JP7067253B2 - 水性塗料組成物 - Google Patents
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Description
このようなポリエステル系水性塗料組成物としては、例えば、カルボキシル基を有する芳香族ポリエステル樹脂を主体とするものであって、10~30mgKOH/gの酸価(AV)と、3000~10000の数平均分子量(Mn)とを有するものを用い、これを硬化剤、前記ポリエステル樹脂に対する中和剤、及び共溶剤と組み合わせたことを特徴とする硬化性、耐レトルト性に優れた金属包装体用塗料が提案されている(特許文献1)。
また特許文献2のように、酸価が高いポリエステル樹脂を用いた場合には、硬化剤との反応点(架橋点)が多くなることで硬化性には優れるものの、架橋密度が高くなり過ぎることで成形時に塗膜が割れやすくなり、過酷な加工に耐えることができず、充分な加工性を得ることができなかった。
従って本発明の目的は、加工性に優れると共に、硬化性や耐食性等の塗膜性能に優れた塗膜を形成可能なポリエステル樹脂系の水性塗料組成物を提供することである。
本発明の水性塗料組成物においては、前記ポリエステル樹脂が、Tgが35℃~100℃のポリエステル樹脂(A)と、Tgが-30℃~25℃のポリエステル樹脂(B)を混合して成り、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の重量比が(A):(B)=98:2~10:90であること、が好適である。
本発明によれば更に、上記水性塗料組成物から成る塗膜が形成されて成ることを特徴とする塗装金属容器又は塗装金属蓋が提供される。
本発明の塗料組成物において、主剤となるポリエステル樹脂は、酸価が5mgKOH/g以上30mgKOH/g未満、特に10~29mgKOH/gの範囲にあることが重要である。
すなわち本発明においては、主剤となるポリエステル樹脂が適度なカルボキシル基量(酸価)を有することが、硬化性及び加工性、更に塗膜の密着性を兼ね備える上で重要になる。上記範囲よりも酸価が小さい場合には、硬化剤との架橋点となるカルボキシル基が少なく充分な硬化性を得ることができないと共に、塗膜と金属基体間の密着性に寄与するカルボキシル基が少ないため、塗膜の密着性が劣るようになる。一方上記範囲よりも酸価が大きい場合には、硬化剤との架橋点が多くなることで硬化性には優れるものの、架橋密度が過度に高くなりやすく、加工性が劣るようになる。
なお、上記範囲よりも酸価が大きい場合においても、硬化剤の配合量を少なくするなど調整すれば架橋密度を低く抑えることは可能であるが、その場合においては、架橋に用いられない遊離のカルボキシル基が塗膜に残存することになるため、塗膜の耐水性に劣るようになり、結果として充分な耐食性が得られない。
水分散性ポリエステル樹脂及び水溶性ポリエステル樹脂は、親水基を成分として含むポリエステル樹脂であり、これらの成分は、ポリエステル分散体表面に物理吸着されていてもよいが、ポリエステル樹脂骨格中に共重合されていていることが特に好ましい。
親水基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、又はこれらの誘導体や金属塩、エーテル等であり、これらを分子内に含むことにより水に分散可能な状態で存在することができる。
親水性基を含む成分としては、具体的には無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のカルボン酸無水物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン等の水酸基含有ポリエーテルモノマー、5-スルホイソフタル酸、4-スルホナフタレン-2,7-ジカルボン酸、5(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸等のスルホン酸含有モノマーの金属塩、又はアンモニウム塩等を挙げることができる。
本発明においては、ポリエステル樹脂としては、親水基としてカルボキシル基を有するカルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂及び/又はカルボキシル基含有水溶性ポリエステル樹脂を好適に用いることができる。
本発明においては、耐食性や耐レトルト性、フレーバー性等の観点からポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分に占めるテレフタル酸やイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸の割合が60モル%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましい。
その場合においても、下記式(1)により算出されるポリエステル樹脂ブレンドのTgmixが上記のTg範囲にあれば良い。
1/Tgmix=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+…+(Wm/Tgm)
・・・(1)
W1+W2+…+Wm=1
式中、Tgmixはポリエステル樹脂ブレンドのガラス転移温度(K)を表わし、Tg1,Tg2,…,Tgmは使用する各ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂1,ポリエステル樹脂2,…ポリエステル樹脂m)単体のガラス転移温度(K)を表わす。また、W1,W2,…,Wmは各ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂1,ポリエステル樹脂2,…ポリエステル樹脂m)の重量分率を表わす。
本発明においては、主剤であるポリエステル樹脂が有するカルボキシル基と架橋反応可能な官能基を有する特定の硬化剤を用いることが重要な特徴である。
本発明に用いる硬化剤における前記官能基の官能基当量としては、30~500g/eqであることが好ましく、特に40~200g/eqの範囲にあることが好ましい。なお、本発明における官能基当量とは、分子量を硬化剤1分子当たりの官能基数(ここで言う官能基は主剤ポリエステル樹脂のカルボキシル基と架橋反応可能な官能基を指す)で除した値であり、硬化剤の前記官能基1個当たりの分子量を意味し、例えばエポキシ当量などで表される。官能基当量が上記範囲よりも小さいと架橋点間距離を長くとることができないため、塗膜の柔軟性が低下し、加工性が劣る。一方で上記範囲よりも大きすぎると硬化性が不足し、加工性、耐レトルト性が劣る。
また、硬化剤の平均分子量は1000以下であることが好ましい。上記範囲よりも大きいと、主剤のポリエステル樹脂との相溶性が低下するおそれがあり、反応性が低下する場合がある。さらに、硬化剤1分子当たりの平均官能基数が3以上であることが、良好な硬化性を得る上で好ましい。
従って硬化剤としては、ポリエステル樹脂のカルボキシル基との反応性を有する官能基として、上述した理由により、硬化剤同士の自己縮合反応を誘発しにくい官能基を有する硬化剤が好ましく、そのような官能基としては、例えばエポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アミノ基、水酸基(ただし、レゾール型フェノール樹脂やアミノ樹脂等に含まれる自己縮合性メチロール基由来の水酸基やシランカップリング剤等に含まれる自己縮合性シラノール基由来の水酸基は除く)、β-ヒドロキシアルキルアミド基等が挙げられる。それらの中でもエポキシ基、オキサゾリン基、β-ヒドロキシアルキルアミド基を有する硬化剤が好ましく、特にβ-ヒドロキシアルキルアミド基を有する硬化剤を好適に使用することができる。
β-ヒドロキシアルキルアミド基を有する硬化剤としては、β―ヒドロキシアルキルアミド化合物が挙げられ、例えば下記一般式〔I〕で示されるものが挙げられる。
一般式〔I〕;
[HO―CH(R1)―CH2―N(R2)―CO―]m―A―[―CO―N(R2’)―CH2―CH(R1’)―OH]n
[式中、R1およびR1’は水素原子又は炭素数1から5までのアルキル基、R2およびR2’は水素原子又は炭素数1から5までのアルキル基又は一般式〔II〕で示されるもの、Aは多価の有機基、mは1又は2、nは0から2(mとnの合計は少なくとも2である。)を表わす。]
[式中、R3は水素原子又は炭素数1から5までのアルキル基を表わす。]
また、前記一般式〔I〕におけるmとnの合計は、2又は3又は4であることが好ましい。
上記一般式〔I〕で示されるもの中でも、硬化剤として用いるβ-ヒドロキシアルキルアミド基含有硬化剤(β-ヒドロキシアルキルアミド化合物)としては、特にN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド[CAS:6334-25-4、分子量:約320、官能基当量:約80g/eq、1分子当たりの官能基数:4、製品例:EMS社製Primid XL552]やN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)アジポアミド[CAS:57843-53-5、分子量:約376、官能基当量:約95g/eq、1分子当たりの官能基数:4、製品例:EMS社製Primid QM1260]が好ましい。これらの中でも、硬化性や耐レトルト性の観点からN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)アジポアミドを用いることがより好ましい。N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジポアミドに比べて、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)アジポアミドの方が、ポリエステル樹脂との反応性が高く、硬化性に優れると共に、より緻密な架橋構造を形成することで、レトルト時にも塗膜が白化しにくく、耐レトルト性に優れた塗膜を形成することができる。
エポキシ基を有する硬化剤としては、例えばポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等の水に溶解するポリエポキシ化合物が好ましく、具体的には、ナガセケムテックス株式会社製デナコールEX-314[分子量:約320、官能基(エポキシ)当量:約144g/eq]、EX-421[分子量:約440、官能基(エポキシ)当量:約159g/eq]、EX-611[分子量:約630、官能基(エポキシ)当量:約167g/eq]が挙げられる。
オキサゾリン基を有する硬化剤としては、例えばオキサゾリン誘導体を含むモノマー組成物を重合させた水溶性重合体が挙げられ、そのようなオキサゾリン誘導体としては、例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等が挙げられる。また、オキサゾリン誘導体を含むモノマー組成物に含まれるオキサゾリン誘導体以外のモノマーとしては、オキサゾリン誘導体と共重合し、かつ、オキサゾリン基に対して不活性な化合物であればよく、特に限定されるものではない。オキサゾリン基含有重合体中において、オキサゾリン誘導体に由来する構造単位が占める割合としては、5質量%以上であることが好ましい。具体的には、株式会社日本触媒製エポクロスWS-300[数平均分子量:約4万、官能基(オキサゾリン)当量:約130g/eq]、エポクロスWS-700[数平均分子量:約2万、官能基(オキサゾリン)当量:約220g/eq]が挙げられる。
また、ポリエステル樹脂のカルボキシル基量に対する硬化剤の官能基量(β-ヒドロキシアルキルアミド基等)としては、0.2~3.0当量の範囲が好ましく、0.5~2.5当量の範囲が更に好ましい。
本発明の水性塗料組成物は上述したポリエステル樹脂及び硬化剤、並びに水性媒体を含有する。水性媒体としては、公知の水性塗料組成物と同様に、水、或いは水とアルコールや多価アルコール、その誘導体等の有機溶剤を混合したものを水性媒体として用いることができる。有機溶剤を用いる場合には、水性塗料組成物中の水性媒体全体に対して、1~45質量%の量で含有することが好ましく、特に5~30質量%の量で含有することが好ましい。上記範囲で溶剤を含有することにより、製膜性能が向上する。
このような有機溶媒としては、両親媒性を有するものが好ましく、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n―ブタノール、エチレングリコール、メチルエチルケトン、ブチルセロソルブ、カルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールエチレングリコールモノブルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メチル3-メトキシブタノールなどが挙げられる。
本発明の水性塗料組成物において、ポリエステル樹脂に水分散性又は水溶性を付与するために、ポリエステル樹脂のカルボキシル基を中和可能な塩基性化合物が含有されていることが好ましい。塩基性化合物としては塗膜形成時の焼付で揮散する化合物、すなわち、アンモニア及び/又は沸点が250℃以下の有機アミン化合物などが好ましい。
具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン等のアルキルアミン類、2-ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、ジメチルアミノメチルプロパノール等アルコールアミン類等が使用される。またエチレンジアミン、ジエチレントリアミン等多価アミンも使用できる。更に、分岐鎖アルキル基を有するアミンや複素環アミンも好適に使用される。分岐鎖アルキル基を有するアミンとしては、イソプロピルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、イソアミルアミン等の炭素数3~6、特に炭素数3~4の分岐鎖アルキルアミンが使用される。複素環アミンとしては、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン等の1個の窒素原子を含む飽和複素環アミンが使用される。
本発明においては、上記の中でもトリエチルアミン、又は2-ジメチルアミノエタノールを好適に使用することができ、その使用量は、カルボキシル基に対して0.5~1.5当量で用いるのがよい。
本発明の水性塗料組成物には、必要に応じてポリエステル樹脂と硬化剤の架橋反応を促進する目的で従来公知の硬化触媒を配合しても良い。
硬化触媒としては、従来公知の硬化触媒を用いることができ、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、またはこれらのアミンブロック化物等の酸触媒、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物、有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物、アルカリ金属次亜リン酸塩、アルカリ金属亜リン酸塩、次亜リン酸、アルキルホスフィン酸等のリン系化合物などを使用することができる。
硬化触媒は、ポリエステル樹脂の固形分100質量部に対して、0.1~5質量部の範囲で配合することが好ましい。上記範囲よりも硬化触媒の配合量が少ない場合には、硬化触媒を配合することにより得られる硬化反応促進効果を充分に得ることができない。一方上記範囲よりも硬化触媒の配合量が多い場合には、それ以上の効果が望めず、経済性に劣る。
本発明の水性塗料組成物には、必要に応じ潤滑剤を含有することができる。ポリエステル樹脂100質量部に対し、潤滑剤0.1質量部~10質量部を加えることが好ましい。
潤滑剤を加えることにより、缶蓋等の成形加工時の塗膜の傷付きを抑制でき、また成形加工時の塗膜の滑り性を向上させることができる。
本発明の水性塗料組成物には、上記成分の他、従来より塗料組成物に配合されている、レベリング剤、顔料、消泡剤等を従来公知の処方に従って添加することもできる。
また、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリエステル樹脂と併せてその他の樹脂成分が含まれていても良く、例えばポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、アクリルアミド系化合物、ポリエチレンイミン、澱粉、アラビアガム、メチルセルロース等の水分散或いは水溶性樹脂が含まれていても良い。
本発明の水性塗料組成物の焼き付け条件は、ポリエステル樹脂、硬化剤、金属基材の種類、塗工量等によって適宜調節されるが、本発明の水性塗料組成物は、充分な硬化性を得るために、焼付け温度が150℃~350℃、好ましくは200℃より高く320℃以下の温度で、5秒以上、好ましくは5秒~30分間、より好ましくは8秒~180秒間、特に好ましくは10秒~120秒間の条件で加熱硬化させることが好ましい。
また形成する塗膜の膜厚はこれに限定されるものではないが、乾燥膜厚で0.5~30μm、特に1~15μmの膜厚となるように塗装することが望ましい。
本発明の水性塗料組成物を、ロールコーター塗装、スプレー塗装などの公知の塗装方法によって金属板に塗装し、オーブン等の加熱手段によって焼き付けることにより塗装金属板を得ることができる。
金属板としては、これに限定されないが、例えば、熱延伸鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、合金メッキ鋼板、アルミニウム亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム板、スズメッキ鋼板、ステンレス鋼板、銅板、銅メッキ鋼板、ティンフリースチール、ニッケルメッキ鋼板、極薄スズメッキ鋼板、クロム処理鋼板などが挙げられ、必要に応じてこれらに各種表面処理、例えばリン酸クロメート処理やジルコニウム系の化成処理等を行ったものが使用できる。
また、上記塗装金属板の塗膜上に更に、有機樹脂被覆層としてポリエステル樹脂フィルム等の熱可塑性樹脂フィルムをラミネートし、有機樹脂被覆塗装金属板を形成することもできる。
金属容器の内面及び/又は外面に本発明の水性塗料組成物から成る塗膜を形成することで塗装金属容器を得ることができる。本発明の水性塗料組成物は特に加工性、耐食性に優れているので、金属容器の少なくとも内面に本発明の塗料組成物から成る塗膜が形成されていることが望ましい。
塗膜を形成する金属容器としては、従来公知の金属容器を全て用いることができ、これに限定されないが、側面継ぎ目を有するスリーピース缶、シームレス缶(ツーピース缶)を挙げることができる。
塗装金属容器は、前述した塗装金属板から成形することで得ることもできるが、シームレス缶のような過酷な加工により成形される金属容器の場合には、予め成形された金属容器に本発明の水性塗料組成物をスプレー塗装等の方法により施すことによって得ることもできる。また前述の塗装金属板上に有機樹脂被覆層を形成した有機樹脂被覆塗装金属板からシームレス缶等の金属容器に成形することもできる。
本発明の水性塗料組成物を塗装した前述の塗装金属板から、従来公知の任意の製蓋法によって成形することで塗装金属蓋を得ることができ、例えばステイ・オン・タブタイプのイージーオープン缶蓋やフルオープンタイプのイージーオープン缶蓋用として利用できる。
(数平均分子量の測定)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレンの検量線を用いて測定した。
(ガラス転移温度の測定)
示差走査熱量計(DSC)を用いて20℃/分の昇温速度で測定した。
(酸価の測定)
ポリエステル樹脂0.2gを20mlのクロロホルムに溶解し、0.1NのKOHエタノール溶液で滴定し、樹脂酸価(mgKOH/g)を求めた。指示薬はフェノールフタレインを用いた。ポリエステル樹脂が溶解しない場合には、溶媒にテトラヒドロフラン等の溶媒を用いた。
(モノマー組成の測定)
ポリエステル樹脂のモノマー組成は、真空乾燥した樹脂30mgを重クロロホルム0.6mlに溶解させ、1H-NMR測定し、ピーク強度から組成比を求めた。なおごく微量な成分(全モノマー成分に対して1モル%未満)は除き、組成比を決定した。
実施例、比較例、参考例の各水性塗料組成物を、表面処理としてリン酸クロメート系処理を施したアルミニウム板(3104合金、板厚:0.28mm、表面処理皮膜中のクロム重量:20mg/m2)にバーコーターで乾燥後の塗膜厚が1.5μmとなるように塗装し、オーブンで焼付し、塗装金属板を作製した。焼付条件は、焼付け温度260℃、焼き付け時間50~60秒とした。得られた塗装金属板は下記の評価方法に基づいて各種評価を行った。
塗装金属板の硬化性はMEK抽出率で評価した。塗装金属板から5cm×5cmサイズの試験片を切り出し、サンプルの質量測定後(W1)、200mlのMEK(メチルエチルケトン)を用い、室温で1時間の抽出を行った。抽出後の塗装板を130℃×1時間の条件で乾燥し、抽出後のサンプルの質量(W2)を測定した。さらに塗膜を濃硫酸による分解法で剥離し、サンプルの質量(W3)を測定した。塗装板のMEK抽出率は下記式(3)で求められる。結果を表1に示す。
MEK抽出率%=100×(W1-W2)/(W1-W3)・・・(3)
評価基準は次の通りである。
◎:10%未満
○:10%以上30%未満
△:30%以上50%未満
×:50%以上
塗装金属板をアルミニウム板の圧延方向が長辺となるように3.5×4cmの大きさに切り出し、この試験片の塗装面が外になるように短辺に平行に折り曲げた。25℃の雰囲気下で折り曲げ部の内側に0.28mmのアルミニウム板を2枚挟み、ハゼ折タイプデュポン衝撃試験器を用い衝撃屈曲させた。衝撃屈曲させる接触面が平らな鉄の錘の重さは3kgで、これを高さは40cmから落下させ、この折り曲げられた先端部分の2cm幅の電流値(mA)を1%塩化ナトリウム水溶液に浸漬したスポンジに接触させ、電圧6.3Vをかけ4秒後に測定した。結果を表1に示す。
◎:5mA未満
○:5mA以上20mA未満
△:20mA以上30mA未満
×:30mA以上
塗装金属板から5cm×5cmサイズの試験片を切り出した後、デュポン衝撃試験器を用い、撃芯の尖端直径1/4インチ、錘荷重120g、落錘高さ30cmの条件で試験塗板の塗面に凸加工した試験片を、缶内容物擬似液であるモデル液に浸漬し、腐食の程度を下記基準により目視で評価した。浸漬条件は、37℃で14日間とした。試験に用いたモデル液は、食塩を0.2%とし、これにクエン酸を加えてpHが2.5となるよう調製したものを用いた。結果を表1示す。
◎:腐食なし
○:僅かに腐食
△:部分的に腐食
×:大部分で腐食
塗装金属板をオートクレーブに入れ、125℃30分のレトルト処理を施し、塗膜の白化状態(白化性)を目視で評価した。結果を表2に示す。
◎:白化なし
○:僅かに白化
△:少し白化
×:著しく白化
(実施例1)
ポリエステル樹脂としてポリエステル樹脂A(酸価:23mgKOH/g、Tg:80℃、Mn=7,500、モノマー組成:テレフタル酸成分/エチレングリコール成分/プロピレングリコール成分=50/10/40mol%)、β-ヒドロキシアルキルアミド基含有硬化剤(β-ヒドロキシアルキルアミド化合物)としてN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド[東京化成工業社製;表中「β-ヒドロキシアルキルアミドA」と表記]を用いた。ポリエステル樹脂Aの水分散液(固形分濃度:30wt%)を333部(固形分100部)、予めイオン交換水を用いて調整しておいたβ-ヒドロキシアルキルアミド基含有硬化剤の水溶液(固形分濃度:10wt%)を50部(固形分5部)、2-プロパノール150部、イオン交換水517部をガラス容器内に入れて10分間攪拌し、固形分濃度10質量%、固形分配合比がポリエステル樹脂/硬化剤=100/5(質量比)の水性塗料組成物を得た。
表1に示すように、ポリエステル樹脂を、ポリエステル樹脂B(Tg:67℃、Mn=9,000、酸価:18mgKOH/g、モノマー組成:テレフタル酸成分/イソフタル酸成分/エチレングリコール成分/ネオペンチルグリコール成分=36/14/24/26mol%)、ポリエステル樹脂C(Tg:40℃、Mn=8,500、酸価:17mgKOH/g、モノマー組成:テレフタル酸成分/イソフタル酸成分/アジピン酸/エチレングリコール成分/ネオペンチルグリコール成分=28/15/7/25/25 mol%)、ポリエステル樹脂D(Tg:20℃、Mn=17,000、酸価:11mgKOH/g、モノマー組成:テレフタル酸成分/イソフタル酸成分/セバシン酸成分/エチレングリコール成分/ネオペンチルグリコール成分=31/7/12/30/20mol%)、ポリエステル樹脂G(Tg:40℃、Mn=5,000、酸価:29mgKOH/g)、ポリエステル樹脂H(Tg:52℃、Mn=17,000、酸価:5mgKOH/g、モノマー組成:テレフタル酸成分/イソフタル酸成分/アジピン酸成分/エチレングリコール成分/ネオペンチルグリコール成分=23/23/4/24/26mol%)に変えた以外は、実施例1と同様に行い、塗料組成物を得た。
ポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Dを、質量比で60:40となるように混合したもの(Tgmix:53℃、平均酸価:18mgKOH/g)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、塗料組成物を調製した。
ポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂F(Tg:-25℃、Mn=17,000、酸価:12mgKOH/g、モノマー組成:テレフタル酸成分/イソフタル酸成分/セバシン酸成分/1,4-ブタンジオール成分=14/17/19/50mol%)を、質量比で70:30となるように混合したもの(Tgmix:40℃、平均酸価=20mgKOH/g)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、塗料組成物を調製した。
ポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂Bとポリエステル樹脂E(Tg:8℃、Mn=19,000、酸価:12mgKOH/g、モノマー組成:テレフタル酸成分/イソフタル酸成分/セバシン酸成分/エチレングリコール成分/ネオペンチルグリコール成分=30/5/15/22/28mol%)を、質量比で50:50となるように混合したもの(Tgmix:33℃、平均酸価=15mgKOH/g)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、塗料組成物を調製した。
表1に示す固形分配合比となるようにした以外は、実施例1と同様に水性塗料組成物を調製した。
β-ヒドロキシアルキルアミド基含有硬化物(β-ヒドロキシアルキルアミド化合物)としてN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)アジポアミド[EMS社製Primid QM1260;表中「β-ヒドロキシアルキルアミドB」と表記]を用いた以外は、実施例1と同様に水性塗料組成物を調製した。
表1に示す各種ポリエステル樹脂、或いは、固形分配合比となるようにした以外は、実施例1と同様に水性塗料組成物を調製した。
ポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂A、硬化剤としてレゾール型フェノール樹脂を用いた。レゾール型フェノール樹脂としては、メチロール基をブチルエーテル化したメタクレゾール系フェノール樹脂(エーテル化されたメチロール基の割合:90モル%、Mn=1,600)を用いた。ポリエステル樹脂Aの水分散液333部(固形分100部)、上記レゾール型フェノール樹脂のn-ブタノール溶液40部(固形分20部)、ドデシルベンゼンスルホン酸1部(硬化触媒)、トリエチルアミン0.3部、2-プロパノール200部、イオン交換水635部を用いて水性塗料組成物(固形分濃度:10質量%、固形分配合比:ポリエステル樹脂/硬化剤=100/15)を調製した。なお、ドデシルベンゼンスルホン酸としては、東京化成工業社製「ドデシルベンゼンスルホン酸(ソフト型)(混合物)」を用いた。
水性塗料組成物中の固形分配合比がポリエステル樹脂/硬化剤=100/5(質量比)となるように硬化剤のn―ブタノール溶液及びイオン交換水の配合量を調整した以外は、参考例1と同様に水性塗料組成物を調製した。
ポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Fを、質量比で80:20となるように混合したもの(Tgmix:52℃、平均酸価:21mgKOH/g)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、塗料組成物を調製した。
ポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Fを、質量比で80:20となるように混合したもの(Tgmix:52℃、平均酸価:21mgKOH/g)、β-ヒドロキシアルキルアミド基含有硬化剤として、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)アジポアミド[EMS社製Primid QM1260;表中「β-ヒドロキシアルキルアミドB」と表記]を用いた以外は、実施例1と同様に水性塗料組成物を調製した。
Claims (5)
- 酸価17mgKOH/g以上30mgKOH/g未満のポリエステル樹脂と、該ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基と架橋反応可能な官能基を有する硬化剤とが含有されて成り、
前記硬化剤が、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド及び/又はN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)アジポアミドであり、
前記ポリエステル樹脂(固形分)100質量に対し、前記硬化剤(固形分)が2~8質量部の量で配合されていることを特徴とする水性塗料組成物。 - 前記ポリエステル樹脂が、Tgが35℃~100℃のポリエステル樹脂(A)と、Tgが-30℃~25℃のポリエステル樹脂(B)を混合して成り、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の重量比が(A):(B)=98:2~10:90である請求項1記載の水性塗料組成物。
- 請求項1又は2に記載の水性塗料組成物から成る塗膜が、少なくとも片面に形成されてなることを特徴とする塗装金属板。
- 請求項1又は2に記載の水性塗料組成物から成る塗膜が形成されてなることを特徴とする塗装金属容器。
- 請求項1又は2に記載の水性塗料組成物から成る塗膜が形成されてなることを特徴とする塗装金属蓋。
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