以下、図面を参照して、本発明の実施形態によるボールペンについて説明する。なお、本明細書において、ボールペン及びその構成部品についての「前方」とは、ボールペンの軸方向において筆記ボールが設けられている側をいい、「後方」とはその反対側をいうものとする。
図1は、本発明の実施形態によるボールペンを示し、より具体的には、図1(a)は、キャップによりボールペンの前方を覆っている状態を示し、図1(b)は、キャップをボールペンの前方から取り外し、後方に取り付けた状態を示し、図1(c)は、図1(a)の状態の断面図を示し、図2は、図1(c)の要部拡大図を示す。また、図3は、ボールペンの分解斜視図を示す。
図1乃至図3に示すように、ボールペン1は、ボールペンの本体3と、本体3に取り付けられるキャップ5とを備えている。
ボールペンの本体3は、使用時に、使用者が把持できるように全体的に筒形状を有しており、前方側軸筒7と、後方側軸筒9とを備えている。前方側軸筒7の後方端部、及び後方側軸筒9の前方端部には、それぞれネジ山が設けられており、両者を螺合することにより前方側軸筒7と後方側軸筒9とが互いに固定されている。そして、前方側軸筒7と後方側軸筒9とを螺合して固定することにより、内部に、ボールペンの筆記のための各構成部品を収容する空間が形成される。また、前方側軸筒7と後方側軸筒9とを螺合ではなく、圧入による固定方法でも良い。その場合、組立の衝撃でアウター31が破損するのを防止するため圧入力は300N以下が望ましい。なお、以下では、前方側軸筒7と後方側軸筒9との内部に形成される空間を、単に「内部空間」と称して詳細な説明を行う。
キャップ5は、ボールペンの本体3の前方側に着脱可能に取り付けられるように構成されており、ボールペンの先端を封止することによりインクの乾きを防止する。キャップ5は、インナーキャップ5aと、嵌合部5bとを備えている。インナーキャップ5aは、後述するボールペンのアウター31、及び筆記ボール25を完全に封入するように、本体3と嵌合するように構成されている。また、キャップ5自体は、嵌合部5bを介して、所定の嵌合力、例えば60N以下の嵌合力で本体3に着脱可能に取り付けられる。キャップ5の嵌合力を60N以下とすることにより、キャップ5を取り付けた際の衝撃でアウター31が破損するのを防止することができる。
内部空間の後方側には、インクを収容するためのインク収容部11が配置されており、内部空間の前方側には、インク収容部11内のインクを用いて筆記を行うための筆記部13が配置されており、さらに、インク収容部11と、筆記部13との間には、インク収容部11内のインクを筆記部13に供給するためのインク供給部15が設けられている。
インク収容部11は、内部に所定のインクを収容しており、筆記部13内のインクが不足した際に、毛管力により、適宜筆記部13にインクを供給できるように構成されている。
インク収容部11内に収容されるインクとしては、色材として顔料又は染料の何れを使用してもよい。顔料の種類については特に制限はなく、従来水性ボールペンなどの筆記具用に慣用されている無機系及び有機系顔料の中から任意のものを使用することができる。
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラックや、金属粉等が挙げられる。また、有機系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。具体的には、フタロシアニンブルー(C.I.74160)、フタロシアニングリーン(C.I.74260)、ハンザイエロー3G(C.I.11670)、ジスアゾイエローGR(C.I.21100)、パーマネントレッド4R(C.I.12335)、ブリリアントカーミン6B(C.I.15850)、キナクリドンレッド(C.I.46500)などを使用することができる。
また、スチレンやアクリル樹脂の粒子から構成されているプラスチックピグメントを使用してもよい。さらに、粒子内部に空隙のある中空樹脂粒子は、白色顔料として、または、樹脂粒子を染料で染色した擬似顔料とも呼ばれる顔料等も使用することできる。疑似顔料の具体的な商品名としては、シンロイヒカラーSFシリーズ(シンロイヒ株式会社)、NKW及びNKPシリーズ(日本蛍光化学株式会社)などが挙げられる。
水溶性染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料のいずれも用いることができる。直接染料としては、例えば、C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、C.I.ダイレクトエロー4、同26、同44、同50、C.I.ダイレクトレッド1、同4、同23、同31、同37、同39、同75、同80、同81、同83、同225、同226、同227、C.I.ダイレクトブルー1、同15、同71、同86、同106、同119などが挙げられる。
酸性染料としては、例えば、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同52、同107、同109、同110、同119、同154、C.I.アシッドエロー7、同17、同19、同23、同25、同29、同38、同42、同49、同61、同72、同78、同110、同127、同135、同141、同142、C.I.アシッドレッド8、同9、同14、同18、同26、同27、同35、同37、同51、同52、同57、同82、同87、同92、同94、同115、同129、同131、同186、同249、同254、同265、同276、C.I.アシッドバイオレット18、同17、C.I.アシッドブルー1、同7、同9、同22、同23、同25、同40、同41、同43、同62、同78、同83、同90、同93、同103、同112、同113、同158、C.I.アシッドグリーン3、同9、同16、同25、同27などが挙げられる。
食用染料としては、その大部分が直接染料又は酸性染料に含まれるが、含まれないものの一例としては、C.I.フードエロー3が挙げられる。
塩基性染料としては、例えば、C.I.ベーシックエロー1、同2、同21、C.I.ベーシックオレンジ2、同14、同32、C.I.ベーシックレッド1、同2、同9、同14、C.I.ベーシックブラウン12、ベーシックブラック2、同8などが挙げられる。
これらの着色剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよく、インク中の着色剤の含有量は、通常、重量比0.5~30%、好ましくは、1~15%の範囲である。
この着色剤の含有量が、0.5%未満であると、着色力が不足して好ましくない。一方、着色剤の含有量が30%を超えた場合に、筆記不良を生じることがあるので好ましくない。
染料を用いた場合には、筆記部13に付着したインクが汚れとして残留する傾向があるため、顔料を用いることが好ましい。
さらには、ペン先でのインクの乾燥固化による筆記不良を防止するために、インク中の水溶性溶剤の含有量を、重量比5%~25%とすることが好ましい。この場合に、水溶性溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3-ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等を単独で、又は混合して使用することができる。
また、上記の以外の水溶性溶剤としてトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコールから選ばれる少なくとも1種を、インクに対して重量比0.1~5%で配合することが好ましい。
一般に水溶性溶剤の配合量が多くなると、インクの紙への浸透性が低下するため筆記した描線の乾燥速度が遅くなる。しかし、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコールはこのような浸透性を低下させる性質が小さく、描線の乾燥速度の遅延が極めて起きにくい。一方でペン先での乾燥固化を防止する性質は有しているので、ペン先を長時間露出しても筆記不良が起きにくい。
インクには糖類を配合することができる。具体的には、糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、還元糖、非還元糖類、糖アルコール、還元澱粉分解物、およびこれらの混合物などが挙げられる。これらのうち非還元糖類、特に糖アルコールを用いることが好ましい。還元性を有する糖類は、インクの変色を引き起こしたり、pHの変動を生じさせたりする場合がある。
非還元糖類としては、還元性を示さない糖類であれば特に限定されず、例えば、ショ糖、トレハロース、糖アルコールなどが挙げられる。グルコース(ブドウ糖)などの還元糖類は、分子中に持っているアルデヒド基やケトン基などのカルボニル基(還元基)を持つことによって弱い還元を示す糖類であるのに対して、本実施形態で用いる非還元糖類は、単糖の還元性のある基が他の糖とグリコシド結合などで結合しているため、還元性を示さないものである。
糖アルコールは、糖類がもつカルボニル基を還元(水素添加)させることで得られる鎖状多価アルコールの総称である。糖アルコールとしては、例えば、ブドウ糖を還元して得られる「ソルビトール」、麦芽糖を還元して得られる「マルチトール」、糖化度の異なる水飴やデキストリンを還元して得られる還元澱粉分解物(還元水飴)、還元デキストリン、エリスリトール、ペンタエリスリトールなどが挙げられ、これらは市販品を用いることができる。
これらの非還元糖類の中で、更なる経時安定性の点から、ソルビトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トレハロース、及び還元澱粉分解物から選ばれる少なくとも1種を使用することが望ましい。
糖類はインク中で保湿剤として作用するが、一方で被膜を形成して固化しやすい性質も有する。本実施形態においては、筆記部13にインクが残存したインクが被膜を形成して固化すると、次の書き出しの際にインクが流出しにくい(初筆性が悪い)現象が生じる。このような不具合を避けるためには、インク中に含まれる糖類は、単糖~20糖の重合度であることが好ましく、平均重合度が3~10であること更に好ましい。これにより、皮膜強度が強くなり過ぎるのを防止することができ、筆記部13にインクが残存した場合においても初筆性を確保することができる。
インクには潤滑剤としてリン酸エステルを配合することができる。具体例を挙げると、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、リン酸トリエステル、或いはその誘導体が挙げられるが、これらのリン酸エステルは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
これらのリン酸エステルの含有量は、用いるインク全量に対して、0.05~5質量%、好ましくは、0.1~1質量%が望ましい。リン酸エステルの含有量が、インク組成物全量に対し、0.05質量%未満であると、所望の潤滑性等が得られないおそれがあり、一方、5質量%を越えると、インクの経時安定性が低下するおそれがある。さらに、筆記部13へのインクの付着による汚れを防止すると共に、筆記部13を樹脂で構成した場合における樹脂割れを防止するために、リン酸エステルの含有量を1質量%以下とすることが好ましい。
また、インクの粘度の観点で説明すると、インクとしては、下記式で定義される剪断減粘指数(n値)が略1である、いわゆるニュートニアンインク、及び剪断減粘指数nが<1と定義される、いわゆるゲルインクを用いることができる。ニュートニアンインクを用いることにより、筆記時に、インクの濡れ性を確保することができ、一方で、ゲルインクを用いることにより、インクの濡れ性を確保しつつ、筆記時のインクのキレを向上させることができる。
S=αDn(但し、1>n>0)で示される粘性式中のnを指す。なお、Sは剪断応力(dyn/cm2)、Dは剪断速度(s-1)、αは非ニュートン粘性係数を示す。
ニュートニアンインクとしては、実質的に増粘作用を有する物質を含有しない比較的低粘度(5mPa・s未満 25℃)なタイプ、実質的に増粘作用を有する物質を含有し、一定の粘度が付与(5mPa・s以上 25℃)に大別される。このうち増粘作用を有する物質として、ポリビニルアルコールとホウ酸化合物を用いることが好ましい。上記物質を配合することで、インクの流動性が良好で、描線の滲みが発生することなく、応答性に優れたインクとすることができる。
用いることができるポリビニルアルコール(以下、単に「PVA」と略記する)は、一般式、-〔CH2-CH(OH)〕m-〔CH2-CH(OCOCH3〕n-で表されるものであり、インクの経時安定性、粘度付与性の点から、そのケン化度{〔m/(m+n)〕×100}は、好ましくは、50mol%以上とすることが望ましく、更に好ましくは、75mol%以上であることが望ましい。
また、上記ケン化度のPVAにおいて、重合度が高いと添加量による粘度の変動幅が大きくなるので、その重合度(m+n)は低い方が良く、好ましくは、50以上、更に好ましくは、50~2000、特に好ましくは、50~1500が望ましい。
具体的に用いることができるPVAとしては、市販の日本合成化学工業社製のA型ゴーセノールシリーズ、G型ゴーセノールシリーズ、K型ゴーセノールシリーズ(日本合成化学工業社製の商品名)、日本酢ビ・ポバール社製のJポバールシリーズ(日本酢ビ・ポバール社製の商品名)、クラレ社製のKURARAYポバールPVAシリーズ(クラレ社製の商品名)等の中からケン化度、重合度の好適なものが選択される。これらのケン化度、重合度を有するPVAは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、用いるPVAには、変性PVA、好ましくは、上記重合度範囲、ケン化度となる変性PVAも使用することができる。用いることができる変性PVAとしては、PVAの水酸基、酢酸基をカルボキシル基、スルホン酸基、アセチル基、エチレンオキサイド基などの変性基に変性したもの、または、PVAの側鎖に上記の変性基を有するものが挙げられる。また、部分けん化PVAにアクリル酸とメタクリル酸メチルを共重合したPVA・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体も本発明の変性PVAとして使用することができる。
具体的に用いることができる変性PVAとしては、市販の日本合成化学工業社製のゴーセネックスLシリーズ、ゴーセネックスWOシリーズ(日本合成化学工業社製の商品名)、日本酢ビ・ポバール社製のアニオン変性PVA(Aシリーズ)(日本酢ビ・ポバール社製の商品名)、クラレ社製のエクセバール1713(クラレ社製の商品名)等の中からケン化度、重合度の好適なものが選択される。また、PVA・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重体としては、大同化成工業社製のPOVACOAT(大同化成工業社製の商品名)等の中から好適なものが選択される。これらの変性PVAは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。変性PVAは、筆記性能には直接影響しないが、インクの経時安定性(粘度)に対しては有効である。特に、カルボキシル基変性、スルホン酸基変性、アセチル基変性タイプが安定性に優れているので望ましい。
このようなPVA、変性PVAの合計含有量は、目的とするインク粘度値によって適宜調整される。例えば、重合度が高いPVAを用いた場合、PVAの含有量は少な目であり、逆に重合度の低いPVAを用いた場合、PVAの含有量は多くなる。
用いることができるホウ酸化合物としては、ホウ酸、ホウ酸のアルカリ金属塩(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム)、ホウ酸のアンモニウム塩などが挙げられ、例えば、ホウ酸(H3BO3)、三酸化二ホウ酸(B2O3)、メタホウ酸ナトリウム(NaBO2)、二ホウ酸ナトリウム(Na4B2O5)、四ホウ酸ナトリウム(Na2B4O7),五ホウ酸ナトリウム(NaB5O8)、六ホウ酸ナトリウム(Na2B6O10)、八ホウ酸ナトリウム(NaB8O13)、ホウ酸アンモニウム〔(NH4)2O・5B2O3〕、並びに、これらの水和物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。インク成分に対する溶解性や汎用性の点から、四ホウ酸ナトリウム、ホウ酸アンモニウム、三酸化二ホウ酸を用いることが望ましい。これらのホウ酸化合物の合計含有量は、目的とするインク粘度値になるように、PVAの性質、含有量に応じて適宜調整される。
ゲルインクとしては、ゲル化剤あるいは剪断減粘性付与剤とも呼ばれる物質を含む。例えば、合成高分子、セルロースおよび多糖類からなる群から選ばれた少なくとも一種が望ましい。具体的には、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ダイユータンガム、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酸化セルロース、デンプングリコール酸及びその塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、架橋型アクリル酸重合体及びその塩、非架橋型アクリル酸重合体及びその塩、スチレン-アクリル酸共重合体及びその塩などが挙げられる。このうち、粘度を低くし、かつ剪断減粘指数を低くして流動性を確保するためには、酸化セルロースを用いることが特に好ましい。このような性質を有することで、筆記角度や筆記荷重の変化が小さく、また筆記角度や筆記荷重の変化が急であったとしても粘度変化に対しての応答性を高いレベルで発現することができる。
また、インクの特性として、後述する筆記部13のアウターとの関係において、インクの接触角度が20秒後に70度以下となるようなものを選択することが好ましい。70度を超える場合、アウターに対するインクの拡張性が不足するため、第二筆記部が作用する応答性が低下して、描線が擦れる。なお、接触角度の測定は、25℃65%RHの環境において、前記アウターと同一の素材で構成される板状の試験体に対してインクを滴下して行う。
さらには、インクの表面張力が48mN/m以下のものを用いることが好ましい。表面張力が48mN/mを超えると、アウターに対するインクの拡張性が不足するため、第二筆記部が作用する応答性が低下するため、上記同様の現象が発生しやすくなる。
また、インクに含まれる顔料、樹脂粒子等の不溶成分の含有量は、20重量%以下とすることが好ましい。不溶成分が20重量%を超えるとインクの流動性が低下するため、アウターに対するインクの拡張性が不足しやすくなる。さらにアウターに付着したインクが乾燥固化しやすくなるため、筆記不良が発生しやすくなる。
さらに、インクに含まれる不溶成分の平均粒子径は200nm以下であることが好ましい。平均粒子径が200nmを超えるとインクの流動性が低下するため、アウターに対するインクの拡張性が不足しやすくなる。
インク供給部15は、複数のフィンが外周に形成された略筒状のコレクター17を備えており、コレクター17の先端は、縮径して形成されており、先端保持部19をなしている。コレクター17の後方端部は、インク収容部11の前方端部と接している。コレクター17の先端保持部19は、継手21の後方端部から継手の内側に嵌入されている。
図4は、コレクターを示す図面であり、図4には、コレクターを三方向から見た図面を示している。図4に示すように、コレクター17は、前方側の貯留部17aと、後方側のダミー部17bと、貯留部17aとダミー部17bとの間の仕切部17cと、を備えている。
貯留部17aの外周には、貯留部17aの軸線に沿って延び、周方向に沿って所定の幅を有するインク誘導溝17dと、複数のフィン17eの間に形成された主要部インク一時保留溝17fとが設けられている。さらに、貯留部17aには、貯留部17aの外周と内部空間との間を連通して延びる孔17gが設けられている。
インク誘導溝17dは、軸方向に配列された、複数のフィン17eを同一形状に切り欠いて形成されており、貯留部17aを軸方向視したときに、貯留部17aの外周から凹んだ、所定形状の溝をなしており、主要部インク一時保留溝17fと連通している。インク誘導溝17dの幅は、主要部インク一時保留溝17fの幅より狭く形成されている。このように、インク誘導溝17dの幅を、主要部インク一時保留溝17fの幅より狭くすることにより、インク誘導溝17dにおけるインクとの界面張力が主要部インク一時保留溝17fの界面張力よりも強くなる。このため、インク誘導溝17dにインクを存在させつつインク誘導溝17dを介して主要部インク一時保留溝17fへのインクの流入又は排出を確実に行うことができる。
筆記時のインクの出やすさは、インク誘導溝17dの幅と、フィン17e同士の間隔に依存するものである。そして、本実施形態では、インク誘導溝17dの幅を、0.1~0.2mmとすることが好ましい。インク誘導溝17dの幅が小さい方が、コレクター17の毛管力が作用し易くなる一方で、0.1mm以下となり、幅が小さすぎるとインクがコレクター17からのインクの供給が不安定となる。排出されにくくなる。また、フィン17e同士の間隔は、インク誘導溝17dの幅に応じて決定され、0.1~0.6mmの範囲で、インク誘導溝17dの幅よりも大きく設定される。フィン17e同士の幅がインク誘導溝17dよりも小さくなると、貯留部17aによってインクを貯留できなくなり、また、フィン17e同士の幅が0.1mmよりも小さいと、インクの供給が不安定となる。
ダミー部17bの外周には、軸方向に延びるインク導入溝17hと、複数のフィン17iの間に形成された延設部空気溝17jとが設けられている。ダミー部17bは、キャップ5を下向きで開けた際に、インクがコレクター17の貯留部17a内に流入してしまうのを防止する。より、具体的には、キャップ5を下向きで開けると、キャップ5により密閉されていた先端の空間内は減圧され、これにより、インクがコレクター17の貯留部17a内に流入しようとする。そして、コレクター17の後側にダミー部17bを設けることにより、インクはダミー部17bの外周フィン17iの間に流れ込み、コレクター17の貯留部17aにインクは流入しない。
また、貯留部17の孔17gは、インクが凍結してインクの体積が膨張した際に、インクの体積増加によって筆記ボール25が先端から押出されないようにするためのものである。より具体的には、貯留部17の内外を連通する孔17gを形成することにより、貯留部17内のインクが凍結し膨張したとしても、インクが孔17gを通して外側に排出されるため、貯留部17b内の圧力が高まるのを防止することができる。なお、孔17gの面積が大きすぎると、インクが凍結していない場合でも、インクが貯留部17から排出されてしまうため、孔17gの開口面積は、0.4~1.2mm2であることが好ましい。
また、コレクター17は、ポリエステルファイバー製の棒状のコレクター芯23を備えている。コレクター芯23は、軸方向に延びており、後方端部がインク収容部11内部に摺動可能に配置され、前方端部が継手21を越えて延びている。コレクター芯23は、コレクター17の内周面との間に、0.02~0.2mmの隙間をあけて配置されている。コレクター17とコレクター芯23との間に0.02~0.2mmの隙間を設けることにより、両者の間の摺動性を確保しつつ、筆記時に隙間に大量の空気が入り込むのを防止することができる。そして、コレクター芯23の後側端は、コレクター17の後側端よりも突出して延びている。コレクター芯23は、インクの供給安定性と、吸入性を両立するために、気孔率が30~60%の材料によって構成されていることが好ましく、45%であることが最も好ましい。
継手21は、筆記部13とインク供給部15との間を接続するための部材である。なお、継手21の構成については後述する。
筆記部13は、筆記ボール25と、前方端部に筆記ボール25が収容されているホルダー27と、ホルダー27内で延びる棒状の中芯29と、ホルダー27の外周を覆うアウター31とを備えている。
図5は、ボールペンの前方端部近傍を拡大した図であり、より具体的には、図5(a)は、ボールペンの前方端部近傍の要部断面図であり、図5(b)は、ボールペンの前方端部近傍の側面図である。
図5に示すように、ホルダー27は、軸方向両端が開口した円筒形状を有しており、その前方端は、前方に向かって先細りとなる略円錐状のテーパー形状を有しており、この先細りの部分が、筆記ボール25を保持するためのカシメ部33をなしている。カシメ部33は、ホルダー27の前方開口が、筆記ボール25の直径よりも小さくなり、かつ筆記ボール25が、カシメ部33内で自由に回転できるような寸法・形状を有している。そしてカシメ部33内に保持された筆記ボール25の一部は、ホルダー27の前方の開口から外部に露出しており、外部から視認できるようになっている。ホルダー27はステンレス鋼などの金属製やポリアセタールなどの樹脂製のパイプ材を加工して形成することができる。
また、ホルダー27は、その前方端近傍において、前方に向かって先細る形状を有していることが好ましい。より具体的には、ホルダー27の前方端近傍の外周面は、ボールペン1の軸に対して、約0.5mm以上の距離にわたって約10度~20度のテーパー角度を有する傾斜面とすることが好ましい。ホルダー27の前方端に傾斜面を形成することにより、ボールペン1の前方端の径を大きくすることなく、ホルダー27の外側に配置されるアウター31の厚みを厚くし、アウター31の強度を高めることができる。そして、傾斜面の軸方向長さが短いと、ホルダー27をアウター31内部に配置する際の位置決めが困難となるため、傾斜面の軸方向の長さは、0.5mm以上であることが好ましい。また、ホルダー27のカシメ部33の外面、即ちホルダー27の傾斜面よりも更に前方側の面は、ボールペン1の軸に対して35~50度の角度又はR形状を有していることが好ましい。カシメ部33の外面の傾斜角を35~50度又はR形状とすることにより、アウターとボールとの距離が短くなることで、インク不足を防止できる為、「筆記時のインクの連続性」を維持することができる。また、ホルダー27のアウター31からの突出量は、アウター31の紙面への接触性を考慮して、筆記ボール25の直径の10~100%とすることが好ましい。
中芯29は、ホルダー27の内部に配置されており、コレクター芯23と同様にポリエステルファイバーにより形成され、その後方端はコレクター芯23の前方端に嵌め込まれるとともに、その前方端は、筆記ボール25の後方側に達している。そして、中芯29は、インクの供給安定性を確保するために、気孔率が30~80%の材料で構成されていることが好ましく、最も好ましくは、気孔率が50~70%の材料で構成されている。これにより、コレクター芯23から供給されたインクは、中芯25を通して筆記ボール25の後方側に供給される。中芯29は、後方端からほぼ2/3程度が継手21の先端部に嵌入された状態で、継手21に保持される。
なお、コレクター芯23及び中芯29は、使用するインクの粘度等の性状に応じて、適切なポリエステルファイバーの気孔率や表面形状を選択して形成される。また、中芯29としては、ポリエステルファイバーではなく、押出成形によるプラスチック製棒状芯や燒結加工による棒状芯を用いることも可能である。
図6は、継手を示す図面であり、具体的には、図6は、継手の斜視図、側面図、及び断面図を示す。図6に示すように継手21は、円筒状の筒状部分35と、筒状部分35の外側に配置されたアンカー部分37と、アンカー部分37に対して筒状部分35を保持する保持部分39とを備えている。
筒状部分35は、内部にコレクター芯23及び中芯29を固定できる内部形状を有している。具体的には筒状部分35の内径は、その後方側において、比較的太いコレクター芯23を受け入れて固定し、コレクター芯23が固定されている箇所よりも前方側において、比較的細い中芯29を受け入れて固定できるように寸法決めされている。また、筒状部分35の中芯29の固定部よりも前方側は、僅かに径が拡大しており、中芯29と、筒状部分35との間にホルダー27が嵌め込まれている。
アンカー部分37は、その内径が、筒状部分35の外径よりも大きいリング形状を有しており、筒状部分35の長手方向中央よりも後方側に配置されている。より具体的には、アンカー部分37の内径は、筒状部分35の外径よりも大きく、かつ筒状部分35との間には、空間が形成されており、その空間内に先端保持部19が差し込まれる。そして、空間内に先端保持部19が差し込まれると、先端保持部19の外周と、アンカー部分37の内周とが嵌合し、アンカー部分37は、先端保持部19に対して固定される。なお、先端保持部19内には、円筒形状の空間が形成されており、この円筒形状の空間の内径は、筒状部分35の外径よりも大きく、先端保持部19と筒状部分35とを同軸に配置したときに、筒状部分35と先端保持部19とが接触しないようになっている。
保持部分39は、アンカー部分37の外周から、筒状部分35の外周にかけて、前方に向かって先細るように延びる円錐筒形状を有している。そして、先端保持部19に対して固定されたアンカー部分37と、その他の部材に対して固定されていない筒状部分35との間に保持部分39を配置し、アンカー部分37に対して筒状部分35を懸架することにより、筒状部分35及び筒状部分35に固定される筆記部13の筆記ボール25、ホルダー27、中芯29、及びコレクター芯23を、前方側軸筒7に対して固定されたアウター31に対して軸方向に移動可能に懸架することができる。これにより、筆記時に筆記ボール25に加わる圧力を吸収することができる。
継手21を構成する筒状部分35、アンカー部分37は、例えば熱可塑性樹脂によって形成されている。また、保持部分39は、例えば熱可塑性エラストマーによって形成されている。具体的には、SBS、SEBS、SEPSなどのスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどが挙げられる。これらのうち、ISO7619に準拠したデュロメータA硬度が20~60のものは、筆圧とクッション性の応答のバランスが良い。さらに、保持部分39の強度を調整することにより、継手21によるクッション性を調整することができる。また、熱可塑性エラストマーは、弾性変形を開始する変曲点の直前までは、荷重の変化に対して敏感に伸縮するため、例えば、保持部分39の厚みや組成等を調整して、変位量に対する荷重の変曲点を約1Nとすることにより、筆記時の荷重に対して非常に敏感に伸縮する、クッション性の優れた継手21を形成することができる。そして、筒状部分35と、保持部分39との間には、クッション時に両者が剥がれないようにするために、両者の間にある程度の密着性が必要となる。この密着性を実現するためには、筒状部分35と、保持部分39とを、同系統の樹脂材料で構成することが好ましく、選択可能な材料の組み合わせとしては、AS(スチレン系樹脂)とSEBS(スチレン系エラストマー)との組み合わせ、ポリプロピレン(ポリオレフィン系樹脂)とEPDM(ポリオレフィン系エラストマー)との組み合わせ、及びPBT(ポリエステル系樹脂)とポリエステル系エラストマーとの組み合わせがある。
この中でも、保持部分39は、ISO7619に準拠したデュロメータA硬度が20~60度であることが好ましく、30~50度であることが最も好ましい。保持部分39のデュロメータA硬度をこの範囲にすることにより、低い筆圧でも適切に作動し、筆記ボール25に加わる圧力を吸収することができる。
そして、上記継手21を用いることにより、ボールペン全体のクッション力を、0.1~10N、より好ましくは0.1~5Nの範囲とすることが好適である。これは、クッション力を低くし過ぎると、筆記時にアウター31に加わる力を吸収することができず、アウター31が破損するからである。一方で、クッション力を高くし過ぎると、筆記時にアウター31を紙面と接触させながら筆記することができなくなる。
図7は、アウターを示す図面であり、具体的には、図7は、継手の斜視図、側面図、及び断面図を示す。アウター31は、略円錐形に形成された合成樹脂製の円錐筒体であり、前方に向かって先細りとなるテーパー形状を有する。アウター31は、書き味及び押し書きでの筆記感を阻害しないために、一定の強度を有する、例えばポリアセタール、ポリブチレンテレフタレートのような合成樹脂で形成されていることが好ましい。アウター31は、一般的な合成樹脂により構成することができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、フッ素系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、PMMA樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。これらのうち、書き味、特に摩擦が強く作用する押し書きでの筆記感を阻害せず、筆記による摩耗が少なく耐久性が高いポリアセタール、ポリブチレンテレフタレートで形成されていることが好ましい。アウター31に一定の強度をもたせることにより、アウター31の耐久性を向上させることができる。また、アウター31の表面は、滑らかな表面とすることが好ましく、これにより、筆記時に紙面との間の摩擦抵抗を少なくすることができ、筆記感を向上させることができる。筆記時における、紙面とアウター31との間の摩擦係数は、ヘイドン値0.5以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましい。ヘイドン値は、表面性測定器(HEIDON-14D 新東科学株式会社製)を使用して測定される。測定条件としては、旧JIS P3201に準拠(化学パルプ100%を原料に抄造された上質紙、坪量範囲40~157g/m2、白色度75.0%以上)の筆記用紙に対して、アウター31を、荷重100g、筆記角度60度、及び筆記速度6.25cm/secの条件で、鋭角方向に10cm直線動作させる。
また、アウター31は、後方側に形成された後方挿入孔41と、後方挿入孔41から先端側に連通し、後方挿入孔41よりも小径の前方挿入孔43を有する。後方挿入孔41には、継手21の前方端が挿入され、前方挿入孔43からは、継手21の前方端に固定されたホルダー27が突出する。組立てに際しては、アウター31は、前方挿入孔43にホルダー27が挿入され、後方挿入孔41に継手21の前方端が挿入された状態で、前方側軸筒7の前方端に固定される。これにより、筆記部13の筆記ボール25、ホルダー27、及び中芯29は、継手21によって、アウター31内で軸方向に移動可能に保持される。アウター31の先端、特に前方挿入孔43近傍の厚みは、0.02~0.2mmとすることが好ましい。アウター31の先端の厚みをこの範囲とすることにより、耐久性を維持しながら、筆記時のインクの排出性を確保することができる。
また、アウター31は、その軸方向中央部分にリング状の段45を備えており、段45よりも後方側は、前方側軸筒7の先端の筒状空間の内径よりも小さい外径を有し、アウター31の後方側を前方側軸筒7内に嵌合できるようになっている。
図8及び図9は、ボールペンの使用状態を示す図である。
図8(a)及び図8(b)に示すように、筆記角度、即ち紙面Wに対するボールペン1の軸の角度が、例えば、80度である場合には、特に図8(b)に示すように、紙面Wには、筆記ボール25のみが接触する。この状態でボールペン1に対して1g程度の筆記重量を加えると、インク収容部11内のインクが、インク供給部15のコレクター17及びコレクター芯23を通して筆記部13に流れる。そして、筆記部13に到達したインクは、中芯29を通して筆記ボール25の後方側に到達する。使用者がボールペン1を紙面W上で移動させると、筆記ボール25は、移動方向に沿ってカシメ部33内で回転する。そして筆記ボール25が回転すると、筆記ボール25の後方側に到達したインクは、筆記ボール25の表面に沿ってホルダー27内部から出て、紙面Wに移動し、紙面Wに付着する。そして、筆記角度が大きく、かつ筆記重量が小さい場合には、ホルダーからのインクの排出量は少ないため、ボールペン1によって、比較的細い線を描くことができる。このように、ボールペン1では、筆記ボール25が、本発明の「第一筆記部」として作用する。
また、図9(a)及び図9(b)に示すように、筆記角度が、例えば50度である場合には、紙面Wには、筆記ボール25とアウター31とが接触する。この状態でボールペン1に対して200g程度の筆記重量を加えると、側面視したときに、筆記ボール25、アウター31の前方端部、及び紙面Wによって閉断面の空間が形成され、この空間がインク溜まりとなる。これにより、筆記ボール25と紙面Wの接点P1と、アウター31と紙面Wの接点P2との距離に相当する幅L1の比較的太い線を描くことができる。このように、ボールペン1では、筆記ボール25及びアウター31が、本発明の「第二筆記部」として作用する。
描く線の太さは、筆記ボール25と紙面Wの接点と、アウター31と紙面Wの接点との距離に相当するため、線の太さは、主に、筆記ボール25の直径、及びホルダー27によって筆記ボール25を保持する位置、並びにアウター31の傾斜面の角度、及びアウター31の前方側端部の位置を含むアウター31の前方端の形状に左右されることとなるが、筆記ボール25と紙面Wの接点と、アウター31と紙面Wの接点との距離を大きくし過ぎて極太の線を描こうとすると、インクが不足し、インクの連続性が低下してしまう場合がある。従って、筆記ボール25と紙面Wの接点と、アウター31と紙面Wの接点との距離は、筆記ボール25の直径の100%以下、好ましくは50%以下となるように、アウター31の形状を決定することが好ましい。
以下、本発明の主な作用・効果についてまとめる。
本実施形態では、アウター31を採用することにより、筆記角度及び筆記重量に応じて、インクの排出量を調整することができる。より具体的には、筆記角度を大きくし、かつ筆記重量を小さくすることにより、インクの排出量を少なくし、第一筆記部としての筆記ボール25のみによって比較的細い線を描くことができる。一方で、筆記角度を小さくし、かつ筆記重量を大きくすることにより、インクの排出量を多くし、第二筆記部としての筆記ボール25及びアウター31によって比較的太い線を描くことができる。筆記角度を60度とし、かつ筆記重量を40gとして線を描いたときの平均筆記流量に対する、筆記角度を60度とし、かつ筆記重量を200gとして線を描いたときの平均筆記流量の比が1.2以上である。また、筆記角度を60度とし、かつ筆記重量を40gとして線を描いたときに描かれる線の幅に対する、筆記角度を60度とし、かつ筆記重量を200gとして線を描いたときに描かれる線の幅の比が1.3以上である。さらには、アウター31を採用することにより、筆記角度が小さい場合におけるインク不足を解消することができる。そして、一般的なボールペンでは、所定の筆記角度で倒されたボールペン1を、前方側に向けて移動させて線を描く、いわゆる「押し書き」の際に、特にインク不足によるインクの連続性が低下し易いが、本実施形態によるボールペン1では、ボールペン1に筆記角度を付けることによって、インクの排出量を増やすことができるため、いわゆる「押し書き」の際の「筆記時のインクの不連続性」を防止することができる。また、アウター31を採用することにより、筆記角度が小さい場合のいわゆる「押し書き」の際に、ホルダー27のカシメ部33が紙面と接触し、摩擦抵抗が増える事を防止する事ができる。
また、本実施形態では、クッション性の高い継手21を採用することにより、軽い筆記重量でも、十分な量のインクを排出することができる。これにより、筆記重量が軽い使用者が使用した場合でも、インク不足による「筆記時のインクの不連続性」の発生を防止することができる。この作用・効果は、「筆記時のインクの不連続性」が発生し易い、押し書きの際に、特に顕著に生じる。
また、本実施形態では、インクの成分を適宜選択し、インクの表面張力及び流動性を調整することにより、インクの流出量をより正確に制御することができ、さらに、インクによる筆記部13のアウター31の汚れを好適に防止することができる。さらに、インクの成分を調整することにより、ボールペンの書き出し性を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態の変形例について詳述する。
図10は、アウターの変形例を示す側面図である。図10に示すように、変形例にかかるアウター61は、外周に、周方向に延びる段63を備えている。段63は、アウター61の外径が、前方に向かって縮径するような形状を有している。そして、アウター61に段63を設けることにより、インクがアウター61の表面をつたって段63よりも後方側に流れるのを防止することができる。
図11に、アウターの更なる変形例を示す。図11(a)に示す例では、上述した段63に代えて、リング状の突起部65が設けられている。アウター61の表面に突起部65を設けることによっても、インクがアウター61の表面をつたって突起部65よりも後方側に流れるのを防止することができる。また、図11(b)に示す例では、上述した段63に代えて、リング状の溝67が設けられている。アウター61の表面に溝67を設けることによっても、インクが溝67よりも後方側に流れるのを防止することができる。
さらに、図11(c)に示す例では、アウター61の前方側の表面の表面粗さと、アウター61の後方側の表面粗さとを異なるものとしている。具体的には、アウター61の前方側の平滑面69は、比較的滑らか、又は平滑な表面として形成されており、アウター61の後方側の粗面71は、比較的粗い表面として形成されている。このように、アウター61の表面粗さを変化させることによって、インクが平滑面69から粗面71にむけて流れるのを防止することができる。
以下、本発明の実施例について詳述する。
実施例では、図1に示されるボールペン(ペン体 1)に表1中のインクA及びインクBをそれぞれ充填し、また、図13に示されるボールペン(ペン体 2)に表1中のインクC及びインクDをそれぞれ充填した。そして、筆記試験用紙にフリーハンドで筆記体の「U」字を筆記し、太線部における滲み、太線部における縦割れ、細線部から太線部に変化する際の連続性をそれぞれ目視により評価した。
(注)
*1:ゴーセネックスLシリーズ L-3266(日本合成化学社製)
*2:ケルザンAR(三晶社製)
*3:カーボンブラックMA-100(三菱化学社製)
*4:JONCRYL 61J(BASF JAPAN社製)
*5:リン酸エステル RS-610(東邦化学工業社製)
*6:ベストサイド600(日本曹達社製)
そして、上記の試験の結果を表2に示す。
表2中で、太線部における滲みの評価に関して、「○」は、滲みが認められないことを示し、「△」は、滲みがやや認められることを示す。また、太線部における縦割れの評価に関して、「○」は、一様な濃度の描線であることを示し、「△」は、中央部の描線濃度がやや薄いことを示す。さらに、細線部から太線部に変化する際の連続性の評価に関して、「○」は、描線が連続的に変化していることを示し、「△」は、描線の一部に欠損が認められることを示す。
以下、本発明の更なる変形例について詳述する。
図12は、変形例にかかるボールペンの側面図及び断面図である。図12に示すように、変形例にかかるボールペンは、コレクターに代えて、インクを染みこませた中綿101を備えている。中綿101には、中空の中芯103の後側端が差し込まれており、中芯103の前側端は、筆記ボール25まで延びている。中芯103は、継手21と同様の構造を有する継手107によって軸方向に移動可能に保持されている。なお、その他の構成は、図1等を参照して詳述した構成と同一である。
中綿101は、インクの排出性を確保するために、気孔率85~90%の材料で構成されていることが好ましい。そして、中芯103は、5mm以上の深さで中綿101に差し込まれている。中芯103の差し込み量を5mm以上とすることにより、インクの排出性を確保することができる。
図13は、図12の変形例の更なる変形例にかかるボールペンの側面図及び断面図である。図13に示す例では、ボールペンの外筒107の内部の後側に空間を設け、中綿101’を外筒107内で軸方向に移動可能としている。これにより、筆記時に、継手105’の動作によって中芯103’が軸方向に移動した際に、中綿101’は、中芯103’と一緒に、軸方向に移動する。このような構成により、中芯103’が移動したことによって中綿101’内への差し込み量が変わるのを防止することができる。
図14及び図15は、更なる変形例にかかるボールペンの断面図である。この変形例では、アウターを、ノック式のボールペンに適用している。ノック式のボールペンの場合、アウター201は、ペン先の収納時(図14)には、ペン先全体と一緒に、ボールペンの外筒202内に収容される。そして、ボールペンの後側のノック部を押す動作によりペン先を露出させる(図15)。そして、ノック式のボールペンにアウターを適用した場合、ペン先を露出させる動作の際のノック荷重が大き過ぎると、アウター201が破損してしまう恐れがある。従って、ペン先を露出させる動作の際のノック荷重は、バネ203の強度を調整する等により、3~4Nの範囲とされることが好ましい。
図16及び図17は、更なる変形例にかかるボールペンの断面図である。この変形例では、アウターを、多機能ボールペンに適用している。多機能ボールペンは、少なくとも2つのペン先301,302を外筒303内に収容しており、ペン先301,302は、共通の開口から、ノック式の原理でペン先から露出される。この場合、アウター304は、外筒の前側端に固定されている。これにより、複数のペン先301,302を備える多機能ボールペンにおいても、1つのアウター304で様々な太さの線を描くことができる。
図18は、更なる変形例にかかるボールペンの断面図である。変形例にかかるボールペンは、アウター401の外形が、上述したアウターとは異なっている。アウター401は、上述したアウターとは異なり円錐形状を有しておらず、アウター401の先端が、筆記ボール403の両側から両方向に広がった形状を有している。そして、筆記時には、筆記ボール403から排出されたインクは、アウター401の先端に沿って筆記ボール403の両側に広がるため、ボールペンを用いて、ラインマーカーによって描くような線を描くことができる。
図19は、更なる変形例にかかるボールペンの断面図及び正面図である。変形例にかかるボールペンのアウター501は、三角錐形状を有しており、アウター501をペンの前側から正面視したときに、アウター501を投影視した三角形の全ての辺が異なる長さを有している。そして、このような構成により、筆記時に、何れかの辺を紙面に当てながら線を描くことにより、選択した辺に応じた太さの線を描くことができる。即ち、図19にかかる変形例は、図18にかかる変形例に対して、線の太さの選択肢を増やしたものとなる。
図20は、更なる変形例にかかるボールペンの断面図、正面図、及び斜視図である。変形例にかかるボールペンのアウター601は、ペン先において、中芯603の半分を露出させるような形状を有している。これにより、筆記時に、中芯603が撓むことができ、ボールペンによって、万年筆のような筆記感を得ることができる。
図21は、更なる変形例にかかるボールペンの断面図である。変形例にかかるボールペンは、アウター701の外筒703に対する相対位置を調整できるように構成されている。具体的には、アウター701は、外筒703と螺合されており、アウター701を外筒703に対し回転させることにより、図22(a)に示す状態から、よりアウター701が前側に突出した図22(b)に示す状態とすることができる。そして、アウター701の継手707に対する相対位置を調整することにより、継手707によるクッション力を調整することができる。アウター701を前後に可動させる方式はこれに限らず、例えば、アウター701を外筒703に摺動可能な状態で嵌合させ、アウター701を外筒703に対して前後に動かせるようにする。これにより、アウター701の外筒703に対する相対位置を調整できるようにしてもよい。