JP5056556B2 - 薄鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、薄鋼板およびその製造方法に関し、具体的には、引張強度780MPa以上であって優れた曲げ性を有することから、例えば自動車用鋼板等に使用するのに好適な薄鋼板およびその製造方法に関する。
近年、自動車用鋼板の分野においては、燃費の向上および耐衝突特性の向上のため、引張強度が780MPa以上の高強度鋼板の適用が拡大されつつある。従来から多用されている引張強度が780MPa未満の高強度鋼板に関しては、高強度化に伴って劣化する延性を向上するため、これまでにも、例えば、フェライト地にマルテンサイトを分散させることにより降伏比を低下させ延性を向上させたDP鋼(二相組織鋼)や、フェライト、ベイナイトおよびオーステナイトからなり、変態誘起塑性を利用して伸び特性を改善したいわゆるTRIP鋼が提案されている。しかし、引張強度が780MPa以上への高強度鋼板では特に曲げ性の劣化が問題となるため、これらの技術の延長では、自動車用鋼板として要求される厳しい成形性をも兼ね備える引張強度が780MPa以上の高強度鋼板を提供することは難しい。
これに対し、例えば、特許文献1には、熱間圧延および冷間圧延に続いて、A変態点以上のオーステナイト単相域で焼鈍した後、600℃以上の温度から100〜500℃/秒の冷却速度で急速冷却を開始し200〜300℃の温度で冷却を終了し、次いで200〜400℃の温度に保持することにより、パーライト変態を回避し、オーステナイトの残留とマルテンサイトの生成を抑制してベイナイト主体の鋼組織にすることによって、伸びフランジ性が優れた引張強度が780MPa以上の高強度冷延鋼板を製造する方法に係る発明が開示されている。
特許文献2には、フェライト相の平均結晶粒径を7μm以下とし、低温変態生成相の体積分率を40〜60%とし、かつフェライト相および低温変態生成相それぞれのビッカース硬さの差を350以下とすること、すなわちフェライト相と低温変態相の体積分率を最適化するとともに硬さの差を小さくすることによって、伸び特性と伸びフランジ特性、さらには曲げ特性をも良好とした、フェライト相と低温変態生成相の複合組織からなる引張強度が980MPa以上の超高強度鋼板に係る発明が開示されている。
さらに、特許文献3には、表層にフェライト体積率90%以上で厚さが10〜100μmの軟質層を有するとともに、中心部の組織を焼戻しマルテンサイト体積率が30%以上で残部がフェライト相とすることにより、曲げ性および伸びフランジ性に優れる引張強度が980MPa以上の超高強度冷延鋼板に係る発明が開示されている。
特開平7−188767号公報 特開2005−171321号公報 特開2005−273002号公報
しかしながら、特許文献1〜3により開示された従来のいずれの発明によっても、良好な曲げ性を有する鋼板が得られないことから、例えば自動車用鋼板等に使用するのに好適な引張強度が780MPa以上の薄鋼板を提供することはできない。
特許文献1により開示された発明は、ベイナイト主体の組織にするだけであるので延性が低下し、十分な曲げ性を確保することができない。
特許文献2により開示された発明は、鋼板の組織を均一化し局所的な変形能の差を小さくするとともにフェライト相と低温変態生成相との硬度差を小さくすることによって伸びフランジ成形の際のボイドの発生および亀裂の進展を抑制するものであるが、本発明者らの検討結果によれば、亀裂こそ発生し難いものの、表面に微視的なくびれがひとたび発生するとそのくびれが進展し、このくびれ部に歪が集中して破断に至る恐れがある。このため、この発明によっても充分な曲げ性を確保することができない。
さらに、特許文献3により開示された発明は、板厚が例えば1.2mm程度の薄い鋼板の冷却時に板厚方向分布を制御するという、管理が極めて困難な製造工程を経る必要があるので、実施の際にはわずかな冷却の変動の影響を受けて強度のばらつきが大きくなるといった問題があり、安定的に実施することが難しい。
本発明は、このような従来の技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、良好な曲げ性を有することから、例えば自動車用鋼板等に使用するのに好適な引張強度が780MPa以上の薄鋼板を、確実に提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、以下に列記する知見(a)〜(d)を得て、本発明を完成した。
(a)従来、伸びフランジ成形の際における亀裂の発生および進展を抑制するには、局部伸びが大きいことが必要であるとされてきたが、優れた曲げ性を得るには局部伸びが大きいだけでは不十分であり、たとえ局部変形能が大きくてもそこに歪が集中すれば割れに至る。
(b)曲げ変形時に発生する亀裂について微視的に観察した結果、はじめに表層に微視的なくびれが多数発生する段階があり、その後にくびれが進行して破断限界を超えると亀裂となって内部に進展していくことが判明した。微視的なくびれの段階は、まだ割れの発生とまでは言えず、むしろ曲げ変形部の外側の線長を確保するために必要な変形であるとも言える。すなわち、曲げ性の低下の主因は、くびれが進行して破断限界まで至ることであるので、曲げ性を改善するには、くびれの進行を防がなければならない。従来の技術では、くびれの進行防止を全く考慮していない。
(c)曲げ性を向上するためには、局部伸びが大きいことに加えてさらに、くびれが生じる領域であってもできる限り歪が他の部位へ伝播しやすいこと、すなわち局部変形中の加工硬化能が大きいことが効果的であることを知見した。
(d)局部変形中の加工硬化能を大きくするための手法を種々検討した結果、微細析出物を非常に狭い最近接粒子間距離で分布させることが有効であることを知見した。この理由は、必ずしも明らかではないが、加工硬化が非常に進んだ状態では転位自身が絡み合って動きにくい状態になっているが、この微細析出物を用いて効果的に転位をさらに動き難い状態とすることによって、粒界等で消滅する転位の量が減少するとともに変形に必要な転位の移動量を得るために転位が増殖することから、転位密度が増大するためではないかと推定される。
本発明は、C:0.05%以上0.20%以下(本明細書では特にことわりがない限り化学組成に関する「%」は「質量%」を意味するものとする)、Si:2.0%以下、Mn:1.5%以上3.5%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.005%以上2.0%以下、N:0.02%以下を含有し、さらにTi:0.3%以下および/またはNb:0.2%以下を、下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、引張試験における最高荷重から破断に至るまでの破断位置を中心とした標点間距離5mmの局部伸びeLが10%以上であり、かつ、最高荷重から破断に至るまでの破断位置の真応力の増加量ΔσLが50MPa以上であることを特徴とする引張強度が780MPa以上の薄鋼板である。
0.060≦Ti+Nb×(48/93)≦0.30・・・・・・・(1)
ただし、式(1)におけるTiおよびNbは、それぞれの元素の含有量(質量%)を示す。
この本発明に係る薄鋼板は、さらに、表層部50μm厚の断面組織に占めるフェライトおよびベイナイトの割合が合計で50面積%以上であり、フェライトおよびベイナイトに占める直径5nm以上50nm以下の析出物が最近接粒子間距離50nm以下で分布する領域の割合が70%以上であることが望ましい。
この場合、析出物は、Tiおよび/またはNbの炭化物、窒化物および炭窒化物のいずれかを含有するものであることが望ましい
の本発明に係る薄鋼板の化学組成が、Feの一部に代えて、Cr:1%以下、Mo:1%以下、V:1%以下、Cu:1%以下、Ni:1%以下およびB:0.005%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有してもよい。
さらに、これらの本発明に係る薄鋼板が、表面にめっき層を有していてもよい。
別の観点からは、本発明は、上述した化学組成を有するとともに表面温度を1260℃以上1350℃以下とした鋼塊または鋼片に熱間圧延を施し、400℃以上650℃以下で巻き取って熱延鋼板とし、この熱延鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とし、この冷延鋼板に、650℃以上{(Ac点+Ac点)/2}以下の温度域での滞在時間が60秒間以上となるように加熱し、次いで{(Ac点+Ac点)/2}以上900℃以下の温度域に240秒間以下保持し、そして3℃/秒以上50℃/秒以下の平均冷却速度で400℃まで冷却することを特徴とする薄鋼板の製造方法である。
この本発明に係る製造方法により製造される薄鋼板にめっき処理を施してもよい。
本発明によれば、良好な曲げ性を有することから、例えば自動車用鋼板等に使用するのに好適な引張強度が780MPa以上の薄鋼板を、確実に提供することができる。
以下、本発明に係る薄鋼板を実施するための最良の形態を説明する。はじめに、本実施の形態の薄鋼板の局部変形特性、鋼組織および化学組成を説明する。
(i)局部変形特性
引張強度780MPa以上の薄鋼板の曲げ性の改善を図るために、本発明では、局部伸びと局部変形中の加工硬化とを大きくする。引張試験における最高荷重から破断に至るまでの、破断位置を中心とした標点間距離5mmの局部伸びeLが10%未満であると、表層に発生する微小な亀裂がそのまま進展して割れとなり易いため、この局部伸びeLは10%以上とする。
また、最高荷重から破断に至るまでの破断位置の真応力の増加ΔσLが50MPa未満であると、表層に微視的なくびれが発生した時の加工硬化代が小さく、他の箇所に歪が伝播せずにその箇所でくびれが進行して亀裂に至るため、この増加ΔσLは50MPa以上とする。
なお、本発明におけるeLの測定は、JIS Z 2201に規定される5号試験片の平行部に予め1mmピッチの目盛りを付与して引張試験を行い、破断後の試験片を突き合わせて破断位置を中心とする前後5目盛り間の長さを求め、それを5mmで除して求めた伸び値から、引張試験の一様伸びの値を引くことにより求める。またΔσLは、破断位置の幅と厚さを測定しその積で破断時の荷重を除して求めた破断時真応力と、最高荷重と一様伸びの値と試験片の元の断面積から計算して求められる最高荷重時真応力の差をとることにより求められる。
(ii)鋼組織
局部伸びが大きく、かつ局部変形中の加工硬化を大きくするため、鋼板の表層部50μm厚の断面組織に占めるフェライトおよびベイナイトの割合を合計で50面積%以上とするとともに、このフェライトおよびベイナイトに占める直径5nm以上50nm以下の析出物が最近接粒子間距離50nm以下で分布する領域の割合を70%以上とする。
表層部におけるフェライトおよびベイナイト中の析出物が、最近接粒子間距離が50nmを超える分布状態では、効果的な加工硬化が得られない場合がある。これは、転位密度の高い局部変形域において、転位同士の絡まりの間隔よりもさらに密に析出物粒子が存在すると、転位の移動が粒子により妨げられる効果が大きく現れるためである、と推定される。
また、フェライトおよびベイナイトの中の一部の領域で最近接粒子間距離が50nm以下の分布状態となっていても、その領域が70%に満たないときは加工硬化が不十分となる場合がある。さらに、フェライトおよびベイナイトが析出物の最近接粒子間距離50nm以下の分布状態を70%以上の領域で有していても、そのフェライトおよびベイナイトの体積率が合計で50面積%未満であると局部伸びが不十分となる場合がある。
析出物の種類は、様々な炭化物、酸化物、窒化物およびそれらの複合物が適用できるが、Tiおよび/またはNbの、炭化物、窒化物および炭窒化物のいずれかを含むものであることが上述した析出物の析出状態を得るうえで好適である。
なお、本発明で規定する析出物の析出状態は、薄鋼板の表層部50μm厚の領域で満足されていれば、この領域よりも内層部ではこの規定を満足されていなくとも、薄鋼板全体として本発明が目的とする特性を確保できるので、問題ない。これは、表層に発生する微視的なくびれが亀裂となって進展するという表層部の現象が、割れの発生に大きく寄与すると推測されるためである。
また、本発明において直径5nm以上50nm以下の析出物について規定する理由は、直径5nm未満の極微細な析出物は転位に切断されてしまい、また、直径50nm超の粗大な析出物は転位に容易に迂回されてしまい、ともに転位の妨げとはなり得ないので加工硬化に寄与しないからである。
(iii)化学組成
C:0.05%以上0.20%以下
Cは、780MPa以上の引張強度を得るために含有し、特に本発明ではTi、Nbと結合して微細析出物を形成する。C含有量が0.05%未満では目的とする高強度を得ることが困難となり、またC含有量が0.20%を超えると靱性や溶接性が低下するとともにフェライト量およびベイナイト量が不足して良好な延性を確保することが困難となる。このため、C含有量は0.05%以上0.20%以下とする。好ましくは0.07%以上0.18%以下である。
Si:2.0%以下
Siは、不純物として含有されるが、鋼板を高強度化するのに有効な成分でもあるので、目的とする強度を確保するために積極的に含有してもよい。しかし、Si含有量が2.0%を超えると表面性状が劣化する。したがって、Si含有量は2.0%以下とする。好ましくは1.6%以下であり、より好ましくは1.0%以下である。
Mn:1.5%以上3.5%以下
Mnは、焼入れ性を高めて高強度を得るのに非常に有効な元素であり、本発明においても780MPa以上の引張強度を得るために1.5%以上含有されることが好ましい。しかし、Mn含有量が3.5%を超えると、マルテンサイトの生成量が多くなり、フェライトおよびベイナイトの合計面積率が50%に満たなくなる場合がある。したがって、Mn含有量は1.5%以上3.5%以下とする。好ましくは2.0%以上3.0%以下である。
P:0.1%以下
Pは、不純物として含有されるが、固溶強化により鋼板を高強度化するので、積極的に含有してもよい。その一方で、Pは靱性を劣化させる。よって、靭性の劣化の悪影響が顕著に表れない範囲として、P含有量は0.1%以下とする。
S:0.01%以下
Sは、不純物として含有され、MnSを形成して局部伸びや曲げ性を劣化させる。よって、局部伸びや曲げ性劣化の悪影響が顕著に表れない範囲として、S含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.004%以下であり、より好ましくは0.002%以下である。
sol.Al:0.005%以上2.0%以下
Alは脱酸のため含有される。sol.Al含有量が0.005%未満では脱酸が十分でなく、一方2.0%を超えて含有すると表面性状の劣化を招くので、sol.Al含有量は0.005%以上2.0%以下である。
N:0.01%以下
Nは、不純物として含有され、N含有量が過剰であると粗大な窒化物が形成されて曲げ性の劣化を招く。N含有量が0.01%以下であればその影響が顕著に表れることはないため、N含有量は0.01%以下とする。
Ti:0.3%以下および/又はNb:0.2%以下
Ti、Nbは、C、N等と結合あるいは、さらに複合化して微細析出物を形成する。しかし、Tiを0.3%超えて含有させたり、あるいはNbを0.2%超えて含有させても、その含有量に見合うだけの効果が得られない。このため、Ti含有量の上限は0.3%とし、またNb含有量の上限は0.2%とする。
0.060%≦Ti+Nb×(48/93)≦0.30%
Ti+Nb×(48/93)が0.060%未満であると、局部変形中に十分な加工硬化が得られない場合がある。TiやNbの析出物が少なく、局部変形中に高い加工硬化を確保するのに必要な析出状態が得られていないためと考えられる。一方、Ti+Nb×(48/93)が0.30%を超えてもTiおよび/またはNbの含有量に見合うだけの効果が得られない。したがって、Ti+Nb×(48/93)の値は0.060%以上0.30%以下とする。好ましくは0.075%以上0.15%以下である。
Cr:1%以下、Mo:1%以下、V:1%以下、Cu:1%以下、Ni:1%以下、B:0.005%以下の1種または2種以上
これらの元素は、鋼板の強度を向上させる作用を有し、本発明では強度の確保のために必要に応じて含有される任意添加元素であり、1種を単独で、あるいは2種以上を複合して含有させてもよい。各元素の含有量が上記の範囲を超えると、強度の向上の効果が飽和してコストが嵩む。そこで、Crを含有する場合には1%以下とし、Moを含有する場合には1%以下とし、Vを含有する場合には1%以下とし、Cuを含有する場合には1%以下とし、Niを含有する場合には1%以下とし、Bを含有する場合には0.005%以下とする。
本実施の形態の薄鋼板は、以上説明した局部変形特性、鋼組織および化学組成を有する。次に、本発明に係る製造方法を説明する。
(iv)製造方法
熱間圧延に供する鋼塊または鋼片の表面温度:1260℃以上1350℃以下
本発明では、上述した化学組成を有する鋼塊または鋼片の表面温度を1260℃以上1350℃以下として熱間圧延を施す。
この表面温度が1260℃未満であると、TiやNbの析出物が粗大になり、上述した必要な析出物の分布を得られない場合がある。好ましくは1290℃以上である。一方、この表面温度が1350℃を超えると、スケールロスが極めて多くなる他、表面性状の劣化も著しくなる。なお、鋼塊または鋼片の表面温度が1260℃未満である場合には熱間圧延に供する際に加熱処理するが、連続鋳造後または分塊圧延後の高温状態にある鋼塊または鋼片を熱間圧延に供する場合であって1260℃以上の表面温度を確保して熱間圧延を開始できる場合には特段の加熱を施さなくともよい。また、熱間圧延の途中で1350℃を超えない範囲で加熱を施してもよく、本発明の効果が失われることはない。
熱間圧延
熱間圧延は、常法によって行えばよい。なお、熱間圧延の仕上温度がAr点未満になると組織がバンド状になって薄鋼板の曲げ性に影響を及ぼすことが考えられるが、そもそもこのような低い温度では本発明が対象とする高強度鋼板の圧延自体が困難であるので、仕上温度を規定する必要はなく、圧延に支障の無い適切な仕上温度を選択すればよい。
巻取温度:400℃以上650℃以下
巻取温度が400℃未満であると、熱延鋼板の強度が著しく高くなり冷間圧延を行うことが困難になる。一方、巻取温度が650℃を超えると、粗大な析出物が生成して、上述した必要な析出物の分布を得られないことがある。このため、巻取温度は400℃以上650℃以下と定める。
巻き取り後の熱延鋼板には、必要に応じて平坦矯正のためのスキンパス圧延を施し、スケール除去のための酸洗を施した後、冷間圧延を施してから焼鈍(連続焼鈍)を施す。
焼鈍
焼鈍では、加熱過程における650℃以上{(Ac点+Ac点)/2}の温度域の滞在時間を60秒間以上とし、次いで{(Ac点+Ac点)/2}以上900℃以下の温度域で240秒間以下保持する。
650℃以上{(Ac点+Ac点)/2}以下の温度域での滞在時間が60秒間未満であると、必要な析出物の分布状態を得られない場合がある。この滞在時間の上限は、冶金的には特に限定する必要はないが、設備の長大化や加熱コストの増加を抑制する観点から500秒間以下とすることが好ましい。
また、必要な変態相の量を確保して目的とする強度と曲げ性を得るために{(Ac点+Ac点)/2}以上の温度域に保持するが、この保持時間が240秒間を超えたり、保持温度が900℃を超えたりすると、析出物(特にTi、Nbの炭化物、炭窒化物)が溶解してしまい、上述した必要な析出物の分布を得られない場合がある。なお、この保持時間が20秒間未満ではフェライトの一部に歪みが残って強度−延性バランスが劣化する場合があるため、20秒間以上とすることが好ましい。
冷却は、フェライトおよびベイナイトの割合が合計で50面積%以上となるよう、3℃/秒以上50℃/秒以下の平均冷却速度で400℃まで冷却する。平均冷却速度が3℃/秒未満であると780MPa以上の引張強度を得ることが困難となり、一方50℃/秒超であるとマルテンサイトの生成量が多くなり、フェライトおよびベイナイトの合計面積率が50%に満たなくなる場合がある。なお、400℃未満の温度域における冷却条件は特に規定する必要はないが、長大な設備や特別な急冷装置が要しないように、400℃から50℃以下の温度域へ50〜1000秒間で冷却するのが好ましい。
この焼鈍後に、必要に応じてさらに平坦矯正のため伸び率4%以下の調質圧延を行ってもよい。
さらに、本発明に係る薄鋼板の表面に、電気亜鉛めっきや溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっきといった各種の亜鉛系めっき等の表面処理を施しても何ら問題はない。めっきの方法は常法によればよい。
このようにして製造される本実施の形態によれば、良好な曲げ性を有することから、例えば自動車用鋼板等に使用するのに好適な引張強度が780MPa以上の薄鋼板を、確実に提供することができる。
本発明を、実施例を参照しながら、さらに具体的に説明する。
表1に示す18種の連続鋳造スラブを加熱して表2に示す表面温度として、仕上温度900℃で熱間圧延を行って板厚3.2mmの熱延鋼板とし、その後冷却して表2に示す巻取温度で巻き取った。
この熱延鋼板に、平坦矯正のためのスキンパス圧延を施し、スケール除去のための酸洗を施してから、1.6mmまで冷間圧延を行い、その後に連続焼鈍を施した。
一部の供試材には、さらに片面当り35g/mの付着量で電気亜鉛めっき、または溶融亜鉛めっきを行った。溶融亜鉛めっき鋼板のさらに一部には470℃以上550℃以下で合金化処理を行い、合金化溶融亜鉛めっき鋼板とした。
また、冷延鋼板と電気亜鉛めっき鋼板については連続焼鈍後に、溶融亜鉛めっき鋼板と合金化溶融亜鉛めっき鋼板についてはめっき後に、伸び率0.2%のスキンパス圧延を施した。このようにして、表1に示す化学成分を含有する供試材No.1〜18の薄鋼板を得た。
Figure 0005056556
得られた供試材No.1〜18から、圧延直角方向にJIS5号試験片および曲げ試験片を採取し、引張試験および曲げ試験を行った。なお、曲げ試験はJIS法にしたがって行い、「亀裂が発生しない限界曲げ半径×板厚」により評価した。曲げ性は、780MPa級では「亀裂が発生しない限界曲げ半径」が0であれば良好とし、また980MPa級では「亀裂が発生しない限界曲げ半径」が0.5×板厚であれば良好とした。
さらに、走査型電子顕微鏡を用いて鋼板の鋼組織を観察するとともに、透過型電子顕微鏡を用いてレプリカ法で析出物の観察を行った。析出物の分布の測定は、1μm四方の任意の10視野について観察を行い、その平均値を求めた。
表2に、供試材No.1〜18の製造条件および試験結果をまとめて示す。
Figure 0005056556
表2における供試材No.1〜9は、本発明で規定する条件を全て満足する本発明例である。供試材No.1〜9の薄鋼板は、引張強度780MPa以上であって優れた曲げ性を有することから、例えば自動車用鋼板等に使用するのに好適である。
これに対し、供試材No.10〜18は、本発明で規定する条件のいずれかを満足しない比較例である。
供試材No.10は、C含有量及びMn含有量がいずれも本発明で規定する好適範囲の下限を下回るため、引張強度が623MPaと低く、所望の高強度を得られなかった。
供試材No.11は、Mn含有量が本発明で規定する好適範囲の下限を下回るため、フェライトおよびベイナイトの体積率が好適範囲の下限を下回り、これにより局部伸びeLが7%と本発明で規定する範囲の下限を下回り、曲げ性が不芳であった。
供試材No.12は、S含有量及びN含有量がいずれも本発明で規定する好適範囲の上限を上回るため、局部伸びeLが8%と本発明で規定する範囲の下限を下回り、曲げ性が不芳であった。
供試材No.13は、Ti+Nb×(48/93)の値が0.052%であって本発明で規定する好適範囲の下限を下回るため、最近接粒子間距離が50nm以下の面積率が35%となり本発明で規定する好適範囲を下回るとともに、ΔσLが43MPaとなり本発明で規定する範囲の下限を下回り、曲げ性が不芳であった。
供試材No.14は、スラブの表面温度が本発明で規定する好適範囲の下限を下回るため、最近接析出物距離が50nm以下の面積率が44%となり本発明で規定する好適範囲を下回るとともに、ΔσLが38MPaと本発明で規定する範囲の下限を下回り、曲げ性が不芳であった。
供試材No.15は、熱間圧延後の巻取温度が本発明で規定する範囲の上限を上回るため、最近接析出物距離が50nm以下の面積率が55%となり本発明で規定する好適範囲を下回るとともに、ΔσLが30MPaと本発明で規定する範囲の下限を下回り、曲げ性が不芳であった。
供試材No.16は、平均冷却速度が2℃/秒であって本発明で規定する好適範囲の下限を下回るため、引張強度が653MPaと低く、所望の高強度を得られなかった。
供試材No.17は、加熱過程における650℃以上{(Ac点+Ac点)/2}の温度域の滞在時間が50秒であって本発明で規定する好適範囲の下限を下回るため、最近接析出物距離が50nm以下の面積率が58%となり本発明で規定する好適範囲を下回るとともに、ΔσLが34MPaとなって本発明で規定する範囲の下限を下回り、曲げ性が不芳であった。
さらに、供試材No.18は、{(Ac点+Ac点)/2}以上900℃以下の温度域での保持時間が本発明で規定する好適範囲の上限を上回るため、最近接析出物距離が50nm以下の面積率が65%となって本発明で規定する好適範囲を下回るとともにΔσLが28MPaとなって本発明で規定する範囲の下限を下回り、曲げ性が不芳であった。
これらの結果より、本発明で規定する条件を全て満足することにより、良好な曲げ性を有することから、例えば自動車用鋼板等に使用するのに好適な引張強度が780MPa以上の薄鋼板を、確実に提供することができる。

Claims (7)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:2.0%以下、Mn:1.5〜3.5%、P:0.1%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.005〜2.0%、N:0.02%以下を含有し、さらにTi:0.3%以下および/またはNb:0.2%以下を、下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、引張試験における最高荷重から破断に至るまでの破断位置を中心とした標点間距離5mmの局部伸びeLが10%以上であり、かつ、最高荷重から破断に至るまでの破断位置の真応力の増加量ΔσLが50MPa以上であることを特徴とする引張強度が780MPa以上の薄鋼板。
    0.060≦Ti+Nb×(48/93)≦0.30・・・・・・・(1)
    ただし、式(1)におけるTiおよびNbは、それぞれの元素の含有量(質量%)を示す。
  2. 表層部50μm厚の断面組織に占めるフェライトおよびベイナイトの割合が合計で50面積%以上であり、前記フェライトおよびベイナイトに占める直径5〜50nmの析出物が最近接粒子間距離50nm以下で分布する領域の割合が70%以上であることを特徴とする請求項1に記載の薄鋼板。
  3. 前記析出物がTiおよび/またはNbの炭化物、窒化物および炭窒化物のいずれかを含有するものであることを特徴とする請求項2に記載の薄鋼板。
  4. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1%以下、Mo:1%以下、V:1%以下、Cu:1%以下、Ni:1%以下およびB:0.005%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の薄鋼板。
  5. 表面にめっき層を有することを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の薄鋼板。
  6. 請求項または請求項に記載の化学組成を有するとともに表面温度を1260〜1350℃とした鋼塊または鋼片に熱間圧延を施し、400〜650℃で巻き取って熱延鋼板とし、該熱延鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とし、該冷延鋼板に、650℃〜{(Ac点+Ac点)/2}の温度域での滞在時間が60秒間以上となるように加熱し、次いで{(Ac点+Ac点)/2}〜900℃の温度域に240秒間以下保持し、そして3〜50℃/秒の平均冷却速度で400℃まで冷却することを特徴とする薄鋼板の製造方法。
  7. 請求項に記載の製造方法により製造される薄鋼板にめっき処理を施すことを特徴とする薄鋼板の製造方法。
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