JP2005294600A - 電解コンデンサ - Google Patents

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修一 北川
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朝一 長谷部
Fusayoshi Endo
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Abstract

【課題】 高圧領域で高いリップル特性を有する電解コンデンサを提供する。
【解決手段】 本発明の電解コンデンサは、アルミニウム上の均一に結晶化した層とこの層上のけい素を含む層からなる誘電体皮膜を有する陽極箔を備えるコンデンサ素子内に、炭素数9以上の脂肪族ジカルボン酸またはそれらの塩を溶質とする電解液を含有しているので、均一に結晶化した層の安定性とけい素を含む層と本発明の電解コンデンサ用電解液との低い反応性によって、高圧領域で高いリップル特性を有している。
【選択図】 なし







Description

この発明は、電解コンデンサにかかり、特に高リップル特性の良好な電解コンデンサに関する。
アルミ電解コンデンサは一般的には以下のような構成を取っている。すなわち、帯状に形成された高純度のアルミニウム箔を化学的あるいは電気化学的にエッチングを行って拡面処理するとともに、拡面処理したアルミニウム箔をホウ酸アンモニウム水 溶液等の化成液中にて化成処理することによりアルミニウム箔の表面に誘電体皮膜を形成させた陽極箔と、同じく高純度のアルミニウム箔を拡面処理した陰極箔をセパレータを介して巻回してコンデンサ素子が形成される。そしてこのコンデンサ素子には駆動用の電解液が含浸され、金属製の有底筒状の外装ケースに収納される。さらに外装ケースの開口端部は弾性ゴムよりなる封口体が収納され、さらに外装ケースの開口端部を絞り加工により封口を行い、アルミ電解コンデンサを構成する。
ところで、近年、電子情報機器の心臓部であるマイクロプロセッサの駆動周波数の高速化が進んでいる。これに伴って、主にこれらの電源の一次側に用いられる電解コンデンサのリップル電流は大きくなり、このような高リップルに耐えられるような電解コンデンサが望まれている。また、一次側に入力する電圧が高圧の場合、さらに高いリップルがかかると特性の劣化は著しくなる。
このような高リップル対策として、陰極箔に接続された陰極内部端子の陽極箔側の表面をエッチング処理すること(特許文献1参照)や、表面に金属を被着した基材により陰極内部端子の陽極箔と対向する部分を覆うこと(特許文献1参照)が提案されている。
特開2000−277384号公報 特開2000−22934号公報
しかしながら、前記の電解コンデンサでは陰極内部端子の陽極箔側の表面をエッチング処理したり、表面に金属を被着した基材により陰極内部端子を覆ったり、通常の電解コンデンサの構成以外の処理を施さなければならないという制約があって、小型化、低コスト化等に問題があり、このような制約のない高リップル特性を有する電解コンデンサが望まれていた。
そこで、本発明は、このような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、高いリップル特性を有し、さらに高圧用の電解コンデンサを提供することにある。
本発明の電解コンデンサは、アルミニウム上の均一に結晶化した層とこの層上のけい素を含む層からなる誘電体皮膜を有する陽極箔を備えるコンデンサ素子内に、炭素数9以上の脂肪族ジカルボン酸またはそれらの塩を溶質とする電解液を含有したことを特徴とする。
また、炭素数9以上の脂肪族ジカルボン酸がアゼライン酸、セバシン酸、1,6−デカンジカルボン酸 、1,7−オクタンジカルボン酸であることを特徴とする。
本発明の電解コンデンサに用いるアルミニウム陽極箔ついて説明する。本発明に用いるアルミニウム陽極箔の誘電体皮膜は従来の陽極箔に比べて、均一に結晶化した層を有し、さらにこの層上の均一に結晶化した層からなる。そして、このけい素を含む層の厚みは誘電体皮膜の30%以下である。そして、TEM−EDXの元素分析でのけい素の含有率は、誘電体皮膜の表面で40〜60wt%である。さらに誘電体皮膜の表面には3〜9wt%のリンを含有しており、このリンは表面からアルミニウム層にむかって30%を越える厚みの地点で1wt%以下に減少している。
本発明の電解コンデンサに用いる電解液 は、炭素数9以上の脂肪族ジカルボン酸またはそれらの塩を溶質としている。このような炭素数9以上の脂肪族ジカルボン酸としては、アゼライン酸、セバシン酸等の直鎖脂肪族ジカルボン酸、または以下のような側鎖を有するジカルボン酸 またはその誘導体を挙げることができる。すなわち、1,6−デカンジカルボン酸 、5,6−デカンジカルボン酸 、1,10−デカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸 、2,4,7,6−テトラメチル−1,10−デカンジカルボン酸 、2,4,7,9−テトラメチル−1,6−デカンジカルボン酸 、2,4,7,6−テトラメチル−5,6−デカンジカルボン酸 、7−メチル−7−メトキシカルボニル−1,9−デカンジカルボン酸 等を、その誘導体としては、7,9−ジメチル−7,9−ジメトキシカルボニル−1,11−ドデカンジカルボン酸 、7,8−ジメチル−7,8−ジメトキシカルボニル−1,14−テトラデカンジカルボン酸 、等を挙げることができる。
そして、これらの塩としては、アンモニウム塩、アミン塩、四級アンモニウム塩および環状アミジン化合物の四級塩が挙げられる。アミン塩を構成するアミンとしては一級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン等)、二級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ジフェニルアミン等)、三級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミン、1,8─ジアザビシクロ(5,4,0)─ウンデセン─7等)が挙げられる。第四級アンモニウム塩を構成する第四級アンモニウムとしてはテトラアルキルアンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等)、ピリジウム(1─メチルピリジウム、1─エチルピリジウム、1,3─ジエチルピリジウム等)が挙げられる。また、環状アミジン化合物の四級塩を構成するカチオンとしては、以下の化合物を四級化したカチオンが挙げられる。すなわち、イミダゾール単環化合物(1─メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4─ジメチル─2─エチルイミダゾール、1─フェニルイミダゾール等のイミダゾール同族体、1−メチル−2−オキシメチルイミダゾール、1−メチル−2−オキシエチルイミダゾール等のオキシアルキル誘導体、1−メチル−4(5)−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5(4)−アミノイミダゾール等のニトロおよびアミノ誘導体)、ベンゾイミダゾール(1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルベンゾイミダゾール等)、2−イミダゾリン環を有する化合物(1─メチルイミダゾリン、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−2−フェニルイミダゾリン等)、テトラヒドロピリミジン環を有する化合物(1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネン−5等)等である。
電解コンデンサ電解液の溶媒としては、プロトン性の有機極性溶媒として、一価アルコール類(エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類およびオキシアルコール化合物類(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロピレングリコール、ジメトキシプロパノール等)などが挙げられる。また、非プロトン性の有機極性溶媒としては、アミド系(N−メチルホルムアミド、N,N─ジメチルホルムアミド、N─エチルホルムアミド、N,N─ジエチルホルムアミド、N─メチルアセトアミド、N,N─ジメチルアセトアミド、N─エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等)、ラクトン類(γ─ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン等)、環状アミド系(N─メチル─2─ピロリドン、エチレンカーボネイト、プロピレンカーボネイト、イソブチレンカーボネイト等)、ニトリル系(アセトニトリル等)、オキシド系(ジメチルスルホキシド等)、2−イミダゾリジノン系〔1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ(n−プロピル)−2−イミダゾリジノン等)、1,3,4−トリアルキル−2−イミダゾリジノン(1,3,4−トリメチル−2−イミダゾリジノン等)〕などが代表として挙げられる。
また、本発明の電解コンデンサ用電解液 に、ほう酸 系化合物、例えばほう酸 、ほう酸 と多糖類(マンニット、ソルビットなど)との錯化合物、ほう酸 と多価アルコール(エチレングリコール、グリセリンなど)との錯化合物等、界面活性剤、コロイダルシリカ等を添加することによって、さらに、耐電圧の向上をはかることができる。
また、漏れ電流の低減や水素ガス吸収等の目的で種々の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、芳香族ニトロ化合物、(p−ニトロ安息香酸、p−ニトロフェノールなど)、リン系化合物(リン酸、亜リン酸、ポリリン酸、酸性リン酸エステル化合物)、オキシカルボン酸 化合物等を挙げることができる。
このような電解コンデンサ用アルミニウム陽極箔は均一に結晶化した層を有しているので、安定性が高く、さらにけい素を含む層が本発明に用いる電解液との反応性を抑制しているためと思われるが、高いリップル特性を有し、さらに高い耐電圧特性を有している。
以上の本発明の電解コンデンサは、アルミニウム上の均一に結晶化した層とこの層上のけい素を含む層からなる誘電体皮膜を有する陽極箔を備えるコンデンサ素子内に、炭素数9以上の脂肪族ジカルボン酸またはそれらの塩を溶質とする電解液を含有しているので、高いリップル特性を有し、さらに高い耐電圧特性を有している。
次に本発明の電解コンデンサの実施例を示す。
電解コンデンサ用アルミニウム陽極箔は以下のようである。100μmのアルミニウム箔にピット径が1μmのエッチングを行い、化成処理によって0.5μmの均一に結晶化した層と0.14μmの均一に結晶化した層からなる誘電体皮膜を形成した。このようにして形成した陽極箔のピット径は0.45μmであった。この誘電体皮膜のTEM−EDXの元素分析結果は以下のようであった。誘電体皮膜表面の各元素の含有率はけい素50wt%、アルミニウム40wt%、リン6wt%、表面から0.1μmの地点ではけい素0.5wt%、アルミニウム90wt%、リン4.5wt%、表面から0.2μmの地点ではけい素0.1wt%以下、アルミニウム99wt%以上、リン0.5wt%であった。
以上の陽極箔とアルミニウムエッチング箔からなる陰極箔をセパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成した。このコンデンサ素子に電解コンデンサ用電解液を含浸し、アルミニウムケースに入れてゴム封口し、次いで、加熱して再化成して、定格電圧450Vのアルミニウム電解コンデンサを作成した。
用いた電解コンデンサ用電解液の組成は、エチレングリコール100部、1.7−オクタンジカルボン酸3部、ほう酸とマンニットの錯化合物10部、パラニトロフェノール1部である。
以上の電解コンデンサを実施例として390V、1秒オン-オフの充放電試験を行った。また、比較例として従来のほう酸を含む誘電体皮膜を有する陽極箔を用い、実施例と同様に電解コンデンサを形成して同様の試験を行った。(表1)に結果を示す。
(表1)
以上のように、比較例は100回で漏れ電流が増大し、その後安全弁が開弁した。これに比べて実施例は100回から500回にいたっても漏れ電流が安定しており、充放電特性は格段に向上しており、本発明の電解コンデンサは450Vという高圧領域において高いリップル特性を有していることがわかる。

Claims (2)

  1. アルミニウム上の均一に結晶化した層とこの層上のけい素を含む層からなる誘電体皮膜を有する陽極箔を備えるコンデンサ素子内に、炭素数9以上の脂肪族ジカルボン酸またはそれらの塩を溶質とする電解液を含有した電解コンデンサ。
  2. 炭素数9以上の脂肪族ジカルボン酸がアゼライン酸、セバシン酸、1,6−デカンジカルボン酸 、1,7−オクタンジカルボン酸である請求項1記載の電解コンデンサ。
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