JP7013665B2 - 化粧シート及び化粧シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、建築内装材、玄関ドアなどの建築外装部材、建具の表面、家電品の表面材などに用いられる化粧シート及び化粧シートの製造方法に関する。
建築内装材や建具の表面などに用いられる化粧シート、特に、公共用用途に用いられる化粧シートについては、建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号に記載の不燃材料の技術的基準を満たすことが求められている。従来は、このような不燃材料の技術的基準を満たす化粧シートとして軟質ポリ塩化ビニル系樹脂からなる化粧シートが用いられてきたが、廃棄後の焼却処理時に有毒ガス等が発生することなどが問題となった。
本出願人は、特許文献1に示すように、ポリ塩化ビニル系樹脂の代替材としてのポリオレフィン系樹脂を用いた不燃性を有する化粧シートを提案している。
また、昨今の地球温暖化の観点から、化粧シートに対しては焼却処理時におけるCO排出量の削減への取り組みが求められている。焼却処理を必要としてない生分解性材料や所謂カーボンニュートラルの概念から植物由来材料への代替についても検討がなされたが、これらの材料は石油系材料と比較すると、機械的物性や意匠性に劣り、コスト面においても現実的ではないため、生分解性材料や植物由来材料への代替は難しい。
それに対し、本出願人は、特許文献2に示すように、樹脂材料に対して、アルミノケイ酸塩などの二酸化炭素吸収剤を添加することによって、焼却処理時におけるCO排出量を削減可能な樹脂組成物を提案している。
特開2012-179812号公報 特開2013-122020号公報
本発明は、焼却処分時におけるCO排出量の削減を可能であるとともに、建築基準法に規定する不燃規格を満たし、フィルムとしての機械的強度や耐後加工性にも優れた化粧シート及び化粧シートの製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決するために、本発明の一態様の化粧シートは、基材層の一方の面側にオレフィン系樹脂からなる樹脂層を有する化粧シートであって、上記樹脂層は、二酸化炭素吸収剤を内包したベシクルを含有する。
また、本発明の一態様の化粧シートの製造方法は、基材層の一方の面側に、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂層を有する化粧シートの製造方法であって、上記樹脂層を、上記ポリオレフィン系樹脂に二酸化炭素吸収剤を内包したベシクルを添加して形成する。
本発明の態様によれば、化粧シートの層を構成する樹脂層に対し、ベシクルに内包された状態の二酸化炭素吸収剤を配合することにより、焼却処分時におけるCO排出量の削減が可能となるとともに、建築基準法に規定する不燃規格を満たし、フィルムとしての機械的強度や耐後加工性にも優れた化粧シートを提供することが可能となる。
特に二酸化炭素吸収剤をベシクル化して含有することで、樹脂内で、二酸化炭素吸収剤が凝集することがなく高濃度で均一に高分散させることができる結果、より化粧シートの不燃性が向上すると共に、樹脂層の透明性を向上させることが出来る。
本発明に基づく実施形態に係る化粧シートを説明する断面図である。
次に、本発明に基づく実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
本実施形態の化粧シートは、図1のように、基材層としての原反層2の一方の面側に透明樹脂層4を有する。その透明樹脂層4は、透明なポリオレフィン系樹脂からなり、その、ポリオレフィン系樹脂に二酸化炭素吸収剤が配合されている。本実施形態では、上記二酸化炭素吸収剤がベシクルに内包された状態、すなわち二酸化炭素吸収剤ベシクルの状態で透明樹脂層4に配合されている。
なお、本実施形態では、透明樹脂層4の下層に絵柄模様層3を有するため、透明樹脂層4が透明な樹脂から構成されているが、下層に絵柄模様層3が無い場合には、透明樹脂層4は透明である必要は無い。また、本明細書で透明とは、下層が視認できるだけの透明性を少なくとも有することを指す。
本明細書における二酸化炭素吸収剤とは、燃焼時において樹脂成分などに起因して生じた二酸化炭素と化学反応を起こして分解する、または、自身が二酸化炭素を吸収することで、大気中に放出される二酸化炭素を減少させる物質のことであり、具体的には、アルミノケイ酸塩、金属水酸化物、金属酸化物、チタン酸化合物、リチウムシリケート、シリカゲルまたはアルミナなどを挙げることができる。
アルミノケイ酸塩としては、非晶質アルミノシリケート、天然ゼオライト、合成ゼオライトなどを挙げることができる。金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化バリウムなどを挙げることができる。金属酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛などを挙げることができる。チタン酸化合物としては、チタン酸バリウム、オルソチタン酸バリウムなどを挙げることができる。
ここで、二酸化炭素吸収剤をベシクル化してなる二酸化炭素吸収剤ベシクルは、本発明者等が提案している再表02/032564号公報、特開2003-119120号公報、特開2005-298407号公報および特開2008-063274号公報(以下、「超臨界逆相蒸発法公報類」と称する)に開示されている超臨界逆相蒸発法および装置を用いて行うことができる。
超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態または臨界点以上の温度もしくは圧力条件下の二酸化炭素にベシクルの外膜を構成する物質を均一に溶解させた混合物中に、封入物質としての二酸化炭素吸収剤を含む水相を加えて、一層の膜で封入物質としての被覆光触媒材料を包含したカプセル状のベシクルを形成する方法である。
なお、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度もしくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度だけ、あるいは臨界圧力だけが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味するものである。この方法により、直径50~800nmの単層ラメラベシクルを得ることができる。
ここで、ベシクルとは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞で内部に液相を含むものの総称であり、特に、外膜がリン脂質のような生体脂質から構成されるベシクルをリポソームと称する。
二酸化炭素吸収剤に対して超臨界逆相蒸発法によりベシクル化処理を施すことによって、二酸化炭素吸収剤がカプセル内に内包された構造とされており、これによって二酸化炭素吸収剤の粒子同士が凝集することを防いで樹脂材料への高い分散性を実現している。
ベシクルの外膜を構成するリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
また、リポソームの外膜には、少なくともリン脂質などの生体脂質が含まれていればよいので、生体脂質と下記のようなその他の物質との混合物から外膜を形成するようにしてもよい。リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにしてもよい。本実施形態の化粧シートにおいては、リン脂質からなる外膜を具備したリポソームとすることが重要である。
ベシクルの外膜を形成するその他の物質としては、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物、高分子系の界面活性剤、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックスまたは変性樹脂などの分散剤が挙げられる。
本実施形態の化粧シートの透明樹脂層の樹脂組成物を調製する際には、超臨界逆相蒸発法によって微小なカプセル状のベシクル内に内包された状態の二酸化炭素吸収剤を用いることが重要であり、このような、ベシクル内に内包された状態の二酸化炭素吸収剤は、当該ベシクルとポリオレフィン系樹脂とを混練させた際に、ポリオレフィン系樹脂中において凝集することなく均一に分散するため、ポリオレフィン系樹脂に対する二酸化炭素吸収剤の充填量を増大させても、機械的強度や耐後加工性などに優れたシートを形成可能な熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
また、二酸化炭素吸収剤を二次凝集することなく、ポリオレフィン系樹脂中に分散する事により、透明樹脂層として求められる透明性を損なうことなく、二酸化炭素吸収剤を添加する事が可能となる。
透明樹脂層4を構成するポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4、4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンなど)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。
上述のように、本実施形態の化粧シートの特徴(発明特定事項)の一つは、「透明樹脂層は、ベシクルに内包された二酸化炭素吸収剤を含有する」ことにある。そして、二酸化炭素吸収剤をベシクルに内包させた状態で樹脂組成物に添加することで、樹脂材料中、すなわち透明樹脂層中への二酸化炭素吸収剤の分散性を飛躍的に向上するという効果が奏するが、その特徴を、完成された化粧シートの状態における物の構造や特性にて直接特定することは、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は次の通りである。ベシクルの状態で添加された二酸化炭素吸収剤は、高い分散性を有して分散された状態になっていて、作製した化粧シートの状態においても、二酸化炭素吸収剤は透明樹脂層に高分散されている。しかしながら、透明樹脂層を構成する樹脂組成物に二酸化炭素吸収剤をベシクルの状態で添加して透明樹脂層を作製した後の、化粧シートの作製工程においては、通常、積層体への圧縮処理や硬化処理などの種々の処理が施されるが、このような処理によって、二酸化炭素吸収剤を内包するベシクルの外膜が破砕や化学反応して、二酸化炭素吸収剤が外膜で包含(包皮)されていない可能性も高く、その外膜が破砕や化学反応している状態が化粧シートの処理工程によってばらつくためである。そして、この二酸化炭素吸収剤が外膜で包含されていないなどの状況は、物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか二酸化炭素吸収剤とは別に添加された材料なのか判定が困難な場合も想定される。このように、本願発明は、従来に比して二酸化炭素吸収剤が高分散で配合されている点で相違があるものの、二酸化炭素吸収剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シートの状態において、その構造や特性を測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
また、本実施形態の透明樹脂層には、二酸化炭素吸収剤に加えてさらに結晶核剤が配合されている。本実施形態においては、その結晶核剤と二酸化炭素吸収剤とは、一緒にリン脂質からなる外膜を具備したリポソームなどのベシクル内に内包された状態で配合されることが重要である。このように結晶核剤と二酸化炭素吸収剤とをベシクルに内包した状態で配合することにより、ポリオレフィン系樹脂内に結晶核剤をも均一に分散させることができる。この結果、効率的に透明樹脂層4の結晶化度をコントロールできるようになり、機械的強度や耐後加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
結晶核剤としては、ポリオレフィン系樹脂に分散した際にポリオレフィン結晶の核となる物質またはポリオレフィンの結晶化温度または融点以上で結晶化し、その結晶がポリオレフィン結晶の核となる物質であれば特に限定されるものではないが、例えば、リン酸エステル金属塩系の物質、ソルビトール系の物質または安息香酸アルミニウム系の物質を用いることができる。
リン酸エステル金属塩系の物質としては、Sodium2、2’-methlene-bis-(4、6-di-tert-butylephenyl)phosphate(ナトリウム2、2’-メチレンビス(4、6-ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート)、アルミニウム ヒドロキシビス[2、2-メチレンビス(4、6-ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート]、ナトリウム ビス(4-第三ブチルフェニル)ホスフェートなどを挙げることができる。また、ソルビトール系の物質としては、ジベンジリデンソルビトール、ビス(4-メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(3、4-ジメチルベンジリデン)ソルビトールなどを挙げることができる。さらに、安息香酸アルミニウム系の物質としては、ヒドロキシージーパラ第三ブチル安息香酸アルミニウムを挙げることができる。
上述のように、本実施形態の化粧シートの特徴(発明特定事項)の一つは、「透明樹脂層は、ベシクルに内包された二酸化炭素吸収剤及び結晶核剤を含有する」ことにある。そして、二酸化炭素吸収剤及び結晶核剤をベシクルに内包させた状態で樹脂組成物に添加することで、樹脂材料中、すなわち透明樹脂層中への二酸化炭素吸収剤及び結晶核剤の分散性を飛躍的に向上するという効果が奏するが、その特徴を、完成された化粧シートの状態における物の構造や特性にて直接特定することは、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は次の通りである。ベシクルの状態で添加された二酸化炭素吸収剤及び結晶核剤は、高い分散性を有して分散された状態になっていて、作製した化粧シートの状態においても、二酸化炭素吸収剤及び結晶核剤は透明樹脂層に高分散されている。しかしながら、透明樹脂層を構成する樹脂組成物に二酸化炭素吸収剤及び結晶核剤をベシクルの状態で添加して透明樹脂層を作製した後の、化粧シートの作製工程においては、通常、積層体への圧縮処理や硬化処理などの種々の処理が施されるが、このような処理によって、二酸化炭素吸収剤及び結晶核剤を内包するベシクルの外膜が破砕や化学反応して、二酸化炭素吸収剤及び結晶核剤が外膜で包含(包皮)されていない可能性も高く、その外膜が破砕や化学反応している状態が化粧シートの処理工程によってばらつくためである。そして、この二酸化炭素吸収剤及び結晶核剤が外膜で包含されていないなどの状況は、物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか二酸化炭素吸収剤及び結晶核剤とは別に添加された材料なのか判定が困難な場合も想定される。このように、本願発明は、従来に比して二酸化炭素吸収剤及び結晶核剤が高分散で配合されている点で相違があるものの、二酸化炭素吸収剤及び結晶核剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シートの状態において、その構造や特性を測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
ここで、建築基準法施工令に規定の不燃材料の技術的基準においては、ISO5660-1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において下記の要件を満たしている必要がある(建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号)。本実施形態の化粧シートが不燃材料として認定されるためには、不燃性基材と貼り合わせた状態で50kW/mの輻射熱による加熱にて20分間の加熱時間において下記の1~3の要求項目をすべて満たす必要がある。
1.総発熱量が8MJ/m以下
2.最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えない
3.防炎上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が生じない
なお、不燃性基材としては、石こうボード、繊維混入ケイ酸カルシウム板または亜鉛メッキ鋼板から選択して用いることができる。
そして、本実施形態の化粧シートは、上記不燃性基材と貼り合わせた状態でのISO5660-1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、上記施工令第108条の2第1号および第2号に記載の要件をともに満たす不燃材料を実現している。
例えば、透明樹脂層を構成する樹脂100質量部に対する二酸化炭素吸収剤の配合量を1質量部以上10質量部以下の範囲とすることが好ましい。樹脂100質量部に対し二酸化炭素吸収剤を1質量部以上、透明樹脂層を構成する樹脂に含有させることで、上記のISO5660-1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験を満たす不燃性を確保することができる。但し、10質量部を越えると透明樹脂層の透明性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。
さらに、本実施形態の化粧シートは、引張弾性率が500MPa以上、2000MPa以下であって、引張破断伸度が200%以上であることが重要である。引張破断伸度の上限は特に無いが、500%以下であれば問題がない。
引張破断伸度とは、試料を所定の速度で引っ張り、破断した際の伸びを表す値であり、破断時の試料の長さ(L)から試験前の試料の長さ(L)を引いた値を試験前の試料の長さ(L)で除した値を百分率で表した値であり、値が小さいほど伸びが悪く、印刷加工時における破断の発生など印刷適性に劣り、値が大きいほどよく伸びて印刷特性に優れている。この他にも例えば、値が大きいほどVカット曲げ加工などの耐後加工性に優れていることを示す。
ここで、上記引張特性評価は、JIS K 7127「プラスチック-引張特性の試験方法」に準拠する。具体的にはJIS K 7127に記載の試験片タイプ1Bのダンベル型試験片を作成し、試験速度50mm/minにて試験を行う。
<実施形態の化粧シート>
以下に、本発明に基づく実施形態の化粧シートの構成について、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態の化粧シート1を、木質ボード類、無機質ボード類または金属板などからなる基材Bに貼り合わせた化粧板の状態を示す。本実施形態の化粧シート1は、基材Bに面する側から、プライマー層6、隠蔽層8、原反層2、絵柄模様層3、接着層7(感熱接着層、アンカーコート層、ドライラミ接着剤層)、透明樹脂層4、及び表面保護層5がこの順に積層された構成とされている。また、図2では、意匠性を向上させるために透明樹脂層4の表面にエンボス模様4aを設けた場合を例示している。
なお、原反層2と基材Bとの間および/または絵柄模様層3と表面保護層5との間の接着性に問題があれば、原反層2と基材Bとの間および/または絵柄模様層3と表面保護層5との間にプライマー層を適宜設けてもよい。図2では、原反層の裏面側にプライマー層6を設けた場合を例示している。
[原反層]
原反層2にオレフィン系の樹脂を用いる場合には、表面が不活性な状態とされていることが多いので、原反層2と基材Bとの間に、プライマー層6を設けることが好ましい。この他にも、原反層2と基材Bとの接着性を向上させるために、原反層2にコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等を行うことが望ましい。
原反層2としては、材質は特に限定されるものではなく、一般的な化粧材用の基材であれば何でも適用することができる。原反層2の材料としては、例えば、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙などの紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリルなどの合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタンなどのゴム、有機もしくは無機系の不織布、合成紙、アルミニウム、鉄、金、銀などの金属箔などが挙げられる。特に、原反層2として紙または熱可塑性樹脂フィルムを適用した場合には、巻き取り方式による連続大量生産が可能となり可撓性の化粧シートに対して本発明を好適に適用することができる。
また、原反層2に当該二酸化炭素吸収剤ベシクルまたは、二酸化炭素吸収剤および造核剤(結晶核剤)を内包するベシクルを配合することで、化粧シートとしての不燃性および機械的物性が向上し、より好ましい。
[絵柄模様層]
絵柄模様層3は、既知の印刷手法を用いて設けることが出来る。原反層2が巻取りの状態で用意できる場合には、ロールツーロールの印刷装置で絵柄模様層3の形成のための印刷を行うことができる。印刷手法は特に限定するものではないが、生産性や絵柄の品位を考慮すれば、例えばグラビア印刷法を用いることができる。
絵柄模様は、床材や壁材などの使用箇所に応じた意匠性を考慮して任意の絵柄模様を採用すればよく、木質系の絵柄であれば各種木目が好んで用いられることが多く、木目以外にもコルクを絵柄模様とすることもできる。例えば大理石などの石材の床をイメージしたものであれば大理石の石目などの絵柄模様として用いられることもある。また天然材料の絵柄模様以外にそれらをモチーフとした人工的絵柄模様や幾何学模様などの人工的絵柄模様も用いることができる。
絵柄模様層3の材料としては、バインダーとしての硝化綿、セルロース、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変性物の中から適宜選定して用いることができる。これらは水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでもよく、また1液タイプでも硬化剤を使用した2液タイプでもよい。さらに紫外線や電子線等の照射によりインキを硬化させる方法を用いてもよい。中でも最も一般的な方法は、ウレタン系のインキを用いるもので、イソシアネートによって硬化させる方法である。これらのバインダー以外には、通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤などが添加されている。汎用性の高い顔料としては、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等が挙げられる。また、インキの塗布とは別に各種金属の蒸着やスパッタリングで意匠を施すことも可能である。
[接着層]
接着層7としては、発熱性試験時の熱量を考慮して、可能な限り薄く積層されていることが望ましい。接着剤としては、可能な限り燃焼時の熱量が少ないものが望ましく、それ以外は特に限定されるものではない。
[透明樹脂層]
透明樹脂層4としては、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂が用いられていることが好ましい。アイソタクチックペンタッド分率とは、質量数13の炭素C(核種)を用いた13C-NMR測定法(核磁気共鳴測定法)により、上記透明樹脂層を構成する樹脂組成物を所定の共鳴周波数にて共鳴させて得られる数値(電磁波吸収率)から算出されるものであり、樹脂組成物中の原子配置、電子構造、分子の微細構造を規定するものである。ポリプロピレン樹脂のペンタッド分率とは、13C-NMRにより求めたプロピレン単位が5個並んだ割合のことであって、結晶化度あるいは立体規則性の尺度として用いられている。主に表面の耐擦傷性を決定付ける重要な要因の一つであり、基本的にはペンタッド分率が高いほどシートの結晶化度が高くなるため、耐擦傷性に優れた透明樹脂層4とすることができる。
なお、透明樹脂層4には、必要に応じて熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤を添加することもできる。熱安定剤としては、フェノール系、硫黄系、リン系、ヒドラジン系等、難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等、光安定剤としては、ヒンダードアミン系等を、任意の組み合わせで添加するのが一般的である。
[表面保護層]
表面保護層5としては、特に規定されるものではないが、ポリウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッソ系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系等から適宜選択できる。形態も水性、エマルジョン、溶剤系いずれでも可能で、且つ硬化も1液タイプでも硬化剤を用いた2液タイプでもよい。中でもイソシアネート反応を利用したウレタン系のトップコートが作業性、価格、樹脂自体の凝集力等の観点からも望ましい。イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルヘキサンジイソシアネート(HTDI)、メチルシクロヘキサノンジイソシアネート(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等から適宜選定して用いることができる。
また、化粧シートの表面の硬度をさらに向上させるために、表面保護層5として紫外線や電子線照射で硬化する樹脂を使用することも可能である。さらに耐候性を向上させるためには、紫外線吸収剤及び光安定剤を適宜添加してもよい。そして、各種機能を付与するために抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤の添加も任意に行うことができる。さらに、表面の意匠性を向上させるために、艶の調整のための、あるいはさらに耐磨耗性を付与するための、アルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ等を添加することもできる。
また、表面保護層5にも、表面保護層としての透明性を損なわない範囲で、当該二酸化炭素吸収剤ベシクルを配合することで、化粧シートとしての不燃性が向上し、より好ましい。
[隠蔽層]
また、化粧シート1に隠蔽性を付与したい場合には、原反層2を着色シートとすることで隠蔽性を付与したり、原反層2などは透明シートのままで、別途、不透明な隠蔽層8を設けて隠蔽性を付与することができる。図1は、別途隠蔽層8を設けた例である。
隠蔽層8としては、基本的には絵柄模様層3と同じ材料から構成することができるが、隠蔽性を保たせることを目的としているので、顔料としては不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等を使用することが好ましい。また隠蔽性を上げるために金、銀、銅、アルミ等の金属を添加することも可能である。一般的にはフレーク状のアルミを添加させることが多い。
[プライマー層]
プライマー層6としては、絵柄模様層3と同じ材料を用いることができるが、化粧シートの裏面に施されるためにウエブ状で巻取りを行うことを考慮すると、ブロッキングを避けて且つ接着剤との密着を高めるために、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加させてもよい。
実施形態の化粧シート1においては、原反層2は印刷作業性、コストなどを考慮して20μm~150μm、接着層7は1μm~10μm未満、透明樹脂層4は20μm~200μm、表面保護層5は3μm~20μmとすることが望ましく、化粧シート1の総厚は45μm~380μmの範囲内とすることが好適である。接着層7は、1μm未満であると積層体として求められる密着性を得ることができず、10μm以上であると不燃性能に劣る可能性が高いため、1μm~10μm未満の厚さとすることが好ましい。
本実施形態の化粧シート1を形成するにあたり、積層方法は特に限定するものではなく、熱圧を応用した方法、押し出しラミネート方法およびドライラミネート方法などの一般的に用いられる方法から適宜選択して形成することができる。エンボス模様4aを形成する場合には、一旦、上記積層方法によってラミネートした後に熱圧によってエンボス模様4aを入れる方法または冷却ロールに凹凸模様を設けて押し出しラミネートと同時にエンボス模様4aを形成する方法などを用いることができる。
<作用その他>
(1)本実施形態の化粧シート1においては、熱可塑性樹脂組成物(例えば、ポリオレフィン系樹脂)からなる透明樹脂層に対して、二酸化炭素吸収剤が(超臨界逆相蒸発法によって得られる)ベシクルに内包された状態で配合されている。
この構成によれば、透明樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂に対して当該二酸化炭素吸収剤を高充填することが可能となり、二酸化炭素吸収剤が充填された分だけ化粧シート1に要する樹脂成分を低減化させることが可能となる。この結果、燃焼時に生じる発熱量を抑制して、建築基準法施工令に記載の不燃材料の技術的基準を満たした「不燃材料」としての化粧シート1を提供することを可能とする。
また、二酸化炭素吸収剤が配合された熱可塑性樹脂組成物からなる層を有しているので、廃棄後の焼却処分時に樹脂成分の燃焼に起因して発生する二酸化炭素を当該二酸化炭素吸収剤によって吸収または分解して減少させることができる。
(2)ベシクルの外膜をリン脂質によって形成したリポソームとすることが好ましい。
この構成によれば、主成分であるポリオレフィン系樹脂との相溶性に優れたベシクルとすることができ、ベシクルに内包された二酸化炭素吸収剤を極めて均一にポリオレフィン系樹脂中に分散させることができる。すなわち、透明樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂との相溶性を向上させて効率よく分散させることができる。
(3)アルミノケイ酸塩などの二酸化炭素吸収剤と一緒に結晶核剤をリポソーム等のベシクルに内包された状態で配合することが好ましい。
この構成によれば、二酸化炭素吸収剤と一緒に結晶核剤が内包されたベシクルを配合することにより、熱可塑性樹脂組成物の結晶化度をコントロールして機械的強度や耐後加工性に優れた化粧シートを提供することができる。すなわち、ポリオレフィン系樹脂の結晶化度を向上させて、機械的特性や耐後加工性に優れた化粧シートとすることができる。
(4)二酸化炭素吸収剤は、アルミノケイ酸塩、金属水酸化物、金属酸化物、チタン酸化合物またはリチウム化合物のうち少なくとも1つであることが好ましい。
上記の二酸化炭素吸収剤から少なくとも1つ選択して配合することにより、建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号に記載の不燃材料の技術的基準を満たすことができるとともに、燃焼時に発生する二酸化炭素の排出量をも削減可能な化粧シートを提供することができる。
(5)超臨界逆相蒸発法を用いてベシクル化処理を施すことによって、二酸化炭素吸収剤同士が凝集することを防いで樹脂材料への高い分散性を実現する事により、高い透明性を実現し、また、結晶核剤同士の凝集を防ぐことでポリオレフィン系樹脂の結晶化度を向上させて、優れた耐擦傷性および耐後加工性をも実現している。
(6)化粧シートは、引張弾性率が、500MPa以上2000MPa以下であり、引張破断伸度が、200%以上である。
この構成によれば、化粧シートに求められる機械的強度を有し、製造適性に優れるとともに、Vカット曲げ加工などの耐後加工性に優れる化粧シートを提供することができる。
(7)本実施形態の化粧シート1の製造方法においては、熱可塑性樹脂組成物(例えば、ポリオレフィン系樹脂)に、二酸化炭素吸収剤を(超臨界逆相蒸発法によって得られる)ベシクルに内包された状態で添加して、透明樹脂層を形成している。
この構成によれば、透明樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂に対して当該二酸化炭素吸収剤を高充填することが可能となり、二酸化炭素吸収剤が充填された分だけ化粧シート1に要する樹脂成分を低減化させることが可能となる。この結果、燃焼時に生じる発熱量を抑制して、建築基準法施工令に記載の不燃材料の技術的基準を満たした「不燃材料」としての化粧シート1を提供することを可能とする。
また、二酸化炭素吸収剤が配合された熱可塑性樹脂組成物からなる層を有しているので、廃棄後の焼却処分時に樹脂成分の燃焼に起因して発生する二酸化炭素を当該二酸化炭素吸収剤によって吸収または分解して減少させることができる。
(8)ポリオレフィン系樹脂に、結晶核剤と二酸化炭素吸収剤とを共にベシクルに内包させた状態で添加して、透明樹脂層を形成することが好ましい。
この構成によれば、二酸化炭素吸収剤と一緒に結晶核剤が内包されたベシクルを配合することにより、ポリオレフィン系樹脂の結晶化度をコントロールして機械的強度や耐後加工性に優れた化粧シートを提供することができる。すなわち、ポリオレフィン系樹脂の結晶化度を向上させて、機械的特性や耐後加工性に優れた化粧シートとすることができる。
以上から、本実施形態の化粧シート及び化粧シートの製造方法によれば、焼却処分時におけるCO排出量の削減を可能とするとともに、建築基準法に規定する不燃規格を満たし、フィルムとしての機械的強度や耐後加工性にも優れた化粧シートを提供することを可能とする。
以下に、本発明に基づく化粧シート1の具体的な実施例について説明する。
<実施例1>
実施例1においては、高結晶性ポリプロピレン樹脂に対し、前述の超臨界逆相蒸発法によってベシクル化処理した二酸化炭素吸収剤を添加した熱可塑性樹脂組成物を、溶融押出機を用いて押し出し、透明樹脂層4として使用する厚さ80μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜した。続いて、製膜された透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施して表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。なお、押し出し製膜時の冷却条件のコントロールにより、製膜された透明樹脂シートの高結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は7.3%となった。
他方、隠蔽性のある70μmの基材シート(原反層2)に2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)にて柄印刷を施して絵柄模様層3を施し、また、原反層2の裏面にプライマーコートを施してプライマー層6を設けた。しかる後、上記原反層2の絵柄模様層3面に、高結晶性ポリプロピレン製の上記透明樹脂シートによる透明樹脂層4をドライラミネート用接着剤(タケラックA540:三井化学(株)製;塗布量2g/m )による接着層7を介してドライラミネート法にて貼り合わせた。次に貼り合わせたシートの上記透明樹脂シートによる透明樹脂層4の面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様4aを施した後、そのエンボス模様4a面上に2液硬化型ウレタントップコート(W184:DICグラフィックス社製)を塗布量3g/mにて塗布して、図1に示す総厚157μmの化粧シートを得た。
以下に、上記熱可塑性樹脂組成物の詳しい作製方法について説明する。
ベシクルの調製は超臨界逆相蒸発法により下記の方法で行った。メタノール100質量部、二酸化炭素吸収剤としてのアルミノケイ酸ナトリウム160質量部、または二酸化炭素吸収剤としてのアルミノケイ酸ナトリウム160質量部およびリン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA-21、ADEKA社製)2質量部、リン脂質としてのホスファチジルコリン5質量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaとなるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とした後、激しく攪拌混合しながらイオン交換水を100質量部注入する。容器内の温度および圧力を保持した状態で15分間攪拌後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻すことによって二酸化炭素吸収剤としてのアルミノケイ酸ナトリウム、または二酸化炭素吸収剤としてのアルミノケイ酸ナトリウムと造核剤とが内包されたリン脂質からなる外膜を具備するリポソームを得た。
透明樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、上記方法により調製したリポソーム26質量部と、ホモポリプロピレン樹脂(MFR=15g/10min(230℃))100質量部とをヘンシェルミキサーを用いて400rpm、15分間混合し、噛合い型2軸押出機を用いて真空脱気しながら溶融混練した後、ストランドカット法によってペレタライズを実施して透明樹脂層に用いる熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。
<実施例2>
実施例2においては、前述の超臨界逆相蒸発法によって二酸化炭素吸収剤としてのアルミノケイ酸ナトリウムと造核剤としてのリン酸エステル金属塩系造核剤を内包するリポソームが配合された透明樹脂層4を具備する化粧シート1を用いた。
具体的には、前述の超臨界逆相蒸発法によってベシクル化処理した二酸化炭素吸収剤と造核剤を添加した熱可塑性樹脂組成物を溶融押出機を用いて押し出し、透明樹脂層4として使用する厚さ80μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜し、続いて、製膜された透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施して表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。なお、押し出し製膜時の冷却条件のコントロールにより、製膜された透明樹脂シートの高結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は8.5%となった。
他方、隠蔽性のある70μmの基材シート(原反層2)に2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)にて柄印刷を施して絵柄模様層3を施し、また、原反層2の裏面にプライマーコートを施してプライマー層6を設けた。しかる後、上記原反層2の絵柄模様層3面に、高結晶性ポリプロピレン製の上記透明樹脂シートによる透明樹脂層4をドライラミネート用接着剤(タケラックA540:三井化学(株)製;塗布量2g/m )による接着層7を介してドライラミネート法にて貼り合わせた。次に貼り合わせたシートの上記透明樹脂シートによる透明樹脂層4の面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様4aを施した後、そのエンボス模様4a面上に2液硬化型ウレタントップコート(W184:DICグラフィックス社製)を塗布量3g/mにて塗布して、図1に示す総厚157μmの化粧シートを得た。
<比較例1>
比較例1においては、二酸化炭素吸収剤を配合せずに、超臨界逆相蒸発法によりベシクルに内包した造核剤のみを配合した透明樹脂層4を具備した化粧シート1を用いた。
超臨界逆相蒸発法によりベシクルに内包した造核剤の調製方法は、次の通りである。
メタノール100質量部、造核剤としてのリン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA-21:ADEKA社製)82質量部、リン脂質としてのホスファチジルコリン5質量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaとなるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とした後、激しく攪拌しながらイオン交換水を100質量部注入する。容器内の温度および圧力を保持した状態で15分間攪拌後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻すことによってリン脂質からなる外膜を具備するベシクルに内包された造核剤リポソーム(結晶核剤リポソーム)を得た。
上述の造核剤リポソームをホモポリプロピレン(MFR=3.0g/10min(230℃))100質量部に添加し、噛合い型2軸押出機を用いて溶融混練した後、ストランドカット法によりペレタライズを実施して熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。この熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いた押出成形法により厚さ80μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜した。製膜された透明樹脂シートの結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は5.5%となった。
以降の製造工程に関しては、実施例1と同様の工程を行って図1に示す層構成からなる比較例1の化粧シート1を得た。
<比較例2>
比較例2においては、ベシクル化処理を施していない二酸化炭素吸収剤を配合した透明樹脂層4を具備する化粧シート1を用いた。
具体的には、隠蔽性のある70μmの基材シート(原反層2)に2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)にて柄印刷を施して絵柄模様層3を施し、また、その原反層2の裏面にプライマーコートを施してプライマー層6を設けた。
他方、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂100質量部に、ベシクル化処理を施していないアルミノケイ酸ナトリウム10質量部を添加した樹脂を押し出し、透明樹脂層4として使用する厚さ80μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜し、続いて、製膜された透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施して表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。なお、押し出し製膜時の冷却条件のコントロールにより、製膜された透明樹脂シートの高結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は17.3%となった。以降の製造工程に関しては、実施例1と同様の工程を行って図1に示す構成の比較例2の化粧シート1を得た。
<評価>
[燃焼試験]
実施例1、2および比較例1、2で得られた各化粧シート1について、コーンカロリーメータ試験機による発熱性試験および引張試験を実施した。また、JIS K7217-1983法(プラスチック燃焼ガスの分析方法)に従った方法により下記の測定条件にて燃焼試験を行いその際の二酸化炭素排出量(CO排出量)を算出した。得られた試験結果を表1に示す。
<燃焼試験の測定条件(JIS K7217-1983法)>
燃焼温度:750℃
支燃ガス:空気
支燃ガス供給量:0.5±0.05L/min
試料量:0.1g
試料皿:石英製の穴あき皿
点火装置:燃焼が終了するまで、火花を発生させる
分析ガス:二酸化炭素
ガス分析方法:ガスクロマト法
[引張試験]
<引張試験条件(JIS K 7127)>
試験片:試験片タイプ1B
試験速度:50mm/min
試験結果を表1に示す。
Figure 0007013665000001
表1に示すように、実施例1および実施例2の化粧シート1においては、コーンカロリーメータ試験機による発熱性試験の結果から上記説明の不燃材料の技術的基準を満たしていた。また、引張試験においても、共に化粧シートに求められる引張弾性率および引張破断伸度を備えていた。
これに対して、比較例1および比較例2の化粧シート1においては、コーンカロリーメータ試験機による発熱性試験の結果から不燃材料の技術的基準を満たしていなかった。さらには、比較例2においては、透明樹脂層のヘイズ値が高く、化粧シートとして求められる意匠性が得られていなかった。
CO排出量については、二酸化炭素吸収剤を配合していない比較例1に比べて、二酸化炭素吸収剤としてのアルミノケイ酸ナトリウムを配合した実施例1および実施例2の化粧シート1は1/2以下の二酸化炭素排出量であった。
以上の結果から、実施例1および実施例2の本発明に基づく化粧シート1は、建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号に規定の技術的基準を満たす不燃材料であることが明らかとなった。また、製造適性に優れ、化粧シートに求められる機械的強度を備えるとともに、焼却時に発生する二酸化炭素を吸収してCO排出量を削減することが可能である化粧シート1であることが明らかとなった。
本発明の化粧シート1は、上記の実施形態および実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
1 化粧シート
2 原反層
3 絵柄模様層
4 透明樹脂層
4a エンボス模様
5 表面保護層
6 プライマー層
7 接着層

Claims (24)

  1. 基材層の一方の面側に、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂層を有する化粧シートであって、
    上記樹脂層は、二酸化炭素吸収剤を内包したベシクルを含有し、
    上記二酸化炭素吸収剤は、アルミノケイ酸塩、金属水酸化物、金属酸化物、チタン酸化合物、及びリチウム化合物のうち少なくとも1つからなり、
    上記アルミノケイ酸塩は、ゼオライトであり、
    上記金属水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化バリウムであり、
    上記金属酸化物は、酸化カルシウムであり、
    上記樹脂層を構成する樹脂100質量部に対する上記二酸化炭素吸収剤の配合量は、1質量部以上10質量部以下の範囲内であることを特徴とする化粧シート。
  2. 基材層の一方の面側に、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂層を有する化粧シートであって、
    上記樹脂層を、上記ポリオレフィン系樹脂に二酸化炭素吸収剤を内包したベシクルを添加して形成し、
    上記二酸化炭素吸収剤は、アルミノケイ酸塩、金属水酸化物、金属酸化物、チタン酸化合物、及びリチウム化合物のうち少なくとも1つからなり、
    上記アルミノケイ酸塩は、ゼオライトであり、
    上記金属水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化バリウムであり、
    上記金属酸化物は、酸化カルシウムであり、
    上記樹脂層を構成する樹脂100質量部に対する上記二酸化炭素吸収剤の配合量は、1質量部以上10質量部以下の範囲内であることを特徴とする化粧シート。
  3. 上記基材層と上記樹脂層との間に絵柄模様層を有し、
    上記樹脂層は、当該樹脂層の下層が視認可能な透明性を有する透明樹脂層であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した化粧シート。
  4. 上記樹脂層は結晶核剤を含有し、その結晶核剤は、上記二酸化炭素吸収剤と一緒にベシクルに内包された状態で、上記樹脂層に含有していることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した化粧シート。
  5. 上記結晶核剤は、上記ポリオレフィン系樹脂の結晶化温度または融点以上で結晶化する物質であることを特徴とする請求項4に記載した化粧シート。
  6. 上記結晶核剤は、リン酸エステル金属塩系物質、または安息香酸アルミニウム系物質であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載した化粧シート。
  7. 上記樹脂層を、上記ポリオレフィン系樹脂に、結晶核剤と上記二酸化炭素吸収剤とを共にベシクルに内包させた状態で添加して形成することを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載した化粧シート。
  8. 超臨界逆相蒸発法によって、上記二酸化炭素吸収剤を、ベシクルに内包させたことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載した化粧シート。
  9. 超臨界逆相蒸発法によって、上記結晶核剤と上記二酸化炭素吸収剤とを共にベシクルに内包させたことを特徴とする請求項7に記載した化粧シート。
  10. 上記ベシクルは、リン脂質からなる外膜を具備したリポソームであることを特徴とする請求項1~請求項9のいずれか1項に記載した化粧シート。
  11. 上記ポリオレフィン系樹脂は、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1~請求項10のいずれか1項に記載した化粧シート。
  12. 上記化粧シートが、不燃性基材と貼り合わせた状態でISO5660-1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号に記載の要件を満たす不燃性を有することを特徴とする請求項1~請求項11のいずれか1項に記載した化粧シート。
  13. 請求項1~請求項12のいずれか1項に記載した化粧シートであって、
    上記化粧シートの引張弾性率が、500MPa以上2000MPa以下であり、引張破断伸度が、200%以上、であることを特徴とする化粧シート。
  14. 基材層の一方の面側に、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂層を有する化粧シートの製造方法であって、
    上記樹脂層を、上記ポリオレフィン系樹脂に二酸化炭素吸収剤を内包したベシクルを添加して形成する工程を有し、
    上記二酸化炭素吸収剤は、アルミノケイ酸塩、金属水酸化物、金属酸化物、チタン酸化合物、及びリチウム化合物のうち少なくとも1つからなり、
    上記アルミノケイ酸塩は、ゼオライトであり、
    上記金属水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化バリウムであり、
    上記金属酸化物は、酸化カルシウムであり、
    上記樹脂層を構成する樹脂100質量部に対する上記二酸化炭素吸収剤の配合量は、1質量部以上10質量部以下の範囲内であることを特徴とする化粧シートの製造方法。
  15. 上記基材層と上記樹脂層との間に絵柄模様層を形成し、
    上記樹脂層は、当該樹脂層の下層が視認可能な透明性を有する透明樹脂層であることを特徴とする請求項14に記載した化粧シートの製造方法。
  16. 上記樹脂層を、上記ポリオレフィン系樹脂に、結晶核剤と上記二酸化炭素吸収剤とを共にベシクルに内包させた状態で添加して形成することを特徴とする請求項14又は請求項15に記載した化粧シートの製造方法。
  17. 超臨界逆相蒸発法によって、上記二酸化炭素吸収剤を、ベシクルに内包させることを特徴とする請求項14又は請求項15に記載した化粧シートの製造方法。
  18. 超臨界逆相蒸発法によって、上記結晶核剤と上記二酸化炭素吸収剤とを共にベシクルに内包させることを特徴とする請求項16に記載した化粧シートの製造方法。
  19. 上記結晶核剤は、上記ポリオレフィン系樹脂の結晶化温度または融点以上で結晶化する物質であることを特徴とする請求項16又は請求項18に記載した化粧シートの製造方法。
  20. 上記結晶核剤は、リン酸エステル金属塩系物質、または安息香酸アルミニウム系物質であることを特徴とする請求項16又は請求項18に記載した化粧シートの製造方法。
  21. 上記ベシクルは、リン脂質からなる外膜を具備したリポソームであることを特徴とする請求項14~請求項20のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法。
  22. 上記化粧シートが、不燃性基材と貼り合わせた状態でISO5660-1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号に記載の要件を満たす不燃性を有することを特徴とする請求項14~請求項21のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法。
  23. 請求項14~請求項22のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法であって、
    上記化粧シートの引張弾性率が、500MPa以上2000MPa以下であり、引張破断伸度が、200%以上、であることを特徴とする化粧シートの製造方法。
  24. 上記ポリオレフィン系樹脂は、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項14~請求項23のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法。
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