JP2013245222A - ポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

ポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 Download PDF

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祉康 内藤
Katsuya Ogawa
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Abstract

【課題】
機械的特性、耐熱性(熱変形温度)、熱安定性、さらには成形品の外観に優れ、かつ環境配慮に優れるポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物ならびにその成形品を、安全・衛生面で問題なく提供することを課題とする。
【解決手段】
ポリ乳酸系樹脂(A)、アクリル系樹脂(B)、グラフト共重合体(C)の合計量を100重量部として、ポリ乳酸系樹脂(A)50超〜70重量部、アクリル系樹脂(B)5〜35重量部、グラフト共重合体(C)15〜35重量部を配合し、さらに(A)〜(C)の合計100重量部に対して、エポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体(D)を0.1〜10重量部、リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)から選ばれる少なくとも1種を0.1〜5重量部配合してなる樹脂組成物で、ISO75(荷重0.45MPa)に準拠して測定された熱変形温度が70℃以上であることを特徴とするポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐衝撃性、熱滞留による耐久性(以下、熱安定性、ともいう。)、さらには成形加工性に優れた、ポリ乳酸系樹脂を主成分とする低環境負荷である熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
従来の成形用材料は、ポリエチレン樹脂、ポリプロプレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂などあらゆる分野に使用されてきた。製品の使用後には、埋め立てや焼却処分されてきたため、半永久的な地中への残留または、焼却時の二酸化炭素の発生など地球環境に対し大きく負荷を与えてきた。近年、地球温暖化の要因として、温室効果ガスの1つである二酸化炭素の大気中の濃度上昇が指摘され、地球規模での二酸化炭素排出抑制の機運が高まってきている。
このような環境保全の見地からバイオマスの活用が注目され化石資源原料の代替検討がなされている。成形用材料においても、化石資源使用量の削減および二酸化炭素排出量の抑制可能な植物由来のポリ乳酸樹脂が注目されている。しかし、ポリ乳酸樹脂は、前記の既存石油系樹脂と比較して、成形品の機械的強度や耐熱性(熱変形温度)が低く、さらに熱安定性も低下するため、使用できる適用範囲が狭くなっていた。また、熱安定性の低下は、樹脂の流動特性に大きな影響を与えるため、安定した成形加工条件を得ることが困難になるほか、成形方法や成形機サイズなどにも大きな制約が発生してしまっていた。このようなポリ乳酸樹脂の特徴は、安定した物性保持を困難とし、市場展開する際の量産化が難しくなり、今後より汎用樹脂として展開するに当たり大きな障害となっていた。
前述のポリ乳酸樹脂の課題を改善するため、これまでに各種改良検討が行われており、その改良手法としては、改質剤を添加する手法や、前記の既存樹脂とのポリマーアロイする手法が盛んに行われている。
特許文献1には、ポリ乳酸樹脂にエポキシ基含有改質剤を添加し、流動性を改善することにより成形加工性の改善を図っているが、衝撃強度や耐熱性が不十分であった。特許文献2〜4にはポリ乳酸にABS樹脂やポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂とエポキシ基含有改質剤を配合することにより、機械的強度の改善を図っているが、耐熱性の向上については更なる改善が必要であった。さらに特許文献5ではポリ乳酸とゴム強化スチレン系樹脂のアロイにエポキシ基含有改質剤を添加することにより、機械的強度、耐熱性、成形品外観の改善を図っているが、ポリ乳酸樹脂の配合量が50重量%以下での検討であり、環境負荷の低減という観点では更なる検討が必要であった。
特開2006−265399号公報 特開2008−106091号公報 特開2011−157513号公報 特開2012−17451号公報 特開2009−197079号公報
本発明は、耐衝撃性に代表される機械特性、耐熱性、熱安定性さらには成形品の外観に優れ、かつ環境配慮に優れる熱可塑性樹脂組成物ならびにその成形品を提供することを課題とする。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリ乳酸系樹脂(A)50超〜70重量部、アクリル系樹脂(B)5〜35重量部、グラフト共重合体(C)10〜35重量部を配合し、さらに(A)〜(C)の合計100重量部に対してエポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体(D)を0.1〜10重量部配合してなる樹脂組成物であって、ISO75(荷重0.45MPa)に準拠して測定された熱変形温度が70℃以上であることを特徴とするポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物とすることで、前記課題を解決できることが分かった。
すなわち本発明は以下の(1)〜(5)で構成される。
(1)ポリ乳酸系樹脂(A)50超〜70重量部、アクリル系樹脂(B)5〜35重量部およびグラフト共重合体(C)10〜35重量部を配合し、さらに(A)〜(C)の合計100重量部に対して、エポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体(D)を0.1〜10重量部配合してなる樹脂組成物であって、ISO75(荷重0.45MPa)に準拠して測定された熱変形温度が70℃以上であることを特徴とする、ポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。
(2)さらにリン酸及び/またはリン酸1ナトリウム(E)を(A)〜(C)の合計100重量部に対して0.01〜5重量部配合することを特徴とする、(1)に記載のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。
(3)アクリル系樹脂(B)が、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(b1)65〜97重量%、芳香族ビニル系単量体(b2)1〜30重量%、シアン化ビニル系単量体(b3)2〜15重量%およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(b4)0〜20重量%が共重合されたアクリル系樹脂であることを特徴とする、(1)または(2)に記載のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。
(4)グラフト共重合体(C)が、ゴム質重合体(r)に不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(c1)を含む単量体成分をグラフト重合したグラフト重合体であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、成形品。
本発明は成形用材料としての物性が比較的劣っているポリ乳酸系樹脂を主成分とするにもかかわらず、耐衝撃性に代表される機械特性、耐熱性、熱安定性さらには成形品の外観に優れ、かつ環境配慮に優れた材料およびその成形品を提供することができる。
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物について、具体的に説明する。
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂(A)としては、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とする重合体であるが、本発明の目的を損なわない範囲で、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。かかる他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などを使用することができる。これらの共重合成分は、単独ないし2種以上を用いることができる。
ポリ乳酸系樹脂(A)は、耐熱性の観点から乳酸成分の光学純度が高い方が好ましく、総乳酸成分の内、L体あるいはD体が80モル%以上含まれることが好ましく、さらには90モル%以上含まれることが好ましく、95モル%以上含まれることが特に好ましい。
また、耐熱性、成形加工性の点で、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを用いることも好ましい態様の一つである。ポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成させる方法としては、例えば、L体が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上のポリ−L−乳酸とD体が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上のポリ−D−乳酸を溶融混練や溶液混練などにより混合する方法が挙げられる。また、別の方法として、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸をブロック共重合体とする方法も挙げることができ、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを容易に形成させることができるという点で、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸をブロック共重合体とする方法が好ましい。
ポリ乳酸系樹脂(A)の製造方法としては、既知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを採用することができる。
ポリ乳酸系樹脂(A)の分子量や分子量分布は、実質的に成形加工が可能であれば、特に限定されるものではないが、重量平均分子量としては、好ましくは10,000以上、より好ましくは40,000以上、特に好ましくは80,000以上である。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算の重量平均分子量である。
ポリ乳酸系樹脂(A)の融点は、特に限定されるものではないが、90℃以上であることが好ましく、さらに150℃以上であることが好ましい。
本発明で用いられるアクリル系樹脂(B)とは不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(b1)、芳香族ビニル系単量体(b2)、シアン化ビニル系単量体(b3)、およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(b4)を公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、沈殿重合または乳化重合に供することにより得られるものである。
アクリル系樹脂(B)を構成する不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(b1)については特に制限はないが、炭素数1〜6のアルキル基または置換アルキル基を持つアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが好適であり、具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられるが、なかでもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
アクリル系樹脂(B)を構成する芳香族ビニル系単量体(b2)については、特に制限はないが、具体例として、スチレンをはじめ、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、中でもスチレンまたはα−メチルスチレンが好ましく用いられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
アクリル系樹脂(B)を構成するシアン化ビニル系単量体(b3)についても特に制限はなく、具体例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、なかでもアクリロニトリルが好ましく用いられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
アクリル系樹脂(B)を構成する他のビニル系単量体(b4)としては、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(b1)、芳香族ビニル系単量体(b2)、シアン化ビニル系単量体(b3)と共重合可能であれば特に制限はなく、具体例として、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸、フタル酸およびイタコン酸などのカルボキシル基または無水カルボキシル基を有するビニル系単量体、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、4,4−ジヒドロキシ−2−ブテンなどのヒドロキシル基を有するビニル系単量体、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテルおよびp−グリシジルスチレンなどのエポキシ基を有するビニル系単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレンなどのアミノ基およびその誘導体を有するビニル系単量体、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニル系単量体などが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
前記単量体混合物の配合比率は、好ましくは、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(b1)65〜97重量%、芳香族ビニル系単量体(b2)1〜30重量%、シアン化ビニル系単量体(b3)2〜15重量%、およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(b4)0〜20重量%であり、さらに好ましくは不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(b1)65〜80重量%、芳香族ビニル系単量体(b2)1〜25重量%、シアン化ビニル系単量体(b3)3〜15重量%、およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(b4)0〜15重量%である。不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体の配合比率を前記範囲とすることで、ポリ乳酸系樹脂(A)との相溶性が向上し、成形品の外観、特にウェルド外観を良好にすることができる。シアン化ビニル系単量体(b3)の配合比率を前記範囲とすることで、該ポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物の機械特性を向上させることができる。シアン化ビニル系単量体(b3)の配合比率が15重量%より大きい場合は、分散不良が発生しやすくなり、成形品のブツなどの不具合が発生することがある。
アクリル系樹脂(B)の分子量には制限はないが、好ましくは、テトラヒドロフラン溶媒を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(PMMA換算)が10,000〜400,000の範囲、より好ましくは50,000〜150,000の範囲のものを使用することにより、耐衝撃性および成形加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。
本発明で用いられるグラフト共重合体(C)とは、ゴム質重合体(r)の存在下で、単量体成分を、公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、沈殿重合または乳化重合に供することにより、ゴム質重合体(r)に単量体成分をグラフト重合して得られるものである。なお、グラフト共重合体(C)には、ゴム質重合体(r)に単量体成分がグラフト重合したグラフト共重合体だけでなく、ゴム質重合体(r)にグラフトしていない単量体成分の重合体を含みうる。
ゴム質重合体(r)には特に制限はないが、ガラス転移温度が0℃以下のものが好適であり、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴムなどが好ましく使用でき、具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−イソプレン共重合体およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらのゴム質重合体のうちでは、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体およびアクリロニトリル−ブタジエン共重合体が、特に耐衝撃性の観点から好ましく用いられ、1種または2種以上の混合物で使用することが可能である。
ゴム質重合体(r)の重量平均粒子径には特に制限はないが、0.05〜1.0μmの範囲であることが好ましく、0.1〜0.5μmの範囲であることがより好ましい。ゴム質重合体の重量平均粒子径を0.05μm〜1.0μmの範囲とすることによって、優れた耐衝撃性を発現することができる。また、ゴム質重合体としては、1種または2種以上を用いることができ、耐衝撃性と流動性の点で、重量平均粒子径が異なるゴム質重合体を2種以上用いることが好ましく、例えば、重量平均粒子径が小さいゴム質重合体と重量平均粒子径が大きいゴム質重合体を併用する、いわゆるバイモーダルゴムを用いてもよい。
なお、ゴム質重合体(r)の重量平均粒子径は、「Rubber Age、Vol.88、p.484〜490、(1960)、by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法、つまりアルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める方法により測定することができる。
ゴム質重合体(r)のゲル含有率には特に制限はないが、耐衝撃性と耐熱性の点で、40〜99重量%であることが好ましく、60〜95重量%であることがより好ましく、70〜90重量%であることが特に好ましい。ここで、ゲル含有率は、トルエンを用いて室温で24時間抽出して不溶分の割合を求める方法により測定することができる。
グラフト共重合体(C)は、ゴム質重合体(r)が好ましくは10〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%の存在下に、単量体成分を好ましくは10〜90重量%、より好ましくは20〜70重量%をグラフト重合して得られる。ゴム質重合体の割合が前記の範囲未満でも、また前記の範囲を超えても、衝撃強度や表面外観が低下する場合がある。
グラフト共重合体(C)のグラフト成分を構成する単量体成分は、好ましくは、少なくとも不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(c1)を含み、その他必要に応じて芳香族ビニル系単量体(c2)、シアン化ビニル系単量体(c3)、これらと共重合可能な他のビニル系単量体(c4)を含有する単量体混合物(c)である。
グラフト共重合体(C)を構成する不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(c1)には特に制限はないが、炭素数1〜6のアルキル基または置換アルキル基を持つアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが好適である。具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられるが、なかでもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
グラフト共重合体(C)を構成する芳香族ビニル系単量体(c2)には特に制限はなく、具体例としてはスチレンをはじめ、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、なかでもスチレンおよびα−メチルスチレンが好ましく用いられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
グラフト共重合体(C)を構成するシアン化ビニル系単量体(c3)には特に制限はなく、具体例としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、なかでもアクリロニトリルが好ましく用いられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
グラフト共重合体(C)を構成する他のビニル系単量体(c4)としては、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(c1)、芳香族ビニル系単量体(c2)、シアン化ビニル系単量体(c3)と共重合可能であれば特に制限はないが、具体例としては、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸、フタル酸およびイタコン酸などのカルボキシル基または無水カルボキシル基を有するビニル系単量体、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、4,4−ジヒドロキシ−2−ブテンなどのヒドロキシル基を有するビニル系単量体、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテルおよびp−グリシジルスチレンなどのエポキシ基を有するビニル系単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレンなどのアミノ基およびその誘導体を有するビニル系単量体、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニル系単量体などが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
単量体混合物(c)の組成比は、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(c1)が好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%、芳香族ビニル系単量体(c2)が好ましくは0〜70重量%、より好ましくは0〜50重量%、シアン化ビニル系単量体(c3)が好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜30重量%、これらと共重合可能な他のビニル系単量体(c4)が好ましくは0〜70重量%、より好ましくは0〜50重量%である。不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(c1)を前記範囲とすることで、ポリ乳酸系樹脂(A)やアクリル系樹脂(B)にグラフト共重合体(C)を良好に分散せることができる。
前述の通り、グラフト共重合体(C)は、ゴム質重合体(r)に単量体成分がグラフトした構造をとったグラフト共重合体の他に、グラフトしていない重合体を含有したものである。グラフト共重合体(C)のグラフト率は特に制限がないが、耐衝撃性および光沢が均衡してすぐれる樹脂組成物を得るためには、10〜100重量%、特に20〜80重量%の範囲であることが好ましい。ここで、グラフト率は次式により算出される値である。
グラフト率(%)=[<ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系共重合体量>/<グラフト共重合体のゴム含有量>]×100。
グラフト共重合体(C)に含まれるグラフトしていない重合体の特性は特に制限されないが、テトラヒドロフラン溶媒を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(PMMA換算)が、10,000〜400,000の範囲、より好ましくは、50,000〜150,000の範囲のものを使用することにより、耐衝撃性および成形加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。なお、ここで言うグラフトしていない重合体は、グラフト共重合体(C)のメチルエチルケトンを用いて溶解抽出される可溶分を示す。
本発明の樹脂成分であるポリ乳酸系樹脂(A)、アクリル系樹脂(B)およびグラフト共重合体(C)の配合比率は、ポリ乳酸系樹脂(A)50超〜70重量部、アクリル系樹脂(B)5〜35重量部、グラフト共重合体(C)10〜35重量部であり、好ましくはポリ乳酸系樹脂(A)50超〜60重量部、アクリル系樹脂(B)10〜30重量部、グラフト共重合体(C)15〜30重量部である。
本発明においては、低環境負荷の観点からポリ乳酸系樹脂(A)を主成分とすることが必須であり、ポリ乳酸系樹脂(A)の配合比率は50重量部超配合される。また、本発明のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物をABS樹脂などの汎用樹脂と同様に幅広く市場に普及させるためには、ISO75(荷重0.45MPa)に準拠して測定した耐熱性(熱変形温度)を70℃以上に維持する必要があり、この観点よりポリ乳酸系樹脂(A)の配合比率は70重量部以下、好ましくは60重量部配合される。ポリ乳酸系樹脂(A)の配合比率が70重量部を超えてしまうと耐熱性が低下し、市場へ展開できる用途が減少する。
また、本発明のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物をABS樹脂などの汎用樹脂と同様に幅広く市場に普及させるうえでは、ISO179に準じて測定したシャルピー衝撃強度が好ましくは7kJ/m以上、より好ましくは8kJ/m以上、さらに好ましくは10kJ/m以上に維持することがよく、シャルピー衝撃強度が7kJ/m以上であると、成形時に型から取り出す際の割れや、該ポリ乳酸系熱可塑性樹脂を使用した成形品の落下時の割れなどを防止することができる。この観点より、グラフト共重合体(C)の配合比率は10〜35重量部である。グラフト共重合体(C)の配合比率が10重量部より小さい場合、十分なシャルピー衝撃強度が確保されず適用範囲が狭くなり、35重量部より多いとグラフト共重合体(C)の分散不良による成形品の表面ブツによる外観不良などの不具合が発生することがある。
また、グラフト共重合体(C)配合によるシャルピー衝撃強度維持、耐熱性(熱変形温度)維持のため、本発明においてはアクリル系樹脂(B)を5〜35重量部、好ましくは15〜30重量部配合する。アクリル系樹脂(B)の配合比率が5重量部より小さい場合、十分に耐熱性を維持することが難しく、35重量部より多いと耐熱性は維持できるが、十分なシャルピー衝撃強度の維持が困難となる。
さらに本発明においては、前記(A)〜(C)の樹脂成分に加えてエポキシ基含有スチレン−アクリル重合体(D)を配合する。エポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体(D)の添加により熱変形温度を上昇させることができる。ポリ乳酸系樹脂(A)の配合比率が50重量部超となると、該エポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体(D)を配合しない場合は、熱変形温度が55〜65℃程度であるが、該エポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体(D)の添加により、熱変形温度(ISO75(荷重0.45MPa))を上昇させることができ、適正量の配合により、70℃以上まで上昇させることができる。
また、ポリ乳酸系樹脂(A)を含めポリエステルは、末端基としてカルボキシル基が存在し、この末端カルボキシル基が触媒として作用するため、自己触媒的に加水分解が進行し、高温環境下、高温高湿環境下では特に機械的特性が低下してしまう。本発明のエポキシ基含有アクリル−スチレン系樹脂(D)を配合することにより、ポリ乳酸系樹脂の末端カルボキシル基とエポキシ基が反応するため、熱変形温度を上昇させることだけでなく、加水分解の進行を抑制することもでき、熱滞留後の機械的特性の低下を抑制することができる。
エポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体(D)は、エポキシ基を含有する重合体であり、スチレン系単量体、アクリル系単量体および共重合可能な他の単量体を共重合してなる重合体である。重合体へのエポキシ基の導入は、上記単量体に直接付加したものでも、その他のエポキシ基含有単量体であっても良い。
アクリル系単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルが挙げられ、これらは1種または2種以上であってもよいが、好ましくはメタクリル酸メチルである。
スチレン系単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、ビニルピリジンが挙げられ、これらは1種または2種以上であってもよいが、好ましくはスチレンである。
上記単量体にエポキシ基を導入したものとしては、ラジカル重合性の観点よりアクリル系単量体にエポキシ基を導入したものが好ましく、具体例としては(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルにエポキシ基を導入したものが挙げられ、これらは1種または2種以上であってもよいが、好ましくはアクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルであり、より好ましくはメタクリル酸グリシジルである。
エポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体(D)のエポキシ価や重量平均分子量に特に制限は無いが、ポリ乳酸系樹脂の末端基との反応性や、ポリ乳酸系樹脂(A)、アクリル系樹脂(B)との相溶性の観点より、該重合体の重量平均分子量は好ましくは1,000〜40,000、より好ましくは1,500〜20,000、さらに好ましくは2,000〜10,000である。なお、ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフラン溶媒を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(PMMA換算)である。
エポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体(D)の配合量は、(A)〜(C)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部、さらに好ましくは0.3〜3重量部である。エポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体(D)の配合量が0.1重量部未満の場合はその効果が見られず、一方、エポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体(D)の配合量が10重量部を超える場合、ゲル化促進によるブツ発生、着色時の色分かれ、過度な溶融粘度上昇による流動性低下と成形品外観のフローマーク発生などの外観不具合が発生することがある。
エポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体(D)は、異なるエポキシ価、重量平均分子量のものを単独ないし2種以上を使用することができるが、ポリ乳酸系樹脂の末端基との反応性や、配合量を極力抑えるといった観点より、エポキシ価が3.0meq/g以上のエポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体を少なくとも1種配合することが好ましい。
エポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体(D)は公知の技術により製造して使用することが可能であるが、市販品を使用することも可能であり、市販品の具体例としては、東亞合成社製「ARUFON」シリーズおよび「RESEDA」シリーズ、BASF社製「JONCRYL」シリーズが好ましく、なかでも「JONCRYL ADR−4368」がより好ましく使用される。
本発明のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物には、前記(A)〜(D)成分に加えて、リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)を配合することが好ましい。グラフト共重合体(C)がその製造過程によりアルカリ性を示す場合、リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)を配合することによってポリ乳酸系樹脂(A)のアルカリ分解を防止し、得られる樹脂組成物の熱安定性を向上させることができる。また、リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)は、樹脂組成物の原料配合や溶融コンパウンド、ならびに得られた樹脂組成物の成形時に発生する刺激臭による人体への安全・衛生面、樹脂組成物の熱安定性などの観点において、既に公知となっている有機酸など含めた他の中和剤よりも優れる。
特に、本発明のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物を食品用器具や玩具など人体への安全・衛生がより厳しく求められる用途へ展開させる場合には、リン酸1ナトリウムの使用が好ましい。リン酸1ナトリウム自体は、医療分野や食品添加物に広く使用されており、摂取した場合の安全性が既に確認されているほか、食品用器具などに起因する衛生上の危害を未然に防止するための業界自主規制団体であるポリオレフィン等衛生協議会でも樹脂添加剤として適切であることが認められている(添加剤のポジティブリストに登録されている)。
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるリン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)の含有量は、(A)〜(C)成分の合計100重量部に対し、0.01〜5重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜2重量部、さらに好ましくは0.1〜0.5重量部である。リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)の含有量が0.01重量部に満たない場合には、ポリ乳酸系樹脂(A)のアルカリ分解抑制の効果が十分に発揮されず、本発明の熱可塑性樹脂組成物の初期の耐衝撃性が低下するだけでなく、熱滞留において耐衝撃性が大幅に低下することがあり、一方、5重量部を超える場合には、成形品の熱滞留時の発泡や成形品の表面外観が低下することがある。
その他、本発明のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物に配合されるグラフト共重合体(C)のアルカリ性の中和ができる酸性の物質であれば、いかなるものでも使用することができる。具体的には、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンジカルボン酸、クエン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、安息香酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、フェノール、ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸などの有機酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、クエン酸、オルトフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸の酸無水物が挙げられる。リン酸またはリン酸1ナトリウム以外の前記化合物を併用する時、必ずしも1種で使用する必要は無く、併用することもできる。
本発明においては、耐熱性の向上という観点から、さらに結晶核剤を含有することが好ましい。結晶核剤としては、一般にポリマーの結晶核剤として用いられるものを特に制限なく用いることができ、無機系結晶核剤および有機系結晶核剤のいずれをも使用することができ、単独ないし2種以上用いることができる。
無機系結晶核剤の具体例としては、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、マイカ、合成マイカ、クレー、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウムおよびフェニルホスホネートの金属塩などが挙げられ、耐熱性を向上させる効果が大きいという観点から、タルク、カオリナイト、モンモリロナイトおよび合成マイカが好ましい。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。これらの無機系結晶核剤は、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていることが好ましい。
無機系結晶核剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜100重量部が好ましく、0.05〜50重量部がより好ましく、0.1〜30重量部がさらに好ましい。
有機系結晶核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸1ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸1ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレートなどの有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)などのカルボン酸アミド、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、高融点ポリ乳酸などのポリマー、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩などのカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩またはカリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートなどのリン化合物金属塩および2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウムなどが挙げられ、耐熱性を向上させる効果が大きいという観点からは、有機カルボン酸金属塩およびカルボン酸アミドが好ましい。これらは単独ないし2種以上用いることができる。
有機系結晶核剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜30重量部が好ましく、0.05〜10重量部がより好ましく、0.1〜5重量部がさらに好ましい。
また、さらに可塑剤を含有することも耐熱性の向上という観点において好ましい。可塑剤としては、一般にポリマーの可塑剤として用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えばポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤及びエポキシ系可塑剤などを挙げることができ、単独ないし2種以上用いることができる。
ポリエステル系可塑剤の具体例としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの酸成分と、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール成分からなるポリエステルやポリカプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルなどを挙げることができる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸もしくは単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物などで末端封鎖されていてもよい。
グリセリン系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレートおよびグリセリンモノアセトモノモンタネートなどを挙げることができる。
多価カルボン酸系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシルなどのトリメリット酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシルアジピン酸エステルなどのセバシン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、およびセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのセバシン酸エステルなどを挙げることができる。
ポリアルキレングリコール系可塑剤の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロック及び/またはランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物および末端エーテル変性化合物などの末端封鎖化合物などを挙げることができる。
エポキシ系可塑剤とは、一般にはエポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリドなどを指すが、その他にも、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂も可塑剤として使用することができる。
その他の可塑剤の具体例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートなどの脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチルなどのオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイルおよびパラフィン類などを挙げることができる。
なお、本発明で好ましく使用される可塑剤としては、前記に例示したものの中でも、特にポリエステル系可塑剤及びポリアルキレングリコール系可塑剤から選択した少なくとも1種が好ましい。
可塑剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲が好ましく、0.1〜20重量部の範囲がより好ましく、0.5〜10重量部の範囲がさらに好ましい。
なお、本発明においては、結晶核剤と可塑剤を各々単独で用いてもよいが、これらを併用して用いることが好ましい。
また、さらに無機系結晶核剤以外の充填剤を含有することも耐熱性の向上という観点から好ましい。無機系結晶核剤以外の充填剤としては、通常熱可塑性樹脂の強化に用いられる繊維状、板状、粒状、粉末状のものを用いることができる。具体的には、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラストナイト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化硅素繊維及びホウ素繊維などの無機繊維状充填剤、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、再生セルロース繊維、アセテート繊維、ケナフ、ラミー、木綿、ジュート、麻、サイザル、亜麻、リネン、絹、マニラ麻、さとうきび、木材パルプ、紙屑、古紙及びウールなどの有機繊維状充填剤、ガラスフレーク、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、セリサイト、ベントナイト、ドロマイト、微粉珪酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、珪酸アルミニウム、酸化珪素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土などなどの板状や粒状の充填剤が挙げられる。これらの充填剤の中では、無機繊維状充填剤が好ましく、特にガラス繊維、ワラストナイトが好ましい。また、有機繊維状充填剤の使用も好ましく、ポリ乳酸系樹脂(A)の生分解性を生かすという観点から、天然繊維や再生繊維がさらに好ましい。また、配合に供する繊維状充填剤のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は5以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましく、20以上であることがさらに好ましい。
充填剤は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理されていてもよい。
充填剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜200重量部が好ましく、0.5〜100重量部がより好ましい。
本発明においては、ポリ乳酸系樹脂(A)の加水分解抑制による耐久性が向上という観点から、カルボジイミド化合物を含有することが好ましく、ポリ乳酸系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲が好ましく、0.05〜5重量部の範囲がより好ましい。
本発明において、本発明の目的を損なわない範囲で安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤など)、滑剤、離型剤、難燃剤、染料または顔料を含む着色剤、帯電防止剤、発泡剤などを添加することができる。
本発明において、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えば、PMMA樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリ乳酸系樹脂(A)以外のポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、芳香族および脂肪族ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族および脂肪族ポリケトン樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ビニルエステル系樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂など)または熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)などの少なくとも1種以上をさらに含有することができる。これらの樹脂を配合することで、優れた特性を有する成形品を得ることができる。
本発明のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、例えば、(A)〜(C)の樹脂成分およびエポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体(D)、ならびに必要に応じてリン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)、結晶核剤、可塑剤、充填剤、その他の添加剤を予めブレンドした後、(A)〜(C)の樹脂成分の融点以上において一軸または二軸押出機で均一に溶融混練する方法などが挙げられる。なお、混合する成分によってはポリ乳酸系樹脂(A)がアルカリ分解することがあるため、ポリ乳酸系樹脂(A)のアルカリ分解を抑制するためには、あらかじめグラフト共重合体(C)にリン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)を配合するなどしてグラフト共重合体(C)を中和したペレットを作製しておくことが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、通常公知の射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形などの任意の方法で成形することができ、あらゆる形状の成形品として広く用いることができる。成形品とは、フィルム、シート、繊維・布、不織布、射出成形品、押出成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、または他の材料との複合体などであり、自動車用資材、電機・電子機器用資材、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、便座、雑貨の用途として有用である。
本発明を更に具体的にかつ詳細に説明するため、以下に実施例を挙げるが、これらの実施例は本発明を何ら制限するものではない。なお、ここで特に断りのない限り「%」は重量%を示す。
以下に実施例で行った評価方法について示す。
(1)グラフト共重合体(C)におけるゴム質重合体(r)の重量平均粒子径
「Rubber Age、Vol.88、p.484〜490、(1960)、by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法、即ち、アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率から累積重量分率50%の粒子径を求めた。
(2)グラフト共重合体(C)のグラフト率
80℃の温度で4時間真空乾燥を行ったグラフト共重合体(C)の所定量(m;1g)にアセトン100mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過し、この不溶分を80℃の温度で4時間真空乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式により算出した。ここでLは、ゴム含有グラフト共重合体のゴム含有率である。
グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100。
(3)重量平均分子量
ポリ乳酸系樹脂(A)の重量平均分子量は、Water社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を用い、示差屈折計を検出器(Water2414)とし、カラムとしてポリマーラボラトリーズ社製MIXED−B(2本)、留出液ヘキサフルオロイソプロパノール、流速1ml/min、カラム温度40℃の条件で測定されるポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算の重量平均分子量として測定し、また、アクリル系樹脂(B)、グラフト共重合体(C)のメチルエチルケトン可溶分、ならびにエポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体(D)の重量平均分子量は、留出液としてテトラヒドロフランを使用する以外はポリ乳酸での測定と同じ装置・条件で測定した。
(4)シャルピー衝撃強度
ISO179に準じて測定した。試験片の成形条件は、シリンダ温度220℃、金型温度60℃とした。
(5)耐熱性評価(熱変形温度測定)
ISO75に準じて、荷重0.45MPaにて熱変形温度を測定した。試験片の成形条件は、シリンダ温度220℃、金型温度60℃とした。
(6)MFR測定
ISO1133(温度220℃、98N荷重条件で測定)に準じて測定した。
(7)熱滞留シャルピー衝撃強度
試験片の成形条件は、シリンダ温度220℃で10分間滞留し、金型温度60℃に調整した金型内に射出し試験片を得た。その後の作業はISO179に準じて行った。
(8)熱滞留MFR測定
前記(6)のMFR測定の条件に加え、シリンダ内に10分さらに滞留させたものについて測定した。
(9)熱安定性評価
シャルピー衝撃強度とMFRにつき、初期値および熱滞留後の値をそれぞれ(I)、(H)として下記式より算出される変化率で熱滞留による耐久性を評価した。
シャルピー衝撃強度の変化率(%)=((I)−(H))/(I)×100
MFRの変化率(%)=((H)−(I))/(I)×100。
(10)成形品外観(ウェルド外観評価)
射出成形機(東芝機械株式会社製IS80)を使用して、シリンダ温度を220℃および金型温度を60℃にそれぞれ設定し、角板外寸70×240×2mmtでゲートから50mmの位置に直径40mmの円形の穴が存在する角板を成形した。その角板の円形穴の反ゲート側に形成されるウェルドの外観観察を目視にて行った。ウェルド部外観評価は、確認されるウェルドラインの長さによって以下の基準を設けて判定し、○を合格とした。
○:ウェルドラインが確認されない、または15mm未満
×:ウェルドラインが15mm以上。
(11)成形品外観(ブツ)
射出成形機(東芝機械株式会社製IS80)を使用して、シリンダ温度を250℃および金型温度を60℃にそれぞれ設定し、角板外寸70×240×2mmtの角板を成形した。得られた成形品の外観観察を目視にて行い、ブツの有無を確認した。
(12)安全・衛生面の確認
溶融コンパウンド時や得られたペレットの射出成形時の刺激臭の有無を確認した。
以下、実施例に使用した原料およびその製造方法等を示す。
[ポリ乳酸系樹脂(A)]
(A−1)NatureWorks社製のポリ乳酸樹脂(重量平均分子量210,000、D−乳酸単位1%、融点175℃のポリ−L−乳酸)
(A−2)NatureWorks社製のポリ乳酸樹脂(重量平均分子量120,000、D−乳酸単位1%、融点175℃のポリ−L−乳酸)。
[アクリル系樹脂(B)]
(B−1)
容量が20Lで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)0.05重量部をイオン交換水165重量部に溶解した溶液を添加して400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系で撹拌しながら添加し、60℃に昇温し重合を開始した。
メタクリル酸メチル 70重量部
スチレン 25重量部
アクリロニトリル 5重量部
t−ドデシルメルカプタン 0.33重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.31重量部。
30分かけて反応温度を65℃まで昇温したのち、120分かけて100℃まで昇温した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行なうことにより、ビーズ状のポリマーを得た。重量平均分子量は105,000であった。
(B−2)
単量体成分をメタクリル酸メチル67重量部、スチレン20重量部、アクリロニトリル13重量部に、t−ドデシルメルカプタン0.33重量部を0.35重量部に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.31重量部を0.4重量部に変更した以外は前記(B−1)と同様に懸濁重合を行った。重量平均分子量は114,000であった。
[グラフト共重合体(C)]
(C−1)
ポリブタジエン(重量平均粒子径0.35μm、ゲル含有率75%)50重量部
(日本ゼオン株式会社製“Nipol LX111A2”)(固形分換算)
オレイン酸カリウム 0.5重量部
ブドウ糖 0.5重量部
ピロリン酸1ナトリウム 0.5重量部
硫酸第一鉄 0.005重量部
脱イオン水 120重量部。
以上の物質を重合容器に仕込み、撹拌しながら65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として、メタクリル酸メチル35重量部、スチレン12.5重量部、アクリロニトリル2.5部、およびt−ドデシルメルカプタン0.3重量部を5時間かけて連続滴下した。並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25重量部、オレイン酸カリウム2.5重量部および純水25重量部からなる水溶液を、7時間で連続滴下し反応を完結させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソ−ダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥してパウダー状として得た。得られたグラフト共重合体のグラフト率は45%、重量平均分子量は75,000であった。
(C−2)
単量体成分をスチレン35重量部、スチレン15重量部に変更した以外は前記(B−1)と同様に乳化重合を行った。得られたグラフト共重合体のグラフト率は50%、メチルエチルケトン可溶分の固有粘度は0.30dl/g、重量平均分子量は83,000であった。
(C−3)カネカ製“カネエース”M511(コアシェルゴム:コア成分ポリブタジエン、シェル成分メタクリル酸メチル−スチレン共重合体)。
[エポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体(D)]
(D−1)BASF社製“JONCRYL ADR−4368”(エポキシ基含有スチレン−アクリル酸エステル共重合体:Mw(PMMA換算)8,000、エポキシ価3.5meq/g)
(D−2)BASF社製“JONCRYL ADR−4300”(エポキシ基含有スチレン−アクリル酸エステル共重合体:Mw(PMMA換算)6,500、エポキシ価2.2meq/g)
(D−3)東亞合成株式会社製“ARUFON UG−4035”(エポキシ基含有スチレン−アクリル酸エステル共重合体:Mw(PMMA換算)12,000、エポキシ価1.8meq/g。
[リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)]
(E−1)リン酸(0.5mol/L水溶液)(関東化学株式会社製)
(E−2)リン酸1ナトリウム無水物(大洋化学工業株式会社社製)。
[ジカルボン酸無水物(F)]
(F−1)マレイン酸無水物(東京化成工業株式会社製)。
[スチレン系樹脂(G)]
(G−1)
単量体成分をスチレン70重量部、アクリロニトリル30重量部に変更した以外は前記(B−1)と同様に懸濁重合を行った。重量平均分子量は114,000であった。
[実施例1〜19]
表1に記載の組成(重量部)からなる原料をドライブレンドした後、押出温度220℃に設定した2軸スクリュー押出機(株式会社日本製鋼所製“TEX−30”)を使用して溶融混練、ペレタイズを行い、得られたペレットを射出成形機(東芝機械株式会社製“IS55EPN射出成形機”)を用いて、成形温度220℃、金型温度50℃の条件で射出成形することにより得られた試験片について、各種特性評価を行った。評価結果を表1、表2にそれぞれ示す。実施例1〜19の結果から明らかなように、本発明のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性に代表される機械特性、耐熱性、熱安定性、さらには成形品の外観に優れ、かつポリ乳酸系樹脂の配合量が多いため、より環境に貢献することができる。
[比較例1〜9]
比較例1および2では、エポキシ基含有アクリル−スチレン系樹脂(D)が配合されていないため、熱変形温度が低い結果となった。
比較例3〜5では、エポキシ基含有アクリル−スチレン系樹脂(D−1)の配合量が本発明の範囲内であるものの、熱変形温度が70℃未満となった。
比較例6では、実施例2で使用したアクリル系樹脂(B−1)をスチレン系樹脂(G−1)に変更したところ、ウェルド外観が劣る結果となった。
比較例7では、実施例10で使用したエポキシ基含有アクリル−スチレン系樹脂(D−1)の配合量が多いため、熱変形温度は70℃以上となるも、成形品にブツが確認された。
比較例8では、ポリ乳酸系樹脂(A)の配合量が多いため熱変形温度は70℃未満となった。
比較例9では、アクリル系樹脂(B)が配合されておらず、シャルピー衝撃強度、熱変形温度が劣った。
Figure 2013245222
Figure 2013245222
本発明のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物は、機械物性、耐熱性、熱安定性、さらには成形外観に優れ、かつポリ乳酸系樹脂の配合量が多いため、フィルム、シート、繊維・布、不織布、射出成形品、押出成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、または他の材料との複合体などであり、自動車用資材、電機・電子機器用資材、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、便座、雑貨、またはその他の用途として有用であり、かつ環境への貢献度が大きい。

Claims (5)

  1. ポリ乳酸系樹脂(A)50超〜70重量部、アクリル系樹脂(B)5〜35重量部およびグラフト共重合体(C)10〜35重量部を配合し、さらに(A)〜(C)の合計100重量部に対して、エポキシ基含有アクリル−スチレン系重合体(D)を0.1〜10重量部配合してなる樹脂組成物であって、ISO75(荷重0.45MPa)に準拠して測定された熱変形温度が70℃以上であることを特徴とする、ポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。
  2. さらにリン酸及び/またはリン酸1ナトリウム(E)を(A)〜(C)の合計100重量部に対して0.01〜5重量部配合することを特徴とする、請求項1に記載のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。
  3. アクリル系樹脂(B)が、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(b1)65〜97重量%、芳香族ビニル系単量体(b2)1〜30重量%、シアン化ビニル系単量体(b3)2〜15重量%およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(b4)0〜20重量%が共重合されたアクリル系樹脂であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。
  4. グラフト共重合体(C)が、ゴム質重合体(r)に不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a)を含む単量体成分をグラフト重合したグラフト重合体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、成形品。
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