルカリ二次電池であって、正極、負極、および、正極と負極との間に介在するセパレータを有する。
〔正極について〕
正極は酸化銀(I)及び/又は銀を含有しており、酸化銀(I)の放電反応によって銀が生成され、充電による銀の酸化反応によって酸化銀(I)が生成される。製品出荷時に酸化銀(I)のみ、若しくは、銀のみを正極に含有させることもできるが、保管時の安定性向上のため適度に充電された状態で出荷することが好ましい。なお、以下単に「酸化銀」というときは、「酸化銀(I)」をいうものとする。
正極としては、酸化銀の他に導電助剤を含有する正極合剤の成形体や、酸化銀および導電助剤を含有する正極合剤層を、集電体の片面または両面に形成した構造のもの用いることができる。
充電時に正極の抵抗値に極端なピークが現われると充電制御が難しくなるため、充電時の正極の抵抗増大を抑制するために、酸化銀の粒子内に、Bi、Pb、Zr、Sn、Mn、TiおよびSeよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有させることができる。
酸化銀の粒子内に含有される前記元素は、酸化物などの形で結晶粒界などに存在していてもある程度の効果を発揮できると考えられるが、酸化銀の結晶格子中に存在していれば、前記の効果を発現しやすくなるためより好ましい。
なお、酸化銀が含有する前記元素は、粒子内で3価または4価などの酸化状態で存在すると考えられ、酸化銀には、これら元素のうちの少なくとも1種を含有させることにより、前記の効果が期待できる。
酸化銀における前記元素の含有量は、これらの元素による電池の充放電サイクル特性向上効果を良好に確保する観点から、0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが特に好ましい。ただし、酸化銀中の前記元素の量が多すぎると、電池容量が低下する虞がある。よって、より大きな容量のアルカリ二次電池とする観点から、酸化銀における前記元素の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、13質量%以下であることが特に好ましい。なお、前記元素の含有量は、前記元素を含む酸化銀の全体を100質量%としたときの値であり、前記元素が2種以上で構成されている場合は、それらの合計量を表す。
なお、粒子内に前記元素を含有する酸化銀は、例えば、以下の方法により製造することができる。
反応容器中で、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどを溶解させた過剰量のアルカリ水溶液を撹拌し、硝酸銀などの銀の可溶性塩と、前記元素の可溶性塩(塩化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩など)とを水に溶解させた混合溶液を、前記反応容器中に添加して反応させる。
なお、銀と前記元素のモル比は、目的とする酸化銀中の前記元素の含有量に応じて調整すればよく、反応速度を制御するために、前記アルカリ水溶液を冷却あるいは40~70℃程度に加熱しておいたり、前記アルカリ水溶液に、更に水との相溶性を有する有機溶媒(アルコールなど)を添加しておいたりすることもできる。
また、反応生成物の粒子形状や粒子径を制御し、微粒化するために、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどを、前記アルカリ水溶液に分散剤として0.005~5質量%程度添加することも可能である。
上記工程により生成した反応生成物は、そのまま水洗し、50~300℃程度の温度で乾燥させて使用することもできるが、更に、生成物を含む溶液を、50~90℃程度に保ちながら撹拌し、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を添加して生成物を酸化させた後、上記水洗・乾燥工程を経て使用することも可能である。
本明細書でいう酸化銀中の前記元素の含有量は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)による発光分光分析などによって測定することができる。
酸化銀は、その粒度について特に限定はされないが、充放電サイクル特性の点からは、酸化銀の平均粒子径は小さい方が好ましく、具体的には、15μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることが特に好ましく、0.2μm以下であることが最も好ましい。
このようなサイズの酸化銀を用いた場合には、充電時の利用率が向上し、充電終止電圧を比較的低くしても大きな充電容量が得られやすくなる。このため、電池の充放電サイクル特性を更に高めることができる。
ただし、あまり粒径の小さい酸化銀は製造やその後の取り扱いが困難となることから、酸化銀の平均粒子径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.03μm以上であることがより好ましい。
本明細書でいう酸化銀の平均粒子径は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、堀場製作所製「LA-920」)を用い、粒子を溶解しない媒体に、これらの粒子を分散させて測定した体積基準での累積頻度50%における粒径(D50)である。
また、正極の導電助剤としては、カーボンブラック、黒鉛などの炭素質材料などが挙げられる。
正極合剤(正極合剤の成形体や正極合剤層)の組成としては、容量を確保するために、満充電状態での酸化銀の含有量は、例えば、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。また、導電助剤の含有量は、導電性の点から0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることが特に好ましく、一方、容量低下や充電時のガス発生を防ぐため、7質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
また、正極合剤(正極合剤の成形体や正極合剤層)には、マンガン酸化物を含有させることが好ましい。酸化銀を正極に含有する酸化銀二次電池を放電すると酸化銀から銀が生成するが、この電池を充電すると銀の周りに酸化銀の結晶が生成し、その後の電池反応を阻害する虞がある。一方、正極合剤中にマンガン酸化物も含有する正極の場合には、このマンガン酸化物が電池の充電時に溶解してマンガン酸イオンなどのMnのイオンが生成し、前記Mnのイオンが正極に吸着することにより、酸化銀の結晶成長を抑えて、形成される酸化銀の結晶を微細化する。そのため、電池の充電時に生成する酸化銀の結晶が電池反応を阻害する問題の発生を抑制して、電池の充放電サイクル特性を更に高めることが可能となる。
正極合剤にマンガン酸化物を含有させる場合、正極合剤中のマンガン酸化物の含有量は、マンガン酸化物による前記の作用を良好に発揮させる観点から、0.3質量%以上であることが好ましく、0.7質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが特に好ましい。ただし、正極合剤中のマンガン酸化物の量が多すぎると、例えば酸化銀の量が少なくなりすぎてアルカリ二次電池の容量が小さくなる虞がある。よって、アルカリ二次電池の容量をより大きくする観点から、正極合剤中のマンガン酸化物の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
マンガン酸化物としては、Mn2O3、Mn3O4、MnOOH、MnO2、ZnMn2O4、LiMn2O4など、Mnを含有する酸化物または複酸化物を用いることができ、Mnの平均価数が3価以上であるものが好ましく、MnO2がより好ましい。
また、正極合剤に、Bi、Pb、Zr、Sn、Mn、TiおよびSeよりなる群から選択される少なくとも1種の元素の化合物(酸化物、硫化物、塩化物、硫酸塩など)を含有させることもできる。酸化銀の粒子内に含有させた元素と同じ元素の化合物を正極合剤中に含有させることにより、酸化銀の粒子内に前記元素を含有させた場合と同様の効果が期待できる。
正極は、正極合剤の成形体を用いる場合には、例えば、正極活物質および導電助剤、更には必要に応じてバインダや添加剤、アルカリ電解液などを混合して調製した正極合剤を所定の形状に加圧成形することで製造することができる。
また、正極合剤層を集電体などの基材上に形成する形態の正極の場合には、例えば、正極活物質および導電助剤、更には必要に応じてバインダや添加剤などを水またはNMPなどの有機溶媒に分散させて正極合剤含有組成物(スラリー、ペーストなど)を調製し、これを集電体上に塗布し乾燥し、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て製造することができる。
ただし、正極は、前記の各方法で製造されたものに限定されず、他の方法で製造したものであってもよい。
正極合剤の成形体の場合、その厚みは、0.15~4mmであることが好ましい。他方、正極合剤層と集電体とを有する形態の正極の場合、正極合剤層の厚み(集電体の片面あたりの厚み)は、30~300μmであることが好ましい。
正極に集電体を用いる場合には、その集電体としては、例えば、SUS316、SUS430、SUS444などのステンレス鋼;アルミニウムやアルミニウム合金;を素材とするものが挙げられ、その形態としては、平織り金網、エキスパンドメタル、ラス網、パンチングメタル、金属発泡体、箔(板)などが例示できる。集電体の厚みは、例えば、0.05~0.2mmであることが好ましい。このような集電体の表面には、カーボンペーストや銀ペーストなどのペースト状導電材を塗布しておくことも望ましい。
〔負極について〕
負極は亜鉛粒子または亜鉛合金粒子より選択される亜鉛系粒子を含有することができる。このような負極では、前記粒子中の亜鉛が活物質として作用する。亜鉛合金粒子は、亜鉛と、例えばインジウム、ビスマス、アルミニウム、マグネシウムなどの合金成分と、不可避不純物とで構成されるが、前記合金成分の元素種およびその含有量によっては、亜鉛の母相に均一に固溶せず、粒子内で部分的に偏析する場合がある。
前記合金成分の含有量は、必ずしも限定はされないが、例えば、インジウムでは0.005~0.05質量%(50~500ppm)、ビスマスでは0.005~0.05質量%(50~500ppm)、アルミニウムでは0.0005~0.02質量%(5~200ppm)、マグネシウムでは0.0001~0.002質量%(1~20ppm)が好ましい。負極の有する亜鉛系粒子は、1種単独でもよく、2種以上であってもよい。
ただし、亜鉛系粒子には、合金成分として水銀を含有しないものを使用することが好ましい。このような亜鉛系粒子を使用している電池であれば、電池の廃棄による環境汚染を抑制できる。また、水銀の場合と同じ理由から、亜鉛系粒子には、合金成分として鉛を含有しないものを使用することが好ましい。
亜鉛系粒子の粒度としては、例えば、全粉末中、粒径が75μm以下の粒子の割合が50質量%以下のものが好ましく、30質量%以下のものがより好ましく、また、粒径が100~200μmの粉末の割合が、50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であるものが挙げられる。ここでいう亜鉛系粒子における粒度は、前記の「金属化合物の粒子」の平均粒子径測定法と同じ測定方法により得られる値である。
負極には、例えば、前記の亜鉛系粒子の他に、必要に応じて添加されるゲル化剤(ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルロースなど)を含んでもよく、これにアルカリ電解液を加えることで構成される負極剤(ゲル状負極)を使用することもできる。負極中のゲル化剤の量は、例えば、0.5~1.5質量%とすることが好ましい。
また、負極は、前記のようなゲル化剤を実質的に含有しない非ゲル状の負極とすることもできる。ゲル化剤の作用によってアルカリ電解液が増粘している場合、ゲル化剤により電解液中のイオンの移動が抑制され、電池の負荷特性が低下するおそれを生じる。そのため、ゲル化剤を含有しないか、あるいはアルカリ電解液が増粘しない程度にゲル化剤を含有させた、「非ゲル状」の負極の構成とすることにより、アルカリ電解液のイオン伝導性を向上させ、負荷特性(特に重負荷特性)をより高めることが考えられる。
なお、亜鉛系粒子を含有する負極において、亜鉛デンドライトは、負極のある部分に充電電流が集中した場合に、亜鉛析出物が針状に成長することで生成する。
しかし、負極にポリアルキレングリコール類を含有させることにより、亜鉛系粒子の表面で、充電電流が一点に集中せずに分散するため、亜鉛デンドライトの成長を抑制することができる。また、亜鉛のデンドライト成長に起因するガス発生を抑制し、貯蔵特性を向上させる効果も期待できることから、本発明のアルカリ二次電池の負極には、ポリアルキレングリコール類を含有させることが好ましい。
特許文献4に記載の技術では、ポリアルキレングリコール類を有効に作用させるために、電解質に、KOHなどの電解質塩と共に、K2CO3などのアルカリ金属塩を含有させる必要がある。また、その含有量も30質量%以上と多くする必要があり、電池の放電特性の低下などの問題を生じてしまう。一方、負極にあらかじめポリアルキレングリコール類を含有させた場合には、少量でもその効果を発揮させることができるので、放電特性の低下などの問題を防ぐことができる。
アルカリ二次電池に用いられるポリアルキレングリコール類は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどのアルキレングリコールが重合または共重合した構造を有する化合物であり、架橋構造や分岐構造を持つものであってもよく、また末端が置換された構造の化合物であってもよく、重量平均分子量としては、およそ200以上の化合物が好ましく用いられる。重量平均分子量の上限は特に規定はされないが、添加による効果をより発揮させやすくするためには化合物が水溶性である方が好ましく、通常は20000以下のものが好ましく用いられ、5000以下のものがより好ましく用いられる。
より具体的には、エチレングリコールが重合した構造をもつエチレングリコール類や、プロピレングリコールが重合した構造をもつポリプロピレングリコール類などを好ましく用いることができる。
前記エチレングリコール類としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシドのほか、直鎖構造の化合物としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が好ましく用いられる。
前記一般式(2)中、Xはアルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、またはハロゲン原子、Yは水素原子またはアルキル基であり、nは平均で4以上を表す。
なお、前記一般式(2)におけるnは、ポリエチレングリコール類における酸化エチレンの平均付加モル数に相当する。nは平均で4以上であり、nの上限は特に限定はされないが、重量平均分子量として、200~20000程度の化合物が好ましく用いられる。
前記ポリプロピレングリコール類としては、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシドのほか、直鎖構造の化合物としては、例えば、下記一般式(3)で表される化合物が好ましく用いられる。
前記一般式(3)中、Zはアルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、またはハロゲン原子、Tは水素原子またはアルキル基であり、mは平均で3以上を表す。
なお、前記一般式(3)におけるmは、ポリプロピレングリコール類における酸化プロピレンの平均付加モル数に相当する。mは平均で3以上であり、mの上限は特に限定はされないが、重量平均分子量として、200~20000程度の化合物が好ましく用いられる。
ポリアルキレングリコール類は、酸化エチレンユニットと、酸化プロピレンユニットとを含むような共重合化合物(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなど)であってもよい。
前記ポリアルキレングリコール類の負極中での含有量は、電池の充放電サイクル特性や貯蔵特性をより良好に高める観点から、亜鉛系粒子100質量部に対し0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。また、前記ポリアルキレングリコール類の量を制限して電池の放電特性をより高める観点からは、亜鉛系粒子100質量部に対する前記ポリアルキレングリコール類の量が、5質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
また、本発明のアルカリ二次電池では、負極にカルシウム化合物を含有させることによっても、亜鉛デンドライトの発生あるいは成長を抑制することができる。
すなわち、カルシウム化合物は、亜鉛の溶解時に、
Ca(OH)2+Zn(OH)4
2-+H2O → CaZn(OH)4・H2O+2OH-
などの反応により、CaZn(OH)4などの沈殿物を形成するため、亜鉛のイオンが電解液中を拡散して移動するのを防止することができる。
ただし、カルシウム化合物によって負極での亜鉛デンドライトの発生を抑制するには、放電生成物であるZn(OH)4
2-を水酸化カルシウムと反応させて、不溶解性の化合物であるCaZn(OH)4に変化させる必要があり、亜鉛に対する水酸化カルシウムの含有量を比較的多くする必要があるため、電池の容量低下などの問題を生じることなく亜鉛デンドライトの発生を充分に抑制することは困難である。
一方、本発明のアルカリ二次電池において、カルシウム化合物を負極に含有させた場合には、このカルシウム化合物は、アニオン伝導性膜あるいはポリアルキレングリコール類と協調して亜鉛デンドライトの抑制効果を生じると考えられるので、その使用量を比較的少なくすることができる。そのため、カルシウム化合物の使用による放電特性の低下の問題を防ぐことができる。
アルカリ二次電池に用いられるカルシウム化合物としては、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウムなど、放電時に生成するZn(OH)4
2-と反応して、CaZn(OH)4などの複合化合物を生成する化合物や、当該複合化合物自体を例示することができ、水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムを好ましく用いることができる。
前記カルシウム化合物の負極における含有量は、電池の充放電サイクル特性をより良好に高めるために、亜鉛系粒子100質量部に対し5質量部以上とすることが好ましく、8質量部以上とすることがより好ましく、10質量部以上とすることが特に好ましい。また、電池の放電容量や放電特性の低下を防ぐために、亜鉛系粒子100質量部に対する前記カルシウム化合物の量は、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることが特に好ましい。
負極に前記ポリアルキレングリコール類を含有させる方法、および前記カルシウム化合物を含有させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、前記ポリアルキレングリコール類もしくは前記カルシウム化合物と亜鉛系粒子とをそのまま混合するか、前記ポリアルキレングリコール類もしくは前記カルシウム化合物を水などの溶媒に溶解または分散させ、これを亜鉛系粒子と混合することにより得られる組成物を、そのまま負極の調製に用いるか、または、前記組成物から溶媒を蒸発させて、表面に前記ポリアルキレングリコール類もしくは前記カルシウム化合物を付着させた亜鉛系粒子を作製し、前記化合物で表面被覆された亜鉛系粒子により負極を調製するなどの方法を用いることができる。
なお、前記ポリアルキレングリコール類や前記カルシウム化合物で表面被覆された亜鉛系粒子を作製する場合の被覆量は、負極における前記化合物の含有量が前記範囲となるよう調整すればよい。
また、前記ポリアルキレングリコール類および前記カルシウム化合物は、電池を組み立てた後に、負極内に存在していればよく、電池を組み立てる段階では、アルカリ電解液やセパレータなど負極以外の構成物に含有させておき、電池の組み立て後に、その一部または全部が負極側に移動し、負極内に含有される形態となるのであってもよい。
例えば、前記化合物をセパレータ内に含有させ、電池を組み立てた後に、セパレータ内の前記化合物が電解液に溶解して負極内に移動するのであってもよい。
負極はまた、インジウム化合物を含有していることが好ましい。負極がインジウム化合物を含有することによって、亜鉛系粒子とアルカリ電解液との腐食反応によるガス発生をより効果的に防ぐことができる。
前記のインジウム化合物としては、例えば、酸化インジウム、水酸化インジウムなどが挙げられる。
負極に使用するインジウム化合物の量は、質量比で、亜鉛系粒子:100に対し、0.003~1であることが好ましい。
なお、負極における亜鉛系粒子の含有量は、例えば、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、また、75質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
〔セパレータについて〕
セパレータはアルカリ電解液を保持することができる。セパレータには、ビニロンとレーヨンを主体とする不織布、ビニロン・レーヨン不織布(ビニロン・レーヨン混抄紙)、ポリアミド不織布、ポリオレフィン・レーヨン不織布、ビニロン紙、ビニロン・リンターパルプ紙、ビニロン・マーセル化パルプ紙などを用いることができる。また、親水処理された微孔性ポリオレフィンフィルム(微孔性ポリエチレンフィルムや微孔性ポリプロピレンフィルムなど)とセロファンフィルムとビニロン・レーヨン混抄紙のような吸液層(電解液保持層)とを積み重ねたものをセパレータとしてもよい。セパレータの厚みは、20~500μmであることが好ましい。なお、セパレータ中のアルカリ電解液量については特に制限はなく、可能な範囲で吸収できる量のアルカリ電解液を保持させることができる。
また、上記特許文献1に開示しているように、負極とセパレータとの間には、ポリマーをマトリクスとし、このマトリクス中に金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩およびケイ酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物の粒子が分散したアニオン伝導性膜が配置されていてよい。
アニオン伝導性膜のマトリクスとなるポリマーは、特に限定はされないが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVDF-CTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF-TFE)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF-HFP-TFE)などのフッ素樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;ポリスチレン;極性基または極性を有する結合を分子内に有するポリマー(以下、「極性ポリマー」という);などが挙げられる。
前記の極性ポリマーとしては、ポリアルキレンイミン(ポリエチレンイミンなど)などのアミノ基を含有するポリマー;(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのエステル結合(エステル基)を含有するポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩など)、ポリ(メタ)アクリル酸のマグネシウム塩、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ土類金属塩(カルシウム塩など)、ポリ(メタ)アクリル酸のアンモニウム塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩など)、ポリマレイン酸のマグネシウム塩、ポリマレイン酸のアルカリ土類金属塩(カルシウム塩など)、ポリマレイン酸のアンモニウム塩などの、カルボン酸塩基(カルボキシル基の塩)を含有するポリマー;ポリアミド;などが挙げられる〔前記の「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸とを纏めた表現である〕。
アニオン伝導性膜は、マトリクスとなるポリマーとして、前記例示の各種ポリマーのうちの1種のみを含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。アニオン伝導性膜は、マトリクスとなるポリマーとして、前記例示のフッ素樹脂を含有していることがより好ましく、フッ素樹脂と極性ポリマーとを含有していることが更に好ましい。
アニオン伝導性膜中には、金属化合物の粒子を分散させる。このような金属化合物の粒子としては、金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩およびケイ酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物の粒子が挙げられる。
金属の酸化物としては、酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられるほか、ハイドロタルサイトを例示することもできる。ハイドロタルサイトは、下記一般式(1)に代表される化合物である。
{M1
1-xM2
x(OH)2}(An-)x/n・mH2O (1)
前記一般式(1)中、M1はMg、Fe、Zn、Ni、Co、Cu、Ca、Liなどを表し、M2はAl、Fe、Mnなどを表し、AはCO3
2-などを表し、mは0以上の整数、nは2または3で、0.2≦x≦0.4である。
また、水酸化物(金属の水酸化物)としては、水酸化セリウム、水酸化ジルコニウムなどが挙げられる。更に、硫酸塩としては、エトリンガイドなどが挙げられる。また、リン酸塩としては、ハイドロキシアパタイトなどが挙げられる。
前記金属化合物の粒子の中でも、ハイドロタルサイトなどの陰イオン交換能を有する層間化合物が好ましい。
前記金属化合物の粒子の平均粒子径は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることが特に好ましく、100μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが特に好ましい。
本明細書でいう金属化合物の粒子の平均粒子径、および後記の酸化銀の平均粒子径は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、堀場製作所製「LA-920」)を用い、粒子を溶解しない媒体に、これらの粒子を分散させて測定した、体積基準での累積頻度50%における粒径(D50)である。
アニオン伝導性膜におけるポリマー(マトリクスとなるポリマー)の割合は、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、40質量%以上であることが特に好ましく、また、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。
また、アニオン伝導性膜における前記金属化合物の粒子の割合は、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることが特に好ましく、また、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
アニオン伝導性膜の厚みは、アニオン伝導性膜による前記の効果をより良好に確保する観点から、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることが特に好ましい。ただし、アニオン伝導性膜が厚すぎると、電池内でのアニオン伝導性膜の占有体積が大きくなって、正極活物質や負極活物質の導入量が少なくなる虞がある。よって、電池の容量をより高める観点からは、アニオン伝導性膜の厚みは、500μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。
アニオン伝導性膜は、例えば、前記ポリマーや金属化合物の粒子などを水やN-メチル-2-ピロリドンなどの有機溶媒に分散(ポリマーは溶解していてもよい)させて調製したアニオン伝導性膜形成用組成物を、基材表面に塗布し、乾燥した後に剥離する方法によって形成することができる。また、前記の乾燥後にプレス処理を施してもよい。なお、アニオン伝導性膜は、この段階ではアルカリ電解液を含有していないが、電池内において、電池に注入されたアルカリ電解液を吸収させることにより、内部に電解液を含有させることができる。また、前記の乾燥後(またはプレス処理後)のアニオン伝導性膜をアルカリ電解液中に浸漬して、あらかじめアルカリ電解液を吸収させてから電池の組み立てに供してもよい。
本発明のアルカリ二次電池に使用するアルカリ電解液としては、例えば、「セパレータに含有させるアルカリ電解液」、「アニオン伝導性膜に含有させるアルカリ電解液」、「負極に含有させるアルカリ電解液」および「正極合剤の成形時に使用するアルカリ電解液」などが例示される。前記アルカリ電解液には、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど)の1種または複数種の水溶液が好ましく用いられ、中でも水酸化カリウムが特に好ましく用いられる。アルカリ電解液の濃度は、例えば、水酸化カリウムの水溶液の場合、水酸化カリウムが、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であって、好ましくは40質量%以下、より好ましくは38質量%以下である。水酸化カリウムの水溶液の濃度をこのような値に調整することで、導電性に優れたアルカリ電解液とすることができる。
アルカリ電解液には、前記の各成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて公知の各種添加剤を添加してもよい。例えば、アルカリ二次電池の負極に用いる亜鉛系粒子の腐食(酸化)を防止するために、酸化亜鉛を添加するなどしてもよい。なお、酸化亜鉛は、負極に添加することもできる。
また、アルカリ電解液には、マンガン化合物、スズ化合物およびインジウム化合物よりなる群から選択される1種以上を溶解させることもできる。アルカリ電解液中にこれらの化合物が溶解している場合には、これらの化合物由来のイオン(マンガンイオン、スズイオン、インジウムイオン)が、正極合剤中にマンガン酸化物を含有させた場合に溶出するMnのイオンと同様の効果を奏するため、電池の充放電サイクル特性のより一層の向上が期待できる。
なお、前記化合物は、電池内に注入するアルカリ電解液、アニオン伝導性膜に含有させるアルカリ電解液、負極に含有させるアルカリ電解液および正極合剤の成形時に使用するアルカリ電解液のいずれに溶解させてもよく、これら全てに溶解させてもよい。
アルカリ電解液に溶解させるマンガン化合物としては、塩化マンガン、酢酸マンガン、硫化マンガン、硫酸マンガン、水酸化マンガンなどが挙げられる。また、アルカリ電解液に溶解させるスズ化合物としては、塩化スズ、酢酸スズ、硫化スズ、臭化スズ、酸化スズ、水酸化スズ、硫酸スズなどが挙げられる。更に、アルカリ電解液に溶解させるインジウム化合物としては、水酸化インジウム、酸化インジウム、硫酸インジウム、硫化インジウム、硝酸インジウム、臭化インジウム、塩化インジウムなどが挙げられる。
マンガン化合物、スズ化合物およびインジウム化合物のアルカリ電解液中での濃度は、電解液中でのマンガン、スズおよびインジウムの割合で換算した場合に、0.005質量%(50ppm)以上であることが好ましく、0.05質量%(500ppm)以上であることがより好ましい。
なお、前記化合物の濃度(前記元素の割合)の上限は、特に制限されるものではないが、濃度が高すぎる場合はアルカリ金属塩などとして析出しやすくなり、セパレータの空孔を塞ぐ虞も生じることから、1質量%(10000ppm)以下であることが好ましく、0.5質量%(5000ppm)以下であることがより好ましい。
また、アルカリ電解液に前記化合物の2種以上を溶解させる場合は、それらの合計濃度が前記濃度の範囲にあることが好ましい。
アルカリ電解液に前記化合物が含まれている場合には、酸化銀の平均粒子径が小さくなるほど、前記化合物のイオンが酸化銀に吸着しやすくなり、その作用が発現しやすくなる。よって、充電時の利用率をより向上させ、電池の充放電サイクル特性を更に高めるために、酸化銀の平均粒子径は、例えば、1μm以下とすることが好ましい。
また、前記の通り、前記ポリアルキレングリコール類もしくは前記カルシウム化合物を、必要に応じてアルカリ電解液に添加し、電解液を介して負極中に含有させることもできる。
本発明の酸化銀二次電池の形態については特に制限はなく、外装缶と封口板とをガスケットを介してカシメ封口したり、外装缶と封口板とを溶接して封口したりする電池ケースを有する扁平形(コイン形、ボタン形を含む);金属ラミネートフィルムからなる外装体を有するラミネート形;有底筒形の外装缶と封口板とをガスケットを介してカシメ封口したり、外装缶と封口板とを溶接して封口したりする電池ケースを有する筒形〔円筒形、角形(角筒形)〕;など、いずれの形態とすることもできる。
なお、カシメ封口を行う形態の外装体を使用する場合、外装缶と封口板との間に介在させるガスケットの素材には、PP、ナイロンなどを使用できるほか、電池の用途との関係で耐熱性が要求される場合には、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などのフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル(PEE)、ポリスルフォン(PSF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルフォン(PES)、PPS、PEEKなどの融点が240℃を超える耐熱樹脂を使用することもできる。また、電池が耐熱性を要求される用途に適用される場合、その封口には、ガラスハーメチックシールを利用することもできる。
また、充電時に外装缶を構成する鉄などの元素が溶出するのを防ぐため、外装缶の内面には、金などの耐食性の金属をメッキしておくことが望ましい。
〔充電装置及び充電方法について〕
次に、上記した酸化銀二次電池を充電するための充電装置及び充電方法について説明する。
本発明による充電装置は、上記した酸化銀二次電池を定電流定電圧方式で充電するものであって、前記電池に対して充電電流を供給する電流供給手段と、前記電池に供給される充電電流を測定する充電電流測定手段と、前記電池に供給される充電電圧を測定する充電電圧測定手段と、所定の定電流充電終止条件を満たすまでは前記充電電流が一定の定電流充電が行われ、前記定電流充電終止条件を満たした後は前記充電電圧が一定の定電圧充電が行われるよう、前記電流供給手段が供給する充電電流を制御する制御部とを備え、前記定電圧充電時の充電電圧は、前記正極で銀から酸化銀(I)への酸化反応が進行するが、酸化銀(I)から酸化銀(II)への酸化反応は進行しない定電圧に設定されている。
前記定電流充電終止条件は、典型的には、充電電圧が所定の閾値に達したこととすることができるが、図5に示す抵抗値のピークを検出したこととすることもできる。「充電電圧が閾値に達した」か否かは、充電電圧測定手段による充電電圧測定値に基づいて判定することができる。また、抵抗値のピークの検出は、例えば、充電電圧測定手段による充電電圧測定値の単位時間あたりの増加率が所定割合を超えたか否かによって判定することができる。なお、充電電流が一定の定電流充電は、充電電流測定手段による充電電流測定値が一定となるよう電流供給手段をフィードバック制御することにより行うことができる。充電電圧が一定の定電圧充電は、充電電圧測定手段による充電電圧測定値が一定となるよう電流供給手段をフィードバック制御することにより行うことができる。
また、本発明の充電方法は、上記した酸化銀二次電池を定電流定電圧方式で充電する方法であって、所定の定電流充電終止条件を満たすまで行われる定電流充電工程と、前記定電流充電終止条件を満たした後に行われる定電圧充電工程とを有し、前記定電流充電工程及び定電圧充電工程において前記正極で銀から酸化銀(I)への酸化反応を進行させる。また、酸化銀(I)から酸化銀(II)への酸化反応が進行しないよう、前記定電圧充電工程における充電電圧を設定する。
上記本発明の充電装置及び充電方法において、定電圧充電時の充電電圧(実電圧)は理想的には完全に一定の定電圧であるが、実回路上は充電回路を構成する回路素子の公差などの要因によって数%程度の定常的なばらつきが生じるとともに、外乱による突発的・一時的なノイズをも生じ得る。好ましくは、前記定電圧充電時の充電電圧を、その定常的なばらつき範囲の最大値が1.856V未満となる定電圧とすることができる。「定常的なばらつき範囲」とは、充電装置の動作保証範囲内の環境下での定電圧充電制御時における実電圧のばらつき範囲であって、外乱による突発的・一時的なばらつきを除くものである。
なお、充電回路の充電電圧出力部に平滑コンデンサを接続した場合には、上記定常的なばらつきは、数十秒~数分程度の比較的長い時間範囲内での緩やかな電圧上昇若しくは電圧降下の態様で現われることとなる。これは、例えば、充電電圧を測定する充電電圧測定手段としての分圧回路を構成する抵抗器の温度変動に伴う抵抗値変化などに起因する。
また、充電回路が出力する充電電圧の公差が3%未満であれば、例えば1.8Vを前記閾値、及び、定電圧充電時の充電電圧の制御目標値とすることができ、この場合、1.746~1.854Vの定常的なばらつき範囲内で微小変動する定電圧が電池に供給されることとなる。好ましくは、定電圧充電時の充電電圧の定常的なばらつき範囲の最小値は、1.70V以上、より好ましくは1.75V以上とすることができ、AgOへの酸化反応が生じない範囲で可能な限り充電終止電圧を大きくすることで、より一層の充電サイクル特性の改善を図ることができる。
本発明の充電方法及び充電装置において、上記閾値と定電圧充電時の充電電圧とは、異なっていてもよいが一致させておくことが好ましい。上記閾値と定電圧充電時の充電電圧とを異ならせる場合は、定電流充電池の充電電圧が上記閾値に達した後、定電圧充電時の充電電圧として設定された定電圧となるまで、充電電圧を比例的に変化させる充電方式移行工程を設けることが好ましい。
図1は、本発明の一実施例に係る酸化銀二次電池1としての銀-亜鉛アルカリ二次電池を示しており、この酸化銀二次電池1は、正極10、セパレータ11及びアニオン伝導性膜12を内填した外装缶13の開口部に、負極14を内填した封口板15が、断面L字状で全体として環状のガスケット16を介して嵌合しており、外装缶13の開口端部が内方に締め付けられ、これによりガスケット16が封口板15に当接することで、外装缶13の開口部が封口されて電池内部が密閉構造となっている。すなわち、外装缶13、封口板15およびガスケット16からなる電池容器内の空間(密閉空間)に、正極10、負極14、セパレータ11およびアニオン伝導性膜12を含む発電要素が装填されており、更にアルカリ電解液がセパレータ11に保持されている。そして、外装缶13は正極端子を兼ね、封口板15は負極端子を兼ねている。なお、正極13は、上記したように、酸化銀(I)と二酸化マンガンと黒鉛(導電助剤)とを含有する正極合剤の成形体であってよい。
図2は、図1に示した酸化銀二次電池1を充電するための充電装置2の概略回路図であって、この充電装置2は、電池1に対して充電電流を供給するFET20により主構成される電流供給手段と、電池1に供給される充電電流を測定するカレントトランス21により主構成される充電電流測定手段と、電池1に供給される充電電圧を測定する分圧回路22により主構成される充電電圧測定手段と、定電流定電圧方式で電池1を充電するようFET20が供給する充電電流を制御する制御部23とにより主構成されている。
なお、FET20の出力側には平滑コンデンサ24が接続され、電池1に供給される充電電圧の平滑化が図られている。また、分圧回路22と直列にスイッチング素子25が接続され、制御部23からのON/OFF指令信号により分圧回路22をグラウンドに導通させるか絶縁するかを切替可能に構成され、分圧回路22をグラウンドから絶縁させることで、充電していないときに電池電力が分圧回路22を介して消費されてしまうことを防止可能である。
また、電池1の温度を測定するためのサーミスタ26が設けられており、このサーミスタ26の検出電圧が制御部23に平滑コンデンサ27を介して入力されている。この電池温度測定値は、例えば、充電の終止条件の判定などに用いることができる。
制御部23による定電流定電圧充電方式による充電制御は、基本的には従来公知の方法によって行うことができる。すなわち、充電制御を開始すると、まずFET20から電池1に供給される充電電流が一定の定電流充電、例えば5mAを制御目標値とする定電流充電を行い、充電電圧(電池電圧)が所定の閾値、例えば1.80Vに達すると、その後は充電電圧が一定の定電圧充電、例えば1.80Vを制御目標値とする定電圧充電が行われるよう、FET20の駆動電圧を調整して電池1に供給する充電電流を制御する。
定電流充電時の制御目標電流値に対する実電流値の公差、並びに、定電圧充電時の制御目標電圧値に対する実電圧値の公差は、好ましくは3%以内、より好ましくは2%以内とすることができる。例えば、定電圧充電時の制御目標値が1.80Vで公差が2%の場合、実電圧値は、1.764V~1.836Vの範囲内で定常的なばらつきが生じる。このばらつき範囲の最大値を、AgOへの酸化反応に必要な1.856V未満とすることで、不安定なAgOが正極内で生成されることを防止できる。
図3は、定電流充電から定電圧充電に移行する閾値電圧、及び、移行後の定電圧充電時の電圧を、1.90V、1.85V及び1.80Vにそれぞれ設定して、上記した酸化銀二次電池1の充放電サイクルを繰り返した場合の電池1の満充電容量の変化についての実験結果を示している。
充電は、本実施例の充電装置2を用いて充電終止条件が成立するまで行った。
放電は、定電流放電により完全放電するまで行った。
図3から明らかなように、定電圧充電時の充電電圧を1.90Vとした場合、充放電サイクル数が増えるごとに満充電容量の低下が比較的大きく、30回の充放電サイクルによって満充電容量が40%以上も落ち込んでいる。
定電圧充電時の充電電圧を1.85Vとすると、1.90Vのときに比べれば落ち込みは少ないが、30回の充放電サイクルによって35%程度の落ち込みが見られる。
一方、定電圧充電時の充電電圧が1.80Vの場合は、充放電サイクルを繰り返しても満充電容量の落ち込みは見られず、安定した充放電サイクル特性が得られた。
なお、上記特許文献1に開示した実施例25~29の放電特性評価では、1.85Vの定電圧充電で100サイクル繰り返しても電池容量の落ち込みがさほど現われていないが、これは放電条件の違いによるものである。すなわち、本願出願人が特許文献1に開示した実施例25~29では、放電時に、理論容量の40%に達した時点で放電を終止させている。一方、上記本発明の実施例では、100%放電させており、このような厳しい条件では1.85V充電の場合には比較的少ない回数の充放電サイクルにより電池容量の落ち込みが現われるが、1.80V充電では厳しい放電条件の場合でも充放電サイクル特性が良好となった。