JP3617494B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
非水電解質二次電池には、一般にエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)などの高誘電率の溶媒とジエチルカーボネート(DEC)などの低粘度溶媒との混合系溶媒にLiPFやLiBF等の支持塩を溶解させた電解液が使用されている。
【0003】
そして、更に炭酸ビニレン(ビニレンカーボネート)を添加すると初充電における不可逆容量が低減されることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、炭酸ビニレンを用いた非水電解質二次電池では、放電容量、及びサイクル充放電性能は、必ずしも十分とは言えず、放電容量、及びサイクル充放電性能の向上が切望されていた。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、非水電解質二次電池の放電容量、及びサイクル充放電性能の向上を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、かかる問題点を解決し得る非水電解質二次電池を開発すべく鋭意研究を重ねた。その結果、非水電解質に、ハロゲン置換された環状の炭化水素から誘導される官能基を少なくとも1つ有する炭酸ビニレン誘導体が添加されていると、放電容量、及びサイクル充放電性能が向上することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、請求項1の発明は、正極と、負極と、非水電解質とを備える非水電解質二次電池において、前記非水電解質に、一般式(1)で示される炭酸ビニレン誘導体が添加されていることを特徴とする非水電解質二次電池である。
【化2】
Figure 0003617494
(式中R およびR はそれぞれ独立で、R およびR の少なくともいずれか一方がハロゲン置換されたフェニル基、ハロゲン置換されたキシリル基、ハロゲン置換されたナフチル基、又はハロゲン置換されたシクロヘキシル基からなり、R 又はR のいずれか一方のみが前記官能基である場合は残りの一方は水素である。)
また、請求項の発明は、前記炭酸ビニレン誘導体が、前記非水電解質の全重量に対して0.5重量%以上10重量%以下添加されていることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる角形非水電解質二次電池1の概略断面図である。この角形非水電解質二次電池1は、正極3と、負極4とがセパレータ5を介して巻回された扁平巻状電極群2と、電解質塩を含有した図示しない非水電解質とを電池ケース6に収納してなるものである。
【0010】
そして、電池ケース6には、安全弁8を設けた電池蓋7がレーザー溶接によって取り付けられ、正極端子10は正極リード11を介して正極3と接続され、負極4は電池ケース6の内壁と接触により電気的に接続されている。
【0011】
そして、正極3は、例えばアルミニウム、ニッケル、又はステンレス製の正極集電体の両面にリチウムイオンを吸蔵・放出する物質を構成要素とする正極合剤からなる正極活物質層を設けた構造となっている。この正極活物質層は、正極活物質を含有する。
【0012】
正極活物質としては、特に限定されず、例えば公知の組成式LiMO、Li、組成式NaMO(ただしM は一種類以上の遷移金属、0≦x≦1、0≦y≦2 )で表される複合酸化物、トンネル構造若しくは層状構造の金属カルコゲン化物、又は金属酸化物を用いることができる。その具体例としては、例えばLiCoO、LiNiO、LiCoNi1−x、LiMn、LiMn、MnO、FeO、V、V13、TiO、またはTiS等が挙げられる。また、有機化合物としては、例えばポリアニリン等の導電性ポリマー等が挙げられる。さらに、無機化合物、有機化合物を問わず、上記各種活物質を混合して用いてもよい。
【0013】
そして、正極3は例えば以下のようにして製造される。正極活物質をグラファイトやカーボンブラック等の導電剤とポリフッ化ビニリデン等の結着剤と共に混合して、正極合剤とする。そして、この正極合剤をN−メチルピロリドン等の溶媒に分散させてスラリーとする。これを正極集電体の両面に塗布、乾燥後、ロールプレス等により圧縮平滑化して正極が製造される。なお、両面のみならず、片面のみ正極活物質層を設けた構造となっていても構わない。
【0014】
導電剤としては、特に限定されず、例えば、グラファイトやカーボンブラック等の他、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物あるいはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などを単独又はこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかで、グラファイトやカーボンブラックが好ましい。導電剤の添加量は、特に限定されないが、好ましくは0.5〜50重量%であり、さらに好ましくは0.5〜10重量%であり、特に好ましくは1〜6重量%である。
【0015】
また、正極用結着剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体またはこの(Na+ )イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体またはこの(Na+ )イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体またはこの(Na+ )イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体またはこの(Na+ )イオン架橋体、ポリエチレン、ポリプロピレンを挙げる事ができ、これらの材料を単独又は混合物として用いることができる。これらの材料の中でポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。
【0016】
負極4は、例えば銅、ニッケル、又はステンレス製の負極集電体の両面に負極合剤からなる負極活物質層を設けた構造となっている。
【0017】
この負極4は例えば以下のようにして製造される。負極活物質をポリフッ化ビニリデン等の結着剤と共に混合して、負極合剤とする。そして、この負極合剤をN−メチルピロリドン等の溶媒に分散させてスラリーとする。これを負極集電体の両面に塗布、乾燥後、ロールプレス等により圧縮平滑化して負極4が製造される。
【0018】
負極活物質としては、特に限定されず、例えばAl、Si、Pb、Sn、Zn、Cd等とリチウムとの合金、LiFe、WO、MoO、SiO、CuO等の金属酸化物、グラファイト、カーボン等の炭素質材料、Li(LiN)等の窒化リチウム、金属リチウム、又はこれらの混合物を用いることができる。
【0019】
負極用結着剤としては特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体またはこの(Na+ )イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体またはこの(Na+ )イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体またはこの(Na+ )イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体またはこの(Na+ )イオン架橋体、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げることができ、これらの材料を単独又は混合物として用いることができる。これらの材料の中でスチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−アクリル酸共重合体またはこの(Na+ )イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体またはこの材料の(Na+ )イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体またはこの材料の(Na+ )イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体またはこの材料の(Na+ )イオン架橋体が好ましい。
【0020】
なお、両面のみならず、片面のみ負極活物質層を設けた構造となっていても構わない。
【0021】
セパレータ5としては、特に限定されず、例えば公知の織布、不織布、合成樹脂微多孔膜等を用いることができ、特に合成樹脂微多孔膜が好適に用いることができる。中でもポリエチレン若しくはポリプロピレン製の微多孔膜、又はこれらを複合した微多孔膜等のポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗等の面で好適に用いられる。
【0022】
さらに高分子固体電解質等の固体電解質を用いることで、セパレータを兼ねさせることもできる。この場合、高分子固体電解質として多孔性高分子固体電解質膜を使用する等して高分子固体電解質にさらに電解液を含有させても良い。この場合、ゲル状の高分子固体電解質を用いる場合には、ゲルを構成する電解液と、細孔中等に含有されている電解液とは異なっていてもよい。また、合成樹脂微多孔膜と高分子固体電解質等を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本発明の非水電解質としては、非水電解液又は固体電解質のいずれも使用することができる。非水電解液を用いる場合には特に限定されず、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、メチルアセテート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、2−メチル−γ−ブチルラクトン、アセチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、3−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート等を単独でまたは二種以上混合して使用することができる。
【0024】
非水電解液の溶質としての電解質塩は、特に限定されず例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiAsF、LiCFCO、 LiCF(CF、LiCF(C、LiCFSO、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiN(COCFおよびLiN(COCFCF、LiPF(CFCF等を単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。電解質塩としては中でもLiPFを用いるのが好ましい。
【0025】
電解質塩の非水電解液に対する溶解量は、特に限定されないが、0.2〜2.5mol/lが好ましい。特に、0.8〜2.0mol/lとすることがより好ましい。
【0026】
固体電解質としては、公知の固体電解質を用いることができ、例えば無機固体電解質、ポリマー固体電解質を用いることができる。
【0027】
そして、本発明では非水電解質に、ハロゲン置換された環状の炭化水素から誘導される官能基を少なくとも1つ有する炭酸ビニレン誘導体が添加されている。この炭酸ビニレン誘導体は一般式(1)で示される化合物である。
【化3】
Figure 0003617494
【0028】
ここで、環状の炭化水素から誘導される官能基を少なくとも1つ有する炭酸ビニレン誘導体とは、一般式(1)において、R1およびRの少なくともいずれか一方がハロゲン置換されたフェニル基、ハロゲン置換されたキシリル基、若しくはハロゲン置換されたナフチル基の芳香族炭化水素基、又はハロゲン置換されたシクロヘキシル基の脂環式炭化水素基の炭酸ビニレン誘導体である。なお、ここでハロゲンとは、塩素、フッ素、若しくは臭素をいう。また、芳香族炭化水素基、又は脂環式炭化水素基は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基等で置換されていてもよい。ここで、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が好適であり、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキソキシ基等が好適である。また、R、Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、R又はRのいずれか一方のみが上述の官能基であって、他方が水素であってもよい。
【0029】
一般式(1)で示される炭酸ビニレン誘導体を添加することによって、放電容量、及びサイクル充放電性能が向上する明確な理由は不明であるが以下のように考えられる。すなわち、一般に非水電解質を用いた非水電解質二次電池では、充放電にともなって、負極表面に皮膜が形成される。ここで、本発明の非水電解質二次電池では、非水電解質に一般式(1)で示される炭酸ビニレン誘導体を添加しているため、上述の皮膜は、この炭酸ビニレン誘導体を含んで形成されることになる。そして、一般式(1)で示される炭酸ビニレン誘導体は、芳香族炭化水素基、又は脂環式炭化水素基を有し、これらの官能基は充放電に伴う酸化還元反応においても安定な構造である。よって、これらの官能基を有する炭酸ビニレン誘導体を含んで形成された皮膜も非常に安定性が高いものとなり、充放電時の非水電解質の分解が効率的に抑制され、初期容量及びサイクル寿命が向上したものと考えられる。
【0030】
また、この芳香族炭化水素基、又は脂環式炭化水素基は、鎖式炭化水素基、及びハロゲン等と比べてかさ高い。このため、従来のR及びRのいずれもが水素である炭酸ビニレン、R又はRが鎖式炭化水素基の炭酸ビニレン誘導体、R又はRがハロゲンの炭酸ビニレン誘導体、R又はRがハロゲン置換アルキル基の炭酸ビニレン誘導体、R又はRがハロゲン置換アルキルスルホニル基の炭酸ビニレン誘導体等と比べて、RおよびRの少なくともいずれか一方が芳香族炭化水素基、又は脂環式炭化水素基である炭酸ビニレン誘導体は、より少量の炭酸ビニレン誘導体によって、安定な皮膜を形成できるものと考えられる。よって、不可逆容量が抑制されて、サイクル寿命が向上するものと考えられる。
【0031】
さらに、芳香族炭化水素基、又は脂環式炭化水素基が塩素、フッ素、若しくは臭素のハロゲン基によって、置換されているため還元分解電位がより貴となり皮膜形成が促進されるため、初期の放電容量、及びサイクル寿命がより向上するものと考えられる。
【0032】
そして、炭酸ビニレン誘導体の添加量は、特に限定されないが、好ましくは、非水電解質の全重量、すなわち炭酸ビニレン誘導体以外の非水電解質の全重量に対して0.5重量%以上10重量%以下であり、さらに好ましくは0.5重量%以上5重量%以下であり、特に好ましくは1重量%以上2重量%以下である。
【0033】
0.5重量%未満では、負極上に安定な皮膜が十分に形成されないからである。10重量%よりも多く添加すると負極上に皮膜が過剰に形成され、皮膜抵抗が増大し、サイクルに伴う分極が大きくなって、その結果容量保持率が小さくなってしまうからである。
【0034】
なお、非水電解質二次電池の形状は特に限定されるものではなく、本発明は、角形、楕円形、コイン形、ボタン形、シート形電池等の様々な形状の非水電解質二次電池に適用可能である。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
参考例1>
参考例1では、図1に示す角形非水電解質二次電池1を作製した。まず、正極活物質として、LiCoO87重量部と、導電材のアセチレンブラック5重量部と、結着剤のポリフッ化ビニリデン8重量部とを混合し、N−メチル−2−ピロリドンを適宜加えて分散させ、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さが、20μmのアルミ製の正極集電体の両面に均一に塗布、乾燥させた後、ロールプレスで圧縮成形することにより正極3を作製した。
【0036】
負極合剤は、グラファイト(黒鉛)95重量部とカルボキシメチルセルロース2重量部とスチレンブタジエンゴム3重量部とを混合し、水を適宜加えて分散させ、スラリーを調製した。このスラリーを厚さ15μmの銅製の負極集電体の両面に塗布、乾燥させた後、ロールプレスで圧縮成形することにより負極4を作製した。
【0037】
セパレータ5には、厚さ25μmの微多孔性ポリエチレンフィルムを用いた。上述の構成要素を用いて、幅30mm、高さ48mm、厚み5mmの角形非水電解質二次電池1を作製した。
【0038】
非水電解質としては、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比40:60で混合し、この溶液にLiPFを1.0モル/リットル溶解したものを用いた。さらに、非水電解質の全重量、すなわち、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とLiPFからなる非水電解質の全重量に対して1重量%の、一般式(1)においてRがフェニル基であり、かつRが水素である炭酸ビニレン誘導体を添加した。
【0039】
参考例2>
がキシリル基であり、かつRが水素である一般式(1)の炭酸ビニレン誘導体を1重量%添加した以外は参考例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0040】
参考例3>
がナフチル基であり、かつRが水素である一般式(1)の炭酸ビニレン誘導体を1重量%添加した以外は参考例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0041】
参考例4>
がシクロヘキシル基であり、かつRが水素である一般式(1)の炭酸ビニレン誘導体を1重量%添加した以外は参考例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0042】
<実施例
がフェニル基の水素をフッ素で置換したフッ素化フェニル基であり、かつRが水素である一般式(1)の炭酸ビニレン誘導体を1重量%添加した以外は参考例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0043】
参考例5〜10
がフェニル基であり、かつRが水素である一般式(1)の炭酸ビニレン誘導体を0.5〜20重量%添加した以外は参考例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0044】
<比較例1>
炭酸ビニレン誘導体を添加しなかった以外は参考例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0045】
<比較例2>
が水素であり、かつRが水素である一般式(1)の化合物(炭酸ビニレン)を1重量%添加した以外は参考例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0046】
<比較例3>
がメチル基であり、かつRが水素である一般式(1)の炭酸ビニレン誘導体(プロピリデンカーボネート)を1重量%添加した以外は参考例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0047】
<比較例4>
がフッ素基であり、かつRが水素である一般式(1)の炭酸ビニレン誘導体(モノフッ化炭酸ビニレン)を1重量%添加した以外は参考例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0048】
<比較例5>
がトリフルオロメチル基であり、かつRが水素である一般式(1)の炭酸ビニレン誘導体(トリフルオロメチル炭酸ビニレン)を1重量%添加した以外は参考例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0049】
<比較例6>
がトリフルオロメタンスルホニル基であり、かつRが水素である一般式(1)の炭酸ビニレン誘導体(トリフルオロメタンスルホニル炭酸ビニレン)を1重量%添加した以外は参考例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0050】
以上のように作製した実施例1、参考例1〜10、及び比較例1〜6の非水電解質二次電池を、それぞれ充電電流600mA、充電電圧4.20Vの定電流定電圧充電で2.5時間充電した後、放電電流600mA、終止電圧2.75Vの条件で繰り返し充放電サイクルを行ったときの1サイクル目の放電容量と1サイクル目に対する500サイクル目の放電容量比を表1に示す。
【0051】
【表1】
Figure 0003617494
【0052】
芳香族炭化水素基、又は脂環式炭化水素基を有する一般式(1)の化合物を添加した実施例1、参考例1〜10の非水電解質二次電池では、初期容量が比較例1より大きくなり、かつ優れたサイクル性能を示した。
また、実施例1、参考例1〜10の非水電解質二次電池では、比較例2〜6の非水電解質二次電池より、優れたサイクル性能を示した。また、実施例のように、官能基をフッ素化フェニル基とすると、フッ素化していない参考例1の非水電解質二次電池と比べて、サイクル性能が向上した。
【0053】
また、添加量が10重量%より大きくなると、負極皮膜が過剰に形成されたために、皮膜抵抗が増大し、サイクルに伴う分極が大きくなったために容量保持率が小さくなったものと考えられる。したがって、添加量は、0.5〜10重量%添加した場合がより好ましいことがわかった。
【0054】
以上のように芳香族炭化水素基、又は脂環式炭化水素基を有する一般式(1)で表される炭酸ビニレン誘導体を添加することによって、放電容量、及びサイクル充放電性能が向上する明確な理由は不明であるが以下のように考えられる。すなわち、充放電にともなって、負極表面に皮膜が形成される。この皮膜は、上述のように一般式(1)のRおよびRの少なくともいずれか一方が芳香族炭化水素基、又は脂環式炭化水素基である炭酸ビニレン誘導体から形成されており、充放電に伴う酸化還元反応に対しても安定な構造である。よって、これらの官能基を有する炭酸ビニレン誘導体から形成された皮膜も非常に安定性が高いものとなり、充放電時の非水電解質の分解が効率的に抑制され、初期容量及びサイクル寿命が向上したものと考えられる。
【0055】
また、この芳香族炭化水素基、又は脂環式炭化水素基は、鎖式炭化水素基、及びハロゲン等と比べてかさ高い。このため、比較例2〜6の場合よりも、より少量の炭酸ビニレン誘導体によって、安定な皮膜を形成できるものと考えられる。よって、不可逆容量が抑制されて、サイクル寿命が向上するものと考えられる。
【0056】
さらに、実施例では、芳香族炭化水素基がフッ素によって、置換されているため還元分解電位がより貴となり、皮膜形成が促進されるため初期の放電容量、及びサイクル寿命がより向上したものと考えられる。
【0057】
なお、本実施例においては、正極活物質としてLiCoOを用いたが、正極活物質として、公知のリチウム含有複合金属酸化物、すなわち、リチウムを含むコバルト酸化物、リチウムを含むマンガン酸化物、リチウムを含むニッケル酸化物あるいはこれらの複合酸化物、混合物を用いても同様の効果が得られることは明らかである。
【0058】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0059】
【発明の効果】
本発明の非水電解質二次電池によれば、非水電解質二次電池の放電容量、及びサイクル充放電性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の角形非水電解質二次電池の縦断面図
【符号の説明】
1…角形非水電解質二次電池
2…扁平巻状電極群
3…正極
4…負極
5…セパレータ
6…電池ケース
7…電池蓋
8…安全弁
10…正極端子
11…正極リード

Claims (2)

  1. 正極と、負極と、非水電解質とを備える非水電解質二次電池において、
    前記非水電解質に、一般式(1)で示される炭酸ビニレン誘導体が添加されていることを特徴とする非水電解質二次電池。
    Figure 0003617494
    (式中R およびR はそれぞれ独立で、R およびR の少なくともいずれか一方がハロゲン置換されたフェニル基、ハロゲン置換されたキシリル基、ハロゲン置換されたナフチル基、又はハロゲン置換されたシクロヘキシル基からなり、R 又はR のいずれか一方のみが前記官能基である場合は残りの一方は水素である。)
  2. 前記炭酸ビニレン誘導体が、前記非水電解質の全重量に対して0.5重量%以上10重量%以下添加されていることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
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