JP7052809B2 - 粘着剤組成物及びその利用 - Google Patents
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Description
前記粘着剤組成物から形成される粘着剤層全体のガラス転移温度である第1のTgは、-80℃以上10℃以下であり、
前記粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgが、前記第1のTgよりも30℃以上高く、
前記粘着剤層は、動的粘弾性測定により得られる85℃におけるせん断貯蔵弾性率が5.0×104Pa以上5.0×105Pa以下である、粘着剤組成物。
〔2〕前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上200℃以下であり、重量平均分子量が1,000以上15,000以下である〔1〕に記載の粘着剤組成物。
〔3〕前記アクリル系粘着性ポリマー(B)は、重量平均分子量が700,000以上である〔1〕又は〔2〕に記載の粘着剤組成物。
〔4〕前記アクリル系粘着性ポリマー(B)は、その全構成単量体に対してアルコキシル基含有不飽和単量体に由来する構成単位を30質量%以上有する〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔5〕前記アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対し、前記ビニル重合体(A)が0.5質量部以上60質量部以下含有された〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔6〕前記粘着剤組成物から形成される膜厚50μmの粘着剤層を100μm厚ポリエチレンテレフタレートフィルム基材に備えた粘着シートの85℃におけるガラスに対する剥離強度が、20N/25mm以上である〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔7〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の粘着剤組成物から得られる粘着剤層を備える粘着シート。
本明細書に開示するビニル重合体(A)は、30℃以上200℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する重合体とすることができる。Tgの下限は、40℃以上であってもよく、60℃以上であってもよく、80℃以上であってもよい。Tgの上限は、180℃以下であってもよく、150℃以下であってもよく、120℃以下であってもよく、100℃以下であってもよい。また、Tgの範囲は、これらの上限及び下限を適宜組み合わせることができるが、例えば、40℃以上180℃以下であり、60℃以上150℃以下であってもよい。本明細書において、示差走査熱量測定(DSC)により昇温速度10℃/minで測定した値をTgとして採用する。Tgが30℃以上であれば、粘着剤層の表層部分のTgが十分に高くなり、各種被着体に対して十分な接着強度を示し、耐久性にも優れたものとなる。また、原料単量体の制約等から、一般にTgの上限は200℃程度である。
本明細書に開示するアクリル系粘着性ポリマー(B)は、(メタ)アクリル酸エステル類を主要構成単位として含有する重合体である。アクリル系粘着性ポリマー(B)は、ガラス転移温度(Tg)が、例えば、-80℃以上10℃以下の範囲にある粘着性を有する重合体である。Tgの下限は、-70℃以上であってもよく、-60℃以上であってもよく、-50℃以上であってもよく、-40℃以上であってもよい。Tgの上限は、0℃以下であってもよく、-10℃以下であってもよく、-20℃以下であってもよく、-30℃以下であってもよい。また、Tgの範囲は、これらの上限及び下限を適宜組み合わせることができるが、例えば、-70℃以上0℃以下の範囲であり、また例えば、-60℃以上-10℃以下であり、また例えば、-50℃以上-20℃以下である。なお、Tgが-80℃以上であれば、十分な凝集力と良好な接着性を有する粘着剤が得られる。また、Tgが10℃以下であれば、良好な段差追随性を備えることができる。
本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を含有することができる。ビニル重合体(A)は、アクリル系粘着性ポリマー(B)に対して適度な相溶性を有する。このため、これらを含む粘着剤組成物から得られる粘着剤層は良好な透明性を示すと共に、粘着剤層中においてビニル重合体(A)が一部偏析し、その表層におけるビニル重合体(A)の濃度が他の部分よりも高くなる場合がある。
本粘着剤組成物は、架橋剤を含有することができる。架橋剤は、必ずしも必要ではないが、意図する接着特性のほか、本粘着剤組成物の形態、例えば、エマルジョン形態であるか溶液形態であるか等にも応じて、その添加が検討される。架橋剤を含有することで、本粘着剤組成物から得られる粘着剤層の凝集力や接着力を調整し、さらに、高温高湿下での接着性や曲面への接着性を付与したりすることができる。架橋剤としては、エポキシ基を2つ以上有するエポキシ化合物、イソシアネート基を2つ以上有するイソシアネート化合物、アジリジニル基を2つ以上有するアジリジン化合物、オキサゾリン基を有するオキサゾリン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物等が挙げられる。これらのうち、アジリジン化合物、エポキシ化合物及びイソシアネート化合物を用いることが好ましい。
本粘着剤組成物より形成される粘着剤層(本粘着剤層)全体のガラス転移温度(Tg)、すなわち、第1のTgは、-80℃以上10℃以下の範囲とすることができる。Tgの下限は、-70℃以上であってもよく、-60℃以上であってもよく、-50℃以上であってもよく、-40℃以上であってもよい。また、Tgの上限は、0℃以下であってもよく、-10℃以下であってもよく、-20℃以下であってもよく、-30℃以下であってもよい。また、Tgの範囲は、これらの上限及び下限を適宜組み合わせることができるが、例えば、-70℃以上0℃以下の範囲であり、また例えば、-60℃以上-10℃以下であり、また例えば、-50℃以上-20℃以下である。第1のTgが-80℃未満の場合は、得られる粘着剤層の凝集力が不十分となり、曲面接着性等が悪化する傾向があり、10℃を超える場合は、段差追随性及び低温条件下での粘着力等が十分でない場合がある。なお、本粘着剤組成物のTgは、DSCにて、昇温速度10℃/min、窒素雰囲気を測定雰囲気として得ることができる。
本粘着剤層の第2のTg、すなわち、本粘着剤組成物をセパレータに塗工後、乾燥又は活性エネルギー線の照射により粘着剤層を得た際に、当該粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分の組成から計算されるTgは、X線光電子分光測定(XPS)から得られるビニル重合体(A)とアクリル系粘着性ポリマー(B)との組成比率から、計算によって求められ、粘着剤層の表面から該5nm程度の深さまでの表層を形成する組成物のTgとして捉えることができる。測定方法の詳細は、後述する実施例に記載の操作に従うことができる。
本粘着剤組成物は、第2のTg(粘着剤層の表層部分の組成から計算されるTg)が、第1のTg(粘着剤層全体のTg)よりも30℃以上高いものとなることが好ましい。こうしたTg組成を有する粘着剤層によれば、従来の一般的な粘着剤による粘着剤層が高温になればなるほど接着性が低下するのに対し、高温での高い接着性(被着体に対する剥離強度)や高い曲面接着性を発揮することができる。
第2のTgの測定に際しては、本粘着剤層の表層のX線光電子分光分析よる組成分析を行うが、その際に、表層におけるビニル重合体(A)の質量分率を求めることができる。この質量分率を、本粘着剤層の表層部分におけるビニル重合体(A)の偏析状態の指標とすることができる。
本粘着剤層は、特に高温環境下における耐久性の観点から、85℃におけるせん断貯蔵弾性率(G’)が5.0×104Pa以上であることが好ましい。せん断貯蔵弾性率は、6.0×104Pa以上であってもよく、7.0×104Pa以上であってもよく、8.0×104Pa以上であってもよく、1.0×105Pa以上であってもよい。せん断貯蔵弾性率の上限は特に制限されるものではないが、初期接着性の観点から、例えば5.0×105Pa以下であり、4.5×105Pa以下であってもよく、4.0×105Pa以下であってもよく、3.5×105Pa以下であってもよく、3.0×105Pa以下であってもよい。
なお、当業者であれば、アクリル系粘着性ポリマー(B)の組成及び分子量等を適宜設定することにより上記せん断貯蔵弾性率を調整することができる。各種接着性能に優れる粘着剤層が得られる点で、アクリル系粘着性ポリマー(B)の重量平均分子量(Mw)を適宜設定することにより、せん断貯蔵弾性率を調整することが好ましい。
本粘着剤組成物は、当該粘着剤組成物から形成される膜厚50μmの粘着剤層を100μm厚ポリエチレンテレフタレートフィルム基材に備えた粘着シートについて、85℃、剥離速度300mm/minにおけるガラスに対する接着強度が、20N/25mm以上であることが好ましい。85℃という高温条件下での当該接着強度を20N/25mm以上とすることにより、高温条件下における粘着力が十分高いことから、粘着シートの浮きや剥がれを防止するとともに、プラスチック基材から発生するアウトガスに由来する微小な発泡現象を抑制または大きく低減することができる。より好ましくは22.5N/25mm以上であり、さらに好ましくは25N/25mm以上であり、一層好ましくは27.5N/25mm以上であり、より一層好ましくは30N/25mm以上である。
本粘着剤組成物から得られる粘着剤層の透明性を評価する指標として、ヘイズ値を用いることができる。本粘着剤組成物から得られる粘着剤層は、上述したように、ビニル重合体(A)がアクリル系粘着性ポリマー(B)に対して適度な相溶性を有するため、これらを含む粘着剤層は、良好な透明性を示す。
本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を規定量含むものであればその混合方法に特段の制約はない。例えば、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を混合して本粘着剤組成物を得てもよいし、ビニル重合体(A)の存在下にアクリル系粘着性ポリマー(B)を重合することにより本粘着剤組成物を得てもよい。
本発明の粘着剤組成物は、粘着フィルム、粘着シート、粘着テープ、粘着ラベル、感圧性テープ、表面保護フィルム、表面保護テープ、マスキングテープ、電気絶縁用テープ、ラミネート物等の各種一般粘着加工製品の他に、各種光学フィルム等の積層体を構成する際の貼り合せ用途にも好適に用いることができる。
測定サンプル約1gを秤量(a)し、次いで、通風乾燥機155℃、30分間乾燥後の残分を測定(b)し、以下の式より算出した。測定には秤量ビンを使用した。その他の操作については、JIS K 0067-1992(化学製品の減量及び残分試験方法)に準拠した。
固形分(%)=(b/a)×100
分子量はGPCにて下記の条件で測定した。
GPC:東ソー(HLC-8120)
カラム:東ソー(TSKgel-Super MP-M×4本)
試料濃度:0.1%
流量:0.6ml/分
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折計(RI)
標準物質:ポリスチレン
ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマー(B)及び粘着剤組成物のTgはDSCにて以下の条件で測定した。
DSC:TA Instrument製(Q-100)
昇温温度:10℃/分
測定雰囲気:窒素
ポリマー組成はモノマー仕込量とGC測定によるモノマー消費量から算出した。
GC:Agilent Technolosies製(7820A GC System)
検出器:FID
カラム:100%ジメチルシロキサン(CP-Sil 5CB) 長さ30m、内径0.32mm
算出方法:内部標準法
合成例1(重合体A-1の合成)
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(200質量部)とV-601(0.9質量部)とからなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」という)(165質量部)、メタクリル酸イソボルニル(以下、「IBXMA」という)(44質量部)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製、商品名「V-601」)(17質量部)、酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をヘキサン(6000質量部)に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A-1を得た。重合体A-1の組成及び分析結果を表1に示す。得られた重合体A-1のポリマー組成は、仕込量とGC測定によるモノマー消費量から計算した結果、MMA 80質量%及びIBXMA 20質量%からなり、Mw7980、Mn4290、Mw/Mn1.86であった。Tgは90℃であった。重合体A-1の組成及び分析結果を表1に示す。
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(200質量部)を仕込み、窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(100質量部)、IBXMA(108質量部)、V-601(20.4質量部)、酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をメタノール(4800質量部)、蒸留水(1200質量部)からなる混合溶液に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A-2を得た。重合体A-2の組成及び分析結果を表1に示す。
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(200質量部)、V-601(1.2質量部)からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(208質量部)、V-601(22.7質量部)、酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をヘキサン(6000質量部)に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A-3を得た。重合体A-3の組成及び分析結果を表1に示す。
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(190質量部)、V-601(1.5質量部)からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(15.7質量部)、IBXMA(240質量部)、V-601(24.6質量部)、酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をメタノール(5400質量部)、蒸留水(600質量部)からなる混合溶液に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A-4を得た。重合体A-4の組成及び分析結果を表1に示す。
内容積3リットルの4つ口フラスコに、アクリル酸メトキシエチル(以下、「MEA」という)(468質量部)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(以下、「HEA」という)(30質量部)、アクリル酸ブチル(以下、「BA」という)(102質量部)、酢酸エチル(890質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、商品名「V-65」)(0.11質量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体B-1の酢酸エチル溶液を得た。得られた重合体は、MEA78質量%、HEA5質量%、BA17質量部%とからなり、Mn92000、Mw800000、Mw/Mn8.70であった。Tgは-35℃であった。重合体B-1の組成及び分析結果を表2に示す。
内容積3リットルの4つ口フラスコに、MEA(336質量部)、HEA(30質量部)、BA(144質量部)、アクリル酸メチル(以下、「MAという」)(90質量部)酢酸エチル(890質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.12量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体B-2の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-2の組成及び分析結果を表2に示す。
内容積3リットルの4つ口フラスコに、MEA(258質量部)、HEA(30質量部)、BA(72質量部)、MA(240質量部)、酢酸エチル(890質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.14量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体B-3の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-3の組成及び分析結果を表2に示す。
内容積3リットルの4つ口フラスコに、MEA(413質量部)、HEA(26.5質量部)、BA(90質量部)、酢酸エチル(974質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.26量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体B-4の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-4の組成及び分析結果を表2に示す。
内容積3リットルの4つ口フラスコに、HEA(20質量部)、BA(140質量部)、MA(240質量部)、酢酸エチル(599質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.10量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体B-5の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-5の組成及び分析結果を表2に示す。
内容積3リットルの4つ口フラスコに、MEA(105質量部)、HEA(25質量部)、BA(370質量部)、酢酸エチル(918質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.24量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体B-6の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-6の組成及び分析結果を表2に示す。
実施例1
上記合成例1で得られた重合体A-1(4質量部)を酢酸エチルに溶解させた固形分濃度30質量%の重合体(A-1)溶液を、上記合成例4で得られた重合体B-1溶液と混合し、重合体A-1(4質量部)と重合体B-1(100質量部)を含む固形分30質量%の溶液を調製した。ここに、架橋剤としてタケネートD-110N(三井化学社製イソシアネート系架橋剤、固形分濃度75質量%)(0.08質量部)を混合し、粘着剤組成物を得た。
粘着フィルム試料から粘着剤を0.2g採取し、粘着剤の初期重量を秤量した。その粘着剤を50gの酢酸エチルに浸漬し、室温で16時間静置した。その後、200メッシュ金網でろ過し、メッシュに残った残分を80℃で3時間乾燥し、秤量した。初期の重量と残分の重量から、下式によりアクリル系粘着性ポリマー(B)に対するゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(残分の重量)/[(初期の重量)×(アクリル系粘着性ポリマー(B)の固形分)/(粘着剤組成物全体の固形分)]×100
粘着フィルム試料から剥離フィルムを剥がし、ガラスプレート(1mm厚)に転写し、もう一方の剥離フィルムを剥がした。23℃、50%RH条件下で1日静置した後、日本電色社製ヘイズメーター「ヘイズメーターNDH2000」(型式名)を使用してヘイズ値を測定することにより透明性を評価した。
粘着フィルム試料のX線光電子分光装置(XPS)測定によるO1sとC1sのピーク面積比から、粘着剤層の表層部分におけるビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対する、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の各質量分率(wA及びwB)を算出し、FOXの式に基づき表層部分のTgを算出した。
なお、XPS測定は以下の条件で測定した。
装置: アルバック・ファイ社製 PHI5000 VersaProbe
X線: Al-Kα (1486.6eV)
試料へのX線入射角: 0° (試料測定面の法線に対する角度)
光電子検出角: 45° (試料測定面の法線に対する角度)
XPS測定によるO1sとC1sのピーク面積比から算出される酸素原子数と炭素原子数の比は、下式(1)の通り、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)からなる粘着剤組成物から形成された粘着剤層表層部の単位重量当りに存在する酸素原子数と炭素原子数の比で表される。
(O/C)A+B:粘着剤組成物を乾燥して得られた粘着剤層のXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比から算出される酸素原子数と炭素原子数の比
WA:ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対するビニル重合体(A)の質量分率
Mw-A:ビニル重合体(A)の全構成単量体単位の加重平均分子量
Mw-B:アクリル系粘着剤組成物(B)の全構成単量体単位の加重平均分子量
NO-A:ビニル重合体(A)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる酸素原子数
NO-B:アクリル系粘着性ポリマー(B)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる酸素原子数
NC-A:ビニル重合体(A)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる炭素原子数
NC-B:アクリル系粘着性ポリマー(B)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる炭素原子数
(O/C)A:ビニル重合体(A)を乾燥して得られたフィルムのXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比から算出される酸素原子数と炭素原子数の比
(O/C)B:アクリル系粘着性ポリマー(B)を乾燥して得られたフィルムのXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比から算出される酸素原子数と炭素原子数の比
WB:ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対するアクリル系粘着性ポリマー(B)の質量分率
(O/C)A+B:0.327(実測値)
(O/C)A:0.309(実測値)
(O/C)B:0.435(実測値)
NC-A:MMA1分子中の炭素原子数(5)、IBXMA1分子中の炭素原子数(14)及び組成比より、5×89.9(mol%)+14×10.1(mol%)=5.91
NC-B:MEA1分子中の炭素原子数(6)、BA1分子中の炭素原子数(7)、HEA1分子中の炭素原子数(5)及び組成比より、6×84.4(mol%)+7×10.1(mol%)+5×5.6(mol%)=6.05
Mw-A:MMAの分子量(100)、IBXMAの分子量(222)及び組成比より、100×89.9(mol%)+222×10.1(mol%)=112.3
Mw-B:MEAの分子量(130)、BAの分子量(128)、HEAの分子量(116)及び組成比より、130×84.4(mol%)+128×10.1(mol%)+116×5.6(mol%)=129.0 これらの値を式(4)に代入することによりWA=0.840が得られ、(5)式よりWB=0.160が得られた。
1/〔表層部分のTg〕(K)=WA/TgA+WB/TgB (6)
ここで、
TgA:ビニル重合体(A)のTg(90℃)
TgB:アクリル系粘着性ポリマー(B)のTg(-35℃)
50μm厚の粘着フィルム試料を0.8mm厚となるまで積層し、評価用粘着シートを得た。これを直径8mmの円状に打ち抜き、ずり粘弾性装置(アントンパール社製、Physica MCR-301)を用いて、-50℃から150℃まで2℃/minで昇温しながら、周波数1Hz、ひずみ0.1%で動的粘弾性を測定し、85℃のせん断貯蔵弾性率を読み取った。なお、測定には8mmφのパラレルプレートを使用した。
粘着フィルム試料を易接着処理したPETフィルム(100μm)に転写して評価用の粘着シートを得た。被着体をガラス板(旭硝子社製、ファブリテックFL11A、1mm
厚)とし、上記評価用の粘着シートを貼り合せ、卓上加圧脱泡装置TBR-200(千代田電気工業社製)を用いて0.5MPa、50℃の条件下で20分間圧着した後、恒温槽付き引張り試験機ストログラフR型(東洋精機社製)を用いて、温度が85℃、剥離速度が300mm/min.の条件で、JIS Z-0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて粘着シートの180度剥離強度を測定し、接着強度とした。
粘着フィルム試料の片面に易接着処理したPETフィルム(100μm)を貼り合わせ、他の面にポリカーボネート板を貼り合せた積層体を作製し、卓上加圧脱泡装置TBR-200(千代田電気工業社製)を用いて0.5MPa、50℃の条件下で20分間圧着処理を行った。その後、上記積層体を85℃、85%RHの恒温恒湿槽内に24時間置いて負荷を与えた。負荷後の積層体の外観(発泡の有無および白化の程度)を光学顕微鏡M205C(ライカマイクロシステムズ社製)および目視で確認し、以下の基準に従って評価した。
(発泡の有無:耐発泡性)
○:発泡なし
△:100μm以下の微細な気泡が発生
×:100μmより大きな気泡が発生
(白化の程度:耐白化性)
○:粘着剤層の白化は見られず、透明な状態を維持
△:粘着剤層の白化が見られるが、積層体の裏面を視認できる
×:粘着剤層が白化し、積層体の裏面が見えない
実施例1において、ビニル重合体及びアクリル系粘着性ポリマーの種類、比率を表3に示すように変えて粘着剤組成物を得ると共に、実施例1と同様の測定を行った。結果を表3に示す。
Claims (5)
- ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を含む粘着剤組成物であって、
前記粘着剤組成物から形成される粘着剤層全体のガラス転移温度である第1のTgは、-80℃以上10℃以下であり、
前記粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgが、前記第1のTgよりも30℃以上高く、
前記アクリル系粘着性ポリマー(B)は、重量平均分子量が700,000以上であり、その全構成単量体に対してアルコキシル基含有不飽和単量体に由来する構成単位を30質量%以上有し、
前記粘着剤層は、動的粘弾性測定により得られる85℃におけるせん断貯蔵弾性率が5.0×104Pa以上5.0×105Pa以下である、粘着剤組成物。 - 前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上200℃以下であり、重量平均分子量が、1,000以上15,000以下である請求項1に記載の粘着剤組成物。
- 前記アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対し、前記ビニル重合体(A)が0.5質量部以上60質量部以下含有された請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
- 前記粘着剤組成物から形成される膜厚50μmの粘着剤層を100μm厚ポリエチレンテレフタレートフィルム基材に備えた粘着シートの85℃におけるガラスに対する剥離強度が、20N/25mm以上である請求項1~3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
- 請求項1~4のいずれかに記載の粘着剤組成物から得られる粘着剤層を備える粘着シート。
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