本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。また、本明細書において、「wt%」は「重量%」を意味する。
〔1.ポジ型感光性組成物〕
本ポジ型感光性組成物は、(A)酸の作用によりアルカリ溶解性が増大するポリシロキサン化合物、(B)光酸発生剤および(C)分子量が220以上である塩基性化合物、を含有する。上記ポジ型感光性組成物は、露光波長365nm〜425nmの範囲に感度を有する。また、上記ポジ型感光性組成物では、上記(B)光酸発生剤の重量部に対する上記(C)分子量が220以上である塩基性化合物の重量部の比が0.02〜0.5である。
なお、以下では上記(A)酸の作用によりアルカリ溶解性が増大するポリシロキサン化合物を単に「(A)ポリシロキサン化合物」と称し、上記(C)分子量が220以上である塩基性化合物を単に「(C)塩基性化合物」と称する場合もある。また、本明細書において、「硬化膜」とは、「ポジ型感光性組成物を硬化させて得られる膜」を意図する。また、本明細書において、「信頼性」とは、絶縁性に対する信頼性(絶縁信頼性)を意図する。
本ポジ型感光性組成物は、上記構成を備えるがゆえに、感度とプロセスマージンに優れ、高信頼性の硬化膜を与え得る。
すなわち、本ポジ型感光性組成物は、(A)ポリシロキサン化合物の使用により高信頼性の硬化膜を与えることができる。また、本ポジ型感光性組成物は、(B)光酸発生剤の使用により活性エネルギー(光)に対して高い感度を示す。さらに、本ポジ型感光性組成物は、(B)光酸発生剤および(C)塩基性化合物を組み合わせて使用し、かつ(C)塩基性化合物の分子量を特定の分子量とし、(C)塩基性化合物の含有量を特定の割合とすることにより、露光部分と未露光部分とのコントラストが明確になり、優れたプロセスマージンを示す。
以下に(A)ポリシロキサン化合物、(B)光酸発生剤および(C)塩基性化合物の各成分について説明する。
<1−1.(A)ポリシロキサン化合物>
本ポジ型感光性組成物は、(A)ポリシロキサン化合物として、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大するポリシロキサン化合物を含有する。
本明細書において、「ポリシロキサン化合物」とは、シロキサン単位Si−O−Siを有する化合物を意図する。
また、本明細書において、「酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する」とは、「光酸発生剤から発生する酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有する」ことを意図する。このような(A)ポリシロキサン化合物を(B)光酸発生剤成分と併せて用いることによりポジ型のパターンを形成することができる。
すなわち、(A)ポリシロキサン化合物は、「シロキサン単位Si−O−Siを有する化合物」を主骨格として、「光酸発生剤から発生する酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造」が導入されている。(A)ポリシロキサン化合物は、「シロキサン単位Si−O−Siを有する化合物」と、「光酸発生剤から発生する酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有する化合物」との反応によって得られるものであってもよい。Si−C結合によって安定性に優れるという観点からは、(A)ポリシロキサン化合物は、ヒドロシリル化反応によって得られるものであることがより好ましい。
上記酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造としては、特に限定されないが、パターニング性および硬化膜の絶縁性に優れるという観点からは、官能基保護されたフェノール構造および/または官能基保護されたカルボン酸構造であることが好ましい。
本明細書において、官能基保護されたフェノール構造とは、フェノール構造の水酸基の水素原子が化合物残基に置換された構造をいう。
上記官能基保護されたフェノール構造は、パターニング性および硬化膜の絶縁性に優れるとの効果をより顕著に享受できることから、官能基保護されたビスフェノール構造であることが好ましく、トリアルキルシリル基またはブトキシカルボニル基で官能基保護されたビスフェノール構造であることがより好ましい。
また、上記化合物残基は、炭素数1〜50の有機基または有機ケイ素基であることが好ましい。
上記化合物残基として炭素数1〜50の有機基または有機ケイ素基を有する官能基保護されたビスフェノール構造を有する化合物は、下記一般式(II)で示される。
(一般式(II)中、R6は炭素数1〜50の有機基または有機ケイ素基を示し、R7はビスフェノール構造として取り得る構造であればよい。また、芳香環上の水素は置換されていてもよい)
上記官能基保護されたフェノール構造を有する化合物(特に、一般式(II)で示される官能基保護されたビスフェノール構造を有する化合物)を得る方法としては、例えば、活性水素と反応性に富む化合物を用いる方法およびBoc化試薬を用いてtertブトキシカルボニル基により保護する方法等を用いることができる。これらの方法において、効率良く目的の化合物を得るために、適宜、溶剤および/または触媒を使用してもよい。
上記官能基保護されたフェノール構造を有する化合物が、ヒドロシリル化反応性基であるSiH基等を有する場合には、安定性の面から、活性水素と反応性に富む化合物を用いる方法が好ましい。
上記活性水素と反応性に富む化合物としては、例えば、ハロゲン化物、カルボン酸およびシリル化剤等を挙げることができる。
上記活性水素と反応性に富む化合物を用いる方法としては、(B)光酸発生剤による脱保護のしやすさの観点から、シリル化剤を用いてトリアルキルシリル基により官能基を保護する方法が好ましい。
上記トリアルキルシリル基に含有されるアルキル基としては、特に限定されないが、(B)光酸発生剤による脱保護のしやすさの観点から、不飽和結合を持たない炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
シリル化剤を用いてトリアルキルシリル基により官能基を保護する場合、上記シリル化剤としては、汎用的なシリル化剤を用いることができ、具体的には、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N−メチルトリメチルシリルアセトアミド、N−メチルトリメチルシリルトリフルオロアセトアミド、トリメチルシリルイミダゾール、N,N’−ビス(トリメチルシリルウレア)、トリエチルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシランおよびトリエチルシラン等が挙げられる。これらのシリル化剤の中では、工業的に安価で製造することができる観点より、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシランまたはtert−ブチルジメチルクロロシランが好ましい。
これらのシリル化剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本明細書において、官能基保護されたカルボン酸構造とは、カルボン酸構造のカルボキシル基の水素原子が化合物残基に置換された構造をいう。
上記官能基保護されたカルボン酸構造としては、パターニング性および硬化膜の絶縁性に優れるという効果をより顕著に享受できることから、アセタール結合を含有する構造および/またはカルボン酸3級エステル結合を含有する構造であることが好ましい。
上記アセタール結合を含有する構造を有する化合物としては、例えば、ジアリルアセタール、ペンタナールジアリルアセタール、ベンズアルデヒドジアリルアセタール、1,1,2,2−テトラアリルオキシエタン、1,1,2,2−テトラアリルオキシプロパン、2,2−ジアリル−1,3−ジオキソラン、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸エトキシメチル、4−ビニルメトキシメチル安息香酸エステルおよび4−ビニルエトキシメチル安息香酸エステル等が挙げられる。
上記カルボン酸3級エステル構造を含有する構造において、カルボン酸3級エステル構造としては、例えば、p−tertブトキシ基またはp−tertブトキシカルボニル基等でカルボキシル基が保護された構造等が挙げられる。3級エステル構造としては、特に限定されず、t−ブチルエステル等公知のものを使用することができる。
上記カルボン酸3級エステル結合を含有する構造は、現像コントラスト、並びに得られる薄膜の耐熱性および絶縁性に優れる点から、脂肪族環構造で保護されたカルボン酸3級エステル構造であることが好ましい。この場合、カルボン酸3級エステル構造においてカルボキシル基を保護する3級炭素は、脂肪族環構造を形成する炭素であってもよいし、脂肪族環構造を形成せず独立に存在する炭素であってもよい。上記脂肪族環構造は、現像コントラストおよび露光感度の点から、アダマンタン構造であることが好ましい。
本ポジ型感光性組成物において、上記(A)ポリシロキサン化合物に含まれる酸存在下で分解し酸性基または水酸基が発現する構造の含有量は、1H−NMRの測定により、標準物質をジブロモエタンとした時の当量換算で0.05〜10mmol/gであることが好ましく、0.1〜5mmol/gであることがより好ましく、0.15〜3mmol/gであることがさらに好ましい。
上記(A)ポリシロキサン化合物は、後述する(E)アルケニル基を有する化合物と(F)SiH基を有する化合物とのヒドロシリル化反応によって得られるものであることが好ましい。これにより、本ポジ型感光性組成物の信頼性をさらに高めることができる。
なお、ここで、(E)アルケニル基を有する化合物および(F)SiH基を有する化合物の少なくとも一方は、「シロキサン単位Si−O−Siを有する化合物」である。(E)アルケニル基を有する化合物が「シロキサン単位Si−O−Siを有する化合物」である場合は、後述の<1−5.(E)アルケニル基を有する化合物>におけるアルケニル基を有するシロキサン化合物であることが好ましい。
また、(E)アルケニル基を有する化合物および(F)SiH基を有する化合物の少なくとも一方は、「光酸発生剤から発生する酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有する化合物」である。
例えば、(A)ポリシロキサン化合物は、以下の反応によって得られる化合物であってもよい:
1.酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有する(E)アルケニル基を有する化合物と、(F)SiH基を有する化合物とのヒドロシリル化反応;
2.酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有する(E)アルケニル基を有する化合物と、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有する(F)SiH基を有する化合物とのヒドロシリル化反応;
3.(E)アルケニル基を有する化合物と、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有する(F)SiH基を有する化合物とのヒドロシリル化反応;
4.酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造およびSiH基を有する(E)アルケニル基を有する化合物のヒドロシリル化反応;
5.酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造およびSiH基を有する(E)アルケニル基を有する化合物と、(F)SiH基を有する化合物とのヒドロシリル化反応;
6.酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造およびSiH基を有する(E)アルケニル基を有する化合物と、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有する(F)SiH基を有する化合物とのヒドロシリル化反応;
7.SiH基を有する(E)アルケニル基を有する化合物と、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有する(F)SiH基を有する化合物とのヒドロシリル化反応;
8.酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有する(E)アルケニル基を有する化合物と、アルケニル基を有する(F)SiH基を有する化合物とのヒドロシリル化反応;
9.酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有する(E)アルケニル基を有する化合物と、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造およびアルケニル基を有する(F)SiH基を有する化合物とのヒドロシリル化反応;
10.(E)アルケニル基を有する化合物と、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造およびアルケニル基を有する(F)SiH基を有する化合物とのヒドロシリル化反応;
11.酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造およびアルケニル基を有する(F)SiH基を有する化合物のヒドロシリル化反応;
12.酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造およびSiH基を有する(E)アルケニル基を有する化合物と、アルケニル基を有する(F)SiH基を有する化合物とのヒドロシリル化反応;
13.酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造およびSiH基を有する(E)アルケニル基を有する化合物と、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造およびアルケニル基を有する(F)SiH基を有する化合物とのヒドロシリル化反応;
14.SiH基を有する(E)アルケニル基を有する化合物と、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造およびアルケニル基を有する(F)SiH基を有する化合物とのヒドロシリル化反応。
上記ヒドロシリル化反応に用いる触媒としては、特に限定されず、公知のヒドロシリル化触媒を用いることができるが、触媒活性の点からは、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体または白金−ビニルシロキサン錯体等を用いることが好ましい。
これらのヒドロシリル化触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記(A)ポリシロキサン化合物は、ヒドロシリル化反応に使用されなかった、SiH基および/またはアルケニル基を一つ以上含んでもよい。
上記(A)ポリシロキサン化合物は、得られる硬化膜の耐薬品性、および絶縁性等を高めることができることから、ビスフェノール構造を含有することが好ましい。
上記ビスフェノール構造としては、例えば、ビスフェノールA構造、ビスフェノールAP構造、ビスフェノールAF構造、ビスフェノールB構造、ビスフェノールBP構造、ビスフェノールE構造、ビスフェノールM構造、ビスフェノールF構造、ビスフェノールS構造、ビスフェノールPH構造、ビスフェノールC構造、ビスフェノールG構造、ビスフェノールTMC構造およびビスフェノールZ構造等が挙げられる。
これらの中でも、アルカリ現像液への溶解性に優れ、コントラストに優れるパターンを得ることができるという観点からは、ビスフェノールA構造、ビスフェノールB構造、ビスフェノールC構造、ビスフェノールE構造、ビスフェノールF構造、ビスフェノールAF構造、ビスフェノールS構造、ビスフェノールAP構造またはビスフェノールPH構造が好ましい。また、特に入手性の観点からはビスフェノールA構造またはビスフェノールS構造が好ましく、光酸発生剤による脱保護のしやすさの観点からは、ビスフェノールS構造またはビスフェノールF構造が好ましい。
上記(A)ポリシロキサン化合物は、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造およびポリシロキサン構造を有する化合物であれば、本発明の目的および効果を損なわない範囲において他の構造を有する化合物であってもよい。
本ポジ型感光性組成物において、上記(A)ポリシロキサン化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
<1−2.(B)光酸発生剤>
本ポジ型感光性組成物は、(B)光酸発生剤を含有する。上記光酸発生剤は、露光されることにより、上記(A)成分を分解し、且つ酸性基または水酸基を発現させ得る、酸を放出することができる化合物であれば、特に限定されない。酸性基または水酸基を発現させた上記(A)成分は、アルカリ現像液に可溶となるため、ポジ型パターンの形成が可能となる。
上記(B)光酸発生剤としては、露光によりルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができるが、アリールスルホニウム塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウム塩もしくはヨードニウム塩、またはII族、V族もしくはVI族元素の芳香族オニウム塩が好ましい。
特に、少ない露光量で高感度のポジ型感光性組成物を得ることができるという観点からはヨードニウム塩が好ましく、ポジ型感光性組成物の貯蔵安定性の観点からはスルホニウム塩が好ましい。
上記(B)光酸発生剤に含まれるアニオンとしては、特に限定されないが、例えば、B(C6F5)4 −、PF6 −、SbF6 −、CF3SO3 −およびC4F9SO3 −等が挙げられる。
上記(B)光酸発生剤としては市販品も使用することができ、その具体例としては、例えば、FX−512(3M社製)、UVR−6990およびUVR−6974(ともにユニオン・カーバイド社製)、UVE−1014およびUVE−1016(ともにジェネラル・エレクトリック社製)、KI−85(デグッサ社製)、SP−152およびSP−172(ともに旭電化社製)、サンエイドSI−60L、SI−80LおよびSI−100L(いずれも三新化学工業社製)、WPI113およびWPI116(ともに和光純薬工業社製)、RHODORSIL PI2074(ローディア社製)、並びにBBI−102、BBI−103、BBI−105、TPS−102、TPS−103、TPS−105、MDS−103、MDS−105、DTS−102、DTS−103およびDTS−105(いずれもみどり化学社製)等が挙げられる。
また、上記(B)光酸発生剤は、無置換のフェニル基を有さない化合物であることが好ましい。上記(B)光酸発生剤が無置換のフェニル基を有さない化合物であれば、プロセス中に有害なベンゼンが発生しない。無置換のフェニル基とは、すなわち、下記式(III)で表される構造を意図する。
例えば、下記式(IV)で表されるトリフェニルスルホニウムノナフルオロブタン−1−スルホナート(例えば、東洋合成化学工業製、商品名:TPS−PFBS)は、「無置換のフェニル基を有さない化合物」からは除かれる。
無置換のフェニル基を有さない化合物は、置換されたフェニル基を有する化合物であってもよい。このような化合物としては、例えば、下記式(V)で表されるトリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウムノナフルオロブタン−1−スルホナート(例えば、東洋合成化学工業製、商品名:TTBPS−PFBS)が挙げられる。
また、上記(B)光酸発生剤は、下記式(I)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。上記(B)光酸発生剤が下記式(I)で表される構造を有する化合物であれば、より良好な感度を有するポジ型感光性組成物を提供することができる。
上記式(I)で表される構造を有する化合物の具体例としては、下記式(VI)で表されるトリフルオロメタンスルホン酸−2,3−ノルボルナンカルボキシイミド(例えば、東洋合成化学工業製、商品名:NR−TF)および下記式(VII)で表されるトリフルオロメタンスルホン酸−1,8−ナフタルイミド(例えば、東洋合成化学工業製、商品名:NI−TF)等が挙げられる。
本ポジ型感光性組成物において、上記(B)光酸発生剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記(B)光酸発生剤の含有量は、特に限定されないが、本ポジ型感光性組成物から溶剤を除いた総量を100重量部として、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましい。上記(B)光酸発生剤の含有量をこの範囲にすることでパターニング性と硬化物の耐熱性及び耐光性とを高めることができる。
<1−3.(C)塩基性化合物>
本ポジ型感光性組成物は、(C)塩基性化合物を含有する。本発明において、塩基性化合物は、ルイス酸に対するクエンチャーとして作用する。上記(C)塩基性化合物は、露光によって(B)光酸発生剤から生じたルイス酸の未露光部分への拡散を抑制することで、未露光部分での望まれない化学反応を阻止することが可能である。(C)塩基性化合物を用いることにより、硬化膜を作製する際、露光から現像までに要する時間の変動による線幅変化を抑えることが可能となるため、本ポジ型感光性組成物に優れたプロセスマージンを与えることができる。また、(C)塩基性化合物を用いることにより、露光部分と未露光部分とのコントラストを明確にすることが可能となるため、硬化膜の解像度を向上させることができる。さらに、(C)塩基性化合物を用いることにより、本ポジ型感光性組成物の貯蔵安定性を向上させることもできる。
本ポジ型感光性組成物では、(C)塩基性化合物は、分子量が220以上である。(C)塩基性化合物の分子量が220以上であれば、該塩基性化合物はルイス酸に対するクエンチャーとして、顕著な性能を発揮するため、上述した効果もより大きな効果として得られる。
上記(C)塩基性化合物としては、分子量が220以上であれば、特に制限されないが、第一級、第二級および第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、アミド誘導体およびイミド誘導体等が挙げられる。これらの中でも芳香族アミン類の誘導体および複素環アミン類の誘導体が、酸捕捉能の観点から、塩基性化合物として好適に使用できる。
上記芳香族アミン類および上記複素環アミン類としては、例えば、アニリン誘導体、ピロール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾール誘導体、フラザン誘導体、ピロリン誘導体、ピロリジン誘導体、イミダゾリン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ピリジン誘導体、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾリジン誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、モルホリン誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、1H−インダゾール誘導体、インドリン誘導体、キノリン誘導体、シンノリン誘導体、キナゾリン誘導体、キノキサリン誘導体、フタラジン誘導体、プリン誘導体、プテリジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントリジン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、1,10−フェナントロリン誘導体、アデニン誘導体、アデノシン誘導体、グアニン誘導体、グアノシン誘導体、ウラシル誘導体およびウリジン誘導体等が例示される。また、上記複素環アミン類の誘導体としては、2,6−ルチジン誘導体も挙げられる。
なかでも、塩基性化合物として、複素環アミン類であるモルホリン誘導体またはピペリジン誘導体が好適に使用できる。モルホリン誘導体として具体的には、ビス(2−モルホリノエチル)エーテル(BME)等が挙げられる。ピペリジン誘導体として具体的には、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(BPPS)等が挙げられる。
上記(C)塩基性化合物としては、1種類が用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記(B)光酸発生剤に対する(C)塩基性化合物の重量比は、0.02〜0.5であり、0.03〜0.45であることが好ましく、0.04〜0.4であることがより好ましい。上記重量比が0.02以上であれば、上述したプロセスマージン、解像度および貯蔵安定性の向上効果を十分に得ることができる。一方、上記重量比が0.5以下であれば、硬化膜の物性の低下を防止することができる。
また、本ポジ型感光性組成物では、(A)ポリシロキサン化合物100重量部あたり、(C)塩基性化合物の配合量は、0.001〜5.0重量部であることが好ましく、貯蔵安定性および硬化膜の透明性の観点より、0.01〜3.0重量部であることがより好ましい。上記(A)ポリシロキサン化合物の100重量部に対して、上記(C)塩基性化合物の配合量が0.001重量部以上あれば、クエンチャーとしての効果を十分に奏することができる。
<1−4.(D)増感剤>
本ポジ型感光性組成物は、上記(A)ポリシロキサン化合物、上記(B)光酸発生剤および上記(C)塩基性化合物の3つの成分に加えて、さらに(D)増感剤を含有することが好ましい。(D)増感剤を含有することにより、上記3つの成分からなるポジ型感光性組成物と比較して、さらに高感度であるポジ型感光性組成物を得ることが可能となる。
上記(D)増感剤は、ポジ型感光性組成物の光に対する感度、特に、h線(405nm)およびi線(365nm)といった短波長の光に対する感度を向上させる効果を奏する。ポジ型感光性組成物において、上記(D)増感剤を上記(B)成分と併用することにより、硬化膜の硬化性の調整を行うことが可能となる。
上記(D)増感剤としては、例えば、アントラセン系化合物およびチオキサントン系化合物等が挙げられる。上記(D)増感剤は、光増感効果の観点からは、アントラセン系化合物であることが好ましい。
上記アントラセン系化合物としては、例えば、アントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、1,4−ジメトキシアントラセン、9−メチルアントラセン、2−エチルアントラセン、2−tert−ブチルアントラセン、2,6−ジ−tert−ブチルアントラセンおよび9,10−ジフェニル−2,6−ジ−tert−ブチルアントラセン等が挙げられる。
これらの中で、特に入手しやすい観点からは、アントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセンまたは9,10−ジエトキシアントラセンが好ましい。
また、硬化膜の透明性に優れる観点からはアントラセンが好ましく、他の成分との相溶性に優れる観点からは9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセンまたは9,10−ジエトキシアントラセンが好ましい。
上記(D)増感剤は、ポジ型感光性組成物の貯蔵安定性の観点からは、チオキサントン系化合物であることが好ましい。
上記チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,5−ジエチルジオキサントンおよびイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。これらの中で、入手性の観点からは、2,5−ジエチルジオキサントンまたはイソプロピルチオキサントンが好ましい。
これらの(D)増感剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本ポジ型感光性組成物が(D)増感剤を含有する場合、当該(D)増感剤の含有量は、増感効果を発揮できる量であれば、特に限定されないが、(A)ポリシロキサン化合物100重量部あたり、0.5〜50重量部であることが好ましく、1〜40重量部であることがより好ましく、2〜35重量部であることがさらに好ましい。また、より増感効果を得るために、上記(B)光酸発生剤に対する(D)増感剤のモル比は、0.01〜300であることが好ましく、0.1モル〜100モルであることがより好ましい。
ポジ型感光性組成物に含まれる増感剤の量が上記下限値以上であれば、十分に増感効果を得ることができ、硬化膜を形成する際に、硬化に長時間を要したり、現像性に好ましくない影響を及ぼしたりすることがない。また、増感剤の量が上記上限値以下であれば、色が硬化膜に残ったり、急硬化のために硬化膜が着色されたり、または硬化膜が耐熱性もしくは耐光性を損なったりすることがない。
<1−5.(E)アルケニル基を有する化合物>
本ポジ型感光性組成物は、(E)アルケニル基を有する化合物を含んでいてもよい。なお、本ポジ型感光性組成物は、(A)ポリシロキサン化合物とは別に(E)アルケニル基を有する化合物を含んでいてもよく、(E)アルケニル基を有する化合物を用いたヒドロシリル化反応によって得られた(A)ポリシロキサン化合物を含んでいてもよい。
さらに信頼性が高い硬化膜が得られる点からは、上記(A)ポリシロキサン化合物が、SiH基を有し、上記ポジ型感光性組成物が、(E)アルケニル基を有する化合物を含有することが好ましい。
(E)アルケニル基を有する化合物としては、アルケニル基を有する有機化合物またはアルケニル基を有するシロキサン化合物等を用いることができ、具体例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,4−ブタンジオールジアリルエーテル、ノナンジオールジアリルエーテル、1,4−シクロへキサンジメタノールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3−ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(ビニルオキシ)アダマンタン、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、ビニルシクロへキセン、ビニルシクロペンテン、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、2,5−ジアリルフェノールアリルエーテル、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノプロピルイソシアヌレート、モノアリルジベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレートおよびモノアリルジメチルイソシアヌレート、並びにケイ素基に結合したビニル基(Si−CH=CH2基)を有するポリシロキサン化合物等が挙げられる。
上記ケイ素基に結合したビニル基を有するポリシロキサン化合物としては、例えば、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサンおよび1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等が挙げられる。
上記(C)アルケニル基を有する化合物は、透明性、耐熱性、耐光性及び絶縁性に優れた硬化物を形成することができるという観点からは、下記式(VIII)で表される構造とアルケニル基とを有する化合物であることが好ましい。
上記式(VIII)で表される構造とアルケニル基とを有する化合物としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノプロピルイソシアヌレート、モノアリルジベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレートおよびモノアリルジメチルイソシアヌレート等が挙げられる。これらの中では、入手性の観点より、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレートまたはジアリルモノメチルイソシアヌレートが好ましい。
(E)アルケニル基を有する化合物は、硬化膜の透明性および硬化性の観点より、アルケニル基を有するシロキサン化合物であることが好ましい。
上記アルケニル基を有するシロキサン化合物としては、化合物入手性の観点からは、ケイ素基に結合したビニル基を2つ以上有するシロキサン化合物であることが好ましく、ケイ素基に結合したビニル基を2〜6つ有するシロキサン化合物であることがより好ましい。
上記ケイ素基に結合したビニル基を2つ以上有するシロキサン化合物としては、例えば、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサンおよび1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等が挙げられる。
上記(E)アルケニル基を有する化合物の一分子中のアルケニル基の数は、架橋密度が上がり、より強靭な薄膜を得ることができるという観点より2つ以上であることが好ましい。
(E)アルケニル基を有する化合物を用いて(A)ポリシロキサン化合物を得る場合、(A)ポリシロキサン化合物が、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有するために、(E)アルケニル基を有する化合物および/または後述の(F)SiH基を有する化合物が、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有する必要がある。
上記(E)アルケニル基を有する化合物が、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有する場合、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造としては、<1−1.(A)ポリシロキサン化合物>において説明された構造が挙げられる。
さらに、上記(E)アルケニル基を有する化合物が、上記官能基保護されたカルボン酸構造として、カルボン酸3級エステル構造を含有する場合、化合物としては、特に限定されないが、例えば、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、t−ブチル3−ブテノエート、アクリル酸2−メチル2−アダマンチル、アクリル酸2−エチル2−アダマンチル、メタクリル酸2−メチル2−アダマンチル、メタクリル酸2−エチル2−アダマンチル、1,3−アダマンタンジオールジアクリレートおよび1,3−アダマンタンジオールジメタクリレート等が挙げられる。これらの中でも、特に耐熱性に優れる観点から、2つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物が好ましく、1,3−アダマンタンジオールジアクリレートまたは1,3−アダマンタンジオールジメタクリレートが好ましい。
上記(E)アルケニル基を有する化合物が、アルケニル基に加えて、さらにSiH基を有する化合物であってもよい。(A)ポリシロキサン化合物を得るにあたり、SiH基を有する(E)アルケニル基を有する化合物を用いる場合、(F)SiH基を有する化合物を用いてもよいし、用いなくてもよい。(A)ポリシロキサン化合物を得るにあたり、SiH基を有する(E)アルケニル基を有する化合物を用い、(F)SiH基を有する化合物を用いない場合、当該SiH基を有する(E)アルケニル基を有する化合物は、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有する。
例えば、上記(E)アルケニル基を有する化合物は、光酸発生剤による脱保護のしやすさおよび入手性の観点から、下記一般式(IX)で表される化合物、または、当該化合物を後述する(F)SiH基を有する化合物と反応させて得た化合物であることが好ましい。
(一般式(IX)中、R4は不飽和結合を持たない炭素数1〜6のアルキル基を表し、それぞれのR4は同一でも異なっていてもよい。R5はビスフェノール構造として取り得る構造であればよい)。
上記(A)ポリシロキサン化合物を得るにあたり、上記(E)アルケニル基を有する化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
<1−6.(F)SiH基を有する化合物>
本ポジ型感光性組成物は、(F)SiH基を有する化合物を含んでいてもよい。なお、本ポジ型感光性組成物は、(A)ポリシロキサン化合物とは別に(F)SiH基を有する化合物を含んでいてもよく、(F)SiH基を有する化合物を用いたヒドロシリル化反応によって得られた(A)ポリシロキサン化合物を含んでいてもよい。
(F)SiH基を有する化合物としては、SiH基を一分子中に2つ以上有する化合物であることが好ましい。
上記SiH基を一分子中に2つ以上有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルヒドロシリル基で末端が封鎖されたシロキサン、側鎖にSiH基を有する環状シロキサン、鎖状シロキサンおよび籠状シロキサン等が挙げられる。これらの中では、特に絶縁性に優れる薄膜を得られる観点より、側鎖にSiH基を有する環状シロキサン化合物が好ましい。
上記側鎖にSiH基を有する環状シロキサン化合物としては、例えば、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−メチル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3−ジメチル−5,7−ジハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3−ジプロピル−5,7−ジハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−7−ヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサンおよび1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等が挙げられる。これらの中では、特に入手性の観点より、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。
(F)SiH基を有する化合物を用いて(A)ポリシロキサン化合物を得る場合、(A)ポリシロキサン化合物が、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有するために、(E)アルケニル基を有する化合物および/または(F)SiH基を有する化合物が、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有する必要がある。
上記(F)SiH基を有する化合物が、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有する場合、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造としては、<1−1.(A)ポリシロキサン化合物>において説明された構造が挙げられる。
上記(F)SiH基を有する化合物が、SiH基に加えて、さらにアルケニル基を有する化合物であってもよい。(A)ポリシロキサン化合物を得るにあたり、アルケニル基を有する(F)SiH基を有する化合物を用いる場合、(E)アルケニル基を有する化合物を用いてもよいし、用いなくてもよい。
(A)ポリシロキサン化合物を得るにあたり、アルケニル基を有する(F)SiH基を有する化合物を用い、(E)アルケニル基を有する化合物を用いない場合、当該アルケニル基を有する(F)SiH基を有する化合物は、酸により分解し酸性基または水酸基が発現する構造を有する。
上記(E)アルケニル基を有する化合物および/または(F)SiH基を有する化合物に含有されるSiH基量をX、アルケニル基量をYとした場合、X/Yの値は、0.2≦X/Y≦5.0であることが好ましく、強靭な薄膜を得ることができるという観点からは、0.3≦X/Y≦3.0であることがより好ましい。
上記(A)ポリシロキサン化合物を得るにあたり、(F)SiH基を有する化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本ポジ型感光性組成物において、上記(E)アルケニル基を有する化合物および上記(F)SiH基を有する化合物のうち、少なくとも一方はシロキサン系化合物であることが好ましい。また、上記(E)アルケニル基を有する化合物および上記(F)SiH基を有する化合物のうち、少なくとも上記(F)SiH基を有する化合物はシロキサン系化合物であって、環状シロキサン構造を有することがより好ましい。その理由は、硬化物の耐熱性に優れるためである。
また、本ポジ型感光性組成物において、上記(E)アルケニル基を有する化合物および上記(F)SiH基を有する化合物のうち少なくとも一方がシロキサン系化合物である場合、上記シロキサン系化合物は、6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造を含有することが、硬化物の耐熱性および絶縁性等に優れることから好ましい。以下、上記6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造について詳しく説明する。
(多面体骨格を有するポリシロキサン構造)
上記6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造としては、例えば、下記式(X)で示される多面体骨格を有するポリシロキサン構造が挙げられる(なお、ここでは、8個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造を代表例として例示する)。
上記6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造を得る方法としては、例えば、一般式RSiX3(式中Rは、6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造においてケイ素原子に結合する基を表し、Xは、ハロゲン原子またはアルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)で表されるシラン化合物を加水分解縮合反応させる方法、一般式RSiX3を加水分解縮合反応させて分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成した後、さらに、同一の又は異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより閉環させる方法等が挙げられる。
上記6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造は、6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格及びアルケニル基を有するポリシロキサン化合物と、SiH基を有するシロキサン化合物とをヒドロシリル化反応させて得られたものであることが、他成分との相溶性が高く、透明でムラのない膜を得ることができることから好ましい。
上記SiH基を有するシロキサン化合物としては、例えば、鎖状シロキサンおよび環状シロキサン等が挙げられる。具体的には、上記(F)SiH基を有する化合物についての説明で記載した、SiH基を一分子中に2つ以上有する化合物(但し、籠状シロキサンを除く)等を用いることができる。また、網目状シロキサンも用いることができる。これらの中では、SiH基を一分子中に2つ以上有する環状シロキサンを用いることが、強靭で耐熱性に優れた膜を得ることができることから好ましい。
上記6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造は、下記式(XI)で表されるポリシロキサン構造に代表される構造であることが好ましい(なお、ここでは、8個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造を代表例として例示する)。下記式(XI)で表されるポリシロキサン構造に代表される構造においては、多面体骨格の頂点に位置するSi原子と、少なくとも1つはSiH基又はアルケニル基を有する基とが、シロキサン結合を介して結合しているため、本ポジ型感光性組成物に含有される上記(E)アルケニル基を有する化合物および上記(F)SiH基を有する化合物のうち、少なくとも一方がシロキサン系化合物である場合において、上記シロキサン系化合物として、下記式(XI)で表されるポリシロキサン構造に代表される構造を有する化合物を用いることにより、強靭な膜を得ることができる。
上記式(XI)で表されるポリシロキサン構造に代表される構造を有する化合物の合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、テトラアルコキシシランを4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下で加水分解縮合させた後、アルケニル基含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させる方法等が挙げられる。この合成方法においては、テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応により、多面体骨格を有するポリシロキサン化合物が得られ、さらに得られたポリシロキサン化合物をアルケニル基含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより、アルケニル基を有するシリル基が、シロキサン結合を介して多面体骨格の頂点に位置するSi原子と結合したポリシロキサン化合物を得ることが可能となる。
また、テトラアルコキシシランの代わりに、シリカまたは稲籾殻等のシリカを含有する物質からも、同様の多面体骨格を有するポリシロキサン化合物を得ることが可能である。
上記テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランおよびテトラブトキシシラン等が挙げられる。これらのテトラアルコキシシランは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記4級アンモニウムヒドロキシドとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドおよびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。これらの4級アンモニウムヒドロキシドは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造は、下記一般式(XII)
(一般式(XII)中、R1は水素原子又は炭素数1〜10の有機基であり、R1のうち少なくとも一つは水素原子又はアルケニル基である。それぞれのR1は同一でも異なっていてもよい)で表される多面体骨格を有するポリシロキサン化合物と、下記一般式(XIII)、
(一般式(XIII)中、R2は炭素数1〜6の有機基であり、R3は水素原子又はアルケニル基である。それぞれのR2、R3は同一でも異なっていてもよい。nは0〜10、mは1〜10の数を表す)で表される環状シロキサン化合物とをヒドロシリル化反応させて得られたものであることが、強靭で耐熱性に優れた膜を得ることができることから好ましい。
なお、上記一般式(XII)で表される多面体骨格を有するポリシロキサン化合物がアルケニル基を有する化合物である場合は、上記一般式(XIII)で表される環状シロキサン化合物がSiH基を有する化合物である必要があり、また、上記一般式(XII)で表される多面体骨格を有するポリシロキサン化合物がSiH基を有する化合物である場合は、上記一般式(XIII)で表される環状シロキサン化合物がアルケニル基を有する化合物である必要がある。
上記6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造が、上記式(X)で表されるポリシロキサン構造である場合、その含有量は、ポジ型感光性組成物中の溶剤を除いた成分100重量部に対し、2〜40重量%であることが好ましく、3〜30重量%であることがより好ましく、4〜20重量%であることがさらに好ましく、4〜10重量%であることが特に好ましい。含有量をこの範囲内とすることにより、強靭で耐熱性に優れるとともに、誘電率が低く、リーク電流も小さい電気的絶縁特性が良好な絶縁膜を得ることができる。
<1−7.その他の添加剤>
(アルカリ可溶性成分)
本ポジ型感光性組成物は、さらにアルカリ可溶性成分を含有することが、ポジ型感光性組成物のアルカリ現像液への溶解性が向上し、高感度なポジ型感光性組成物となることから好ましい。
上記アルカリ可溶性成分としては、例えば、下記式(X1)又は(X2)で表される構造を有する化合物、フェノール基を有するフェノール樹脂、カルボキシル基を有するアクリル樹脂、アミド樹脂およびイミド樹脂等が挙げられる。
上記アルカリ可溶性成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記アルカリ可溶性成分は、ベイク後に絶縁性、耐熱性および耐溶剤性に優れた薄膜を得ることができるという観点より、下記式(X1)又は(X2)で表される構造を有する化合物であることが好ましく、下記式(X1)又は(X2)で表される構造を有するポリシロキサン化合物であることがより好ましい。
上記式(X1)又は(X2)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を得る方法としては、簡便な方法として、例えば、上記(X1)又は(X2)で表される構造及びアルケニル基を有する化合物と、SiH基を有するシロキサン化合物とを一部ヒドロシリル化反応させる方法等が挙げられる。
上記式(X1)又は(X2)で表される構造およびアルケニル基を有する化合物としては、例えば、ジアリルイソシアヌル酸およびモノアリルイソシアヌル酸等を挙げることができる。
上記SiH基を有するシロキサン化合物としては、例えば、上記<1−6.(F)SiH基を有する化合物>の説明で、SiH基を一分子中に2つ以上有する化合物として説明した化合物等が挙げられる。
本ポジ型感光性組成物が上記アルカリ可溶性成分を含有する場合、上記アルカリ可溶性成分の含有量の上限は、本ポジ型感光性組成物から溶剤を除いた成分100重量部に対し、80重量部であることが好ましく、75重量部であることがより好ましい。一方、含有量の下限は、15重量部であることが好ましく、20重量部であることがより好ましく、50重量部より大きいことがさらに好ましい。上記アルカリ可溶性成分の含有量をこの範囲とすることで、アルカリ現像性に優れたポジ型感光性組成物を得ることができる。
(ヒドロシリル化反応抑制剤)
本ポジ型感光性組成物においては、貯蔵安定性確保のため、ヒドロシリル化反応抑制剤を使用してもよい。
上記ヒドロシリル化反応抑制剤としては、例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物および有機過酸化物等が挙げられる。
上記脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、例えば、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類およびジメチルマレート等のマレイン酸エステル類等が挙げられる。
上記有機リン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン等のトリオルガノホスフィン類、ジオルガノホスフィン類、オルガノホスフォン類およびトリオルガノホスファイト類等が挙げられる。
上記有機イオウ化合物としては、例えば、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾールおよびベンゾチアゾールジサルファイド等が挙げられる。
上記スズ系化合物としては、例えば、ハロゲン化第一スズ2水和物およびカルボン酸第一スズ等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては、例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドおよび過安息香酸t−ブチル等が挙げられる。
これらのヒドロシリル化反応抑制剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのヒドロシリル化反応抑制剤のうち、遅延活性が良好で原料入手が容易という観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールまたはトリフェニルホスフィンが好ましい。
(溶剤)
本ポジ型感光性組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤を含有することにより、ポジ型感光性組成物を硬化させて硬化膜を得る際、ポジ型感光性組成物の粘度を下げることができ、その結果、均一に塗布することが可能となるためである。
上記溶剤としては、特に限定されないが、例えば、エチルシクロヘキサンおよびトリメチルペンタン等の炭化水素系溶剤、1,4−ジオキサンおよび1,3−ジオキソラン等のエーテル系溶剤、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、イソ酪酸イソブチルおよび酪酸イソブチル等のエステル系溶剤、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)、エチレングリコールジメチルエーテルおよびエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶剤、並びにトリフルオロトルエン等のハロゲン系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤は、単独で使用しても良いし、2種類以上の混合溶剤として用いても良い。
上記溶剤は、特に均一な膜が形成しやすい観点からは、1,4−ジオキサン、イソ酪酸イソブチル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールジメチルエーテルまたはエチレングリコールジエチルエーテルであることが好ましい。
本ポジ型感光性組成物が溶剤を含有する場合、その含有量は特に限定されず適宜設定できるが、溶剤を除くポジ型感光性組成物の総量100重量部に対し、下限が10重量部であることが好ましく、30重量部であることがより好ましく、50重量部であることがさらに好ましい。一方、上記含有量の上限は、800重量部であることが好ましく、400重量部であることがより好ましく、300重量部であることがさらに好ましい。
上記溶剤の含有量が10重量部以上であれば、溶剤による低粘度化等の効果が得られる。一方、上記溶媒の含有量が800重量部以下であれば、硬化膜を作製した際に溶剤が残留することによる熱クラック等を防ぐことができ、またコスト的にも不利になることはないため、工業的利用価値は低下しない。
(接着性改良剤)
本ポジ型感光性組成物には、接着性改良剤を添加することも可能である。接着性改良剤としては、一般に用いられている接着剤の他、例えば種々のカップリング剤、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン−フェノール樹脂、α−メチルスチレン−ビニルトルエン共重合体、ポリエチルメチルスチレンおよび芳香族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
カップリング剤としては例えばシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基および加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基およびカルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化膜の硬化性および接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基またはアクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基またはエトキシシリル基が特に好ましい。
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランおよび2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシランおよびアクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
シランカップリング剤の添加量としては種々設定できるが、(A)ポリシロキサン化合物100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましく、0.3〜10重量部であることがより好ましく、0.5〜5重量部であることがさらに好ましい。添加量が0.1重量部以上であれば、接着性改良効果が十分に表れる。また、添加量が20重量部以下であれば、硬化膜の物性への悪影響を防ぐことができる。
(熱可塑性樹脂)
本ポジ型感光性組成物には、特性を改質する等の目的で、種々の熱可塑性樹脂を添加することも可能である。熱可塑性樹脂としては種々のものを用いることができるが、例えば、メチルメタクリレートの単独重合体あるいはメチルメタクリレートと他モノマーとのランダム、ブロック、あるいはグラフト重合体等のポリメチルメタクリレート系樹脂(例えば日立化成社製オプトレッツ等)、ブチルアクリレートの単独重合体あるいはブチルアクリレートと他モノマーとのランダム、ブロック、あるいはグラフト重合体等のポリブチルアクリレート系樹脂等に代表されるアクリル系樹脂、ビスフェノールA、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール等をモノマー構造として含有するポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート系樹脂(例えば帝人社製APEC等)、ノルボルネン誘導体、ビニルモノマー等を単独あるいは共重合した樹脂、ノルボルネン誘導体を開環メタセシス重合させた樹脂、あるいはその水素添加物等のシクロオレフィン系樹脂(例えば、三井化学社製APEL、日本ゼオン社製ZEONOR、ZEONEX、JSR社製ARTON等)、エチレンとマレイミドとの共重合体等のオレフィン−マレイミド系樹脂(例えば東ソー社製TI−PAS等)、ビスフェノールAおよびビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等のビスフェノール類、並びにジエチレングリコール等のジオール類と、テレフタル酸およびイソフタル酸等のフタル酸類、並びに脂肪族ジカルボン酸類とを重縮合させたポリエステル等のポリエステル系樹脂(例えば鐘紡社製O−PET等)、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、並びにフッ素樹脂等の他、天然ゴムおよびEPDMといったゴム状樹脂が例示されるがこれに限定されるものではない。
熱可塑性樹脂は、分子中にアルケニル基および/またはSiH基を有していてもよい。得られる硬化物がより強靭となりやすいという点においては、分子中にアルケニル基および/またはSiH基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
熱可塑性樹脂としてはその他の架橋性基を有していてもよい。この場合の架橋性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基およびアルコキシシリル基等が挙げられる。得られる硬化膜の耐熱性が高くなりやすいという点においては、架橋性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
熱可塑製樹脂の分子量としては、特に限定はないが、(A)ポリシロキサン化合物との相溶性が良好となりやすいという点においては、数平均分子量が10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましい。逆に、得られる硬化物が強靭となりやすいという点においては、数平均分子量が10000以上であることが好ましく、100000以上であることがより好ましい。分子量分布についても特に限定はないが、混合物の粘度が低くなり成形性が良好となりやすいという点においては、分子量分布が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂の配合量としては特に限定はないが、ポジ型感光性組成物全体の5〜50重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。添加量が少ないと得られる硬化膜が脆くなり易い。添加量が多いと硬化膜の耐熱性(高温での弾性率)が低くなり易い。
熱可塑性樹脂としては単一のものを用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂は、(A)ポリシロキサン化合物に溶解して均一な状態として混合してもよいし、粉砕して粒子状態で混合してもよいし、溶媒に溶かして混合する等して分散状態としてもよい。得られる硬化物がより透明になりやすいという点においては、(A)ポリシロキサン化合物に溶解して均一な状態として混合することが好ましい。この場合も、熱可塑性樹脂を(A)ポリシロキサン化合物に直接混合してもよいし、溶媒等を用いて均一に混合してもよいし、その後溶媒を除いて均一な分散状態或いは/および混合状態としてもよい。
熱可塑性樹脂を分散させて用いる場合は、平均粒子径は種々設定できるが、好ましい平均粒子径の下限は10nmであり、好ましい平均粒子径の上限は10μmである。粒子系の分布はあってもよく、単一分散であっても複数のピーク粒径を持っていてもよいが、ポジ型感光性組成物の粘度が低く成形性が良好となり易いという観点からは、粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
(充填材)
本ポジ型感光性組成物には必要に応じて充填材を添加してもよい。上記充填材としては各種のものが用いられるが、例えば、石英、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系充填材、窒化ケイ素、銀粉、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、カーボンブラック、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウムおよび無機バルーン等の無機充填材をはじめとして、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として一般に使用或いは/および提案されている充填材等を挙げることができる。
(老化防止剤)
本ポジ型感光性組成物には、貯蔵安定性確保のため、老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸、リン酸および硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
ヒンダートフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類およびスルホキシド類等が挙げられる。
これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
(ラジカル禁止剤)
本ポジ型感光性組成物には、貯蔵安定性確保のため、ラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)およびテトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤、並びにフェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジンおよびN,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。
これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
(その他添加剤)
本ポジ型感光性組成物には、その他、着色剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤および/または物性調整剤等を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
〔2.ポジ型感光性組成物の調製方法および硬化膜の作製方法〕
<2−1.ポジ型感光性組成物の調製方法>
本ポジ型感光性組成物の調製方法は、特に限定されず、種々の方法を用いることが出来る。上記〔1.ポジ型感光性組成物〕において記述された各種成分を硬化直前に混合調製しても良いし、全成分を予め混合調製した一液の状態で低温貯蔵しておいても良い。
<2−2.硬化膜の作製方法>
本発明には、本ポジ型感光性組成物から得られる硬化膜も包含される。本ポジ型感光性組成物を硬化して硬化膜を得る方法としては、例えば、本ポジ型感光性組成物を各種基材にコーティングした後、所望の形状のマスクを用いて、当該ポジ型感光性組成物に露光し、露光部を溶解および除去することにより、パターン状に形成された硬化膜を得る方法等を用いることができる。
本ポジ型感光性組成物を各種基材にコーティングする方法としては、均一に塗布が可能である方法であれば特に限定されるものではなく、一般によく使用されるコーティング方法を使用することができ、例えば、スピンコーティング、スリットコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、スクリーンコーティング、スプレーコーティング、スピンキャスティング、フローコーティング、スクリーン印刷、インクジェットまたはドロップキャスティング等の方法を用いることができる。
また、各種基材の状態により、適宜、溶剤による粘度調整および/または界面活性剤による表面張力調整等を行っても良い。
上記硬化膜の厚みは特に限定されないが、信頼性の観点から、0.05μm〜100μmであることが好ましく、0.1μm〜80μmであることがより好ましく、0.2μm〜50μmであることがさらに好ましい。
本ポジ型感光性組成物を各種基材にコーティングした後、溶剤除去の目的で、露光前にプリベークおよび/または真空脱揮プロセスを行っても良い。但し、熱を加えることで現像性が低下する等の問題が発生するおそれがあることから、プリベークの温度は、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。
なお、真空脱揮プロセスとプリベークとは同時に行っても良い。
本ポジ型感光性組成物に露光するための光源としては、使用する(B)光酸発生剤および(D)増感剤の吸収波長を発光する光源を使用すればよく、365nm〜425nmの範囲の波長を含む光源、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプまたは発光ダイオード等を使用できる。
このとき、露光量としては、特に限定されないが、1〜5000mJ/cm2であることが好ましく、1〜3000mJ/cm2であることがより好ましく、1〜1000mJ/cm2であることがさらに好ましい。
本ポジ型感光性組成物に露光した後、加熱を行ってもよい。加熱を行うことにより、露光していない部分が硬化し、コントラストが明確となる。
加熱温度としては、50〜120℃であることが好ましく、コントラストがより明確となることから、55〜110℃であることがより好ましく、60〜100℃であることがさらに好ましい。
本ポジ型感光性組成物に露光した後、露光部を溶解および除去しパターンを形成する方法としては、特に限定されず、一般的に行われる浸漬法またはスプレー法等の現像方法を用いることができる。
このとき、現像液としては、一般に使用するものであれば特に限定されず使用することができ、具体例としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液およびコリン水溶液等の有機アルカリ水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液および炭酸リチウム水溶液等の無機アルカリ水溶液、これらの水溶液に溶解速度等の調整のためにアルコールおよび/または界面活性剤等を添加したもの、並びに各種有機溶剤等を挙げることができる。
また、露光部を溶解および除去した後、硬化膜の強度および信頼性向上のため、ポストベイクを行っても良い。
ポストベイクの温度としては、100〜300℃であることが好ましく、120〜270℃であることがより好ましく、150〜250℃であることがさらに好ましい。
なお、基材としてプラスチック基板を用いる場合には、できるだけ低い温度でポストベイクすることが好ましいが、本ポジ型感光性組成物は150℃〜200℃でポストベイクが可能であるため、このような場合であっても基板に悪影響を与えることなくポストベイクを行うことができる。
本ポジ型感光性組成物を硬化して硬化膜として得る際、露光部を溶解および除去した後に加熱してポストベイクを行うことにより、硬化反応を進行させることができ、絶縁性の高い硬化膜を得ることができる。
上記硬化反応としては、例えば、ゾルゲル反応およびヒドロシリル化反応等が挙げられ、より低温で特に絶縁性に優れる硬化膜を得られる観点からは、上記硬化反応はヒドロシリル化反応であることが好ましい。上記ヒドロシリル化反応は、本ポジ型感光性組成物中に、アルケニル基を有する化合物、SiH基を有する化合物およびヒドロシリル化触媒が存在することにより進行する。
以上の方法により、本ポジ型感光性組成物からなる、パターン状に形成された硬化膜を得ることができる。
〔3.ポジ型感光性組成物の特性〕
本明細書において、ポジ型感光性組成物の特性を表すために用いる指標について、以下に説明する。
<3−1.ポジ型感光性組成物の感度>
本ポジ型感光性組成物は、上述した各種成分を有することにより、優れた感度を有する。
本明細書において、上記硬化膜の作製方法により、ポジ型感光性組成物から硬化膜を得る際の「露光量」を「感度」とし、より小さい露光量で硬化膜が得られるとき、すなわち感度の値が小さい時、「感度が良い」と表現する。
ポジ型感光性組成物が優れた感度を有する利点は、製造コストが削減できるという利点だけでなく、未露光部分での望まれない反応を抑制し、優れた解像度のポジ型パターニングを得ることが可能となる利点も有している。
本明細書においては、幅10μmの硬化膜を作製するにあたり、露光量を2mJずつ変更しながら露光し、硬化膜のラインの線幅が10μmとなる露光量を「感度」と規定した。具体的な測定方法は、後述する実施例において説明する。
上記感度は、50mJ/cm2以下であることが好ましく、40mJ/cm2以下であることがより好ましく、30mJ/cm2以下であることがさらに好ましく、15mJ/cm2以下であることが特に好ましい。
<3−2.ポジ型感光性組成物から硬化膜を作製する際のプロセスマージン>
本ポジ型感光性組成物は、上述した各種成分を有することにより、硬化膜を作製する際のプロセスマージンに優れている。
本明細書において、上記「硬化膜を作製する際のプロセスマージン」とは、上記硬化膜の作製方法において、「露光を終了した時点から現像を開始するまでの時間」が変動した場合の安定性を意図し、単に「プロセスマージン」と称する場合がある。
硬化膜を作製するにあたり、ポジ型感光性組成物に所望の形状のマスクを用いて露光した際、(B)光酸発生剤および(D)増感剤の働きにより、露光部分では酸が発生する。上記酸の作用により、(A)ポリシロキサン化合物はアルカリ溶解性が増大し、現像によって露光部分からポジ型感光性組成物は取り除かれる。露光部分で発生した酸は、未露光部分にも拡散する。しかしながら、未露光部分に存在する塩基性化合物の作用により、拡散してきた酸の効果は打ち消され、現像後に未露光部分に硬化膜が作製される。上記拡散は、時間と共に広がっていくため、現像までの時間が長くなればなるほど、または上記塩基性化合物の物性または含有量により十分に酸の効果を打ち消すことができない場合は、未露光部分においても酸の作用により(A)ポリシロキサン化合物のアルカリ溶解性が増大し、現像によってポジ型感光性組成物は、取り除かれる。したがって、上記塩基性化合物の物性または含有量が好適であれば、上記プロセスマージンは優れたものとなる。また、プロセスマージンに優れることは、パターニングに優れた硬化膜を製造するうえで重要である。プロセスマージンの具体的な測定方法および定義は、後述する実施例において説明する。
本明細書では、露光を終了した時点から現像を開始する時点までの時間を15分間として、幅10μmの硬化膜を作製するにあたり、作製された硬化膜の幅(μm)の10μmからの変化量を測定し、この変化量を「線幅安定性」とし、当該線幅安定性の値が小さいものを、「プロセスマージンがよい」と、定義した。
上記線幅安定性の値は、1.0μm未満であることが好ましく、0.7μm未満であることがより好ましく、0.5μm未満であることがさらに好ましく、0.3μm未満であることが特に好ましい。
<3−3.硬化膜の絶縁性>
上述の方法により得られた硬化膜は、優れた絶縁膜として機能する。LSI、TFTまたはタッチパネル等に用いる絶縁膜には、リーク電流が小さい事が要求される。具体的な測定方法および定義は、後述する実施例において説明する。
上記硬化膜の厚みが1μmである場合、リーク電流は、10nA/cm2以下であることが好ましく、5nA/cm2以下であることがより好ましく、4nA以下であることがさらに好ましく、3nA/cm2以下であることが特に好ましい。
〔4.用途〕
本ポジ型感光性組成物および硬化膜は、種々の用途に用いることができる。従来のアクリル樹脂およびエポキシ樹脂接着剤が使用される各種用途に応用することが可能である。以下、本ポジ型硬化性組成物および硬化膜の用途について例示する。
本発明のポジ型感光性組成物および硬化膜の用途としては、例えば、透明材料、光学材料、光学レンズ、光学フィルム、光学シート、光学部品用接着剤、光導波路結合用光学接着剤、光導波路周辺部材固定用接着剤、DVD貼り合せ用接着剤、粘着剤、ダイシングテープ、電子材料、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、高電圧絶縁材料、層間絶縁膜、TFT用パッシベーション膜、TFT用ゲート絶縁膜、TFT用層間絶縁膜、TFT用透明平坦化膜、絶縁用パッキング、絶縁被覆材、接着剤、高耐熱性接着剤、高放熱性接着剤、光学接着剤、LED素子の接着剤、各種基板の接着剤、ヒートシンクの接着剤、塗料、UV粉体塗料、インク、着色インク、UVインクジェット用インク、コーティング材料(ハードコート、シート、フィルム、剥離紙用コート、光ディスク用コート、光ファイバ用コート等を含む)、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、シーリング材料、ポッティング材料、封止材料、発光ダイオード用封止材料、光半導体封止材料、液晶シール剤、表示デバイス用シール剤、電気材料用封止材料、各種太陽電池の封止材料、高耐熱シール材、レジスト材料、液状レジスト材料、着色レジスト、ドライフィルムレジスト材料、ソルダーレジスト材料、カラーフィルター用バインダー樹脂、カラーフィルター用透明平坦化材料、ブラックマトリクス用バインダー樹脂、液晶セル用フォトスペーサー材料、OLED素子用透明封止材料、光造形、太陽電池用材料、燃料電池用材料、表示材料、記録材料、防振材料、防水材料、防湿材料、熱収縮ゴムチューブ、オーリング、複写機用感光ドラム、電池用固体電解質およびガス分離膜に応用できる。また、コンクリート保護材、ライニング、土壌注入剤、蓄冷熱材、滅菌処理装置用シール材、コンタクトレンズおよび酸素透過膜の他、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
中でも、本ポジ型感光性組成物は、アルカリ現像性透明レジストとして使用できる材料であり、特にFPD用材料として好適な材料である。より具体的には、TFT用パッシベーション膜、TFT用ゲート絶縁膜、TFT用層間絶縁膜、TFT用透明平坦化膜、カラーフィルター用バインダー樹脂、カラーフィルター用透明平坦化材料、ブラックマトリクス用バインダー樹脂、液晶セル用フォトスペーサー材料およびOLED素子用透明封止材料などが挙げられる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
まず初めに、ポジ型感光性組成物の作製方法について説明する。
(官能基保護したビスフェノールS化合物の合成)
100mLのナスフラスコに、テトラヒドロフラン(THF)20gおよびジアリルビスフェノールS5gを入れ、室温で攪拌した。均一な溶液となった後、上記ナスフラスコに、ヘキサメチルジシラザン2.5gを添加し、2時間、室温で反応させた。THFおよび反応残渣を減圧留去し、1H−NMR(ブルカー社製、AvanceIII)を利用して、トリメチルシリル基由来のピークの存在および水酸基由来のピークの消失を確認した。以上の操作により、水酸基がトリメチルシリル基で保護されたジアリルビスフェノールS6.5g(反応物1)を得た。
(合成実施例1)
100mLの四つ口フラスコに、トルエン20g、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン3gを入れ、気相部を窒素置換した後、上記四つ口フラスコの内部が100℃になるように加熱し、同時に攪拌した。上述の反応物1を5g、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1.5g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.7mgおよびトルエン5gを含む混合液を、上記四つ口フラスコに滴下した。
滴下後、1H−NMRを使用して、アリル基由来のピークの消失を確認した。そして、上記四つ口フラスコから、トルエンを減圧留去し、無色透明の液体である「反応物A」を得た。1H−NMRを使用した測定により、上記反応物Aは、トリメチルシリル基で保護されたビスフェノールS構造を有し、標準物質をジブロモエタンとした場合の当量換算でSiH基3.0mmol/gを有するポリシロキサン系化合物であることを確認した。
(実施例1〜4および比較例1〜3)
上記反応物A、光酸発生剤(東洋合成化学工業株式会社製、商品名:NR−TF、または、東洋合成化学工業株式会社製、商品名:TTBPS−PFBS)、増感剤(DBA(9,10−ジブトキシアントラセン)、川崎化成工業株式会社製)、塩基性化合物(分子量244であるBME(ビス(2−モルホリノエチル)エーテル)、分子量508であるBPPS(セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル))または分子量181であるDCHA(ジシクロヘキシルアミン))、アルケニル基を有する化合物(TAIC(トリアリルイソシアヌレート))および溶剤(PGMEA(プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート))を表1に記載の割合(重量部)で調合することによってポジ型感光性組成物を調製した。
表1に示すように、比較例1のポジ型感光性組成物は、塩基性化合物を含有していない。比較例2のポジ型感光性組成物では、光酸発生剤の重量部に対する塩基性化合物の重量部の比が0.5を超えている。比較例3のポジ型感光性組成物では、添加している塩基性化合物は分子量が220未満である。
次に、ポジ型感光性組成物を用いて、硬化膜を作製する方法について説明する。
(薄膜形成およびパターニング)
無アルカリガラス基板50mm×50mm上に実施例1〜4および比較例1〜3で得られたポジ型感光性組成物をスピンコートにより塗布した。その後、ホットプレートを使用して100℃で2分間、上記ガラス基板をプリベイクして、膜厚2.5μmの感光性薄膜を上記無アルカリガラス基板上に製膜した。上記感光性薄膜に、マスクアライナー(大日本科研製、MA−1300)を用いてフォトマスク越しに露光(10〜50mJ/cm2)した。その後、上記感光性薄膜の塗布された無アルカリガラス基板を、アルカリ現像液(多摩化学工業株式会社製、TMAH2.38%水溶液)に23℃、70秒間浸漬し、現像処理を行った。さらに、上記感光性薄膜の塗布された無アルカリガラス基板に対して、オーブンを使用して230℃で30分間、ポストベイクを行って硬化膜を形成した。
次に、上記実施例1〜4および比較例1〜3において作製されたポジ型感光性組成物により形成された感光性薄膜の感度、当該感光性薄膜から硬化膜を作製する過程のプロセスマージンおよび当該硬化膜の絶縁性に関するそれぞれの評価方法について説明する。
(感度測定およびプロセスマージン)
上記実施例1〜4および比較例1〜3のポジ型感光性組成物を用いて、それぞれの硬化膜を上記方法で無アルカリガラス基板上に作製するに際し、10μm幅のラインアンドスペースパターンが存在するフォトマスクを用いて、露光量を2mJずつ変更しながら露光し、ラインの線幅が10μmとなる露光量を感度(mJ/cm2)と規定した。このとき露光から、現像を開始するまでの時間は2分間とした。さらに、上記実施例1〜3、および比較例1〜3のポジ型感光性組成物を各々用いてそれぞれの硬化膜を、上記方法で無アルカリガラス基板上に作製するに際し、露光から現像を開始するまでの時間を15分間とし、上記感度と規定した露光量によって硬化膜を作製した。その線幅の変化量(10μmからの変化量)から、下記基準でプロセスマージンを評価した。線幅の変化量の観察には、レーザー顕微鏡(オリンパス社製、LEXT4000)を使用した。
○:線幅の変化量が0.5μm未満。
△:線幅の変化量が0.5μm以上、1.0μm未満。
×:線幅の変化量が1.0μm以上。
(絶縁性評価)
Moを表面に蒸着した無アルカリガラス基板50mm×50mm上に、上記実施例1〜4および比較例1〜3のポジ型感光性組成物を用いて、上記と同様の方法によって、それぞれの硬化膜を形成し、さらに当該硬化膜上に、スパッタによってAl電極(6mmφ)を形成した。
絶縁性については、プレシジョン半導体パラメータ・アナライザ測定装置(Agilent社製、4156C)を用いて、硬化膜を挟んだ電極間(Mo−Al間)に0V〜50Vの電圧を0.5Vずつ段階的に印加し、30V印加時の電極単位面積当たりのリーク電流量(nA/cm2)を測定し、絶縁性の評価とした。
感度測定、プロセスマージンおよび絶縁性評価の結果を表2に示す。
本ポジ型感光性組成物により形成された感光性薄膜は、ポジ型のパターン形成が可能である。また、実施例1〜4に示された本ポジ型感光性組成物は、比較例1〜3におけるポジ型組成物組成物により形成された感光性薄膜と比較して、感度が良好であり、それら感光性薄膜から硬化膜を形成する際のプロセスマージンにおいて優れた特性を示し、且つ形成された硬化膜の絶縁信頼性も良好である。
なお、光酸発生剤としてNR−TFを添加した実施例1では、光酸発生剤としてTTBPS−PFBSを添加した実施例2に比べて、さらに感度が優れているという結果が得られた。