JP4205827B2 - 既設地中構造物の補強構造及び補強工法 - Google Patents

既設地中構造物の補強構造及び補強工法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、既設の地中構造物の補強構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
地中に埋設された既設構造物、例えば、図8(a)に示したようなボックスカルバート51では、外周面が地盤によって囲まれているので、面外のせん断力に対する構造物自体の補強は困難である。
【0003】
すなわち、図8(b)に示したように主筋55と剪断補強筋54とが埋設された壁部材53において、新たに剪断補強筋を後打ちする場合、壁部材53のコンクリートを削って貫通孔を設ける必要があるが、この貫通孔に補強筋を挿入してグラウト材を注入しても、貫通孔には周囲地盤からの土砂と地下水が流入するため、グラウト材と貫通孔内面との付着が損なわれるという欠点があった。
【0004】
また貫通孔に挿設した補強筋に壁部材53の背面側でフックを形成することはできず、フック無しの異形鉄筋ではグラウト材との間に付着破壊を生じるため、剪断補強筋を定着させることは困難であった。したがって、既設の地中構造物の耐震化を図る場合には、周囲地盤を改良して固化する方法が実施されているが、これも、広範囲にわたる地盤改良を要するため構造物の立地条件に影響を受けやすく、工期や施工コストが掛かり過ぎるという欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、構造物の立地条件に影響を受けず、広範囲にわたる地盤改良による耐震化を必要とせず、既設地中構造物に新たに剪断補強筋を設けることにより容易に、しかも、剪断耐力を確かに高めることができる補強構造を提供することにある。
【0006】
また本発明の課題は、既設地中構造物の背面側に地下水があっても施工可能な補強工法を提供することにある。
【0007】
本発明によれば、外周面が地盤によって囲まれたカルバートなどの既設地中構造物の壁体に設けられた貫通孔と、先端にフランジ部を備えて貫通孔に挿通された鋼材と、前記鋼材を壁体内側における貫通孔端部に固定するための固定部材と、前記貫通孔と前記鋼材との隙間に充填されて硬化してなる充填材とからなり、 前記フランジ部には、前記地盤側から地下水や土砂が前記貫通孔内部に流入することを防止する水膨張性ポリウレタン高分子または水膨張性弾性ゴムからなる水膨脹材を設けたことを特徴とする既設地中構造物の補強構造が提供される。
【0008】
ここで、前記鋼材は鋼棒または鋼管の何れか一方の部材を使用することができる。前記鋼材として鋼管を使用した場合には、鋼管の中空部を通して貫通孔の内部に充填材を注入することができるので、補強構造の構築が容易になる。
【0009】
また前記フランジ部は、貫通孔に挿入することができる範囲で可能な限り大きな外径であれば良く、例えば、鋼材として螺子鋼棒を用いればナットを先端に螺合して形成することができる。
【0010】
また本発明によれば、外周面が地盤によって囲まれたカルバートなどの既設地中構造物の壁体に貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔の壁体外側端部に地下水や土砂の流入を防止するための封止材を設ける工程と、先端にフランジ部及び前記地盤側からの地下水や土砂が前記貫通孔内部に流入することを防止する水膨張性ポリウレタン高分子または水膨張性弾性ゴムからなる水膨脹材を備えた鋼材を前記貫通孔内に挿設する工程と、前記鋼材を壁体内側の貫通孔端部に固定するとともに該貫通孔端部を封止するための固定部材を設ける工程と、前記鋼材と貫通孔との空隙に硬化性の充填材を充填する工程とを含む既設地中構造物の補強工法が提供される。
【0011】
ここで、前記鋼材として鋼管を使用し、該鋼管内を通して前記貫通孔内の空隙に硬化性の充填材を充填する工程を行なうことも可能である。
【0012】
また前記鋼材のフランジ部には水膨張性の部材を設けても良く、この部材の膨張により貫通孔が封止されれば、地下水や土砂の貫通孔内への流入を防止できるので、前記封止材を貫通孔の壁体外側端部に設ける工程を省くことが可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて説明する。◆
図1は本発明に係る補強構造10の断面図であり、補強構造10が適用された既設地中構造物は、背面側に土砂や地下水が存在する一方で、内側に補強工事を行なうためのスペースが存在する、例えば、ボックスカルバートのような構造物である。
【0014】
ここで、補強構造10は、既設地中構造物の壁体20に設けられた貫通孔20aと、貫通孔20aの地盤側端部に挿設された、例えば、ゴムパッキングもしくは水膨張性ゴムからなる封止材15と、先端にナット14が螺合されて貫通孔20aに挿設されたねじ鋼棒11と、ねじ鋼棒11の後端に螺合された固定部材12と、貫通孔20a内に充填されて硬化してなる、例えば、膨張性セメントペースト又はエポキシ系樹脂モルタル等からなるグラウト材13とから成る。
【0015】
前記ナット14は貫通孔20aに挿入することができる範囲で可能な限り大きなものを使用する。また前記固定部材12としては、図5の平面図に示したように、ほぼ中央に螺子孔12bが設けられ、グラウト材13の注入と空気抜きのための孔12aが穿設され、貫通孔20aよりも大きなナットを用いる。さらに、図1では、鋼材としてねじ鋼棒11を例示したが、これ以外に、図4のように外周にねじ山を備える鋼管25を用いるか、または図6のように先端が溶融されてフランジ部27aが形成された異形鉄筋27を用いることができる。
【0016】
次に、本発明に係る補強工法について図2(a)〜(d)を参照して説明する。最初に、図2(a)に示すように壁体20に貫通孔20aを穿設し、この貫通孔20aの地盤側端部に封止材15を挿設して、地盤側から地下水や土砂が貫通孔20aの内部に流入することを防止した後に、貫通孔20a内を洗浄する。
【0017】
次いで、図2(b)に示すように先端にナット14を螺合したねじ鋼棒11を貫通孔20aに挿設し、ねじ鋼棒11の後端には、図2(c)のように固定部材12を螺合する。そして、固定部材12の一つの孔12aから空気を抜きながら他の孔12aから貫通孔20a内にセメントペーストを注入する。
【0018】
このセメントペーストの注入方法を更に詳細に説明すれば、図3に示したように、チューブ16を固定部材12の孔12aに通して、その先端16aを貫通孔20aの地盤側端部まで延長し、このチューブ16を通してセメントペーストを圧送する。これにより、貫通孔20a内部の空気は矢印で示したように固定部材12の他の孔12aから抜け出て、セメントペーストは地盤側から徐々に貫通孔20aに充填される。セメントペーストが孔12aから流れ出るまで充填されたら、セメントペーストの圧送を終了し、チューブ16を孔12aから抜き取れば、図2(d)に示すように補強構造は完成する。
【0019】
なお、上記補強工法において、ねじ鋼棒11先端のナット14に、図7に示したような、例えば、水膨張性ポリウレタン高分子とゴムからなる水膨張性弾性ゴム材29を予め取り付けておけば、ねじ鋼棒11の貫通孔20aへの挿設後に、水膨張材29が貫通孔20aの内部で地下水と接触して膨張し、貫通孔20aを封止するので、上記封止材15との相乗作用で防水効果が格段に向上する。また水膨張材29の防水効果によっては、上記封止材15を挿設する工程が省略できて、水膨張材29のみにより貫通孔20aを封止することも可能になる。
【0020】
また上記補強工法において、ねじ鋼棒11の替わりに、図4に示したようなねじ山が外周に形成された鋼管25を使用することも可能である。この場合、上記チューブ16は不要であり、セメントペーストは矢印で示したように鋼管25の中空部21aを通して貫通孔20aへ充填される。
【0021】
【発明の効果】
本発明の補強構造では、先端にフランジ部を備える鋼材が貫通孔に挿通され、貫通孔と鋼材との隙間に充填された充填材が硬化して成るので、鋼材に剪断力が作用した場合であっても、フランジ部が支圧部材となって、硬化した充填材と鋼材との間の付着破壊の発生が防止される。したがって、従来の剪断補強筋のようなフックを壁体の外側端部に形成しなくても、剪断補強筋として後打ちする鋼材の定着が可能になり、既設の地中構造物の耐震化が容易に行なえて、工期の短縮と施工コストの低減が可能になる。
【0022】
また本発明の補強工法では、既設地中構造物の壁体に貫通孔を形成した後に、貫通孔の壁体外側端部に封止材を設ける工程を含むので、貫通孔内への地下水や土砂の流入を防止することができて、貫通孔内の洗浄が可能になり、硬化性充填材と貫通孔内面との間の付着破壊の防止が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る補強構造の断面図である。
【図2】(a)〜(d)は本発明に係る補強工法を示した簡略図である。
【図3】図2における補強工法の一工程を拡大して示した断面図である。
【図4】図1及び図3とは異なる一工程を拡大して示した断面図である。
【図5】本発明の補強構造に用いる固定部材の平面図である。
【図6】本発明の補強構造に用いる鋼材を示した側面図である。
【図7】水膨張材を備えた鋼材を示した側面図である。
【図8】(a)(b)は従来のボックスカルバートを示した断面図である。
【符号の説明】
10 補強構造
11 ねじ鋼棒(鋼材)
12 固定部材
13 グラウト材(充填材)
14 ナット(フランジ部)
15 封止材
20 壁体
20a 貫通孔
25 鋼管(鋼材)
27a フランジ部

Claims (5)

  1. 外周面が地盤によって囲まれたカルバートなどの既設地中構造物の壁体に設けられた貫通孔と、先端にフランジ部を備えて貫通孔に挿通された鋼材と、前記鋼材を壁体内側における貫通孔端部に固定するための固定部材と、前記貫通孔と前記鋼材との隙間に充填されて硬化してなる充填材とからなり、
    前記フランジ部には、前記地盤側から地下水や土砂が前記貫通孔内部に流入することを防止する水膨張性ポリウレタン高分子または水膨張性弾性ゴムからなる水膨脹材を設けたことを特徴とする既設地中構造物の補強構造。
  2. 前記貫通孔の地盤側端部に封止材を設けた請求項1に記載の既設地中構造物の補強構造。
  3. 前記鋼材が、ねじ鋼棒またはねじ山が外周に形成された鋼管の何れか一方の部材により形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の既設地中構造物の補強構造。
  4. 外周面が地盤によって囲まれたカルバートなどの既設地中構造物の壁体に貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔の壁体外側端部に地下水や土砂の流入を防止するための封止材を設ける工程と、先端にフランジ部及び前記地盤側からの地下水や土砂が前記貫通孔内部に流入することを防止する水膨張性ポリウレタン高分子または水膨張性弾性ゴムからなる水膨脹材を備えた鋼材を前記貫通孔内に挿設する工程と、前記鋼材を壁体内側の貫通孔端部に固定するとともに該貫通孔端部を封止するための固定部材を設ける工程と、前記鋼材と貫通孔との空隙に硬化性の充填材を充填する工程とを含む既設地中構造物の補強工法。
  5. 前記鋼材として鋼管を使用し、該鋼管内を通して前記貫通孔内の空隙に硬化性の充填材を充填する工程を含む請求項記載の既設地中構造物の補強工法。
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