JP7447437B2 - 耐レトルト白化性に優れた水性塗料組成物及び塗装金属基体 - Google Patents

耐レトルト白化性に優れた水性塗料組成物及び塗装金属基体 Download PDF

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Description

本発明は、水性塗料組成物及びこの水性塗料組成物から成る塗膜を有する塗装金属基体に関するものであり、より詳細には、優れた耐レトルト白化性を有すると共に、硬化性、加工性等に優れた水性塗料組成物及び該水性塗料組成物から成る塗膜を有する塗装金属基体に関する。
飲料缶等の金属容器或いは金属蓋は、金属素材の腐食を防止することを目的として塗料による塗膜や樹脂被覆が形成され、かかる塗膜等には加工性、耐食性、金属素材に対する密着性、硬化性等が要求される。また用途によっては、レトルト殺菌等の高温高湿度条件下に賦される場合もあり、そのような場合にも、塗膜が金属素材との密着性を維持することはもちろん、特に金属蓋等の外面側に適用される場合には塗膜に白化が生じないことも要求される。
従来より、金属容器或いは金属蓋等に用いられる塗料組成物として、エポキシーフェノール系塗料、エポキシーアミノ系塗料、エポキシーアクリル系塗料等のエポキシ系塗料が硬化性や耐食性等の塗膜特性に優れていることから広く使用されている。しかしながら、エポキシ系塗料はビスフェノールAを原料として製造されるものが多いため、ビスフェノールAを含有しない塗料が望まれている。
このような観点から、金属容器或いは金属蓋用の塗料組成物として、ビスフェノールAを使用せず、さらには環境汚染や作業環境への影響をも考慮したポリエステル系水性塗料組成物が提案されている。
このようなポリエステル系水性塗料組成物としては、例えば、カルボキシル基を有する芳香族ポリエステル樹脂を主体とするものであって、10~30mgKOH/gの酸価(AV)と、3000~10000の数平均分子量(Mn)とを有するものを用い、これを硬化剤、前記ポリエステル樹脂に対する中和剤、及び共溶剤と組み合わせたことを特徴とする硬化性、耐レトルト性に優れた金属包装体用塗料が提案されている(特許文献1)。
また水性塗料組成物として、例えば、エチレン性二重結合を樹脂端部に持つ数平均分子量2,000~50,000のポリエステル樹脂(A)に、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマー成分(B)をグラフト重合してなるアクリル変性ポリエステル樹脂(C)と、β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤(D)とが水性媒体中に安定に分散されてなる水性塗料組成物が提案されている(特許文献2)。
特許第4228585号 特開2003-26992号公報
しかしながら、特許文献1のように、硬化剤として自己縮合体を形成するフェノール樹脂を用いた場合には、塗膜内においてフェノール樹脂の自己縮合体に由来する硬く脆いドメインが形成されることから、塗膜の加工性の点で未だ充分満足するものではなかった。また、形成される塗膜の色調が、フェノール樹脂特有の黄色味を帯びるため、容器外面側への適用は難しいという問題もある。
また特許文献2のように、高酸価のアクリル変性ポリエステル樹脂を用いた場合には、充分な加工性を得ることができなかった。
従って本発明の目的は、耐レトルト白化性に優れていると共に、硬化性、加工性、塗膜色調等の塗膜特性に優れた塗膜を形成可能な水性塗料組成物及びこの水性塗料組成物から成る塗膜を有する塗装金属基体を提供することである。
本発明によれば、酸価10mgKOH/g以上且つ70mgKOH/g未満のポリエステル樹脂と、β-ヒドロキシアルキルアミド化合物とを含有する水性塗料組成物であって、前記ポリエステル樹脂のカルボキシル基に対する前記β-ヒドロキシアルキルアミド化合物の水酸基の当量比(OH基/COOH基モル比)が、0.8~3.0の範囲であり、前記ポリエステル樹脂が、未アクリル変性ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂成分の含有量が10質量%未満であるアクリル変性ポリエステル樹脂であることを特徴とする水性塗料組成物が提供される。
本発明の水性塗料組成物においては、
.前記ポリエステル樹脂の固形分100質量部に対する前記β-ヒドロキシアルキルアミド化合物の固形分配合量が1~20質量部であること、
.前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度が35℃以上であること、
が好適である。
本発明によればまた、上記水性塗料組成物から成る塗膜を有する塗装金属基体が提供される。
本発明者等は、ポリエステル系水性塗料組成物から形成される塗膜特性の向上について鋭意検討した結果、特定の酸価を有するポリエステル樹脂と特定の硬化剤とを用い、このポリエステル樹脂と硬化剤の官能基の当量比(OH/COOH基モル比)が耐レトルト白化性の発現に重要であることを見出すと共に、かかる塗料組成物が硬化性、加工性等の塗膜特性にも優れていることを見出した。
本発明の水性塗料組成物においては、硬化性及び加工性を損なうことなく優れた耐レトルト白化性を発現させるため、主剤(主成分)となるポリエステル樹脂と、硬化剤であるβ-ヒドロキシアルキルアミド化合物の官能基当量比が重要であり、本発明においては、ポリエステル樹脂のカルボキシル基量に対する硬化剤のβ-ヒドロキシアルキルアミド化合物のβ-ヒドロキシアルキルアミド基由来の水酸基の当量比(OH基/COOH基モル比)が0.8~3.0、好ましくは1.0~3.0、より好ましくは1.0~2.8、更に好ましくは1.4より大きく2.1以下の範囲にあることが重要である。この理由については以下のように推察している。
本発明の塗料組成物においては、塗装焼付け時の加熱により、主剤であるポリエステル樹脂のカルボキシル基と、硬化剤であるβ-ヒドロキシアルキルアミド化合物に含まれるβーヒドロキシアルキルアミド基中の水酸基が架橋反応することで架橋(硬化)塗膜となる。しかしながら、カルボキシル基及び水酸基のいずれも親水性の官能基であることから、架橋に使用されない未反応の官能基が多くなると、塗膜の耐水性が低下する。その結果、塗膜に水滴が付いた状態での加熱殺菌や、或いは高温・高湿度条件下での高圧加熱殺菌であるレトルト殺菌に付されると、塗膜が吸水して白化するおそれがあった。より具体的には、上記範囲よりもポリエステル樹脂のカルボキシル基量に対する硬化剤の水酸基量が多い場合には、硬化剤の未反応の水酸基が多く残存することになり、それにより塗膜の耐水性が低下し、レトルト処理等に賦された場合に、塗膜が吸水により白化し、充分な耐レトルト白化性が得られない。また、硬化剤の官能基が大過剰になると、硬化剤1分子が2分子以上のポリエステル樹脂と反応することが困難になることで架橋形成に不備が生じ、硬化性が低下する。更に、塗膜中に未反応の硬化剤分子が多く残存すると、塗膜の加工性にも悪影響が生じる。
一方、上記範囲よりもポリエステル樹脂のカルボキシル基量に対する硬化剤の水酸基量が少ない場合には、反応点が少なくなることで短時間での塗装焼付けで充分な硬化性を確保することが難しくなり、耐水性やバリア性が低下すると共に、水酸基よりも顕著に耐水性低下を招くカルボキシル基が未反応のまま残存しやすくなるため、耐レトルト白化性が得られない。さらに、硬化が不十分になることで、ポリエステル樹脂のガラス転移温度によっては塗膜脆化が起こりやすくなり、加工性が低下する場合がある。このような観点から本発明においては、ポリエステル樹脂とβ-ヒドロキシアルキルアミド化合物との官能基の当量比を適切な範囲とすることにより、硬化性及び加工性を損なうことなく、耐水性、ひいては耐レトルト白化性を確保することが可能になる。
(ポリエステル樹脂)
本発明の水性塗料組成物において、主剤(主成分)となるポリエステル樹脂は、酸価が10mgKOH/g以上且つ70mgKOH/g未満、好ましくは12mgKOH/g以上60mgKOH/g未満、より好ましくは15mgKOH/g以上60mgKOH/g未満、更に好ましくは17mgKOH/g以上50mgKOH/g未満、特に好ましくは17~30mgKOH/g未満の範囲にあることが重要である。
すなわち本発明においては、主剤(主成分)となるポリエステル樹脂が適度なカルボキシル基量(酸価)を有することが、硬化性、加工性、塗膜の密着性等の優れた塗膜特性を兼ね備える上で重要になる。上記範囲よりも酸価が小さい場合には、硬化剤との架橋点となるカルボキシル基が少ないため、硬化性に劣る。そのため、塗装焼付け時間が短い場合などでは、充分な硬化度が得られず、その結果、塗膜の耐水性(バリア性)が低下し、レトルト処理に賦された場合に白化するおそれがあり、耐レトルト白化性に劣るようになる。さらに塗膜と金属基体間の密着性に寄与するカルボキシル基が少ないため、塗膜の密着性が劣るようになる。一方上記範囲よりも酸価が大きい場合には、硬化剤との架橋点が多くなることで硬化性には優れるものの、架橋密度が過度に高くなりやすく、加工性が劣るようになる。
また、本発明で用いるポリエステル樹脂は、アクリル樹脂で変性していない未アクリル変性ポリエステル樹脂であることが望ましい。
ポリエステル系水性塗料組成物においては、重合性不飽和モノマーをポリエステル樹脂にグラフト重合させる等の方法によりアクリル樹脂で変性したアクリル変性ポリエステル樹脂を用いることが広く提案されているが、アクリル樹脂で変性されたポリエステル樹脂は、形成される塗膜の加工性が劣る傾向にあると共に、その変性のために製造工程数が増え、製造コストも高くなる場合があるため、本発明に用いるポリエステル樹脂としては、アクリル樹脂で変性していないポリエステル樹脂(未アクリル変性ポリエステル樹脂)であることが好ましい。もしアクリル変性ポリエステル樹脂を用いる場合は、アクリル変性ポリエステル樹脂全体に占めるアクリル樹脂成分(重合性不飽和モノマーの重合体成分)の含有量(質量比率)が10質量%未満、好ましくは5質量%未満であることが好ましい。
本発明で用いるポリエステル樹脂は、上述した酸価を有し、アクリル樹脂で変性していない未アクリル変性のポリエステル樹脂であることが望ましいということ以外は、塗料組成物に用いられる公知の水分散性及び/又は水溶性のポリエステル樹脂を使用することができる。
水分散性ポリエステル樹脂及び水溶性ポリエステル樹脂は、親水基を成分として含むポリエステル樹脂であり、これらの成分は、ポリエステル分散体表面に物理吸着されていてもよいが、ポリエステル樹脂骨格中に共重合されていていることが特に好ましい。
親水基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、又はこれらの誘導体や金属塩、エーテル等であり、これらを分子内に含むことにより水に分散可能な状態で存在することができる。
親水性基を含む成分としては、具体的には無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のカルボン酸無水物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン等の水酸基含有ポリエーテルモノマー、5-スルホイソフタル酸、4-スルホナフタレン-2,7-ジカルボン酸等のスルホン酸含有モノマーの金属塩、又はアンモニウム塩等を挙げることができる。
本発明においては、ポリエステル樹脂としては、親水基としてカルボキシル基を有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を好適に用いることができる。
また、前記親水性基を含むモノマーと組み合わせて、ポリエステル樹脂を形成するモノマー成分としては、ポリエステル樹脂の重合に通常用いられるモノマーであれば特に限定されるものではない。ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、テルペン-マレイン酸付加体などの不飽和ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、1,2-シクロヘキセンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、メチルシクロへキセントリカルボン酸等の3価以上の多価カルボン酸等が挙げられ、これらの中から1種または2種以上を選択し使用できる。
本発明においては、耐食性や耐レトルト白化性の観点からポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分に占めるテレフタル酸やイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸の割合が60モル%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましい。
ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分としては、特に限定はなく、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1-メチル-1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,6-ヘキサンジオール、4-メチル-1,7-ヘプタンジオール、4-メチル-1,8-オクタンジオール、4-プロピル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、などの脂肪族グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のエーテルグリコール類、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカングリコール類、水添加ビスフェノール類、などの脂環族ポリアルコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、などの3価以上のポリアルコール等から1種、または2種以上の組合せで使用することができる。本発明においては、上記の多価アルコール成分の中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールを、ポリエステル樹脂を構成する成分として好適に用いることできる。
ポリエステル樹脂は、上記の多価カルボン酸成分の1種類以上と多価アルコール成分の1種類以上とを重縮合させることや、重縮合後に多価カルボン酸成分、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等で解重合する方法、また、重縮合後に酸無水物、例えば 無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリト酸、エチレングリコールビストリメリテート二無水物等を開環付加させること等、公知の方法によって製造することができる。
また、本発明に用いるポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、35℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは40~120℃、さらに好ましくは50~100℃の範囲にあることが好ましい。上記範囲よりもTgが高い場合には、形成される塗膜が硬くなるため、加工性が劣るおそれがある。一方上記範囲よりもTgが低い場合には、塗膜のバリア性が低下するため、耐レトルト白化性や耐食性が劣るようになる。
また、本発明においては、単独の酸価が上記範囲内(10mgKOH/g以上且つ70mgKOH/g未満)にある2種以上のポリエステル樹脂をブレンドした混合ポリエステル樹脂を用いても良く、その場合においては各々のポリエステル樹脂の酸価と質量分率を乗じて得られた値の総和を、混合ポリエステル樹脂の平均酸価(Avmix)とする。
なお、単独の酸価が上記範囲内のポリエステル樹脂と、単独の酸価が上記範囲外のポリエステル樹脂をブレンドして用いる場合においては、全ポリエステル樹脂量(水性塗料組成物中に含まれるポリエステル樹脂の総固形分質量)に対して、単独の酸価が上記範囲内のポリエステル樹脂の含有量は30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%より多いことが好ましい。また、単独の酸価が5mgKOH/g未満の低酸価ポリエステル樹脂をブレンドして用いる場合においては、全ポリエステル樹脂量(水性塗料組成物中に含まれるポリエステル樹脂の総固形分質量)に対して、前記低酸価ポリエステル樹脂の含有量は60質量%未満、好ましくは50質量%未満、更に好ましくは40質量%未満とすることが好ましい。前記低酸価ポリエステル樹脂は、硬化剤との反応点となるカルボキシル基が極めて少ないため、前記低酸価ポリエステル樹脂自体は架橋構造に組み込まれにくく、焼付け後も未架橋のまま塗膜に残存する可能性が高い。従って、酸価が5mgKOH/g未満の低酸価ポリエステル樹脂の全体に占める割合が50質量%以上になると充分な硬化性を得ることができないおそれがある。
本発明においては、Tgの異なる2種以上のポリエステル樹脂をブレンドして用いることもでき、Tgの異なるポリエステル樹脂をブレンドすることで、ポリエステル樹脂1種のみを使用した場合に比べ、耐衝撃性に優れ、外部から衝撃を受けても塗膜欠陥のできにくい塗膜を形成できる場合がある。また、ガラス転移温度については、下記式(1)により算出されるポリエステル樹脂ブレンドのTgmixが上記のTg範囲にあればよい。
1/Tgmix=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+…+(Wm/Tgm)
・・・(1)
W1+W2+…+Wm=1
式中、Tgmixはポリエステル樹脂ブレンドのガラス転移温度(K)を表わし、Tg1,Tg2,…,Tgmは使用する各ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂1,ポリエステル樹脂2,…ポリエステル樹脂m)単体のガラス転移温度(K)を表わす。また、W1,W2,…,Wmは各ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂1,ポリエステル樹脂2,…ポリエステル樹脂m)の質量分率を表わす。
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)はこれに限定されるものではないが、1,000~100,000、特に3,000~50,000の範囲にあることが好ましい。上記範囲よりも小さいと塗膜が脆くなり、加工性に劣る場合があり、上記範囲よりも大きいと塗料安定性が低下するおそれがある。
水性媒体中におけるポリエステル樹脂の平均分散粒子径は10~1,000nm、特に20~500nmの範囲にあることが好ましい。
ポリエステル樹脂の水酸基価については、これに限定されるものではないが、20mgKOH/g以下、より好ましくは10mgKOH/g以下であることが好ましい。本発明で用いるβ-ヒドロキシアルキルアミド化合物から成る硬化剤は、ポリエステル樹脂のカルボキシル基とは反応するが、水酸基とは反応しにくい、或いは反応しないことから、ポリエステル樹脂の水酸基の大部分は未反応のまま塗膜に残存することとなる。そのため、上記範囲よりも水酸基価が大きい場合は、残存する水酸基が多くなり、耐水性が低下し、耐レトルト白化性や耐食性が低下するおそれがある。
(硬化剤)
本発明においては、主剤であるポリエステル樹脂が有するカルボキシル基と架橋反応可能な官能基として、β-ヒドロキシアルキルアミド基由来の水酸基を有するβ―ヒドロキシアルキルアミド化合物を硬化剤として用いることが重要な特徴である。
一般にポリエステル系塗料組成物の硬化剤として使用されているレゾール型フェノール樹脂やアミノ樹脂は硬化剤同士の自己縮合反応を起こしやすく、塗膜形成時に硬く脆いドメインである自己縮合体が形成され、それにより塗膜が硬くなり加工性を低下させる場合がある。また自己縮合反応に硬化剤の反応点(官能基)が消費されてしまうため、充分な硬化性を得るために必要となる硬化剤の量が多くなる場合があり非効率であると共に、塗膜に含まれる多量の硬化剤の存在が、加工性及び耐衝撃性などの塗膜特性に悪影響を与えるおそれがある。これに対して、本発明で用いるβ-ヒドロキシアルキルアミド化合物は、自己縮合反応しにくい、或いは自己縮合反応しない硬化剤であるため、硬く脆い自己縮合体の形成を抑制できると共に、ポリエステル樹脂のカルボキシル基量に対応した最低限の量を配合すれば良いため効率的であり、塗膜中の硬化剤量も少なくでき、結果として加工性及び耐衝撃性に優れた塗膜を形成することができる。さらに、フェノール樹脂を用いた場合のように、塗膜が着色するおそれがなく、無色透明な塗膜を形成できるため、塗膜色調に優れた塗膜を形成できる。
前述したとおり、本発明の塗料組成物においては、ポリエステル樹脂のカルボキシル基に対するβ-ヒドロキシアルキルアミド化合物から成る硬化剤の水酸基の当量比(OH基/COOH基モル比)が、上記範囲にあることが重要であることから、用いる硬化剤のポリエステル樹脂に対する配合量を適宜調整する。なお、ポリエステル樹脂のカルボキシル基に対する硬化剤の水酸基の当量比(OH基/COOH基モル比)は、ポリエステル樹脂の酸価と硬化剤の水酸基価、及びポリエステル樹脂と硬化剤の固形分配合比から求めることができる。
β-ヒドロキシアルキルアミド化合物から成る硬化剤の配合量(固形分)は、前記ポリエステル樹脂(固形分)100質量部に対して1~20質量部、好ましくは3~15質量部、より好ましくは3~10質部、特に好ましくは3~9質量部の範囲であることが好ましい。
また、β-ヒドロキシアルキルアミド化合物の官能基当量としては、30~500g/eqであることが好ましく、特に40~200g/eqの範囲にあることが好ましい。尚、本発明における官能基当量とは、分子量を硬化剤1分子当たりの官能基数で除した値であり、硬化剤の前記官能基1個当たりの分子量を意味する。官能基当量が上記範囲よりも小さいと架橋点間距離を長くとることができないため、塗膜の柔軟性が低下し、加工性が劣る。一方で上記範囲よりも大きすぎると硬化性が不足し、加工性、耐レトルト性が劣る。
本発明において硬化剤として使用するβ―ヒドロキシアルキルアミド化合物としては、例えば下記一般式〔I〕で示されるものが挙げられる。
一般式〔I〕;
[HO―CH(R)―CH―N(R)―CO―]―A―[―CO―N(R’)―CH―CH(R’)―OH]
[式中、RおよびR’は水素原子又は炭素数1から5までのアルキル基、RおよびR’は水素原子又は炭素数1から5までのアルキル基又は一般式〔II〕で示されるもの、Aは多価の有機基、mは1又は2、nは0から2(mとnの合計は少なくとも2である。)を表わす。]
一般式〔II〕;HO―CH(R)―CH
[式中、Rは水素原子又は炭素数1から5までのアルキル基を表わす。]
前記一般式〔I〕中のAは、脂肪族、脂環族又は芳香族炭化水素であることが好ましく、炭素数2から20の脂肪族、脂環族又は芳香族炭化水素がより好ましく、炭素数4から10の脂肪族炭化水素が更に好ましい。
また、前記一般式〔I〕におけるmとnの合計は、2又は3又は4であることが好ましい。
上記一般式〔I〕で示されるものの中でも、硬化剤として用いるβ-ヒドロキシアルキルアミド化合物としては、特にN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド[CAS:6334-25-4、分子量:約320、1分子当たりの官能基数(水酸基数):4、水酸基価(理論値):701mgKOH/g、製品例:EMS社製Primid XL552]や、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)アジポアミド[CAS:57843-53-5、分子量:約376、1分子当たりの官能基数(水酸基数):4、水酸基価(理論値):596mgKOH/g、製品例:EMS社製Primid QM1260]が好ましい。なお、ここでの水酸基価は、基本となる分子構造に基づいた分子量及び1分子当たりの水酸基数から算出した理論値である。
これらの中でも、硬化性や耐レトルト性の観点からN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)アジポアミドを用いることがより好ましい。N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジポアミドに比べて、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)アジポアミドの方が、ポリエステル樹脂との反応性が高く、硬化性に優れると共に、より緻密な架橋構造を形成することでレトルト時にも塗膜が白化しにくく、耐レトルト白化性に優れた塗膜を形成することができる。
(水性塗料組成物)
本発明の水性塗料組成物は少なくとも、主剤(主成分)として上述した特定のポリエステル樹脂及び硬化剤としてβ-ヒドロキシアルキルアミド化合物、並びに水性媒体を含有する。なお、本発明の水性塗料組成物においては、水性塗料組成物中の塗膜を形成する固形成分(水や溶剤などの揮発する物質を除いた不揮発成分)の中で、最も含有量(質量割合い)が多い成分のことを、主剤(主成分)として定義する。
(水性媒体)
本発明の水性塗料組成物は上述したポリエステル樹脂及び硬化剤、並びに水性媒体を含有する。水性媒体としては、公知の水性塗料組成物と同様に、水、或いは水とアルコールや多価アルコール、その誘導体等の有機溶剤を混合したものを水性媒体として用いることができる。有機溶剤を用いる場合には、水性塗料組成物中の水性媒体全体に対して、1~45質量%の量で含有することが好ましく、特に5~30質量%の量で含有することが好ましい。上記範囲で溶剤を含有することにより、製膜性能が向上する。
このような有機溶媒としては、両親媒性を有するものが好ましく、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n―ブタノール、エチレングリコール、メチルエチルケトン、ブチルセロソルブ、カルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールエチレングリコールモノブルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メチル3-メトキシブタノールなどが挙げられる。
(塩基性化合物)
本発明の水性塗料組成物において、ポリエステル樹脂に水分散性又は水溶性を付与するために、ポリエステル樹脂のカルボキシル基を中和可能な塩基性化合物が含有されていることが好ましい。塩基性化合物としては塗膜形成時の焼付で揮散する化合物、すなわち、アンモニア及び/又は沸点が250℃以下の有機アミン化合物などが好ましい。
具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン等のアルキルアミン類、2-ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、ジメチルアミノメチルプロパノール等アルコールアミン類等が使用される。またエチレンジアミン、ジエチレントリアミン等多価アミンも使用できる。更に、分岐鎖アルキル基を有するアミンや複素環アミンも好適に使用される。分岐鎖アルキル基を有するアミンとしては、イソプロピルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、イソアミルアミン等の炭素数3~6、特に炭素数3~4の分岐鎖アルキルアミンが使用される。複素環アミンとしては、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン等の1個の窒素原子を含む飽和複素環アミンが使用される。
本発明においては、上記の中でもトリエチルアミン、又は2-ジメチルアミノエタノールを好適に使用することができ、その使用量は、カルボキシル基に対して0.5~1.5当量で用いるのがよい。
(潤滑剤)
本発明の水性塗料組成物には、必要に応じ潤滑剤を含有することができる。ポリエステル樹脂100質量部に対し、潤滑剤0.1質量部~10質量部を加えることが好ましい。
潤滑剤を加えることにより、缶蓋等の成形加工時の塗膜の傷付きを抑制でき、また成形加工時の塗膜の滑り性を向上させることができる。
本発明の水性塗料組成物に加えることのできる潤滑剤としては、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ワックス、ポリエチレンなどのポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、ラノリン系ワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバろう、およびシリコン系化合物、ワセリンなどを挙げることができる。これらの潤滑剤は一種、または二種以上を混合し使用できる。
(その他)
本発明の水性塗料組成物には、上記成分の他、従来より塗料組成物に配合されている、レベリング剤、顔料、消泡剤等を従来公知の処方に従って添加することもできる。
また、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリエステル樹脂と併せてその他の樹脂成分が含まれていても良く、例えばポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、アクリルアミド系化合物、ポリエチレンイミン、澱粉、アラビアガム、メチルセルロース等の水分散或いは水溶性樹脂が含まれていても良い。
本発明の水性塗料組成物においては、ポリエステル樹脂が固形分として5~55質量%の量で含有されていることが好適である。上記範囲よりも樹脂固形分が少ない場合には、適正な塗膜量を確保することができず、被覆性が劣るようになる。一方、上記範囲よりも樹脂固形分が多い場合には、作業性及び塗工性に劣る場合がある。
本発明の水性塗料組成物は、ロールコーター塗装、スプレー塗装、ディップ塗装などの公知の塗装方法によって金属板又は予め成形された金属容器等の成形体に塗装し、コイルオーブン等の加熱手段によって焼き付けることにより使用することができる。
本発明の水性塗料組成物の焼き付け条件は、ポリエステル樹脂、硬化剤、金属基材の種類、塗工量等によって適宜調節されるが、本発明の水性塗料組成物は、充分な硬化性を得るために、焼付け温度が150℃~350℃、好ましくは180~320℃の温度で、5秒以上、好ましくは5秒~30分間、特に好ましくは5秒~180秒間の条件で加熱硬化させることが好ましい。
また形成する塗膜の膜厚はこれに限定されるものではないが、乾燥膜厚で30μm未満、好ましくは0.5~20μm、より好ましくは2μm以上15μm未満、更に好ましくは3~14μmの範囲にあることが好適である。
(塗装金属基体)
本発明の水性塗料組成物を、ロールコーター塗装、スプレー塗装、ディップ塗装などの公知の塗装方法によって金属板、或いは金属容器又は金属蓋等の金属基体に塗装し、オーブン等の加熱手段によって焼き付けることにより塗装金属板、塗装金属容器、塗装金属蓋等の塗装金属基体を得ることができる。また後述するように、この塗装金属板、或いはこの塗装金属板に更に有機樹脂被覆を形成した有機樹脂被覆塗装金属板を成形に付して、塗装金属容器や塗装金属蓋とすることもできる。
(塗装金属板)
塗装金属板に用いる金属板としては、金属基体熱延伸鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、合金メッキ鋼板、アルミニウム亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム板、スズメッキ鋼板、ステンレス鋼板、銅板、銅メッキ鋼板、ティンフリースチール、ニッケルメッキ鋼板、極薄スズメッキ鋼板、クロム処理鋼板などが挙げられ、必要に応じてこれらに各種表面処理、例えばリン酸クロメート処理やジルコニウム系の化成処理、ポリアクリル酸などの水溶性樹脂と炭酸ジルコニウムアンモン等のジルコニウム塩を組み合わせた塗布型処理等を行ったものが使用できる。
また、上記塗装金属板の塗膜上に更に、有機樹脂被覆層としてポリエステル樹脂フィルム等の熱可塑性樹脂フィルムをラミネートし、有機樹脂被覆塗装金属板を形成することもできる。
(塗装金属容器)
金属容器の内面及び/又は外面に本発明の水性塗料組成物から成る塗膜を形成することで塗装金属容器を得ることができる。本発明の水性塗料組成物は特に耐レトルト白化性、加工性に優れているので、金属容器の少なくとも外面に、本発明の塗料組成物から成る塗膜が形成されていることが望ましい。
塗膜を形成する金属容器としては、従来公知の金属容器を全て用いることができ、これに限定されないが、側面継ぎ目を有するスリーピース缶、シームレス缶(ツーピース缶)を挙げることができる。
塗装金属容器は、前述した塗装金属板から成形することで得ることもできるが、シームレス缶のような過酷な加工により成形される金属容器の場合には、予め成形された金属容器に本発明の水性塗料組成物を施すことによって得ることもできる。なお、本発明の塗料組成物は、耐レトルト白化性に優れると共に、色調が透明で、かつ艶のある塗膜を形成可能であるため、例えば外面の印刷インキの保護を目的とした仕上げワニスとして好適に使用できる。
(塗装金属蓋)
本発明の水性塗料組成物を塗装した前述の塗装金属板から、従来公知の任意の製蓋法によって成形することで塗装金属蓋を得ることができ、例えばステイ・オン・タブタイプのイージーオープン缶蓋やフルオープンタイプのイージーオープン缶蓋用として利用できる。発明の水性塗料組成物は特に耐レトルト白化性、加工性に優れているので、金属蓋の少なくとも外面に本発明の塗料組成物から成る塗膜が形成されていることが望ましい。
ポリエステル樹脂A~Iの各種測定項目は以下の方法に従った。なおポリエステル樹脂A~Iはすべて未アクリル変性ポリエステル樹脂である。
(数平均分子量(Mn)の測定)
ポリエステル樹脂の固形物を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレンの検量線を用いて測定した。
(ガラス転移温度の測定)
ポリエステル樹脂の固形物を用いて、示差走査熱量計(DSC)によって20℃/分の昇温速度で測定した。
(酸価の測定)
ポリエステル樹脂の固形物1.0gを10mlのクロロホルムに溶解し、0.1NのKOHエタノール溶液で滴定し、樹脂酸価(mgKOH/g)を求めた。指示薬はフェノールフタレインを用いた。ポリエステル樹脂が溶解しない場合には、溶媒にテトラヒドロフラン等の溶媒を用いた。
(モノマー組成の測定)
ポリエステル樹脂の固形物30mgを重クロロホルム0.6mlに溶解させ、1H-NMR測定し、ピーク強度からモノマー組成比を求めた。なおごく微量な成分(全モノマー成分に対して1モル%未満)は除き、組成比を決定した。
[塗装金属基体(塗装金属板)の作成]
実施例、比較例、参考例の各水性塗料組成物を、金属板にバーコーターで、焼き付け後の塗膜厚みが9μmの膜厚となるように塗装し、250℃で60秒間でオーブン焼付けし、片面塗装の塗装金属板を作製した。なお、金属板として、リン酸クロメート系表面処理アルミニウム板(3104合金、板厚:0.28mm、表面処理皮膜中のクロム重量:20mg/m)を用いた。
各実施例、比較例、参考例の水性塗料組成物で得られる塗装金属板の塗膜性能について、下記の試験方法に従って試験を行った。結果を表1、表2に示す。
(耐レトルト白化性)
上記の塗装金属板を、ステンレスカップに立てた状態で入れ、これにイオン交換水を塗装金属板の半分の高さまで注いだ。これをオートクレーブに入れ、125℃30分のレトルト処理を施した。処理後、塗装金属板を取り出して風乾させた後、水中に浸漬していた塗膜部分の白化状態(白化性)を目視で評価した。結果を表1、表2に示す。
評価基準は次の通りである。
○:白化なし
△:少し白化
×:著しく白化
(硬化性)
塗装金属板の硬化性はMEK抽出率で評価した。塗装金属板から5cm×5cmサイズの試験片を切り出し、試験片の質量測定後(W1)、200mlのMEK(メチルエチルケトン)を用い、沸騰しているMEK(80℃還流下)に試験片を1時間浸漬させ、沸点で1時間のMEK抽出を行った。抽出後の試験片を洗浄・乾燥し、抽出後の試験片の質量(W2)を測定した。さらに塗膜を濃硫酸による分解法で剥離し、洗浄・乾燥し、試験片の質量(W3)を測定した。塗装金属板の塗膜のMEK抽出率(質量%)は下記式(2)で求められる。結果を表1、表2に示す。
MEK抽出率%=100×(W1-W2)/(W1-W3)・・・(2)
評価基準は次の通りである。
○:20%未満
△:20%以上30%未満
×:30%以上
(加工性)
塗装金属板を、アルミニウム板の圧延方向が長辺となるように3.5×3cmの大きさに切り出し、この試験片の塗装面が外になるように短辺に平行に折り曲げた。折り曲げ部の内側に、スペーサーとして塗装金属板と同板厚のアルミニウム板を2枚挟んだ後、25℃の雰囲気下で、3kgの錘を40cmの高さから落下させ、折り曲げ加工を行った。折り曲げられた先端部分2cm幅を、1%塩化ナトリウム水溶液に浸漬したスポンジに接触させ、電圧6.3Vで4秒間通電し、4秒後の電流値(mA)を測定した。結果を表1、表2に示す。
評価基準は次の通りである。
○:1mA以上未満
△:1mA以上3mA未満
×:3mA以上
[水性塗料組成物の調製]
(実施例1)
主剤のポリエステル樹脂としてポリエステル樹脂A(Tg:40℃、Mn=9,000、酸価:17mgKOH/g、モノマー組成:テレフタル酸成分/イソフタル酸成分/アジピン酸成分/エチレングリコール成分/ネオペンチルグリコール成分=28/15/7/25/25mol%)、硬化剤のβ-ヒドロキシアルキルアミド化合物として、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)アジポアミド[CAS:57843-53-5、分子量:約376、1分子当たりの官能基数(水酸基数):4、水酸基価(理論値):596mgKOH/g]を用いた。ポリエステル樹脂Aの水分散液(樹脂固形分濃度:30質量%、イソプロピルアルコール濃度:18質量%)を333部(固形分100部)、予めイオン交換水を用いて調整しておいたβ-ヒドロキシアルキルアミド化合物の水溶液(固形分濃度:30質量%)10部(固形分3部)をガラス容器内に入れて10分間攪拌し、固形分濃度30質量%、固形分配合比がポリエステル樹脂/硬化剤=100/3(質量比)の水性塗料組成物を得た。
(実施例2~14、比較例1~8)
表1に示すようにポリエステル樹脂の種類、或いは、固形分配合比を変えた以外は、実施例1と同様に水性塗料組成物を調製した。ポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂Aの他に、ポリエステル樹脂B(Tg:67℃、Mn=9,000、酸価:18mgKOH/g、モノマー組成:テレフタル酸成分/イソフタル酸成分/エチレングリコール成分/ネオペンチルグリコール成分=36/14/24/26mol%)、ポリエステル樹脂C(酸価:23mgKOH/g、Tg:80℃、Mn=8,000、モノマー組成:テレフタル酸成分/エチレングリコール成分/プロピレングリコール成分=50/10/40mol%)、ポリエステル樹脂D(酸価:31mgKOH/g、Tg:38℃、Mn=6,000)、ポリエステル樹脂E(酸価:36mgKOH/g、Tg:80℃、Mn=5,000)、ポリエステル樹脂F(酸価:50mgKOH/g、Tg:46℃、Mn=3,000)、ポリエステル樹脂G(酸価:58mgKOH/g、Tg:70℃、Mn=3,000)、ポリエステル樹脂H(酸価:5mgKOH/g、Tg:52℃、Mn=17,000、モノマー組成:テレフタル酸成分/イソフタル酸成分/アジピン酸成分/エチレングリコール成分/ネオペンチルグリコール成分=23/23/4/24/26mol%)、ポリエステル樹脂I(酸価:74mgKOH/g、Tg:80℃、Mn=3,000)を用いた。
(参考例1)
ポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂Dとポリエステル樹脂J(酸価:3mgKOH/g未満、Tg:40℃、Mn:20,000)を、質量比で50:50となるように混合したもの(Tgmix:39℃)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、水性塗料組成物を調製した。
(参考例2)
ポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂Cとポリエステル樹脂K(酸価:3mgKOH/g未満、Tg:4℃、Mn:8,000)を、質量比で50:50となるように混合したもの(Tgmix:37.4℃)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、水性塗料組成物を調製した。
(参考例3,4)
ポリエステル樹脂として、アクリル樹脂で変性したアクリル変性ポリエステル樹脂であるポリエステル樹脂L(Tg:60℃、酸価:15mgKOH/g、アクリル樹脂成分の含有量:70質量%)、又はポリエステル樹脂M(Tg:50℃、酸価:30mgKOH/g、アクリル樹脂成分の含有量:40質量%)を用いた以外は、実施例1と同様に水性塗料組成物を調製した。
表1、2に、各水性塗料組成物の組成(ポリエステル樹脂の種類、硬化剤の種類、固形分配合比、官能基当量比)と評価結果を示す。
本発明の水性塗料組成物は、加工性及び硬化性等の塗膜特性に優れていると共に、優れた耐レトルト白化性を有する塗膜を形成可能であり、特に金属缶や缶蓋等の外面用塗料として好適に使用できる。

Claims (5)

  1. 酸価10mgKOH/g以上且つ70mgKOH/g未満のポリエステル樹脂と、β-ヒドロキシアルキルアミド化合物とを含有する水性塗料組成物であって、前記ポリエステル樹脂のカルボキシル基に対する前記β-ヒドロキシアルキルアミド化合物の水酸基の当量比(OH基/COOH基モル比)が、0.8~3.0の範囲であり、前記ポリエステル樹脂が、未アクリル変性ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂成分の含有量が10質量%未満であるアクリル変性ポリエステル樹脂であることを特徴とする水性塗料組成物。
  2. 前記ポリエステル樹脂の固形分100質量部に対する前記β-ヒドロキシアルキルアミド化合物の固形分配合量が1~20質量部である請求項1記載の水性塗料組成物。
  3. 前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度が35℃以上である請求項1又は2記載の水性塗料組成物。
  4. 請求項1~の何れかに記載の水性塗料組成物から成る塗膜を有する塗装金属基体。
  5. 前記塗膜の膜厚が2μm以上且つ15μm未満である請求項記載の塗装金属基体。
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