本発明の実施の形態について、以下に詳細に説明する。本明細書において、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上B以下」を意味する。本明細書に例示の成分や官能基等は、特記しない限り、単独で用いてもよく、2種以上を併用(併存)してもよい。
[感光性組成物]
本発明の感光性組成物は、固形分として、(A)アルカリ可溶性ポリマー、(B)多官能重合性化合物、および(C)光カチオン重合開始剤を含有する。なお、「固形分」とは組成物中の不揮発成分であり、固形分全量とは、組成物の構成成分から溶剤を除外した全量を意味する。
<(A)アルカリ可溶性ポリマー>
感光性組成物は、樹脂バインダー成分としてアルカリ可溶性ポリマー(以下「成分(A)」と記載する場合がある)を含有する。組成物の製膜性、アルカリ溶解性およびパターニング性の観点から、成分(A)の重量平均分子量は、2000~15000が好ましく、3000~13000がより好ましく、3500~12000がさらに好ましく、4000~10000が特に好ましい。成分(A)の分子量が過度に小さいと、露光による硬化後もアルカリ溶解性が残存するため、露光部と非露光部とのコントラストがつけ難くパターニングが困難となる場合がある。一方、成分(A)の分子量が過度に大きいと、アルカリ可溶性基(下記の構造X)の導入量を大きくしても十分なアルカリ溶解性を発揮できない場合がある。
成分(A)としてのアルカリ可溶性ポリマーは、アルカリ可溶性基として、下記式Xで表されるN-モノ置換イソシアヌル酸由来構造(以下「構造X」と記載する)を含む。
構造Xは、2価数の有機酸であり、その第一酸解離定数pKa1は、カルボン酸の酸解離定数pKaと同程度であり、一般的なアルカリ可溶性樹脂に含まれるフェノール性水酸基のpKaよりも小さい。そのため、構造Xを有することにより、成分(A)はアルカリ溶解性に優れ、低濃度のアルカリ溶液や、無機アルカリ溶液に対しても高い溶解性を示す。また、構造Xはカルボキシ基等のアルカリ可溶性基よりもリジッドな構造を有しているため、光硬化後の樹脂組成物(硬化膜)の耐熱性や機械強度向上にも寄与する。
成分(A)における構造Xの含有量は、0.6mmol/g以上が好ましい。構造Xの含有量が0.6mmol/g以上であることにより、低濃度のアルカリ現像液や無機アルカリ現像液を用いた場合でも十分なアルカリ溶解性を示す。
構造Xの含有量の増加に伴ってアルカリ溶解性(溶解速度)が増加する傾向がある。アルカリへの溶解速度を高める観点から、成分(A)における構造Xの含有量は、0.8mmol/g以上がより好ましく、1mmol/g以上がさらに好ましく、1.2mmol/g以上が特に好ましい。
ポリマーにおける構造Xの含有量の理論上限は約6である。構造Xの含有量が過度に大きいと、ポリマー中の構造X以外の骨格の含有量が低下するため、光感度の低下や、硬化膜の強度や耐熱性の低下を招く場合がある。そのため、成分(A)における構造Xの含有量は、4mmol/g以下が好ましく、2.5mmol/g以下がより好ましく、2mmol/g以下がさらに好ましく、1.8mmol/g以下が特に好ましい。
構造Xを含むポリマーは、例えば、モノマー成分として以下の一般式(I)で表されるN-モノ置換イソシアヌル酸を用いることにより合成できる。
一般式(I)の置換基Zとしては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素等のハロゲン;ビニル基、アリル基、ブテニル基およびヘキセニル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基;エポキシ基;クリシジル基;アミノ基;カルボキシ基;イソシアネート基;ヒドロキシ基;ならびにアルコキシシリル基等が挙げられる。置換基Zは、ポリマーの骨格構造や重合反応の種類等に応じて適宜選択すればよい。
成分(A)は、上記の構造X以外のアルカリ可溶性基を有していてもよい。構造X以外のアルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、およびN,N’-ジ置換イソシアヌル酸が挙げられる。
成分(A)は、上記の構造Xに加えて、カチオン重合性官能基を有していてもよい。「カチオン重合性官能基」とは、活性エネルギー線が照射された場合に、光酸発生剤から生成した酸性活性物質によって重合および架橋する官能基を意味する。活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、およびγ線等が挙げられる。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基、およびアルコキシシリル基が挙げられる。安定性の観点から、成分(A)は、カチオン重合性官能基としてエポキシ基を有することが好ましい。エポキシ基の中でも、安定性の観点から、脂環式エポキシ基またはグリシジル基が好ましい。特に、光カチオン重合性に優れることから、脂環式エポキシ基が好ましい。
成分(A)は、1分子中に複数のカチオン重合性官能基を有していてもよい。成分(A)が1分子中に複数のカチオン重合性官能基を有する場合に、架橋密度の高い硬化膜が得られ、耐熱性が向上する傾向がある。複数のカチオン重合性官能基は同一でもよく、2種以上の異なる官能基でもよい。
成分(A)は、カチオン重合性官能基を有していなくてもよい。後述のように、本発明の組成物は、成分(B)として複数のカチオン重合性官能基を有する化合物(多官能重合性化合物)を含有するため、成分(A)が重合性官能基を含んでいない場合でも、光カチオン重合により硬化膜を形成できる。
成分(A)は、構造X以外のポリマー骨格構造を含むことが好ましい。ポリマー骨格構造としては、ポリアクリル、ポリフェノール、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリエステル、ポリハロオレフィン、ポリイミド、ポリイミン、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフェニレン、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリビニル等が挙げられる。
<ポリシロキサン構造を有する成分(A)>
高耐熱性および低誘電率の硬化膜を形成可能であることから、成分(A)はポリシロキサン構造を有することが好ましく、特に環状ポリシロキサン構造を有することが好ましい。
本明細書において、「環状ポリシロキサン構造」とは、環の構成要素にシロキサン単位(Si-O-Si)を有する環状分子構造骨格を意味する。環状ポリシロキサン構造を含有する化合物は、鎖状のポリシロキサン構造のみを含有する化合物と比較して、製膜性および得られる硬化膜の耐熱性に優れる傾向がある。
成分(A)としてのアルカリ可溶性ポリマーは、ポリシロキサン構造を主鎖に含有していてもよく側鎖に含有していてもよい。成分(A)が主鎖にポリシロキサン構造を含有することにより、硬化膜の耐熱性が向上する傾向があり、特に、主鎖に環状ポリシロキサン構造を有する場合は、硬化膜の耐熱性および機械強度に優れる。
環状ポリシロキサン構造は、単環構造でもよく、多環構造でもよい。多環構造は多面体構造でもよい。環を構成するシロキサン単位のうち、T単位(XSiO3/2)またはQ単位(SiO4/2)の含有率が高いほど、得られる硬化膜は硬度が高く、耐熱性に優れる傾向がある。M単位(X3SiO1/2)またはD単位(X2SiO2/2)の含有率が高いほど、得られる硬化膜はより柔軟で低応力となる傾向がある。
アルカリ可溶性基としての構造Xを有するポリシロキサン化合物は、例えば、下記の化合物(α)および(β)を出発物質とするヒドロシリル化反応により得られる。
化合物(α):1分子中に、SiH基(ヒドロシリル基)との反応性を有する炭素-炭素二重結合と、構造Xと、を有する化合物;および
化合物(β):1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリシロキサン化合物。
ヒドロシリル化反応は、化学的に安定なケイ素-炭素結合(Si-C結合)を介してポリシロキサン骨格に構造Xを導入できるとの利点を有する。換言すれば、成分(A)として用いられるポリシロキサン化合物は、ヒドロシリル化反応により有機変性され、ケイ素-炭素結合を介して構造Xが導入されたポリシロキサン化合物であることが好ましい。
(化合物(α):アルカリ可溶性基含有化合物)
化合物(α)は、上記一般式(I)における置換基Zが、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合を含む化合物である。SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合を含む基(以下、単に「アルケニル基」と称することがある)としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2-ヒドロキシ-3-(アリルオキシ)プロピル基、2-アリルフェニル基、3-アリルフェニル基、4-アリルフェニル基、2-(アリルオキシ)フェニル基、3-(アリルオキシ)フェニル基、4-(アリルオキシ)フェニル基、2-(アリルオキシ)エチル基、2,2-ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3-アリルオキシ-2,2-ビス(アリルオキシメチル)プロピル基およびビニルエーテル基等が挙げられる。
SiH基との反応性の観点から、化合物(α)は、一般式(I)における置換基Zが、ビニル基またはアリル基であることが好ましく、中でもモノアリルイソシアヌレート(一般式(I)における置換基Zがアリル基)が好ましい。
(化合物(β):ポリシロキサン化合物)
化合物(β)は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリシロキサン化合物であり、例えば、国際公開第96/15194号に記載の化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。化合物(β)の具体例としては、直鎖構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン、分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサン、およびヒドロシリル基を含有する環状ポリシロキサンが挙げられる。環状ポリシロキサンは多環構造でもよく、多環は多面体構造を有していてもよい。多面体骨格耐熱性および機械強度の高い硬化膜を形成するためには、化合物(β)として、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状ポリシロキサン化合物を用いることが好ましい。化合物(β)は、好ましくは1分子中に3個以上のSiH基を含む。耐熱性および耐光性の観点から、Si原子上に存在する基は、水素原子およびメチル基のいずれかであることが好ましい。
直鎖構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサンとしては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位および末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位および末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位および末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ならびにジメチルハイドロジェンシリル基によって末端が封鎖されたポリシロキサン等が例示される。
分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサンとしては、ジメチルハイドロジェンシリル基によって末端が封鎖されたポリシロキサン、ならびにジメチルハイドロジェンシロキサン単位(H(CH3)2SiO1/2単位)と、SiO2単位、SiO3/2単位およびSiO単位からなる群より選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位とからなるポリシロキサン等が例示される。
環状ポリシロキサンは、例えば下記一般式(II)で表される。
式中のR4、R5およびR6は、それぞれ独立に炭素数1~20の有機基を表す。mは2~10の整数、nは0~10の整数を表す。mは3以上が好ましい。m+nは3~12が好ましい。
R4、R5およびR6としては、C、HおよびOからなる群から選択される元素により構成される有機基が好ましい。R4、R5およびR6の例として、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキルキル基、オキシアルキル基、アリール基等が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基等の環状アルキル基、またはフェニル基が好ましい。化合物(β)の入手性の観点から、R4、R5およびR6は、メチル基、プロピル基、ヘキシル基またはフェニル基であることが好ましい。R4およびR5は、炭素数1~6の鎖状アルキル基であることがより好ましく、メチル基が特に好ましい。
一般式(II)で表される環状ポリシロキサン化合物としては、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1-プロピル-3,5,7-トリハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5-ジハイドロジェン-3,7-ジヘキシル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5-トリハイドロジェン-1,3,5-トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタハイドロジェン-1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロシロキサンおよび1,3,5,7,9,11-ヘキサハイドロジェン-1,3,5,7,9,11-ヘキサメチルシクロシロキサン等が例示される。中でも、入手容易性およびSiH基の反応性の観点から、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(一般式(II)において、m=4、n=0であり、R4がメチル基である化合物)が好ましい。
化合物(β)は、多環の環状ポリシロキサンでもよい。多環は多面体構造でもよい。多面体骨格を有するポリシロキサンは、多面体骨格を構成するSi原子の数が6~24であるものが好ましく、6~10であるものがより好ましい。多面体骨格を有するポリシロキサンの具体例としては、下記一般式(III)で示されるシルセスキオキサン(Si原子数=8)が挙げられる。
上記式中、R10~R17は、それぞれ独立に、水素原子、鎖状アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基等)、アリール基(フェニル基およびトリル基等)、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子またはシアノ基等で置換した基(クロロメチル基、トリフルオロプロピル基およびシアノエチル基等)、アルケニル基(ビニル基、アリル基、ブテニル基およびヘキセニル基等)、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、およびメルカプト基またはアミノ基を含有する有機基等から選択され1価の基である。上記炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10である。多面体骨格を有する環状ポリシロキサンは、ヒドロシリル化反応の反応性基であるヒドロシリル基を2個以上有する。したがって、R10~R17のうち少なくとも2つは水素原子である。
環状ポリシロキサンは、多面体骨格を有するシリル化ケイ酸でもよい。多面体骨格を有するシリル化ケイ酸の具体例としては、下記一般式(IV)で示される化合物(Si原子数=8)が挙げられる。
上記式中、R18~R41は、前述の一般式(III)におけるR10~R17の具体例と同様であり、R18~R41のうち少なくとも2つは水素原子である。
多面体骨格を有するシリル化ケイ酸においては、多面体骨格を構成するSi原子とSiH基(ヒドロシリル化反応の反応性基)とが、シロキサン結合を介して結合しているため、硬化膜に柔軟性を付与できる。
ポリシロキサンは、公知の合成方法により得られる。例えば、一般式(II)で表される環状ポリシロキサンは、国際公開第96/15194号等に記載の方法により合成できる。シルセスキオキサン等の多面体骨格を有するポリシロキサンおよび多面体骨格を有するシリル化ケイ酸は、例えば、特開2004-359933号公報、特開2004-143449号公報、特開2006-269402号公報等に記載の方法により合成できる。化合物(β)として、市販のポリシロキサン化合物を用いてもよい。
(他の出発物質)
ヒドロシリル化反応において、上記の化合物(α)および化合物(β)に加えて、他の出発物質を用いてもよい。例えば、出発物質として、上記の化合物(α)以外のアルケニル基含有化合物を用いてもよい。
成分(A)における構造Xの含有量を高めるためには、出発物質における化合物(α)の比率を高める必要がある。化合物(α)は、ポリシロキサン化合物(化合物(β))のSiH基との反応性を有する官能基(アルケニル基)を1つのみ有するため、化合物(α)と化合物(β)とが反応すると、化合物(α)に由来する構造Xが末端に導入され、ポリマー鎖はそれ以上伸長しない。
成分(A)の分子量を高めるためには、化合物(α)および化合物(β)に加えて、1分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物(以下、「化合物(γ)」)を出発物質として用いることが好ましい。化合物(γ)を用いれば、ヒドロシリル化反応により複数のポリシロキサン化合物(化合物(β))が架橋されるため、成分(A)の分子量が高められ、製膜性および硬化膜の耐熱性が向上する傾向がある。
化合物(γ)は、有機重合体系化合物および有機単量体系化合物のいずれでもよい。有機重合体系化合物としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール-ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)またはポリイミド系の化合物が挙げられる。有機単量体系化合物としては、例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼンまたはナフタレン等の芳香族炭化水素系;直鎖系および脂環系等の脂肪族炭化水素系;複素環系の化合物が挙げられる。
化合物(γ)の具体例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、1,1,2,2-テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルイモノメチルソシアヌレート、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロへキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン、1,3-ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3-ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、1,3,5-トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5-トリス(ビニルオキシ)アダマンタン、ジシクロペンタジエン、ビニルシクロへキセン、1,5-ヘキサジエン、1,9-デカジエン、ジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、2,5-ジアリルフェノールアリルエーテル、およびそれらのオリゴマー、1,2-ポリブタジエン(1,2比率10~100%のもの、好ましくは1,2比率50~100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、その他、従来公知のエポキシ樹脂のグリシジル基の全部をアリル基に置き換えたもの等が挙げられる。
化合物(γ)の分子量が過度に大きいと、成分(A)における構造Xの含有量が小さくなり、アルカリ溶解性が低下する傾向がある。そのため、化合物(γ)の分子量は、500以下が好ましく、400以下がより好ましく、300以下がさらに好ましい。硬化膜の耐熱性および耐光性の観点から、化合物(γ)は、下記一般式(V)で表される化合物であることが好ましい。
式中のR1およびR2はアルケニル基であり、同一でも異なっていてもよい。R3は、炭素数1~50の1価の有機基を表す。
R1およびR2は、前述の化合物(α)におけるアルケニル基と同様のものが好ましく、中でもビニル基およびアリル基が好ましく、アリル基が特に好ましい。硬化膜の耐熱性を高める観点から、R3の炭素数は1~20が好ましく、1~10がより好ましい。R3の具体例は、前述の一般式(III)におけるR10~R17具体例と同様である。R3は、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。R3はカチオン重合性官能基を含んでいてもよい。化合物(γ)の好ましい例としては、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、およびトリアリルイソシアヌレートが挙げられる。ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートは、アルケニル基とカチオン重合性官能基とを有するため、後述の「化合物(δ)」にも分類され得る。
化合物(α)および化合物(β)に加えて、1分子中にSiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合とカチオン重合性官能基とを有する化合物(以下、「化合物(δ)」)を出発物質として用いることにより、成分(A)にカチオン重合性官能基を導入できる。成分(A)がカチオン重合性官能基を有する場合は、光カチオン重合により、成分(A)が後述の成分(B)により架橋されるため、硬化膜の機械強度や耐熱性のさらなる向上が期待できる。
化合物(δ)におけるカチオン重合性官能基は、前述の成分(A)が有するカチオン重合性官能基と同一であり、好ましい態様も同様である。すなわち、化合物(δ)は、カチオン重合性官能基としてエポキシ基を含むことが好ましく、特に脂環式エポキシ基を含むものが好ましい。化合物(γ)におけるSiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合を含む官能基(アルケニル基)は、前述の化合物(α)におけるアルケニル基と同様のものが好ましい。
カチオン重合性官能基としてエポキシ基を有する化合物(δ)の具体例としては、ビニルシクロヘキセンオキシド、アリルグリシジルエーテル、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートおよびモノアリルジグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。光カチオン重合における反応性の観点から、化合物(δ)は脂環式エポキシ基を有する化合物が好ましく、ビニルシクロヘキセンオキシドが特に好ましい。
グリシジル基はカチオン重合性を有するため、アリルグリシジルエーテル、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートおよびモノアリルジグリシジルイソシアヌレート等は、化合物(δ)に分類される。ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートは、2つのアルケニル基と1つの光カチオン重合性官能基(エポキシ基)を有するため、上記の化合物(γ)にも分類される。
化合物(δ)として、グリシジル基よりもカチオン重合性の高い官能基を含む化合物(例えば、ビニルシクロヘキセンオキシド等の脂環式エポキシ基を含有する化合物)を用いる場合、主に脂環式エポキシ基がカチオン重合に関与するため、グリシジル基のカチオン重合への寄与は小さい。一方、成分(A)がグリシジル基を含む場合に、組成物における充填材や着色剤等の分散性が向上する傾向があり、未硬化の塗膜がアルカリ現像液に均一に溶解しやすくなる。そのため、感光性組成物が充填剤や着色剤を含有する場合は、ヒドロシリル化反応の出発物質として、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートおよびモノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のグリシジル基を含む化合物を用いることが好ましい。
化合物(δ)のカチオン重合性官能基は、ビニルエーテル基、オキセタン基、およびアルコキシシリル基等でもよい。カチオン重合性官能基としてアルコキシシリル基を有する化合物(δ)の具体例としては、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、メチルジエトキシビニルシラン、メチルジメトキシビニルシランおよびフェニルジメトキシビニルシラン等のアルコキシシラン類等が挙げられる。カチオン重合性官能基としてビニルエーテル基を有する化合物(δ)としては、プロペニルエテニルエーテル等が挙げられる。カチオン重合性官能基としてオキセタン基を有する化合物(δ)としては、2-ビニルオキセタン、3-アリルオキシオキセタンおよび(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレート等が挙げられる。
ヒドロシリル化反応の出発物質として、1分子中に、ヒドロシリル化反応に関与する官能基を1個のみ有する化合物(以下「化合物(ε)」)を用いてもよい。ヒドロシリル化反応に関与する官能基とは、SiH基、またはアルケニル基である。ヒドロシリル化反応に関与する官能基を1つのみ含む化合物を用いることにより、ポリマーの末端に特定の官能基を導入できる。
例えば、化合物(ε)として1つのSiH基を有するシロキサン化合物を用いることにより、ポリマーの末端にシロキサン構造部位を導入できる。1つのSiH基を有するシロキサン化合物の具体例としては、前述の一般式(II)においてm=1である環状ポリシロキサン化合物、前述の一般式(III)においてR10~R17のうち1つが水素原子である多面体ポリシロキサン化合物、前述の一般式(IV)においてR18~R41のうち1つが水素原子であるシリル化ケイ酸化合物等が挙げられる。1つのSiH基を有するシロキサン化合物は、鎖状シロキサン化合物でもよい。
化合物(ε)として、1つのアルケニル基を含む化合物を用いることにより、ポリマーの末端に所望の官能基を導入できる。上記の他に、2個以上のSiH基を有する鎖状ポリシロキサン等のヒドロシリル化反応に関与する化合物を、出発物質に含めてもよい。
化合物(α)に代えて、一般式(I)においてSiH基を含む置換基Zを有する化合物を用いて、成分(A)を得ることもできる。この場合、SiH基と構造Xとを含む化合物と、アルケニル基を有するポリシロキサン化合物とのヒドロシリル化反応により、構造Xを有するポリシロキサン化合物が得られる。環状ポリシロキサン化合物として、複数のアルケニル基を有する化合物を用いてもよい。また、化合物(δ)に代えてカチオン重合性官能基とSiH基とを含む化合物を用いれば、構造Xに加えてカチオン重合性官能基を有する成分(A)が得られる。
アルケニル基を含有する環状シロキサン化合物としては、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1-プロピル-3,5,7-トリビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5-ジビニル-3,7-ジヘキシル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5-トリビニル-1,3,5-トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタビニル-1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロシロキサンおよび1,3,5,7,9,11-ヘキサビニル-1,3,5,7,9,11-ヘキサメチルシクロシロキサン等が挙げられる。アルケニル基を有する環状ポリシロキサン化合物は、耐熱性および耐光性の観点から、Si原子上に存在する有機基が、ビニル基またはメチル基であることが好ましい。
(ヒドロシリル化反応)
ヒドロシリル化反応の順序および方法は特に限定されない。例えば、国際公開第2009/075233号に記載の方法に準じたヒドロシリル化反応により、成分(A)が得られる。合成工程を簡便とする観点からは、全ての出発物質を1ポットに仕込んでヒドロシリル化反応を行い、最後に未反応の化合物を除去する方法が好ましい。一方、低分子量体の生成を抑制する観点からは、複数のアルケニル基を含む化合物(例えば化合物(γ))と複数のSiH基を含む化合物(例えば化合物(β))とを、一方を過剰量としてヒドロシリル化反応を行い、未反応の化合物を除去後に、1分子中にヒドロシリル化反応に関与する官能基を1個のみ有する化合物(例えば化合物(α)、化合物(δ)および/または化合物(ε))添加してヒドロシリル化反応を行う方法が好ましい。化合物(α)に由来する構造Xの導入量を一定としてアルカリ溶解性を高め、かつ低分子量体の生成を抑制する観点からは、化合物(α)、化合物(β)および化合物(γ)を用いてヒドロシリル化反応を行った後に、化合物(δ)を添加して、未反応のSiH基と化合物(δ)とのヒドロシリル化反応により、カチオン重合性官能基を導入することが好ましい。
ヒドロシリル化反応における各化合物の割合は特に限定されないが、出発物質のアルケニル基の総量AとSiH基の総量Bとが、1≦B/A≦30を満たすことが好ましく、1≦B/A≦10を満たすことがより好ましい。B/Aが1以上であれば、未反応のアルケニル基が残存し難く、B/Aが30以下であれば、未反応のSiH基が残存しにくいため、硬化膜の特性を向上できる。
出発物質における化合物(α)と化合物(β)の仕込み量を調整することにより、成分(A)における構造Xの含有量を所望の範囲とすることができる。成分(A)における構造Xの含有量を上述の範囲とするためには、化合物(β)由来のSiH基の総量(モル数)は、化合物(α)の1.5~15倍が好ましく、2~10倍がより好ましく、2.5~6倍がさらに好ましい。
ヒドロシリル化反応には、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体等のヒドロシリル化触媒を用いてもよい。ヒドロシリル化触媒と助触媒とを併用してもよい。ヒドロシリル化触媒の添加量は特に限定されないが、出発物質に含まれるアルケニル基の総量(モル数)に対して、好ましくは10-8~10-1倍、より好ましくは10-6~10-2倍である。
ヒドロシリル化の反応温度は適宜に設定すればよく、好ましくは30~200℃、より好ましくは50~150℃である。ヒドロシリル化反応における気相部の酸素体積濃度は3%以下が好ましい。酸素添加によるヒドロシリル化反応促進の観点からは、気相部には、0.1~3体積%程度の酸素が含まれていてもよい。
ヒドロシリル化反応には、溶媒を使用してもよい。溶媒としては、ベンゼン、トルエン、ヘキサンおよびヘプタン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソランおよびジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトンおよびメチルエチルケトン等のケトン系溶媒;クロロホルム、塩化メチレンおよび1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。反応後の留去が容易であることから、トルエン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソランまたはクロロホルムが好ましい。ヒドロシリル化反応においては、必要に応じて、ゲル化抑制剤を用いてもよい。
上記のように、成分(A)は、構造Xを0.6mmol/g以上含有するため、成分(A)を含む組成物は、高いアルカリ可溶性を有する。構造Xは1価の有機基に由来するため、構造Xの含有量を高めると、成分(A)に導入可能なカチオン重合性官能基の量が小さくなる。成分(A)における構造Xの含有量が0.6mmol/g以上の場合、カチオン重合性感応基の含有量の上限は、3mmol/g程度であり、構造Xの含有量が大きくなるほど導入可能なカチオン重合性官能基の量が小さくなる。これに伴って、成分(A)は単独では架橋密度が小さく、光感度の上昇や、硬化後の膜強度を十分に高めることが困難となる場合がある。
<(B)多官能重合性化合物>
感光性組成物は、上記の成分(A)に加えて、1分子中に複数のカチオン重合性官能基を有する多官能重合性化合物(以下「成分(B)」と記載する場合がある)を含有する。組成物が成分(B)を含有することにより、光カチオン重合の反応点(架橋点)が増加するため、光感度が上昇し、露光時の硬化速度が高められ、露光時間を短縮できる。そのため、成分(A)のカチオン重合性官能基の量が少ない場合や、成分(A)がカチオン重合性官能基を含んでいない場合でも、成分(B)を用いることにより、組成物の光感度を高め、機械強度や耐熱性に優れる硬化膜を形成できる。なお、複数のカチオン重合性官能基を有する化合物であっても、上記の構造(X)を有するものは、成分(B)には含まれず、上記の成分(A)に該当する。
成分(B)のカチオン重合性官能基の例としては、前述の成分(A)が有するカチオン重合性官能基として例示したものが挙げられる。成分(B)のカチオン重合性官能基は、成分(A)のカチオン重合性官能基と同一でもよく、異なっていてもよい。カチオン重合反応性が高いことから、成分(B)は、カチオン重合性官能基として脂環式エポキシ基を有することが好ましい。特に好ましい形態では、成分(A)がカチオン重合性官能基として脂環式エポキシ基を含有し、かつ成分(B)が1分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有する。
1分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有する化合物としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル製「セロキサイド2021P」)、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル製「セロキサイド2081」)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、下記式S1のエポキシ変性鎖状シロキサン化合物(信越化学製「X-40-2669」)、および下記式S2のエポキシ変性環状シロキサン化合物(信越化学製「KR-470」)等が挙げられる。
中でも、成分(B)として、1分子中に3個以上の脂環式エポキシ基を有する化合物を配合した場合に、硬化速度の向上効果が顕著となる傾向がある。特に、成分(A)が環状ポリシロキサン骨格を有し、かつ成分(B)が上記の式S2の化合物のように環状ポリシロキサン骨格を有する化合物である場合は、組成物中の成分(B)の含有量を増加させた場合でも、成分(A)の高耐熱性および低誘電性を維持できるため好ましい。
感光性組成物の硬化速度向上と硬化膜の物性バランスとを両立する観点から、感光性組成物における成分(B)の含有量は、成分(A)100重量部に対して5~300重量部である。組成物が成分(B)を含まない場合や、成分(B)の含有量が小さい場合は、光感度が低いため、露光時間が長くなったり、露光部と非露光部とのコントラスト向上が困難となる傾向がある。一方、成分(B)の含有量が過度に大きくなると、相対的に成分(A)の含有量が小さくなり、アルカリ溶解性が低下する傾向がある。
感光性組成物における成分(B)の含有量は、成分(A)100重量部に対して、7~250重量部が好ましく、10~200重量部がより好ましく、15~150重量部がさらに好ましい。成分(B)の含有量は、成分(A)100重量部に対して、30重量部以上、40重量部以上、50重量部以上、60重量部以上または70重量部以上であり得る。特に、成分(A)がカチオン重合性官能基を有していない場合や、成分(A)のカチオン重合性官能基量が少ない場合(例えば、1mmol/g以下の場合)は、成分(B)の含有量を大きくすることが好ましい。
<(C)光カチオン重合開始剤>
感光性組成物は、光カチオン重合開始剤を含有する。光カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により、酸性活性物質が生成する化合物(光酸発生剤)である。光酸発生剤から生成した酸により、成分(B)のカチオン重合性官能基が反応し、組成物が光硬化する。成分(A)がカチオン重合性官能基を有する場合は、光酸発生剤から発生した酸により、成分(A)および成分(B)のカチオン重合性官能基が反応して、組成物が光硬化する。
光カチオン重合開始剤としては、スルホネートエステル類、カルボン酸エステル類、オニウム塩類等の公知の光酸発生剤を適用可能であり、オニウム塩類が特に好ましい。
オニウム塩としては、テトラフルオロボレート(BF4
-)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6
-)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6
-)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6
-)、ヘキサクロルアンチモネート(SbCl6
-)、テトラフェニルボレート、テトラキス(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロメチルフェニル)ボレート、フルオロアルキルフルオロホスフェート、過塩素酸イオン(ClO4
-)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3
-)、フルオロスルホン酸イオン(FSO3
-)、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸アニオンおよびトリニトロトルエンスルホン酸アニオン等のアニオンを有するスルホニウム塩およびヨードニウム塩が挙げられる。光カチオン重合開始剤は、ヨードニウム塩であることが好ましく、芳香族系ヨードニウム塩が特に好ましい。
光カチオン重合開始剤における陰イオンを酸強度が強いものから順に並べるとSbF6
-、フルオロアルキルフルオロホスフェート、B(C6F5)4
-、PF6
-、CF3SO3
-、HSO4
-となる。光酸発生剤の陰イオンの酸強度が強いものほど、残膜率が高くなる傾向にある。光酸発生剤から発生する酸のpKaは、好ましくは3未満、さらに好ましくは1未満である。pKaが小さくかつ安定性が高いことから、光カチオン重合剤としては、フルオロアルキルフルオロホスフェートが特に好ましい。
感光性組成物における光カチオン重合開始剤の含有量は、特に制限はない。硬化速度および硬化膜の物性バランスの観点から、光カチオン重合開始剤の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して0.1~20重量部が好ましく、0.5~15重量部がより好ましく、1~10重量部がさらに好ましい。
<(D)増感剤>
感光性組成物は、増感剤を含んでいてもよい。増感剤を用いることにより、パターニング時の露光感度が向上する。増感剤としては、アントラセン系増感剤が好ましい。アントラセン系化合物の具体例としては、アントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジメチルアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン(DBA)、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、1,4-ジメトキシアントラセン、9-メチルアントラセン、2-エチルアントラセン、2-tert-ブチルアントラセン、2,6-ジ-tert-ブチルアントラセン、9,10-ジフェニル-2,6-ジ-tert-ブチルアントラセン等が挙げられる。中でも、感光性組成物との相溶性の観点から、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン等が好ましい。
感光性組成物における増感剤の含有量は、特に制限はないが、硬化性および硬化膜の物性バランスの観点から、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して0.01~20重量部が好ましく、0.1~15重量部がより好ましく、0.5~10重量部がさらに好ましい。増感剤の量が少ないと、感度向上効果が十分に得られない場合がある。増感剤の量が多いと、薄膜から発生するアウトガスの増加や耐光性の低下を生じる場合がある。
<溶剤>
上記の成分(A)~(C)、および必要に応じて成分(D)を、溶剤中に溶解または分散させることにより、感光性組成物が得られる。感光性組成物は、各成分を製膜直前に混合調製してもよく、全成分を予め混合調製した一液の状態で貯蔵しておいてもよい。
溶剤は成分(A)を溶解可能であればよく、具体的には、ベンゼン、トルエン、ヘキサンおよびヘプタン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソランおよびジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(PGMEA)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルおよびエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶剤;クロロホルム、塩化メチレンおよび1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶剤等が挙げられる。製膜安定性の観点から、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテートおよびジエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
溶剤の使用量は適宜設定され得る。感光性組成物の固形分1gに対する溶剤の好ましい使用量は0.1~10mLである。溶剤の使用量が少ないと、低粘度化等の溶媒を用いることの効果が得られにくい場合がある。溶剤の使用量が多いと、製膜均一性が悪化する場合がある。
<その他の成分>
感光性組成物は、上記(A)~(D)以外の樹脂成分や添加剤等を含有していてもよい。例えば、感光性組成物は、塩基性化合物を含有していてもよい。塩基性化合物は、露光によって光カチオン重合開始剤から生じたルイス酸のクエンチャーとなり、未露光部へのカチオンの拡散抑制するため、解像度の向上に寄与し得る。
ルイス酸のクエンチャーとして作用する塩基性化合物としては、第一級、第二級および第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、アミド誘導体およびイミド誘導体等が挙げられる。これらの中でも、酸捕捉能の観点から、芳香族アミン類、複素環アミン類、およびこれらの誘導体が好ましい。
芳香族アミン類および複素環アミン類としては、アニリン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、フラザン、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、インドール、イソインドール、1H-インダゾール、インドリン、キノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、プリン、プテリジン、カルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、フェナジン、1,10-フェナントロリン、アデニン、アデノシン、グアニン、グアノシン、ウラシルおよびウリジン、2,6-ルチジン等が例示される。中でも、モルホリン誘導体が好ましい。モルホリン誘導体の具体例としては、ビス(2-モルホリノエチル)エーテル(BME)等が挙げられる。
感光性組成物にルイス酸のクエンチャーとして塩基性化合物を含める場合、その含有量は、光カチオン重合開始剤100重量部に対して0.5~50重量部が好ましく、1~45重量部がより好ましく、2~40重量部がさらに好ましい。光カチオン重合開始剤100重量部に対する塩基性化合物の含有量が0.5重量部以上であれば、プロセスマージン、解像度および貯蔵安定性の向上効果が期待できる。光カチオン重合開始剤100重量部に対する塩基性化合物の含有量が50重量部以下であれば、硬化膜の物性の低下を抑制できる。
感光性組成物は、特性改質等の目的で、種々の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂シクロオレフィン系樹脂、オレフィン-マレイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、天然ゴムおよびEPDM等のゴム状樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基およびアルコキシシリル基等の架橋性基を有していてもよい。
感光性組成物は、上記の他に、接着性改良剤、シランカップリング剤等のカップリング剤、劣化防止剤、重合禁止剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、イオントラップ剤(アンチモン-ビスマス等)、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤および物性調整剤等を、本発明の目的および効果を損なわない範囲において含有していてもよい。
感光性組成物は、充填材や着色剤を含んでいてもよい。充填材としては、シリカ系充填材(石英、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカおよび超微粉無定型シリカ等)、窒化ケイ素、銀粉、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、カーボンブラック、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウムおよび無機バルーン等が挙げられる。着色剤としては、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。
成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の合計量は、感光性組成物の固形分全量の50重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましく、70重量%以上がさらに好ましい。組成物中の充填材や着色剤の含有量が過度に大きくなると、分散性が低下して、未露光部分の塗膜の溶解性が不均一となる場合がある。前述のように、成分(A)としてグリシジル基を含むシロキサン化合物を用いることにより、フィラーや着色剤等の分散性が向上する傾向があり、未硬化の塗膜がアルカリ現像液に均一に溶解しやすくなる。
[製膜およびパターン硬化膜の形成]
上記感光性組成物は、アルカリ可溶性基を有する成分(A)、複数のカチオン重合性官能基を有する成分(B)、および光カチオン重合開始剤(C)を含有するため、ネガ型感光性組成物として適用可能である。ネガ型感光性組成物は、塗膜を形成後に、露光およびアルカリ現像によるパターニングが可能であり、その後ポストベイクすることにより、パターン硬化膜を形成できる。
感光性組成物を各種基材上に塗布する方法は、均一に塗布が可能である方法であれば特に限定されず、スピンコーティングおよびスリットコーティング等の一般的なコーティング法を使用できる。露光前に、溶剤乾燥の目的での加熱(プリベイク)を行ってもよい。加熱温度は適宜設定され得るが、好ましくは60~200℃、より好ましくは80~150℃である。さらに、露光前に真空脱揮を行ってもよい。真空脱揮は加熱と同時に行われてもよい。
露光の光源は、感光性組成物に含まれる光カチオン重合開始剤および増感剤の感度波長に応じて選択すればよい。通常は、200~450nmの範囲の波長を含む光源(例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプまたは発光ダイオード等)が用いられる。
露光量は特に制限されないが、好ましくは1~8000mJ/cm2、より好ましくは3~3000mJ/cm2である。露光量が過度に少ないと硬化が不十分となりパターンのコントラストが低下する場合があり、露光量が過度に多いとタクトタイムの増大による製造コスト増加を招く場合がある。
露光時間短縮の観点から、露光量は1000mJ/cm2以下が好ましく、500mJ/cm2以下がより好ましく、200mJ/cm2以下がさらに好ましく、100mJ/cm2以下が特に好ましい。本発明の感光性組成物は、多官能重合性化合物(成分(B))を含むため、光感度が高く、露光量が小さい場合でも、露光部と非露光部とのコントラストが高いパターン硬化膜を形成できる。
硬化反応を促進させる目的で、露光後、現像前に熱を加えて、ポストエクスポージャーベイク(PEB)を行ってもよい。本発明の感光性組成物は光感度に優れるため、PEBを行わなくてもパターンの形成が可能であり、プロセス性に優れる。
露光後の塗膜の現像方法は特に限定されない。例えば、浸漬法またはスプレー法等により塗膜にアルカリ溶液を接触させ、未露光部を溶解および除去することにより所望のパターンを形成できる。アルカリ現像液は、一般に使用されるものを特に限定なく使用できる。アルカリ現像液の具体例としては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液およびコリン水溶液等の有機アルカリ水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液および炭酸リチウム水溶液等の無機アルカリ水溶液等が挙げられる。
露光部と未露光部とのコントラストを高める観点から、現像液のアルカリ濃度は25重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。溶解速度の調整等を目的として、現像液はアルコールおよび界面活性剤等を含有していてもよい。
コストおよび環境負荷低減の観点から、希薄無機アルカリ現像液が好ましく、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の現像液が好ましい。本発明の感光性組成物は、成分(A)が所定量の構造Xを有し、アルカリ溶解性が高いため、希薄無機アルカリ現像液を用いた場合にも、パターン像を高い解像度で高精細に形成することが可能である。無機アルカリ現像液の濃度は、1重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がより好ましく、0.3重量%以下がさらに好ましく、0.1重量%以下が特に好ましい。
アルカリ現像後のポストベイク条件は適宜に設定され得る。ポストベイク温度は、好ましくは100~400℃、より好ましくは120~350℃である。
上記のように、本発明の感光性組成物は、アルカリ現像性透明レジストとして使用可能であり、特にFPD用材料として好適な材料である。より具体的には、TFT用パッシベーション膜、TFT用ゲート絶縁膜、TFT用層間絶縁膜、TFT用透明平坦化膜、液晶セル用フォトスペーサー材料、OLED素子用透明封止材料等が挙げられる。また、本発明の感光性組成物は、カラーフィルターやブラックマトリクス等の着色膜の材料として使用することもできる。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(合成例1)
500mL四つ口フラスコに、トルエン40gおよび1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン20.0g(83.2mmol)を入れて気相部を窒素置換した後、内温105℃とした。ここに、アルルモノマーとしてのモノアリルイソシアヌレート12.8g(75.7mmol)およびジアリルモノグリシジルイソシアヌレート10g(37.7mmol)と、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有)0.03gと、ジオキサン100gとの混合液(アリルモノマー溶液)を滴下した。
1H-NMRによってアリル基が消失したことを確認した後、トルエン15gおよびビニルシクロヘキセンオキシド13.5g(108.7mmol)の混合液を滴下した。1H-NMRによってビニル基が消失したことを確認し、冷却により反応を終了した。トルエン、ジオキサンを減圧留去し、ポリシロキサン系化合物1(ポリマー)を得た。
(合成例2~7)
アリルモノマー溶液のアリルモノマーの種類および仕込み量、ならびにビニルシクロヘキセンオキシドの仕込み量を、表1に示すように変更した。それ以外は合成例1と同様にして、ポリシロキサン系化合物2~7を得た。なお、合成例4では、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンとモノアリルイソシアヌレートおよびジアリルモノメチルイソシアヌレートとを反応させ、アリル基の消失を確認して反応を終了し、ビニルシクロヘキセンオキシドの滴下は行わなかった。
合成例1~7におけるモノマーの仕込み量、ならびに、得られた化合物1~7のそれぞれの重量平均分子量(Mw)および構造Xの含有量を表1に示す。表1において、モノマーは以下の略称で記載している。
TMCTS:1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン
MAIC:モノアリルイソシアヌレート
DAIC:ジアリルイソシアヌレート
DA-MGIC:ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート
MeDAIC:ジアリルモノメチルイソシアヌレート
VCHO:ビニルシクロヘキセンオキシド
重量平均分子量は、東ソー製 HLC-8220GPC(カラム:TSKgel GMHXL(2本)、TSKgel G3000HXL(1本)、TSKgel G2000HXL(1本))を用い、THFを溶媒として、流速1.0mL/分で測定したクロマトグラムから、標準ポリスチレン換算により算出した。
[実施例1~5および比較例1~5]
(感光性組成物の調製)
成分(A):アルカリ可溶性ポリマーとして、上記の合成例で得られた化合物1~7;成分(B):多官能重合性化合物として、脂環式エポキシ変性環状ポリシロキサン(信越化学工業製「KR-470」)、または3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル製「セロキサイド2021P」);成分(C):光カチオン重合開始剤として、フッ素化アルキルリン酸ヨードニウム塩(サンアプロ製「Ik-1」);成分(D):増感剤としてジブトキシアントラセン(DBA;川崎化成工業製);および溶剤(PGMEA)を、表2に記載の割合(重量部)で配合して、感光性組成物を調製した。
[評価]
(アルカリ溶解速度)
50×50mmの無アルカリガラス基板上に、実施例および比較例の感光性組成物を、ポストベイク後の膜厚2.0μmとなるようスピンコートにより塗布し、ホットプレートにて100℃で2分プリベイクして、樹脂膜を形成した。樹脂膜が形成されたガラス基板を、23℃のアルカリ現像液(0.04%KOH水溶液)に30秒浸漬し、現像処理を行った。プリベイク後(現像処理前)の膜厚D0および現像処理後の膜厚D1を接触式段差計(アルバック製「Dektak」により測定し、下記式からアルカリ溶解速度を算出した。
溶解速度=(D0-D1)/処理時間
(光感度)
上記と同様にしてガラス基板上への感光性組成物の塗布およびプリベイクを行って樹脂膜を形成し、マスクアライナー(MA-1300、大日本科研製)を用いてフォトマスク(ライン/スペース=20μm/20μm)越しに露光した後、23℃のアルカリ現像液(0.04%KOH水溶液)に70秒浸漬し、現像処理を行った。さらにオーブンにて230℃で30分ポストベイクを行って硬化膜を形成した。積算露光量を10mJ/cm2単位で変化させ、それぞれの硬化膜について、ラインアンドスペース部をレーザー顕微鏡(オリンパス製OLS4000)にて観察して、断面プロファイルを測定した。ライン幅が20±0.5μmとなる最小露光量を評価した。露光量の数値が小さいほど、感度が良好であり、短時間の露光によるパターニングが可能である。なお、アルカリ溶解性の乏しい比較例2~4については、光感度の評価を行わなかった。
実施例および比較例の感光性組成物の配合、ならびに評価結果を表2に示す。アルカリ溶解性試験において、比較例2~4では、現像処理の前後で明確な膜厚差がみられなかったため、溶解速度を1未満とした。比較例5では30秒後に膜が完全に溶解していたため、溶解速度を67nm/秒以上とした。光感度試験において、比較例5は、積算露光量を1000mJ/cm2まで高めてもライン幅が20±0.5μmのパターンを得られなかったため、評価を「×」とした。
実施例1~5の組成物は、いずれもアルカリ溶解性溶解速度が30nm/秒を上回っており、低濃度の無機アルカリ溶液に対しても高い溶解性を示した。また、実施例1~5の組成物は、いずれも100mJ/m2未満の露光量で高コントラストのパターニングが可能であり、光感度に優れていた。
比較例5の組成物は、アルカリ溶解性に優れていたが、ポリマー(化合物7)の分子量が小さいために、露光部もアルカリ溶解性を示し、パターニングが困難であった。分子量12000のポリマー(化合物2)を用いた実施例3では、ポリマーの溶解性が低いため、実施例1,2,4,5に比べてアルカリ溶解速度が低下していた。
比較例1では、実施例1,2と同一のポリマー成分(A)を用いたが、実施例1,2に比べて光感度が小さく、高コントラストのパターン膜を形成するための露光量が大きくなっていた。実施例1と実施例2との対比では、4官能の成分(B)を用いた実施例1の方が、高い光感度を示した。
比較例1の組成物は成分(B)を含まないために、組成物中の重合性官能基の密度が低く、光感度が低下したと考えられる。一方、成分(A)としてカチオン重合性官能基を含まないポリマー(化合物4)を用いた実施例5は、比較例1よりも低露光量でパターニングが可能であった。これらの結果から、多官能重合性化合物(成分(B))を用いることにより、光感度を向上できることが分かる。また、実施例1と実施例2との対比から、成分(B)の1分子中のカチオン重合性官能基数が大きいほど、架橋構造が形成されやすく、低露光量でも硬化が可能であることが分かる。
実施例1および実施例2と同一のポリマー成分(A)を用い、成分(B)の含有量を高めた比較例2では、アルカリ溶解性が低下していた。比較例2におけるアルカリ溶解性の低下は、成分(B)の含有量の増加に伴って成分(A)の相対的な含有量が低下し、これに伴って構造Xの密度が低下したことに起因すると考えられる。構造Xを含まないポリマー(化合物5)を用いた比較例3、および構造Xの含有量が小さいポリマー(化合物6)を用いた比較例4においても、比較例2と同様に、アルカリ溶解性が不足していた。
以上の結果から、アルカリ可溶性の高い構造Xを所定量含有し、かつ分子量を所定範囲に調整したポリマー(成分(A))を用い、当該ポリマーと、所定量の多官能重合性化合物とを併用した感光性組成物は、高いアルカリ溶解性と光感度とを両立可能であることが分かる。