JP7020614B2 - ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法及びアミド化合物の製造方法 - Google Patents

ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法及びアミド化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本開示は、ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法及びアミド化合物の製造方法に関する。
ニトリルヒドラターゼは、種々の化合物のニトリル基を水和によりアミド基に変換するニトリル水和活性を有する酵素であり、酵素反応を利用した工業的なアミド化合物の製造プロセスにおいて利用されている。
近年、菌体を超音波処理等で破砕した菌体処理物を用いて、ニトリル化合物からアミド化合物を製造するプロセスが知られている。例えば、特許文献1には、菌体破砕物を酸処理し、次いで、遠心分離により不溶物を除去したのち、アルカリ処理する工程を有する、ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法が開示されている。特許文献2には、微生物の破砕液と、(1)重量平均分子量が3000~400万のカチオン性水溶性高分子、及び(2)両性の水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子とを接触させた後、遠心分離等により固液分離を行う工程を含む、酵素の製造方法が開示されている。
国際公開第2011/007725号 特開2016-202046号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法は工程数が多く、手間がかかる。また、特許文献2に記載の方法は、主に核酸の除去に着目したものであって、アミド化合物を含む水溶液の発泡などを引き起こす夾雑物なども含む、ニトリルヒドラターゼ以外の夾雑物全般の除去に着目したものではない。
上記状況に鑑み、本開示の一実施形態は、ニトリルヒドラターゼ活性の残存率が高く、夾雑物が低減された、ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物を簡便に製造する方法及び前記菌体処理物を用いてアミド化合物を製造する方法を提供することを課題とする。
本開示は、以下の態様を含む。
<1> ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と、
(a)重量平均分子量5500以下のカチオン性高分子、及び
(b)無機凝集剤
のうち少なくとも一方とを混合する工程を有する、ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法。
<2> 前記カチオン性高分子の重量平均分子量が3000未満である、<1>に記載の製造方法。

<3> 前記カチオン性高分子がポリエチレンイミンである、<1>又は<2>に記載の製造方法。
<4> 前記無機凝集剤が、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム及びポリ硫酸第二鉄からなる群から選択される1種以上である、<1>~<3>のうちいずれか1つに記載の製造方法。
<5> 前記ニトリルヒドラターゼ生産微生物が、シュードノカルディア・サーモフィラ、又はニトリルヒドラターゼ生産能を有する組換え大腸菌である、<1>~<4>のうちいずれか1つに記載の製造方法。
<6> 前記混合する工程後に、前記混合する工程により得られた混合液中に生じた凝集物の少なくとも一部を混合液から分離する工程を含む、<1>~<5>のうちいずれか1つに記載の製造方法。
<7> 前記凝集物の少なくとも一部の分離がろ過により行われる、<6>に記載の製造方法。
<8> 前記ろ過においてろ過助剤として珪藻土が用いられる、<7>に記載の製造方法。
<9> 前記菌体処理物がアミド化合物の製造に用いられる、<1>~<8>のうちいずれか1つに記載の製造方法。
<10> 前記アミド化合物が(メタ)アクリルアミドである、<9>に記載の製造方法。
<11> <1>~<8>のうちいずれか1つに記載の製造方法によってニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物を製造すること、及び
前記菌体処理物とニトリル化合物とを混合すること、
を含む、アミド化合物の製造方法。
<12> 前記ニトリル化合物が(メタ)アクリロニトリルであり、前記アミド化合物が(メタ)アクリルアミドである、<11>に記載の製造方法。
本開示によれば、ニトリルヒドラターゼ活性の残存率が高く、夾雑物が低減された、ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物を簡便に製造する方法及び前記菌体処理物を用いてアミド化合物を製造する方法が提供される。
本開示は、
ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と、
(a)重量平均分子量5500以下のカチオン性高分子、及び
(b)無機凝集剤
のうち少なくとも一方とを混合する工程を有する、
ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法(以下、「本開示に係る菌体処理物の製造方法」とも称する)を提供する。
本開示に係る菌体処理物の製造方法を用いることにより、ニトリルヒドラターゼ活性の残存率が高く、夾雑物が低減された、ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物を簡便に製造することができる。この理由は必ずしも明らかではないが、次のように推定できる。重量平均分子量5500以下のカチオン性高分子(以下、「凝集剤(a)」とも称する)及び無機凝集剤(以下、「凝集剤(b)」とも称する)のうち少なくとも一方が存在することにより、存在する凝集剤(a)及び/又は凝集剤(b)は上記破砕液中に存在する夾雑物のうち少なくとも一部を効率よく凝集させて粒径を増加させる。本開示において、「夾雑物」とは、特に、濁度を増加させる夾雑物、及び菌体処理物をアミド化合物の製造に用いた場合にアミド化合物(例えば(メタ)アクリルアミド)を含む水溶液の発泡を生じさせる夾雑物を意味する。凝集剤(a)及び凝集剤(b)は、ニトリルヒドラターゼの凝集を生じさせるものではない一方、夾雑物は効率よく凝集させる。このため、ろ過工程で夾雑物の除去が進むため、ろ液の清澄性が改善する。さらに、ケーキの水洗も効率的に行われるため酵素回収率も改善する。このため、夾雑物が低減された、ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物を簡便に製造することが可能になる。以上のような理由が推定される。
国際公開第2011/007725号(特許文献1)の実施例1に記載の方法においては、酸による処理を行った破砕液を遠心分離器で遠心分離し、酸の添加により析出した夾雑物を除去して、遠心上澄み液を得ている。遠心分離法を用いれば、微細な析出物であっても回転数や処理時間を適切に設定することにより除去可能であるが、遠心分離法で処理するには手間がかかり、一方、遠心分離法を用いない場合には、微細な析出物を分離することは一般的に難しい。本開示に係る菌体処理物の製造方法においては、破砕液中に存在する夾雑物を効率よく凝集させて粒径を増加させるため、遠心分離法を用いなくてもより簡便な方法、例えばろ過により、凝集物を容易に除去することができる。このため、菌体処理物の製造プロセスをより簡便なものとすることができる。
特開2016-202046号公報(特許文献2)の実施例には、微生物の破砕液と、(1)重量平均分子量が6000~200万のカチオン性水溶性高分子、及び(2)両性の水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子とを接触させた後、遠心分離等により固液分離を行う工程を含む、酵素の製造方法が開示されている。しかし、重量平均分子量が6000以上と大きいカチオン性高分子を用いた場合、特開2016-202046号公報が目的とする核酸の除去はなされるものの、核酸以外の夾雑物も含む夾雑物全体としては十分に凝集せず、凝集物の粒径も十分に増加しない。このため、夾雑物全体としては、菌体処理物から容易に分離することが出来ない。これは、重量平均分子量が6000以上と大きいカチオン性高分子を用いた場合、粒子間の橋架け効果は発揮されるものの、その重量平均分子量の大きさゆえに、カチオン性高分子の溶解度の限界もあり、粒子間に十分なカチオン性高分子が存在することができず、粒子の表面電荷中和効果が強くは発揮されないためと考えられる。
本開示においては、凝集剤(a)の重量平均分子量が5500以下であることにより、凝集剤(a)は破砕液中の夾雑物のうち少なくとも一部を効率よく凝集させて粒径増加させ、且つニトリルヒドラターゼ活性の残存率を高くすることができる。また、無機凝集剤である凝集剤(b)により破砕液中の夾雑物のうち少なくとも一部を効率よく凝集させて粒径増加させ、且つニトリルヒドラターゼ活性の残存率を高くすることができる。凝集剤(a)及び(b)によるこのような効果はこれまでに知られていない。凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方を破砕液に添加することで上記のような効果が得られる理由は、凝集剤(a)や凝集剤(b)の分子量が小さいため、粒子間に十分な凝集剤分子が存在でき、粒子の表面電荷中和効果を発揮するためと考えられる。
本開示において、微生物の破砕液とは、微生物を破砕して得られる液体又はこれに後述する酸処理、アルカリ処理などの処理のうち1つ又は複数を行った液体を意味する。微生物の破砕液においては、微生物の細胞中の構成要素はもはや細胞膜内に閉じ込められてはおらず、破砕液中に分散している。微生物の破砕液は、微生物の破砕によって得られた液体そのもの(以下、「原破砕液」とも称する)であってもよく、原破砕液に対して酸処理、アルカリ処理など何らかの処理を加えたものであってもよい。
本開示において、菌体処理物とは、微生物を処理することにより得られた、微生物由来の成分を含む組成物を意味する。菌体処理物中においても、微生物の細胞中の構成要素はもはや細胞膜内に閉じ込められてはおらず、菌体処理物中に分散している。菌体処理物中には、微生物由来の成分の全てが含まれる必要はなく、成分によってはその全量又は部分量が除去されていてもよい。本開示に係るニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法は、ニトリルヒドラターゼを含む組成物の製造方法といってもよい。前記組成物は液体であってもよく、固形物であってもよい。
本開示におけるニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物においては、アミド化合物の製造プロセスなどに使用する観点から、ニトリルヒドラターゼ以外のタンパク質及び核酸などの夾雑物の含有量は低いことが好ましい。夾雑物が存在すると、アミド化合物(例えば(メタ)アクリルアミド)を製造した場合にアミド化合物を含む水溶液が発泡しやすくなる傾向がある。アミド化合物を含む水溶液の発泡性が大きいと、窒素などのガスを水溶液に吹き込む処理を行う場合に発泡が著しくなり、場合によっては、反応装置内から水溶液があふれ出し、その後の操作が困難となってしまう。このようなガスの吹き込みは、反応に悪影響を与える物質を除去することなどを目的に行われる。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても当該工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示において、記載される各要素は、その数について特に明記されない限りは、一つ存在しても、複数存在しても構わない。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
<ニトリルヒドラターゼ>
本開示に係る菌体処理物の製造方法におけるニトリルヒドラターゼは、天然生物のニトリルヒドラターゼであってもよいし、天然生物のニトリルヒドラターゼに対してアミノ酸配列の改変を加えた改変ニトリルヒドラターゼであってもよい。天然生物のニトリルヒドラターゼとしては、例えば、微生物のニトリルヒドラターゼが挙げられる。より具体的には、ノカルディア(Nocardia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、バチルス(Bacillus)属、好熱性のバチルス属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、ロドクロウス(rhodochrous)種に代表されるロドコッカス(Rhodococcus)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、キサントバクター(Xanthobacter)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、リゾビウム(Rhizobium)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、エルウィニア(Erwinia)属、エアロモナス(Aeromonas)属、シトロバクター(Citrobacter)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、サーモフィラ(thermophila)種に代表されるシュードノカルディア(Pseudonocardia)属、バイテリジューム(Bacteridium)属、又はブレビバクテリウム(Brevibacterium)属に属する微生物のニトリルヒドラターゼが挙げられる。
改変ニトリルヒドラターゼとしては、天然生物のニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列に対して1個又は2個以上のアミノ酸残基の置換、欠失又は挿入を行うことにより、アミド化合物耐性やニトリル化合物耐性、温度耐性を更に向上させた改変ニトリルヒドラターゼが挙げられる。
シュードノカルディア(Pseudonocardia)属に属する微生物(例えばシュードノカルディア・サーモフィラ)のニトリルヒドラターゼ及びそれを改変した改変ニトリルヒドラターゼは、高活性且つ高安定性という観点から好ましい。また、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J-1のニトリルヒドラターゼ及びそれを改変した改変ニトリルヒドラターゼも好ましい。
<ニトリルヒドラターゼ生産微生物>
本開示におけるニトリルヒドラターゼ生産微生物は、ニトリルヒドラターゼを生産する能力を有する微生物である。ニトリルヒドラターゼ生産微生物は、天然の微生物であってもよく、その例としては、ノカルディア(Nocardia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、バチルス(Bacillus)属、好熱性のバチルス属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、ロドクロウス(rhodochrous)種に代表されるロドコッカス(Rhodococcus)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、キサントバクター(Xanthobacter)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、リゾビウム(Rhizobium)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、エルウィニア(Erwinia)属、エアロモナス(Aeromonas)属、シトロバクター(Citrobacter)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、サーモフィラ(thermophila)種に代表されるシュードノカルディア(Pseudonocardia)属、バイテリジューム(Bacteridium)属、又はブレビバクテリウム(Brevibacterium)属に属する微生物が挙げられる。
あるいは、ニトリルヒドラターゼ生産微生物は、外来のニトリルヒドラターゼ遺伝子を有する宿主微生物(以下、「ニトリルヒドラターゼ生産組換え微生物」)であってもよい。外来のニトリルヒドラターゼ遺伝子は、天然生物、例えば天然微生物のニトリルヒドラターゼ遺伝子であってもよく、又はこうした天然生物のニトリルヒドラターゼ遺伝子に対してヌクレオチド配列の改変を加えた改変ニトリルヒドラターゼ遺伝子であってもよい。ニトリルヒドラターゼ遺伝子を組み込んだ発現ベクターを宿主微生物内に導入することにより、ニトリルヒドラターゼ生産組換え微生物を得ることができる。
ニトリルヒドラターゼ生産組換え微生物の宿主微生物としては、後述の実施例のように大腸菌(Escherichia coli)が代表例として挙げられるが、とくに大腸菌に限定されるものではなく、枯草菌(Bacillus subtilis)等のバチルス属菌、酵母や放線菌等の他の微生物菌株も挙げられる。ニトリルヒドラターゼ生産組換え微生物の例として、シュードノカルディア・サーモフィラのニトリルヒドラターゼ遺伝子を大腸菌に導入したMT-10822(本菌株は、1996年2月7日に茨城県つくば市東1丁目1番3号の通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現 茨城県つくば市東1-1-1 つくばセンター 中央第6 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)に受託番号FERM BP-5785として、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づいて寄託されている。)が挙げられる。
ニトリルヒドラターゼ生産組換え微生物としては、高活性、高安定性のニトリルヒドラターゼを有するという点で、シュードノカルディア(Pseudonocardia)属に属する微生物(例えばシュードノカルディア・サーモフィラ)、シュードノカルディア属微生物よりクローニングしたニトリルヒドラターゼ遺伝子を任意の宿主微生物で高発現させた組換え微生物(形質転換体)、及びシュードノカルディア属微生物のニトリルヒドラターゼを改変した改変ニトリルヒドラターゼを発現させた組換え微生物が好ましい。これらの組換え微生物は、ニトリルヒドラターゼの安定性をより高め、菌体当たりの活性をより高める観点から好ましい。
また、微生物内にニトリルヒドラターゼを高発現できる、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J-1、該微生物よりクローニングしたニトリルヒドラターゼ遺伝子を任意の宿主で高発現させた組換え微生物も同様に好ましい。
ニトリルヒドラターゼ生産組換え微生物が、シュードノカルディア・サーモフィラ、又はニトリルヒドラターゼ生産能を有する組換え大腸菌であることも、また好ましい。
ニトリルヒドラターゼ生産微生物を、分子生物学・生物工学・遺伝子工学の分野において公知の一般的な方法で培養することにより、所望の量のニトリルヒドラターゼ生産微生物を調製することができる。例えば、LB培地、M9培地等の通常の液体培地に、ニトリルヒドラターゼ生産微生物を植菌した後、適当な培養温度(一般的には20℃~50℃であるが、好熱菌の場合は50℃以上でもよい。)で培養させることによりニトリルヒドラターゼ生産微生物を増殖させることができる。こうして増殖させたニトリルヒドラターゼ生産微生物は、以下に記載の破砕に供することができる。
<破砕液>
ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液は、ニトリルヒドラターゼ生産微生物を破砕して作製した原破砕液そのものでもよいし、これに酸処理、アルカリ処理などの工程のうちの1つ又は複数を行って得られたものであってもよい。
破砕されるニトリルヒドラターゼ生産微生物の存在形態としては特に制限はないが、例えば、ニトリルヒドラターゼ生産微生物を含む培養液そのものであってもよいし、前記培養液を遠心分離して回収した集菌体であってもよいし、さらに前記集菌体を生理食塩水等で洗浄したものであってもよい。集菌体に対して破砕を行った場合には、破砕物に生理食塩水等の適当な溶液を加えて原破砕液とすればよい。
ニトリルヒドラターゼ生産微生物を破砕する装置としては、ニトリルヒドラターゼ生産微生物を破砕可能であれば特に制限はないが、例えば、超音波破砕機、フレンチプレス、ビーズショッカー、ホモゲナイザー、ダイノーミル、クールミルなどの摩砕装置などが挙げられる。これらの中でも、安価にスケールアップができるという点で、ホモゲナイザーが好ましい。ホモゲナイザーは、株式会社三和機械、株式会社イズミフードマシナリなどが市販している。
ニトリルヒドラターゼ生産微生物を破砕する時の温度は特に制限はないが、好ましくは0℃以上50℃以下、より好ましくは0℃以上25℃以下である。
また、ニトリルヒドラターゼ生産微生物を破砕する時のpHは特に制限はないが、好ましくはpH4以上10以下、より好ましくはpH6以上8以下である。
ホモゲナイザーを用いてニトリルヒドラターゼ生産微生物を破砕する場合の圧力はニトリルヒドラターゼ生産微生物が破砕される圧力であれば特には制限が無いが、好ましくは10MPa以上300MPa以下、より好ましくは30MPa以上100MPa以下である。
<凝集剤(a)>
本開示に係る菌体処理物の製造方法における重量平均分子量5500以下のカチオン性高分子(凝集剤(a))は、5500以下の重量平均分子量を有するカチオン性高分子であれば特に限定されない。凝集剤(a)の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。具体的には、本開示における重量平均分子量は、
測定装置:株式会社島津製作所製高速液体クロマトグラフ20Aシリーズ
使用カラム:昭和電工株式会社製 Shodex Asahipak GF-710HQ+GF-510HQ+GF-310HQ
溶離液:0.2モル%モノエタノールアミン水溶液(pH5.1)
標準物質キット:プルランP-82(和光純薬工業株式会社製)
検出器:示唆屈折率検出器RID-20A(株式会社島津製作所製)
を使用して得られた重量平均分子量を意味する。
夾雑物をより効率的に凝集させる観点から、凝集剤(a)の重量平均分子量は3000未満であってもよい。また、凝集剤(a)の重量平均分子量は300以上5000以下であることが好ましく、800以上4700以下であることがより好ましく、1000以上2700以下であることがさらに好ましい。
凝集剤(a)は、カチオン性官能基を有するポリマーであるが、カチオン性官能基としては1級~3級アミノ基、4級アンモニウム基、イミノ基などが好ましい。凝集剤(a)の例としては、ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート四級塩重合物、アミノアルキル(メタ)アクリレート四級塩-アクリルアミド共重合物、ポリビニル-ピリジニウム-ハライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ヘキサメチレンジアミンとエピクロルヒドリンの重縮合物、ポリアルキレンイミンなどが挙げられる。凝集剤(a)は、ポリアミンであることが好ましく、ポリアルキレンイミンであることがより好ましく、ポリエチレンイミンであることがさらに好ましい。なお、本開示において(メタ)アクリレートの表記はアクリレート若しくはメタクリレート又はその両方を表し、(メタ)アクリロニトリルの表記はアクリロニトリル若しくはメタクリロニトリル又はその両方を表し、(メタ)アクリルアミドの表記はアクリルアミド若しくはメタクリルアミド又はその両方を表す。
破砕液に混合する凝集剤(a)の量としては、夾雑物の凝集を効率よく生じさせる観点から、凝集剤(a)及び存在する場合は凝集剤(b)との混合後における破砕液の全質量に対する凝集剤(a)の濃度が0.01質量%~2.0質量%となる量であることが好ましく、混合後の濃度が0.05質量%~1.0質量%となる量であることがより好ましく、0.1質量%~0.5質量%となる量であることがさらに好ましい。
<凝集剤(b)>
本開示に係る菌体処理物の製造方法における無機凝集剤は、凝集剤として用いられている無機物質であれば特に限定されない。無機凝集剤は金属イオンを含む無機物質であることが好ましく、アルミニウム、鉄、マグネシウム、カルシウム、又はこれらの組み合わせから選択される金属の塩であることがより好ましい。無機凝集剤のより具体的な例としては、ポリアルミニウムクロリド(PAC)、硫酸アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、消石灰などが挙げられる。無機凝集剤は、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム及びポリ硫酸第二鉄からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
破砕液に混合する凝集剤(b)の量としては、夾雑物の凝集を効率よく生じさせる観点から、凝集剤(b)及び存在する場合は凝集剤(a)との混合後における破砕液の全質量に対する凝集剤(b)の濃度が0.005質量%~2.0質量%となる量であることが好ましく、混合後の濃度が0.01質量%~1.0質量%となる量であることがより好ましく、0.02質量%~0.5質量%となる量であることがさらに好ましい。
凝集剤(a)と凝集剤(b)とを組み合わせて使用することも、夾雑物の凝集をより促進する上で好ましい。凝集剤(a)は粒子表面電荷の中和効果が強く、凝集剤(b)は粒子間の橋架け効果を有するため、両者を併用することで相乗的な効果が得られると考えられる。両者を併用する場合には、凝集剤(a)と凝集剤(b)との質量比は、10:1~1:2であることが好ましく、5:1~1:1であることがより好ましい。
<破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを混合する工程>
ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを混合する工程は、破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とが十分に混合される工程であれば特に制限されない。ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを混合する際には、破砕液に凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方(好ましくは凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方の溶液)を添加してもよいし、凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方(好ましくは凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方の溶液)に破砕液を添加してもよいし、破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方(好ましくは凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方の溶液)との両方を徐々に容器に注いでもよい。例えば、5質量%~50質量%、好ましくは10質量%~40質量%の凝集剤(凝集剤(a)及び凝集剤(b)の総量)の溶液を破砕液に撹拌下で添加してもよい。ニトリルヒドラターゼの活性保持の観点から、混合は、0℃~40℃で行うことが好ましく、10℃~30℃で行うことがより好ましい。
ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを混合する工程は、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを含む混合液を撹拌する工程を含んでいてもよい。撹拌の方法は特には限定されず、撹拌翼、マグネティックスターラーなどを用いて撹拌できる。撹拌速度、撹拌時間、撹拌温度などについては、ニトリルヒドラターゼの活性に影響を与えない範囲で破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方との十分な混合が達成されるように設定すればよい。
<他の工程>
本開示に係る菌体処理物の製造方法は、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを混合する工程に加えて、1つ又は複数の他の工程を含んでいてもよい。本開示に係る菌体処理物の製造方法が任意に含んでいてもよい工程の例を以下に記載するが、本開示に係る菌体処理物の製造方法が含んでいてもよい工程はこれらに限定されない。
<凝集物の少なくとも一部を混合液から分離する工程>
本開示に係る菌体処理物の製造方法は、前記混合する工程後に、前記混合する工程により得られた混合液中に生じた凝集物の少なくとも一部を混合液から分離する工程(以下、分離処理工程とも称する)を含んでいてもよい。凝集物の少なくとも一部を混合液から分離して得られたニトリルヒドラターゼを含む溶液(以下、「ニトリルヒドラターゼ含有溶液」ともいう;ニトリルヒドラターゼ含有溶液は、溶液をさらに後述のとおり濃縮したものであってもよい)は、ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物であって、アミド化合物の製造などに使用することができる。
凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方の働きにより、破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方との混合により得られた混合液中には凝集物が生じる。凝集物は、主に、核酸、細胞膜といった細胞由来の成分が凝集した塊であり、種々のサイズを有する。凝集物の少なくとも一部を混合液から分離する工程は、凝集物の粒子のうち、設定値以上のサイズの粒子を混合液から分離することを含んでいてもよい。設定値は用いる分離操作の種類によって適宜設定できる。凝集物の粒子の中には微細なサイズのものもあり、凝集物粒子の全てを除去することは精密分離操作を行わない限り難しく、また、精密分離操作はプロセス効率を低下させる。このため、本工程では、上記のように設定値以上のサイズの凝集体粒子を混合液から分離することを含むことが好ましい。設定値以上のサイズの凝集体粒子を除去することで、ニトリルヒドラターゼを含む溶液中の夾雑物が減少し、該溶液又は該溶液から得られるニトリルヒドラターゼを例えばアミド化合物の製造に用いる場合などに反応阻害や発泡などが生じにくくなる。
凝集物の少なくとも一部を混合液から分離する工程としては、例えば、混合物中の上澄み液を沈殿から分離すること、混合液を遠心分離処理すること、混合液に対してろ過を行うこと、混合液に対して透析を行うことなどが挙げられる。フィルタの選択により比較的小粒径の凝集体粒子まで除去できること及び迅速簡便であることから、混合液に対してろ過を行うことが好ましい。なお、本開示に係る菌体処理物の製造方法においてろ過を行う場合は、混合液に対してろ過を行う前に遠心分離を行わなくても、清澄な菌体処理物を得ることができる。そのため、本開示に係る菌体処理物の製造方法においてろ過を行う場合は、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液をろ過する工程の前に、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液に対して遠心分離を行う必要は無いが、所望によっては行ってもよい。
ろ過は特に圧力をかけず重力によりろ過したり、吸引によりろ過してもよいが、ろ過速度を増加させてプロセス効率を向上させるために、例えば0.05MPa~1.0MPa、又は0.1MPa~0.5MPa程度の圧力をフィルタ上流側の液体に加えてろ過を行ってもよい。
ろ過は、例えば、精密濾過膜(MF膜)及び/又は限外濾過膜(UF膜)により行ってもよい。上記MF濾過膜としては、孔径が、好ましくは0.1μm以上2μm以下、より好ましくは0.1μm以上0.45μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上0.2μm以下である。
また、上記精密濾過膜(MF膜)、及び限外濾過膜(UF膜)膜の材料としては、ニトリルヒドラターゼの吸着が無い材料が好ましく、具体的には、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリルが好ましい。
さらに、上記精密濾過膜(MF膜)、及び限外濾過膜(UF膜)を用いたろ過法については特に制限はなく、例えば、デッドエンドろ過法、クロスフローろ過法などが挙げられる。
この精密濾過膜(MF膜)、限外濾過膜(UF膜)による処理により、夾雑物の凝集物粒子がより確実に行われる傾向にある。
後述する珪藻土などのろ過助剤を混合液に添加して(ろ過助剤のボディフィード)ろ過を行う場合、フィルタは、例えば、通過可能な球粒子の最大径が20μm~100μmであるフィルタであってもよい。通過可能な球粒子の最大径は、30μm~80μmであることが好ましい。このようなフィルタとしては、金網や濾布などが挙げられる。例えば、250メッシュ~1000メッシュ、好ましくは300メッシュ~700メッシュの金網や、通気度50cc/min/cm~1000050cc/min/cm、好ましくは100050cc/min/cm~8000cc/min/cmの濾布などが挙げられる。金網や濾布などは、平畳織であっても、綾畳織であっても、逆綾畳織であってもよい。このような金網は、真鍋工業株式会社や株式会社奥谷金網製作所などから、濾布は中尾フィルター工業株式会社や敷島カンバス株式会社などから入手可能である。
フィルタは、メンブレンフィルタであってもよいが、大量処理のための大面積化及び耐久度の点からは金網フィルタや濾布の方が好ましい。
上記ろ過処理の際には、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを含む混合液をろ過助剤で処理してもよい。処理の手法は、ろ過助剤を混合液に添加すること(ボディーフィード)又はろ過助剤で被覆されたフィルタを使用すること(プリコート)のいずれであってもよい。混合液をろ過助剤で処理することで、夾雑物の凝集物をより低減することができる傾向にある。これは、夾雑物の凝集物の粒子がろ過助剤に吸着して捕捉されるためである。このため、濾過抵抗が低減し、濾材の目詰まりが防止され、濾液の清澄度が向上するという効果も得ることができる。
ろ過助剤としては、珪藻土、活性炭、バーライトなどが挙げられる。ろ過助剤としては、ニトリルヒドラターゼ活性のロスが少ない点で、珪藻土が好ましい。
珪藻土で処理する場合に使用する珪藻土としては、セライト(炭酸ナトリウムと焼成した珪藻土との混合物)であってもよく、セライトの例としては、セライト社製ハイフロー スーパーセル、セライト505が挙げられる。また、珪藻土は、昭和化学工業株式会社製のラヂオライト(登録商標)シリーズ製品であってもよく、例えば、ラヂオライト#800、ラヂオライト#900、ラヂオライト#1500H、ラヂオライト#2000などを用いてもよい。
ろ過助剤によるプリコートを行う場合、プリコートされたフィルタの使用形式としては、キャンドルフィルター、リーフフィルター、フィルタープレス、プリコートフィルター(ドラムフィルタ)、バグフィルターなども使用可能である。
<酸処理>
ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液(例えば原破砕液)は、凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方と混合される前に、好ましくは酸処理を受ける。つまり、本開示に係る菌体処理物の製造方法は、好ましくは、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液に、凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方を混合する工程の前に、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液を酸処理する工程を含んでいてもよい。前記酸処理は、破砕液を酸で処理する工程であって、この酸処理により、(メタ)アクリルアミドなどのアミド化合物を含む水溶液を発泡させる夾雑物のうち少なくとも一部を不溶物にすることができる。あらかじめ、このような不溶物を形成しておくことにより、本開示に係る菌体処理物の製造方法による夾雑物凝集効果はさらに向上する。
酸としては、本開示に係る菌体処理物の製造方法の効果を損なわない限り特に制限なく、硫酸等の強酸、弱酸のいずれも使用可能である。酸処理時に酵素活性の低下が少ないという点では弱酸が好ましい。
上記弱酸としては、アクリル酸、酢酸、リン酸などが挙げられる。これら弱酸の中でも、酢酸及びリン酸は劇物ではないため取扱い易い。
酸処理は、破砕液のpHを4以上6以下の範囲内とするものであることが好ましく、4.5以上5.5以下の範囲内とするものであることがより好ましい。ここで、破砕液のpHとは、25℃におけるpHを表す。
破砕液を酸で処理する際には、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液に酸(好ましくは酸溶液)を添加してもよいし、酸(好ましくは酸溶液)にニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液を添加してもよいし、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と酸(好ましくは酸溶液)の両方を徐々に容器に注いでもよい。また、破砕液を酸で処理する際には、破砕液全体のpHができる限り均一となるように、酸(好ましくは酸溶液)をゆっくりと破砕液に添加することが望ましい。
また、上記酸処理に先立って、酵素の活性が低下しない範囲で破砕液(例えば原破砕液)の熱処理を行ってもよい。つまり、本開示に係る菌体処理物の製造方法は、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液を酸処理する工程の前に、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液を熱処理する工程を含んでいてもよい。熱処理を行うと、破砕液を酸で処理した際、生じる不溶物をより沈殿しやすくすることができる。破砕液の熱処理温度は、好ましくは45℃以上65℃以下、より好ましくは50℃以上60℃以下である。破砕液の熱処理時間は、好ましくは5分以上180分以下、より好ましくは5分以上60分以下である。
熱処理は、ニトリルヒドラターゼ生産微生物を破砕する前に行っても構わない。
<アルカリ処理>
本開示に係る菌体処理物の製造方法は、凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを混合される前のニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液に対してアルカリ処理を行う工程を含んでもよい。アルカリ処理により、夾雑物の不溶化が促進される。あらかじめ、このような不溶物を形成しておくことにより、本開示に係る菌体処理物の製造方法による夾雑物除去効果はさらに向上する。あるいは、本開示に係る菌体処理物の製造方法は、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを混合した後に、得られた混合液に対してアルカリ処理を行ってもよい。もちろん、本開示に係る菌体処理物の製造方法は、アルカリ処理を行わなくても、清澄な菌体処理物を得ることができる。そのため、アルカリ処理は本開示に係る菌体処理物の製造方法において必要なものではなく、所望により行ってもよいものである。 なお、ろ過などの分離処理工程を行う場合には、上記混合液に対するアルカリ処理は、分離処理工程より前に行ってもよい。
このアルカリ処理に使用するアルカリは、本開示に係る菌体処理物の製造方法の効果を損なわない限り特に制限ないが、安価なアルカリであるという点で水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリ処理は、例えば、中和に必要な量の水酸化ナトリウム水溶液を上記混合液に添加することを含んでいてもよい。
アルカリ処理によりpHは、7.5以上10以下の範囲に調節することが好ましく、8.0以上9.5以下の範囲に調整することがさらに好ましい。混合液に対してろ過を行う場合、アルカリ処理は、ろ過よりも前に行うことが好ましい。ろ過よりも前にアルカリ処理を行うことで、ろ過後の液体中に酸により新たに不溶物が析出することが防止できる。
<pH調整>
本開示に係る菌体処理物の製造方法は、破砕液のpHを4.0~8.0に調整する工程(以下、pH調整工程とも称する)を含んでいてもよい。この工程は、ろ過などの分離処理工程に供される時の破砕液のpHを調整することを目的とした工程である。このため、上記の酸処理及びアルカリ処理のうち一つ以上を行う場合には、それらの工程よりも後にpH調整工程を行うことが好ましい。特に、本開示に係るpH調整工程は、凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを混合した後に、得られた混合液に対してpHを4.0~8.0に調整する工程であることが好ましい。また、pH調整工程は、本開示に係る菌体処理物の製造方法がろ過を行うことを含む場合、ろ過の前に行われることが好ましい。得られる菌体処理物の清澄度をさらに向上させる観点からは、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを混合した後の得られた混合液は、pH4.0~6.8であることが好ましく、4.5~6.8であることがさらに好ましい。このため、pH調整工程は、好ましくは混合液のpHを4.0~6.8に調整する工程であり、より好ましくは4.5~6.8に調整する工程である。
前述の酸処理工程が、pH調整工程を兼ねていてもよい。pHの調整は、酸性物質、塩基性物質などを破砕液に必要に応じて添加するにより行うことができる。酸性物質としては、塩酸、硝酸などの無機酸、酢酸、クエン酸、酒石酸などの有機酸などが例として挙げられる。塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどが例として挙げられる。破砕液のpHを調整する工程は、破砕液のpHを監視しながら、目標pHに応じて選択された適切な酸性物質又は塩基性物質の水溶液を破砕液に添加することで行うことができる。なお、本開示において、破砕液のpHとは25℃におけるpHを表す。
<ろ液の濃縮>
上述した凝集物の少なくとも一部を混合液から分離する工程により得られた溶液(例えばろ過により得られたろ液)は、さらにニトリルヒドラターゼの濃度を高めるための濃縮工程に供してもよい。濃縮工程に供することで、ニトリルヒドラターゼの濃度が増大した菌体処理物を得ることができる。濃縮は、溶液中の液体成分を除去することにより行うことができる。濃縮は例えば、蒸発、又は逆浸透などの膜濃縮法により行うことができる。膜濃縮法を用いる場合、膜の公称分画分子量はニトリルヒドラターゼ生産微生物が生産するニトリルヒドラターゼの分子量よりも大きい分子量とすることができ、例えば公称分画分子量が4万~10万の範囲内の値である膜を用いることができる。このような膜としては、例えば、旭化成社製ペンシル型中空糸膜AHP-0013などを用いることができる。濃縮の際に付加する圧力は使用する膜に応じて選択すればよく、例えば、0.01MPa~0.5MPa、好ましくは0.05MPa~0.3MPaの範囲内とすることができる。
濃縮工程による溶液の濃縮度は、濃縮にかかる時間と求められるニトリルヒドラターゼ濃度に応じて設定すればよく、例えば2倍~30倍とすることができ、好ましくは5倍~20倍とすることができる。濃縮度は、濃縮後の溶液体積を濃縮前の溶液体積で除すことにより求めることができる。
<アミド化合物の製造>
上に説明した本開示に係る菌体処理物の製造方法により得られた菌体処理物であるニトリルヒドラターゼ含有溶液を用いることで、ニトリル化合物からアミド化合物を製造することができる。本開示に係るアミド化合物の製造方法は、例えば、ニトリル化合物と本開示に係る菌体処理物の製造方法により得られた菌体処理物とを混合することを含む。反応の詳細については原料となるニトリル化合物及び目的とするアミド化合物の種類に応じて適宜調整すればよい。例として、(メタ)アクリロニトリルから、(メタ)アクリルアミドを製造するプロセスを以下に記載する。他のアミド化合物も、対応するニトリル化合物から同様にして製造することができる。なお、ニトリルヒドラターゼ含有溶液は、凝集物の少なくとも一部を混合液から分離した後にさらに公知の精製処理などを経て調製した溶液であってもよい。
(メタ)アクリルアミドの製造は、通常、水性媒体中で行う。前記水性媒体は、リン酸塩等を含む緩衝剤、硫酸塩や炭酸塩等の無機塩、アルカリ金属の水酸化物、及びアミド化合物等から選択される1つ以上を適当な濃度で水中に溶解したものであり、水性媒体、原料としての(メタ)アクリルニトリル、及び触媒としてのニトリルヒドラターゼ含有溶液(菌体処理物)を混合して反応溶液とする。反応溶液を10℃~20℃程度の温度で保持することにより、(メタ)アクリルアミドの生成反応が進行する。
混合するニトリルヒドラターゼ含有溶液の量は、反応のスケールなどを考慮して必要なユニット数のニトリルヒドラターゼが含まれるように設定すればよい。また、反応開始時における反応溶液中の(メタ)アクリロニトリルの濃度は特に制限されるものではないが、反応開始時におけるニトリル化合物の濃度を高く設定し過ぎると、反応を完結させるために多くの触媒量が必要となり、必要とされる反応器の容積が大きくなり、除熱のために必要な熱交換器等のサイズが大きくなるなど、設備面での経済的負担が大きくなる。
このため、アクリロニトリルを使用する場合には、反応開始時における反応溶液中のアクリロニトリルの濃度は、それが100%の変換効率でアクリルアミドに変換された場合に、反応溶液の全質量に対する生成したアクリルアミドの濃度が40質量%~80質量%となるような濃度であることが好ましい。
また、メタクリロニトリルを使用する場合には、反応開始時における反応溶液中のメタクリロニトリルの濃度は、それが100%の変換効率でメタクリルアミドに変換された場合に、反応溶液の全質量に対する生成したメタクリルアミドの濃度が10質量%~40質量%となるような濃度であることが好ましい。
(メタ)アクリルアミド生成反応の反応時間は、触媒使用量や温度等の条件にも左右されるが、通常は1~120時間であり、好ましくは2~48時間である。
(メタ)アクリルアミド生成反応の反応様式については、特に限定するものではなく、回分式又は半回分式でもよいし、連続式でもよい。また、懸濁床、固定床、移動床などのうちいずれであってもよい。また、複数の形式の反応器を組み合わせて用いてもよい。
また、ニトリルヒドラターゼによって触媒される水和反応は、通常は常圧又は常圧近辺で行われるが、水性媒体中へのニトリル化合物の溶解度を高めるために加圧下で行うこともできる。また、反応温度に関しては、水性媒体の氷点以上であれば特に制限されるものではないが、通常は0~50℃で行うのが好ましく、より好ましくは10~40℃である。また、生成物が反応溶液中に晶出したスラリー状態でも反応を行うことができる。また、水和反応における反応溶液のpHは、ニトリルヒドラターゼ活性が維持されている限りは特に制限されるものではないが、好ましくはpH6~10の範囲であり、より好ましくはpH7~9の範囲である。
以上に説明したとおり、本開示に係る菌体処理物の製造方法によれば、ニトリルヒドラターゼ活性の残存率が高く、夾雑物が低減された、ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物を簡便に製造することができる。また、この菌体処理物は、(メタ)アクリルアミドなどのアミド化合物などの製造に用いることができる。
以下、実施例に基づいて実施形態をさらに具体的に説明するが、本開示はこれにより何ら限定されるものではない。以下、特に断りのない限り、%及びppmはいずれも質量基準である。
[アクリルアミドの分析方法]
各実施例及び比較例におけるHPLC分析は、カラムとして日本分光株式会社製のFinepak SIL C18-5(250×4.6φmm)を用い、4体積%のアセトニトリルを含む10mMリン酸水溶液を展開液として使用した。また、アクリルアミドは220nmの吸光度により検出した。
[ニトリルヒドラターゼ生産微生物の培養物の調製]
特開2001-340091号の実施例1に記載された方法に従い、特開平09-275978で得られたpPT-DB1プラスミドDNAを鋳型とし、特開平09-275978の表3にクローンNo.3として示されるニトリルヒドラターゼ生産微生物を取得した。このクローンNo.3は、シュードノカルディア・サーモフィラJCM3095株由来のニトリルヒドラターゼ遺伝子を改変して発現するニトリルヒドラターゼのαサブユニットのN末端から6番目のLeuをAlaに置換した遺伝子(ヌクレオチド上のコドンの変化はCTGからGTGへの変化)を、大腸菌HB101のコンピテントセル(東洋紡績社製)に形質転換した形質転換体である。pPT-DB1プラスミドを保有する大腸菌は、MT-10822株(受託番号FERM BP-5785)として、前述のとおり特許生物寄託センターに寄託されている。
下記の組成の培地を5L調整し、2Lのバッフル付三角フラスコ10本に500mLづつ添加し、121℃で20分間のオートクレーブにより滅菌した。この培地に終濃度が50μg/mLとなるようにアンピシリンを添加した後、上記のクローンNo.3の菌体(ニトリルヒドラターゼ生産微生物)を一白金耳で植菌し、37℃で130rpmにて20時間培養した。
培地組成 酵母エキストラクト 5.0g/L
ポリペプトン 10.0g/L
NaCl 5.0g/L
塩化コバルト・六水和物 10.0mg/L
硫酸第二鉄・七水和物 40.0mg/L
pH7.5
[ニトリルヒドラターゼ生産微生物の原破砕液の調製]
(ホモゲナイザーによるニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕)
上記ニトリルヒドラターゼ生産微生物の培養物の調製で調製した培養液5Lに含まれるニトリルヒドラターゼ生産微生物の細胞を、三和エンジニアリング株式会社製ホモゲナイザーH50を用いて、温度15℃、破砕圧力50MPa、破砕時間100分の条件で破砕し、細胞内に含まれるニトリルヒドラターゼを溶液中に遊離させ、原破砕液を作製した。
[熱処理]
上記原破砕液を10Lのガラスビーカーに移し、原破砕液を充分に撹拌しながら、ガラスビーカーを50℃の水浴恒温槽に浸漬した。原破砕液の液温が50℃になってからさらに15分間浸漬を続け、その後ビーカーを取り出し空冷した。
[酸処理]
熱処理後の破砕液を充分に撹拌しながら、破砕液のpHが5.0になるまで2M酢酸水溶液をゆっくり添加し、さらに、破砕液を3時間撹拌した。
<実施例1>
[凝集剤の添加]
ポリエチレンイミン(重量平均分子量4600)を水に溶解し、30質量%水溶液を作製した。この30質量%ポリエチレンイミン水溶液を、酸処理後の破砕液に、添加後の混合液中におけるポリエチレンイミンの濃度が0.2質量%となるように添加し、30分撹拌した。
[pHの調整]
30質量%ポリエチレンイミン水溶液の添加により得られた上記混合液を充分に撹拌しながら、混合液のpHが5.5になるまで2Nの酢酸をゆっくり添加した。
[混合液のろ過]
pH調整後の混合液にろ過助剤として珪藻土(昭和化学工業株式会社製ラヂオライト(登録商標)#1500H)を混合液の質量に対して10質量%添加し、20℃で撹拌した。撹拌後、360メッシュの金網を用いて、0.2MPaで加圧ろ過を行い、ろ液を得た。ろ過開始から10分間のろ過速度をろ過初速度(kg/m/h)として算出した。
ろ過終了後、母液の0.5倍量の水でケーキを洗浄し、洗浄液を回収した(以下、「水洗ろ液」とも称する)。得られたろ液の清澄性を株式会社島津製作所製紫可視分光光度計UV1650PCを用いて波長660nmで吸光度を測定することで評価した。
ろ液、水洗ろ液及び母液(凝集剤を添加する直前の破砕液)のそれぞれについて、ニトリルヒドラターゼの活性値を測定した。具体的には、測定対象の各液体0.3gに20mlの50mMトリス塩酸水溶液(pH8.0)とアクリロニトリル0.5mLを添加し、20℃で反応させて反応初速度を求め、酵素活性算出法により測定対象の液体1gあたりのユニット数U(以下単に「活性値」とも称する)を算出した。
酵素回収率は以下の式で算出した。
酵素回収率[%]=100×(ろ液の活性値[U/g]×ろ液量[g]+水洗ろ液の活値[U/g]×水洗ろ液量[g])/母液の活性値[U/g]×母液量[g]
[ろ液の濃縮]
旭化成社製ペンシル型中空糸膜AHP-0013を用いて、平均圧力0.1MPa、循環速度1.5mm/secの条件で、ろ液を15倍濃縮し、菌体処理物を得た。
[アクリルアミドの製造]
第1反応器としての撹拌器を備えた1Lガラス製フラスコ、及び第二反応器としての内径5mmのテフロン(登録商標)製チューブ20mを準備した。第一反応器には、予め400gの水を仕込んだ。
上記で得た菌体処理物(15倍濃縮後したろ液)を0.3mMのNaOH水溶液に0.03質量%の濃度となるように懸濁し、懸濁液を得た。この懸濁液とアクリロニトリルとを、各々49g/h(懸濁液)及び31g/h(アクリロニトリル)の速度で、撹拌を行いながら、第1反応器に連続的にフィードした。さらに、第1反応器の液面レベルを一定に保つように、反応液を第1反応器から80g/hの速度で連続的に抜き出した。抜き出した反応液を80g/hの速度で第2反応器に連続的にフィードして、第2反応器内でさらに反応を進行させた。
上記の反応の間、第1反応器及び第2反応器は、いずれも、10~20℃の温度の水浴中に浸漬し、各反応器内部の液温が15℃となるように温度制御を行った。
0.3mMのNaOH水溶液に対する菌体処理物の添加量を、第1反応器出口でのアクリルアミドへの転化率が90%以上となり、且つ第二反応器出口でのアクリルニトリル濃度が検出限界以下(100ppm以下)となるように調整した。アクリルアミドへの転化率はHPLCの分析結果から求めた。得られたアクリルアミド水溶液には、2Mのアクリル酸を添加してpH7に調整した。
[アクリルアミド水溶液の発泡試験(発泡高さの測定)]
上記で得られたアクリルアミド水溶液300gを500mlメスシリンダーに入れた。このアクリルアミド水溶液中に木下式ガラスボールフィルター503Gを導入し、メスシリンダーの底から、前記ガラスボールフィルタを通して、900ml/minで空気を吹き込み5分間経過した時点の発泡の高さを測定した。
<実施例2>
凝集剤としてのポリエチレンイミン(重量平均分子量4600)を同質量のポリエチレンイミン(重量平均分子量2300)に置き換えた以外は実施例1と同様にして凝集剤の添加を行い、混合液を作製した。
得られた混合液を用いて、混合液の中和以降の処理及び測定を、実施例1と同様にして行った。
<実施例3>
ポリ塩化アルミニウム(PAC)を水に溶解し、10質量%水溶液を作製した。この10質量%PAC水溶液を、酸処理後の破砕液に、添加後の混合液中におけるPACの濃度が0.04質量%となるように添加し、30分撹拌して混合液を作製した。
得られた混合液を用いて、混合液の中和以降の処理及び測定を、実施例1と同様にして行った。
<実施例4>
硫酸アルミニウムを水に溶解し、10質量%水溶液を作製した。この10質量%硫酸アルミニウム水溶液を、酸処理後の破砕液に添加し、得られた混合液Aを撹拌した。さらに、実施例1で作製した30%ポリエチレンイミン(分子量4600)水溶液をこの混合液に添加し、30分撹拌して混合液Bを作製した。硫酸アルミニウム水溶液及び30%ポリエチレンイミン水溶液の添加量は、添加後の混合液B中における硫酸アルミニウムの濃度が0.04質量%、ポリエチレンイミンの濃度が0.1%となるような量に設定した。
混紡液Bを用いて、混合液の中和以降の処理及び測定を、実施例1と同様にして行った。
<実施例5>
ポリ硫酸第二鉄を水に溶解し、10質量%水溶液を作製した。この10質量%ポリ硫酸第二鉄水溶液を、酸処理後の破砕液に添加し、得られた混合液Cを撹拌した。さらに、実施例1で作製した30%ポリエチレンイミン(分子量4600)水溶液をこの混合液に添加し、30分撹拌して混合液Dを作製した。ポリ硫酸第二鉄水溶液及び30%ポリエチレンイミン水溶液の添加量は、添加後の混合液D中におけるポリ硫酸第二鉄の濃度が0.04質量%、ポリエチレンイミンの濃度が0.1%となるような量に設定した。
混紡液Dを用いて、混合液の中和以降の処理及び測定を、実施例1と同様にして行った。
<比較例1>
凝集剤としてのポリエチレンイミン(重量平均分子量4600)を同質量のポリエチレンイミン(重量平均分子量16600)に置き換えた以外は実施例1と同様にして凝集剤の添加を行い、混合液を作製した。
得られた混合液を用いて、混合液の中和以降の処理及び測定を、実施例1と同様にして行おうとしたが、凝集物粒子の濃度が高すぎて、ろ液の濃縮ができなかった。このため、アクリルアミドの製造及びアクリルアミド水溶液の発泡試験は行わなかった。
<比較例2>
凝集剤としてのポリエチレンイミン(重量平均分子量4600)を添加しない以外は、実施例1と同様の処理及び測定を行おうとしたが、ろ過の途中でフィルタの詰まりが発生したため、ろ過はそこで終わりにし、ケーキの水洗も行わなかった。
実施例及び比較例における測定結果を、表1にまとめて示す。
Figure 0007020614000001
表1に示されるように、破砕液と、重量平均分子量5500以下のカチオン性高分子及び無機凝集剤のうち少なくとも一方とを混合した実施例1~実施例5においては、ろ液濁度は低く、酵素回収率も高かった。このことから、実施例1~実施例5においてはニトリルヒドラターゼ活性の残存率が高く、夾雑物が低減された、ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物が得られたことが分かる。一方、破砕液と混合したカチオン性高分子の重量平均分子量が5500超である比較例1では、ろ液濁度が高かった。また、破砕液を凝集剤と混合しなかった比較例2では、酵素回収率が低かった。

Claims (11)

  1. ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と、
    (a)重量平均分子量4600以下のカチオン性高分子、及び
    (b)ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム及びポリ硫酸第二鉄からなる群から選択される1種以上である無機凝集剤
    のうち少なくとも一方とを混合する工程を有する、ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法。
  2. 前記カチオン性高分子の重量平均分子量が3000未満である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記カチオン性高分子がポリエチレンイミンである、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記ニトリルヒドラターゼ生産微生物が、シュードノカルディア・サーモフィラ、又はニトリルヒドラターゼ生産能を有する組換え大腸菌である、請求項1~請求項のうちいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記混合する工程後に、前記混合する工程により得られた混合液中に生じた凝集物の少なくとも一部を混合液から分離する工程を含む、請求項1~請求項のうちいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記凝集物の少なくとも一部の分離がろ過により行われる、請求項に記載の製造方法。
  7. 前記ろ過においてろ過助剤として珪藻土が用いられる、請求項に記載の製造方法。
  8. 前記菌体処理物がアミド化合物の製造に用いられる、請求項1~請求項のうちいずれか一項に記載の製造方法。
  9. 前記アミド化合物が(メタ)アクリルアミドである、請求項に記載の製造方法。
  10. 請求項1~請求項のうちいずれか一項に記載の製造方法によってニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物を製造すること、及び
    前記菌体処理物とニトリル化合物とを混合すること、
    を含む、アミド化合物の製造方法。
  11. 前記ニトリル化合物が(メタ)アクリロニトリルであり、前記アミド化合物が(メタ)アクリルアミドである、請求項10に記載の製造方法。
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