JP2002086252A - 連続鋳造方法 - Google Patents

連続鋳造方法

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JP2002086252A JP2000276924A JP2000276924A JP2002086252A JP 2002086252 A JP2002086252 A JP 2002086252A JP 2000276924 A JP2000276924 A JP 2000276924A JP 2000276924 A JP2000276924 A JP 2000276924A JP 2002086252 A JP2002086252 A JP 2002086252A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】良好な表層部品質の鋳片を得ることができる連
続鋳造方法の提供。 【解決手段】鋳型出口から1.5mまでの間において、
下記(A)式で定義される二次冷却の比水量Qが0.4
〜1.5リットル/kg・鋼となる条件で鋳片を冷却
し、鋳片の表面温度をいったんAr3 変態点以下に冷却
した後に、Ar 3 変態点以上に復熱させ、その後に鋳片
を矯正する方法。Q=W/(H×D×Vc×ρ)・・・
(A)、 ここで、W:二次冷却の冷却水量(リットル
/分)、H:鋳片の幅(m)、D:鋳片の厚さ(m)、
Vc:鋳造速度(m/分)、ρ:溶鋼の密度(kg/m
3

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、良好な表面品質の
鋳片を得るための連続鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】厚鋼板などの機械的性質の向上を目的と
して、Nb、V、Ni、Cuなどの合金元素を含有させ
た低合金鋼が多く用いられている。このような低合金鋼
を湾曲型または垂直曲げ型の連続鋳造機を用いて鋳造す
る場合に、鋳片表面に横割れまたは横ひび割れと呼ばれ
る割れが発生しやすい。鋳片の矯正時に鋳片表面に働く
応力が低合金鋼に固有の限界応力を超え、このような割
れが発生するのである。これら鋳片の割れは、その鋳片
を熱間で圧延した厚鋼板の表面疵の原因となりやすい。
【0003】これら低合金鋼の鋳片の熱間延性は、鋳片
の凝固組織がオーステナイト相(以下、γ相と記す場合
がある)からフェライト相(以下、α相と記す場合があ
る)に変態するAr3 変態点の温度近傍、すなわち60
0〜850℃の温度領域で著しく低下する。また、これ
ら低合金鋼の鋳片では、鋳型から引き抜かれた後の二次
冷却過程で、AlNやNbCなどがγ粒界に析出し、応
力が作用するとγ粒界が割れやすい。したがって、60
0〜850℃の温度領域でこれら低合金鋼の鋳片を矯正
すると、熱間延性の低下およびγ粒界の脆化のために、
鋳片表面に割れが発生しやすい。
【0004】そこで、鋳片矯正時の鋳片の表面温度を6
00〜850℃の熱間延性の低下する温度領域(以下、
脆化温度域と記す)の低温側または高温側に回避して、
鋳片表面の横ひび割れなどの発生を防止する方法が採ら
れている。しかし、鋳片の二次冷却条件、鋳造速度など
の条件が鋳造中に変更するので、鋳片の表面温度は鋳造
中に変化しやすい。そのため、脆化温度域で鋳片が矯正
される場合もあり、安定して横ひび割れなどの発生を防
止できていないのが現状である。
【0005】特開平9−253814号公報には、鋳型
出口の下方で鋳片を強冷却し、鋳片の表面温度をいった
んAr3 変態点以下にし、その後、脆化温度域よりも高
温側に復熱させて鋳片を矯正することにより、鋳片の横
ひび割れなどの発生を防止する方法が提案されている。
この方法は、鋳片の表面温度をいったんAr3 変態点以
下にした後、Ar3 変態点以上に復熱させることによ
り、鋳片の凝固組織を、γ粒界が不明瞭であるフェライ
トとパーライトの混合組織とする方法である。しかし、
この方法では、鋳片の二次冷却条件によっては、鋳片表
面または鋳片表面直下の内部に横ひび割れなどが発生す
る場合がある。鋳片表面はもとより、鋳片表面直下の浅
い内部の横ひび割れなどは、その鋳片を熱間で圧延した
厚鋼板の表面疵の原因となりやすい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、表面および
表面直下の浅い内部に横割れ、横ひび割れなどの割れの
ない良好な品質を有する鋳片を安定して得ることができ
る連続鋳造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、鋳型出
口から鋳造方向に1.5mまでの間において、下記
(A)式で定義される二次冷却の比水量Q(リットル/
kg・鋼)が0.4リットル/kg・鋼〜1.5リット
ル/kg・鋼となる条件で鋳片を冷却し、鋳片の表面温
度をいったんAr3 変態点以下に冷却した後に、Ar3
変態点以上に復熱させ、その後に鋳片を矯正する連続鋳
造方法にある。
【0008】 Q=W/(H×D×Vc×ρ) ・・・(A) ここで、W:二次冷却の冷却水量(リットル/分) H:鋳片の幅(m) D:鋳片の厚さ(m) Vc:鋳造速度(m/分) ρ:溶鋼の密度(kg/m3 ) 上記(A)式における溶鋼の密度ρの値として7000
(kg/m3 )を用いることができる。本発明者らは、
下記の知見に基づいて、下記を採ることにより、前
述の課題を解決した。
【0009】鋳片表面から厚さ方向に少なくとも深さ
2mmまでを安定して、オーステナイト粒界(以下、γ
粒界と記す)が不明瞭なフェライトおよびパーライトの
混合した凝固組織とすることにより、低合金鋼の脆化温
度域である600〜850℃の温度領域を回避できずに
鋳片を矯正しても、表面および表面直下の浅い内部に横
割れ、横ひび割れなどの割れ(以下、単に割れと記す)
の発生を確実に防止できる。その理由は、鋳片表面から
厚さ方向に深さ2mmまでのγ粒界が不明瞭な鋳片表層
部では、割れに対する限界応力が安定して大きくなるた
めである。
【0010】ここでいうγ粒界を不明瞭化させたフェラ
イトおよびパーライトの混合組織からなる鋳片の凝固組
織とは、高温側からAr3 変態点より低温側に鋳片が冷
却される際に、フェライトがγ粒界に粒状に生成した状
態の凝固組織のことを意味する。γ粒界に粒状にフェラ
イトが生成するために、γ粒界が不明瞭になる。
【0011】これらの凝固組織は、鋳片の横断面サンプ
ルから、鋳片表面を含むように光学顕微鏡観察用サンプ
ルを切り出して研磨し、たとえば、5%ナイタール腐食
を行った後に10〜50倍程度の倍率で光学顕微鏡観察
することにより確認できる。
【0012】また、たとえ鋳片表面からの深さが2mm
を超える鋳片内部のγ粒界が明瞭な領域に、このような
割れが発生しても、その鋳片を熱間で圧延した厚鋼板に
は、表面疵は発生しにくい。割れが存在する領域が鋳片
の深い内部であるので、圧延中にこれらの割れが圧着す
るからである。
【0013】図2は、γ粒界が不明瞭な凝固組織の存在
する鋳片表面からの深さ、および矯正点での鋳片の表面
温度が鋳片の割れに及ぼす影響を示した図である。湾曲
型連続鋳造機を用い、C:0.05〜0.07質量%、
Ni:0.6〜0.7質量%を含有する低合金鋼を、厚
さ230mm、幅2300mmの鋳片に速度0.5〜
1.0m/分、および鋳片の二次冷却の比水量0.2〜
1.5リットル/kg・鋼の範囲の条件で鋳造した試験
結果を示す図である。
【0014】図2から、矯正点での鋳片の表面温度が、
この鋼の脆化温度域の720〜850℃の範囲内の温度
であっても、γ粒界が不明瞭な凝固組織の存在する鋳片
表面からの深さが2mm以上あれば、鋳片表層部に割れ
が発生しないことがわかる。γ粒界が不明瞭な凝固組織
の存在する鋳片表面からの深さが2mm未満の場合に
は、矯正点での鋳片の表面温度を、これらの鋼の脆化温
度域外の温度としても、図中に△印で示すように、鋳片
表層部に割れが発生する場合がある。この△印で示す鋳
片表層部の割れは、γ粒界が不明瞭な凝固組織の存在す
る鋳片表面からの深さよりも深い鋳片内部の領域に発生
した割れが、矯正応力により鋳片表面まで露出した割れ
である。なお、×印の割れは、鋳片表面を含む鋳片表層
部に著しい割れが発生している場合を意味する。
【0015】上記のようなγ粒界が不明瞭な鋳片を得
るために、鋳型出口から鋳造方向に1.5mまでの間に
おいて、前述の(A)式で定義される二次冷却の比水量
Qの値が0.4〜1.5リットル/kg・鋼となる条件
で鋳片を冷却し、鋳片の表面温度をいったんAr3 変態
点以下に冷却した後に、Ar3 変態点以上に復熱させ、
その後に鋳片を矯正する。
【0016】このような二次冷却条件で鋳片を冷却する
ことにより、γ粒界に粒状にフェライトが生成するた
め、鋳片表面から厚さ方向に少なくとも深さ2mmま
で、γ粒界が不明瞭になる。その際、とくに鋳型出口か
ら鋳造方向に1.5mまでの間において、鋳片の表面温
度をAr3 変態点以下とするので、γ粒が成長しにく
く、小さいγ粒が得られやすい。γ粒が小さいと、鋳片
表層部に割れが発生しにくくなる。
【0017】鋳型出口直後の前述の(A)式で定義され
る鋳片の二次冷却の比水量Qの値が1.5リットル/k
g・鋼を超えて、二次冷却の条件が強すぎると、鋳片が
過冷却され、鋳片表面に厚い酸化皮膜が発生しやすい。
厚い酸化皮膜が形成される際に、鋳片表面の位置により
その酸化被膜の厚さは不均一になりやすい。また、酸化
被膜の厚い部分の鋳片表面は、冷却されにくくなる。し
たがって、鋳片の表面温度が不均一になりやすい。不均
一な表面温度分布の鋳片を矯正すると、鋳片表面に割れ
が発生しやすい。また、鋳片サイズなどによっては、い
ったんAr3 変態点以下の温度に低下した鋳片の表面温
度が、Ar3 変態点以上に復熱しない場合がある。その
際、鋳片表層部の凝固組織は、ベイナイト組織となり、
明瞭なγ粒界となり、鋳片表面に割れが発生しやすい。
【0018】また、鋳型出口直後の前述の(A)式で定
義される鋳片の二次冷却の比水量Qの値が0.4リット
ル/kg・鋼未満で、二次冷却の条件が弱すぎると、鋳
片の表面温度をいったんAr3 変態点以下にできない。
その際に、鋳片の凝固組織はフェライトおよびパーライ
トの混合組織で、かつ、γ粒界にフェライトがフィルム
状に生成する凝固組織となる。フェライトがγ粒界にフ
ィルム状に生成すると、γ粒界が明瞭な凝固組織とな
る。また、鋳片の表面温度が鋳型出口直下でAr 3 変態
点以下にならないために、γ粒が成長しやすく、大きな
γ粒が得られやすい。
【0019】このように、鋳型出口直後の鋳片の二次冷
却が強すぎても、また弱すぎても、鋳片表層部に割れが
発生しやすくなる。
【0020】また、二次冷却の比水量Qを、前述の
(A)式で定義される内容で調整するので、鋳造中に鋳
造速度が変化したり、また鋳造中に鋳片幅の大きさを変
更しても、鋳片表面から少なくとも深さ2mmまでの鋳
片表層部の凝固組織を、安定してγ粒界が不明瞭なフェ
ライトおよびパーライトの混合組織とすることができ
る。
【0021】なお、鋳片の表面温度とは、たとえば、放
射温度計により測定することのできる表面温度であり、
鋳片の表面から表皮直下までの温度を意味する。また、
この鋳片の表面温度は、凝固伝熱解析による計算によっ
ても求めることができる。すなわち、鋼の種類、鋳片の
サイズ、鋳造速度、鋳片の二次冷却条件などの条件が決
まれば、溶鋼メニスカスからの距離に応じた鋳片の表面
温度を計算で求めることができる。その際、表面熱伝達
係数を適切に選択することにより、この計算で求めた鋳
片の表面温度は実測の表面温度とよく一致させることが
できる。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明は、Nb、V、Ni、Cu
などの合金元素を含有した低合金鋼を対象とするのに好
適である。また、本発明は、ブルームおよびスラブの形
状の鋳片を対象とする。これら低合金鋼の鋳片では、鋳
片表層部に割れが発生しやすいからである。
【0023】図1は、本発明の連続鋳造方法を実施する
場合の連続鋳造装置の例を示す模式図である。鋳型1か
ら引き抜かれた直後の凝固殻2は、スプレーノズル4な
どにより水などを噴霧されて冷却されつつ、ガイドロー
ル対3により支持されながら、ピンチロール6により引
き抜かれる。凝固殻2の厚さの増加した鋳片5は、矯正
点の位置にあるピンチロール7で矯正される。
【0024】本発明の方法では、鋳型出口から鋳造方向
に1.5mまでの間において、前述の(A)式で定義さ
れる二次冷却の比水量Qの値が0.4〜1.5リットル
/kg・鋼となる条件で鋳片を冷却する。その際、鋳片
の表面温度をいったんAr3変態点以下に冷却した後
に、Ar3 変態点以上に復熱させた後に、鋳片を矯正す
る。
【0025】鋳型出口から鋳造方向に1.5mまでの間
で、二次冷却の比水量Qを0.4〜1.5リットル/k
g・鋼の条件で鋳片を冷却することにより、鋳片表面か
ら厚さ方向に少なくとも深さ2mmまでを安定して、γ
粒界が不明瞭なフェライトおよびパーライトの混合した
凝固組織とすることができる。さらに、γ粒が大きく成
長する前に、鋳片を二次冷却するので、小さいγ粒が得
られやすい。
【0026】比水量Qが0.4リットル/kg・鋼未満
では、鋳片の二次冷却が不十分となり、鋳片表面から厚
さ方向に2mm以上の範囲をAr3 変態点以下まで冷却
することが困難となる。その際、γ粒界にフェライトが
フィルム状に生成している凝固組織となるので、γ粒界
が明瞭な凝固組織となり、また、γ粒が大きくなりやす
い。
【0027】また、比水量Qが1.5リットル/kg・
鋼を超える場合には、鋳片が過冷却されるため、鋳片表
面に厚い酸化皮膜が発生しやすい。酸化皮膜が厚くなる
と、鋳片表面の位置によりその厚さは不均一になりやす
く、また、酸化被膜の厚い部分の鋳片表面は、冷却され
にくくなる。したがって、鋳片の表面温度が不均一にな
りやすい。不均一な表面温度分布の鋳片を矯正すると、
鋳片表面に割れが発生しやすい。また、鋳片サイズなど
によっては、いったんAr3 変態点以下の温度に低下し
た鋳片の表面温度が、Ar3 変態点以上に復熱しない場
合がある。その際、鋳片表層部の凝固組織は、ベイナイ
ト組織となり、明瞭なγ粒界となり、鋳片表面に割れが
発生しやすい。
【0028】鋳型出口から鋳造方向に1.5mまでの間
で、前述の二次冷却の比水量Qの条件で鋳片を冷却し、
鋳片の表面温度をいったんAr3 変態点以下に冷却した
後に、Ar3 変態点以上に復熱させるが、その後、鋳片
を矯正する前までに、再度、鋳片の表面温度をいったん
Ar3 変態点以下に冷却した後に、Ar3 変態点以上に
復熱させる前述と同様の二次冷却の比水量Qの条件で鋳
片の二次冷却を、さらに1回以上繰り返してもよい。γ
粒界が不明瞭な凝固組織の存在する鋳片表面からの深さ
が、安定して鋳片表面から3.5mmまでとなりやすい
ので、より安定して鋳片表面の割れの発生を防止でき
る。
【0029】
【実施例】図1に示す装置構成で、垂直部の長さが3.
0mである垂直曲げ型連続鋳造機を用いて、鋳片形状、
鋳造速度および鋳片の二次冷却の比水量の条件を変化さ
せて鋳造した。
【0030】鋳片形状は、厚さ300mm、幅650m
mのブルームと、厚さ270mm、幅1550mm、お
よび厚さ230mm、幅2300mmのスラブの3種類
の形状とした。鋳造速度は、ブルーム鋳片では0.5m
/分または0.7m/分、厚さ270mmのスラブ鋳片
では1.85m/分または2.3m/分、厚さ230m
mのスラブ鋳片では0.85m/分とした。
【0031】鋳片の二次冷却の条件は、つぎのとおりと
した。すなわち、鋳型出口から鋳造方向に1.0mまで
の間で鋳片を二次冷却した。この二次冷却する鋳造方向
の領域の条件は、本発明の方法で規定する条件の範囲内
である。二次冷却の比水量は0.16〜2.64リット
ル/kg・鋼の範囲内で変化させて試験した。この二次
冷却の領域より下流側の位置にある鋳片については、鋳
片の二次冷却を行わなかった。
【0032】鋳造したNb、Cu、Niを含む低合金鋼
の化学組成を表1に示す。この鋼のAr3 変態点は89
2℃であり、また、脆化温度域は720〜850℃であ
る。
【0033】
【表1】 各試験では、連続して3ヒートの鋳造を行った。その
際、鋳造中に放射温度計により、二次冷却直後の位置お
よび矯正位置での鋳片の表面温度を測定した。また、一
部の試験では、二次冷却直後の鋳片表面に熱電対を噛み
込ませる方法で鋳片の表面温度を測定した。さらに、鋳
片サイズ、鋳造速度、鋳片の二次冷却条件などに対応し
た鋳片の表面温度を凝固伝熱解析による計算で求めた。
これら放射温度計、熱電対、凝固伝熱解析による計算で
それぞれ求めた鋳片の表面温度は、精度良く一致してい
るのが確認できた。
【0034】各試験では、各ヒートから鋳造方向の長さ
1mの鋳片サンプルを採取し、鋳片表面割れを観察しや
すいように鋳片サンプルの表面をスカーフィングして鋳
片表層部の酸化物を取り除いた後、ダイチェック(染色
浸透探傷試験)を行って鋳片表面割れの発生の状況を目
視で観察して評価した。評価Aは、発生なし、評価B
は、その鋳片を熱間で圧延する前には、鋳片表面の手入
れが必要な程度の割れが発生しているもの、評価Cは、
著しい割れが発生しているものとした。
【0035】また、鋳片横断面サンプルの幅中央部か
ら、鋳片表面(鋳造中に上側の面に相当)の長さ20m
mを含み、厚さ方向に20mmの正方形断面の光学顕微
鏡観察用サンプルを切り出した。その正方形断面を研磨
した後、5%ナイタール腐食を行い、光学顕微鏡により
凝固組織、γ粒界におけるフィルム状のフェライトの生
成の有無を観察した。表2に試験条件と試験結果を示
す。
【0036】
【表2】 試験No.1〜No.3では、それぞれスラブまたはブ
ルームの鋳片を用い、鋳型出口から鋳造方向に1.0m
までの間で鋳片を二次冷却しつつ鋳造した。その際、二
次冷却の比水量Qは、0.41〜1.26リットル/k
g・鋼の範囲内とした。これら鋳片の二次冷却の条件
は、本発明の方法で規定する条件の範囲内である。二次
冷却直後の鋳片の表面温度は、それぞれAr3 変態点以
下の802〜842℃であった。その後、Ar3 変態点
以上に復熱させた後、この鋼の脆化温度域である750
〜830℃の範囲内の鋳片表面温度で鋳片を矯正した。
【0037】これら試験No.1〜No.3では、得ら
れた鋳片表層部の凝固組織はフェライトおよびパーライ
トの混合組織であり、また、γ粒界には粒状にフェライ
トが生成しており、γ粒界が不明瞭になっていた。ま
た、それらγ粒界が不明瞭な厚さは、鋳片表面から2.
1〜3.6mmまでの領域であった。この鋳片表面から
の深さは、本発明で規定する不明瞭なγ粒界の厚さの条
件を満足する範囲内である。そのため、この鋼の脆化温
度域で鋳片をそれぞれ矯正したが、鋳片表面の割れ発生
の評価は全て評価Aで、横ひび割れなどの割れは発生し
なかった。とくに、γ粒界が不明瞭な厚さが3.6mm
までであった試験No.3の鋳片表層部の品質は優れて
いた。
【0038】試験No.4では、厚さ230mm、幅2
300mmのスラブを0.85m/分の速度で鋳造し
た。鋳型出口から鋳造方向に1.0mまでの間の鋳片の
二次冷却の比水量は0.16リットル/kg・鋼とし
た。この二次冷却の比水量は、本発明で規定する条件を
外れた小さな値であり、極端に少ない比水量である。鋳
片の二次冷却の比水量が極端に少ないので、二次冷却直
後の鋳片の表面温度は965℃までしか低下せず、鋳片
の表面温度をいったんAr3 変態点以下まで冷却するこ
とができなかった。
【0039】試験No.4で得られた鋳片表層部の凝固
組織は、フェライトおよびパーライトの混合組織であ
り、γ粒界にはフェライトがフィルム状に生成してい
た。そのため、明瞭なγ粒界が認められた。不明瞭なγ
粒界になっていないのは、本発明で規定する条件を外れ
ていることを意味する。そのため、鋳片の表面温度が9
05℃で脆化温度域より高温で矯正したにもかかわら
ず、鋳片表面の割れ発生の評価は評価Cで、γ粒界に沿
って著しい割れが発生した。
【0040】試験No.5では、厚さ230mm、幅2
300mmのスラブを0.85m/分の速度で鋳造し
た。鋳型出口から鋳造方向に1.0mまでの間の鋳片の
二次冷却の比水量は0.22リットル/kg・鋼とし
た。また、試験No.6では、厚さ270mm、幅15
50mmのスラブを2.3m/分の速度で鋳造した。鋳
型出口から鋳造方向に1.0mまでの間の鋳片の二次冷
却の比水量は0.33リットル/kg・鋼とした。これ
ら試験No.5およびNo.6の二次冷却の比水量は、
本発明で規定する条件を外れた小さな値である。鋳片の
二次冷却の比水量は少ないが、二次冷却直後の鋳片の表
面温度は、試験No.5では875℃、試験No.6で
は847℃であり、それぞれいったんAr3 変態点以下
まで冷却することができた。
【0041】これら試験No.5およびNo.6では、
得られた鋳片表層部の凝固組織はフェライトおよびパー
ライトの混合組織であり、またγ粒界には粒状にフェラ
イトが生成しており、γ粒界が不明瞭になっていた。し
かし、γ粒界が不明瞭な鋳片表面からの厚さは、試験N
o.5では0.7mm、試験No.6では1.8mmし
かなく、ともに薄かった。これらγ粒界が不明瞭な鋳片
表面からの厚さは、本発明で規定する厚さを外れて小さ
い値である。そのため、矯正点での鋳片の表面温度は、
その鋼の脆化温度域より高温であるものの、それぞれの
試験での鋳片表面割れ発生の評価はBまたはCであり、
横ひび割れなどの割れが多く発生した。γ粒界が不明瞭
な鋳片表面からの厚さが小さいために、γ粒界が不明瞭
な凝固組織よりも深い領域の鋳片の内部に発生した横割
れ、横ひび割れなどの割れが、鋳片を矯正する際に鋳片
表面にまで露出した。
【0042】試験No.7では、厚さ300mm、幅6
50mmのブルームを0.5m/分の速度で鋳造した。
鋳型出口から鋳造方向に1.0mまでの間の鋳片の二次
冷却の比水量は2.64リットル/kg・鋼とした。こ
の二次冷却の比水量は、本発明で規定する条件を外れた
大きな値である。鋳片表面が過冷却されたため、二次冷
却直後の鋳片の表面温度は640℃まで低下した。その
ため、鋳片が復熱するに際し、Ar3 変態点以上に復熱
できなかった。また、鋳片の矯正時の鋳片表面温度も7
05℃と低かった。
【0043】試験No.7で得られた鋳片表層部の凝固
組織は、ベイナイト組織であり、明瞭なγ粒界が認めら
れた。鋳片の表面温度が705℃で脆化温度域より低温
で矯正したにもかかわらず、γ粒界が明瞭なために、鋳
片表面割れ発生の評価は評価Cで、γ粒界に沿って著し
い割れが発生した。
【0044】
【発明の効果】本発明の連続鋳造方法の適用により、表
面および表面直下の内部に横割れ、横ひび割れなどの割
れのない良好な表層部品質を有する鋳片を安定して得る
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施する場合の連続鋳造装置の
例を示す模式図である。
【図2】γ粒界が不明瞭な凝固組織の存在する鋳片表面
からの深さ、および矯正点での鋳片の表面温度が鋳片の
割れに及ぼす影響を示した図である。
【符号の説明】
1:鋳型 2:凝固殻 3:ガイドロール対 4:スプレーノズル 5:鋳片 6:ピンチロール 7:矯正点の位置にあるピンチロール

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋳型出口から鋳造方向に1.5mまでの間
    において、下記(A)式で定義される二次冷却の比水量
    Q(リットル/kg・鋼)が0.4リットル/kg・鋼
    〜1.5リットル/kg・鋼となる条件で鋳片を冷却
    し、鋳片の表面温度をいったんAr3 変態点以下に冷却
    した後に、Ar3 変態点以上に復熱させ、その後に鋳片
    を矯正することを特徴とする連続鋳造方法。 Q=W/(H×D×Vc×ρ) ・・・(A) ここで、W:二次冷却の冷却水量(リットル/分) H:鋳片の幅(m) D:鋳片の厚さ(m) Vc:鋳造速度(m/分) ρ:溶鋼の密度(kg/m3
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