JP6841028B2 - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼の連続鋳造において鋳片の表面割れを防止し表面性状の良好な鋳片を製造する方法に関する。
鋼の靭性向上のために、鋼中にNiを添加することが一般的に行われている。Ni添加鋼を連続鋳造すると、鋳片表面および表皮下にオーステナイト粒界に沿った割れ(以降、本願で「表面割れ」と呼称)が発生することがある。表面割れが発生した場合には、鋳造後の工程でこれを除去する必要があり、Ni添加鋼を製造する上で、上記の鋳片表面割れを防止することが課題となっている。
このようなオーステナイト粒界(γ粒界)割れは、連続鋳造の2次冷却帯で鋳片の高温延性が低下するγ→α変態温度付近(約750〜850℃)(以下「脆化温度域」ともいう。)で、鋳片の曲げ歪、曲げ戻し矯正歪で発生すると言われている(例えば特許文献1参照)。以下、曲げ戻し矯正を単に「矯正」ともいう。この対策として一般的に、曲げ時や矯正時において、鋳片表面温度をこの脆化温度域よりも低温側もしくは高温側に回避する温度に維持しながら鋳造する方法が採用されている(特許文献1、非特許文献1)。
Niを含有する鋼では、曲げ部、矯正部で脆化温度域を低温側に回避しようとすると、鋳片の冷却不均一が生じること、及びNi含有鋼は脆化温度域の下限が低温側に拡大することにより、脆化温度域を低温側に回避しての表面品質改善が難しいといわれている。一方、曲げ部、矯正部で単純に脆化温度域を高温側に回避するのみでは、表面割れを十分に改善することができない(特許文献1)。
特許文献1においては、Niを含有する鋼の連続鋳造において、鋳片全面の表面温度を鋳型を出てから多くとも2分以内の間に一旦600℃〜Ar3点温度まで低下させ、曲げ部と矯正部における鋳片表面温度が850℃以上になるように2次冷却を行う方法が開示されている。600℃〜Ar3点温度まで冷却することにより、γ粒界が不明瞭な組織となり、割れ感受性が低い組織とすることができるとしている。
また特許文献2には、Ni含有鋼の割れを解決する手段として、鋳型内メニスカスから鋳型下端までの引き抜き時間を1分以内とし、鋳型から引き抜いた後2次冷却を行い、1分以内に鋳片表面温度をA3変態以下にまで冷却することを特徴とする表面割れの防止方法、さらには鋳片をA3変態温度以下に冷却したあと復熱させ、曲げ点、矯正点における鋳片表面温度を850℃以上とし、20分以内に鋳片の矯正を終了することを趣旨とする表面割れ防止方法が開示されている。1分以内にA3変態温度以下まで急速に冷却すれば、γ粒界が不明瞭となるとしている。
さらに特許文献3においては、Ni含有鋼の表面割れをさらに抑制するために、鋳片表面温度を550℃以下に冷却した後、850℃以上に復熱させる方法が開示されている。一旦550℃以下まで冷却してフェライトを生成させてから復熱し、再度オーステナイト化することにより、オーステナイト粒を微細化し、結果として鋳片表面付近のフェライト粒径を30μm以下の微細組織とし、割れ感受性の低減を図っている。
特開平9−225607号公報 特開平9−47854号公報 特開2000−23049号公報
向井ら著:鉄と鋼,68(1982),A161
特許文献1〜3に記載の発明により、Ni添加鋼を連続鋳造するに際しての鋳片表面割れの低減を図っているが、割れ発生を十分に低減するには至っていない。Ni添加鋼における割れ防止技術について連続鋳造機において実験を行い、鋳片の表面割れの発生について調査したところ、鋳片表面において割れが存在しない部分と残存する部分があった。
本発明は、Ni等の合金元素を含む鋼を連続鋳造するに際して、鋳片表面の一部に割れが発生するという不均一な現象の原因を解明し、安定的に鋳片の表面割れを防止する鋼の連続鋳造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、Ni添加鋼における割れ防止技術について連続鋳造機において実験を行い、鋳片の表面割れの発生について調査した。その結果、曲げ部と矯正部で鋳片表面温度が脆化温度域を高温側に回避する鋳造を行ったときでも、前述のように、鋳片表面において割れが存在しない部分と残存する部分があった。その原因として鋳片表面における連続鋳造用パウダーの残存により、2次冷却帯における熱伝達にばらつきが生じていることが一因であるとの認識に至った。
鋼の連続鋳造においては、鋳型内における鋳型壁と凝固シェルとの間の潤滑剤として連続鋳造用パウダーが用いられる。これはCaO−SiO2−F−Na2O−Al23−MgOなどから成る多元系の人工パウダーである。この連続鋳造用パウダーが鋳型内溶鋼湯面に投入されると、溶鋼からの熱で溶融して溶融スラグとなり、パウダーフィルムとして鋳型壁と鋳片凝固シェルの間に流入し、鋳型・鋳片間の潤滑や伝熱制御媒体として重要な役割を果たす。流入したパウダーフィルムは、凝固シェルとともに鋳型内を下方に移動し、鋳型下端から排出される。
詳細は後述するが、鋳型下端から鋳片が引き出された時点において、鋳片表面に存在するパウダーフィルムが鋳片表面で生成したスケール(酸化鉄)と反応することで、著しく鋳片から剥離しにくくなることがわかった。またNiを添加した鋼片では特にその傾向が顕著であった。そして、連続鋳造において鋳型下端を通過した鋳片表面に付着したパウダーフィルムが鋳片表面でスケールと反応しないうちに、鋳片表面に高圧で水を吹き付け、パウダーフィルムを鋳片表面から剥離することにより、その後の鋳片2次冷却における冷却挙動を均一化し、曲げ部、矯正部での鋳片表面割れ発生を解消できることが明らかとなった。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、C=0.06〜0.20%、Si=0.05〜0.4%、Mn=0.4〜2%、Ni=0.1〜2%を含有する鋼の鋳片を、鋼の連続鋳造用パウダーを用いて連続鋳造機で製造するに際して、
前記鋼の連続鋳造パウダー中のCaO、SiO 2 の質量%で定義される塩基度B=CaO%/SiO 2 %が、B=1.1〜1.8であり、
鋳型通過後の鋳型と1本目のロール間に設置した水冷ノズルもしくは1本目と2本目のロール間に設置した水冷ノズルにおいて、平均水量密度750〜2500L/min/m2、衝突圧5〜15gf/cm2で冷却水を吹き付け、その後は平均水量密度0〜30L/min/m2とすることを特徴とする鋼の連続鋳造方法
本発明の鋼の連続鋳造方法では、Ni含有鋼で発生する鋳片表面の割れを発生させることなく、表面性状に優れた鋳片を得ることができる。
パウダー塩基度ごとの冷却水衝突圧力とパウダー剥離率の関係
本発明が対象とする鋼は、鋳片表面にオーステナイト粒界割れが発生しやすい鋼種である。一般的に、C=0.06〜0.20%、Ni=0.1〜2%含有する鋼の鋳片ではオーステナイト粒界割れが発生しやすく、加えて、Nb、Vなどが含まれるとさらに割れが発生しやすい。
Ni等の合金元素を含む鋼を連続鋳造すると、前述のように、鋳片表面において割れが存在しない部分と残存する部分があった。Ni添加鋼の鋳片の表面全面において割れを防止し、安定的に鋳造するためには、鋳片表面全面においてより均一な熱履歴を与える必要があるが、鋳片表面に付着したスケールや連続鋳造用パウダーを考慮すると、必ずしも容易ではない。
本発明は、Ni等の合金元素を含む鋼を連続鋳造するに際して、鋳型内の潤滑剤として用いる鋼の連続鋳造用パウダー(パウダーフィルム)を鋳型直下で鋳片の表面から均一に剥離すると同時に鋳片表面を強冷却し、さらに復熱を行った上で曲げ部と矯正部を通過させることにより、安定的に鋳片の表面割れを防止する。
本発明者らは、連続鋳造用パウダーフィルムの鋼片からの剥離性について実験的な検討(オフライン実験)を進めた。鋼片の表面に連続鋳造用パウダーを載せた上で1200℃まで急速に加熱して、鋼片表面に溶融パウダーフィルム層を形成し、一定時間保持した後、表面にスプレー水を噴射して冷却する実験を行った。その結果、1200℃に到達した後30秒以内にスプレー水を噴射した場合にはパウダーフィルムは均一に剥離するが、30秒以上経過すると、パウダーフィルムが剥離している部分と剥離していない部分が不均一に混在することがわかった。剥離していない部分を観察すると、溶融したパウダーフィルムがスケールと反応し、鋼片と強固に密着していることが判明した。以上のオフライン実験の結果から、鋳片表面に存在するパウダーフィルムが、時間経過とともに鋳片表面で生成したスケール(酸化鉄)と反応することで、著しく鋳片から剥離しにくくなることがわかった。またNiを添加した鋼片では特にその傾向が顕著であった。したがって、連続鋳造において鋳型下端を通過した鋳片表面に付着したパウダーフィルムが鋳片表面でスケールと反応しないうちに、鋳片に高圧で水を吹き付け、パウダーフィルムを鋳片表面から剥離することが有効であると推定された。
そこで上記オフライン実験において、鋼片に吹き付ける冷却水の衝突圧力とパウダーフィルム剥離性との関係についても調査した。鋼片の表面に連続鋳造用パウダーを載せた上で1200℃まで急速に加熱して鋼片表面に溶融パウダーフィルム層を形成し、0.5分保持した後、表面に種々の衝突圧力でスプレー水を噴射して冷却する実験を行った。その後、鋼片表面のうちでパウダーフィルム層が剥離した部分の面積率をパウダー剥離率(%)として評価した。鋼片上に載置する連続鋳造用パウダーとして、塩基度(CaO質量%/SiO2質量%)が1.0から1.8の4種類のものを用いた。結果を図1に示す。
パウダーフィルムとスケールが反応する前の時間であれば、図1に示すように、衝突圧力を5gf/cm2以上となるように設定すれば、いずれのパウダー塩基度であっても、パウダーフィルムの剥離が促進されることが明らかになった。
加えて種々のパウダーについて、鋳片表面からのパウダーフィルムの剥離性について検討した結果、図1に示すように、塩基度が高いほどパウダーが剥離しやすいことが確認できた。
そこで、Ni含有鋼の連続鋳造の鋳造試験を繰り返し実施し、鋳片表面からパウダーフィルムを確実に剥離することのできる2次冷却条件について検討を行った。その結果、連続鋳造の鋳型通過後の鋳型と1本目のロール間に設置した水冷ノズルもしくは1本目と2本目のロール間に設置した1本の水冷ノズル(以下「強冷却水冷ノズル」ともいう。)によって、衝突圧5gf/cm2以上で冷却水を吹き付けることにより、鋳造を完了した連続鋳造鋳片の表面において、不均一な割れの発生(割れの発生した部分と発生しない部分が共存)を防止できることがわかった。このことから、パウダーフィルムが確実に剥離されることが確認された。衝突圧については、ノズルの中心軸方向において、ノズルと鋳片表面との距離と等距離に受圧センサーを配置し、水を吹き付けつつ圧力を測定することによって計測することができる。
鋳型の下端と2本目のロール間の距離は600mm以下である。従って、鋳造速度1.2m/minで鋳造を行う一般的な場合についてみると、本発明の強冷却水冷ノズルによる冷却は、鋳片が鋳型下端を出てから0.5分以内に行われることになる。従って、本発明の強冷却水冷ノズルを用いて衝突圧5gf/cm2以上で冷却水を吹き付けることによってパウダーフィルムを剥離できる点については、前記オフライン実験において、1200℃に到達した後30秒以内にスプレー水を噴射した場合にパウダーフィルムが均一に剥離するという結果と符合することがわかる。
本発明においては、鋳型下端から引き出された直後の鋳片表面において上記のようにパウダーフィルムを確実に剥離すると同時に、鋳片の表面温度をA3変態点以下まで冷却し、その後復熱して温度を上昇し、曲げ部及び矯正部の鋳片表面温度を脆化温度域の高温側に回避することにより、Ni含有鋼における鋳片表面割れを確実に防止する。
鋳型下端から引き出された直後の鋳片表面において、鋳片の表面温度を安定的にA3変態点以下に冷却するためには、鋳型通過後の鋳型と1本目のロール間に設置した水冷ノズルもしくは1本目と2本目のロール間に設置した1本の水冷ノズルによって、衝突圧5gf/cm2以上とすると同時に、水量密度が750L/min/m2以上とする必要があることがわかった。なお、強冷却水冷ノズルの水量密度については、ノズルの水量(L/min)を、ロール間隔×鋳片幅の面積(m2)で除することにより算出する。
以上のように、鋳型下端直下において強冷却水冷ノズルを用いて行う、鋳造方向に1本のノズルからの鋳片の吹き付けは、パウダーフィルムを鋳片表面から確実に剥離することと、鋳片の表面温度をA3変態点以下にまですること、両方の目的で行われる。A3変態点以下にするだけが目的であれば、鋳造方向に複数のロール間の複数のノズルで冷却水を吹き付ければよいが、パウダーの完全な剥離も含めて目的を実現するためには、鋳造方向に1本のノズルで高い水量密度、高い衝突圧力での冷却水の吹き付けが必要である。1本に限定する理由は、冷却設備の増強等なく、冷却設備能力を効率的に利用し、高い水量密度、高い衝突圧力を確保するためである。
さらに、鋳型と1本目のロール間に設置した水冷ノズルもしくは1本目と2本目のロール間に設置した1本の水冷ノズル(強冷却水冷ノズル)によって鋳片表面温度をA3変態温度以下に冷却した後、2次冷却パターンを調整して鋳片表面温度を復熱させる。この過程では、特にNiを含む鋼では、垂直曲げ連続鋳造機の曲げ応力および矯正応力だけでなく、熱応力によっても割れが発生するため、可能な限りの緩冷却、すなわち水量密度の低減が必要である。本発明では、強冷却水冷ノズルによって冷却水を吹き付けた後、連続鋳造機の機端に至るまでの2次冷却における平均水量密度0〜30L/min/m2とする。これにより、曲げ部と矯正部における鋳片表面温度が脆化温度域を高温側に回避可能であるとともに、2次冷却起因の熱応力をも低減し、割れの発生を防止することができる。これらの対策をとることで、鋳片表面割れを安定的に防止できる。
以上のように、本発明の鋼の連続鋳造においては、鋳型内の潤滑剤として連続鋳造用パウダーを均一に剥離するため、鋳片表面に生成したスケールとの反応が進行しないうちに、パウダーを表面から除去する必要があるので、鋳型下端と1本目のロール間、もしくは1本目と2本目のロールとの間に設置した水冷ノズルから大量の水を鋳片に吹き付ける。そのときの衝突圧力はオフラインで水冷ノズルから所定量の冷却水・エアを噴霧しながら受圧センサーで測定することが可能である。また簡易的には、以下の式で見積もることができる。
C=10-2×W0.81×Va0.5/H0.2/(AW)0.263(g/cm2
ここで、W:水量密度(L/min/m2)、Va:圧空吐出流速(m/s)、H:噴射距離(m)、AW:気水比=(単位時間当たりに供給される空気の重量)/(単位時間当たりに供給される水の重量)である。
パウダーを確実に剥離させるには、PCが5gf/cm2以上である必要がある。それより小さいとパウダーは一部剥がれるが、残存する部分が残り、冷却のばらつきをもたらす。一方、鋳型下端と1本目のロール間で水冷ノズルから大量の水を鋳片に吹き付ける場合、衝突圧が高すぎると鋳型内の鋳片と鋳型との隙間に冷却水が入り込む可能性がある。そのため本発明では、上限の衝突圧力を15gf/cm2としている。
なお、ロールは軸受を有する分割ロールよりも、一本ロールが望ましい。吹き付けた冷却水がロールの両端に排出され、冷却水が下流側に流出しないからである。
鋳型直下の強冷却における水量密度は、前述のとおり、750L/min/m2以上である。この水量密度とすることで、鋳型直下にておよそ1000〜1200℃であった鋳片の表面温度はA3変態温度以下にまでなる。これにより、鋳片表面のγ粒界を不明瞭な組織とし、割れ感受性を低減することができる。さらに、鋳型直下の強冷却における水量密度を1200L/min/m2以上とすることで、鋳片表面温度を550℃以下にまで冷却することができる。これにより、鋳片表面の組織を非常に微細な組織とすることができ、割れ感受性をさらに低減することができる。これを復熱させることにより、鋳片表面は不明瞭なγ粒界となり、さらには逆変態して割れにくい組織が形成される。一方水量密度の上限は2500L/min/m2であるが、これを超える水量密度とすると鋳片の温度が大きく低下し、その後の冷却を緩冷却化しても復熱が不十分となる。
鋳型と1本目のロール間に設置した水冷ノズルもしくは1本目と2本目のロール間に設置した1本の水冷ノズル(強冷却水冷ノズル)によって鋳片表面を強冷却した後は、2次冷却における平均水量密度を30L/min/m2以下として、鋳片表面を復熱させる。Niを含む鋼は非常に脆化しやすく、連続鋳造機のマシンプロフィールによる曲げ応力、矯正応力だけでなく熱応力によっても割れが発生するため、この水量密度の値を超えないようにする必要がある。また、この水量密度を採用することにより、曲げ部、矯正部における鋳片表面温度が脆化温度域を高温側(850℃以上)に回避することができる。好ましくは強冷却水冷ノズルによって鋳片表面を強冷却した後は冷却水をかけることなく鋳造することで、さらに鋳片の表面割れを安定的に防止することができる。なお、垂直曲げ型の連続鋳造機を用いる場合は、鋳型直下強冷却部より下方の機端に至るまでの平均水量密度を上記のように30L/min/m2以下とするとともに、強冷却部より下方の曲げ部に至るまでの平均水量密度を80L/min/m2以下とすることにより、曲げ部における鋳片表面温度を確実に脆化温度域の高温側に回避することができるので好ましい。また、強冷却部より下方の矯正部(曲げ戻し矯正部)に至るまでの平均水量密度を25L/min/m2以下とすることにより、矯正部における鋳片表面温度を確実に脆化温度域の高温側に回避することができるので好ましい。
また、前述の図1の結果から明らかなように、連続鋳造パウダーの成分によっても鋳片表面からのパウダーの剥離性は変化し、パウダー中のCaOとSiO2の比で表わされる塩基度Bが、1.1〜1.8の範囲であると、パウダーフィルムの剥離性が向上するので好ましい。1.1未満の場合には、冷却水の衝突圧力を高くしても、パウダーが剥離しにくくなる。一方塩基度が1.8を超えると、パウダーの凝固温度が高くなり、鋳型・鋳片間の潤滑が確保できず、ブレークアウトを起こす懸念があるので好ましくない。
本発明が対象とする鋼の成分は、質量%で、C:0.06〜0.20%、Si:0.05〜0.4%、Mn:0.4〜2%、Ni:0.1〜2%を含有する。
C:0.06〜0.20%
Cは、鋼の強度を向上させるのに欠かせない元素であり、0.06%以上含有する。一方、含有量が多いと靭性、溶接性を悪化させるため、上限を0.20%とする。
Si:0.05〜0.4%
Siは脱酸に有効な元素であり、0.05%以上含有する。一方、含有量が高いと靭性を悪化するため、好ましくは0.4%を上限とする。0.01%以上とすると好ましい。
Mn:0.4〜2%
Mnは強度を増加させるため、好ましくは0.4%以上添加するが、溶接性を悪化させるため、2%以下とする。
Ni:0.1〜2%以下
Niを添加すると、強度と靭性が向上する。本発明は、Ni含有鋼に特有の連続鋳造時の表面割れを対象とする。Ni含有量が0.1%以上において特有の割れが問題となるので、下限を0.1%とした。ただし多量に添加するとコストが増大するので、上限を2%とした。
本発明においては、必要に応じて下記の元素を添加することが望ましい。
Al:0.03%以下
Alは脱酸元素として使用される。Alは強脱酸元素であり、あまり多く添加しすぎると鋼材の靭性を低下させるので、0.03%以下とする。
Ti:0.05%以下
Tiは脱酸元素として、また材質の向上に有効である。ただし多く添加するとTiNが過度に析出するので、0.05%以下とする。
Nb:0.05%以下
Nbは強度を向上させるが、Nbが0.05%を超えると粗大なNbの炭窒化物が生成し靭性が悪化する。
Cu:0.5%以下
Cuを添加すると、強度と靭性が向上するため、上限を0.5%として含有させることができる。
不純物元素については、以下のように制限すると好ましい。
P:0.02%以下
Pは靭性を悪化させるため0.02%以下とすると好ましい。
S:0.003%以下
Sは材質の悪化を招くため、0.003%以下とすると好ましい。
N:0.005%以下
N含有量が多いと靭性を悪化させるので、0.005%以下とすると好ましい。
表1に示す成分を含有する鋼のスラブ(2000mm幅×300mm厚)を垂直曲げ型連続鋳造機を用いて鋳造した。表1の鋼No.と表2の鋼No.が対応している。
本発明例及び比較例では、鋳型通過後の鋳型と1本目のロール間に設置した強冷却水冷ノズル(表1の設置位置「A」)、もしくは1本目と2本目のロール間に設置した強冷却水冷ノズル(表1の設置位置「B」)において、水量密度、衝突圧を増減し、さらにそれに引き続く下流の2次冷却帯の平均水量密度を変更して、鋳造を行った。なお強冷却水冷ノズルは、鋳造方向に1本、幅方向に9本設置した。設置位置「B」の場合は鋳型下端と1本目の間では、水をかけなかった。従来例No.1においては、鋳型下端から3本目までの各ロール間に強冷却用水冷ノズルを配置し(表1の設置位置「C」)、従来例No.2においては、鋳型下端から8本目までの各ロール間に強冷却用水冷ノズルを配置した(表1の設置位置「D」)。
また連続鋳造用パウダーの成分(塩基度)も変更した。鋳造速度は1.2m/minとした。
鋳造後鋳片の表面を酸洗し、割れと割れ発生の面内均一性状況を観察した。さらに鋳片を切断し、鋳造方向に垂直な断面において割れと結晶組織を観察し、割れの程度を指数化した鋳片割れ指数で評価をおこなった。鋳片幅方向に10カ所から幅方向50mm長さの顕微鏡観察用サンプルを切り出し、割れの個数を観察した。10サンプルの割れ個数の総数を鋳片割れ指数と定義した。
表1の実施例に、本発明例を比較例とともに示す。本発明例No.1〜10では、割れが発生していない。また、鋳片表面直下の結晶組織を観察したところ、本発明例No.1、2はγ粒界が不明瞭であり、本発明例No.3〜6は非常に微細な結晶組織が見られた。以上の結果より、本発明例においては、鋳型直下においてパウダーフィルムを良好に剥離できており、その結果としてスケールが均一かつ良好に剥離できているものと推定される。また、表面直下の結晶組織から、鋳型直下での強冷却によって鋳片表面温度がA3変態点以下、さらには550℃以下まで低下していたと推定できる。さらに鋳片表面に割れが発生していなかったことから、曲げ部、矯正部における鋳片表面温度が脆化温度域を高温側に回避できていたことがわかる。
これに対して、比較例1〜3ではノズルからの衝突圧力、水量密度ともに不十分であり、この場合には鋳片に割れが発生した。特に衝突圧力および水量密度ともに低い比較例2、3では、大きな表面割れが発生した。鋳片表面において、割れ発生の面内分布は不均一であり、スケール剥離が不均一であったと推定される。また、鋳片表面直下の結晶組織はγ粒界が明瞭であった。
比較例4、5では、水量密度は十分に高かったが衝突圧力が不十分であり、このような条件でも割れを防止することはできなかった。鋳片表面において、割れ発生の面内分布は不均一であり、鋳片表面直下の結晶組織はγ粒界が不明瞭であった。
比較例6は強冷却水冷ノズルの衝突圧力、水量密度は本発明の範囲内であるが、その後の2次冷却水量密度が高く、結果的に鋳片の深い表面割れが発生した。曲げ部、矯正部における鋳片表面温度が脆化温度域を高温側に回避できていなかったためと推定される。
本発明例No.7〜10は、連続鋳造用パウダーの塩基度を変更して鋳造を行った。本発明例No.9、10は塩基度がB=1.0のパウダーを使用したが、冷却条件は本発明の範囲内であるものの、パウダーの剥離がやや不均一であったために、割れが鋳片表面の一部に発生したが、軽微であり問題なかった。
従来例No.1、2については、前述のように、鋳型の下方において鋳造方向に広い範囲で強冷却を行っている。鋳片表面には割れが発生しており、割れ発生の面内分布は不均一であった。鋳片表面直下の凝固組織はγ粒界が不明瞭であり、強冷却時の鋳片表面温度はA3温度以下まで低下したことが推定できるが、鋳造方向に広い範囲で冷却したため、衝突圧が低くかつ平均水量密度は低くなり、鋳型直下でのパウダーフィルム剥離が不十分であってスケールを均一に剥離することができなかったことから、割れが不均一に発生したものと推定される。

Claims (1)

  1. 質量%で、C=0.06〜0.20%、Si=0.05〜0.4%、Mn=0.4〜2%、Ni=0.1〜2%を含有する鋼の鋳片を、鋼の連続鋳造用パウダーを用いて連続鋳造機で製造するに際して、
    前記鋼の連続鋳造パウダー中のCaO、SiO 2 の質量%で定義される塩基度B=CaO%/SiO 2 %が、B=1.1〜1.8であり、
    鋳型通過後の鋳型と1本目のロール間に設置した水冷ノズルもしくは1本目と2本目のロール間に設置した水冷ノズルにおいて、平均水量密度750〜2500L/min/m2、衝突圧5〜15gf/cm2で冷却水を吹き付け、その後は平均水量密度0〜30L/min/m2とすることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
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