JP7009762B2 - 多孔体および多孔体の製造方法 - Google Patents

多孔体および多孔体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7009762B2
JP7009762B2 JP2017068241A JP2017068241A JP7009762B2 JP 7009762 B2 JP7009762 B2 JP 7009762B2 JP 2017068241 A JP2017068241 A JP 2017068241A JP 2017068241 A JP2017068241 A JP 2017068241A JP 7009762 B2 JP7009762 B2 JP 7009762B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
finely divided
fine particles
cellulose
porous body
silver fine
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017068241A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018168126A (ja
Inventor
拓也 磯貝
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toppan Inc
Original Assignee
Toppan Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toppan Inc filed Critical Toppan Inc
Priority to JP2017068241A priority Critical patent/JP7009762B2/ja
Publication of JP2018168126A publication Critical patent/JP2018168126A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7009762B2 publication Critical patent/JP7009762B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)

Description

本発明は、多孔体および多孔体の製造方法に関するものであり、特に、平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体をその表面および内部に備えることを特長とする多孔体およびその製造方法に関する。
多孔体はその比表面積の高さから、吸収剤、触媒担体、断熱材、吸音材、フィルターなど様々な用途に展開されている。
多孔体を形成する材料としてはポリウレタンフォームに代表される有機ポリマー由来のものに加え、酸化チタン、酸化カルシウム、二酸化ケイ素といった無機化合物で形成された多孔体等、用途によって様々である。紙もまた多孔体の一種であるといえる。
多孔体の利用の際には、その多孔体基材上に様々な機能性粒子を定着させることによって、有用な特性を付与する試みが積極的に行われている。
例えば、多孔体を人の目に触れる形で使用する場合、使用者の好みに合わせた色彩を付与するといったデザイン性も重視される。
色彩の付与が目的であれば、無機顔料などを含む分散液に多孔体を浸漬する方法が考えられる。
しかし、マイクロメートルオーダー以下の微小な空隙を有する多孔体を浸漬法で顔料染色する場合、粒径の大きい顔料では多孔体の内部まで浸透せず、表面のみにとどまるため、歩留まりが悪化し色むらの原因となる可能性がある。無機顔料にはナノメートルオーダーからマイクロメートルオーダーまで、様々な粒子径を有するものが存在するが、一般的にナノサイズになるほど一次粒子の凝集力が大きくなり、凝集して二次凝集を形成しやすくなる。例えば特許文献1には一次粒子の数平均粒径が25nm以下のナノ顔料に関する開示がなされているが、経時と共に再凝集して見かけの粒径は大きくなってしまう恐れがあり、上記課題は依然として解決されていないのが現状であった。
また、浸漬法により無機顔料を多孔体に定着させるだけでは、無機顔料と多孔体基材との間に相互作用が存在しないため、無機顔料が多孔体から脱落しやすくなるという問題がある。定着用のバインダーなどを同時に付与することにより定着性の改善が見込まれるが、工程が複雑になるうえに、顔料の浸透を妨げてしまう恐れさえあるのが現状である。
このように、上記浸漬法によって、色彩などの特性を微小な空隙を有する多孔体の内部にまで付与し、かつ脱落しにくい機能性材料は存在しないというのが実情であった。
一方で近年、木材中のセルロース繊維を、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化し、新規な機能性材料として利用しようとする試みが活発に行われている。
例えば、特許文献2に示されるように、木材セルロースに対しブレンダーやグラインダーによる機械処理を繰り返すことで、微細化セルロース繊維、すなわちセルロースナノファイバー(以下CNFと称する)が得られることが開示されている。この方法で得られるCNFは、短軸径が10~50nm、長軸径が1μmから10mmに及ぶことが報告されている。このCNFは、鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強さを誇り、250m/g以上の膨大な比表面積を有することから、樹脂強化用ナノ繊維として用いた例が既に数多く報告されている。(例えば、特許文献3、4を参照)
しかしながら、疎水性の汎用樹脂と親水性のCNFとは相溶性が低く、完全な複合体を形成することが困難であるという本質的な問題があり、未だ実用化には至っていないのが実情である。
また、木材中のセルロース繊維を微細化しやすいように化学処理したのち、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで機械処理により微細化して、微細化セルロース繊維、すなわちセルロースナノファイバーとして利用しようとする試みも活発に行われている。上記化学処理の方法は特に限定されないが、セルロース繊維をアニオン変性して微細化し易くする方法が好ましい。上記アニオン変性の方法としては特に限定されないが、例えば特許文献5にはリン酸エステル化処理を用いて、セルロースの微細繊維表面を選択的にリン酸エステル化処理する方法が開示されている。また、特許文献6には、高濃度アルカリ水溶液中でセルロースをモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることによりカルボキシメチル化を行う方法が開示されている。また、オートクレーブ中でガス化したマレイン酸やフタル酸等の無水カルボン酸系化合物とセルロースを直接反応させてカルボキシ基を導入しても良い。比較的安定なN-オキシル化合物である2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシラジカル(TEMPO)を触媒として用い、セルロースの微細繊維表面を選択的に酸化する方法が報告されている(例えば、特許文献7を参照)。TEMPOを触媒として用いる酸化反応(TEMPO酸化反応)は、水系、常温、常圧で進行する環境調和型の化学改質が可能であり、木材中のセルロースに適用した場合、結晶内部には反応が進行せず、結晶表面のセルロース分子鎖が持つアルコール性1級炭素のみを選択的にカルボキシ基へと変換することができる。
このように、結晶表面に導入されたカルボキシ基同士の静電的な反発により、水溶媒中で一本一本のセルロースミクロフィブリル単位に分散させた、セルロースシングルナノファイバー(以下CSNFとも称する)を得ることが可能となる。木材からTEMPO酸化反応によって得られる木材由来のCSNFは、短軸径が3nm前後、長軸径が数十nm~数μmに及ぶ高アスペクト比を有する構造体であり、その水分散液および積層体は高い透明性を有することが報告されている。また、CSNFの用途としては、例えば、透明基材に積層することによってガスバリア膜を形成し、植物由来の新規透明包装材料として用いた応用例が報告されている(例えば、特許文献8を参照)。
しかしながら、CSNFはカルボキシ基の導入によって親水性が非常に高くなっており、日本のような温暖湿潤気候下ではガスバリア膜内部のCSNFの緻密な積層構造が維持できずにガスバリア性が劣化するという問題があった。このため、透明包装材としての実用化の目処は立っていない。
このように、カーボンニュートラル材料であるCNFまたはCSNFを始めとする、微細化セルロースを用いた高機能部材開発に関して様々な検討がなされている。しかしながら、実用化に向けては多くの課題が残されているのが実情であった。
また、近年、異方形状を有する金属ナノ粒子が注目を集めている。例えば、板状、ロッド状といった金属ナノ粒子は、球状の粒子と異なる光学的、電子的、磁気的、化学的および機械的特性を発揮することから、様々な分野での応用が期待されている。
このような異方形状を有する金属ナノ粒子の中でも、特に応用が期待されているのが銀ナノ粒子である。例えば、粒子径が数nm~数十nmの球状銀ナノ粒子は、局在表面プラズモン共鳴により、波長400nm付近に吸収を持つため、黄色味を呈することが知られている。しかしながら、異方成長した銀ナノ粒子はこの限りではなく、例えば、板状の銀ナノ粒子は、吸収ピークがレッドシフトすることが知られている。この際、板状銀ナノ粒子のアスペクト比(すなわち、粒子径/粒子厚み)が大きくなるほど、吸収ピークがより長波側にシフトすることが確認されている。すなわち、板状銀ナノ粒子は、任意の波長を吸収する光学材料として用いることができる。また、可視光領域で吸収波長を制御すれば、黄色以外にも赤色、青色など鮮やかな色調を呈する板状銀ナノ粒子を得ることができ、機能性色材としての利用が期待できる。さらに、板状銀ナノ粒子のアスペクト比によっては、可視光領域外の近赤外線領域にまで吸収ピークをシフトさせることも可能である。
なお、本明細書において、可視光とは波長領域がおよそ400nmから700nmである電磁波を指し、近赤外線とは赤外線の中でも可視光に近い波長領域(およそ700nmから2500nm)の電磁波を指すものとする。この近赤外線は可視光に近い性質を有しており、特に太陽光に含まれる波長領域物700nmから1200nm付近の光は、物体表面に吸収され熱エネルギーに変換されやすいことが知られている。
このような近赤外線吸収材料は、熱線を遮蔽できるため、付加価値の高い機能性材料である。例えば、建築物や自動車の窓に近赤外線吸収材料を含む層を設けることによって、遮熱効果をもたらすことが可能となる。すなわち、冷房効率上昇による節電効果が見込めるため、夏場の電力不足問題の改善にも貢献することができる。
このように、光学材料として興味深い性質を有する平板状銀ナノ粒子については、これまでに数々の合成方法が提案されている。これらの中でも、汎用的に用いられる方法としては、ポリオール法と呼ばれる合成方法が挙げられる。ここで、ポリオール法とは、高分子キャッピング剤の元で金属塩と共にポリオールの一種であるエチレングリコールを140~160℃まで加熱し、生成するグリコールアルデヒドの還元力によって金属微粒子を合成する方法である。この際、還元条件や適切な高分子キャッピング剤を選定することで銀ナノ粒子の異方成長を誘導し、様々な形状を有する銀ナノ粒子を得ることが報告されている。例えば、特許文献9には、ポリオール法を用いた平板状銀ナノ粒子の製造例が開示されている。
また、特許文献10には、微細化セルロースの一種であるCSNFと金属微粒子との複合体として、金属ナノ粒子がCSNFに担持された複合体(金属ナノ粒子担持CSNF)が開示されている。この特許文献10には、金属ナノ粒子担持CSNFを触媒として用いる例が開示されている。
特開2009-242687号公報 特開2010-216021号公報 特開2006-240295号公報 特開2008-007646号公報 国際公開第2014/185505号 国際公開第2014/088072号 特開2008-001728号公報 国際公開第2013/042654号 特開2009-144188号公報 再公表WO2010/095574号公報
上記平板状銀ナノ粒子は、平板状構造に由来して可視光領域から近赤外光領域にわたる任意の波長光との共鳴により鮮やかな色彩を呈したり、近赤外線を選択的に吸収したりすることが可能である。また、銀は人体に対し不活性であるため無毒である。また、粒径がナノサイズであるため、簡便な浸漬法により微細な孔径を有する多孔体の内部へ浸透し、斑無く色彩を付与することが期待できる。さらには、色彩付与以外にも銀が本来有する抗菌性、抗カビ性といった特性を同時に付与することも期待できる。多孔体は比表面積の高さゆえに、高湿度下で使用された場合、多孔体内部の湿気が蒸散しにくくなり、表面や内部でカビや雑菌などが繁殖しやすいという問題があるため、抗菌性の付与は有用である。
しかしながら、特許文献9に記載のポリオール法を用いて平板状銀ナノ粒子を製造するには、有機溶媒系で高温の反応を必要とし、反応時間も長いことから環境への負荷が大きくなってしまうという問題があった。また、平板状の構造を有していても、粒子がナノサイズとなると凝集して二次粒子を形成しやすくなるという課題が依然として存在する。さらに、平板状銀ナノ粒子と多孔体を構成する材料との間に親和性が無ければ、単純に多孔体に浸漬させるだけでは平板状銀ナノ粒子の定着率が低くなる上に、吸収体などとして繰り返し使用する場合、粒子が脱落してしまう恐れがある。
また、特許文献10には微細化セルロースと金属微粒子との複合体およびその用途が開示されているが、金属ナノ粒子の形状の制御の可能性や、機能性色材や近赤外線吸収材料といった光学材料への適用可能性については、何ら開示も示唆もされていないのが実情であった。
本発明はかかる事情を鑑みてなされたものであり、様々な色彩に加えて抗菌性・抗カビ性も同時に付与でき、金属ナノ粒子が脱落しにくい多孔体を提供することを課題とする。
また、本発明は、環境への負荷が低く、簡便な方法で提供することが可能な多孔体の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本願発明者がカーボンニュートラル材料である微細化セルロースを用いて様々な有機無機ハイブリッドの創出を試みたところ、驚くべきことに、水系媒体中で、室温下において、微細化セルロースの分散液中で銀を還元析出させることにより、平板状の銀微粒子と微細化セルロースとが不可分の状態にある新規な複合体が得られ、該複合体を含む分散液に多孔体を浸漬することによって、前述の課題が解決された新規な多孔体が得られることを知見し、本発明を完成させた。
本発明は、本発明者による上記知見に基づくものであり、本発明の一態様に係る多孔体は、平板状の銀微粒子と、少なくとも一つ以上の微細化されたセルロースとが複合化された複合体を、少なくともその表面および内部に備え、
上記微細化セルロースのそれぞれは、少なくとも一部又は全部が上記平板状銀微粒子に取り込まれるとともに、残部あればその残部が当該平板状銀微粒子の表面に露出する。
また、本発明の一態様に係る多孔体の製造方法は、微細化セルロースを溶媒中に分散させて微細化セルロース分散液を準備する工程と、
上記微細化セルロース分散液と、銀イオンを含有する溶液と、を混合して混合溶液を得る工程と、
上記混合溶液中の上記銀イオンを還元して平板状銀微粒子を成長させるとともに、上記平板状銀微粒子と微細化セルロースとを複合化して複合体を得る工程と、
上記複合体を含む分散液に多孔体を浸漬して、該複合体を少なくともその表面および内部に備える多孔体を得る工程と、
を含む。
本発明の多孔体の一態様によれば、様々な色彩に加えて抗菌性・抗カビ性も同時に付与でき、金属ナノ粒子が脱落しにくい多孔体を提供することができる。
また、本発明の多孔体の製造方法の一態様によれば、環境への負荷が低く、簡便な方法で提供することが可能な多孔体の製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る多孔体に含まれる複合体の構成を模式的に示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る多孔体に含まれる複合体の製造方法の、工程の一部を説明するための模式図である。 実施例1で得られた複合体の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果を示しており、(a)はSEM画像であり、(b)は、(a)の模式図である。 実施例1で得られた複合体を、透過型電子顕微鏡(TEM)によって断面方向から観察した結果を示す図(TEM画像)である。 実施例1で得られた複合体の走査透過型電子顕微鏡(STEM)による観察結果を示しており、(a)はSTEM画像であり、(b)は、(a)の拡大図である。 ネガティブ染色済の本実施例に係る平板状銀微粒子とCSNFとの複合体のTEM画像である。 実施例1~4にて作製した、平板状銀微粒子とCSNFとの複合体の分光透過スペクトルを示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下に説明する各図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適宜省略する。また、本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、各部の材質、形状、構造、配置、寸法等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
<複合体>
先ず、本発明の一実施形態に係る多孔体に含まれる複合体について説明する。
図1は、本実施形態における多孔体に含まれる複合体の構成を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態の多孔体に含まれる複合体1は、平板状の銀微粒子(平板状銀微粒子)2と、少なくとも一つ以上の微細化されたセルロース3とが複合化された、平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体であり、それぞれの微細化セルロース3について少なくとも一部(一部分)又は全部が平板状銀微粒子2に取り込まれており、残部があればその残部が平板状銀微粒子2の表面に露出するように複合化されたものである。
より具体的には、図1に示すように、それぞれの微細化セルロース3は、平板状銀微粒子2に取り込まれている部分3aと、平板状銀属微粒子2の表面に露出している部分3bとから構成されている。そして、この取り込まれている部分3aの存在により、平板状銀微粒子2とそれぞれの微細化セルロース3とが不可分の状態となっている。即ち、平板状銀微粒子2と微細化セルロース3とは、微細化セルロース3の少なくとも一部分(すなわち、部分3a)が平板状銀微粒子2に取り込まれることにより、少なくとも一部同士が物理的に結合することにより、不可分の状態にある。
ここで、本実施形態の複合体1について、微細化セルロース3の少なくとも一部分(すなわち、部分3a)が平板状銀微粒子2に取り込まれる、とは、後述する製造方法においても説明するが、平板状銀微粒子2の成長段階において、銀微粒子ユニットの粒界に沿って、微細化セルロースが挟み込まれている状態と同義である。
また、本実施形態の複合体1において、「不可分」の状態とは、例えば、遠心分離機等の物理的方法によって、平板状銀微粒子2と微細化セルロース3とに分離することが不可能であることをいう。
なお、本実施形態の複合体1は、構成する全ての微細化セルロース3について、全部分(全体)が平板状銀微粒子2に取り込まれており、平板状銀微粒子2の表面に露出している部分3bが存在しない構成についても、取り込まれている部分3aの存在を確認できる限り権利範囲に含むものとする。
平板状銀微粒子2に代表される平板状の金属微粒子を構成する金属種としては銀が好ましいが、特にこれに限定されるものではない。複数の金属種を用いる場合、析出した平板状銀微粒子の周りを銀より貴な金属あるいはシリカ等の金属酸化物などで被覆して、平板状銀微粒子の安定性を向上させても良い。
なお、本実施形態において「平板状」とは、三角形、六角形、五角形等の形状をした板状の粒子であり、粒子径を粒子厚みで割った平均アスペクト比(粒子径/粒子厚み)が2.0以上である粒子を意味する。
平板状銀微粒子2の粒子径は、20~300nmが好ましく、20~200nmがより好ましい。
平板状銀微粒子2の粒子厚みは、5~100nmが好ましく、8~50nmがより好ましい。
平均アスペクト比(粒子径/粒子厚み)は、2.0以上が好ましく、2.0~100がより好ましく、2.0~50が更に好ましい。
ここで、平板状銀微粒子の粒子径及び厚みの測定方法、ならびにアスペクト比の算出方法としては、具体的には、例えば、以下の方法が挙げられる。
(1)粒子径の測定法
複合体を含む分散液をTEM観察用支持膜付き銅グリッド上にキャストして風乾したのち、透過型電子顕微鏡観察を行う。得られた画像中の平板状銀ナノ粒子を、円で近似した際の径を平面方向の粒子径として算出する。
(2)粒子厚みの測定法
複合体を含む分散液をPETフィルム上にキャストして風乾し包埋樹脂で固定したものをミクロトームで断面方向に切削し、透過型電子顕微鏡観察を行う。得られた画像中の平板状銀ナノ粒子の厚みを平面方向に対する粒子厚みとして算出する。
(3)アスペクト比の算出方法
上述のようにして求めた粒子径をaとし、粒子厚みをbとした際に、粒子径aを粒子厚みbで割った値を、アスペクト比=a/bとして算出する。
なお、上述した測定方法および算出方法は一例であり、特にこれらに限定されるものではない。
微細化セルロース3としては、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状であることが好ましい。具体的には、微細化セルロース3としては、数平均短軸径が1nm以上100nm以下、数平均長軸径が50nm以上であり、かつ数平均長軸径が数平均短軸径の10倍以上であることが好ましい。また、微細化セルロース3の結晶構造は、セルロースI型であることが好ましい。なお、微細化セルロース3は、平板状銀微粒子2の厚みが十分に薄ければ、TEM像で透けて見え、その存在を確認することができる場合がある。
また、本実施形態の複合体1は、微細化セルロース3が結晶表面にカルボキシ基を有しており、当該カルボキシ基の含有量が、セルロース1g当たり0.1mmol以上5.0mmol以下であることが好ましい。
以上説明したように、本実施形態の複合体1は、銀またはその被覆物からなる平板状銀微粒子2と微細化されたセルロース繊維3との複合体であって、平板状銀微粒子2と微細化セルロース繊維3とが物理的に結合して不可分の状態にあることを特徴とする、カーボンニュートラルな、有機無機ハイブリッド材料である。
<多孔体>
次に、本実施形態の多孔体について説明する。多孔体とはその表面や内部に微細な細孔を有する物体の総称であり、軽量であることや比表面積の大きさが特徴である。一般的に細孔が微細化するに従い比表面積が増大し、物質の吸着性や触媒活性といった各種特性が向上することから、吸収性物品、触媒担体、断熱材、吸音材、フィルターといった用途が考えられる。多孔体を構成する材料としては特に限定されないが、例えばポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、セルロース系(トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等)、ポリアミド系(6-ナイロン、6,6-ナイロン等)、アクリル系(ポリメチルメタクリレート等)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール、ポリウレタン、等の有機高分子化合物が挙げられる。また、前述の有機高分子化合物の中から、少なくとも1種以上の成分を持つ、或いは共重合成分に持つ、或いはそれらの化学修飾体を成分に有する有機高分子材料も可能である。また、ポリ乳酸、バイオポリオレフィンなど植物から化学合成されるバイオプラスチック、ヒドロキシアルカノエートなど微生物が生産するプラスチック等を用いることも可能である。さらには、シリカ、ゼオライト、アルミナ、アパタイト、酸化カルシウム、酸化チタンなどの無機酸化物や、各種金属、炭素、炭化物、窒化物といった無機化合物も単独あるいは複数種類を組合せて用いることができる。本実施形態においては、上記複合体を上記多孔体に簡便な方法で付与することにより、多孔体を得ることが可能となる。
<複合体の製造方法>
次に、上述した本実施形態の複合体1の製造方法について説明する。本実施形態の複合体1の製造方法は、微細化されたセルロースと銀イオンとを含む分散液中で、銀を還元析出させて銀結晶を生成するとともに、異方性をもってこの銀結晶を成長させることにより、平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体を得る方法である。
より具体的には、本実施形態の複合体の製造方法は、微細化セルロースを調製する工程(第1工程)と、微細化セルロースを溶媒中に分散させて微細化セルロース分散液を得る工程(第2工程)と、微細化セルロース分散液と、銀イオンを含有する溶液と、を混合して混合溶液を得る工程(第3工程)と、混合溶液中の銀イオンを還元して平板状銀微粒子を成長させるとともに、平板状銀微粒子と微細化セルロースとを複合化する工程(第4工程)と、を含んで概略構成されている。以下に、各工程について、詳細に説明する。
(第1工程)
先ず、第1工程では、本実施形態の複合体を構成する微細化セルロースを調製する。この第1工程は、繊維状の微細化セルロースを調製する工程と、微細化セルロースの結晶表面にカルボキシ基を導入する工程と、を含んでいる。
「繊維状の微細化セルロースを調製する工程」
本実施形態の複合体の製造方法に用いる微細化セルロースは、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーであればよく、その調製方法については特に限定されない。通常、微細化セルロースは、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状を取るため、本実施形態の製造方法に用いる微細化セルロースとしては、以下に示す範囲にある繊維形状の物が好ましい。すなわち、微細化セルロースの形状としては、繊維状であることが好ましい。また、繊維状の微細化セルロースは、短軸径において数平均短軸径が1nm以上100nm以下であればよく、好ましくは2nm以上50nm以下であればよい。ここで、数平均短軸径が1nm未満では高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造をとることができず、銀微粒子の異方成長を十分に促進することができない。一方、100nmを超えると、銀微粒子に対してサイズが大きくなり過ぎるため、平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体の形状を取ることができない。また、数平均長軸径においては特に制限はないが、好ましくは数平均短軸径の10倍以上であればよい。数平均長軸径が数平均短軸径の10倍未満であると、銀微粒子の異方成長を十分に促進することができないために好ましくない。
微細化セルロース繊維の数平均短軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の短軸径(最小径)を測定し、その平均値として求められる。一方、微細化セルロース繊維の数平均長軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求められる。
微細化セルロース繊維の原料として用いることができるセルロースの種類や結晶構造も特に限定されない。具体的には、セルロースI型結晶からなる原料としては、例えば、木材系天然セルロースに加えて、コットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフ、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロースを用いることができる。さらには、セルロースII型結晶からなるレーヨン繊維、キュプラ繊維に代表される再生セルロースも用いることができる。材料調達の容易さから、木材系天然セルロースを原料とすることが好ましい。
セルロースの微細化方法もとくに限定されないが、前述のグラインダーによる機械処理、TEMPO酸化処理等による化学処理の他、希酸加水分解処理や酵素処理などを用いても良い。また、バクテリアセルロースも微細化セルロース繊維として用いることができる。さらには各種天然セルロースを各種セルロース溶剤に溶解させたのち、電解紡糸することによって得られる微細再生セルロース繊維を用いても良い。
セルロースの微細化方法として、例えば、上述した特許文献1に記載の方法に従い、各種セルロースをグラインダー等によって繰り返し処理して微細化した場合、得られるCNFと銀とを複合化すれば、銀ナノ粒子の形状を制御しながら銀/微細化セルロース複合体を得ることができる。しかし、繊維幅は10~50nmと分布があるため、平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体を均質に再現性良く得るにはやや不向きである。さらには、繊維幅が太いため、分散液およびそれを用いた成型体の透明性が低下し、機能性色材や近赤外線吸収材料といった光学特性を損ない、用途が限定されてしまうおそれがある。
一方、セルロースの微細化方法として、上述した特許文献4に記載の方法に従い、各種セルロースをTEMPO触媒酸化することにより微細化し、得られるCSNFと銀とを複合化した場合、CSNFの短軸径が3nm程度とカーボンナノチューブ並みに極細であることから、分散液およびそれを用いた成型体の高透明性をも達成することができる。その場合、例えば、近赤外線吸収フィルムなどの光学部材として好適に用いることが可能である。また、TEMPO酸化によって作製されたCSNFは、CNFよりも金属微粒子の異方成長を均質に、かつ再現性良く達成する。この理由としては、詳細なメカニズムは不明ではあるが、短軸径が3nm程度で揃っており、金属イオンと相互作用するカルボキシ基を有し、且つこのカルボキシ基がCSNF結晶表面に等間隔に固定化された構造が原因ではないかと推察される。すなわち、CNF、CSNFともに、本実施形態の製造方法において微細化セルロース繊維として用いることは可能であるが、前述の形状制御能および透明性の観点から、本実施形態で用いる微細化セルロースとしてはカルボキシ基が導入された微細化セルロース繊維が好ましく、価格および供給の面から木材をTEMPO酸化することで得られるCSNFがより好ましい。
以下、木材由来のCSNFを製造する方法について説明する。
本実施形態で用いられる木材由来のCSNFは、木材由来のセルロースを酸化する工程と、微細化して分散液化する工程と、によって得ることができる。また、CSNFに導入するカルボキシ基の含有量としては、0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下が好ましく、0.5mmol/g以上2.0mmol/g以下がより好ましい。ここで、カルボキシ基量が0.1mmol/g未満であると、セルロースミクロフィブリル間に静電的な反発が働かないため、セルロースを微細化して均一に分散させることは難しい。また、5.0mmol/gを超えると化学処理に伴う副反応によりセルロースミクロフィブリルが低分子化するため、高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造をとることができず、銀微粒子の異方成長を十分に促進することができない。
「セルロースにカルボキシ基を導入する工程」
木材系天然セルロースとしては、特に限定されず、針葉樹パルプや広葉樹パルプ、古紙パルプ、など、一般的にセルロースナノファイバーの製造に用いられるものを用いることができる。精製および微細化のしやすさから、針葉樹パルプが好ましい。
木材由来のセルロースの繊維表面にカルボキシ基を導入する方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、高濃度アルカリ水溶液中でセルロースをモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることによりカルボキシメチル化を行っても良い。また、オートクレーブ中でガス化したマレイン酸やフタル酸等の無水カルボン酸系化合物とセルロースを直接反応させてカルボキシ基を導入しても良い。さらには、水系の比較的温和な条件で、可能な限り構造を保ちながら、アルコール性一級炭素の酸化に対する選択性が高い、TEMPOをはじめとするN-オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いた手法を用いてもよい。カルボキシ基導入部位の選択性および環境負荷の問題からTEMPO酸化がより好ましい。
ここで、N-オキシル化合物としては、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシラジカル)、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-エトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、等が挙げられる。その中でも、TEMPOが好ましい。N-オキシル化合物の使用量は、触媒としての量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して0.01~5.0質量%程度である。
N-オキシル化合物を用いた酸化方法としては、木材系天然セルロースを水中に分散させ、N-オキシル化合物の共存下で酸化処理する方法が挙げられる。このとき、N-オキシル化合物とともに、共酸化剤を併用することが好ましい。この場合、反応系内において、N-オキシル化合物が順次共酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩が生成し、上記オキソアンモニウム塩によりセルロースが酸化される。かかる酸化処理によれば、温和な条件でも酸化反応が円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。酸化処理を温和な条件で行うと、セルロースの結晶構造を維持しやすい。
共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。上記共酸化剤の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1~200質量%程度である。
また、N-オキシル化合物および共酸化剤とともに、臭化物およびヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよい。これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシ基の導入効率を改善することができる。このような化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましい。化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1~50質量%程度である。
酸化反応の反応温度は、4~80℃が好ましく、10~70℃がより好ましい。4℃未満であると、試薬の反応性が低下し反応時間が長くなってしまう。80℃を超えると副反応が促進して試料が低分子化して高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造が崩壊し、銀微粒子の異方成長を十分に促進することができない。
また、酸化処理の反応時間は、反応温度、所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、通常、10分~5時間程度である。
酸化反応時の反応系のpHは、9~11が好ましい。pHが9以上であると反応を効率よく進めることができる。pHが11を超えると副反応が進行し、試料の分解が促進されてしまうおそれがある。また、酸化処理においては、酸化が進行するにつれて、カルボキシ基が生成することにより系内のpHが低下してしまうため、酸化処理中、反応系のpHを9~11に保つことが好ましい。反応系のpHを9~11に保つ方法としては、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
N-オキシル化合物による酸化反応は、反応系にアルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHは上記の範囲内に保つことが好ましい。添加するアルコールとしては、反応をすばやく終了させるためメタノール、エタノール、プロパノールなどの低分子量のアルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性などから、エタノールが特に好ましい。
酸化処理後の反応液は、そのまま微細化工程に供してもよいが、N-オキシル化合物等の触媒、不純物等を除去するために、反応液に含まれる酸化セルロースを回収し、洗浄液で洗浄することが好ましい。酸化セルロースの回収は、ガラスフィルターや20μm孔径のナイロンメッシュを用いたろ過等の公知の方法により実施できる。酸化セルロースの洗浄に用いる洗浄液としては蒸留水が好ましい。
(第2工程)
次に、第2工程では、上記第1工程で調製した微細化セルロースを溶媒中に分散させて微細化セルロース分散液を得る。
微細化セルロース分散液を調製する方法としては、まず、セルロースに水性媒体を加えて懸濁させる。具体的には、木材由来のCSNFの分散に用いる溶媒は、50%以上の水を含み、水以外の溶媒としては親水性溶媒が好ましい。水の割合が50%以下になると木材由来のCSNFの分散が阻害され、銀微粒子と木材由来のCSNFの均一な複合体形成が難しくなる。親水性溶媒については特に制限は無いが、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類が好ましい。必要に応じて、セルロースや生成するCSNFの分散性を上げるために、懸濁液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、上述したアルカリ水溶液と同様のものが挙げられる。
続いて、得られた懸濁液に物理的解繊処理を施して、セルロースを微細化する。物理的解繊処理としては、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突などの機械的処理が挙げられる。このような物理的解繊処理を、例えば、上述したTEMPO酸化セルロースに行うことで、懸濁液中のセルロースが微細化され、繊維表面にカルボキシ基を有するCSNFの分散液を得ることができる。また、このときの物理的解繊処理の時間や回数により、得られるCSNF分散液に含まれるCSNFの数平均短軸径および数平均長軸径を調整することができる。
上記のようにして、カルボキシ基が導入されたCSNF分散体(微細化セルロース分散液)が得られる。得られた分散体は、そのまま、または希釈、濃縮等を行って、金属微粒子を還元析出させる反応場として用いることができる。
また、CSNF分散体は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロースおよびpH調整に用いた成分以外の他の成分を含有してもよい。上記他の成分としては、特に限定されず、上記木材CSNFの用途等に応じて、公知の添加剤のなかから適宜選択できる。具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、消泡剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、架橋剤、等が挙げられる。
(第3工程)
次に、第3工程では、上述の第2工程で得られた微細化セルロース分散液と、銀イオンを含有する溶液と、を混合して混合溶液を得る。
具体的には、先ず、銀または銀を含む化合物を水などの溶媒に溶解させて、銀イオンを含有する溶液(銀イオン含有溶液)を調製する。次に、微細化セルロース分散液を攪拌しながら、調製した銀イオン含有溶液を少しずつ添加することにより、微細化セルロース分散液と銀イオン含有溶液との混合溶液を得る。
ところで、平板状銀ナノ粒子は、形状制御により可視光線から近赤外光線にわたる任意の波長光を吸収することが可能であり、各種組成物の用途に合わせて所望の光学特性を容易に付与することができる。また、銀そのものが多菌種に対し抗菌性を有しながらも人体に対し不活性であることから、保存性、安全性の良好な組成物を得ることができる。
また、銀と複合体を形成することで抗菌性を付与できることから、CSNFの耐腐食性も改善することができる。また、銀以外の複数の金属種を用いることも可能であり、析出した銀ナノ粒子の周りを銀より貴な金属あるいはシリカ等の金属酸化物などで被覆して、銀ナノ粒子の安定性を向上させても良い。
(第4工程)
次に、第4工程では、上述の第3工程で得られた混合溶液中の銀イオンを還元して平板状銀微粒子を成長させるとともに、平板状銀微粒子と微細化セルロースとを複合化する。
木材由来のCSNF分散液中に平板状銀微粒子を析出させ複合体を製造する方法としては、特に限定しないが、少なくとも銀を含む金属または合金、酸化物、複酸化物等の溶液とCSNF分散液を混合した状態で、還元剤を添加すれば容易に析出させることができる。
還元を行う際に用いる銀イオンを含む水溶液の種類には特に制限は無いが、入手の容易さと取り扱い易さの点から硝酸銀水溶液であることが好ましい。用いる還元剤に関しても特に限定しない。銀の還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、ヒドロキノン、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン等が用いられる。安全性や価格の面からアスコルビン酸、クエン酸、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
なお、銀微粒子の異方成長を促進し、平板状銀微粒子とCSNFとの複合体を析出させるためには、還元析出処理時に用いられる銀の量が、CSNF1gに対して0.0005mmol以上0.4mmol以下の範囲にあることが好ましく、0.001mmol以上0.2mmol以下の範囲にあることがさらに好ましく、0.002mmol以上0.1mmol以下の範囲にあることがとくに好ましい。
ここで、図2は、本発明の複合体の製造方法の一実施形態における工程の一部を説明するための模式図である。
本実施形態の製造方法の第4工程では、先ず、混合溶液中への還元剤の添加により、微細化セルロース3に設けたカルボキシ基を起点に銀の析出が開始する。そして、析出した銀は一次粒子(銀ナノ粒子)2aを形成する(図2中の左図を参照)。さらに反応が進むと、これらの一次粒子2aを起点として、平板状の銀微粒子(すなわち、平板状銀微粒子)2を形成する。この際、CSNF(微細化セルロースの繊維)3の一部3aが巻き込まれるとともに残部3bが露出した状態で複合化する(図2中の右図を参照)。
以上の工程により、本実施形態の平板状銀微粒子2と微細化セルロース3との複合体1を得ることができる。
本実施形態の複合体の製造方法では、上述した第2工程において、CSNFの分散液の濃度は特に限定しないが、0.1%以上20%未満であることが好ましい。ここで、0.1%未満では成形体形成用組成物としては溶媒過多となってしまう上に銀ナノ粒子の粒子径制御効果が不十分となり、20%以上では微細化セルロース繊維同士の絡み合いで粘度が急激に上昇し、均一な攪拌が難しくなる。
また、上述した第3工程において、銀イオンを含む溶液の銀イオン濃度は特に限定しないが、分散液中の銀イオン量がCSNF表面に存在するカルボキシ基量未満となるように調製することが好ましい。分散液中の銀イオン量がCSNF表面に存在するカルボキシ基量を上回ってしまうとCSNFが凝集してしまうためである。
さらに、上述した第4工程において、混合溶液の還元剤濃度は特に限定しないが、銀イオン濃度と同等以上となるように調整することが好ましい。混合溶液中の還元剤濃度が銀イオン濃度以下であると、未還元の銀イオンが混合溶液中に残存してしまうためである。
以上説明したように、CSNF濃度、銀イオン濃度および還元剤濃度の三条件は、析出する平板状銀微粒子のアスペクト比を決定する。すなわち、これらの三条件を適切な値に設定することで、目的とする波長に吸収ピークを有する平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体を適宜製造することが可能である。なお、傾向として銀イオン濃度が低くなると平板状銀微粒子のアスペクト比が上昇し、銀イオン濃度が高くなるとアスペクト比は低下する。
なお、上述した本実施形態の複合体1の製造方法において、CSNF濃度、銀イオン濃度および還元剤濃度と、得られる平板状銀微粒子とCSNFとの複合体のアスペクト比の関係については、理論的なメカニズムは不明な点が多い。平板状銀微粒子とCSNFとの複合体の具体的な作製法については、実施例において詳細を記した。
<多孔体の製造方法>
上記平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体を、水または有機溶媒に分散させることによって、複合体の分散液としたものに、多孔体を含浸するだけの簡便な方法で、複合体を、少なくともその表面および内部に備える多孔体をえることが可能である。ここで、有機溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、IPAなどのアルコール類を用いることが好ましい。
また、上記複合体の分散液は、pH調整に用いられるアルカリ水溶液等に加え、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の添加成分を含んでいてもよい。上記任意の添加成分としては、特に限定されず、上記多孔体の用途等に応じて、公知の添加剤のなかから適宜選択できる。具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、消泡剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、架橋剤、等が挙げられる。
また、上述した本実施形態の複合体の製造方法における第4工程後の反応液を、そのまま多孔体浸漬用の分散液とすることができる。
本実施形態の複合体の分散液(複合体分散液)は、微細化セルロース同士の立体障害および静電反発によって凝集が阻害されるため、分散媒中の複合体が凝集しにくく、分散安定性に優れるため、多孔体内部にまで複合体が浸透し、所定の色彩や、さらには抗菌性までもを付与することが可能となる。
また、本実施形態の平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体、および上述した複合体分散液は、波長400nmから1500nmにおける任意の波長に吸光度の最大値を有することから、可視光領域での鮮やかな色彩や近赤外線吸収特性といった様々な光学特性を多孔体内部にまで付与することが可能となる。
ところで、本実施形態の複合体は、上述した製造方法によって製造した際に、直径数nm程度の球状銀微粒子を副生成物として含む場合があるが、これらの球状銀微粒子は遠心分離機によって分離することが可能である。
ここで、少なくとも銀を含む直径が数nmの球状微粒子は、波長400nm付近の光を吸収するために黄色味を呈する。しかしながら、上述した遠心分離等によってこれらの球状微粒子を除去することにより、平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体の共振ピークに由来する波長のみを吸収することが可能である。
また、本実施形態の複合体であって、平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体のアスペクト比が大きなものは、可視光透過率の高い近赤外線吸収材料として用いることが可能である。
以上説明したように、本実施形態の複合体1を含む分散液に多孔体を浸漬することによって、微細化セルロース3のそれぞれが、少なくとも一部(3a)が平板状銀微粒子2に取り込まれ、残部(3b)があれば、残部(3b)として平板状銀微粒子2の表面に露出する構成を有している。したがって、機能性色材や近赤外線吸収材料といった光学材料への適用可能性を有する平板状銀微粒子2と微細化セルロース3との複合体1を少なくともその表面および内部に備える多孔体を提供することができる。
また、本実施形態の多孔体の製造方法によれば、混合溶液中の銀イオンを還元して平板状銀微粒子を成長させるとともに、平板状銀微粒子と微細化セルロースとを複合化する工程と、上記複合化で得られた複合体の分散液に多孔体を含浸する工程と、を有しているため、上記多孔体を環境への負荷が低く、簡便な方法にて提供することができる。
また、本実施形態の多孔体は、上記複合体を水又は有機溶媒中に分散させた分散液に多孔体を浸漬して得られるものであり、微細化セルロース同士の立体障害または静電反発によって複合体の凝集が阻害され、分散安定性に優れるため、複合体が凝集を形成し辛く、複合体が多孔体の表面及び内部まで浸透することができるため、多孔体内部まで抗菌性や色彩デザイン性を付与することが可能であり、有用である。
また、本実施形態の多孔体は、上記複合体の微細化セルロース部分が絡み合いによって多孔体の基材に定着するため、例えば吸液と脱液を繰返しても多孔体から金属ナノ粒子を含む複合体が脱落しにくく、色彩デザイン性および抗菌性が維持されるため、有用である。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の各例において、「%」は、特に断りのない限り、質量%(w/w%)を示す。
<実施例1>
(木材セルロースのTEMPO酸化)
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。セルロースの重量に対して、水酸化ナトリウムの添加量の合計が3.50mmol/gに達した時点で、約100mLのエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて蒸留水によるろ過洗浄を繰り返し、酸化パルプを得た。
(酸化パルプのカルボキシ基量測定)
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプおよび再酸化パルプを固形分重量で0.1g量りとり、1%濃度で水に分散させ、塩酸を加えてpHを2.5とした。その後0.5M水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により、カルボキシ基量(mmol/g)を求めた。結果は1.6mmol/gであった。
(酸化パルプの解繊処理)
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプ1gを99gの蒸留水に分散させ、ジューサーミキサーで30分間微細化処理し、CSNF濃度1%のCSNF水分散液を得た。このCSNF水分散液に含まれるCSNFの数平均短軸径は4nm、数平均長軸径は1110nmであった。また、レオメーターを用いて定常粘弾性測定を行ったところ、このCSNF分散液はチキソトロピック性を示した。
(硝酸銀水溶液の調製)
硝酸銀50mgを蒸留水10mLに溶解させ、硝酸銀水溶液を調製した。
(水素化ホウ素ナトリウム水溶液の調製)
水素化ホウ素ナトリウム50mgを蒸留水10mLに溶解させ、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を調製した。
(平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体の作製)
上述した1%CSNF水分散液50gを温度一定(15℃)に保ち攪拌しながら、硝酸銀水溶液2mLを添加した。5分攪拌を続けたのち、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を2mL添加し、さらに30分ほど攪拌を続けることによって平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体を作製した。
(平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体の形状観察)
得られた平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体を、高速冷却遠心機を用い、75,600g(30分×5セット)の条件で精製・分画した。精製済みの平板状銀微粒子をシリコンウェハ板上にキャストし、白金蒸着処理を施した後、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製、「S-4800」)を用いて垂直方向から観察した。結果を図3に示す。平板状銀微粒子とCSNFとの同時観察を行うことで、CSNFと平板状銀微粒子間の相互結合状態を確認した。
精製済みの平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体をPETフィルム上にキャストし、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、「JEM2100F」)を用いて断面方向から観察した。結果を図4に示す。なお、得られた画像から平板状銀微粒子の粒子厚みを算出した。
平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体を、走査透過型電子顕微鏡(日立ハイテク社製、「S-4800」)を用いて観察した。結果を図5に示す。得られた画像中の平板状銀ナノ粒子を、円で近似した際の径を、平面方向の粒子径として算出した。
また、作製した平板状銀微粒子/CSNF複合体を透析処理および遠心分離処理で精製したのち、酢酸ウラニルによるネガティブ染色法を用いてTEM観察を行った。透過型電子顕微鏡はJEM1400Plus(日本電子)を用い、加速電圧は100kvとした。結果を図6に示す。
(平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体の分光吸収スペクトル測定)
平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体の水分散液を石英セルに入れ、分光光度計(島津製作所社製、「UV-3600」)を用いて分光スペクトルの測定を行った。結果を表1および図7に示す。
(多孔体の含浸試験)
平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体の水分散液にPTFEメンブレンフィルター(ミリポア社製、孔径0.2μm)を1分間含浸したあと、引き上げて風乾した。さらに風乾した上記フィルターを縦方向に切断し、断面を光学顕微鏡で観察して複合体の染み込み状況を確認し、内部まで複合体が浸透しているかを評価した。評価基準としては、内部中心部まで浸透しているものは○、浸透しているが内部まで達していないものは△、ほとんど浸透していないものは×とした。結果を表1に示す。
(多孔体の再溶出試験)
上記フィルターをさらに純水に1分間再浸漬したあと取り出し、純水中に再溶出した複合体の有無を調べた。再溶出の有無については浸漬後の純水の分光透過スペクトルを測定し、平板状銀ナノ粒子に由来する吸収スペクトルが確認できるかどうかを評価した。評価基準としては、再溶出が見られなかったサンプルは○、再溶出が見られたサンプルは×とした。結果を表1に示す。
<実施例2>
実施例1において、硝酸銀水溶液の添加量を1mLとした以外は、実施例1と同様の条件で平板状銀/微細化セルロース複合体を作成し、得られた平板状銀/微細化セルロース複合体の電子顕微鏡観察および分光吸収スペクトルの測定、さらにフィルターへの染込み状態の観察および再溶出試験を実施例1と同様の方法で行った。結果を表1および図7に示す。
<実施例3>
実施例1において、硝酸銀水溶液の添加量を0.5mLとした以外は、実施例1と同様の条件で平板状銀/微細化セルロース複合体を作成し、得られた平板状銀/微細化セルロース複合体の電子顕微鏡観察および分光吸収スペクトルの測定、さらにフィルターへの染込み状態の観察および再溶出試験を実施例1と同様の方法で行った。結果を表1および図7に示す。
<実施例4>
実施例1において、CSNFの濃度を1.5%、硝酸銀水溶液の添加量を3mL、水素化ホウ素ナトリウム水溶液の添加量を3mLとした以外は、実施例1と同様の条件で平板状銀/微細化セルロース複合体を作成し、得られた平板状銀/微細化セルロース複合体の電子顕微鏡観察および分光吸収スペクトルの測定、さらにフィルターへの染込み状態の観察および再溶出試験を実施例1と同様の方法で行った。結果を表1および図7に示す。
<比較例1>
多孔体を浸漬する分散液として、Feを含む顔料インク(大日精化社製、TMレッド8270)を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件でフィルターを作製し、さらにフィルターへの染込み状態の観察および再溶出試験を実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
<比較例2>
多孔体を浸漬する分散液として、特許文献7に記載の実施例3に従い作製した平板状銀ナノ粒子を含む分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件でフィルターを作製し、さらにフィルターへの染込み状態の観察および再溶出試験を実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
Figure 0007009762000001
図3は、実施例1で得られた複合体の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果を示しており、(a)はSEM画像であり、(b)は、(a)の模式図である。
図3(a)及び図3(b)に示すように、驚くべきことに遠心分離による分画精製処理後にもかかわらず、平板状銀微粒子にCSNFが結合している様子が確認された。シリコンウェハの他の部分にはCSNFが単独で存在している様子は見られなかったことからも、銀とCSNFは完全に結合していて不可分であることが示された。
図4は、実施例1で得られた複合体を、透過型電子顕微鏡(TEM)によって断面方向から観察した結果を示す図(TEM画像)である。
図4に示すように、断面方向から見た平板状銀の形状は長方形であり、短軸方向の長さは約10nmであったことから、平板状銀は厚さ10nm程度の平板状粒子であることが判明した。厚みに関しては実施例1~4のどの試料においても約10nm程度であったことから、硝酸銀水溶液添加量の違いだけで平面に平行方向の粒径サイズのみを選択的に制御可能であることが示された。
図5は、実施例1で得られた複合体の走査透過型電子顕微鏡(STEM)による観察結果を示しており、(a)はSTEM画像であり、(b)は、(a)の拡大図である。
図5に示すように、得られた画像中の平板状銀ナノ粒子を、円で近似した際の径を、平面方向の粒子径として算出し、平面方向の粒子径を実施例ごとに比較したところ、実施例1では80~120nm程度、実施例2では100~150nm程度、実施例3では100~250nmが程度、実施例4では80~120nm程度の粒子径を有する平板状銀微粒子/微細化セルロース複合体が多く観察された。
図6は作製した平板状銀微粒子/CSNF複合体を透析処理および遠心分離処理で精製したのち、酢酸ウラニルによるネガティブ染色法を用いてTEM観察を行った結果である。図6に示したように、ネガティブ染色効果により、平板状の銀微粒子とそれに結合したCSNFが同一視野内で明瞭に観察された。また、本観察試料において観察されたCSNFは必ず平板状銀微粒子に結合した状態であり、結合していないフリーのCSNFは一切観察されなかった。この結果は、本複合体が平板状銀微粒子とCSNFが不可分の状態で結合した様態にあることを示す証拠である。
以上の結果から、実施例1~4で得られた銀と微細化セルロースとの複合体は、平板状の銀微粒子とCSNFとが完全に結合している複合体であって、カーボンニュートラル材料を用いた環境調和型の新規光学材料であることが示された。
図7は、実施例1~4および比較例1~2にて作製した、平板状銀微粒子とCSNFとの複合体の分光透過スペクトルを示す図である。
表1及び図6に示すように、分光透過スペクトルの測定結果から、実施例1の吸収ピークは758nm、実施例2は832nm、実施例3は966nm、実施例4は724nmであることが確認された。すなわち、平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体は、アスペクト比(粒子径/粒子厚み)が大きくなればなるほど吸収ピーク波長が長波長領域へとシフトすることが確認され、近赤外線吸収材料として利用可能であることが確かめられた。
また、実施例4の吸収ピークは724nmで、実施例1と同等程度であったが、実施例1よりも透過率が低下した。これは、製造時においてCSNF濃度および硝酸銀水溶液の仕込み量の上昇により、分散液中に含まれる複合体の濃度が上昇したためである。
なお、実施例1~4で作成した平板状銀微粒子/微細化セルロース複合体を含む分散液は、遠心分離処理によって球状の銀ナノ微粒子を除去できるため、平板状銀微粒子由来の吸光度を維持したまま可視光領域の光透過性を高めることが可能であることも確認した。
また、表1に示すように、本実施例において複合体の含浸液に平板状銀微粒子/微細化セルロース複合体を用いた場合、複合体粒子がナノサイズであり且つ分散性が良好なため、微細な空隙を有する多孔体の内部まで複合体が浸透することが確認された。また、再溶出試験においても複合体の再溶出は確認されず、定着性が良好であることが確認された。理由としては、浸透した複合体に結合しているCSNFの絡み合い効果により、多孔体基材に対するCSNFの定着性が良好であるため、CSNFと不可分の状態にある平板状銀ナノ粒子も間接的に多孔体基材に定着し、結果として複合体自体の定着性が良好となり、再溶出が抑制されたと考えられる。
一方、比較例1においては複合体の含浸液として顔料を含む分散液を用いたため、凝集した顔料が多孔体内部にまで浸透することができないことが確認された。また、比較例2においては複合体の含浸液として平板状銀ナノ粒子のみの分散液を用いたところ、多孔体内部への浸透は見られるものの、中心部までの浸透は確認できなかった。これは平板状銀ナノ粒子同士が一部凝集し、浸透が妨げられたためと予想される。また、比較例2においては平板状銀ナノ粒子の再溶出が確認された。これは平板状銀ナノ粒子のみでは多孔体基材への定着性が低いためであると考えられる。
本発明によれば、バイオマス材料を用いた低環境負荷且つ簡便なプロセスにより平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体を少なくともその表面および内部に備える多孔体とその製造方法を提供することが可能となる。また、平板状銀微粒子と微細化セルロースとの複合体は、これまでに報告の無いカーボンニュートラルな、新規な有機無機ハイブリッド材料であり、またその光学特性と抗菌性、ならびにCSNFの特性を活かすことによって、新規な多孔体を提供することが可能である。本多孔体の、用途としては抗菌性医療用部材、パーソナルケア用品向け抗菌性物品、色素増感太陽電池、などが考えられ、様々な分野への波及効果が期待される。
1・・・複合体
2・・・平板状銀微粒子
3・・・微細化セルロース(CSNF)
3a・・・平板状銀微粒子に取り込まれている部分
3b・・・平板状銀微粒子の表面に露出している部分

Claims (7)

  1. 平板状の銀微粒子と、少なくとも一つ以上の微細化されたセルロースとが複合化された複合体を、少なくとも多孔体基材の表面および内部に備えてなる多孔体であって
    前記微細化セルロースのそれぞれは、少なくとも一部又は全部が前記平板状銀微粒子に取り込まれるとともに、残部があればその残部が当該平板状銀微粒子の表面に露出しており、
    前記多孔体基材は、表面や内部に微細な細孔を有する物体であり、且つ有機高分子化合物、無機酸化物、又は無機化合物で形成されていることを特徴とする多孔体。
  2. 前記平板状銀微粒子と前記微細化セルロースとが不可分であることを特徴とする請求項1に記載の多孔体。
  3. 前記平板状銀微粒子の粒子径が、当該平板状銀微粒子の粒子厚みの2倍以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔体。
  4. 前記微細化セルロースが、結晶表面にアニオン性官能基を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の多孔体。
  5. 前記微細化セルロースは、数平均短軸径が1nm以上100nm以下、数平均長軸径が50nm以上であり、かつ数平均長軸径が数平均短軸径の10倍以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の多孔体。
  6. 微細化セルロースを溶媒中に分散させて微細化セルロース分散液を準備する工程と、
    前記微細化セルロース分散液と、銀イオンを含有する溶液と、を混合して混合溶液を得る工程と、
    前記混合溶液中の前記銀イオンを還元して平板状銀微粒子を成長させるとともに、前記平板状銀微粒子と微細化セルロースとを複合化して複合体を得る工程と、
    前記複合体を含む分散液に多孔体基材を浸漬して、該複合体を少なくともその表面および内部に備える多孔体を得る工程と、
    を含むことを特徴とする多孔体の製造方法。
  7. 前記微細化セルロース分散液を準備する工程において、前記微細化セルロースは結晶表面にアニオン性官能基を有することを特徴とする請求項6に記載の多孔体の製造方法。
JP2017068241A 2017-03-30 2017-03-30 多孔体および多孔体の製造方法 Active JP7009762B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017068241A JP7009762B2 (ja) 2017-03-30 2017-03-30 多孔体および多孔体の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017068241A JP7009762B2 (ja) 2017-03-30 2017-03-30 多孔体および多孔体の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018168126A JP2018168126A (ja) 2018-11-01
JP7009762B2 true JP7009762B2 (ja) 2022-02-10

Family

ID=64018408

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017068241A Active JP7009762B2 (ja) 2017-03-30 2017-03-30 多孔体および多孔体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7009762B2 (ja)

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003326641A (ja) 2002-05-10 2003-11-19 Toppan Printing Co Ltd 多孔質導電膜および多孔質導電膜の製造方法
JP2008253895A (ja) 2007-04-03 2008-10-23 Masaru Ihara 銀イオンスプレー用の銀担持セラミック多孔体
JP2011504414A (ja) 2007-11-26 2011-02-10 アンティバック ラボラトリーズ ピーティーイー エルティーディー 抗菌性多孔質基材並びにそれを作製及び使用する方法
JP2012219095A (ja) 2011-04-12 2012-11-12 Korea Inst Of Science & Technology リサイクルが容易な多孔体・サテライトナノ粒子複合体及びその製造方法
JP2015218421A (ja) 2014-05-21 2015-12-07 凸版印刷株式会社 多孔質体とその製造方法、ならびに遮熱フィルム
JP2017008004A (ja) 2015-06-25 2017-01-12 南信産業株式会社 抗菌性組成物及びその製造方法並びに生け簀の水質浄化方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2998061B2 (ja) * 1995-06-14 2000-01-11 ダイソー株式会社 抗菌性金属微粒子担持多孔質炭酸カルシウム
JPH0967177A (ja) * 1995-08-25 1997-03-11 Tokai Carbon Co Ltd 抗菌性多孔質炭素材とその製造方法

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003326641A (ja) 2002-05-10 2003-11-19 Toppan Printing Co Ltd 多孔質導電膜および多孔質導電膜の製造方法
JP2008253895A (ja) 2007-04-03 2008-10-23 Masaru Ihara 銀イオンスプレー用の銀担持セラミック多孔体
JP2011504414A (ja) 2007-11-26 2011-02-10 アンティバック ラボラトリーズ ピーティーイー エルティーディー 抗菌性多孔質基材並びにそれを作製及び使用する方法
JP2012219095A (ja) 2011-04-12 2012-11-12 Korea Inst Of Science & Technology リサイクルが容易な多孔体・サテライトナノ粒子複合体及びその製造方法
JP2015218421A (ja) 2014-05-21 2015-12-07 凸版印刷株式会社 多孔質体とその製造方法、ならびに遮熱フィルム
JP2017008004A (ja) 2015-06-25 2017-01-12 南信産業株式会社 抗菌性組成物及びその製造方法並びに生け簀の水質浄化方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018168126A (ja) 2018-11-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6690531B2 (ja) 複合体、複合体の製造方法、分散液、分散液の製造方法および光学材料
Oun et al. Multifunctional nanocellulose/metal and metal oxide nanoparticle hybrid nanomaterials
Mohamed et al. An overview on cellulose-based material in tailoring bio-hybrid nanostructured photocatalysts for water treatment and renewable energy applications
JP6421455B2 (ja) 複合体の製造方法、及び複合体
JP6446834B2 (ja) 複合体の製造方法、及び微細セルロース繊維の分散液
JP7259218B2 (ja) 光熱変換材料、光熱変換組成物、および光熱変換成形体
JP5786862B2 (ja) 透明基材およびその製造方法
JP6248511B2 (ja) 増粘発色抗菌剤およびその製造方法並びにパーソナルケア製品用組成物
JPWO2019135384A1 (ja) 複合粒子、複合粒子の製造方法、乾燥粉体、および成型用樹脂組成物
JP2014070158A (ja) 抗菌性微細セルロース、その製造方法ならびに抗菌性コーティング剤
JP6575128B2 (ja) セルロースナノファイバーシートの製造方法
JP6260451B2 (ja) 多孔質体とその製造方法、ならびに遮熱フィルム
CN108588883B (zh) 石墨烯纤维及制备方法和制品
JP6926571B2 (ja) 鮮度保持シートおよび鮮度保持シートの製造方法
JP7167433B2 (ja) 樹脂組成物および樹脂組成物の製造方法
JP6303258B2 (ja) 銀と微細化セルロース繊維の複合体の製造方法及び遮熱フィルムの製造方法
JP2015218159A (ja) 抗菌性組成物、積層体、及び成形体
JP7009762B2 (ja) 多孔体および多孔体の製造方法
JP7035416B2 (ja) 乾燥固形物および乾燥固形物の製造方法
JP7031144B2 (ja) 樹脂成形体、樹脂成形体の製造方法、および樹脂組成物
JP6728588B2 (ja) 切り花延命剤および切り花延命剤の製造方法
JP2018193551A (ja) 樹脂成形体、及びその製造方法、並びに樹脂組成物
JP6402454B2 (ja) 光学材料及び光学フィルター
JP6428018B2 (ja) 多孔質体、多孔質体形成用組成物および多孔質体の製造方法
JP6925948B2 (ja) 抗菌性微細セルロース

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200221

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20201124

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20201208

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210128

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210608

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210730

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20211214

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20211227

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7009762

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150