本明細書は、高温条件下での接着性及び応力緩和性に優れ、耐久性の高い粘着剤層を有する加飾フィルム、並びに、これを備える加飾成形体に関している。
本粘着剤組成物は、一定のガラス転移温度と数平均分子量とを有するビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を含有し、ビニル重合体(A)を粘着剤層の表層へ偏析させることにより粘着剤層表層のガラス転移温度を制御することができる。本粘着剤組成物から得られる粘着剤層(以下、本粘着剤層ともいう)を用いることにより、高温条件下において、十分な耐熱性を発揮して、接着性の低下を抑制できる加飾フィルムを得ることができる。
なお、本粘着剤組成物で粘着剤層を形成する際の、ビニル重合体(A)の粘着剤層表層への偏析挙動は、特定のビニル重合体(A)とアクリル系粘着性ポリマー(B)とが完全には相溶しない一方、完全に相分離しないことに基づいている。好ましくは、ビニル重合体(A)がアクリル系粘着性ポリマー(B)よりも低極性である。
本粘着剤組成物は、上記の通り、アクリル系粘着性ポリマー(B)に対して完全には相溶しないビニル重合体(A)が用いられる。その際、粘着剤組成物におけるビニル重合体(A)の使用量を適宜調整することにより偏析の程度を調節することができる。ビニル重合体(A)の使用量が少なすぎると粘着剤層表層への偏析が不十分となり十分な効果が得られない場合がある。一方、ビニル重合体(A)の使用量が多すぎるとアクリル系粘着性ポリマー(B)と相分離する結果、粘着剤層の透明性や接着性能が低下する傾向がある。その他にも、ビニル重合体(A)のガラス転移温度や架橋剤量等が適宜調整され、それにより粘着剤層の表層部分のガラス転移温度が調節可能となっている。
さらに、本粘着剤組成物による粘着剤層は、高温条件下におけるフィルム基材の収縮に伴うずれ、剥がれ及び浮き等を抑制し、良好な高温耐久性を呈することができる。
本粘着剤組成物は、粘着剤層におけるビニル重合体(A)の偏析の結果、粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分の組成から計算されるTgが、粘着剤層全体のTgよりも30℃以上高くすることができる。これにより、粘着剤層の接着特性を制御して良好な接着強度を得ることができる。すなわち、粘着剤の表層で構成される接着界面近傍において相対的に高いTgを備えるため、従来にはない良好な接着性を呈することができる。さらに、高温下であっても粘着剤層のずれや剥がれを抑制でき、良好な耐久性を呈することができる。
以下、本明細書の開示について詳しく説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を含有するものである。当該ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマー(B)及びこれらを含有する粘着剤組成物の詳細について、以下に順次説明する。
〔ビニル重合体(A)〕
本明細書に開示するビニル重合体(A)は、30℃以上200℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する重合体とすることができる。Tgの下限は、40℃以上であってもよく、50℃以上であってもよく、60℃以上であってもよく、70℃以上であってもよい。Tgの上限は、180℃以下であってもよく、150℃以下であってもよく、120℃以下であってもよく、110℃以下であってもよい。また、Tgの範囲は、これらの上限及び下限を適宜組み合わせることができるが、例えば40℃以上180℃以下であり、60℃以上150℃以下であってもよい。本明細書において、示差走査熱量測定(DSC)により昇温速度10℃/minで測定した値をTgとして採用する。Tgが30℃未満であると、粘着剤層の表層部分のTgが十分に高くなりにくく、各種被着体への接着強度が十分でなく耐久性に劣る場合がある。また、原料単量体の制約等から、一般にTgが200℃を超えることはない。
ビニル重合体(A)を構成する単量体としては、ラジカル重合性を有する種々のビニル系不飽和化合物を用いることができ、例えば、(メタ)アクリル酸系化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、アルコキシル基含有不飽和化合物、シアノ基含有不飽和化合物、ニトリル基含有不飽和化合物、マレイミド系化合物等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、アクリル系粘着性ポリマーに対して適切な相溶性を得られることから、(メタ)アクリル酸系化合物を主体とすることが好ましい。ビニル重合体(A)の全単量体組成物における、(メタ)アクリル酸系化合物の具体的な使用量は、例えば10質量%以上100質量%以下の範囲であり、30質量%以上95質量%以下の範囲であってもよく、50質量%以上90質量%以下の範囲であってもよい。使用量の下限は、40質量%以上であってもよく、50質量%以上であってもよい。また、使用量の上限は、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよい。
(メタ)アクリル酸系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の脂肪族環系ビニル単量体;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香族環系ビニル重合体が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、比較的Tgを高く設定することができ、粘着シートの浮きや剥がれを抑制する効果が高く、オレフィン系の被着体への接着性が良好となる点から、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル及び(メタ)アクリル酸アダマンチル等の脂肪族環系ビニル単量体を用いることが好ましい。脂肪族環系ビニル単量体の具体的な使用量は、ビニル重合体(A)の全構成単量体に対して10質量%以上90質量%以下の範囲が好ましく、20質量%以上80質量%以下がより好ましく、30質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、β-メチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。芳香族ビニル化合物の具体的な使用量は、ビニル重合体(A)の全構成単量体に対して1質量%以上40質量%以下の範囲が好ましく、5質量%以上30質量%以下がより好ましく、5質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。
不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、桂皮酸、さらには、不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のモノアルキルエステル)等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
不飽和酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ヒドロキシル基含有不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルや、p-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、o-ヒドロキシスチレン、p-イソプロペニルフェノール、m-イソプロペニルフェノール、o-イソプロペニルフェノール等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミノ基含有不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2-(ジ-n-プロピルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2-ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ジ-n-プロピルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3-ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3-(ジ-n-プロピルアミノ)プロピル等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミド基含有不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルコキシル基含有不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(n-プロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(n-ブトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-(n-プロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(n-ブトキシ)プロピル等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シアノ基含有不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸1-シアノエチル、(メタ)アクリル酸2-シアノエチル、(メタ)アクリル酸1-シアノプロピル、(メタ)アクリル酸2-シアノプロピル、(メタ)アクリル酸3-シアノプロピル、(メタ)アクリル酸4-シアノブチル、(メタ)アクリル酸6-シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチル-6-シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸8-シアノオクチル等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ニトリル基含有不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、エタクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリル、α-イソプロピルアクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-フルオロアクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
マレイミド系化合物としては、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ドデシルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-メチルフェニル)マレイミド、N-(2、6-ジメチルフェニル)マレイミド、N-(2、6-ジエチルフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ナフチルマレイミド等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記化合物以外に、不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル、ビニルエステル化合物、ビニルエーテル化合物等を用いることもできる。不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステルとしては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のジアルキルエステルが挙げられる。ビニルエステル化合物としては、例えば、メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニル、桂皮酸ビニル等が挙げられる。上記ビニルエーテル化合物としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル-n-ブチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル等が挙げられる。
ビニル重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、500以上10,000以下とすることができる。Mnは、500以上7,000以下であってもよく、1,000以上5,000以下であってもよい。Mnが10,000を超えるとアクリル系粘着性ポリマー(B)との相溶性が悪くなる場合がある。一方、Mnが500未満の重合体を製造するには、重合開始剤や連鎖移動剤を多量に用いる必要性や、生産性の低下等の問題がある。
また、重量平均分子量(Mw)と上記(Mn)との比(Mw/Mn)は、良好な接着強度が得られやすいという観点から、3.0以下が好ましい。より好ましくは2.5以下であり、さらに好ましくは2.0以下であり、一層好ましくは1.8以下である。なお、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて得られた標準ポリスチレン換算値である。
ビニル重合体(A)は、その製造方法について特段の制約はないが、例えば、溶液重合法等の公知のラジカル重合方法を採用して上記単量体を重合することにより容易に得ることができる。溶液重合法による場合、有機溶剤及びビニル単量体原料を反応器に仕込み、有機過酸化物、アゾ系化合物等の熱重合開始剤を添加して、50~300℃に加熱して共重合することにより目的とするビニル重合体を得ることができる。当該ビニル重合体は、有機溶剤に溶解された溶液として用いてもよいし、加熱減圧処理等により溶剤を留去して用いてもよい。
単量体を含む各原料の仕込み方法は、すべての原料を一括して仕込むバッチ式の初期一括仕込みでもよく、少なくとも一つの原料を連続的に反応器中に供給するセミ連続仕込みでもよく、全原料を連続供給し、同時に反応器から連続的に生成樹脂を抜き出す連続重合方式でもよい。
溶液重合法に使用する有機溶剤としては、有機炭化水素系化合物が適当であり、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類等、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が例示され、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの有機溶剤の中では、ビニル系重合体をよく溶解し、精製しやすいように沸点が比較的低い、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトンが好ましい。
本明細書で使用する開始剤は、アゾ系化合物、有機過酸化物、無機過酸化物等を用いることができるが、特に限定されるものではない。公知の酸化剤及び還元剤からなるレドックス型重合開始剤を用いてもよい。また、公知の連鎖移動剤を併用することもできる。
アゾ系化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、アゾクメン、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスジメチルバレロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2-(tert-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,3-ビス[(tert-ブチルパーオキシ)-m-イソプロピル]ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ビス(tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
無機過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
レドックス型重合開始剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄等を還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、tert-ブチルハイドロパーオキサイド等を酸化剤としたものを用いることができる。
ビニル重合体(A)の分子量を調整するため、必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、エタンチオール、ブタンチオール、ドデカンチオール、ベンゼンチオール、トルエンチオール、α-トルエンチオール、フェネチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3-メルカプトプロパノール、チオグリセリン、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、α-メルカプトイソ酪酸、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸エチル、チオ酢酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、tert-テトラデシルメルカプタン等が挙げられる。
また、ビニル重合体(A)は、撹拌槽型反応器を使用し、180~350℃の温度範囲において連続重合することにより得ることもできる。この重合方法では、重合開始剤や連鎖移動剤を実質的に使用することなく比較的低分子量のビニル重合体を得ることができるため純度の高い重合体が得られ、後述する着色や臭気の点でも有利であるため好ましい。重合温度が180℃未満の場合には、重合反応に重合開始剤や多量の連鎖移動剤が必要となり、得られた共重合体は着色しやすく、また好ましくない臭気を発生する。一方、重合温度が350℃を超える場合には、重合反応中に分解反応が起こりやすく、得られる共重合体が着色するため、これを含む粘着剤組成物から得られる粘着剤層の透明性の低下が懸念される。さらに、このような重合方法によれば、分子量の分布範囲の小さいビニル重合体が得られる。なお、重合開始剤は随意に使用してもよいが、全単量体に対して約1質量%以下で使用するのが好ましい。
〔アクリル系粘着性ポリマー(B)〕
本明細書に開示するアクリル系粘着性ポリマー(B)は、(メタ)アクリル酸エステル類を主要構成単位として含有する重合体である。アクリル系粘着性ポリマー(B)は、ガラス転移温度(Tg)が、例えば-80℃以上10℃以下の範囲にある粘着性を有する重合体である。Tgの下限は、-70℃以上であってもよく、-60℃以上であってもよく、-50℃以上であってもよく、-40℃以上であってもよい。Tgの上限は、0℃以下であってもよく、-10℃以下であってもよく、-20℃以下であってもよく、-30℃以下であってもよい。また、Tgの範囲は、これらの上限及び下限を適宜組み合わせることができるが、例えば、-70℃以上0℃以下の範囲であり、また例えば-60℃以上-10℃以下であり、また例えば-50℃以上-20℃以下である。なお、Tgが-80℃以上であれば、十分な凝集力と良好な接着性を有する粘着剤が得られる。また、Tgが10℃以下であれば、良好な段差追随性を備えることができる。
さらに、アクリル系粘着性ポリマー(B)の重量平均分子量(Mw)は、十分な凝集力と良好な接着性とを発揮する観点から、好ましくは100,000以上である。Mwの下限値は、300,000以上であってもよく、400,000以上であってもよく、500,000以上であってもよい。また、Mwが600,000以上であると耐熱性がより向上する点で好ましく、700,000以上であってもよく、800,000以上であってもよく、900, 000以上であってもよく、1,000,000以上であってもよい。一方、Mwが大きすぎると、段差追随性が低下する傾向があり、製造上の扱いも困難となる場合がある。したがって、上限値は、例えば5,000,000以下である。上限値は3,000,000以下であってもよく、2,000,000以下であってもよく、1,000,000以下であってもよい。
また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、良好な接着強度が得られやすいという観点から、例えば6.0以下である。Mw/Mnは5.0以下であってもよく、4.7以下であってもよく、4.5以下であってもよく、4.0以下であってもよく、3.8以下であってもよく、3.6以下であってもよい。なお、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて得られた標準ポリスチレン換算値である。
アクリル系粘着性ポリマー(B)を構成する単量体としては、良好な粘着性を有するアクリル系共重合体が得られる点で炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び炭素数2~12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル等を挙げることができ、これらの内の1種又は2種以上を使用することができる。
炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられ、好ましい単量体としては(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル等が挙げられる。
炭素数2~12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸ブトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸ブトキシブチル等が挙げられる。
炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は炭素数2~12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの使用量は、特に限定するものではないが、良好な粘着性能が得られる傾向がある点で、その下限は、アクリル系共重合体の全構成単量体を基準にして、10質量%以上とすることができ、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよく、50質量%以上であってもよい。また、その上限は、100質量%以下であり、99質量%であってもよく、95質量%以下であってもよく、90質量%以下であってもよく、80%質量%以下であってもよい。使用量の範囲は、これらの上限及び下限を適宜組み合わせることで設定できるが、例えば10質量%以上100質量%以下であり、10質量%以上99質量%以下、20質量%以上95質量%以下、また例えば30質量%以上90質量%以下などとすることができる。10質量%以上であれば、良好な粘着力、初期接着力(タック)及び低温粘着性等を備える粘着剤組成物が得られる。
上記の内でも、炭素数1~3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができる。こうした(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることで、アクリル系粘着性ポリマー(B)のTg及び後述する粘着剤層の弾性率を向上させることができ、粘着剤層の耐熱性向上に有利である。好適には、炭素数1~2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、より好適には、(メタ)アクリル酸メチルである。
アクリル系粘着性ポリマー(B)は、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル以外にも、粘着性を損なわない範囲で、これらと共重合可能な他の単量体を使用することができる。
その他のビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族系ビニル単量体;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の脂肪族環系ビニル単量体;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル等の不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート及びポリエチレン-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体;アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシブチルアクリルアミド等のエチレン系不飽和カルボン酸アミド及びN-置換化合物;アリルアルコール等の不飽和アルコール;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。
中でも、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体を用いた場合、得られる粘着剤組成物は、例えばガラス、金属、ABS板等の被着体に対する接着強度が高くなる観点から好ましい。α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量は、アクリル系共重合体の全構成単量体を基準にして、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以上10質量%以下である。使用量が1質量%以上であれば被着体に対する接着力向上の効果が得られ、20質量%以下であれば、良好な接着性が保持される。
α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体は1種又は2種以上を使用してよいが、重合性の観点から、好ましくは(メタ)アクリル酸である。
その他にも、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基等の重合性官能基を分子内に2つ以上有する多官能重合性単量体を用いてもよい。多官能重合性単量体は、いわゆる架橋剤としても作用し、これを使用することにより本粘着性ポリマーに架橋構造を形成することができる。
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性体のトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
多官能アルケニル化合物としては、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、ポリアリルサッカロース等の多官能アリルエーテル化合物;ジアリルフタレート等の多官能アリル化合物;メチレンビスアクリルアミド、ヒドロキシエチレンビスアクリルアミド等のビスアミド類;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物等を挙げることができる。
(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸イソプロペニル、(メタ)アクリル酸ブテニル、(メタ)アクリル酸ペンテニル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル等を挙げることができる。
アクリル系粘着性ポリマー(B)もまた、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知のラジカル重合法により得ることができる。
この他、アクリル系粘着性ポリマー(B)は、アクリル系粘着性ポリマーシロップからも得ることができる。この場合、アクリル系粘着性ポリマーシロップは、アクリル系粘着性ポリマー(B)の一部であるポリマー成分と、アクリル系粘着性ポリマー(B)の残余を構成する(メタ)アクリル系モノマーとを含有することができる。アクリル系粘着性ポリマーシロップに熱または活性エネルギー線等のエネルギーを加え、当該シロップに含まれるモノマー成分を重合することにより、アクリル系粘着性ポリマー(B)が得られる。
〔粘着剤組成物〕
本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を含有することができる。ビニル重合体(A)は、アクリル系粘着性ポリマー(B)に対して適度な相溶性を有する。このため、これらを含む粘着剤組成物から得られる粘着剤層は良好な透明性を示すと共に、粘着剤層中においてビニル重合体(A)が一部偏析し、その表層におけるビニル重合体(A)の濃度が他の部分よりも高くなる場合がある。
このように、粘着剤層の表層におけるビニル重合体(A)の濃度が他より高くなる構成を取った場合、接着界面近傍の粘着剤層は比較的高いTgを有するため、高温条件下でも良好な接着性を発揮することができる。さらに、粘着剤層全体としてはTgが低く十分に柔軟であるため、加飾フィルムに適用した場合には、例えばフィルム基材が熱膨張収縮した場合であってもこれに追従し、応力を好適に緩和することができる。
本粘着剤組成物におけるビニル重合体(A)のこうした偏析挙動のほか、後述する粘着剤層の表層と粘着剤層全体のTgの差は、アクリル系粘着性ポリマー(B)に対するビニル重合体(A)の配合比、ビニル重合体(A)の単量体組成(極性)や分子量のほか、Tg、Mw/Mn等を適宜設定することにより調整することができる。
本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)を、固形分換算で、アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対して0.5質量部以上60質量部以下含有することができる。好ましい含有量の下限は1質量部以上であり、より好ましくは3質量部以上であり、さらに好ましくは4質量部以上である。また、好ましい含有量の上限は50質量部以下であり、より好ましくは40質量部以下であり、さらに好ましくは30質量部以下である。また、好ましい含有量の範囲は1質量部以上40質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上30質量部以下である。ビニル重合体(A)の使用量が0.5質量部未満の場合、粘着剤層におけるビニル重合体(A)の偏析が不十分であり、特に高温接着性において満足する結果が得られないことがある。一方、60質量部を超えると、ビニル重合体(A)が過度に偏析する結果、段差追随性並びにタックを含む接着性が不十分となる場合がある。また、アクリル系粘着性ポリマー(B)と相分離し、粘着剤層の透明性が低下する場合がある。
〔架橋剤〕
本粘着剤組成物は、架橋剤を含有することができる。架橋剤は、必ずしも必要ではないが、意図する接着特性のほか、本粘着剤組成物の形態、例えば、エマルジョン形態であるか溶液形態であるか等にも応じて、その添加が検討される。架橋剤を含有することで、本粘着剤組成物から得られる粘着剤層の凝集力や接着力を調整し、さらに、高温高湿下での接着性や曲面への接着性を付与したりすることができる。架橋剤としては、エポキシ基を2つ以上有するエポキシ化合物、イソシアネート基を2つ以上有するイソシアネート化合物、アジリジニル基を2つ以上有するアジリジン化合物、オキサゾリン基を有するオキサゾリン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物等が挙げられる。これらのうち、アジリジン化合物、エポキシ化合物及びイソシアネート化合物を用いることが好ましい。
アジリジン化合物としては、例えば、1,6-ビス(1-アジリジニルカルボニルアミノ)ヘキサン、1,1’-(メチレン-ジ-p-フェニレン)ビス-3,3-アジリジル尿素、1,1’-(ヘキサメチレン)ビス-3,3-アジリジル尿素、エチレンビス-(2-アジリジニルプロピオネート)、トリス(1-アジリジニル)ホスフィンオキサイド、2,4,6-トリアジリジニル-1,3,5-トリアジン、トリメチロールプロパン-トリス-(2-アジリジニルプロピオネート)等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAエピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルキシレンジアミン、N ,N ,N ' ,N '- テトラグリシジル- m - キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジル化合物が挙げられる。
イソシアネート化合物としては、好ましくは、イソシアネート基を2つ以上有する化合物が用いられる。上記イソシアネート化合物としては、芳香族系、脂肪族系、脂環族系の各種イソシアネート化合物、さらには、これらのイソシアネート化合物の変性物(プレポリマー等)を用いることができる。
芳香族イソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。脂肪族イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)、リシントリイソシアネート(LTI)等が挙げられる。脂環族イソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(H6XDI)、水添化MDI(H12MDI)等が挙げられる。また、変性イソシアネートとしては、上記イソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビューレット変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、オキサゾリドン変性体、イソシアネート基末端プレポリマー等が挙げられる。
架橋剤の含有量は、アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上10質量部以下とすることができる。より好ましい下限は0.03質量部以上、さらに好ましくは0.05質量部以上である。また、より好ましい上限は5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。また、より好ましい範囲は0.03質量部以上5量部以下、さらに好ましい範囲は0.05質量部以上2質量部以下である。
〔本粘着剤組成物より形成される粘着剤層全体のTg(第1のTg)〕
本粘着剤組成物より形成される粘着剤層(本粘着剤層)全体のガラス転移温度(Tg)、すなわち、第1のTgは、-80℃以上10℃以下の範囲とすることができる。Tgの下限は、-70℃以上であってもよく、-60℃以上であってもよく、-50℃以上であってもよく、-40℃以上であってもよい。また、Tgの上限は、0℃以下であってもよく、-10℃以下であってもよく、-20℃以下であってもよく、-30℃以下であってもよい。また、Tgの範囲は、これらの上限及び下限を適宜組み合わせることができるが、例えば、-70℃以上0℃以下の範囲であり、また例えば-60℃以上-10℃以下であり、また例えば-50℃以上-20℃以下である。第1のTgが-80℃未満の場合は、得られる粘着剤層の凝集力が不十分となり、曲面接着性等が悪化する傾向があり、10℃を超える場合は、段差追随性及び低温条件下での粘着力等が十分でない場合がある。なお、本粘着剤組成物のTgは、DSCにて、昇温速度10℃/min、窒素雰囲気を測定雰囲気として得ることができる。
〔粘着剤層の表層部分の組成から計算されるTg(第2のTg)〕
本粘着剤層の第2のTg、すなわち、本粘着剤組成物をセパレータに塗工後、乾燥又は活性エネルギー線の照射により粘着剤層を得た際に、当該粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分の組成から計算されるTgは、X線光電子分光測定(XPS)から得られるビニル重合体(A)とアクリル系粘着性ポリマー(B)との組成比率から、計算によって求められ、粘着剤層の表面から該5nm程度の深さまでの表層を形成する組成物のTgとして捉えることができる。測定方法の詳細は、後述する実施例に記載の操作に従うことができる。
第2のTgは、特に限定されないが、0℃以上であることが好ましい。第2のTgが0℃以上であることで、以下に説明するTg差を得られ易くなり、この結果、曲面接着性とともに被着体の高温接着性及び耐久性を確保できる。第2のTgはより好ましくは10℃以上であり、さらに好ましくは30℃以上であり、なお好ましくは40℃以上であり、一層好ましくは50℃以上であり、より一層好ましくは60℃以上である。なお、第2のTgは、ビニル重合体(A)のTgや配合比等によって適宜調節することができる。
〔粘着剤層全体のTg(第1のTg)と粘着剤層の表層部分の組成から計算されるTg(第2のTg)の差〕
本粘着剤組成物は、第2のTg(粘着剤層の表層部分の組成から計算されるTg)が、第1のTg(粘着剤層全体のTg)よりも30℃以上高いものとなることが好ましい。こうしたTg組成を有する粘着剤層によれば、従来の一般的な粘着剤による粘着剤層が高温になればなるほど接着性が低下するのに対し、高温での高い接着性(被着体に対する剥離強度)や高い曲面接着性を発揮することができる。
さらに、第2のTgが第1のTgよりも30℃以上高いものである場合、本粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備えた加飾フィルムは、曲面や凹凸部を有する複雑な形状に追従し、良好な接着性を示す。また、例えば、高温条件下におけるフィルム基材の収縮が生じた場合等であっても、これに伴うずれ、剥がれ又は浮き等の外観不良を抑制し、優れた耐久性が発揮される。
第2のTgは、第1のTgよりも、好ましくは40℃以上高く、より好ましくは50℃以上高く、さらに好ましくは60℃以上高く、なお好ましくは65℃以上高く、70℃以上高いことが一層好ましい。第1のTgに対する第2のTgの高さの上限は特に制限されるものではないが、第1のTg及び第2のTgが取り得る値から280℃が限度であり、一般的に200℃以下である。
〔粘着剤層の表層部分におけるビニル重合体(A)とアクリル系粘着性ポリマー(B)の総質量に対するビニル重合体(A)の質量分率(A/A+B)〕
第2のTgの測定に際しては、本粘着剤層の表層のX線光電子分光分析よる組成分析を行うが、その際に、表層におけるビニル重合体(A)の質量分率を求めることができる。この質量分率を、本粘着剤層の表層部分におけるビニル重合体(A)の偏析状態の指標とすることができる。
例えば、質量分率は、55%以上95%以下であることが好ましい。この範囲であると、ビニル重合体(A)の表層部分への偏析が生じており、高温高湿下においても曲面接着性と耐久性を得ることができる。より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは65%以上であり、なお好ましくは70%以上であり、一層好ましくは75%以上であり、より一層好ましくは80%以上である。また、質量分率は、90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましい。
〔貯蔵弾性率(G’)〕
本粘着剤層は、特に高温環境下における耐久性の観点から、90℃における貯蔵弾性率(G’)が6.0×104Pa以上であることが好ましい。貯蔵弾性率は、好ましくは7.0×104Pa以上であり、より好ましくは10.0×104Pa以上であり、さらに好ましくは13.0×104Pa以上であり、一層好ましくは15.0×104Pa以上である。貯蔵弾性率の上限は特に制限されるものではないが、例えば100.0×104Pa以下であり、50.0×104Pa以下であってもよい。
なお、当業者であれば、アクリル系粘着性ポリマー(B)の組成及び分子量等を調整することにより上記貯蔵弾性率を調整することができる。各種接着性能に優れる粘着剤層が得られる点で、アクリル系粘着性ポリマー(B)の構成単量体として炭素数1~3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用することにより、貯蔵弾性率を調整することが好ましい。
貯蔵弾性率(G’)は、90℃条件下、膜厚0.5~1.0mmの本粘着剤層のずり粘弾性を測定することにより得ることができる。粘弾性測定は、例えば、Physica MCR-301(アントンパール社製)を用いて、昇温速度2℃/分、周波数1Hz、ひずみ0.1%の条件で動的粘弾性を測定することにより得ることができる。詳細は、後述する実施例に記載の方法を採用することができる。
〔接着性(剥離強度)〕
本粘着剤組成物は、当該粘着剤組成物からなる膜厚50μmの粘着剤層を100μ厚ポリエチレンテレフタレートフィルム基材に備えた粘着シートについて、85℃、剥離速度300mm/minにおけるABS板に対する接着強度が、5.0N/25mm以上であることが好ましい。85℃という高温条件下での当該接着強度を5.0N/25mm以上とすることにより、ABS板に対して、高温条件下における粘着力が十分高いことから、粘着シートの浮きや剥がれの防止、良好な接着性を確保することができる。より好ましくは10N/25mm以上であり、さらに好ましくは15N/25mm以上であり、一層好ましくは25N/25mm以上であり、より一層好ましくは30N/25mm以上であり、なお一層好ましくは35N/25mm以上である。
ここで、上記粘着剤層(粘着シート)を作製するに当たっては、粘着剤組成物をポリエステルフィルム基材に直接塗工し、乾燥すること若しくは重合開始剤を作用させた重合硬化により粘着シートを得る方法、又は、一旦離型紙等に塗工し、粘着剤層を形成した後、ポリエステルフィルム基材に転写する方法のいずれの方法を採用してもよい。なお、乾燥は常温で行っても構わないが、生産性等の観点から、通常は、乾燥機を用いて40~150℃の加熱条件下にて数秒間から数十分間の時間をかけて乾燥させる方法が一般的である。より具体的には、本粘着剤組成物をPETフィルム製セパレータに対して乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布した後、80℃、4分間乾燥することで、溶媒を除去するとともに必要に応じて架橋反応をさせ、前記セパレータとは剥離力の異なる厚さ38μmのPET製セパレータを貼りあわせて、40℃で5日間静置し、両面セパレータ付きの剥離強度測定用の粘着フィルム試料を得ることができる。
剥離強度の測定にあたっては、さらに、この粘着フィルム試料を易接着処理したPETフィルム(100μm)に転写して評価用の粘着シートを得て、ABS板(TP技研製、2mm厚)に粘着シートを貼り合わせ、卓上加圧脱泡装置TBR-200(千代田電気工業社製)を用いて0.5MPa、50℃の条件下で20分間圧着した後、例えば、恒温槽付き引張り試験機ストログラフR型(東洋精機社製)等を用いて、85℃の条件で、JIS Z-0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて粘着シートの180度剥離強度を測定し、接着強度とすることができる。
本粘着剤組成物による粘着剤層は、被着体としてのABSに対して高温での高い接着性を有しているが、こうした特性は、粘着剤層のTg組成(分布)に基づくものであるため、被着体の材料の種類を問わないで、高温接着性を備えることができる。
〔透明性(ヘイズ値)〕
本粘着剤組成物から得られる粘着剤層の透明性を評価する指標として、ヘイズ値を用いることができる。本粘着剤組成物から得られる粘着剤層は、上述したように、ビニル重合体(A)がアクリル系粘着性ポリマー(B)に対して適度な相溶性を有するため、これらを含む粘着剤層は、良好な透明性を示す。
ヘイズ値は、例えば、以下の方法で評価することができる。すなわち、本粘着剤組成物による粘着フィルム試料から一方のセパレータを剥がし、ガラスプレートに転写し、他方のセパレータを剥がした後、23℃、50%RH条件下で1日静置し、ヘイズメーターを使用してヘイズ値を測定する。このヘイズ値が低いほど透明性が良好であると評価することができる。好ましいヘイズ値は2.0以下である。ヘイズ値が2.0以下であると、一定の好ましい透明性があるといえる。より好ましいヘイズ値は1.6以下であり、さらに好ましくは1.4以下であり、一層好ましくは1.0以下である。
本粘着剤組成物は、タッキファイヤーとしてのビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)以外にも必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、難燃剤、防かび剤、シランカップリング剤、充填剤、着色剤等の添加剤を含有した組成物とすることもできる。
粘着付与剤としては、ロジンエステル、ガムロジン、トール油ロジン、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン、不均化ロジンエステル等のロジン誘導体;テルペンフェノール樹脂、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等を主体とするテルペン系樹脂;(水添)石油樹脂;クマロン-インデン系樹脂;水素化芳香族コポリマー;スチレン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン系樹脂;(メタ)アクリル系重合体等が挙げられる。
可塑剤としては、ジn-ブチルフタレート、ジn-オクチルフタレート、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート、ジn-デシルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ビス(2-エチルヘキシル)アジペート、ジn-オクチルアジペート等のアジピン酸エステル類;ビス(2-エチルヘキシル)セバケート、ジn-ブチルセバケート等のセバシン酸エステル類;ビス(2-エチルヘキシル)アゼレート等のアゼライン酸エステル類;塩素化パラフィン等のパラフィン類;ポリプロピレングリコール等のグリコール類;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ変性植物油類;トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;トリフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル類;アジピン酸と1,3-ブチレングリコールとのエステル化物等のエステルオリゴマー類;低分子量ポリブテン、低分子量ポリイソブチレン、低分子量ポリイソプレン等の低分子量重合体;プロセスオイル、ナフテン系オイル等のオイル類等が挙げられる。
酸化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、トコフェロール類等のフェノール系酸化防止剤;ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、ステアリル3,3’-チオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤;トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン、ビス(2-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-ベンゾイルフェニル)メタン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤;ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、[2,2’-チオビス(4-tert-オクチルフェノラート)]-n-ブチルアミンニッケル、ニッケルコンプレックス-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル-リン酸モノエチレート、ニッケル-ジブチルジチオカルバメート等のニッケル系紫外線安定剤等が挙げられる。
老化防止剤としては、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン、1-(N-フェニルアミノ)-ナフタレン、スチレン化ジフェニルアミン、ジアルキルジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、モノ(α-メチルベンジル)フェノール、ジ(α-メチルベンジル)フェノール、トリ(α-メチルベンジル)フェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-アミルハイドロキノン、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩、2-メルカプトメチルベンズイミダゾール、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジステアリル等が挙げられる。
難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、ヘキサブロモベンゼン、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、デカブロモジフェニルオキサイド、含ハロゲンポリフォスフェート等のハロゲン系難燃剤;リン酸アンモニウム、トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリス(β-クロロエチル)ホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、酸性リン酸エステル、含窒素リン化合物等のリン系難燃剤;赤燐、酸化スズ、三酸化アンチモン、水酸化ジルコニウム、メタホウ酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤;ポリ(ジメトキシシロキサン)、ポリ(ジエトキシシロキサン)、ポリ(ジフェノキシシロキサン)、ポリ(メトキシフェノキシシロキサン)、メチルシリケート、エチルシリケート、フェニルシリケートのようなシロキサン系難燃剤等が挙げられる。
防かび剤としては、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、トリハロアリル、トリアゾール、有機窒素硫黄化合物等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、マイカ、タルク等の無機粉末充填剤;ガラス繊維、有機補強用繊維等の繊維状充填剤等が挙げられる。
本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を含むものであればその形態に特段の制約はない。例えば、酢酸エチル等の有機溶剤に溶解した溶剤型粘着剤組成物の形態として用いてもよいし、水媒体中にアクリル系粘着性ポリマー及び粘着付与剤が分散したエマルション型粘着剤組成物の形態として用いてもよい。溶液型粘着剤組成物及びエマルション型粘着剤組成物の場合、用いられる有機溶剤または水等の媒体は、粘着剤組成物の総量100質量部の内、通常20~95質量部である。
エマルション型粘着剤として用いる場合には、安定剤が配合されてなるものとすることができる。この安定剤としては、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ジブチルスズジラウリン酸鉛、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト等の塩化ビニル用安定剤;ジ-n-オクチルスズビス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)塩、ジ-n-オクチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジ-n-オクチルスズジラウリン酸塩、ジ-n-オクチルスズマレイン酸エステル塩、ジ-n-ブチルスズビスマレイン酸エステル塩、ジ-n-ブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジ-n-ブチルスズビスオクチルチオグリコールエステル塩、ジ-n-ブチルスズβ-メルカプトプロピオン酸塩ポリマー、ジ-n-ブチルスズジラウレート、ジ-n-メチルスズビス(イソオクチルメルカプトアセテート)塩、ポリ(チオビス-n-ブチルスズサルファイド)、モノオクチルスズトリス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)、ジブチルスズマレエート、ジ-n-ブチルスズマレートエステル・カルボキシレート、およびジ-n-ブチルスズマレートエステル・メルカプチド等の有機スズ系安定剤;三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜硫酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、ケイ酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉛等の鉛系安定剤;カドミウム系石けん、亜鉛系石けん、バリウム系石けん、鉛系石けん、複合型金属石けん、ステアリン酸カルシウム等の金属石けん系安定剤等が挙げられる。
その他にも、本粘着剤組成物は、上記ビニル重合体(A)及び上記アクリル系粘着性ポリマー(B)以外に、単官能及び/又は多官能の(メタ)アクリル酸系単量体、並びに光重合開始剤等を含む組成物とすることにより、紫外線等の活性エネルギー線により硬化するいわゆるシロップ型の光硬化型粘着剤組成物の形態として用いてもよい。
光硬化型粘着剤組成物の場合、当該組成物中は有機溶剤等を含んでも良いが、一般的には溶剤類を含まない無溶剤型として用いられる。
単官能(メタ)アクリル酸系単量体としては、炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(メタ)アクリル酸等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能(メタ)アクリル酸系単量体としては、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。この他にも、ポリウレタン(メタ)アクリレート及びポリイソプレン系(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(マクロモノマー)を使用することもできる。ポリイソプレン系(メタ)アクリレートの具体的な化合物としては、例えば、イソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2-ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物等が該当する。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤としては、ベンゾインとそのアルキルエーテル類、アセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、ベンゾフェノン類、キサントン類、アシルホスフィンオキシド類、α-ジケトン類等が挙げられる。また、活性エネルギー線による感度を向上させるため、光増感剤を併用することもできる。光増感剤としては、安息香酸系及びアミン系光増感剤等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。光開始剤及び光増感剤の使用量は、単官能及び/又は多官能の(メタ)アクリル酸系単量体100質量部に対して0.01~10質量部が好ましい。
さらに、本粘着剤組成物は、上記にて説明した光硬化型粘着剤組成物以外にも上記ビニル重合体(A)、単官能及び/又は多官能の(メタ)アクリル酸系単量体、並びに光重合開始剤を含む組成物による光硬化型接着剤組成物としても使用することができる。当該光硬化型接着剤組成物には、必要に応じて上記アクリル系粘着性ポリマー(B)を混合することができる。
〔粘着剤組成物の製造〕
本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を規定量含むものであればその混合方法に特段の制約はない。例えば、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を混合して本粘着剤組成物を得てもよいし、ビニル重合体(A)の存在下にアクリル系粘着性ポリマー(B)を重合することにより本粘着剤組成物を得てもよい。
本粘着剤組成物は、粘着剤層形成時の粘着剤層全体のTg(第1のTg)及び粘着剤層の表層のTg(第2のTg)を調節して得ることができる。すなわち、当業者であれば、最終的に得ようとする粘着剤層の接着性とを実現するために、第1のTg、第2のTg及びこれらの温度差を目的として、本明細書の教示に基づいてビニル重合体(A)及びアクリル系粘着ポリマー(B)等を適宜選択し配合して本粘着剤組成物を得ることができる。
本粘着剤組成物は、例えば、ビニル重合体(A)を酢酸エチル等の溶剤に溶解して重合体溶液を調製するとともに、この重合体溶液に、アクリル系粘着性ポリマー(B)の重合体溶液を混合し、さらに、必要に応じて架橋剤を混合して製造することができる。
〔加飾フィルム〕
本粘着剤層は、加飾フィルムの粘着剤層を構成することができる。本粘着剤層を備える加飾フィルム(以後、本加飾フィルムともいう)は、高温条件下において高い接着性を示すとともに、十分な応力緩和性を備えるため、優れた耐久性を発揮することができる。
すなわち、本加飾フィルムが備える粘着剤層は、本粘着剤組成物に由来する組成、粘着剤層全体の第1のTg、粘着剤層の表層部分の組成から計算される第2のTg、これらの温度差を備えることができる。さらに好適には、既述の剥離強度を備えることができる。
本加飾フィルムは、上述した粘着剤層に加え、加飾層、基材層を備えることができる。係る構成を有する加飾フィルムは、成形体に貼合して加飾成形体を得る場合(ラミネート方式)に好適に用いることができる。
基材層は、加飾フィルムが成形体へと加飾された後は、後述する加飾成形体の最外層に位置し、加飾成形体の保護層としての機能を果たすものである。基材層を構成する材料は、柔軟性を有する材料であればよく、プラスチックが好ましい。より好ましくは、熱可塑性プラスチックである。熱可塑性プラスチックとしては、特に制限されるものではないが、塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂等が挙げられる。これらのうち、基材層に用いる材料としては、PVC樹脂、ポリエステル樹脂及びABS樹脂が好ましい。
基材層の厚さは、好ましくは25μm~500μm、より好ましくは50μm~400μm、さらに好ましくは100~300μmである。基材層の厚さが上記範囲内であれば、加飾成形体を射出成形法(インサート成形法ともいう)、真空成形法、真空圧空成形法等により製造する際に、加工成形性、形状追従性及び取扱い性が良好となる。
加飾層は、加飾フィルムの意匠性を付与するために設けられる層であり、テキスト、図形、模様及び商標等の図柄を印刷等により形成したものである。加飾層に形成される図柄は、印刷インクによるグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、及びインクジェット印刷等公知の印刷法により形成することができる。
加飾層の厚さは、好ましくは1~40μm、より好ましくは1~30μmである。加飾層の厚さが、上記範囲内であると、グラデーション等の複雑な意匠を表現するために十分な厚さを確保できる。
本加飾フィルムの意匠性を向上させる目的で、加飾フィルム表面に凹凸模様を付与してもよい。凹凸模様は、凹凸模様が施されたエンボスローラーを通すことで転写することができる。
本加飾フィルムの耐候性、耐薬品性、耐汚染性、摩耗性、電気絶縁性等を向上させる目的で、加飾フィルム最表面には保護層を備えることもできる。保護層は、前記性能を有する高分子材料等をコーティングしてもよいし、前記性能を有するフィルムを積層してもよい。
本加飾フィルムは、剥離層をさらに備えることもできる。剥離層は、意図しない接着を防止するものであり、加飾フィルムを成形体に接着する際には剥離される。剥離層を構成する材料は特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルム;グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙などの紙といった材料を用いることができる。これらの厚みは、10~400μm程度とすることができる。
上記の他、本加飾フィルムは、離型層を備えた剥離フィルムの当該離型層上に、ハードコート層(保護層)、加飾層及び粘着剤層を備えた構成とすることもできる。係る構成を有する加飾フィルムは、転写フィルムとして好適に用いることができ、ハードコート層から粘着剤層までを成形体に転写すること(転写方式)により加飾成形体を得ることができる。上記ラミネート方式の場合、加飾成形後、余ったフィルムをトリミングにより除去する必要があるが、転写方式ではトリミング処理が不要であるため、生産効率の点で有利である。
上記ハードコート層は、転写される前の状態ではタックフリーの状態であり、成形体に転写した後には、活性エネルギー線を照射すること等により硬化及び/又は架橋反応を行うことができる材料から構成されることが好ましい。ハードコート層を構成する材料としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有するポリマー若しくはオリゴマー、活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を適量照射して半硬化状態としたもの、又は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物にイソシアネート化合物及びポリオール樹脂等を配合して適度に架橋したもの等が挙げられる。
ハードコート層の厚みは特に制限されるものではないが、1~50μm程度とすることができ、好ましくは2~40μm程度である。
〔加飾成形体〕
本明細書は、本明細書に開示される加飾フィルムを備える加飾成形体(以下、本加飾成形体ともいう)を提供することができる。本加飾成形体は、本粘着剤組成物から得られる粘着剤層を備える加飾フィルムを備えるため、高温高湿下に曝されても浮きや剥がれが生じない、耐久性に優れるものである。
加飾フィルムが接着される成形体は、特に限定されるものではなく、例えば、家電製品、自動車内装品、雑貨品等の加飾フィルムを接着することが可能な物品等であればよい。
上記の通り、本加飾成形体の製造には、真空成形法、真空圧空成形法及び射出成形法等を用いることができる。真空成形法では、本加飾フィルムを加熱軟化しつつ展張し、本加飾フィルムの成形体側の空間を減圧することで、本加飾フィルムを成形体の表面形状に沿って成形しつつ接着する。真空圧空成形法では、真空成形法の成形工程後にさらに反対側の空間を加圧することにより、本加飾フィルムを成形体の表面形状に沿って成形しつつ接着する。射出成形法では、射出成形機の金型キャビティに本加飾フィルムをセットし、射出成形を行うことにより、本加飾フィルムを成形体の表面形状に沿って接着する。これらの方法により、本加飾成形体を得ることができる。
以下、本明細書の開示を具現化した具体例を示す。ただし、本明細書の開示は、以下の具体例に限定されるものではない。なお、以下の記載において「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味する。
本明細書における各種分析は、以下に記載の方法により実施した。
<固形分>
測定サンプル約1gを秤量(a)し、次いで、通風乾燥機155℃、30分間乾燥後の残分を測定(b)し、以下の式より算出した。測定には秤量ビンを使用した。その他の操作については、JIS K 0067-1992(化学製品の減量及び残分試験方法)に準拠した。
固形分(%)=(b/a)×100
<分子量測定>
分子量はGPCにて下記の条件で測定した。
GPC:東ソー(HLC-8120)
カラム:東ソー(TSKgel-Super MP-M×4本)
試料濃度:0.1%
流量:0.6ml/分
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折計(RI)
標準物質:ポリスチレン
<ガラス転移点(Tg)>
ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマー(B)及び粘着剤組成物のTgはDSCにて以下の条件で測定した。
DSC:TA Instrument製(Q-100)
昇温温度:10℃/分
測定雰囲気:窒素
<ポリマー組成>
ポリマー組成はモノマー仕込量とGC測定によるモノマー消費量から算出した。
GC:Agilent Technolosies製(7820A GC System)
検出器:FID
カラム:100%ジメチルシロキサン(CP-Sil 5CB) 長さ30m、内径0.32mm
算出方法:内部標準法
1.ビニル重合体の合成
合成例1(重合体A-1の合成)
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(200質量部)とV-601(0.9質量部)とからなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」という)(165質量部)、メタクリル酸イソボルニル(以下、「IBXMA」という)(44質量部)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製、商品名「V-601」)(17質量部)、酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をメタノール(4800質量部)、蒸留水(1200質量部)からなる混合溶液に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A-1を得た。重合体A-1の組成及び分析結果を表1に示す。得られた重合体A-1のポリマー組成は、仕込量とGC測定によるモノマー消費量から計算した結果、MMA 80質量%及びIBXMA 20質量%からなり、Mw6700、Mn4370、Mw/Mn1.53であった。Tgは108℃であった。重合体A-1の組成及び分析結果を表1に示す。
合成例2(重合体A-2の合成)
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(200質量部)、V-601(6.2質量部)からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(114質量部)、IBXMA(140質量部)、V-601(110質量部)、酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をメタノール(4800質量部)、蒸留水(1200質量部)からなる混合溶液に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A-2を得た。重合体A-2の組成及び分析結果を表1に示す。
合成例3(重合体A-3の合成)
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(280質量部)、V-601(0.3質量部)からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(233質量部)、IBXMA(26質量部)、V-601(5.1質量部)、酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をヘキサン(6000質量部)に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A-3を得た。重合体A-3の組成及び分析結果を表1に示す。
合成例4(重合体A-4の合成)
内容積1リットルの4つ口フラスコに、MMA(50質量部)、酢酸ブチル(227質量部)、V-601(12質量部)からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(200質量部)、V-601(46質量部)、酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をヘキサン(6000質量部)に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A-4を得た。重合体A-4の組成及び分析結果を表1に示す。
合成例5(重合体A-5の合成)
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(221質量部)、V-601(3.2質量部)からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(34質量部)、メタクリル酸ブチル(以下、「BMA」という)(215質量部)、V-601(60質量部)、酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をメタノール(4200質量部)、蒸留水(1800質量部)からなる混合溶液に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A-5を得た。重合体A-5の組成及び分析結果を表1に示す。
2.アクリル系粘着性ポリマーの合成
合成例6(重合体B-1の合成)
内容積3リットルの4つ口フラスコに、アクリル酸メトキシエチル(以下、「MEA」という)(413質量部)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(以下、「HEA」という)(27質量部)、アクリル酸ブチル(以下、「BA」という)(90質量部)、酢酸エチル(980質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、商品名「V-65」)(0.25質量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体B-1の酢酸エチル溶液を得た。得られた重合体は、MEA78質量%、HEA5質量%、BA17質量部%とからなり、Mw572000、Mn160000、Mw/Mn3.58であった。Tgは-35℃であった。重合体B-1の組成及び分析結果を表2に示す。
合成例7(重合体B-2の合成)
内容積3リットルの4つ口フラスコに、MEA(319質量部)、HEA(29質量部)、BA(137質量部)、アクリル酸メチル(以下、「MAという」)(86質量部)酢酸エチル(920質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.30量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体B-2の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-2の組成及び分析結果を表2に示す。
合成例8(重合体B-3の合成)
内容積3リットルの4つ口フラスコに、HEA(27質量部)、BA(192質量部)、MA(330質量部)、酢酸エチル(1200質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.23質量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体B-3の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-3の組成及び分析結果を表2に示す。
合成例9(重合体B-4の合成)
内容積3リットルの4つ口フラスコに、HEA(20質量部)、BA(140質量部)、MA(240質量部)、酢酸エチル(600質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.10質量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体B-4の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-4の組成及び分析結果を表2に示す。
合成例10(重合体B-5の合成)
内容積3リットルの4つ口フラスコに、MEA(319質量部)、アクリル酸(以下、「AA」という)(29質量部)、BA(137質量部)、MA(86質量部)、酢酸エチル(980質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.25量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体B-5の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-5の組成及び分析結果を表2に示す。
合成例11(重合体B-6の合成)
内容積3リットルの4つ口フラスコに、AA(30質量部)、BA(210質量部)、MA(360質量部)、酢酸エチル(1000質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V-65(0.30量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体B-6の酢酸エチル溶液を得た。重合体B-6の組成及び分析結果を表2に示す。
3.粘着剤組成物の製造及び評価
実施例1
上記合成例1で得られた重合体A-1(8質量部)を酢酸エチルに溶解させた固形分濃度30質量%の重合体(A-1)溶液を、上記合成例7で得られた重合体B-2溶液と混合し、重合体A-1(8質量部)と重合体B-2(100質量部)を含む固形分30質量%の溶液を調製した。ここに、架橋剤としてタケネートD-110N(三井化学社製イソシアネート系架橋剤、固形分濃度75質量%)(0.16質量部)を混合し、粘着剤組成物を得た。
この粘着剤組成物を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製セパレータ上に、乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布した。粘着剤組成物を80℃で4分間乾燥することで、酢酸エチルを除去するとともに架橋反応をさせ、前記セパレータとは剥離力の異なる厚さ38μmのPET製セパレータを貼りあわせて、40℃で5日間静置して熟成(エージング)することにより、両面セパレータ付き粘着フィルム試料を得た。
得られた粘着フィルム試料について、次に示す方法により各種測定及び評価を行った。得られた結果を表3に示す。
<アクリル系粘着性ポリマー(B)に対するゲル分率>
粘着フィルム試料から粘着剤を0.2g採取し、粘着剤の初期重量を秤量した。その粘着剤を50gの酢酸エチルに浸漬し、室温で16時間静置した。その後、200メッシュ金網でろ過し、メッシュに残った残分を80℃で3時間乾燥し、秤量した。初期の重量と残分の重量から、下式によりアクリル系粘着性ポリマー(B)に対するゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(残分の重量)/[(初期の重量)×(アクリル系粘着性ポリマー(B)の固形分)/(粘着剤組成物全体の固形分)]×100
<透明性(ヘイズ値)>
粘着フィルム試料から剥離フィルムを剥がし、ガラスプレート(1mm厚)に転写し、もう一方の剥離フィルムを剥がした。23℃、50%RH条件下で1日静置した後、日本電色社製ヘイズメーター「ヘイズメーターNDH2000」(型式名)を使用してヘイズ値を測定することにより、その配合組成における透明性を評価した。
<粘着剤層の表層部分のTg>
粘着フィルム試料のX線光電子分光装置(XPS)測定によるO1sとC1sのピーク面積比から、粘着剤層の表層部分におけるビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対する、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の各質量分率(wA及びwB)を算出し、FOXの式に基づき表層部分のTgを算出した。
なお、XPS測定は以下の条件で測定した。
装置: アルバック・ファイ社製 PHI5000 VersaProbe
X線: Al-Kα (1486.6eV)
試料へのX線入射角: 0° (試料測定面の法線に対する角度)
光電子検出角: 45° (試料測定面の法線に対する角度)
上記質量分率の具体的な算出方法について以下に記載する。
XPS測定によるO1sとC1sのピーク面積比から算出される酸素原子数と炭素原子数の比は、下式(1)の通り、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)からなる粘着剤組成物から形成された粘着剤層表層部の単位重量当りに存在する酸素原子数と炭素原子数の比で表される。
ここで、
(O/C)
A+B:粘着剤組成物を乾燥して得られた粘着剤層のXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比から算出される酸素原子数と炭素原子数の比
W
A:ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対するビニル重合体(A)の質量分率
M
w-A:ビニル重合体(A)の全構成単量体単位の加重平均分子量
M
w-B:アクリル系粘着剤組成物(B)の全構成単量体単位の加重平均分子量
N
O-A:ビニル重合体(A)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる酸素原子数
N
O-B:アクリル系粘着性ポリマー(B)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる酸素原子数
N
C-A:ビニル重合体(A)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる炭素原子数
N
C-B:アクリル系粘着性ポリマー(B)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる炭素原子数
また、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)各単体を乾燥して得られたフィルムのXPS測定により求められるO1sとC1sのピーク面積比から算出される炭素原子数と酸素原子数の比は、各々下式(2)及び(3)で表される。
ここで、
(O/C)
A:ビニル重合体(A)を乾燥して得られたフィルムのXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比から算出される酸素原子数と炭素原子数の比
ここで、
(O/C)
B:アクリル系粘着性ポリマー(B)を乾燥して得られたフィルムのXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比から算出される酸素原子数と炭素原子数の比
上記の式(1)~(3)より下記式(4)が導かれ、これよりビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対するビニル重合体(A)の質量分率(W
A)が算出される。
さらに、上記で求めたW
Aの値と下記式(5)から、アクリル系粘着性ポリマー(B)の質量分率(W
B)が算出される。
ここで、
W
B:ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対するアクリル系粘着性ポリマー(B)の質量分率
実施例1について、上記式(4)における各要素を以下に示す。
(O/C)A+B:0.317(実測値)
(O/C)A:0.290(実測値)
(O/C)B:0.477(実測値)
NC-A:MMA1分子中の炭素原子数(5)、IBXMA1分子中の炭素原子数(14)及び組成比より、5×89.9(mol%)+14×10.1(mol%)=5.91
NC-B:MEA1分子中の炭素原子数(6)、HEA1分子中の炭素原子数(5)、BA1分子中の炭素原子数(7)、MA1分子中の炭素原子数(4)及び組成比より、6×51.5(mol%)+5×5.2(mol%)+7×22.4(mol%)+4×20.9(mol%)=5.75
Mw-A:MMAの分子量(100)、IBXMAの分子量(222)及び組成比より、100×76.1(mol%)+222×23.9(mol%)=129.2
Mw-B:MEAの分子量(130)、HEAの分子量(116)、BAの分子量(128)、MAの分子量(86)及び組成比より、130×51.5(mol%)+116×5.2(mol%)+128×22.4(mol%)+86×20.9(mol%)=119.6
これらの値を式(4)に代入することによりWA=0.86が得られ、(5)式よりWB=0.14が得られた。
次いで、測定に得られた表面組成から下式(6)で表されるFOXの式に従って、表層部分のTgを計算し、80.8℃という値を得た。
1/〔表層部分のTg〕(K)=WA/TgA+WB/TgB (6)
ここで、
TgA:ビニル重合体(A)のTg(108℃)
TgB:アクリル系粘着性ポリマー(B)のTg(-27℃)
<弾性率測定>
50μm厚の粘着フィルム試料を0.8mm厚となるまで積層し、評価用粘着シートを得た。これを直径8mmの円状に打ち抜き、ずり粘弾性装置(アントンパール社製、Physica MCR-301)を用いて、-50℃から150℃まで2℃/minで昇温しながら、周波数1Hz、ひずみ0.1%で動的粘弾性を測定し、90℃の貯蔵弾性率を読み取った。なお、測定には8mmφのパラレルプレートを使用した。
<ABSに対する剥離強度>
粘着フィルム試料を易接着処理したPETフィルム(100μm)に転写して評価用の粘着シートを得た。被着体をABS板(TP技研製、2mm厚)とし、上記評価用の粘着シートを貼り合せ、卓上加圧脱泡装置TBR-200(千代田電気工業社製)を用いて0.5MPa、50℃の条件下で20分間圧着した後、恒温槽付き引張り試験機ストログラフR型(東洋精機社製)を用いて、温度が85℃、剥離速度が300mm/min.の条件で、JIS Z-0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて粘着シートの180度剥離強度を測定し、接着強度とした。
<加飾フィルムの耐久試験>
粘着フィルム試料を貼り合わせた塩化ビニル製加飾フィルム(日本ウェーブロック社製、200μm厚)を、真空圧空成形機(ナビタス社製、NATS-0612B型)を用いて、フィルム加熱温度110℃、圧空0.2MPaの条件で、フィルム延伸率200%となるようにABS板(TP技研社製、100mm×100mm×3mm)に貼り合わせた。
その後、成形された加飾フィルムにカッターで十字に切れ目を入れ、90℃、100℃もしくは110℃の熱負荷を与え、負荷後の外観(剥離、ずれ)を目視で確認し、以下の基準に沿って評価した。
◎:外観変化無し
○:切れ目から剥離またはずれた距離が0.5mm以下
△:切れ目から剥離またはずれた距離が0.5mm超~1mm以下
×:切れ目から剥離またはずれた距離が1mm超
実施例2~6及び比較例1~5
実施例1において、ビニル重合体及びアクリル系粘着性ポリマーの種類、比率を表3及び表4に示すように変えて粘着剤組成物を得ると共に、実施例1と同様の測定を行った。結果を表3及び表4に示す。
表3に示すように、本明細書に開示される粘着剤組成物を用いた実施例1~6は、いずれも、85℃の高温条件下においてABSに対して良好な剥離強度を示すとともに、100℃程度の条件下における耐久性(耐熱性)にも優れる結果を示した。なかでも、アクリル系粘着性ポリマー(B)におけるアクリル酸メチルの使用量がより高い実施例2、3及び5では、耐久性の点で特に優れる結果が得られた。
また、ビニル重合体(A)のTgの観点では、より高いTgのビニル重合体(A)を使用した実施例(実施例1~5)の方が、剥離強度及び耐久性の双方に優れる結果を示した。
一方、表4に示す通り、本発明で規定するビニル重合体を用いない実験例である比較例1、2及び4では、高温条件下において満足な剥離強度及び耐久性を得ることができなかった。また、ビニル重合体(A)の偏析が十分でない比較例3、及び90℃における粘着剤層のG’が低い比較例5も同様の結果であった。