JP2013181046A - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 Download PDF

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祉康 内藤
Katsuya Ogawa
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Abstract

【課題】
本発明は、衝撃強度、耐熱性および熱安定性に優れた脂肪族ポリエステル樹脂の熱可塑性樹脂組成物ならびにその成形品を安全・衛生面で問題なく提供することを課題とする。
【解決手段】
樹脂成分として脂肪族ポリエステル樹脂(A)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)およびグラフト共重合体(C)を含有し、さらにリン酸および/またはリン酸1ナトリウム(F)を配合してなる、熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、衝撃強度、耐熱性と熱滞留による耐久性(以下、熱安定性、ともいう。)に優れ、低環境負荷である樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
従来の成形用材料は、ポリエチレン樹脂、ポリプロプレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂などあらゆる分野に使用されてきた。製品の使用後には、埋め立てや焼却処分されてきたため、半永久的な地中への残留または、焼却時の二酸化炭素の発生など地球環境に対し大きく負荷を与えてきた。近年、地球温暖化の要因として、温室効果ガスの1つである二酸化炭素の大気中の濃度上昇が指摘され、地球規模での二酸化炭素排出抑制の機運が高まってきている。さらに、化石資源も無限でないため、継続的な発展のため非化石資源の有効活用も更に注目されている。
このような環境保全の見地からバイオマスの活用が注目され化石資源原料の代替検討がなされている。成形用材料においても、化石資源使用量の削減および二酸化炭素排出量の抑制可能な植物由来の樹脂が注目されている。植物由来の樹脂として、ポリ乳酸樹脂をはじめとする脂肪族ポリエステルがその代表ではあるが、前記の既存石油系樹脂と比較して成形品の機械的強度や耐熱性(熱変形温度)が低下し、さらには樹脂の熱安定性も低下するため、ポリ乳酸をはじめとする脂肪族ポリエステルを使用できる適用範囲が狭くなっていた。また、脂肪族ポリエステルを使用することによる熱安定性の低下は、樹脂の流動特性に大きな影響を与えるため、安定した成形加工条件を得ることが困難になるほか、成形方法や成形機サイズなどにも大きな制約が発生してしまっていた。このような脂肪族ポリエステルの特徴は安定した物性保持を困難とするものであり、市場展開する際の量産化が難しくなり、今後より汎用樹脂として展開するに当たり大きな障害となっていた。
前述の脂肪族ポリエステルの課題を改善するため、これまでに各種改良検討が行われており、その改良手法としては、前記の既存樹脂とのポリマーアロイや改質剤添加する手法が盛んに行われている。
特許文献1には、ポリ乳酸樹脂とゴム強化スチレン系樹脂のアロイにおいて、(メタ)アクリル系樹脂成分やマレイミド系樹脂成分を配合し耐熱性が向上することが開示されているが熱安定性技術については十分に記載されていない。
特許文献2にはポリ乳酸樹脂とゴム強化樹脂、さらに(メタ)アクリル酸エステル系単量体とマレイン酸無水物やマレイミド系単量体の共重合体からなる樹脂組成物のアロイが開示され、耐熱性向上に加え成形品の外観向上することが記載されているも、成形加工時などの熱安定性については十分に検討されていない。
特許文献3では、ポリ乳酸、スチレン系樹脂、ならびにスチレン−無水マレイン酸の共重合体のアロイの記載があるも、該アロイを使用した発泡成形加工、ならびにその成形品に関するものであり、一般的に行われている射出成形加工や押出成形加工で得られた成形品の衝撃強度や耐熱性については十分に実施、検証されていない。
特許文献4では脂肪族ポリエステルにゴム強化スチレン系樹脂やアクリル系樹脂をアロイし、さらにジカルボン酸無水物を添加することで機械的強度と耐熱性の両者を向上できると開示あるも、耐熱性や熱安定性についての検討が不十分であり、更なる改良が必要であった。さらに、ジカルボン酸無水物としてマレイン酸無水物やコハク酸無水物の使用が好ましいと記載あるも原料の配合、押出機を使用したコンパウンド、その後の成形加工時に刺激臭が発生し、生産時の人体への影響を考慮した場合、安全・衛生面で問題があった。
特開2007−126535号公報 特開2009−209263号公報 特表2011−514417号公報 特開2007−191688号公報
本発明は、衝撃強度、耐熱性および熱安定性に優れた脂肪族ポリエステル樹脂の熱可塑性樹脂組成物ならびにその成形品を安全・衛生面で問題なく提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、脂肪族ポリエステル樹脂(A)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)、ゴム含有グラフト共重合体(C)、さらにリン酸および/またはリン酸1ナトリウム(F)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物とすることで、前記課題を解決できることが分かった。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(7)で構成される。
(1)樹脂成分として脂肪族ポリエステル樹脂(A)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)およびグラフト共重合体(C)を含有し、さらにリン酸および/またはリン酸1ナトリウム(F)を配合してなる、熱可塑性樹脂組成物。
(2)樹脂成分として、さらにスチレン系樹脂(D)を含有する、(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(3)樹脂成分として、さらにアクリル系樹脂(E)を含有する、(1)または(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(4)樹脂成分の合計量100重量部において、脂肪族ポリエステル(A)を5〜85重量部、スチレン無水マレイン酸共重合体(B)を10〜40重量部、ゴム含有グラフト共重合体(C)を5〜40重量部、スチレン系樹脂(D)を0〜85重量部およびアクリル系樹脂(E)を0〜20重量部含有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
(5)脂肪族ポリエステル樹脂(A)がポリ乳酸である、(1)〜(4)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
(6)樹脂成分の合計量100重量部に対して、リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(F)を0.01〜5重量部配合する、(1)〜(5)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、成形品。
本発明によれば、衝撃強度、耐熱性および熱安定性に優れた熱可塑性樹脂組成物ならびにその成形品を安全・衛生面で問題なく得ることができる。
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物について、具体的に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)、グラフト共重合体(C)、さらにリン酸および/またはリン酸1ナトリウム(F)を配合することを特徴とする。
本発明で使用される脂肪族ポリエステル樹脂(A)は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体などが挙げられる。具体的には、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体として、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ吉草酸、ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸またはポリカプロラクトンなどが挙げられ、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体としては、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートまたはポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエステル樹脂は、単独ないし2種以上を用いることができる。これらの脂肪族ポリエステル樹脂の中でも、ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体が好ましく、特に地球環境保全と持続可能な発展という観点より、ポリ乳酸が好ましく使用される。
ポリ乳酸としては、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とする重合体であるが、本発明の目的を損なわない範囲で、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。かかる他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などを使用することができる。これらの共重合成分は、単独ないし2種以上を用いることができる。
ポリ乳酸は、耐熱性の観点から乳酸成分の光学純度が高い方が好ましく、総乳酸成分の内、L体あるいはD体が80モル%以上含まれることが好ましく、さらには90モル%以上含まれることが好ましく、95モル%以上含まれることが特に好ましい。
また、耐熱性、成形加工性の点で、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを用いることも好ましい態様の一つである。ポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成させる方法としては、例えば、L体が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上のポリ−L−乳酸とD体が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上のポリ−D−乳酸を溶融混練や溶液混練などにより混合する方法が挙げられる。また、別の方法として、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸をブロック共重合体とする方法も挙げることができ、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを容易に形成させることができるという点で、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸をブロック共重合体とする方法が好ましい。
脂肪族ポリエステル樹脂(A)の製造方法としては、既知の重合方法を用いることができ、特にポリ乳酸については、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを採用することができる。
脂肪族ポリエステル樹脂(A)の分子量や分子量分布は、実質的に成形加工が可能であれば、特に限定されるものではないが、重量平均分子量としては、好ましくは1万以上、より好ましくは4万以上、特に好ましくは8万以上であるのがよい。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算の重量平均分子量である。
脂肪族ポリエステル樹脂(A)の融点は、特に限定されるものではないが、90℃以上であることが好ましく、さらに150℃以上であることが好ましい。
本発明で使用されるスチレン−無水マレイン酸共重合体(B)とは、スチレン単量体と無水マレイン酸単量体の共重合体であり、製造方法としてラジカル重合などの既知の重合方法を用いることができるほか、市販されているものを入手することも出来る。
スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)の重量平均分子量や分子量分布は実質的に成形加工が可能であれば特に制限されるものでは無いが、重量平均分子量としては、好ましくは10,000以上500,000以下、より好ましくは40,000以上400,000以下、さらに好ましくは80,000以上350,000であるのがよい。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)のガラス転移点(Tg)は、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上、特に好ましくは150℃以上であるのが良い。ガラス転移点(Tg)が130℃より低い場合、脂肪族ポリエステル(A)の含有量が多い場合、すなわちスチレン−無水マレイン酸共重合体(B)の含有量が少ない場合、十分な耐熱性を発現することが出来ず、該組成物の使用可能な範囲が狭くなってしまう。ガラス転移点(Tg)は示差走査熱量測定(DSC)にて測定することができる。
スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)には、本発明の特性を損なわない範囲で他の単量体成分を共重合可能であり、具体例としてα−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、メタクリル酸メチルやアクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体などが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
本発明で用いられるグラフト共重合体(C)とは、ゴム質重合体(r)の存在下で、単量体成分(c)を、公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、沈殿重合または乳化重合に供することにより、ゴム質重合体(r)に単量体成分をグラフト重合して得られるものである。なお、グラフト共重合体(C)には、ゴム質重合体(r)に単量体成分(c)がグラフト重合したグラフト共重合体だけでなく、ゴム質重合体(r)にグラフトしていない単量体成分(c)の重合体を含みうる。
ゴム質重合体(r)には特に制限はないが、ガラス転移温度が0℃以下のものが好適であり、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴムなどが好ましく使用でき、具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−イソプレン共重合体およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらのゴム質重合体のうちでは、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体およびアクリロニトリル−ブタジエン共重合体が、特に耐衝撃性の観点から好ましく用いられ、1種または2種以上の混合物で使用することが可能である。
ゴム質重合体(r)の重量平均粒子径には特に制限はないが、0.05〜1.0μm、特に0.1〜0.5μmの範囲であることが好ましい。ゴム質重合体の重量平均粒子径を0.05μm〜1.0μmの範囲とすることによって、優れた耐衝撃性を発現することができる。また、ゴム質重合体としては、1種または2種以上を用いることができ、耐衝撃性と流動性の点で、重量平均粒子径が異なるゴム質重合体を2種以上用いることが好ましく、例えば、重量平均粒子径が小さいゴム質重合体と重量平均粒子径が大きいゴム質重合体を併用する、いわゆるバイモーダルゴムを用いてもよい。
なお、ゴム質重合体(r)の重量平均粒子径は、「Rubber Age、Vol.88、p.484〜490、(1960)、by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法、つまりアルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める方法により測定することができる。
ゴム質重合体(r)のゲル含有率には特に制限はないが、耐衝撃性と耐熱性の点で、40〜99重量%であることが好ましく、60〜95重量%であることがより好ましく、70〜90重量%であることが特に好ましい。ここで、ゲル含有率は、トルエンを用いて室温で24時間抽出して不溶分の割合を求める方法により測定することができる。
グラフト共重合体(C)は、ゴム質重合体(r)が好ましくは10〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%の存在下に、単量体成分(c)を好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜70重量%をグラフト重合して得られる。ゴム質重合体の割合が前記の範囲未満でも、また前記の範囲を超えても、衝撃強度や表面外観が低下する場合がある。
グラフト共重合体(C)のグラフト成分を構成する単量体成分(c)は、好ましくは、少なくとも芳香族ビニル系単量体(c1)を含み、その他必要に応じてシアン化ビニル系単量体(c2)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(c3)、これらと共重合可能な他のビニル系単量体(c4)を含有する単量体混合物(c)である。
グラフト共重合体(C)を構成する芳香族ビニル系単量体(c1)には特に制限はなく、具体例としてはスチレンをはじめ、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、なかでもスチレンおよびα−メチルスチレンが好ましく用いられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
グラフト共重合体(C)を構成するシアン化ビニル系単量体(c2)には特に制限はなく、具体例としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、なかでもアクリロニトリルが好ましく用いられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
グラフト共重合体(C)を構成する不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(c3)には特に制限はないが、炭素数1〜6のアルキル基または置換アルキル基を持つアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが好適である。具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられるが、なかでもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
グラフト共重合体(C)を構成する他のビニル系単量体(c4)としては、芳香族ビニル系単量体(c1)、シアン化ビニル系単量体(c2)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(c3)と共重合可能であれば特に制限はないが、具体例としては、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸、フタル酸およびイタコン酸などのカルボキシル基または無水カルボキシル基を有するビニル系単量体、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、4,4−ジヒドロキシ−2−ブテンなどのヒドロキシル基を有するビニル系単量体、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテルおよびp−グリシジルスチレンなどのエポキシ基を有するビニル系単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレンなどのアミノ基およびその誘導体を有するビニル系単量体、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニル系単量体などが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
前述の通り、グラフト共重合体(C)は、ゴム質重合体(r)に単量体成分(c)がグラフトした構造をとったグラフト共重合体の他に、グラフトしていない重合体を含有したものである。グラフト共重合体(C)のグラフト率は特に制限がないが、耐衝撃性および光沢が均衡してすぐれる樹脂組成物を得るためには、10〜100重量%、特に20〜80重量%の範囲であることが好ましい。ここで、グラフト率は次式により算出される値である。
グラフト率(%)=[<ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系共重合体量>/<グラフト共重合体のゴム含有量>]×100。
グラフト共重合体(B)に含まれるグラフトしていない重合体の特性は特に制限されないが、テトラヒドロフラン溶媒を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したメチルエチルケトン可溶分の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は好ましくは10,000〜400,000の範囲、より好ましくは50,000〜150,000の範囲のものを使用することにより、耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。
前述の通り、グラフト共重合体(C)は、公知の重合法で得ることができる。例えば、ゴム質重合体ラテックスの存在下に単量体および連鎖移動剤の混合物と乳化剤に溶解したラジカル発生剤の溶液を連続的に重合容器に供給して乳化重合する方法などによって得ることができる。
本発明で用いられるスチレン系樹脂(D)とは、スチレンをはじめ、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体(d1)を公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、沈殿重合または乳化重合に供することにより得られるものであり、好ましくは、少なくとも芳香族ビニル系単量体(d1)を含み、その他必要に応じてシアン化ビニル系単量体(d2)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d3)およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(a4)が含まれた単量体混合物(d)を共重合して得られる共重合体である。なお、スチレン系樹脂(D)には、ゴム質重合体(r)に単量体成分をグラフト重合して得られるグラフト共重合体は含まれない。
スチレン系樹脂(D)を構成する芳香族ビニル系単量体(d1)については、具体例として、前述の通り、スチレンをはじめ、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、中でもスチレンまたはα−メチルスチレンが好ましく用いられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
スチレン系樹脂(D)を構成するシアン化ビニル系単量体(d2)についても特に制限はなく、具体例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、なかでもアクリロニトリルが好ましく用いられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
スチレン系樹脂(D)を構成する不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d3)については特に制限はないが、炭素数1〜6のアルキル基または置換アルキル基を持つアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが好適であり、具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられるが、なかでもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
スチレン系樹脂(D)を構成する他のビニル系単量体(d4)としては、芳香族ビニル系単量体(d1)、シアン化ビニル系単量体(d2)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d3)、と共重合可能であれば特に制限はなく、具体例として、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体などが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
スチレン系樹脂(D)の分子量には制限はないが、好ましくは、テトラヒドロフラン溶媒を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(ポリスチレン換算)が、10,000〜400,000の範囲、より好ましくは、50,000〜150,000の範囲のものを使用することにより、耐衝撃性および成形加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。
本発明で用いられるスチレン系樹脂(D)の具体例としては、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、MAS樹脂、MS樹脂等が挙げられる。また、本発明で用いられるスチレン系樹脂(D)は1種または2種以上を用いることができ、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d3)としてメタクリル酸メチルを共重合したスチレン系樹脂とメタクリル酸メチルを共重合してないスチレン系樹脂を併用することにより、耐衝撃性、耐熱性、表面外観性、着色性のいずれにも優れたものが得られる。
本発明で使用するアクリル系樹脂(E)とは、(メタ)アクリル酸アルキル系単量体の重合体または共重合体であり、スチレン系樹脂(A)、グラフト共重合体(B)、脂肪族ポリエステル(C)以外の重合体である。アクリル樹脂(E)の添加により、耐衝撃性を向上させることができる。
(メタ)アクリル酸アルキル系単量体としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、アクリル酸ジシクロペンタニル、ジアクリル酸ブタンジオール、ジアクリル酸ノナンジオール、ジアクリル酸ポリエチレングリコール、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ペンタメチルピペリジル、メタクリル酸テトラメチルピペリジル、メタクリル酸ベンジル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸プロピレングリコール、ジメタクリル酸ポリエチレングリコールなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、ラクトン環、マレイン酸無水物、グルタル酸無水物などの環構造単位を主鎖に含有する共重合体を用いることもできる。
本発明で用いられるアクリル系樹脂(E)としては、メタクリル酸メチル成分単位およびアクリル酸メチルを主成分とするアクリル系樹脂が好ましい。
また、アクリル系樹脂(E)の分子量や分子量分布は、実質的に成形加工が可能であれば、特に限定されるものではない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記樹脂成分に加えて、リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(F)を含有することを特徴とする。グラフト共重合体(C)はその製造過程によりアルカリ性を示すため、グラフト共重合体(C)を配合してなる樹脂組成物もアルカリ性を示す。リン酸および/またはリン酸1ナトリウムの配合により、コンパウンド時に中和を行い、脂肪族ポリエステル(A)のアルカリ分解を防止し熱安定性を向上させることが出来る。
さらに、スチレン−無水マレイン酸共重合体において、無水マレイン酸単位は特にアルカリ環境下で分解が進行しガスが発生、いわゆるシルバーの発生原因となり成形品の外観を悪化させる。リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(F)の配合により成形品の外観も良好な状態で維持することが出来る。
リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(F)は、樹脂組成物の原料配合や溶融コンパウンド、ならびに得られた樹脂組成物の成形時に発生する刺激臭による人体への安全・衛生面、樹脂組成物の熱安定性などの観点において、既に公知となっている有機酸など含めた他の中和剤よりも優れることを特徴とする。
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるリン酸および/またはリン酸1ナトリウム(F)の含有量は、樹脂組成物の合計100重量部に対し、0.01〜5重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜2重量部、さらに好ましくは0.1〜0.5重量部である。リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(F)の含有量が0.01重量部に満たない場合には、脂肪族ポリエステル(C)のアルカリ分解抑制、ならびにスチレン−無水マレイン酸共重合体(B)における無水マレイン酸単位の分解抑制の効果が十分に発揮されず、本発明の熱可塑性樹脂組成物の初期の耐衝撃性が低下するだけでなく、熱滞留において耐衝撃性の大幅な低下に加え、樹脂の溶融粘度が大幅に増加する。さらに、成形品外観が悪化する。一方、5重量部を超える場合には、成形品の表面外観が悪化するほか、熱滞留時に発泡しさらに外観が悪化することがある。
その他、グラフト共重合体(C)のアルカリ性の中和ができる酸性の物質であれば、本発明におけるリン酸および/またはリン酸1ナトリウム(F)の特性を損なわない範囲、また製造面での安全・衛生の観点で影響が発生しない範囲であれば、いかなるものでも使用することができる。具体的には、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンジカルボン酸、クエン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、安息香酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、フェノール、ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸などの有機酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、クエン酸、オルトフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸の酸無水物が挙げられる。リン酸またはリン酸1ナトリウム以外の前記化合物を併用する時、必ずしも1種で使用する必要は無く、併用することもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における脂肪族ポリエステル樹脂(A)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)、ゴム含有グラフト共重合体(C)、スチレン系樹脂(D)、アクリル系樹脂(E)の含有量は脂肪族ポリエステル樹脂(A)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)、ゴム含有グラフト共重合体(C)、スチレン系樹脂(D)、アクリル系樹脂(E)の合計量100重量部に対し、脂肪族ポリエステル(A)の配合量が5〜85重量部、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)の配合量が10〜40重量部、ゴム含有グラフト共重合体(C)の配合量が5〜40重量部、スチレン系樹脂(D)の配合量が0〜85重量部、アクリル系樹脂(E)の配合量が0〜20重量部が好ましい。
脂肪族ポリエステル(A)において、特にポリ乳酸系樹脂を使用する場合は、環境配慮という観点より5重量部以上の配合量が好ましく、さらに好ましくは30重量部以上、特に好ましくは50重量部以上である。該組成物の耐熱性、耐衝撃性の観点より85重量部以下が好ましい。
スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)の配合量は、該樹脂組成物への耐熱性の観点より10重量部以上が好ましい。スチレン−無水マレイン酸(B)が10重量部より少ない場合、十分な耐熱性を得ることが難しい。また、配合量が40重量部より多くなると、シルバー発生など成形品外観に影響を及ぼす可能性がある。
ゴム含有グラフト共重合体(C)の配合量は、該樹脂組成物への衝撃強度の観点より、5〜40重量部が好ましく、より好ましくは10〜40重量部である。配合量が5重量部より小さい場合は十分な衝撃強度を発現させることが出来ない。配合量が40重量部以上では、溶融コンパウンド時にゴム含有グラフト共重合体(C)の分散不良が発生し、シートでのブツ発生など成形品外観に影響をきたす可能性がある。
スチレン系樹脂(D)は該樹脂組成物が前記成分(A)〜(C)のみで構成される場合は、配合しない場合もある。環境への貢献、耐熱性、衝撃強度を考慮して前記成分の配合量を満足する範囲でスチレン系樹脂(D)を配合することが出来る。
アクリル系樹脂(E)は該樹脂組成物が前記成分(A)〜(C)のみで構成される場合は、配合しない場合もある。環境への貢献、耐熱性、衝撃強度を考慮して前記成分の配合量を満足する範囲でアクリル系樹脂(E)を配合することが出来る。アクリル系樹脂(E)の配合により衝撃強度を増加させることできる。アクリル系樹脂(E)の配合量は0〜20重量部が好ましく、それ以上配合しても大きな効果は得られない。
本発明においては、耐熱性が向上するという観点から、さらに結晶核剤を含有することが好ましい。結晶核剤としては、一般にポリマーの結晶核剤として用いられるものを特に制限なく用いることができ、無機系結晶核剤および有機系結晶核剤のいずれをも使用することができ、単独ないし2種以上用いることができる。
無機系結晶核剤の具体例としては、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、マイカ、合成マイカ、クレー、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウムおよびフェニルホスホネートの金属塩などが挙げられ、耐熱性を向上させる効果が大きいという観点から、タルク、カオリナイト、モンモリロナイトおよび合成マイカが好ましい。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。これらの無機系結晶核剤は、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていることが好ましい。
無機系結晶核剤の含有量は、脂肪族ポリエステル(A)100重量部に対して、0.01〜100重量部が好ましく、0.05〜50重量部がより好ましく、0.1〜30重量部がさらに好ましい。
有機系結晶核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸1ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸1ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレートなどの有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)などのカルボン酸アミド、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、高融点ポリ乳酸などのポリマー、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩などのカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩またはカリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートなどのリン化合物金属塩および2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウムなどが挙げられ、耐熱性を向上させる効果が大きいという観点からは、有機カルボン酸金属塩およびカルボン酸アミドが好ましい。これらは単独ないし2種以上用いることができる。
有機系結晶核剤の含有量は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜30重量部が好ましく、0.05〜10重量部がより好ましく、0.1〜5重量部がさらに好ましい。
本発明においては、耐熱性が向上するという観点から、さらに可塑剤を含有することが好ましい。可塑剤としては、一般にポリマーの可塑剤として用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えばポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤及びエポキシ系可塑剤などを挙げることができ、単独ないし2種以上用いることができる。
ポリエステル系可塑剤の具体例としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの酸成分と、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール成分からなるポリエステルやポリカプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルなどを挙げることができる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸もしくは単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物などで末端封鎖されていてもよい。
グリセリン系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレートおよびグリセリンモノアセトモノモンタネートなどを挙げることができる。
多価カルボン酸系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシルなどのトリメリット酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシルアジピン酸エステルなどのセバシン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、およびセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのセバシン酸エステルなどを挙げることができる。
ポリアルキレングリコール系可塑剤の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロック及び/またはランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物および末端エーテル変性化合物などの末端封鎖化合物などを挙げることができる。
エポキシ系可塑剤とは、一般にはエポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリドなどを指すが、その他にも、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂も可塑剤として使用することができる。
その他の可塑剤の具体例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートなどの脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチルなどのオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイルおよびパラフィン類などを挙げることができる。
なお、本発明で好ましく使用される可塑剤としては、前記に例示したものの中でも、特にポリエステル系可塑剤及びポリアルキレングリコール系可塑剤から選択した少なくとも1種が好ましい。
可塑剤の含有量は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲が好ましく、0.1〜20重量部の範囲がより好ましく、0.5〜10重量部の範囲がさらに好ましい。
本発明においては、結晶核剤と可塑剤を各々単独で用いてもよいが、これらを併用して用いることが好ましい。
本発明においては、耐熱性が向上するという観点から、さらに無機系結晶核剤以外の充填剤を含有することが好ましい。無機系結晶核剤以外の充填剤としては、通常熱可塑性樹脂の強化に用いられる繊維状、板状、粒状、粉末状のものを用いることができる。具体的には、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラストナイト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化硅素繊維及びホウ素繊維などの無機繊維状充填剤、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、再生セルロース繊維、アセテート繊維、ケナフ、ラミー、木綿、ジュート、麻、サイザル、亜麻、リネン、絹、マニラ麻、さとうきび、木材パルプ、紙屑、古紙及びウールなどの有機繊維状充填剤、ガラスフレーク、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、セリサイト、ベントナイト、ドロマイト、微粉珪酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、珪酸アルミニウム、酸化珪素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土などなどの板状や粒状の充填剤が挙げられる。これらの充填剤の中では、無機繊維状充填剤が好ましく、特にガラス繊維、ワラストナイトが好ましい。また、有機繊維状充填剤の使用も好ましく、脂肪族ポリエステル樹脂の生分解性を生かすという観点から、天然繊維や再生繊維がさらに好ましい。また、配合に供する繊維状充填剤のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は5以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましく、20以上であることがさらに好ましい。
また、前記の充填剤は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理されていてもよい。
充填剤の含有量は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜200重量部が好ましく、0.5〜100重量部がより好ましい。
本発明においては、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の加水分解抑制による衝撃強度に代表される機械的特性の維持という観点から、さらにカルボキシル基反応性末端封鎖剤を含有することが好ましい。カルボキシル基反応性末端封鎖剤としては、ポリマーのカルボキシル末端基を封鎖することのできる化合物であれば特に制限はなく、ポリマーのカルボキシル末端の封鎖剤として用いられているものを用いることができる。本発明においてかかるカルボキシル基反応性末端封鎖剤は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の末端を封鎖するのみではなく、天然由来の有機充填剤の熱分解や加水分解などで生成する乳酸やギ酸などの酸性低分子化合物のカルボキシル基も封鎖することができる。また、前記末端封鎖剤は、熱分解により酸性低分子化合物が生成する水酸基末端も封鎖できる化合物であることがさらに好ましい。
このようなカルボキシル基反応性末端封鎖剤としては、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を使用することが好ましく、なかでもエポキシ化合物および/またはカルボジイミド化合物が好ましい。
カルボキシル基反応性末端封鎖剤の含有量は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲が好ましく、0.05〜5重量部の範囲がより好ましい。
カルボキシル基反応性末端封鎖剤の添加時期は、特に限定されないが、耐熱性を向上するだけでなく、機械特性や熱安定性を向上できるという点で、脂肪族ポリエステル樹脂(A)と予め溶融混練した後、その他のものと混練することが好ましい。
本発明において、本発明の目的を損なわない範囲で安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤など)、滑剤、離型剤、難燃剤、染料または顔料を含む着色剤、帯電防止剤、発泡剤などを添加することができる。
本発明において、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、芳香族および脂肪族ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族および脂肪族ポリケトン樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ビニルエステル系樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂など)または熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)などの少なくとも1種以上をさらに含有することができる。これらの樹脂を配合することで、優れた特性を有する成形品を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に配合されうる前記の種々の添加剤は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する任意の段階で配合することが可能であり、例えば、樹脂成分を配合する際に同時に添加する方法や、予め少なくとも2成分の樹脂を溶融混練した後に添加する方法が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、例えば、樹脂成分およびリン酸および/またはリン酸1ナトリウム(F)、ならびに必要に応じて結晶核剤、可塑剤、充填剤、その他の添加剤を予めブレンドした後、樹脂成分の融点以上において一軸または二軸押出機で均一に溶融混練する方法が揚げられるほか、脂肪族ポリエステル樹脂(A)のアルカリ分解抑制、スチレン−無水マレイン酸共重合体の無水マレイン酸単位の分解及びガス発生抑制の観点より、あらかじめグラフト共重合体(C)およびスチレン系樹脂(D)、アクリル系樹脂(E)ならびにリン酸および/またはリン酸1ナトリウム(F)、必要に応じて結晶核剤、可塑剤、充填剤、その他の添加剤をブレンドした後、樹脂成分の融点以上において一軸または二軸押出機で均一に溶融混練したのち、次いで脂肪族ポリエステル(A)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)を溶融混練する方法が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度は、成形品の使用環境を満足できれば特に制限されるものではないが、適用範囲をさらに広げるという観点で、ISO179で評価されるシャルピー衝撃強さで5kJ/m以上が好ましい。シャルピー衝撃強さが5kJ/mより小さい場合は、成形時の大きさなどによっては取り出し時の割れ、成形品の形状によっては落下時の割れなどが懸念される場合もある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐熱性は、成形品の使用環境を満足できれば特に制限されるものではないが、適用範囲をさらに広げるという観点で、ISO75で評価される荷重たわみ温度(0.45MPa)で70℃以上が好ましい。荷重たわみ温度が70℃以下では成形時の厚みによっては、取り出し時の変形や、これを回避するために冷却時間を延長させた場合、成形サイクルが延長し生産効率の低下が懸念される場合もある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の熱安定性は機械的特性を代表するシャルピー衝撃強度と成形性に影響を及ぼすMFRにて確認することができる。初期値および熱滞留後の値をそれぞれ(I)、(H)として下記式より算出される変化率により熱安定性評価し、変化率が20%以下であることが好ましく、より好ましくは変化率が0%であることが好ましい。変化率が20%より大きいと使用される用途で必要とされる機械的特性が十分に確保できないほか、成形条件が安定せず良品を容易に得ることが難しくなることがある。
シャルピー衝撃強度の変化率(%)=((I)−(H))/(I)×100
MFRの変化率(%)=((H)−(I))/(I)×100。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、通常公知の射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形などの任意の方法で成形することができ、あらゆる形状の成形品として広く用いることができる。成形品とは、フィルム、シート、繊維・布、不織布、射出成形品、押出成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、または他の材料との複合体などであり、自動車用資材、電機・電子機器用資材、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、便座、雑貨の用途として有用である。
本発明を更に具体的にかつ詳細に説明するため、以下に実施例を挙げるが、これらの実施例は本発明を何ら制限するものではない。なお、ここで特に断りのない限り「%」は重量%を示す。
(1)重量平均分子量
重量平均分子量は、Water社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を用い、示差屈折計を検出器(Water2414)とし、カラムにポリマーラボラトリーズ社製MIXED−B(2本)、留出液の流速を1ml/min、カラム温度40℃の条件で測定した。脂肪族ポリエステル樹脂(A)については留出液にヘキサフルオロイソプロパノールを使用し、ポリメタクリル酸メチル換算の重量平均分子量、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)、グラフト共重合体(C)に含まれるグラフトしていない重合体、およびスチレン系樹脂(D)については留出液にテトラヒドロフランを使用し、ポリスチレン換算の重量平均分子量、アクリル系樹脂(E)については留出液にテトラヒドロフランを使用し、ポリメタクリル酸メチル換算の重量平均分子量にてそれぞれ重量平均分子量を測定した。
(2)スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)のガラス転移点(Tg)
スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)のガラス転移点(Tg)は、SHIMADZU製DSC−60を用いて、試料10mg、窒素雰囲気下中、昇温速度20℃/分で250℃まで昇温し、DSC曲線を得た後、ピーク解析により測定した。
(3)グラフト共重合体(C)におけるゴム質重合体(r)の重量平均粒子径
「Rubber Age、Vol.88、p.484〜490、(1960)、by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法、即ち、アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率から累積重量分率50%の重量平均粒子径を求めた。
(4)グラフト共重合体(C)のグラフト率
80℃の温度で4時間真空乾燥を行ったゴム含有グラフト共重合体(A)の所定量(m;1g)にアセトン100mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過し、この不溶分を80℃の温度で4時間真空乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式により算出した。ここでLは、ゴム含有グラフト共重合体のゴム含有率である。
グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100。
(5)シャルピー衝撃強度
ISO179に準じて測定した。試験片の成形条件は、シリンダ温度220℃、金型温度60℃とした。
(6)MFR測定
ISO1133(温度220℃、98N荷重条件で測定)に準じて測定した。
(7))耐熱性評価(熱変形温度測定)
ISO75−1,2に準じて測定した。試験片の成形条件は、シリンダ温度220℃、金型温度60℃とした。
(8)熱滞留シャルピー衝撃強度
試験片の成形条件は、シリンダ温度220℃で10分間滞留し、金型温度60℃に調整した金型内に射出し試験片を得た。その後の作業はISO179に準じて行った。
(9)熱滞留MFR
前記(6)のMFR測定の条件に加え、シリンダ内に10分さらに滞留させたものについて測定した。
(10)熱安定性評価
シャルピー衝撃強度とMFRにつき、初期値および熱滞留後の値をそれぞれ(I)、(H)として下記式より算出される変化率により熱安定性評価を行った。変化率が小さいほど熱安定性に優れる。
シャルピー衝撃強度の変化率(%)=((I)−(H))/(I)×100
MFRの変化率(%)=((H)−(I))/(I)×100。
(10)安全・衛生面の確認
溶融コンパウンド時や得られたペレットの射出成形時の刺激臭の有無を確認した。
(11)成形品シルバー
得られたペレットを射出成形機(NISSEI PS60E−12A)を用いて成形温度250℃、金型温度60℃の条件で、70mm×240mm×2mm厚の金型を使用して射出成形し、得られた成形品に対しシルバーの発生有無を確認した。
以下、実施例に使用した原料およびその製造方法等を示す。
[脂肪族ポリエステル樹脂(A)]
<A−1>ポリ乳酸
NatureWorks社製のポリ乳酸(重量平均分子量200,000、D−乳酸単位1%、融点175℃のポリ−L−乳酸)。
[スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)]
スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)−1、(B)−2ともにPOLYSCOPE社製“XIRAN”を使用した。
<(B)−1>
“XIRAN SZ23110”(重量平均分子量110,000、無水マレイン酸単位含有量23重量%、ガラス転移点152℃)。
<(B)−2>
“XIRAN SZ26120”(重量平均分子量120,000、無水マレイン酸単位含有量26重量%、ガラス転移点160℃)。
[グラフト共重合体(C)]
<(C)−1の製造方法>
ポリブタジエン(重量平均粒子径0.35μm、ゲル含有率76重量%) 50重量部
(日本ゼオン株式会社製“Nipol LX111A2”)(固形分換算)
オレイン酸カリウム 0.5重量部
ブドウ糖 0.5重量部
ピロリン酸1ナトリウム 0.5重量部
硫酸第一鉄 0.005重量部
脱イオン水 120重量部。
以上の物質を重合容器に仕込み、撹拌しながら65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として、スチレン35重量部、アクリロニトリル15部、およびt−ドデシルメルカプタン0.3重量部を5時間かけて連続滴下した。並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25重量部、オレイン酸カリウム2.5重量部および純水25重量部からなる水溶液を、7時間で連続滴下し反応を完結させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソ−ダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥してパウダー状として得た。得られたグラフト共重合体(C)−1のグラフト率は50%、メチルエチルケトン可溶分の重量平均分子量は90,000であった。
<C−2>
単量体成分をメタクリル酸メチル35重量部、スチレン12.5重量部、アクリロニトリル2.5重量部に変更した以外は前記(C)−1と同様に乳化重合を行った。得られたグラフト共重合体のグラフト率は45%、メチルエチルケトン可溶分の重量平均分子量は81,000であった。
[スチレン系樹脂(D)]
<(D)−1の製造方法>
容量が20Lで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)0.05重量部をイオン交換水165重量部に溶解した溶液を添加して400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系で撹拌しながら添加し、60℃に昇温し重合を開始した。
スチレン 70重量部
アクリロニトリル 30重量部
t−ドデシルメルカプタン 0.33重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.31重量部。
30分かけて反応温度を65℃まで昇温したのち、120分かけて100℃まで昇温した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行なうことにより、ビーズ状のポリマーを得た。得られたスチレン系樹脂(D)−1の重量平均分子量は138,000であった。
<(D)−2の製造方法>
単量体成分をメタクリル酸メチル70重量部、スチレン25重量部、アクリロニトリル5重量部に変更した以外は前記(D)−1と同様に懸濁重合を行った。得られたスチレン系樹脂(D)−2の重量平均分子量は95,000であった。
[アクリル系樹脂(E)]
<(E)−1>メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合物“スミペックスMH”(住友化学株式会社製)
<(E)−2>メタクリル酸アルキル−アクリル酸アルキル共重合体“メタブレンP530A”(三菱レイヨン株式会社製)。
[リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(F)]
<(F)−1>リン酸(0.5mol/L)(関東化学株式会社製)
<(F)−2>リン酸1ナトリウム無水物(太洋化学工業株式会社製)。
[ジカルボン酸無水物(G)]
比較例9〜10においては、リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(G)の代わりに以下のジカルボン酸無水物(G)を使用した。
<(G)−1>マレイン酸無水物(東京化成工業株式会社製)
<(G)−2>コハク酸無水物(東京化成工業株式会社製)。
[実施例1〜13、比較例1〜11]
表1、表2に記載の組成(重量部)からなる原料をドライブレンドした後、押出温度220℃に設定した2軸スクリュー押出機(株式会社日本製鋼所製“TEX−30”)を使用して溶融混練、ペレタイズを行い、得られたペレットを射出成形機(東芝機械株式会社製“IS55EPN射出成形機”)を用いて、成形温度220℃、金型温度60℃の条件で射出成形することにより得られた試験片について、各種特性評価を行った。評価結果を表1、表2にそれぞれ示す。実施例1〜13の結果から明らかなように、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)、グラフト共重合体(C)、ならびにリン酸および/またはリン酸1ナトリウムの配合により、脂肪族ポリエステル樹脂(A)を同量配合した比較例と比較するといずれも衝撃強度と耐熱性および熱安定性に優れ、生産時の安全・衛生面でも優れることが分かる。また、実施例6〜13の脂肪族ポリエステル樹脂(A)が多く配合されている系でも必要最低限の衝撃強度と耐熱性が維持されていた。また、実施例1〜9、11〜13では成形品外観においても優れていた。
Figure 2013181046
Figure 2013181046
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、衝撃強度、耐熱性、さらには熱安定性に優れているため、フィルム、シート、繊維・布、不織布、射出成形品、押出成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、または他の材料との複合体などであり、自動車用資材、電機・電子機器用資材、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、便座、雑貨、またはその他の用途として有用である。

Claims (7)

  1. 樹脂成分として脂肪族ポリエステル樹脂(A)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B)およびグラフト共重合体(C)を含有し、さらにリン酸および/またはリン酸1ナトリウム(F)を配合してなる、熱可塑性樹脂組成物。
  2. 樹脂成分として、さらにスチレン系樹脂(D)を含有する、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 樹脂成分として、さらにアクリル系樹脂(E)を含有する、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 樹脂成分の合計量100重量部において、脂肪族ポリエステル(A)を5〜85重量部、スチレン無水マレイン酸共重合体(B)を10〜40重量部、ゴム含有グラフト共重合体(C)を5〜40重量部、スチレン系樹脂(D)を0〜85重量部およびアクリル系樹脂(E)を0〜20重量部含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 脂肪族ポリエステル樹脂(A)がポリ乳酸である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 樹脂成分の合計量100重量部に対して、リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(F)を0.01〜5重量部配合する、請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、成形品。
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