JP6925948B2 - 抗菌性微細セルロース - Google Patents

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Description

本発明は、抗菌性微細セルロースに関する。
環境配慮型として注目されている機能性材料にセルロースがある。セルロースは植物の細胞壁や微生物の体外分泌物、ホヤの外套膜などに含まれており、地球上でもっとも多く存在する多糖類である。生分解性を有し、結晶性が高く、安定性や安全性に優れており、様々な分野へ応用展開が期待されている。
また、セルロースフィブリルを2,2,6,6−tetramethylpiperidine 1−oxyl(TEMPO)触媒系によって酸化反応を行うことで得られる酸化セルロースフィブリルは、結晶表面のセルロースの持つ3つの水酸基のうち、C6位のアルコール性一級炭素のみ選択的に酸化することができ、アルデヒド基を経てカルボキシル基まで変換することができ、さらに水系、常温、常圧などの温和な条件下で反応を行うことが可能であるため、非常に注目されている。
また、得られた酸化セルロースフィブリルは、水に懸濁させ軽微な機械的処理を加えるだけで、容易に微細セルロースを水分散させることができることが知られている。微細セルロースは高い結晶性と低い線膨張率により高強度で、表面に高密度にカルボキシル基を有していることから多くの分野への応用が期待されている。
一方、銀や亜鉛、銅等の金属は抗菌・消臭作用があることを古くから経験的に知られており、近年それらのイオンやナノ粒子の抗菌・消臭効果を利用した多くの製品が販売されている。銀等の金属は必ずしも強力な抗菌性を示すわけではないが、人体に対する害もなく広範囲な細菌およびカビ等への持続的抗菌および防カビ性を有している。抗菌剤として銀を利用し、一般的に流通している製品の製法としては、ゼオライトやシリカゲル等の吸着剤に銀イオンを担持させる方法が広く知られている。
抗菌剤が用いられる分野としては、繊維、洗濯機、塗料、ワニス、流しや衛生セラミックス、消毒剤、防臭剤、台所用品、化粧品、身体手入れ用品、乳幼児製品などから傷や火傷の処置、医療器具消毒等様々な応用範囲に拡大している。
例えば、特許文献1では、微細繊維状セルロース懸濁液と酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン、金などの無機化合物微粒子からなるコロイドを混合し、多孔性の基材の上でろ過により脱水し、乾燥させることで微細繊維状セルロースと無機化合物微粒子を複合化しているが、微細繊維状セルロースと微粒子を単純に混合し、乾燥させただけでは、微細繊維状セルロースおよび微粒子間の密着が悪く、脱離が生じたり、均一に数nmオーダーの微粒子が分散しない等の問題が生じる恐れがある。
特開2012−7247号公報
これまでの金属微粒子担持抗菌剤では、金属微粒子が凝集してしまい均一に分散できない、効果を発現させるために必要以上の金属微粒子を添加する必要があるなど問題があった。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、低添加量で金属微粒子を高密度に微細セルロース上に担持させた抗菌性微細セルロースを提供することを課題とする。
請求項1に記載の発明は、木材を由来とする微細セルロースの表面上に、銀またはその化合物からなる金属微粒子が担持されてなる抗菌性微細セルロースであって、前記微細セルロースは、少なくともその結晶表面にカルボキシル基を有し、前記金属微粒子は、前記微細セルロースの結晶表面のカルボキシル基上に析出したものであり、該微細セルロースは数平均繊維幅が1nm以上3.5nm以下であり、該抗菌性微細セルロースの水分散液の600nmにおける透過率が80%以上であり、該微細セルロースは数平均繊維長が前記数平均繊維幅の100倍以上10000倍以下であり、該金属微粒子の粒子径が1nm以上20nm以下であることを特徴とする抗菌性微細セルロースである。
請求項2に記載の発明は、該微細セルロースのカルボキシル基量が0.1mmol/g以上3.0mmol/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性微細セルロースである。
請求項3に記載の発明は、該微細セルロースは結晶化度が50%以上であり、かつ、セルロースI型の結晶構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌性微細セルロースである
本発明の抗菌性微細セルロースは、低添加量で高密度に金属微粒子を担持させ得る材料として用いることができる。
また本発明の製造方法によれば、微細セルロースと金属微粒子を別々で混合する工程なく、静電的な相互作用を利用し、微細セルロースのカルボキシル基上に選択的に金属微粒子を還元析出することができるため、金属微粒子の凝集がなく、かつ高密度に微細セルロース上に金属微粒子を担持することが可能になる。分散性よく金属微粒子を微細セルロース上に担持させることができることから、透明性が高く、さらには抗菌性を低下させることなく金属微粒子の量を減少させることが可能になり、低コスト化を実現することが可能になる。
さらに溶媒中で金属微粒子を微細セルロース上に還元析出可能であるため、そのままコーティング剤として用いることも可能である。また、分散液はチキソトロピー性を有することからスプレーコーティングも可能であり、立体的な構造体にもコーティングすることも可能である。
本発明の抗菌性コーティング剤を例えば衣類にコートした場合、優れた抗菌性や消臭性を示し、クリーニング等によって適度に衣類から脱離をすることから硬くこわばることもない衣類を提供することも可能になる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(結晶表面にカルボキシル基を有する微細セルロースとその製造方法)
本発明の微細セルロースは結晶表面にカルボキシル基を有し、カルボキシル基量が0.1mmol/g以上3.0mmol/g以下が好ましい。0.5mmol/g以上2.0mmol/g以下がより好ましい。カルボキシル基量が0.1mmol/g未満であると、静電的な反発が起こらずに微細セルロースを均一に分散させることは難しい。また、3.0mmol/gを超えると、微細セルロースの結晶性が低下してしまうおそれがある。また、本発明の微細セルロースは数平均繊維幅が1nm以上50nm以下であり、且つ数平均繊維長が数平均繊維幅の100倍以上10000倍以下であることが好ましい。数平均繊維幅が1nm未満ではセルロースがナノファイバー状態にならず、50nmを超えると本発明の抗菌性微細セルロースにおいて十分な抗菌機能が得られないおそれがある。また、数平均繊維長が数平均繊維幅の100倍未満の場合、微細セルロース上に金属微粒子を析出した際に粘度が低いため、沈殿してしまうおそれがあり、反対に10000倍を超えると分散液の粘度が高くなり、分散性に問題が生じる可能性がある。
なお、上記のカルボキシル基量、微細セルロースのサイズは、下記で説明するセルロースを酸化する工程、微細化し分散液化する工程における諸条件を適宜調節することにより、所望の値に設定可能である。
また、微細セルロースは結晶化度が50%以上であり、かつ、セルロースI型の結晶構造を有することが好ましい。結晶化度が50%以上であることにより、内部に結晶構造を維持したまま微細な構造をとることができるため好ましく、セルロースI型の結晶構造を有することにより、結晶性の高い天然物由来のセルロースを用いることができるため好ましい。
本発明の結晶表面にカルボキシル基を有する微細セルロースを製造する方法について説明する。
本発明で用いられる結晶表面にカルボキシル基を有する微細セルロースは、セルロースを酸化する工程と微細化し分散液化する工程により得られる。
(セルロースを酸化する工程)
酸化されるセルロースの原料としては、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプ、コットン、バクテリアセルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロース、微結晶セルロース等を用いることができる。
セルロースを酸化する方法としては、水系の比較的温和な条件で、可能な限り構造を保ちながら、アルコール性一級炭素の酸化に対する選択性が高い、N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いた手法が望ましい。前記のN−オキシル化合物としては、N−オキシル化合物としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)のほか、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−フェノキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ベンジルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−アクリロイルオキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−メタクリロイルオキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ベンゾイルオキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−シンナモイルオキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−アセチルアミノピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−アクリロイルアミノピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−メタクリロイルアミノピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ベンゾイルアミノピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−シンナモイルアミノピペリジン−1−オキシル、4−プロピオニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、2,2,4,4−テトラメチルアゼチジン−1−オキシル、2,2−ジメチル−4,4−ジプロピルアゼチジン−1−オキシル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−N−オキシル、2,2,5,5−テトラメチル−3−オキソピロリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−アセトキシピペリジン−1−オキシル、ジtert−ブチルアミン−N−オキシル、ポリ[(6−[1,1,3,3−テトラメチルブチル]アミノ)−s−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ等が挙げられる。2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシルなどが好ましく用いられる。
また、前記の共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性から次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
さらに、臭化物やヨウ化物の共存下で行うと、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシル基の導入効率を改善することができる。
N−オキシル化合物としてはTEMPOが好ましく、触媒として機能する量があれば十分である。また臭化物としては臭化ナトリウムまたは臭化リチウムを用いた系が好ましく、コストや安定性から臭化ナトリウムがより好ましい。共酸化剤、臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進することができる量があれば十分である。反応はpH9〜11がより望ましいが、酸化が進行するにつれて、カルボキシル基が生成されて系内のpHが低下してしまうため、系内をpH9〜11に保つ必要がある。
系内をアルカリ性に保つためにはpHを一定にスタットしながらアルカリ水溶液を添加していくことで調製することができる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア水溶液、さらには水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムなどの有機アルカリなどが用いられるが、コストなどから水酸化ナトリウムが好ましい。
酸化反応を終了させるためには系内のpHを保ちながら他のアルコールを添加し共酸化剤を完全に反応し終える必要がある。添加するアルコールとしては反応をすばやく終了させるためメタノール、エタノール、プロパノールなどの低分子量のアルコールが望ましい。反応により生成される副産物の安全性などからエタノールがより好ましい。
酸化し終わったセルロース(酸化セルロース)の洗浄方法としては、アルカリと塩を形成したまま洗浄する方法、酸を添加してカルボン酸にして洗浄する方法、有機溶剤を添加して不要化して洗浄する方法等がある。ハンドリング性や収率等から酸を添加してカルボン酸にして洗浄する方法が好ましい。なお洗浄溶媒としては水が好ましい。
(酸化セルロースを微細化し分散液化する工程)
酸化セルロースを微細化する方法としてはまず、酸化セルロースを水やアルコールをはじめとした各種有機溶媒やそれらの混合溶媒中に懸濁させる。必要とあれば、分散性を上げるために分散液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア水溶液、さらには水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムなどの有機アルカリなどが挙げられる。コストや入手のしやすさなどから水酸化ナトリウムが好ましい。
続いて物理的に解繊する方法としては、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突などを用いることで微細化することができる。これらのような微細化処理を任意の時間や回数行うことで表面にカルボキシル基を有する微細セルロース(酸化微細セルロース)の分散水溶液を得ることができる。
酸化微細セルロースの分散液(以下は、水分散液を例として説明する)は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロースおよびpH調整に用いた成分以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分としては、特に限定されず、当該微細セルロースの用途等に応じて、公知の添加剤のなかから適宜選択できる。具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、レベリング剤、消泡剤、水溶性高分子、合成高分子、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、架橋剤等が挙げられる。
(酸化微細セルロース表面に金属またはそれらの化合物からなる金属微粒子を担持させる工程)
酸化微細セルロース表面に担持させる金属微粒子としては、特に限定しないが、抗菌性を有する金属微粒子が好ましく、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、レニウム、鉄、鉛、銅、亜鉛、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム、チタンなどの金属又はこれらの合金、または酸化物、複酸化物等が挙げられる。中でも、銀またはその化合物、例えば酸化銀、塩化銀等が好ましい。また、金属微粒子の粒子径が1nm以上20nm以下であれば、酸化微細セルロース表面においてより緻密に金属微粒子を担持することが可能になり、抗菌性の効率を向上させることが可能になる点から好ましい。また、酸化微細セルロース表面に金属微粒子を担持させる方法としては、特に限定しないが、酸化微細セルロース表面上に高密度に金属微粒子を担持させるため、前記金属または合金、酸化物、複酸化物等の溶液と酸化微細セルロースの水分散液を混合し、酸化微細セルロース表面のアニオン性のカルボキシル基と前記金属または合金、酸化物、複酸化物のカチオンを静電的に相互作用させ、還元し析出させることが好ましい。前記金属または合金、酸化物、複酸化物を還元させる方法としては、特に限定しないが、弱い還元剤を用いる方が粒径を小さく均一に制御しやすく、かつ簡便で好ましい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化アルミニウムリチウム、シアノ化水素化ホウ素ナトリウム、トリアルコキシ水素化アルミニウムリチウム、ジイソブチル水素化アルミニウム等の水素化金属が挙げられ、安全性や汎用性から水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
このようにして、本発明の抗菌性微細セルロースの分散液、上記の形態では抗菌性微細セルロースの水分散液が得られる。
(抗菌性コーティング剤)
本発明では、上記のようにして得られた抗菌性微細セルロースの分散液、例えば抗菌性微細セルロースの水分散液を、そのまま抗菌性コーティング剤として用いることができる。このとき該水分散液の600nmにおける透過率は80%以上となり、透明性に優れる。
本発明の抗菌性コーティング剤は、様々な基材上に塗工し、コーティング膜を形成することが可能である。
本発明の抗菌性微細セルロースを含む分散液を基材上に塗工する場合の方法としては、コンマコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、リバースグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、ロールキスコーター、リバースキスコーター、キスグラビアコーター、リバースキスグラビアコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、リップコーター、ディップコーター、ブレードコーター、ブラシコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター等のいずれかもしくは二つ以上の塗工方法を組み合わせて用いることができる。また立体に塗工する場合の方法としては、スプレーコーター、ディップコーター等のいずれかもしくは二つ以上の塗工方法を組み合わせて用いることできる。塗工方法はバッチ式、連続式によらない。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。
実施例1
<セルロースのTEMPO酸化>
針葉樹晒クラフトパルプ30gを蒸留水1800gに懸濁し、蒸留水200gにTEMPOを0.3g、臭化ナトリウムを3g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/l、密度1.15g/mlの次亜塩素酸ナトリウム水溶液172gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。セルロースの質量に対して、水酸化ナトリウムが2.85mmol/gになったところで十分量のエタノールを添加し反応を停止させた。その後、pH1になるまで塩酸を添加した後、蒸留水で十分洗浄を繰り返し、酸化セルロースを得た。
・酸化セルロースのカルボキシル基測定
上記TEMPO酸化で得た酸化セルロースを固形分重量で0.1g量りとり、1%濃度で水に分散させ、塩酸を加えてpHを3とした。その後0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いて電導度滴定法により、カルボキシル基量(mmol/g)を求めた。結果は1.6mmol/gであった。
<酸化セルロースの微細化>
上記TEMPO酸化で得た酸化セルロース1gを99gの蒸留水に分散させ、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10に調製した。調製した分散液をジューサーミキサーで60分間微細化処理し、1%濃度の酸化微細セルロースの水分散液を得た。
上記酸化微細セルロースの形状観察は原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察した。繊維高さを10点計測し平均を数平均繊維幅とした。また、繊維長さについては同様にタッピングAFMで観察し、繊維の長方向の長さを10点計測し、平均を数平均繊維長さとした。数平均繊維幅は3.5nm、数平均繊維長さは1.3μmであった。
<微細セルロース−金属微粒子複合体の作製>
上記酸化微細セルロースの水分散液と5mM硝酸銀水溶液を混合し、十分攪拌した。その後、10mM水素化ホウ素ナトリウムを添加し、銀イオンを還元し酸化微細セルロース上に銀微粒子を担持させ、微細セルロース−銀微粒子複合体水分散液を作製した。
上記銀微粒子の大きさの観察としては、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察したところ、粒子径2nmであった。
実施例2
前記実施例1のセルロースのTEMPO酸化において、水酸化ナトリウムの添加量を1.5mmol/gとし、得られた酸化セルロースのカルボキシル基量を1.3mmol/gとした以外は同様の方法で、実施例2の微細セルロース−銀微粒子複合体水分散液を作製した。
実施例3
前記実施例1のセルロースのTEMPO酸化において、水酸化ナトリウムの添加量を4.0mmol/gとし、得られた酸化セルロースのカルボキシル基量を1.9mmol/gとした以外は同様の方法で、実施例3の微細セルロース−銀微粒子複合体水分散液を作製した。
実施例4
前記実施例1の微細セルロース−銀微粒子複合体水分散液の作製において、硝酸銀水溶液の濃度を2.5mMとし、担持した銀微粒子の大きさを1nmとした以外は同様の方法で、実施例4の微細セルロース−銀微粒子複合体水分散液を作製した。
実施例5
前記実施例1の微細セルロース−銀微粒子複合体水分散液の作製において、硝酸銀水溶液の濃度を10mMとし、担持した銀微粒子の大きさを4nmとした以外は同様の方法で、実施例5の微細セルロース−銀微粒子複合体水分散液を作製した。
比較例1
5mM硝酸銀水溶液に10mM水素化ホウ素ナトリウム水溶液を添加し、充分攪拌し予め銀イオンを還元した。得られた液に実施例1の酸化微細セルロース水分散液を添加し比較例1の微細セルロース−銀微粒子複合体水分散液を作製した。
上記銀微粒子の大きさの観察としては、TEMを用いて観察したところ、粒子径45nmであった。
・抗菌性能評価
上記実施例1〜5および比較例1の微細セルロース−銀微粒子複合体水分散液をJIS L1902の菌液吸収法に基づき実施し、黄色ぶどう球菌の静菌活性値で評価した。
・透明性評価
上記実施例1〜5および比較例1の微細セルロース−銀微粒子複合体水分散液の600nmにおける透過率をUV−vis分光光度計を用いて測定した。
結果を表1に示す。
Figure 0006925948
表1の結果から、分散性よく金属微粒子を微細セルロース上に担持させることができることから、透明性が高く、さらには抗菌性を低下させることなく金属微粒子の量を減少させることが可能になり、少ない担持量で効率的に抗菌性を発現させることが可能になった。

Claims (3)

  1. 木材を由来とする微細セルロースの表面上に、銀またはその化合物からなる金属微粒子が担持されてなる抗菌性微細セルロースであって、前記微細セルロースは、少なくともその結晶表面にカルボキシル基を有し、前記金属微粒子は、前記微細セルロースの結晶表面のカルボキシル基上に析出したものであり、
    該微細セルロースは数平均繊維幅が1nm以上3.5nm以下であり、
    該抗菌性微細セルロースの水分散液の600nmにおける透過率が80%以上であり、
    該微細セルロースは数平均繊維長が前記数平均繊維幅の100倍以上10000倍以下であり、
    該金属微粒子の粒子径が1nm以上20nm以下である
    ことを特徴とする抗菌性微細セルロース。
  2. 該微細セルロースのカルボキシル基量が0.1mmol/g以上3.0mmol/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性微細セルロース。
  3. 該微細セルロースは結晶化度が50%以上であり、かつ、セルロースI型の結晶構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌性微細セルロース。
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