JP7051757B2 - 転写用紙 - Google Patents
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Description
転写紙をナイロン布に貼り付けた状態でスチーミング処理を行うと、ナイロン布の熱に対する寸法安定性及び転写紙の水分に対する寸法安定性によって、貼り付けた状態に部分的剥離、部分的凹凸発生及び部分的皺発生といった操業の問題を有する。結果として得られたナイロン布は、部分的な画質の低下を有することになる。現状では、この問題に対して、スチーミング処理のオペレーターの技術又は図柄を部分的な範囲に設計などで対応することになる。また、特許文献1に開示されるようなインク受容層兼接着層は、加熱及び加圧することによって繊維に強く接着できる接着剤層であるから、繊維材料に転写紙を密着して加熱及び加圧した後かつスチーミング処理前では繊維材料から転写紙を、生産性に適するように剥離できないという問題を有する。剥離できた場合であっても、ナイロン布に形成された図柄が欠落、色ムラ発生及び発色低下などの不具合を有することがある。
本発明により、転写用紙は、布帛に図柄を形成することができ、密着させて加熱及び加圧した後かつスチーミング処理前で転写紙を布帛から剥離することができ、並びに布帛に形成された図柄に欠落、色ムラ及び発色低下など不具合の発生を抑制できる。
本実施により、布帛からの剥離が良化することができる。
本実施により、布帛に形成された図柄に欠落、色ムラ及び発色低下などの発生の抑制を良化、及び/又は布帛からの剥離が良化することができる。
本発明において、「転写用紙」とは、転写する図柄が印刷される前の白紙状態にある用紙をいう。「転写紙」とは、転写用紙に対して転写する図柄が印刷された状態にある用紙をいう。
また本発明において、「塗工層を有する」とは、転写用紙の断面を電子顕微鏡によって観察した際に、基材と区別できる明確な層を有する用紙を指す。例えば、樹脂成分やポリマー成分を塗工し、塗工された前記成分が少量であって基材に吸収され、結果として、転写用紙の断面を電子顕微鏡によって観察した際に基材と区別できる明確な層を有しない場合、「塗工層を有する」に該当しない。
なお、非水系樹脂層が1層では当該層の厚さを示し、非水系樹脂層が2層以上ではこれら層の合計厚さを示す。
塗工層を設ける方法は特に限定されない。例えば、製紙分野で従来公知の塗工装置及び乾燥装置を用いて塗工及び乾燥する方法を挙げることができる。塗工装置の例としては、サイズプレス、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、エアナイフコーター、コンマコーター、グラビアコーター、バーコーター、Eバーコーター、カーテンコーター等を挙げることができる。乾燥装置の例としては、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等を挙げることができる。
また、塗工層は、塗工及び乾燥後にカレンダー処理を施すことができる。
多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、セバチン酸、ドデカン二酸などを挙げることができ、これらから成る群から一種又は二種以上を選択して用いることが好ましい。ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールなどを挙げることができ、これらから成る群から一種又は二種以上を選択して用いることが好ましい。また、水溶性ポリエステル樹脂は、水溶性を高めるためにカルボキシル基やスルホン酸基等の親水性基を有する成分を共重合させることができる。水溶性ポリエステル樹脂は、互応化学工業社、高松油脂社及びユニチカ社などから市販されており、これらの市販品を本発明に用いることができる。なお、「水溶性」とは、最終的に20℃の水に1質量%以上溶解することができることを指す。
カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂としては、ポリビニルアルコールとビニルカルボン酸化合物とのグラフト共重合又はブロック共重合により得られるもの、ビニルエステル化合物とビニルカルボン酸化合物とを共重合した後、ケン化することにより得られるもの、及びポリビニルアルコールにカルボキシル化剤を反応させて得られるものなどを挙げることができる。前記ビニルカルボン酸化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)フタル酸、(無水)イタコン酸、及び(無水)トリメリット酸などのカルボキシル基又はその無水物含有化合物を挙げることができる。前記ビニルエステル化合物としては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、及びピバリン酸ビニルなどを挙げることができる。前記カルボキシル化剤としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水グルタル酸、水添フタル酸無水物、及びナフタレンジカルボン酸無水物などを挙げることができる。カルボン酸変性ポリビニルアルコールは、日本合成化学工業社、日本酢ビ・ポバール社及びクラレ社などから市販されており、これら市販品を本発明に用いることができる。
カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂の数平均重合度及びケン化度は特に限定されない。カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂のケン化度については、85mol%以上90mol%以下である部分ケン化度が好ましい。この理由は、布帛からの剥離が良化する又は布帛に形成された図柄に欠落、色ムラ発生及び発色低下などの不具合がより抑制できるからである。
アクリル樹脂は、東亞合成社、日本触媒社、ジャパンコーティングレジン社、出光興産社及び三菱ケミカル社などから市販されており、これら市販品を本発明に用いることができる。
アクリル樹脂は、ガラス転移点(Tg)が0℃以上45℃以下である。また、アクリル樹脂は、最低成膜温度(MFT)が0℃以上50℃以下である。アクリル樹脂が、これら物性値範囲を満たさない場合、生産性に適した布帛からの剥離が、又は布帛に形成された図柄に欠落、色ムラ発生及び発色低下などの不具合を抑制ができない。
アクリル樹脂のTgの設定は、下記のFox式に従い、各アクリル樹脂等の単量体の質量比率を設定することにより行うことができる。
<Fox式>
1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+…+(Wm/Tgm)
W1+W2+…+Wm=1
式中、Tgはアクリル樹脂のガラス転移点を表す。Tg1、Tg2、…、Tgmは各単量体の単重合体のガラス転移点を表す。また、W1、W2、…、Wmは各単量体の質量比率を表す。前記Fox式における各単量体のガラス転移点は、例えば、Polymer Handbook Third Edition(Wiley-Interscience、1989)記載の値を用いればよい。
MFTとは熱可塑性樹脂粒子が結合して成膜するのに最低必要な温度を意味する。このMFTは、室井宗一著「高分子ラテックスの化学」(高分子刊行会、1987年出版)等に記載されているように温度勾配板法により測定することができる。
少なくとも一つの実施形態において、非晶質シリカは、粒度分布に適度な拡がりを有する。すなわち、非晶質シリカは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定で求められる、横軸が粒子径及び縦軸が粒子数の頻度とした体積基準の粒度分布曲線において、粒子径がゼロを起点とする累積頻度20体積%の粒子径D20とレーザー回折・散乱式粒度分布測定で求められる体積基準の粒度分布曲線において、粒子径がゼロを起点とする累積頻度80体積%の粒子径D80との比(D80/D20)が2.5以上5.5以下である。好ましくは、比(D80/D20)が2.9以上4.5以下である。より好ましくは、比(D80/D20)が3.2以上4.3以下である。これにより、布帛に形成された図柄に欠落、色ムラ及び発色低下などの発生の抑制を良化、及び/又は布帛からの剥離が良化することができる
レーザー回折・散乱式粒度分布測定で求められる体積基準である平均粒子径、並びにレーザー回折・散乱式粒度分布測定で求められる、横軸が粒子径及び縦軸が粒子数の頻度とした体積基準の粒度分布曲線において、粒子径がゼロを起点とする累積頻度20体積%の粒子径D20及び累積頻度80体積%の粒子径D80は、例えば、日機装社製レーザー回折・散乱式粒度分布測定器Microtrac MT3000IIを用いて測定し、算出することができる。
前記平均粒子径及び/又は前記比(D80/D20)を満足する非晶質シリカは、例えば、比較的大きい粒子を有する非晶質シリカを粉砕と整粒とによって得ることができる。また、該非晶質シリカは、相対的に小さい平均粒子径を有する非晶質シリカと相対的に大きい平均粒子径を有する非晶質シリカとを混合することによって得ることができる。あるいは、該非晶質シリカは、前記平均粒子径及び/又は前記比(D80/D20)を満足する市販品を用いることができる。
また、最外塗工層は、転写捺染法で従来公知の各種助剤を含有することができる。助剤は、最外塗工層塗工液の各種物性を最適化する、あるいは布帛への染着性を向上させるため等に加えられるものである。助剤は、例えば、各種界面活性剤、pH調整剤、アルカリ剤、濃染化剤、脱気剤及び還元防止剤等を挙げることができる。
濾水度380mlcsfのLBKP100質量部からなるパルプスラリーに、填料として炭酸カルシウム10質量部、両性澱粉1.2質量部、硫酸バンド0.8質量部、アルキルケテンダイマー型サイズ剤0.1質量部を添加して、長網抄紙機で抄造し、サイズプレス装置で両面に、酸化澱粉を片面あたり1.5g/m2付着させ、マシンカレンダー処理をして坪量50g/m2の原紙を作製した。
上記原紙の片面に、高密度ポリエチレンを溶融押し出しダイを用いて厚さ15μmになるように非水系樹脂層を設け、非水系樹脂層を有する基材1を得た。
上記原紙を基材2とした。
水を媒体として、下記の配合で塗工層塗工液を調製した。最終的に、塗工層塗工液の濃度は15質量%とした。
水溶性ポリエステル樹脂 部数は表1及び表2に記載
ポリビニルアルコール樹脂 種類及び部数は表1及び表2に記載
アクリル樹脂 種類及び部数は表1及び表2に記載
澱粉類 部数は表1及び表2に記載
非晶質シリカ 種類及び部数は表1及び表2に記載
硫酸アンモニウム 38質量部
尿素 150質量部
非イオン性界面活性剤 50質量部
消泡剤 15質量部
水溶性ポリエステル樹脂:互応化学工業社 プラスコートRZ-142
ポリビニルアルコール樹脂A:クラレ社 クラレポバールKL506
カルボン酸変性 ケン化度74~80mol%
ポリビニルアルコール樹脂B:クラレ社 クラレポバールKL318
カルボン酸変性 ケン化度85~90mol%
ポリビニルアルコール樹脂C:クラレ社 クラレポバールKL118
カルボン酸変性 ケン化度95~99mol%
ポリビニルアルコール樹脂D:日本合成化学社 ゴーセネックスT-350
カルボン酸変性 ケン化度93~95mol%
ポリビニルアルコール樹脂E:クラレ社 クラレポバール22-88
ケン化度87~89mol%
アクリル樹脂A:ジャパンコーティングレジン社 モビニール731A
Tg=0℃/MFT=0℃
アクリル樹脂B:ジャパンコーティングレジン社 モビニール727
Tg=5℃/MFT=25℃
アクリル樹脂C:ジャパンコーティングレジン社 モビニール6520
Tg=41℃/MFT=50℃
アクリル樹脂D:ジャパンコーティングレジン社 モビニール718A
Tg=-6℃/MFT=0℃
アクリル樹脂E:ジャパンコーティングレジン社 モビニール742A
Tg=45℃/MFT=53℃
澱粉類:ヒドロキシアルキル化澱粉、日澱化學社 ペノンJE-66
非晶質シリカA:OSC社 トクシールGU-N
平均粒子径17.8μm
非晶質シリカB:OSC社 トクシールNP
平均粒子径10.3μm
非晶質シリカC:OSC社 ファインシールX60
平均粒子径6.6μm
非晶質シリカD:水澤化学工業社 ミズカシルP78F
平均粒子径19μm
非晶質シリカE:豊田化工社 シリカゲルA白200アンダー
平均粒子径47μm
塗工層塗工液を、基材の片面上にエアナイフコーターを用いて塗工及び熱風乾燥機を用いて乾燥し、当該塗工層を最外塗工層として、最終的にロール状の転写用紙を作製した。塗工量は20g/m2とした。基材1では、非水系樹脂層を有する側に塗工及び乾燥した。
ロール状の転写用紙に、酸性染料を含む酸性インクをセットしたインクジェットプリンター(VJ-1628TD、武藤工業社製)を用いて、転写用紙の最外塗工層を有する側に酸性インク(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)で評価用図柄を印刷し、最終的にロール状の転写紙を得た。酸性染料を含む酸性インクには、紀和化学工業社製EAインクを用いた。
布帛として前処理をしていないナイロン布を用いた。転写紙の印刷面とナイロン布の捺染する面とを対向させて搬送し、加熱ドラムを備えるロールニップ方式で密着させて加熱及び加圧した。加熱及び加圧の条件は、温度120℃、線圧70kg/cm、時間0.5秒とした。
転写紙が貼り付けた状態にあるナイロン布を、転写紙とナイロン布とを個別にロールに巻き取る方法によって、転写紙をナイロン布から引き剥がした。
転写紙をナイロン布から剥離する様子を目視にて観察し、下記の基準により官能評価した。結果を表1及び表2に記載する。本発明において、評価A~Cであれば、転写紙は、ナイロン布から剥離することができるものとする。
A:スムーズに剥離ができる。
B:上記Aよりも強く引っ張って剥離できる。
C:上記Bよりも速度を落として剥離できる。
D:上記Cよりもさらに低速度で、ゆっくりしか剥離できない。
生産性の観点から好ましくない。
E:転写紙が破損し、剥離が困難である。
転写紙を剥離したロール状のナイロン布を、アンワインダーからワインダーへ搬送し、その間に常圧スチーミング法によって100~105℃、20~30分間の湿熱処理を行った。
スチーミング後、得られたナイロン布に対して水洗、[常温水洗]→[50℃水洗]→「常温水洗]の手順で行った。
ナイロン布に形成された図柄に関して、欠落、色ムラ及び発色低下の観点から、下記の基準で官能評価した。結果を表1及び表2に記載する。本発明において評価がA~Cであれば、転写用紙は、ナイロン布に形成された図柄に欠落、色ムラ及び発色低下など不具合の発生を抑制できるものとする。
A:欠落、色ムラ及び発色低下が認められず、良好。
B:欠落、色ムラ及び/又は発色低下が若干認められるが、概ね良好。
C:上記Bより劣り、欠落、色ムラ及び/又は発色低下が認められ、実用上の下限。
D:上記Cより劣り、欠落、色ムラ及び/又は発色低下が認められ、不良。
表2から、白色顔料の少なくとも一種が非晶質シリカであって、レーザー回折・散乱式粒度分布測定で求められる体積基準である非晶質シリカの平均粒子径が27μm以上40μm以下であることが、好ましいと分かる。
また表2から、非晶質シリカが、レーザー回折・散乱式粒度分布測定で求められる体積基準の粒度分布曲線において、粒子径がゼロを起点とする累積頻度20体積%の粒子径D20とレーザー回折・散乱式粒度分布測定で求められる体積基準の粒度分布曲線において、粒子径がゼロを起点とする累積頻度80体積%の粒子径D80との比(D80/D20)が2.9以上4.5以下であることが、好ましいと分かる。
Claims (3)
- 染料インクで図柄を印刷して得た転写紙と布帛とを密着させて加熱及び加圧することによって染料を転写紙から布帛へ転写させ、転写後、布帛から転写紙を剥離してから布帛をスチーミング処理する転写捺染法に用いる、図柄を印刷する前の転写用紙であって、原紙の片面に1層又は2層以上の非水系樹脂層を有する基材と、前記非水系樹脂層上に1層又は2層以上の塗工層とを有し、基材を基準として最外に位置する最外塗工層が、水溶性ポリエステル樹脂、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂及び澱粉類、並びに白色顔料を少なくとも含有し、前記アクリル樹脂のガラス転移点(Tg)が0℃以上45℃以下かつ最低成膜温度(MFT)が0℃以上50℃以下である転写用紙。
- 前記白色顔料の少なくとも一種に非晶質シリカを含み、レーザー回折・散乱式粒度分布測定で求められる体積基準である前記非晶質シリカの平均粒子径が27μm以上40μm以下である請求項1に記載の転写用紙。
- 前記非晶質シリカが、レーザー回折・散乱式粒度分布測定で求められる体積基準の粒度分布曲線において、粒子径がゼロを起点とする累積頻度20体積%の粒子径D20とレーザー回折・散乱式粒度分布測定で求められる体積基準の粒度分布曲線において、粒子径がゼロを起点とする累積頻度80体積%の粒子径D80との比(D80/D20)が2.9以上4.5以下である請求項2に記載の転写用紙。
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