JP2017155147A - ポリエステル系樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い機械的強度や低い収縮率を維持しながら、低いアウトガス量で、金型付着物が極めて少なく、離型性も良好で、蒸着表面の外観が良好で、さらに蒸着表面の耐熱性も良好なポリエステル系樹脂組成物を提供する。【解決手段】熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)1〜20質量部及びエポキシ基含有単量体とスチレン系単量体との共重合体(C)0.01〜1質量部を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステル系樹脂組成物に関し、詳しくは、高い機械的強度や低い収縮率を維持しながら、成形時に低アウトガス量で金型付着物が極めて少なく、離型性も良好であり、また蒸着表面の外観が良好で、さらに蒸着表面の耐熱性にも優れるポリエステル系樹脂組成物に関する。
自動車等の車両用の内外装部品は、高強度及び優れた外観性状が要求され、また、コスト削減や省資源化等の目的で、薄肉化や小型化による軽量化が進んでいる。ポリブチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性ポリエステル樹脂は、それ自体で機械的特性、電気特性等が優れているほか、耐薬品性、耐熱性等も優れているので、自動車等の車両用の各種部品にも広く使用されている。
車両用部品の中でも、特に機械的特性や外観性状が必要とされる部品としては、例えば、自動車用ヘッドランプ等の灯体関連部品があり、リフレクターと並んで集光反射用機能を有するランプエクステンションと呼ばれる部材がある。ランプエクステンションは集光反射するための複雑な反射構造を有する通常2mm程度の薄肉成形品に、アルミニウム等の金属が蒸着される。
かかる灯体部品用途には、ポリブチレンテレフタレート樹脂に対し、タルクやマイカ等の無機フィラーを配合した強化系樹脂が耐熱性と外観に優れることから、広く用いられ、特にランプエクステンションにおいては、強化系ポリブチレンテレフタレート樹脂の成形体の表面にプライマー処理を施した上で、アルミ蒸着を行うことが主流になっている。通常、強化系ポリブチレンテレフタレート樹脂は、表面に微小な凹凸を有しており、強化系ポリブチレンテレフタレート樹脂からなる成形品に直接アルミ蒸着を行った場合、その凹凸で光が乱反射し、十分な集光反射効果を得られないことから、これらの成形品を使用する上において、プライマー処理は必須工程となっている。しかし、プライマー処理工程は製造コストアップに直結し、また、デザインの自由度も制限されるので、プライマーレスによる直接蒸着が望まれ、特許文献1では特定の平均径と特定のアスペクト比の板状無機充填材を使用してプライマーレスが可能との提案がなされている。
一般に、表面が平滑となる非強化系樹脂では、プライマー処理を省略することも可能であるが、2次収縮性、耐熱性、収縮率等の問題が発生する。特に近年、ランプエクステンションは複雑な形状が要求されるようになっており、収縮率の高い非強化系ポリブチレンテレフタレート樹脂では離型トラブルとなることも多い。
また、最近は自動車灯体部品等では、その大型化や部品点数削減により、樹脂組成物には高い流動性が求められており、樹脂の成形温度を高めて流動性を確保する方法が一般に行われる。
しかしながら、樹脂の成形温度を高めると成形時にアウトガス量が大きくなりやすくなる。しかもランプエクステンションは高度の光沢性を追求する部材であるため、成形時の金型密着度が高く、金型表面にはアウトガスに由来するモールドデポジットが付着しやすい。モールドデポジットは成形品表面に曇り状の外観不良を発生させ、高い外観意匠性が要求されるランプエクステンション用部品としては不合格となる。このため、かかる事態が発生すると、有機溶媒等で金型表面のモールドデポジットを除去する必要がある。この金型メンテナンス作業に伴い、連続成形が一時中断されることに加え、作業再開前にはシリンダー内に滞留していた溶融樹脂をパージする必要があることから、生産効率を著しく低下させてしまうことになる。
特開2006−225440号公報
いかにメンテナンスフリーで連続成形が可能かは、自動車用灯体用部品等の製造にとって極めて重要な課題である。
本発明の目的(課題)は、高い機械的強度や低い収縮率を維持しながら、低アウトガス性を有し、金型付着物が極めて少なく、プライマー処理なしでも蒸着表面の外観が良好で、さらに蒸着表面の耐熱性も良好なポリエステル系樹脂組成物を提供することにある。
本発明者は、上記した課題を解決するために鋭意検討した結果、熱可塑性ポリエステル系樹脂に、アクリロニトリル−スチレン系共重合体、及びエポキシ基含有単量体とスチレン系単量体との共重合体を特定量で配合することにより、上記した問題が解決され、高い機械的強度や低い収縮率を維持しながら、アウトガス量が低く金型付着物が極めて少なく、プライマー処理なしでも表面外観が良好な蒸着製品が得られ、さらに蒸着表面の耐熱性も良好なポリエステル樹脂材料が得られることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、以下のポリエステル系樹脂組成物及び車両灯体用部品に関する。
[1]熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)1〜20質量部及びエポキシ基含有単量体とスチレン系単量体との共重合体(C)0.01〜1質量部を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
[2]共重合体(C)が、グリシジル(メタ)アクリレート−スチレン系共重合体である上記[1]に記載のポリエステル系樹脂組成物。
[3]上記[1]または[2]に記載のポリエステル系樹脂組成物からなる車両灯体用部品。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、高い機械的強度や低い収縮率を維持しながら、低アウトガスで、金型付着物が極めて少なく、離型性も良好あり、蒸着表面の外観が良好で、さらに蒸着表面の耐熱性も良好である。
特に、これを射出成形してなる射出成形品や光反射体基体は、プライマー処理なしで直接アルミ蒸着が可能であり、アルミ蒸着して得られた光反射体は外観が極めて良好であり、高温使用下でも曇りの発生が抑制され、自動車等の車両用灯体、特にランプエクステンション等として好適に使用できる。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)1〜20質量部及びエポキシ基含有単量体とスチレン系単量体との共重合体(C)0.01〜1質量部を含有することを特徴とする。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下に記載する説明は実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
[熱可塑性ポリエステル(A)]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を含有する。
熱可塑性ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物の重縮合、オキシカルボン酸化合物の重縮合あるいはこれらの化合物の重縮合等によって得られるポリエステルであり、ホモポリエステル、コポリエステルの何れであってもよい。
熱可塑性ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体が好ましく使用される。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルイソプロピリデン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、アントラセン−2,5−ジカルボン酸、アントラセン−2,6−ジカルボン酸、p−ターフェニレン−4,4’−ジカルボン酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸等が挙げられ、テレフタル酸が好ましく使用できる。
これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上を混合して使用しても良い。これらは周知のように、遊離酸以外にジメチルエステル等をエステル形成性誘導体として重縮合反応に用いることができる。
なお、少量であればこれらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸を1種以上混合して使用することができる。
熱可塑性ポリエステル樹脂を構成するジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、へキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等の脂環式ジオール等、およびそれらの混合物等が挙げられる。なお、少量であれば、分子量400〜6,000の長鎖ジオール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合せしめてもよい。
また、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオールも用いることができる。
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)としては、通常は主としてジカルボン酸とジオールとの重縮合からなるもの、即ち樹脂全体の50質量%、好ましくは70質量%以上がこの重縮合物からなるものを用いる。ジカルボン酸としては芳香族カルボン酸が好ましく、ジオールとしては脂肪族ジオールが好ましい。
なかでも好ましいのは、酸成分の95モル%以上がテレフタル酸であり、アルコール成分の95質量%以上が脂肪族ジオールであるポリアルキレンテレフタレートである。その代表的なものはポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートである。これらはホモポリエステルに近いもの、即ち樹脂全体の95質量%以上が、テレフタル酸成分及び1,4−ブタンジオール又はエチレングリコール成分からなるものであるのが好ましい。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の固有粘度は、0.3〜2dl/gであるものが好ましい。成形性及び機械的特性の点からして、0.5〜1.5dl/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましい。固有粘度が0.3dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物が機械的強度の低いものとなりやすく、2dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化したりしやすい。
なお、本発明において、熱可塑性ポリエステル樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。50eq/tonを超えると、樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しやすくなる。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、通常、10eq/tonである。
末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
なお、本発明において、熱可塑性ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリエステル樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。
中でも、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンテレフタレート樹脂を含むものであることが好ましく、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)中の50質量%以上がポリブチレンテレフタレート樹脂であることがより好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分またはこれらのエステル誘導体と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式または通続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレクタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下または減圧下固相重合させることにより、重合度(または分子量)を所望の値まで高めることもできる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法が好ましい。
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物などを挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどのチタンアルコラート、テトラフェニルチタネートなどのチタンフェノラートなどを挙げることができる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.5〜2dl/gであるものが好ましい。成形性及び機械的特性の点からして、0.6〜1.5dl/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましい。固有粘度が0.5dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物が機械的強度の低いものとなりやすい。また2dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化しやすい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。50eq/tonを超えると、樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しやすくなる。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、10eq/tonである。
末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
また、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、全構成繰り返し単位に対するテレフタル酸及びエチレングリコールからなるオキシエチレンオキシテレフタロイル単位を主たる構成単位とする樹脂であり、オキシエチレンオキシテレフタロイル単位以外の構成繰り返し単位を含んでいてもよい。ポリエチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸又はその低級アルキルエステルとエチレングリコールとを主たる原料として製造されるが、他の酸成分及び/又は他のグリコール成分を併せて原料として用いてもよい。
テレフタル酸以外の酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸及びこれらの構造異性体、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸及びその誘導体、p−ヒドロキシ安息香酸、グリコール酸等のオキシ酸又はその誘導体が挙げられる。
また、エチレングリコール以外のジオール成分としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族ジヒドロキシ化合物誘導体等が挙げられる。
ポリエチレンテレフタレート樹脂は、分岐成分、例えばトリカルバリル酸、トリメリシン酸、トリメリット酸等の如き三官能、もしくはピロメリット酸の如き四官能のエステル形性能を有する酸またはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等の如き三官能もしくは四官能のエステル形成能を有するアルコールを1.0モル%以下、好ましくは0.5モル%以下、更に好ましくは0.3モル%以下を共重合せしめたものであってもよい。
ポリエチレンテレフタレート樹脂の極限粘度は、好ましくは0.3〜1.5dl/g、さらに好ましくは0.3〜1.2dl/g、特に好ましくは0.4〜0.8dl/gである。
また、ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基の濃度は、3〜50eq/ton、中でも5〜40eq/ton、更には10〜30eq/tonであることが好ましい。末端カルボキシル基濃度を50eq/ton以下とすることで、樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しにくくなり、機械的特性が向上する傾向にあり、逆に末端カルボキシル基濃度を3eq/ton以上とすることで、耐熱性、滞留熱安定性や色相が向上する傾向にあり、好ましい。
末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂を併せて含有することも好ましい。特にポリブチレンテレフタレート樹脂にポリエチレンテレフタレート樹脂を特定量含有することにより、収縮率を低くすることができ、光沢性等の表面外観特性をより向上させることができるので好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂とを含有する場合の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量%に対して、ポリエチレンテレフタレート樹脂が、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは10〜45質量%であり、さらに好ましくは15〜40質量%である。ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量が50質量%を超えると、成形性が著しく低下する場合があり好ましくない。
[アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)を含有する。アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)は、アクリロニトリルとスチレン系単量体との共重合体であり、さらに他の共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。
アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)を構成するスチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレンなどが挙げられ、スチレン、α−メチルスチレンがより好ましく、特にスチレンが好ましい。
スチレン系単量体とアクリロニトリル以外の他の共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体や、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸およびその無水物が挙げらえる。
これらの中では(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましく挙げられ、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、特にメチルメタアクリレートを挙げることができる。
なお、(メタ)アクリレートの表記はメタクリレートおよびアクリレートのいずれをも含むことを示し、(メタ)アクリル酸エステルの表記はメタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルのいずれをも含むことを示す。
アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)を製造する方法は、特に制限はなく公知の方法が採用でき、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、塊状懸濁重合、乳化重合等の方法が用いられる。また、別々に重合ないし共重合した樹脂をブレンドすることによって得ることも可能である。
アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)中のスチレン系単量体の含有率は、50〜95質量%が好ましく、65〜92質量%がより好ましい。
また、アクリロニトリル−スチレン系共重合体の分子量を反映するメルトフローレート(MFR)としては、220℃、荷重10kgで5〜50g/10分の範囲にあることが好ましく、10〜30g/10分がより好ましい。
アクリロニトリル−スチレン系共重合体は、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)またはアクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(SAN)として市販されているものを広く採用することもできる。特にアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)が好ましい。
アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)の好ましい含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、1〜20質量部である。含有量が1質量部未満では良好な成形品外観が得られず、また耐熱蒸着試験にて曇りを生じることとなり、20質量部を超えると耐熱性が低下することに加え、ウェルド強度の低下により、離型時にクラック等を生じやすくなる。アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)の含有量は、好ましくは2質量部以上であり、より好ましくは3質量部以上であり、好ましくは18質量部以下であり、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは12質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。
[エポキシ基含有単量体とスチレン系単量体との共重合体(C)]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、エポキシ基含有単量体とスチレン系単量体との共重合体(C)を含有する。共重合体(C)は、エポキシ基含有単量体とスチレン系単量体との共重合体であり、さらに他の共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。
エポキシ基含有単量体とスチレン系単量体との共重合体(C)を構成するスチレン系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル等が挙げられ、好ましくはグリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレートであり、特に好ましくはグリシジルメタアクリレートである。
スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレンなどが挙げられ、スチレン、α−メチルスチレンがより好ましく、特にスチレンが好ましい。
他の共重合可能な単量体としては、アクリル系単量体が好ましく、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが特に好ましい。
共重合体(C)の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート−スチレン−メチル(メタ)アクリレート等が特に好ましい。
共重合体(C)のエポキシ価は、100〜1,000当量/モルであることが好ましく、より好ましくは150〜800当量/モルである。
また、共重合体(C)の質量平均分子量(Mw)は、100〜15,000であることが好ましく、より好ましくは200〜12,000、さらに好ましくは200〜10,000である。
エポキシ基含有単量体とスチレン系単量体との共重合体(C)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜1質量部である。0.01質量部を下回るとアウトガス抑制効果が不十分となり、1質量部を超えると粘度が著しく上昇し、成形性が損なわれることとなる。共重合体(C)の好ましい含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0.03質量部以上であり、より好ましく0.05質量部以上、さらに好ましくは0.08質量部以上であり、また、好ましく0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下である。
[無機充填材]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、無機充填材を含有することが好ましい。
無機充填材としては、具体的には例えば、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、硫酸バリウム、ケイ酸ジルコニウム、クレー、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム等が挙げられるが、好ましくは、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、硫酸バリウム、ケイ酸ジルコニウムであり、より好ましくは炭酸カルシウム、タルクであり、炭酸カルシウムが特に好ましい。
無機充填材は単独で、又は2種以上を任意の割合で併用してもよい。また無機充填材は、必要に応じて表面処理が施されていてもよい。
無機充填材の平均一次粒子径は2.5μm以下であることが好ましい。平均一次粒子径が、2.5μmを超えると、成形品の表面平滑性が低下しやすく、表面に直接、アルミニウム等の金属蒸着を施した際に外観が悪くなりやすい。平均一次粒子径は、2μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましく、なかでも0.5μm以下、特には0.4μm以下であることが好ましい。その下限は、通常0.01μmであり、0.05μmであることが好ましく、0.08μmであることがより好ましく、0.1μmであることが特に好ましい。
なお、本発明における無機充填材の平均一次粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定されるメジアン径D50をいい、具体的には島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100」を用いて測定される。
無機充填材の比重は、4g/cm以下であることが好ましく、3.5g/cm以下であることがより好ましく、3g/cm以下であることがさらに好ましい。なお、無機充填材の比重は、ヘリウムガス置換法に基づいた真比重計により測定される値をいう。
無機充填材は、樹脂との親和性向上のために、表面処理が施されていることも好ましい。表面処理剤としては、例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のアルコール類、トリエチルアミン等のアルカノールアミン、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、ポリエチレンワックス、流動パラフィン等の炭化水素系滑剤、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸、ポリグリセリン及びそれらの誘導体、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
無機充填材として最も好ましく用いられる炭酸カルシウムとしては、合成炭酸カルシウム、天然炭酸カルシウム、それらをケイ酸等又は有機酸等で表面処理して得られる表面処理炭酸カルシウム等が挙げられる。
合成炭酸カルシウムは、例えば、水酸化カルシウムを炭酸ガスと反応させることによって製造することができる。水酸化カルシウムは、例えば、酸化カルシウムを水と反応させることによって製造することができる。酸化カルシウムは、例えば、石灰石原石をコークスなどで焼成することによって製造することができる。この場合、焼成時に炭酸ガスが発生するので、この炭酸ガスを水酸化カルシウムと反応させることによって炭酸カルシウムを製造することができる。
天然炭酸カルシウムは、天然に産出する石灰石等の炭酸カルシウム原石を公知の方法で粉砕することにより得られるものである。炭酸カルシウム原石を粉砕する方法としては、ローラーミル、高速回転ミル(衝撃剪断ミル)、容器駆動媒体ミル(ボールミル)、媒体撹拌ミル、遊星ボールミル、ジェットミルなどで粉砕する方法が挙げられる。
炭酸カルシウムの平均一次粒子径は2.5μm以下であることが好ましく、0.01〜2μmであることがより好ましく、さらに好ましくは0.05〜1μm、中でも0.08〜0.5μm、特には0.1〜0.4μmであることが好ましい。このような平均一次粒子径の炭酸カルシウムを使用することにより、炭酸カルシウムの凝集が起こりにくく、アルミ蒸着後の拡散反射率にも優れる傾向となるため好ましい。
炭酸カルシウムの表面処理に使用されるケイ酸類は、炭酸カルシウムの表面にシリカを付着できるものであれば、特に限定されない。ケイ酸類としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸アルカリ金属塩等が挙げられる。
ケイ酸類は、例えば、ケイ酸アルカリをシリカヒドロゾルとし、これを表面処理に用いることができる。シリカヒドロゾルは、公知の方法により生成することができる。例えば、酸分解法によって、ケイ酸ナトリウムからシリカヒドロゾルを生成することができる。酸分解法としては、例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液に塩酸、硫酸などの無機酸、酢酸、アクリル酸等の有機酸、硫酸アルミニウム、炭酸ガス等の酸性物質を加えることによって、非晶質シリカヒドロゾルを生成する方法が挙げられる。さらに、半透膜にケイ酸ナトリウムを通してシリカヒドロゾルを生成する透析法によって生成することもできる。また、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法によってシリカヒドロゾルを生成することもできる。
炭酸カルシウムの表面処理に使用される有機酸類としては、脂肪酸、樹脂酸、リグニン類及びこれらの誘導体が挙げられる。有機酸類は、2種類以上を混合して用いてもよい。
脂肪酸としては、炭素数が6〜24の飽和または不飽和の脂肪酸が挙げられる。脂肪酸の炭素数は、10〜20であることが好ましい。炭素数が6〜24の飽和または不飽和の脂肪酸の具体例としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸等が挙げられる。特に、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸が好ましい。
脂肪酸の誘導体としては、脂肪酸の塩、脂肪酸のエステル等が挙げられる。脂肪酸の塩としては、例えば、上記炭素数が6〜24の飽和又は不飽和の脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。脂肪酸の塩の炭素数は、10〜20であることが好ましい。
脂肪酸のエステルとしては、例えば、上記炭素数が6〜24の飽和又は不飽和の脂肪酸と、炭素数が6〜18の飽和脂肪族アルコールとのエステル等が挙げられる。脂肪酸のエステルの炭素数は、10〜20であることが好ましい。飽和脂肪族アルコールの炭素数は、10〜18であることが好ましい。
無機充填材の好ましい含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.1〜20質量部である。含有量が0.1質量部未満では耐熱性が不足しやすく、また収縮率の低減効果が十分に得られにくい。逆に20質量部を超えると無機充填材由来の凝集物が増えることから、良好な外観が得られにくくなる。無機充填材の含有量は、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは2質量部以上、特には2.5質量部以上が好ましく、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、特に好ましくは7質量部以下である。
無機充填材を含む場合には、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の一部を、ペレットではなく、パウダーの状態で用いることにより成形品外観の改善効果がより顕著となるので好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂パウダーをブレンドすることにより、高い機械的強度を維持しながら、低収縮率で離型性に優れ、表面性状や外観、蒸着した際の外観にも優れ、高温使用下でも曇りの発生が抑制されたポリエステル樹脂材料が得られるので好ましい。
熱可塑性ポリエステル樹脂パウダーとしては、ポリブチレンテレフタレート樹脂でもポリエチレンテレフタレート樹脂のいずれでもよく、両方のパウダーを併用することも好ましい。
この際、熱可塑性ポリエステル樹脂パウダーの平均粒子径は、無機充填材の平均一次粒子径の1,000〜8,000倍であることが好ましく、より好ましくは2,000〜7,000倍、さらに好ましくは3,000〜6,500倍、特に好ましくは4,000〜6,000倍である。このような平均粒子径の熱可塑性ポリエステル樹脂パウダーと無機充填材の組み合わせとすることにより、無機充填材の2次凝集による外観不良の問題が効果的に改善され、溶融混練等の樹脂組成物製造の際に、安定的なフィードが可能となる傾向にあり、好ましい。
また、本発明においては、熱可塑性ポリエステル樹脂パウダーと無機充填材の含有量の比が、熱可塑性ポリエステル樹脂パウダー:無機充填材の質量比で、30:70〜95:5であることが好ましく、40:60〜93:7がより好ましく、50:50〜90:10であることがさらに好ましい。このような含有割合とすることにより、無機充填材の分散状態が良好かつ溶融混練等の樹脂組成物製造の際に安定的なフィードが可能となる傾向にあり、好ましい。
[その他含有成分]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、上記した以外の他の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を損わない範囲で含有することができる。その他の熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
また、上記した以外の種々の添加剤を含有していてもよく、このような添加剤としては、安定剤、カーボンブラック、離型剤、難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、着色剤等が挙げられる。
[安定剤]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、安定剤を含有することが、熱安定性改良や、機械的強度、透明性や色相の悪化を防止する効果を有するという点で好ましい。安定剤としては、リン系安定剤、イオウ系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましく、特に好ましいのは、フェノール系安定剤である。
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でも有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物又は有機ホスホナイト化合物が好ましい。
有機ホスフェート化合物としては、好ましくは、下記一般式:
(RO)3−nP(=O)OH
(式中、Rは、アルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。nは0〜2の整数を示す。)
で表される化合物である。より好ましくは、Rが炭素原子数8〜30の長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が挙げられる。炭素原子数8〜30のアルキル基の具体例としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。
長鎖アルキルアシッドホスフェートとしては、例えば、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、オクタデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。これらの中でも、オクタデシルアシッドホスフェートが好ましく、このものはADEKA社の商品名「アデカスタブ AX−71」として、市販されている。
有機ホスファイト化合物としては、好ましくは、好ましくは、下記一般式:
O−P(OR)(OR
(式中、R、R及びRは、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜30のアルキル基または炭素原子数6〜30のアリール基であり、R、R及びRのうちの少なくとも1つは炭素原子数6〜30のアリール基である。)
で表される化合物が挙げられる。
有機ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジ(トリデシル)ホスファイト)、テトラ(トリデシル)4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
有機ホスホナイト化合物としては、好ましくは、下記一般式:
−P(OR)(OR
(式中、R、R及びRは、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜30のアルキル基又は炭素原子数6〜30のアリール基であり、R、R及びRのうちの少なくとも1つは炭素原子数6〜30のアリール基である。)
で表される化合物が挙げられる。
有機ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、およびテトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
イオウ系安定剤としては、従来公知の任意のイオウ原子含有化合物を用いることが出来、中でもチオエーテル類が好ましい。具体的には例えば、ジドデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルイソプロピルキサンテート、トリラウリルトリチオホスファイトが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)が好ましい。
フェノール系安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−ネオペンチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
中でも、融点が150℃以上のヒンダードフェノール系安定剤を用いることが好ましい。融点が150℃以上であると、安定剤自身の熱安定性が高くなるため、変質して安定化の効果を失ったり、溶融混練等の樹脂組成物製造時や射出成形等の高温度環境下でもガスが生成しにくくなる。また、得られる成形品に金属薄膜を設けた光反射体を高温雰囲気に曝しても、金属薄膜の表面が犯され、光反射体に曇りが発生することも抑制される。融点は、より好ましくは180℃以上であり、さらに好ましくは200℃以上であり、特に好ましくは220℃以上である。融点の上限は通常350℃以下であり、好ましくは300℃以下であり、より好ましくは280℃以下である。
安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
安定剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.001〜1質量部である。安定剤の含有量が0.001質量部未満であると、樹脂組成物の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、1質量部を超えると、過剰量となりシルバーストリークの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。安定剤の含有量は、より好ましくは0.005〜0.7質量部であり、更に好ましくは、0.01〜0.5質量部である。
[カーボンブラック]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、カーボンブラックを含有することも好ましい。カーボンブラックを含有することで、ポリエステル系樹脂組成物及び成形品の耐侯性や外観、金属蒸着面における反射特性等が向上する。
カーボンブラックは、その種類、原料種、製造方法に制限はなく、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のいずれをも使用することができる。その数平均粒子径には特に制限はないが、5〜60nmであることが好ましい。このように数平均粒子径が所定の範囲にあるカーボンブラックを用いることにより、高温下でブリスターが発生し難い組成物を得ることができる。
なお、数平均粒子径は、ASTM D3849規格(カーボンブラックの標準試験法−電子顕微鏡法による形態的特徴付け)に記載の手順によりアグリゲート拡大画像を取得し、このアグリゲート画像から単位構成粒子として3,000個の粒子径を測定し、算術平均して求めることができる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(単位:m/g)は、通常1,000m/g未満が好ましく、なかでも50〜400m/gであることが好ましい。窒素吸着比表面積を1,000m/g未満にすることで、ポリエステル系樹脂組成物の流動性や成形品の外観が向上する傾向にあり好ましい。なお、窒素吸着比表面積はJIS K6217に準拠して測定することができる。
また、カーボンブラックのDBP(ジブチルフタレート)吸収量は、300cm/100g未満であることが好ましく、なかでも30〜200cm/100gであることが好ましい。DBP吸収量を300cm/100g未満にすることで、本発明のポリエステル系樹脂組成物の流動性や成形品の外観が向上する傾向にあり好ましい。なお、DBP吸収量(単位:cm/100g)はJIS K6217に準拠して測定することができる。
また使用するカーボンブラックは、そのpHについても特に制限はないが、通常、2〜10であり、3〜9であることが好ましく、4〜8であることがさらに好ましい。
カーボンブラックは、一種を単独でまた2種以上併用して使用することができる。更にカーボンブラックは、バインダーを用いて顆粒化することも可能であり、他の樹脂中に高濃度で溶融混練したマスターバッチでの使用も可能である。溶融混練したマスターバッチを使用することによって、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良が達成できる。上記樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。
マスターバッチ中のカーボンブラックの含有量は10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%がさらに好ましい。
カーボンブラックの含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、100質量部に対し、好ましくは0.01〜5質量部であり、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上、特に0.5質量部以上であり、また、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1.5質量部以下、特に好ましくは1.0質量部以下である。含有量が0.01質量部未満であると耐候性が不十分となる場合があり、5質量部を超えると、成形性、耐衝撃性等の機械的特性が低下しやすい傾向にある。
[離型剤]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は離型剤を含有することが好ましい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、モンタン酸エステルワックス、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス等のポリオレフィンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。また、数平均分子量は、好ましくは200〜30000であり、より好ましくは1000〜15000であり、さらに好ましくは1500〜10000であり、特に好ましくは2000〜5000である。脂肪族炭化水素化合物は単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
本発明において、離型剤としては、フォギング抑制の観点からポリオレフィンワックスが好ましい。ポリオレフィンワックスとしては、来公知の任意のものを使用でき、例えば、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは2〜12、さらに好ましくは2〜10の、オレフィンの一種、または任意の割合の二種以上を含む(共)重合体(重合または共重合を意味する。以下同様。)が挙げられる。
炭素数2〜30のオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、炭素数4〜30(好ましくは4〜12、さらに好ましくは4〜10)のα−オレフィン、および炭素数4〜30(好ましくは4〜18、さらに好ましくは4〜8)のジエンが挙げられる。α−オレフィンとしては、例えば1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンおよび1−ドデセンが挙げられる。ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン、11−ドデカジエン等が挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、フォギング性、離型性と耐熱性の点から、ポリエチレンワックスが好ましい。 ポリエチレンワックスの製造方法は任意であり、例えば、エチレンの重合やポリエチレンの熱分解により製造することができる。
離型剤としては、酸価が10〜40mgKOH/gのものが、離型抵抗が小さく離型性の改良効果が著しく、揮発分が少ない点から好ましい。酸価は、より好ましくは11〜35mgKOH/g、さらに好ましくは12〜32mgKOH/gである。酸価が10〜40mgKOH/gの範囲となれば、酸価が10mgKOH/g未満のものと40mgKOH/gを超えるものを併用してもよく、複数種類の離型剤全体としての酸価が、10〜40mgKOH/gとなればよい。
酸価が10〜40mgKOH/gの離型剤としては、上記した脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルであって酸価が10〜40mgKOH/gのものや、上記した脂肪族炭化水素化合物、好ましくはポリオレフィンワックスに、カルボキシル基(カルボン酸(無水物)基、即ちカルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を表す。以下同様。)、ハロホルミル基、エステル基、カルボン酸金属塩基、水酸基、アルコシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基等の、ポリエステル樹脂と親和性のある官能基を付与した変性ポリオレフィンワックスが好ましい。
ポリオレフィンワックスの変性に用いるカルボキシル基としては、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、およびメタクリル酸などのカルボン酸基を含有する低分子量化合物、スルホン酸などのスルホ基を含有する低分子量化合物、ホスホン酸などのホスホ基を含有する低分子量化合物などを挙げることができる。これらの中でもカルボン酸基を含有する低分子量化合物が好ましく、特にマレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、およびメタクリル酸などが好ましい。これらのカルボン酸は、一種または任意の割合で二種以上を併用してもよい。
変性ポリオレフィンワックスにおける酸の付加量としては、変性ポリオレフィンワックスに対して、通常、0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%である。
ハロホルミル基としては具体的には例えば、クロロホルミル基、ブロモホルミル基等が挙げられる。これらの官能基を、ポリオレフィンワックスに付与する手段は、従来公知の任意の方法によれば良く、具体的には例えば、官能基を有する化合物との共重合や、酸化などの後加工など、いずれの方法でもよい。
官能基の種類としては、ポリエステル樹脂と適度な親和性があることから、カルボキシル基であることが好ましい。変性ポリオレフィンワックスにおけるカルボキシル基の濃度としては、適宜選択して決定すればよいが、低すぎるとポリエステル樹脂との親和性が小さく、揮発分の抑制効果が小さくなり、また離型効果が低下する場合がある。逆に濃度が高すぎると、例えば、変性の際にポリオレフィンワックスを構成する高分子主鎖が過度に切断さて、変性ポリオレフィンワックスの分子量が低下し過ぎることで揮発分の発生が多くなり、ポリエステル樹脂成形体表面に曇りが発生する場合がある。 変性ポリオレフィンワックスとしては、酸化ポリエチレンワックスが好ましい。
なお、離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
離型剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が上記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が上記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
[樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリエステル系樹脂組成物を製造する方法としては、ポリエステル系樹脂組成物調製の常法に従って行うことができる。すなわち、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)、アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)及びエポキシ基含有単量体とスチレン系単量体との共重合体(C)、所望により添加されるその他樹脂成分及び種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸又は二軸押出機で溶融混練する。また各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、樹脂組成物を調製することもできる。例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂パウダーに無機充填材を予めブレンドした予備ブレンド物と、熱可塑性ポリエステル樹脂ペレットとを溶融混練してポリエステル系樹脂組成物を製造する方法も採用できる。この場合、前記予備ブレンド物とポリブチレンテレフタレート樹脂ペレットとは、別々のフィーダーから押出機にフィードすることも可能である。また、さらには、一部をマスターバッチ化したものを配合して溶融混練してもよい。さらには、予め各成分を混合した混合物を、溶融混練することなく、そのまま射出成形機等の成形機に供給し、各種成形品を製造することも可能である。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220〜300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、外観不良の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、低アウトガスで、金型付着物が極めて少ないため、160℃で24時間のフォギング試験におけるヘイズ値が、好ましくは10%以下にまですることが可能となる。
このフォギング試験は、樹脂組成物の成形品(ペレット)を試験管に5g収容したものに2mm厚のガラスプレートで蓋をし、ガラスプレートの温度は25℃に維持しながら、試験管を160℃で24時間、熱処理を施した後、ガラスプレートのヘイズ(単位:%)を測定することにより行われ、その具体的な測定方法の詳細は実施例に記載される通りである。
[成形品]
本発明のポリエステル系樹脂組成物を用いて成形品を製造する方法は、特に限定されず、ポリエステル系樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられる。中でも、生産性と、得られる成形品の表面性が良好となるなど、本発明の効果が顕著であることから、射出成形法が好ましい。
本発明のポリエステル系樹脂組成物を射出成形等により成形した成形品は、高い機械的強度や低い収縮率を維持しながら、低いアウトガス量で、金型付着物が極めて少なく、離型性も良好であり、また金属蒸着した際の荒れ、曇り性や異物感が出ることがなく、蒸着表面の外観が良好で、さらに蒸着表面の耐熱性も良好なので、これらの特性が厳しく求められる光反射体用の基体として特に好適に使用される。また、プライマー処理なしで直接金属蒸着することが可能であり、光反射体に好適である。
光反射体としては、各種の灯具等が挙げられる。灯具は建築構造物内の照明の他、自動車、航空機、船舶用の灯具などが挙げられ、特には自動車等の車両用ランプ等の車両灯体用部品、具体的には例えばハウジング、リフレクター、ランプエクステンション等が好ましく挙げられる。
ランプエクステンションは、灯具のボディとカバー(またはアウターレンズ)とで形成される灯室内の、ランプの周囲に設けられ、ランプ光源の方向性、反射性のために、高い輝度感、平滑性、均一な反射率、さらには光源からの発熱に耐えうる耐熱性等が要求される。ランプエクステンションは、少なくとも一表面にアルミニウム等の金属蒸着による金属薄膜層からなる鏡面処理が施される。なお、自動車用灯具のランプエクステンションとしては、前照灯や尾灯に多用されるが、これに限定されず、その他、前照灯(ヘッドランプ)、尾灯(テールランプ)、制動灯(ストップランプ)、方向指示灯(いわゆるウインカー)、車幅灯、後退灯などに適用されるもの等を含む。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
以下の実施例および比較例において、使用した成分は、以下の表1の通りである。
(実施例1〜4、比較例1〜5)
上記表1に示した各成分を表2に示す割合(全て質量部)にて、タンブラーミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」を使用し、シリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練した樹脂組成物を、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリエステル系樹脂組成物のペレットを得た。
[流動性(MVR)]
タカラ工業(株)製メルトインデクサーを用いて、上記で得られたペレットを265℃または250℃、荷重2.16kgfの条件で測定した単位時間当たりの溶融流動体積MVR(単位:cm/10min)を測定した。
[成形収縮率]
上記で得られたペレットを、120℃で5時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度60℃の条件下で、縦100mm、横100mm、厚み2mmの四角形の平板をフィルムゲート金型により成形し、成形品の樹脂流れの直角方向(TD方向)及び流れに平行方向(MD方向)の成形収縮率(単位:%)を測定した。
[引張破断強度、引張破断伸び率]
上記で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日本製鋼社製射出成形機(型締め力85T)を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で、ISO多目的試験片(4mm厚)を射出成形した。
ISO527に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)を用いて、引張破断強度(単位:MPa)、引張破断伸び率(単位:%)を測定した。
[曲げ最大強度、曲げ弾性率]
ISO178に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で、曲げ最大強度(単位:MPa)と曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
[ノッチ付シャルピー衝撃強度]
ISO179に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)にノッチ加工を施したノッチ付き試験片について、23℃の温度でノッチ付シャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。
[蒸着面外観の評価]
前記で得られたペレットを射出成形前に120℃、5時間乾燥し、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80」)により、シリンダー温度260℃、射出速度60mm/sec、射出時間30sec、保圧60MPa、冷却時間15sec、金型温度60℃の条件で、#14000の研磨剤による表面仕上げを施した鏡面金型を用いて、成形体形状が60mm×60mm×3mmの光反射体用の基体を得た。
得られた光反射体基体の表面に、プライマー処理を施さずに、アルミ膜厚150nmになるようアルミ蒸着を行って、光反射体を得た。
上記光反射体基体の表面を目視で観察し、無機充填材の凝集やガス抜け不良に由来する外観不良がないものを「合格」、あるものを「不合格」と判定した。
[アルミ蒸着面の耐熱性]
上記したアルミ蒸着光反射体のアルミ蒸着面の拡散反射率を、分光測色計(コニカミノルタ社製「CM−3600d」)を用い、正反射光除去方式にて波長550nmで測定した。
次いで、上記したアルミ蒸着光反射体を熱風乾燥機(ヤマト科学社製送風定温恒温器DN−43)で160℃、24時間の条件で加熱処理し、分光測色計(コニカミノルタ社製「CM−3600d」)を用い、正反射光除去方式にて波長550nmでアルミ蒸着面の拡散反射率を測定し、耐熱性の指標とした。
加熱処理後の拡散反射率が1%未満を合格で「○」、1%以上を不合格で「×」と判定した。
[発生ガス量]
前記で得られたペレットから採取した0.02gを、サンプル管に入れ、島津製作所社製のTD−20、カラムUA1701を使用し、ヘリウム30ml/minの気流下、270℃で10分間熱処理し、−20℃に冷却したクライオトラップで発生ガス総量を捕集した。 条件としては、カラムUA1701(50℃・2min保持後、260℃(10℃/10min)昇温後、さらに300℃(5℃/10min))を使用し、注入口温度270℃で捕集したガスをGC/FIDに導入し、発生ガスの定量を行い、発生ガス量(質量ppm)を求めた。
[フォギング性] 上記で得られたペレットを、試験管(φ20×160mm)に5g入れ、180℃に温度調節したフォギング試験機(GLサイエンス社製 中型恒温槽L−75改良機)にセットした。さらに、上記試験管に、耐熱ガラス(テンパックスガラスφ25×2mmt)の蓋をした後、耐熱ガラス部を25℃雰囲気に温度調節し、160℃で24時間、熱処理を実施した。熱処理終了後、耐熱ガラスプレート内側には樹脂組成物より昇華した分解物等による付着物が析出した。熱処理終了後の耐熱ガラスプレートのヘイズ(単位:%)を、東京電色社製ヘイズメーター「TC−HIII DPK」で測定し、フォギング性の指標とした。
[判定]
上記の蒸着面外観及び蒸着耐熱性が○(合格)で、発生ガス量が200ppm以下、フォギング性が10%以下のものを「○」(合格)、そうでないものを「×」(不合格)と判定した。
以上の評価結果を、以下の表2に示す。
表2の結果から明らかなように、実施例1〜4のポリエステル系樹脂組成物は、流動性、収縮率及び各種機械的強度を十分維持しながら、蒸着面外観、蒸着耐熱性、発生ガス量の全てに優れていることが分かる。
一方、比較例1、3及び4では、発生ガス量が大でフォギング性が悪化しやすく、比較例2及び5は、蒸着面外観及び/又は蒸着耐熱性が不合格となり、いずれの比較例でも、流動性、収縮率及び各種機械的強度、並びに蒸着面外観、蒸着耐熱性及び発生ガス量の全てに優れる樹脂組成物が得られないことがわかる。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、高い機械的強度や低い収縮率を維持しながら、低いアウトガス量で、金型付着物が極めて少なく、離型性も良好で、蒸着表面の外観が良好で、さらに蒸着表面の耐熱性も良好ので、これを射出成形してなる成形品は、プライマー処理なしで直接アルミ等の金属蒸着が可能である。さらに、金属蒸着して得られた光反射体は外観が極めて良好であり、自動車等の車両用灯体、特にランプエクステンション等として好適に使用でき、産業上の利用性は非常に高いものがある。

Claims (3)

  1. 熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)1〜20質量部及びエポキシ基含有単量体とスチレン系単量体との共重合体(C)0.01〜1質量部を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
  2. 共重合体(C)が、グリシジル(メタ)アクリレート−スチレン系共重合体である請求項1に記載のポリエステル系樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載のポリエステル系樹脂組成物からなる車両灯体用部品。
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