JP2009275256A - 熱間圧延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.02〜0.05%、Si:0.6〜1.0%、Mn:0.8〜1.5%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、Al:0.10〜1.0%、N:0.01%以下、Ti:0.01〜0.10%、Nb:0.01〜0.10%、Ca:0.001〜0.005%を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、フェライトを面積率で93%以上を含有する鋼組織を有し、機械特性が、引張強度:590MPa以上、引張強度(MPa)と全伸び(%)との積(TS×El値):17500MPa・%以上、引張強度(MPa)と穴拡げ率(%)との積(TS×λ値):72000MPa・%以上である機械特性を有し、鋼板表面において最大長さ5mm以上の島状スケール疵が面積率で5%以下である表面性状を有する。
【選択図】なし
Description
また、鋼組織の面積率の計測は、鋼板の圧延方向断面について光学顕微鏡または電子顕微鏡により観察した場合の視野における各組織について行う。
(A)請求項1に記載の化学組成を備える鋼塊または鋼片を1200℃以上としたのちに粗熱間圧延を施して粗バーとする粗熱間圧延工程;
(B)前記粗バーを下記式(1)で規定する限界温度T以上としたのちにデスケーリングを施すデスケーリング工程;
(C)前記デスケーリングを施した粗バーにAr3点〜(Ar3点+100℃)の温度範囲で圧延を完了する仕上熱間圧延を施して熱間圧延鋼板とする仕上熱間圧延工程;
(D)前記熱間圧延鋼板に前記仕上熱間圧延後2.0秒間以内に冷却を開始し、700〜800℃の温度域まで20℃/秒以上の平均冷却速度で1次冷却する1次冷却工程;
(E)前記1次冷却により得られた熱間圧延鋼板に前記1次冷却の完了後6秒間以上の中間空冷を施す中間空冷工程;および
(F)前記中間空冷により得られた熱間圧延鋼板に10℃/秒以上の平均冷却速度で400〜500℃の温度範囲まで2次冷却して巻取る2次冷却・巻取工程。
−245.12×(5×P+Al)/Si+1170 (1)
ここで、式中の元素記号は、鋼中における各元素の含有量(単位:質量%)を表す。
(1)C:0.02〜0.05%
Cは、鋼板の強度を高める元素であり、延性に優れた高強度鋼板を製造するためには特に重要な元素である。すなわち、Cの含有量が、0.02%未満では、十分な強度が確保できず、引っ張り強度を590MPa以上とすることが困難となる。一方、Cは伸びフランジ成形時の割れの起点である炭化物の析出量を増加させるので、優れた伸びフランジ性を確保するためにはC含有量を0.05%以下に抑えなければならない。したがって、Cの含有量を0.02〜0.05%とする。
Siは、高強度と高加工性を両立させるのに重要な元素である。更に、Siは固溶強化元素でもあり、フェライトを強化して伸びフランジを向上させる作用効果をも有している。そこで、十分な加工性を得るためにはSi含有量を0.6%以上とする。一方、Si含有量が1.0%を超えると溶接性や靱性の劣化を招くようになる。したがって、Si含有量を0.6〜1.0%とする。
Mnは、必要な強度を確保するために重要な元素であり、本発明では590MPa以上の引張強度を確保するために0.8%以上を含有させる。一方、1.5%を超えて含有させると溶接性の劣化を招く。したがって、Mn含有量は0.8〜1.5%と定めた。
Pは、不純物元素でもあるが、固溶強化として働く元素でもあるので、高強度化のために有効である。したがって、積極的に含有させてもよい。しかしながら、多量に添加すると粒界に偏析して脆化を生じるため、P含有量は0.05%以下とする。
Sは、不純物元素であり、鋼中のMnと結合して非金属介在物を形成して伸びフランジ性を劣化させる。したがって、S含有量は0.005%以下とする。好ましくは0.003%以下である。
Tiは、鋼中のC及びNを析出物にして析出強化し、フェライト中の固溶C量及びセメンタイトを低減させ、伸びフランジ性を向上させる作用効果がある。その効果を発揮させるには0.01%以上を含有させる。一方、0.10%を超えて含有させても上記効果は飽和し、経済的にも不利である。したがって、Ti含有量は0.01〜0.10%とする。
Nbは、鋼中のC及びNを析出物にして、オーステナイト粒を微細化してフェライトの核生成サイトを増やし、鋼組織の粗大化を抑制する。このため、Nb含有量は0.01%以上とする。一方、過剰なNb添加は、スラブ中に粗大なNb(C,N)を形成し鋼板の機械特性を損なう。このためNb含有量のは0.10%以下とする。
Alは、フェライト生成を促進し、加工性を向上させる効果がある。さらに、FeO/Fe2SiO4の共晶温度(粗バーの表面に生成するFe2SiO4が溶融化する温度、換言すれば、粗バーの表面に生成するFeOとFe2SiO4との共晶温度)を低下させる効果があるため、Alの添加により脱スケール性が向上し、島状スケール疵が減少する。その効果を発揮させるには0.10%以上を含有させる。一方、Al含有量が1.0%を超えると、粗大な非金属介在物が増加して、加工性が著しく低下する。したがって、Al含有量を0.10〜1.0%とした。
Nは、不純物元素であり、AlやTiと結合して窒化物を形成する。この窒化物は延性を劣化させる傾向を有するため、N含有量は0.01%以下とする。好ましくは0.0050%以下である。N含有量は低ければ低いほど好ましいが、過剰なN低減はコストの著しい上昇を招くのでN含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。
Caは、強度−伸びフランジ性のバランスを向上させる作用を有する。Ca含有量が0.001%を下回るとその効果が十分に得られないので下限を0.001%以上とする。一方、Ca含有量が0.005%を超えると上記作用による効果は飽和し、経済的に不利となるため、Ca含有量は0.005%以下とする。
上記の元素以外は、鉄および不純物である。
引張強度が590MPa以上の領域で、良好な延性および伸びフランジ性を実現するためには、鋼組織において、フェライトの面積率(鋼板の圧延方向断面について光学顕微鏡または電子顕微鏡により観察した場合の視野における各相の面積率、単位:面積%)を93面積%以上とすることが必要である。フェライトの面積率が93面積%より低くなると、フェライトに比して硬質な第二相の面積率が高くなり、強度が上昇して延性が劣化したり、伸びフランジ加工の際に亀裂の起点となるフェライトと硬質な第二相との界面の面積が増加して伸びフランジ性が劣化したりする。フェライト以外の組織としてはベイナイト、セメンタイトなどが存在する。それらは最大で7面積%であり、実質的に特性には影響しない。
本発明の鋼板は、良好な延性および伸びフランジ性を備えた高強度熱間圧延鋼板を提供することを目的とするものであるから、引張強度:590MPa以上、引張強度(MPa)と全伸び(%)との積(TS×El値):17500MPa・%以上、引張強度(MPa)と穴拡げ率(%)との積(TS×λ値):72000MPa・%以上である機械特性を有するものとする。
鋼板表面における最大長さ5mm以上のSiスケール疵の面積率は5%以下とする。鋼板表面における最大長さ5mm以上のSiスケール疵の面積率が5%超となると、外観が美麗でないばかりか、不均一なSiスケールの存在に起因して、熱間圧延後の冷却過程において温度ムラが顕著となり、コイル内における特性の変動が大きくなる。
本発明の熱間圧延鋼板は、例えば、下記工程(A)〜(F)を有する熱間圧延鋼板の製造方法により効率的に製造することができる。
(A)本発明に係る上記の化学組成を備える鋼塊または鋼片を1200℃以上としたのちに粗熱間圧延を施して粗バーとする粗熱間圧延工程;
(B)粗バーを下記式(1)で規定する限界温度T以上としたのちにデスケーリングを施すデスケーリング工程;
(C)デスケーリングを施した粗バーにAr3点〜(Ar3点+100℃)の温度範囲で圧延を完了する仕上熱間圧延を施して熱間圧延鋼板とする仕上熱間圧延工程;
(D)熱間圧延鋼板に前記仕上熱間圧延後2.0秒間以内に冷却を開始し、700〜800℃の温度域まで20℃/秒以上の平均冷却速度で1次冷却する1次冷却工程;
(E)1次冷却により得られた熱間圧延鋼板に1次冷却の完了後6秒間以上の中間空冷を施す中間空冷工程;および
(F)中間空冷により得られた熱間圧延鋼板に10℃/秒以上の平均冷却速度で400〜500℃の温度範囲まで2次冷却して巻取る2次冷却・巻取工程。
−245.12×(5×P+Al)/Si+1170 (1)
ここで、式中の元素記号は、鋼中における各元素の含有量(単位:質量%)を表す。
(1)粗熱間圧延工程
粗熱間圧延に供する鋼塊または鋼片の温度は1200℃以上とする。この温度が1200℃未満では、鋼塊または鋼片の中に存在する粗大な硫化物や窒化物などが再固溶せずに、熱間圧延後の鋼板にまで残存し、延性および伸びフランジ性を著しく劣化させる場合がある。なお、鋼塊または鋼片を粗熱間圧延に供する態様は、1200℃未満の温度にある鋼塊または鋼片を再加熱したものを供するものであってもよく、連続熱間圧延後または分塊圧延後の高温状態にある鋼塊または鋼片をそのままあるいは保温を行って供するものであってもよい。粗熱間圧延に供する鋼塊または鋼片の温度の上限は特に規定する必要はないが、1300℃超ではスラブが自重で変形して圧延トラブルに繋がる危険性があるので、1300℃以下とすることが好ましい。
粗熱間圧延により得られた粗バーを下記式(1)で規定する限界温度T以上としたのちにデスケーリングを施す。
−245.12×(5×P+Al)/Si+1170 (1)
スケールは、その生成量が大きくなるほど、スケールの内部に圧縮応力が発生するとともに、母材とスケールとの界面に生成するボイドの生成量も増加する。このようにして発生した圧縮応力と生成したボイドとの相互作用によりデスケーリング性が向上する。したがって、粗熱間圧延完了後デスケーリング開始前におけるスケール生成が進行するほど、粗バーの表面に生成するスケールは剥離し易いものとなる。
上記デスケーリングを施した粗バーにAr3点〜(Ar3点+100℃)の温度範囲で圧延を完了する仕上熱間圧延を施して熱間圧延鋼板とする。
上記の熱間圧延鋼板に仕上熱間圧延後2.0秒間以内に冷却を開始し、700〜800℃の温度域まで20℃/秒以上の平均冷却速度で1次冷却する。ここで、1次冷却とは、連続的な一つの水冷却設備により水冷却を施すことであり、上記水冷却設備の途中で生じる空冷過程を含むが、上記水冷却設備の前後における空冷過程は含まない。上記水冷却設備は、例えば、通常の冷却設備はいわゆる「前段バンク」と「後段バンク」という2つの連続した冷却バンク群からなるが、この場合における「前段バンク」のことであり、この場合には、1次冷却の平均冷却速度は前段バンクの入側温度と出側温度と通板速度とから求めることができる。
上記の1次冷却により得られた熱間圧延鋼板に対して、1次冷却の完了後、6秒間以上の中間空冷を施す。
上記の中間空冷により得られた熱間圧延鋼板に10℃/秒以上の平均冷却速度で400〜500℃の温度範囲まで2次冷却して巻取る。
上記の工程により得られた熱間圧延鋼板に対して、常法に従い酸洗を行ってもよいし、スキンパスによる平坦矯正を行ってもよい。酸洗もスキンパスもその条件は公知の方法に基づき設定すればよく、酸洗前にスキンパスで平坦矯正を行ってもその効果は失われない。
1.熱間圧延鋼板の製造
表1に示す化学成分を有する鋼を転炉で溶製し、連続鋳造機にて連続鋳造を実施し、巾1000mmで厚み250mmのスラブとした。
高圧水吐出圧:10MPa以上100MPa以下
粗バー単位幅当たり流量:0.01m3/秒/m以上0.4m3/秒/m以下
スケール除去時の粗バーの移動速度:0.1m/秒以上2.5m/秒以下
デスケーリングされた粗バーに対して仕上熱間圧延、冷却、巻き取りを実施し、板厚2.9mmの熱間圧延鋼板を製造した。各工程の条件は表2に示されるとおりである。得られた熱間圧延鋼板をアンコイルして、スキンパスでの平坦矯正および酸洗によるスケール除去を実施した。
(1)鋼組織の評価
鋼板の圧延方向に平行な断面について、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡を用いて、鋼組織の観察を行い、得られた顕微鏡画像に対して画像処理することによりフェライトの面積率を求めた。
鋼板表面における最大長さ5mm以上のSiスケール面積率の算出は、得られた鋼板の外観写真を撮影し、画像処理にて実施した。
各鋼板の圧延直角方向からJIS5号引張試験を採取した。試験方法はJIS Z2241に準じた。降伏点YP、引張強さTS、伸びElを測定した。
各鋼板から縦横それぞれ150mmの正方形の試験片を採取し、JFS T1001で規定される穴拡げ試験によって得られた穴拡げ率(λ)によって伸びフランジ加工性を評価した。
上記の評価方法に基づき得られた鋼板の特性結果を表3に示した。
供試材No.7は、熱間圧延時の仕上温度がAr3点を下回り、本発明外であるため、圧延時にフェライト生成による体積変動が起こり、正常な圧延ができなかった。そのため、鋼板の評価ができなかった。
供試材No.13は、1次冷却停止後の中間空冷時間が本発明外であった。このため、フェライトの生成が抑制され、延性および伸びフランジ性が劣化し、TS×El値およびTS×λ値が不芳となった。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.02〜0.05%、Si:0.6〜1.0%、Mn:0.8〜1.5%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、Al:0.10〜1.0%、N:0.01%以下、Ti:0.01〜0.10%、Nb:0.01〜0.10%、Ca:0.001〜0.005%を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、フェライトを面積率で93%以上を含有する鋼組織を有し、機械特性が、引張強度:590MPa以上、引張強度(MPa)と全伸び(%)との積(TS×El値):17500MPa・%以上、かつ引張強度(MPa)と穴拡げ率(%)との積(TS×λ値):72000MPa・%以上である機械特性を有し、鋼板表面において最大長さ5mm以上の島状スケール疵が面積率で5%以下である表面性状を有することを特徴とする熱間圧延鋼板。
- 熱間圧延鋼板下記工程(A)〜(F)を有することを特徴とする熱間圧延鋼板の製造方法:
(A)請求項1に記載の化学組成を備える鋼塊または鋼片を1200℃以上としたのちに粗熱間圧延を施して粗バーとする粗熱間圧延工程;
(B)前記粗バーを下記式(1)で規定する限界温度T以上としたのちにデスケーリングを施すデスケーリング工程;
(C)前記デスケーリングを施した粗バーにAr3点〜(Ar3点+100℃)の温度範囲で圧延を完了する仕上熱間圧延を施して熱間圧延鋼板とする仕上熱間圧延工程;
(D)前記熱間圧延鋼板に前記仕上熱間圧延後2.0秒間以内に冷却を開始し、700〜800℃の温度域まで20℃/秒以上の平均冷却速度で1次冷却する1次冷却工程;
(E)前記1次冷却により得られた熱間圧延鋼板に前記1次冷却の完了後6秒間以上の中間空冷を施す中間空冷工程;および
(F)前記中間空冷により得られた熱間圧延鋼板に10℃/秒以上の平均冷却速度で400〜500℃の温度範囲まで2次冷却して巻取る2次冷却・巻取工程。
限界温度T(℃)=168.15×((5×P+Al)/Si)2
−245.12×(5×P+Al)/Si+1170 (1)
ここで、式中の元素記号は、鋼中における各元素の含有量(単位:質量%)を表す。
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