JP7358932B2 - 発熱体用粘着剤組成物及びその用途 - Google Patents

発熱体用粘着剤組成物及びその用途 Download PDF

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Description

本発明は、発熱体用粘着剤組成物及びその用途に関する。詳しくは、シート状又はフィルム状の面状発熱体と被着体との接合又は当該面状発熱体の製造に用いられる粘着剤組成物及びその用途に関する。
凍結や結露の防止及び抑制のために、あるいは融雪や除霜、防湿、保温、加温等の各種用途においてシート状又はフィルム状の面状発熱体が使用されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。特許文献1には、フロントグリルの後方にミリ波レーダ装置が取り付けられている車両において、フロントグリルに設けたエンブレムに面状発熱体を配置し、面状発熱体からの熱により前面に付着した雪を溶かすことによりセンサ性能を確保するようにしている。この特許文献1に記載の面状発熱体は、樹脂からなる前基材及び後基材と、前基材及び後基材の間に密封された状態で配置されたヒータ部とを備え、前基材及び後基材が溶着により接合されている。
特許文献2には、レーダーシステムや光検知システム(カメラ、ライダー、赤外線等)、超音波システム等の検知ユニットの前面に面状発熱体を取り付けることにより、検知ユニットの受信を妨害し得る、車両に付着したみぞれや氷、雪を溶かすようにすることが開示されている。
特開2018-66705号公報 特表2018-505383号公報
面状発熱体を車両部品等の被着体に取り付ける場合、面状発熱体と被着体とを粘着剤で接合する方法によれば、面状発熱体を被着体に簡便に取り付け可能であり、また面状発熱体を被着体に簡単に後付けすることが可能である。また、特許文献1に記載の面状発熱体において、前基材と後基材との接合を粘着剤によって行うことにより、面状発熱体をより簡易に製造することが可能と考えられる。
ここで、面状発熱体と被着体とを粘着剤によって接合したり、面状発熱体を製造する際に構成部材どうしを粘着剤によって貼り合わせたりした場合、粘着剤層は、面状発熱体が発生する熱や周囲の環境により高温又は高温高湿の環境下に曝されやすい。このため、面状発熱体と被着体との接合や、面状発熱体を構成する部材どうしの接合に使用される粘着剤には、高温条件下又は高温高湿条件下においても接合箇所に浮きや剥がれが生じにくいことが求められる。特に、面状発熱体が車両部品として使用される場合には、100℃を超える耐熱性が粘着剤に求められる。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、高温下又は高温高湿下において面状発熱体と被着体又は面状発熱体の構成部材どうしの接着強度が高く、耐久性に優れた発熱体用粘着剤組成物を提供することを主たる目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の粘着剤組成物を用いて面状発熱体を製造又は被着体への接合を行う技術によれば上記課題を解決できることを見出した。本発明は、こうした知見に基づいて完成したものである。本発明によれば以下の手段が提供される。
〔1〕面状発熱体と被着体との接合又は面状発熱体の製造に使用される発熱体用粘着剤組成物であって、ビニル重合体(A)と、アクリル系粘着性ポリマー(B)とを含有し、前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度TgAが30℃以上200℃以下であり、かつ数平均分子量が500以上10,000以下であり、前記アクリル系粘着性ポリマー(B)の重量平均分子量が550,000以上であり、前記ビニル重合体(A)の含有量が、前記アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対して、0.5~60質量部であり、前記発熱体用粘着剤組成物のガラス転移温度Tg1が-80℃以上10℃以下であり、前記発熱体用粘着剤組成物を用いてセパレータ上に形成された粘着剤層のX線光電子分光分析により得られる表層部分の組成に基づき計算される前記表層部分のガラス転移温度Tg2が、前記発熱体用粘着剤組成物のガラス転移温度Tg1よりも30℃以上高い、発熱体用粘着剤組成物。
〔2〕前記発熱体用粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層の85℃におけるせん断貯蔵弾性率が、5.0×10Pa以上5.0×10Pa以下である、前記〔1〕の発熱体用粘着剤組成物。
〔3〕前記アクリル系粘着性ポリマー(B)は、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物に由来する構造単位を、前記アクリル系粘着性ポリマー(B)が有する全構成単量体単位に対して30質量%以上含む、前記〔1〕又は〔2〕の発熱体用粘着剤組成物。
〔4〕前記発熱体用粘着剤組成物を用いて100μm厚ポリエチレンテレフタレート基材上に形成された膜厚50μmの粘着剤層を備える粘着シートにおける、ポリカーボネート基材に対する85℃、剥離速度300mm/minの条件での剥離強度が15N/25mm以上である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1の発熱体用粘着剤組成物。
〔5〕面状発熱体と被着体との接合又は面状発熱体の製造に使用される発熱体用粘着性製品であって、支持体と、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1の発熱体用粘着剤組成物を用いて前記支持体上に形成された粘着剤層と、を備える、発熱体用粘着性製品。
〔6〕前記〔1〕~〔4〕のいずれか1の発熱体用粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を備える面状発熱体。
〔7〕前記〔1〕~〔4〕のいずれか1の発熱体用粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を介して、面状発熱体と被着体とが接合された接合部を有する発熱体貼付品。
本発明の発熱体用粘着剤組成物によれば、高温条件下又は高温高湿条件下において、面状発熱体と被着体又は面状発熱体の構成部材どうしの剥離強度が高く、接着性に優れた粘着剤層を得ることができる。また、高温下又は高温高湿下に曝された場合にも発泡及び白化が生じにくく、透明性が高い粘着剤層を形成することができる。
面状発熱体を被着体に貼り付けた状態の概略構成の一例を示す図。 図1のA-A線断面図。 他の実施形態における面状発熱体の断面図。
以下、本開示について詳しく説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
《発熱体用粘着剤組成物》
本発明の発熱体用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」又は「本粘着剤組成物」ともいう)は、シート状又はフィルム状である薄型の面状発熱体と被着体とを接合するための粘着剤として、又は面状発熱体の製造において面状発熱体の構成部材どうしを接合するための粘着剤として使用される粘着剤組成物である。なお、面状発熱体は、「フィルムヒータ」や「ヒータシート」、「面状ヒータ」等とも称される。本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)とアクリル系粘着性ポリマー(B)とを含有する。以下に、本粘着剤組成物に配合されるビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマー(B)、及び必要に応じて配合される成分について詳しく説明する。
なお、本明細書では、ガラス転移温度(Tg)につき、ビニル重合体(A)のガラス転移温度を「ガラス転移温度TgA」と表記し、アクリル系粘着性ポリマー(B)のガラス転移温度を「ガラス転移温度TgB」と表記する。また、粘着剤組成物のガラス転移温度を「第1のガラス転移温度Tg1」という。第1のガラス転移温度Tg1は、ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマー(B)、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分を混合した粘着剤組成物のガラス転移温度である。本明細書において、ガラス転移温度TgA、ガラス転移温度TgB、及び第1のガラス転移温度Tg1は、示差走査熱量測定(DSC)により昇温速度10℃/minで測定した値を採用する。
また本明細書では、粘着剤組成物を用いてセパレータ上に形成された粘着剤層の表層部分のガラス転移温度を「第2のガラス転移温度Tg2」という。第2のガラス転移温度Tg2は、粘着剤層の表層部分におけるビニル重合体(A)とアクリル系粘着性ポリマー(B)との組成比率から計算により求められる値である。粘着剤層の表層部分におけるビニル重合体(A)とアクリル系粘着性ポリマー(B)との組成比率は、X線光電子分光測定(XPS)により得られた値である。
<ビニル重合体(A)>
ビニル重合体(A)は、30℃以上200℃以下のガラス転移温度(TgA)を有する重合体である。ガラス転移温度TgAは、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60℃以上であり、より更に好ましくは70℃以上であり、特に好ましくは80℃以上である。また、ガラス転移温度TgAは、好ましくは180℃以下であり、より好ましくは150℃以下であり、更に好ましくは120℃以下であり、特に好ましくは110℃以下であり、特に好ましくは100℃以下である。ガラス転移温度TgAが30℃未満であると、本粘着剤組成物により粘着剤層を形成した場合に、粘着剤層の表層部分のガラス転移温度(第2のガラス転移温度Tg2)が十分に高くなりにくく、接着強度が十分でなく耐久性に劣る場合がある。原料単量体の制約等から、ガラス転移温度TgAは一般に200℃以下である。ガラス転移温度TgAの範囲は、好ましくは40℃以上180℃以下であり、より好ましくは50℃以上150℃以下であり、更に好ましくは70℃以上150℃以下である。
ビニル重合体(A)を構成する単量体としては、ラジカル重合性を有する種々のビニル系不飽和化合物を使用することができる。当該ビニル系不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸の炭化水素系エステル化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸、不飽和酸無水物、ヒドロキシ基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、アルコキシ基含有不飽和化合物、シアノ基含有不飽和化合物、ニトリル基含有不飽和化合物、マレイミド系化合物等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸の炭化水素系エステル化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキル化合物;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸の芳香族エステル化合物が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、β-メチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、桂皮酸、不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のモノアルキルエステル)等が挙げられる。
不飽和酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。ヒドロキシ基含有不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルや、p-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、o-ヒドロキシスチレン、p-イソプロペニルフェノール、m-イソプロペニルフェノール、o-イソプロペニルフェノール等が挙げられる。
アミノ基含有不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2-(ジ-n-プロピルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2-ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ジ-n-プロピルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3-ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3-(ジ-n-プロピルアミノ)プロピル等が挙げられる。
アミド基含有不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。アルコキシ基含有不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(n-プロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(n-ブトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-(n-プロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(n-ブトキシ)プロピル等が挙げられる。
シアノ基含有不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸1-シアノエチル、(メタ)アクリル酸2-シアノエチル、(メタ)アクリル酸1-シアノプロピル、(メタ)アクリル酸2-シアノプロピル、(メタ)アクリル酸3-シアノプロピル、(メタ)アクリル酸4-シアノブチル、(メタ)アクリル酸6-シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチル-6-シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸8-シアノオクチル等が挙げられる。ニトリル基含有不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、エタクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリル、α-イソプロピルアクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-フルオロアクリロニトリル等が挙げられる。
マレイミド系化合物としては、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ドデシルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-メチルフェニル)マレイミド、N-(2、6-ジメチルフェニル)マレイミド、N-(2、6-ジエチルフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ナフチルマレイミド等が挙げられる。また上記化合物以外に、不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル、ビニルエステル化合物、ビニルエーテル化合物等を用いることもできる。
これらの中でも、アクリル系粘着性ポリマー(B)に対する適切な相溶性を有する点で、ビニル重合体(A)は、(メタ)アクリル酸の炭化水素系エステル化合物に由来する構造単位を有する重合体であることが好ましい。ビニル重合体(A)において、(メタ)アクリル酸の炭化水素系エステル化合物に由来する構造単位の含有量は、ビニル重合体(A)が有する全構成単量体単位に対して、10質量%以上100質量%以下の範囲が好ましい。(メタ)アクリル酸の炭化水素系エステル化合物に由来する構造単位の含有量は、ビニル重合体(A)の全構成単量体単位に対して、より好ましくは30質量%以上であり、更に好ましくは50質量%以上であり、特に好ましくは70質量%以上である。
ビニル重合体(A)の製造に際しては、ガラス転移温度TgAを比較的高くでき、接着強度をより高くできる点で、(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物を用いることが好ましい。ビニル重合体(A)において、(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物に由来する構造単位の含有量は、ビニル重合体(A)が有する全構成単量体に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、15質量%以上が特に好ましい。また、(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物に由来する構造単位の含有量の上限については、ビニル重合体(A)が有する全構成単量体に対して、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。また、(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物に由来する構造単位の含有量の範囲は、1質量%以上90質量%以下が好ましく、5質量%以上80質量%以下がより好ましく、10質量%以上70質量%以下が更に好ましい。
ビニル重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、500以上10,000以下である。ビニル重合体(A)のMnは、好ましくは1,000以上であり、より好ましくは1,500以上であり、更に好ましくは2,000以上である。また、ビニル重合体(A)のMnは、好ましくは8,000以下であり、より好ましくは7,000以下であり、更に好ましくは5,000以下である。Mnが10,000を超えると、アクリル系粘着性ポリマー(B)との相溶性が悪くなる。Mnが500未満の重合体を製造するには、重合開始剤や連鎖移動剤を多量に用いる必要があり、生産性の低下が懸念される。ビニル重合体(A)のMnの範囲は、好ましくは500以上7,000以下であり、より好ましくは1,000以上5,000以下である。
ビニル重合体(A)において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量Mnとの比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、良好な接着強度が得られやすい点で、3.0以下が好ましい。Mw/Mnは、より好ましくは2.5以下であり、更に好ましくは2.0以下である。ビニル重合体(A)のMw/Mnの下限は特に限定されず、1.0以上である。なお、本明細書において、重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて得られた標準ポリスチレン換算値である。
ビニル重合体(A)は、アクリル系粘着性ポリマー(B)と相分離する性質を有しているとよい。かかる性質を有することで、本粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層においてビニル重合体(A)が表層部分に偏析しやすくなり、耐久性の向上を図る上で好適である。なお、本願出願時の技術常識に基づいて当業者であれば容易に、アクリル系粘着性ポリマー(B)と相分離するビニル重合体(A)を設計することができる。例えば、公知の溶解性パラメータであるSP値の算出方法(例えばFedors法)により計算したビニル重合体(A)のSP値をアクリル系粘着性ポリマー(B)のSP値と比較したときの差分ΔSP(絶対値)を0.01以上とする。差分ΔSPは、例えば0.05以上、また例えば0.1以上、また例えば0.2以上、また例えば0.5以上であってもよい。Fedors法による場合、SP値は、R.F.Fedorsにより著された「PolymerEngineering andScience」14(2),147(1974)に記載の計算方法によって算出することができる。
ビニル重合体(A)は、例えば溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合等の公知のラジカル重合方法を採用して、上記単量体を重合することにより得ることができる。溶液重合法による場合、有機溶剤及び単量体を反応器に仕込み、重合開始剤を添加して、50~300℃に加熱して共重合することにより、目的とするビニル重合体(A)を得ることができる。単量体を含む各原料の仕込み方法は、全ての原料を一括して仕込むバッチ式の初期一括仕込みでもよく、少なくとも一部の原料を連続的に反応器中に供給するセミ連続仕込みでもよく、全原料を連続供給し、同時に反応器から連続的に生成樹脂を抜き出す連続重合方式でもよい。粘着剤組成物の調製の際には、有機溶剤に溶解された重合体溶液としてビニル重合体(A)を用いてもよいし、加熱減圧処理等により有機溶剤を留去して用いてもよい。
溶液重合法に使用する有機溶剤としては、有機炭化水素系化合物が適当である。有機炭化水素系化合物としては、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類等、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類を例示することができる。有機溶剤としては、これらの1種又は2種以上を用いることができる。有機溶剤の使用量は、重合に使用する単量体の合計量が、有機溶剤と単量体との合計量に対して、例えば1~50質量%となる量である。
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物、無機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができ、特に限定されるものではない。また、重合開始剤としては、公知の酸化剤及び還元剤からなるレドックス型重合開始剤を用いてもよい。また更に、重合開始剤と共に、公知の連鎖移動剤を併用することもできる。
重合開始剤の具体例としては、アゾ系化合物として、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2-(tert-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等を;
有機過酸化物として、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等を;
無機過酸化物として、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等を;
レドックス型重合開始剤として、例えば、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄等を還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、tert-ブチルハイドロパーオキサイド等を酸化剤としたもの等を、それぞれ挙げることができる。ビニル重合体(A)の製造に際し、重合開始剤の使用量は、重合に使用する全単量体100質量部に対して、例えば0.01~20質量部である。
<アクリル系粘着性ポリマー(B)>
アクリル系粘着性ポリマー(B)は、(メタ)アクリル酸エステル化合物を主要構造単位として含有する重合体であり、粘着性を有する。アクリル系粘着性ポリマー(B)のガラス転移温度TgBは、-80℃以上10℃以下の範囲にあることが好ましく、-80℃以上0℃以下の範囲にあることがより好ましく、-70℃以上-10℃以下の範囲にあることが更に好ましく、-60℃以上-20℃以下の範囲にあることが特に好ましい。ガラス転移温度TgBが-80℃以上であると、得られる粘着剤層の凝集力を十分に高くでき、接着性を十分に確保できる傾向がある。ガラス転移温度TgBが10℃以下であると、低温接着性と段差追従性とを十分に確保できる傾向がある。
アクリル系粘着性ポリマー(B)を構成する単量体としては、ガラス転移温度TgBが比較的低く十分な粘着性を有するアクリル系重合体を得ることができる点で、炭素数4~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル化合物、及び炭素数2~12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「単量体U1」ともいう)を好ましく使用することができる。アクリル系粘着性ポリマー(B)を構成する単量体としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
炭素数4~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられ、好ましい単量体としては(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル等が挙げられる。
炭素数2~12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸ブトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸ブトキシブチル等が挙げられる。
アクリル系粘着性ポリマー(B)において、単量体U1に由来する構造単位の含有量は、アクリル系粘着性ポリマー(B)が有する全構成単量体単位に対して、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。当該含有割合を30質量%以上とすることにより、得られる粘着剤組成物の粘着力、初期接着力(タック)及び低温粘着性等が十分に高くなり好ましい。また、単量体U1に由来する構造単位の含有量の上限は特に限定されないが、単量体U1とは異なる単量体を使用する場合、アクリル系粘着性ポリマー(B)が有する全構成単量体単位に対して、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは98質量%以下である。単量体U1に由来する構造単位の含有量の範囲は、既述の下限及び上限を適宜組み合わせることができる。当該範囲は、好ましくは30質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは50質量%以上99質量%以下である。
アクリル系粘着性ポリマー(B)を構成する単量体としては、上記の中でも、良好な粘着性能を示しつつ粘着剤層においてビニル重合体(A)が表層へ偏析しやすくなる点、及び高温環境下又は高温高湿環境下に曝された場合にも粘着剤がより変色しにくい粘着剤を得ることができる点で、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物を含むことが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物に由来する構造単位の含有量は、アクリル系粘着性ポリマー(B)が有する全構成単量体単位に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上であり、特に好ましくは35質量%以上である。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物に由来する構造単位の含有量の上限は特に限定されないが、ビニル重合体(A)との相溶性及び高温接着性を十分に確保する観点から、アクリル系粘着性ポリマー(B)が有する全構成単量体単位に対して、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下である。
アクリル系粘着性ポリマー(B)の製造に際しては、Fedors法により求められる溶解パラメータ(SP値)が9.9以上となるホモポリマーの単量体単位となる化合物を用いることが、得られる粘着剤層の表層部分にビニル重合体(A)が偏析しやすくなるため好ましい。ホモポリマーのSP値が9.9以上となる単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸、スチレン、メタクリル酸ベンジル等が挙げられる。アクリル系粘着性ポリマー(B)は、こうした単量体に由来する構造単位を、アクリル系粘着性ポリマー(B)が有する全構成単量体単位に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上有するものとするとよい。
アクリル系粘着性ポリマー(B)は、単量体U1以外にも、粘着性能を損なわない範囲で、これらと共重合可能な他の単量体(以下、「単量体U2」ともいう)を使用してもよい。単量体U2としては、例えば、炭素数1~3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル(イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル等)等の不飽和カルボン酸;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート及びポリエチレン-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有不飽和化合物;アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシブチルアクリルアミド等のアミド基含有不飽和化合物及びそのN-置換化合物;アリルアルコール等の不飽和アルコール;多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アルケニル化合物、(メタ)アクリロイル基とアルケニル基とを有する化合物等の多官能重合性単量体;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられる。単量体U2としては、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。
これらのうち、単量体U2として架橋性官能基を有する単量体を使用することにより、アクリル系粘着性ポリマー(B)を、架橋性構造単位を有する重合体とすることができる。アクリル系粘着性ポリマー(B)が架橋性構造単位を有することにより、粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤層の耐熱性及び耐久性を更に向上できる点で好ましい。
架橋性官能基を有する単量体としては、特に限定されないが、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物、及びシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。これらの中でも特に、アクリル系粘着性ポリマー(B)の粘着力が高くなる傾向があることから、架橋性官能基を有する単量体は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物が好ましい。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物としては、粘着性能の観点から、炭素数2~8のヒドロキシアルキル基を有する化合物が好ましく、炭素数2~4のヒドロキシアルキル基を有する化合物が特に好ましい。
アクリル系粘着性ポリマー(B)が架橋性構造単位を有する場合、架橋性構造単位の含有量は、アクリル系粘着性ポリマー(B)が有する全構成単量体単位に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは1質量%以上である。アクリル系粘着性ポリマー(B)における架橋性構造単位の含有量を0.1質量%以上とすることにより、良好な架橋構造を形成させ、より高い耐熱性及び耐久性を示すアクリル系粘着性ポリマー(B)を得やすくなる。また、架橋性構造単位の含有量の上限は特に制限されるものではないが、得られる粘着剤層の柔軟性を高くする観点から、アクリル系粘着性ポリマー(B)が有する全構成単量体単位に対して、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、更に好ましくは15質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。なお、アクリル系粘着性ポリマー(B)の製造に際し、架橋性官能基を有する単量体を1種のみ使用してもよいし、2種以上使用してもよい。
アクリル系粘着性ポリマー(B)は、十分な凝集力と良好な接着性とを発揮する観点、及び粘着剤層の表層部分にビニル重合体(A)を十分に偏析させる観点から、重量平均分子量(Mw)が550,000以上である。アクリル系粘着性ポリマー(B)のMwが550,000未満であると、十分な接着性が得られず、高温条件下又は高温高湿条件下において粘着剤層の浮きや剥がれによって発泡が生じやすくなる。こうした観点から、アクリル系粘着性ポリマー(B)のMwは、好ましくは600,000以上であり、更に好ましくは650,000以上であり、より更に好ましくは700,000以上であり、特に好ましくは750,000以上である。なお、Mwが大きすぎると製造上の扱いが困難となる。したがって、アクリル系粘着性ポリマー(B)のMwは、2,000,000以下であることが好ましく、1,500,000以下であることがより好ましい。アクリル系粘着性ポリマー(B)のMwの範囲は、好ましくは550,000以上2,000,000以下であり、より好ましくは600,000以上1,500,000以下である。
アクリル系粘着性ポリマー(B)の数平均分子量(Mn)は、良好な接着性(特に、ポリカーボネート基材に対する接着性)を発揮する観点から、30,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましく、70,000以上が更に好ましく、80,000以上がより更に好ましく、90,000以上が一層好ましく、92,000以上が特に好ましい。また、アクリル系粘着性ポリマー(B)のMnは、製造しやすさやビニル重合体(A)との相溶性を良好にする観点から、500,000以下が好ましく、400,000以下がより好ましく、300,000以下が更に好ましい。アクリル系粘着性ポリマー(B)のMnの範囲は、好ましくは30,000以上500,000以下であり、より好ましくは50,000以上400,000以下である。
アクリル系粘着性ポリマー(B)につき、MwとMnとの比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、良好な接着強度が得られやすい点から、10.0以下が好ましく、9.5以下がより好ましく、9.0以下が更に好ましい。アクリル系粘着性ポリマー(B)のMw/Mnの下限は特に限定されず、1.0以上とすることができる。
アクリル系粘着性ポリマー(B)もまた、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合等の公知のラジカル重合法により得ることができる。重合反応に使用する重合開始剤や溶剤等の詳細な条件についてはビニル重合体(A)の説明が適用される。
<その他の成分>
本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)のみを含有していてもよいが、必要に応じて、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)以外の重合体や添加剤等の成分(以下、「その他の成分」ともいう)を粘着剤組成物に配合して使用してもよい。以下に、本粘着剤組成物に配合されてもよいその他の成分について説明する。
(架橋剤)
アクリル系粘着性ポリマー(B)が架橋性官能基を有する場合、当該架橋性官能基と反応可能な架橋剤を粘着剤組成物に配合してもよい。また、必要に応じて更に加熱処理等を施すことにより、用途に応じた粘着剤を得ることができる。
架橋剤(硬化剤)としては、グリシジル基を2つ以上有するグリシジル化合物、イソシアネート基を2つ以上有するイソシアネート化合物、アジリジニル基を2つ以上有するアジリジン化合物、オキサゾリン基を有するオキサゾリン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物等が挙げられる。これらの中でも、高温条件下における粘着物性に優れる点でイソシアネート化合物が好ましい。
架橋剤の具体例としては、グリシジル化合物として、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジル化合物を;
イソシアネート化合物として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等の芳香族イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)等の脂肪族イソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(H6XDI)、水添化MDI(H12MDI)等の脂環族イソシアネート化合物;ウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、オキサゾリドン変性体、イソシアネート基末端プレポリマー等の変性イソシアネート化合物等を;
アジリジン化合物として、1,6-ビス(1-アジリジニルカルボニルアミノ)ヘキサン、1,1’-(メチレン-ジ-p-フェニレン)ビス-3,3-アジリジル尿素、エチレンビス-(2-アジリジニルプロピオネート)、2,4,6-トリアジリジニル-1,3,5-トリアジン、トリメチロールプロパン-トリス(2-アジリジニルプロピオネート)等を、それぞれ挙げることができる。
粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、アクリル系粘着性ポリマー(B)の含有量に対して、通常、0.01~10質量%であり、好ましくは0.03~5質量%、より好ましくは0.05~2質量%である。
(粘着付与剤)
本粘着剤組成物は、更に粘着付与剤を含有するものであってもよい。粘着付与剤としては、例えば、ロジンエステル、ガムロジン、トール油ロジン、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン、不均化ロジンエステル等のロジン誘導体;テルペンフェノール樹脂、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等を主体とするテルペン系樹脂;クマロン-インデン系樹脂;水素化芳香族コポリマー;フェノール系樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与剤は、1種単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。粘着付与剤の含有量は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の合計量に対して、好ましくは0~20質量%であり、より好ましくは0~10質量%であり、更に好ましくは0~5質量%である。
(可塑剤)
本粘着剤組成物には、可塑剤が配合されていてもよい。可塑剤としては、ジn-ブチルフタレート、ジn-オクチルフタレート、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート、ジn-デシルフタレート等のフタル酸エステル類;ビス(2-エチルヘキシル)アジペート、ジn-オクチルアジペート等のアジピン酸エステル類;セバシン酸エステル類;アゼライン酸エステル類;塩素化パラフィン等のパラフィン類;ポリプロピレングリコール等のグリコール類;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ変性植物油類;トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;トリフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル類;アジピン酸と1,3-ブチレングリコールとのエステル化物等のエステルオリゴマー類;低分子量ポリブテン、低分子量ポリイソブチレン、低分子量ポリイソプレン等の低分子量重合体;プロセスオイル、ナフテン系オイル等のオイル類等が挙げられる。可塑剤の含有量は、アクリル系粘着性ポリマー(B)の全量に対して、好ましくは0~20質量%であり、より好ましくは0~10質量%であり、更に好ましくは0~5質量%である。
その他、粘着剤組成物に配合される添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、難燃剤、防かび剤、シランカップリング剤、充填剤、着色剤等が挙げられる。添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲において、各種化合物に応じて適宜設定することができる。
<粘着剤組成物の調製>
本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)を、固形分換算で、アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対して、0.5質量部以上60質量部以下含有することが好ましい。ビニル重合体(A)の含有量の下限は、アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは1.5質量部以上であり、更に好ましくは2質量部以上である。また、ビニル重合体(A)の含有量の上限は、アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対して、好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは40質量部以下であり、更に好ましくは30質量部以下であり、特に好ましくは10質量部以下である。
また、ビニル重合体(A)の含有量の範囲は、アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上40質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上30質量部以下であり、更に好ましくは1質量部以上20質量部以下である。ビニル重合体(A)の含有量が0.5質量部以上であると、粘着剤層の表層部分のビニル重合体(A)が十分な量となり、高い剥離強度及び引張せん断接着強度を与えることができる点で好ましい。また、ビニル重合体(A)の含有量が60質量部以下であると、ビニル重合体(A)が過度に偏析することを抑制し、十分な接着性を示すことができる。また、アクリル系粘着性ポリマー(B)と相分離することによる、粘着剤層の透明性低下を抑制することができる。
本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を含むものであればその形態に特段の制約はない。例えば、本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマー(B)、及び必要に応じて配合されるその他の成分が溶剤に溶解又は分散された液状の組成物であってもよい。粘着剤組成物の調製に使用する溶剤としては、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を溶解可能な有機溶媒、又はビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を分散可能な水媒体が挙げられる。当該有機溶媒の具体例としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。有機溶媒は、これらの1種でもよく、2種以上の混合溶媒であってもよい。例えば、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を酢酸エチル等の有機溶剤に溶解することにより溶剤型の粘着剤組成物を得ることができる。また、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を水媒体中に分散させることによりエマルション型の粘着剤組成物を得ることができる。
粘着剤組成物が液状である場合、粘着剤組成物における固形分濃度(すなわち、粘着剤組成物の全体質量に対する、粘着剤組成物中の溶剤以外の成分の質量の割合)は、特に限定されないが、好ましくは1~70質量%である。固形分濃度が1質量%以上であると、十分な厚みを有する粘着剤層を形成することができる点で好ましい。また、固形分濃度が70質量%以下であると、良好な塗工性を確保でき、均一な厚みの粘着剤層を形成しやすい点で好適である。粘着剤組成物における固形分濃度は、より好ましくは5~50質量%であり、更に好ましくは10~45質量%である。
本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)と共に、単官能(メタ)アクリル系化合物及び多官能(メタ)アクリル系化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の重合性化合物、並びに光重合開始剤等を含むことにより、紫外線等の活性エネルギー線によって硬化するいわゆるシロップ型の光硬化型粘着剤組成物であってもよい。本粘着剤組成物をシロップ型とすることにより、段差追従性により優れた厚膜の粘着シートを得ることができる点で好適である。光硬化型粘着剤組成物の場合、当該組成物中は有機溶剤等を含んでもよいが、一般には、溶剤類を含まない無溶剤型として用いられる。
単官能(メタ)アクリル系化合物としては、炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル化合物;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物;(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリル系化合物としては、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル;トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他にも、ポリウレタン(メタ)アクリレート及びポリイソプレン系(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(マクロモノマー)を使用することもできる。ポリイソプレン系(メタ)アクリレートの具体的な化合物としては、例えば、イソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2-ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物等が挙げられる。
光重合開始剤としては、ベンゾイン及びそのアルキルエーテル類、アセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、ベンゾフェノン類、キサントン類、アシルホスフィンオキシド類、α-ジケトン類等が挙げられる。また、活性エネルギー線による感度を向上させるために、光増感剤を併用することもできる。光増感剤としては、安息香酸系光増感剤、アミン系光増感剤等が挙げられる。光重合開始剤及び光増感剤の使用量は、上記重合性化合物100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましい。
<粘着剤組成物のTg>
本粘着剤組成物は、当該組成物全体のガラス転移温度(すなわち、第1のガラス転移温度Tg1)が-80℃以上10℃以下の範囲である。第1のガラス転移温度Tg1は、好ましくは-70℃以上であり、より好ましくは-60℃以上であり、更に好ましくは-40℃以上である。また、第1のガラス転移温度Tg1は、好ましくは0℃以下であり、より好ましくは-5℃以下である。第1のガラス転移温度Tg1の範囲は、好ましくは-70℃以上0℃以下であり、より好ましくは-60℃以上0℃以下であり、更に好ましくは-50℃以上-5℃以下である。第1のガラス転移温度Tg1が-80℃未満の場合は、得られる粘着剤層の凝集力が不十分となり、引張せん断接着強度等が悪化する傾向がある。また、第1のガラス転移温度Tg1が10℃を超える場合は、タック及び低温条件下での粘着力等が十分でない場合がある。なお、第1のガラス転移温度Tg1は、DSCにて、昇温速度10℃/min、窒素雰囲気を測定雰囲気として得た値である。測定条件の詳細は、後述する実施例の記載に従う。
《発熱体用粘着性製品》
本粘着剤組成物をセパレータ等の支持体上に塗布して粘着剤層を形成することにより、例えば粘着シートや粘着テープ等の粘着性製品を得ることができる。この粘着性製品は、高熱負荷及び高湿負荷の少なくともいずれかが付与された場合にも、被着体(例えば樹脂基材)からの浮きや剥がれが生じにくく、かつ透明性が高い上に変色しにくく、耐久性に優れている。このため、本粘着性製品は、面状発熱体と被着体とを接合する用途、あるいは面状発熱体を製造する際に面状発熱体の構成部材どうしを接合するための粘着剤としての用途に特に適している。
粘着性製品を構成する支持体としては、各種樹脂材料からなる樹脂フィルムが用いられる。当該樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、アセテート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。粘着剤層の形成は、例えば、液状の粘着剤組成物を公知の塗工方法により支持体に塗布し、好ましくは加熱等の乾燥処理によって溶媒を除去することにより行う。なお、粘着剤層を形成するための加熱温度及び加熱時間は、溶媒を除去可能であればよく、粘着剤組成物の溶媒や固形分濃度等に応じて適宜設定され得る。
粘着性製品は、例えば、剥離強度の異なる2種のセパレータにより粘着剤層が挟持された、いわゆる基材レスの態様である。粘着性製品の形状についても特段の制限はなく、使用状況に応じて適宜設定される。例えば粘着シートは、枚葉状であってもよく、ロール状であってもよく、短冊状に裁断されていてもよく、あるいは接合箇所に応じた任意の形状を有していてもよい。粘着性製品における粘着剤層の厚さは、接合対象や、接合箇所の面積及び形状等により適宜設定すればよい。粘着剤層の厚さは、通常、1~200μmである。また、粘着性製品の粘着剤層を所望の厚さとするために、複数の粘着剤層を積層することによって粘着性製品の粘着剤層を形成してもよい。
本粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層の85℃におけるせん断貯蔵弾性率(以下「貯蔵弾性率G’」ともいう。)は、5.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であることが好ましい。貯蔵弾性率G’が5.0×10Pa以上であると、高温条件下及び高温高湿条件下において優れた耐久性を発揮することができる点で好ましい。耐久性をより高くできる点で、貯蔵弾性率G’は、5.5×10Pa以上であることがより好ましく、6.0×10Pa以上であることが更に好ましく、6.5×10Pa以上であることがより更に好ましく、8.0×10Pa以上であることが特に好ましい。また、貯蔵弾性率G’が5.0×10Pa以下であると、段差追従性と、高温条件下又は高温高湿条件下における応力緩和性とを十分に高くできる点で好ましい。段差追従性及び応力緩和性をより高くできる点で、貯蔵弾性率G’は、4.0×10Pa以下であることがより好ましく、3.0×10Pa以下であることが更に好ましく、2.5×10Pa以下であることが特に好ましい。
なお、本明細書において貯蔵弾性率G’は、測定温度85℃において、昇温速度2℃/分、ひずみ0.1%、測定周波数1Hzの条件で、厚さ0.8mmの粘着剤層のずり粘弾性を測定することにより得られた値である。貯蔵弾性率G’は、アクリル系粘着性ポリマー(B)の組成及び架橋の程度や、可塑剤等の添加剤の添加量を調整することにより任意に調整することができる。これらのうち、アクリル系粘着性ポリマー(B)の構成単量体として炭素数1~4のアルキル基又はアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物を1種又は2種以上使用し、当該化合物の種類及び使用量を調整することによって貯蔵弾性率G’を調整することが好ましい。
<粘着剤層の表層部分におけるビニル重合体(A)の濃度>
本粘着剤組成物に含有されるビニル重合体(A)は、アクリル系粘着性ポリマー(B)に対して適度な相溶性を有することが好ましい。この場合、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を含有する粘着剤組成物から得られる粘着剤層は、高い透明性を示すと共に、粘着剤層の表層部分にビニル重合体(A)が一部偏析し、表層部分におけるビニル重合体(A)の濃度を他の部分よりも高くすることが可能である。
本粘着剤組成物により形成された粘着剤層の表層部分におけるビニル重合体(A)の組成分率(質量分率W)は、粘着剤層のX線光電子分光分析よる組成分析により求めることができる。質量分率Wは、本粘着剤層の表層部分におけるビニル重合体(A)の偏析状態の指標とすることができ、具体的には下記式(7)及び(8)で表される。
=(ビニル重合体(A)の質量)/(ビニル重合体(A)とアクリル系粘着性ポリマー(B)との総量) …(7)
=1-W …(8)
(式(7)及び式(8)中、Wは、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対するビニル重合体(A)の質量分率であり、Wは、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対するアクリル系粘着性ポリマー(B)の質量分率である。)
質量分率Wは、百分率で表した場合に55%以上99%以下となる値であることが好ましい。この範囲であると、ビニル重合体(A)の表層部分への偏析が十分生じており、高温下及び高温高湿下において高い接着性及び耐久性を示す粘着剤層を得ることができる。百分率で表した場合の質量分率Wは、より好ましくは60%以上であり、更に好ましくは70%以上であり、より更に好ましくは75%以上であり、特に好ましくは80%以上である。また、百分率で表した場合の質量分率Wは、97%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましい。
本粘着剤組成物により形成された粘着剤層の表層部分のX線光電子分光分析よる組成分析により求めた、当該表層部分におけるアクリル系粘着性ポリマー(B)の質量分率(W=B/A+B)は、百分率で表した場合、1%以上45%以下であることが好ましい。百分率で表した質量分率Wは、より好ましくは2%以上であり、更に好ましくは5%以上である。また、質量分率Wは、40%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましく、25%以下がより更に好ましく、20%以下が特に好ましい。また、本粘着剤組成物により形成された粘着剤層の表層部分のX線光電子分光分析よる組成分析により求めた、当該表層部分におけるビニル重合体(A)とアクリル系粘着性ポリマー(B)との質量比((A)/(B))は、55/45~99/1の範囲が好ましく、60/40~97/3の範囲がより好ましく、70/30~95/5の範囲が更に好ましい。
なお、本粘着剤組成物で粘着剤層を形成する際の、ビニル重合体(A)の粘着剤層表層への偏析挙動は、ビニル重合体(A)とアクリル系粘着性ポリマー(B)とが完全には相溶しない一方、完全に相分離しないことによるものと推測される。好ましくは、ビニル重合体(A)がアクリル系粘着性ポリマー(B)よりも低極性である。本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)として、アクリル系粘着性ポリマー(B)に対して完全には相溶しない重合体を含有することが好ましい。
ビニル重合体(A)の偏析は、粘着剤層の形成時に生じるものであり、溶媒が蒸発する表層側(空気界面側)にビニル重合体(A)が偏析することとなる。したがって、例えば、本粘着剤組成物によるシート状又はフィルム状の粘着剤層において、厚み方向で対向する2つの表層が、気体やある種の固体などの表面エネルギーの低い物質と接する場合には、こうした物質と接する低表面エネルギー界面側においてビニル重合体(A)をより高濃度で含有する一方、粘着剤層の厚み方向の中央部においてビニル重合体(A)をより低濃度で含有する粘着剤層を得ることができる。すなわち、粘着剤層の表層側においてビニル重合体(A)をより高濃度に有する傾斜組成を備える粘着剤層を得ることができる。アクリル系粘着性ポリマー(B)の観点からは、粘着剤層の表層側においてアクリル系粘着性ポリマー(B)をより低濃度に有する傾斜組成を備える粘着剤層を得ることができる。
なお、本粘着剤組成物による粘着剤層において厚み方向で対向する2つの最外面のうち一方の面のみが低表面エネルギー界面側となるときには、当該界面側のみがビニル重合体(A)をより高濃度で含有する粘着剤層とすることができる。
<粘着剤層の表層部分のTg>
粘着剤層の表層部分におけるビニル重合体(A)の濃度が他の部分よりも高い構成とした場合、接着界面近傍の粘着剤層は比較的高いガラス転移温度を有する。これにより、粘着剤層は、高い剥離強度及び引張せん断接着強度を発揮することができる。本粘着剤組成物におけるビニル重合体(A)のこうした偏析挙動、及び粘着剤層の表層部分のTgと粘着剤組成物のTgとの差(すなわち、第2のガラス転移温度Tg2と第1のガラス転移温度Tg1との差)は、アクリル系粘着性ポリマー(B)に対するビニル重合体(A)の配合比、ビニル重合体(A)の単量体組成(極性)、分子量、Tg及びMw/Mn、並びにアクリル系粘着性ポリマー(B)の単量体組成等を適宜設定することにより調整することができる。
本粘着剤組成物により形成された粘着剤層の表層部分の組成から計算される第2のガラス転移温度Tg2、すなわち、本粘着剤組成物をセパレータに塗工、乾燥させて粘着剤層を得た際に、当該粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分の組成から計算される粘着剤層の表層部分のTgは、X線光電子分光測定(XPS)から得られるビニル重合体(A)とアクリル系粘着性ポリマー(B)との組成比率から計算によって求められ、空気界面側の粘着剤層の表面から5nm程度の深さまでの表層部分のガラス転移温度として捉えることができる。測定方法の詳細は、後述する実施例に記載の操作に従うことができる。
第2のガラス転移温度Tg2は、0℃以上であることが好ましい。第2のガラス転移温度Tg2が0℃以上であると、第1のガラス転移温度Tg1と第2のガラス転移温度Tg2との温度差ΔTg(=Tg2-Tg1)を十分に大きくでき、これにより、高温下又は高温高湿下での接着性及び耐久性を十分に確保することができる。第2のガラス転移温度Tg2は、より好ましくは10℃以上であり、更に好ましくは30℃以上であり、特に好ましくは50℃以上である。第2のガラス転移温度Tg2の上限は、特に限定されないが、例えば120℃以下である。なお、第2のガラス転移温度Tg2は、ビニル重合体(A)のガラス転移温度TgAや配合比、アクリル系粘着性ポリマー(B)のガラス転移温度TgB等によって適宜調節することができる。
<温度差ΔTg>
本粘着剤組成物により粘着剤層を形成した場合、第2のガラス転移温度Tg2は、第1のガラス転移温度Tg1よりも30℃以上高い値を示す。こうしたTgを有する粘着剤層によれば、高温下又は高温高湿下においても高い剥離強度及び引張せん断接着強度を発揮することができる。この場合、樹脂基材を被着体とし、本粘着剤組成物により得られた粘着剤層と樹脂基材とを貼り合わせた積層体を高温下又は高温高湿下に曝した場合にも、粘着剤層の浮きや剥がれを抑制でき、優れた耐発泡性を示すものとなる。
高温下又は高温高湿下での耐久性(耐発泡性)をより良好にする観点から、第2のガラス転移温度Tg2は、第1のガラス転移温度Tg1よりも、40℃以上高いことが好ましく、50℃以上高いことがより好ましく、60℃以上高いことが更に好ましく、70℃以上高いことが特に好ましい。温度差ΔTgの上限は特に制限されるものではないが、第1のガラス転移温度Tg1及び第2のガラス転移温度Tg2が取り得る値を考慮すると、230℃以下が好ましく、一般的に200℃以下である。
<剥離強度>
本粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層は、高温下においても剥離強度が高く、接着性に優れている。具体的には、本粘着剤組成物を用いて100μm厚ポリエチレンテレフタレート基材上に形成された膜厚50μmの粘着剤層を備える粘着シートにおける、ポリカーボネート基材に対する85℃、剥離速度300mm/minの条件での剥離強度は、好ましくは15N/25mm以上である。ポリカーボネート基材は、透明性が高く強靭性にも優れていることから、面状発熱体が貼り付けられる被着体の構成材料として使用されることが多い。したがって、本粘着剤組成物は、面状発熱体の貼付け用途の粘着剤として好適である。ポリカーボネート基材に対する85℃での剥離強度は、より好ましくは18N/25mm以上であり、更に好ましくは20N/25mm以上である。なお、本明細書において、ポリカーボネート基材に対する85℃での剥離強度は、温度85℃、剥離速度300mm/minの条件で、JIS Z-0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて測定された180度剥離強度(N/25mm)である。
<ヘイズ値>
本粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤層は透明性が高い。具体的には、当該粘着剤層において、透明性の指標であるヘイズ値は、粘着剤層をガラス基材に貼り付け、23℃、50%RH条件下で1日静置した後のヘイズメーターによる測定値が、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.2以下であることが更に好ましい。なお、ヘイズ値の測定方法の詳細は、後述する実施例の方法に従う。
《面状発熱体》
本発明の面状発熱体は、本粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を備える。面状発熱体の一例について、図1及び図2を用いて説明する。なお、図1及び図2には、面状発熱体10が被着体20に貼り付けられた状態を示している。
面状発熱体10は、フィルム状又はシート状の発熱体であり、第1樹脂シート11と、第2樹脂シート12と、面状の発熱部13とを備えている。面状発熱体10においては、第1樹脂シート11、発熱部13及び第2樹脂シート12がこの順に積層されている。
第1樹脂シート11及び第2樹脂シート12は、例えばポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリル樹脂等の樹脂材料により形成されている。耐衝撃性及び透明性に優れた面状発熱体10とすることができる点で、第1樹脂シート11及び第2樹脂シート12は、好ましくはポリエチレンテレフタレート樹脂製、ポリカーボネート樹脂製又はアクリル樹脂製である。また、インサート成形や真空成形、圧空成形、真空圧空成形(OMD;Out-MoldDecoration)等により製品を製造する際に被着体に対して面状発熱体10を貼り合わせる場合、成形性に優れる点で、第1樹脂シート11及び第2樹脂シート12は、ポリカーボネート樹脂製又はアクリル樹脂製であることが好ましい。
発熱部13は、第1樹脂シート11と第2樹脂シート12との対向面にヒータ線16が蛇行状に配置されることにより、面状に形成されている。ヒータ線16は、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、スズ、チタン等の金属単体、ステンレス鋼(SUS)等の合金、カーボン(例えば、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ等)といった導電性材料により形成されている。ヒータ線16は、縦断面形状が略矩形状をなしており、発熱部13の領域全体に配置されている。ヒータ線16は、上記導電性材料から成る薄膜のエッチング、あるいは上記導電性材料を含むペースト状組成物の印刷等の公知の方法により線状に形成されている。なお、ヒータ線16の縦断面形状は略矩形状に限らず、例えば円形状、楕円形状等であってもよい。
第1樹脂シート11と第2樹脂シート12とは、粘着剤層15によって互いのシート面が貼り合わされている(図2参照)。これにより、ヒータ線16は、第1樹脂シート11と第2樹脂シート12とによって挟持された状態で、粘着剤層15により第2樹脂シート12に貼り付けられている。第1樹脂シート11において、第2樹脂シート12側とは反対側のシート面には、粘着剤層14が形成されている。粘着剤層14及び粘着剤層15のうち少なくとも一方は、本粘着剤組成物を用いて形成されている。好ましくは、粘着剤層14及び粘着剤層15が共に本粘着剤組成物により形成された形態である。なお、被着体20への貼り付け前の粘着剤層14には、粘着性能が保持されるように、第1樹脂シート11とは反対側の面にセパレータ(図示略)が貼り付けられているとよい。
面状発熱体10の厚みや大きさは、被着体の用途等に応じて適宜設定される。面状発熱体10の厚みは、被着体20に貼り付けられた面状発熱体10を目立ちにくくする等の観点から、例えば0.1mm以上5mm以下であり、好ましくは0.1mm以上2mm以下である。また、面状発熱体10の外形形状についても特に限定されない。面状発熱体10は、被着体20の形状や用途等に応じて、例えば四角形状、円形状、楕円形状等の外形形状を有するものとすることができる。
面状発熱体10は、粘着剤層14を介して被着体20に貼り付けられる。面状発熱体10が被着体20に貼り付けられた状態でヒータ線16に通電されると、加熱抵抗によりヒータ線16が発熱し、その発生した熱によって被着体20が温められる。
ここで、本粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層は、高温下又は高温高湿下において剥離強度が高く耐発泡性に優れ、しかも白化が生じにくい。したがって、面状発熱体10によれば、発熱部13の発熱や屋外の環境等に起因して面状発熱体10が高温条件下又は高温高湿条件下に曝された場合にも、粘着剤層の剥離や発泡、変色が生じにくい。そのため、例えば面状発熱体10を、各種センサの周辺に配置される部品(センサ周辺部品)として使用した場合に、センサの感度や精度を維持することができる。また、面状発熱体10を窓ガラスや建築物用途に使用した場合に、外観や意匠性を良好に維持することができる。
なお、面状発熱体10の構成は、図2に示すものに限定されない。例えば、面状発熱体10を、第1樹脂シート11、粘着剤層15、ヒータ線16及び第2樹脂シート12がこの順に積層された構成とし、粘着剤層15によってヒータ線16が第1樹脂シート11に貼り付けられている構成としてもよい。
あるいは、ヒータ線16に代えて、図3に示すように、第1樹脂シート11上に形成された導電膜17を備え、導電膜17によって発熱部13が形成されている構成としてもよい。図3の面状発熱体10においては、第1樹脂シート11における導電膜17の形成面と、第2樹脂シート12のシート面とが粘着剤層15により貼り合わされている。導電膜17は、例えばITO、導電性高分子、銀ナノ粒子、メタルメッシュ、カーボンナノチューブ等の導電性材料により形成することができる。なお、面状発熱体10が導電膜17を備える場合、第2樹脂シート12のシート面上に導電膜17を形成することにより、面状発熱体10を、第1樹脂シート11、粘着剤層15、導電膜17及び第2樹脂シート12がこの順に積層された積層体としてもよい。
図2及び図3の面状発熱体10において、第1樹脂シート11を設けない構成としてもよい。また、面状発熱体10は、発熱部13を被着体20に取り付けるための粘着剤層14を有さない構成であってもよい。この場合、面状発熱体10は、例えば、粘着テープや粘着シート等の粘着性製品を用いて被着体20に貼り付けられたり、あるいはポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等の樹脂材料を直接射出するインサート成形により被着体20と一体化されたりすることにより被着体20に取り付けられてもよい。また、真空成形や圧空成形により被着体20が三次元形状にされる工程を経て製品が製造される場合、真空成形や圧空成形の際に面状発熱体10を被着体20に貼り付けてもよい。さらに、三次元形状を有する被着体20に対して、真空圧空成形(OMD)により面状発熱体10を貼り付けてもよい。
≪発熱体貼付品≫
本発明の発熱体貼付品は、本粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を介して、面状発熱体と被着体とが接合された接合部を有する。発熱体貼付品30は、例えば図1に示すように、面状発熱体10と被着体20とを備え、粘着剤層14を介して被着体20に面状発熱体10が貼り付けられている。
被着体20は、面状発熱体10による加温対象物である。被着体20の構成材料は特に限定されない。被着体20の構成材料としては、例えばソーダライムガラス、ソーダライムシリカガラス、アルミノシリケートガラス、ホウケイ酸ガラス、リン酸塩ガラス等のガラス;ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(メタ)アクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、熱可塑性フッ素樹脂等の樹脂といった種々の材料が適用される。耐熱性及び透明性の観点から、被着体20の構成材料は、これらの中でもガラス又はポリカーボネート樹脂が好ましく、更に、耐衝撃性及び成型性の観点から、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。
被着体20は特に限定されず、凍結や結露の防止及び抑制、除霜、防湿、保温、加温等の各種用途において使用される種々の製品を適用することができる。被着体20(すなわち、面状発熱体10による加熱対象物)の具体例としては、例えば単眼カメラ、ステレオカメラ、ミリ波レーダ、準ミリ波レーダ、レーザレーダ、レーザスキャナ、LIDAR、ナイトビジョン、超音波センサ等の車両用センサ又は当該センサ周辺部品;自動車、航空機、鉄道車両、船舶、建設用車両、ドローン等の各種移動体に設けられた各種窓ガラス及びミラー;住宅用窓ガラス、建物の屋根、ショーウインドウ等の建築物用途;信号灯や標識、反射ミラー等の路上設置物、等が挙げられる。
特に、本粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層は、高温又は高温高湿の過酷な環境下に曝されても耐久性に優れていることから、自動車用センサや自動車センサの周辺に配置される自動車部品(例えば、エンブレム等の装飾部品やフロントグリル、バンパー等)、フロントガラス、リアガラス、サイドミラー等の自動車用途に好適である。これらの中でも特に、運転支援機能の向上を図る観点から、先進運転支援システムに用いられる上記自動車用センサ及び当該センサ周辺部品に面状発熱体10を取り付けるための粘着剤として好適である。
本粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層により2つの部材を接合するには、まず、粘着剤層を介して部材どうし(図2では、面状発熱体10と被着体20、あるいは第1樹脂シート11と第2樹脂シート12)が接するように配置して部材/粘着剤層/部材の積層体とし、その積層体を加熱(好ましくは加熱圧着)することにより行うことができる。加熱圧着により接合する場合、接合時の圧力は、所望の接着強度が得られるように適宜設定すればよい。接合時の圧力は、段差追従性と粘着剤の密着性とを高める観点から、0.2MPa以上が好ましく、0.3MPa以上がより好ましく、0.5MPa以上が更に好ましい。また、接合時の加熱温度は、用いる部材の耐熱温度以下が好ましく、例えば35℃以上150℃以下とすることができる。粘着剤層により接合する2つの部材のうち少なくとも一方が樹脂である場合、熱による樹脂のダメージを抑制する観点から、積層体を加熱する際の温度は、35℃以上100℃以下がより好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。実施例及び比較例における各種分析は、以下に記載の方法により実施した。
<固形分>
測定サンプル約1gを秤量(a)し、次いで、通風乾燥機155℃、30分間乾燥後の残分を測定(b)し、以下の式より算出した。測定には秤量ビンを使用した。その他の操作については、JIS K 0067-1992(化学製品の減量及び残分試験方法)に準拠した。
固形分(%)=(b/a)×100
<分子量測定>
分子量はGPCにて下記の条件で測定した。
GPC:東ソー(HLC-8120)、カラム:東ソー(TSKgel-Super MP-M×4本)、試料濃度:0.1%、流量:0.6ml/分、溶離液:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃、検出器:示差屈折計(RI)、標準物質:ポリスチレン
<ガラス転移温度(Tg)>
ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマー(B)及び粘着剤組成物のTgはDSCにて以下の条件で測定した。
DSC:TA Instrument製(Q-100)、昇温温度:10℃/分、測定雰囲気:窒素
<重合体のモノマー組成>
重合体のモノマー組成は、モノマー仕込量とGC測定によるモノマー消費量とから算出した。GC測定は以下の条件にて実施した。
GC:Agilent Technolosies製(7820A GC System)、検出器:FID、カラム:100%ジメチルシロキサン(CP-Sil 5CB) カラム長さ30m、カラム内径0.32mm、算出方法:内部標準法
1.ビニル重合体の合成
〔合成例1〕重合体A-1の合成
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(200質量部)とジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製、商品名「V-601」)(0.9質量部)からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」という)(165質量部)、メタクリル酸イソボルニル(以下、「IBXMA」という)(44質量部)、V-601(17質量部)、及び酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をヘキサン(6000質量部)に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A-1を得た。得られた重合体A-1のモノマー組成を仕込量とGC測定によるモノマー消費量とから計算した結果、MMA 80質量%及びIBXMA 20質量%からなり、分子量については、Mw7980、Mn4290、Mw/Mn1.86であった。Tgは90℃であった。重合体A-1の分析結果を表1に示す。
〔合成例2〕重合体A-2の合成
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(200質量部)を仕込み、窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(100質量部)、IBXMA(108質量部)、V-601(20.4質量部)、及び酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をメタノール(4800質量部)と蒸留水(1200質量部)からなる混合溶液に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A-2を得た。重合体A-2の分析結果を表1に示す。
〔合成例3〕重合体A-3の合成
内容積1リットルの4つ口フラスコに、MMA(50質量部)、酢酸ブチル(227質量部)、及びV-601(12質量部)からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(200質量部)、V-601(46質量部)、及び酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をヘキサン(6000質量部)に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A-3を得た。重合体A-3の分析結果を表1に示す。
〔合成例4〕重合体A-4の合成
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(221質量部)とV-601(3.2質量部)からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(34質量部)、メタクリル酸ブチル(以下、「BMA」という)(215質量部)、V-601(60質量部)、及び酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をメタノール(4200質量部)と蒸留水(1800質量部)からなる混合溶液に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A-4を得た。重合体A-4の分析結果を表1に示す。
Figure 0007358932000001
2.アクリル系粘着性ポリマーの合成
〔合成例5〕重合体B-1の合成
内容積3リットルの4つ口フラスコに、アクリル酸メトキシエチル(以下、「MEA」という)(468質量部)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(以下、「HEA」という)(30質量部)、アクリル酸ブチル(以下、「BA」という)(102質量部)、酢酸エチル(890質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、商品名「V-65」)(0.11質量部)を仕込み、5時間重合した。固形分濃度が30%となるように酢酸エチルを追加して、重合体B-1の酢酸エチル溶液を得た。得られた重合体は、MEA78質量%、HEA5質量%、及びBA17質量部%からなり、Mn92000、Mw800000、Mw/Mn8.70であった。Tgは-35℃であった。重合体B-1の分析結果を表2に示す。
〔合成例6〕重合体B-2の合成
内容積3リットルの4つ口フラスコに、MEA(336質量部)、HEA(30質量部)、BA(144質量部)、アクリル酸メチル(以下、「MAという」)(90質量部)、及び酢酸エチル(890質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.17質量部)を仕込み、5時間重合した。固形分濃度が30%となるように酢酸エチルを追加して、重合体B-2の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-2の分析結果を表2に示す。
〔合成例7〕重合体B-3の合成
内容積3リットルの4つ口フラスコに、MEA(228質量部)、HEA(29質量部)、BA(143質量部)、MA(171質量部)、及び酢酸エチル(845質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.13質量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体B-4の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-4の分析結果を表2に示す。
〔合成例8〕重合体B-4の合成
内容積3リットルの4つ口フラスコに、MEA(258質量部)、HEA(30質量部)、BA(72質量部)、MA(240質量部)、及び酢酸エチル(890質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.14質量部)を仕込み、5時間重合した。固形分濃度が30%となるように酢酸エチルを追加して、重合体B-4の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-4の分析結果を表2に示す。
〔合成例9〕重合体B-5の合成
内容積3リットルの4つ口フラスコに、HEA(20質量部)、BA(140質量部)、MA(240質量部)、及び酢酸エチル(599質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.10質量部)を仕込み、5時間重合した。固形分濃度が30%となるように酢酸エチルを追加して、重合体B-5の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-5の分析結果を表2に示す。
〔合成例10〕重合体B-6の合成
内容積3リットルの4つ口フラスコに、MEA(413質量部)、HEA(26.5質量部)、BA(90質量部)、及び酢酸エチル(974質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.26質量部)を仕込み、5時間重合した。固形分濃度が30%となるように酢酸エチルを追加して、重合体B-6の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-6の分析結果を表2に示す。
Figure 0007358932000002
3.粘着剤組成物の製造及び評価
〔実施例1〕
上記合成例1で得られた重合体A-1を酢酸エチルに溶解させ、固形分濃度30質量%の重合体A-1溶液を調製した。当該重合体A-1溶液(4質量部)、上記合成例5で得られた固形分濃度30質量%の重合体B-1溶液(100質量部)、架橋剤としてタケネートD-110N(三井化学社製イソシアネート系架橋剤、固形分濃度75質量%)(0.08質量部)を混合し、粘着剤組成物を得た。
この粘着剤組成物を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製セパレータ上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが50±2.0μmとなるように塗布した。粘着剤組成物を80℃で4分間乾燥することで酢酸エチルを除去するとともに架橋反応をさせ、上記セパレータとは剥離力の異なる厚さ38μmのPET製セパレータを貼り合わせて、40℃で5日間静置して熟成(エージング)することにより、両面セパレータ付き粘着フィルム試料を得た。得られた粘着フィルム試料について、次に示す方法により各種測定及び評価を行った。測定及び評価の結果を表3に示す。
<アクリル系粘着性ポリマー(B)に対するゲル分率>
粘着フィルム試料から粘着剤を0.2g採取し、粘着剤の初期質量を秤量した。その粘着剤を50gの酢酸エチルに浸漬し、室温で16時間静置した。その後、200メッシュ金網でろ過し、メッシュに残った残分を80℃で3時間乾燥し、秤量した。初期質量と残分の質量とから、下記式によりアクリル系粘着性ポリマーのゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(残分の質量)/[(初期質量)×(アクリル系粘着性ポリマー(B)の固形分)/(粘着剤組成物全体の固形分)]×100
<透明性(ヘイズ値)>
粘着フィルム試料から一方の剥離フィルムを剥がし、ガラスプレート(1mm厚)に転写し、もう一方の剥離フィルムを剥がした。23℃、50%RH条件下で1日静置した後、日本電色社製ヘイズメーター(型式名「ヘイズメーターNDH2000」)を使用してヘイズ値を測定することにより透明性を評価した。
<粘着剤層の表層部分のTg>
粘着フィルム試料のX線光電子分光装置(XPS)測定によるO1sとC1sのピーク面積比から、粘着剤層の表層部分におけるビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対する、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の各質量分率(w及びw)を算出し、FOXの式に基づき表層部分のTgを算出した。なお、XPS測定は以下の条件で測定した。
装置: アルバック・ファイ社製 PHI5000 VersaProbe
X線: Al-Kα (1486.6eV)
試料へのX線入射角: 0° (試料測定面の法線に対する角度)
光電子検出角: 45° (試料測定面の法線に対する角度)
質量分率w、wの具体的な算出方法は以下のとおりである。
XPS測定によるO1sとC1sのピーク面積比から算出される酸素原子数と炭素原子数の比は、下記式(1)の通り、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)からなる粘着剤組成物から形成された粘着剤層表層部の単位重量当りに存在する酸素原子数と炭素原子数の比で表される。
Figure 0007358932000003
ここで、
(O/C)A+B:粘着剤組成物を乾燥して得られた粘着剤層のXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比から算出される酸素原子数と炭素原子数の比
:ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対するビニル重合体(A)の質量分率
w-A:ビニル重合体(A)の全構成単量体単位の加重平均分子量
w-B:アクリル系粘着剤組成物(B)の全構成単量体単位の加重平均分子量
O-A:ビニル重合体(A)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる酸素原子数
O-B:アクリル系粘着性ポリマー(B)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる酸素原子数
C-A:ビニル重合体(A)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる炭素原子数
C-B:アクリル系粘着性ポリマー(B)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる炭素原子数
また、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)各単体を乾燥して得られたフィルムのXPS測定により求められるO1sとC1sのピーク面積比から算出される炭素原子数と酸素原子数の比は、各々下記式(2)及び(3)で表される。
Figure 0007358932000004
ここで、
(O/C):ビニル重合体(A)を乾燥して得られたフィルムのXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比から算出される酸素原子数と炭素原子数の比
Figure 0007358932000005
ここで、
(O/C):アクリル系粘着性ポリマー(B)を乾燥して得られたフィルムのXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比から算出される酸素原子数と炭素原子数の比
上記の式(1)~(3)より下記式(4)が導かれ、これよりビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対するビニル重合体(A)の質量分率(W)が算出される。
Figure 0007358932000006
更に、上記で求めたWの値と下記式(5)から、アクリル系粘着性ポリマー(B)の質量分率(W)が算出される。
Figure 0007358932000007
ここで、
:ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対するアクリル系粘着性ポリマー(B)の質量分率
実施例1について、上記式(4)における各要素を以下に示す。
(O/C)A+B:0.327(実測値)
(O/C):0.309(実測値)
(O/C):0.435(実測値)
C-A:MMA1分子中の炭素原子数(5)、IBXMA1分子中の炭素原子数(14)及び組成比より、5×89.9(mol%)+14×10.1(mol%)=5.91
C-B:MEA1分子中の炭素原子数(6)、BA1分子中の炭素原子数(7)、HEA1分子中の炭素原子数(5)及び組成比より、6×84.4(mol%)+7×10.1(mol%)+5×5.6(mol%)=6.05
w-A:MMAの分子量(100)、IBXMAの分子量(222)及び組成比より、100×89.9(mol%)+222×10.1(mol%)=112.3
w-B:MEAの分子量(130)、BAの分子量(128)、HEAの分子量(116)及び組成比より、130×84.4(mol%)+128×10.1(mol%)+116×5.6(mol%)=129.0
これらの値を上記式(4)に代入することによりW=0.840が得られ、上記式(5)よりW=0.160が得られた。
次いで、XPS測定により得られた表面組成から、下記式(6)で表されるFOXの式に従って表層部分のTg(第2のガラス転移温度Tg2)を計算し、61.9℃という値を得た。
1/〔表層部分のTg〕(K)=W/TgA+W/TgB …(6)
(式(6)中、TgA:ビニル重合体(A)のTg、TgB:アクリル系粘着性ポリマー(B)のTgである。)
なお、重合体A-1はTgA=90℃であり、重合体B-1はTgB=-35℃である。
<動的弾性率測定>
50μm厚の粘着フィルム試料を0.8mm厚になるまで積層し、評価用粘着シートを得た。これを直径8mmの円状に打ち抜き、ずり粘弾性装置(アントンパール社製、Physica MCR-301)を用いて、-50℃から150℃まで2℃/minで昇温しながら、周波数1Hz、ひずみ0.1%で動的粘弾性を測定し、85℃のせん断貯蔵弾性率を読み取った。なお、測定には8mmφのパラレルプレートを使用した。
<ポリカーボネートに対する剥離強度試験>
粘着フィルム試料を易接着処理したPETフィルム(100μm)に転写して評価用の粘着シートを得た。被着体をポリカーボネート板(三菱ガス化学社製、ユーピロンNF-2000)とし、上記評価用の粘着シートを貼り合せ、卓上加圧脱泡装置TBR-200(千代田電気工業社製)を用いて、0.5MPa、50℃の条件下で20分間圧着した。その後、恒温槽付き引張り試験機ストログラフR型(東洋精機社製)を用いて、温度が85℃、剥離速度が300mm/minの条件で、JIS Z-0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて、粘着シートのT形剥離強度(N/25mm)を測定した。
<耐熱試験>
粘着フィルム試料の一方の面に易接着処理したPETフィルム(100μm)を貼り合わせ、他方の面にポリカーボネート板(三菱ガス化学製、ユーピロンNF-2000、1.5mm厚)を貼り合せた積層体を作製し、卓上加圧脱泡装置TBR-200(千代田電気工業社製)を用いて、0.5MPa、50℃の条件下で20分間圧着処理を行った。その後、上記積層体を105℃の送風乾燥機内に100時間置いて負荷を与えた。負荷後の積層体の外観(発泡の有無)を光学顕微鏡M205C(ライカマイクロシステムズ社製)及び目視で確認し、以下の基準に従って評価した。
(発泡の有無:耐発泡性)
○:発泡なし
△:100μm以下の微細な気泡が発生
×:100μmより大きな気泡が発生
<耐湿熱試験>
粘着フィルム試料の一方の面に易接着処理したPETフィルム(100μm)を貼り合わせ、他方の面にポリカーボネート板(三菱ガス化学製、ユーピロンNF-2000、1.5mm厚)を貼り合せた積層体を作製し、卓上加圧脱泡装置TBR-200(千代田電気工業社製)を用いて、0.5MPa、50℃の条件下で20分間圧着処理を行った。その後、上記積層体を85℃、85%RHの恒温恒湿槽内に100時間置いて負荷を与えた。負荷後の積層体の外観(発泡の有無及び白化の程度)を光学顕微鏡M205C(ライカマイクロシステムズ社製)及び目視で確認し、以下の基準に従って評価した。
(発泡の有無:耐発泡性)
○:発泡なし
△:100μm以下の微細な気泡が発生
×:100μmより大きい気泡が発生
(白化の程度:耐白化性)
○:粘着剤層が透明な状態を維持
△:積層体の向こう側が透けて見える程度に白化
×:積層体の向こう側が透けて見えなくなる程度に白化
〔実施例2~6及び比較例1~4〕
実施例1において、ビニル重合体及びアクリル系粘着性ポリマーの種類及び配合割合を表3に示すように代えて粘着剤組成物を得ると共に、実施例1と同様の測定及び評価を行った。測定及び評価の結果を表3に示す。
Figure 0007358932000008
表3に示すように、実施例1~6はいずれも、熱及び湿熱条件下において発泡が抑制され、優れた耐発泡性を示した。これらの中でも、アクリル系粘着性ポリマー(B)としてMEAに由来する構成単位を有する重合体B-1~B-5を用いた実施例1~5は、湿熱負荷後の粘着剤層に白化が見られず、耐白化性にも優れていた。また、実施例1~6は、粘着剤層の透明性についても良好であった。
一方、ビニル重合体(A)を含まない比較例1、及びガラス転移温度が27℃であるビニル重合体を含有させた比較例3では、85℃での剥離強度がそれぞれ2.1N/25mm、5.1N/25mmと低く、高温条件下において十分な剥離強度を示さなかった。また、熱及び湿熱条件下において大きい気泡が発生するとともに白化が生じ、実施例1~6に比べて耐久性に劣っていた。表層部分のガラス転移温度と粘着剤組成物のガラス転移温度との差が5.6℃であった比較例2、及びアクリル系粘着性ポリマーの分子量が低い(Mw=522,000)重合体B-6を用いた比較例4についても同じく、高温条件下での剥離強度が低く、熱及び湿熱条件下における耐発泡性及び耐白化性に劣っていた。
10…面状発熱体、20…被着体、30…発熱体貼付品

Claims (7)

  1. 面状発熱体と被着体との接合又は前記面状発熱体の製造に使用される発熱体用粘着剤組成物であって、
    前記面状発熱体は、凍結の防止若しくは抑制、結露の防止若しくは抑制、融雪、除雪、防温、保湿又は加温の用途で用いられるものであり、
    ビニル重合体(A)と、アクリル系粘着性ポリマー(B)とを含有し、
    前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度TgAが30℃以上200℃以下であり、かつ数平均分子量が500以上10,000以下であり、
    前記アクリル系粘着性ポリマー(B)の重量平均分子量が550,000以上であり、
    前記ビニル重合体(A)の含有量が、前記アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対して、0.5~60質量部であり、
    前記発熱体用粘着剤組成物のガラス転移温度Tg1が-80℃以上10℃以下であり、
    前記発熱体用粘着剤組成物を用いてセパレータ上に形成された粘着剤層のX線光電子分光分析により得られる表層部分の組成に基づき計算される前記表層部分のガラス転移温度Tg2が、前記発熱体用粘着剤組成物のガラス転移温度Tg1よりも30℃以上高い、発熱体用粘着剤組成物。
  2. 前記発熱体用粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層の85℃におけるせん断貯蔵弾性率が、5.0×10Pa以上5.0×10Pa以下である、請求項1に記載の発熱体用粘着剤組成物。
  3. 前記アクリル系粘着性ポリマー(B)は、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物に由来する構造単位を、前記アクリル系粘着性ポリマー(B)が有する全構成単量体単位に対して30質量%以上含む、請求項1又は2に記載の発熱体用粘着剤組成物。
  4. 前記発熱体用粘着剤組成物を用いて100μm厚ポリエチレンテレフタレート基材上に形成された膜厚50μmの粘着剤層を備える粘着シートにおける、ポリカーボネート基材に対する85℃、剥離速度300mm/minの条件での剥離強度が15N/25mm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の発熱体用粘着剤組成物。
  5. 面状発熱体と被着体との接合又は前記面状発熱体の製造に使用される発熱体用粘着性製品であって、
    前記面状発熱体は、凍結の防止若しくは抑制、結露の防止若しくは抑制、融雪、除雪、防温、保湿又は加温の用途で用いられるものであり、
    支持体と、請求項1~4のいずれか一項に記載の発熱体用粘着剤組成物を用いて前記支持体上に形成された粘着剤層と、を備える、発熱体用粘着性製品。
  6. 請求項1~4のいずれか一項に記載の発熱体用粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を備え、凍結の防止若しくは抑制、結露の防止若しくは抑制、融雪、除雪、防温、保湿又は加温の用途で用いられる面状発熱体。
  7. 請求項1~4のいずれか一項に記載の発熱体用粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を介して、凍結の防止若しくは抑制、結露の防止若しくは抑制、融雪、除雪、防温、保湿又は加温の用途で用いられる面状発熱体と被着体とが接合された接合部を有する発熱体貼付品。
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