JP2018001615A - 粘着剤組成物及び粘着剤層を備える積層体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 粘着剤層を介して配置される透明樹脂層及びガラス層を有する積層単位を備える積層体であって、前記粘着剤層は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を含む粘着剤組成物から形成されており、前記粘着剤組成物をセパレータに塗工し、乾燥させて粘着剤層を得た際に、当該粘着剤層全体のガラス転移温度である第1のTgが−80℃以上10℃以下であり、前記粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgが、前記第1のTgよりも30℃以上高い、積層体。
【選択図】なし
Description
前記粘着剤層は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を含む粘着剤組成物から形成されており、
前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上200℃以下であり、数平均分子量が500〜10,000であって、前記アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対して0.5質量部以上60質量部以下含有されており、
前記粘着剤組成物をセパレータに塗工し、乾燥させて粘着剤層を得た際に、当該粘着剤層全体のガラス転移温度である第1のTgが−80℃以上10℃以下であり、
前記粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgが、前記第1のTgよりも30℃以上高い、
積層体。
〔2〕前記アクリル系粘着性ポリマー(B)は、その全構成単量体に対して(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構成単位を85質量%以上含有する、〔1〕に記載の積層体。
〔3〕前記粘着剤層は、ヘイズ値が2.0以下である、〔1〕または〔2〕に記載の積層体。
〔4〕膜厚50μmの前記粘着剤層を100μm厚ポリエチレンテレフタレートフィルム基材に備えた粘着シートの剥離速度3mm/minにおけるポリカーボネート板に対する剥離強度が7.0N/25mm以上であり、前記粘着シートの剥離速度3mm/minにおけるガラス板に対する剥離強度が9.0N/25mm以上である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の積層体。
〔5〕〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の積層単位の前記透明樹脂層に対して前記粘着剤層及びガラス層をこの順で備える積層体。
〔6〕透明樹脂層及びガラス層を有する積層体用粘着剤組成物であって、
ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を含有し、
前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上200℃以下であり、数平均分子量が500〜10,000であって、前記アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対して0.5質量部以上60質量部以下含有し、
前記粘着剤組成物をセパレータに塗工し、乾燥させて粘着剤層を得た際に、当該粘着剤層全体のガラス転移温度である第1のTgが−80℃以上10℃以下であり、
前記粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgが、前記第1のTgよりも30℃以上高い、組成物。
本明細書に開示するビニル重合体(A)は、30℃以上200℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する重合体とすることができる。Tgの好ましい下限は40℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは60℃以上であり、なお好ましくは70℃以上である。Tgの好ましい上限は、180℃以下であり、より好ましくは150℃以下であり、さらに好ましくは120℃以下であり、なお好ましくは110℃以下であり、一層好ましくは100℃以下である。また、Tgのより好ましい範囲は40℃以上180℃以下であり、さらに好ましくは60℃以上150℃℃以下である。本明細書において、示差走査熱量測定(DSC)により昇温速度10℃/minで測定した値をTgとして採用する。Tgが30℃未満であると、粘着剤層の表層部分のTgが十分に高くなりにくく、各種被着体への接着強度が十分でなく耐久性に劣る場合がある。また、原料単量体の制約等から、一般にTgが200℃を超えることはない。
本明細書に開示するアクリル系粘着性ポリマー(B)は、(メタ)アクリル酸エステル類を主要構成単位として含有する重合体である。アクリル系粘着性ポリマー(B)のガラス転移温度(Tg)は、−80℃以上0℃以下の範囲にある粘着性を有する重合体であることが好ましく、−80℃以上―20℃以下の範囲がより好ましく、−80℃以上―30℃以下の範囲がさらに好ましい。なお好ましくは−80℃以上−40℃以下の範囲である。Tgが−80℃未満の場合は、得られる粘着剤の凝集力が不十分となり、接着性が悪化する傾向がある。Tgが0℃を超える場合は、段差追随性及び低温下での粘着力等が十分でない場合がある。
また、上記の内でも、良好な粘着性能を示しつつ、粘着剤層においてビニル重合体(A)がその表層へ偏析しやすくなる点で(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの使用量は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。また、好ましくは、60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、なお好ましくは85質量%以上である。また、好ましくは、90質量%以上であり、より好ましくは92質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。なお、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの使用量の上限は100質量%である。
本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を含有することができる。ビニル重合体(A)は、アクリル系粘着性ポリマー(B)に対して適度な相溶性を有する。このため、これらを含む粘着剤組成物から得られる粘着剤層は良好な透明性を示すと共に、粘着剤層中においてビニル重合体(A)が一部偏析し、その表層部分におけるビニル重合体(A)の濃度が他の部分よりも高くなる場合がある。
本粘着剤組成物は、架橋剤を含有することができる。架橋剤は、必ずしも必要ではないが、意図する接着特性のほか、本粘着剤組成物の形態、例えば、エマルジョン形態であるか溶液形態であるか等にも応じて、その添加が検討される。架橋剤を含有することで、本粘着剤組成物から得られる粘着剤層の凝集力や接着力を調整し、さらに、高温高湿下での接着性や曲面への接着性を付与したりすることができる。架橋剤としては、グリシジル基を2つ以上有するグリシジル化合物、イソシアネート基を2つ以上有するイソシアネート化合物、アジリジニル基を2つ以上有するアジリジン化合物、オキサゾリン基を有するオキサゾリン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物等が挙げられる。これらのうち、アジリジン化合物、グリシジル化合物及びイソシアネート化合物を用いることが好ましい。
本粘着剤組成物より形成される粘着剤層全体のガラス転移温度(Tg)、すなわち、第1のTgは、−80℃以上10℃以下の範囲とすることができる。好ましい下限は−70℃以上であり、より好ましくは−60℃以上であり、さらに好ましくは、−40℃以上であり、なお好ましくは−30℃以上である。また、好ましい上限は0℃以下であり、より好ましくは−10℃以下であり、さらに好ましくは−20℃以下である。また、好ましい範囲は−70℃以上−20℃以下である。第1のTgが−80℃未満の場合は、得られる粘着剤の凝集力が不十分となり、接着性等が悪化する傾向があり、10℃を超える場合は、段差追随性及び低温条件下での粘着力等が十分でない場合がある。なお、本粘着剤組成物のTgは、DSCにて、昇温速度10℃/min、窒素雰囲気を測定雰囲気として得ることができる。
本粘着剤組成物の第2のTg、すなわち、当該粘着剤組成物をセパレータに塗工、乾燥させて粘着剤層を得た際に、当該粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分の組成から計算されるTgは、X線光電子分光測定(XPS)から得られるビニル重合体(A)とアクリル系粘着性ポリマー(B)との組成比率から、計算によって求められ、粘着剤層の表面から該5nm程度の深さまでの表層を形成する組成物のTgとして捉えることができる。測定方法の詳細は、後述する実施例に記載の操作に従うことができる。
本粘着剤組成物は、第2のTg(粘着剤層の表層部分の組成から計算されるTg)が、第1のTg(粘着剤層全体のTg)よりも30℃以上高いものとなることが好ましい。こうしたTg組成を有する粘着剤層によれば、従来の一般的な粘着剤による粘着剤層が高温になればなるほど接着性が低下するのに対し、高温での高い接着性(被着体に対する剥離強度)や高い応力緩和性を発揮することができる。
第2のTgの測定に際しては、本粘着剤層の表層のX線光電子分光分析よる組成分析を行うが、その際に、表層におけるビニル重合体(A)の質量分率を求めることができる。この質量分率を、本粘着剤層の表層部分におけるビニル重合体(A)の偏析状態の指標とすることができる。
本粘着剤組成物は、当該粘着剤組成物からなる膜厚50μmの粘着剤層を100μ厚ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)基材に備えた粘着シートについて、23℃、剥離速度3mm/minにおけるポリカーボネート(PC)板及びガラス板に対する接着強度が、それぞれ7.0N/25mm以上及び9.0N/mm以上であることが好ましい。こうした接着強度を備えることにより、高温域を介した熱膨張収縮に曝されるPC板及びガラス板に対して、粘着シートの浮きや剥がれを抑制することができる。より好ましくはいずれも10N/25mm以上であり、さらに好ましくはいずれも20N/25mm以上であり、なお好ましくはいずれも25N/25mm以上である。
本粘着剤組成物から得られる粘着剤層の透明性を評価する指標として、ヘイズ値を用いることができる。本粘着剤組成物から得られる粘着剤層は、上述したように、ビニル重合体(A)がアクリル系粘着性ポリマー(B)に対して適度な相溶性を有するため、これらを含む粘着剤層は、良好な透明性を示す。
本粘着剤組成物によって得られる粘着剤層は、その表層部分においてTgが相対的に高いため、良好な接着性を有する一方、その中央付近においてはTgが相対的に低いため、異種基材(例えば、ガラス板とPC板)を貼り合わせた後も、これらの基材の膨張収縮に対して追従することができるため、良好な耐久性(各基材の熱膨張係数の違いから生じる応力に対する応力緩和性)を得ることができる。
本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を規定量含むものであればその混合方法に特段の制約はない。例えば、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を混合して本粘着剤組成物を得てもよいし、ビニル重合体(A)の存在下にアクリル系粘着性ポリマー(B)を重合することにより本粘着剤組成物を得てもよい。
本明細書に開示される積層体(以下、本積層体ともいう。)は、本粘着剤組成物から得られる本粘着剤層を介して配置される透明樹脂層及びガラス層を有する積層単位を備えることができる。本粘着剤組成物は、粘着剤層として異種材料を接着するのに好適であり、実用的な接着性と応力緩和性とを備える積層体を得ることができる。
測定サンプル約1gを秤量(a)し、次いで、通風乾燥機155℃、30分間乾燥後の残分を測定(b)し、以下の式より算出した。測定には秤量ビンを使用した。その他の操作については、JIS K 0067−1992(化学製品の減量及び残分試験方法)に準拠した。
固形分(%)=(b/a)×100
分子量はGPCにて下記の条件で測定した。
GPC:東ソー(HLC−8120)
カラム:東ソー(TSKgel−SuperMP−M×4本)
試料濃度:0.1%
流量:0.6ml/分
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折計(RI)
標準物質:ポリスチレン
ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマー(B)及び粘着剤組成物のTgはDSCにて以下の条件で測定した。
DSC:TA Instrument製(Q−100)
昇温温度:10℃/分
測定雰囲気:窒素
ポリマー組成はモノマー仕込量とGC測定によるモノマー消費量から算出した。
GC:Agilent Technolosies製(7820A GC System)
検出器:FID
カラム:100%ジメチルシロキサン(CP−Sil 5CB) 長さ30m、内径0.32mm
算出方法:内部標準法
合成例1(重合体A−1の合成)
内容積1リットルの4つ口フラスコにメタクリル酸メチル(MMA)45質量部、スチレン(St)5質量部、酢酸ブチル245質量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬社製、V−601)2.7質量部からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に昇温した。別途、MMA180質量部、St19質量部、V−601 24質量部、酢酸ブチル90質量部からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をヘキサン6000質量部に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A−1を得た。得られた重合体A−1のポリマー組成は、仕込量とGC測定によるモノマー消費量から計算した結果、MMA90質量%、St10質量%からなり、Mw5650、Mn3270、Mw/Mn1.73であった。Tgは80℃であった。
重合体A−1の組成及び分析結果を表1に示す。
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル198質量部、V−601 1.2質量部からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に昇温した。別途、MMA165質量部、メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)44質量部、V−601 23質量部、酢酸ブチル90質量部からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をヘキサン6000質量部に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A−2を得た。
重合体A−2の組成及び分析結果を表1に示す。
内容積0.5リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル75質量部、V−601 1.7質量部からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に昇温した。別途、MMA80質量部、IBXMA63質量部、V−601 33質量部、酢酸ブチル90質量部からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をメタノール2800質量部と蒸留水700質量部からなる混合溶液に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A−3を得た。
重合体A−3の組成及び分析結果を表1に示す。
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル200質量部、V−601 4.1質量部からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に昇温した。別途、MMA114質量部、IBXMA140質量部、V−601 78質量部、酢酸ブチル90質量部からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をメタノール2800質量部と蒸留水700質量部からなる混合溶液に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合を単離して、重合体A−4を得た。
重合体A−4の組成及び分析結果を表1に示す。
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル200質量部、V−601 4.0質量部からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に昇温した。別途、MMA59質量部、IBXMA200質量部、V−601 75質量部、酢酸ブチル90質量部からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をメタノール2800質量部と蒸留水700質量部からなる混合溶液に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A−5を得た。
重合体A−5の組成及び分析結果を表1に示す。
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル230質量部、MMA50質量部、V−601 11.6質量部からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に昇温した。別途、MMA200質量部、V−601 46質量部、酢酸ブチル90質量部からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をヘキサン6000質量部に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A−6を得た。
重合体A−6の組成及び分析結果を表1に示す。
合成例7(重合体B−1の合成)
内容積2リットルの4つ口フラスコに、アクリル酸メトキシエチル(MEA)285質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)15質量部、酢酸エチル520質量部を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を40℃に昇温し、アゾビスバレロニトリル(V−65)11.5質量部を仕込み、重合を開始した。4時間後、重合溶液をヘキサン10000質量部に滴下することでアクリル系粘着性ポリマーを単離し、重合体B−1を得た。得られた重合体B−1は、MEA95質量%、HEA5質量%からなり、Mw500,000、Mn70,000、Mw/Mn7.1であった。
重合体B−1の組成及び分析結果を表2に示す。
内容積2リットルの4つ口フラスコに、MEA255質量部、アクリル酸ブチル(BA)8質量部、HEA15質量部、酢酸エチル520質量部を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を40℃に昇温し、V−65 11.4質量部を仕込み重合を開始した。4時間後、重合溶液をヘキサン10000質量部に滴下することでアクリル系粘着性ポリマーを単離し、重合体B−2を得た。得られた重合体B−2は、MEA85質量%、BA10質量%、HEA5質量%からなり、Mw520,000、Mn80,000、Mw/Mn6.5であった。
重合体B−2の組成及び分析結果を表2に示す。
内容積2リットルの4つ口フラスコに、MEA188質量部、BA192質量部、HEA20質量部、酢酸エチル740質量部を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を40℃に昇温し、V−65 10.3質量部を仕込み重合を開始した。4時間後、重合溶液をヘキサン10000質量部に滴下することでアクリル系粘着性ポリマーを単離し、重合体B−3を得た。得られた重合体B−3は、MEA47質量%、BA48質量%、HEA5質量%からなり、Mw510,000、Mn90,000、Mw/Mn5.7であった。
重合体B−3の組成及び分析結果を表2に示す。
内容積2リットルの4つ口フラスコに、MEA285質量、アクリル酸(AA)15質量部、酢酸エチル520質量部を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を40℃に昇温し、V−65 11.5質量部を仕込み重合を開始した。4時間後、重合溶液をヘキサン10000質量部に滴下することでアクリル系粘着性ポリマーを単離し、重合体B−4を得た。得られた重合体B−4は、MEA95質量%、AA5質量%からなり、Mw490,000、Mn70,000、Mw/Mn7.0であった。
重合体B−4の組成及び分析結果を表2に示す。
実施例1
上記合成例1で得られた重合体A−1を酢酸エチルに溶解して固形分濃度30質量%の重合体A−1溶液を調整した。同様に、上記合成例7で得られた重合体(B−1)を酢酸エチルに溶解して固形分濃度30質量%の重合体(B−1)溶液を調整した。当該重合体A−1溶液4質量部、重合体B−1溶液100質量部、架橋剤としてタケネートD−110N(固形分濃度75質量%、三井化学社製)0.16質量部を混合し、粘着剤組成物を得た。
粘着フィルム試料から粘着剤を0.2g採取し、粘着剤の初期重量を秤量した。その粘着剤を50gの酢酸エチルに浸漬し、室温で16時間静置した。その後、200メッシュ金網でろ過し、メッシュに残った残分を80℃で3時間乾燥し、秤量した。初期の重量と残分の重量から、下式によりアクリル系粘着性ポリマー(B)に基づくゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(残分の重量)/[(初期の重量)×(アクリル系粘着性ポリマー(B)の固形分)/(粘着剤組成物の固形分)]×100
粘着フィルム試料から剥離フィルムを剥がし、ガラスプレート(1mm厚)に転写し、もう一方の剥離フィルムを剥がした。23℃、50%RH条件下で1日静置した後、日本電色社製ヘイズメーター「ヘイズメーターNDH2000」(型式名)を使用してヘイズ値を測定することにより、その配合組成における透明性を評価した。
粘着フィルム試料を易接着処理したPETフィルム(100μm)に転写して評価用の粘着シートを得た。被着体をPC板(三菱ガス化学社製、ユーロピンNF2000、1.5mm厚)もしくはガラス板(旭硝子社製、ファブリテックFL11A、1mm厚)とし、上記評価用の粘着シートを貼り合わせ、卓上加圧脱泡装置TBR−200(千代田電気工業社製)を用いて0.5MPa、50℃の条件下で20分間圧着した後、恒温槽付き引張り試験機ストログラフR型(東洋精機社製)を用いて、23℃の条件で、JIS Z−0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて粘着シートの180度剥離強度を測定し、接着強度とした。剥離速度は3mm/min、30mm/min、300mm/minとした。なお、温度時間換算則に基づき、剥離速度が遅くなるにつれて、高温相当の条件となる。
粘着フィルム試料のX線光電子分光装置(XPS)測定によるO1sとC1sのピーク面積比から、粘着剤層の表層部分におけるビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対する、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の各質量分率(wA及びwB)を算出し、FOXの式に基づき表層部分のTgを算出した。
なお、XPS測定は以下の条件で測定した。
装置: アルバック・ファイ社製 PHI5000 VersaProbe
X線: Al−Kα (1486.6eV)
試料へのX線入射角: 0° (試料測定面の法線に対する角度)
光電子検出角: 45° (試料測定面の法線に対する角度)
XPS測定によるO1sとC1sのピーク面積比は、下式(1)の通り、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)からなる粘着剤組成物から形成された粘着剤層表層部の単位重量当りに存在する酸素原子数と炭素原子数の比で表される。
(O/C)A+B:粘着剤組成物を乾燥して得られた粘着剤層のXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比
WA:ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対するビニル重合体(A)の質量分率
Mw−A:ビニル重合体(A)の全構成単量体単位の加重平均分子量
Mw−B:アクリル系粘着剤組成物(B)の全構成単量体単位の加重平均分子量
NO−A:ビニル重合体(A)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる酸素原子数
NO−B:アクリル系粘着性ポリマー(B)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる酸素原子数
NC−A:ビニル重合体(A)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる炭素原子数
NC−B:アクリル系粘着性ポリマー(B)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる炭素原子数
(O/C)A:ビニル重合体(A)を乾燥して得られたフィルムのXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比
(O/C)B:アクリル系粘着性ポリマー(B)を乾燥して得られたフィルムのXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比
WB:ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)の総量に対するアクリル系粘着性ポリマー(B)の質量分率
(O/C)A+B:0.3(実測値)
(O/C)A:0.3(実測値)
(O/C)B:0.5(実測値)
NC−A:MMA1分子中の炭素原子数(5)、St1分子中の炭素原子数(8)及び組成比より、5×90(%)+8×10(%)=5.3
NC−B:MEA1分子中の炭素原子数(6)、HEA1分子中の炭素原子数(5)及び組成比より、6×94(%)+5×6(%)=5.9
Mw−A:MMAの分子量(100)、Stの分子量(104)及び組成比より、100×90(%)+104×10(%)=100
Mw−B:MEAの分子量(130)、HEAの分子量(116)及び組成比より、130×94(%)+116×6(%)=129
これらの値を式(4)に代入することによりWA=0.8が得られ、式(5)よりWB=0.2が得られた。
1/〔表層部分のTg〕(K)=WA/TgA+WB/TgB (6)
ここで、
TgA:ビニル重合体(A)のTg(80℃)
TgB:アクリル系粘着性ポリマー(B)のTg(−31℃)
粘着フィルム試料の一方の面にガラス板を貼り合わせ、他方の面にポリカーボネート(PC)板を貼り合わせた積層体を作成し、前記積層体に50℃、0.5MPa、20分の圧着処理を行った。その後、積層体に90℃で100時間、60℃/90%RHで100時間、もしくは−20℃/80℃の冷熱サイクルを10サイクル(各温度の保持時間はそれぞれ30分)の負荷を与え、負荷後の外観(端部からの剥がれ)を目視で確認し、以下の基準に従って評価した。
〇:剥がれなし
△:粘着シートが剥れた距離が1mm以下
×:粘着シートが剥れた距離が1mmを超える
実施例1において、ビニル重合体及びアクリル系粘着性ポリマーの種類、比率を表3及び表4に示すように変えて粘着剤組成物を得ると共に、実施例1と同様の測定を行った。結果を表3及び表4に示す。
Claims (6)
- 粘着剤層を介して配置される透明樹脂層及びガラス層を有する積層単位を備える積層体であって、
前記粘着剤層は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を含む粘着剤組成物から形成されており、
前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上200℃以下であり、数平均分子量が500〜10,000であって、前記アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対して0.5質量部以上60質量部以下含有されており、
前記粘着剤組成物をセパレータに塗工し、乾燥させて粘着剤層を得た際に、当該粘着剤層全体のガラス転移温度である第1のTgが−80℃以上10℃以下であり、
前記粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgが、前記第1のTgよりも30℃以上高い、
積層体。 - 前記アクリル系粘着性ポリマー(B)は、その全構成単量体に対して(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構成単位を85質量%以上含有する、請求項1に記載の積層体。
- 前記粘着剤層は、ヘイズ値が2.0以下である、請求項1または2に記載の積層体。
- 前記粘着剤組成物からなる膜厚50μmの粘着剤層を100μm厚ポリエチレンテレフタレートフィルム基材に備えた粘着シートの剥離速度3mm/minにおけるポリカーボネート板に対する剥離強度が7.0N/25mm以上であり、前記粘着シートの剥離速度3mm/minにおけるガラス板に対する剥離強度が9.0N/25mm以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の前記積層単位の前記透明樹脂層に対して前記粘着剤層及びガラス層をこの順で備える積層体。
- 透明樹脂層及びガラス層を有する積層体用粘着剤組成物であって、
ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を含有し、
前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上200℃以下であり、数平均分子量が500〜10,000であって、前記アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対して0.5質量部以上60質量部以下含有し、
前記粘着剤組成物をセパレータに塗工し、乾燥させて粘着剤層を得た際に、当該粘着剤層全体のガラス転移温度である第1のTgが−80℃以上10℃以下であり、
前記粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgが、前記第1のTgよりも30℃以上高い、組成物。
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