JP6728588B2 - 切り花延命剤および切り花延命剤の製造方法 - Google Patents

切り花延命剤および切り花延命剤の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、微細化セルロースと1種類以上の金属イオンを含む分散液中で、前記金属イオンを還元析出させることにより得られる金属微粒子/微細化セルロース複合体を含む切り花延命剤に関する。
華道や仏前への供花などに代表されるように、古来より日本人にとって切り花は身近な存在である。また日常的にも花束(ブーケ)として冠婚葬祭に用いられており、このような切り花需要に基づく一定のマーケットが存在している。
切り花のマーケットにおいて求められる品質管理に鮮度保持がある。ここで言う切り花の鮮度とは、切り花の主目的である観賞用途に耐えうる状態にあるかという点で判断され、切り花が最も観賞に適した状態は言うまでもなく開花状態である。
しかしながら、開花状態の花は代謝が活発であり、採花された状態にある切り花は、老化が進みやすい。 そこで、切り花が開花状態にある期間、すなわち鮮度保持期間を延長できる切り花延命剤を提供することが求められている。
切り花延命剤の代表的な成分として、エチレン抑制薬が用いられる。エチレンは植物ホルモンの一種で花の老化を促進するため、エチレンの合成あるいは作用を阻害するエチレン抑制薬によって鮮度保持期間の延命が期待できる。
エチレン抑制薬としては、アミノエトキリビニルグリシン(AVG)、アミノオキシ酢酸(AOA)、α-アミノイソ酪酸(AIB)、1-メチルシクロプロペン(1-MCP)などが知られている。
例えばカーネーション類はエチレンに対する感受性が高く、エチレン抑制薬の使用により明瞭な延命効果が確認できる。一方、切り花品種としては汎用的に用いられる薔薇類もエチレンに対する感受性が高いものの、エチレン抑制薬の使用だけでは十分な延命効果が得られない。
これは、生け水中には細菌が増殖しやすく、これが切り花の鮮度保持期間に影響するためである。特にバラ類は細菌に対する感受性が強く、水の腐敗や水中でのバクテリア繁殖などによって鮮度保持期間が短くなってしまい、切り花延命剤はエチレン抑制薬と共に、抗菌成分を含有したものが汎用的に用いられている。
切り花延命用に用いることができる抗菌成分としては、グレープフルーツ種子抽出物とヒノキ科植物抽出物を抗菌成分として用いた切り花延命剤が開示されている。しかしながらこのような天然物由来の抗菌成分は安定した抗菌作用が得られ難いとされている(特許文献1)。
一方、銀を用いた抗菌剤は、安定性に優れ、殺菌効果が強いにもかかわらず、人体に不活性で環境への影響の少ないことから注目を集めている。銀を抗菌剤として用いる場合、銀の使用量を低減するためには比表面積の大きい状態、すなわちナノ粒子の状態で用いられることが望ましい。しかしながら、銀ナノ粒子は比表面積が大きくなるほど、すなわち粒子サイズが小さくなるほど凝集しやすくなり、沈降してしまうといった問題がある。
コア‐シェル型ナノ構造体のシェル部分が粒子状で、このシェル部分に銀を含有する構造の複合組成物粒子を抗菌成分として分散剤により分散させた切り花延命剤が開示されている。このような構造体とすることによって銀ナノ粒子の分散安定性を向上させ、銀の比表面積を保った状態で抗菌性を発揮することが可能となっている。
しかしながら、該構造体はコア部分の分散性自体は低いため分散剤を多量に添加する必要があり、コストアップに繋がってしまう問題がある。また、分散剤を用いたとしても銀ナノ粒子同士の凝集力は非常に強いため、分散安定状態が経時的に劣化し、抗菌性が低下する恐れもある(特許文献2)。
一方近年、化石資源の枯渇問題の解決を目指して、持続的に利用可能な環境調和型材料であるバイオマスを用いた機能性材料の開発が盛んに行われている。その中でも木材の主成分であるセルロースは、地球上で最も大量に蓄積された天然高分子材料であることから、資源循環型社会への移行に向けたキーマテリアルとして期待が寄せられている。
木材中では、数十本以上のセルロース分子が束になって高結晶性でナノメートルオーダーの繊維径を持つ微細繊維(ミクロフィブリル)を形成しており、さらに多数の微細繊維が互いに水素結合してセルロース繊維を形成し、植物の支持体となっている。
このように安定な構造を有することから、木材に含まれる天然のセルロースは、特殊な溶媒以外には不溶であり、成形性にも乏しく、機能性材料としては扱いにくい面があった。そこで、木材中のセルロース繊維を、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化して利用しようとする試みが活発に行われている。
木材セルロースに対しブレンダーやグラインダーによる機械処理を繰り返すことで、微細化セルロース繊維(セルロースナノファイバー:CNF)が得られることが開示されている。この方法で得られる微細化セルロース繊維の短軸径は10〜50nm、長軸径は1μmから10mmに及ぶことが報告されている。微細化セルロース繊維は鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強さを誇り、250m/g以上の膨大な非表面先を有することから、用途としては樹脂強化用ナノ繊維としての検証が進められている(特許文献3)。
また、化学的処理を併用した微細化として、以前から酸加水分解による微細化技術が知られているが、近年新たな手法として、比較的安定なN−オキシル化合物である2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシラジカル(TEMPO)を触媒として用い、セルロースの微細繊維表面を選択的に酸化する方法が報告されている(特許文献4)。
TEMPO酸化反応は水系、常温、常圧で進行する環境調和型の化学改質が可能で、木材中のセルロースに適用した場合、結晶内部には反応が進行せず、結晶表面のセルロース分子鎖が持つアルコール性1級炭素のみを選択的にカルボキシ基へと変換することができる。
このように結晶表面に導入されたカルボキシ基同士の静電的な反発により、水溶媒中で一本一本のセルロースミクロフィブリル単位に分散させた、微細化セルロースの一種であるセルロースシングルナノファイバー(以下CSNF)を得ることが可能となる。
木材からTEMPO酸化によって得られる木材由来のCSNFは短軸径3nm前後、長軸径数十nm〜数μmに及ぶ高アスペクト比を有する構造体であり、その水分散液および積層体は高い透明性を有することが報告されている。CSNFの用途としては、例えば透明基材に積層することによってガスバリア膜を形成し、植物由来の新規透明包装材料とし
て用いた応用例が報告されている(特許文献5)。
このように、カーボンニュートラル材料である微細化セルロースを用いた高機能部材開発に関して様々な検討がなされている。
微細化セルロースの一種であるCSNFと金属微粒子の複合体およびその用途としては、金属ナノ粒子担持CSNFと該金属ナノ粒子担持CSNFを触媒として用いる例が開示されている。しかしながら切り花延命剤として利用すること、あるいはその可能性に関して、一切の記述も示唆もない(特許文献6)。
特許第5201678号公報 特開2012−153607号公報 特開2010−216021号公報 特開2008−1728号公報 国際公開第2013/042654A1号 特許第5566368号公報
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、分散状態が安定し、経時的に劣化がなく、抗菌性が低下する恐れがない、安定した抗菌作用が得られ、製造が簡単でかつ安全に合成でき、環境調和型の切り花延命剤および切り花延命剤の製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、1種類以上の金属、又は前記金属の化合物により形成した金属微粒子と、1種類以上の木材由来の微細化セルロースと、を複合化した複合体を含有し、前記微細化セルロースの数平均短軸径が1nm以上100nm以下、数平均長軸径が50nm以上、かつ数平均長軸径が数平均短軸径の10倍以上であることを特徴とする切り花延命剤である。
また、請求項2に記載の発明は、前記金属微粒子と前記微細化セルロースとの複合化が、結合した不可分の状態であることを特徴とする請求項1に記載の切り花延命剤である。
また、請求項3に記載の発明は、前記金属微粒子が、銀を含有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切り花延命剤である。
また、請求項4に記載の発明は、前記微細化セルロースが、結晶表面にカルボキシ基を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の切り花延命剤である。
また、請求項5に記載の発明は、前記カルボキシ基の含有量が、セルロース1g当たり0.1mmol以上5.0mmol以下であることを特徴とする請求項4に記載の切り花延命剤である。
また、請求項6に記載の発明は、前記微細化セルロースが結晶構造をとり、その結晶構造がセルロースI型であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の切り花延命剤である。
また、請求項7に記載の発明は、前記微細化セルロースの形状が、天然セルロースのミ
クロフィブリル構造由来の繊維状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の切り花延命剤である。
また、請求項9に記載の発明は、前記微細化セルロースと前記金属微粒子の複合体を、水または有機溶媒中に分散させたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の切り花延命剤である。
また、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の切り花延命剤から分散媒を除去し、成形体としたことを特徴とする切り花延命剤である。
また、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の成形体をシート状にしたことを特徴とする切り花延命剤である。
また、請求項12に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の切り花延命剤の製造方法であって、
微細化セルロースを調製する工程、
前記微細化セルロースを溶媒中に分散させ微細化セルロース分散液を調整する工程、
前記微細化セルロース分散液に金属イオンを含有する溶液を混合し、混合溶液を調整する工程、
前記混合溶液中の前記金属イオンを還元して微細化セルロース表面上に金属微粒子を成長させ、前記金属微粒子と前記微細化セルロースとを複合化し複合体とする工程からなることを特徴とする切り花延命剤の製造方法である。
また、請求項13に記載の発明は、前記金属イオンが、銀イオンであることを特徴とする請求項12に記載の切り花延命剤の製造方法である。
また、請求項14に記載の発明は、前記微細化セルロースを、繊維状の微細化セルロースとする工程を含むことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の切り花延命剤の製造方法である。
また、請求項15に記載の発明は、前記微細化セルロースの結晶表面にカルボキシ基を導入する工程を含むことを特徴とする請求項12〜14のいずれか一項に記載の切り花延命剤の製造方法である。
また、請求項16に記載の発明は、前記カルボキシ基を導入する工程に、N−オキシル化合物による酸化反応を用いたことを特徴とする請求項15に記載の切り花延命剤の製造方法である。
また、請求項17に記載の発明は、前記カルボキシ基を導入する工程における、カルボキシ基の導入量が、セルロース1g当たり0.1mmol以上5.0mmol以下であることを特徴とする請求項15または請求項16に記載の切り花延命剤の製造方法である。
本発明を用いれば、切り花延命剤に金属微粒子/微細化セルロース複合体を用いることによって、その他の分散剤を用いることなく安定して分散可能で抗菌性の高い切り花延命剤が提供可能となり、従来よりも少量の銀で高い抗菌性を発揮することができるため、材
料コスト的にも優位である。さらに本発明の切り花延命剤は分散液の状態だけではなく成型体の状態でも提供可能な、汎用性の高い切り花延命剤である。
実施例1にて作製した、本発明の銀ナノ粒子と微細化セルロース(CSNF)の複合体を含有した切り花延命剤のSTEM写真である。 製造例にて得られた銀ナノ粒子と微細化セルロース(CSNF)の複合体を含有した切り花延命剤の分光透過スペクトルである。 鮮度保持効果検証実験中の薔薇の観察写真である。
以下本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
<微細化セルロースとその製造方法>
本発明において用いる微細化セルロースは、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーであればよく、その調製方法については特に限定されない。通常微細化セルロースはミクロフィブリル構造由来の繊維形状をとるため、本発明に用いる微細化セルロースとしては、以下に示す範囲にある繊維形状のものが好ましい。
すなわち、形状は繊維状が好ましく、短軸径において数平均短軸径が1nm以上100nm以下であればよく、好ましくは2nm以上50nm以下であればよい。数平均短軸径が1nm未満では高結晶性の剛直な微細化セルロースは繊維構造をとることができず、金属微粒子の表面がセルロースによって覆われてしまい、十分な抗菌性を発揮することができない。一方、100nmを超えると、金属微粒子に対してサイズが大きくなり過ぎるため、均質な複合体を得ることが難しい。
また、数平均長軸径においては特に制限はないが、好ましくは数平均短軸径の10倍以上であればよい。数平均長軸径が数平均短軸径の10倍未満である場合には、やはり高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造をとることができず、金属微粒子の表面がセルロースによって覆われてしまい、十分な抗菌性を発揮することができない。
微細化セルロース繊維の数平均短軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の短軸径(最小径)を測定し、その平均値として求められる。一方、微細化セルロース繊維の数平均長軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求められる。
微細化セルロース繊維の原料として用いることができるセルロースの種類や結晶構造も特に限定されない。セルロースI型結晶からなる原料としては例えば木材系天然セルロースに加えて、コットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフ、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロースを用いることができ、さらにはセルロースII型結晶からなるレーヨン繊維、キュプラ繊維に代表される再生セルロースも用いることができる。材料調達の容易さから木材系天然セルロースを原料とすることが好ましい。
セルロースの微細化方法も特に限定されないが、前述のグラインダーによる機械処理、TEMPO酸化処理等による化学処理の他、希酸加水分解処理や酵素処理などを用いても良い。また、バクテリアセルロースも微細化セルロース繊維として用いることができる。さらには各種天然セルロースを各種セルロース溶剤に溶解させたのち、電解紡糸することによって得られる微細再生セルロース繊維を用いても良い。
例えば特許文献3に記載の方法に従い、各種セルロースをグラインダー等により繰り返し処理して得られる微細化セルロースと金属を複合化すれば、金属微粒子と微細化セルロースとの複合体を得ることができる。しかし、繊維幅は10〜50nmと分布があるため、金属微粒子/微細化セルロース複合体を均質に再現性良く得るにはやや不向きである。
さらには物理解繊のみにより得られる微細化セルロースは、TEMPO等によって化学処理されたCSNFよりも分散性が劣るため、金属微粒子の分散性安定効果が十分に得られない可能性がある。
一方、特許文献4に記載の方法に従い、各種セルロースをTEMPO触媒酸化することにより得られるCSNFと金属を複合化した場合、CSNFの短軸径が3nm程度に揃うことから、均質な金属微粒子/微細化セルロース複合体を再現性良く得ることができる。
また、TEMPO酸化によって作製されたCSNFは、結晶表面に導入されたカルボキシ基同士の静電反発により分散性が高い。そのため、金属微粒子/CSNF複合体もCSNF部分の静電反発により分散安定性が高くなり、その結果金属微粒子同士の凝集が抑制される。
そのため、本複合体は分散性を保ったままで抗菌剤として長期にわたる使用が可能となる。さらに、本複合体は金属微粒子がCSNF表面にむき出しの状態で結合しており、剛直なCSNFが金属微粒子を覆ってしまうことがないため、高比表面積な状態で銀を利用することができる。そのため、従来よりも少ない量で十分な抗菌性を発揮することが可能となる。
以上の理由から、本発明で用いる微細化セルロースとしてはカルボキシ基が導入された微細化セルロース繊維が好ましく、価格および供給の面から木材をTEMPO酸化することで得られるCSNFがより好ましい。
<CSNF(セルロースシングルナノファイバー)の製造方法
本発明で用いられる木材由来のCSNFは、木材由来のセルロースを酸化する工程と、微細化し分散液化する工程と、により得られる。また、CSNFに導入されるカルボキシ基量は0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下が好ましく、0.5mmol/g以上3.0mmol/g以下がより好ましい。
カルボキシ基量が0.1mmol/g未満であると、セルロースミクロフィブリル間に静電的な反発が働かないため、セルロースを微細化して均一に分散させることは難しい。また、5.0mmol/gを超えると化学処理に伴う副反応によりセルロースミクロフィブリルが低分子化するため、高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造をとることができず、金属微粒子の表面がセルロースによって覆われてしまい、十分な抗菌性を発揮することができない。
<セルロースにカルボキシ基を導入する工程>
木材系天然セルロースとしては、特に限定されず、針葉樹パルプや広葉樹パルプ、古紙
パルプ、など、一般的に微細化セルロースの製造に用いられるものを用いること
ができる。精製および微細化のしやすさから、針葉樹パルプが好ましい。
木材由来のセルロースの繊維表面にカルボキシ基を導入する方法としては特に限定されない。例えば高濃度アルカリ水溶液中でセルロースをモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることによりカルボキシメチル化を行っても良く、オートクレーブ
中でガス化したマレイン酸やフタル酸等の無水カルボン酸系化合物とセルロースを直接反応させてカルボキシ基を導入しても良い。
さらには、水系の比較的温和な条件で、可能な限り構造を保ちながら、アルコール性一級炭素の酸化に対する選択性が高い、TEMPOをはじめとするN−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いた手法を用いてもよい。カルボキシ基導入部位の選択性および環境負荷の問題からTEMPO酸化がより好ましい。
前記N−オキシル化合物としては、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシラジカル)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、等が挙げられる。
その中でも、TEMPOが好ましい。N−オキシル化合物の使用量は、触媒としての量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して0.01〜5.0質量%程度である。
N−オキシル化合物を用いた酸化方法としては、木材系天然セルロースを水中に分散させ、N−オキシル化合物の共存下で酸化処理する方法が挙げられる。このとき、N−オキシル化合物と共に、共酸化剤を併用することが好ましい。
この場合、反応系内において、N−オキシル化合物が順次共酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩が生成し、該オキソアンモニウム塩によりセルロースが酸化される。かかる酸化処理によれば、温和な条件でも酸化反応が円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。
酸化処理を温和な条件で行うと、セルロースの結晶構造を維持しやすい。前記共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。
入手の容易さや反応性から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。前記共酸化剤の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1〜200質量%程度である。
前記N−オキシル化合物および共酸化剤と共に、臭化物およびヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよく、これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシ基の導入効率を改善することができる。
該化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましく、該化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1〜50質量%程度である。
前記酸化反応の反応温度は、4〜80℃が好ましく、10〜70℃がより好ましく、4℃未満であると、試薬の反応性が低下し反応時間が長くなってしまう。80℃を超えると副反応が促進して試料が低分子化して高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造が崩壊し、金属微粒子の表面がセルロースによって覆われてしまい、十分な抗菌性を発揮することができない。前記酸化処理の反応時間は、反応温度、所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、通常、10分〜5時間程度である。
前記酸化反応時の反応系のpHは、9〜11が好ましく、pHが9以上であると反応を効率よく進めることができ、pHが11を超えると副反応が進行し、試料の分解が促進されてしまうおそれがある。
前記酸化処理においては、酸化が進行するにつれて、カルボキシ基が生成することにより系内のpHが低下してしまうため、酸化処理中、反応系のpHを9〜11に保つことが好ましい。反応系のpHを9〜11に保つ方法としては、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
前記N−オキシル化合物による酸化反応は、反応系にアルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHは前記の範囲内に保つことが好ましく、添加するアルコールとしては、反応をすばやく終了させるためメタノール、エタノール、プロパノールなどの低分子量のアルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性などから、エタノールが特に好ましい。
酸化処理後の反応液は、そのまま微細化工程に供してもよいが、N−オキシル化合物等の触媒、不純物等を除去するために、反応液に含まれる酸化セルロースを回収し、洗浄液で洗浄することが好ましい。
酸化セルロースの回収は、ガラスフィルターや20μm孔径のナイロンメッシュを用いたろ過等の公知の方法により実施できる。酸化セルロースの洗浄に用いる洗浄液としては純水が好ましい。
<セルロースを微細化し分散液化する工程>
セルロースを微細化する方法としてはまず、セルロースに水性媒体を加えて懸濁させる。水性媒体としては、前記と同様のものが挙げられ、水が特に好ましい。必要に応じて、セルロースや生成するCSNFの分散性を上げるために、懸濁液のpH調整を行ってもよい。
pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、前記酸化工程の説明で挙げたアルカリ水溶液と同様のものが挙げられる。続いて該懸濁液に物理的解繊処理を施して、セルロースを微細化する。物理的解繊処理としては、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突などの機械的処理が挙げられる。
このような物理的解繊処理を例えば前記TEMPO酸化セルロースに行うことで、懸濁液中のセルロースが微細化され、繊維表面にカルボキシ基を有するCSNFの分散液を得ることができる。この時の物理的解繊処理の時間や回数により、得られるCSNF分散液に含まれるCSNFの数平均短軸径および数平均長軸径を調整できる。
上記のようにして、カルボキシ基が導入されたCSNF分散体が得られる。得られた分散体は、そのまま、または希釈、濃縮等を行って、金属微粒子を還元析出させる反応場として用いることができる。
前記CSNF分散体は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロースおよびpH調整に用いた成分以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分としては、特に限定されず、該木材CSNFの用途等に応じて、公知の添加剤の中から適宜選択できる。
具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、消泡剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、架橋剤、等が挙げられる。
続いて、金属微粒子とCSNFとの複合体を作製する工程について説明する。なお、本発明は下記例に制限されない。
<金属微粒子/微細化セルロース複合体を製造する工程>
銀ナノ粒子は多菌種に対し抗菌性を有しながらも人体に対し不活性であることから、保存性、安全性の良好な組成物を得ることができる。前記木材由来のCSNFと複合化する金属種としては複数の金属種を用いても良く、銀以外の金属種としては特に限定しないが、例えば白金やパラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素の他、金、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属、金属塩、金属錯体およびこれらの合金、または酸化物、複酸化物等が挙げられる。
木材由来のCSNF分散液中に金属微粒子を析出させ複合体を製造する方法としては、特に限定しないが、銀をはじめとする前記金属または合金、酸化物、複酸化物等の溶液とCSNF分散液を混合した状態で、還元剤を添加すれば容易に析出させることができる。
銀の場合、還元を行う際に用いる銀イオンを含む水溶液の種類には特に制限はないが、入手の容易さと取り扱い易さの点から好ましい。用いる還元剤に関しても特に限定はなく、例えばアスコルビン酸、クエン酸、ヒドロキノン、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン等が用いられるが、安全性や価格の面からアスコルビン酸、クエン酸、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
前記木材由来のCSNFの分散に用いる溶媒は、50%以上の水を含み、水以外の溶媒としては親水性溶媒が好ましい。水の割合が50%以下になると木材由来のCSNFの分散が阻害され、金属微粒子と木材由来のCSNFの均一な複合体形成が難しくなる。親水性溶媒については特に制限はないが、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類が好ましい。
調製に用いるCSNFの分散液の濃度は特に限定しないが、0.0001%以上20%未満が好ましい。0.0001%未満では溶媒過多となってしまうため生産性が低下し、20%以上では微細化セルロース繊維同士の絡み合いで粘度が急激に上昇し、均一な複合体形成が難しくなる。
同様に用いる金属イオンを含む溶液の金属イオン濃度も限定しないが、分散液中の金属イオン量がCSNF表面に存在するカルボキシ基量未満となるように調製することが好ましい。分散液中の金属イオン量がCSNF表面に存在するカルボキシ基量を上回ってしまうとCSNFが凝集してしまうためである。
こうして得られた前記金属微粒子/微細化セルロース複合体を含む切り花延命剤は、少なくとも銀を含む1種類以上の金属またはそれらの化合物からなる金属微粒子と微細化されたセルロース繊維との複合体を含む切り花延命剤であって、該微細化セルロース繊維表面に該金属微粒子が物理的に結合して不可分の状態にあることを特徴とする、カーボンニュートラルな新規有機無機ハイブリッド材料を含む切り花延命剤である。
さらに該金属微粒子/微細化セルロース複合体は、製造が簡単でかつ安全に合成でき、なおかつ沈降しにくく長期的に抗菌性を維持可能なため、本発明の切り花延命剤は従来よりも少ない銀の量で高い抗菌性を有する抗菌成分を含む切り花延命剤として産業利用が可能である。
また、本発明の切り花延命剤は前記金属微粒子/微細化セルロース複合体を含んでいればよく、その提供方法は特に限定されない。例えば分散液の他、成型体として提供することも可能である。具体的には前記金属微粒子/微細化セルロース複合体の分散液から分散媒を除去し、成型体とした上で提供することができる。
成型体としての形状は特に限定されないが、粉体状、錠剤状、シート状が取り扱い易さの面から好ましい。例えば分散液をシート状基材に塗布してから、乾燥によって分散媒を除去したのち基材より剥離することによって、シート状切り花延命剤として提供することができる。
シート状切り花延命剤であれば、シート単位で、あるいはその一部を切り取って所定容量の花瓶の水に対して加えることによって、所望の希釈倍率になるように切り花延命剤を用いることができ、簡便である。シート状切り花延命剤は水中での水解を促進するための再分散剤を含んでも良い。再分散剤としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコールなどを用いることが可能である。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。以下の各例において、「%」は、特に断りのない限り、質量%(w/w%)を示し、「ppm」、「ppb」に関しても同様に質量基準とする。
<実施例1>
<金属微粒子/微細化セルロース複合体を含む切り花延命剤の製造例>
<木材セルロースのTEMPO酸化>
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。
セルロースの重量に対して、水酸化ナトリウムの添加量の合計が3.50mmol/gに達した時点で、約100mLのエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて蒸留水によるろ過洗浄を繰り返し、酸化パルプを得た。
<酸化パルプのカルボキシ基量測定>
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプおよび再酸化パルプを固形分重量で0.1g量りとり、1%濃度で水に分散させ、塩酸を加えてpHを2.5とした。その後0.5M水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により、カルボキシ基量(mmol/g)を求めた。結果は1.6mmol/gであった。
<酸化パルプの解繊処理>
前記TEMPO酸化で得た酸化パルプ1gを99gの蒸留水に分散させ、ジューサーミキサーで30分間微細化処理し、CSNF濃度1%のCSNF水分散液を得た。該CSN
F水分散液に含まれるCSNFの数平均短軸径は3nm、数平均長軸径は1110nmであった。また、レオメーターを用いて定常粘弾性測定を行ったところ、該CSNF分散液はチキソトロピック性を示した。
<硝酸銀水溶液の調製>
硝酸銀16.41mgを蒸留水10mLに溶解させ、硝酸銀水溶液を調製した。
<水素化ホウ素ナトリウム水溶液の調製>
水素化ホウ素ナトリウム50mgを蒸留水10mLに溶解させ、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を調製した。
<金属微粒子/微細化セルロース複合体の作製>
前記1%CSNF水分散液50gを温度一定(25℃)に保ち攪拌しながら前記硝酸銀水溶液0.1mLを添加した。5分攪拌を続けたのち、前記水素化ホウ素ナトリウム水溶液を2mL添加し、さらに60分ほど攪拌を続けることによって銀ナノ粒子/微細化セルロース複合体を含む分散液を作製した。
<金属微粒子/微細化セルロース複合体の形状観察>
前記銀ナノ粒子/微細化セルロース複合体の水分散液をTEM観察用カーボン支持膜付銅グリッド上にキャストして風乾し、走査透過型電子顕微鏡(日立ハイテク社製、S−4800)を用いて該切り花延命剤中に含まれる銀ナノ粒子/微細化セルロース複合体を観察した。結果を図1に示す。その結果、銀ナノ粒子がCSNF表面に結合して複合体となっている様子が確認された。該CSNF表面に付着している銀ナノ粒子の直径は数nm程度であった。
<金属微粒子/微細化セルロース複合体の分光透過スペクトル測定>
前記銀ナノ粒子/微細化セルロース複合体の水分散液を光路長1cmの石英セルに入れ、分光光度計(島津製作所社製、UV−3600)を用いて分光透過スペクトルの測定を行った結果を図2に示した。分光透過スペクトルにおいて、波長約400nmに銀ナノ粒子の表面局在プラズモン共鳴に由来する共振ピークが確認され、CSNFとの複合化により銀ナノ粒子が安定して分散状態を維持していることが確認された。
<切り花延命剤Aの作製>
前記銀ナノ粒子/微細化セルロース複合体の水分散液をそのまま切り花延命剤Aとして用いた。
<切り花延命剤の鮮度保持効果検証実験>
切り花延命剤の鮮度保持効果検証実験の切り花サンプルとして薔薇を用いた。サンプルの薔薇は園芸店にて蕾の状態で採花された薔薇を5本用いた。切り花延命剤Aを水道水で2000倍希釈して1000mLとしたものを試験液とし、2L容量のPET容器に入れた。前記試験液中で5本の薔薇を斜め約45度の角度で水切りし、切り花の鮮度保持状態の経過を観察した。なお、鮮度保持日数は花びらの萎れまたは花びらの変色が確認されるまでの日数と定義した。鮮度保持日数は5本の薔薇の平均値とした。
<実施例2>
実施例1において、切り花延命剤Aを水道水で1000倍希釈して1000mLとした
以外は、実施例1と同様の条件で切り花の鮮度保持状態の経過を観察した。
<実施例3>
実施例1において、切り花延命剤Aを水道水で200倍希釈して1000mLとした以外は、実施例1と同様の条件で切り花の鮮度保持状態の経過を観察した。
<実施例4>
切り花延命剤Bを用いた以外は、実施例1と同様の条件で切り花の鮮度保持状態の経過を観察した。
<切り花延命剤Bの作製>
また、該切り花延命剤A100gに対し、酸化パルプの解繊処理によって得た前記1%CSNF分散液を新たに100g加え混合液とし、混合液を底面積100cmのスチロール角容器にキャストし風乾によって水分を除去したところ、シート面積100cmのシート状成型体を得た。
該シート状成型体を切り花延命剤Bとし、切り花延命剤Bをシート面積50cm分に相当する大きさに鋏で切り取り、水道水1000mL中に投入したものを試験液とし、2L容量のPET容器に入れた。前記試験液中で5本の薔薇を斜め約45度の角度で水切りし、切り花の鮮度保持状態の経過を観察した。なお、鮮度保持日数は花びらの萎れまたは花びらの変色が確認されるまでの日数と定義した。鮮度保持日数は5本の薔薇の平均値とした。
<比較例1>
実施例1において、切り花延命剤Aを用いず、水道水1000mLのみで実験を行ったこと以外は、実施例1と同様の条件で切り花の鮮度保持状態の経過を観察した。
<比較例2>
実施例1において、切り花延命剤Aの代わりに3.15ppmの硝酸銀水溶液を2000倍希釈して1000mLとしたものを試験液として用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で切り花の鮮度保持状態の経過を観察した。
観察結果を表1に示す。
実施例1〜4および比較例1、2の試験結果を表1に示し、実施例1における薔薇の開花および鮮度保持検証実験の様子は参考図として観察写真を図3に示した。
実施例1〜3の結果から、驚くべきことに、切り花延命剤Aは銀濃度が1〜10ppbという低濃度であるにもかかわらず、比較例1と比較において明瞭な鮮度保持期間延長効果が認められた。
なお、追実験において、切り花延命剤Aを銀濃度20ppbおよび100ppbとなるように用いたところ、銀の薬害が認められた。ここで言う銀の薬害とは、薔薇が蕾の状態から全く開花せず、直ちに萎えてしまう現象を指す。特許文献2においてはコア‐シェル型ナノ構造体のシェル部分が粒子状で、このシェル部分に銀を含有する構造の複合組成物粒子を抗菌成分として用いられているが、該複合組成物粒子を用いた場合の適切な銀濃度は16乃至160ppbとされている。すなわち、本発明における切り花延命剤は既報に比較してより少ない銀の使用量でも十分に切り花の延命効果を発揮することが判明した。
このメカニズムとしては定かではないが、本発明の切り花延命剤に含まれる銀ナノ粒子/CSNF複合体は、もともと植物の構成単位であるCSNFに銀ナノ粒子が付着した状態で利用される。このため、導管から植物体に取り込まれた際に、植物体に対するCSNFの親和性が高いため、該複合体が植物体の組織内部にまで取り込まれる可能性が考えられる。
その結果、植物体の隅々まで行き渡った銀ナノ粒子/CSNF複合体から徐放的に銀イオンが放出されるため、より少ない銀濃度でも高い効果を発現したものと推察される。
また、実施例4においては、切り花延命剤Aを用いた際には薬害が生じた銀濃度であるにもかかわらず、鮮度保持日数の延長効果が確認された。これは本発明においてはCSNFをさらに添加してシート化した切り花延命剤Bを用いたためであると考えられる。
すなわち、試験液内に過剰に放出された銀イオンが新たに添加されたCSNFの表面に存在するカルボキシ基に配位することによって、試験液中の銀イオン濃度が最適範囲に維持されたためであると推察している。このように、CSNFをさらに添加することによって、銀イオンの過剰な放出を抑制することも可能になると考えられる。
一方、比較例1、2においては、実施例1〜4に比較して鮮度保持期間が短いことが判明した。比較例1においては特に抗菌成分を用いていないため、試験液中のバクテリアなどの増殖により薔薇の鮮度が損なわれたと考えられる。
一方、比較例2においては硝酸銀が銀イオン放出源として期待されたにもかかわらず、鮮度保持期間の延命は認められなかった。理由は定かではないが、CSNFに担持された銀ナノ粒子から銀イオンが徐放的に供給される状態と異なり、単独の反応性銀イオンのみでは十分な抗菌性が得られなかった可能性がある。
本発明によれば切り花延命剤として、金属微粒子と微細化セルロースからなる複合体を用いることによって、その他の分散剤を用いることなく安定して分散可能で抗菌性の高い切り花延命剤が提供可能となる。
また、該複合体を含む切り花延命剤は従来よりも少量の銀で高い抗菌性を発揮することができるため、材料コスト的にも優位である。さらに本発明の切り花延命剤は分散液の状態だけではなく成型体の状態でも提供可能な、汎用性の高い切り花延命剤である。

Claims (16)

  1. 1種類以上の金属、又は前記金属の化合物により形成した金属微粒子と、
    1種類以上の木材由来の微細化セルロースとを複合化した複合体を含有し、
    前記微細化セルロースの数平均短軸径が1nm以上100nm以下、数平均長軸径が50nm以上、かつ数平均長軸径が数平均短軸径の10倍以上であることを特徴とする切り花延命剤。
  2. 前記金属微粒子と前記微細化セルロースとの複合化が、結合した不可分の状態であることを特徴とする請求項1に記載の切り花延命剤。
  3. 前記金属微粒子が、銀を含有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切り花延命剤。
  4. 前記微細化セルロースが、結晶表面にカルボキシ基を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の切り花延命剤。
  5. 前記カルボキシ基の含有量が、セルロース1g当たり0.1mmol以上5.0mmol以下であることを特徴とする請求項4に記載の切り花延命剤。
  6. 前記微細化セルロースが結晶構造をとり、その結晶構造がセルロースI型であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の切り花延命剤。
  7. 前記微細化セルロースの形状が、天然セルロースのミクロフィブリル構造由来の繊維状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の切り花延命剤。
  8. 前記微細化セルロースと前記金属微粒子の複合体を、水または有機溶媒中に分散させたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の切り花延命剤。
  9. 請求項8に記載の切り花延命剤から分散媒を除去し、成形体としたことを特徴とする切り花延命剤。
  10. 請求項9に記載の成形体をシート状にしたことを特徴とする切り花延命剤。
  11. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の切り花延命剤の製造方法であって、
    微細化セルロースを調製する工程、
    前記微細化セルロースを溶媒中に分散させ微細化セルロース分散液を調整する工程、
    前記微細化セルロース分散液に金属イオンを含有する溶液を混合し、混合溶液を調整する工程、
    前記混合溶液中の前記金属イオンを還元して微細化セルロース表面上に金属微粒子を成長させ、前記金属微粒子と前記微細化セルロースとを複合化し複合体とする工程からなることを特徴とする切り花延命剤の製造方法。
  12. 前記金属イオンが、銀イオンであることを特徴とする請求項11に記載の切り花延命剤の製造方法。
  13. 前記微細化セルロースを、繊維状の微細化セルロースとする工程を含むことを特徴とする請求項11または請求項12に記載の切り花延命剤の製造方法。
  14. 前記微細化セルロースの結晶表面にカルボキシ基を導入する工程を含むことを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載の切り花延命剤の製造方法。
  15. 前記カルボキシ基を導入する工程に、N−オキシル化合物による酸化反応を用いたことを特徴とする請求項14に記載の切り花延命剤の製造方法。
  16. 前記カルボキシ基を導入する工程における、カルボキシ基の導入量が、セルロース1g当たり0.1mmol以上5.0mmol以下であることを特徴とする請求項14または請求項15に記載の切り花延命剤の製造方法。
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