JP7013665B2 - 化粧シート及び化粧シートの製造方法 - Google Patents
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Description
本出願人は、特許文献1に示すように、ポリ塩化ビニル系樹脂の代替材としてのポリオレフィン系樹脂を用いた不燃性を有する化粧シートを提案している。
それに対し、本出願人は、特許文献2に示すように、樹脂材料に対して、アルミノケイ酸塩などの二酸化炭素吸収剤を添加することによって、焼却処理時におけるCO2排出量を削減可能な樹脂組成物を提案している。
また、本発明の一態様の化粧シートの製造方法は、基材層の一方の面側に、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂層を有する化粧シートの製造方法であって、上記樹脂層を、上記ポリオレフィン系樹脂に二酸化炭素吸収剤を内包したベシクルを添加して形成する。
特に二酸化炭素吸収剤をベシクル化して含有することで、樹脂内で、二酸化炭素吸収剤が凝集することがなく高濃度で均一に高分散させることができる結果、より化粧シートの不燃性が向上すると共に、樹脂層の透明性を向上させることが出来る。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
なお、本実施形態では、透明樹脂層4の下層に絵柄模様層3を有するため、透明樹脂層4が透明な樹脂から構成されているが、下層に絵柄模様層3が無い場合には、透明樹脂層4は透明である必要は無い。また、本明細書で透明とは、下層が視認できるだけの透明性を少なくとも有することを指す。
なお、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度もしくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度だけ、あるいは臨界圧力だけが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味するものである。この方法により、直径50~800nmの単層ラメラベシクルを得ることができる。
二酸化炭素吸収剤に対して超臨界逆相蒸発法によりベシクル化処理を施すことによって、二酸化炭素吸収剤がカプセル内に内包された構造とされており、これによって二酸化炭素吸収剤の粒子同士が凝集することを防いで樹脂材料への高い分散性を実現している。
ベシクルの外膜を形成するその他の物質としては、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物、高分子系の界面活性剤、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックスまたは変性樹脂などの分散剤が挙げられる。
また、二酸化炭素吸収剤を二次凝集することなく、ポリオレフィン系樹脂中に分散する事により、透明樹脂層として求められる透明性を損なうことなく、二酸化炭素吸収剤を添加する事が可能となる。
結晶核剤としては、ポリオレフィン系樹脂に分散した際にポリオレフィン結晶の核となる物質またはポリオレフィンの結晶化温度または融点以上で結晶化し、その結晶がポリオレフィン結晶の核となる物質であれば特に限定されるものではないが、例えば、リン酸エステル金属塩系の物質、ソルビトール系の物質または安息香酸アルミニウム系の物質を用いることができる。
1.総発熱量が8MJ/m2以下
2.最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない
3.防炎上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が生じない
そして、本実施形態の化粧シートは、上記不燃性基材と貼り合わせた状態でのISO5660-1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、上記施工令第108条の2第1号および第2号に記載の要件をともに満たす不燃材料を実現している。
引張破断伸度とは、試料を所定の速度で引っ張り、破断した際の伸びを表す値であり、破断時の試料の長さ(L)から試験前の試料の長さ(L0)を引いた値を試験前の試料の長さ(L0)で除した値を百分率で表した値であり、値が小さいほど伸びが悪く、印刷加工時における破断の発生など印刷適性に劣り、値が大きいほどよく伸びて印刷特性に優れている。この他にも例えば、値が大きいほどVカット曲げ加工などの耐後加工性に優れていることを示す。
ここで、上記引張特性評価は、JIS K 7127「プラスチック-引張特性の試験方法」に準拠する。具体的にはJIS K 7127に記載の試験片タイプ1Bのダンベル型試験片を作成し、試験速度50mm/minにて試験を行う。
以下に、本発明に基づく実施形態の化粧シートの構成について、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態の化粧シート1を、木質ボード類、無機質ボード類または金属板などからなる基材Bに貼り合わせた化粧板の状態を示す。本実施形態の化粧シート1は、基材Bに面する側から、プライマー層6、隠蔽層8、原反層2、絵柄模様層3、接着層7(感熱接着層、アンカーコート層、ドライラミ接着剤層)、透明樹脂層4、及び表面保護層5がこの順に積層された構成とされている。また、図2では、意匠性を向上させるために透明樹脂層4の表面にエンボス模様4aを設けた場合を例示している。
なお、原反層2と基材Bとの間および/または絵柄模様層3と表面保護層5との間の接着性に問題があれば、原反層2と基材Bとの間および/または絵柄模様層3と表面保護層5との間にプライマー層を適宜設けてもよい。図2では、原反層の裏面側にプライマー層6を設けた場合を例示している。
原反層2にオレフィン系の樹脂を用いる場合には、表面が不活性な状態とされていることが多いので、原反層2と基材Bとの間に、プライマー層6を設けることが好ましい。この他にも、原反層2と基材Bとの接着性を向上させるために、原反層2にコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等を行うことが望ましい。
原反層2としては、材質は特に限定されるものではなく、一般的な化粧材用の基材であれば何でも適用することができる。原反層2の材料としては、例えば、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙などの紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリルなどの合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタンなどのゴム、有機もしくは無機系の不織布、合成紙、アルミニウム、鉄、金、銀などの金属箔などが挙げられる。特に、原反層2として紙または熱可塑性樹脂フィルムを適用した場合には、巻き取り方式による連続大量生産が可能となり可撓性の化粧シートに対して本発明を好適に適用することができる。
また、原反層2に当該二酸化炭素吸収剤ベシクルまたは、二酸化炭素吸収剤および造核剤(結晶核剤)を内包するベシクルを配合することで、化粧シートとしての不燃性および機械的物性が向上し、より好ましい。
絵柄模様層3は、既知の印刷手法を用いて設けることが出来る。原反層2が巻取りの状態で用意できる場合には、ロールツーロールの印刷装置で絵柄模様層3の形成のための印刷を行うことができる。印刷手法は特に限定するものではないが、生産性や絵柄の品位を考慮すれば、例えばグラビア印刷法を用いることができる。
絵柄模様は、床材や壁材などの使用箇所に応じた意匠性を考慮して任意の絵柄模様を採用すればよく、木質系の絵柄であれば各種木目が好んで用いられることが多く、木目以外にもコルクを絵柄模様とすることもできる。例えば大理石などの石材の床をイメージしたものであれば大理石の石目などの絵柄模様として用いられることもある。また天然材料の絵柄模様以外にそれらをモチーフとした人工的絵柄模様や幾何学模様などの人工的絵柄模様も用いることができる。
接着層7としては、発熱性試験時の熱量を考慮して、可能な限り薄く積層されていることが望ましい。接着剤としては、可能な限り燃焼時の熱量が少ないものが望ましく、それ以外は特に限定されるものではない。
透明樹脂層4としては、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂が用いられていることが好ましい。アイソタクチックペンタッド分率とは、質量数13の炭素C(核種)を用いた13C-NMR測定法(核磁気共鳴測定法)により、上記透明樹脂層を構成する樹脂組成物を所定の共鳴周波数にて共鳴させて得られる数値(電磁波吸収率)から算出されるものであり、樹脂組成物中の原子配置、電子構造、分子の微細構造を規定するものである。ポリプロピレン樹脂のペンタッド分率とは、13C-NMRにより求めたプロピレン単位が5個並んだ割合のことであって、結晶化度あるいは立体規則性の尺度として用いられている。主に表面の耐擦傷性を決定付ける重要な要因の一つであり、基本的にはペンタッド分率が高いほどシートの結晶化度が高くなるため、耐擦傷性に優れた透明樹脂層4とすることができる。
表面保護層5としては、特に規定されるものではないが、ポリウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッソ系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系等から適宜選択できる。形態も水性、エマルジョン、溶剤系いずれでも可能で、且つ硬化も1液タイプでも硬化剤を用いた2液タイプでもよい。中でもイソシアネート反応を利用したウレタン系のトップコートが作業性、価格、樹脂自体の凝集力等の観点からも望ましい。イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルヘキサンジイソシアネート(HTDI)、メチルシクロヘキサノンジイソシアネート(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等から適宜選定して用いることができる。
また、表面保護層5にも、表面保護層としての透明性を損なわない範囲で、当該二酸化炭素吸収剤ベシクルを配合することで、化粧シートとしての不燃性が向上し、より好ましい。
また、化粧シート1に隠蔽性を付与したい場合には、原反層2を着色シートとすることで隠蔽性を付与したり、原反層2などは透明シートのままで、別途、不透明な隠蔽層8を設けて隠蔽性を付与することができる。図1は、別途隠蔽層8を設けた例である。
隠蔽層8としては、基本的には絵柄模様層3と同じ材料から構成することができるが、隠蔽性を保たせることを目的としているので、顔料としては不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等を使用することが好ましい。また隠蔽性を上げるために金、銀、銅、アルミ等の金属を添加することも可能である。一般的にはフレーク状のアルミを添加させることが多い。
プライマー層6としては、絵柄模様層3と同じ材料を用いることができるが、化粧シートの裏面に施されるためにウエブ状で巻取りを行うことを考慮すると、ブロッキングを避けて且つ接着剤との密着を高めるために、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加させてもよい。
実施形態の化粧シート1においては、原反層2は印刷作業性、コストなどを考慮して20μm~150μm、接着層7は1μm~10μm未満、透明樹脂層4は20μm~200μm、表面保護層5は3μm~20μmとすることが望ましく、化粧シート1の総厚は45μm~380μmの範囲内とすることが好適である。接着層7は、1μm未満であると積層体として求められる密着性を得ることができず、10μm以上であると不燃性能に劣る可能性が高いため、1μm~10μm未満の厚さとすることが好ましい。
(1)本実施形態の化粧シート1においては、熱可塑性樹脂組成物(例えば、ポリオレフィン系樹脂)からなる透明樹脂層に対して、二酸化炭素吸収剤が(超臨界逆相蒸発法によって得られる)ベシクルに内包された状態で配合されている。
この構成によれば、透明樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂に対して当該二酸化炭素吸収剤を高充填することが可能となり、二酸化炭素吸収剤が充填された分だけ化粧シート1に要する樹脂成分を低減化させることが可能となる。この結果、燃焼時に生じる発熱量を抑制して、建築基準法施工令に記載の不燃材料の技術的基準を満たした「不燃材料」としての化粧シート1を提供することを可能とする。
また、二酸化炭素吸収剤が配合された熱可塑性樹脂組成物からなる層を有しているので、廃棄後の焼却処分時に樹脂成分の燃焼に起因して発生する二酸化炭素を当該二酸化炭素吸収剤によって吸収または分解して減少させることができる。
この構成によれば、主成分であるポリオレフィン系樹脂との相溶性に優れたベシクルとすることができ、ベシクルに内包された二酸化炭素吸収剤を極めて均一にポリオレフィン系樹脂中に分散させることができる。すなわち、透明樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂との相溶性を向上させて効率よく分散させることができる。
この構成によれば、二酸化炭素吸収剤と一緒に結晶核剤が内包されたベシクルを配合することにより、熱可塑性樹脂組成物の結晶化度をコントロールして機械的強度や耐後加工性に優れた化粧シートを提供することができる。すなわち、ポリオレフィン系樹脂の結晶化度を向上させて、機械的特性や耐後加工性に優れた化粧シートとすることができる。
上記の二酸化炭素吸収剤から少なくとも1つ選択して配合することにより、建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号に記載の不燃材料の技術的基準を満たすことができるとともに、燃焼時に発生する二酸化炭素の排出量をも削減可能な化粧シートを提供することができる。
(6)化粧シートは、引張弾性率が、500MPa以上2000MPa以下であり、引張破断伸度が、200%以上である。
この構成によれば、化粧シートに求められる機械的強度を有し、製造適性に優れるとともに、Vカット曲げ加工などの耐後加工性に優れる化粧シートを提供することができる。
この構成によれば、透明樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂に対して当該二酸化炭素吸収剤を高充填することが可能となり、二酸化炭素吸収剤が充填された分だけ化粧シート1に要する樹脂成分を低減化させることが可能となる。この結果、燃焼時に生じる発熱量を抑制して、建築基準法施工令に記載の不燃材料の技術的基準を満たした「不燃材料」としての化粧シート1を提供することを可能とする。
また、二酸化炭素吸収剤が配合された熱可塑性樹脂組成物からなる層を有しているので、廃棄後の焼却処分時に樹脂成分の燃焼に起因して発生する二酸化炭素を当該二酸化炭素吸収剤によって吸収または分解して減少させることができる。
この構成によれば、二酸化炭素吸収剤と一緒に結晶核剤が内包されたベシクルを配合することにより、ポリオレフィン系樹脂の結晶化度をコントロールして機械的強度や耐後加工性に優れた化粧シートを提供することができる。すなわち、ポリオレフィン系樹脂の結晶化度を向上させて、機械的特性や耐後加工性に優れた化粧シートとすることができる。
<実施例1>
実施例1においては、高結晶性ポリプロピレン樹脂に対し、前述の超臨界逆相蒸発法によってベシクル化処理した二酸化炭素吸収剤を添加した熱可塑性樹脂組成物を、溶融押出機を用いて押し出し、透明樹脂層4として使用する厚さ80μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜した。続いて、製膜された透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施して表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。なお、押し出し製膜時の冷却条件のコントロールにより、製膜された透明樹脂シートの高結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は7.3%となった。
ベシクルの調製は超臨界逆相蒸発法により下記の方法で行った。メタノール100質量部、二酸化炭素吸収剤としてのアルミノケイ酸ナトリウム160質量部、または二酸化炭素吸収剤としてのアルミノケイ酸ナトリウム160質量部およびリン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA-21、ADEKA社製)2質量部、リン脂質としてのホスファチジルコリン5質量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaとなるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とした後、激しく攪拌混合しながらイオン交換水を100質量部注入する。容器内の温度および圧力を保持した状態で15分間攪拌後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻すことによって二酸化炭素吸収剤としてのアルミノケイ酸ナトリウム、または二酸化炭素吸収剤としてのアルミノケイ酸ナトリウムと造核剤とが内包されたリン脂質からなる外膜を具備するリポソームを得た。
実施例2においては、前述の超臨界逆相蒸発法によって二酸化炭素吸収剤としてのアルミノケイ酸ナトリウムと造核剤としてのリン酸エステル金属塩系造核剤を内包するリポソームが配合された透明樹脂層4を具備する化粧シート1を用いた。
具体的には、前述の超臨界逆相蒸発法によってベシクル化処理した二酸化炭素吸収剤と造核剤を添加した熱可塑性樹脂組成物を溶融押出機を用いて押し出し、透明樹脂層4として使用する厚さ80μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜し、続いて、製膜された透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施して表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。なお、押し出し製膜時の冷却条件のコントロールにより、製膜された透明樹脂シートの高結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は8.5%となった。
比較例1においては、二酸化炭素吸収剤を配合せずに、超臨界逆相蒸発法によりベシクルに内包した造核剤のみを配合した透明樹脂層4を具備した化粧シート1を用いた。
超臨界逆相蒸発法によりベシクルに内包した造核剤の調製方法は、次の通りである。
メタノール100質量部、造核剤としてのリン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA-21:ADEKA社製)82質量部、リン脂質としてのホスファチジルコリン5質量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaとなるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とした後、激しく攪拌しながらイオン交換水を100質量部注入する。容器内の温度および圧力を保持した状態で15分間攪拌後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻すことによってリン脂質からなる外膜を具備するベシクルに内包された造核剤リポソーム(結晶核剤リポソーム)を得た。
以降の製造工程に関しては、実施例1と同様の工程を行って図1に示す層構成からなる比較例1の化粧シート1を得た。
比較例2においては、ベシクル化処理を施していない二酸化炭素吸収剤を配合した透明樹脂層4を具備する化粧シート1を用いた。
具体的には、隠蔽性のある70μmの基材シート(原反層2)に2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)にて柄印刷を施して絵柄模様層3を施し、また、その原反層2の裏面にプライマーコートを施してプライマー層6を設けた。
他方、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂100質量部に、ベシクル化処理を施していないアルミノケイ酸ナトリウム10質量部を添加した樹脂を押し出し、透明樹脂層4として使用する厚さ80μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜し、続いて、製膜された透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施して表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。なお、押し出し製膜時の冷却条件のコントロールにより、製膜された透明樹脂シートの高結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は17.3%となった。以降の製造工程に関しては、実施例1と同様の工程を行って図1に示す構成の比較例2の化粧シート1を得た。
[燃焼試験]
実施例1、2および比較例1、2で得られた各化粧シート1について、コーンカロリーメータ試験機による発熱性試験および引張試験を実施した。また、JIS K7217-1983法(プラスチック燃焼ガスの分析方法)に従った方法により下記の測定条件にて燃焼試験を行いその際の二酸化炭素排出量(CO2排出量)を算出した。得られた試験結果を表1に示す。
<燃焼試験の測定条件(JIS K7217-1983法)>
燃焼温度:750℃
支燃ガス:空気
支燃ガス供給量:0.5±0.05L/min
試料量:0.1g
試料皿:石英製の穴あき皿
点火装置:燃焼が終了するまで、火花を発生させる
分析ガス:二酸化炭素
ガス分析方法:ガスクロマト法
[引張試験]
<引張試験条件(JIS K 7127)>
試験片:試験片タイプ1B
試験速度:50mm/min
試験結果を表1に示す。
これに対して、比較例1および比較例2の化粧シート1においては、コーンカロリーメータ試験機による発熱性試験の結果から不燃材料の技術的基準を満たしていなかった。さらには、比較例2においては、透明樹脂層のヘイズ値が高く、化粧シートとして求められる意匠性が得られていなかった。
CO2排出量については、二酸化炭素吸収剤を配合していない比較例1に比べて、二酸化炭素吸収剤としてのアルミノケイ酸ナトリウムを配合した実施例1および実施例2の化粧シート1は1/2以下の二酸化炭素排出量であった。
本発明の化粧シート1は、上記の実施形態および実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
2 原反層
3 絵柄模様層
4 透明樹脂層
4a エンボス模様
5 表面保護層
6 プライマー層
7 接着層
Claims (24)
- 基材層の一方の面側に、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂層を有する化粧シートであって、
上記樹脂層は、二酸化炭素吸収剤を内包したベシクルを含有し、
上記二酸化炭素吸収剤は、アルミノケイ酸塩、金属水酸化物、金属酸化物、チタン酸化合物、及びリチウム化合物のうち少なくとも1つからなり、
上記アルミノケイ酸塩は、ゼオライトであり、
上記金属水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化バリウムであり、
上記金属酸化物は、酸化カルシウムであり、
上記樹脂層を構成する樹脂100質量部に対する上記二酸化炭素吸収剤の配合量は、1質量部以上10質量部以下の範囲内であることを特徴とする化粧シート。 - 基材層の一方の面側に、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂層を有する化粧シートであって、
上記樹脂層を、上記ポリオレフィン系樹脂に二酸化炭素吸収剤を内包したベシクルを添加して形成し、
上記二酸化炭素吸収剤は、アルミノケイ酸塩、金属水酸化物、金属酸化物、チタン酸化合物、及びリチウム化合物のうち少なくとも1つからなり、
上記アルミノケイ酸塩は、ゼオライトであり、
上記金属水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化バリウムであり、
上記金属酸化物は、酸化カルシウムであり、
上記樹脂層を構成する樹脂100質量部に対する上記二酸化炭素吸収剤の配合量は、1質量部以上10質量部以下の範囲内であることを特徴とする化粧シート。 - 上記基材層と上記樹脂層との間に絵柄模様層を有し、
上記樹脂層は、当該樹脂層の下層が視認可能な透明性を有する透明樹脂層であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した化粧シート。 - 上記樹脂層は結晶核剤を含有し、その結晶核剤は、上記二酸化炭素吸収剤と一緒にベシクルに内包された状態で、上記樹脂層に含有していることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した化粧シート。
- 上記結晶核剤は、上記ポリオレフィン系樹脂の結晶化温度または融点以上で結晶化する物質であることを特徴とする請求項4に記載した化粧シート。
- 上記結晶核剤は、リン酸エステル金属塩系物質、または安息香酸アルミニウム系物質であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載した化粧シート。
- 上記樹脂層を、上記ポリオレフィン系樹脂に、結晶核剤と上記二酸化炭素吸収剤とを共にベシクルに内包させた状態で添加して形成することを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載した化粧シート。
- 超臨界逆相蒸発法によって、上記二酸化炭素吸収剤を、ベシクルに内包させたことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載した化粧シート。
- 超臨界逆相蒸発法によって、上記結晶核剤と上記二酸化炭素吸収剤とを共にベシクルに内包させたことを特徴とする請求項7に記載した化粧シート。
- 上記ベシクルは、リン脂質からなる外膜を具備したリポソームであることを特徴とする請求項1~請求項9のいずれか1項に記載した化粧シート。
- 上記ポリオレフィン系樹脂は、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1~請求項10のいずれか1項に記載した化粧シート。
- 上記化粧シートが、不燃性基材と貼り合わせた状態でISO5660-1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号に記載の要件を満たす不燃性を有することを特徴とする請求項1~請求項11のいずれか1項に記載した化粧シート。
- 請求項1~請求項12のいずれか1項に記載した化粧シートであって、
上記化粧シートの引張弾性率が、500MPa以上2000MPa以下であり、引張破断伸度が、200%以上、であることを特徴とする化粧シート。 - 基材層の一方の面側に、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂層を有する化粧シートの製造方法であって、
上記樹脂層を、上記ポリオレフィン系樹脂に二酸化炭素吸収剤を内包したベシクルを添加して形成する工程を有し、
上記二酸化炭素吸収剤は、アルミノケイ酸塩、金属水酸化物、金属酸化物、チタン酸化合物、及びリチウム化合物のうち少なくとも1つからなり、
上記アルミノケイ酸塩は、ゼオライトであり、
上記金属水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化バリウムであり、
上記金属酸化物は、酸化カルシウムであり、
上記樹脂層を構成する樹脂100質量部に対する上記二酸化炭素吸収剤の配合量は、1質量部以上10質量部以下の範囲内であることを特徴とする化粧シートの製造方法。 - 上記基材層と上記樹脂層との間に絵柄模様層を形成し、
上記樹脂層は、当該樹脂層の下層が視認可能な透明性を有する透明樹脂層であることを特徴とする請求項14に記載した化粧シートの製造方法。 - 上記樹脂層を、上記ポリオレフィン系樹脂に、結晶核剤と上記二酸化炭素吸収剤とを共にベシクルに内包させた状態で添加して形成することを特徴とする請求項14又は請求項15に記載した化粧シートの製造方法。
- 超臨界逆相蒸発法によって、上記二酸化炭素吸収剤を、ベシクルに内包させることを特徴とする請求項14又は請求項15に記載した化粧シートの製造方法。
- 超臨界逆相蒸発法によって、上記結晶核剤と上記二酸化炭素吸収剤とを共にベシクルに内包させることを特徴とする請求項16に記載した化粧シートの製造方法。
- 上記結晶核剤は、上記ポリオレフィン系樹脂の結晶化温度または融点以上で結晶化する物質であることを特徴とする請求項16又は請求項18に記載した化粧シートの製造方法。
- 上記結晶核剤は、リン酸エステル金属塩系物質、または安息香酸アルミニウム系物質であることを特徴とする請求項16又は請求項18に記載した化粧シートの製造方法。
- 上記ベシクルは、リン脂質からなる外膜を具備したリポソームであることを特徴とする請求項14~請求項20のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法。
- 上記化粧シートが、不燃性基材と貼り合わせた状態でISO5660-1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号に記載の要件を満たす不燃性を有することを特徴とする請求項14~請求項21のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法。
- 請求項14~請求項22のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法であって、
上記化粧シートの引張弾性率が、500MPa以上2000MPa以下であり、引張破断伸度が、200%以上、であることを特徴とする化粧シートの製造方法。 - 上記ポリオレフィン系樹脂は、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項14~請求項23のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法。
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