JP7358932B2 - 発熱体用粘着剤組成物及びその用途 - Google Patents
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Description
〔3〕前記アクリル系粘着性ポリマー(B)は、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物に由来する構造単位を、前記アクリル系粘着性ポリマー(B)が有する全構成単量体単位に対して30質量%以上含む、前記〔1〕又は〔2〕の発熱体用粘着剤組成物。
〔4〕前記発熱体用粘着剤組成物を用いて100μm厚ポリエチレンテレフタレート基材上に形成された膜厚50μmの粘着剤層を備える粘着シートにおける、ポリカーボネート基材に対する85℃、剥離速度300mm/minの条件での剥離強度が15N/25mm以上である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1の発熱体用粘着剤組成物。
〔6〕前記〔1〕~〔4〕のいずれか1の発熱体用粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を備える面状発熱体。
〔7〕前記〔1〕~〔4〕のいずれか1の発熱体用粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を介して、面状発熱体と被着体とが接合された接合部を有する発熱体貼付品。
本発明の発熱体用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」又は「本粘着剤組成物」ともいう)は、シート状又はフィルム状である薄型の面状発熱体と被着体とを接合するための粘着剤として、又は面状発熱体の製造において面状発熱体の構成部材どうしを接合するための粘着剤として使用される粘着剤組成物である。なお、面状発熱体は、「フィルムヒータ」や「ヒータシート」、「面状ヒータ」等とも称される。本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)とアクリル系粘着性ポリマー(B)とを含有する。以下に、本粘着剤組成物に配合されるビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマー(B)、及び必要に応じて配合される成分について詳しく説明する。
ビニル重合体(A)は、30℃以上200℃以下のガラス転移温度(TgA)を有する重合体である。ガラス転移温度TgAは、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60℃以上であり、より更に好ましくは70℃以上であり、特に好ましくは80℃以上である。また、ガラス転移温度TgAは、好ましくは180℃以下であり、より好ましくは150℃以下であり、更に好ましくは120℃以下であり、特に好ましくは110℃以下であり、特に好ましくは100℃以下である。ガラス転移温度TgAが30℃未満であると、本粘着剤組成物により粘着剤層を形成した場合に、粘着剤層の表層部分のガラス転移温度(第2のガラス転移温度Tg2)が十分に高くなりにくく、接着強度が十分でなく耐久性に劣る場合がある。原料単量体の制約等から、ガラス転移温度TgAは一般に200℃以下である。ガラス転移温度TgAの範囲は、好ましくは40℃以上180℃以下であり、より好ましくは50℃以上150℃以下であり、更に好ましくは70℃以上150℃以下である。
有機過酸化物として、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等を;
無機過酸化物として、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等を;
レドックス型重合開始剤として、例えば、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄等を還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、tert-ブチルハイドロパーオキサイド等を酸化剤としたもの等を、それぞれ挙げることができる。ビニル重合体(A)の製造に際し、重合開始剤の使用量は、重合に使用する全単量体100質量部に対して、例えば0.01~20質量部である。
アクリル系粘着性ポリマー(B)は、(メタ)アクリル酸エステル化合物を主要構造単位として含有する重合体であり、粘着性を有する。アクリル系粘着性ポリマー(B)のガラス転移温度TgBは、-80℃以上10℃以下の範囲にあることが好ましく、-80℃以上0℃以下の範囲にあることがより好ましく、-70℃以上-10℃以下の範囲にあることが更に好ましく、-60℃以上-20℃以下の範囲にあることが特に好ましい。ガラス転移温度TgBが-80℃以上であると、得られる粘着剤層の凝集力を十分に高くでき、接着性を十分に確保できる傾向がある。ガラス転移温度TgBが10℃以下であると、低温接着性と段差追従性とを十分に確保できる傾向がある。
本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)のみを含有していてもよいが、必要に応じて、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)以外の重合体や添加剤等の成分(以下、「その他の成分」ともいう)を粘着剤組成物に配合して使用してもよい。以下に、本粘着剤組成物に配合されてもよいその他の成分について説明する。
アクリル系粘着性ポリマー(B)が架橋性官能基を有する場合、当該架橋性官能基と反応可能な架橋剤を粘着剤組成物に配合してもよい。また、必要に応じて更に加熱処理等を施すことにより、用途に応じた粘着剤を得ることができる。
イソシアネート化合物として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等の芳香族イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)等の脂肪族イソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(H6XDI)、水添化MDI(H12MDI)等の脂環族イソシアネート化合物;ウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、オキサゾリドン変性体、イソシアネート基末端プレポリマー等の変性イソシアネート化合物等を;
アジリジン化合物として、1,6-ビス(1-アジリジニルカルボニルアミノ)ヘキサン、1,1’-(メチレン-ジ-p-フェニレン)ビス-3,3-アジリジル尿素、エチレンビス-(2-アジリジニルプロピオネート)、2,4,6-トリアジリジニル-1,3,5-トリアジン、トリメチロールプロパン-トリス(2-アジリジニルプロピオネート)等を、それぞれ挙げることができる。
本粘着剤組成物は、更に粘着付与剤を含有するものであってもよい。粘着付与剤としては、例えば、ロジンエステル、ガムロジン、トール油ロジン、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン、不均化ロジンエステル等のロジン誘導体;テルペンフェノール樹脂、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等を主体とするテルペン系樹脂;クマロン-インデン系樹脂;水素化芳香族コポリマー;フェノール系樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与剤は、1種単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。粘着付与剤の含有量は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の合計量に対して、好ましくは0~20質量%であり、より好ましくは0~10質量%であり、更に好ましくは0~5質量%である。
本粘着剤組成物には、可塑剤が配合されていてもよい。可塑剤としては、ジn-ブチルフタレート、ジn-オクチルフタレート、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート、ジn-デシルフタレート等のフタル酸エステル類;ビス(2-エチルヘキシル)アジペート、ジn-オクチルアジペート等のアジピン酸エステル類;セバシン酸エステル類;アゼライン酸エステル類;塩素化パラフィン等のパラフィン類;ポリプロピレングリコール等のグリコール類;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ変性植物油類;トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;トリフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル類;アジピン酸と1,3-ブチレングリコールとのエステル化物等のエステルオリゴマー類;低分子量ポリブテン、低分子量ポリイソブチレン、低分子量ポリイソプレン等の低分子量重合体;プロセスオイル、ナフテン系オイル等のオイル類等が挙げられる。可塑剤の含有量は、アクリル系粘着性ポリマー(B)の全量に対して、好ましくは0~20質量%であり、より好ましくは0~10質量%であり、更に好ましくは0~5質量%である。
本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)を、固形分換算で、アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対して、0.5質量部以上60質量部以下含有することが好ましい。ビニル重合体(A)の含有量の下限は、アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは1.5質量部以上であり、更に好ましくは2質量部以上である。また、ビニル重合体(A)の含有量の上限は、アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対して、好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは40質量部以下であり、更に好ましくは30質量部以下であり、特に好ましくは10質量部以下である。
本粘着剤組成物は、当該組成物全体のガラス転移温度(すなわち、第1のガラス転移温度Tg1)が-80℃以上10℃以下の範囲である。第1のガラス転移温度Tg1は、好ましくは-70℃以上であり、より好ましくは-60℃以上であり、更に好ましくは-40℃以上である。また、第1のガラス転移温度Tg1は、好ましくは0℃以下であり、より好ましくは-5℃以下である。第1のガラス転移温度Tg1の範囲は、好ましくは-70℃以上0℃以下であり、より好ましくは-60℃以上0℃以下であり、更に好ましくは-50℃以上-5℃以下である。第1のガラス転移温度Tg1が-80℃未満の場合は、得られる粘着剤層の凝集力が不十分となり、引張せん断接着強度等が悪化する傾向がある。また、第1のガラス転移温度Tg1が10℃を超える場合は、タック及び低温条件下での粘着力等が十分でない場合がある。なお、第1のガラス転移温度Tg1は、DSCにて、昇温速度10℃/min、窒素雰囲気を測定雰囲気として得た値である。測定条件の詳細は、後述する実施例の記載に従う。
本粘着剤組成物をセパレータ等の支持体上に塗布して粘着剤層を形成することにより、例えば粘着シートや粘着テープ等の粘着性製品を得ることができる。この粘着性製品は、高熱負荷及び高湿負荷の少なくともいずれかが付与された場合にも、被着体(例えば樹脂基材)からの浮きや剥がれが生じにくく、かつ透明性が高い上に変色しにくく、耐久性に優れている。このため、本粘着性製品は、面状発熱体と被着体とを接合する用途、あるいは面状発熱体を製造する際に面状発熱体の構成部材どうしを接合するための粘着剤としての用途に特に適している。
本粘着剤組成物に含有されるビニル重合体(A)は、アクリル系粘着性ポリマー(B)に対して適度な相溶性を有することが好ましい。この場合、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を含有する粘着剤組成物から得られる粘着剤層は、高い透明性を示すと共に、粘着剤層の表層部分にビニル重合体(A)が一部偏析し、表層部分におけるビニル重合体(A)の濃度を他の部分よりも高くすることが可能である。
WA=(ビニル重合体(A)の質量)/(ビニル重合体(A)とアクリル系粘着性ポリマー(B)との総量) …(7)
WB=1-WA …(8)
(式(7)及び式(8)中、WAは、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対するビニル重合体(A)の質量分率であり、WBは、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対するアクリル系粘着性ポリマー(B)の質量分率である。)
粘着剤層の表層部分におけるビニル重合体(A)の濃度が他の部分よりも高い構成とした場合、接着界面近傍の粘着剤層は比較的高いガラス転移温度を有する。これにより、粘着剤層は、高い剥離強度及び引張せん断接着強度を発揮することができる。本粘着剤組成物におけるビニル重合体(A)のこうした偏析挙動、及び粘着剤層の表層部分のTgと粘着剤組成物のTgとの差(すなわち、第2のガラス転移温度Tg2と第1のガラス転移温度Tg1との差)は、アクリル系粘着性ポリマー(B)に対するビニル重合体(A)の配合比、ビニル重合体(A)の単量体組成(極性)、分子量、Tg及びMw/Mn、並びにアクリル系粘着性ポリマー(B)の単量体組成等を適宜設定することにより調整することができる。
本粘着剤組成物により粘着剤層を形成した場合、第2のガラス転移温度Tg2は、第1のガラス転移温度Tg1よりも30℃以上高い値を示す。こうしたTgを有する粘着剤層によれば、高温下又は高温高湿下においても高い剥離強度及び引張せん断接着強度を発揮することができる。この場合、樹脂基材を被着体とし、本粘着剤組成物により得られた粘着剤層と樹脂基材とを貼り合わせた積層体を高温下又は高温高湿下に曝した場合にも、粘着剤層の浮きや剥がれを抑制でき、優れた耐発泡性を示すものとなる。
本粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層は、高温下においても剥離強度が高く、接着性に優れている。具体的には、本粘着剤組成物を用いて100μm厚ポリエチレンテレフタレート基材上に形成された膜厚50μmの粘着剤層を備える粘着シートにおける、ポリカーボネート基材に対する85℃、剥離速度300mm/minの条件での剥離強度は、好ましくは15N/25mm以上である。ポリカーボネート基材は、透明性が高く強靭性にも優れていることから、面状発熱体が貼り付けられる被着体の構成材料として使用されることが多い。したがって、本粘着剤組成物は、面状発熱体の貼付け用途の粘着剤として好適である。ポリカーボネート基材に対する85℃での剥離強度は、より好ましくは18N/25mm以上であり、更に好ましくは20N/25mm以上である。なお、本明細書において、ポリカーボネート基材に対する85℃での剥離強度は、温度85℃、剥離速度300mm/minの条件で、JIS Z-0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて測定された180度剥離強度(N/25mm)である。
本粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤層は透明性が高い。具体的には、当該粘着剤層において、透明性の指標であるヘイズ値は、粘着剤層をガラス基材に貼り付け、23℃、50%RH条件下で1日静置した後のヘイズメーターによる測定値が、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.2以下であることが更に好ましい。なお、ヘイズ値の測定方法の詳細は、後述する実施例の方法に従う。
本発明の面状発熱体は、本粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を備える。面状発熱体の一例について、図1及び図2を用いて説明する。なお、図1及び図2には、面状発熱体10が被着体20に貼り付けられた状態を示している。
本発明の発熱体貼付品は、本粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を介して、面状発熱体と被着体とが接合された接合部を有する。発熱体貼付品30は、例えば図1に示すように、面状発熱体10と被着体20とを備え、粘着剤層14を介して被着体20に面状発熱体10が貼り付けられている。
測定サンプル約1gを秤量(a)し、次いで、通風乾燥機155℃、30分間乾燥後の残分を測定(b)し、以下の式より算出した。測定には秤量ビンを使用した。その他の操作については、JIS K 0067-1992(化学製品の減量及び残分試験方法)に準拠した。
固形分(%)=(b/a)×100
分子量はGPCにて下記の条件で測定した。
GPC:東ソー(HLC-8120)、カラム:東ソー(TSKgel-Super MP-M×4本)、試料濃度:0.1%、流量:0.6ml/分、溶離液:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃、検出器:示差屈折計(RI)、標準物質:ポリスチレン
<ガラス転移温度(Tg)>
ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマー(B)及び粘着剤組成物のTgはDSCにて以下の条件で測定した。
DSC:TA Instrument製(Q-100)、昇温温度:10℃/分、測定雰囲気:窒素
重合体のモノマー組成は、モノマー仕込量とGC測定によるモノマー消費量とから算出した。GC測定は以下の条件にて実施した。
GC:Agilent Technolosies製(7820A GC System)、検出器:FID、カラム:100%ジメチルシロキサン(CP-Sil 5CB) カラム長さ30m、カラム内径0.32mm、算出方法:内部標準法
〔合成例1〕重合体A-1の合成
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(200質量部)とジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製、商品名「V-601」)(0.9質量部)からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」という)(165質量部)、メタクリル酸イソボルニル(以下、「IBXMA」という)(44質量部)、V-601(17質量部)、及び酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をヘキサン(6000質量部)に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A-1を得た。得られた重合体A-1のモノマー組成を仕込量とGC測定によるモノマー消費量とから計算した結果、MMA 80質量%及びIBXMA 20質量%からなり、分子量については、Mw7980、Mn4290、Mw/Mn1.86であった。Tgは90℃であった。重合体A-1の分析結果を表1に示す。
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(200質量部)を仕込み、窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(100質量部)、IBXMA(108質量部)、V-601(20.4質量部)、及び酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をメタノール(4800質量部)と蒸留水(1200質量部)からなる混合溶液に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A-2を得た。重合体A-2の分析結果を表1に示す。
内容積1リットルの4つ口フラスコに、MMA(50質量部)、酢酸ブチル(227質量部)、及びV-601(12質量部)からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(200質量部)、V-601(46質量部)、及び酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をヘキサン(6000質量部)に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A-3を得た。重合体A-3の分析結果を表1に示す。
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(221質量部)とV-601(3.2質量部)からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(34質量部)、メタクリル酸ブチル(以下、「BMA」という)(215質量部)、V-601(60質量部)、及び酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をメタノール(4200質量部)と蒸留水(1800質量部)からなる混合溶液に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A-4を得た。重合体A-4の分析結果を表1に示す。
〔合成例5〕重合体B-1の合成
内容積3リットルの4つ口フラスコに、アクリル酸メトキシエチル(以下、「MEA」という)(468質量部)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(以下、「HEA」という)(30質量部)、アクリル酸ブチル(以下、「BA」という)(102質量部)、酢酸エチル(890質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、商品名「V-65」)(0.11質量部)を仕込み、5時間重合した。固形分濃度が30%となるように酢酸エチルを追加して、重合体B-1の酢酸エチル溶液を得た。得られた重合体は、MEA78質量%、HEA5質量%、及びBA17質量部%からなり、Mn92000、Mw800000、Mw/Mn8.70であった。Tgは-35℃であった。重合体B-1の分析結果を表2に示す。
内容積3リットルの4つ口フラスコに、MEA(336質量部)、HEA(30質量部)、BA(144質量部)、アクリル酸メチル(以下、「MAという」)(90質量部)、及び酢酸エチル(890質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.17質量部)を仕込み、5時間重合した。固形分濃度が30%となるように酢酸エチルを追加して、重合体B-2の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-2の分析結果を表2に示す。
内容積3リットルの4つ口フラスコに、MEA(228質量部)、HEA(29質量部)、BA(143質量部)、MA(171質量部)、及び酢酸エチル(845質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.13質量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体B-4の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-4の分析結果を表2に示す。
内容積3リットルの4つ口フラスコに、MEA(258質量部)、HEA(30質量部)、BA(72質量部)、MA(240質量部)、及び酢酸エチル(890質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.14質量部)を仕込み、5時間重合した。固形分濃度が30%となるように酢酸エチルを追加して、重合体B-4の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-4の分析結果を表2に示す。
内容積3リットルの4つ口フラスコに、HEA(20質量部)、BA(140質量部)、MA(240質量部)、及び酢酸エチル(599質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.10質量部)を仕込み、5時間重合した。固形分濃度が30%となるように酢酸エチルを追加して、重合体B-5の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-5の分析結果を表2に示す。
内容積3リットルの4つ口フラスコに、MEA(413質量部)、HEA(26.5質量部)、BA(90質量部)、及び酢酸エチル(974質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.26質量部)を仕込み、5時間重合した。固形分濃度が30%となるように酢酸エチルを追加して、重合体B-6の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-6の分析結果を表2に示す。
〔実施例1〕
上記合成例1で得られた重合体A-1を酢酸エチルに溶解させ、固形分濃度30質量%の重合体A-1溶液を調製した。当該重合体A-1溶液(4質量部)、上記合成例5で得られた固形分濃度30質量%の重合体B-1溶液(100質量部)、架橋剤としてタケネートD-110N(三井化学社製イソシアネート系架橋剤、固形分濃度75質量%)(0.08質量部)を混合し、粘着剤組成物を得た。
粘着フィルム試料から粘着剤を0.2g採取し、粘着剤の初期質量を秤量した。その粘着剤を50gの酢酸エチルに浸漬し、室温で16時間静置した。その後、200メッシュ金網でろ過し、メッシュに残った残分を80℃で3時間乾燥し、秤量した。初期質量と残分の質量とから、下記式によりアクリル系粘着性ポリマーのゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(残分の質量)/[(初期質量)×(アクリル系粘着性ポリマー(B)の固形分)/(粘着剤組成物全体の固形分)]×100
粘着フィルム試料から一方の剥離フィルムを剥がし、ガラスプレート(1mm厚)に転写し、もう一方の剥離フィルムを剥がした。23℃、50%RH条件下で1日静置した後、日本電色社製ヘイズメーター(型式名「ヘイズメーターNDH2000」)を使用してヘイズ値を測定することにより透明性を評価した。
粘着フィルム試料のX線光電子分光装置(XPS)測定によるO1sとC1sのピーク面積比から、粘着剤層の表層部分におけるビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対する、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の各質量分率(wA及びwB)を算出し、FOXの式に基づき表層部分のTgを算出した。なお、XPS測定は以下の条件で測定した。
装置: アルバック・ファイ社製 PHI5000 VersaProbe
X線: Al-Kα (1486.6eV)
試料へのX線入射角: 0° (試料測定面の法線に対する角度)
光電子検出角: 45° (試料測定面の法線に対する角度)
XPS測定によるO1sとC1sのピーク面積比から算出される酸素原子数と炭素原子数の比は、下記式(1)の通り、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)からなる粘着剤組成物から形成された粘着剤層表層部の単位重量当りに存在する酸素原子数と炭素原子数の比で表される。
(O/C)A+B:粘着剤組成物を乾燥して得られた粘着剤層のXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比から算出される酸素原子数と炭素原子数の比
WA:ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対するビニル重合体(A)の質量分率
Mw-A:ビニル重合体(A)の全構成単量体単位の加重平均分子量
Mw-B:アクリル系粘着剤組成物(B)の全構成単量体単位の加重平均分子量
NO-A:ビニル重合体(A)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる酸素原子数
NO-B:アクリル系粘着性ポリマー(B)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる酸素原子数
NC-A:ビニル重合体(A)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる炭素原子数
NC-B:アクリル系粘着性ポリマー(B)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる炭素原子数
(O/C)A:ビニル重合体(A)を乾燥して得られたフィルムのXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比から算出される酸素原子数と炭素原子数の比
(O/C)B:アクリル系粘着性ポリマー(B)を乾燥して得られたフィルムのXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比から算出される酸素原子数と炭素原子数の比
WB:ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対するアクリル系粘着性ポリマー(B)の質量分率
(O/C)A+B:0.327(実測値)
(O/C)A:0.309(実測値)
(O/C)B:0.435(実測値)
NC-A:MMA1分子中の炭素原子数(5)、IBXMA1分子中の炭素原子数(14)及び組成比より、5×89.9(mol%)+14×10.1(mol%)=5.91
NC-B:MEA1分子中の炭素原子数(6)、BA1分子中の炭素原子数(7)、HEA1分子中の炭素原子数(5)及び組成比より、6×84.4(mol%)+7×10.1(mol%)+5×5.6(mol%)=6.05
Mw-A:MMAの分子量(100)、IBXMAの分子量(222)及び組成比より、100×89.9(mol%)+222×10.1(mol%)=112.3
Mw-B:MEAの分子量(130)、BAの分子量(128)、HEAの分子量(116)及び組成比より、130×84.4(mol%)+128×10.1(mol%)+116×5.6(mol%)=129.0
これらの値を上記式(4)に代入することによりWA=0.840が得られ、上記式(5)よりWB=0.160が得られた。
1/〔表層部分のTg〕(K)=WA/TgA+WB/TgB …(6)
(式(6)中、TgA:ビニル重合体(A)のTg、TgB:アクリル系粘着性ポリマー(B)のTgである。)
なお、重合体A-1はTgA=90℃であり、重合体B-1はTgB=-35℃である。
50μm厚の粘着フィルム試料を0.8mm厚になるまで積層し、評価用粘着シートを得た。これを直径8mmの円状に打ち抜き、ずり粘弾性装置(アントンパール社製、Physica MCR-301)を用いて、-50℃から150℃まで2℃/minで昇温しながら、周波数1Hz、ひずみ0.1%で動的粘弾性を測定し、85℃のせん断貯蔵弾性率を読み取った。なお、測定には8mmφのパラレルプレートを使用した。
粘着フィルム試料を易接着処理したPETフィルム(100μm)に転写して評価用の粘着シートを得た。被着体をポリカーボネート板(三菱ガス化学社製、ユーピロンNF-2000)とし、上記評価用の粘着シートを貼り合せ、卓上加圧脱泡装置TBR-200(千代田電気工業社製)を用いて、0.5MPa、50℃の条件下で20分間圧着した。その後、恒温槽付き引張り試験機ストログラフR型(東洋精機社製)を用いて、温度が85℃、剥離速度が300mm/minの条件で、JIS Z-0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて、粘着シートのT形剥離強度(N/25mm)を測定した。
粘着フィルム試料の一方の面に易接着処理したPETフィルム(100μm)を貼り合わせ、他方の面にポリカーボネート板(三菱ガス化学製、ユーピロンNF-2000、1.5mm厚)を貼り合せた積層体を作製し、卓上加圧脱泡装置TBR-200(千代田電気工業社製)を用いて、0.5MPa、50℃の条件下で20分間圧着処理を行った。その後、上記積層体を105℃の送風乾燥機内に100時間置いて負荷を与えた。負荷後の積層体の外観(発泡の有無)を光学顕微鏡M205C(ライカマイクロシステムズ社製)及び目視で確認し、以下の基準に従って評価した。
(発泡の有無:耐発泡性)
○:発泡なし
△:100μm以下の微細な気泡が発生
×:100μmより大きな気泡が発生
粘着フィルム試料の一方の面に易接着処理したPETフィルム(100μm)を貼り合わせ、他方の面にポリカーボネート板(三菱ガス化学製、ユーピロンNF-2000、1.5mm厚)を貼り合せた積層体を作製し、卓上加圧脱泡装置TBR-200(千代田電気工業社製)を用いて、0.5MPa、50℃の条件下で20分間圧着処理を行った。その後、上記積層体を85℃、85%RHの恒温恒湿槽内に100時間置いて負荷を与えた。負荷後の積層体の外観(発泡の有無及び白化の程度)を光学顕微鏡M205C(ライカマイクロシステムズ社製)及び目視で確認し、以下の基準に従って評価した。
(発泡の有無:耐発泡性)
○:発泡なし
△:100μm以下の微細な気泡が発生
×:100μmより大きい気泡が発生
(白化の程度:耐白化性)
○:粘着剤層が透明な状態を維持
△:積層体の向こう側が透けて見える程度に白化
×:積層体の向こう側が透けて見えなくなる程度に白化
実施例1において、ビニル重合体及びアクリル系粘着性ポリマーの種類及び配合割合を表3に示すように代えて粘着剤組成物を得ると共に、実施例1と同様の測定及び評価を行った。測定及び評価の結果を表3に示す。
Claims (7)
- 面状発熱体と被着体との接合又は前記面状発熱体の製造に使用される発熱体用粘着剤組成物であって、
前記面状発熱体は、凍結の防止若しくは抑制、結露の防止若しくは抑制、融雪、除雪、防温、保湿又は加温の用途で用いられるものであり、
ビニル重合体(A)と、アクリル系粘着性ポリマー(B)とを含有し、
前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度TgAが30℃以上200℃以下であり、かつ数平均分子量が500以上10,000以下であり、
前記アクリル系粘着性ポリマー(B)の重量平均分子量が550,000以上であり、
前記ビニル重合体(A)の含有量が、前記アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対して、0.5~60質量部であり、
前記発熱体用粘着剤組成物のガラス転移温度Tg1が-80℃以上10℃以下であり、
前記発熱体用粘着剤組成物を用いてセパレータ上に形成された粘着剤層のX線光電子分光分析により得られる表層部分の組成に基づき計算される前記表層部分のガラス転移温度Tg2が、前記発熱体用粘着剤組成物のガラス転移温度Tg1よりも30℃以上高い、発熱体用粘着剤組成物。 - 前記発熱体用粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層の85℃におけるせん断貯蔵弾性率が、5.0×104Pa以上5.0×105Pa以下である、請求項1に記載の発熱体用粘着剤組成物。
- 前記アクリル系粘着性ポリマー(B)は、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物に由来する構造単位を、前記アクリル系粘着性ポリマー(B)が有する全構成単量体単位に対して30質量%以上含む、請求項1又は2に記載の発熱体用粘着剤組成物。
- 前記発熱体用粘着剤組成物を用いて100μm厚ポリエチレンテレフタレート基材上に形成された膜厚50μmの粘着剤層を備える粘着シートにおける、ポリカーボネート基材に対する85℃、剥離速度300mm/minの条件での剥離強度が15N/25mm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の発熱体用粘着剤組成物。
- 面状発熱体と被着体との接合又は前記面状発熱体の製造に使用される発熱体用粘着性製品であって、
前記面状発熱体は、凍結の防止若しくは抑制、結露の防止若しくは抑制、融雪、除雪、防温、保湿又は加温の用途で用いられるものであり、
支持体と、請求項1~4のいずれか一項に記載の発熱体用粘着剤組成物を用いて前記支持体上に形成された粘着剤層と、を備える、発熱体用粘着性製品。 - 請求項1~4のいずれか一項に記載の発熱体用粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を備え、凍結の防止若しくは抑制、結露の防止若しくは抑制、融雪、除雪、防温、保湿又は加温の用途で用いられる面状発熱体。
- 請求項1~4のいずれか一項に記載の発熱体用粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を介して、凍結の防止若しくは抑制、結露の防止若しくは抑制、融雪、除雪、防温、保湿又は加温の用途で用いられる面状発熱体と被着体とが接合された接合部を有する発熱体貼付品。
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