JP7068532B2 - ポリエステル系樹脂組成物及び車両灯体用部品 - Google Patents

ポリエステル系樹脂組成物及び車両灯体用部品 Download PDF

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Description

本発明は、ポリエステル系樹脂組成物及び車両灯体用部品に関し、詳しくは、高外観、高熱伝導率で、ガス発生のないポリエステル系樹脂組成物及び車両灯体用部品に関する。
自動車等の車両用の内外装部品は、高強度及び優れた外観性状が要求され、また、コスト削減や省資源化等の目的で、薄肉化や小型化による軽量化が進んでいる。ポリブチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性ポリエステル樹脂は、それ自体で機械的特性、電気特性等が優れているほか、耐薬品性、耐熱性等も優れているので、自動車等の車両用の各種部品にも広く使用されている。
車両用部品の中でも、特に機械的特性や外観性状が必要とされる部品としては、例えば、自動車用ヘッドランプ等の灯体関連部品があり、リフレクターと並んで集光反射用機能を有するランプエクステンションと呼ばれる部材がある。ランプエクステンションは集光反射するための複雑な反射構造を有する通常2mm程度の薄肉成形品に金属が蒸着される。そして現在、ランプエクステンションには、ポリブチレンテレフタレート樹脂に無機フィラーを配合した強化系樹脂の成形体の表面にアルミ蒸着を行うことが主流になっている。
近年、ヘッドランプを屋外で実際に長期に使用される際に、太陽光がヘッドランプのプロジェクターレンズ等に反射し、その光がエクステンション部分に集光して、樹脂が溶融してしまうという問題が発生している。
これを解決するために、太陽光が集光しても高温にならないよう、赤外線を透過するような黒色の顔料を配合した材料も提案されている(特許文献1参照。)。だだ、そのような材料はガス発生が多いという問題点を抱えており、成形時のメインテナンス頻度が高くなるので、未だ十分満足できるものではない。
一方で、温度上昇を抑えるために、熱伝導率の高い材料が上記の問題を解決できる可能性があるが、熱伝導率の高い材料というものは大粒径の無機フィラーを大量に配合するものであり、平滑性が大きく損なわれることから、高光沢な外観が求められるエクステンション用途には不向きな材料である。
国際公開第2016/194757号
かかる状況下、高外観で、高い熱伝導率を発現させつつ、ガス発生のないポリエステル系樹脂材料が強く望まれている。本発明の目的(課題)は、高外観、高熱伝導率で、ガス発生のないポリエステル系樹脂組成物を提供することにある。
本発明者は、上記した課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の平均粒子径を有する無機フィラーと、特定の平均粒子径とアスペクト比を有するアルミナ粒子を、それぞれ特定量含むポリエステル樹脂組成物が、高い機械的強度を維持しながら、表面性状や外観、蒸着した際の外観にも優れ、かつ、高い熱伝導率を発現させつつ、ガス発生のないポリエステル樹脂材料となることを見出した。
本発明は、以下のポリエステル系樹脂組成物及び車両灯体用部品に関する。
[1]熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、平均粒子径が2μm以下の炭酸カルシウム、タルク、カオリンから選ばれる1種以上の無機フィラー(B)を0.01~10質量部、平均粒子径が8μm以下、アスペクト比が1.5以下のアルミナ(C)を0.01~10質量部含有することを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
[2]アルミナ(C)が球状アルミナである上記[1]に記載のポリエステル系樹脂組成物。
[3]さらに、アクリロニトリル-スチレン系共重合体(D)を、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、1~20質量部含有する上記[1]又は[2]に記載のポリエステル系樹脂組成物。
[4]さらに、カーボンブラック(E)を、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.01~5質量部含有する上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
[5]熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量%のうち、平均粒径1000μm以下のポリエステル樹脂パウダーが1~50質量%を占める上記[1]~[4]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物からなる車両灯体用部品。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、高い機械的強度を維持しながら、表面性状や外観、蒸着した際の外観にも優れ、かつ、高い熱伝導率を発現させつつ、成形時にガス発生のない材料であり、その表面にアルミ蒸着して得られた製品は外観が極めて良好で、蒸着した製品の耐熱蒸着性にも優れ、高い熱伝導性を示すので、自動車等の車両灯体用部品、特にランプエクステンション等として好適に使用できる。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、平均粒子径が2μm以下の炭酸カルシウム、タルク、カオリンから選ばれる1種以上の無機フィラー(B)を0.01~10質量部、平均粒子径が8μm以下、アスペクト比が1.5以下のアルミナ(C)を0.01~10質量部含有することを特徴とする。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下に記載する説明は実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
[熱可塑性ポリエステル(A)]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を含有する。
熱可塑性ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物の重縮合、オキシカルボン酸化合物の重縮合あるいはこれらの化合物の重縮合等によって得られるポリエステルであり、ホモポリエステル、コポリエステルのいずれであってもよい。
熱可塑性ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体が好ましく使用される。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルイソプロピリデン-4,4’-ジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボン酸、アントラセン-2,5-ジカルボン酸、アントラセン-2,6-ジカルボン酸、p-ターフェニレン-4,4’-ジカルボン酸、ピリジン-2,5-ジカルボン酸等が挙げられ、テレフタル酸が好ましく使用できる。
これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上を混合して使用しても良い。これらは周知のように、遊離酸以外にジメチルエステル等をエステル形成性誘導体として重縮合反応に用いることができる。
なお、少量であればこれらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸を1種以上混合して使用することができる。
熱可塑性ポリエステル樹脂を構成するジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、へキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール等の脂環式ジオール等、およびそれらの混合物等が挙げられる。なお、少量であれば、分子量400~6,000の長鎖ジオール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ-1,3-プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合せしめてもよい。
また、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオールも用いることができる。
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)としては、通常は主としてジカルボン酸とジオールとの重縮合からなるもの、即ち樹脂全体の50質量%、好ましくは70質量%以上がこの重縮合物からなるものを用いる。ジカルボン酸としては芳香族カルボン酸が好ましく、ジオールとしては脂肪族ジオールが好ましい。
なかでも好ましいのは、酸成分の95モル%以上がテレフタル酸であり、アルコール成分の95質量%以上が脂肪族ジオールであるポリアルキレンテレフタレートである。その代表的なものはポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートである。これらはホモポリエステルに近いもの、即ち樹脂全体の95質量%以上が、テレフタル酸成分及び1,4-ブタンジオール又はエチレングリコール成分からなるものであるのが好ましい。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の固有粘度(Iv)は、0.3~2dl/gであるものが好ましい。成形性及び機械的特性の点からして、0.5~1.5dl/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましい。固有粘度が0.3dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物が機械的強度の低いものとなりやすく、2dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化したり、それにより得られる成形品の表面特性が、車両灯体用部品として十分なものにならない場合がある。
なお、本発明において、熱可塑性ポリエステル樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。50eq/tonを超えると、樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しやすくなる。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、通常、10eq/tonである。
なお、ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mlにポリエステル樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定して得られた値をいう。
末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
なお、本発明において、熱可塑性ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mlにポリエステル樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。
中でも、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンテレフタレート樹脂を含むものであることが好ましく、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)中の50質量%以上がポリブチレンテレフタレート樹脂であることがより好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分またはこれらのエステル誘導体と、1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式または通続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレクタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下または減圧下固相重合させることにより、重合度(または分子量)を所望の値まで高めることもできる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法が好ましい。
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物などを挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどのチタンアルコラート、テトラフェニルチタネートなどのチタンフェノラートなどを挙げることができる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.5~2dl/gであるものが好ましい。成形性及び機械的特性の点からして、0.6~1.5dl/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましい。固有粘度が0.5dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物が機械的強度の低いものとなりやすい。また2dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化しやすく、それにより得られる成形品の表面特性が、車両灯体用部品として十分なものにならない場合がある。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。50eq/tonを超えると、樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しやすくなる。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、10eq/tonである。
末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
また、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、全構成繰り返し単位に対するテレフタル酸及びエチレングリコールからなるオキシエチレンオキシテレフタロイル単位を主たる構成単位とする樹脂であり、オキシエチレンオキシテレフタロイル単位以外の構成繰り返し単位を含んでいてもよい。ポリエチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸又はその低級アルキルエステルとエチレングリコールとを主たる原料として製造されるが、他の酸成分及び/又は他のグリコール成分を併せて原料として用いてもよい。
テレフタル酸以外の酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-フェニレンジオキシジ酢酸及びこれらの構造異性体、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸及びその誘導体、p-ヒドロキシ安息香酸、グリコール酸等のオキシ酸又はその誘導体が挙げられる。
また、エチレングリコール以外のジオール成分としては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族ジヒドロキシ化合物誘導体等が挙げられる。
ポリエチレンテレフタレート樹脂は、分岐成分、例えばトリカルバリル酸、トリメリシン酸、トリメリット酸等の如き三官能、もしくはピロメリット酸の如き四官能のエステル形性能を有する酸またはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等の如き三官能もしくは四官能のエステル形成能を有するアルコールを1.0モル%以下、好ましくは0.5モル%以下、更に好ましくは0.3モル%以下を共重合せしめたものであってもよい。
ポリエチレンテレフタレート樹脂の極限粘度は、好ましくは0.3~1.5dl/g、さらに好ましくは0.3~1.2dl/g、特に好ましくは0.4~0.8dl/gである。
また、ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基の濃度は、3~50eq/ton、中でも5~40eq/ton、更には10~30eq/tonであることが好ましい。末端カルボキシル基濃度を50eq/ton以下とすることで、樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しにくくなり、機械的特性が向上する傾向にあり、逆に末端カルボキシル基濃度を3eq/ton以上とすることで、耐熱性、滞留熱安定性や色相が向上する傾向にあり、好ましい。
末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂を併せて含有することも好ましい。特にポリブチレンテレフタレート樹脂にポリエチレンテレフタレート樹脂を特定量含有することにより、収縮率を低くすることができ、光沢性等の表面外観特性をより向上させることができるので好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂とを含有する場合の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量%に対して、ポリエチレンテレフタレート樹脂が、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは10~45質量%であり、さらに好ましくは15~40質量%である。ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量が50質量%を超えると、成形性が著しく低下する場合があり好ましくない。
また、本発明においては、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の一部を、ペレットではなく、パウダーの状態で用いることが好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂パウダーをブレンドすることにより、高い機械的強度を維持しながら、低収縮率で離型性に優れ、表面性状や外観、蒸着した際の外観にも優れ、高温使用下でも曇りの発生が抑制されたポリエステル樹脂材料が得られるので好ましい。
熱可塑性ポリエステル樹脂パウダーに用いるポリエステル樹脂は、熱可塑性のポリエステル樹脂であれば特に限定はないが、好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂あるいはポリエチレンテレフタレート樹脂のいずれでもよく、両方のパウダーを併用することも好ましい。ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂は前記した通りである。
ポリエステル樹脂パウダーは、ポリエステル樹脂の粉体状のものであり、ポリエステル樹脂を界面重合法や溶液重合法により粉体状に重合してもよいし、ポリエステル樹脂ペレットを粉砕して製造してもよいが、粒径をコントロールしやすい点から、ポリエステル樹脂ペレットを粉砕する方法を採用することが好ましい。
ペレットを粉砕する手段としては、ペレットを粗粉砕しその後微粉砕する多段粉砕方式や、微細化まで一段で行う方式等があるが、その方式は限定されるものではない。具体的な粉砕手段としては、ハンマーミル、ターボミル、ジェットミル、ピンミル、遠心ミル、ロートプレックス、パルベルイザー、湿式粉砕、チョッパーミル、ウルトラローター等を用いる粉砕手段が挙げられ、常温あるいは冷凍粉砕方式を用いることができる。これらの粉砕方式を採用する際には、温度上昇防止の工夫がなされた方式が有用で、具体的にはパルベライザー(独、Herbold社製)、ウルトラローター(独、Altenburger Machenen Jachering社製)などを用いる手段が有用である。
ポリエステル樹脂パウダーとしては、平均粒子径が1000μm以下のものが好ましく、50~1000μmであることが好ましい。50μm未満では、樹脂組成物製造工程においてブロッキング等製造のトラブルを誘発し易い傾向にある。また、平均粒子径が1000μmより大きすぎる場合は、外観が不良となる傾向にある等、本発明の効果が得られない場合がある。ポリエステル樹脂パウダーの平均粒子径は、より好ましくは100μm以上であり、さらに好ましくは150μm以上、なかでも好ましくは200μm以上であり、好ましくは900μm以下である。
ここでポリエステル樹脂パウダーの平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を使用し、粒度分布図から求めたメジアン径(D50)をいう。
ポリエステル樹脂パウダーの嵩密度は0.2~0.8g/cmであることが好ましく、0.3~0.7g/cmであることがより好ましく、0.4~0.6g/cmであることがさらに好ましい。このような嵩密度のポリエステル樹脂パウダーを使用することにより、樹脂組成物製造の際の無機フィラー(B)等の飛散、分級を抑制しやすく、無機フィラー(B)の2次凝集による外観不良が起こりにくく好ましい。
なお、嵩密度はJIS K7365に記載の方法により測定される値をいう。
ポリエステル樹脂パウダーの含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)中の1~50質量%であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上、さらには5質量%以上、特には7質量%以上が好ましく、より好ましくは45質量%以下、さらには40質量%以下、特には30質量%以下が好ましく、最も好ましくは20質量%以下である。
このようなパウダー含有量とすることにより、樹脂ペレットのみの存在下で無機フィラー(B)と混合するよりも、ポリエステル樹脂パウダーが共存することで混合が良好となり無機フィラー(B)の2次凝集が抑制されて均一な分散が達成され、高い機械的強度を維持しながら、表面性状や外観に優れる成形品が得られやすくなり、さらには、吸水性、加水分解性にも優れた樹脂組成物となりやすいため好ましい。
[無機フィラー(B)]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、平均粒子径が2μm以下の炭酸カルシウム、タルク、カオリンから選ばれる1種以上の無機フィラー(B)を含有する。
無機フィラーとしては、各種のものがあるが、本発明では、炭酸カルシウム、タルクまたはカオリンを使用し、その平均粒子径が2μm以下のものを用いる。
無機フィラー(B)は炭酸カルシウム、タルクまたはカオリンを単独で、あるいはこれらの内の2種以上を任意の割合で併用してもよい。
無機フィラー(B)の平均粒子径は2μm以下であるが、2μmを超えると、成形品の表面平滑性が低下し、表面に直接、アルミニウム等の金属蒸着を施した際に外観が悪くなる。平均粒子径は、1μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましく、0.4μm以下であることが特に好ましい。下限は、通常0.01μmであり、0.05μmであることが好ましく、0.08μmであることがより好ましく、0.1μmであることが特に好ましい。
なお、本発明における無機フィラー(B)の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される粒度分布図から求めたメジアン径(D50)をいう。
無機フィラー(B)の比重は、4g/cm以下であることが好ましく、3.5g/cm以下であることがより好ましく、3g/cm以下であることがさらに好ましい。このような比重の無機フィラー(B)を含む場合に、ポリエステル樹脂パウダーを用いることによる成形品外観の改善効果がより顕著となる。なお、無機フィラー(B)の比重は、ヘリウムガス置換法に基づいた真比重計により測定される値をいう。
無機フィラー(B)は、樹脂との親和性向上のために、表面処理が施されていることも好ましい。表面処理剤としては、例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のアルコール類、トリエチルアミン等のアルカノールアミン、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、ポリエチレンワックス、流動パラフィン等の炭化水素系滑剤、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸、ポリグリセリン及びそれらの誘導体、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
カオリンは、珪酸アルミ塩であり、通常は焼成することにより結晶水を脱水したものが好ましく用いられる。カオリンの化学成分は、Alが40~50質量%、SiOが50~60質量%程度含まれ、さらに小量成分として、NaO、TiO、CaO、Fe、MgOやKO等が含まれる場合も多い。カオリンの中でも、樹脂組成物を用いて得られる成型品外観の観点より、焼成カオリンが好ましい。
白色・粉末状の結晶体鉱物である。タルクの化学成分は、SiOが60~70質量%、MgOが30~40質量%含まれ、さらに不純物としてAl、FeやCaO等が含まれる場合も多い。
タルクは、層状構造を持った板状の粒子であり、化学組成的には含水珪酸マグネシウムであり、通常SiOを58~66質量%、MgOを28~35質量%、HOを約5質量%程度含んでおり、その他少量成分としてFeを0.03~1.2質量%、Alを0.05~1.5質量%、CaOを0.05~1.2質量%、KOを0.2質量%以下、NaOを0.2質量%以下含む場合も多い。
無機フィラー(B)としては、特に炭酸カルシウムが好ましく、合成炭酸カルシウム、天然炭酸カルシウム、それらをケイ酸等又は有機酸等で表面処理して得られる表面処理炭酸カルシウム等が挙げられる。
合成炭酸カルシウムは、例えば、水酸化カルシウムを炭酸ガスと反応させることによって製造することができる。水酸化カルシウムは、例えば、酸化カルシウムを水と反応させることによって製造することができる。酸化カルシウムは、例えば、石灰石原石をコークスなどで焼成することによって製造することができる。この場合、焼成時に炭酸ガスが発生するので、この炭酸ガスを水酸化カルシウムと反応させることによって炭酸カルシウムを製造することができる。
天然炭酸カルシウムは、天然に産出する石灰石等の炭酸カルシウム原石を公知の方法で粉砕することにより得られるものである。炭酸カルシウム原石を粉砕する方法としては、ローラーミル、高速回転ミル(衝撃剪断ミル)、容器駆動媒体ミル(ボールミル)、媒体撹拌ミル、遊星ボールミル、ジェットミルなどで粉砕する方法が挙げられる。
炭酸カルシウムの平均粒子径は、0.01~2μmであることが好ましく、0.05~1μmであることがより好ましく、0.08~0.5μmであることがさらに好ましく、0.1~0.4μmであることが特に好ましい。このような平均粒子径の炭酸カルシウムを使用することにより、炭酸カルシウムの凝集が起こりにくく、アルミ蒸着後の拡散反射率にも優れる傾向となるため好ましい。
炭酸カルシウムの表面処理に使用されるケイ酸類は、炭酸カルシウムの表面にシリカを付着できるものであれば、特に限定されない。ケイ酸類としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸アルカリ金属塩等が挙げられる。
ケイ酸類は、例えば、ケイ酸アルカリをシリカヒドロゾルとし、これを表面処理に用いることができる。シリカヒドロゾルは、公知の方法により生成することができる。例えば、酸分解法によって、ケイ酸ナトリウムからシリカヒドロゾルを生成することができる。酸分解法としては、例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液に塩酸、硫酸などの無機酸、酢酸、アクリル酸等の有機酸、硫酸アルミニウム、炭酸ガス等の酸性物質を加えることによって、非晶質シリカヒドロゾルを生成する方法が挙げられる。さらに、半透膜にケイ酸ナトリウムを通してシリカヒドロゾルを生成する透析法によって生成することもできる。また、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法によってシリカヒドロゾルを生成することもできる。
炭酸カルシウムの表面処理に使用される有機酸類としては、脂肪酸、樹脂酸、リグニン類及びこれらの誘導体が挙げられる。有機酸類は、2種類以上を混合して用いてもよい。
脂肪酸としては、炭素数が6~24の飽和または不飽和の脂肪酸が挙げられる。脂肪酸の炭素数は、10~20であることが好ましい。炭素数が6~24の飽和または不飽和の脂肪酸の具体例としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸等が挙げられる。特に、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸が好ましい。
脂肪酸の誘導体としては、脂肪酸の塩、脂肪酸のエステル等が挙げられる。脂肪酸の塩としては、例えば、上記炭素数が6~24の飽和又は不飽和の脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。脂肪酸の塩の炭素数は、10~20であることが好ましい。
脂肪酸のエステルとしては、例えば、上記炭素数が6~24の飽和又は不飽和の脂肪酸と、炭素数が6~18の飽和脂肪族アルコールとのエステル等が挙げられる。脂肪酸のエステルの炭素数は、10~20であることが好ましい。飽和脂肪族アルコールの炭素数は、10~18であることが好ましい。
無機フィラー(B)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.1~10質量部である。含有量が0.1質量部未満では耐熱性が不足すると共に、収縮率の低減効果が十分に得られない。逆に10質量部を超えると無機フィラー由来の凝集物が増えることから、良好な外観が得られにくい。無機フィラー(B)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは2.5質量部以上であり、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
[アルミナ(C)]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、平均粒子径が8μm以下、アスペクト比が1.5以下のアルミナ(C)を含有する。
アルミナの粒子形状は、楕円状を含む球状、または破砕状のものがあるが、アルミナ(C)としては、アスペクト比(長径/短径の比)が1.5以下であれば制限はないが、断面が楕円状のものも含めて球状のものが好ましい。アスペクト比(長径/短径の比)は、好ましくは1.4以下であり、より好ましくは1.4以下、なかでも1.3以下、とりわけ1.2以下、特には1.1以下であることが好ましい。
アルミナ(C)の平均粒子径は、8μm以下であり、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上、特には1.5μm以上であり、また、好ましくは7.5μm以下、より好ましくは7μm以下、さらには6.5μm以下、特には6μm以下であることが好ましい。
ここで、アルミナ(C)の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を使用し、粒度分布図から求めたメジアン径(D50)をいう。
アルミナ(C)としては、樹脂組成物の高熱伝導性や機械的強度、流動性、さらには外観性の観点から特に球状アルミナが好ましい。球状アルミナは、アルミナ粉末のうち粒子形状が球状ないし球状に近い形状をなすものであり、アスペクト比(長径/短径)が1~1.3、好ましくは1~1.2、特には1~1.1である球状アルミナが好ましい。
球状アルミナは、通常、水酸化アルミニウム粉末やアルミナ粉末、さらにはアルミニウム粉末のアルコールスラリーを火炎中に供給、溶射して製造され、球状化されたアルミナ粒子である。球状アルミナ粉末の粒子径やアスペクト比は、原料アルミナ粉末の粒子径やアルミナ粉末のアルコールスラリー濃度を調整することにより調整することができる。
アルミナ(C)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.1~10質量部である。含有量が0.1質量部未満では熱伝導性が不足すると共に放熱効果が十分に得られない。逆に10質量部を超えると優れた表面平滑性が得られにくい。アルミナ(C)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.2質量部以上であり、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、好ましくは7質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。
また、無機フィラー(B)とアルミナ(C)の含有量の合計は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは2質量部以上であり、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは4質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは17質量部以下、さらには15質量部以下である。
また、本発明においては、熱可塑性ポリエステル樹脂パウダーと、無機フィラー(B)とアルミナ(C)の含有量の比が、熱可塑性ポリエステル樹脂パウダー:(B)と(C)の質量比で、30:70~95:5であることが好ましく、40:60~93:7がより好ましく、50:50~90:10であることがさらに好ましい。このような含有割合とすることにより、無機フィラー(B)とアルミナ(C)の分散状態が良好で、優れた表面平滑性が得られるとともに、溶融混練等の樹脂組成物製造の際に安定的なフィードが可能となる傾向にあり、好ましい。
[アクリロニトリル-スチレン系共重合体(D)]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、さらに、アクリロニトリル-スチレン系共重合体(D)を含有することが好ましい。
アクリロニトリル-スチレン系共重合体(D)は、アクリロニトリルとスチレン系単量体との共重合体であり、さらに他の共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。
アクリロニトリル-スチレン系共重合体(D)を構成するスチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレンなどが挙げられ、スチレン、α-メチルスチレンがより好ましく、特にスチレンが好ましい。
スチレン系単量体とアクリロニトリル以外の他の共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体や、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β-不飽和カルボン酸及びその無水物が挙げられる。
これらの中では(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましく挙げられ、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、特にメチルメタアクリレートを挙げることができる。
なお、(メタ)アクリレートの表記はメタクリレート及びアクリレートのいずれをも含むことを示し、(メタ)アクリル酸エステルの表記はメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルのいずれをも含むことを示す。
アクリロニトリル-スチレン系共重合体(D)を製造する方法は、制限はなく、公知の方法が採用でき、例えば、塊状重合、乳化重合、溶液重合、懸濁重合等の方法が用いられる。
アクリロニトリル-スチレン系共重合体(D)中のアクリロニトリル単量体は、5~95質量%が好ましく、8~45質量%がより好ましい。また、スチレン系単量体に由来する単位の含有率は、50~95質量%が好ましく、55~92質量%がより好ましい。
また、アクリロニトリル-スチレン系共重合体(D)のメルトボリュームレート(MVR)としては、220℃、荷重10kgで5~100cm/10分の範囲にあることが好ましく、10~80cm/10分がより好ましい。
また、アクリロニトリル-スチレン系共重合体(D)の質量平均分子量(Mw)は、6万~22万の範囲にあることが好ましく、8万~20万であることがより好ましい。
なお、本発明において、アクリロニトリル-スチレン系共重合体(D)の質量平均分子量(Mw)の測定は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法によって行われる。
アクリロニトリル-スチレン系共重合体は、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)またはアクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)が挙げられ、特にアクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)が好ましい。
アクリロニトリル-スチレン系共重合体(D)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、1~20質量部であるのが好ましい。含有量が1質量部未満では表面外観の改善効果が乏しくなる傾向があり、20質量部を超えると耐熱性や衝撃性が低下しやすい。アクリロニトリル-スチレン系共重合体(D)の含有量は、より好ましくは2質量部以上であり、3質量部以上が更に好ましく、より好ましくは15質量部以下であり、更に好ましくは10質量部以下、特に8質量部以下であることが好ましい。
[カーボンブラック(E)]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、カーボンブラック(E)を含有することも好ましい。カーボンブラックを含有することで、ポリエステル系樹脂組成物及び成形品の耐侯性や外観、金属蒸着面における反射特性等が向上する。
カーボンブラック(E)は、その種類、原料種、製造方法に制限はなく、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のいずれをも使用することができる。その数平均粒子径には特に制限はないが、5~60nmであることが好ましい。このように数平均粒子径が所定の範囲にあるカーボンブラックを用いることにより、高温下でブリスターが発生し難い組成物を得ることができる。
なお、数平均粒子径は、ASTM D3849規格(カーボンブラックの標準試験法-電子顕微鏡法による形態的特徴付け)に記載の手順によりアグリゲート拡大画像を取得し、このアグリゲート画像から単位構成粒子として3,000個の粒子径を測定し、算術平均して求めることができる。
カーボンブラック(E)の窒素吸着比表面積(単位:m/g)は、通常1000m/g未満が好ましく、なかでも50~400m/gであることが好ましい。窒素吸着比表面積を1000m/g未満にすることで、ポリエステル系樹脂組成物の流動性や成形品の外観が向上する傾向にあり好ましい。
なお、窒素吸着比表面積はJIS K6217に準拠して測定することができる。
また、カーボンブラック(E)のDBP(ジブチルフタレート)吸収量は、300cm/100g未満であることが好ましく、なかでも30~200cm/100gであることが好ましい。DBP吸収量を300cm/100g未満にすることで、本発明のポリエステル系樹脂組成物の流動性や成形品の外観が向上する傾向にあり好ましい。
なお、DBP吸収量(単位:cm/100g)はJIS K6217に準拠して測定することができる。また使用するカーボンブラックは、そのpHについても特に制限はないが、通常、2~10であり、3~9であることが好ましく、4~8であることがさらに好ましい。
カーボンブラック(E)は、一種を単独でまた2種以上併用して使用することができる。更にカーボンブラックは、バインダーを用いて顆粒化することも可能であり、他の樹脂中に高濃度で溶融混練したマスターバッチでの使用も可能である。溶融混練したマスターバッチを使用することによって、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良が達成できる。上記樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。
マスターバッチ中のカーボンブラックの含有量は10~80質量%であることが好ましく、20~70質量%がより好ましく、30~60質量%がさらに好ましい。
カーボンブラック(E)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.01~5質量部であり、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上、特に0.5質量部以上であり、また、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1.5質量部以下、特に好ましくは1.0質量部以下である。含有量が0.01質量部未満であると耐候性が不十分となる場合があり、5質量部を超えると、成形性、耐衝撃性等の機械的特性が低下しやすい傾向にある。
[その他含有成分]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、上記した以外の他の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を損わない範囲で含有することができる。その他の熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
ただし、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)及びアクリロニトリル-スチレン系共重合体(B)以外のその他の樹脂を含有する場合の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下がより好ましく、さらには5質量部以下、特には3質量部以下とすることが好ましい。
また、本発明のポリエステル系樹脂組成物は、前記した以外の種々の添加剤を含有していてもよく、このような添加剤としては、安定剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、着色剤等が挙げられる。
[安定剤]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、安定剤を含有することが、熱安定性改良や、機械的強度、色相の悪化を防止する効果を有するという点で好ましい。安定剤としては、リン系安定剤、イオウ系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましく、特に好ましいのは、フェノール系安定剤である。
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でも有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物又は有機ホスホナイト化合物が好ましい。
有機ホスフェート化合物としては、好ましくは、下記一般式:
(RO)3-nP(=O)OH
(式中、Rは、アルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。nは0~2の整数を示す。)
で表される化合物である。より好ましくは、Rが炭素原子数8~30の長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が挙げられる。炭素原子数8~30のアルキル基の具体例としては、オクチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。
長鎖アルキルアシッドホスフェートとしては、例えば、オクチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、オクタデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ-2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。これらの中でも、オクタデシルアシッドホスフェートが好ましく、このものはADEKA社の商品名「アデカスタブ AX-71」として、市販されている。
有機ホスファイト化合物としては、好ましくは、好ましくは、下記一般式:
O-P(OR)(OR
(式中、R、R及びRは、それぞれ水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基または炭素原子数6~30のアリール基であり、R、R及びRのうちの少なくとも1つは炭素原子数6~30のアリール基である。)
で表される化合物が挙げられる。
有機ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニルジ(トリデシル)ホスファイト)、テトラ(トリデシル)4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
有機ホスホナイト化合物としては、好ましくは、下記一般式:
-P(OR)(OR
(式中、R、R及びRは、それぞれ水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基又は炭素原子数6~30のアリール基であり、R、R及びRのうちの少なくとも1つは炭素原子数6~30のアリール基である。)
で表される化合物が挙げられる。
有機ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4-ジ-iso-プロピルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-n-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-iso-プロピルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、およびテトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
イオウ系安定剤としては、従来公知の任意のイオウ原子含有化合物を用いることが出来、中でもチオエーテル類が好ましい。具体的には例えば、ジドデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート)、チオビス(N-フェニル-β-ナフチルアミン)、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルイソプロピルキサンテート、トリラウリルトリチオホスファイトが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート)が好ましい。
フェノール系安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-ネオペンチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリト-ルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
中でも、融点が150℃以上のヒンダードフェノール系安定剤を用いることが好ましい。融点が150℃以上であると、安定剤自身の熱安定性が高くなるため、変質して安定化の効果を失ったり、溶融混練等の樹脂組成物製造時や射出成形等の高温度環境下でもガスが生成しにくくなる。また、得られる成形品に金属薄膜を設けた車両灯体用部品を高温雰囲気に曝しても、金属薄膜の表面が犯され、車両灯体用部品に曇りが発生することも抑制される。融点は、より好ましくは180℃以上であり、さらに好ましくは200℃以上であり、特に好ましくは220℃以上である。融点の上限は通常350℃以下であり、好ましくは300℃以下であり、より好ましくは280℃以下である。
安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
安定剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.001~1質量部である。安定剤の含有量が0.001質量部未満であると、樹脂組成物の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、1質量部を超えると、過剰量となりシルバーストリークの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。安定剤の含有量は、より好ましくは0.005~0.7質量部であり、更に好ましくは、0.01~0.5質量部である。
[離型剤]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は離型剤を含有することが好ましい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6~36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6~36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、モンタン酸エステルワックス、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス等のポリオレフィンワックス、フィッシャ-トロプシュワックス、炭素数3~12のα-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。また、数平均分子量は、好ましくは200~30000であり、より好ましくは1000~15000であり、さらに好ましくは1500~10000であり、特に好ましくは2000~5000である。脂肪族炭化水素化合物は単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。中でも、ポリオレフィンワックスが好ましい。
ポリオレフィンワックスとしては、従来公知の任意のものを使用でき、例えば、好ましくは炭素数2~30、より好ましくは2~12、さらに好ましくは2~10の、オレフィンの一種、または任意の割合の二種以上を含む(共)重合体(重合または共重合を意味する。以下同様。)が挙げられる。
炭素数2~30のオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、炭素数4~30(好ましくは4~12、さらに好ましくは4~10)のα-オレフィン、および炭素数4~30(好ましくは4~18、さらに好ましくは4~8)のジエンが挙げられる。α-オレフィンとしては、例えば1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンおよび1-ドデセンが挙げられる。ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン、11-ドデカジエン等が挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、離型性と耐熱性の点から、ポリエチレンワックスが好ましい。
ポリエチレンワックスの製造方法は任意であり、例えば、エチレンの重合やポリエチレンの熱分解により製造することができる。
離型剤としては、酸価が10~40mgKOH/gのものが、離型抵抗が小さく離型性の改良効果が著しく、揮発分が少ない点から好ましい。酸価は、より好ましくは11~35mgKOH/g、さらに好ましくは12~32mgKOH/gである。酸価が10~40mgKOH/gの範囲となれば、酸価が10mgKOH/g未満のものと40mgKOH/gを超えるものを併用してもよく、複数種類の離型剤全体としての酸価が、10~40mgKOH/gとなればよい。
酸価が10~40mgKOH/gの離型剤としては、上記した脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルであって酸価が10~40mgKOH/gのものや、上記した脂肪族炭化水素化合物、好ましくはポリオレフィンワックスに、カルボキシル基(カルボン酸(無水物)基、即ちカルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を表す。以下同様。)、ハロホルミル基、エステル基、カルボン酸金属塩基、水酸基、アルコシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基等の、ポリエステル樹脂と親和性のある官能基を付与した変性ポリオレフィンワックスが好ましい。
ポリオレフィンワックスの変性に用いるカルボキシル基としては、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、およびメタクリル酸などのカルボン酸基を含有する低分子量化合物、スルホン酸などのスルホ基を含有する低分子量化合物、ホスホン酸などのホスホ基を含有する低分子量化合物などを挙げることができる。これらの中でもカルボン酸基を含有する低分子量化合物が好ましく、特にマレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、およびメタクリル酸などが好ましい。これらのカルボン酸は、一種または任意の割合で二種以上を併用してもよい。
変性ポリオレフィンワックスにおける酸の付加量としては、変性ポリオレフィンワックスに対して、通常、0.01~10質量%、好ましくは0.05~5質量%である。
ハロホルミル基としては具体的には例えば、クロロホルミル基、ブロモホルミル基等が挙げられる。これらの官能基を、ポリオレフィンワックスに付与する手段は、従来公知の任意の方法によれば良く、具体的には例えば、官能基を有する化合物との共重合や、酸化などの後加工など、いずれの方法でもよい。
官能基の種類としては、ポリエステル樹脂と適度な親和性があることから、カルボキシル基であることが好ましい。変性ポリオレフィンワックスにおけるカルボキシル基の濃度としては、適宜選択して決定すればよいが、低すぎるとポリエステル樹脂との親和性が小さく、揮発分の抑制効果が小さくなり、また離型効果が低下する場合がある。逆に濃度が高すぎると、例えば、変性の際にポリオレフィンワックスを構成する高分子主鎖が過度に切断さて、変性ポリオレフィンワックスの分子量が低下し過ぎることで揮発分の発生が多くなり、ポリエステル樹脂成形体表面に曇りが発生する場合がある。
変性ポリオレフィンワックスとしては、酸化ポリエチレンワックスが好ましい。
なお、離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
離型剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が上記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が上記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
[ポリエステル系樹脂組成物の製造]
本発明のポリエステル系樹脂組成物を製造するには、樹脂組成物調製の常法に従って行うことができる。すなわち、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)、無機フィラー(B)及びアルミナ(C)、所望により添加されるその他樹脂成分及び種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸又は二軸押出機で溶融混練する。また各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、樹脂組成物を調製することもできる。例えば、ポリエステル樹脂パウダーに無機フィラー(B)を予めブレンドした予備ブレンド物と、ポリエステル樹脂ペレットとを溶融混練してポリエステル系樹脂組成物を製造する方法も採用できる。この場合、前記予備ブレンド物とポリエステル樹脂ペレットとは、別々のフィーダーから押出機にフィードすることも可能である。また、さらには、一部をマスターバッチ化したものを配合して溶融混練してもよい。さらには、予め各成分を混合した混合物を、溶融混練することなく、そのまま射出成形機等の成形機に供給し、各種成形品を製造することも可能である。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220~300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、外観不良の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
[成形品]
本発明のポリエステル系樹脂組成物を用いて成形品を製造する方法は、特に限定されず、ポリエステル系樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられる。中でも、生産性と、得られる成形品の表面性が良好となるなど、本発明の効果が顕著であることから、射出成形法が好ましい。
成形品は、高い機械的強度を維持しながら、成形品の表面性状、外観、蒸着した際の外観にも優れ、高温使用下でも曇りの発生が抑制されるので、これらの特性が厳しく求められる車両灯体用部品、特にリフレクター、ランプエクステンション用の基体として特に好適に使用される。
ランプエクステンションは、灯具のボディとカバー(またはアウターレンズ)とで形成される灯室内の、ランプの周囲に設けられ、ランプ光源の方向性、反射性のために、高い輝度感、平滑性、均一な反射率、さらには光源からの発熱に耐えうる耐熱性等が要求される。ランプエクステンションは、少なくとも一表面にアルミニウム等の金属蒸着による金属薄膜層からなる鏡面処理が施される。なお、自動車用灯体のランプエクステンションとしては、前照灯や尾灯に多用されるが、これに限定されず、その他、前照灯(ヘッドランプ)、尾灯(テールランプ)、制動灯(ストップランプ)、方向指示灯(いわゆるウインカー)、車幅灯、後退灯などに適用されるもの等を含む。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
以下の実施例および比較例において、使用した成分は、以下の表1の通りである。
Figure 0007068532000001
(実施例1~6、比較例1~5)
上記表1に示した各成分を後記表2に示す割合(全て質量部)にて、タンブラーミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」(L/D=42)を使用し、シリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練した樹脂組成物を、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリエステル系樹脂組成物のペレットを得た。なお、押出機の出口における樹脂温度は285℃であった。
[流動性(MVR)]
タカラ工業(株)製メルトインデクサーを用いて、上記で得られたペレットを265℃、荷重2.16kgfの条件で測定した単位時間当たりの溶融流動体積MVR(単位:cm/10min)を測定した。
[引張破断強度、引張破断伸び率]
上記で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日本製鋼社製射出成形機(型締め力85T)を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で、ISO多目的試験片(4mm厚)を射出成形した。
ISO527に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)を用いて、引張破断強度(単位:MPa)、引張破断伸び率(単位:%)を測定した。
[曲げ最大強度、曲げ弾性率]
ISO178に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で、曲げ最大強度(単位:MPa)と曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
[ノッチ付シャルピー衝撃強度]
ISO179に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)にノッチ加工を施したノッチ付き試験片について、23℃の温度でノッチ付シャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。
[熱伝導率]
前記で得られたペレットを射出成形前に120℃、5時間乾燥し、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80」)により、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の条件で成形体形状が100mm×100mm×3mmの板状成形品を得た。
これを試料として、京都電子工業社製ホットディスク法熱物性測定装置「TPS-2500S」を用い、常温条件下における平面方向の熱伝導率を測定した。
[外観の評価]
前記で得られたペレットを射出成形前に120℃、5時間乾燥し、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80」)により、シリンダー温度260℃、射出速度60mm/sec、射出時間30sec、保圧60MPa、冷却時間15sec、金型温度60℃の条件で、#14000の研磨剤による表面仕上げを施した鏡面金型を用いて、成形体形状が60mm×60mm×3mmの光反射体用の基体を得た。
得られた光反射体基体の表面に、プライマー処理を施さずに、アルミ膜厚150nmになるようアルミ蒸着を行って、光反射体を得た。
(i)異物の有無
上記光反射体用基体の表面粗さを、キーエンス社製レーザー顕微鏡「VK-X100」を用い、倍率200倍の条件で、任意に選択した領域5ヶ所について表面粗さの計測を行い、JIS B0601に準拠して最大高さ(Rz)を測定した。
(ii)耐熱蒸着特性(アルミ蒸着面の耐熱性)
次いで、上記したアルミ蒸着光反射体を熱風乾燥機(ヤマト科学社製送風定温恒温器DN-43)で160℃、24時間の条件で加熱処理し、分光測色計(コニカミノルタ社製「CM-3600d」)を用い、正反射光除去方式にて波長550nmでアルミ蒸着面の拡散反射率を測定し、耐熱蒸着特性の指標とした。加熱処理前後の拡散反射率変化量が1%未満を「○」(合格)、1%以上を「×」(不合格)と判定した。
(iii)外観の総合判定
上記の(i)最大高さRzが5μm以下で、上記(ii)耐熱蒸着特性が「○」のものを「○」(合格)、そうでないものを「×」(不合格)と判定した。
以上の結果を、以下の表2に示す。
Figure 0007068532000002
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、高い機械的強度を維持しながら、表面性状や外観、蒸着した際の外観にも優れ、かつ、高い熱伝導率を発現させつつ、成形時にガス発生のない材料であり、その表面にアルミ蒸着して得られた製品は外観が極めて良好で高い熱伝導性を示すので、自動車等の車両灯体用部品等として好適に利用できる。

Claims (4)

  1. 熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、平均粒子径が2μm以下の炭酸カルシウム、タルク、カオリンから選ばれる1種以上の無機フィラー(B)を0.01~10質量部、平均粒子径が8μm以下、アスペクト比が1.5以下のアルミナ(C)を0.01~10質量部、アクリロニトリル-スチレン系共重合体(D)を1~20質量部含有することを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
  2. アルミナ(C)が球状アルミナである請求項1に記載のポリエステル系樹脂組成物。
  3. さらに、カーボンブラック(E)を、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.01~5質量部含有する請求項1または2に記載のポリエステル系樹脂組成物。
  4. 熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量%のうち、平均粒径1000μm以下のポリエステル樹脂パウダーが1~50質量%を占める請求項1~3のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
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