JP2022162827A - 正極活物質用銀酸化物およびその製造方法、ならびにそれを用いたアルカリ二次電池用正極およびアルカリ二次電池 - Google Patents

正極活物質用銀酸化物およびその製造方法、ならびにそれを用いたアルカリ二次電池用正極およびアルカリ二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】充電時の保存安定性に優れたアルカリ二次電池用正極およびアルカリ二次電池を提供する。【解決手段】正極活物質用銀酸化物は、P、Nb、W、V、Mo、Si、Zr、Ti、Ge、AlおよびCeよりなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含有している。また、正極活物質用銀酸化物の製造方法は、銀を含む水溶性の塩、および、P、Nb、W、V、Mo、Si、Zr、Ti、Ge、AlおよびCeよりなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含む金属塩を、水に溶解させて第1液とする工程と、アルカリを水に溶解して第2液とする工程と、pH8~10に調整した中性~アルカリ性溶液を第3液とする工程と、前記第1液および前記第2液を、前記第3液に同時滴下して、銀および前記添加元素を含有する沈殿物を生成して懸濁液とする工程と、前記懸濁液をろ過して乾燥する工程とを備えている。【選択図】図5

Description

本願は、保存安定性に優れた正極活物質用銀酸化物およびその製造方法、ならびにそれを用いたアルカリ二次電池用正極およびアルカリ二次電池に関するものである。
銀酸化物を含有する正極と、亜鉛や亜鉛合金を含有する負極と、アルカリ電解液とを有するアルカリ電池(酸化銀電池)は、放電容量が大きく、また放電電圧の平坦性に優れることから、一次電池として広く一般に使用されている。
一方で、銀酸化物を正極に使用したアルカリ電池や、亜鉛や亜鉛合金を負極に使用したアルカリ電池を、二次電池として利用することも検討されている。銀酸化物を正極に使用したアルカリ二次電池の正極活物質である銀(Ag)は、充放電に伴い下記の反応式に従って酸化還元を繰り返す。
AgO(充電状態:過酸化状態)⇔Ag2O(酸化状態)⇔Ag(放電状態:還元状態)
ここで、Ag2Oはアルカリ性電解液中で安定な化合物であるが、AgOはAg2Oに比べて不安定な化合物である。従来、アルカリ一次電池に用いられる銀酸化物は、Ag2O⇔Agの間の反応のみを利用しているため、正極活物質の不安定性は問題とならなかった。
一方、アルカリ二次電池に用いられる銀酸化物は、更に電池容量を増加させるため、より高い酸化状態であるAgOまで充電して使用することで、正極活物質(AgO)の不安定性が問題となる。具体的には、銀酸化物を正極活物質として用いたアルカリ二次電池において、銀酸化物をAgOの状態まで充電(酸化)を行った場合、AgOの不安定性により時間の経過とともに徐々に還元され、最終的にAg2Oの状態まで還元され、AgOの電池電圧である約1.8Vから、Ag2Oの電池電圧である約1.5Vまで電圧低下が発生する。即ち、銀酸化物を正極活物質として用いたアルカリ二次電池の保存性が低下するという問題がある。
更に、銀酸化物を正極活物質として用いたアルカリ二次電池においては、銀酸化物がAgOからAg2Oに還元される際にガスが発生し、電池の膨張や漏液により電池のサイクル寿命を低下させやすいという問題を生じる。
これに対し、従来より、銀酸化物に各種の安定剤または元素を添加することにより、銀酸化物の安定性を向上することが提案されている(特許文献1~3)。
しかし、実際に特許文献1~3に記載の元素を銀酸化物に添加してみると、必ずしも全ての添加元素がアルカリ二次電池に有効であるとは限らないことが分かってきた。
特表2013-510390号公報 特表2013-541815号公報 特開2017-059401号公報
本願は、前記問題を解決するためになされたものであり、充電時の保存安定性に優れた正極活物質用銀酸化物およびその製造方法、ならびにそれを用いたアルカリ二次電池用正極およびアルカリ二次電池を提供するものである。
本願の正極活物質用銀酸化物は、P、Nb、W、V、Mo、Si、Zr、Ti、Ge、AlおよびCeよりなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含む。
また、本願のアルカリ二次電池用正極は、上記本願の正極活物質用銀酸化物を含む。
また、本願のアルカリ二次電池は、上記本願のアルカリ二次電池用正極、負極、およびアルカリ電解液を含む。
また、本願の正極活物質用銀酸化物の製造方法は、銀を含む水溶性の塩、および、P、Nb、W、V、Mo、Si、Zr、Ti、Ge、AlおよびCeよりなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含む金属塩を、水に溶解させて水溶解液を作製し、これを第1液とする工程と、アルカリを水に溶解してアルカリ溶液を作製し、これを第2液とする工程と、pH8~10に調整した中性~アルカリ性溶液を作製し、これを第3液とする工程と、前記第1液および前記第2液を、前記第3液に同時滴下して、銀および前記添加元素を含有する沈殿物を生成して懸濁液とする工程と、前記懸濁液をろ過して乾燥する工程とを含む。
本願の正極活物質用銀酸化物を用いることにより、充電時の保存安定性に優れたアルカリ二次電池用正極およびアルカリ二次電池を提供できる。
図1は、AgO構造を示すモデル図である。 図2は、Ag4O4の構造の部分相転移による連続的な構造変化過程を示すモデル図である。 図3は、Ag4O4の構造(A)とAg4O2構造(B)を表すモデル図である 図4は、アルカリ二次電池の一例を模式的に表す側面図である。 図5は、図4のアルカリ二次電池の要部断面図である。
(正極活物質用銀酸化物)
本願の正極活物質用銀酸化物の実施形態は、P、Nb、W、V、Mo、Si、Zr、Ti、Ge、AlおよびCeよりなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含む正極活物質用銀酸化物である。銀酸化物に上記添加元素を加えることにより、充電時に銀酸化物がAgOまで酸化されても、AgOが上記元素を含むことにより、上記添加元素の酸素捕捉性により、AgOが酸素原子を捕捉しやすく、放出されにくい構造となると考えられ、AgOからAg2Oの状態まで還元されることが抑制され、充電時の保存安定性に優れた正極活物質用銀酸化物を提供できる。これにより、高容量で充電時の保存安定性の高いアルカリ二次電池を構成することができるため、例えば、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」および目標12「つくる責任 つかう責任」に寄与することができる。
上記添加元素を加える銀酸化物の基本組成としては、AgOまたはAg2Oが該当する。また、上記添加元素を加えた銀酸化物は、上記添加元素と銀とが複合酸化物(置換体)を形成していてもよい。更に、上記添加元素を加えた銀酸化物は、銀酸化物と、上記添加元素の酸化物または水酸化物とが混合物を形成していてもよい。上記複合酸化物を形成しているか、上記混合物を形成しているかは、X線回析による分析で判断できる。
以下、上記添加元素の決定方法を説明する。
<ステップ1:酸素捕捉性に影響する元素特性の決定とそれに基づく添加元素候補の選定>
酸素捕捉性に影響する元素特性については、酸素を捕捉しやすい電子分布と放出されにくい構造を取り入れるため、酸素捕捉性に影響する元素特性として、第二イオン化エネルギー、価数、電気陰性度、イオン半径を採用した。ただし、上記元素特性はこれらの4つの特性に限定されるものではなく、また、上記元素特性は少なくとも1つの特性を満足すればよい場合もあり、複数の特性を満足する必要がある場合もある。従って、本ステップ1は、少なくとも上記元素特性の1つを満足する添加元素候補をスクリーニングする目的で行った。また、上記元素特性の採用理由は下記のとおりである。
(1)第二イオン化エネルギーは、1400kJ/mol以下が好ましい。AgOのAgは+2価、Ag2OのAgは+1価であるため、AgO状態からAg2Oへ還元される際には、2価から1価の変化となり、2価がより安定である方が有利と考えられる。また、多くの添加元素は2価に近い状態を取ると想定される。このため、1価から2価のイオン化エネルギーである第二イオン化エネルギーが小さい方が、2価になりやすく、より安定であると考えられる。
(2)価数は、2価よりも3価、4価の方が好ましく、5価、6価がより好ましい。安定価数の大きな原子はより電子を放出しやすく、酸素を引き付けやすいと考えられる。
(3)電気陰性度は、価数が2価であれば1.5以下であることが好ましい。電気陰性度は第一イオン化エネルギーとほぼ1対1の相関があり、第一イオン化エネルギーが約650kJ/mol以下としてもよい。これは、一般に第二イオン化エネルギーが小さい元素は第一イオン化エネルギーも小さく、電子を放出しやすい性質を持つことから、より酸化されやすいこと、即ち、高い酸化状態であるAgO構造をとりやすくなることに繋がっていると考えられる。ただし、今回の材料の場合には、Ag:2価のAgOがターゲットであることから、第一イオン化エネルギーよりも上記(1)の第二イオン化エネルギーの方が、酸素捕捉性に対してより強い相関関係があると考えられる。
(4)イオン半径は、価数が2価であれば70pm以下、3価、4価であれば130pm以下が好ましい。酸化銀構造の歪みによる、物理的な酸素イオン経路の大小変化によると影響と考えられる。即ち、イオン半径の小さなものをドープすると格子歪みが増大して対称性が低下し、結合距離が短くなるため、酸素イオン経路も狭くなり、酸素を放出しにくくなると考えられる。
上記酸素捕捉性に影響する元素特性に基づき添加元素候補を検討したところ、Al、Si、P、Ti、V、Ge、Zr、Nb、Mo、In、Sn、W、Pb、Bi、Ceが選定された。
<ステップ2:第一原理計算による添加元素候補の添加による安定性の評価>
添加元素候補による銀酸化物の安定性は、第一原理計算を用いて評価した。第一原理計算自体は、確立された方式であり、その計算結果に対する信頼性は相応に高いものである。一方、第一原理計算による算出方法について、一般的に知られる酸化還元反応であればAgOから酸素が次第に抜けて、歪みが進行し、ある一定量が引き抜かれた時点でAg2O構造へ不連続的に相転移すると考えるのが通常である。しかし、この方式ではAgOは既に安定な構造であるという誤った結果が導かれる。従って、第一原理計算を実施するに当たっては、新たに以下の部分相転移による連続的な構造変化過程を見出し、これを取り入れて実施することによって、第一原理計算による正確な安定性の評価が可能となった。
図1は、AgO構造を示すモデル図である。一般に、AgOは、AgO・Ag23とも表示されることから、図1のモデルではAg4O4と表示している。図1に示す構造は、Ag4O4(最小単位格子)が2×2×2=8個からなるものである。一般的な計算方法では、8個全ての最小単位格子にAg4O4構造を配置し、そのうちn個のOを引き抜いてボイドを形成し、構造最適化計算を実施する。こうすると、ある一定のO量を境界にして、安定構造はAg4O4構造からAg4O2構造へとすべてが同時に相転移する。
一方、図2は、Ag4O4の構造の部分相転移による連続的な構造変化過程を示すモデル図である。本計算では、例えばOが2個引き抜かれた場合、図2Aに示すように8個の最小単位格子のうち1つだけがAg4O2構造を取り、いわゆる原子単位の超微細な固溶体を形成しているような構造を取るとした。次に、図2Bに示すように8個のうち2個がAg4O2構造に相転移すれば、Oが4個引き抜かれた状態となり、更に図2C~図2Eに示すように順々に最小単位格子ごとに相転移していくことで、最終的には図2Fに示すように8個全てが相転移し、Ag4O2構造となる。
このような変化過程を計算することで、Oが引き抜かれる際の活性化エネルギーを求めることが可能となり、計算により安定性を評価することが可能となった。
次に、第一原理計算の具体的な計算方法を説明する。第一原理計算の実施は、密度汎関数法(DFT法)を用いて行い、CastepおよびQuantumESPRESSOを用いて、両者による計算で整合性を得ることを確認しながら実施した。各元素の擬ポテンシャルはウルトラソフトを用いた。
第一原理計算時の初期状態の最小単位格子は、図3Aに示すような、AgイオンとOイオンがともに面心立方位置を占める尖亜鉛構造型のAg4O4構造、及び図3Bに示すような、Agイオンが面心立方位置を占め、Oイオンが前記Ag4O4構造の半数であるAg4O2構造とした。これにより対象単位格子におけるAg位置を同一とでき、最小単位格子ごとの部分相転移の計算が可能となる。
図3に示す格子点のうち、Agサイトを添加元素に置き換えることで、元素を添加した場合のエネルギーを計算する。例えば、25モル%添加であれば、最小単位格子ごとに1個ずつ置き換え、Ag3MeO4(又はAg3MeO2)を2×2×2=8個配置したものを計算する。また、6.3モル%添加の場合は、対角に位置する2つの最小単位格子をAg3MeO4(又はAg3MeO2)とし、そのほか6個はAg4O4(又はAg4O2)として計算する。同様に3.1モル%の場合は、8個のうち任意の一つの最小単位格子のみをAg3MeO4(又はAg3MeO2)として計算を実施することで、置換した場合の安定化エネルギーを求めることができる。
本実施形態では、先に選定した各添加元素候補をそれぞれ25.0モル%添加した場合について上記第一原理計算により安定化エネルギーを求めた。その結果を表1に上から安定化エネルギーの低い順に配列して示す。
Figure 2022162827000002
<ステップ3:各添加元素候補を添加した電池での評価>
添加元素の含有量が多くなるほど酸化銀の放電容量が低下することから、安定化エネルギーの計算に用いた添加元素の含有量(25.0モル%)よりも含有量を低減し、一定以上の放電容量が得られるよう、添加元素候補を3.1モル%の割合で含有する酸化銀(Ag2O)をそれぞれ用いて後述する実施例1に準じてアルカリ二次電池を作製し、後述する電圧保持時間を測定した。なお、3.1モル%の含有量は、後述するステップ5において、添加元素が効果を発揮すると推定される含有量であることを確認した。この電圧保持時間を後述する添加元素を含有しない酸化銀(Ag2O)を用いた比較例1の電圧保持時間と比較し、電圧保持時間が比較例1より増加したものは「特性向上有り」と判断し、電圧保持時間が比較例1より減少したものは「特性向上無し」と判断した。電池評価は、安定化ネルギーが高い(構造が不安定な)ものから順に行った結果、Ceを含有する酸化銀を評価した時点で、初めて特性向上を確認した。このため、Ceより安定化エネルギーが低い添加元素はCeと同様の結果が出ると思われるので、電池評価はCeまでで終了した。その結果を表1に合わせて示す。
<ステップ4:電池評価結果に基づく添加元素の決定>
以上の結果から、本実施形態の添加元素としてP、Nb、W、V、Mo、Si、Zr、Ti、Ge、Al、Ceを決定した。この結果から、安定化エネルギーの-3.1~-3.2eV前後に閾値があると考えられ、この閾値よりエネルギーが低く、より安定な添加元素の場合であれば、無添加の場合と比較して、電池保持時間が延長される一方、この閾値よりもエネルギーが高く、安定性が低下した場合には、無添加よりも電池保持時間が短縮されることが分かる。
<ステップ5:添加元素の好適添加量の推定>
添加元素の添加量の好適量を決定するためには、各添加元素の添加量を変化させて電池評価する必要があるが、添加元素の好適添加量を簡易に推定するために、Ceの添加量を6.3モル%、3.1モル%、1.5モル%としてそれぞれの安定化エネルギーを第一原理計算により求めた。その結果を、前述の25.0モル%添加の結果を含めて表2に示す。
Figure 2022162827000003
以上の結果より、Ceの添加量が少なくとも1.0~13モル%程度の範囲であれば一定以上の放電容量を維持しながら、安定化効果が発揮されると推定される。即ち、添加元素の含有量が少なすぎると安定化効果が発揮されず、その含有量が多すぎると相対的に活物質であるAg量が減少するので電池容量的には好ましくないと思われる。これらの観点から、Ceの添加量は、1.2~7モル%が好ましく、1.5~6.3モル%がより好ましいと考えられる。なお、他の添加元素についても同様の傾向があると思われる。
添加元素の決定方法は上記のとおりであるが、添加元素の添加形態の影響についても第一原理計算により推定できる。即ち、添加元素が酸化物、あるいは水酸化物の形態をとって酸化銀と混合された場合、AgOまでの酸化過程(充電過程)において、添加元素の一部は銀サイトに置換する形態をとるように変化する。従って、電池作製前に混合形態であった場合も、電池動作時にはその一部は置換の形態となる。この評価の際には、酸化状態であるAgOとなった際に、置換体であるAg3MeO4(置換量に応じて、前述と同様に結晶格子は変える。)と、相分離しているMeOx+Ag4O4との、エネルギーを比較することで、充電状態においていずれの状態が安定であるかを計算により求めることができる。
次に、本実施形態の正極活物質用銀酸化物の製造方法について説明する。本実施形態の正極活物質用銀酸化物は、下記の方法で製造できる。
先ず、硝酸銀あるいは硫酸銀などの、銀を含む水溶性の塩、および、上記添加元素を少なくとも1種含む硝酸塩、硫酸塩などの金属塩を水に溶解させ、Agおよび添加元素イオンを含有する水溶解液を作製し、これを第1液とする。これら金属塩としては、電池の活物質に添加して用いた際に良好な特性を得る上で、塩化物以外の塩を使用することが好ましい。上記金属塩のうち、例えば、硫酸スズ、モリブデン酸アンモニウムなどのように、銀イオンを含む溶液と共溶解せず、沈殿を形成するものについては、以下のアルカリ溶液中に溶解させる。
これとは別に、アルカリ溶液を作製する。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水溶液などのアルカリを水に溶解して、アルカリ溶液を作製し、これを第2液とする。また、硫酸スズ、モリブデン酸アンモニウムなどのアルカリ溶液中で安定に溶解し得る塩を用いる場合には、当該金属塩を同時に溶解させて、第2液とする。
更に、上記とは別に、pH8~10に調整した中性~アルカリ性溶液を作製し、これを第3液とする。この際のpHは、添加元素の種類に応じて、当該添加元素の酸化物あるいは水酸化物が沈殿し得る最適なpHを選択する。pH8より小さい場合には、銀の沈殿が得られにくくなるため、好ましくない。より広い種類の添加元素に適用できる範囲として、pH8~9に調整することがより好ましい。
次に、上記第1液および第2液を、第3液中に同時滴下して、銀および添加元素を含有する水酸化物あるいは水和物の沈殿物を生成して懸濁液とする。この際の第3液のpHは、常時pH8~10となるように、第1液および第2液の滴下速度を調整する。この際のpHは、第3液と同条件に設定するものとし、設定pHより前後0.5以内となるよう速度調整することが好ましい。これらの工程を経ることで、酸化銀および添加元素の酸化物あるいは水酸化物の析出タイミングにずれが生じず、常に同時に析出し続けることとなり、更に、常時同一pH下で沈殿が形成されるため、粒子径や添加元素の偏りを抑制することができる。
次に、この懸濁液を0~40℃の温度範囲において10~100時間熟成することが好ましい。熟成工程は、最終生成物において結晶性の良好な酸化銀を得る上で、実施することが好ましい。熟成時間は、10時間より短いと熟成の効果は小さく、100時間より長い場合は、特に悪い影響は与えないが、熟成の効果が飽和するため、あまり意味がない。このため、上記熟成時間は10~24時間とすることが更に好ましい。
最後に、得られた沈殿物をろ過、乾燥するが、ろ過する前に、水洗によりpHを6~7.5の付近の中性領域に調整しておくことが好ましい。これは、水洗により水溶性のNaイオンが除去されるためである。最終生成物において、このようなNaイオンが残存した状態であると、バインダ中に分散させる工程において分散性が悪くなり、最終的に作製された電極塗料中にNaイオンなどが残存した状態になり、電池特性の低下を招く。このため、銀および添加元素以外の不純物元素はできる限り除去し、このような不純物元素の残存量は、0.1mol%以下であることが好ましく、少なければ少ないほど、より好ましい。この後、ろ過し、乾燥することで、添加元素の酸化物または水酸化物を含む酸化銀粉末が得られる。
(アルカリ二次電池)
本願のアルカリ二次電池の実施形態は、前述の実施形態の正極活物質用銀酸化物を含有する正極、負極、およびアルカリ電解液を備えたアルカリ二次電池である。
本実施形態のアルカリ二次電池は、前述の実施形態の正極活物質用銀酸化物を含有する正極を備えているので、充電時の保存安定性に優れている。以下、本実施形態のアルカリ二次電池について説明する。
[正極]
本実施形態のアルカリ二次電池に係る正極は、正極活物質である前述の添加元素を含有した銀酸化物を含有していれば特に限定されないが、本実施形態では上記銀酸化物と、更に絶縁性無機粒子と、炭素粒子として黒鉛粒子およびカーボンブラック粒子とを含有する正極合剤層を有するものを用いた。正極は、正極合剤層のみで構成されたもの(正極合剤の成形体)であってもよく、正極合剤層が集電体上に形成された構造のものであってもよい。
上記銀酸化物は、その粒度について特に限定はされないが、平均粒子径が、10μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。このようなサイズの銀酸化物を用いた場合には、充電時の利用率が向上し、充電終止電圧を比較的低くしても大きな充電容量が得られるため、電池の充放電サイクル特性を更に高めることができ、また、例えば、充電終止電圧を高めることによって生じ得る電池の膨れを抑えることが可能となる。
ただし、あまり粒径の小さい銀酸化物は製造やその後の取り扱いが困難となることから、銀酸化物の平均粒子径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.03μm以上であることがより好ましい。
本明細書でいう銀酸化物やその他の粒子(後記の絶縁性無機粒子および黒鉛粒子)の平均粒子径は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、堀場製作所製「LA-920」)を用い、粒子を溶解しない媒体に、これらの粒子を分散させて測定した、体積基準での累積頻度50%における粒径(D50)である。
正極合剤層に係る絶縁性無機粒子としては、Si、Zr、Ti、Al、MgおよびCaより選択される少なくとも1種の元素の酸化物などの粒子が挙げられる。また、上記酸化物の具体例としては、Al23、TiO2、SiO2、ZrO2、MgO、CaO、AlOOH、Al(OH)3などが挙げられ、電解液に溶解しないか、難溶性である粒子が好ましく用いられる。正極合剤層は、これらの絶縁性無機粒子のうちの1種または2種以上を含有していればよい。
絶縁性無機粒子は、その粒子径が大きすぎると、電池の充放電サイクル特性の向上効果が小さくなる虞がある。よって、電池の充放電サイクル特性をより良好に高める観点からは、絶縁性無機粒子の平均粒子径は、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましい。
また、絶縁性無機粒子の粒子径が小さすぎると、電池の充電効率(初期容量)の向上効果が小さくなる虞がある。よって、電池の充電効率をより良好に高める観点からは、絶縁性無機粒子の平均粒子径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましい。
正極合剤層に係る黒鉛粒子は、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)の粒子、人造黒鉛の粒子のいずれでもよく、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。
後述するように、黒鉛粒子には正極合剤層の成形性を高める機能があるが、この機能をより良好に発揮させる観点から、黒鉛粒子は、平均粒子径が、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、また、導電性の向上の観点からから、7μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
正極合剤層に係るカーボンブラック粒子としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどが例示され、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。これらのカーボンブラック粒子の中でも、導電性が高く不純物が少ないアセチレンブラックが好ましく用いられる。
カーボンブラック粒子を使用することで、正極合剤層中で良好な導電ネットワークを形成しやすいため、例えば黒鉛粒子のみを使用する場合に比べて、正極活物質である銀酸化物の粒子との接点が多くなり、正極合剤層内の電気抵抗を効果的に低減することができ、これにより、充電時に正極活物質の反応効率を向上させることが可能となる。
他方、カーボンブラック粒子のみを使用する場合には、正極合剤層の厚みによっては、その成形性を高めるためにバインダを使用する必要があるが、黒鉛粒子も併用した場合には、正極合剤層の成形性が向上するため、例えば正極合剤の成形体や正極合剤層が0.4mm以下、より好ましくは0.3mm以下と薄い場合であってもその成形性が良好となり、バインダを用いなくとも製造不良の発生を防ぐことが容易になる。
そして、黒鉛粒子とカーボンブラック粒子とを併用することで、例えば絶縁性無機粒子のみを正極合剤層に含有させる場合に比べて、電池の充電効率と充放電サイクル特性とを高めることができる。
正極合剤層(正極合剤の成形体や集電体上に形成された正極合剤塗布層など)の組成としては、容量を確保するために、正極活物質である銀酸化物の含有量は、正極合剤層を構成する固形分全体を100質量%として、例えば、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
また、正極合剤層における絶縁性無機粒子の含有量は、その使用による効果(特に電池の充放電サイクル特性向上効果)を良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。ただし、正極合剤層中の絶縁性無機粒子の量が多すぎると、正極活物質の充填量が減少して電池の容量減少を招くほか、絶縁性無機粒子の種類によっては、充放電サイクルが進行した場合に、放電容量が急に低下してしまう場合もあることから、正極合剤層における絶縁性無機粒子の含有量は、7質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
更に、正極合剤層における黒鉛粒子の含有量は、カーボンブラック粒子との併用による電池の充電効率や充放電サイクル特性の向上効果を良好に確保する観点から、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。そして、正極合剤層における黒鉛粒子の含有量は、例えば正極合剤層中の銀酸化物の量が少なくなりすぎて電池の容量が低下することを抑える観点から、7質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
また、正極合剤層におけるカーボンブラック粒子の含有量は、黒鉛粒子との併用による電池の充電効率や充放電サイクル特性の向上効果を良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。ただし、正極合剤層中のカーボンブラック粒子の量が多すぎると、例えば電池を高温下で貯蔵した際に、正極の膨れ量が大きくなる虞がある。よって、電池の貯蔵(特に60℃程度の高温下での貯蔵)時の正極の膨れを抑えて、電池の貯蔵特性を向上させる観点からは、正極合剤層におけるカーボンブラック粒子の含有量は、1.5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
正極合剤層は、前記の通り、バインダを使用せずに形成することも可能であるが、強度を高める必要がある場合にはバインダを用いてもよい。正極合剤層のバインダには、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂などが挙げられる。バインダを使用する場合、正極合剤層中のバインダの含有量は、0.1~20質量%であることが好ましい。
正極は、正極合剤の成形体の場合には、例えば、前述の正極活物質、絶縁性無機粒子、および炭素粒子、更には必要に応じてアルカリ電解液(電池に注入するアルカリ電解液と同じものが使用できる。)などを混合して調製した正極合剤を所定の形状に加圧成形することで製造することができる。
また、正極合剤層と集電体とを有する形態の正極の場合には、例えば、前述の正極活物質、絶縁性無機粒子および炭素粒子などを水またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの有機溶媒に分散させて正極合剤含有組成物(スラリー、ペーストなど)を調製し、これを集電体上に塗布して乾燥し、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て製造することができる。
ただし、正極は、上記の各方法で製造されたものに限定されず、他の方法で製造したものであってもよい。
正極合剤の成形体を正極とする場合、その厚みは、0.15~4mmであることが好ましい。他方、正極合剤層と集電体とを有する形態の正極の場合、正極合剤層の厚み(集電体の片面あたりの厚み)は、30~300μmであることが好ましい。
正極に集電体を用いる場合には、その集電体としては、例えば、SUS316、SUS430、SUS444などのステンレス鋼;アルミニウムやアルミニウム合金;を素材とするものが挙げられ、その形態としては、平織り金網、エキスパンドメタル、ラス網、パンチングメタル、金属発泡体、箔(板)などが例示できる。集電体の厚みは、例えば、0.05~0.2mmであることが好ましい。このような集電体の表面には、カーボンペーストや銀ペーストなどのペースト状導電材を塗布しておくことも望ましい。
[負極]
本実施形態のアルカリ二次電池に係る負極には、亜鉛粒子および亜鉛合金粒子より選択される亜鉛系粒子(以下、単に「亜鉛系粒子」という場合がある。)を含有するものが使用される。このような負極では、上記粒子中の亜鉛が活物質として作用する。
亜鉛合金粒子の合金成分としては、例えば、インジウム(例えば、含有量が質量基準で50~500ppm)、ビスマス(例えば、含有量が質量基準で50~500ppm)などが挙げられる(残部は亜鉛および不可避不純物である。)。負極の有する亜鉛系粒子は、1種単独でもよく、2種以上であってもよい。
ただし、亜鉛系粒子には、合金成分として水銀を含有しないものを使用することが好ましい。このような亜鉛系粒子を使用している電池であれば、電池の廃棄による環境汚染を抑制できる。また、水銀の場合と同じ理由から、亜鉛系粒子には、合金成分として鉛を含有しないものを使用することが好ましい。
亜鉛系粒子の粒度としては、例えば、全粉末中、粒径が75μm以下の粒子の割合が50質量%以下のものが好ましく、30質量%以下のものがより好ましく、また、粒径が100~200μmの粉末の割合が、50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であるものが挙げられる。ここでいう亜鉛系粒子における粒度は、前述の銀酸化物の平均粒子径測定法と同じ測定方法により得られる値である。
負極には、例えば、上記亜鉛系粒子の他に、必要に応じて添加されるゲル化剤(ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルロースなど)を含んでもよく、これにアルカリ電解液を加えることで構成される負極剤(ゲル状負極)を使用してもよい。負極中のゲル化剤の量は、例えば、0.5~1.5質量%とすることが好ましい。
負極に含有させるアルカリ電解液には、電池に注入するものと同じものを使用することができる。
負極における亜鉛系粒子の含有量は、例えば、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、また、75質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
負極は、インジウム化合物を含有していることが好ましい。負極がインジウム化合物を含有することによって、亜鉛系粒子とアルカリ電解液との腐食反応によるガス発生をより効果的に防ぐことができる。
上記インジウム化合物としては、例えば、酸化インジウム、水酸化インジウムなどが挙げられる。
負極に使用するインジウム化合物の量は、質量比で、亜鉛系粒子:100に対し、0.003~1であることが好ましい。
[アルカリ電解液]
亜鉛または亜鉛合金を負極活物質とするアルカリ二次電池において、ポリアルキレングリコールなどの添加剤をアルカリ電解液に含有させると、充放電サイクル特性をある程度向上させ得る一方で、その向上は限定的である。
そこで、本実施形態では、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムと、水酸化リチウムと、ポリアルキレングリコール類とをアルカリ電解液に含有させることとし、これにより、特に充放電サイクル初期の急激な容量低下を抑制して、優れた充放電サイクル特性の確保を可能とした。
水酸化リチウムとポリアルキレングリコール類とを含有するアルカリ電解液を使用することによってアルカリ二次電池の充放電サイクル特性が向上する理由を、本発明者らは以下の機構によるものと推測している。
亜鉛系粒子を含有する負極を有するアルカリ二次電池を放電させると、テトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオン〔Zn(OH)4 2-〕が負極中で生成してアルカリ電解液中に放出される。そして、このテトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオンが、アルカリ二次電池の充電時に負極の亜鉛系粒子の表面まで戻って亜鉛デンドライトとなる。
ところが、アルカリ電解液がポリアルキレングリコール類を含有していると、このポリアルキレングリコールが負極の亜鉛系粒子の表面に付着するため、テトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオンが亜鉛系粒子の表面まで戻り難くなると考えられる。また、アルカリ電解液が水酸化リチウムを含有していると、テトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオンがアルカリ電解液中で比較的安定に存在できるようになる。これらの作用によって、亜鉛デンドライトの生成が抑制され充放電サイクルでの短絡が生じ難くなると推測される。
また、アルカリ電解液中の水酸化リチウムは、電池の充放電初期の充電効率を低下させる作用を有しているが、アルカリ電解液が更にポリアルキレングリコール類も含有している場合には、水酸化リチウムの上記作用が抑制される。
本実施形態では、ポリアルキレングリコール類による上記作用と、水酸化リチウムによる上記作用とが相乗的に機能していると考えられ、これにより、特に充放電サイクル初期の急激な容量低下を良好に抑制して、優れた充放電サイクル特性を確保できていると推測される。
本実施形態のアルカリ二次電池に係るアルカリ電解液には、例えば、電解質塩である水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムの水溶液(アルカリ電解液)が使用できる。そして、アルカリ電解液は、水酸化リチウムおよびポリアルキレングリコール類を更に含有している。
アルカリ電解液における水酸化リチウムの含有量(濃度。以下同じ。)は、水酸化リチウムをアルカリ電解液に含有させることによる上記効果をより良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、水酸化リチウムの過剰な添加は、電池の内部抵抗増加に繋がることから、アルカリ電解液における水酸化リチウムの含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態において用いられるポリアルキレングリコール類は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどのアルキレングリコールが重合または共重合した構造を有する化合物であり、架橋構造や分岐構造を持つものであってもよく、また末端が置換された構造の化合物であってもよく、重量平均分子量としては、およそ200以上の化合物が好ましく用いられる。重量平均分子量の上限は特に規定はされないが、添加による効果をより発揮させやすくするためには上記化合物が水溶性である方が好ましく、通常は20000以下のものが好ましく用いられ、5000以下のものがより好ましく用いられる。
より具体的には、エチレングリコールが重合した構造をもつポリエチレングリコール類や、プロピレングリコールが重合した構造をもつポリプロピレングリコール類などを好ましく用いることができる。上記ポリエチレングリコール類としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシドなどが好ましく用いられる。また、上記ポリプロピレングリコール類としては、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシドなどが好ましく用いられる。
アルカリ電解液におけるポリアルキレングリコール類の含有量(濃度。ポリアルキレングリコール類として複数の化合物を用いる場合は、それらの合計量。以下、同じ。)は、ポリアルキレングリコール類をアルカリ電解液に含有させることによる前述の効果をより良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。ただし、アルカリ電解液中のポリアルキレングリコール類の量が多すぎると、電池の放電特性を損なう虞がある。よって、アルカリ電解液中のポリアルキレングリコールの量を制限して、電池の放電特性をより良好に維持する観点からは、アルカリ電解液におけるポリアルキレングリコール類の含有量は、8質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
前述の通り、アルカリ電解液には、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを電解質塩として含有させる。アルカリ電解液は、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムのうちのいずれか一方のみを含有していていればよく、両方を含有していてもよい。
アルカリ電解液における上記電解質塩の含有量は、アルカリ電解液において良好な導電性を確保できる範囲であればよいが、例えば、水酸化カリウムを使用する場合には、水酸化カリウムの含有量(濃度)は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、また、40質量%以下であることが好ましく、38質量%以下であることがより好ましい。
[セパレータ]
アルカリ二次電池において、正極と負極との間にはセパレータを介在させる。アルカリ二次電池に使用可能なセパレータとしては、ビニロンとレーヨンを主体とする不織布、ビニロン・レーヨン不織布(ビニロン・レーヨン混抄紙)、ポリアミド不織布、ポリオレフィン・レーヨン不織布、ビニロン紙、ビニロン・リンターパルプ紙、ビニロン・マーセル化パルプ紙などを用いることができる。また、親水処理された微孔性ポリオレフィンフィルム(微孔性ポリエチレンフィルム、微孔性ポリプロピレンフィルム、ポリオレフィン主鎖にアクリル酸をグラフト共重合させたグラフトフィルムなど)と;セロファンフィルムと;ビニロン・レーヨン混抄紙のような吸液層(電解質保持層)とを積み重ねたものをセパレータとしてもよい。セパレータの厚みは、20~500μmであることが好ましい。
また、正極と負極との間には、ポリマーをマトリクスとし、かつ上記マトリクス中に金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩およびケイ酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物の粒子を分散させたアニオン伝導性膜を配置することが好ましい。
[電池の形態]
アルカリ二次電池の形態については特に制限はなく、扁平形の外装缶と封口板とをガスケットを介してカシメ封口したり、扁平形の外装缶と封口板とを溶接して封口したりする電池ケースを有する扁平形(コイン形、ボタン形を含む。);金属ラミネートフィルムからなる外装体を有するラミネート形;有底筒形の外装缶と封口板とをガスケットを介してカシメ封口したり、有底筒形の外装缶と封口板とを溶接して封口したりする電池ケースを有する筒形〔円筒形、角形(角筒形)〕;など、いずれの形態とすることもできる。
以下、本願のアルカリ二次電池の実施例について説明する。ただし、下記実施例は、本願を制限するものではない。
(実施例1)
<酸化銀の合成>
水酸化ナトリウム:9.0gを150mlの水に溶解させてアルカリ水溶液を作製した。また、上記アルカリ水溶液を400mlの水に数滴滴下して、pH8.5の弱アルカリ性水を作製した。次に、硝酸銀:37.0gと硝酸セリウム六水和物:2.9gを150mlの水に溶解させた混合溶液を用意し、上記弱アルカリ性水を500rpmの速度で攪拌しながら、上記混合溶液と上記アルカリ水溶液とをその中に徐々に滴下することにより、酸化セリウム(CeO2)と酸化銀(Ag2O)の混合物を沈殿させた。滴下中は、弱アルカリ性水のpHが8.3~8.5の範囲に維持されるよう、混合溶液とアルカリ水溶液の滴下速度を調整した。
上記混合溶液を全量滴下した時点でアルカリ水溶液の滴下を終了し、そのまま1時間攪拌を継続させた後、析出反応を終了させた。反応終了後のアルカリ水溶液のpHは、8.2であった。
上記反応溶液を室温で16時間静置した後、残存Na量が0.01ppm以下となるまで沈殿した混合物を十分に水洗し、真空中で乾燥させることにより、AgとCeとの総量中Ceを3.0mol%の割合で含有する酸化銀(Ag2O)を得た。得られた粉末は、X線回折パターンよりAg2Oの構造を有することが確認された。この粉末を正極活物質として以下の電池の作製に用いた。
<アルカリ二次電池の作製>
[正極]
合成したCeを含有する酸化銀:90.3質量部と、黒鉛粒子(BET比表面積:20m2/g、平均粒子径:3.7μm):3.8質量部と、アセチレンブラック:1.9質量部と、TiO2粒子(平均粒子径:250nm):1質量部と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE):3質量部とをボールミルで1時間混合して正極合剤を調製した。
この正極合剤:57mgを金型に充填し、直径:5.2mmの円板状に加圧成形することによって、正極合剤成形体を作製した。
[負極]
負極活物質には、添加元素としてIn:500ppm、Bi:400ppmおよびAl:10ppmを含有する、アルカリ一次電池で汎用されている無水銀の亜鉛合金粒子を用いた。前述した方法により求めた上記亜鉛合金粒子の粒度は、平均粒子径(D50)が120μmであり、粒径が75μm以下の粒子の割合は25質量%以下であった。
上記亜鉛合金粒子:49.45質量部と、ZnO:49.45質量部と、アセチレンブラック:0.1質量部と、ポリアクリル酸ナトリウム:1質量部とをボールミルで1時間混合して、負極を構成するための組成物(負極用組成物)を得た。この組成物:28mgを量り取って負極の作製に用いた。
[電解液]
アルカリ電解液には、水酸化カリウム、ポリエチレングリコールおよび水酸化リチウムを、それぞれ30質量%、1質量%および1質量%の濃度で含有する水溶液を用いた。
[セパレータ]
ポリエチレン主鎖にアクリル酸をグラフト共重合させた構造を有するグラフト共重合体で構成された2枚のグラフトフィルム(厚み:30μm)を、セロハンフィルム(厚み:20μm)の両側に配置した多層フィルムと、ビニロン・レーヨン混抄紙(厚み:100μm)とを積層し、直径:5.6mmの円形に打ち抜き、セパレータ基体を作製した。
また、PTFEの水系分散液(固形分:60質量%):5gと、ポリアクリル酸ナトリウムの水溶液(濃度:2質量%):2.5gと、ハイドロタルサイト粒子(平均粒子径:0.4μm):2.5gとを混練し、圧延して100μmの厚みの膜を作製し、更に直径:5.6mmの円形に打ち抜いてアニオン伝導性膜を作製した。
最後に、上記セパレータ基体に上記アニオン伝導性膜を重ね合わせてセパレータを構成した。
[電池組立]
作製した正極(正極合剤成形体)、負極(負極用組成物)、アルカリ電解液およびセパレータを、内面に金メッキを施した鋼板よりなる外装缶と、銅-ステンレス鋼(SUS304)-ニッケル製のクラッド板よりなる封口板と、ナイロン66製の環状ガスケットとから構成された電池容器内に封入し、図4に示す外観を有し、図5に示す構造を有する、直径:5.8mm、厚さ:2.7mmのアルカリ二次電池を作製した。上記アルカリ電解液は、9μLを外装缶に正極が収容される前に外装缶内に滴下し、10μLを予め負極用組成物と混合して電池を組み立てた。また、上記セパレータは、アニオン伝導性膜が負極に面するように配置した。
図4および図5に示すアルカリ二次電池1は、正極4、セパレータ基体6およびアニオン伝導性膜7を内填した外装缶2の開口部に、負極5を内填した封口板3が、断面L字状で環状のガスケット(樹脂製ガスケット)8を介して嵌合しており、外装缶2の開口端部が内方に締め付けられ、これにより樹脂製ガスケット8が封口板3に当接することで、外装缶2の開口部が封口されて電池内部が密閉構造となっている。即ち、図4および図5に示す電池では、外装缶2、封口板3および樹脂製ガスケット8からなる電池容器内の空間(密閉空間)に、正極4、負極5、セパレータ基体6およびアニオン伝導性膜7を含む発電要素が装填されており、更にアルカリ電解液(図示しない)が注入され、セパレータに保持されている。そして、外装缶2は正極端子を兼ね、封口板3は負極端子を兼ねている。正極4は、前述の通り、酸化銀、黒鉛粒子およびカーボンブラック粒子を含有する正極合剤の成形体である。
(比較例1)
硝酸銀と硝酸セリウムの混合溶液に代えて、硝酸銀:38.1gを150mlの水に溶解させた溶液を滴下に用いた以外は、実施例1と同様にして、酸化銀(Ag2O)を沈殿させた。反応終了後のアルカリ水溶液のpHは、8.7であった。
次に、実施例1と同様の処理により、添加元素を含有しない酸化銀の粉末を得た。これを正極活物質として用い、実施例1と同様にしてアルカリ二次電池を組み立てた。
(比較例2)
硝酸銀と硝酸セリウムの混合溶液に代えて、硝酸銀:37.0gと硝酸インジウム三水和物:2.8gを150mlの水に溶解させた混合溶液を滴下に用いた以外は、実施例1と同様にして、水酸化インジウム(In(OH)3)と酸化銀(Ag2O)の混合物を沈殿させた。反応終了後のアルカリ水溶液のpHは、8.3であった。
次に、実施例1と同様の処理により、AgとInとの総量中Inを2.9mol%の割合で含有する酸化銀を得た。これを正極活物質として用い、実施例1と同様にしてアルカリ電池を組み立てた。
(比較例3)
水酸化ナトリウム:9.0gと硫酸スズ2.9gを150mlの水に溶解させてアルカリ水溶液を作製した。また、上記アルカリ水溶液を400mlの水に数滴滴下して、pH8.5の弱アルカリ性水を作製した。次に、硝酸銀:35.8gを150mlの水に溶解させた溶液を用意し、上記弱アルカリ性水を500rpmの速度で攪拌しながら、上記硝酸銀の溶液と上記アルカリ水溶液をその中に徐々に滴下することにより、酸化スズ(SnO・nH2O)と酸化銀(Ag2O)の混合物を沈殿させた。反応終了後のアルカリ水溶液のpHは、8.3であった。
次に、実施例1と同様の処理により、AgとSnとの総量中Snを5.8mol%の割合で含有する酸化銀を得た。これを正極活物質として用い、実施例1と同様にしてアルカリ電池を組み立てた。
次に、作製したそれぞれの電池に対し、1mAの電流値で電圧が1Vになるまで放電する定電流放電を行った後、2mAの定電流で電圧が1.97Vになるまで充電する定電流充電、および1.97Vの定電圧で電流値が0.2mAになるまで充電する定電圧充電を行い、正極の銀を電気化学的に酸化させて+2価の過酸化銀の状態とした。
上記充電後の電池を60℃の恒温槽中で72時間保持し、その間、60℃に保持された状態で電池のOCV(開回路電圧)を2分おきに測定した。上記測定結果を基に、OCVが1.6Vに低下するまでの電圧保持時間から、それぞれの電池の正極に含まれる過酸化銀の安定性を評価した。即ち、電圧保持時間が長いと過酸化銀の安定性が高いと判断できる。
その結果を表3に示す。電圧保存時間は添加元素無しの比較例1を基準とした場合の増加量により示した。
Figure 2022162827000004
表3より、本願の添加元素を添加した実施例1の電池は、他の添加元素を添加した比較例2の電池および比較例3の電池よりも電圧保持時間が長く、充電時の保存安定性に優れていることが分かる。
1 アルカリ二次電池
2 外装缶
3 封口板
4 正極
5 負極
6 セパレータ基体
7 アニオン伝導性膜
8 ガスケット

Claims (8)

  1. P、Nb、W、V、Mo、Si、Zr、Ti、Ge、AlおよびCeよりなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含む正極活物質用銀酸化物。
  2. AgOまたはAg2Oを基本組成とし、前記基本組成に前記添加元素が含まれる請求項1に記載の正極活物質用銀酸化物。
  3. 前記添加元素と銀との複合酸化物を含む請求項1または2に記載の正極活物質用銀酸化物。
  4. 前記添加元素の酸化物または水酸化物を含む請求項1または2に記載の正極活物質用銀酸化物。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載の正極活物質用銀酸化物を含むアルカリ二次電池用正極。
  6. 請求項5に記載のアルカリ二次電池用正極、負極、およびアルカリ電解液を含むアルカリ二次電池。
  7. 請求項1~4のいずれかに記載の正極活物質用銀酸化物の製造方法であって、
    銀を含む水溶性の塩、および、P、Nb、W、V、Mo、Si、Zr、Ti、Ge、AlおよびCeよりなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含む金属塩を、水に溶解させて水溶解液を作製し、これを第1液とする工程と、
    アルカリを水に溶解してアルカリ溶液を作製し、これを第2液とする工程と、
    pH8~10に調整した中性~アルカリ性溶液を作製し、これを第3液とする工程と、
    前記第1液および前記第2液を、前記第3液に同時滴下して、銀および前記添加元素を含有する沈殿物を生成して懸濁液とする工程と、
    前記懸濁液をろ過して乾燥する工程とを含む正極活物質用銀酸化物の製造方法。
  8. 前記懸濁液とする工程の後に、0~40℃の温度範囲において、10~100時間熟成する工程を更に含む請求項7に記載の正極活物質用銀酸化物の製造方法。
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