本発明の樹脂組成物は、
(a-1)ガラス転移温度が200℃以上300℃以下のアルカリ可溶性ポリイミド樹脂、(a-2)ガラス転移温度が50℃以上150℃以下であって、アルカリ可溶性ポリイミド、アルカリ可溶性ポリベンゾオキサゾール、アルカリ可溶性ポリアミドイミド、それらの前駆体およびそれらの共重合体から選択される少なくとも1種類の樹脂、ならびに(b)感光剤を含有する樹脂組成物であって、
前記(a-1)成分100質量部に対し、前記(a-2)成分を10質量部以上40質量部以下含有する。
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて求めることができる。詳細は、後述する。
本発明では、異なるガラス転移温度を有する(a-1)成分および(a-2)成分の樹脂を含有することが、150℃以上220℃以下の低温焼成により得られる硬化膜の伸度向上およびストレス低下、ならびに硬化パターンのはんだリフロー工程耐性向上のために重要である。
発明者らは、これらの代わりに両者の中間の特性となる、ガラス転移温度が150℃超200℃未満の樹脂を用いても本発明の効果を達成することはできず、(a-1)成分と(a-2)成分を併用した場合にのみ、上記のような本発明の効果を達成できることを見出した。具体的には、(a-1)成分および(a-2)成分の代わりに、ガラス転移温度が150℃超200℃未満の樹脂のみを用いた場合、(a-2)成分のみの場合と同様に、はんだリフロー工程で硬化パターンが形状を維持できず、形状が崩れやすい傾向にある。推定メカニズムを以下に述べる。
本発明の樹脂組成物において、(a-1)成分が150℃以上220℃以下の低温焼成時のはんだリフロー工程耐性を向上させ、(a-2)成分が得られる硬化膜の伸度を向上させている。その上、(a-2)成分は得られる硬化パターンのストレスを緩和し、(a-1)成分との併用により、はんだリフロー工程での硬化パターンの変形を抑制する相乗効果がある。これらの効果によって、150℃以上220℃以下の低温焼成により得られる硬化膜の高伸度、低ストレス、および硬化パターンのはんだリフロー工程耐性の達成が可能となる。
(a-1)成分のガラス転移温度は、200℃以上300℃以下であるが、硬化パターンのはんだリフロー工程耐性の観点で、より好ましくは220℃以上、さらに好ましくは240℃以上である。また、樹脂組成物の保存安定性の観点で、(a-1)成分のガラス転移温度は、より好ましくは280℃以下、さらに好ましくは270℃以下、特に好ましくは260℃以下である。
(a-2)成分のガラス転移温度は、50℃以上150℃以下であるが、硬化パターンのはんだリフロー工程耐性の観点で、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは90℃以上、特に好ましくは100℃以上である。また、硬化膜の伸度向上およびストレス低減の観点で、(a-2)成分のガラス転移温度は、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは130℃以下、特に好ましくは120℃以下である。
本発明の樹脂組成物を210℃で熱硬化して得られる硬化膜または硬化パターンのストレスは、10MPa以上30MPa以下であることが好ましい。硬化膜または硬化パターンのストレスは、ストレス測定装置で測定することができる。詳細は後述する。硬化膜または硬化パターンのストレスは、半導体チップの反り抑制の観点で、30MPa以下が好ましく、25MPa以下がより好ましく、20MPa以下がさらに好ましく、18MPa以下が特に好ましい。また、硬化膜または硬化パターンのストレスは、パターン形状維持のため、3MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましく、10MPa以上が特に好ましい。
本発明における「アルカリ可溶性」の樹脂とは、以下の方法で測定したアルカリ溶解速度が、60nm/分以上、1,000,000nm/分以下の樹脂であることを指す。
測定対象の樹脂を固形分35質量%になるようにγ-ブチロラクトンに溶解する。この溶液を6インチシリコンウエハ上に塗布し、120℃のホットプレートで4分間プリベークし、膜厚10μm±0.5μmの樹脂膜を形成する。これを23±1℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に1分間浸漬し、浸漬前後の樹脂膜の膜厚の変化から、1分間当たりに溶解する樹脂膜の膜厚を求め、アルカリ溶解速度とする。1分未満の時間で樹脂膜が完全に溶解する場合は、溶解にかかった時間を測定し、これと浸漬前の樹脂膜の膜厚から、1分間当たりに溶解する膜厚を求め、これをアルカリ溶解速度とする。
本発明の樹脂組成物における(a-2)成分の含有量は、(a-1)成分100質量部に対し、10質量部以上40質量部以下である。(a-2)成分の含有量が10質量部未満の場合、得られる硬化膜の伸度向上およびストレス低減効果を十分得られない。(a-2)成分の含有量が40質量部超の場合、はんだリフロー工程耐性を損なう。(a-2)成分の含有量は、硬化膜の伸度向上およびストレス低減の観点で、より好ましくは12質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上である。また、(a-2)成分の含有量は、硬化パターンのはんだリフロー工程耐性向上の観点で、より好ましくは37質量部以下、さらに好ましくは34質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。
前記(a-1)成分のガラス転移温度および前記(a-2)成分のガラス転移温度の差は、得られる硬化膜のストレス低減の観点で、100℃以上が好ましく、130℃以上がさらに好ましい。また、ガラス転移温度の差は、硬化膜の伸度向上の観点で、220℃以下が好ましく、190℃以下がさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物に好ましく用いられるポリイミドは、例えば、テトラカルボン酸、対応するテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドなどとジアミン、対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンを反応させて得たポリアミド酸(ポリイミド前駆体)を、加熱処理あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することで得ることができる。
本発明の樹脂組成物に好ましく用いられるポリベンゾオキサゾールは、例えば、ビスアミノフェノールとジカルボン酸、対応するジカルボン酸クロリド、ジカルボン酸活性エステルなどを反応させて得たポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)を、加熱処理あるいは無水リン酸、塩基、カルボジイミド化合物などの化学処理で脱水閉環することで得ることができる。
本発明の樹脂組成物に好ましく用いられるポリアミドイミドは、例えば、トリカルボン酸、対応するトリカルボン酸無水物、トリカルボン酸無水物ハライドなどとジアミンやジイソシアネートを反応させて得たポリアミドイミド前駆体を、加熱処理あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することにより得ることができる。
さらに、(a-1)成分および(a-2)成分の樹脂は、重合終了後にメタノールや水などポリマーに対する貧溶媒中にて沈殿させた後、洗浄および乾燥して得られるものであることがより好ましい。この操作により、ポリマーの低分子量成分などが除去できるため、樹脂組成物の加熱硬化後の機械特性が向上する。
前記(a-1)成分としては、一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂が好ましい。樹脂の一分子中に含まれる一般式(1)で表される構造単位の数は、好ましくは3以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは15以上である。また、アルカリ溶解性の観点から、構造単位数は、好ましくは500以下、より好ましくは200以下、さらに好ましくは100以下、さらに好ましくは70以下、特に好ましくは50以下である。
一般式(1)中、R1は4価の有機基、R2は2~6価の有機基、pは0~4の整数を表す。
(a-1)成分は、銅元素を含む金属配線や金属電極との密着性向上の観点で、一般式(4)で表される構造単位を有することが特に好ましい。樹脂の一分子中に含まれる一般式(4)で表される構造単位の数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、特に好ましくは5以上である。また、アルカリ溶解性の観点から、構造単位数は、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは10以下である。
一般式(4)中、R9は4価の有機基、Zは下記の(Z-1)群から選ばれる1種類以上の基を表す。
式中、R10は水素原子、水酸基、メルカプト基または1価の炭素数1~10の炭化水素基を表す。
前記(a-2)成分としては、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、それらの前駆体およびそれらの共重合体のいずれの樹脂も好ましく用いられる。150℃以上220℃以下の低温焼成により得られる硬化膜の機械特性の観点で、一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂が特に好ましい。一般式(1)の構造単位を、(a-2)成分の全構造単位総数の30%以上含むことが好ましく、50%以上含むことがより好ましく、70%以上含むことがさらに好ましく、90%以上含むことが特に好ましい。
一般式(1)中、R1は4価の有機基、R2は2~6価の有機基、pは0~4の整数を表す。
前記(a-2)成分は、ガラス転移温度を50℃以上150℃以下とする観点で、一般式(2)および一般式(3)で表される構造単位から選択される1種類以上の構造単位を有することが好ましい。樹脂の一分子中に含まれる一般式(2)または(3)で表される構造単位の数は、ガラス転移温度を50℃以上150℃以下とする観点で、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは15以上である。また、構造単位数は、硬化パターンの耐熱性を高く維持する観点から、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、さらに好ましくは50以下、特に好ましくは30以下である。一般式(2)および一般式(3)で表される構造単位は、樹脂中のジアミン化合物残基、ジカルボン酸化合物残基、トリカルボン酸化合物残基、およびテトラカルボン酸化合物残基のいずれの形態として含まれていてもよいが、ジアミン化合物残基として含まれることが、硬化膜の伸度の観点で好ましい。
一般式(2)および一般式(3)中、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は水素原子または炭素数1~6の1価の炭化水素基を表し、同じでも異なっていてもよい。rは4~20の整数、sは2~20の整数を表す。
一般式(1)および一般式(4)のR1、R2(OH)pおよびR9は、その骨格中にフェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基などを含むことができる。フェノール性水酸基、スルホン酸基またはチオール基を適度に有する樹脂を用いることで、アルカリ溶解性とパターン形成性に優れた感光性樹脂組成物とすることができる。
一般式(1)および一般式(4)中、R1およびR9は、テトラカルボン酸化合物残基を表す。R1およびR9を含む酸成分としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸や、ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸などを挙げることができる。これらの酸成分は、そのまま、あるいは酸無水物、活性エステルなどとして使用できる。また、これら2種類以上の酸成分を組み合わせて用いてもよい。
一般式(1)中、R2(OH)pはジアミン化合物残基を表す。R2(OH)pを含むジアミン成分の例としては、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのヒドロキシル基含有ジアミン;3-スルホン酸-4,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのスルホン酸含有ジアミン;ジメルカプトフェニレンジアミンなどのチオール基含有ジアミン;3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルなどの芳香族ジアミンや、これらの芳香族環の水素原子の一部を、炭素数1~10のアルキル基やフルオロアルキル基、ハロゲン原子などで置換した化合物;2,4-ジアミノ-1,3,5-トリアジン(グアナミン)、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン(アセトグアナミン)、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(ベンゾグアナミン)、2,4-ジアミノ-6-ビニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メルカプト-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノピリミジン、2,4-ジアミノ-6-メチルピリミジン、2,4-ジアミノ-6-フェニルピリミジン、2,4-ジアミノ-6-ビニルピリミジン、2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジン、2,4-ジアミノ-6-メルカプトピリミジン、4,6-ジアミノピリミジン、4,6-ジアミノ-2-メチルピリミジン、4,6-ジアミノ-2-フェニルピリミジン、4,6-ジアミノ-2-ビニルピリミジン、4,6-ジアミノ-2-ヒドロキシピリミジン、4,6-ジアミノ-2-メルカプトピリミジンなどの含窒素複素芳香族環を有するジアミン;1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(p-アミノフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(p-アミノフェネチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,7-ビス(p-アミノフェニル)-1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルテトラシロキサンなどのシリコーンジアミン;シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンなどの脂環式ジアミン;脂肪族ジアミンなどを挙げることができる。また、長鎖の脂肪族基やポリアルキレンオキサイド基を含有するジアミンとして、ポリエチレンオキサイド基を含有する、“ジェファーミン”(登録商標)KH-511、ジェファーミンED-600、ジェファーミンED-900、ジェファーミンED-2003、ジェファーミンEDR-148、ジェファーミンEDR-176、ポリオキシプロピレンジアミンのジェファーミンD-200、ジェファーミンD-400、ジェファーミンD-2000、ジェファーミンD-4000(以上、商品名、HUNTSMAN(株)から入手可能) などを挙げることができる。これらのジアミンは、そのまま、あるいは対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンとして使用できる。また、これら2種類以上のジアミン成分を組み合わせて用いてもよい。
(a-2)成分は、長鎖の脂肪族基やポリアルキレンオキサイド基を含有するジアミン残基を有すると、樹脂のガラス転移温度を低くすることができ、好ましい。そのため、(a-2)成分としては、前記一般式(2)の構造単位および前記一般式(3)の構造単位から選ばれた構造単位を有するジアミン残基を有するものが特に好ましく用いられる。一方、(a-1)成分は、樹脂のガラス転移温度を高く維持する観点で、これらの構造単位を含まない方が好ましい。
また、(a-1)成分および/または(a-2)成分の構造単位中にフッ素原子を有することが好ましい。フッ素原子により、得られる樹脂膜の表面に撥水性が付与され、アルカリ現像の際に樹脂膜表面からの現像液のしみこみなどを抑えることができる。(a-1)成分および(a-2)成分中のフッ素原子含有量は、しみこみ防止効果を十分得るために10質量%以上が好ましく、また、アルカリ水溶液に対する溶解性の点から20質量%以下が好ましい。
また、(a-1)成分および/または(a-2)成分において、耐熱性を低下させない範囲で、R2(OH)pとしてシロキサン構造を有する脂肪族ジアミンを共重合してもよく、支持基板との接着性を向上させることができる。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p-アミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどを1~10モル%共重合することが挙げられる。
また、樹脂組成物の保存安定性を向上させるため、(a-1)成分および(a-2)成分は、主鎖末端をモノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物などの末端封止剤で封止することが好ましい。得られる樹脂硬化膜の耐薬品性を向上させる目的で、これらの末端封止剤として、アルケニル基またはアルキニル基を少なくとも1個有するモノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物などを用いることもできる。
末端封止剤としてモノアミンを用いる場合、その導入割合は、全アミン成分に対して、好ましくは0.1モル%以上、特に好ましくは5モル%以上である。また、全アミン成分に対して、好ましくは60モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。末端封止剤として酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物またはモノ活性エステル化合物を用いる場合、その導入割合は、ジアミン成分に対して、好ましくは0.1モル%以上、特に好ましくは5モル%以上である。一方、樹脂の分子量を高く維持する点で、末端封止剤の導入割合は、ジアミン成分に対して、好ましくは100モル%以下、特に好ましくは90モル%以下である。複数の末端封止剤を反応させることにより、複数の異なる末端基を導入してもよい。
モノアミンとしては、アニリン、2-エチニルアニリン、3-エチニルアニリン、4-エチニルアニリン、5-アミノ-8-ヒドロキシキノリン、1-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-4-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-カルボキシ-7-アミノナフタレン、1-カルボキシ-6-アミノナフタレン、1-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-カルボキシ-7-アミノナフタレン、2-カルボキシ-6-アミノナフタレン、2-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、2-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノ-4,6-ジヒドロキシピリミジン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノールなどが好ましい。これらを2種類以上用いてもよい。
酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、またはモノ活性エステル化合物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、ナジック酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物などの酸無水物;3-カルボキシフェノール、4-カルボキシフェノール、3-カルボキシチオフェノール、4-カルボキシチオフェノール、1-ヒドロキシ-7-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-6-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-5-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-7-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-6-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-5-カルボキシナフタレン、3-カルボキシベンゼンスルホン酸、4-カルボキシベンゼンスルホン酸などのモノカルボン酸類およびこれらのカルボキシル基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物;テレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,5-ジカルボキシナフタレン、1,6-ジカルボキシナフタレン、1,7-ジカルボキシナフタレン、2,6-ジカルボキシナフタレンなどのジカルボン酸類の一方のカルボキシル基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物;モノ酸クロリド化合物とN-ヒドロキシベンゾトリアゾールやN-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドとの反応により得られる活性エステル化合物などが好ましい。これらを2種類以上用いてもよい。
(a-1)成分および(a-2)成分中に導入された末端封止剤は、以下の方法で検出できる。例えば、末端封止剤が導入された樹脂を、酸性溶液に溶解し、構成単位であるアミン成分と酸無水物成分に分解し、これをガスクロマトグラフィー(GC)や、核磁気共鳴(NMR)測定することにより、末端封止剤を容易に検出できる。これとは別に、末端封止剤が導入された樹脂成分を直接、熱分解ガスクロクロマトグラフ(PGC)や赤外スペクトルおよび13C-NMRスペクトルで測定することによっても、容易に検出することが可能である。
(a-1)成分において、全てのイミドおよびイミド前駆体ユニットの総量に対するイミド閉環したユニットのモル比をイミド環閉環率(RIM(%))と定義すると、RIMは、220℃以下の低温焼成時の硬化膜の機械特性および耐薬品性の観点で、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上である。同様に、(a-2)成分としてポリイミドを用いる場合、イミド環閉環率RIMは、220℃以下の低温焼成時の硬化膜の機械特性および耐薬品性の観点で、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上である。
上記のイミド環閉環率(RIM(%))は、例えば、以下の方法で求めることができる。まず、ポリマーの赤外吸収スペクトルを測定し、ポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピーク(1780cm-1付近、1377cm-1付近)の存在を確認し、1377cm-1付近のピーク強度(X)を求める。次に、そのポリマーを350℃で1時間熱処理して、イミド環を完全に閉環させた後、赤外吸収スペクトルを測定し、1377cm-1付近のピーク強度(Y)を求める。ピーク強度(X)をピーク強度(Y)で割ったピーク強度比が熱処理前ポリマー中のイミド閉環したユニットのモル比、すなわちイミド環閉環率に相当する(RIM=X/Y×100(%))。
(a-1)成分および(a-2)成分は、現像時間を短縮する観点から、前述の方法で測定したアルカリ溶解速度が、好ましくは100nm/分以上、より好ましくは200nm/分以上、さらに好ましくは500nm/分以上、特に好ましくは1,000nm/分以上である。また、得られるパターンのパターン形状を良好にする観点から、アルカリ溶解速度が、好ましくは200,000nm/分以下、より好ましくは100,000nm/分以下、さらに好ましくは50,000nm/分以下、さらに好ましくは20,000nm/分以下、特に好ましくは15,000nm/分以下である。
(a-1)成分および(a-2)成分の重量平均分子量は、硬化膜の機械特性の観点で、好ましくは1,000以上、より好ましくは1,500以上、さらに好ましくは5,000以上、特に好ましくは10,000以上である。重量平均分子量は、アルカリ溶解性の観点で、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、さらに好ましくは40,000以下、特に好ましくは30,000以下である。本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で求めた値である。詳細は、後述する。
本発明の樹脂組成物は、必要に応じてフェノール含有樹脂を含有してもよい。本発明におけるフェノール含有樹脂とは、構成単位としてフェノール基を有する樹脂であり、例えば、ポリヒドロキシスチレン樹脂、アルカリ可溶性のノボラック樹脂、レゾール樹脂、およびベンジルエーテル型フェノール樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。これらを2種類以上用いてもよい。これらの中でも硬化膜の信頼性の観点で、(a-3)ポリヒドロキシスチレン樹脂(以下、(a-3)成分と省略する場合がある)を含有することが特に好ましい。
(a-3)ポリヒドロキシスチレン樹脂は、例えば、公知の方法で不飽和結合を有するフェノール誘導体を付加重合させて得ることができる。不飽和結合を有するフェノール誘導体としては、例えば、ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、アリルフェノール、クマル酸、2’-ヒドロキシカルコン、N-ヒドロキシフェニル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸イミド、レスベラトロール、4-ヒドロキシスチルベン等が挙げられ、これらを2種以上用いてもよい。また、スチレン等のフェノール性水酸基を含有しないモノマーとの共重合体であってもよい。こうすることで、アルカリ溶解速度の調整が容易になる。
(a-3)ポリヒドロキシスチレン樹脂は、アルカリ溶解速度の調整の観点で、ヒドロキシスチレン残基およびスチレン残基を有する共重合体であることが好ましい。スチレン残基の含有量は、ヒドロキシスチレン残基100モル%に対し、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、特に好ましくは15モル%以上である。また、スチレン残基の含有量は、ヒドロキシスチレン残基100モル%に対し、好ましくは60モル%以下、より好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、特に好ましくは25モル%以下である。
ノボラック樹脂、レゾール樹脂、およびベンジルエーテル型フェノール樹脂は、フェノール類とホルマリンなどのアルデヒド類を公知の方法で重縮合することにより得られる。
フェノール類としては、例えば、フェノール、p-クレゾール、m-クレゾール、o-クレゾール、2,3-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、2,3,4-トリメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、2,4,5-トリメチルフェノール、メチレンビスフェノール、メチレンビス(p-クレゾール)、レゾルシン、カテコール、2-メチルレゾルシン、4-メチルレゾルシン、o-クロロフェノール、m-クロロフェノール、p-クロロフェノール、2,3-ジクロロフェノール、m-メトキシフェノール、p-メトキシフェノール、p-ブトキシフェノール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、2,3-ジエチルフェノール、2,5-ジエチルフェノール、p-イソプロピルフェノール、α-ナフトール、β-ナフトールなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
また、アルデヒド類としては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロアセトアルデヒドなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
フェノール含有樹脂の重量平均分子量は、耐薬品性の観点で、好ましくは500以上、より好ましくは700以上、さらに好ましくは1,000以上、アルカリ溶解性の観点で好ましくは50,000以下、より好ましくは40,000以下、さらに好ましくは30,000以下、特に好ましくは20,000以下である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で求めた値である。
フェノール含有樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて求めることができる。ガラス転移温度は、硬化パターンのはんだリフロー工程耐性の観点で、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。また、ガラス転移温度は、硬化膜の伸度の観点で、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは150℃以下である。
フェノール含有樹脂の含有量は、(a-1)成分100質量部に対して、感光性樹脂組成物として用いる場合の感度向上の観点で、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上、特に好ましくは18質量部以上である。フェノール含有樹脂の含有量は、(a-1)成分100質量部に対して、硬化膜の耐熱性の観点で、好ましくは500質量部以下、より好ましくは300質量部以下、さらに好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは100質量部以下、特に好ましくは50質量部以下である。
フェノール含有樹脂のアルカリ溶解速度は、現像時間を適切にする観点から、好ましくは100nm/分以上、より好ましくは200nm/分以上、さらに好ましくは500nm/分以上、特に好ましくは1,000nm/分以上である。また、好ましくは200,000nm/分以下、より好ましくは100,000nm/分以下、さらに好ましくは50,000nm/分以下、さらに好ましくは20,000nm/分以下、特に好ましくは15,000nm/分以下である。
本発明の樹脂組成物は、(b)感光剤を含有する。(b)感光剤を含有することにより、紫外線露光部のアルカリ現像液または有機現像液に対する溶解性が変化するため、紫外線露光の後、現像液で現像することによって樹脂パターンを得ることができる。
本発明の樹脂組成物の好ましい態様は、(b)感光剤として、(b-1)キノンジアジド化合物を用いる。樹脂組成物が(b-1)キノンジアジド化合物を含有する場合、紫外線露光部に酸が発生し、露光部のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大するため、紫外線露光の後、アルカリ現像することによってポジ型の樹脂パターンを得ることができる。2種類以上のキノンジアジド化合物を用いることもできる。これにより露光部と未露光部の溶解速度の比をより大きくすることができ、高感度な感光性樹脂組成物を得ることができる。
(b-1)化合物の例としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合およびスルホンアミド結合から選択される1種類以上で結合したものなどが挙げられる。これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の全ての官能基がキノンジアジドで置換されていなくても良いが、官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。このようなキノンジアジド化合物を用いることで、一般的な紫外線である水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、またはg線(436nm)に感光するポジ型感光性樹脂組成物を得ることができる。
キノンジアジド化合物としては、5-ナフトキノンジアジドスルホニル基および4-ナフトキノンジアジドスルホニル基のいずれも好ましく用いられる。同一分子中にこれらの基を両方有する化合物を用いてもよいし、異なる基を用いた化合物を併用してもよい。
キノンジアジド化合物は、公知の方法により合成できる。例えば5-ナフトキノンジアジドスルホニルクロライドとポリヒドロキシ化合物をトリエチルアミン存在下で反応させる方法が挙げられる。
樹脂組成物中の(b-1)化合物の含有量は、(a-1)成分100質量部に対して、好ましくは1~60質量部である。キノンジアジド化合物の含有量をこの範囲とすることにより、樹脂組成物の高感度化を図り、得られる硬化膜の伸度等の機械特性を維持できる。より高感度化するためには、(b-1)化合物の含有量は、好ましくは3質量部以上である。また、硬化膜の機械特性を損なわないためには、(b-1)化合物の含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。さらに増感剤などを必要に応じて含有してもよい。
本発明の樹脂組成物の別の好ましい態様は、(b)感光剤として、(b-2)光重合開始剤を用いる。樹脂組成物が(b-2)光重合開始剤、および後述する(d)重合性不飽和結合基を有する化合物を含有する場合、紫外線露光およびその後の加熱処理によって露光部がアルカリ現像液または有機現像液に不溶化するため、ネガ型のパターン形成が可能になる。
(b-2)光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;3,5-ビス(ジエチルアミノベンジリデン)-N-メチル-4-ピペリドン、3,5-ビス(ジエチルアミノベンジリデン)-N-エチル-4-ピペリドンなどのベンジリデン類;7-ジエチルアミノ-3-テノニルクマリン、4,6-ジメチル-3-エチルアミノクマリン、3,3-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、7-ジエチルアミノ-3-(1-メチルメチルベンゾイミダゾリル)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリンなどのクマリン類;2-t-ブチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノンなどのアントラキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン類;エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、2-メルカプトベンズチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンズイミダゾールなどのメルカプト類;N-フェニルグリシン、N-メチル-N-フェニルグリシン、N-エチル-N-(p-クロロフェニル)グリシン、N-(4-シアノフェニル)グリシンなどのグリシン類;1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、ビス(α-イソニトロソプロピオフェノンオキシム)イソフタル、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(o-ベンゾイルオキシム)、OXE02(商品名、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)、“アデカアークルズ”(登録商標)NCI-831(商品名、(株)ADEKA製)などのオキシム類;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンなどのα-アミノアルキルフェノン類;2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾールなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
樹脂組成物中の(b-2)光重合開始剤の含有量は、(a-1)成分の樹脂100質量部に対して、1種類につき0.1~40質量部が好ましい。2種以上を組み合わせる場合は、総量で0.2~60質量部とすることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、(c)熱架橋剤をさらに含有することが好ましい。熱架橋剤としては、アルコキシメチル基およびメチロール基から選択される1種類以上の基を少なくとも2つ有する化合物、または、エポキシ基およびオキセタニル基から選択される1種類以上の基を少なくとも2つ有する化合物が好ましく用いられるが、これらに限定されない。樹脂組成物が(c)熱架橋剤を含有することによって、樹脂組成物を用いて形成された樹脂パターンを焼成する際に、(a-1)成分および(a-2)成分と(c)熱架橋剤が反応して架橋構造体となり、得られる硬化膜のはんだリフロー工程耐性が向上する。また、熱架橋剤は2種類以上用いてもよく、これによってさらに幅広い設計が可能になる。
アルコキシメチル基およびメチロール基から選択される1種類以上の基を少なくとも2つ有する化合物の好ましい例としては、例えば、DML-PC、DML-PEP、DML-OC、DML-OEP、DML-34X、DML-PTBP、DML-PCHP、DML-OCHP、DML-PFP、DML-PSBP、DML-POP、DML-MBOC、DML-MBPC、DML-MTrisPC、DML-BisOC-Z、DML-BisOCHP-Z、DML-BPC、DML-BisOC-P、DMOM-PC、DMOM-PTBP、DMOM-MBPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-HQ、TML-BP、TML-pp-BPF、TML-BPE、TML-BPA、TML-BPAF、TML-BPAP、TMOM-BP、TMOM-BPE、TMOM-BPA、TMOM-BPAF、TMOM-BPAP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP、HMOM-TPPHBA、HMOM-TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、“NIKALAC”(登録商標) MX-290、NIKALAC MX-280、NIKALAC MX-270、NIKALAC MX-279、NIKALAC MW-100LM、NIKALAC MX-750LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)が挙げられ、各社から入手可能である。これらを2種類以上含有してもよい。
また、エポキシ基およびオキセタニル基から選択される1種類以上の基を少なくとも2つ有する化合物の好ましい例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型オキセタニル樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型オキセタニル樹脂、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリメチル(グリシジロキシプロピル)シロキサン等のエポキシ基含有シリコーンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。具体的には、“EPICLON”(登録商標)850-S、HP-4032、HP-7200、HP-820、HP-4700、EXA-4710、HP-4770、EXA-859CRP、EXA-1514、EXA-4880、EXA-4850-150、EXA-4850-1000、EXA-4816、EXA-4822(以上商品名、DIC(株)製)、“リカレジン”(登録商標)BEO-60E(商品名、新日本理化(株)製)、EP-4003S、EP-4000S(商品名、(株)ADEKA製)、“TECHMORE”(登録商標)VG3101L、VG3101M80(商品名、(株)プリンテック製)などが挙げられ、各社から入手可能である。これらを2種類以上含有してもよい。
樹脂組成物中の(c)熱架橋剤の含有量は、(a-1)成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上である。また、伸度等の機械特性維持の観点で、(c)熱架橋剤の含有量は、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下である。
(b)感光剤が、(b-2)光重合開始剤である態様においては、樹脂組成物は、(d)重合性不飽和結合基を有する化合物をさらに含有することが好ましい。前記(b-2)光重合開始剤、および(d)重合性不飽和結合基を有する化合物を含有することにより、紫外線露光およびその後の加熱処理によって露光部がアルカリまたは有機の現像液に不溶化するため、ネガ型のパターン形成が可能になる。
(d)成分において、重合性不飽和結合基としては、例えば、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の不飽和二重結合基、およびプロパルギル基等の不飽和三重結合基が挙げられる。これらを2種以上有してもよい。これらの中でも、共役型のビニル基やアクリロイル基、およびメタクリロイル基から選ばれた基が重合性の面で好ましい。また、安定性の点から、これらの基を1分子中に1~4個有することが好ましい。
(d)成分の例としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、1,2-ジヒドロナフタレン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-ビニルナフタレン、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパン、1,3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルアクリレート、N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルメタクリレート、N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルアクリレート等が挙げられる。
樹脂組成物中の(d)成分の含有量は、(a-1)成分100質量部に対して、好ましくは5~200質量部であり、相溶性の点から5~150質量部がより好ましい。
(b)感光剤が、(b-2)光重合開始剤である態様においては、樹脂組成物は、(e)重合禁止剤をさらに含有することが好ましい。(e)重合禁止剤とは、露光時に発生したラジカル、または、露光時のラジカル重合により得られるポリマー鎖の、ポリマー生長末端のラジカルを捕捉し、安定ラジカルとして保持することで、ラジカル重合を停止することが可能な化合物をいう。
(b)感光剤が、(b-2)光重合開始剤である態様において、樹脂組成物に、(e)重合禁止剤を適量含有させることで、現像後の残渣発生を抑制し、現像後の解像度を向上させることができる。これは、露光時に発生した過剰量のラジカル、または、高分子量のポリマー鎖の生長末端のラジカルを重合禁止剤が捕捉することで、過剰なラジカル重合の進行を抑制するためと推測される。
(e)重合禁止剤としては、フェノール系重合禁止剤が好ましい。フェノール系重合禁止剤としては、例えば、4-t-ブチルフェノール、4-メトキシフェノール、1,4-ヒドロキノン、1,4-ベンゾキノン、2-t-ブチル-4-メトキシフェノール、3-t-ブチル-4-メトキシフェノール、4-t-ブチルカテコール、2-t-ブチル-1,4-ヒドロキノン、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシフェノール、2,5-ジ-t-ブチル-1,4-ヒドロキノン、2,5-ジ-t-アミル-1,4-ヒドロキノン、2-ニトロソ-1-ナフトール、“IRGANOX”(登録商標)1010、同1035、同1076、同1098、同1135、同1330、同1726、同1425、同1520、同245、同259、同3114、同565、または同295(以上、いずれもBASF製)が挙げられる。
樹脂組成物中の(e)重合禁止剤の含有量は、(d)重合性不飽和結合基を有する化合物100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.03質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましく、0.1質量部以上が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、現像後の解像度および硬化膜の耐熱性を向上させることができる。一方、(e)重合禁止剤の含有量は、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましく、3質量部以下が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、露光時の感度を向上させることができる。
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて溶剤を含有してもよい。溶剤の好ましい例としては、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性の非プロトン性溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテートなどのエステル類;乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノールなどのアルコール類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらを2種類以上含有してもよい。
樹脂組成物中の溶剤の含有量は、(a-1)成分100質量部に対して、樹脂溶解の観点で、好ましくは70質量部以上、より好ましくは100質量部以上である。また、適度な膜厚を得る観点で、溶剤の含有量は、好ましくは1800質量部以下、より好ましくは1500質量部以下である。
本発明の樹脂組成物は、上記の溶剤の中でも、(f)エステル構造を有する溶剤(以下、(f)溶剤と省略する場合がある)を含むことが好ましい。樹脂組成物を用いて形成した樹脂パターンを加熱処理して得られた硬化パターン中に(f)溶剤が少量含まれていることによって、詳細な理由は不明であるが、硬化パターンの伸度向上またはストレス低減効果があるため、好ましい。(f)エステル構造を有する溶剤の好ましい例としては、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸エチル、乳酸メチルなどが挙げられる。
硬化パターン中に含まれている(f)溶剤の含有量は、硬化パターンに対する重量比で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.015質量%以上である。また、(f)溶剤の含有量は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは0.03質量%以下である。
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて熱酸発生剤をさらに含有してもよい。熱酸発生剤は、加熱により酸を発生し、(c)熱架橋剤の架橋反応促進および、(a-1)および(a-2)成分が未閉環のイミド環構造および/またはオキサゾール環構造を有している場合は、これらの環化を促進し、通常よりも低い150~300℃で焼成した場合においても、得られる硬化膜の機械特性をより向上させる効果がある。
熱酸発生剤の熱分解開始温度は、好ましくは50℃~270℃であり、より好ましくは220℃以下であり、さらに好ましくは180℃以下である。また、樹脂組成物を支持基板に塗布した後の乾燥(プリベーク:約70~140℃)時には酸を発生せず、その後の露光および現像を経て樹脂パターンを形成した後の最終加熱(キュア:約100~400℃)時に酸を発生するものを選択すると、現像時の感度低下を抑制できるため好ましい。本発明の樹脂組成物は、硬化のための加熱処理工程の最大温度が150℃以上220℃以下であっても、はんだリフロー工程における硬化パターンの形状変化が小さい点に優れるため、熱酸発生剤としては、熱分解開始温度が、該加熱処理工程の最大温度以下のものが好ましく用いられる。
熱酸発生剤から発生する酸としては強酸が好ましく、例えば、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などのアリールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸やトリフルオロメタンスルホン酸などのハロアルキルスルホン酸などが好ましい。これらはオニウム塩のような塩として、またはイミドスルホナートのような共有結合化合物として用いられる。
樹脂組成物中の熱酸発生剤の含有量は、(a-1)成分100質量部に対して、架橋反応および樹脂の未閉環構造の環化促進の観点で、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。また、硬化膜の電気絶縁性の観点で、熱酸発生剤の含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
本発明の樹脂組成物は、必要に応じてフェノール性水酸基を有する低分子化合物をさらに含有してもよい。フェノール性水酸基を有する低分子化合物を含有することにより、樹脂パターン形成時のアルカリ溶解性の調節が容易になる。
フェノール性水酸基を有する低分子化合物の含有量は、(a-1)成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、伸度等の機械特性維持の観点で、含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて支持基板との濡れ性を向上させる目的で界面活性剤;乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノールなどのアルコール類;シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエ-テル類等をさらに含有してもよい。
これらの支持基板との濡れ性を向上させる目的で用いる化合物の好ましい含有量は、(a-1)成分100質量部に対して0.001質量部以上である。また、適度な膜厚を得る観点で、含有量は、好ましくは1800質量部以下、より好ましくは1500質量部以下である。
本発明の樹脂組成物は無機粒子をさらに含んでもよい。好ましい具体例としては酸化珪素、酸化チタン、チタン酸バリウム、アルミナ、タルクなどが挙げられるがこれらに限定されない。
これら無機粒子の一次粒子径は、感度維持の観点で、好ましくは100nm以下、特に好ましくは60nm以下である。無機粒子の一次粒子径の求め方としては、数平均粒子径として、比表面積から求められる算出法が挙げられる。比表面積は、単位質量の粉体に含まれる表面積の総和として定義される。比表面積の測定法としてはBET法が挙げられ、比表面積測定装置(Mountech社製 HMmodel-1201など)を用いて測定することができる。
また、シリコン基板との接着性を高めるために、樹脂組成物に、トリメトキシアミノプロピルシラン、トリメトキシエポキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリメトキシチオールプロピルシランなどのシランカップリング剤をさらに含有してもよい。
これらのシリコン基板との接着性を高めるために用いる化合物の好ましい含有量は、(a-1)成分100質量部に対して0.01質量部以上である。また、伸度等の機械特性維持の観点で、含有量は、好ましくは5質量部以下である。
樹脂組成物の粘度は、2~5000mPa・sが好ましい。粘度が2mPa・s以上となるように固形分濃度を調整することにより、樹脂組成物を用いて所望の膜厚を得ることが容易になる。一方粘度が5000mPa・s以下であれば、均一性の高い塗布膜を得ることが容易になる。このような粘度を有する樹脂組成物は、例えば固形分濃度を5~60質量%にすることで容易に得ることができる。
次に、本発明の樹脂組成物を用いて硬化パターンを形成する方法について説明する。
本発明の硬化パターンは、本発明の樹脂組成物を用いて、所定の形状に形成された樹脂パターンを硬化してなるものである。すなわち、本発明の硬化パターンは、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる。
硬化パターンは、本発明の樹脂組成物を支持基板上に塗布および乾燥し、樹脂膜を得る工程と、前記工程により得られた樹脂膜を露光する工程と、前記露光後の樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像し樹脂パターンを形成する工程と、前記現像後の樹脂パターンを加熱処理する工程とを含む方法により製造することができる。また、硬化パターンは、本発明の樹脂組成物を基材上に塗布した後、有機溶媒を除去し、樹脂シートを得る工程と、前記工程により得られた樹脂シートを別の支持基板上に貼り合わせる工程と、前記貼り合わせ後の樹脂シートを露光する工程と、前記露光後の樹脂シートをアルカリ水溶液を用いて現像し樹脂パターンを形成する工程と、前記現像後の樹脂パターンを加熱処理する工程とを含む方法により製造することもできる。
硬化パターンを形成する方法について、より詳細には次のとおりである。まず、本発明の樹脂組成物を支持基板に塗布する。支持基板としてはシリコン、セラミックス類、ガリウムヒ素などのウエハ、または、その上に金属が電極および/または配線として形成されているものが用いられるが、これらに限定されない。ただし、本発明の樹脂組成物は銅元素を含む金属表面との密着性にも優れるため、支持基板が、銅元素を含む金属配線および銅元素を含む金属電極のうち少なくとも1種類以上が形成された基板であることが、高い耐久性の半導体素子を得る観点で好ましい。
塗布方法としてはスピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、スリット塗布、ロールコーティングなどの方法がある。また、樹脂組成物を塗布して得られる塗布膜の膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.1~150μmになるように塗布される。
支持基板と樹脂組成物との接着性を高めるために、支持基板を前述のシランカップリング剤で前処理することもできる。例えば、シランカップリング剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に濃度0.5~20質量%で溶解させた溶液を用いて、スピンコート、浸漬、スプレー塗布、蒸気処理などの手法により、支持基板の表面処理をする。必要に応じて、その後50~300℃の熱処理を行い、支持基板とシランカップリング剤との反応を進行させる。
次に樹脂組成物が塗布された支持基板を乾燥して、樹脂膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、50~150℃の範囲で1分間~数時間行うことが好ましい。
次に、前記工程により得られた樹脂膜に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、樹脂膜を露光する。露光に用いられる化学線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、もしくはg線(436nm)、またはこれらを含む混合波長の化学線が好ましく用いられる。
必要に応じて、化学線を照射した後、露光後ベークをしても構わない。露光後ベークを行うことによって、現像後の解像度向上または現像条件の許容幅増大などの効果が期待できる。露光後ベークは、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置またはレーザーアニール装置などを使用して行うことができる。露光後ベーク温度としては、50~180℃が好ましく、60~150℃がより好ましい。露光後ベーク時間は、10秒~数時間が好ましい。露光後ベーク時間が上記範囲内であると、反応が良好に進行し、現像時間を短くできる場合がある。
露光後の樹脂膜を、現像液を用いて現像することにより、所望の樹脂パターンを形成する。現像液としては、アルカリ水溶液が好ましい。アルカリ水溶液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液に、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独で、あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。現像後は、水にてリンス処理をすることが好ましい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
現像後の樹脂パターンを加熱処理することにより、樹脂パターンを硬化させ、硬化パターンを得る。樹脂パターンの硬化は、樹脂パターンに150~500℃の温度を加えて、熱架橋反応、イミド閉環反応、オキサゾール閉環反応等を進行させることが好ましく、こうすることで得られる硬化パターンの耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。本発明の樹脂組成物は、硬化のための加熱処理工程の最大温度が150℃以上220℃以下であっても、はんだリフロー工程における硬化パターンの形状変化が小さい点に優れるため、この加熱処理工程の最大温度は150℃以上220℃以下が好ましい。また、加熱処理工程の最大温度を、(a-1)成分のガラス転移温度より低く、かつ(a-2)成分のガラス転移温度より高くすることで、硬化時に(a-2)成分のみの流動性を高めることができ、伸度向上の観点で好ましい。加熱処理は、温度を選び段階的に昇温するか、もしくは、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら、5分間~5時間実施するのが好ましい。一例としては、110℃、160℃および200℃で各30分ずつ熱処理する方法が挙げられる。あるいは室温から200℃まで1時間かけて直線的に昇温する方法が挙げられる。このような加熱処理工程において、温度が最も高くなったときの温度を、最大温度と定義する。
次に、本発明の樹脂組成物を用いて樹脂シートを作製し、この樹脂シートを用いて、硬化パターンを形成する方法について説明する。
本発明の樹脂シートは、本発明の樹脂組成物をシート状に成形してなるものである。ただし、樹脂組成物が溶剤を含む場合は、本発明の樹脂シートは、本発明の樹脂組成物から該溶剤を除いたものである。前述の樹脂組成物を基材上に塗布することによって、樹脂シートを作製することができる。樹脂組成物が溶剤を含む場合は、基材上に塗布した後、樹脂組成物に含まれる溶剤を除去することによって、樹脂シートを得る。
樹脂組成物を塗布する基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどを用いることができる。本発明の樹脂シートをシリコンウエハなどの支持基板に貼り合わせた後に、基材であるPETフィルムを剥離除去する必要がある場合は、表面にシリコーン樹脂などの離型剤がコーティングされたPETフィルムを基材として用いると、容易に樹脂シートと基材を剥離できるので好ましい。基材の厚みは、特に限定されないが、作業性の観点から、30~80μmの範囲であることが好ましい。
樹脂組成物を基材上へ塗布する方法としては、スクリーン印刷、スプレーコーター、バーコーター、ブレードコーター、ダイコーター、スピンコーターなどを用いることができる。
樹脂組成物に含まれる有機溶媒を除去する方法としては、オーブンやホットプレートによる加熱、真空乾燥、赤外線やマイクロ波などの電磁波による加熱などが挙げられる。オーブンを使用して、50~140℃の範囲で1分間~1時間行うことが好ましい。ここで、有機溶媒の除去が不十分である場合、次の硬化処理により得られる硬化物が未硬化状態となったり、熱機械特性が不良となったりする場合がある。
樹脂シートの表面を大気中のゴミ等から保護するために、樹脂シートの表面にカバーフィルムを貼り合わせてもよい。また、得られた樹脂シートの膜厚が、所望する膜厚よりも薄い場合は、樹脂シートを2枚以上貼り合わせて所望の膜厚にしても良い。
上記の方法にて作製した樹脂シートを別の支持基板上に貼り合わせる場合は、ロールラミネーターや真空ラミネーターなどのラミネート装置を使用しても、ホットプレート上で加熱した支持基板にゴムローラーを用いて手動で貼り合わせても良い。樹脂シートを支持基板へ貼り合わせた後、十分に冷却してから基材を剥離することにより、支持基板に樹脂シートが積層された積層体が得られる。
得られた積層体に対して、前述の樹脂組成物を用いて硬化パターンを形成する方法と同様にして、所望のパターンを有するマスクを通して支持基板上の樹脂シートに化学線を照射する工程、必要に応じて化学線照射後に露光後ベークをする工程、現像液を用いて露光部または非露光部を除去して樹脂パターンを形成する工程、150℃~500℃の温度を加えて樹脂パターンを硬化する工程を経て、硬化パターンを得ることができる。
本発明の樹脂組成物は、半導体電子部品、半導体装置などの用途に好適に用いることができる。具体的には、前記のようにして、本発明の樹脂組成物を用いて形成された硬化パターンは、層間絶縁膜、半導体保護膜等の用途に好適に用いられる。詳細には、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる硬化パターンを、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などとして配置した半導体電子部品または半導体装置が好適に用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。まず、各実施例および比較例における評価方法について説明する。なお、樹脂組成物(以下ワニスと呼ぶ)の評価においては、あらかじめ1μmのポリテトラフルオロエチレン製のフィルター(住友電気工業(株)製)で濾過したワニスを用いた。
(1)膜厚
支持基板上の樹脂膜の膜厚は、光干渉式膜厚測定装置((株)SCREENホールディングス製ラムダエースVM-1030)を使用して測定した。なお、樹脂膜の屈折率は、ポリイミドを対象に、1.629として測定した。
(2)樹脂のガラス転移温度
示差走査熱量計((株)島津製作所製DSC-50)を用い、窒素気流下、昇温速度10℃/分、測定温度30~350℃の条件で樹脂粉末を測定し、ガラス転移温度を求めた。この場合のガラス転移温度とは、熱量変化からJIS K 7121-2012「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠した方法によって算出した中間点ガラス転移温度のことである。
(3)アルカリ溶解速度
樹脂を固形分濃度35質量%になるようにγ-ブチロラクトン(以下GBLと呼ぶ)に溶解した。この溶液を6インチシリコンウエハ上に塗布し、ホットプレートを用いて120℃で4分間プリベークし、膜厚10μm±0.5μmの樹脂膜を形成した。これを温度23±1℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に1分間浸漬し、浸漬前後の樹脂膜の膜厚の変化から、1分間当たりに溶解した樹脂膜の膜厚を求め、アルカリ溶解速度とした。なお、1分未満の時間で樹脂膜が完全に溶解した場合は、溶解にかかった時間を測定し、これと浸漬前の樹脂膜の膜厚から、1分間当たりに溶解する膜厚を求め、これをアルカリ溶解速度とした。
(4)重量平均分子量
樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(日本ウォーターズ(株)製Waters2690-996)を用い、展開溶媒をN-メチル-2-ピロリドン(以下NMPと呼ぶ)として測定し、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を計算した。
(5)イミド環閉環率(RIM(%))
イミドまたはイミド前駆体構造を有する樹脂を濃度35質量%になるようにGBLに溶解した。この溶液を4インチのシリコンウエハ上にスピンナ(ミカサ(株)製1H-DX)を用いてスピンコート法で塗布し、次いで120℃のホットプレートで3分ベークし、厚さ4~5μmの樹脂膜を作製した。この樹脂膜付きウエハを2分割し、一方をクリーンオーブン(光洋サーモシステム(株)製CLH-21CD-S)を用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)において140℃で30分、次いでさらに昇温して320℃で1時間キュアして、イミド環を完全に閉環させた。赤外分光光度計((株)堀場製作所製FT-720)を用いてキュア前後の樹脂膜の透過赤外吸収スペクトルをそれぞれ測定し、ポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピーク(1780cm-1付近、1377cm-1付近)の存在を確認の上、1377cm-1付近のピーク強度(キュア前:X、キュア後:Y)を求めた。ピーク強度(X)をピーク強度(Y)で割ったピーク強度比を算出し、熱処理前ポリマー中のイミド基の含量、すなわちイミド環閉環率を求めた(RIM=X/Y×100(%))。
(6)硬化膜の破断点伸度
ワニスを、8インチのシリコンウエハ上に塗布現像装置(東京エレクトロン(株)製ACT-8)を用いてスピンコート法で塗布した。塗布は、得られた樹脂膜を120℃で3分間プリベークした後の樹脂膜の膜厚が11μmになるように行った。次いで120℃のホットプレートで3分間プリベークを行った。
ネガ型ワニスを用いる場合は、プリベーク後の樹脂膜付きシリコンウエハに対し、露光装置(ユニオン光学(株)製マスクアライナーPEM-6M)を用いて、水銀灯のi線、h線、およびg線を含む波長の化学線を、g線で5,000J/m2の露光量となるよう、ウエハ全面に照射する工程を追加した。
この樹脂膜付きシリコンウエハを、クリーンオーブンCLH-21CD-Sを用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)において120℃で30分、次いでさらに昇温して180℃で1時間加熱処理を行った。その後、温度が50℃以下に下がったところでウエハを取り出し、45質量%のフッ化水素酸に5分間浸漬することで、ウエハより硬化膜を剥がした。この硬化膜を幅1cm、長さ9cmの短冊状に切断し、万能試験機((株)オリエンテック製テンシロンRTM-100)を用いて、23℃で引張速度50mm/分で引っ張り、破断点伸度の測定を行なった。測定は1検体につき10枚の短冊について行ない、上位5点の平均値を求めた。破断点伸度の値が15%以上の場合を極めて良好(3)、5%以上15%未満の場合を良好(2)、5%未満または膜強度が不十分のため測定できない場合を不良(1)とした。
(7)硬化膜のストレス測定
ワニスを、8インチのシリコンウエハ上に塗布現像装置(東京エレクトロン(株)製ACT-8)を用いてスピンコート法で塗布した。塗布は、得られた樹脂膜を120℃で3分間プリベークした後の樹脂膜の膜厚が11μmになるように行った。次いで120℃のホットプレートで3分間プリベークを行った。
ネガ型ワニスを用いる場合は、プリベーク後の樹脂膜付きシリコンウエハに対し、露光装置(ユニオン光学(株)製マスクアライナーPEM-6M)を用いて、水銀灯のi線、h線、およびg線を含む波長の化学線を、g線で5,000J/m2の露光量となるよう、ウエハ全面に照射する工程を追加した。
この樹脂膜付きシリコンウエハを、クリーンオーブンCLH-21CD-Sを用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)において120℃で30分、次いでさらに昇温して210℃で1時間加熱処理を行った。加熱処理後の硬化膜付きウエハを、ストレス測定装置(KLA Tencor社製FLX2908)にて測定した。その結果、ストレス値が30MPa以上のものを不十分(1)、20MPa以上30MPa未満の場合は良好(2)、20MPa未満のものは極めて良好(3)とした。
(8)硬化パターンのはんだリフロー工程耐性
ワニスを、8インチのシリコンウエハ上に塗布現像装置ACT-8を用いてスピンコート法で塗布した。塗布は、得られた樹脂膜を120℃で3分間プリベークした後の膜厚が5~7μmになるように行った。次いで120℃のホットプレートで3分間プリベークを行った。
続く露光工程において、ポジ型ワニスを用いる場合は、露光機i線ステッパー((株)ニコン製NSR-2005i9C)にパターンの切られたマスクをセットし、プリベーク後の樹脂膜付きシリコンウエハに対して、100~900mJ/cm2の範囲で10mJ/cm2ステップで露光量を変更しながら露光した。
一方、ネガ型ワニスを用いる場合は、露光装置(ユニオン光学(株)製マスクアライナーPEM-6M)にパターンの切られたマスクをセットし、プリベーク後の樹脂膜付きシリコンウエハに対して、水銀灯のi線、h線、およびg線を含む波長の化学線を、g線で5,000J/m2の露光量となるよう露光し、さらに露光後、ACT-8のホットプレートで100℃で1分間ベークした。
露光後、ACT-8の現像装置を用いて、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下TMAHと呼ぶ)水溶液(東京応化工業(株)製NMD-3)を用いて現像工程を行い、樹脂パターンを形成した。現像工程は、パドル法を用い、現像液の吐出時間5秒の条件で、パドル(時間は適宜調整)現像を2回繰り返した後、純水でリンス後、振り切り乾燥した。
現像後の樹脂パターン付きシリコンウエハを、クリーンオーブンCLH-21CD-Sを用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)において120℃で30分、次いでさらに昇温して180℃で1時間キュアし、樹脂パターンを硬化させて硬化パターンを得た。その後、温度が50℃以下に下がったところでシリコンウエハを取り出し、硬化パターンの膜厚を測定した。
キュア後の硬化パターンの膜厚が、5μmになるように、樹脂膜の膜厚および現像パドル時間等を調整した。各水準に対しシリコンウエハを2枚ずつ加工し、その一方を250℃のホットプレートで5分ベークした後、ホットプレートから下ろして室温まで放冷する処理を、3回繰り返した。これらの硬化パターン付きシリコンウエハをダイヤモンドペンで割断し、走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立ハイテクノロジー製S-4800)を用いて、20μm幅のトレンチパターンの断面を観察した。250℃ベーク処理無しの硬化パターンで20.0~20.5μm開口している場合の露光量を確認し、同じ露光条件における250℃ベーク処理有りの硬化パターンの対応する部分の断面を観察し、両者の形状を比較した。250℃ベーク処理の有無によってパターン形状の変化が見られないものを極めて良好(4)、250℃ベーク処理によってテーパー角が小さくなるものの、テーパー角の変化量が20°未満であるものを良好(3)、250℃ベーク処理によってテーパー角が小さくなり、テーパー角の変化量が20°以上であるものを不良(2)、250℃ベーク処理によってパターン形状が著しく変化し、20μm幅のトレンチパターンの開口部が15μm以下に狭まるもの、および250℃ベーク処理によって硬化パターンにクラックが入るものを極めて不良(1)とした。
(9)硬化膜中の溶剤含有量の測定
前記(6)と同様の方法で、硬化膜の膜厚が10μmの硬化膜付きシリコンウエハを作製し、ダイヤモンドペンで縦1cm、横2cmの小片に割断し、試料片とした。昇温脱離質量分析(TPD-MS)装置を用いて、ヘリウム50mL/分気流下で、室温から10℃/分で300℃まで昇温した後、300℃で60分間保持するプログラムで、発生ガスを分析した。得られた測定スペクトルのm/zと溶剤の分子量からピークを帰属し、溶剤に対応する発生ガス量を求めた。別途、測定に用いたものとは異なる試料片を、45質量%のフッ化水素酸に5分間浸漬することで、ウエハから硬化膜を剥がし、その硬化膜の重量を測定した。縦1cm、横2cmの硬化膜の重量と発生ガス量から、硬化膜中の溶剤含有量を算出した。
(10)硬化膜の密着強度測定
次の方法にて銅との密着強度測定を行なった。
まず、シリコンウエハ上に銅をスパッタリングし、銅が200nmの厚みで形成されたスパッタ基板を用意した。この基板上にワニスをスピンナ(ミカサ(株)製)を用いてスピンコート法で塗布し、次いでホットプレートを用いて120℃で3分ベークし、厚さ5~7μmのプリベーク膜を作製した。
続く露光工程において、ポジ型ワニスを用いる場合は、露光機i線ステッパー((株)ニコン製NSR-2005i9C)にパターンの切られたマスクをセットし、プリベーク後の樹脂膜付きシリコンウエハに対して、100~900mJ/cm2の範囲で10mJ/cm2ステップで露光量を変更しながら露光した。
一方、ネガ型ワニスを用いる場合は、露光装置(ユニオン光学(株)製マスクアライナーPEM-6M)にパターンの切られたマスクをセットし、プリベーク後の樹脂膜付きシリコンウエハに対して、水銀灯のi線、h線、およびg線を含む波長の化学線を、g線で5,000J/m2の露光量となるよう露光し、さらに露光後、ホットプレートで100℃で1分間ベークした。
露光後、純水で希釈して0.8重量%に調整したテトラメチルアンモニウム水溶液(多摩化学工業(株)製)を用いてディップ法で現像を行い、その後純水でリンスし、膜厚5~6μmの樹脂パターンを得た。
この樹脂パターン付き基板をクリーンオーブンCLH-21CD-Sを用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)において120℃で30分、次いでさらに昇温して180℃で1時間キュアし、樹脂パターンを硬化させて硬化パターンを得た。
ダイシェアテスター(デイジ・ジャパン(株)製DAGE SERIES 4000)を用いて、縦30μm・横120μmの長方形凸パターンを、テスト高さ1μm、レンジ2.5Nで縦方向にシェアして引き剥がし、引き剥がし時の最大荷重を求める操作を、同サイズの凸パターン5個についてそれぞれ行ない、その平均値とパターン面積とから基板との密着強度を求めた。いずれの基板についても密着強度が100MPa以上を極めて良好(3)、60MPa以上100MPa未満を良好(2)、60MPa未満を不良(1)とした。
[合成例1] ジアミン化合物(HA)の合成
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下BAHFと呼ぶ)164.8g(0.45モル)をアセトン900mLおよびプロピレンオキシド156.8g(2.7モル)に溶解させ、-15℃に冷却した。ここに3-ニトロベンゾイルクロリド183.7g(0.99モル)をアセトン900mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
得られた固体270gを3Lのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセロソルブ2400mLに分散させ、5%パラジウム-炭素を5g加えた。ここに水素を風船を用いて導入して、還元反応を室温で行なった。2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるジアミン化合物(以下HAと呼ぶ)を得た。
[合成例2] アルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A-1)の合成
乾燥窒素気流下、BAHF102.55g(0.28モル)、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン11.23g(0.06モル)、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン4.97g(0.02モル)、および末端封止剤として、4-アミノフェノール8.73g(0.08モル)をNMP1200gに溶解させた。ここにビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物124.09g(0.4モル)をNMP40gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で4時間反応させた。その後、キシレンを40g添加し、水をキシレンとともに共沸蒸留しながら、150℃で5時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水10Lに投入して沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、アルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A-1)の粉末を得た。
[合成例3] アルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A-2)の合成
ジアミンをBAHF124.53g(0.34モル)と1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン4.97g(0.02モル)に変更した以外は合成例2と同様の方法で重合反応を行ない、アルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A-2)の粉末を得た。
[合成例4] アルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A-3)の合成
乾燥窒素気流下、BAHF54.94g(0.15モル)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル4.00g(0.02モル)、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン2.49g(0.01モル)、および末端封止剤として、4-アミノフェノール4.37g(0.04モル)をNMP600gに溶解させた。ここにビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物62.04g(0.2モル)をNMP20gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で4時間反応させた。その後、キシレンを20g添加し、水をキシレンとともに共沸蒸留しながら、150℃で5時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水5Lに投入して沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、アルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A-3)の粉末を得た。
[合成例5] アルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A-4)の合成
ジアミン添加量をBAHF32.96g(0.09モル)とジェファーミンD-400(HUNTSMAN(株)製ポリオキシプロピレンジアミン)を34.40g(0.08モル)と1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン2.49g(0.01モル)に変更した以外は合成例4と同様の方法で重合反応を行ない、アルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A-4)の粉末を得た。
[合成例6] アルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A-5)の合成
ジアミン添加量をBAHF47.61g(0.13モル)とジェファーミンD-400を17.20g(0.04モル)と1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン2.49g(0.01モル)に変更した以外は合成例4と同様の方法で重合反応を行ない、アルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A-5)の粉末を得た。
[合成例7] アルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A-6)の合成
ジアミンをBAHF32.96g(0.09モル)と1,3-ジアミノプロパン5.19g(0.07モル)と1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン2.49g(0.01モル)に変更し、末端封止剤量を4-アミノフェノール6.55g(0.06モル)に変更した以外は合成例4と同様の方法で重合反応を行ない、アルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A-6)の粉末を得た。
[合成例8] アルカリ可溶性ポリイミド-ベンゾオキサゾール前駆体樹脂(A-7)の合成
乾燥窒素気流下、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物62.04g(0.2モル)をNMP630gに溶解させた。ここにHA106.39g(0.176モル)と1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.99g(0.008モル)をNMP20gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で2時間反応させた。次に末端封止剤として4-アミノフェノール3.49g(0.032モル)をNMP10gとともに加え、50℃で2時間反応させた。その後、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール42.90g(0.36モル)をNMP80gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、50℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水5Lに投入して沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、アルカリ可溶性ポリイミド-ベンゾオキサゾール前駆体樹脂(A-7)の粉末を得た。
[合成例9] アルカリ可溶性ポリアミドイミド樹脂(A-8)の合成
乾燥窒素気流下、BAHF47.61g(0.13モル)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル8.01g(0.04モル)、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン2.49g(0.01モル)、および末端封止剤として、4-アミノフェノール4.37g(0.04モル)をNMP400gに溶解させた。ここに無水トリメリット酸クロリド42.11g(0.2モル)をNMP20gとともに加えて、30℃以上にならないように冷却しながら撹拌した。その後、30℃で4時間撹拌し、アルカリ可溶性ポリアミドイミド前駆体溶液(固形分濃度20質量%)を得た。この溶液を水5Lに投入して沈殿を得た後、この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄し、アルカリ可溶性ポリアミドイミド前駆体の粉末を得た。この粉末を、150℃で5時間乾燥後、200℃で1時間、220℃で2時間乾燥させることにより、アルカリ可溶性ポリアミドイミド樹脂(A-8)の粉末を得た。
[合成例10] アルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A-9)の合成
ジアミン添加量をBAHF51.28g(0.14モル)とジェファーミンD-400を12.90g(0.03モル)と1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン2.49g(0.01モル)に変更した以外は合成例4と同様の方法で重合反応を行ない、アルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A-9)の粉末を得た。
[合成例11] ポリヒドロキシスチレン樹脂(A-10)の合成
テトラヒドロフラン2400gに、開始剤としてsec-ブチルリチウム2.56g(0.04モル)を加えた混合溶液に、p-t-ブトキシスチレン84.60g(0.48モル)とスチレン12.50g(0.12モル)を加えて、3時間撹拌しながら重合させた後、メタノール12.82g(0.4モル)を添加して重合停止反応を行った。次にポリマーを精製するために反応混合物をメタノール3L中に注ぎ、沈降したポリマーを乾燥させた。得られたポリマーをアセトン1.6Lに溶解し、60℃で濃塩酸2gを加えて7時間撹拌し、p-t-ブトキシスチレンを脱保護してヒドロキシスチレンに変換した。反応終了後、溶液を水に注いでポリマーを沈澱させ、得られた沈殿を水で3回洗浄した後、50℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ヒドロキシスチレン残基100モル%に対してスチレン残基を25モル%有する、ポリヒドロキシスチレン樹脂(A-10)を得た。
[合成例12] ポリヒドロキシスチレン樹脂(A-11)の合成
スチレン類の添加量をp-t-ブトキシスチレン74.03g(0.42モル)とスチレン18.75g(0.18モル)に変更した以外は合成例11と同様の方法で重合反応を行ない、ヒドロキシスチレン残基100モル%に対してスチレン残基を43モル%有する、ポリヒドロキシスチレン樹脂(A-11)を得た。
[合成例13]キノンジアジド化合物(B-1)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP-PA(商品名、本州化学工業(株)製)42.45g(0.1モル)と5-ナフトキノンジアジドスルホニルクロリド(NAC-5、東洋合成工業(株)製)75.23g(0.28モル)を1,4-ジオキサン1000gに溶解させた。反応容器を氷冷しながら、1,4-ジオキサン150gとトリエチルアミン30.36g(0.3モル)を混合した液を系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過して除き、濾液を純水7Lに投入して沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、さらに1質量%塩酸2Lで洗浄した。その後、さらに純水5Lで2回洗浄した。この沈殿を50℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、下記式で表されるキノンジアジド化合物(B-1)を得た。置換基Qの3個中平均して2.8個が5-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化されていた。
<その他の実施例で用いられた化合物>
(b-2)光重合開始剤として、“アデカアークルズ”(登録商標)NCI-831(商品名、(株)ADEKA製、オキシムエステル系光重合開始剤)(B-2)を使用した。
(c)熱架橋剤HMOM-TPHAP(商品名、本州化学工業(株)製)(C-1)、NIKALAC MX-270(商品名、(株)三和ケミカル製)(C-2)、TECHMORE VG3101L(商品名、(株)プリンテック製)(C-3)を以下に示す。
(d)重合性不飽和結合基を有する化合物、”ブレンマー”(登録商標)PDBE-200A(商品名、日油(株)製)(D-1)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名DPHA、日本化薬(株)製)(D-2)を以下に示す。
(e)重合禁止剤、2-t-ブチル-1,4-ヒドロキノン(E-1)を以下に示す。
合成例2~12で得たアルカリ可溶性樹脂(A-1~11)について、(a-1)成分、(a-2)成分、(a-3)成分、およびその他の樹脂のいずれに該当するかの分類結果と、上記の方法で求めたガラス転移温度、アルカリ溶解速度、重量平均分子量、およびイミド環閉環率(RIM(%))を表1に示す。
[ワニスの作製]
容量32mLのポリプロピレンバイアルに表2~5に示す組成で各成分を入れ、撹拌脱泡装置((株)シンキー製ARE-310)を用いて、撹拌10分、脱泡1分の条件で混合した後、1μmのポリテトラフルオロエチレン製のフィルター(住友電気工業(株)製)で濾過して微小異物を除き、ワニス(W-1~69)を作製した。なお、表中、「GBL」はγ-ブチロラクトン、「EL」は乳酸エチル、「PGME」はプロピレングリコールモノメチルエーテル、「DAA」はジアセトンアルコールを表す。
[実施例1~25、比較例1~15]
上記のようにして作製したポジ型のワニスを用い、上記の方法で破断点伸度測定、ストレス測定およびはんだリフロー工程耐性を評価した結果を表6および表7に示す。表中に、(a-2)成分およびその他の樹脂の少なくとも一方に、一般式(2)または一般式(3)の構造単位が含まれるかについても併記した。なお、表7中、「nd」は膜強度が不十分のため、測定不可であったことを示す。
実施例1~25に示すものは、いずれも破断点伸度が5%以上あり、ストレス値が30MPa未満であり、かつ、はんだリフロー工程耐性評価におけるパターン形状に関しては、変化が見られないか、20°未満のテーパー角低下に留まり、良好または極めて良好な結果であった。
一方、(a-2)成分の含有量が、(a-1)成分100質量部に対し、40質量部超である比較例1~3は、破断点伸度およびストレス値は良好であるものの、はんだリフロー工程耐性評価において20°以上のテーパー角低下があった。(a-2)成分を含有しない比較例4~6は破断点伸度が不十分であり、(a-1)成分を含有しない比較例7~11は、はんだリフロー工程耐性が極めて不良であった。(a-1)成分および(a-2)成分のいずれも含まず、その代わりに(a-1)成分と(a-2)成分の中間となるガラス転移温度の、アルカリ可溶性ポリイミド(A-9)を用いた、比較例12~15は、ストレス値は良好であるものの、破断点伸度とはんだリフロー工程耐性が両立できない結果であった。
また、一般式(2)または一般式(3)の構造単位有無に関して、例えば、(a-2)成分に、一般式(2)または一般式(3)の構造単位が含まれないW-21、W-22、およびW-23を用いた例と比較して、一般式(2)および一般式(3)の構造単位が含まれるW-19およびW-20を用いた例はストレスがより低い結果であった。
また、(a-1)成分と(a-2)成分のガラス転移温度の差(Tg差)に関して、例えば、W-14(Tg差:184℃)を用いた例は、W-24(Tg差:205℃)を用いた例と比較して伸度がより高かった。W-2(Tg差:130℃)、W-20(Tg差:141℃)、W-21(Tg差:154℃)、およびW-23(Tg差:148℃)を用いた例は、W-22(Tg差:124℃)を用いた例と比較して、ストレスがより低い結果であった。
[実施例26~39、比較例16~30]
上記のようにして作製したネガ型のワニスを用い、上記の方法で破断点伸度測定、ストレス測定およびはんだリフロー工程耐性を評価した結果を表8および表9に示す。表中に、(a-2)成分およびその他の樹脂の少なくとも一方に、一般式(2)または一般式(3)の構造単位が含まれるかについても併記した。
実施例26~39に示すものは、いずれも破断点伸度が5%以上あり、ストレス値が30MPa未満であり、かつ、はんだリフロー工程耐性評価におけるパターン形状に関しては、変化が見られないか、20°未満のテーパー角低下に留まる、良好または極めて良好な結果であった。
一方、(a-2)成分の含有量が、(a-1)成分100質量部に対し、40質量部超である比較例16~18は、破断点伸度およびストレス値は良好であるものの、はんだリフロー工程耐性評価において20°以上のテーパー角低下があった。(a-2)成分を含有しない比較例19~22はストレス値が高く、(a-1)成分を含有しない比較例23~27は、はんだリフロー工程耐性が不良または極めて不良であった。(a-1)成分および(a-2)成分のいずれも含まず、その代わりに(a-1)成分と(a-2)成分の中間となるガラス転移温度の、アルカリ可溶性ポリイミド(A-9)を用いた、比較例28~30は、はんだリフロー工程耐性が不十分という結果であった。
また、一般式(2)または一般式(3)の構造単位有無に関して、例えば、(a-2)成分に、一般式(2)または一般式(3)の構造単位が含まれないW-51、W-52、およびW-53を用いた例と比較して、一般式(2)および一般式(3)の構造単位が含まれるW-49およびW-50を用いた例はストレスがより低い結果であった。
また、(a-1)成分と(a-2)成分のガラス転移温度の差(Tg差)に関して、例えば、W-49(Tg差:184℃)を用いた例は、W-54(Tg差:205℃)を用いた例と比較して、より高伸度かつ低ストレスであった。W-41(Tg差:130℃)、W-50(Tg差:141℃)、W-51(Tg差:154℃)、およびW-53(Tg差:148℃)を用いた例は、W-52(Tg差:124℃)を用いた例と比較して、ストレスがより低い結果であった。
[実施例40~47]
上記のようにして作製したワニスを用い、上記の方法で硬化膜中の溶剤量を測定した結果を表10に示す。なお、表10中、「GBL」はγ-ブチロラクトン、「EL」は乳酸エチル、「PGME」はプロピレングリコールモノメチルエーテル、「DAA」はジアセトンアルコールを表す。
実施例40、41、44および45に示す(f)成分の溶剤を用いた場合は、その他の溶剤を用いた場合に比べて、硬化膜中の溶剤の含有量が多く、好ましい含有量であった。前記表6において、これらに対応するW-4およびW-10を用いた例は、W-11およびW-12を用いた例よりも低ストレスの結果が得られている。また、前記表8において、これらに対応するW-42およびW-46を用いた例は、W-47およびW-48を用いた例よりも低ストレスの結果が得られている。
[実施例48~64、比較例31~47]
上記のようにして作製したワニスを用い、上記の方法で銅との密着強度を測定した結果を表11および表12に示す。表中に、(a-1)成分に、一般式(4)の構造単位が含まれるかについても併記した。
表11において、(a-1)成分として、一般式(4)の構造単位を含む樹脂を用いた実施例48~52および比較例31は、一般式(4)の構造単位を含む樹脂を含まない実施例53~57および比較例32~39と比較して、銅との密着強度がより良好な結果であった。同様に、表12において、(a-1)成分として、一般式(4)の構造単位を含む樹脂を用いた実施例58および59ならびに比較例40は、一般式(4)の構造単位を含む樹脂を含まない実施例60~64および比較例41~47と比較して、銅との密着強度がより良好な結果であった。