JP7053298B2 - ガス拡散層一体ガスケット及び燃料電池セル用部材 - Google Patents

ガス拡散層一体ガスケット及び燃料電池セル用部材 Download PDF

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本発明は、ガスケット本体と一対のうちの一方のガス拡散層とを一体化したガス拡散層一体ガスケット、及びこのガスケットを用いた燃料電池セル用部材に関する。
近年、反応ガスを電気化学反応させて発電する燃料電池が急速に普及している。燃料電池は発電効率が高く、環境への影響も少ないことから、好ましいエネルギー源として注目を集めている。
燃料電池のうち、固体高分子形のものは、複数枚の燃料電池セルを積層したスタック構造を備えている。個々の燃料電池セルは、膜電極接合体(MEA)を一対のセパレータで挟み込んだ構造のもので、膜電極接合体とセパレータとの間に、ガス拡散層(GDL)を配置している。膜電極接合体はアノード電極(陽極)とカソード電極(陰極)とで電解質膜を挟み込んだ構造物であり、セパレータは水素と酸素の流路を形成している。
このような燃料電池セルは、セパレータに形成した流路を利用し、アノード電極には水素を、カソード電極には酸素を供給する。これによって水の電気分解の逆の電気化学反応によって発電が行なわれる。
図7は、燃料電池セルとして提案されている構造の一例を示している。この燃料電池セル1は、シート状ガスケット取付部材2にガスケット3を固定したガスケット本体4を設け、ガスケット本体4と膜電極接合体5とを一対のセパレータ6(6a,6b)で挟み込んでいる。膜電極接合体5は、電解質膜7の両面に一対の電極8(8a,8b)を接合したもので、一対のガス拡散層9(9a,9b)を介して一対のセパレータ6に挟み込まれている。
ガスケット本体4と膜電極接合体5とは接合され、一体化されている。ガスケット本体4と膜電極接合体5との接合は、シート状ガスケット取付部材2に対する電解質膜7の接着による。つまり膜電極接合体5の端面より電解質膜7を延出させ、接着剤によってシート状ガスケット取付部材2に接着する。これによってシート状ガスケット取付部材2と電解質膜7との間には、接着層10が形成される。接着層10を形成する接着剤としては、熱硬化性接着剤が用いられる。
特開2015-125925号公報 特開2017-152281号公報
図7に示すような構造のものでは、ガスケット本体4と膜電極接合体5及びガス拡散層9とは別体であるため、両者の間には、どうしても隙間Gが発生してしまう(特許文献1の段落[0006]、特許文献2の段落[0004]参照)。このため図8に示すように、接着層10を形成する接着剤を硬化させる際の熱によって電解質膜7が線膨張し、隙間Gに入り込んでしまうことがある。隙間Gに入り込むことで電解質膜の変形や破損が発生してしまう。
同種の課題は従来から認識されており、例えば特許文献1の段落[0008]、特許文献2の段落[0004]にも、類似の課題についての記述がある。
本発明の課題は、膜電極接合体の電解質膜をガスケット本体のシート状ガスケット取付部材に接着して固定した構造のものにおいて、電解質膜の破損を防止することである。
ス拡散層一体ガスケットは、一対のガス拡散層に挟まれた膜電極接合体を配置する開口部を設けたシート状ガスケット取付部材と、前記開口部の周縁を取り囲むように前記シート状ガスケット取付部材の一面にのみ固定されたガスケットと、前記一対のガス拡散層のうちの一方のガス拡散層と、前記シート状ガスケット取付部材の端部と前記一方のガス拡散層の端部とを積層させ、前記シート状ガスケット取付部材の前記一面とは反対側の面前記一方のガス拡散層とを同一面内に平行に配列して接合する接合部と、を備え、前記接合部は、膜電極接合体を配置する側を上層としたとき、前記シート状ガスケット取付部材の端部を上層側にして前記ガス拡散層の端部に積層している。
料電池セル用部材は、上記ガス拡散層一体ガスケットと、電解質膜とこの電解質膜を両面から挟み込む一対の電極とを有し、一対のうちの一方の前記電極を前記一方のガス拡散層に積層させ、前記電解質膜を延出させて前記接合部に接着して固定した膜電極接合体と、もう一方の前記電極に積層したもう一方の前記ガス拡散層と、を備える。
スケット本体のシート状ガスケット取付部材と一方のガス拡散層との間に生ずる隙間が生じないため、隙間に入り込むことによる電解質膜の破損を確実に防止することができる。
第1の実施の形態として、燃料電池部材(セパレータを取り外して示す燃料電池セル)を示す平面図。 燃料電池セルにおける各部の積層構造を示す縦断正面図。 シート状ガスケット取付部材にガスケットを固定したガスケット本体の平面図。 図4中のA-A線断面図。 図2に示す燃料電池セルに用いられるガス拡散層一体ガスケットを示す縦断正面図。 第2の実施の形態として、ガス拡散層一体ガスケットを示す縦断正面図。 従来の一例として、燃料電池セルにおける各部の積層構造を示す縦断正面図。 図7に例示する燃料電池セルにおいて生ずる可能性がある電解質膜の破損という現象を説明するために示す、燃料電池セルの縦断正面図。
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態を図1ないし図5に基づいて説明する。本実施の形態は、ガス拡散層一体ガスケット101の一例であり、このガス拡散層一体ガスケット101を用いた燃料電池セル201の一例である。
図1及び図2に示すように、燃料電池セル201は、矩形形状をしたガスケット本体111の中央部分に設けられた開口部112(図2、図3、図5参照)に、一対のガス拡散層131(131a,131b)に挟まれた膜電極接合体151を配置している。こうして構成されたものは燃料電池セル用部材211であり、この燃料電池セル用部材211を一対のセパレータ171(171a,171b)で挟み込んで固定することによって、燃料電池セル201となる。
図3に示すように、ガスケット本体111は、矩形形状をしたシート状ガスケット取付部材113を基材として、このシート状ガスケット取付部材113にガスケット114を固定した構造のものである。
シート状ガスケット取付部材113は、前述した開口部112を中央部分に有し、四隅に四個の流通孔115を有している。これらの流通孔115は、燃料電池セル201が流体を流通させるために有するマニフォールド231をなす(図1参照)。
このようなシート状ガスケット取付部材113は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、発泡スチレン(PSP)などを材料として形成されている。
ガスケット114は、シート状ガスケット取付部材113の周縁近傍を取り囲み、さらに四個の流通孔115を取り囲むように配置されている。したがって開口部112及び四個の流通孔115は、ガスケット114によってシール可能になっている。このようなガスケット114は、図4に示すように、基部114aとこの基部114aから三角形状に隆起する隆起部114bとを有する断面形状に形成されている。
このようなガスケット114は、例えばシリコーンゴム(VMQ)、フッ素ゴム(FKM)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などを材料として形成されている。
燃料電池セル201は、ガス拡散層一体ガスケット101をガスケット本体として、このガス拡散層一体ガスケット101に各層をなす複数の部材を積層した積層構造をなしている。
図5に示すように、ガス拡散層一体ガスケット101は、ガスケット本体111をなすシート状ガスケット取付部材113の開口部112に、一方のガス拡散層131bを一体的に連結している(図2も参照)。シート状ガスケット取付部材113とガス拡散層131bとの連結は、接合部191による。接合部191は、シート状ガスケット取付部材113の端部と、一対のうちの一方のガス拡散層131bの端部とを積層させ、これらのシート状ガスケット取付部材113とガス拡散層131bとを平行に配列して接合している。
このとき接合部191は、膜電極接合体151を配置する側を上層としたとき(図2、図5中の上側)、シート状ガスケット取付部材113の端部を上層側にしてガス拡散層131bの端部に積層している。シート状ガスケット取付部材113とガス拡散層131bとの下層側は、同一面内に形成されている。
このような構成のガス拡散層一体ガスケット101を製造するには、シート状ガスケット取付部材113にガスケット114を固定した一体品を形成する。この一体品は、加硫接着や熱溶着によって形成することが可能である。そしてシート状ガスケット取付部材113における開口部112の内縁端部と、一方のガス拡散層131bの端部とを積層させ、例えば熱溶着によって接合する。こうしてガス拡散層一体ガスケット101が形成される。
図2に示すように、燃料電池セル201は、ガス拡散層一体ガスケット101をガスケット本体として、これに膜電極接合体151を積層し、一対のうちのもう一方のガス拡散層131aをさらに積層して燃料電池セル用部材211を形成している。
膜電極接合体151は、電解質膜152と、この電解質膜152を両面から挟み込む一対の電極153(153a,153b)とを有している。電解質膜152は、一対の電極153の端面から飛び出すようにして延出し、接合部191において、シート状ガスケット取付部材113に接着されて固定されている。したがってシート状ガスケット取付部材113における開口部112の内縁端部と電解質膜152の端部との間には、接着層154が形成されている。
このような構成において、本実施の形態によれば、ガスケット本体111のシート状ガスケット取付部材113と一方のガス拡散層131bとの間には隙間(図7中の隙間G参照)が生じない。このため隙間に入り込むことによる電解質膜152の破損(図8参照)を確実に防止し、その保護を図ることができる。
本実施の形態によれば、接合部191は、膜電極接合体151を配置する側を上層としたとき(図2、図5中の上側)、シート状ガスケット取付部材113の端部を上層側にしてガス拡散層131bの端部に積層している。これによってシート状ガスケット取付部材113とガス拡散層131bとの下層側を同一面内に形成することができ、一方のセパレータ171bとの間の密着性を良好にすることができる。
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態を図6に基づいて説明する。第1の実施の形態と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。
本実施の形態のガス拡散層一体ガスケット101、及びこれを用いた燃料電池セル用部材211は、シート状ガスケット取付部材113を二層構造にしている。つまりシート状ガスケット取付部材113は、下層フィルム113aに上層フィルム113bを積層させて接合した二層構造を有している。下層フィルム113aは、例えばポリプロピレン(PP)からなり、上層フィルム113bは、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)からなる。
このような構成において、シート状ガスケット取付部材113は二層構造を有しているために、下層フィルム113aと上層フィルム113bとの特性を適宜設定することができる。例えば下層フィルム113aは、一方のセパレータ171bとの密着性に優れた材料を用い、上層フィルム113bは、ガスケット114との接合親和性が高い材料を用いるなどのように、下層フィルム113aと上層フィルム113bとの特性を異ならせることが可能である。
[変形例]
実施に際しては、各種の変形や変更が可能である。
例えばシート状ガスケット取付部材113やガスケット114については、上記各実施の形態で例示した材料に限らず、これらを他の材料によって形成するようにしてもよい。ガス拡散層一体ガスケット101の製造方法についても、上記各実施の形態で示した製造方法に限定されず、各種の製造方法を採用することが可能である。また二層構造のシート状ガスケット取付部材113を第2の実施の形態として示したが、実施に際しては、三層以上の多層構造にしたシート状ガスケット取付部材113を用いるようにしてもよい。
その他、実施に際しては、あらゆる変更や変形が可能である。
101 ガス拡散層一体ガスケット
111 ガスケット本体
112 開口部
113 シート状ガスケット取付部材
114 ガスケット
115 流通孔
131(131a,131b) ガス拡散層
151 膜電極接合体
152 電解質膜
153(153a,153b) 電極
154 接着層
171(171a,171b) セパレータ
191 接合部
201 燃料電池セル
211 燃料電池セル用部材
231 マニフォールド

Claims (3)

  1. 一対のガス拡散層に挟まれた膜電極接合体を配置する開口部を設けたシート状ガスケット取付部材と、
    前記開口部の周縁を取り囲むように前記シート状ガスケット取付部材の一面にのみ固定されたガスケットと、
    前記一対のガス拡散層のうちの一方のガス拡散層と、
    前記シート状ガスケット取付部材の端部と前記一方のガス拡散層の端部とを積層させ、前記シート状ガスケット取付部材の前記一面とは反対側の面前記一方のガス拡散層とを同一面内に平行に配列して接合する接合部と、
    を備え
    前記接合部は、膜電極接合体を配置する側を上層としたとき、前記シート状ガスケット取付部材の端部を上層側にして前記ガス拡散層の端部に積層している、
    ことを特徴とするガス拡散層一体ガスケット。
  2. 前記シート状ガスケット取付部材は、多層構造を有している、
    ことを特徴とする請求項に記載のガス拡散層一体ガスケット。
  3. 請求項1又は2に記載のガス拡散層一体ガスケットと、
    電解質膜とこの電解質膜を両面から挟み込む一対の電極とを有し、一対のうちの一方の前記電極を前記一方のガス拡散層に積層させ、前記電解質膜を延出させて前記接合部に接着して固定した膜電極接合体と、
    もう一方の前記電極に積層したもう一方の前記ガス拡散層と、
    を備えることを特徴とする燃料電池セル用部材。
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