JP7076026B1 - 既設排水管の補修方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】既設配水管の管内面を作業性良く補修できる補修方法を提供する。【解決手段】切断された既設排水管の所定の第1の箇所に第1の弾性部材を配置する工程と、第1の弾性部材を径大化させることにより、第1の箇所を塞ぐ工程と、既設排水管の内径よりも小さい外径を有する短管を挿入する工程と、既設排水管の内周面と短管の外周面との隙間に液状の止水剤を充填し、硬化させる工程と、第1の弾性部材の径を径小化させて既設排水管から取り外す工程と、を備える補修方法を用いる。【選択図】図2

Description

特許法第30条第2項適用 令和2年7月1日に、本願に係る既設排水管の補修方法の発明に関する、気体の充填により径方向に径大化するエアバッグを用いて実験をしている様子を説明するためのプレゼンテーション動画を製作し、DVDとして独立行政法人都市再生機構及び日本総合住生活株式会社の関係者数名に配布した。 〔刊行物等〕 令和2年8月25日に、東京都江東区のUR都市機構 大島4丁目団地4‐5号棟にて、本願に係る既設排水管の補修方法の発明に関する、気体の充填により径方向に径大化するエアバッグを用いた実証実験を独立行政法人都市再生機構及び日本総合住生活株式会社の関係者に対して公開した。 〔刊行物等〕 令和2年9月30日、令和2年10月22日、及び令和2年11月6日等、複数回、日本総合住生活株式会社の技術開発研究所「スクエアJS」(埼玉県さいたま市桜区田島7-2-3)にて本願に係る既設排水管の補修方法の発明に関する、気体の充填により径方向に径大化するエアバッグを用いた実証実験を独立行政法人都市再生機構及び日本総合住生活株式会社の関係者に公開した。 〔刊行物等〕 令和3年1月15日、令和3年3月9日、及び令和3年3月17日等複数回、日本総合住生活株式会社の技術開発研究所「スクエアJS」(埼玉県さいたま市桜区田島7-2-3)にて本願に係る既設排水管の補修方法の発明に関する、高さ方向に圧縮することにより径方向に径大化する弾性材を用いた実証実験を独立行政法人都市再生機構及び日本総合住生活株式会社の関係者に公開した。
本発明は、集合住宅等の高層建物に設置されている老朽化した既設排水管を補修するための既設排水管の補修方法に関する。
集合住宅等の高層建物の流し台,洗面所,浴室,トイレ等の設備から発生する排水は、各設備の備えられた室内から通じる横枝管を経て、各階を貫通する共用の排水立管から汚水槽等に流される。
高層建物の排水立管等の既設排水管は、数十年の経年により、錆や劣化による破れにより漏水を生じさせることがある。漏水を止めるために既設排水管を更生補修する種々の方法は知られている。代表的な補修方法としては、既設排水管の内面をエポキシ樹脂等の樹脂でコートして漏水箇所を埋める樹脂ライニング工法、既設排水管の内部に新たな管を挿入して新たな管により通水路を確保するパイプインパイプ工法、または、既設排水管の漏水箇所を外側から樹脂等で埋めるパッチ工法等が知られている。
例えば、下記特許文献1は、複数階のスラブ床面を構成するコンクリートスラブを貫通して配設された排水立管の更生方法であって、更生する当階とその上階の間の排水立管を、当階のスラブ床面から所定の位置および上階のスラブ天井面から所定の位置で切断して、その間の連結部を除去する切断工程と、当階のスラブ床面及び/又は上階のスラブ天井面に残存する排水立管のスラブ貫通部の内面を研磨洗浄後、その内面にエポキシ樹脂皮膜を形成する貫通部更生工程と、切断工程で除去した部分に、新たな管を継ぎ足す連結部更生工程と、からなることを特徴とする排水立管の更生方法を開示する。
また、例えば、下記特許文献2は、老朽化した既設排水管の中に、この既設排水管より小さな管径の新管を挿入し、管内側から突合せ溶接して新管同志を接合した後、この新管と既設排水管との空隙部にモルタル等の充填材を圧入充填して、既設排水管の内面を補修する工法を開示する。
また、例えば、下記特許文献3は、内部に液体が流れる流水管を補修するための流水管補修工法であって、流水管の補修対象箇所の上にパッチ部材を貼着又は接着剤を配置する工程1;パッチ部材が貼着又は接着剤が配置された流水管を防水性に囲んで覆う包囲カバーを取り付ける工程2を有し、流水管が、建築物内に配管され、工程1の後から工程2において包囲カバーを取り付けるまでの間、補修対象箇所からの液体の漏洩が停止している流水管補修工法を開示する。
また、例えば、下記特許文献4は、スラブを貫通する既設排水管の、スラブ貫通部からの漏水を補修する方法であって、スラブを貫通する既設排水管のスラブから出る突出部分を残すようにして、既設排水管の一部分を切断して取り除き、残存する残存既設排水管を形成する工程と、残存既設排水管の内周面を研磨する工程と、既設排水管の内径よりも小さい外径を有する主部と、主部の一端側に既設排水管の内径よりも大きい外径の径大部とを有する樹脂製である短管を準備する工程と、短管の少なくとも主部の外周面に液状の水硬化性の止水剤を塗布した後、短管を残存既設排水管に挿入し、外周面を残存既設排水管の内周面に止水剤を介して密着させる工程と、を備える漏水補修方法を開示する。
特開2006-57643号公報 昭和62-266287号公報 特開2014-5930号公報 特開2019-184047号公報
特許文献4に開示された漏水補修方法の場合、スラブを貫通する既設排水管のスラブから出る突出部分を残すようにして、既設排水管の一部分を切断して取り除き、残存する残存既設排水管に残存既設排水管の内径よりも大きい外径の径大部を有する短管を挿入することにより、残存既設排水管内に挿入された短管を係止している。このような方法の場合、残存既設排水管の内径よりも大きい外径の径大部を有する短管を準備する必要があり、作業性が悪かった。
本発明は上述したような問題を解決すべく、既設排水管の管内面を作業性良く補修することができる既設排水管の補修方法を提供することを目的とする。
本発明の一局面は、切断された既設排水管の所定の第1の箇所に第1の弾性部材を配置する工程と、第1の弾性部材の径を径大化させることにより、第1の箇所を塞ぐ工程と、既設排水管の内径よりも小さい外径を有する所定の長さの短管を挿入する工程と、既設排水管の内周面と短管の外周面との隙間に液状の止水剤を充填し、さらに硬化させる工程と、止水剤を硬化させる工程の後、径大化させた第1の弾性部材の径を径小化させることにより、第1の弾性部材を既設排水管から取り外す工程と、を備える既設排水管の補修方法である。例えば、既設排水管に漏水箇所が存在する場合、漏水箇所よりも下部にある第1の箇所に第1の弾性部材を配置することが好ましい。このような補修方法によれば、特許文献4に開示された漏水補修方法の場合のように、既設排水管の内径よりも大きい外径の径大部を有する短管を準備することなく、スラブ貫通部からの漏水等を容易に補修することができる。
また、第1の弾性部材は、気体の充填により径方向に径大化するエアバッグ、または、高さ方向に圧縮することにより径方向に径大化する弾性材であることが、所定の箇所を塞ぐ際には径大化させ、第1の弾性部材を既設排水管から取り外す際には径小化させることを、容易に制御できる点から好ましい。
また、本発明の他の一局面は、側面に分岐口を有する切断された既設排水管の下方に位置する所定の第1の箇所に第1の弾性部材を配置する工程と、第1の弾性部材の径を径大化させることにより、第1の箇所を塞ぐ工程と、既設排水管の内径よりも小さい外径を有し、且つ、分岐口に重なる開口を備える所定の長さの短管を挿入し、分岐口と開口とが重なるように配置する工程と、開口に第2の弾性部材を嵌め合せ、第2の弾性部材の径を径大化させることにより、開口を塞ぐ工程と、既設排水管の内周面と短管の外周面との隙間に液状の止水剤を充填し、さらに硬化させる工程と、止水剤を硬化させる工程の後、径大化させた第1の弾性部材の径を径小化させることにより、第1の弾性部材を既設排水管から取り外す工程と、径大化させた第2の弾性部材の径を径小化させることにより、第2の弾性部材を既設排水管から取り外す工程と、を備える既設排水管の補修方法である。このような補修方法によれば、既設排水管が枝管を接続するための分岐口を有するような場合であっても、スラブ貫通部からの漏水等を容易に補修することができる。
本発明によれば、既設排水管の管内面を作業性良く補修することができる既設排水管の補修方法を提供することができる。
図1は、既設排水管の施工対象となる切断された既設排水管1の準備について説明する工程説明図である。 図2は、第1実施形態の既設排水管の補修方法を説明するための工程説明図である。 図3は、第1実施形態で用いた第1の弾性部材2を備えた装置20を説明するための説明図である。 図4は、第1の弾性部材12を備えた装置30を説明するための説明図である。 図5は、既設排水管の補修方法により補修された既設排水管1に新設管60を接続する方法を説明する工程説明図である。 図6は、第2実施形態の既設排水管の補修方法を説明するための工程説明図である。 図7は、第2実施形態で用いた第2の弾性部材22を備えた装置40を説明する説明図である。
[第1実施形態]
以下、本発明に係る既設排水管の補修方法の第1の実施形態を、図面を参照して説明する。
はじめに、本実施形態の既設排水管の補修方法を実施するために、施工対象となる切断された既設排水管1の準備について説明する。
図1は、既設排水管の補修方法の施工対象となる、切断された既設排水管1を準備する工程を説明するための概略説明図である。図1中、50は高層建物の各階を通過する排水立管である既設排水管であり、fは漏水補修をする階の床スラブ、sは上階の床スラブであり、これらのスラブは例えばコンクリートスラブとして形成されている。また、h1,h2は補修対象となる漏水の原因となっている床スラブ内の既設排水管50に発生した孔である漏水箇所である。漏水箇所h1,h2は既設排水管50が露出していない床スラブfの内部で発生しているために、外側からは、直接、補修できない。また、rは既設排水管50の内部に発生したサビ等の汚物である。図1中の各要素は、何れも既設排水管50の長手方向の断面を模式的に示している。また、70はコアビット69を装着させたドライバーである。
はじめに、図1(a)に示すように、漏水補修を実施する箇所の居住域を通過する既設排水管50の、断面x1と断面x2との間の既設排水管50の一部分である既設排水管片51を切断して取り除き、図1(b)に示すような、既設排水管片51を切断して取り除いた後に残存する切断された既設排水管1を形成する。
切断された既設排水管1の内面には、居住年数や使用環境によってその程度は異なるが、既設排水管への通水により発生したサビやスラッジ等の汚物が付着している。このような既設排水管の内面に付着したサビやスラッジ等の汚物は、補修に際して除去することが好ましい。そのために、図1(c)に示すように、切断された既設排水管1の内面を、例えばコアビット69のような研磨部材を装着させたドライバー70を用い、その内面を研磨して平坦化する。
このようにして、既設排水管の補修方法の施工対象となる切断された既設排水管が準備される。そして、このようにして準備された既設排水管1を補修するための本実施形態の既設排水管の補修方法の各工程について、以下に説明する。
図2は、第1の実施形態の既設排水管の補修方法の各工程を説明する工程説明図である。図2において、1は切断された既設排水管である。また、fは補修施工をする床スラブであり、例えば、コンクリートスラブである。また、h1,h2は床スラブf内で補修対象となる切断された既設排水管1に発生した孔である漏水箇所である。また、2は、装置20の先端に配された、円柱状の弾性材である第1の弾性部材である。また、3は、広口の液溜部3aと足部3bとを有する漏斗状部材である。また、4は、既設排水管1の内径よりも小さい外径を有し、補修箇所の長さを有する短管である。また、6aは液状の止水剤であり、6は硬化した止水剤である。図2中の各要素は、何れも既設排水管1の長手方向の断面を模式的に示している。第1の弾性部材2のみ斜視的に示している。
漏水箇所h1,h2は既設排水管1が露出していない床スラブfの内部に位置するために、床スラブfを破壊しない限り、外側から直接、漏水箇所h1,h2からの漏水を補修できない。
本実施形態の既設排水管の補修方法においては、図2(a)に示すように、床スラブfを貫通する既設排水管の床スラブfから出る部分を残すようにして切断された既設排水管1を準備する。そして、好ましくは、施工の前に、既設排水管1の内面を研磨して平坦化しておく。このようにして、補修対象となる切断された既設排水管1を準備する。
そして、図2(b)に示すように、切断された既設排水管1の上部に漏斗状部材3を配置する。漏斗状部材3は、広口の液溜部3aと既設排水管1の管内径よりも小さい外径を有する足部3bとを有する。漏斗状部材3の足部3bを既設排水管1の上部に挿入して、液溜部3aが既設排水管1の上部に配されるように、漏斗状部材3をセットする。
そして、図2(c)に示すように、漏斗状部材3を装着した既設排水管1に、漏斗状部材3の開口から第1の弾性部材2を漏水箇所h1,h2の下部の所定の位置(第1の箇所R1)まで進入させる。第1の弾性部材2は、径大化するように変形し、再び径小化するように変形することが可能な弾性部材である。このような第1の弾性部材としては、例えば、高さ方向に圧縮して潰すことにより既設排水管の径方向に径大化するゴム、エラストマー、またはスポンジのような弾性材や、気体の充填により既設排水管の径方向に径大化するエアバッグが挙げられる。弾性材の硬度は特に限定されないが、例えば、ショアA硬度が40~100程度であることが好ましい。
そして、本実施形態の既設排水管の補修方法においては、図2(d)に示すように、既設排水管1の漏水箇所h1,h2の下方の第1の箇所R1に配された円柱状の弾性材である第1の弾性部材2を、径大化させるように変形させることにより、既設排水管1の第1の箇所R1を塞ぐ。
本実施形態においては、例えば、図3に示すような装置20を用いて、円柱状の弾性材である第1の弾性部材2を径大化させたり、径大化させた第1の弾性部材2を径小化させるように変形させたりすることができる。図3を参照して、装置20について詳しく説明する。
図3中、2は円柱状の弾性材である第1の弾性部材であり、21は上面プレート、25は下面プレート、23は中空の管シャフト、24は管シャフト23に挿通された寸切ボルト(全ネジシャフト)、23aは23の下端に溶接された下端ナット、23bは管シャフト23の上端に溶接された上端ナットである。下端ナット23a及び上端ナット23bは、寸切ボルト24の外周面に形成されたネジのネジ山に螺合するネジ山を備え、寸切ボルト24の外周面のネジ山と下端ナット23a及び上端ナット23bのネジ山とは螺合している。
また、28は寸切ボルト24に挿通された渦巻きスプリング、26は下面プレート25を介して寸切ボルト24の一端を固定する袋ナット、27は管シャフト23に対して寸切ボルト24を回転させるための持ち手となるハンドルである。
円柱状の第1の弾性部材2は、ゴム、エラストマー、またはスポンジのような弾性材から形成されており、高さ方向に圧縮されることにより径方向に径大化する。図3に示すように、装置20においては、第1の弾性部材2には径方向の中央部に、貫通孔Vが形成されており、貫通孔Vに寸切ボルト24を挿通させている。そして、貫通孔Vを挿通する寸切ボルト24には、さらに、渦巻きスプリング28が挿通されている。
図3を参照すれば、装置20においては、第1の弾性部材2の上面に上面プレート21が、下面に下面プレート25が配置されている。そして、図3(a)に示された装置20において、寸切ボルト24を挿通させている管シャフト23を矢印の方向に回転させることにより、下端ナット23a及び上端ナット23bのネジの作用により、寸切ボルト24に対して管シャフト23が下方に移動する。このとき、管シャフト23の下端への移動に伴い、下端ナット23aが上面プレート21を下方へ圧す。
上面プレート21が下方へ圧された場合、上面プレート21と下面プレート25との間隔が狭められることにより、第1の弾性部材2が高さ方向に圧縮されて径方向に広がる。その結果、圧縮された第1の弾性部材2は、図3(b)に示すように径大化するように径方向に広がる。また、このとき、上面プレート21と下面プレート25との間隔が狭まることに伴い、渦巻きスプリング28も圧縮される。
一方、図3(b)の寸切ボルト24に対して管シャフト23を矢印に示した方向に回転させることにより、寸切ボルト24に対して管シャフト23が上方に移動する。このとき、圧縮された渦巻きスプリング28は、圧縮により蓄積された反発力により、上面プレート21と下面プレート25との間隔を圧し広げる。そして、上面プレート21と下面プレート25との間隔が広がることにより、高さ方向に圧縮されて径方向に径大化されていた第1の弾性部材2は、元の円柱状に戻ろうとし、径方向に径小化する。すなわち、管シャフト23に固定された下端ナット23a及び上端ナット23bに沿って寸切ボルト24を回転させることにより、寸切ボルト24の先端が下端ナット23aからより突出している部分が長くなることにより、上面プレート21と下面プレート25との間隔が開き、圧縮されて径大化した円柱状の第1の弾性部材2は、再び元の円柱状に回復し、元のサイズの円柱状に戻って径小化する。
本実施形態の既設排水管の補修方法においては、このような装置20を用いることにより、第1の弾性部材2を径小化させたり、径小化した第1の弾性部材2を径大化させたりすることができる。
また、第1の弾性部材としては、気体の充填により既設排水管の径方向に径大化するエアバッグを用いてもよい。図4を参照して、エアバッグを第1の弾性部材として用いた装置の一例である装置30について説明する。
図4中、30は装置であり、12は円柱状のエアバッグ(ゴム製のバルーン)である第1の弾性部材であり、13は空気注入口、15はゴムホース、16は金属管,17は空気ポンプである。空気注入口13,金属管16,ゴムホース15,空気ポンプ17は気密に接続されており、空気ポンプ17で送気することにより、エアバッグである第1の弾性部材12に空気が注入される。装置30においては、空気ポンプ17を用いてエアバッグである第1の弾性部材12に空気を注入して膨らませることにより、第1の弾性部材12は膨張して径大化する。そして、膨張した第1の弾性部材12により、既設排水管を塞ぐことができる。また、空気を抜いて径大化させて膨張した第1の弾性部材12を収縮させることにより、第1の弾性部材12は、径小化する。このような装置30を採用しても、既設排水管を塞ぐことができる。
本実施形態の既設排水管の補修方法においては、例えば、上述したような、装置20のようにゴム、エラストマー、またはスポンジのような弾性材を圧し潰して径大化させたり、装置30のようにエアバッグに空気を注入して膨らませて径大化させたり、することにより、既設排水管の所定の箇所を塞ぐことができる。とくには、空気の漏れによる径小化等が生じず、径大化または径小化を制御しやすい点からは、ゴム、エラストマー、またはスポンジのような弾性材を圧し潰して径大化させる方法がとくに好ましい。
そして、図2(e)に示すように、径大化した第1の弾性部材2に下部を塞がれた既設排水管1に配置された漏斗状部材3の液溜部3aの開口から、既設排水管1の管内径よりも小さい外径を有する所定の長さの短管4を挿入する。短管の材質は特に限定されないが、例えば、硬質塩化ビニル樹脂等の樹脂材料で形成されていても、金属管であってもよい。なお、短管は、異種金属の接触による腐食を生じさせず、金属製の既設排水管を錆びさせにくい点から、硬質塩化ビニル樹脂等の樹脂製であることがとくに好ましい。
そして、図2(f)に示すように、短管4を挿入された漏斗状部材3からカップcに満たされた水硬化性の液状の止水剤6aを注ぎ、既設排水管1の内周面と短管4の外周面との間に形成された隙間に液状の止水剤6aを充填する。このとき、既設排水管1の下方の第1の箇所R1が第1の弾性部材2で塞がれているために、充填された液状の止水剤6aは下方に漏れない。このように液状の止水剤6aを注ぐことにより、既設排水管1の内周面と短管4の外周面との間に形成された隙間が液状の止水剤6aで埋められる。このとき、漏水箇所h1及びh2も液状の止水剤6aで塞がれる。このようにして、既設排水管1の内周面と短管4の外周面との隙間に水硬化性の液状の止水剤6aを充填し、硬化させる。
止水剤は、既設排水管に短管を挿入したときに形成される隙間を埋めて塞ぐことにより、漏水箇所からの隙間への水の浸入を止める作用をする。止水剤で止水しない場合、漏水箇所から侵入した水が既設排水管と短管との間の隙間に侵入し、毛細管現象により水を吸収して短管の上部まで水を侵入させ、外部に漏水させるおそれがある。このような空隙を止水剤で埋めることにより、簡便な作業で毛細管現象により水を吸収して短管の上部まで水を侵入させてしまうことを抑制できる。硬化した止水剤の厚さは特に限定されないが、水の浸入を止める作用を奏する限り特に限定されないが、例えば0.5~10mm、さらには、1~5mm程度であることが好ましい。
液状の止水剤としては、隙間に充填したときに、短管の外周面を既設排水管の内周面に止水剤を介して密着させて隙間を埋めることのできる透水性の低い止水剤であれば特に限定なく用いられる。このような止水剤の具体例としては、例えば、水と接触する前は液状または粘凋体であり、硬化により空隙を埋めて塞ぐ、例えば、一液型ポリウレタン樹脂系の止水剤や、二液型ポリウレタン樹脂系の止水剤が挙げられる。本実施形態の補修方法の実施においては、一液型ポリウレタン樹脂系の止水剤、とくには所定量の水と混合することにより所定の時間で硬化する水硬化性一液型ポリウレタン樹脂の止水剤であって硬化物がゴム弾性を示す止水剤が、水の存在により硬化し、また、発泡倍率が1倍以上である無発泡または低発泡のポリウレタン弾性体であるために、硬化収縮せずに剛性を保つために高い止水効果が得られる点から好ましい。このような水硬化性一液型ポリウレタン樹脂の止水剤の具体例としては、例えばハイセル(登録商標)OH(東邦化学工業(株)製)が挙げられる。なお、とくには、水硬化性一液型ポリウレタン樹脂にさらにセメントを配合した場合には、速硬化性が向上する点から好ましい。この場合、例えば、30~600秒間程度で止水剤が硬化する。所定の時間が経過することにより、硬化した止水剤6が形成される。
そして、図2(g)に示すように、充填された液状の止水剤6aを硬化させることにより、硬化した止水剤6を形成させた後、漏斗状部材3を取り外す。そして、図2(h)に示すように、装置20の管シャフト23を回転させて、圧縮されて径大化した円柱状の第1の弾性部材2を径小化する。
そして、図2(i)に示すように、装置20を引き上げて径小化した第1の弾性部材2を回収する。そして、図2(j)に示すように、必要に応じて既設排水管1から突出する短管4の余剰部4aを切断して端面を整えてもよい。さらに、必要であれば、漏斗状部材3を取り除くことにより形成された短管4と既設排水管1との間の隙間dにさらに液状の止水剤6aを注入し、硬化させて埋めてもよい。
このようにして、既設排水管1の漏水箇所h1,h1が塞がれて補修される。このようにして、本実施形態の既設排水管の補修が完了する。
床スラブf内の漏水の補修後は、既設排水管の一部分を切断して既設排水管片を取り除いた部分を埋めるために、既設排水管を取り除いた部分と同じ長さの新設管を準備し、取り除いた部分に新設管を接続する。具体的には、例えば、図5(a)に示すように、既設排水管から既設排水管片を取り除いた部分と同じ長さの新設管60を準備し、図5(b)に示すように新設管60を嵌めあわせ、既設排水管1との継ぎ目及び床スラブs側の既設排水管58との継ぎ目を必要に応じて止水処理をした後、図5(c)に示すようにカップリング部材59で固定する。このような接続においては、縮径締めによって管同士を接続するカップリング部材により、管接続を簡便に行うことが好ましい。このようなカップリング部材としては、例えば、配管の端面を突き合わせ、縮径締めによって管同士を接続するカップリング部材、具体的には、例えば、ストラブカップリング(登録商標、ショーボンドカップリング(株)製)等が好ましく用いられる。このように、新設管を接続することにより、既設排水管から取り除いた部分を新設し、排水の通水路を再生させることができる。
[第2実施形態]
図6は、第2の実施形態の既設排水管の補修方法の各工程を説明する工程説明図である。第2の実施形態の既設排水管の補修方法は、側面に分岐口を有する既設排水管の補修方法である以外は、第1の実施形態の既設排水管の補修方法と同様である。説明の便宜のために、重複する部分の説明は簡略化する。また、第2の実施形態における符号と同じ符号を付した要素は、同様の要素を示す。
図6において、11は側面に分岐口Bを有する切断された既設排水管であって、内周面が研磨されている。また、14は、切断された既設排水管11の内径よりも小さい外径を有する所定の長さの短管である。短管14は、既設排水管の分岐口に重なる開口Hを備える。また、22は、装置40の先端に配された、円柱状の弾性材である第2の弾性部材である。
第2実施形態の側面に分岐口を有する既設排水管の補修方法の各工程について、図6を参照して説明する。
第2実施形態の既設排水管の補修方法においても、図6(a)に示すように、床スラブfを貫通する既設排水管の床スラブfから出る部分を残すようにして既設排水管を切断することにより、切断された既設排水管11を準備する。そして、好ましくは、施工の前に、既設排水管11の内面を研磨して平坦化しておく。このようにして、補修対象となる側面に分岐口Bを有する切断された既設排水管11を準備する。
そして、図6(b)に示すように、切断された既設排水管11の上部に漏斗状部材3を配置する。
そして、図6(c)に示すように、漏斗状部材3を装着させた既設排水管11に、漏斗状部材3の開口から第1の弾性部材2を漏水箇所h1,h2の下部の所定の位置(第1の箇所R1)まで進入させる。
そして、図6(d)に示すように、既設排水管1の漏水箇所h1,h2の下部の第1の箇所R1に配された円柱状の弾性材である第1の弾性部材2を、径大化させるように変形させることにより、既設排水管1の第1の箇所R1を塞ぐ。
そして、図6(e)に示すように、下部を塞がれた既設排水管11に配置された漏斗状部材3の開口から、既設排水管11の管内径よりも小さい外径を有する所定の長さの短管14を挿入する。短管14には、既設排水管の分岐口Bに重なる開口Hが形成されており、既設排水管11は側面に分岐口Bを有する。このとき、既設排水管11の分岐口Bと短管14の開口Hとが重なるように配置する。
そして、第2実施形態の既設排水管の補修方法は、図6(f)に示すように、既設排水管11の分岐口B及び短管14の開口Hを第2の弾性部材22で塞ぐ点で、第1実施形態の既設排水管の補修方法と異なる。既設排水管11が分岐口Bを有する場合、分岐口Bを塞がなければ、後述する液状の止水剤を充填するときに、分岐口Bから横枝管に止水剤が流れてしまう。
具体的には、例えば、図7に示すような装置40を用いて、短管14の開口H及び既設排水管11の分岐口Bに挿通された円柱状の弾性材である第2の弾性部材22を径大化させるように変形させることにより、分岐口B及び開口Hが第2の弾性部材22で塞がれる。図7を参照して、装置40について詳しく説明する。
図7中、31はワイヤ、22は円柱状の弾性材である第2の弾性部材、33はワイヤ31を挿通する管シャフトである。第2の弾性部材22には、径方向の中央部に、貫通孔Vが形成されており、貫通孔Vに渦巻きスプリング38が挿通されている。また、第2の弾性部材22の上面及び下面には、それぞれ、上面プレート34及び下面プレート35が配されている。渦巻きスプリング38は、下面プレート35の中央部に立設された中空の管軸35aに挿通され、下面プレート35に対して垂直に支持されている。また、渦巻きスプリング38は、上面プレート34の中央部に立設された中空の管軸34aに挿通され、上面プレート34に対して垂直に支持されている。管軸34aは管軸35aよりも径が小さく、管軸34aは管軸35aに挿通されている。管軸34a及び管軸35aは渦巻きスプリング38が縮むことを許容する長さを有する。また、36は上面プレート34を固定する袋ナットである。
さらに、管シャフト33の下端側の側面には開口Sが形成されており、その開口が下面プレート35の管軸35aと連通するように、下面プレート35に接合されている。また、管シャフト33の上端にはネジ山を外周に有する寸切の管33aが接合されており、そのネジ山に螺合するネジ山を備えるアイナット39をさらに備える。そして、ワイヤ31は管シャフト33に挿通されており、一端はアイナット39に結合されており、他端は上面プレート34に結合されている。
円柱状の第2の弾性部材22も、ゴム、エラストマー、またはスポンジのような弾性材から形成されており、高さ方向に圧縮されることにより径方向に広がって径大化する。
図7を参照すれば、装置40においては、第2の弾性部材22の上面に上面プレート34が、下面に下面プレート35が配置されている。そして、装置40において、ワイヤ31の一端を結合するアイナット39を、ネジを締める方向または緩める方向に回転させることにより、ネジの作用により、管シャフト33に対するアイナット39の相対的な高さを変更することができる。例えば、図7(a)において、管シャフト33に対してアイナット39を、ネジを緩める方向に回転させた場合、管シャフト33に対してアイナット39の高さが矢印に示した上方に移動する。このとき、管シャフト33に対してアイナット39が上方へ移動することに伴い、ワイヤ31に付与されるテンションが増加する。
ワイヤ31のテンションが増加してワイヤ31が上方へ引っ張られた場合、上面プレート34が引っ張られて下面プレート35との間隔が狭められる。その結果、第2の弾性部材22が、高さ方向に圧縮されて径方向に広がり、図7(b)に示すように径方向に広がって径大化する。また、このとき、上面プレート34と下面プレート35との間隔が狭まることに伴い、渦巻きスプリング38も圧縮される。
一方、図7(b)において、アイナット39を、ネジを締める方向に回転させた場合、管シャフト33に対してアイナット39が矢印に示した下方に移動する。このとき、管シャフト33に対してアイナット39が下方へ移動することに伴い、ワイヤ31が緩む。このとき、圧縮された渦巻きスプリング38は、圧縮により蓄積された反発力により、上面プレート34と下面プレート35との間隔を圧し広げる。そして、上面プレート34と下面プレート35との間隔が広がることにより、高さ方向に圧縮されて径大化されていた第2の弾性部材22は、元の円柱状に戻ろうとし、径小化する。すなわち、アイナット39を締める方向に回転させることにより、ワイヤ31のテンションが低下して、上面プレート34と下面プレート35との間隔が開き、圧縮されて径大化した第2の弾性部材22は、再び元の円柱状に回復し、元のサイズの円柱状に戻って径小化する。
第2実施形態の既設排水管の補修方法では、例えば、このような装置40を採用することにより、第2の弾性部材22を径小化させたり、径大化させたりすることができる。このような工程により、既設排水管11の分岐口Bを一時的に塞ぐことができる。
そして、図6(g)に示すように、短管14を挿入された漏斗状部材3からカップcに満たされた水硬化性の液状の止水剤6aを注ぎ、既設排水管11の内周面と短管14の外周面との間に形成された隙間に液状の止水剤6aを充填する。このとき、既設排水管11の下方の第1の箇所R1が第1の弾性部材2で塞がれているために、充填された液状の止水剤6aは下方に漏れない。また、既設排水管11の分岐口B及び短管14の開口Hは、第2の弾性部材22で塞がれているために、液状の止水剤6aが分岐口Bに接続された横枝管に流れない。このように液状の止水剤6aを注ぐことにより、既設排水管11の内周面と短管14の管外面との間に形成された隙間が液状の止水剤6aで埋められる。
このようにして、既設排水管11の内周面と短管14の管外面との隙間に水硬化性の液状の止水剤6aを充填し、硬化させる。充填された液状の止水剤6aを硬化させることにより、止水剤6が形成される。
そして、図6(h)に示すように、充填された液状の止水剤6aを硬化させて止水剤6を形成した後、圧縮されて径大化した円柱状の第2の弾性部材22を径小化させ、図7(b)に示したように径小化させた第2の弾性部材22を分岐口B及び開口Hから取り外し、装置40を引き上げる。また、漏斗状部材3を取り外す。
また、図6(i)に示すように、径大化している円柱状の第1の弾性部材2を径小化させ、装置20を引き上げて第1の弾性部材2を回収する。さらに、図6(j)に示すように、必要に応じて既設排水管1から突出する短管14の余剰部14aを切断して端面を整えてもよい。さらに、必要であれば、漏斗状部材3を取り除くことにより形成された短管14と既設排水管11との間の隙間dにさらに液状の止水剤6aを注入し、硬化させて埋めてもよい。
このようにして、既設排水管1の漏水箇所h1,h1が塞がれて補修される。このようにして、本実施形態の既設排水管の補修が完了する。
以上説明した本実施形態の既設排水管の補修方法によれば、既設排水管のスラブを貫通する露出しない部分の漏水箇所を、スラブを破壊するような手間を掛けることなく、短時間で簡便に漏水箇所の補修をすることができる。
1 切断された既設排水管
2,12 第1の弾性部材
3 漏斗状部材
4,14 短管
6a 液状の止水剤
6 硬化した止水剤
11 側面に分岐口を有する既設排水管
22 第2の弾性部材
20,30,40 装置
32 第2の弾性部材
B 分岐口
H 開口
h1,h2 漏水箇所
R1 第1の箇所

Claims (5)

  1. 切断された既設排水管の所定の第1の箇所に第1の弾性部材を配置する工程と、
    前記第1の弾性部材の径を径大化させることにより、前記第1の箇所を塞ぐ工程と、
    前記既設排水管の内径よりも小さい外径を有する所定の長さの短管を挿入する工程と、
    前記既設排水管の内周面と前記短管の外周面との隙間に液状の止水剤を充填し、さらに硬化させる工程と、
    前記止水剤を硬化させる工程の後、径大化させた前記第1の弾性部材の径を径小化させることにより、前記第1の弾性部材を前記既設排水管から取り外す工程と、を備えることを特徴とする既設排水管の補修方法。
  2. 前記既設排水管には漏水箇所が存在し、前記第1の箇所は前記漏水箇所よりも下部にある請求項1に記載の既設排水管の補修方法。
  3. 前記第1の弾性部材は、気体の充填により径方向に径大化するエアバッグ、または、高さ方向に圧縮することにより径方向に径大化する弾性材である請求項1または請求項2に記載の既設排水管の補修方法。
  4. 側面に分岐口を有する切断された既設排水管の下方に位置する所定の第1の箇所に第1の弾性部材を配置する工程と、
    前記第1の弾性部材の径を径大化させることにより、前記第1の箇所を塞ぐ工程と、
    前記既設排水管の内径よりも小さい外径を有し、且つ、前記分岐口に重なる開口を備える所定の長さの短管を挿入し、前記分岐口と前記開口とが重なるように配置する工程と、
    前記開口に第2の弾性部材を嵌め合せ、前記第2の弾性部材の径を径大化させることにより、前記開口を塞ぐ工程と、
    前記既設排水管の内周面と前記短管の外周面との隙間に液状の止水剤を充填し、さらに硬化させる工程と、
    前記止水剤を硬化させる工程の後、径大化させた前記第1の弾性部材の径を径小化させることにより、前記第1の弾性部材を前記既設排水管から取り外す工程と、
    径大化させた前記第2の弾性部材の径を径小化させることにより、前記第2の弾性部材を前記既設排水管から取り外す工程と、を備えることを特徴とする既設排水管の補修方法。
  5. 前記第2の弾性部材は、気体の充填により径方向に径大化するエアバッグ、または、高さ方向に圧縮することにより径方向に径大化する弾性材である請求項4に記載の既設排水管の補修方法。
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