JP7006428B2 - モータ制御装置 - Google Patents
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Description
本発明は、モータ制御装置に関する。
従来、インバータにより3相交流モータに電力供給するモータ制御装置において、インバータの1相以上のスイッチング素子の短絡故障発生時に、短絡している相数を判定し、短絡相数によって異常時処置を選択する技術が知られている。
例えば特許文献1に開示された短絡相特定方法は、スムージング処理で得られた信号の絶対値を取り、常に正電流値として取り出した値を「なまし絶対値」と定義する。また、スムージング処理に用いる信号を絶対値としてスムージングして取り出した値を「絶対なまし値」と定義する。そして、「絶対なまし値」と「なまし絶対値」との差分電流値を用いて1相短絡、2相短絡及び3相短絡を電流レベルで判定する。
また、特許文献2に開示された電動機システムは、3相交流モータの逆起電力によって発生する3相交流電流の全てがゼロクロスする場合に3相短絡と判定し、2相の交流電流がゼロクロスする場合に2相短絡と判定し、3相交流電流の全てがゼロクロスしない場合に1相短絡と判定する。
特許文献1の技術では、電流センサのばらつきによるオフセットずれの影響により1相短絡であるか、2相又は3相の複相短絡であるかの識別を誤るおそれがある。また、特許文献2の技術では、電流センサのばらつきによるオフセットずれや電流検出値に重畳するノイズの影響によりゼロクロス判定を誤るおそれがある。
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、電流センサのばらつきによるオフセットずれやノイズの影響を受けることなく、1相短絡と複相短絡とを識別可能なモータ制御装置を提供することにある。
本発明は、3相上下アームの複数のスイッチング素子(61-66)がブリッジ接続されたインバータ(60)により、直流電源からの直流電力を3相交流電力に変換してモータ(80)に供給するモータ制御装置である。このモータ制御装置は、短絡発生検出部(43)と、相電流ピーク値取得部(44)と、短絡相数判定部(45)と、を備える。
短絡発生検出部は、インバータにおいて、1相以上のスイッチング素子の短絡が発生したことを検出する。相電流ピーク値取得部は、モータの電気1周期以上の期間における相電流の検出値又は推定値に基づき、各相の電流最大値及び電流最小値を取得する。短絡相数判定部は、短絡発生検出部によりインバータの短絡発生が検出されたとき、各相の電流最大値及び電流最小値に基づいて、インバータの短絡が1相短絡であるか、2相又は3相の複相短絡であるかを識別する「短絡相数判定処理」を実行する。
短絡相数判定部は、短絡相数判定処理において、3相のうち任意の1相である特定相の電流最小値が他の2相の電流最大値より大きい場合、又は、特定相の電流最大値が他の2相の電流最小値より小さい場合、特定相の1相短絡であると判定し、1相短絡以外の場合、複相短絡であると判定する。
本発明は、1相短絡時に、特定相の電流振幅範囲と他の2相の電流振幅範囲とが互いに重ならず分離することに注目し、各相の電流最大値及び電流最小値を比較して1相短絡と複相短絡とを識別する。絶対値の算出やゼロクロス判定を伴う特許文献1、2の従来技術では、ゼロ基準値のオフセットずれやノイズの影響により短絡相数の識別を誤るおそれがある。それに対し本発明では、基準値との比較を用いず、各相の電流値同士の大小関係を比較することで、電流センサのばらつきによるオフセットずれやノイズの影響を受けることなく、1相短絡と複相短絡とを適切に識別することができる。
以下、モータ制御装置の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。第1~第4実施形態を包括して「本実施形態」という。本実施形態のモータ制御装置は、ハイブリッド自動車又は電気自動車の動力源であるモータジェネレータ(以下「MG」)を駆動するシステムにおいてMGの通電を制御する装置である。実施形態の「MG」及び「MG制御装置」は、「モータ」及び「モータ制御装置」に相当する。
[システム構成]
まず、各実施形態のMG制御装置が適用されるMG駆動システムの全体構成について、図1を参照して説明する。MG駆動システム90は、充放電可能な二次電池であるバッテリ11の直流電力をインバータ60で3相交流電力に変換してMG80に供給するシステムである。なお、MG制御装置40は、バッテリ11の電圧を昇圧してインバータ60に出力するコンバータを備えたモータ駆動システムに適用されてもよい。
まず、各実施形態のMG制御装置が適用されるMG駆動システムの全体構成について、図1を参照して説明する。MG駆動システム90は、充放電可能な二次電池であるバッテリ11の直流電力をインバータ60で3相交流電力に変換してMG80に供給するシステムである。なお、MG制御装置40は、バッテリ11の電圧を昇圧してインバータ60に出力するコンバータを備えたモータ駆動システムに適用されてもよい。
バッテリ11は、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池により構成される。バッテリ11の正極は、高電位ラインLpに接続され、バッテリ11の負極は、低電位ラインLnに接続される。バッテリ11とインバータ60との間には、電力経路を遮断可能な電源リレー20が設けられている。図1の電源リレー20は、高電位ラインLpを遮断可能なリレー21、及び、低電位ラインLnを遮断可能なリレー22を含む。インバータ60のバッテリ11側には、入力電圧を平滑化するコンデンサ15が設けられる。
インバータ60は、3相上下アームの6つのスイッチング素子61-66がブリッジ接続されている。スイッチング素子61、62、63は、それぞれU相、V相、W相の上アームのスイッチング素子であり、スイッチング素子64、65、66は、それぞれU相、V相、W相の下アームのスイッチング素子である。スイッチング素子61-66は、例えばIGBTで構成され、低電位側から高電位側へ向かう電流を許容する還流ダイオードが並列に接続されている。通常制御時、インバータ60は、MG制御装置40のインバータ操作部41から指令されるスイッチング信号(図中「SW信号」)に従ってスイッチング素子61-66が動作し、バッテリ11からの直流電力を3相交流電力に変換する。
本実施形態では、1相以上のスイッチング素子61-66の短絡故障が発生した状況を想定する。以下、1相の上アーム又は下アームのスイッチング素子の短絡を「1相短絡」といい、2相又は3相の上アーム又は下アームのスイッチング素子の短絡を「複相短絡」という。また、1相の上アームのスイッチング素子の短絡を「上アームの1相短絡」といい、1相の下アームのスイッチング素子の短絡を「下アームの1相短絡」という。
MG80は、例えば永久磁石式同期型の3相交流モータである。MG80は、力行動作によりトルクを発生する電動機、及び、駆動輪やハイブリッド自動車のエンジンから伝達されるトルクにより回生電力を発電する発電機として機能する。図1には、MG80の3相巻線81、82、83がスター結線される構成を例示しているが、デルタ結線であってもよい。
3相巻線81、82、83のうち2相以上の巻線に接続される通電経路には、相電流を検出する電流センサ70が設けられる。電流センサが3相に設けられる場合、MG制御装置40は、3相の相電流値Iu、Iv、Iwを取得する。電流センサが2相に設けられる場合、MG制御装置40は、2相の相電流値を取得し、他の1相の相電流値をキルヒホッフの法則に基づいて推定する。電気角センサ85は、例えばレゾルバであり、MG80の電気角θを検出する。
MG制御装置40は、マイコン等により構成され、図示しないCPU、ROM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を内部に備えている。マイコンは、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理や、専用の電子回路によるハードウェア処理による制御を実行する。
本実施形態のMG制御装置40は、インバータ操作部41、リレー操作部42、短絡発生検出部43、相電流ピーク値取得部44、短絡相数判定部45、回転数算出部46等を含む。インバータ操作部41は、インバータ60の各スイッチング素子61-66にスイッチング信号を指令する。通常制御時、インバータ操作部41は、トルク指令Trq*に応じたトルクをMG80が出力するように、インバータ60への出力電圧指令を演算する「MG制御」を行う。例えばインバータ操作部41は、入力された相電流Iu、Iv、Iw及び電気角θを用いて電流フィードバック制御を行う。なお、電流フィードバック制御については周知技術であるため説明を省略する。
本実施形態のMG制御装置40は、上述のように、インバータ60のスイッチング素子61-66の短絡故障が発生した状況を想定した特有の構成を有する。リレー操作部42は、システム起動時や停止時に電源リレー20を開閉する他、破線で示すように第3実施形態では、短絡発生検出時に電源リレー20をオフする。短絡発生検出部43は、相電流Iu、Iv、Iwの情報や、その他の異常情報(インバータ入力電流、インバータ電力、素子温度等)に基づいて、いずれか1相以上のスイッチング素子の短絡が発生したことを検出する。
相電流ピーク値取得部44は、短絡発生検出部43によりインバータ60の短絡発生が検出されたとき、MG80の電気1周期以上の期間における相電流の検出値又は推定値に基づき、各相の電流最大値Iu_max、Iv_max、Iw_max、及び電流最小値Iu_min、Iv_min、Iw_minを取得し、短絡相数判定部45に出力する。
具体的には、相電流ピーク値取得部44は、電流センサ70から検出値を取得する相について、電気1周期以上の期間における相電流検出値をピークホールドする。また、2相の電流検出値から他の1相の電流値を推定する構成では、電気1周期以上の期間における他の1相の相電流推定値をピークホールドする。
短絡相数判定部45は、各相の電流最大値Iu_max、Iv_max、Iw_max、及び電流最小値Iu_min、Iv_min、Iw_minに基づいて、インバータ60の短絡が1相短絡であるか、複相短絡であるかを識別する「短絡相数判定処理」を実行する。「短絡相数判定処理」の詳細については後述する。
回転数算出部46は、電気角θを時間微分し換算係数を乗じてMG回転数N[rpm]を算出する。破線で示すように第3実施形態では、短絡相数判定部45は、MG回転数Nに応じて短絡相数判定処理を実行するか否かを選択する。
次に、インバータ60の短絡発生時における電流経路及び電流挙動について、図2~図4を参照して説明する。図2に、U相上アームのスイッチング素子61が短絡した場合の1相短絡時の電流経路を示す。MG80の中性点に流入する方向の電流を正とし、中性点から流出する方向の電流を負とすると、振幅が相対的に大きいU相電流Iuが正方向に流れ、振幅が相対的に小さいV相電流Iv及びW相電流Iwが負方向に流れる。
図3に、(a)上アーム1相(例えばU相)、(b)上アーム2相(例えばU相、V相)、(c)上アーム3相の短絡時の電流挙動を示す。図3(a)のU相上アーム1相短絡時、U相の電流振幅範囲の下限(すなわち電流最小値Iu_min)は、V相及びW相の電流振幅範囲の上限(すなわち電流最大値Iv_max、Iw_max)よりも大きい。ここで、U相の電流振幅範囲の下限とV相及びW相の電流振幅範囲の上限との差分をピーク間隔Δと記す。なお、縦軸の「0」は基準値として用いられない。
図4に、(a)下アーム1相(例えばU相)、(b)下アーム2相(例えばU相、V相)、(c)下アーム3相の短絡時の電流挙動を示す。図4(a)のU相下アーム1相短絡時、U相の電流振幅範囲の上限(すなわち電流最大値Iu_max)は、V相及びW相の電流振幅範囲の下限(すなわち電流最小値Iv_min、Iw_min)よりも小さい。ここで、U相の電流振幅範囲の上限とV相及びW相の電流振幅範囲の下限との差分をピーク間隔Δと記す。なお、縦軸の「0」は基準値として用いられない。
このように本実施形態では、短絡している1相の電流振幅範囲と、正常な他の2相の電流振幅範囲とが互いに重ならず分離することに注目する。そして、短絡相数判定部45は、各相の電流最大値Iu_max、Iv_max、Iw_max、及び電流最小値Iu_min、Iv_min、Iw_minを比較して1相短絡と複相短絡とを識別する。続いて、インバータ60の短絡発生時にMG制御装置40が実行する処理の詳細について、実施形態毎に説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態による短絡発生時処理について、図5のフローチャート及び図6のタイムチャートを参照して説明する。以下のフローチャートの説明で、記号「S」はステップを意味する。なお、他の実施形態のフローチャートとステップ番号を共用する都合上、ステップ番号に欠番が生じる場合がある。また、破線で囲んだ部分が短絡相数判定処理に相当する。
第1実施形態による短絡発生時処理について、図5のフローチャート及び図6のタイムチャートを参照して説明する。以下のフローチャートの説明で、記号「S」はステップを意味する。なお、他の実施形態のフローチャートとステップ番号を共用する都合上、ステップ番号に欠番が生じる場合がある。また、破線で囲んだ部分が短絡相数判定処理に相当する。
初期のS1では、インバータ操作部41は、通常制御、すなわちトルク指令Trq*に追従するMG制御によりインバータ60を動作させる。S2では、短絡発生検出部43によりインバータ60の短絡発生が検出されたか否か判断され、YESの場合、S5に移行する。また、図6の異常フラグ1がONされる。S5では、相電流ピーク値取得部44により各相の電流最大値Iu_max、Iv_max、Iw_max及び電流最小値Iu_min、Iv_min、Iw_minが取得される。
S6で短絡相数判定部45は、「1相短絡条件」が成立するか否か判断する。「1相短絡条件」は、「上アーム1相短絡条件」又は「下アーム1相短絡条件」の少なくとも一方の成立により成立する。「上アーム1相短絡条件」は、式(1.1)、(1.2)、(1.3)のいずれかに該当するとき成立する。「下アーム1相短絡条件」は、式(2.1)、(2.2)、(2.3)のいずれかに該当するとき成立する。
[上アーム1相短絡条件]
Iu_min>Iv_max かつ Iu_min>Iw_max・・・(1.1)
Iv_min>Iw_max かつ Iv_min>Iu_max・・・(1.2)
Iw_min>Iu_max かつ Iw_min>Iv_max・・・(1.3)
Iu_min>Iv_max かつ Iu_min>Iw_max・・・(1.1)
Iv_min>Iw_max かつ Iv_min>Iu_max・・・(1.2)
Iw_min>Iu_max かつ Iw_min>Iv_max・・・(1.3)
[下アーム1相短絡条件]
Iu_max<Iv_min かつ Iu_max<Iw_min・・・(2.1)
Iv_max<Iw_min かつ Iv_max<Iu_min・・・(2.2)
Iw_max<Iu_min かつ Iw_max<Iv_min・・・(2.3)
Iu_max<Iv_min かつ Iu_max<Iw_min・・・(2.1)
Iv_max<Iw_min かつ Iv_max<Iu_min・・・(2.2)
Iw_max<Iu_min かつ Iw_max<Iv_min・・・(2.3)
式(1.1)、(1.2)、(1.3)において電流最小値が評価される相、及び、式(2.1)、(2.2)、(2.3)において電流最大値が評価される相を「特定相」という。式(1.1)、(1.2)、(1.3)は、それぞれ、特定相がU相、V相、W相のとき、特定相の上アームの1相短絡が発生していることを意味する。式(2.1)、(2.2)、(2.3)は、それぞれ、特定相がU相、V相、W相のとき、特定相の下アームの1相短絡が発生していることを意味する。
S6でYESの場合、S7にて1相短絡が検出される。また、図6の異常フラグ2がONされる。その後、S8でインバータ操作部41は、インバータ60の制御モードをMG制御から3相ON制御に切り替える。3相ON制御では、3相上アームをONかつ3相下アームをOFF、又は、3相上アームをOFFかつ3相下アームをONすることで、出力電圧ベクトルをゼロ電圧ベクトルとし、MG80の駆動を実質的に停止する。
S6でNOの場合、すなわち、1相短絡以外の場合、S9にて複相短絡が検出される。一度に2相又は3相のスイッチング素子が故障することは重大な異常であると考えられるため、MG制御装置40は、S10でインバータ60を即遮断する。
このように、短絡相数判定部45は、3相のうち任意の1相である特定相の電流最小値が他の2相の電流最大値より大きい場合、又は、特定相の電流最大値が他の2相の電流最小値より小さい場合、特定相の1相短絡であると判定する。その場合、S6でYESと判定され、S7にて1相短絡が検出される。また、短絡相数判定部45は、1相短絡以外の場合、複相短絡であると判定する。その場合、S6でNOと判定され、S9にて複相短絡が検出される。
第1実施形態の効果について、特許文献1(特許第5003589号公報)、特許文献2(特開2016-123141号公報)の従来技術と対比して説明する。絶対値の算出やゼロクロス判定を伴う特許文献1、2の従来技術では、ゼロ基準値のオフセットずれやノイズの影響により短絡相数の識別を誤るおそれがある。それに対し第1実施形態では、基準値との比較を用いず、各相の電流値同士の大小関係を比較することで、電流センサのばらつきによるオフセットずれやノイズの影響を受けることなく、1相短絡と複相短絡とを適切に識別することができる。
また、第1実施形態では、1相短絡検出時、インバータ60を3相ON制御とすることでMG80の駆動を停止する。例えばハイブリッド自動車では、エンジンのみでの走行に切り替えることでフェールセーフ性を向上させることができる。さらに、短絡相数判定部45は、短絡発生検出部43によりインバータ60の短絡発生が検出されたときにのみ短絡相数判定処理を実行し、短絡発生時以外の正常時には実行しない。したがって、正常時における処理不可を低減することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態について、図7を参照して説明する。第1実施形態に対し第2実施形態の短絡相数判定処理では、1相短絡条件の成立を判断するS6、及び、1相短絡を検出するS7において、上アームの短絡か下アームの短絡かの識別が追加される。S5の後、まず短絡相数判定部45は、S6Uで上アーム1相短絡条件が成立するか否かを判定する。S6UでYESの場合、S7Uにて上アーム1相短絡が検出される。
第2実施形態について、図7を参照して説明する。第1実施形態に対し第2実施形態の短絡相数判定処理では、1相短絡条件の成立を判断するS6、及び、1相短絡を検出するS7において、上アームの短絡か下アームの短絡かの識別が追加される。S5の後、まず短絡相数判定部45は、S6Uで上アーム1相短絡条件が成立するか否かを判定する。S6UでYESの場合、S7Uにて上アーム1相短絡が検出される。
S6でNOの場合、次に短絡相数判定部45は、S6Lで下アーム1相短絡条件が成立するか否かを判定する。S6LでYESの場合、S7Lにて下アーム1相短絡が検出される。S7U又はS7Lで上アーム1相短絡又は下アーム1相短絡が検出されると、S8で3相ON制御に切り替えられる。S6LでNOの場合、S9にて複相短絡が検出され、S10でインバータ60が即遮断される。
なお、S6UとS6Lとの実行順を入れ替えてもよい。第2実施形態では、短絡故障したスイッチング素子が上下アームのいずれの素子であるかの情報が得られるため、インバータ60の修理や故障原因の解析に役立つ。
(第3実施形態)
第3実施形態について、図8、図9を参照して説明する。図8に示す第3実施形態の処理は、図5の第1実施形態の処理に対しS3及びS4が追加される。なお、S3及びS4は互いに独立したステップでおり、いずれか一方のみが第1実施形態の処理に追加されてもよい。また、第1実施形態の処理に代えて、図7の第2実施形態の処理に対しS3及びS4が追加される形態も第3実施形態に含まれる。
第3実施形態について、図8、図9を参照して説明する。図8に示す第3実施形態の処理は、図5の第1実施形態の処理に対しS3及びS4が追加される。なお、S3及びS4は互いに独立したステップでおり、いずれか一方のみが第1実施形態の処理に追加されてもよい。また、第1実施形態の処理に代えて、図7の第2実施形態の処理に対しS3及びS4が追加される形態も第3実施形態に含まれる。
S2でインバータ60の短絡発生が検出されたとき、短絡相数判定部45は、S3で、リレー操作部42に電源リレー20をオフするよう指示する。すなわち、短絡相数判定部45は、電源リレー20をオフした後、短絡相数判定処理を実行することで、判定実行中の電源変動の影響が防止される。
S4で短絡相数判定部45は、MG回転数Nが所定の判定限界値N_Jlim以上であるか否か判定する。MG回転数Nが判定限界値N_Jlim以上のとき、S4でYESと判定され、S5に移行して短絡相数判定処理が実行される。MG回転数Nが判定限界値N_Jlim未満のとき、S4でNOと判定され、S10に移行してインバータ60が即遮断される。
図9に、MG回転数Nと1相短絡時ピーク間隔Δとの関係の一例を示す。ある動作特性のMG80で評価した結果、上アーム、下アームのいずれの1相短絡においても、200rpm以下の低回転領域ではピーク間隔Δがほぼゼロであり、300rpm以上の領域で有意なピーク間隔Δが現れた。また、MG回転数Nが数千rpm以上に増加すると、ピーク間隔Δは収束する傾向が見られた。そこで、この例では300rpm付近の値を判定限界値N_Jlimに設定し、MG回転数Nが判定限界値N_Jlim未満のとき、1相短絡条件の成否判定が不可であると判断し、短絡相数判定処理を実行しないこととする。
これにより、1相短絡と複相短絡との識別ができない領域での判定を予め除外することができる。ただし現実には、300rpm程度未満の低回転領域が除外されたとしても、通常走行中の短絡異常発生時におけるフェールセーフの観点から問題は無い。
(第4実施形態)
第4実施形態について、図10を参照して説明する。第4実施形態では、短絡相数判定処理における相電流ピーク値取得のS5の後に、ノイズを除去するS5Fが追加される。S5Fで相電流ピーク値取得部44は、各相電流のピークホールド値をローパスフィルタで処理したり、電気1周期以上の移動平均を用いたりすることで、各相の電流最大値及び電流最小値からノイズを除去して相電流ピーク値取得部44に出力する。なお、図10の処理では、第3実施形態による電源リレーオフのS3、回転数判定のS4を同様に実施しているが、これらの一方又は両方が省略されてもよい。第4実施形態では、電流検出値のノイズの影響を軽減することができる。
第4実施形態について、図10を参照して説明する。第4実施形態では、短絡相数判定処理における相電流ピーク値取得のS5の後に、ノイズを除去するS5Fが追加される。S5Fで相電流ピーク値取得部44は、各相電流のピークホールド値をローパスフィルタで処理したり、電気1周期以上の移動平均を用いたりすることで、各相の電流最大値及び電流最小値からノイズを除去して相電流ピーク値取得部44に出力する。なお、図10の処理では、第3実施形態による電源リレーオフのS3、回転数判定のS4を同様に実施しているが、これらの一方又は両方が省略されてもよい。第4実施形態では、電流検出値のノイズの影響を軽減することができる。
(その他の実施形態)
(a)第3実施形態では、MG回転数Nが判定限界値N_Jlim未満の低回転領域で短絡相数判定処理の実行が中止される。それ以外にも、例えば他の異常が検出され、短絡相数判定の結果にかかわらずインバータが即遮断されるような場合、短絡相数判定処理の実行が中止されてもよい。
(a)第3実施形態では、MG回転数Nが判定限界値N_Jlim未満の低回転領域で短絡相数判定処理の実行が中止される。それ以外にも、例えば他の異常が検出され、短絡相数判定の結果にかかわらずインバータが即遮断されるような場合、短絡相数判定処理の実行が中止されてもよい。
(b)本発明のモータ制御装置は、ハイブリッド自動車や電気自動車の動力源であるMGに限らず、インバータから3相交流電力が供給されるどのような3相交流モータに適用されてもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
40・・・MG制御装置(モータ制御装置)、
43・・・短絡発生検出部、
44・・・相電流ピーク値取得部、
45・・・短絡相数判定部、
60・・・インバータ、
61-66・・・スイッチング素子、
80・・・MG(モータ)。
43・・・短絡発生検出部、
44・・・相電流ピーク値取得部、
45・・・短絡相数判定部、
60・・・インバータ、
61-66・・・スイッチング素子、
80・・・MG(モータ)。
Claims (5)
- 3相上下アームの複数のスイッチング素子(61-66)がブリッジ接続されたインバータ(60)により、直流電源からの直流電力を3相交流電力に変換してモータ(80)に供給するモータ制御装置であって、
前記インバータにおいて、1相以上の前記スイッチング素子の短絡が発生したことを検出する短絡発生検出部(43)と、
前記モータの電気1周期以上の期間における相電流の検出値又は推定値に基づき、各相の電流最大値及び電流最小値を取得する相電流ピーク値取得部(44)と、
前記短絡発生検出部により前記インバータの短絡発生が検出されたとき、各相の電流最大値及び電流最小値に基づいて、前記インバータの短絡が1相短絡であるか、2相又は3相の複相短絡であるかを識別する短絡相数判定処理を実行する短絡相数判定部(45)と、
を備え、
前記短絡相数判定部は、前記短絡相数判定処理において、
3相のうち任意の1相である特定相の電流最小値が他の2相の電流最大値より大きい場合、又は、前記特定相の電流最大値が他の2相の電流最小値より小さい場合、前記特定相の1相短絡であると判定し、1相短絡以外の場合、複相短絡であると判定するモータ制御装置。 - 前記短絡相数判定部は、前記短絡相数判定処理において、
前記特定相の電流最小値が他の2相の電流最大値より大きい場合、前記特定相の上アームの1相短絡であると判定し、
前記特定相の電流最大値が他の2相の電流最小値より小さい場合、前記特定相の下アームの1相短絡であると判定する請求項1に記載のモータ制御装置。 - 前記短絡発生検出部により前記インバータの短絡発生が検出されたとき、前記短絡相数判定部は、前記直流電源と前記インバータとの間に設けられた電源リレーをオフした後、前記短絡相数判定処理を実行する請求項1または2に記載のモータ制御装置。
- 前記相電流ピーク値取得部は、各相の電流最大値及び電流最小値からノイズを除去して前記短絡相数判定部に出力する請求項1~3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
- 前記短絡相数判定部は、前記モータの回転数が所定の判定限界値未満のとき、前記短絡相数判定処理の実行を中止する請求項1~4のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
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