JP7040208B2 - 電解コンデンサ用電解液及びそれを用いた電解コンデンサ - Google Patents
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Description
また、電解液にシリカコロイド粒子を添加することにより、電解液の高い電気伝導率を維持しつつ耐電圧性を向上させる技術が提案されている(特許文献4~6)。
変性シリコーン等を添加した電解液は、電解液溶媒への溶解性や安定性は優れるものの、シリコーン部分の構造が直鎖状であり、電極を保護できる層を得にくく、耐電圧性が低い問題があった。
(1)下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを含有する電解コンデンサ用電解液、
(R1R2R3SiO1/2)a(R4R5SiO2/2)b(R6SiO3/2)c(SiO4/2)d(O1/2R7)e(O1/2H)f ・・・(1)
(ここで、上記式(1)中、R1からR6は各々独立して、炭素数1~10の炭化水素基、官能基を有する基、及び水素原子から選択され、R7は、炭素数1~8の有機基である。ただし、R1からR6のうち少なくとも一つは官能基を有する基又は水素原子であり、官能基はケイ素に直接結合していても、シロキサン結合以外の連結基を介して結合していてもよく、a+b+c+d=1、a≧0.1、b≦0.5、c+d≧0.1、e+f≦1.0である。)、
(2) 請求項1に記載の一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンが連結基を介して、自己結合、又は他のポリオルガノシロキサンと結合した連結ポリオルガノシロキサンを含有する、電解コンデンサ用電解液、
(3)前記ポリオルガノシロキサン及び/又は連結ポリオルガノシロキサンが含む官能基が、アルケニル基、アルキニル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、アシル基、環状エーテル基、水酸基、アセトキシ基、モノヒドロキシシリル基、ジヒドロキシシリル基、トリヒドロキシシリル基、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、及びトリアルコキシシリル基、並びにケイ素とヒドロシリル基を形成する水素原子からなる群から選択される少なくとも1つの基を含む、(1)又は(2)に記載の電解コンデンサ用電解液、
(4)前記ポリオルガノシロキサン及び/又は連結ポリオルガノシロキサンは、分子量1000当たりのケイ素に結合した官能基の数が3~12個である、(1)乃至(3)に記載の電解コンデンサ用電解液、
(5)前記ポリオルガノシロキサン及び/又は連結ポリオルガノシロキサンは、ポリスチレン換算によるGPC測定結果として、数平均分子量Mnが600以上、50000以下である、(1)乃至(4)のいずれかに記載の電解コンデンサ用電解液、
(6)エチレングリコール及び/またはγ-ブチロラクトンを含有する、(1)乃至(5)のいずれかに記載の電解コンデンサ用電解液、
(7)有機酸及び/または無機酸のオニウム塩を含有する、(1)乃至(6)のいずれかに記載の電解コンデンサ用電解液、
(8)陽極、アルミニウムからなる陰極、(1)乃至(7)のいずれかに記載の電解液を備える、アルミニウム電解コンデンサ、
に存する。
本発明の特定構造のポリオルガノシロキサンは、その構造の中にM単位と、T単位及び/又はQ単位を用い、また、D単位を必要以上に多く用いないことから、適度な架橋構造、分岐構造、環状構造を有した構造となり、電極の保護層としての強度、均一性が高くなり、高耐電圧性を得ることができるものと考えられる。また、通常のポリオルガノシロキサンは非常に極性が低いため、そのままでは電解液中の溶質や溶媒との相溶性が低く凝集したり分離したりするが、官能基で修飾することにより、電解液に用いられる各種の有機溶媒への溶解性が高くなり、どのような電解液にも使用することが可能となる。また、ヒドロキシシリル基やアルコキシシリル基が縮合反応を起こすことや、ヒドロキシシリル基やアルコキシシリル基と官能基の反応や相互作用、ヒドロキシシリル基やアルコキシシリル基と官能基と電極表面との反応や相互作用により、電極の保護層としての強度や電極との結合力も更に高くなり、高耐電圧性を得られるものと考えられる。
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
電解コンデンサ用電解液は、少なくとも溶媒、溶質、特定の一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを含んでいる。
本発明の一形態である電解コンデンサ用電解液に含有されるポリオルガノシロキサンは、下記一般式(1)で表されるものである。
(R1R2R3SiO1/2)a(R4R5SiO2/2)b(R6SiO3/2)c(SiO4/2)d(O1/2R7)e(O1/2H)f ・・・(1)
ここで、上記式(1)中、R1からR6は各々独立して、炭素数1~10の炭化水素基、官能基を有する基、及び水素原子から選択され、R7は、炭素数1~8の有機基である。ただし、R1からR6のうち少なくとも一つは官能基を有する基又は水素原子であり、官能基はケイ素に直接結合していても、シロキサン結合以外の連結基を介して結合していてもよく、a+b+c+d=1、a≧0.1、b≦0.5、c+d≧0.1、e+f≦1.0である。
以下、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを、単に「ポリオルガノシロキサン」とも称する。
また、ポリシロキサンの主鎖中の、ケイ素を含む単位の割合を示す数値の基準として、a+b+c+dを1としたときの数値でa,b,c,dを定義する。
一般式(1)中、M単位割合を示すaは0.1以上であり、好ましくは0.2以上である。またaは1未満であり、好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.7以下である。aが上記範囲であることで、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンの分子量の制御が容易となり、より具体的には分子量を小さすぎない適当な範囲にしやすくなるとともに、適度な架橋構造、分岐構造、又は環状構造を有した構造となり、電極の保護
層の強度や均一性を高めることができるため好ましい。
炭素数1~10の炭化水素基は、炭素数がこの範囲内であって、他の基との反応性を有さないものであれば特に限定されず、直鎖アルキル基であるメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基のほか、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソアミル基、sec-アミル基、tert-アミル基、テキシル基、2-エチルヘキシル基などの分岐構造を有する基、シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、1-フェニルエチル基、ナフチル基などの環状構造を有する基が挙げられる。
グリシジルオキシ基、脂環式エポキシ基、オキシラニル基などが好適に用いられ、オキシラニル基が特に好ましい。
また、アルコキシシリル基を有するポリオルガノシロキサンを連結する場合、分子内に2~4個のアルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基などを有する化合物でポリオルガノシロキサンを連結することができる。また、ヒドロキシシリル基を有するポリオルガノシロキサンを連結する場合、分子内に2~4個のアルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基などを有する化合物でポリオルガノシロキサンを連結することができる。
ポリオルガノシロキサンを連結させる方法の別の例として、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン中に導入されたアルケニル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、アシル基、環状エーテル基、水酸基、アセトキシ基、モノヒドロキシシリル基、ジヒドロキシシリル基、トリヒドロキシシリル基、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、及びトリアルコキシシリル基、ケイ素とヒドロシリル基を形成する水素原子等同士を、直接結合させる方法が挙げられる。
また、一般式(1)で表され、アルケニル基やメタクリロイル基、アクリロイル基、環状エーテル基等の単独重合性を持つ官能基を有するポリオルガノシロキサンに重合開始剤を添加し、これらの単独重合性を持つ官能基をポリオルガノシロキサン分子間で重合させ、ポリオルガノシロキサンを連結することができる。
また、一般式(1)で表され、アルケニル基やメタクリロイル基、アクリロイル基を有するポリオルガノシロキサンと、一般式(1)で表されケイ素原子とヒドロシリル基を形成する水素原子を有するポリオルガノシロキサンを混合し、ヒドロシリル化反応によりこれらを結合させることで、ポリオルガノシロキサンを連結することができる。
また、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを連結させることにより、電極の保護層としての強度や電極との結合力が高くなることが考えられることから好ましい。
一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンのケイ素に結合した分子量1000当たりのケイ素に結合した官能基数は、以下のとおり決定する。
測定対象のポリオルガノシロキサンを50mg秤量し、内部標準として15mgのトルエンを添加し精秤する。さらに重クロロホルムを1g入れて溶解し、400MHz 1H-NMR(日本電子株式会社製AL-400)にて、Relaxation Delayを20秒に設定して測定する。各成分のシグナル強度と内部標準のトルエンのシグナル強度との比率、及び、秤量値により、1g当たりの官能基含有量(mmol/g)、すなわち、ポリオルガノシロキサンの分子量1000当たりの官能基数を算出する。この際、ポリオルガノシロキサンに結合していない有機物や水、金属等の不純物については、測定結果に影響しないよう0.1質量%未満に除去されている必要があり、0.1質量%を上回る場合、蒸留や濾過、その他の精製方法により除去した後に試料を調整し、1H-NMRを測定する。除去が困難である場合は、1H-NMR測定やその他の分析方法により不純物の含有量を算出し、ポリオルガノシロキサンの一部として計算しないよう、不純物の重量を秤量したサンプル重量から差し引いた値を真のサンプル量として計算に用いる。なお、内部標準としては、トルエンの他、N,N-ジメチルホルムアミドやトリブロモエタンなど、ポリオルガノシロキサンと反応しない物質であれば、用いることが出来る。
ロロシラン化合物やその加水分解物、若しくは部分加水分解縮合物を縮合させる方法、環状シロキサン化合物を開環重合させる方法、又はアニオン重合を初めとする連鎖重合を用いた方法など、いずれの製造方法であってもよく、複数の製造方法を組み合わせて使用してもかまわない。また、カラムクロマトグラフィーやGPC、溶媒による抽出、不要成分の留去などによって、所望の官能基量や分子量を有するポリオルガノシロキサンを分画して使用してもよい。
例えば、過酸化水素水と無水酢酸を加え、過酢酸を系内調製する。
カルボン酸を用いる場合は、有機過酸の生成を加速するために硫酸などの酸触媒を添加してもよい。
本発明の一形態である電解液には、溶媒が含まれるが、その溶媒は通常電解コンデンサに使用される溶媒を使用すればよい。その具体例としては、エチレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブなどのアルコール溶媒;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトンなどのラクトン溶媒;N-メチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノンなどのアミド溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどのカーボネート溶媒;3-メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリルなどのニトリル溶媒;リン酸トリメチル、リン酸トリエチルなどのリン酸エステル溶媒;ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、エチルブチルスルホン、スルホラン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホランなどのスルホン溶媒;ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン等のウレア溶媒;3-メチル-2-オキサゾリジノン等のウレタン溶媒等あるいはこれらの混合物が挙げられる。中でも各種の溶質に対して大きな溶解力を有し、また温度特性に優れた電解液が得られる有機溶媒であるエチレングリコールおよびγ-ブチロラクトンが好ま
しい。
電解液には、溶質が含まれるが、その溶質は通常電解コンデンサに使用される溶質を使用すればよい。溶質として用いる具体例としては、有機酸および/または無機酸のオニウム塩である。
有機酸の具体例としては、安息香酸、トルイル酸、クミン酸、t-ブチル安息香酸、サリチル酸、アニス酸などの芳香族モノカルボン酸類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、7-フェニル-7-メトキシ-1-オクタンカルボン酸、6-フェニル-6-メトキシ-1-ヘプタンカルボン酸などの脂肪族モノカルボン酸類;フタル酸、4-メチルフタル酸、4-ニトロフタル酸など芳香族ジカルボン酸類;マレイン酸、シトラコン酸、ジメチルマレイン酸、1,2-シクロヘキセンジカルボン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸類;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸などの直鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸類;ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、ジプロピルマロン酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、3,3-ジメチルグルタル酸、3-メチルアジピン酸、2,2,4-トリメチルアジピン酸、2,4,4-トリメチルアジピン酸、1,6-デカンジカルボン酸、5,6-デカンジカルボン酸、1,7-オクタンジカルボン酸、7-メチル-7-カルボメトキシ-1,9-デカンジカルボン酸、2,8-ノナンジカルボン酸、7,8,11,12-テトラメチル-1,18-オクタデカンジカルボン酸、1-メチル-3-エチル-1,7-ヘプタンジカルボン酸、1,3-ジメチル-1,7-ヘプタンジカルボン酸、5-メチル-1,7-オクタンジカルボン酸、7,12-ジメチル-1,18-オクタデカンジカルボン酸、7-エチル-1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、7,8-ジメチル-1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,6-ヘプタンジカルボン酸、6-メチル-6-カルボメトキシ-1,8-ノナンジカルボン酸、1,8-ノナンジカルボン酸、8-メチル-8-カルボメトキシ-1,10-ウンデカンジカルボン酸、6-エチル-1,4-テトラデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの分岐鎖を有する飽和脂肪族ジカルボン酸類;7-メチル-1,7,9-デカントリカルボン酸、6-メチル-1,6,8-ノナントリカルボン酸、8-メチル-1,8,10-ウンデカントリカルボン酸などのトリカルボン酸類;リン酸ジブチル、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)などの酸性リン酸エステル類;2-エチルヘキシルホスホン酸(2-エチルヘキシル)などの酸性ホスホン酸エステル類等あるいはこれらの混合物が挙げられる。また、無機酸成分の具体例としては、ホウ酸、燐酸などが挙げられる。
ジエチルピペリジニウム、N,N-テトラメチレンピペリジニウム、N,N-ペンタメチレンピペリジニウム、N,N-スピロビピロリジニルなどの四級アンモニウム類;1,3-ジメチルイミダゾリウム、1,2,3-トリメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1,3-ジエチルイミダゾリウム、1,2-ジエチル-3-メチルイミダゾリウム、1,3-ジエチル-2-メチルイミダゾリウム、1,2-ジメチル-3-n-プロピルイミダゾリウム、1-n-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-n-プロピル-2,4-ジメチルイミダゾリウム、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリウム、1,2,3,4,5-ペンタメチルイミダゾリウム、2-エチル-1,3-ジメチルイミダゾリウムなどの四級イミダゾリウム類;1,3-ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3-トリメチルイミダゾリニウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリニウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリニウム、1,3-ジエチルイミダゾリニウム、1,2-ジエチル-3-メチルイミダゾリニウム、1,3-ジエチル-2-メチルイミダゾリニウム、1,2-ジメチル-3-n-プロピルイミダゾリニウム、1-n-ブチル-3-メチルイミダゾリニウム、1-メチル-3-n-プロピル-2,4-ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム、2-エチル-1,3-ジメチルイミダゾリニウムなどの四級イミダゾリニウム類;1,3-ジメチルテトラヒドロピリミジニウム、1,3-ジエチルテトラヒドロピリミジニウム、1-エチル-3-メチルテトラヒドロピリミジニウム、1,2,3-トリメチルテトラヒドロピリミジニウム、1,2,3-トリエチルテトラヒドロピリミジニウム、1-エチル-2,3-ジメチルテトラヒドロピリミジニウム、2-エチル-1,3-ジメチルテトラヒドロピリミジニウム、1,2-ジエチル-3-メチルテトラヒドロピリミジニウム、1,3-ジエチル-2-メチルテトラヒドロピリミジニウムなどのテトラヒドロピリミジニウム化合物類等あるいはこれらの混合物が挙げられる。
低圧用コンデンサにはγ-ブチロラクトン溶媒とフタル酸などの組み合わせにおいて高い電気伝導率を有する電解液が得られる1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリニウム、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムが好ましい。
そして、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンは、電解液全体に対して0.5質量%~18質量%含有させることが好ましく、より好ましい下限値は1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、より好ましい上限値としては15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
[測定方法]
1.ポリオルガノシロキサン中の官能基量の測定及び分子量1000当たりの官能基数の測定
測定対象のポリオルガノシロキサンを50mg秤量し、内部標準として15mgのトルエンを添加し精秤した。さらに重クロロホルムを1g入れて溶解し、400MHz 1H-NMR(日本電子株式会社製AL-400)にて、Relaxation Delayを20秒に設定して測定した。各成分のシグナル強度と内部標準のトルエンのシグナル強度との比率、及び、秤量値により、1g当たりの官能基含有量(mmol/g)、すなわち、ポリオルガノシロキサンの分子量1000当たりの官能基数を算出した。この際、ポリオルガノシロキサンに結合していない有機物や水、金属等の不純物については、測定結果に影響しないよう0.1質量%未満に除去されている必要があり、0.1質量%を上回る場合、蒸留や濾過、その他の精製方法により除去した後に試料を調整し、1H-NMRを測定する。除去が困難である場合は、1H-NMR測定やその他の分析方法により不純物の含有量を算出し、ポリオルガノシロキサンの一部として計算しないよう、不純物の重量を秤量したサンプル重量から差し引いた値を真のサンプル量として計算に用いる。なお、内部標準としては、トルエンの他、N,N-ジメチルホルムアミドやトリブロモエタンなど、ポリオルガノシロキサンと反応しない物質であれば、用いることが出来る。
装置:日本電子株式会社製JNM-ECS400、TUNABLE(10)、Siフリー、AT10プローブ
・測定条件:Relaxation Delay/15秒、SCAN回数/1024回、測定モード/非ゲーテッドデカップルパルス法(NNE)、スピン/なし、測定温度/25℃
・試料の調整:重クロロホルムにTris(2,4-pentanedionato)chromiumIIIが0.5質量%になるよう添加し、29Si-NMR測定用溶媒を得た。測定対象のポリオルガノシロキサンを1.5g秤量し、上記29Si-NMR測定用溶媒を2.5ml入れて溶解し、10mmΦテフロン(登録商標)製NMR試料管へ入れた。
ケイ素を主成分とする化合物は、構造的にはケイ素原子Siの四面体の各頂点に酸素原子Oや炭素原子Cなどが結合され、酸素原子が一個結合したものはM単位、酸素原子が二個結合したものはD単位、酸素原子が三個結合したものはT単位、酸素原子が四個結合したものはQ単位と呼ばれる。29Si-NMR測定から得られるスペクトルにおいて、シグナルの出現位置は上記四種類の単位ごとに区切ることができ、概ねM単位は-20~0ppm、D単位は0~-30ppm、T単位は-40~-80ppm、Q単位は-80ppm~-130ppmに観測され、これらのシグナル積分比はそれぞれの各ケイ素原子の存在比率に等しいことから、MDTQ各単位の比率を算出できる。ただし、ケイ素原子や炭素原子に結合している原子または原子団によっては、上記の範囲から外れる場合もあり
、例えば水素原子が直接結合したケイ素原子のシグナルはメチル基が結合したケイ素原子のシグナルよりも高磁場側に観測されることが多い。また、ケイ素原子に結合した酸素原子にさらに水素原子やメチル基が結合している場合、水酸基、メトキシ基が結合したケイ素原子のシグナルは低磁場側に観測される。これらの事象により上記の範囲から外れて観測されることもあるので、注意が必要である。この場合には、例えば、1H-29Si二次元NMR測定により、着目しているケイ素シグナルとケイ素に導入されている基のプロトンシグナルの相関を確認することにより、29Si-NMRにて観察されたシグナルをMDTQ各単位に帰属することができる。
各ポリオルガノシロキサンの数平均分子量Mnおよび重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として示した。試料は約10質量%のTHF溶液を用い、測定前に0.45μmのフィルターにて濾過したものを用いた。
カラム:KF-G、KF-401HQ、KF-402HQ、KF-402.5HQ(昭和電工(株)製)、カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン、流量0.2mL/分
合成に使用した試薬及び溶媒等は下記のとおりである。
ヘキサメチルジシロキサン(NuSil Technology社製、製品名:S-7205)
1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン(NuSil Technology社製、製品名:PLY-70)
1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(NuSil Technology社製)メチルシリケートMS-51(三菱ケミカル株式会社製)
フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、製品名:KBM-103)
テトラヒドロフラン(キシダ化学株式会社製)
エチレングリコールモノビニルエーテル(東京化成工業株式会社製)
ジエチレングリコールモノビニルエーテル(東京化成工業株式会社製)
1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン(東京化成工業株式会社製)
1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン(東京化成工業株式会社製)
トルエン(キシダ化学株式会社製)
エタノール(キシダ化学株式会社製)
メタノール(キシダ化学株式会社製)
ヘプタン(キシダ化学株式会社製)
N,N-ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製)
1N塩酸(キシダ化学株式会社製)
8N水酸化カリウム水溶液(キシダ化学株式会社製)
白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体 キシレン溶液(白金 ~2%;アルドリッチ社製)
メタクロロ過安息香酸(キシダ化学株式会社製) 純度約70%
無水酢酸(キシダ化学株式会社製)
45%過酸化水素(三菱ガス化学社製)
<合成例1> ポリオルガノシロキサン1
ヘキサメチルジシロキサン2.6質量部、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン
9.16質量部、メチルシリケートMS-51 8.24質量部をトルエン10.0質量部とメタノール10.0質量部の混合溶媒に溶解させた後、1N塩酸5.10質量部とメタノール2.55質量部の混合物を加えて40℃で4時間撹拌した。ヘプタン17.5質量部で希釈した後、脱塩水で洗浄した。ローターリーエバポレーターを用い76℃、圧力15Torrの減圧下で、目視にて溶媒の留出がなくなるまで溶媒を留去した。続いて、110℃、圧力0.15torrの減圧下で2時間加熱し、「ポリオルガノシロキサン1」を得た。
1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン74質量部、メチルシリケートMS-51、 95質量部をトルエン84質量部、メタノール84質量部の混合溶媒に溶解させた後、1N塩酸58質量部、メタノール58質量部の混合物を加えて、30℃で3時間撹拌した。その後、溶媒を留去し生成物を濾過することで「ポリオルガノシロキサン2」を得た。
得られた「ポリオルガノシロキサン2」の1H-NMRを合成例1同様に測定し、ヒドロシリル基を含有しているポリオルガノシロキサンであることを確認した。測定時のチャートを図4に示す。
上記合成例1で合成したポリオルガノシロキサン1、30質量部を1Lの四つ口フラスコに仕込み、これにクロロホルム300mlを加えて溶解させた後、油浴にて内温約40℃まで加熱し、撹拌しながらメタクロロ過安息香酸合計56.2質量部を5回に分け、計9時間で分割添加した。途中、4回目の添加後、クロロホルムを50ml追加した。反応の経時変化は1H-NMRにて追跡し、上記1H-NMR分析条件にてδ値5.70~6.25のビニル基のプロトンと、δ値2.15~3.00のエポキシ基のプロトンの積算値の比より転化率を求めた。転化率98%で加熱を終了した。氷水浴で内温を約10℃とした後、5質量%チオ硫酸ナトリウム100mlで2回洗浄した。更に飽和重曹水100mlで2回、水100mlで一回洗浄し、KI澱粉紙にて有機相、水相共に過酸化物が残存しないことを確認した後、溶媒を留去することで、ポリオルガノシロキサン3、31.3質量部を得た。ポリオルガノシロキサン3のγ―ブチロラクトンへの溶解性は良好であった。
また、上述の方法で29Si-NMRを測定し、その結果よりMDTQの割合を求めたところ、a=0.62、b=0、c=0、d=0.38であった。また、e+fに関しては0.09であった。測定したチャート上でeとfを分離するのは難しいことが多いため、eとfの合計量で考えるとよい。また、数平均分子量は1000であり、分子量1000当たりの官能基量は、4.9であった。
合成例2で得られたポリオルガノシロキサン2を50質量部、エチレングリコールモノビニルエーテル48質量部をトルエン195質量部に溶解させた後、白金濃度として2質
量%の白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液 0.05質量部を加えて、80℃で6時間撹拌した。反応の経時変化は1H-NMRにて追跡し、上記1H-NMR分析条件にてδ値4.5~4.9のケイ素原子に直接結合したプロトンに起因するシグナルが完全に消失し、新たにδ値2.5~4.0およびδ値0.8~1.2にケイ素原子に結合した2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル基に起因するシグナルが定量的に観察された。室温まで冷却後、シリカゲル50質量部を加えて30分撹拌した後、濾過した濾液の溶媒を留去してポリオルガノシロキサン4を得た。ポリオルガノシロキサン4のエチレングリコール、γ―ブチロラクトンへの溶解性は良好であった。
合成例2で得られたポリオルガノシロキサン2を50質量部、ジエチレングリコールモノビニルエーテル71質量部をトルエン195質量部に溶解させた後、白金濃度として2質量%の白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液 0.05質量部を加えて、110℃で8時間撹拌した。反応の経時変化は1H-NMRにて追跡し、上記1H-NMR分析条件にてδ値4.5~4.9のケイ素原子に直接結合したプロトンに起因するシグナルが完全に消失し、新たにδ値2.4~4.2およびδ値0.8~1.2にケイ素原子に結合した2-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチル基に起因するシグナルが定量的に観察された。室温まで冷却後、シリカゲル50質量部を加えて30分撹拌した後、濾過した。濾液の溶媒を留去してポリオルガノシロキサン5を得た。ポリオルガノシロキサン5のエチレングリコール、γ―ブチロラクトンへの溶解性は良好であった。
酢酸15質量部と硫酸0.3質量部、3wt%ピロリン酸10水和物水溶液0.19質量部を100mlの3つ口フラスコ中に仕込み、水冷却下撹拌しながら45%過酸化水素8.5mlを添加した。その後室温にて24時間放置し、過酢酸が21wt%含まれる平衡溶液を取得した。
上記合成例1で合成したポリオルガノシロキサン1を2.0質量部、50mLの2口フラスコに仕込み、これにトルエン12ml、3wt%ピロリン酸10水和物水溶液0.02ml、酢酸ナトリウム0.024質量部を加えた後、油浴を用い内温約60℃まで加熱し、窒素気流下上記21wt%過酢酸溶液4.06mlを15分間で添加し、その後7時間反応した。合成例3と同様の方法で、NMRによりビニル基のエポキシ基への転化率を調べたところ52%であった。反応系に水4mlを加えて撹拌した後、静置して、分離した水相を排出した。有機相に酢酸ナトリウム0.024質量部、21wt%過酢酸溶液4.06mlを再度添加し、3時間反応を行ったところ、転化率は70%であった。
得られた「ポリオルガノシロキサン6」の1H-NMRを合成例1と同様に測定し、エポキシ基とビニル基を含有しているポリオルガノシロキサンであることを確認した。測定時のチャートを図8に示す。
また、上述の方法で29Si-NMRを測定し、その結果よりMDTQの割合を求めたところ、a=0.62、b=0、c=0、d=0.38であった。また、e+fに関しては0.09であった。測定したチャート上でeとfを分離するのは難しいことが多いため、eとfの合計量で考えるとよい。また、数平均分子量は1300であり、分子量1000当たりのエポキシ官能基量は3.7、ビニル官能基量は1.5であった。
上記合成例1で合成したポリオルガノシロキサン1、2.0質量部を100mLの試験管に仕込み、これにトルエン12mlを加えて、内温約60℃まで加熱した。これに窒素気流下無水酢酸1.14g、45%過酸化水素水0.84mlを添加し、4時間反応した。上記と同様の方法でNMRによりビニル基のエポキシ基への転化率を調べたところ30%であった。反応系に水4mlを加えて撹拌した後、静置して、分離した水相を排出した。その後、同様に無水酢酸と過酸化水素水を添加して反応、水を添加して水相排出する一連の操作を4回行った。合成例3と同様の方法でNMRによりビニル基のエポキシ基への転化率を調べたところ、転化率は91%であった。
1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン313質量部、ヘキサメチルジシロキサン252質量部、メチルシリケートMS-51 422質量部をテトラヒドロフラン422質量部に溶解させた後、1N塩酸115質量部、メタノール115質量部の混合物を加えて、30℃で2時間撹拌した。その後、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン313質量部およびヘキサメチルジシロキサン252質量部の混合物を加えてさらに30℃で1時間撹拌した。得られた反応溶液から溶媒を留去し生成物を濾過することで「ポリオルガノシロキサン8」を得た。
得られた「ポリオルガノシロキサン8」の1H-NMRを合成例1と同様に測定し、ヒドロシリル基を含有しているポリオルガノシロキサンであることを確認した。測定時のチャートを図9に示す。
合成例8で得られたポリオルガノシロキサン8を200質量部、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン234質量部をトルエン257質量部に溶解させた後、白金濃度として2質量%の白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液0.58質量部を加えて、80℃で6時間撹拌した。反応の経時変化は1H-NMRにて追跡し、上記1H-NMR分析条件にてδ値4.5~4.9のケイ素原子に直接結合したプロトンに起因するシグナルが完全に消失し、新たにδ値3.0~3.2、δ値0.7~2.3、δ値0.7~2.3、およびδ値0.4~0.6にケイ素原子に結合した(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基に起因するシグナルが定量的に観察された。室温まで冷却後、活性炭69.3質量部を加えて2時間撹拌した後、濾過により活性炭を除去した濾液に再度活性炭69.3質量部を加えて2時間撹拌した。濾過により再度活性炭を除去した濾液の溶媒を留去してポリオルガノシロキサン9を得た。ポリオルガノシロキサン9のγ―ブチロラクトンへの溶解性は良好であった。
1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン52.8質量部、フェニルトリメトキシシラン225質量部、メチルシリケートMS-51 11.9質量部をトルエン145質量部とメタノール145質量部の混合溶媒に溶解させた後、1N塩酸75.0質量部、メタノール75.0質量部の混合物を加えて、30℃で3時間撹拌した。その後、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン68.1質量部を加えてさらに30℃で1時間撹拌した。得られた反応溶液から溶媒を留去し生成物を濾過することで「ポリオルガノシロキサン10」を得た。
得られた「ポリオルガノシロキサン10」の1H-NMRを合成例1と同様に測定し、フェニル基およびビニル基を含有しているポリオルガノシロキサンであることを確認した。測定時のチャートを図11に示す。
上記合成例10で合成したポリオルガノシロキサン10、30質量部を1Lの四つ口フラスコに仕込み、これにクロロホルム300mlを加えて溶解させた後、油浴にて内温約40℃まで加熱し、撹拌しながらメタクロロ過安息香酸合計49.3質量部を4回に分け、計5時間で分割添加した。反応の経時変化は1H-NMRにて追跡し、上記1H-NMR分析条件にてδ値5.70~6.25のビニル基のプロトンと、δ値2.15~3.00のエポキシ基のプロトンの積算値の比より転化率を求めた。転化率99%で加熱を終了した。氷水浴で内温を約10℃とした後、20質量%亜硫酸ナトリウム100mlで2回洗浄した。更に飽和重曹水100mlで2回、水100mlで一回洗浄し、KI澱粉紙にて有機相、水相共に過酸化物が残存しないことを確認した後、溶媒を留去することで、「ポリオルガノシロキサン11」27.0質量部を得た。ポリオルガノシロキサン11のγ-ブチロラクトンへの溶解性は良好であった。
得られた「ポリオルガノシロキサン11」の1H-NMRを合成例1と同様に測定し、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基を含有しているポリオルガノシロキサンであることを確認した。測定時のチャートを図12に示す。また、上述の方法で29Si-NMRを測定し、その結果よりMDTQの割合を求めたところ、a=0.43、b=0、c=0.53、d=0.04であった。またe+fに関しては0.10であった。また、数平均分子量は800であり、分子量1000当たりのエポキシ官能基量は3.8であった。
1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン417質量部、ヘキサメチルジシロキサン126質量部、メチルシリケートMS-51 422質量部をテトラヒドロフラン965質量部に溶解させた後、1N塩酸115質量部、メタノール115質量部の混合物を加えて、30℃で2時間撹拌した。その後、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン417質量部およびヘキサメチルジシロキサン126質量部の混合物を加えてさらに30℃で1時間撹拌した。得られた反応溶液から溶媒を留去し生成物を濾過することで「ポリオルガノシロキサン12」を得た。
得られた「ポリオルガノシロキサン12」の1H-NMRを合成例1と同様に測定し、ヒドロシリル基を含有しているポリオルガノシロキサンであることを確認した。測定時のチャートを図13に示す。
合成例12で得られたポリオルガノシロキサン12を15質量部、エチレングリコールモノビニルエーテル9質量部、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン1.7質量部をトルエン52質量部に溶解させた後、白金濃度として2質量%の白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体 キシレン溶液 0.02質量部を加えて、70℃で6時間撹拌した。反応の経時変化は1H-NMRにて追跡し、上記1H-NMR分析条件にてδ値4.5~4.9のケイ素原子に直接結合したプロトンに起因するシグナルが完全に消失し、新たにδ値2.5~4.0およびδ値0.8~1.2にケイ素原子に結合した2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル基に起因するシグナルが定量的に観察された。室温まで冷却後、シリカゲル15質量部を加えて30分撹拌した後、濾過した濾液の溶媒を留去して「ポリオルガノシロキサン13」を得た。ポリオルガノシロキサン13のγ-ブチロラクトンへの溶解性は良好であった。
(電解液の作製)
フタル酸1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリニウム(10質量部)にγ-ブチロラクトン(90質量部)を加えベース電解液を作製した。このベース電解液にポリオルガノシロキサン3(6質量部)を添加し、さらに水を加え水分を1%に調整し、電解液を作製した。電解液の組成はフタル酸1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリニウム(9.4質量%)、γ-ブチロラクトン(84.1質量%)、ポリオルガノシロキサン(5.6質量%)、水(1.0質量%)である。
こうして調整した電解液の伝導率は東亜DKK製のマルチ水質計(MM-60R)を使用し、25℃の恒温槽中で測定した。
その結果ポリオルガノシロキサン3を含む電解液の伝導率(25℃)は、6.3/mS・cm-1であった。
このアルミニウム電解コンデンサに、10mAの定電流を125℃にて印加したときの電圧-時間の上昇カーブで、初めにスパイクあるいはシンチレーションが観測された電圧値を耐電圧値として測定したところ、200Vであった。使用したアルミニウム電解コンデンサ素子の仕様は、ケースサイズ10φ×20L、定格電圧200V、静電容量20μFであった。
合成例5,6,9,11,13で得られたポリオルガノシロキサン5,6,9,11,13をそれぞれ使用した以外は実施例1と同様に電解液を作成し、伝導率と耐電圧の測定を行った。結果を表1に示す。
ポリオルガノシロキサンを添加しない以外は実施例1と同様にして測定を行った。結果を表1に示す。無添加の場合の耐電圧が85Vであることが判る。
ポリオルガノシロキサンの代わりに、エポキシ基を有する市販のシランカップリング剤(分子量236、T単位のみ)を添加し、実施例1と同様に測定を行った。耐電圧は102Vと若干向上したが、実施例に対しては劣っている。結果を表1に示す。
ポリオルガノシロキサンに変えて、市販のエポキシ変性シリコーン(分子量800、a=0.29、b=0.71、c=d=0、官能基量2.5)を添加し、実施例1と同様に測定を行った。結果を表1に示す。
ポリオルガノシロキサンの代わりに、特開平10-241999号記載のエポキシ基で修飾した(修飾官能基の構造は表1に示す)有機修飾シリカゾルを添加し、実施例1と同様に測定を行おうと試みたが、ゲル化が起こり、コンデンサとしての評価はできなかった。この結果も表1に示す。
従来から知られているシランカップリング剤の添加の例として示す比較例2の電解液では、実施例1~7と比較して、耐電圧の上昇が小さい。この理由は、シランカップリング剤のようなものでは、分子量が小さく十分な架橋構造を形成しにくく、電極表面の保護効
果が小さいためであると思われる。
また有機修飾シリカゾルを添加した比較例4の電解液は、安定性が悪くゲル化した。
2:陰極側電極箔
3:セパレータ
4:引き出し端子
5:外装ケース
6:ゴムパッキン
7:封口板
8:電極外部端子
9:素子固定剤
10:コンデンサ素子
Claims (8)
- 下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを含有する電解コンデンサ用電解液。
(R1R2R3SiO1/2)a(R4R5SiO2/2)b(R6SiO3/2)c(SiO4/2)d(O1/2R7)e(O1/2H)f ・・・(1)
(ここで、上記式(1)中、R1からR6は各々独立して、炭素数1~10の炭化水素基、官能基を有する基、及び水素原子から選択され、R7は、炭素数1~8の有機基である。ただし、R1からR6のうち少なくとも一つは官能基を有する基又は水素原子であり、官能基はケイ素に直接結合していても、シロキサン結合以外の連結基を介して結合していてもよく、a+b+c+d=1、a≧0.1、b≦0.5、c+d≧0.1、e+f≦1.0である。) - 請求項1に記載の一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンが連結基を介して、自己結合、又は他のポリオルガノシロキサンと結合した連結ポリオルガノシロキサンを含有する、電解コンデンサ用電解液。
- 前記ポリオルガノシロキサン及び/又は連結ポリオルガノシロキサンが含む官能基が、アルケニル基、アルキニル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、アシル基、環状エーテル基、水酸基、アセトキシ基、モノヒドロキシシリル基、ジヒドロキシシリル基、トリヒドロキシシリル基、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、及びトリアルコキシシリル基、並びにケイ素とヒドロシリル基を形成する水素原子からなる群から選択される少なくとも1つの基を含む、請求項1又は2に記載の電解コンデンサ用電解液。
- 前記ポリオルガノシロキサン及び/又は連結ポリオルガノシロキサンは、分子量1000当たりのケイ素に結合した官能基の数が3~12個である、請求項1乃至3に記載の電解コンデンサ用電解液。
- 前記ポリオルガノシロキサン及び/又は連結ポリオルガノシロキサンは、ポリスチレン換算によるGPC測定結果として、数平均分子量Mnが600以上、50000以下である、請求項1乃至4のいずれかに記載の電解コンデンサ用電解液。
- エチレングリコール及び/またはγ-ブチロラクトンを含有する、請求項1乃至5のいずれかに記載の電解コンデンサ用電解液。
- 有機酸及び/または無機酸のオニウム塩を含有する、請求項1乃至6のいずれかに記載の電解コンデンサ用電解液。
- 陽極、アルミニウムからなる陰極、請求項1乃至7のいずれかに記載の電解液を備えるアルミニウム電解コンデンサ。
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