JP4128465B2 - 電解コンデンサ用電解液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電解コンデンサ用電解液に関する。更に詳しくは有機物で表面修飾した無機酸化物コロイド粒子を含有させることにより高い耐電圧と高い信頼性を有する電解コンデンサを提供し得る電解コンデンサ用電解液に関する。
【0002】
【従来の技術】
電解コンデンサは、アルミニウム、タンタルなどの絶縁性酸化皮膜層が形成され得るいわゆる弁金属を陽極に用い、その表面を陽極酸化処理等によって前記の絶縁性の酸化皮膜薄膜を誘電体層として形成したものを陽極側電極に用いる。そして、この例として図1に例示されるような巻回型素子構造が一般に知られており、陽極側電極(1)に対向させて陰極側電極(2)を配置し、陽極側電極と陰極側電極の間にセパレータ(3)を介在させ、このセパレータに電解液を保持させている。これを図2に示すようなアルミニウム等の材質の外装ケース(5)に入れ、該ケースをブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴムなどのゴムパッキン(6)を介してフェノール樹脂積層板、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィドなどの封口板(7)を用いて密閉した構造となっている。
【0003】
酸化アルミニウムを誘電体に用いたアルミ電解コンデンサでは、陽極側電極は、通常表面積の拡大のためエッチング処理されている。電解液は、この陽極側電極の凹凸面に密接して、陰極側電極の電界を伝達する実質的な陰極として機能するものである。このため電解液の電気伝導率、温度特性などが電解コンデンサとしての電気的特性〔インピーダンス、誘電損失(tanδ)、等価直列抵抗(ESR)等〕を決定する要因となっている。
又、電解液には、絶縁性の酸化皮膜薄膜の劣化や損傷を修復する役割(化成性)が要求され、これが電解コンデンサの漏れ電流(LC)や寿命特性へ影響を及ぼす。このように、電解液は電解コンデンサの特性を左右する重要な構成要素である。
【0004】
電解液の電気伝導率は、電解コンデンサのエネルギー損失、インピーダンス特性などに直接関わることから、高い電気伝導率を有する電解液が好ましい。一方、安全性に対する要求の高まりから、電解コンデンサに対して定格電圧を越える異常電圧が印加されるような過酷な条件下においても、ショートや発火を起こさないようにより高い耐電圧を有する電解コンデンサが求められている。
しかしながら、一般的に、用いる電解液の電気伝導率が高くなると電解コンデンサの耐電圧は低下する傾向にあり、電解コンデンサの開発を困難なものにしている(宇恵ら、ニューキャパシタ、3巻、55頁、1996年)。そこで、高い電気伝導率を有する電解液を使用しながら、高い耐電圧を有する電解コンデンサ得る試みとして、電解液に種々の無機酸化物コロイド粒子を添加して耐電圧を向上させることが検討されている。
【0005】
例えば、電解液にシリカコロイド粒子を添加することにより、電解液の高い電気伝導率を維持しつつ耐電圧を上昇させることが提案されている(特開平1−232713号公報)。またシリカ以外にもアルミナ(特開平4−145612号公報)、ジルコニア(特開平4−145613号公報)、チタニア(特開平4−145616号公報)、アルミノシリケート(特開平6−283388号公報)、アルミノシリケート被覆シリカ(特開平6−349684号公報)などを添加することも提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平1−232713号公報
【特許文献2】
特開平4−145612号公報
【特許文献3】
特開平4−145613号公報
【特許文献4】
特開平4−145616号公報
【特許文献5】
特開平6−283388号公報
【特許文献6】
特開平6−349684号公報
【非特許文献1】
宇恵ら、ニューキャパシタ、3巻、55頁、1996年
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら無機酸化物コロイド粒子を含有した電解液では初期の耐電圧は高いものの、寿命試験中に耐電圧が低下し、ショートが発生するという問題点があった。また、この耐電圧低下現象は、特にジカルボン酸などの多価のイオンを溶質として用いた電解液の場合に顕著であった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
これらの耐電圧が低下する電解液に共通した現象として、寿命試験中に電解液のゲル化や無機酸化物の沈殿生成が確認され、耐電圧向上効果を長時間持続させるためには、添加した無機酸化物コロイド粒子がゲル化や沈殿を起こさずに安定なコロイド状態を保つことが必要であることを見出した。
上記目的のため、鋭意検討した結果、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランで表面修飾したシリカコロイド粒子はコンデンサ用電解液中で従来の無機酸化物コロイド粒子に比べて極めてゲル化や沈殿を起こしにくいことを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランで表面修飾したシリカコロイド粒子を含有する電解液を用いることにより、高い耐電圧を高温で長時間維持できる電解コンデンサを実現することを特徴とする電解コンデンサ用電解液に関するものである。
【0009】
【作用】
無機酸化物コロイド粒子を有機物で表面修飾することにより、有機溶媒との親和性が向上し、粒子の凝集が妨げられ、高温で長時間放置してもゲル化や沈殿は生じない。したがって電解コンデンサ中の無機酸化物コロイド粒子の耐電圧向上効果を長時間持続することが可能である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる無機酸化物コロイド粒子を表面修飾する有機物としてはシリル化剤、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、アルコール類、ラテックスなどの各種高分子化合物などを挙げることができる。
【0011】
シリル化剤およびシランカップリング剤は次の一般式(1)で表される。
【化2】
[式中、X1 〜X3 は、炭素数が1〜20のアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基であり、その水素の一部がカルボキシル基、エステル基、アミド基、シアノ基、ケトン基、ホルミル基、エーテル基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、スルフィド基、スルホキシド基、スルホン基で置換されていてもよい炭化水素基(−R)、オキシ炭化水素基(−OR)及び水酸基(−OH)の群から選ばれた少なくとも一種であり、互いに異なっていても良い。X4 は炭素数1〜20のアルコキシ基または水酸基である。]
【0012】
X1 〜X3 の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、デシル基、オクタデシル基などのアルキル基類;ビニル基、アリル基などのアルケニル基類;フェニル基、ナフチル基などのアリール基類;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基類などの炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ビニルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのオキシ炭化水素基あるいは水酸基を挙げることができる。さらに、置換基を有する場合の例として、3−メタクリロキシプロピル基などのアクリル基類;3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基などのエポキシ基類;3−アミノプロピル基、N−フェニル−3−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基などのアミノ基類;3−メルカプトプロピル基などのメルカプト基類などを挙げることができる。
X4 の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基類;水酸基を挙げることができる。
【0013】
これらの組み合わせの中でもメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが好ましく、その中でも、エチレングリコールやγ−ブチロラクトンなどの溶媒と親和性のよい3−グリシドキシプロピル基を有する3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランが特に好ましい。
【0014】
チタネート系カップリング剤の具体例としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクロイルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネートなどが挙げられる。
【0015】
アルミニウム系カップリング剤の具体例としては、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノアセチルアセトネートなどが挙げられる。
アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、アミルアルコール、4−メチル−2−ペンタノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、トリデカノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0016】
これらのシリル化剤、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、アルコール類、各種高分子化合物などの表面修飾に用いる有機物は、単独でまたは複数の組み合わせで用いることができる。
本発明で用いる無機酸化物コロイド粒子の具体例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化アンチモン、アルミノシリケート、シリカジルコニア、チタニアジルコニア、アルミノシリケート被覆シリカ、シリカジルコニア被覆シリカ等あるいはこれらの混合物が挙げられる。中でもシリル化処理の容易さやコロイドの安定性、耐電圧の向上効果の観点から特にシリカ、アルミノシリケート、アルミノシリケート被覆シリカが好ましい。
【0017】
無機酸化物コロイド粒子の平均粒径は、好ましくは5〜100nmの範囲であり、さらに好ましくは10〜50nmの範囲である。無機酸化物コロイド粒子の粒径が小さすぎると電解液のゲル化が起こりやすく、また大きすぎると沈殿を生じやすく、安定なコロイドとなりにくい。
本発明で用いるシリル化剤またはシランカップリング剤で表面修飾した無機酸化物コロイド粒子は、例えば、米国特許第4,027,073号明細書に記載の方法で得ることができる。
本発明で用いるアルコールで表面修飾した無機酸化物コロイド粒子は、例えば米国特許第2,657,149号明細書に記載の方法で得ることができる。
【0018】
これら有機物で表面修飾した無機酸化物コロイド粒子の添加方法としては、特に限定されるものではないが、これらは溶媒に殆ど溶けないため、一般に適当な分散媒に分散させたコロイド溶液として電解液に添加する方法が好ましい。ここで分散媒としては特に限定はないが、前記の溶媒であるエチレングリコールなどを用いれば、基本電解液への特性上の影響も少なく、しかも電解液中への拡散も容易である。この無機酸化物コロイド粒子の添加量は、好ましくは電解液の0.5〜18重量%であり、特に好ましいのは6〜10重量%の範囲である。無機酸化物コロイド粒子の添加量が少なすぎると電解液の耐電圧上昇が十分でなく、また多すぎるとゲル化や沈殿を生じやすく、安定なコロイドとなりにくい。
【0019】
なお、シランカップリング剤は反応性の官能基を有しているため、無機酸化物コロイド粒子に修飾処理を行う際または修飾処理を行った後に、用いた溶媒や溶質などと化学反応することがあるが、本発明においては特に問題とならない。例えばシランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いた場合、エポキシ基が加水分解や加アルコール分解して開環することがあるが、何ら悪影響をおよぼすものではない。
【0020】
本発明で用いる溶媒の具体例としては、エチレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブなどのアルコール溶媒;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン溶媒;N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノンなどのアミド溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどのカーボネート溶媒;3−メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリルなどのニトリル溶媒;リン酸トリメチル、リン酸トリエチルなどのリン酸エステル溶媒等あるいはこれらの混合物が挙げられる。中でも各種の溶質に対して大きな溶解力を有し、また温度特性に優れた電解液が得られる有機溶媒であるエチレングリコールおよびγ−ブチロラクトンが好ましい。
【0021】
本発明で溶質として用いる有機酸および/または無機酸のオニウム塩において用いる有機酸成分の具体例としては、安息香酸、トルイル酸、クミン酸、t−ブチル安息香酸、サリチル酸、アニス酸などの芳香族モノカルボン酸類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、7−フェニル−7−メトキシ−1−オクタンカルボン酸、6−フェニル−6−メトキシ−1−ヘプタンカルボン酸などの脂肪族モノカルボン酸類;フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸など芳香族ジカルボン酸類;マレイン酸、シトラコン酸、ジメチルマレイン酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸類;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸などの直鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸類;ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、ジプロピルマロン酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3−メチルアジピン酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、2,4,4−トリメチルアジピン酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸、7−メチル−7−カルボメトキシ−1,9−デカンジカルボン酸、2,8−ノナンジカルボン酸、7,8,11,12−テトラメチル−1,18−オクタデカンジカルボン酸、1−メチル−3−エチル−1,7−ヘプタンジカルボン酸、1,3−ジメチル−1,7−ヘプタンジカルボン酸、5−メチル−1,7−オクタンジカルボン酸、7,12−ジメチル−1,18−オクタデカンジカルボン酸、7−エチル−1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、7,8−ジメチル−1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,6−ヘプタンジカルボン酸、6−メチル−6−カルボメトキシ−1,8−ノナンジカルボン酸、1,8−ノナンジカルボン酸、8−メチル−8−カルボメトキシ−1,10−ウンデカンジカルボン酸、6−エチル−1,4−テトラデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの分岐鎖を有する飽和脂肪族ジカルボン酸類;7−メチル−1,7,9−デカントリカルボン酸、6−メチル−1,6,8−ノナントリカルボン酸、8−メチル−1,8,10−ウンデカントリカルボン酸などのトリカルボン酸類等あるいはこれらの混合物が挙げられる。また、無機酸成分の具体例としては、ホウ酸、燐酸などが挙げられる。
【0022】
上記した有機酸成分及び無機酸成分のうちでも定格電圧100V以下の低圧用コンデンサ向けには電気伝導率の高い電解液が得られるフタル酸、マレイン酸、安息香酸、アジピン酸が好ましい。定格電圧300V以上の高圧用コンデンサ向けには耐電圧の高い電解液が得られるアゼライン酸、セバシン酸、1,6−デカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸、ホウ酸が好ましい。定格電圧100Vを越え、300V未満の中圧用コンデンサ向けには適度の電気伝導率と耐電圧を有する電解液が得られる安息香酸、アジピン酸、アゼライン酸が好ましい。
【0023】
オニウム塩の具体例としては、アンモニウム;メチルアンモニウム;ジメチルアンモニウム;トリメチルアンモニウム、エチルジメチルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウムなどの三級アンモニウム類;テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムなどの四級アンモニウム類等あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0024】
中高圧用コンデンサにはエチレングリコール溶媒と1,6−デカンジカルボン酸などのジカルボン酸類との組み合わせにおいて高い耐電圧を有する電解液が得られるアンモニアが好ましい。低圧用コンデンサにはγ−ブチロラクトン溶媒とフタル酸などの組み合わせにおいて高い電気伝導率を有する電解液が得られる1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムが好ましい。
溶質の使用量は溶媒と溶質との合計重量に対して5〜30重量%の範囲で含有させるのが好ましい。
【0025】
また、本発明においては、化成性の向上などの目的で電解液に水を含有させることもできる。この水の含有量は、好ましくは0.01〜30重量%の範囲であり、更に好ましくは0.01〜10重量%の範囲である。また、必要に応じて電解液にさらに他の添加剤を含有させることもできる。その他の添加剤としては、ホウ酸、ホウ酸と多価アルコール類(エチレングリコール、マンニトール、ソルビトールなど)との錯化合物などのホウ素化合物類;リン酸、酸性リン酸エステル類〔リン酸ジブチル、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)〕、酸性ホスホン酸エステル類〔2−エチルヘキシルホスホン酸(2−エチルヘキシル)など〕のリン化合物類;p−ニトロ安息香酸、m−ニトロアセトフェノンなどのニトロ化合物類などが挙げられる。
本発明の電解液は、例えば図1、図2に示す巻回型のアルミニウム電解コンデンサに用いることができ、該電解液は、図中において3で示されるセパレータ(スペーサーとも言う)に含浸される。該セパレータは、クラフト紙、マニラ紙などが一般に使用される。
【0026】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
表1(その1、その2)に有機物で表面修飾したシリカコロイド粒子を用いた本発明の電解液、表2(その1、その2)に有機物で表面修飾していない通常のシリカコロイド粒子を用いた電解液の25℃における電気伝導率と耐電圧をそれぞれ示した。
表中、各成分の使用量及び添加量は、特に断らない限り溶媒と溶質の合計を100としたときの重量部で示した。
【0027】
無機酸化物コロイド粒子は、平均粒径が約12nmのシリカ粒子をそのまま(比較例)あるいは次の一般式(2)で表される3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いて表面修飾したもの(実施例、参考例)を用いた。コロイドの分散媒としてはエチレングリコールを用い、コロイドを基本電解液(溶質及び溶媒)に添加して所定の組成の電解液を調製した。
【化3】
【0028】
耐電圧はこれらの電解液を図1に示した巻回型素子に含浸し、これに定電流を印加したときの電圧−時間の上昇カーブではじめにスパイクあるいはシンチレーションが観測された電圧値とした。実施例1〜4および比較例1〜4で使用したアルミ電解コンデンサ素子の仕様は定格電圧450V、定格静電容量10μFのものである。実施例5〜9、参考例1〜2、および比較例5〜11で使用したアルミ電解コンデンサ素子の仕様は定格電圧200V、定格静電容量68μFのものである。耐電圧の測定で印加した電流値はそれぞれ3mA、10mAである。表1および表2の実験結果から、本発明の電解液は従来の電解液と同等の電気伝導率とより高い耐電圧を有することがわかる。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
表3に本発明の実施例1、2および従来の比較例1、2の電解液を用いて定格電圧450V、静電容量10μFのアルミ電解コンデンサを作製し、105℃にて1000時間の高温負荷試験を行った場合の結果を示す。
表3の実験結果からわかるように、本発明の電解コンデンサは高温負荷試験後も初期値を維持した。一方、従来の電解コンデンサは耐電圧の低下により高温負荷試験中に多数のショート品が発生し、信頼性に問題があった。
表4にこれら電解液をバイアル管中に密封し、115℃にて加熱したときのゲル化に至るまでの日数を示した。従来の電解液に比較して、本発明の電解液は極めてゲル化しにくいことがわかる。
【0034】
【発明の効果】
本発明の電解液を使用すれば、より低損失で、より定格電圧の高い電解コンデンサが実現でき、工業的価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】電解コンデンサの巻回型素子の斜視図である。
【図2】電解コンデンサの断面図である。
Claims (6)
- エチレングリコールまたはγ−ブチロラクトンを主体とする有機溶媒、有機酸および/または無機酸のオニウム塩(但し、アミジニウム塩は除く)からなる溶質および3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランで表面修飾した平均粒径が5〜100nmの範囲のシリカコロイド粒子からなる電解コンデンサ用電解液。
- 有機酸が1,6−デカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸、アジピン酸、安息香酸、フタル酸およびマレイン酸から選ばれる1種以上である請求項1記載の電解コンデンサ用電解液。
- 無機酸がホウ酸である請求項1記載の電解コンデンサ用電解液。
- オニウム塩がアンモニウム塩、三級アンモニウム塩および四級アンモニウム塩からなる群から選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の電解コンデンサ用電解液。
- 有機溶媒がエチレングリコールを主体とする有機溶媒、溶質が有機酸のアンモニウム塩である請求項1記載の電解コンデンサ用電解液。
- 有機溶媒がγ−ブチロラクトンを主体とする有機溶媒、溶質が有機酸の三級アンモニウム塩または四級アンモニウム塩である請求項1記載の電解コンデンサ用電解液。
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