JP7008606B2 - フェライト用粉末ならびにMnZn系フェライトおよびその製造方法 - Google Patents
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そこで、かかるSiやPを低減するために、酸化鉄の原料である酸洗廃液の段階でSiやPを不溶化して、濾過あるいは沈降分離して除去する方法が用いられている。
しかしながら、工業レベルで製造されるフェライト用粉末の場合、上述したように、Si、Pと供にAl、Crも100質量ppm以下に除去される。そのため、SiやPの含有が抑制される一方、AlやCrを含有するフェライト用原料は市販されていない。
すなわち、従来の精製法でSi、P、AlおよびCrを除去した塩化鉄溶液を作製し、この塩化鉄溶液に、所定量の塩化アルミニウム溶液、塩化クロム溶液を添加する。次いで、かかる塩化鉄溶液を高温焙焼することで、SiとPの含有量が低く、AlとCrを所定量含有するフェライト用粉末を作製した。
このフェライト用粉末を用いてMnZn系フェライトコアを試作し、そのフェライトコアの初透磁率μi(以下本明細書において単にμiとも記す)を調べた。その結果、従来のAlとCrの含有量が低い酸化鉄粉末を用いた場合に比べて、AlとCrを所定量含有するフェライト用粉末を用いた方が、より高い初透磁率が得られることを見出した。
しかしながら、Al2O3やCr2O3の形態で酸化鉄粉末に添加した場合は、フェライトの結晶粒内への固溶の均一性が不十分だったり、粒内および粒界に及ぼす残留応力の影響が残ったりするなどして、十分な磁気特性の改善効果が得られないことがわかった。
以上の知見をもとに、本発明を完成するに至った。
1.フェライト用の粉末であって、
SiO2の含有量が120質量ppm以下、
Pの含有量が10質量ppm以下、
Clの含有量が0.1質量%以下、
Alの含有量が150質量ppm超400質量ppm未満、
およびCrの含有量が150質量ppm超400質量ppm以下、
残部はFe2O3および不可避不純物であることを特徴とするフェライト用粉末。
MnO:20~35mol%、
ZnO:15~25mol%および
残部がFe2O3であり、
前記副成分が
CaO:500質量ppm以下、
SiO2:150質量ppm以下であることを特徴とする前記3に記載のMnZn系フェライトの製造方法。
ZnO:15~25mol%および
残部がFe2O3である基本成分と、
CaO:500質量ppm以下、
SiO2:150質量ppm以下、
Al:105質量ppm超、280質量ppm以下、
Cr:105質量ppm超、280質量ppm以下と不可避的不純物からなるMnZn系フェライトであって、
前記不可避的不純物中のPの含有量を、
P:7質量ppm以下に抑制し、
100kHz、30℃での初透磁率が10000以上であることを特徴とするMnZn系フェライト。
また、本発明のフェライト用粉末を原料粉末として用いると、高い初透磁率を有するMnZn系フェライトを製造することができる。
本発明は、フェライト用粉末であって、SiO2の含有量が120質量ppm以下、Pの含有量が10質量ppm以下、Clの含有量が0.1質量%以下、Alの含有量が150質量ppm超400質量ppm未満、およびCrの含有量が150質量ppm超400質量ppm以下、残部はFe2O3および不可避不純物であることを特徴とする。
すなわち、Al:150質量ppm超400質量ppm未満(好ましくは155~395質量ppm)、Cr:150質量ppm超400質量ppm以下(好ましくは155~390質量ppm)である。
AlあるいはCrが上記範囲を満足しない場合、周波数:100kHzという従来以上の極めて高い周波数では十分な初透磁率の改善効果が得られないからである。特に、Crの含有量が上記範囲を満足しない場合には、初透磁率の温度特性が変動して室温付近の初透磁率が低下してしまう。また、Alの含有量が上記範囲を満足しない場合には、結晶組織が不均一になりやすく初透磁率の値がばらつきやすいという不利益が招来する。
すなわち、SiO2の含有量:120質量ppm以下(好ましくは80質量ppm以下、さらに好ましくは50質量ppm以下)、Pの含有量:10質量ppm以下(好ましくは7質量ppm以下、さらに好ましくは4質量ppm以下)、Clの含有量:0.1質量%以下(好ましくは800質量ppm以下、さらに好ましくは600質量ppm以下)である。
SiO2、PおよびClが上記範囲を満足しない場合、例えAlやCrを所定量含有していたとしても、上述したような高い初透磁率が得られないからである。
フェライト用粉末の平均粒径が上記範囲から外れると、上述したような高い初透磁率が得られにくくなるからである。
なお、上記平均粒径は、公知の平均粒径測定法を用いて測定することができるが、例えば、空気透過法を用いて測定することができる。
フェライトの原料となる粉末は、薄鋼板表面を塩酸酸洗した廃液から塩酸を回収する際に副生する酸化鉄が利用される。そのため、鋼板中の不純物や工業用水中の不純物が多量に混入している。
そこで、本発明では、これら不純物を除去してフェライト原料に用いることができる組成とするため、例えば、前記特許文献1や特許文献2に記載の方法を、これら不純物除去に用いることができる。すなわち、前記特許文献1や特許文献2に記載の方法を用いてSi、P、Al、CrおよびTi等を除去した精製廃酸を作製する。そして、かかる精製廃酸に対して所定量の塩化アルミニウム溶液、塩化クロム溶液を添加し、所定のAl、Crを含有した廃酸を作製する。さらに、該廃酸を噴霧焙焼することで本発明に従うフェライト用粉末を得ることができる。
また、本発明では、AlおよびCrが結晶粒界に偏析しにくいため、粒界の残留応力が抑制され、周波数:100kHzという極めて高い周波数でも高い初透磁率を得ることができると考えられる。
上記した本発明に従うフェライト用粉末をFe源として、さらにMn源であるMn含有粉末およびZn源であるZn含有粉末を混合してから、仮焼し、次いで所定形状に成形して成形体とし、さらに該成形体を焼成することによって、高い初透磁率を有するMnZn系フェライトを得ることができる。
さらに、Mn酸化粉末(MnO)、Zn酸化粉末(ZnO)としては、焼成により、この形態に変わることのできる他の形態の酸化物や、炭酸塩などの化合物を使用することができる。
なお、Mn含有粉末は、Mn3O4、MnCO3などでも良い。
MnO:20.0~35.0mol%
ZnO:15.0~25.0mol%
Fe2O3:残部であり、好ましくはFe2O3:51.0~54.0mol%である。
ここで、MnOあるいはZnOは、上記範囲を超えると、スピネルの化学組成の変化により初透磁率が大幅に低下するおそれがある。
また、Fe2O3の原材料として、前記段落[0020]に記載のフェライト用粉末を用いることが好ましい。
また、前記不可避的不純物中のPの含有量は、P:7質量ppm以下に抑制する必要がある。
本発明のMnZn系フェライトは、CaOの含有量を500質量ppm以下に制限する必要がある。CaOの含有量が500質量ppm超になると結晶成長が抑制され、初透磁率が低下するからである。なお、CaOの含有量の下限値に特に限定はないが、工業的には10質量ppm程度である。
本発明のMnZn系フェライトは、SiO2の含有量を150質量ppm以下に制限する必要がある。SiO2の含有量が150質量ppm超になると、異常粒成長が生じやすくなり、初透磁率が低下するからである。なお、SiO2の含有量の下限値に特に限定はないが、工業的には20質量ppm程度である。
本発明のMnZn系フェライトは、Alの含有量を105質量ppm超に限定する必要がある。Alの含有量が105質量ppm以下になると、初透磁率が低下するからである。一方、Alの含有量の上限値は280質量ppmに限定される。Alの含有量が280質量ppm超になると、結晶組織が不均一になり、初透磁率が低下するからである。なお、好ましくは108~275質量ppmの範囲である。
本発明のMnZn系フェライトは、Crの含有量を105質量ppm超に限定する必要がある。Crの含有量が105質量ppm以下になると、初透磁率が低下するからである。一方、Crの含有量の上限値は280質量ppmに限定される。Crの含有量が280質量ppm超になると初透磁率の温度特性が変化し、製品規格から外れるからである。なお、好ましくは108~275質量ppmの範囲である。
本発明のMnZn系フェライトは、不可避的不純物中のPの含有量を7質量ppm以下に抑制する必要がある。Pの含有量が7質量ppm超になると、結晶組織が不均一になり初透磁率が低下するからである。なお、好ましくは5質量ppm以下、さらに好ましくは3質量ppm以下である。また、Pの含有量の下限値に特に限定はないが、工業的には1質量ppm程度である。
本発明のMnZn系フェライトは100kHz、30℃での初透磁率が10000以上である。これは、効率よくノイズを除去するためである。
なお、上記初透磁率は、LCRメータを用い、100kHz、30℃の条件で測定することができる。
特に、酸化カルシウムであれば500質量ppm以下、二酸化ケイ素であれば前記フェライト用粉末中のものと併せて150質量ppm以下含有させるのが好ましい。さらには、酸化カルシウム、二酸化ケイ素に加えて、酸化ビスマス、酸化インジウム、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化スズおよび酸化モリブデンのうち少なくとも一種を含有させ、これら副成分の合計量を300質量ppm以下とするのが好ましい。
製鉄所内で発生した鋼板酸洗廃酸を出発原料とし、スクラップ(製鉄所内発生の冷延鋼板スクラップ片)を理論消費量の5倍以上で充填したバッチ式の溶解槽において、充填物を温度90℃で2.5時間撹拌して、鋼板酸洗廃酸中の遊離塩酸を中和した。かかる中和中、槽内の液温を70~80℃に保ちながら、1.5~2時間、空気を液中に分散させた。さらに、かかる分散後の溶液にアンモニア水を添加し、空気酸化によるpH低下を防止あるいは任意のpH値にコントロールして溶液中のFe分の2~4質量%を沈澱として析出するようにした。次いで、高分子凝集剤を撹拌添加した後、静置して沈降分離し、清澄液を得た。この清澄液のSiO2、P、AlおよびCrの含有量を高周波プラズマ発光分光分析装置で分析したところ、かかる清澄液から得られるフェライト用粉末ベースの含有量でSiO2=40質量ppm、P=3質量ppm、Al=30質量ppm、Cr=3質量ppmであった。
この原料粉体にバインダーを加え、目開き500μmの篩を通して造粒し、リング型試料を成形した。その後、電気炉を用いて、酸素分圧を制御した雰囲気中で1340℃×3時間の条件で焼成して、外径31mm、内径19mm、高さ7mmのMnZn系フェライトコアを得た。
比較例1として、塩化アルミニウム溶液および塩化クロム溶液を添加しない清澄液を発明例と同様の方法で噴霧焙焼した酸化鉄を用いてMnZn系フェライトコアを作製した。
比較例2~6では、本発明のAl、CrおよびClのいずれかの範囲を超える酸化鉄を上記発明例と同様の方法で試作して、上記と同様の手順でMnZn系フェライトコアを作製した。なお、比較例6のみ、酸化鉄を噴霧焙焼した後の水洗を省略した。
比較例7~9では、本発明のSiO2、PおよびClのいずれかの範囲を満足しない市販の工業用酸化鉄を用いて、上記と同様の手順でMnZn系フェライトコアを作製した。
比較例10~12では、市販の高純度酸化鉄を用いて、フェライトコア中のAl、Cr含有量が発明例5とほぼ同量となるように、フェライトコアの作製工程でAl2O3や、Cr2O3を添加し、以降は上記と同様の手順でMnZn系フェライトコアを作製した。
表1および表2から、本発明に従うフェライト用粉末を用いることで、Al、Crを添加しない比較例1のμi=9880に比べて高いμiを実現できることが分かる。
すなわち、本発明に従うSiO2、PおよびClの含有量で、かつ所定量のAlおよびCrを含有するフェライト用粉末を用いることで、従来のMnZn系フェライトと同様の設備および方法で、μiの高いMnZn系フェライトコアを作製することができることが分かる。
Claims (6)
- フェライト用の粉末であって、
SiO2の含有量が120質量ppm以下、
Pの含有量が10質量ppm以下、
Clの含有量が0.1質量%以下、
Alの含有量が150質量ppm超400質量ppm未満、
およびCrの含有量が150質量ppm超400質量ppm以下、
残部はFe2O3および不可避不純物であることを特徴とするフェライト用粉末。 - 請求項1に記載のフェライト用粉末とMn含有粉末とZn含有粉末とを含む基本成分を混合し、仮焼した後、成形して焼成することを特徴とするMnZn系フェライトの製造方法。
- 前記仮焼を施した後に、さらに副成分を添加、成形して焼成することを特徴とする請求項2に記載のMnZn系フェライトの製造方法。
- 前記MnZn系フェライトは、前記基本成分が、
MnO:20~35mol%、
ZnO:15~25mol%および
残部がFe2O3であり、
前記副成分が
CaO:500質量ppm以下、
SiO2:150質量ppm以下、
Al:105質量ppm超、280質量ppm以下、
Cr:105質量ppm超、280質量ppm以下であって、
その他、不可避的不純物からなることを特徴とする請求項3に記載のMnZn系フェライトの製造方法。 - 前記不可避的不純物中のPの含有量をP:7質量ppm以下に抑制したことを特徴とする請求項4に記載のMnZn系フェライトの製造方法。
- MnO:20~35mol%、
ZnO:15~25mol%および
残部がFe2O3である基本成分と、
CaO:500質量ppm以下、
SiO2:150質量ppm以下、
Al:105質量ppm超、280質量ppm以下、
Cr:105質量ppm超、280質量ppm以下と不可避的不純物からなるMnZn系フェライトであって、
前記不可避的不純物中のPの含有量を、
P:7質量ppm以下に抑制し、
100kHz、30℃での初透磁率が10000以上であることを特徴とするMnZn系フェライト。
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