JP7061447B2 - 気化熱冷却編地 - Google Patents
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項1. 扁平断面形状の合成繊維が肌側面に配されている気化熱冷却編地であって、
前記扁平断面形状の合成繊維は横断面の外周部に1個以上の凸部を有し、
前記扁平断面形状の合成繊維の捲縮率が実質的に0%である、気化熱冷却編地。
項2. 前記扁平断面形状の合成繊維の横断面の扁平度が1.0~5である、項1に記載の気化熱冷却編地。
項3. 肌側面とは反対側の面に、ポリエステル捲縮糸が配されているダブルニットである、項1又は2に記載の気化熱冷却編地。
項4. 前記ポリエステル捲縮糸の捲縮率が5~50%である、項3に記載の気化熱冷却編地。
項5. 前記ポリエステル捲縮糸が、赤外線吸収剤を含む、項3又は4に記載の気化熱冷却編地。
項6. 更に弾性糸を含む、項1~5のいずれかに記載の気化熱冷却編地。
項7. 項1~6のいずれかに記載の気化熱冷却編地を含む、スポーツウェア。
項8. 項1~6のいずれかに記載の気化熱冷却編地を含む、空調服着用時に着用されるアンダーウェア。
本発明の気化熱冷却編地では、肌側面に扁平断面形状の合成繊維が配されている。
本発明の気化熱冷却編地は、扁平断面形状の合成繊維のみを用い、肌側面とは反対側の面の双方が扁平断面形状の合成繊維で形成されている編地であってもよいが、肌側面とは反対側の面(即ち、表面)にポリエステル捲縮糸が配されている2層構造の編地(即ち、ダブルニット)であってもよい。このように肌側面とは反対側の面にポリエステル捲縮糸を配すると、扁平断面形状の合成繊維によって吸収された汗を、当該ポリエステル捲縮糸が吸い上げて編地全体に効率的に拡散させることが可能になるので、クーリング効果をより一層向上させることができる。
本発明の気化熱冷却編地は、必要に応じて、弾性糸が含まれていてもよい。本発明の気化熱冷却編地に弾性糸が含まれることにより、本発明の気化熱冷却編地に伸縮性を付与して、肌に貼りついた状態で着用でき、吸汗性の向上及び肌面での気化促進を図ることができる。
本発明の気化熱冷却編地において、肌側面又は肌側とは反対側の面の少なくとも一方に、吸水剤が付着されていてもよい。このように吸水剤を付着させることによって、汗の吸収性及び汗の拡散性をより一層向上させることができる。
本発明の気化熱冷却編地の編組織については、扁平断面形状の合成繊維が肌側面、必要に応じて使用されるポリエステル捲縮糸が肌側とは反対側に配されていることを限度として特に制限されないが、例えば、タックメッシュ、片袋、タックリバーシブル等が挙げられる。これらの編組織の中でも、好ましくはタックメッシュが挙げられる。
本発明の気化熱冷却編地は、扁平断面形状の合成繊維、必要に応じてポリエステル捲縮糸、及び必要に応じて弾性糸を用いて、扁平断面形状の合成繊維が肌側面、必要に応じて使用されるポリエステル捲縮糸が肌側とは反対側に配されるように、製編することによって製造される。製編は、公知の編機を用いて行うことができる。
本発明の気化熱冷却編地は、汗の効率的に吸収及び拡散ができ、吸収・拡散させた汗によって、広い範囲で体温を奪うことができるので、気化熱冷却によるクーリング効果を効率的に奏することができる。そのため、本発明の気化熱冷却編地は、クーリング効果が求められる各種衣料用途に使用することができる。
以下の実施例、比較例における測定及び評価は下記の方法に従って行った。
(1)繊度
JIS L1013 8.3.1の規定に基づいて測定した。
デュアルシックネスゲージ(ピーコック社製)を使用して測定した。
扁平断面形状の合成繊維を切断し、光学顕微鏡(株式会社キーエンス製「マイクロスコープVHX-900」)を使用して、断面を100倍で観察し、凸部の数を求めた。また、当該光学顕微鏡によって観察された像を解析し、繊維の構成フィラメントの全本数について、下記式(1)に従って偏平度を求め、その平均値を算出した。
偏平度=(繊維横断面の長軸方向の長さ)/(繊維横断面の短軸方向の長さ) (1)
消費熱量測定装置を用いて、水分気化量の指標として消費熱量を測定した。具体的手法及び消費熱量測定装置の概要は以下の通りである。
<測定方法>
(1)気化熱冷却編地を正方形(30cm×30cm)に切り取った試験片を準備した。
(2)試験片を下記消費熱量測定装置の試験片設置部上にテープで固定した。この際、試験片の肌側面が試験片設置部に接するように配置した。
(3)30℃×80%RHの測定環境の下で、試験片設置部のアルミニウムプレートの温度を34℃、及び水供給速度を15ml/m2/時間に設定して静置して安定化させた。
(4)水供給速度を400ml/m2/時間に変更すると共に、風速2m/秒で風を当て、熱量を経時的に測定した。
(5)水供給速度を400ml/m2/時間に変更した時点を測定開始時とし、測定開始から0分及び30分後の消費熱量を求めた。
消費熱量測定装置は、試験片設置部1と、当該試験片設置部1に送風する送風手段2と、送風壁3とを有している。消費熱量測定装置の概略図を図2に示す。
前記試験片設置部1は、アルミニウムプレート11(縦35cm、横35cm)が断熱材12に埋め込まれている。
前記アルミニウムプレート11は、合計36個の水供給口111(直径1mmの円形の貫通口)が設けられ、当該水供給口11は、端部から端部に隣接する水供給口の中心点までの距離が25mm、近接する水供給口の中心点間の距離が30mmになるように配されている。
アルミニウムプレート11の各水供給口111には、所定速度で水を供給可能であって断熱材を連通する通水管13が接続されている。
アルミニウムプレート11の中心内部には、温度制御手段14が組み込まれており、当該温度制御手段14は、通電によって所定温度になるようにアルミニウムプレートを加熱できる発熱部、及び発熱に要する消費熱量を測定する熱量測定部を有している。
前記温度制御手段14は、電力を供給可能なように電源に接続されている。
試験片設置部1の上面図の模式図を図3に示し、試験片設置部1の断面図の模式図を図4に示す。なお、図3及び4において、温度制御手段14対して電力を供するための導線については便宜上割愛している。
送風手段2は、前記試験片設置部1に対し、風速2m/秒で風を送るように構成されている。
送風壁3は、送風手段2によって送風される風が、前記試験片設置部1に対し45°の角度で当たるように、送風手段2の送風口から試験片設置部1の端部まで繋がる1枚のシートによって形成されている。
枠周1.125mの検尺機を用いて巻き数5回で糸条をカセ取りした後、カセを室温下フリー状態でスタンドに一昼夜吊り下げた。次に、カセに0.000147cN/dtexの荷重を掛けたまま沸水中に投入し30分間湿熱処理した。その後、カセを取り出し、水分を濾紙で軽く取り、室温下フリー状態で30分間放置した。そして、カセに0.000147cN/dtexの荷重及び0.00177cN/dtex(軽重荷)を掛け、長さXを測定した。続いて、0.000147cN/dtexの荷重は掛けたまま、軽重荷に代えて0.044cN/dtexの荷重(重荷重)を掛け、長さYを測定した。その後、捲縮率(%)=(Y-X)/Y×100なる式に基づき、算出する。捲縮率の測定は、糸条の5本について行い、それぞれの平均をその糸の捲縮率とする。
(実施例1)
下記の糸を用い、釜径33インチ、ゲージ数32の編機を用いて、メッシュ調ダブル編地を得た。得られた編地に対し、液流染色機を使用して、日華化学社製精練剤「サンモールFL(商品名)」を含む浴で、80℃で30分間精練した。その後、染色機から上記の浴を取り除いた後、ダイスター社製分散染料「Dianix Blue UN-SE(商品名)」を1.0%o.m.f、酢酸を0.2cc/L、日華化学社製分散均染剤「ニッカサンソルトSN-130(商品名)」を0.5g/L及び高松油脂社製吸水剤「SR1800(商品名)」(ポリエチレンオキサイド付加ポリエステル系化合物)を2.0%o.m.f含む浴を注入し、135℃で20分間の条件で丸編物を親水化・染色加工した。親水化・染色加工後、ピンテンターを使用して丸編物を170℃で仕上げセットし、気化熱冷却編地を得た。
・偏平断面形状のポリエステル繊維(ユニチカトレーディング社製、ルミエース)(73dtex44フィラメント、捲縮率0%、単糸繊維の横断面の外周部の凸部の数:1個、単糸繊維の横断面の扁平度;1.6);編地全体中で59質量%の比率で使用。
肌側面とは反対側の面:
・ポリエステル仮撚捲縮糸(56dtex72フィラメント、捲縮率22.1%、単糸繊維の横断面の外周部に凸部がなく、単糸繊維の横断面の扁平度は略1);編地全体中で34.6質量%の比率で使用。
・ポリウレタン弾性糸(22dtex);編地全体中で5.9質量%の比率で使用。
下記の糸を用い、釜径33インチ、ゲージ数28の編機を用いて、鹿の子調ダブル編地を得た。得られた編地に対し、実施例1と同条件で、精練、親水化・染色加工を行い、気化熱冷却編地を得た。
・偏平断面形状のポリエステル繊維(ユニチカトレーディング社製、ルミエース)(73dtex44フィラメント、捲縮率0%、単糸繊維の横断面の外周部の凸部の数:1個、繊維の横断面の扁平度:1.6);編地全体中で37.7質量%の比率で使用。
肌側面とは反対側の面:
・ポリエステル仮撚捲縮糸(56dtex24フィラメント、捲縮率27.3%、単糸繊維の横断面の外周部に凸部がなく、単糸繊維の横断面の扁平度は略1);編地全体中で25.4質量%の比率で使用。
・ポリエステル仮撚捲縮糸(111dtex48フィラメント、捲縮率20.5%、単糸繊維の横断面の外周部に凸部がなく、単糸繊維の横断面の扁平度は略1);編地全体中で36.9質量%の比率で使用。
下記の糸を用い、釜径33インチ、ゲージ数28の編機を用いて、メッシュ調ダブル編地を得た。得られた編地に対し、実施例1と同条件で、精練、親水化・染色加工を行い、気化熱冷却編地を得た。
・ポリエステル仮撚捲縮糸(84dtex36フィラメント、捲縮率28.8%、単糸繊維の横断面の外周部に凸部がなく、単糸繊維の横断面の扁平度は略1);編地全体中で64.6質量%の比率で使用。
肌側面とは反対側の面:
・ポリエステル仮撚捲縮糸(56dtex72フィラメント、捲縮率22.1%、単糸繊維の横断面の外周部に凸部がなく、単糸繊維の横断面の扁平度は略1);編地全体中で30.4質量%の比率で使用。
・ポリウレタン弾性糸(22dtex);編地全体中で5.0質量%の比率で使用。
下記の糸を用い、釜径33インチ、ゲージ数28の編機を用いて、鹿の子調ダブル編地を得た。得られた編地に対し、実施例1と同条件で、精練、親水化・染色加工を行い、気化熱冷却編地を得た。
・ポリエステル仮撚捲縮糸(84dtex36フィラメント、捲縮率28.8%、単糸繊維の横断面の外周部に凸部がなく、単糸繊維の横断面の扁平度は略1);編地全体中で42.9質量%の比率で使用。
肌側面とは反対側の面:
・ポリエステル仮撚捲縮糸(56dtex24フィラメント、捲縮率27.3%、単糸繊維の横断面の外周部に凸部がなく、単糸繊維の横断面の扁平度は略1);編地全体中で23.7質量%の比率で使用。
・ポリエステル仮撚捲縮糸(111dtex48フィラメント、捲縮率20.5%、単糸繊維の横断面の外周部に凸部がなく、単糸繊維の横断面の扁平度は略1);編地全体中で33.4質量%の比率で使用。
下記の糸を用い、釜径33インチ、ゲージ数28の編機を用いて、メッシュ調ダブル編地を得た。得られた編地に対し、実施例1と同条件で、精練、親水化・染色加工を行い、気化熱冷却編地を得た。
・ポリエステル仮撚捲縮糸(56dtex72フィラメント、捲縮率22.1%、単糸繊維の横断面の外周部に凸部がなく、単糸繊維の横断面の扁平度は略1);編地全体中で34.6質量%の比率で使用。
・ポリウレタン弾性糸(22dtex);編地全体中で5.9質量%の比率で使用。
肌側面とは反対側の面:
・偏平断面形状のポリエステル繊維(ユニチカトレーディング社製、ルミエース)(73dtex44フィラメント、捲縮率0%、単糸繊維の横断面の外周部の凸部の数:1個、単糸繊維の横断面の扁平度:1.6);編地全体中で59.5質量%の比率で使用。
各気化熱冷却編地について評価した結果を表1に示す。この結果、構成繊維糸の横断面の外周部に1個以上の凸部を有し、捲縮率が0%である扁平断面形状の合成繊維を肌側面に配した気化熱冷却編地は、測定開始から0分と10分後の消費熱量の差が65W/m2・℃以上の高い値を示しており、発汗した汗を効率的に気化できることが確認された(実施例1及び2)。実施例1及び2では、特定の扁平断面形状の合成繊維を肌側面に配しているため、吸水した水を当該肌側面内で拡散する作用が高く、その結果、高い消費熱量を示したと考えられる。
11 アルミニウムプレート
111 水供給口
12 断熱材
13 通水管
14 温度制御手段
2 送風手段
3 送風壁
Claims (5)
- 扁平断面形状の合成繊維が肌側面に配されている気化熱冷却編地であって、
前記扁平断面形状の合成繊維は横断面の外周部に1又は2個の凸部を有し、
前記扁平断面形状の合成繊維の捲縮率が実質的に0%であり、
前記扁平断面形状の合成繊維の横断面の扁平度が1.2~2.8であり、
前記扁平断面形状の合成繊維の単繊維繊度が0.5~2.5dtexであり、
肌側面とは反対側の面に、ポリエステル捲縮糸が配されているダブルニットであり、且つ
前記ポリエステル捲縮糸の捲縮率が5~50%である、気化熱冷却編地。 - 前記ポリエステル捲縮糸が、赤外線吸収剤を含む、請求項1に記載の気化熱冷却編地。
- 更に弾性糸を含む、請求項1又は2に記載の気化熱冷却編地。
- 請求項1~3のいずれかに記載の気化熱冷却編地を含む、スポーツウェア。
- 請求項1~3のいずれかに記載の気化熱冷却編地を含む、衣料内に送風するための送風装置を備えた衣料の着用時に着用されるアンダーウェア。
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