JP2004018793A - ポリエステル系樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】寸法安定性と成形ハイサイクル性に優れ、かつ機械的強度に優れ、電気、電子部品、電装部品(コネクタ材料)などの用途に有用なポリエステル系樹脂組成物を得る。
【解決手段】所定割合の(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体、(C)ビニル系共重合体より構成される樹脂組成物に対して、(D)結晶核剤、(E)離型剤を所定量配合して得られるポリエステル系樹脂組成物であって、(B)が、シアン化ビニル単量体、芳香族ビニル単量体、エポキシ基含有ビニル単量体を、(C)がシアン化ビニル単量体、芳香族ビニル単量体を重合して得られる共重合体であり、かつ、共重合体に含有されるゴム成分の総量が、前記樹脂成分100重量部に対して1重量部以下であることを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】所定割合の(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体、(C)ビニル系共重合体より構成される樹脂組成物に対して、(D)結晶核剤、(E)離型剤を所定量配合して得られるポリエステル系樹脂組成物であって、(B)が、シアン化ビニル単量体、芳香族ビニル単量体、エポキシ基含有ビニル単量体を、(C)がシアン化ビニル単量体、芳香族ビニル単量体を重合して得られる共重合体であり、かつ、共重合体に含有されるゴム成分の総量が、前記樹脂成分100重量部に対して1重量部以下であることを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル系樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、寸法安定性、靱性、射出成形時の成形ハイサイクル性に優れ、かつ、機械的強度に優れたポリエステル系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリエステル樹脂、中でもポリブチレンテレフタレート樹脂は、優れた耐熱性、成形性、耐薬品性及び電気絶縁性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有していることから、射出成形用を中心として各種自動車部品、電気部品、機械部品及び建設部品などの用途に使用されている。
【0003】
しかしながら、熱可塑性ポリエステル樹脂単体では衝撃強度が低いこと、射出成形時の成形収縮率が大きく、寸法安定性が不十分であることなどの欠点を有することからそれらの改善が望まれている。そこで、熱可塑性ポリエステル樹脂の耐衝撃性、寸法安定性を改善する目的で、ABS樹脂、AS樹脂等を配合する方法が知られている。
【0004】
このようなポリブチレンテレフタレート樹脂とABS樹脂、AS樹脂を配合してなる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、例えば特開平4−345653号公報に記載されているように、ABS樹脂等のグラフトゴム強化重合体とグリシジルエステル基含有ビニル系重合体を配合することにより、機械的物性、耐熱性、成形性に加え、耐屈曲性(ヒンジ特性)に優れる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が提案されている。
【0005】
また、特開平9−176435号公報では、ABS樹脂等のゴム強化スチレン系樹脂とエポキシ基含有スチレン系ブロック共重合体を配合してなる樹脂組成物が開示されている。この公報によれば、この樹脂組成物は、機械的特性、特に耐衝撃性とウェルド特性に優れているとされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の方法で得られる樹脂組成物はゴム成分が含まれているため、樹脂の固化が遅くなり、射出成形時の成形ハイサイクル性に支障をきたし、また耐熱性や剛性が損なわれるという問題点を有している。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、このように寸法安定性と射出成形時の成形ハイサイクル性を両立させるために鋭意検討した結果、熱可塑性ポリエステルに、特定のエポキシ基含有ビニル系共重合体と特定のビニル系共重合体を、ゴム成分の総量を一定量以下にしつつ特定の割合で配合し、結晶核剤と離型剤を添加することにより、寸法安定性、靱性、射出成形時の成形ハイサイクル性に優れ、かつ、機械的強度に優れる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を提供し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
(1)(A)熱可塑性ポリエステル樹脂60〜95重量部、(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体4.5〜20重量部、(C)ビニル系共重合体0.5〜20重量部より構成される樹脂成分100重量部に対して、(D)結晶核剤0.001重量部〜1重量部、(E)離型剤0.05〜3重量部を配合して得られるポリエステル系樹脂組成物であって、(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体が、(B−1)シアン化ビニル単量体、(B−2)芳香族ビニル単量体、(B−3)エポキシ基含有ビニル単量体を主要成分として重合して得られる共重合体であり、(C)ビニル系共重合体が(C−1)シアン化ビニル単量体、(C−2)芳香族ビニル単量体を主要成分として重合して得られる共重合体であり、かつ、(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体、(C)ビニル系共重合体に含有されるゴム成分の総量が、前記樹脂成分100重量部に対して1重量部以下であることを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
【0009】
(2)(A)熱可塑性ポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする(1)に記載のポリエステル系樹脂組成物。
により構成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。本発明の(A)熱可塑性ポリエステル樹脂(以下、(A)成分とも言う)とは、テレフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸などから選ばれた少なくとも1種の酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールあるいはポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコールなどから選ばれた少なくとも1種のジオール成分との重縮合によって得られるものであり、具体的にはポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリヘキシレンテレフタレート(PHT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリシクロヘキサン―1,4―ジメチロールテレフタレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート・テレフタレート(PET/I)、ポリブチレンイソフタレート・イソフタレート(PET/I)などのような共重合ポリエステルなどを挙げることができる。
【0011】
(A)成分の粘度は溶融混練が可能であれば特に制限はないが、通常、o−クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度は0.65〜1.40であることが好ましい。より好ましい固有粘度の範囲は0.70〜1.10であり、さらに好ましくは0.75〜0.90である。(A)成分が2種以上の成分からなる場合には、成分比率が変わらないよう、粉砕後もしくはペレット状のままo−クロロフェノール溶液を調整し、粘度測定した結果が前記粘度条件内にあればよい。
【0012】
(A)成分の添加配合量は、(A)成分と(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体(以下、(B)成分とも言う)、(C)ビニル系共重合体(以下、(C)成分とも言う)、の3成分の合計を100重量部としたとき、60〜95重量部であり、好ましくは80〜90重量部である。(A)成分の添加配合量が60重量部未満であると相対的に(B)〜(C)成分含有量が増加し過ぎて射出成形時のハイサイクル性が低下し、95重量部を超えると(B)〜(C)成分の含有量が相対的に低下し過ぎるため、寸法安定性が低下する。
【0013】
本発明で用いられる(B)成分における(B−1)シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリルなどが挙げられ、なかでもアクリロニトリルが好ましい。
【0014】
また、(B−2)芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどが挙げられ、なかでもスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0015】
さらに、(B−3)エポキシ基含有ビニル単量体としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルエタクリレートなどが挙げられ、なかでもグリシジルメタクリレートが好ましい。
【0016】
なお(B)成分中の(B−3)エポキシ基含有ビニル単量体の共重合量は0.05〜20重量部、特に0.1〜10重量部が適当であり、0.05重量部未満では、機械的特性、特に靱性が損なわれ、20重量部を越えると流動性が損なわれるため好ましくない。
【0017】
(B)成分の添加配合量は、4.5〜20重量部、特に5〜12.5重量部が好ましく、4.5重量部未満では寸法安定性の改良効果が乏しく、20重量部を越えると成形性が損なわれるため好ましくない。
【0018】
本発明で用いられる(C)成分における(C−1)シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリルなどが挙げられ、なかでもアクリロニトリルが好ましい。
【0019】
また、(C−2)芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどが挙げられ、なかでもスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0020】
(C)成分の添加配合量は、0.5〜20重量部、特に5〜7.5重量部が好ましく、0.5重量部未満では寸法安定性の改良効果が乏しく、20重量部を越えると、成形性、靱性、耐衝撃性が損なわれるため好ましくない。
【0021】
本発明で用いられる(B)成分、および(C)成分に含有されるゴム成分の総量は、前記(A)〜(C)により構成される樹脂成分100重量部に対して1重量部以下であることが必要である。ここで1重量部以下とは、ゴム成分が皆無であることも含んでおり、この場合が最も好ましい態様となるが、本発明の目的であるところの、樹脂の固化を速くし、射出成形時の成形ハイサイクル性を向上させ、かつ安定した耐熱性や剛性を維持することができるという効果を発現させる観点からは1重量部以下であることが必要である、ということを意味する。
【0022】
本発明で言うゴム成分とは主として共役ジオレフィンを意味するが、ゴム成分が本来有する性質を備えたものであれば、他の成分を含んでいても良くその種類は問わない。
【0023】
本発明の(D)結晶核剤(以下、(D)成分とも言う)としては、有機物、無機物の何れも使用することができる。無機物としては、タルク、Zn粉末、Al粉末などの単体や、窒化アルミ、窒化チタン、ボロンナイトライドなど窒化物を単独、または2種以上混合して使用することができる。又、有機物としては、シュウ酸カルシウム、シュウ酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、フタル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリアクリル酸塩などの有機塩類、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の高分子、高分子の架橋物などを単独又は2種以上混合して使用することができ、特に好ましいものはタルクである。
【0024】
(D)成分の添加配合量は前記(A)〜(C)により構成される樹脂成分100重量部に対して、0.001〜1重量部が必要であり、0.005〜0.3重量部が好ましい。0.001重量部未満では射出成形時の成形ハイサイクル性が不足し、1重量部をこえると寸法安定性が低下するため好ましくない。
【0025】
本発明の(E)離型剤(以下、(E)成分とも言う)としては、カルナウバワックス、ライスワックス等の植物系ワックス、蜜ろう、ラノリン等の動物系ワックス、モンタンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の石油系ワックス、ひまし油及びその誘導体、脂肪酸及びその誘導体等の油脂系ワックスが挙げられ、なかでも高級脂肪酸誘導体が好ましい。
【0026】
高級脂肪酸誘導体としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸等の高級脂肪酸と1価または2価以上のアルコールとのエステル、これら高級脂肪酸エステルを部分的に金属酸化物、例えばCa(OH)2、NaOH、Mg(OH)2、Zn(OH)2、LiOH、Al(OH)3を用いてケン化した部分ケン化エステル、高級脂肪酸と金属酸化物または金属水酸化物とから得られる完全ケン化物、高級脂肪酸、多価アルコールのエステルにつなぎ剤としてアジピン酸等のジカルボン酸を用いて縮合させた複合エステル、高級脂肪酸とモノアミンまたはジアミンから得られるモノまたはジアミド、が挙げられ、なかでも高級脂肪酸エステル部分ケン化エステル、高級脂肪酸エステルが好ましい。
【0027】
(E)成分の添加配合量は前記(A)〜(C)により構成される樹脂成分100重量部に対して、0.05〜3重量部が必要であり、0.1〜0.5重量部が好ましい。0.05重量部未満では射出成形時の成形ハイサイクル性が不足し、3重量部をこえると射出成形時のガス発生量が増加するため好ましくない。
【0028】
本発明のポリエステル系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、強化材、充填剤、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤などの通常の添加剤および少量の他種ポリマーを添加することができる。
【0029】
強化材、充填剤の例としては、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、岩綿、炭酸カルシウム、ケイ砂、ベントナイト、カオリン、クレー、ワラステナイト、硫酸バリウム、ガラスビーズ、マイカ等が挙げられる。
【0030】
酸化防止剤の例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系化合物、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート等のイオウ系化合物、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系化合物等が挙げられる。
【0031】
安定剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを含むベンゾトリアゾール系化合物、ならびに2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンのようなベンゾフェノン系化合物、モノまたはジステアリルホスフェート、トリメチルホスフェートなどのリン酸エステルなどを挙げることができる。
【0032】
これらの各種添加剤は、2種以上を組み合わせることによって相乗的な効果が得られることがあるので、併用して使用してもよい。
【0033】
なお、例えば酸化防止剤として例示した添加剤は、安定剤や紫外線吸収剤として作用することもある。また、安定剤として例示したものについても酸化防止作用や紫外線吸収作用のあるものがある。すなわち前記分類は便宜的なものであり、作用を限定したものではない。
【0034】
本発明のポリエステル系樹脂組成物の製造方法については通常知られている方法で実施すればよく、特に限定する必要はない。代表例として、単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーあるいはミキシングロールなど、公知の溶融混合機を用いて、200〜350℃の温度で溶融混練する方法を挙げることができる。各成分は、予め一括して混合しておき、それから溶融混練してもよい。あるいは(A)〜(E)成分の合計量100重量部に対し、例えば1重量部以下であるような少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加することもできる。なお、各成分に付着している水分は少ない方がよく、予め事前乾燥しておくことが望ましいが、必ずしも全ての成分を乾燥させる必要がある訳ではない。
【0035】
好ましい製造方法の例としては、シリンダ温度230〜300℃の2軸押出機を用い、(A)〜(E)成分およびその他の添加物を配合した原料を該押出機に供給して混練する方法が挙げられる。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形、真空成形など一般に熱可塑性樹脂の公知の成形方法により成形されるが、なかでも射出成形が好ましい。
【0037】
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、寸法安定性、靱性、射出成形時の成形ハイサイクル性に優れ、かつ、機械的強度に優れた樹脂組成物であり、かかる特性を活かして、電気、電子部品、電装部品(コネクター材料)などに使用することができる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0039】
実施例および比較例に使用した配合組成物を示す。
【0040】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂 固有粘度0.85。
【0041】
(B)(B−1)アクリロニトリル/(B−2)スチレン/(B−3)グリシジルメタクリレート共重合体
各成分の重量比は30/69.5/0.5重量部。固有粘度0.62。
【0042】
(C)(C−1)アクリロニトリル/(C−2)スチレン共重合体
各成分の重量比は30/70重量部。固有粘度0.53。
【0043】
(D)結晶核剤:タルク(竹原化学工業社製 ハイトロン)。
【0044】
(E)離型剤:モンタン酸部分ケン化エステルワックス(クラリアントジャパン社製 リコワックスOP)。
【0045】
・グラフトゴム強化重合体:乳化重合によって得られたABS樹脂
ポリブタジエン60重量部、アクリロニトリル27重量部、スチレン73重量部、
グラフト率 35%、固有粘度 0.35。
【0046】
実施例および比較例の評価方法を次に示す。
(1)寸法安定性の評価
上端にフィルムゲートを配した80mm×80mm×1mm厚の角板成形品をシリンダ温度260℃、金型温度80℃の条件で成形した。
【0047】
角板のゲートを上端として、上端から1mm下の部分の幅と最終充填部を下端として、1mm上の部分の幅の寸法を比較した後、80℃で100時間アニール処理を行い、再度同じ箇所の寸法を比較し、4寸法中の最大寸法と最小寸法の差を寸法安定性の指標とした。
【0048】
(2)成形ハイサイクル性の評価
自動車用の電気・電子機器回路接続に用いる防水タイプコネクタハウジング成形品をシリンダ温度260℃、金型温度80℃の条件で成形した。その際に冷却時間を1秒毎に短縮し、成形品に変形のない状態で成形可能な最も短い冷却時間を確認し、冷却時間が5秒以下について○、6秒以上について×として、成形ハイサイクル性の指標とした。
【0049】
(3)機械的強度の評価−1(曲げ弾性率)
ASTM D790に準拠する方法で評価を行なった。試験片は厚さ3.2mmのものを用い、その成形条件はシリンダ温度260℃、金型温度80℃である。
【0050】
(4)機械的強度の評価−2(引張強度)
ASTM4号タイプのテストピースをシリンダ温度280℃、金型温度40℃の条件で成形し試料に用いた。ASTM D638に準拠し引張強度を求めた。
【0051】
(5)靱性の評価(引張伸度)
ASTM4号タイプのテストピースをシリンダ温度280℃、金型温度40℃の条件で成形し試料に用いた。ASTM D638に準拠し引張伸度を求めた。
【0052】
実施例1〜6
(A)成分から(E)成分を表1に示す組合せで配合した。
【0053】
各実施例に記載した材料の製造方法は次の通りである。すなわち、シリンダ温度250℃に設定したスクリュー径57mmφの2軸押出機を用いて製造した。(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体、(C)ビニル系共重合体、(D)結晶核剤、(E)離型剤並びにその他添加剤全てを元込め部から供給して溶融混練を行い、ダイスから吐出されたストランドを冷却バス内で冷却した後、ストランドカッターにてペレット化した。得られた各材料は、130℃の熱風乾燥機で3時間以上乾燥した後、前記評価方法記載の方法を用いて成形し、評価を行なった。その結果を表1に併記した。得られた組成物は何れも、高い寸法安定性、機械的強度、優れた成形ハイサイクル性を有する材料であった。
【0054】
比較例1〜6
比較例の配合処方並びに評価結果を、表2に示す。
【0055】
比較例1
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂85重量部に(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体5.0重量部、(C)ビニル系共重合体5.0重量部、グラフトゴム強化重合体 5.0重量部とからなる樹脂成分100重量部に(D)結晶核剤0.0025重量部、(E)離型剤0.4重量部を加え、実施例と同じ方法で製造かつ評価した結果、寸法安定性は良好なものの、成形ハイサイクル性が不十分であった。
【0056】
比較例2
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に(D)結晶核剤0.0025重量部、(E)離型剤0.4重量部を加え、同様に製造かつ評価した。その結果、成形ハイサイクル性は良好なものの、寸法安定性が不十分であった。
【0057】
比較例3
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に(E)離型剤0.4重量部を加え、実施例と同じ方法で製造かつ評価した結果、寸法安定性、成形ハイサイクル性ともに不十分なものであった。
【0058】
比較例4
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂85重量部に(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体5重量部、(C)ビニル系共共重合体10重量部とからなる樹脂成分100重量部に(E)離型剤0.4重量部を加え、実施例と同じ方法で製造かつ評価した。寸法安定性、機械的特性に問題はなかったが、成形ハイサイクル性が不十分であった。
【0059】
比較例5
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂50重量部に(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体15重量部、(C)ビニル系共重合体30重量部とからなる樹脂成分100重量部に(D)結晶核剤0.3重量部、(E)離型剤0.4重量部を加え、実施例と同じ方法で製造かつ評価した。寸法安定性、機械的特性に問題はなかったが、成形ハイサイクル性が不十分であった。
【0060】
比較例6
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体0.5重量部とからなる樹脂成分100重量部に(D)結晶核剤0.0025重量部、(E)離型剤0.4重量部を加え、実施例と同じ方法で製造かつ評価した。その結果、成形ハイサイクル性は良好なものの、寸法安定性が不十分であった。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【発明の効果】
上述したように、本発明のポリエステル系樹脂組成物は、寸法安定性と成形ハイサイクル性に優れ、かつ機械的強度に優れた樹脂組成物であり、かかる特性を活かして、電気、電子部品、電装部品(コネクタ材料)などの用途に有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル系樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、寸法安定性、靱性、射出成形時の成形ハイサイクル性に優れ、かつ、機械的強度に優れたポリエステル系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリエステル樹脂、中でもポリブチレンテレフタレート樹脂は、優れた耐熱性、成形性、耐薬品性及び電気絶縁性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有していることから、射出成形用を中心として各種自動車部品、電気部品、機械部品及び建設部品などの用途に使用されている。
【0003】
しかしながら、熱可塑性ポリエステル樹脂単体では衝撃強度が低いこと、射出成形時の成形収縮率が大きく、寸法安定性が不十分であることなどの欠点を有することからそれらの改善が望まれている。そこで、熱可塑性ポリエステル樹脂の耐衝撃性、寸法安定性を改善する目的で、ABS樹脂、AS樹脂等を配合する方法が知られている。
【0004】
このようなポリブチレンテレフタレート樹脂とABS樹脂、AS樹脂を配合してなる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、例えば特開平4−345653号公報に記載されているように、ABS樹脂等のグラフトゴム強化重合体とグリシジルエステル基含有ビニル系重合体を配合することにより、機械的物性、耐熱性、成形性に加え、耐屈曲性(ヒンジ特性)に優れる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が提案されている。
【0005】
また、特開平9−176435号公報では、ABS樹脂等のゴム強化スチレン系樹脂とエポキシ基含有スチレン系ブロック共重合体を配合してなる樹脂組成物が開示されている。この公報によれば、この樹脂組成物は、機械的特性、特に耐衝撃性とウェルド特性に優れているとされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の方法で得られる樹脂組成物はゴム成分が含まれているため、樹脂の固化が遅くなり、射出成形時の成形ハイサイクル性に支障をきたし、また耐熱性や剛性が損なわれるという問題点を有している。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、このように寸法安定性と射出成形時の成形ハイサイクル性を両立させるために鋭意検討した結果、熱可塑性ポリエステルに、特定のエポキシ基含有ビニル系共重合体と特定のビニル系共重合体を、ゴム成分の総量を一定量以下にしつつ特定の割合で配合し、結晶核剤と離型剤を添加することにより、寸法安定性、靱性、射出成形時の成形ハイサイクル性に優れ、かつ、機械的強度に優れる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を提供し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
(1)(A)熱可塑性ポリエステル樹脂60〜95重量部、(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体4.5〜20重量部、(C)ビニル系共重合体0.5〜20重量部より構成される樹脂成分100重量部に対して、(D)結晶核剤0.001重量部〜1重量部、(E)離型剤0.05〜3重量部を配合して得られるポリエステル系樹脂組成物であって、(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体が、(B−1)シアン化ビニル単量体、(B−2)芳香族ビニル単量体、(B−3)エポキシ基含有ビニル単量体を主要成分として重合して得られる共重合体であり、(C)ビニル系共重合体が(C−1)シアン化ビニル単量体、(C−2)芳香族ビニル単量体を主要成分として重合して得られる共重合体であり、かつ、(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体、(C)ビニル系共重合体に含有されるゴム成分の総量が、前記樹脂成分100重量部に対して1重量部以下であることを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
【0009】
(2)(A)熱可塑性ポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする(1)に記載のポリエステル系樹脂組成物。
により構成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。本発明の(A)熱可塑性ポリエステル樹脂(以下、(A)成分とも言う)とは、テレフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸などから選ばれた少なくとも1種の酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールあるいはポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコールなどから選ばれた少なくとも1種のジオール成分との重縮合によって得られるものであり、具体的にはポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリヘキシレンテレフタレート(PHT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリシクロヘキサン―1,4―ジメチロールテレフタレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート・テレフタレート(PET/I)、ポリブチレンイソフタレート・イソフタレート(PET/I)などのような共重合ポリエステルなどを挙げることができる。
【0011】
(A)成分の粘度は溶融混練が可能であれば特に制限はないが、通常、o−クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度は0.65〜1.40であることが好ましい。より好ましい固有粘度の範囲は0.70〜1.10であり、さらに好ましくは0.75〜0.90である。(A)成分が2種以上の成分からなる場合には、成分比率が変わらないよう、粉砕後もしくはペレット状のままo−クロロフェノール溶液を調整し、粘度測定した結果が前記粘度条件内にあればよい。
【0012】
(A)成分の添加配合量は、(A)成分と(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体(以下、(B)成分とも言う)、(C)ビニル系共重合体(以下、(C)成分とも言う)、の3成分の合計を100重量部としたとき、60〜95重量部であり、好ましくは80〜90重量部である。(A)成分の添加配合量が60重量部未満であると相対的に(B)〜(C)成分含有量が増加し過ぎて射出成形時のハイサイクル性が低下し、95重量部を超えると(B)〜(C)成分の含有量が相対的に低下し過ぎるため、寸法安定性が低下する。
【0013】
本発明で用いられる(B)成分における(B−1)シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリルなどが挙げられ、なかでもアクリロニトリルが好ましい。
【0014】
また、(B−2)芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどが挙げられ、なかでもスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0015】
さらに、(B−3)エポキシ基含有ビニル単量体としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルエタクリレートなどが挙げられ、なかでもグリシジルメタクリレートが好ましい。
【0016】
なお(B)成分中の(B−3)エポキシ基含有ビニル単量体の共重合量は0.05〜20重量部、特に0.1〜10重量部が適当であり、0.05重量部未満では、機械的特性、特に靱性が損なわれ、20重量部を越えると流動性が損なわれるため好ましくない。
【0017】
(B)成分の添加配合量は、4.5〜20重量部、特に5〜12.5重量部が好ましく、4.5重量部未満では寸法安定性の改良効果が乏しく、20重量部を越えると成形性が損なわれるため好ましくない。
【0018】
本発明で用いられる(C)成分における(C−1)シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリルなどが挙げられ、なかでもアクリロニトリルが好ましい。
【0019】
また、(C−2)芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどが挙げられ、なかでもスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0020】
(C)成分の添加配合量は、0.5〜20重量部、特に5〜7.5重量部が好ましく、0.5重量部未満では寸法安定性の改良効果が乏しく、20重量部を越えると、成形性、靱性、耐衝撃性が損なわれるため好ましくない。
【0021】
本発明で用いられる(B)成分、および(C)成分に含有されるゴム成分の総量は、前記(A)〜(C)により構成される樹脂成分100重量部に対して1重量部以下であることが必要である。ここで1重量部以下とは、ゴム成分が皆無であることも含んでおり、この場合が最も好ましい態様となるが、本発明の目的であるところの、樹脂の固化を速くし、射出成形時の成形ハイサイクル性を向上させ、かつ安定した耐熱性や剛性を維持することができるという効果を発現させる観点からは1重量部以下であることが必要である、ということを意味する。
【0022】
本発明で言うゴム成分とは主として共役ジオレフィンを意味するが、ゴム成分が本来有する性質を備えたものであれば、他の成分を含んでいても良くその種類は問わない。
【0023】
本発明の(D)結晶核剤(以下、(D)成分とも言う)としては、有機物、無機物の何れも使用することができる。無機物としては、タルク、Zn粉末、Al粉末などの単体や、窒化アルミ、窒化チタン、ボロンナイトライドなど窒化物を単独、または2種以上混合して使用することができる。又、有機物としては、シュウ酸カルシウム、シュウ酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、フタル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリアクリル酸塩などの有機塩類、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の高分子、高分子の架橋物などを単独又は2種以上混合して使用することができ、特に好ましいものはタルクである。
【0024】
(D)成分の添加配合量は前記(A)〜(C)により構成される樹脂成分100重量部に対して、0.001〜1重量部が必要であり、0.005〜0.3重量部が好ましい。0.001重量部未満では射出成形時の成形ハイサイクル性が不足し、1重量部をこえると寸法安定性が低下するため好ましくない。
【0025】
本発明の(E)離型剤(以下、(E)成分とも言う)としては、カルナウバワックス、ライスワックス等の植物系ワックス、蜜ろう、ラノリン等の動物系ワックス、モンタンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の石油系ワックス、ひまし油及びその誘導体、脂肪酸及びその誘導体等の油脂系ワックスが挙げられ、なかでも高級脂肪酸誘導体が好ましい。
【0026】
高級脂肪酸誘導体としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸等の高級脂肪酸と1価または2価以上のアルコールとのエステル、これら高級脂肪酸エステルを部分的に金属酸化物、例えばCa(OH)2、NaOH、Mg(OH)2、Zn(OH)2、LiOH、Al(OH)3を用いてケン化した部分ケン化エステル、高級脂肪酸と金属酸化物または金属水酸化物とから得られる完全ケン化物、高級脂肪酸、多価アルコールのエステルにつなぎ剤としてアジピン酸等のジカルボン酸を用いて縮合させた複合エステル、高級脂肪酸とモノアミンまたはジアミンから得られるモノまたはジアミド、が挙げられ、なかでも高級脂肪酸エステル部分ケン化エステル、高級脂肪酸エステルが好ましい。
【0027】
(E)成分の添加配合量は前記(A)〜(C)により構成される樹脂成分100重量部に対して、0.05〜3重量部が必要であり、0.1〜0.5重量部が好ましい。0.05重量部未満では射出成形時の成形ハイサイクル性が不足し、3重量部をこえると射出成形時のガス発生量が増加するため好ましくない。
【0028】
本発明のポリエステル系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、強化材、充填剤、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤などの通常の添加剤および少量の他種ポリマーを添加することができる。
【0029】
強化材、充填剤の例としては、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、岩綿、炭酸カルシウム、ケイ砂、ベントナイト、カオリン、クレー、ワラステナイト、硫酸バリウム、ガラスビーズ、マイカ等が挙げられる。
【0030】
酸化防止剤の例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系化合物、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート等のイオウ系化合物、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系化合物等が挙げられる。
【0031】
安定剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを含むベンゾトリアゾール系化合物、ならびに2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンのようなベンゾフェノン系化合物、モノまたはジステアリルホスフェート、トリメチルホスフェートなどのリン酸エステルなどを挙げることができる。
【0032】
これらの各種添加剤は、2種以上を組み合わせることによって相乗的な効果が得られることがあるので、併用して使用してもよい。
【0033】
なお、例えば酸化防止剤として例示した添加剤は、安定剤や紫外線吸収剤として作用することもある。また、安定剤として例示したものについても酸化防止作用や紫外線吸収作用のあるものがある。すなわち前記分類は便宜的なものであり、作用を限定したものではない。
【0034】
本発明のポリエステル系樹脂組成物の製造方法については通常知られている方法で実施すればよく、特に限定する必要はない。代表例として、単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーあるいはミキシングロールなど、公知の溶融混合機を用いて、200〜350℃の温度で溶融混練する方法を挙げることができる。各成分は、予め一括して混合しておき、それから溶融混練してもよい。あるいは(A)〜(E)成分の合計量100重量部に対し、例えば1重量部以下であるような少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加することもできる。なお、各成分に付着している水分は少ない方がよく、予め事前乾燥しておくことが望ましいが、必ずしも全ての成分を乾燥させる必要がある訳ではない。
【0035】
好ましい製造方法の例としては、シリンダ温度230〜300℃の2軸押出機を用い、(A)〜(E)成分およびその他の添加物を配合した原料を該押出機に供給して混練する方法が挙げられる。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形、真空成形など一般に熱可塑性樹脂の公知の成形方法により成形されるが、なかでも射出成形が好ましい。
【0037】
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、寸法安定性、靱性、射出成形時の成形ハイサイクル性に優れ、かつ、機械的強度に優れた樹脂組成物であり、かかる特性を活かして、電気、電子部品、電装部品(コネクター材料)などに使用することができる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0039】
実施例および比較例に使用した配合組成物を示す。
【0040】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂 固有粘度0.85。
【0041】
(B)(B−1)アクリロニトリル/(B−2)スチレン/(B−3)グリシジルメタクリレート共重合体
各成分の重量比は30/69.5/0.5重量部。固有粘度0.62。
【0042】
(C)(C−1)アクリロニトリル/(C−2)スチレン共重合体
各成分の重量比は30/70重量部。固有粘度0.53。
【0043】
(D)結晶核剤:タルク(竹原化学工業社製 ハイトロン)。
【0044】
(E)離型剤:モンタン酸部分ケン化エステルワックス(クラリアントジャパン社製 リコワックスOP)。
【0045】
・グラフトゴム強化重合体:乳化重合によって得られたABS樹脂
ポリブタジエン60重量部、アクリロニトリル27重量部、スチレン73重量部、
グラフト率 35%、固有粘度 0.35。
【0046】
実施例および比較例の評価方法を次に示す。
(1)寸法安定性の評価
上端にフィルムゲートを配した80mm×80mm×1mm厚の角板成形品をシリンダ温度260℃、金型温度80℃の条件で成形した。
【0047】
角板のゲートを上端として、上端から1mm下の部分の幅と最終充填部を下端として、1mm上の部分の幅の寸法を比較した後、80℃で100時間アニール処理を行い、再度同じ箇所の寸法を比較し、4寸法中の最大寸法と最小寸法の差を寸法安定性の指標とした。
【0048】
(2)成形ハイサイクル性の評価
自動車用の電気・電子機器回路接続に用いる防水タイプコネクタハウジング成形品をシリンダ温度260℃、金型温度80℃の条件で成形した。その際に冷却時間を1秒毎に短縮し、成形品に変形のない状態で成形可能な最も短い冷却時間を確認し、冷却時間が5秒以下について○、6秒以上について×として、成形ハイサイクル性の指標とした。
【0049】
(3)機械的強度の評価−1(曲げ弾性率)
ASTM D790に準拠する方法で評価を行なった。試験片は厚さ3.2mmのものを用い、その成形条件はシリンダ温度260℃、金型温度80℃である。
【0050】
(4)機械的強度の評価−2(引張強度)
ASTM4号タイプのテストピースをシリンダ温度280℃、金型温度40℃の条件で成形し試料に用いた。ASTM D638に準拠し引張強度を求めた。
【0051】
(5)靱性の評価(引張伸度)
ASTM4号タイプのテストピースをシリンダ温度280℃、金型温度40℃の条件で成形し試料に用いた。ASTM D638に準拠し引張伸度を求めた。
【0052】
実施例1〜6
(A)成分から(E)成分を表1に示す組合せで配合した。
【0053】
各実施例に記載した材料の製造方法は次の通りである。すなわち、シリンダ温度250℃に設定したスクリュー径57mmφの2軸押出機を用いて製造した。(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体、(C)ビニル系共重合体、(D)結晶核剤、(E)離型剤並びにその他添加剤全てを元込め部から供給して溶融混練を行い、ダイスから吐出されたストランドを冷却バス内で冷却した後、ストランドカッターにてペレット化した。得られた各材料は、130℃の熱風乾燥機で3時間以上乾燥した後、前記評価方法記載の方法を用いて成形し、評価を行なった。その結果を表1に併記した。得られた組成物は何れも、高い寸法安定性、機械的強度、優れた成形ハイサイクル性を有する材料であった。
【0054】
比較例1〜6
比較例の配合処方並びに評価結果を、表2に示す。
【0055】
比較例1
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂85重量部に(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体5.0重量部、(C)ビニル系共重合体5.0重量部、グラフトゴム強化重合体 5.0重量部とからなる樹脂成分100重量部に(D)結晶核剤0.0025重量部、(E)離型剤0.4重量部を加え、実施例と同じ方法で製造かつ評価した結果、寸法安定性は良好なものの、成形ハイサイクル性が不十分であった。
【0056】
比較例2
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に(D)結晶核剤0.0025重量部、(E)離型剤0.4重量部を加え、同様に製造かつ評価した。その結果、成形ハイサイクル性は良好なものの、寸法安定性が不十分であった。
【0057】
比較例3
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に(E)離型剤0.4重量部を加え、実施例と同じ方法で製造かつ評価した結果、寸法安定性、成形ハイサイクル性ともに不十分なものであった。
【0058】
比較例4
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂85重量部に(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体5重量部、(C)ビニル系共共重合体10重量部とからなる樹脂成分100重量部に(E)離型剤0.4重量部を加え、実施例と同じ方法で製造かつ評価した。寸法安定性、機械的特性に問題はなかったが、成形ハイサイクル性が不十分であった。
【0059】
比較例5
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂50重量部に(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体15重量部、(C)ビニル系共重合体30重量部とからなる樹脂成分100重量部に(D)結晶核剤0.3重量部、(E)離型剤0.4重量部を加え、実施例と同じ方法で製造かつ評価した。寸法安定性、機械的特性に問題はなかったが、成形ハイサイクル性が不十分であった。
【0060】
比較例6
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体0.5重量部とからなる樹脂成分100重量部に(D)結晶核剤0.0025重量部、(E)離型剤0.4重量部を加え、実施例と同じ方法で製造かつ評価した。その結果、成形ハイサイクル性は良好なものの、寸法安定性が不十分であった。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【発明の効果】
上述したように、本発明のポリエステル系樹脂組成物は、寸法安定性と成形ハイサイクル性に優れ、かつ機械的強度に優れた樹脂組成物であり、かかる特性を活かして、電気、電子部品、電装部品(コネクタ材料)などの用途に有用である。
Claims (2)
- (A)熱可塑性ポリエステル樹脂60〜95重量部、(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体4.5〜20重量部、(C)ビニル系共重合体0.5〜20重量部より構成される樹脂成分100重量部に対して、(D)結晶核剤0.001重量部〜1重量部、(E)離型剤0.05〜3重量部を配合して得られるポリエステル系樹脂組成物であって、(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体が、(B−1)シアン化ビニル単量体、(B−2)芳香族ビニル単量体、(B−3)エポキシ基含有ビニル単量体を主要成分として重合して得られる共重合体であり、(C)ビニル系共重合体が(C−1)シアン化ビニル単量体、(C−2)芳香族ビニル単量体を主要成分として重合して得られる共重合体であり、かつ、(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体、(C)ビニル系共重合体に含有されるゴム成分の総量が、前記(A)〜(C)により構成される樹脂成分100重量部に対して1重量部以下であることを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
- (A)熱可塑性ポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系樹脂組成物。
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