JP7020614B2 - ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法及びアミド化合物の製造方法 - Google Patents
ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法及びアミド化合物の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP7020614B2 JP7020614B2 JP2018069593A JP2018069593A JP7020614B2 JP 7020614 B2 JP7020614 B2 JP 7020614B2 JP 2018069593 A JP2018069593 A JP 2018069593A JP 2018069593 A JP2018069593 A JP 2018069593A JP 7020614 B2 JP7020614 B2 JP 7020614B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- nitrile hydratase
- producing
- solution
- cell
- flocculant
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Landscapes
- Enzymes And Modification Thereof (AREA)
- Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
Description
<1> ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と、
(a)重量平均分子量5500以下のカチオン性高分子、及び
(b)無機凝集剤
のうち少なくとも一方とを混合する工程を有する、ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法。
<2> 前記カチオン性高分子の重量平均分子量が3000未満である、<1>に記載の製造方法。
<3> 前記カチオン性高分子がポリエチレンイミンである、<1>又は<2>に記載の製造方法。
<4> 前記無機凝集剤が、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム及びポリ硫酸第二鉄からなる群から選択される1種以上である、<1>~<3>のうちいずれか1つに記載の製造方法。
<5> 前記ニトリルヒドラターゼ生産微生物が、シュードノカルディア・サーモフィラ、又はニトリルヒドラターゼ生産能を有する組換え大腸菌である、<1>~<4>のうちいずれか1つに記載の製造方法。
<6> 前記混合する工程後に、前記混合する工程により得られた混合液中に生じた凝集物の少なくとも一部を混合液から分離する工程を含む、<1>~<5>のうちいずれか1つに記載の製造方法。
<7> 前記凝集物の少なくとも一部の分離がろ過により行われる、<6>に記載の製造方法。
<8> 前記ろ過においてろ過助剤として珪藻土が用いられる、<7>に記載の製造方法。
<9> 前記菌体処理物がアミド化合物の製造に用いられる、<1>~<8>のうちいずれか1つに記載の製造方法。
<10> 前記アミド化合物が(メタ)アクリルアミドである、<9>に記載の製造方法。
<11> <1>~<8>のうちいずれか1つに記載の製造方法によってニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物を製造すること、及び
前記菌体処理物とニトリル化合物とを混合すること、
を含む、アミド化合物の製造方法。
<12> 前記ニトリル化合物が(メタ)アクリロニトリルであり、前記アミド化合物が(メタ)アクリルアミドである、<11>に記載の製造方法。
ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と、
(a)重量平均分子量5500以下のカチオン性高分子、及び
(b)無機凝集剤
のうち少なくとも一方とを混合する工程を有する、
ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法(以下、「本開示に係る菌体処理物の製造方法」とも称する)を提供する。
本開示におけるニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物においては、アミド化合物の製造プロセスなどに使用する観点から、ニトリルヒドラターゼ以外のタンパク質及び核酸などの夾雑物の含有量は低いことが好ましい。夾雑物が存在すると、アミド化合物(例えば(メタ)アクリルアミド)を製造した場合にアミド化合物を含む水溶液が発泡しやすくなる傾向がある。アミド化合物を含む水溶液の発泡性が大きいと、窒素などのガスを水溶液に吹き込む処理を行う場合に発泡が著しくなり、場合によっては、反応装置内から水溶液があふれ出し、その後の操作が困難となってしまう。このようなガスの吹き込みは、反応に悪影響を与える物質を除去することなどを目的に行われる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示において、記載される各要素は、その数について特に明記されない限りは、一つ存在しても、複数存在しても構わない。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示に係る菌体処理物の製造方法におけるニトリルヒドラターゼは、天然生物のニトリルヒドラターゼであってもよいし、天然生物のニトリルヒドラターゼに対してアミノ酸配列の改変を加えた改変ニトリルヒドラターゼであってもよい。天然生物のニトリルヒドラターゼとしては、例えば、微生物のニトリルヒドラターゼが挙げられる。より具体的には、ノカルディア(Nocardia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、バチルス(Bacillus)属、好熱性のバチルス属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、ロドクロウス(rhodochrous)種に代表されるロドコッカス(Rhodococcus)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、キサントバクター(Xanthobacter)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、リゾビウム(Rhizobium)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、エルウィニア(Erwinia)属、エアロモナス(Aeromonas)属、シトロバクター(Citrobacter)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、サーモフィラ(thermophila)種に代表されるシュードノカルディア(Pseudonocardia)属、バイテリジューム(Bacteridium)属、又はブレビバクテリウム(Brevibacterium)属に属する微生物のニトリルヒドラターゼが挙げられる。
本開示におけるニトリルヒドラターゼ生産微生物は、ニトリルヒドラターゼを生産する能力を有する微生物である。ニトリルヒドラターゼ生産微生物は、天然の微生物であってもよく、その例としては、ノカルディア(Nocardia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、バチルス(Bacillus)属、好熱性のバチルス属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、ロドクロウス(rhodochrous)種に代表されるロドコッカス(Rhodococcus)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、キサントバクター(Xanthobacter)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、リゾビウム(Rhizobium)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、エルウィニア(Erwinia)属、エアロモナス(Aeromonas)属、シトロバクター(Citrobacter)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、サーモフィラ(thermophila)種に代表されるシュードノカルディア(Pseudonocardia)属、バイテリジューム(Bacteridium)属、又はブレビバクテリウム(Brevibacterium)属に属する微生物が挙げられる。
ニトリルヒドラターゼ生産組換え微生物が、シュードノカルディア・サーモフィラ、又はニトリルヒドラターゼ生産能を有する組換え大腸菌であることも、また好ましい。
ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液は、ニトリルヒドラターゼ生産微生物を破砕して作製した原破砕液そのものでもよいし、これに酸処理、アルカリ処理などの工程のうちの1つ又は複数を行って得られたものであってもよい。
本開示に係る菌体処理物の製造方法における重量平均分子量5500以下のカチオン性高分子(凝集剤(a))は、5500以下の重量平均分子量を有するカチオン性高分子であれば特に限定されない。凝集剤(a)の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。具体的には、本開示における重量平均分子量は、
測定装置:株式会社島津製作所製高速液体クロマトグラフ20Aシリーズ
使用カラム:昭和電工株式会社製 Shodex Asahipak GF-710HQ+GF-510HQ+GF-310HQ
溶離液:0.2モル%モノエタノールアミン水溶液(pH5.1)
標準物質キット:プルランP-82(和光純薬工業株式会社製)
検出器:示唆屈折率検出器RID-20A(株式会社島津製作所製)
を使用して得られた重量平均分子量を意味する。
破砕液に混合する凝集剤(a)の量としては、夾雑物の凝集を効率よく生じさせる観点から、凝集剤(a)及び存在する場合は凝集剤(b)との混合後における破砕液の全質量に対する凝集剤(a)の濃度が0.01質量%~2.0質量%となる量であることが好ましく、混合後の濃度が0.05質量%~1.0質量%となる量であることがより好ましく、0.1質量%~0.5質量%となる量であることがさらに好ましい。
本開示に係る菌体処理物の製造方法における無機凝集剤は、凝集剤として用いられている無機物質であれば特に限定されない。無機凝集剤は金属イオンを含む無機物質であることが好ましく、アルミニウム、鉄、マグネシウム、カルシウム、又はこれらの組み合わせから選択される金属の塩であることがより好ましい。無機凝集剤のより具体的な例としては、ポリアルミニウムクロリド(PAC)、硫酸アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、消石灰などが挙げられる。無機凝集剤は、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム及びポリ硫酸第二鉄からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを混合する工程は、破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とが十分に混合される工程であれば特に制限されない。ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを混合する際には、破砕液に凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方(好ましくは凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方の溶液)を添加してもよいし、凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方(好ましくは凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方の溶液)に破砕液を添加してもよいし、破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方(好ましくは凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方の溶液)との両方を徐々に容器に注いでもよい。例えば、5質量%~50質量%、好ましくは10質量%~40質量%の凝集剤(凝集剤(a)及び凝集剤(b)の総量)の溶液を破砕液に撹拌下で添加してもよい。ニトリルヒドラターゼの活性保持の観点から、混合は、0℃~40℃で行うことが好ましく、10℃~30℃で行うことがより好ましい。
本開示に係る菌体処理物の製造方法は、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを混合する工程に加えて、1つ又は複数の他の工程を含んでいてもよい。本開示に係る菌体処理物の製造方法が任意に含んでいてもよい工程の例を以下に記載するが、本開示に係る菌体処理物の製造方法が含んでいてもよい工程はこれらに限定されない。
本開示に係る菌体処理物の製造方法は、前記混合する工程後に、前記混合する工程により得られた混合液中に生じた凝集物の少なくとも一部を混合液から分離する工程(以下、分離処理工程とも称する)を含んでいてもよい。凝集物の少なくとも一部を混合液から分離して得られたニトリルヒドラターゼを含む溶液(以下、「ニトリルヒドラターゼ含有溶液」ともいう;ニトリルヒドラターゼ含有溶液は、溶液をさらに後述のとおり濃縮したものであってもよい)は、ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物であって、アミド化合物の製造などに使用することができる。
凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方の働きにより、破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方との混合により得られた混合液中には凝集物が生じる。凝集物は、主に、核酸、細胞膜といった細胞由来の成分が凝集した塊であり、種々のサイズを有する。凝集物の少なくとも一部を混合液から分離する工程は、凝集物の粒子のうち、設定値以上のサイズの粒子を混合液から分離することを含んでいてもよい。設定値は用いる分離操作の種類によって適宜設定できる。凝集物の粒子の中には微細なサイズのものもあり、凝集物粒子の全てを除去することは精密分離操作を行わない限り難しく、また、精密分離操作はプロセス効率を低下させる。このため、本工程では、上記のように設定値以上のサイズの凝集体粒子を混合液から分離することを含むことが好ましい。設定値以上のサイズの凝集体粒子を除去することで、ニトリルヒドラターゼを含む溶液中の夾雑物が減少し、該溶液又は該溶液から得られるニトリルヒドラターゼを例えばアミド化合物の製造に用いる場合などに反応阻害や発泡などが生じにくくなる。
フィルタは、メンブレンフィルタであってもよいが、大量処理のための大面積化及び耐久度の点からは金網フィルタや濾布の方が好ましい。
ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液(例えば原破砕液)は、凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方と混合される前に、好ましくは酸処理を受ける。つまり、本開示に係る菌体処理物の製造方法は、好ましくは、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液に、凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方を混合する工程の前に、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液を酸処理する工程を含んでいてもよい。前記酸処理は、破砕液を酸で処理する工程であって、この酸処理により、(メタ)アクリルアミドなどのアミド化合物を含む水溶液を発泡させる夾雑物のうち少なくとも一部を不溶物にすることができる。あらかじめ、このような不溶物を形成しておくことにより、本開示に係る菌体処理物の製造方法による夾雑物凝集効果はさらに向上する。
熱処理は、ニトリルヒドラターゼ生産微生物を破砕する前に行っても構わない。
本開示に係る菌体処理物の製造方法は、凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを混合される前のニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液に対してアルカリ処理を行う工程を含んでもよい。アルカリ処理により、夾雑物の不溶化が促進される。あらかじめ、このような不溶物を形成しておくことにより、本開示に係る菌体処理物の製造方法による夾雑物除去効果はさらに向上する。あるいは、本開示に係る菌体処理物の製造方法は、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを混合した後に、得られた混合液に対してアルカリ処理を行ってもよい。もちろん、本開示に係る菌体処理物の製造方法は、アルカリ処理を行わなくても、清澄な菌体処理物を得ることができる。そのため、アルカリ処理は本開示に係る菌体処理物の製造方法において必要なものではなく、所望により行ってもよいものである。 なお、ろ過などの分離処理工程を行う場合には、上記混合液に対するアルカリ処理は、分離処理工程より前に行ってもよい。
本開示に係る菌体処理物の製造方法は、破砕液のpHを4.0~8.0に調整する工程(以下、pH調整工程とも称する)を含んでいてもよい。この工程は、ろ過などの分離処理工程に供される時の破砕液のpHを調整することを目的とした工程である。このため、上記の酸処理及びアルカリ処理のうち一つ以上を行う場合には、それらの工程よりも後にpH調整工程を行うことが好ましい。特に、本開示に係るpH調整工程は、凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを混合した後に、得られた混合液に対してpHを4.0~8.0に調整する工程であることが好ましい。また、pH調整工程は、本開示に係る菌体処理物の製造方法がろ過を行うことを含む場合、ろ過の前に行われることが好ましい。得られる菌体処理物の清澄度をさらに向上させる観点からは、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と凝集剤(a)及び凝集剤(b)のうち少なくとも一方とを混合した後の得られた混合液は、pH4.0~6.8であることが好ましく、4.5~6.8であることがさらに好ましい。このため、pH調整工程は、好ましくは混合液のpHを4.0~6.8に調整する工程であり、より好ましくは4.5~6.8に調整する工程である。
上述した凝集物の少なくとも一部を混合液から分離する工程により得られた溶液(例えばろ過により得られたろ液)は、さらにニトリルヒドラターゼの濃度を高めるための濃縮工程に供してもよい。濃縮工程に供することで、ニトリルヒドラターゼの濃度が増大した菌体処理物を得ることができる。濃縮は、溶液中の液体成分を除去することにより行うことができる。濃縮は例えば、蒸発、又は逆浸透などの膜濃縮法により行うことができる。膜濃縮法を用いる場合、膜の公称分画分子量はニトリルヒドラターゼ生産微生物が生産するニトリルヒドラターゼの分子量よりも大きい分子量とすることができ、例えば公称分画分子量が4万~10万の範囲内の値である膜を用いることができる。このような膜としては、例えば、旭化成社製ペンシル型中空糸膜AHP-0013などを用いることができる。濃縮の際に付加する圧力は使用する膜に応じて選択すればよく、例えば、0.01MPa~0.5MPa、好ましくは0.05MPa~0.3MPaの範囲内とすることができる。
濃縮工程による溶液の濃縮度は、濃縮にかかる時間と求められるニトリルヒドラターゼ濃度に応じて設定すればよく、例えば2倍~30倍とすることができ、好ましくは5倍~20倍とすることができる。濃縮度は、濃縮後の溶液体積を濃縮前の溶液体積で除すことにより求めることができる。
上に説明した本開示に係る菌体処理物の製造方法により得られた菌体処理物であるニトリルヒドラターゼ含有溶液を用いることで、ニトリル化合物からアミド化合物を製造することができる。本開示に係るアミド化合物の製造方法は、例えば、ニトリル化合物と本開示に係る菌体処理物の製造方法により得られた菌体処理物とを混合することを含む。反応の詳細については原料となるニトリル化合物及び目的とするアミド化合物の種類に応じて適宜調整すればよい。例として、(メタ)アクリロニトリルから、(メタ)アクリルアミドを製造するプロセスを以下に記載する。他のアミド化合物も、対応するニトリル化合物から同様にして製造することができる。なお、ニトリルヒドラターゼ含有溶液は、凝集物の少なくとも一部を混合液から分離した後にさらに公知の精製処理などを経て調製した溶液であってもよい。
各実施例及び比較例におけるHPLC分析は、カラムとして日本分光株式会社製のFinepak SIL C18-5(250×4.6φmm)を用い、4体積%のアセトニトリルを含む10mMリン酸水溶液を展開液として使用した。また、アクリルアミドは220nmの吸光度により検出した。
特開2001-340091号の実施例1に記載された方法に従い、特開平09-275978で得られたpPT-DB1プラスミドDNAを鋳型とし、特開平09-275978の表3にクローンNo.3として示されるニトリルヒドラターゼ生産微生物を取得した。このクローンNo.3は、シュードノカルディア・サーモフィラJCM3095株由来のニトリルヒドラターゼ遺伝子を改変して発現するニトリルヒドラターゼのαサブユニットのN末端から6番目のLeuをAlaに置換した遺伝子(ヌクレオチド上のコドンの変化はCTGからGTGへの変化)を、大腸菌HB101のコンピテントセル(東洋紡績社製)に形質転換した形質転換体である。pPT-DB1プラスミドを保有する大腸菌は、MT-10822株(受託番号FERM BP-5785)として、前述のとおり特許生物寄託センターに寄託されている。
ポリペプトン 10.0g/L
NaCl 5.0g/L
塩化コバルト・六水和物 10.0mg/L
硫酸第二鉄・七水和物 40.0mg/L
pH7.5
(ホモゲナイザーによるニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕)
上記ニトリルヒドラターゼ生産微生物の培養物の調製で調製した培養液5Lに含まれるニトリルヒドラターゼ生産微生物の細胞を、三和エンジニアリング株式会社製ホモゲナイザーH50を用いて、温度15℃、破砕圧力50MPa、破砕時間100分の条件で破砕し、細胞内に含まれるニトリルヒドラターゼを溶液中に遊離させ、原破砕液を作製した。
上記原破砕液を10Lのガラスビーカーに移し、原破砕液を充分に撹拌しながら、ガラスビーカーを50℃の水浴恒温槽に浸漬した。原破砕液の液温が50℃になってからさらに15分間浸漬を続け、その後ビーカーを取り出し空冷した。
熱処理後の破砕液を充分に撹拌しながら、破砕液のpHが5.0になるまで2M酢酸水溶液をゆっくり添加し、さらに、破砕液を3時間撹拌した。
[凝集剤の添加]
ポリエチレンイミン(重量平均分子量4600)を水に溶解し、30質量%水溶液を作製した。この30質量%ポリエチレンイミン水溶液を、酸処理後の破砕液に、添加後の混合液中におけるポリエチレンイミンの濃度が0.2質量%となるように添加し、30分撹拌した。
30質量%ポリエチレンイミン水溶液の添加により得られた上記混合液を充分に撹拌しながら、混合液のpHが5.5になるまで2Nの酢酸をゆっくり添加した。
pH調整後の混合液にろ過助剤として珪藻土(昭和化学工業株式会社製ラヂオライト(登録商標)#1500H)を混合液の質量に対して10質量%添加し、20℃で撹拌した。撹拌後、360メッシュの金網を用いて、0.2MPaで加圧ろ過を行い、ろ液を得た。ろ過開始から10分間のろ過速度をろ過初速度(kg/m2/h)として算出した。
ろ過終了後、母液の0.5倍量の水でケーキを洗浄し、洗浄液を回収した(以下、「水洗ろ液」とも称する)。得られたろ液の清澄性を株式会社島津製作所製紫可視分光光度計UV1650PCを用いて波長660nmで吸光度を測定することで評価した。
ろ液、水洗ろ液及び母液(凝集剤を添加する直前の破砕液)のそれぞれについて、ニトリルヒドラターゼの活性値を測定した。具体的には、測定対象の各液体0.3gに20mlの50mMトリス塩酸水溶液(pH8.0)とアクリロニトリル0.5mLを添加し、20℃で反応させて反応初速度を求め、酵素活性算出法により測定対象の液体1gあたりのユニット数U(以下単に「活性値」とも称する)を算出した。
酵素回収率は以下の式で算出した。
酵素回収率[%]=100×(ろ液の活性値[U/g]×ろ液量[g]+水洗ろ液の活値[U/g]×水洗ろ液量[g])/母液の活性値[U/g]×母液量[g]
旭化成社製ペンシル型中空糸膜AHP-0013を用いて、平均圧力0.1MPa、循環速度1.5mm/secの条件で、ろ液を15倍濃縮し、菌体処理物を得た。
第1反応器としての撹拌器を備えた1Lガラス製フラスコ、及び第二反応器としての内径5mmのテフロン(登録商標)製チューブ20mを準備した。第一反応器には、予め400gの水を仕込んだ。
上記で得られたアクリルアミド水溶液300gを500mlメスシリンダーに入れた。このアクリルアミド水溶液中に木下式ガラスボールフィルター503Gを導入し、メスシリンダーの底から、前記ガラスボールフィルタを通して、900ml/minで空気を吹き込み5分間経過した時点の発泡の高さを測定した。
凝集剤としてのポリエチレンイミン(重量平均分子量4600)を同質量のポリエチレンイミン(重量平均分子量2300)に置き換えた以外は実施例1と同様にして凝集剤の添加を行い、混合液を作製した。
得られた混合液を用いて、混合液の中和以降の処理及び測定を、実施例1と同様にして行った。
ポリ塩化アルミニウム(PAC)を水に溶解し、10質量%水溶液を作製した。この10質量%PAC水溶液を、酸処理後の破砕液に、添加後の混合液中におけるPACの濃度が0.04質量%となるように添加し、30分撹拌して混合液を作製した。
得られた混合液を用いて、混合液の中和以降の処理及び測定を、実施例1と同様にして行った。
硫酸アルミニウムを水に溶解し、10質量%水溶液を作製した。この10質量%硫酸アルミニウム水溶液を、酸処理後の破砕液に添加し、得られた混合液Aを撹拌した。さらに、実施例1で作製した30%ポリエチレンイミン(分子量4600)水溶液をこの混合液に添加し、30分撹拌して混合液Bを作製した。硫酸アルミニウム水溶液及び30%ポリエチレンイミン水溶液の添加量は、添加後の混合液B中における硫酸アルミニウムの濃度が0.04質量%、ポリエチレンイミンの濃度が0.1%となるような量に設定した。
混紡液Bを用いて、混合液の中和以降の処理及び測定を、実施例1と同様にして行った。
ポリ硫酸第二鉄を水に溶解し、10質量%水溶液を作製した。この10質量%ポリ硫酸第二鉄水溶液を、酸処理後の破砕液に添加し、得られた混合液Cを撹拌した。さらに、実施例1で作製した30%ポリエチレンイミン(分子量4600)水溶液をこの混合液に添加し、30分撹拌して混合液Dを作製した。ポリ硫酸第二鉄水溶液及び30%ポリエチレンイミン水溶液の添加量は、添加後の混合液D中におけるポリ硫酸第二鉄の濃度が0.04質量%、ポリエチレンイミンの濃度が0.1%となるような量に設定した。
混紡液Dを用いて、混合液の中和以降の処理及び測定を、実施例1と同様にして行った。
凝集剤としてのポリエチレンイミン(重量平均分子量4600)を同質量のポリエチレンイミン(重量平均分子量16600)に置き換えた以外は実施例1と同様にして凝集剤の添加を行い、混合液を作製した。
得られた混合液を用いて、混合液の中和以降の処理及び測定を、実施例1と同様にして行おうとしたが、凝集物粒子の濃度が高すぎて、ろ液の濃縮ができなかった。このため、アクリルアミドの製造及びアクリルアミド水溶液の発泡試験は行わなかった。
凝集剤としてのポリエチレンイミン(重量平均分子量4600)を添加しない以外は、実施例1と同様の処理及び測定を行おうとしたが、ろ過の途中でフィルタの詰まりが発生したため、ろ過はそこで終わりにし、ケーキの水洗も行わなかった。
Claims (11)
- ニトリルヒドラターゼ生産微生物の破砕液と、
(a)重量平均分子量4600以下のカチオン性高分子、及び
(b)ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム及びポリ硫酸第二鉄からなる群から選択される1種以上である無機凝集剤
のうち少なくとも一方とを混合する工程を有する、ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法。 - 前記カチオン性高分子の重量平均分子量が3000未満である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記カチオン性高分子がポリエチレンイミンである、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
- 前記ニトリルヒドラターゼ生産微生物が、シュードノカルディア・サーモフィラ、又はニトリルヒドラターゼ生産能を有する組換え大腸菌である、請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記混合する工程後に、前記混合する工程により得られた混合液中に生じた凝集物の少なくとも一部を混合液から分離する工程を含む、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記凝集物の少なくとも一部の分離がろ過により行われる、請求項5に記載の製造方法。
- 前記ろ過においてろ過助剤として珪藻土が用いられる、請求項6に記載の製造方法。
- 前記菌体処理物がアミド化合物の製造に用いられる、請求項1~請求項7のうちいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記アミド化合物が(メタ)アクリルアミドである、請求項8に記載の製造方法。
- 請求項1~請求項7のうちいずれか一項に記載の製造方法によってニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物を製造すること、及び
前記菌体処理物とニトリル化合物とを混合すること、
を含む、アミド化合物の製造方法。 - 前記ニトリル化合物が(メタ)アクリロニトリルであり、前記アミド化合物が(メタ)アクリルアミドである、請求項10に記載の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018069593A JP7020614B2 (ja) | 2018-03-30 | 2018-03-30 | ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法及びアミド化合物の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018069593A JP7020614B2 (ja) | 2018-03-30 | 2018-03-30 | ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法及びアミド化合物の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2019176836A JP2019176836A (ja) | 2019-10-17 |
JP7020614B2 true JP7020614B2 (ja) | 2022-02-16 |
Family
ID=68276819
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018069593A Active JP7020614B2 (ja) | 2018-03-30 | 2018-03-30 | ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法及びアミド化合物の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP7020614B2 (ja) |
Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003088384A (ja) | 2001-09-19 | 2003-03-25 | Mitsui Chemicals Inc | 新規なニトリルヒドラターゼ |
JP2008253182A (ja) | 2007-04-04 | 2008-10-23 | Mitsubishi Rayon Co Ltd | 改良型ニトリルヒドラターゼ |
WO2013129179A1 (ja) | 2012-02-28 | 2013-09-06 | 三菱レイヨン株式会社 | 酵素の保存方法 |
JP2016202046A (ja) | 2015-04-20 | 2016-12-08 | 三菱レイヨン株式会社 | 酵素の製造方法 |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE2001902C3 (de) * | 1970-01-16 | 1978-10-12 | Boehringer Mannheim Gmbh, 6800 Mannheim | Verfahren zur Reinigung und Fraktionierung von gelösten aktiven Proteinen |
JPH06303971A (ja) * | 1993-04-16 | 1994-11-01 | Mitsubishi Kasei Corp | ニトリルヒドラターゼ活性を有する新規なタンパク質およびそれをコードする遺伝子ならびに該遺伝子を含有する形質転換体によるニトリル類からアミド類の製造方法 |
-
2018
- 2018-03-30 JP JP2018069593A patent/JP7020614B2/ja active Active
Patent Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003088384A (ja) | 2001-09-19 | 2003-03-25 | Mitsui Chemicals Inc | 新規なニトリルヒドラターゼ |
JP2008253182A (ja) | 2007-04-04 | 2008-10-23 | Mitsubishi Rayon Co Ltd | 改良型ニトリルヒドラターゼ |
WO2013129179A1 (ja) | 2012-02-28 | 2013-09-06 | 三菱レイヨン株式会社 | 酵素の保存方法 |
JP2016202046A (ja) | 2015-04-20 | 2016-12-08 | 三菱レイヨン株式会社 | 酵素の製造方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2019176836A (ja) | 2019-10-17 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Riske et al. | The use of chitosan as a flocculant in mammalian cell culture dramatically improves clarification throughput without adversely impacting monoclonal antibody recovery | |
Herath et al. | Removal of viruses by microfiltration membranes at different solution environments | |
WO2007132601A1 (ja) | (メタ)アクリルアミドの製造方法 | |
JP5659489B2 (ja) | アクリルアミド水溶液の安定化方法 | |
US9382560B2 (en) | Method for producing amide compound | |
JP7020615B2 (ja) | ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法及びアミド化合物の製造方法 | |
JP7020614B2 (ja) | ニトリルヒドラターゼを含む菌体処理物の製造方法及びアミド化合物の製造方法 | |
US7700330B2 (en) | Method of purifying amide compound | |
WO2011148867A1 (ja) | アミド化合物の製造方法 | |
JP5430659B2 (ja) | 菌体処理物の製造方法 | |
JP2019176835A (ja) | アミド化合物の製造方法 | |
WO2015045093A1 (ja) | 水処理方法 | |
US20100120127A1 (en) | Method for removing bacteria from a fermentation broth | |
JP5925355B2 (ja) | 不飽和結合を有するアミド化合物の安定化方法 | |
WO1998058072A1 (en) | Flocculation of biological material from organic acid-containing systems | |
JP2019089727A (ja) | アミド化合物の精製方法 | |
JP2012062268A (ja) | アミド化合物の精製方法 | |
JP2001149717A (ja) | 液体を濾過するための補助薬および微生物汚染除去のためのその使用 | |
JP2014015411A (ja) | タンパク質の製造方法 | |
WO2004090147A1 (ja) | アミド化合物水溶液の精製方法およびアミド化合物の製造方法 | |
JP4709186B2 (ja) | 微生物触媒を用いたアミド化合物の製造方法 | |
Koralkar | Treatment of Wastewater by Application of Magnetic Field | |
KR20240139382A (ko) | 여과 유속이 개선된 아미노산의 제조방법 | |
JPH04354585A (ja) | 発酵液の処理方法 | |
JP2009261320A (ja) | 菌体触媒を用いた目的化合物の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20201207 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20210922 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20210928 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20211126 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20220104 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20220119 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 7020614 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |