以下の説明では、図1に示す本実施形態のモータユニット1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、+Z側を上側とし、-Z側を下側とする鉛直方向である。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であってモータユニット1が搭載される車両の前後方向である。本実施形態において、+X側は、車両の前側であり、-X側は、車両の後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向である。本実施形態において、+Y側は、車両の左側であり、-Y側は、車両の右側である。
なお、前後方向の位置関係は、本実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、-Y側は、車両の左側である。
本実施形態では、Z軸方向と平行な方向を「鉛直方向Z」と呼び、X軸方向と平行な方向を「前後方向X」と呼び、Y軸方向と平行な方向を「左右方向Y」と呼ぶ。また、Z軸方向の正の側(+Z側)を「上側」と呼び、Z軸方向の負の側(-Z側)を「下側」と呼ぶ。X軸方向の正の側(+X側)を「前側」と呼び、X軸方向の負の側(-X側)を「後側」と呼ぶ。Y軸方向の正の側(+Y側)を「左側」と呼び、Y軸方向の負の側(-Y側)を「右側」と呼ぶ。本実施形態において、左右方向Yは、第1方向および第2方向に相当する。鉛直方向Zは、第3方向に相当する。左側は、第1方向一方側に相当する。下側は、第3方向一方側に相当する。上側は、第3方向他方側に相当する。
各図に適宜示すモータ軸J1は、Y軸方向、すなわち車両の左右方向に延びる。以下の説明においては、特に断りのない限り、モータ軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする周方向、すなわち、モータ軸J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。なお、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
モータユニット1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。図1から図4に示すように、モータユニット1は、ハウジング10と、モータ20と、減速装置50と、差動装置60と、パークロックギヤ53と、回転検出装置30と、インバータユニット40と、電動アクチュエータ80と、パーキング切替機構70と、を備える。
ハウジング10は、モータ20、減速装置50、差動装置60、パークロックギヤ53、回転検出装置30、およびパーキング切替機構70を収容する。図示は省略するが、ハウジング10の内部には、オイルが収容される。図1および図2に示すように、ハウジング10は、モータハウジング11と、ギヤハウジング12と、モータカバー13と、蓋部14と、を有する。
モータハウジング11は、モータハウジング本体部11aと、連結部11bと、を有する。図3に示すように、モータハウジング本体部11aは、モータ軸J1を囲んで左右方向Yに延びる筒状である。モータハウジング本体部11aは、右側に開口する。モータハウジング本体部11aは、モータ20を収容する。図2に示すように、連結部11bは、モータハウジング本体部11aの左側の端部に設けられる。連結部11bは、モータハウジング本体部11aよりも後側に突出する。
ギヤハウジング12は、モータハウジング11の左側に固定される。より詳細には、ギヤハウジング12の右側の端部は、連結部11bにネジで固定される。図示は省略するが、ギヤハウジング12は、右側に開口する。ギヤハウジング12は、第1収容部12aと、第2収容部12bと、を有する。第1収容部12aは、モータハウジング本体部11aの左側に位置する。第1収容部12aは、減速装置50およびパークロックギヤ53を収容する。第2収容部12bは、第1収容部12aの後側に繋がる。第2収容部12bは、連結部11bのうちモータハウジング本体部11aよりも後側に突出した部分の左側に位置する。第2収容部12bは、差動装置60を収容する。第1収容部12aは、第2収容部12bよりも左側に突出する。
図5に示すように、ギヤハウジング12は、側壁部12dと、周壁部12cと、固定部12eと、を有する。側壁部12dは、ギヤハウジング12における左側の壁部である。周壁部12cは、側壁部12dの外周縁部から右側に延びる筒状の壁部である。固定部12eは、側壁部12dから右側に突出する。より詳細には、固定部12eは、側壁部12dのうち下側の端部における前側の端部から右側に突出する。本実施形態において固定部12eは、モータ軸J1と平行な中心軸J6を中心とする円柱状である。
固定部12eは、嵌合凹部12fと、雌ネジ穴12gと、を有する。すなわち、ハウジング10は、嵌合凹部12fと、雌ネジ穴12gと、を有する。中心軸J6は、後述する貫通孔75hの中心軸である。なお、以下の説明においては、中心軸J6を中心とする周方向を「周方向θ」と呼び、適宜図において矢印で示す。
嵌合凹部12fは、固定部12eの右側の端部から左側に窪む。嵌合凹部12fの外形は、左右方向Yに沿って視て、中心軸J6を中心とする円形状である。雌ネジ穴12gは、嵌合凹部12fの底部に設けられる。雌ネジ穴12gは、嵌合凹部12fの底面から左側に窪む。雌ネジ穴12gの内縁は、左右方向Yに沿って視て、中心軸J6を中心とする円形状である。
図3に示すように、モータカバー13は、モータハウジング11の右側に固定される。より詳細には、モータカバー13は、モータハウジング本体部11aの右側の端部にネジで固定される。モータカバー13は、モータハウジング本体部11aの右側の開口を塞ぐ。モータカバー13は、左側に窪む収容凹部16を中央部分に有する。
モータカバー13は、複数の取付部15を有する。複数の取付部15は、右側に突出する円柱状である。複数の取付部15は、収容凹部16よりも径方向外側に位置する。取付部15は、ハウジング10を車両本体に固定するためのネジが締め込まれる雌ネジ穴15aを有する。ハウジング10は、取付部15を介して被取付体としての車両本体に固定される。
図1に示すように、複数の取付部15は、周方向に沿って配置される。図2に示すように、取付部15の右側の端面は、モータユニット1において最も右側に位置する部分である。すなわち、ハウジング10は、右側の端部に取付部15を有する。図3に示すように、蓋部14は、モータカバー13の右側の面にネジで固定される。蓋部14は、板面が左右方向Yを向く板状である。蓋部14は、収容凹部16の右側の開口を塞ぐ。
モータ20は、ロータ21と、ステータ22と、を有する。ロータ21は、モータ軸J1を中心として回転する。ロータ21は、シャフト21aと、ロータ本体21bと、を有する。シャフト21aは、モータ軸J1に沿って左右方向Yに延びる。図示は省略するが、シャフト21aの左右方向Yに沿って視た外形は、モータ軸J1を中心とする円形状である。シャフト21aは、ベアリング25によって回転可能に支持される。ベアリング25は、モータカバー13に保持される。シャフト21aの右側の端部は、収容凹部16の内部に挿入される。図示は省略するが、シャフト21aの左側の端部には、減速装置50が接続される。これにより、減速装置50は、モータ20に接続される。
本実施形態においてシャフト21aは、内部に油路21cが設けられた中空シャフトである。油路21cには、ハウジング10の内部に収容されたオイルが供給される。油路21cは、シャフト21aを左右方向Yに貫通する。ロータ本体21bは、シャフト21aの外周面に固定される。図示は省略するが、ロータ本体21bは、ロータコアと、ロータマグネットと、を有する。
ステータ22は、モータ軸J1の径方向においてロータ21の外側に位置する。ステータ22は、ステータコア23と、図示しないインシュレータと、複数のコイル24と、を有する。ステータコア23は、モータハウジング本体部11aの内部に固定される。複数のコイル24は、図示しないインシュレータを介してステータコア23に装着される。
モータ20の回転は、減速装置50によって減速されて、差動装置60に伝達される。図4に示すように、減速装置50は、第1のギヤ51と、第2のギヤ52と、図示しない第3のギヤと、を有する。第1のギヤ51は、シャフト21aの左側の端部に固定される。第2のギヤ52は、モータ軸J1と平行な回転軸J3を中心として回転する。差動装置60は、リングギヤ61を有する。モータ20のシャフト21aから出力されるトルクは、第1のギヤ51、第2のギヤ52および第3のギヤをこの順に介して差動装置60のリングギヤ61へと伝達される。
差動装置60は、減速装置50に接続され、モータ20から出力されるトルクを車両の車軸に伝達する。差動装置60は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸に同トルクを伝える機能を有する。リングギヤ61は、モータ軸J1と平行な差動軸J2を中心として回転する。リングギヤ61には、モータ20から出力されるトルクが減速装置50を介して伝えられる。
パークロックギヤ53は、第2のギヤ52に固定される。パークロックギヤ53は、回転軸J3を中心として回転する。パークロックギヤ53は、図示しない第3のギヤおよび差動装置60を介して、車両の車軸に連結される。パークロックギヤ53は、複数の歯部53aを有する。
回転検出装置30は、ロータ21の回転を検出可能である。図3に示すように、回転検出装置30は、収容凹部16に収容される。本実施形態において回転検出装置30は、例えば、レゾルバである。回転検出装置30は、レゾルバロータ31と、レゾルバステータ32と、を有する。レゾルバロータ31は、シャフト21aの右側の端部における外周面に固定される。これにより、回転検出装置30は、ロータ21の右側の端部においてロータ21の回転を検出可能である。レゾルバステータ32は、レゾルバロータ31の径方向外側に位置する。レゾルバステータ32は、収容凹部16の内側面に固定される。
図1および図2に示すように、インバータユニット40は、ハウジング10の後側に位置する。インバータユニット40は、インバータケース41と、図示しないインバータと、を有する。図示は省略するが、インバータは、ステータ22と電気的に接続される。
インバータケース41は、インバータを収容する。インバータケース41は、ハウジング10に固定される。本実施形態においてインバータケース41は、ハウジング10の径方向外側面に固定される。より詳細には、インバータケース41は、モータハウジング本体部11aの径方向外側面のうち後側の部分に固定される。すなわち、インバータケース41は、左右方向Yと直交する前後方向Xにおいてハウジング10の後側に固定される。
図1に示すように、インバータケース41は、左右方向Yに延びる略矩形箱状である。インバータケース41は、インバータケース本体部42と、インバータカバー43と、を有する。インバータケース本体部42は、上側に開口し、左右方向Yに長い略矩形箱状である。インバータカバー43は、インバータケース本体部42の上側の開口を塞ぐ。インバータカバー43は、第1カバー43aと、第2カバー43bと、を有する。第1カバー43aと第2カバー43bとは、互いに別部材である。第1カバー43aは、図示しないインバータの上側を覆う。第2カバー43bは、第1カバー43aの左側に位置する。第2カバー43bは、インバータに接続される図示しないバスバーの上側を覆う。
図2および図4に示すように、電動アクチュエータ80は、ハウジング10の外側面に固定される。より詳細には、電動アクチュエータ80は、ギヤハウジング12における第1収容部12aの径方向外側面のうち前側の部分に固定される。図4に示すように、電動アクチュエータ80は、マニュアルシャフト81を有する。マニュアルシャフト81は、左右方向Yと直交する前後方向Xに延びる。図6に示すように、本実施形態においてマニュアルシャフト81は、前後方向Xに延びる回転軸J4を中心とする円柱状である。図4に示すように、マニュアルシャフト81は、ギヤハウジング12の周壁部12cを貫通して、ギヤハウジング12の内部に突出する。電動アクチュエータ80は、車両のシフト操作に基づいてマニュアルシャフト81を回転軸J4回りに回転させる。
パーキング切替機構70は、電動アクチュエータ80によって、車両のシフト操作に基づいて駆動される。パーキング切替機構70は、パークロックギヤ53をロック状態とアンロック状態との間で切り換える。パーキング切替機構70は、車両のギヤがパーキングである場合に、パークロックギヤ53をロック状態とし、車両のギヤがパーキング以外である場合に、パークロックギヤ53をアンロック状態とする。車両のギヤがパーキング以外である場合とは、例えば、車両のギヤがドライブ、ニュートラル、リバース等である場合を含む。図6に示すように、パーキング切替機構70は、可動部材70aと、パークロックアーム77と、支持部材75と、板バネ部材76と、を有する。
可動部材70aは、車両のシフト操作に基づいて、左右方向Yに沿って移動する。本実施形態において可動部材70aは、電動アクチュエータ80によって移動させられる。可動部材70aにおける左右方向Yの位置は、少なくともパーキング位置P1と非パーキング位置P2との間で切り替えられる。パーキング位置P1は、車両のギヤがパーキングである場合における可動部材70aの左右方向Yの位置である。非パーキング位置P2は、車両のギヤがパーキング以外である場合における可動部材70aの左右方向Yの位置である。パーキング位置P1は、非パーキング位置P2よりも、左側(+Y側)の位置である。図6においては、パーキング位置P1に位置する可動部材70aを実線で示し、非パーキング位置P2に位置する可動部材70aを二点鎖線で示す。
可動部材70aは、ロッド連結部71と、ロッド72と、環状部材73と、コイルバネ74と、を有する。ロッド連結部71は、マニュアルシャフト81に固定される。ロッド連結部71は、マニュアルシャフト81の径方向に延びる。本実施形態においてロッド連結部71は、マニュアルシャフト81から下側に延びる。本実施形態においてロッド連結部71は、板面が前後方向Xを向く板状である。ロッド連結部71の幅は、マニュアルシャフト81の径方向において、マニュアルシャフト81から離れるに従って大きくなる。ロッド連結部71は、凹部71a,71bを有する。すなわち、可動部材70aは、凹部71a,71bを有する。
凹部71a,71bは、ロッド連結部71の先端部に設けられる。凹部71a,71bは、上側に窪む。より詳細には、本実施形態において凹部71a,71bは、ロッド連結部71の下側の端部から上側に窪む。凹部71a,71bは、ロッド連結部71を前後方向Xに貫通する。凹部71aと凹部71bとは、マニュアルシャフト81の周方向に沿って並んで配置される。本実施形態において凹部71aと凹部71bとは、左右方向Yに並んで配置される。
ロッド72は、左右方向Yに沿って移動可能に配置される。ロッド72は、接続部72aと、ロッド本体72bと、を有する。接続部72aは、前後方向Xに延びる棒状である。接続部72aの前側(+X側)の端部は、ロッド連結部71を前後方向Xに貫通し、ロッド連結部71に固定される。これにより、ロッド72は、ロッド連結部71を介してマニュアルシャフト81に連結される。ロッド本体72bは、左右方向Yに延びる棒状である。本実施形態においてロッド本体72bは、接続部72aの後側(-X側)の端部から左側(+Y側)に延びる。ロッド本体72bは、接続部72a寄りの部分に突起部72cを有する。ロッド本体72bの左側の端部には、左右方向Yに延びる筒部材72dが嵌め合わされて固定される。
環状部材73は、ロッド本体72bが通される環状である。環状部材73は、左右方向Yに延びる。環状部材73の外周面のうち左側(+Y側)の部分は、左側に向かうに従って外径が小さくなるテーパ面73aである。環状部材73は、ロッド本体72bに対して左右方向Yに移動可能である。
コイルバネ74は、左右方向Yに延びる。コイルバネ74は、環状部材73と突起部72cとの左右方向Yの間に配置される。コイルバネ74には、ロッド本体72bが通される。コイルバネ74の右側(-Y側)の端部は、突起部72cに接触する。コイルバネ74の左側(+Y側)の端部は、環状部材73の右側の面に接触する。コイルバネ74は、環状部材73がロッド本体72bに対して左右方向Yに相対移動することで伸縮し、環状部材73に左右方向Yの弾性力を加える。
パークロックアーム77は、可動部材70aの後側(-X側)に位置する。パークロックアーム77は、モータ軸J1と平行な回転軸J5を中心とする支持シャフト78によって、回転可能に支持される。パークロックアーム77は、パークロックアーム本体77aと、噛合部77bと、を有する。
パークロックアーム本体77aは、支持シャフト78から前側(+X側)に延びる。パークロックアーム本体77aの前側の端部77cは、可動部材70aに上側から接触する。端部77cの下側の面のうち右側(-Y側)の部分は、右側に向かうに従って上側に位置する傾斜部77dである。噛合部77bは、パークロックアーム本体77aから上側に突出する。支持シャフト78には巻きバネ79が装着される。巻きバネ79は、パークロックアーム77に対して、回転軸J5を中心として左側(+Y側)から視て反時計回り向きの弾性力を加える。
パークロックアーム77は、可動部材70aの移動に伴って移動する。より詳細には、パークロックアーム77は、ロッド72および環状部材73の左右方向Yへの移動に伴って、回転軸J5回りに回転する。マニュアルシャフト81の回転に伴って、ロッド連結部71が非パーキング位置P2からパーキング位置P1に移動すると、ロッド72および環状部材73が左側(+Y側)に移動する。
環状部材73のテーパ面73aの外径は、左側から右側(-Y側)に向かうに従って大きくなる。そのため、環状部材73が左側に移動すると、テーパ面73aによって端部77cが上側に持ち上げられ、パークロックアーム77が回転軸J5を中心として左側(+Y側)から視て時計回りに回転する。これにより、図示は省略するが、噛合部77bがパークロックギヤ53に近づき、パークロックギヤ53の歯部53a同士の間に噛み合う。図6においては、パークロックギヤ53と噛み合う位置に位置するパークロックアーム77を実線で示す。
パークロックギヤ53とパークロックアーム77とが噛み合う場合、環状部材73もパーキング位置P1に位置する状態となり、可動部材70a全体がパーキング位置P1に位置する状態となる。すなわち、パークロックアーム77は、可動部材70aがパーキング位置P1に位置する場合に、車軸に連結されたパークロックギヤ53に噛み合う。環状部材73は、パーキング位置P1において、支持部材75における後述する接触部75bとパークロックアーム77とに接触した状態で挟まれる。パークロックアーム77がパークロックギヤ53に噛み合うことで、パークロックギヤ53は、ロック状態となる。
パークロックアーム77がパークロックギヤ53に近づく際、パークロックギヤ53の歯部53aの位置によっては、噛合部77bが歯部53aに接触する場合がある。この場合、パークロックアーム77は、噛合部77bが歯部53a同士の間に噛み合う位置まで移動できない場合がある。このような場合であっても、本実施形態では、環状部材73がロッド72に対して左右方向Yに移動可能であるため、ロッド72はパーキング位置P1に移動しつつ、環状部材73がパーキング位置P1よりも右側(-Y側)に位置する状態を許容できる。これにより、マニュアルシャフト81の回転が阻害されることを抑制でき、マニュアルシャフト81を回転させる電動アクチュエータ80に負荷が掛かることを抑制できる。
また、ロッド72がパーキング位置P1に位置し、環状部材73がパーキング位置P1よりも右側(-Y側)に位置する状態では、コイルバネ74が圧縮変形した状態となる。そのため、コイルバネ74によって環状部材73に左向き(+Y向き)の弾性力が加えられる。これにより、環状部材73を介して、コイルバネ74からパークロックアーム77に、回転軸J5を中心として左側(+Y側)から視て時計回りに回転する向きの回転モーメントが加えられる。したがって、パークロックギヤ53が回転して歯部53aの位置がずれると、パークロックアーム77が回転して、噛合部77bが歯部53a同士の間に噛み合う。
マニュアルシャフト81の回転に伴って、ロッド連結部71がパーキング位置P1から非パーキング位置P2に回転すると、ロッド72および環状部材73が右側(-Y側)に移動する。環状部材73が右側に移動すると、環状部材73によって持ち上げられていた端部77cが自重および巻きバネ79からの弾性力を受けて下側に移動し、パークロックアーム77が回転軸J5を中心として左側(+Y側)から視て反時計回りに回転する。これにより、噛合部77bがパークロックギヤ53から離れ、歯部53a同士の間から外れる。図6においては、パークロックギヤ53から外れた状態のパークロックアーム77を二点鎖線で示す。
パークロックアーム77がパークロックギヤ53から外れる場合、環状部材73も非パーキング位置P2に位置する状態となり、可動部材70a全体が非パーキング位置P2に位置する状態となる。すなわち、パークロックアーム77は、可動部材70aが非パーキング位置P2に位置する場合にパークロックギヤ53から外れる。環状部材73は、非パーキング位置P2において、パークロックアーム77よりも右側(-Y側)に位置する。パークロックアーム77がパークロックギヤ53から外れることで、パークロックギヤ53は、アンロック状態となる。
ここで、本実施形態においては、環状部材73は、非パーキング位置P2からパーキング位置P1に移動する場合、パークロックアーム77よりも右側(-Y側)の位置から左側(+Y側)に移動して、パークロックアーム77と支持部材75との鉛直方向Zの間に入り込む。このとき、本実施形態によれば、パークロックアーム77の端部77cが傾斜部77dを有するため、パークロックアーム77と支持部材75との鉛直方向Zの間に環状部材73が入り込みやすい。これにより、環状部材73によってパークロックアーム77を移動させることが容易である。
支持部材75は、可動部材70aを左右方向Yに移動可能に支持する。本実施形態において支持部材75は、可動部材70aを下側から支持する。支持部材75は、ハウジング10の内側面に固定される。より詳細には、支持部材75は、ギヤハウジング12の内側面に固定される。支持部材75は、基部75aと、接触部75bと、腕部75cと、嵌合凸部75fと、位置決め部75dと、突起部75eと、を有する。
図7に示すように、本実施形態において基部75aは、中心軸J6を中心とする円柱状である。接触部75bは、基部75aから上側に突出する。接触部75bは、可動部材70aに接触して可動部材70aを支持する部分である。本実施形態において接触部75bは、可動部材70aのうち環状部材73あるいは筒部材72dに下側から接触して、可動部材70aを下側から支持する。接触部75bにおける可動部材70a側の面は、左右方向Yに沿って視て、可動部材70a側と逆側に凹となる円弧状の曲面75gである。そのため、テーパ面73aを有する環状部材73を安定して支持できる。本実施形態において曲面75gは、接触部75bの上側の面であり、左右方向Yに沿って視て、下側に凹となる円弧状である。腕部75cは、中心軸J6を中心とする径方向において基部75aから外側に延びる。本実施形態において腕部75cは、基部75aから前側に延びる。腕部75cは、例えば、四角柱状である。
嵌合凸部75fは、基部75aから左右方向Yに突出する。本実施形態において嵌合凸部75fは、基部75aから左側に突出する。嵌合凸部75fは、中心軸J6を中心とする円柱状である。嵌合凸部75fは、嵌合凹部12fに嵌め合わされる。これにより、支持部材75が、ハウジング10に対して、中心軸J6を中心とする径方向に位置決めされる。
基部75aおよび嵌合凸部75fには、基部75aと嵌合凸部75fとを左右方向Yに貫通する貫通孔75hが設けられる。すなわち、支持部材75は、貫通孔75hを有する。貫通孔75hは、支持部材75を左右方向Yに貫通する。貫通孔75hは、左右方向Yに沿って視て、中心軸J6を中心とする円形状である。貫通孔75hには、右側からネジ90が通される。貫通孔75hに通されたネジ90は、雌ネジ穴12gに締め込まれる。これにより、支持部材75は、ハウジング10に対して、左右方向Yに位置決めされて、固定される。
ここで、ネジ90が雌ネジ穴12gに締め込まれる向きは、中心軸J6を中心として右側から視て時計回りの向きである。すなわち、ネジ90が雌ネジ穴12gに締め込まれる向きは、周方向θの正の向き、すなわち適宜図に示す周方向θの矢印の向きである。
位置決め部75dは、中心軸J6を中心とする径方向において、基部75aよりも外側に位置する。位置決め部75dは、ハウジング10の内側面のうち中心軸J6を中心とする周方向θに対向する部分と接触する。これにより、支持部材75は、ハウジング10に対して、周方向θに位置決めされる。
このように、本実施形態によれば、ハウジング10の内側面を利用して支持部材75を、中心軸J6を中心とする周方向θに位置決めできる。そのため、1本のネジ90によって支持部材75を固定しつつ、支持部材75が中心軸J6回りに回転することを抑制できる。したがって、1本のネジ90のみによって、支持部材75をハウジング10に対して位置決めしつつ、かつ、強固に固定することができる。そのため、支持部材75をハウジング10に固定する際に、複数のネジを締め込む必要がなく、支持部材75を固定する手間を低減できる。これにより、モータユニット1において、パーキング切替機構70をハウジング10の内部に配置する手間を低減できる。
また、支持部材75を複数のネジで固定する場合に比べて、支持部材75を小さくしやすい。そのため、ハウジング10の内部において支持部材75を配置するための空間を小さくできる。また、ハウジング10に支持部材75を固定するための固定部12eを複数設ける必要がない。そのため、ハウジング10の形状の自由度を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、支持部材75には、嵌合凹部12fに嵌め合わされる嵌合凸部75fが設けられる。そのため、支持部材75が中心軸J6を中心とする径方向に移動することを抑制できる。これにより、1本のネジ90のみによって、支持部材75をハウジング10に対して位置精度よく固定できる。
本実施形態において位置決め部75dは、腕部75cに設けられる。そのため、位置決め部75dを、中心軸J6を中心とする径方向において基部75aよりも外側に配置することが容易である。本実施形態では、左右方向Yおよび腕部75cが延びる前後方向Xの両方と直交する鉛直方向Zにおいて、位置決め部75dは、腕部75cの下側の面に設けられる。本実施形態において位置決め部75dは、腕部75cから鉛直方向Zに突出する。そのため、位置決め部75dをハウジング10の内側面に接触させやすく、支持部材75を、周方向θに位置決めしやすい。本実施形態において位置決め部75dは、腕部75cの先端部から下側に突出する。位置決め部75dの左右方向Yの寸法は、例えば、腕部75cの左右方向Yの寸法と同じである。
本実施形態において位置決め部75dが接触するハウジング10の内側面は、位置決め面12hである。位置決め面12hは、周壁部12cの内側面のうち下側に位置する部分における前側の端部である。位置決め面12hは、上側を向く平坦な面である。位置決め面12hは、鉛直方向Zと直交する。位置決め面12hは、左右方向Yに延びる。図4に示すように、位置決め面12hは、周壁部12cの内側面のうち下側に位置する部分の他の部分よりも上側に突出する。
図7に示すように、位置決め面12hは、位置決め部75dに対して、周方向θにおけるネジ90が締め込まれる向きの側(+θ側)に位置する。これにより、位置決め部75dは、ハウジング10の内側面のうち、周方向θにおけるネジ90が締め込まれる向きの側に対向する部分と接触する。そのため、ネジ90を締め込む際に支持部材75が共回りする場合であっても、支持部材75が共回りする向きは、位置決め部75dが位置決め面12hに押し付けられる向きとなる。これにより、ネジ90を締め込む際に、位置決め部75dが位置決め面12hから離れることを抑制できる。したがって、支持部材75を周方向θに精度よく位置決めしたまま、ネジ90によって支持部材75を容易に固定できる。また、例えば、支持部材75の共回りを利用することで、ネジ90を締め込む際に、同時に支持部材75を周方向θに位置決めすることもできる。
図6に示すように、突起部75eは、腕部75cの先端部から中心軸J6を中心とする径方向の外側に突出する。本実施形態において突起部75eは、腕部75cの前側(+X側)の端部のうち右側(-Y側)の部分から前側に突出する。
板バネ部材76は、支持部材75に固定される。本実施形態において板バネ部材76は、腕部75cの上側の面に固定される。板バネ部材76は、板バネ本体部76aと、突出部76bと、回り止め部76cと、を有する。
板バネ本体部76aは、板面が鉛直方向Zを向く板状である。板バネ本体部76aは、腕部75cから右側(-Y側)に延びる。板バネ本体部76aは、ロッド連結部71の下側まで延びる。板バネ本体部76aの左側(+Y側)の端部は、腕部75cにネジ91で固定される。板バネ本体部76aは、右側の部分にスリット76dを有する。スリット76dは、板バネ本体部76aを鉛直方向Zに貫通する。スリット76dは、左右方向Yに延びる。スリット76dには、ロッド連結部71の下側の端部のうち左側の部分が挿入される。
突出部76bは、板バネ本体部76aから上側に突出する。より詳細には、突出部76bは、板バネ本体部76aの右側(-Y側)の端部から上側に突出する。突出部76bは、可動部材70aがパーキング位置P1に位置する場合において、凹部71aに挿入され、凹部71aの内側面に対して左右方向Yに引っ掛けられる。これにより、ロッド連結部71およびロッド72をパーキング位置P1に維持できる。
特に、本実施形態のようにコイルバネ74が設けられる場合、噛合部77bが歯部53aに接触してコイルバネ74が圧縮変形することで生じる弾性力による反力が、ロッド72およびロッド連結部71に対して、右向き(-Y向き)に加えられる。本実施形態によれば、このような場合であっても、突出部76bが凹部71aに引っ掛かることで、ロッド連結部71が右側(-Y側)に移動することを抑制できる。したがって、ロッド連結部71およびロッド72を安定してパーキング位置P1に維持できる。
一方、電動アクチュエータ80によってマニュアルシャフト81が回転されてロッド連結部71がパーキング位置P1から非パーキング位置P2に移動する際には、板バネ本体部76aは、ロッド連結部71によって下側に押されて弾性変形する。これにより、突出部76bが凹部71aから外れる。ここで、板バネ本体部76aが弾性変形すると、その弾性力による反力が、板バネ本体部76aが固定される腕部75cに加えられる。本実施形態では、板バネ部材76は、腕部75cの上側の面に固定される。そして、板バネ本体部76aの弾性力による反力は、腕部75cの上側の面に対して、下向きに加えられる。すなわち、板バネ本体部76aの弾性力による反力は、腕部75cの下側の面に設けられた位置決め部75dが位置決め面12hに押し付けられる向きに加えられる。これにより、板バネ部材76が弾性変形しても、ネジ90が緩むことを抑制でき、かつ、位置決め部75dが位置決め面12hから離れることを抑制できる。
突出部76bは、可動部材70aが非パーキング位置P2に位置する場合において、凹部71bに挿入され、凹部71bの内側面に対して左右方向Yに引っ掛けられる。これにより、ロッド連結部71およびロッド72を非パーキング位置P2に維持できる。
回り止め部76cは、板バネ本体部76aの左側(+Y側)の端部における前側(+X側)の縁部から下側に突出する。回り止め部76cは、腕部75cの先端部の前側に位置する。回り止め部76cは、左側から突起部75eに引っ掛かる。これにより、板バネ部材76をネジ91で固定する際に、板バネ部材76が共回ることを抑制できる。したがって、板バネ部材76の位置がずれることを抑制できる。
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。位置決め部は、ハウジングの内側面のうち貫通孔の中心軸を中心とする周方向に対向する部分と接触するならば、特に限定されない。位置決め部は、突出していなくてもよく、例えば腕部の一部であってもよい。また、位置決め部は、腕部以外の部分に設けられてもよい。また、上述した実施形態のように位置決め部が突出する形状の場合、ハウジングの内側面に位置決め部を収容する溝部が設けられてもよい。位置決め部は、ハウジングの内側面のうち、貫通孔の中心軸を中心とする周方向におけるネジが締め込まれる向きの側と逆側に対向する部分と接触してもよい。板バネ部材は、腕部以外の部分に設けられてもよい。板バネ部材は、設けられなくてもよい。可動部材の構成は、パークロックアームを移動させることができるならば、特に限定されない。
第1方向と第2方向とは、特に限定されない。上述した実施形態では、第1方向と第2方向とが同じ方向としたが、これに限られず、第1方向と第2方向とは異なる方向であってもよい。本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。