JP7020568B2 - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents
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Description
本願は、2018年12月10日に日本に出願された特願2018-231136号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
本実施形態に係る連続鋳造方法は、公知の垂直曲げ型の連続鋳造装置に好ましく用いることができる。鋳型10は鋳造対象である鋳片1の形状に応じた断面形状を有する。鋳型10の直下には垂直部20が設けられ、垂直部20の直下に曲げ部30が設けられる。
たまり水が発生しやすい鋳片1の幅方向の中央部に比べて鋳片1の端部近傍は冷却され易く、これによって生じる鋳片1の幅方向における温度差によって、鋳片1の端部近傍で表面割れが生じ易い傾向にある。ロール21aを分割ロールとすることで、複数のロール面の間の軸部からたまり水が排出されるようになり、鋳片1の幅方向における温度差が緩和され、鋳片の表面割れを抑制することができる。また、ロール21aの両端部のみならず、ロールの中間にある軸部においてロールを支えることで、ロール径が小さい場合でもロールの曲がりを抑制することができる。
冷却スプレーノズル21bからの冷却水の衝突圧を増加させるには、冷却水量を増加させるか、もしくは、冷却水量を担保した状態で空気量を増加させることが有効である。ここで、冷却水量を単に増加させた場合、ロール21aにおけるたまり水が発生し易い。たまり水を抑制しつつ冷却水の衝突圧を増加させるには、冷却水量に対する空気量の比(気水比)を増大させることが好ましい。この観点から、本実施形態の鋼の連続鋳造方法においては、第1の冷却ゾーン21において、冷却スプレーノズル21bの一本当たりの水量R1(L/min)に対する空気量A1(L/min)の比である気水比A1/R1を10以上とする。気水比の上限は特に限定されるものではないが、噴霧安定性の観点から100以下とすることが好ましい。より好ましくは50以下である。
冷却スプレーノズル21bの水量R1は後述する衝突圧や冷却強度を考慮して調整すればよい。特に、本実施形態の鋼の連続鋳造方法においては、第1の冷却ゾーン21において、冷却スプレーノズル21bの一本当たりの水量R1(L/min)を20L/min以上50L/min以下とすることが好ましい。これにより、たまり水の発生をより容易に抑制しつつ、スプレーの衝突圧をより容易に増大させることができる。
本発明者は、高温の鋳片(例えば950℃以上)に対しミストスプレーで冷却を行う際に、冷却能力(熱伝達係数)がスプレーの衝突圧とよい相関があることを見出した。これは、遷移沸騰領域においては沸騰膜の伝熱抵抗が鋳片表面の伝熱において支配的に働くため、衝突圧の増加に伴い沸騰膜が物理的に押しのけられることによって薄くなり、結果として熱伝達係数が増加するためである。加えて、一定の衝突圧以上となると鋳片表面に固着したモールドパウダーが剥離され、スプレー冷却による幅方向の温度ムラを低減できる。この観点から、本実施形態の鋼の連続鋳造方法においては、第1の冷却ゾーン21において、冷却スプレーノズル21bから鋳片1の表面に衝突する冷却水の衝突圧を12gf/cm2以上とする。好ましくは13gf/cm2以上、より好ましくは15gf/cm2以上、さらに好ましくは17gf/cm2以上である。一方で、衝突圧が大きすぎると、鋳片1の凝固シェルが部分的に凹み、ロール21aと鋳片1との間から上方に冷却水が吹き上がり、ブレークアウトの虞がある。この観点から、本実施形態の鋼の連続鋳造方法においては、冷却スプレーノズル21bから鋳片1の表面に衝突する冷却水の衝突圧を50gf/cm2以下とすることが好ましい。より好ましくは40gf/cm2以下、さらに好ましくは30gf/cm2以下である。
本発明者の新たな知見によると、第1の冷却ゾーン21における冷却強度(W1×t1)を増大させることで、鋳片表層に微細組織を生成させ、割れの発生を抑制できる。第1の冷却ゾーン21において冷却強度を増大させることで、鋳片表面をAr3点以下の温度にまで適切かつ速やかに冷却することができ、鋳片表面の微細組織の制御がより容易となるためと考えられる。この観点から、本実施形態の鋼の連続鋳造方法においては、第1の冷却ゾーン21における冷却水密度W1(L/min/m2)と、鋳片1が第1の冷却ゾーン21を通過する時間t1(min)との積として定義される冷却強度W1×t1を350以上とする。冷却強度の上限は特に限定されるものではないが、例えば1500以下とすることが好ましい。より好ましくは1200以下である。
本実施形態の鋼の連続鋳造方法においては、第1の冷却ゾーン21を通過後に鋳片1の表面を復熱させ、鋳片1が曲げ部30に到達する時点で鋳片1の表面の温度をAc3点以上の温度とすることが好ましい。これをより容易に実現すべく、本実施形態の鋼の連続鋳造方法においては、第1の冷却ゾーン21通過後から曲げ部30に到達するまでの鋳片1の復熱時間t2を0.5min以上とする。復熱時間t2を0.5min以上とすることで、第1の冷却ゾーン21においてAr3点以下の温度にまで冷却された鋳片表面が、鋳片内部の顕熱によってAc3点以上の温度にまで復熱され、鋳片表層が安定してγ粒界が不明瞭な微細組織となる。復熱時間t2の上限は特に限定されるものではないが、好ましくは2.0min以下であり、より好ましくは1.75min以下である。
本実施形態の鋼の連続鋳造方法においては、垂直曲げ型の連続鋳造装置100が、第1の冷却ゾーン21から曲げ部30までの間に第2の冷却ゾーン22を備える。ここで、本実施形態の鋼の連続鋳造方法においては、第1の冷却ゾーン21において鋳片表面をAr3点以下の温度まで冷却し、その後二次冷却を調整して、Ac3点以上の温度にまで復熱させるとよい。この場合、鋳片内部に十分な顕熱を持った状態で第1の冷却ゾーン21を通過し、機械的な歪のかかる曲げ部30までにAc3点までの復熱を完了する必要がある。よって、第2の冷却ゾーン22においては、第1の冷却ゾーン21と比較して、冷却水密度を低下させる必要がある。具体的には、第2の冷却ゾーン22において、冷却水密度W2(L/min/m2)を0L/min/m2以上50L/min/m2以下とすることで鋳片1の表面を復熱させることが好ましい。
垂直曲げ型連続鋳造装置を使用して幅2200mm、厚み300mmの鋳片を製造した。鋼種は表1に示す組成(質量%)を有する割れ感受性の高い低合金鋼とした。
なお、鋼種A、BのAc3点温度は、それぞれ898℃、872℃である。
鋳片の表面割れ発生状況に関し、それぞれの鋳造条件の定常部において鋳造方向に100mm長さの全幅サンプルを鋳造方向に2箇所切り出し、鋳片表面を酸洗浄し、観察された5mm以上の長さの表面割れの個数の合計を「割れ個数」として評価した。また、同サンプルの表層から30mm、幅50mmの顕微鏡観察用のサンプルを幅方向に5つ切り出し、鋳造組織の観察も行った。なお、定常部とは、目標の鋳造速度で引き抜かれた鋳片の部位を意味する。
(1)垂直部の上部側に設けられた第1の冷却ゾーンにおいて、冷却スプレーノズルの一本当たりの水量R1(L/min)に対する空気量A1(L/min)の比である気水比A1/R1を10以上とする。
(2)第1の冷却ゾーンにおいて、冷却スプレーノズルから前記鋳片の表面に衝突する冷却水の衝突圧を12gf/cm2以上とする。
(3)第1の冷却ゾーンにおける冷却水密度W1(L/min/m2)と、鋳片が第1の冷却ゾーンを通過する時間t1(min)との積として定義される冷却強度W1×t1を350以上とする。
(4)第1の冷却ゾーン通過後から曲げ部に到達するまでの鋳片の復熱時間t2を0.5min以上とする。
10 鋳型
20 垂直部
21 第1の冷却ゾーン
21a ロール
21b 冷却スプレーノズル
22 第2の冷却ゾーン
22a ロール
30 曲げ部
100 連続鋳造装置
Claims (5)
- 鋳型から鋳片を鉛直方向下方に引き抜く垂直部と、前記垂直部から引き抜かれた前記鋳片を曲げる曲げ部とを備え、前記垂直部の上部側が、ロールと冷却スプレーノズルとを含み、前記ロール間の各段あたりに設置された、冷却水量を独立して制御できる前記スプレーノズルの冷却段数で決まる第1の冷却ゾーンと、
前記第1の冷却ゾーンから前記曲げ部までの間に位置する第2の冷却ゾーンを備える垂直曲げ型の連続鋳造装置を用いて鋼を連続的に鋳造する方法であって、
前記第1の冷却ゾーンにおいて、前記冷却スプレーノズルの一本当たりの水量R1(L/min)に対する空気量A1(L/min)の比である気水比A1/R1を10以上とするとともに、前記冷却スプレーノズルから前記鋳片の表面に衝突する冷却水の衝突圧を12gf/cm2以上とし、
前記第1の冷却ゾーンにおける冷却水密度W1(L/min/m2)を500L/min/m2以上2000L/min/m2以下とし、
前記鋳片が前記第1の冷却ゾーンを通過する時間t1(min)との積として定義される冷却強度W1×t1を350以上とし、
前記第1の冷却ゾーン通過後から前記曲げ部に到達するまでの前記第2の冷却ゾーンにおける冷却水密度W2(L/min/m2)を前記第1の冷却ゾーンと比較して低下させることで、前記鋳片の前記第2の冷却ゾーンを通過する復熱時間t2を0.5min以上とすることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。 - 前記第1の冷却ゾーンにおいて、前記冷却スプレーノズルの一本当たりの水量R1(L/min)を20L/min以上50L/min以下とすることを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造方法。
- 前記垂直曲げ型の連続鋳造装置が、前記第1の冷却ゾーンから前記曲げ部までの間に第2の冷却ゾーンを備え、前記第2の冷却ゾーンにおいて、冷却水密度W2(L/min/m2)を0L/min/m2以上50L/min/m2以下とすることで前記鋳片の表面を復熱させることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼の連続鋳造方法。
- 前記第1の冷却ゾーンを通過後に前記鋳片の表面を復熱させ、前記鋳片が前記曲げ部に到達する時点で前記鋳片の表面の温度をAc3点以上の温度とすることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造方法。
- 前記ロールが分割ロールであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造方法。
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