JP3518517B2 - 高クロム・フェライト系耐熱鋼材の製造方法 - Google Patents

高クロム・フェライト系耐熱鋼材の製造方法

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JP3518517B2 JP2001027841A JP2001027841A JP3518517B2 JP 3518517 B2 JP3518517 B2 JP 3518517B2 JP 2001027841 A JP2001027841 A JP 2001027841A JP 2001027841 A JP2001027841 A JP 2001027841A JP 3518517 B2 JP3518517 B2 JP 3518517B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高クロム・フェラ
イト系耐熱鋼材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ボイラ、原子力、化学工業などの分野で
使用される耐熱鋼材には、優れた高温強度と靱性、さら
に耐食性、耐酸化性などが要求されるとともに、加工
性、溶接性に優れ、さらに経済性に優れることが要求さ
れる。
【0003】このような分野に用いられる鋼管の耐熱鋼
材として、2・1/4Cr−1Mo鋼に代表され、JI
S G 3462のボイラ・熱交換器用合金鋼鋼管に規
定される低合金鋼、またSUS304HTB、SUS3
21HTBなどに代表され、JIS G 3463のボ
イラ・熱交換器用ステンレス鋼管に規定されるオーステ
ナイト系耐熱鋼材、さらに11質量%程度以上のCrを
含有し、同じくJISG 3463に規定されるフェラ
イト系耐熱鋼材などが用いられている。
【0004】これらの耐熱鋼材の中で、フェライト系耐
熱鋼材は、強度、靱性、耐食性、耐酸化性などの点で低
合金鋼より優れ、またオーステナイト系耐熱鋼材に比
べ、安価であるとともに耐熱疲労特性、耐応力腐食割れ
性などで優れており、多く使用されている。
【0005】このようなフェライト系耐熱鋼材に関し、
特開昭59−140352号公報には、耐熱性と低温靱
性とを兼ね備える耐熱鋼材として、Cr含有率8〜12
質量%をベースにMo、W、V、Nbなどを複合添加し
た耐熱鋼材が提案されている。また、特開平3−978
32号公報には、耐酸化性と溶接性に優れた耐熱鋼材と
して、Cr含有率8〜14質量%をベースにMo、W、
V、Nb、Cu、Nなどを複合添加した耐熱鋼材が提案
されている。さらに特開平5−17850号公報には、
耐酸化性と溶接性に優れた耐熱鋼材として、Cr含有率
8〜14質量%をベースにNi、W、V、Nb、Cu、
Nなどを複合添加した耐熱鋼材が提案されている。これ
ら特開昭59−140352号公報、特開平3−978
32号公報および特開平5−17850号公報で提案さ
れた耐熱鋼材は、強度、靱性、耐食性、耐酸化性、溶接
性、加工性などにおいて優れた特性を有する。
【0006】しかし、これらCrを8〜14質量%程度
含有するフェライト系耐熱鋼材用の素材には、従来から
インゴット法により鋳造された鋼塊を分塊して得られる
鋼片が用いられている。これは、連続鋳造した鋳片に
は、手入れによる除去が困難な鋳片表面の割れが発生し
やすく、また二枚割れと呼ばれる厚さ中心部近傍に割れ
が発生しやすいからである。さらに、連続鋳造した鋳片
をガス切断する際に、切断面に微細な割れが発生しやす
い。
【0007】インゴット法による鋼塊から鋼片を得る方
法では、鋼塊から鋼片までの歩留まりが著しく低くな
り、耐熱鋼材の鋼材の製造コストが高くなるので、連続
鋳造による鋳片の安定した製造方法の確立が求められて
いるのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高クロム・
フェライト系耐熱鋼材の製造方法に関し、その耐熱鋼材
の鋼材の熱間圧延用素材として、連続鋳造により割れ発
生のない品質の良好な鋳片を得ることができる方法、お
よびその鋳片をガス切断する際に、割れの発生のない方
法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)〜(3)に示す高クロム・フェライト系耐熱鋼材
の製造方法にある。 (1)質量%で、C:0.03〜0.2%、Si:0.
05〜0.7%、Mn:0.1〜1.5、Cr:8〜1
4%、W:0.8〜4%、V:0.1〜0.3%、N
b:0.01〜0.2%、N:0.005〜0.2%、
Al:0.002〜0.05%、Ni:1%以下、M
o:1.2%以下、Cu:3.5%以下、Co:4%以
下、B:0.02%以下、Ti:0.05%以下、T
a:0.05%以下、Hf:0.05%以下、Nd:
0.05%以下、La:0.05%以下、Ce:0.0
5%以下、Y:0.05%以下、Ca:0.01%以
下、Mg:0.01%以下を含有し、残部はFeおよび
不純物からなる高クロム・フェライト系耐熱鋼材の製造
方法であって、鋳片の二次冷却の比水量を0.1〜0.
6リットル/kg−鋼とし、鋳片の厚さ中心部が凝固開
始するまでに二次冷却を終了する条件で、150mm以
上の厚さで断面形状が長方形の鋳片を連続鋳造し、厚さ
中心部が凝固完了した後の鋳片の表面温度が400℃以
上である間に、圧下比0.1〜0.4の条件で鋳片を一
次圧延し、その後、一次圧延した鋳片を熱間圧延して鋼
材に仕上げる高クロム・フェライト系耐熱鋼材の製造方
法。 (2)上記一次圧延後の鋳片の表面温度が400℃にな
るまでは、平均50℃/時間以下の冷却速度で冷却し、
その後、一次圧延した鋳片を熱間圧延し、一次圧延前の
鋳片からの合計圧下比が0.67以上である鋼材に仕上
げる上記(1)に記載の高クロム・フェライト系耐熱鋼
材の製造方法。 (3)一次圧延前または一次圧延後の鋳片を切断用ガス
を用いて切断するに際し、切断部分近傍の鋳片の表面温
度が350℃以上である間に鋳片を切断する上記(1)
または(2)に記載の高クロム・フェライト系耐熱鋼材
の製造方法。
【0010】本発明で規定する「鋳片の厚さ中心部が凝
固開始する」時期は、鋳造する鋼の化学組成、鋳片サイ
ズ、鋳造速度、鋳片の二次冷却の比水量などが決まれ
ば、通常の凝固伝熱解析による方法などで算出でき、た
とえば、鋳型内の溶鋼のメニスカスからの距離で、その
開始時期を表現することができる。
【0011】本発明で規定する「鋳片の表面温度」と
は、たとえば、放射温度計により測定することのできる
表面温度であり、鋳片の表面から表皮直下までの温度を
意味する。鋳片の表面温度は、幅方向で必ずしも均一で
はなく、鋳片の冷却過程で、鋳片の短辺部近傍が幅中央
部よりも速く冷却され、その表面温度が低くなりやす
い。本発明でいう鋳片の表面温度とは、幅方向で最も低
い表面温度を意味する。
【0012】本発明で規定する「一次圧延後の鋳片の表
面温度が400℃になるまでは、平均50℃/時間以下
の冷却速度で冷却」とは、1時間当たり平均で50℃以
下の冷却速度で冷却することを意味する。
【0013】また、本発明で規定する「圧下比」とは、
圧下量、すなわち圧延前の厚さから圧延後の厚さを引い
た厚さを、 圧延前の厚さで除した比を意味する。した
がって、一次圧延の際の「圧下比」とは、連続鋳造した
ままの鋳片の厚さから一次圧延後の鋳片(鋼材の熱間圧
延用素材)の厚さを引いた厚さを、連続鋳造したままの
鋳片の厚さで除した比のことである。また、一次圧延し
た鋳片を熱間圧延する際の「合計圧下比」とは、連続鋳
造したままの鋳片の厚さから鋼材の厚さを引いた厚さ
を、連続鋳造したままの鋳片の厚さで除した比のことで
ある。
【0014】さらに、本発明で規定する「切断部分近傍
の鋳片の表面温度が350℃以上」とは、たとえば、熱
間圧延用に鋳片を幅方向に切断するに際し、その切断予
定断面を含む鋳造方向である長さ方向に50〜100m
m程度の鋳片の全幅部分の表面温度が350℃以上であ
ることを意味する。鋳片の表面温度を、鋳造直後の高温
の状態から350℃未満にまで低下させることなく、鋳
片を切断することでもよいし、また、いったん鋳片を室
温まで冷却し、その後、鋳片を加熱して、上記鋳片の領
域の表面温度が350℃以上になるようにした後に、鋳
片を切断することでもよい。
【0015】本発明が対象とする鋼材は、質量%で、
C:0.03〜0.2%、Si:0.05〜0.7%、
Mn:0.1〜1.5、Cr:8〜14%、W:0.8
〜4%、V:0.1〜0.3%、Nb:0.01〜0.
2%、N:0.005〜0.2%、Al:0.002〜
0.05%、Ni:1%以下、Mo:1.2%以下、C
u:3.5%以下、Co:4%以下、B:0.02%以
下、Ti:0.05%以下、Ta:0.05%以下、H
f:0.05%以下、Nd:0.05%以下、La:
0.05%以下、Ce:0.05%以下、Y:0.05
%以下、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下
を含有し、残部はFeおよび不純物からなる高クロム・
フェライト系耐熱鋼材である。なお、上記成分のうち、
Ni、Mo、Cu、Co、B、Ti、Ta、Hf、N
d、La、Ce、Y、CaおよびMgの含有率は、不純
物レベルであってもよい。
【0016】このようなCr含有率が8〜14質量%の
高クロム・フェライト系耐熱鋼材の連続鋳造鋳片におい
て、とくに、鋳片厚さが薄い場合に、鋳片両側の短辺部
近傍に著しく大きな縦割れまたは横割れ(以下、単に表
面割れと記す)が発生しやすい。表面から深さ30mm
に達する著しい表面割れが発生する場合がある。また、
これらの表面割れが時間の経過とともに拡大する傾向が
ある。
【0017】Cr含有率が高いので、割れ感受性が高
く、凝固組織が粗大で、また鋳片の冷却過程でマルテン
サイト変態を伴うので、厚さが薄い鋳片において、とく
に冷却速度の速い鋳片両側の短辺部近傍に、表面割れが
発生しやすい。このような表面割れを手入れで除去する
ことは困難であり、表面割れの発生した鋳片は屑化処理
せざるを得ない。
【0018】厚さ中心部が凝固開始する時期に鋳片表面
を継続して二次冷却している場合に、鋳片の厚さ中心部
近傍に二枚割れが発生しやすい。これは、鋳片表面を二
次冷却すると、通常、鋳片表面が収縮するので厚さ中心
部には引張り応力が作用するからである。Crを多く含
有する鋼の鋳片の割れ感受性は高いので、厚さ中心部が
凝固開始する段階で、鋳片表面を二次冷却すると、最終
凝固部が割れて二枚割れが発生する。
【0019】また、Crなど多くの合金元素を含有する
ので、鋳片の厚さ中心部に中心偏析が発生しやすい。こ
のような鋳片を素材として熱間圧延した製品鋼材(以
下、単に鋼材と記す)には、厚さ中心部に中心割れ(以
下、単に中心割れと記す)が発生する。鋳片の中心偏析
が鋼材にまで残存し、鋼材への圧延中または鋼材に圧延
後に、その部分に中心割れが発生するからである。
【0020】さらに、連続鋳造した鋳片をガス切断する
際に、切断面に微細な割れが発生しやすい。その理由
は、ガス切断時に切断面が急激に加熱および冷却され、
切断面に熱応力が作用することと、その際に、切断後の
鋳片の冷却過程でマルテンサイト変態を起こすからであ
る。
【0021】本発明の方法では、鋳片厚さを150mm
以上とするので、鋳片が保有する熱量が多く、かつ鋳片
表面の冷却が緩やかになるので、鋳片両側の短辺部近傍
の表面温度の低下が緩やかになる。したがって、短辺部
近傍の表面割れの発生を抑制できる。
【0022】鋳片の二次冷却の比水量を0.1〜0.6
リットル/kg−鋼とし、鋳片の厚さ中心部が凝固開始
するまでに二次冷却を終了する。鋳片の厚さ中心部が凝
固開始するまでに二次冷却を終了するので、厚さ中心部
近傍の二枚割れの発生を抑制できる。また、上記の適正
な比水量で二次冷却するので、鋳片両側の短辺部近傍の
表面温度の低下を抑制でき、短辺部近傍の表面割れの発
生を抑制できる。さらに、鋳片が反ることなどが抑制さ
れるので、鋳片厚さ方向に大きな力が作用することを防
止でき、厚さ中心部での二枚割れの発生を抑制できる。
【0023】また、鋳片の二次冷却を終了し、その後凝
固完了した後の鋳片の表面温度を400℃以上である間
に、圧下比0.1〜0.4の条件で鋳片を一次圧延し、
その後、一次圧延した鋳片を熱間圧延して鋼材に仕上げ
る。鋳片の表面温度を400℃以上に保持したまま鋳片
を一次圧延すること、すなわち、凝固完了した鋳片が冷
却過程でマルテンサイト変態する前に所定量の一次圧延
を鋳片に加えることにより、脆弱な凝固組織が再結晶し
て微細な凝固組織となり、鋳片の割れ感受性が低下す
る。そのような一次圧延した鋳片を熱間圧延して鋼材と
するので、品質の良好な鋼材を得ることができる。
【0024】また、本発明の方法では、一次圧延後の鋳
片の表面温度が400℃になるまでは、平均50℃/時
間以下の冷却速度で鋳片を徐冷し、その後、一次圧延し
た鋳片を熱間圧延し、一次圧延前の鋳片からの合計圧下
比が0.67以上である鋼材に仕上げるのが望ましい。
【0025】一次圧延後の鋳片の表面温度が400℃に
なるまでは、鋳片を平均50℃/時間以下の冷却速度で
徐冷することにより、マルテンサイト変態の速度を抑制
でき、割れ感受性が低下した状態を保持できる。また、
鋼材の厚さを、一次圧延前の鋳片からの合計圧下比が
0.67以上となる厚さとする、すなわち、鋳片の厚さ
は、鋼材の厚さの3倍以上とするので、鋳片に発生した
中心偏析が、鋼材にまで残存することを抑制でき、鋼材
の中心割れの発生を効果的に抑制できる。
【0026】さらに、本発明の方法では、一次圧延前、
すなわち鋳造直後の鋳片、または一次圧延後の鋳片を切
断用ガスを用いて切断するに際し、切断部分近傍の鋳片
の表面温度が350℃以上である間に、鋳片を切断する
のが、より望ましい。切断面が急激に加熱および冷却さ
れることを抑制し、切断面に作用する熱応力を小さくす
るので、切断面に微細な割れが発生するのを、より効果
的に抑制できる。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明の方法が対象とする高クロ
ム・フェライト系耐熱鋼材とは、連続鋳造方法にて得ら
れる鋳片を、その鋼材の熱間圧延用素材とするものであ
る。その鋳片はスラブでもよいし、ブルームでもよい。
耐熱鋼材とは、ボイラ、原子力、化学工業などの分野で
使用される鋼管などをいう。
【0028】本発明の方法が対象とする高クロム・フェ
ライト系耐熱鋼材の化学組成および製造方法について、
以下に詳しく説明する。なお、各成分の含有率の%表示
は質量%を意味する。 (イ)化学組成 C:0.03〜0.2% Cは、Cr、Fe、W、V、Nbなどとともに炭化物を
形成し、高温強度を増加させる。C含有率が0.03%
未満では、炭化物の析出量が少なく、またδフェライト
が多く生成するので、強度および靱性が低下する。しか
し、C含有率が0.2%を超えると、炭化物が過剰に形
成されて強度が高くなりすぎ、加工性および溶接性が悪
化する。したがって、C含有率は0.03〜0.2%と
する。
【0029】Si:0.05〜0.7% Siは、鋼の脱酸に有効な元素であり、また、耐水蒸気
酸化特性を高めるのに有効な元素である。これらの効果
を発揮させるためには、0.05%以上含有させる必要
がある。しかし、Si含有率が0.7%を超えると、靱
性が著しく低下し、クリープ強度も低下する。したがっ
て、Si含有率は0.05〜0.7%とする。
【0030】Mn:0.1〜1.5% Mnは、強度を向上させるのに有効な元素である。この
効果を発揮させるためには、0.1%以上含有させる必
要がある。しかし、Mn含有率が1.5%を超えると、
加工性および溶接性が悪化する。したがって、Mn含有
率は0.1〜1.5%とする。
【0031】Cr:8〜14% Crは、耐酸化性および高温耐食性を向上させるのに有
効な基本的な元素である。これらの効果を発揮させるた
めには、8%以上含有させる必要がある。しかし、Cr
含有率が14%を超えると、δフェライトが多く生成す
るので、強度および靱性が低下する。したがって、Cr
含有率は8〜14%とする。
【0032】W:0.8〜4% Wは、固溶強化元素および微細な炭窒化物の析出強化元
素としてクリープ強度の向上に有効な元素である。この
効果を発揮させるためには、0.8%以上含有させる必
要がある。しかし、W含有率が4%を超えると、靱性が
低下し、また加工性が悪化する。したがって、W含有率
は0.8〜4%とする。より好ましい範囲は1.5〜
2.5%である。
【0033】V:0.1〜0.3% Vは、CおよびNと結合して微細な窒化物および炭窒化
物を析出することにより、クリープ強度を向上させるの
に有効な元素である。この効果を発揮させるためには、
0.1%以上含有させる必要がある。0.1%未満では
鋳片を加熱する際に、これら窒化物および炭窒化物が再
固溶するので、その効果が得られない。しかし、V含有
率が0.3%を超えると固溶V量が増加し、かえって強
度が低下する。したがって、V含有率は0.1〜0.3
%とする。
【0034】Nb:0.01〜0.2% Nbは、Vと同様にCおよびNと結合して微細な窒化物
および炭窒化物を析出することにより、クリープ強度を
向上させるのに有効な元素である。この効果を発揮させ
るためには、0.01%以上含有させる必要がある。し
かし、Nb含有率が0.2%を超えると、焼きならし処
理中に未固溶の炭窒化物が増加し、強度が低下するとと
もに溶接性が悪化する。さらに高温状態で微細な析出物
が凝集粗大化しやすく、クリープ強度が低下する。した
がって、Nb含有率は0.01〜0.2%とする。
【0035】N:0.005〜0.2% Nは、V、NbおよびCと結合して炭窒化物を形成し、
クリープ強度を向上させるのに有効な元素である。この
効果を発揮させるためには、0.005%以上含有させ
る必要がある。しかし、N含有率が0.2%を超える
と、溶接性および加工性が顕著に悪化する。したがっ
て、N含有率は0.005〜0.2%とする。N含有率
が0.1%を超えると、鋳片にブローホールが形成され
ることがあり、望ましい範囲は0.005〜0.1%で
ある。
【0036】Al:0.002〜0.05% Alは、鋼の脱酸に有効な元素であり、その効果を発揮
させるためには、0.002%以上含有させる必要があ
る。しかし、0.05%を超えて含有させると、クリー
プ強度が低下する。したがって、Al含有率は0.00
2〜0.05%とする。
【0037】Ni:1%以下 Niは、含有させなくてもよいが、含有させると、マル
テンサイトを安定化する。しかし、Ni含有率が1%を
超えると変態点を著しく低下させ、焼戻し処理に支障が
生じ、またクリープ強度が低下する。したがって、含有
させる場合のNi含有率は1%以下とするのがよい。た
だし、後述するCuを0.3%以上含有させる場合に
は、上記Niの上限内で、Cuの結晶粒界への析出を防
止するために、質量比でCu含有率の1/3以上のNi
を同時に含有させるのが望ましい。
【0038】Mo:1.2%以下 Moは、含有させなくてもよいが、含有させると、Wと
同様に固溶強化元素および微細な炭窒化物の析出強化元
素としてクリープ強度の向上に有効な元素である。しか
し、Mo含有率が1.2%を超えると、δフェライトが
多く生成するので、強度および靱性が低下する。したが
って、含有させる場合のMo含有率は1.2%以下とす
るのがよい。Moを含有させる場合には、W含有率より
少ない含有率とするのがより望ましい。その理由は、炭
窒化物の成長および粗大化を抑制する効果が、Wより小
さいためである。
【0039】Cu;3.5%以下、Co;4%以下:C
uおよびCoは、含有させなくてもよいが、含有させる
と、いずれの元素もオーステナイト安定化元素としてδ
フェライトの生成を抑制し、強度および靱性を向上させ
るのに有効な元素である。その効果を得る場合には、C
u、Coをそれぞれ0.1%以上含有させるのが望まし
い。しかし、Cu含有率が3.5%を超えると、結晶粒
界に析出するCu量が多くなり、延性および高温強度が
低下し、また溶接性および加工性が悪化する。また、C
o含有率が4%を超えても、その効果は飽和する。した
がって、含有させる場合の含有率は、Cu:3.5%以
下、Co:4%以下が望ましく、さらに、Cu:0.1
〜3.5%、Co:0.1〜4%とするのがより望まし
い。
【0040】B:0.02%以下 Bは、含有させなくてもよいが、微量含有させることに
より、炭化物を均一に分散させ強度を向上させるのに有
効な元素である。その効果を得る場合には、0.000
1%以上含有させるのがよい。しかし、B含有率が0.
02%を超えると、溶接性および加工性が悪化する。し
たがって、含有させる場合のB含有率は0.02%以下
が望ましく、さらに、0.0001〜0.02%とする
のがより望ましい。
【0041】Ti;0.05%以下、Ta;0.05%
以下、Hf;0.05%以下、Nd;0.05%以下、
La;0.05%以下、Ce;0.05%以下、Y;
0.05%以下、Ca;0.01%以下、Mg;0.0
1%以下:Ti、Ta、Hf、Nd、La、Ce、Y、
CaおよびMgは、含有させなくてもよいが、含有させ
ることにより、鋼中のO(酸素)やSなどの不純物元素
を固定して安定化する効果、すなわち非金属介在物の形
態制御の効果がある。Ti、Ta、Hf、Nd、La、
Ce、Y、CaおよびMgを含有させる場合に、1種で
もよいし、2種以上でもよい。
【0042】その効果を得る場合には、Ti、Ta、H
fおよびNdは、それぞれ0.005%以上含有させる
のがよい。しかし、Ti、Ta、HfおよびNdを、そ
れぞれ0.05%を超えて含有させると、非金属介在物
が増加し、かえって、強度および靱性が低下し、また耐
食性が悪化する。したがって、含有させる場合のTi、
Ta、HfおよびNdのそれぞれの含有率は、それぞれ
0.05%以下とするのが望ましい。さらに、それぞれ
0.005〜0.05%とするのがより望ましい。
【0043】また、上記効果を得るためにLa、Ceお
よびYを含有させる場合に、それぞれ0.05%を超え
て含有させると、非金属介在物が増加し、かえって、強
度および靱性が低下し、また耐食性が悪化する。したが
って、含有させる場合のLa、CeおよびYのそれぞれ
の含有率は0.05%以下とするのがよい。
【0044】さらに、上記効果を得るためにCaおよび
Mgを含有させる場合に、それぞれ0.01%を超えて
含有させると、非金属介在物が増加し、かえって、強度
および靱性が低下し、また耐食性が悪化する。したがっ
て、含有させる場合のCaおよびMgのそれぞれの含有
率は0.01%以下とするのがよい。
【0045】本発明の方法が対象とする高クロム・フェ
ライト系耐熱鋼材における不純物として代表的なものは
PおよびSである。これらの元素はいずれも強度および
靱性を低下させ、溶接性および加工性を悪化させるの
で、できるだけ少なく抑えるのがよい。そこで、Pは
0.025%以下、Sは0.015%以下とするのが望
ましい。より好ましいのは、P:0.015%以下、
S:0.01%以下である。 (ロ)製造方法 本発明の鋼材の製造方法では、鋳片の二次冷却の比水量
を0.1〜0.6リットル/kg−鋼とし、鋳片の厚さ
中心部が凝固開始するまでに二次冷却を終了する条件
で、150mm以上の厚さで断面形状が長方形の鋳片を
連続鋳造し、厚さ中心部が凝固完了した後の鋳片の表面
温度が400℃以上である間に、圧下比0.1〜0.4
の条件で鋳片を一次圧延し、その後、一次圧延した鋳片
を熱間圧延して鋼材に仕上げる。
【0046】鋳片厚さを150mm以上とするので、鋳
片の短辺部近傍の表面割れの発生が抑制できる。150
mm未満の厚さの鋳片を鋳造し、鋳片両側の短辺部近傍
の表面温度が低下しないように、連続鋳造機内で鋳片を
加熱、保温する方法も考えられるが、連続鋳造設備が過
大なものとなり、現実的でない。また、鋳片の厚さを鋼
材の厚さの3倍未満とすると、鋳片の中心偏析が鋼材に
まで残存し、鋼材に中心割れが発生しやすい。
【0047】鋳片の厚さ中心部が凝固開始するまでに二
次冷却を終了するので、厚さ中心部近傍での二枚割れの
発生を抑制できる。二次冷却の比水量が0.1リットル
/kg−鋼未満では、鋳型出口近傍での凝固殻の厚さが
薄くなり、凝固殻がバルジングしやすく、それに伴って
鋳型内の湯面レベル変動が発生しやすい。また極端な場
合には、凝固殻が破れてブレークアウトが発生すること
がある。また、比水量が0.6リットル/kg−鋼を超
えると、鋳片両側の短辺部近傍のみならず、鋳片全体が
強く冷却されて鋳片の表面温度が低下しすぎ、鋳片表面
全体に割れが発生しやすい。さらに、鋳片が反るなどに
より、鋳片の厚さ方向に大きな力が作用して、厚さ中心
部近傍に二枚割れが発生する。
【0048】厚さ中心部が凝固完了した後の鋳片の表面
温度が400℃以上である間に、鋳片を一次圧延し、そ
の際、鋳片の表面温度が400℃以上であっても、その
まま一次圧延するには、鋳片の表面温度が低下し過ぎる
場合があるので、鋳片をいったん加熱炉などに装入し、
一次圧延可能な温度にまで加熱するのが望ましい。連続
鋳造機内に鋳片の保温設備があって、鋳片の温度が圧延
するのに十分な温度であれば、加熱せずにそのまま一次
圧延することもできる。
【0049】一次圧延する前に、鋳片の表面温度が40
0℃未満に低下すると、脆弱な凝固組織のままでマルテ
ンサイト変態が起こり、その変態応力などにより、鋳片
の表面割れ、および厚さ中心部近傍の二枚割れが発生し
やすい。マルテンサイト変態を起こす前に一次圧延する
ことにより、粗大な凝固組織が再結晶して微細な組織と
なるので、割れ感受性を低下させることができる。
【0050】一次圧延の際、鋳片の圧下比が0.1未満
では、粗大な凝固組織が再結晶して微細な組織となる効
果が小さく、鋳片の表面割れが発生しやすい。また、鋳
片の圧下比が0.4を超えると、粗大な凝固組織が再結
晶して微細な組織となる効果は飽和しており、さらに、
その後の一次圧延された鋳片を用いて、鋼材への熱間圧
延時の圧下比が減少し、鋼材の機械的特性が低下する場
合がある。望ましくは、鋳片の圧下比を0.2〜0.3
5とする。
【0051】また、本発明の鋼材の製造方法では、一次
圧延後の鋳片の表面温度が400℃になるまでは、平均
50℃/時間以下の冷却速度で鋳片を徐冷し、その後、
一次圧延した鋳片を熱間圧延し、一次圧延前の鋳片から
の合計圧下比が0.67以上である鋼材に仕上げるのが
望ましい。
【0052】鋳片を平均50℃/時間を超えた冷却速度
で冷却すると、とくに鋳片両側の短辺部近傍の表面温度
の低下が速くなり、マルテンサイト変態時の大きな変態
応力が鋳片に作用し、たとえ再結晶して結晶粒の小さい
鋳片でも、短辺部近傍の鋳片に表面割れが発生しやすく
なる。
【0053】一次圧延した鋳片を熱間圧延し、一次圧延
前の鋳片からの合計圧下比が0.67以上である鋼材に
仕上げるので、鋼材の中心割れの発生を抑制できるの
は、前述のとおりである。
【0054】さらに、本発明の鋼材の製造方法では、一
次圧延前または一次圧延後の鋳片を切断用ガスを用いて
切断するに際し、切断部分近傍の鋳片の表面温度が35
0℃以上である間に鋳片を切断するのがより望ましい。
つまり、鋳造直後および一次圧延する前後の必要時に鋳
片を切断する際に、少なくとも切断部分近傍の温度が3
50℃以上で鋳片を切断するのが望ましい。
【0055】たとえば、鋳造直後に連続鋳造機内の鋳片
切断装置により、鋳片を切断する際には、鋳片の表面温
度は、通常、350℃以上である。しかし、一次圧延し
た後に徐冷した鋳片の表面温度は、通常、350℃未満
であり、その場合に、切断面近傍を加熱するのが望まし
く、たとえば、別に鋳造した鋳造直後の2つに鋳片を用
いて、徐冷後の鋳片を挟むことにより、鋳片の切断面近
傍を加熱するのがよい。また、加熱炉を用いて加熱して
もよい。切断面が急激に加熱および冷却されることを抑
制し、切断面に作用する熱応力を小さくして、切断面に
微細な割れが発生するのを抑制できる。
【0056】
【実施例】垂直型連続鋳造機を用い、表1に示す化学組
成の高クロム・フェライト系耐熱鋼材を、厚さ120で
幅800mm、厚さ150mmで幅800mm、または
厚さ280mmで幅1000mmの鋳片に、速度0.4
m/分または0.6m/分で鋳造した。
【0057】
【表1】 鋳片の二次冷却の比水量を0.09〜0.7リットル/
kg−鋼の範囲で変化させた。一部の試験では、凝固開
始しても二次冷却を行う条件で試験したが、その他は、
鋳片厚さ中心部が凝固開始するまでに二次冷却を終了し
た。その際、鋳片の厚さ中心部が凝固開始する時期は、
鋳造する鋼の化学組成、鋳片サイズ、鋳造速度、鋳片の
二次冷却の比水量の条件に基づいて、通常の凝固伝熱解
析による方法で求めた。以下に記載する鋳片の表面温度
および切断面近傍の表面温度は、放射温度計により測定
した。
【0058】鋳造直後に連続鋳造機内で鋳片を切断し、
その後、鋳片を搬送台車に搭載し、鋼製のカバーを掛け
て加熱炉まで搬送した。この鋳片切断時の鋳片の表面温
度は約780℃であった。カバーを掛けることにより、
厚さ中心部が凝固完了した後の鋳片の表面温度が400
℃未満に低下することなく、鋳片を加熱炉に装入でき
た。一部の試験では、カバーを掛けなかったので、鋳片
の表面温度が400℃未満に低下した。加熱炉では12
80℃で3時間加熱し、その後一次圧延を行った。一次
圧延後の鋳片の表面温度は1020〜1090℃程度と
した。ただし、一部の試験では一次圧延は行わなかっ
た。
【0059】一次圧延後、鋳片を徐冷炉に装入して徐冷
し、鋳片の表面温度が200℃になるまで約250時間
掛けて冷却し、その間の平均の冷却速度を3℃/時間と
した。その後、徐冷炉から鋳片を取り出して、室温まで
冷却した。ただし、一部の試験では、鋳片の表面温度が
200℃になるまで平均の冷却速度を60℃/時間に調
整して、鋳片を冷却した。
【0060】一次圧延し、室温まで冷却した鋳片を、別
に鋳造した直後の通常の鋼の高温の鋳片2つを用いて約
10〜15時間挟むことにより加熱し、その後その鋳片
を切断した。高温の鋳片で挟むことにより、切断する鋳
片の表面温度を350℃以上とすることができた。ただ
し、一部の試験では、鋳片を挟む時間を短くし、鋳片の
表面温度を350℃未満とした。切断した鋳片を熱間圧
延して鋼材とし、その際の鋳片の加熱温度、在炉時間な
どは、通常の高クロム・フェライト系耐熱鋼材の条件と
同じとした。
【0061】鋳片を加熱炉に装入するときの鋳片の表面
温度、一次圧延の際の圧下量、圧下比、一次圧延した後
の徐冷後に鋳片を切断する際の切断面近傍の表面温度、
製品の鋼材の厚さなどの試験条件を後述する表2および
表3に示す範囲内で変化させて試験した。
【0062】一次圧延後の鋳片の表面割れ、および厚さ
中心部近傍の二枚割れの状況を目視により観察した。ま
た、徐冷後に鋳片を加熱して切断した際の鋳片の切断面
の割れを目視により観察した。さらに、製品鋼材の表面
割れおよび中心割れの発生状況を、磁気探傷法および超
音波探傷法により調査した。試験条件および試験結果を
表2および表3に示す。
【0063】
【表2】
【表3】 本発明例の試験No.1〜試験No.8では、表2に示
すように、鋼a〜鋼fを用い、厚さ280mm、幅10
00mmの鋳片を速度0.4m/分、二次冷却の比水量
0.42リットル/kg−鋼の条件で鋳造した。二次冷
却は鋳片の厚さ中心部が凝固開始する前に終了した。一
次圧延時、圧下比が約0.2〜0.3となるように、鋳
片を3〜5パスで60〜80mm圧下し、厚さ200〜
220mmの鋳片とした。一次圧延後の鋳片を徐冷炉に
装入し、表面温度が200℃になるまで、試験No.1
〜試験No.7では平均約3℃/時間の冷却速度で徐冷
し、試験No.8では平均約60℃/時間の冷却速度で
冷却した。その後、常温近くまで表面温度を低下させ
た。
【0064】試験No.1〜試験No.6および試験N
o.8では、徐冷後の厚さ200〜220mmの鋳片
を、別の連続鋳造機で鋳造した直後の通常の鋼の鋳片2
つを用いて約10〜15時間挟み、この鋳片の表面温度
が350〜420℃になるように鋳片を加熱した後、鋳
片を切断した。試験No.7では、徐冷後の厚さ200
mmの鋳片を、別の高温の鋳片で約3時間しか挟まず、
鋳片の表面温度が270℃になった後、鋳片を切断し
た。これら一次圧延後の鋳片を厚さ50〜80mmの製
品鋼材に熱間圧延した。このときの鋳造時の鋳片からの
合計の圧下比は3.5〜5.6である。
【0065】試験No.1〜試験No.8における鋳片
の厚さ、二次冷却の比水量とその終了時期、一次圧延す
る前の鋳片の表面温度、一次圧延の際の圧下比の条件
は、いずれも本発明の方法で規定する条件の範囲内であ
る。
【0066】試験No.1〜試験No.6では、一次圧
延後の鋳片の表面および厚さ中心部に、表面割れまたは
二枚割れの発生はなかった。また、徐冷後に切断した鋳
片の切断面にも、割れは発生しなかった。さらに、製品
鋼材には、表面割れおよび中心割れの発生はなかった。
【0067】試験No.7では、一次圧延後の鋳片の表
面および厚さ中心部に、表面割れまたは二枚割れの発生
はなかったが、徐冷後に切断した鋳片の切断面には微細
な割れが発生した。ただし、この切断面の微細な割れ
は、その後の熱間圧延には支障ない程度の割れで、製品
鋼材の端部に割れが少し発生したのみであった。また、
製品鋼材には、表面割れおよび中心割れの発生はなかっ
た。
【0068】試験No.8では、一次圧延後の鋳片の表
面に、微細な表面割れが発生した。ただし、この微細な
表面割れは、その後の熱間圧延には支障ない程度の割れ
で、製品鋼材の表面に割れは発生しなかった。
【0069】本発明例の試験No.9では、鋼fを用
い、厚さ150mm、幅800mmの鋳片を速度0.6
m/分、二次冷却の比水量0.42リットル/kg−鋼
で鋳造し、二次冷却は鋳片厚さ中心部が凝固開始するま
でに終了した。一次圧延時の圧下は2パスで30mm圧
下した。この一次圧延の圧下比は0.2である。また、
一次圧延後、鋳片を徐冷炉に装入し、表面温度が200
℃になるまで、平均約3℃/時間以下の冷却速度で徐冷
した。冷却途中の温度測定によれば、表面温度が400
℃までの冷却速度は平均約6℃/時間であった。その
後、常温近くまで表面温度を低下させた。その後、鋳片
を別の連続鋳造機で鋳造した直後の通常の鋼の鋳片2つ
を用いて約12時間挟み、この鋳片の表面温度が350
℃になるように鋳片を加熱した後、鋳片を切断した。切
断した厚さ120mmの鋳片を厚さ55mmの製品鋼材
に圧延した。
【0070】試験No.9では、二次冷却の比水量とそ
の終了時期、一次圧延する前の鋳片の表面温度、および
一次圧延の際の圧下量の試験条件は、本発明の方法で規
定する条件の範囲内である。ただし、鋳片から鋼材まで
の合計の圧下比は2.7であり、望ましい条件より低い
圧下比である。
【0071】試験No.9では、一次圧延後の鋳片に表
面割れは発生しなかった。また、切断後の鋳片切断面に
も割れは発生しなかった。ただし、熱間圧延した厚さ5
5mmの製品鋼材では、超音波探傷法により少し欠陥エ
コーが認められるが、問題のある欠陥エコーレベルでは
なかった。
【0072】比較例の試験No.10〜試験No.15
では、表3に示すように、鋼fを用いて試験した。その
うち、試験No.10〜試験No.14では、厚さ28
0mm、幅1000mmの鋳片を速度0.4m/分の条
件で、試験No.15では、厚さ120mm、幅800
mmの鋳片を速度0.6m/分の条件で、それぞれ鋳造
した。
【0073】試験No.10では、一次圧延時の圧下量
を1パスで20mmとした以外は、試験No.1と同じ
鋳造条件、一次圧延および一圧延後の鋳片徐冷の条件と
した。この一次圧延時の圧下量20mmは、鋳片の圧下
比0.07に相当し、本発明の方法で規定する条件の下
限を外した小さな圧下比を意味する。また、試験No.
11では、鋳片を搬送台車に搭載して加熱炉まで搬送す
る際に、鋼製のカバーを掛けず、一次圧延する前の加熱
炉に装入する鋳片の表面温度を330℃とした以外は、
試験No.1と同じ鋳造条件、一次圧延および一圧延後
の鋳片徐冷の条件とした。この加熱炉へ装入する鋳片の
表面温度は、本発明の方法で規定する条件の下限を外し
た低い表面温度を意味する。
【0074】試験No.10では、一次圧延の際の圧下
比が小さく、粗大な凝固組織が再結晶して微細な組織と
なる効果が小さかったため、一次圧延後の鋳片短辺部に
表面割れが発生した。これら表面割れが著しく大きいの
で、その後の熱間圧延が困難と判断し、鋳片の切断と製
品鋼材への熱間圧延は行わなかった。
【0075】試験No.11では、一次圧延時の加熱炉
に鋳片を装入する際に、鋳片の表面温度が400℃未満
に低下したので、マルテンサイト変態が起こり、その変
態応力などにより、一次圧延後の鋳片短辺部に表面割れ
が発生した。これら表面割れが著しく大きいので、その
後の熱間圧延が困難と判断し、鋳片の切断と製品鋼材へ
の熱間圧延は行わなかった。
【0076】試験No.12では、二次冷却の比水量を
0.09リットル/kg−鋼とした以外は、試験No.
1と同じ鋳造条件とした。この比水量は、本発明の方法
で規定する条件の下限を外した少ない比水量を意味す
る。この試験No.12では、鋳型内の湯面レベルが大
きく変動し、鋳造の継続が困難となり、途中で鋳造を中
止し、一次圧延以降の試験を行わなかった。鋳造初期に
得られた鋳片の表面には、湯面レベルが変動したことに
より、横割れが著しく発生した。
【0077】試験No.13では、二次冷却の比水量を
0.7リットル/kg−鋼とする以外は、試験No.1
と同じ鋳造条件、一次圧延および一圧延後の鋳片徐冷の
条件とした。この比水量は、本発明の方法で規定する条
件の上限を外した多い比水量を意味する。この試験N
o.13では、二次冷却の比水量が多すぎて、連続鋳造
機の出側でも鋳片の表面全体に著しい割れが発生してい
るのが確認された。さらに、一次圧延後の鋳片の表面全
体にも表面割れが著しく発生していた。これら表面割れ
が著しく、その後の熱間圧延が困難と判断されたので、
鋳片の切断と製品鋼材への熱間圧延は行わなかった。
【0078】試験No.14では、二次冷却の終了時期
を鋳片厚さ中心部が凝固開始後とする以外は、試験N
o.1と同じ鋳造条件、一次圧延および一次圧延後の鋳
片徐冷の条件とした。この二次冷却の終了時期は、本発
明の方法で規定する条件を外れていることを意味する。
この試験No.14では、厚さ中心部が凝固開始する段
階で、鋳片表面を二次冷却したので、鋳片の最終凝固部
が割れ、一次圧延後の鋳片においても、厚さ中心部近傍
に二枚割れが発生した。この二枚割れが著しく、その後
の熱間圧延が困難と判断されたので、鋳片の切断と製品
鋼材への熱間圧延は行わなかった。
【0079】試験No.15では、厚さ120mmの鋳
片を、二次冷却の比水量0.35リットル/kg−鋼で
鋳造し、二次冷却は鋳片厚さ中心部が凝固開始するまで
に終了させた。この鋳片厚さ120mmは、本発明の方
法で規定する鋳片の厚さの条件を外して薄いことを意味
する。二次冷却の比水量とその終了時期の試験条件は、
本発明の方法で規定する条件の範囲内である。
【0080】この試験No.15では、鋳片短辺部近傍
の冷却が速く、鋳片短辺部に著しい表面割れが発生して
いるのが、連続鋳造機の出側で認められた。これら表面
割れが著しく大きいので、一次圧延以降の試験を行わな
かった。
【0081】
【発明の効果】本発明の方法を適用することにより、高
クロム・フェライト系耐熱鋼材の製造に用いられる熱間
圧延用素材として、割れの発生のない品質良好な鋳片を
得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22C 38/00 302 C22C 38/00 302Z 38/54 38/54 (56)参考文献 特開 平8−257711(JP,A) 特開 昭54−128464(JP,A) 特開 昭57−121866(JP,A) 特開 平5−17850(JP,A) 特開 平9−216038(JP,A) 特開 平3−97832(JP,A) 特開 昭59−140352(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 11/00 B22D 11/12 B22D 11/124 B22D 11/126 C22C 38/00 302 C22C 38/54

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】質量%で、C:0.03〜0.2%、S
    i:0.05〜0.7%、Mn:0.1〜1.5、C
    r:8〜14%、W:0.8〜4%、V:0.1〜0.
    3%、Nb:0.01〜0.2%、N:0.005〜
    0.2%、Al:0.002〜0.05%、Ni:1%
    以下、Mo:1.2%以下、Cu:3.5%以下、C
    o:4%以下、B:0.02%以下、Ti:0.05%
    以下、Ta:0.05%以下、Hf:0.05%以下、
    Nd:0.05%以下、La:0.05%以下、Ce:
    0.05%以下、Y:0.05%以下、Ca:0.01
    %以下、Mg:0.01%以下を含有し、残部はFeお
    よび不純物からなる高クロム・フェライト系耐熱鋼材の
    製造方法であって、鋳片の二次冷却の比水量を0.1〜
    0.6リットル/kg−鋼とし、鋳片の厚さ中心部が凝
    固開始するまでに二次冷却を終了する条件で、150m
    m以上の厚さで断面形状が長方形の鋳片を連続鋳造し、
    厚さ中心部が凝固完了した後の鋳片の表面温度が400
    ℃以上である間に、圧下比0.1〜0.4の条件で鋳片
    を一次圧延し、その後、一次圧延した鋳片を熱間圧延し
    て鋼材に仕上げることを特徴とする高クロム・フェライ
    ト系耐熱鋼材の製造方法。
  2. 【請求項2】上記一次圧延後の鋳片の表面温度が400
    ℃になるまでは、平均50℃/時間以下の冷却速度で冷
    却し、その後、一次圧延した鋳片を熱間圧延し、一次圧
    延前の鋳片からの合計圧下比が0.67以上である鋼材
    に仕上げることを特徴とする請求項1に記載の高クロム
    ・フェライト系耐熱鋼材の製造方法。
  3. 【請求項3】一次圧延前または一次圧延後の鋳片を切断
    用ガスを用いて切断するに際し、切断部分近傍の鋳片の
    表面温度が350℃以上である間に鋳片を切断すること
    を特徴とする請求項1または請求項2に記載の高クロム
    ・フェライト系耐熱鋼材の製造方法。
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