JP3711959B2 - 耐熱用低合金鋼管およびその製造方法 - Google Patents

耐熱用低合金鋼管およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱用低合金鋼管とその製造方法に係り、より詳しくは、特別な製造設備を使用せずに製造でき、疵の発生がなく高温強度が高いベイナイト組織を有する耐熱用低合金鋼管とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
400 ℃以上の高温環境下で使用される耐熱鋼は、大別して、▲1▼Cr含有量が数%以下の低Crフェライト鋼、▲2▼Cr含有量が 9〜12%の高Crフェライト鋼、および▲3▼オーステナイト鋼の3種類の鋼に分けられる。これらの鋼は温度、圧力などの使用環境や経済性を考慮に入れた上、適宜選定される。
【0003】
これらの中でも、低Crフェライト鋼は一般に低合金鋼と呼ばれ、高Crフェライト鋼やオーステナイト鋼に比べて、低コストで製造が可能であり、しかも熱膨張率が小さく、かつ熱伝導性が優れていることから、発電用ボイラや化学プラントなど多岐の分野で耐熱鋼として用いられる。例えば、このような低合金鋼の代表例としては、JIS G 3462に規定されるSTBA22(1Cr-0.5Mo)、STBA23(1.25Cr-0.5Mo)、STBA24(2.25Cr-1Mo)および火力技術基準に規定される火STBA21(1Cr-0.3Mo)などが挙げられる。
【0004】
これらの低合金鋼において、材料設計上、高温強度は極めて重要な特性の一つである。ボイラや化学プラントなどに用いられる低合金鋼で作製された鋼管(以下、低合金鋼管という)は、特に厳しい使用環境下で用いられることからその素材の高温強度は高いことが好ましい。これらの環境下で使用される低合金鋼管の肉厚は、その使用環境、素材の高温強度に応じて決定されるが、高温強度には限界があるため、一定の制限下のもとに肉厚設計をせざるを得ない。
【0005】
そこで、従来は、低合金鋼の高温強度を高めるため、固溶強化や析出強化による素材の改善が図られてきた。固溶強化を利用した高温強度の改善は、鋼に適正量のCrやMoを含有させることによって行われる。また、析出強化を利用した高温強度の改善は、低合金鋼にV、Nb、Tiなどを添加し、微細な炭化物や窒化物を析出させることによって行われる。例えば、特開平8-158022号公報には、析出物を凹凸面を有する形状にし、その量を特定することによってクリープ強度を向上させた低合金鋼とその製造方法が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような低合金鋼は、例えば、ボイラ、化学工業などの分野で使用する鋼管用の材料に用いられる。鋼管の製造に当たっては、高温における強度特性などを考慮に入れた材料設計やコストパフォーマンスの観点から製造条件が検討される。
【0007】
通常、低合金鋼の鋼管の製造は、鋼片をマンネスマン穿孔するか、または熱間押出することによって行われる。鋼片を鋳造により作製した場合、鋼片の外殻から凝固が進み、鋼片の中心部が最後に凝固するため、得られた鋼片の中心部には、ポロシティ、偏析などの欠陥が生成しやすい。また、鋳造の際には、凝固収縮により鋼片の中心部には外殻から引張応力が作用する。引張応力が鋼片の強度に比べて大きい場合、中心部に割れ、いわゆる軸心割れが生じる。
【0008】
このような欠陥や軸心割れは穿孔および延伸圧延や押出加工の工程で解消される場合もあるが、鋼片に欠陥や軸心割れが多く発生した場合、製管後の鋼管内面にこの欠陥が引き継がれることがあり、また、新たに表面疵などの欠陥が発生する場合がある。
【0009】
このような鋼管内面の欠陥を防止するためには、熱間にて鋼片を鍛造あるいは圧延し、鋼片内部の欠陥や軸心割れをあらかじめ圧着消滅させておく方法があるが、コスト、製造時間を考慮すると、鍛造、圧延工程を経ずに穿孔および延伸圧延を行うこと、言いかえれば、鋳造、具体的には連続鋳造したままの鋼片がその中心部に欠陥、軸心割れを有していないことが好ましい。
【0010】
鋳片の中心部に発生するセンターポロシティなどを低減させるようにした連続鋳造方法としては、例えば、特開平8-332556号公報、特開2001-62550号公報および特許第2856068号公報に示される方法があるが、これらの公報に示される方法いずれも鋼の変態温度については全く考慮していない。
【0011】
また、中心部に欠陥や軸心割れのない鋼片でも、穿孔および延伸圧延や押出加工により鋼管内面に欠陥が発生する場合がある。この欠陥は鋼片の組成に依存するため、鋳造を行う前の溶鋼組成の成分調整が必要となる。
【0012】
本願発明の課題は、高温強度の高い耐熱用低合金鋼管とそのような鋼管を疵の発生なく製造する方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、まず、鋳造により作製された鋼片の中心部に欠陥や軸心割れが生じない条件、または最終製品に影響を及ぼさない程度の軽微な欠陥や軸心割れしか生じない条件について検討した。
【0014】
鋳造により発生する欠陥は、溶鋼が凝固した後の冷却過程に起こる収縮により発生する。鋳造工程では、冷却過程において、δフェライトが最初に析出し、それがオーステナイトγ(以下、単にγと記す)に変態する。δフェライトがγに変態(A変態)する際には、収縮が起こり体積が減少するため、δフェライトが、先に変態が完了して生成したγの拘束を受け、引張応力が発生する。
【0015】
その結果、δフェライト粒の粒界や、δフェライトとγの粒界部でポロシティなどの欠陥が生じる。ポロシティなどが発生しないようにするには、本出願人が先に特許出願(特願 2001-128947号)した明細書に詳述したように、溶鋼が粒界部へスムーズに供給されるようにγの変態が速やかに行われればよい。
【0016】
δフェライトからγへの変態の進行を速やかに行うには、液相から変態したδフェライトが短時間のうちにγに変態すればよい。言い換えれば、液相からδフェライトへの変態点とδフェライトからγへの変態点の温度差が小さければ小さいほどよい。そこで、この温度差を簡易に求めるために、凝固形態を単相凝固と仮定した場合の変態温度差DFを利用した。
【0017】
図1は、液相からδフェライトへの変態点とδフェライトからγへの変態点の温度差(DF)を概念的に表した図である。図1においてDFは液相Lからδフェライトへの変態点Tとδフェライトからγへの変態点Tの差で与えられる。すなわち、DF=T−Tである。
【0018】
単相凝固とした場合のTとTは、鋼に含まれる元素の量と平衡分配係数などにより算出できることが認識されており、これらの知見と発明者らによる実験結果によりTおよびTを下記のとおり定義した。なお、下記式の右辺に含まれる元素記号は各元素の含有量(質量%)である。
【0019】
Figure 0003711959
【0020】
そして、DFが一定の条件を満たすとき、連続鋳造して得られる鋼片に発生するポロシティなどの欠陥を抑制できることを知得した。
【0021】
また、連続鋳造の際、鋳片中心部の固相率が或る範囲内にあるときに鋳片を一定の水量密度で強制冷却すると、上記のDFが大きい場合でも、鋼片に発生するポロシティなどの欠陥を抑制できることも知得した。
【0022】
一方、上記の条件を具備する鋼片を用いても、熱間にて製管した後の鋼管に表面疵が発生することがあった。そこで、その原因について調べたところ、この表面疵はCu添加鋼の場合に限って発生しており、粒界に偏析したCuが製管時に融解するために表面疵(いわゆる、「Cuチェッキング」)になることを知得した。さらに、鋼片に含有されるNiとのバランスを調整し、Cuを母相へ固溶させることで、Cuチェッキングの発生を抑制することができることもわかった。
【0023】
また更に、このような鋼管に対し、高温強度を高めるため、炉内に冷却帯が設けられた高能率の連続式の熱処理炉を用い、鋼管の金属組織をベイナイトが主体の組織となるような熱処理を施すことを考え、その熱処理の条件について検討した。その結果、ベイナイト主体の組織を得るには、B含有量、特に窒素と結合していないフリーのB含有量を規制するとともに、特定の冷却速度で冷却する必要があることも知得した。鋼管の金属組織をベイナイト主体の組織とすれば、炭化物が高密度かつ均一に分散することにより高温強度を確保できる。
【0024】
本発明は、上述の知見をもとに完成に至ったものであり、その要旨は下記(1)〜(4)の耐熱用低合金鋼管、および下記(5)〜(7)の耐熱用低合金鋼管の製造方法にある。
【0025】
(1)質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.01〜0.7%、Mn:0.01〜1.5%、P:0.020%以下、S:0.008%以下、Cr:0.82〜2.7%、Ti:0.005〜0.02%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%、B:0.0020〜0.0100%、Al:0.02%以下、Ca:0.005%以下およびN:0.0100%以下、ならびにMo:0.01〜1%およびW:0.01〜2%のうちの1種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、下記(a)式および(c)式を満足し、金属組織がベイナイト主体の組織である耐熱用低合金鋼管。
【0026】
Figure 0003711959
ここで、上記の各式中の元素記号は鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味する。
【0027】
(2)質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.01〜0.7%、Mn:0.01〜1.5%、P:0.020%以下、S:0.008%以下、Cr:0.82〜2.7%、Ti:0.005〜0.02%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%、B:0.0020〜0.0100%、Al:0.02%以下、Ca:0.005%以下およびN:0.0100%以下、ならびにMo:0.01〜1%およびW:0.01〜2%のうちの1種以上、さらにCu:0.01〜0.5%およびNi:0.01〜0.5%のうちの1種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、下記(a)式および(c)式を満足し、金属組織がベイナイト主体の組織である耐熱用低合金鋼管。
【0028】
Figure 0003711959
ここで、上記の各式中の元素記号は鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味する。
【0029】
(3)質量%で、Cu 0.01 0.5 %および Ni 0.01 0.5 をともに含む場合、下記(d)式を満足することを特徴とする上記(2)に記載の耐熱用低合金鋼管。
【0030】
1≦(Ni/Cu)<5 ・・・・・・(d)
(4)質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.01〜0.7%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Cr:0.82〜2%、Mo:0.01〜1%、Ti:0.005〜0.02%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%、B:0.0020〜0.0100%、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜0.5%、Al:0.01%以下、Ca:0.005%以下およびN:0.0100%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、下記(b)式、(c)式および(d)式を満足し、金属組織がベイナイト主体の組織である耐熱用低合金鋼管。
【0031】
Figure 0003711959
ここで、上記の各式中の元素記号は鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味する。
【0032】
(5)上記(1)から(3)までのいずれかに記載の耐熱用低合金鋼管の製造方法であって、連続鋳造により断面積が1018cm以下の鋼片を作製し、この鋼片を素材として熱間で穿孔および延伸圧延を施して継目無鋼管とした後、この鋼管を連続式の熱処理炉に装入して加熱するとともに炉内において冷却する際、冷却速度を500℃/h以上とする耐熱用低合金鋼管の製造方法。
【0033】
(6)上記(4)に記載の耐熱用低合金鋼管の製造方法であって、連続鋳造により断面積が1018cm以下の鋼片を作製し、この鋼片を素材として熱間で穿孔および延伸圧延を施して継目無鋼管とした後、この鋼管を連続式の熱処理炉に装入して加熱するとともに炉内において冷却する際、冷却速度を500〜3000℃/hとする耐熱用低合金鋼管の製造方法。
【0034】
(7)連続鋳造により断面積が1018cm以下の鋼片を作製する際、溶鋼を断面積が1018cm以下のモールドに鋳込み、鋳片中心部の固相率が0.1〜0.8になる位置から0.99以上になる位置までの間を水量密度25〜300リットル/min・mで強制冷却する上記(5)または(6)に記載の耐熱用低合金鋼管の製造方法。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明で対象とする低合金鋼管とは、例えば、JIS G 3462に規定されるSTBA22、STBA23、STBA24およびこれらの相当鋼、火力技術基準に規定される火STBA21およびその相当鋼などの低合金鋼を使用して作製された鋼管のことをいう。以下では、本発明に係る耐熱用低合金鋼管および耐熱用低合金鋼管の製造方法に関し、鋼管の化学組成と鋼管の製造条件についてそれぞれ詳細に述べる。
【0036】
1.鋼管の化学組成
以下では、鋼管の化学組成について詳述する。なお、以下の%はすべて質量%を示す。
【0037】
C:0.03〜0.10%
CはNb、Ti、VなどとMX型炭化物を形成し、高温強度を高める効果を有する。しかし、Cの含有量が低いと炭化物が十分析出せず、焼入れ能が低下するため、C含有量は0.03%以上とする。一方、Cの含有量が0.10%を超えると、溶接施工性が低下し、さらに連続鋳造の際にモールド内に添加されるパウダの選択が困難になる。したがって、C含有量は0.03〜0.10%とする。
【0038】
Si:0.01〜0.7%
Siは溶鋼を脱酸し、さらに、鋼自体の耐水蒸気酸化性を高める効果も有する。これらの効果は、Si含有量が0.01%以上で得ることができる。しかし、Siを過剰に含有させると靱性が劣化し、クリープ強度も低下するので、Si含有量の上限は0.7 %とする。
【0039】
Mn:0.01〜1.5%
Mnは鋼の焼入れ性を向上させ、靱性を劣化させることなく強度を向上させる効果を有する。これらの効果は0.01%以上で得られ、0.3 %以上の場合に特に顕著になる。一方、過剰に含有させると、クリープ強度の低下を招くことがあるので、Mn含有量の上限は1.5 %とする。好ましいのは0.3〜1.5%である。
【0040】
P:0.020%以下
Pは溶接時に高温割れを引き起こす不純物元素で、その含有量が0.020 %を超えると溶接特性が著しく悪くなるので、P含有量は0.020 %以下とする。好ましいのは0.015 %以下、より好ましいのは0.010 %以下である。なお、P含有量は低ければ低いほどよい。
【0041】
S:0.008%以下
Sはクリープ延性を低下させる不純物元素で、その含有量が0.008 %を超えるとクリープ延性が著しく低下するので、S含有量は0.008 %以下とする。好ましいのは0.005 %以下、より好ましいのは0.003 %以下である。なお、P含有量も低ければ低いほどよい。
【0042】
Cr:0.82〜2.7%
Crは耐酸化性および耐高温腐食性を向上させる効果を有する。これらの効果は0.82%以上の含有量で得られる。しかし、2.7%を超えると溶接施工性が低下するので、Cr含有量の上限は2.7%とする。好ましい上限は2%である。
【0043】
Ti:0.005〜0.02%
TiもMoと同様にMX型窒炭化物を析出させるため析出強化に寄与し、特にフリーの窒素を固定するのに効果的に作用する。また、焼入れ性を向上させる効果も有する。これらの効果は0.005 %以上の含有量で得られるが、0.02%を超えると靱性が低下するので、Ti含有量は0.005 〜0.02%とする。
【0044】
V:0.01〜0.5%
VもMoおよびTiと同様にMX型の窒炭化物を析出させるため析出強化に寄与する。この効果は0.01%以上の含有量で得られるが、0.5 %を超えると靱性が低下するので、V含有量は0.01〜0.5 %とする。
【0045】
Nb:0.01〜0.5%
NbもMo、TiおよびVと同様にMX型の窒炭化物を析出させるため析出強化に寄与する。この効果は0.01%以上の含有量で得られるが、0.5 %を超えると靱性が低下するので、Nb含有量は0.01〜0.5 %とする。
【0046】
B:0.0020〜0.0100%
Bは焼入れ性を向上させる効果を有するとともに、後述する熱処理により鋼管の金属組織をベイナイトに変態させるために不可欠な元素である。これらの効果が発揮されるのは、B含有量が0.0020%以上のときである。しかし、Bを過剰に含有させると、靱性が低下するので、B含有量の上限は0.0100%とする。
【0047】
Al:0.02%以下
Alは溶鋼の脱酸のために必要に応じて添加することができる。脱酸効果を十分に発揮されるには、Al含有量を0.001 %以上とするのが望ましい。しかし、Al含有量が過剰になると、鋼中に非金属介在物量が増加し、クリープ強度が劣化するのでAl含有量の上限は0.02%とする。好ましいのは0.01%以下である。なお、前述したSiやMnなどによって脱酸が十分に行われ場合には、Alは必ずしも積極的に添加しなくてもよい。
【0048】
Ca:0.005%以下
Caは溶鋼内の介在物の形態を球状化させて精錬中もしくは鋳造時に溶鋼内より浮上分離させる作用をもつ。また、連続鋳造の際に注湯ノズルの詰まりを防止する。したがって、必要に応じて含有させることができる。これらの効果が十分に発揮されるのは、Ca含有量が0.0001%以上のときである。しかし、Caを過剰に含有させると、浮上分離されずに鋼中に残留する球状のCa系介在物量が増加し、クリープ強度が劣化するので、Ca含有量の上限は0.005 %とする。
【0049】
N:0.0100%以下
Nは鋼の焼入れ性を左右する元素であり、Nが鋼中に大量に含有していると、焼入れ性が低下してベイナイト組織の確保が困難になるだけでなく、Nを固定するためにTiなど他の元素を多量に含有させる必要があるため、N含有量は0.0100%以下であることが好ましい。
【0050】
Mo:0.01〜1%
Moは固溶強化に寄与するとともに、MX型の窒炭化物を析出させるため析出強化にも寄与し、クリープ強度を向上させる効果を有する。これらの効果は0.01%以上の含有量で得られる。一方、Moは高価な元素で、過剰な添加は製造コストの上昇を招くためその含有量はできるだけ低く抑えるのが好ましいので、Mo含有量の上限は1%とする。
【0051】
W:0.01〜2%
Wは、上記のMoと同様に、固溶強化に寄与するとともに、MX型の窒炭化物を析出させるため析出強化にも寄与し、クリープ強度を向上させる効果を有する。これらの効果は0.01%以上の含有量で得られる。一方、Wも高価な元素で、過剰な添加は製造コストの上昇を招くためその含有量はできるだけ低く抑えるのが好ましいので、W含有量の上限は2%とする。
【0052】
なお、MoとWは必ずしも複合で含有させる必要はなく、いずれか一方を含有させれるだけでもよい。
【0053】
本発明の鋼管の一つは上記の成分以外は実質的にFeからなるものである。本発明の鋼管の他の一つは、上記の成分に加えて更に下記の成分のうちのいずれか一方または両方を含むものである。
【0054】
Cu:0.01〜0.5%
Cuはオーステナイト形成元素として作用するとともに、DFを小さくする作用を有し、鋼片を連続鋳造する際に発生する軸心割れを軽減させるだけでなく、鋼管の熱伝導性をも向上させる。これらの効果は、0.01%以上の含有量で得られる。しかし、0.5 %を超えると、連続鋳造時に通常のポーラスなスケールとは異なり、緻密でしかも鋳片との密着性が高くて熱伝導性が良好なスケールを形成し、これが原因で過冷却を招いてγ→σ変態が起こり、鋳片の中心部に割れが発生しやすくなる。このため、添加する場合のCu含有量は0.01〜0.5 %とした。
【0055】
Ni:0.01〜0.5%
NiもCuと同様にオーステナイト形成元素として作用するとともに、DFを小さくする作用を有し、鋼片を連続鋳造する際に発生する軸心割れを軽減させるだけでなく、靱性をも向上させる。これらの効果は、0.01%以上の含有量で得られるが、Niは高価な元素であるから過剰な添加は製造コストの上昇を招く。このため、添加する場合のNi含有量は0.01〜0.5 %とした。
【0056】
以上では、鋼管に含有される成分について述べた。本発明の鋼管では、さらに各成分が前述の(a)式〜(d)式、特に(a)式、(b)式および(c) 式を満たさなければならない。(a)式〜(d)式については、鋼管の製造条件と密接に関係するものであるので、以下の「鋼管の製造条件」で説明する。
【0057】
2.鋼管の製造条件
本発明の耐熱用低合金鋼管は、例えば、溶鋼を、内径が製管用のビレット径に等しいように成形された砂型や鋼製の鋳型に鋳込んで製造された鋳込みままの鋼片、または通常の造塊法により得られたインゴットに分塊圧延などを施して所定のビレット径に成形した鋼片を用いて製造することもできるが、溶鋼を連続鋳造して鋼片を作製することが好ましい。連続鋳造法では、製造コストを低く抑えることができるからである。このとき、鋼片(以下においては鋳片ということもある)は、鋳片中心部の固相率が0.1〜0.8になる位置から0.99以上になるまでの間を水量密度25〜300リットル/min・mで強制冷却するのが好ましい。その理由は後述するとおりである。
【0058】
以下では、本発明の耐熱用低合金鋼管を連続鋳造したままの鋳片を用いて製造する方法について述べる。この製造方法では、まず、溶鋼を連続鋳造により鋳込み、断面積が1018cm以下の鋳片(鋳片が丸ビレットの場合、直径360mm以下)を作製する。
【0059】
本発明で、連続鋳造により得られる鋳片の断面積は1018cm以下であることを必要とするのは、この面積を超える断面積を有する鋳片を連続鋳造で鋳込むと、鋳片の中心部の冷却が充分に行われず、半溶融部の体積が大きくなって、凝固した鋳片の外殻が半溶融部を支えることができなくなり、連続鋳造が行えなくなるからである。
【0060】
鋳片の断面形状には特に制限はないが、連続鋳造した後に熱間で行われる穿孔および延伸圧延を考慮に入れると、丸形状であることが望ましい。すなわち、連続鋳造では丸ビレットを作製することが好ましい。
【0061】
一方、連続鋳造により鋳片を作製しても、その鋳片の中心部に欠陥が発生している場合には、穿孔および延伸圧延して鋼管にしたとき、鋼管内面に欠陥が生じる場合がある。鋳片の断面積が1018cm以下であることを前提として、鋼管内面の欠陥の発生を抑制するためには、鋼の化学組成に応じて下記(a)式を満たすことが必要である。
【0062】
Figure 0003711959
ここで、上記各式の右辺中の元素記号は鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味する。
【0063】
DFが250 を超えると、前述したように、溶鋼が凝固する際、鋼片の中心部には欠陥が発生し、この欠陥が最終製品である鋼管に引き継がれる。
【0064】
連続鋳造により鋼片を作製した後は、この鋼片をそのまま熱間で穿孔および延伸圧延して鋼管とする。その際、上記のようにDFを250 以下とすることにより、鋼管にはポロシティなどの欠陥や軸心割れに起因する欠陥は発生しないか、発生したとしても軽微なものとなる。
【0065】
鋳片は、前述したように、その中心部の固相率が0.1〜0.8になる位置から0.99以上になるまでの間を鋳片表面における水量密度が25〜300 リットル/min・mになる条件で強制冷却するのが好ましい。このように強制冷却すると、DFを250 以下としたこととの相乗作用により、鋳片の中心部にポロシティなどの欠陥や軸心割れがより一層発生しにくくなる。
【0066】
強制冷却を行う場合の条件を上記のように定めたのは次の理由による。鋳片中心部の固相率が0.1 未満の位置で強制冷却を開始したのでは、冷却開始が早すぎて鋳片中心部の収縮代が大きくなるときに表面の収縮代を大きく保てなくなって中心部の内質改善がなされない。また、固相率が0.8 を超える位置で強制冷却を開始したのでは、最終の凝固位置に近すぎて中心部の内質改善に必要な時間が確保できない。さらに、固相率が0.99未満の位置で強制冷却を終了すると、中心部が完全に凝固していないのに加え、鋳片表面の復熱によって中心部に引張応力が作用するために逆に中心部の内質が悪化する。一方、水量密度が25リットル/min・m未満では、強制冷却したことにならず、300リットル/min・mを超えると鋳片表面が過冷却となり、鋳片の曲がりが発生するなどの問題が生じる。
【0067】
鋳片中心部の固相率が上記の値となる位置は、鋳片が丸ビレットの場合、例えば、次のようにして求めることができる。すなわち、下記(e) 式で表される円柱座標熱伝導微分方程式を解き、時間t経過後の半径rの位置における鋳片の温度θを求め、求めた温度θと状態図とから鋳片中心部の固相率を求める。そして、固相率が0.1〜0.8および0.99となるときの経過時間tと鋳造速度に基づいてメニスカスからの距離を求めることにより、固相率が0.1〜0.8および0.99となる位置を知る。
【0068】
∂H/∂t=λ/ρ{(∂φ/∂r)+(1/r)(∂φ/∂r)}+(Qi/ρ) ・・・・(e)
ここで、
H:鋳片の含熱量(J/kg)、
t:凝固開始からの経過時間(sec)、
λ:鋳片の熱伝導率(J/m・s・K)、
ρ:鋼の密度(kg/m)、
φ:鋼片温度の変換温度(K)、「φ=∫θ θd(λ/λ)dθ」、
r:半径(m)、
θ:鋳片の温度(K)、
Qi:鋳片の内部発生熱(J/m・sec)。
【0069】
図2は、上記強制冷却の実施態様を示す図で、強制冷却は図中の最終冷却手段7を用いて行えばよい。なお、図中、1は一次冷却手段を兼ねる水冷鋳型、2は浸漬ノズル、3は溶鋼、4は凝固殻、5は鋳型直下に設けられた二次冷却手段、6は凝固が完了した鋳片(丸ビレット)、8はピンチロール、9は切断トーチである。
【0070】
なお、上記の強制冷却を行わない場合は、DFは180 以下とするのが望ましい。
【0071】
鋳片が低融点金属であるCuを多く含む場合には、前述したように、Cuチェッキングが生じて鋼管表面に疵が発生する。なお、Cuチェッキングとは、Cuが粒界に偏析し、そのCuが製管時に溶解し、表面疵となる現象である。
【0072】
Cuチェッキングは、Cuの含有量が0.5 %以下であれば顕著には生じないが、Cuとともに下記(d) 式を満たすNiを添加することでその発生を確実に防ぐことができる。したがって、Cuを添加する場合はNiと複合で添加するのがよい。
【0073】
1≦(Ni/Cu)<5 ・・・・・・(d)
Cu含有量がNi含有量より多いと、鋼管表層にCuチェッキングが生じて表面疵が発生する。このため、1≦(Ni/Cu)を満たす必要がある。一方、(Ni/Cu)の値を大きくすることはCuチェッキングの発生防止には効果があるが、Ni含有量がCu含有量の5倍以上、すなわち(Ni/Cu)≧5ではその効果は飽和する。高価なNiの含有量を抑制するためには、(Ni/Cu)<5とするのが好ましい。
【0074】
製管後の鋼管は、連続型焼鈍炉などの熱処理炉を用いて熱処理を行う。熱処理により鋼管組織をベイナイト主体の組織に変態させることで高温強度の高い耐熱用低合金鋼管を得る。ベイナイトは所定の温度で一定時間以上保持した後、急冷することによって得ることができる。冷却履歴によって羽根状ベイナイト(上部ベイナイト)や針状ベイナイト(下部ベイナイト)といった特性の異なるベイナイトが得られるが、本発明で変態させて得るベイナイトはその種類を問わない。
【0075】
熱処理炉内では、所定の温度に加熱保持した後、500 ℃/h以上の速度で冷却する。連続型焼鈍炉、例えば、ハースローラ式光輝焼鈍炉では、冷却速度は焼鈍炉内での送管速度に比例する。送管速度が遅い場合、すなわち冷却速度が遅い場合、生産性は低下する。そのため、加熱保持した後の冷却速度は500 ℃/h以上とする。なお、冷却速度は速ければ速いほどよいので上限は特定しない。しかし、処理能力や経済性など考慮して設計された既存のハースローラ式光輝焼鈍炉の冷却能の上限がおよそ3000℃/h程度であることからその上限は3000℃/hとするのが好ましい。
【0076】
500 ℃/h以上の冷却速度で冷却する場合、下記(c)式を満たすことが必要である。
【0077】
>0 ・・・・・・・・・・・・(c)
ただし、
=B-{(11/14)×N-(11/48)×Ti}
ここで、上記の各式中の元素記号は鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味する。
【0078】
B(ボロン)は熱処理の際の焼入れに重要な役割を果たす。上記 (c) のEは、焼入れ指数を表し、焼入れに有効なB含有量を表す。Bは窒素と容易に化合してBNを形成する。窒素と化合したBは焼入れには有効に働かない。そのため、焼入れに有効なBは、全B量からBNとなるB量を差し引いたものとなる。一方、チタンが存在すれば、優先的にTiNが形成されるため、NはTiNとして消費され、BNとなるN量は減少する。したがって、Eは窒素と化合してBNを形成しないフリーのB含有量を表す。
【0079】
が正、すなわち焼入れに有効なBが鋼管中に含有していれば、冷却による焼入れが適切に行われ、ベイナイト組織を得ることができる。
【0080】
十分な時間で所定の温度に加熱保持して上記の条件で冷却すれば、ベイナイトの変態量を100%近くにすることができる。熱処理を施すことにより鋼管の内外面にフェライトの脱炭層が形成されることを考慮すれば、ベイナイトの変態量は80%を超える量とするのが望ましい。また、脱炭層を除く鋼管のベイナイトの変態量は100%であることが好ましい。保持温度はあらかじめ作製した冷却変態図(CCT 図)を参照して決定すればよい。
【0081】
【実施例】
《実施例1》
表1に示す化学組成を有する鋼を溶製し、図2に示す湾曲型連続鋳造装置を用いて表2に示す種々の条件で外径が191〜360mmの11種類の丸ビレットを作製した。その際、強制冷却は図2に示す最終冷却手段7で行った。
【0082】
作製した丸ビレットは、その切断端面を対象に浸透探傷試験を行ってセンターポロシティの発生面積率を調べた後、マンネスマン・マンドレルミル方式の継目無鋼管製造設備に供し、表2に示す種々の寸法の継目無鋼管に仕上げた。なお、穿孔圧延は温度1200℃、穿孔比(穿孔圧延後の管の長さ/ビレット長さ)2.5 で行い、引き続いてマンドレルミルで延伸圧延した。
【0083】
仕上げた継目無鋼管は、JIS G 0582に規定される超音波探傷試験(人工疵の種類:N-12.5に供し、管内面の疵発生率(本数比率)を調べ、その結果を表2に併せて示した。
【0084】
【表1】
Figure 0003711959
【0085】
【表2】
Figure 0003711959
【0086】
表2に示す結果からわかるように、本発明で規定する範囲内の条件で作製された試験番号1〜8の丸ビレットは、センターポロシティの発生面積率が0.06%以下と小さく、管内面の疵発生率が0.6 %以下と低い。
【0087】
これに対し、強制冷却の開始位置が遅すぎる試験番号9の丸ビレットはセンターポロシティの発生面積率は0.10%と低いものの、管内面の疵発生率が5%と高い。また、強制冷却の終了位置が早すぎる試験番号10の丸ビレットは、センターポロシティの発生面積率が1.00%と高く、管内面の疵発生率も60%と著しく高い。なお、強制冷却の水量密度が高すぎる試験番号11の丸ビレットは、センターポロシティの発生面積率が1.20%と高いのに加えて、大きな曲がりが発生し、製管には供し得なかった。
【0088】
《実施例2》
図2に示す湾曲型連続鋳造装置を用い、表3に示す条件で、表4と表5に示す化学組成を有する15種類の鋼からなる丸ビレットを作製した。その際、強制冷却は実施例1の場合と同様に、図2に示す最終冷却手段7で行った。
【0089】
作製した丸ビレットは、実施例1の場合と同様の方法により、センターポロシティの発生面積率を調べた後、マンネスマン・マンドレルミル方式の継目無鋼管製造設備に供し、外径50.8mm、肉厚8.0 mmの継目無鋼管に仕上げ、実施例1の場合と同じ条件の超音波探傷試験に供して管内面の疵発生率を調べた。なお、穿孔圧延は1200℃、いずれのビレットも穿孔比2.5 で行い、引き続いてマンドレルミルで延伸圧延した。
【0090】
また、超音波探傷後の継目無鋼管は、ハースローラ式光輝焼鈍炉に装入して975 ℃に30分保持した後に表6に示す冷却速度で炉冷する焼きならし処理と、720℃に1時間保持する焼戻し処理を施した。熱処理後の継目無鋼管は、その金属組織を調べる一方、各鋼管からクリープ試験片を採取してクリープ試験に供し、550 ℃、1万時間のクリープ強度を調べた。以上の調査結果を、表6に併せて示した。
【0091】
【表3】
Figure 0003711959
【0092】
【表4】
Figure 0003711959
【0093】
【表5】
Figure 0003711959
【0094】
【表6】
Figure 0003711959
【0095】
表6に示す結果からわかるように、化学組成および熱処理の冷却速度が本発明で規定する範囲内の鋼No. 1〜10の継目無鋼管は、センターポロシティの発生面積率が0.05%以下と小さく、管内面の疵発生率が0.8 %以下と低く、しかも金属組織がいずれもベイナイト単相で、クリープ強度も175MPa以上と高い。
【0096】
これに対し、化学組成が本発明で規定する範囲を外れる鋼No. 11〜15の継目無鋼管は、センターポロシティの発生面積率が0.04%以下と小さく、管内面の疵発生率も0.3 %以下と低いものの、金属組織がいずれもフェライトとパーライトの混合組織で、クリープ強度が102MPa以下と低い。なお、鋼No. 12の丸ビレットは中心部に軸心割れが発生しており、製管には供し得ないものであった。
【0097】
《実施例3》
表7と表8に示す化学組成を有する13種類の鋼を溶製し、その溶鋼を逆円錐台形状の鋳型に鋳込んで上端の直径が250 mm、下端の直径が210 mm、高さが500 mmの重さ180 kgの小型インゴットをそれぞれ2つ作製した。
【0098】
2つの小型インゴットのうち、一方のインゴットは、その中央部を横断面に沿って切断し、鋳造により生成した欠陥や軸心割れを確認するのに用いた。もう一方のインゴットは、熱間鍛造を施して外径190 mmの丸ビレットにした後、熱間押出法により、押出温度1150℃で外径50.8mm、肉厚8.0 mmの継目無鋼管とした。
【0099】
その後、金属組織をベイナイト主体の組織にするために、各鋼管をハースローラ式光輝焼鈍炉に装入して975 ℃に30分保持した後に1000℃/時間で炉冷する焼きならし処理と、720 ℃に1時間保持する焼戻し処理を施した。
【0100】
熱処理後の継目無鋼管は、その金属組織を光学顕微鏡で確認した後、実施例1の場合と同様の超音波深傷試験に供して管内面の疵発生率を調べる一方、各鋼管からクリープ試験片を採取してクリープ試験を行い、550℃、1万時間のクリープ強度を調べた。以上の調査結果を、表9にまとめて示した。
【0101】
【表7】
Figure 0003711959
【0102】
【表8】
Figure 0003711959
【0103】
【表9】
Figure 0003711959
【0104】
表9に示す結果からわかるように、試験に供した溶鋼は鋳造性が悪く、いずれのインゴットにも軸心割れが生じた。しかし、化学組成が本発明で規定する範囲内の鋼No. 16〜25のインゴットは、軸心割れが14mm以下と小さくて管内面の疵発生率も3%以下と少なく、金属組織もベイナイト単相で、クリープ強度が154MPa以上と高い。
【0105】
これに対し、化学組成が本発明で規定する範囲を外れる鋼No. 26〜28のインゴットのうち、本発明で規定する範囲内ではあるが、DFが凝固時に強制冷却を行わない場合における好まし上限の180 を超える鋼No. 26および27のインゴットは、軸心割れが25mm以上と極めて大きく、製管用の素材としては使用できなかった。
【0106】
また、鋼No. 28のインゴットは、軸心割れは12mmで製管用の素材として使用できたが、Ni含有量が少なすぎるためにCuチェキングが生じ、管内面の疵発生率が5%と高く、しかもEが負のために金属組織がフェライトとパーライトの混合組織となり、クリープ強度が113MPa以下と低い。
【0107】
《実施例4》
表10と表11に示す化学組成を有する4種類の鋼を210 トン転炉で溶製し、図2に示す湾曲型連続鋳造装置を用いて外径191mm(断面積286cm)の丸ビレットを作製した。その際、最終冷却手段7による強制冷却は実施しなかった。
【0108】
作製した丸ビレットは、その端面を対象に、浸透深傷試験を行って中心部の欠陥の有無を確認した後、実施例1の場合と同様に、マンネスマン・マンドレルミル方式の継目無鋼管製造設備に供し、外径50.8mm、肉厚8.0 mmの継目無鋼管に仕上げた。なお、穿孔圧延は温度1200℃、穿孔比2.5 で行い、引き続いてマンドレルミルで延伸圧延した。また、中心部の欠陥の有無は、欠陥がないか、あっても穿孔および延伸圧延を行っても支障がないと判断されるものは「○」、内面疵になると判断されるものは「×」として評価し、「×」のものは製管には供しなかった。
【0109】
仕上げた鋼管は、これも実施例1の場合と同じ条件の超音波探傷試験に供して管内面の疵発生率(本数比率)を調べた。超音波探傷後の継目無鋼管は、ハースローラ式光輝焼鈍炉に装入して975 ℃に10分保持した後に1000℃/時間の冷却速度で炉冷する焼きならし処理と、720 ℃に1時間保持する焼戻し処理を施した。
【0110】
熱処理後の継目無鋼管は、その金属組織を調べる一方、各鋼管からクリープ試験片を採取してクリープ試験に供し、550 ℃、1万時間のクリープ強度を調べた。以上の調査結果を、表12に併せて示した。
【0111】
【表10】
Figure 0003711959
【0112】
【表11】
Figure 0003711959
【0113】
【表12】
Figure 0003711959
【0114】
表12に示す結果からわかるように、化学組成が本発明で規定する範囲内の鋼No. 29と30の継目無鋼管は、疵の発生率が2〜3%と少なく、金属組織がいずれもベイナイト単相で、クリープ強度も167MPa以上と高い。
【0115】
これに対し、Ti量とEが本発明で規定する範囲を外れる鋼No. 31と32のうち、DFが凝固時に強制冷却を行わない場合における好まし上限の180 を超える鋼No. 31の丸ビレットの中心部には、穿孔および延伸圧延を行うと内面疵になる欠陥が発生していた。また、DFが180 以下の鋼No. 32の丸ビレットは中央部の欠陥の程度は問題にならず製管できたが、(Ni/Cu)値が0.4 でNi含有量が少なすぎるためにCuチェキングが発生し、疵の発生率が7%と高く、Eも負であるために金属組織がフェライトとパーライトの混合組織となり、クリープ強度が108MPa以下と低い。
【0116】
【発明の効果】
本発明の耐熱用低合金鋼管は、高温強度が高いベイナイトが主体の組織からなるために耐熱性に優れるので、ボイラや化学プラントなど厳しい使用環境下で用いることができる。また、製管時に発生する疵が少ないので品質が優れている。
【0117】
さらに、本発明の耐熱用低合金鋼管の製造方法は、鋼管の化学組成の調整を行い、連続鋳造を行った後、穿孔および延伸圧延を行うか、または熱間押出し、ついで熱処理を施すことにより鋼管を製造するので、従来の製造設備を使用でき、製造コストを抑えた低合金鋼管を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】液相からδフェライトへの変態点とδフェライトからオーステナイト(γ)への変態点との温度差(DF)を概念的に表した図である。
【図2】湾曲型連続鋳造装置による丸ビレットの鋳造時における強制冷却の実施態様を示す側断面図である。
【符号の説明】
1:一次冷却手段を兼ねる水冷鋳型、
2:浸漬ノズル、
3:溶鋼、
4:凝固殻、
5:二次冷却手段
6:凝固が完了した鋳片(丸ビレット)、
7:最終冷却手段
8:ピンチロール、
9:切断トーチ。

Claims (7)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.01〜0.7%、Mn:0.01〜1.5%、P:0.020%以下、S:0.008%以下、Cr:0.82〜2.7%、Ti:0.005〜0.02%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%、B:0.0020〜0.0100%、Al:0.02%以下、Ca:0.005%以下およびN:0.0100%以下、ならびにMo:0.01〜1%およびW:0.01〜2%のうちの1種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、下記(a)式および(c)式を満足し、金属組織がベイナイト主体の組織であることを特徴とする耐熱用低合金鋼管。
    DF=T−T≦250 ・・・・・・・(a)
    >0 ・・・・・・・・・・・・(c)
    ただし、
    =100000/(55.25+2.35C+0.37Si+0.16Mn+1.01P+1.15S+0.04Cr
    +0.12Mo+0.01W)。
    =100000/(60.06−4.51C+3.84Si−0.19Mn+0.98P+0.25S+1.01Cr
    +0.55Mo+1.29W)。
    =B−{(11/14)×N−(11/48)×Ti}。
    ここで、上記の各式中の元素記号は鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味する。
  2. 質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.01〜0.7%、Mn:0.01〜1.5%、P:0.020%以下、S:0.008%以下、Cr:0.82〜2.7%、Ti:0.005〜0.02%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%、B:0.0020〜0.0100%、Al:0.02%以下、Ca:0.005%以下およびN:0.0100%以下、ならびにMo:0.01〜1%およびW:0.01〜2%のうちの1種以上、さらにCu:0.01〜0.5%およびNi:0.01〜0.5%のうちの1種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、下記(a)式および(c)式を満足し、金属組織がベイナイト主体の組織であることを特徴とする耐熱用低合金鋼管。
    DF=T−T≦250 ・・・・・・・(a)
    >0 ・・・・・・・・・・・・(c)
    ただし、
    =100000/(55.25+2.35C+0.37Si+0.16Mn+1.01P+1.15S+0.04Cr
    +0.12Mo+0.01W+0.18Cu+0.13Ni)。
    =100000/(60.06−4.51C+3.84Si−0.19Mn+0.98P+0.25S+1.01Cr
    +0.55Mo+1.29W−1.49Cu−1.34Ni)。
    =B−{(11/14)×N−(11/48)×Ti}。
    ここで、上記の各式中の元素記号は鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味する。
  3. 質量%で、Cu:0.01〜0.5%およびNi:0.01〜0.5%をともに含む場合、下記(d)式を満足することを特徴とする請求項2に記載の耐熱用低合金鋼管。
    1≦(Ni/Cu)<5 ・・・・・・(d)
  4. 質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.01〜0.7%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Cr:0.82〜2%、Mo:0.01〜1%、Ti:0.005〜0.02%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%、B:0.0020〜0.0100%、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜0.5%、Al:0.01%以下、Ca:0.005%以下およびN:0.0100%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、下記(b)式および(c)式を満足し、金属組織がベイナイト主体の組織であることを特徴とする耐熱用低合金鋼管。
    DF=T−T≦180 ・・・・・・・(b)
    >0 ・・・・・・・・・・・・(c)
    1≦(Ni/Cu)<5 ・・・・・・(d)
    ただし、
    =100000/(55.25+2.35C+0.37Si+0.16Mn+1.01P+1.15S+0.04Cr
    +0.12Mo+0.18Cu+0.13Ni)。
    =100000/(60.06−4.51C+3.84Si−0.19Mn+0.98P+0.25S+1.01Cr
    +0.55Mo−1.49Cu−1.34Ni)。
    =B−{(11/14)×N−(11/48)×Ti}。
    ここで、上記の各式中の元素記号は鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味する。
  5. 請求項1から2のいずれかに記載の耐熱用低合金鋼管の製造方法であって、連続鋳造により断面積が1018cm2以下の鋼片を作製し、この鋼片を素材として熱間で穿孔および延伸圧延を施して継目無鋼管とした後、この鋼管を連続式の熱処理炉に装入して加熱するとともに炉内において冷却する際、冷却速度を500℃/h以上とすることを特徴とする耐熱用低合金鋼管の製造方法。
  6. 請求項3に記載の耐熱用低合金鋼管の製造方法であって、連続鋳造により断面積が1018cm2以下の鋼片を作製し、この鋼片を素材として熱間で穿孔および延伸圧延を施して継目無鋼管とした後、この鋼管を連続式の熱処理炉に装入して加熱するとともに炉内において冷却する際、冷却速度を500〜3000℃/hとすることを特徴とする耐熱用低合金鋼管の製造方法。
  7. 連続鋳造により断面積が1018cm2以下の鋼片を作製する際、溶鋼を断面積が1018cm2以下のモールドに鋳込み、鋳片中心部の固相率が0.1〜0.8になる位置から0.99以上になるまでの間を水量密度25〜300リットル/min・m2で強制冷却することを特徴とする請求項5または6に記載の耐熱用低合金鋼管の製造方法。
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