JP6828515B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、3相交流モータの制御装置に関する。
従来、インバータの動作により3相交流モータの通電を制御する装置において、インバータからモータまでの相電流の通電経路が断線したことを検出する装置が知られている。
例えば、特許文献1に開示された断線検出装置は、トルク指令が規定トルク以上である条件のもと、いずれかの相電流の絶対値が規定電流以下であり、且つ、その相電流の変化速度の絶対値が規定速度以下であるとき、通電経路が断線していると判断する。
特開2014−085286号公報
モータ回転数が0[rpm]の時、すなわちモータ停止時には、各相電流は時間変化しないため、断線していなくても変化速度の絶対値は常に規定速度以下となる。また、停止位置によっては、いずれかの相の電流がほぼ0[A]になる。そのため特許文献1の断線検出装置は、トルク指令の大きさにかかわらず、モータ停止時には正常状態と断線状態とを判別することができない。
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、モータ停止時においても通電経路の断線を診断可能なモータ制御装置を提供することにある。
本発明は、PWM制御によりインバータ(60)を駆動し、3相交流電力をモータ(80)に供給するモータ制御装置であって、電流指令演算部(21)と、電圧指令演算部(24)と、PWM生成部(26)と、断線診断部(28)とを備える。
電流指令演算部は、トルク指令に基づいてdq軸電流指令を演算する。
電圧指令演算部は、dq軸電流指令、及び、入力電圧センサ(14)から取得したインバータ入力電圧に基づいてdq軸電圧指令を演算する。
PWM生成部は、dq軸電圧指令、及び、電気角センサ(85)から取得したモータの電気角に基づき、空間ベクトル座標で電圧指令ベクトルを生成する空間ベクトル変調」により、インバータを駆動する出力電圧波形を生成する。
断線診断部は、インバータからモータまでの相電流の通電経路の断線診断を行う。
PWM生成部は、各60°区間の6個のセクターで構成される空間ベクトル座標において、1つ以上のベクトルを合成して生成した電圧指令ベクトルにより、空間ベクトル変調の処理周期であるPWM周期毎に出力電圧波形を生成するものである。
PWM生成部は、電圧指令ベクトルがいずれかのセクター内に存在するとき、「電圧指令ベクトルが存在する指令セクターの両側の境界をなす60°間隔の2つのベクトルを合成して電圧指令ベクトルを生成する第1パターン」、又は、「指令セクター、及び、指令セクターと隣接する隣接セクターの互いに反対側の境界をなす120°間隔の2つのベクトルを合成して電圧指令ベクトルを生成する第2パターン」、のうち少なくとも一方のパターンを用いて、出力電圧波形を生成する。
また、PWM生成部は、電圧指令ベクトルがUVWいずれかの軸線上に存在するとき、「電圧指令ベクトルが存在する軸線方向の1つのベクトルを合成して電圧指令ベクトルを生成する第1パターン」、又は、「電圧指令ベクトルをまたぐ2つのセクターの互いに反対側の境界をなす120°間隔の2つのベクトルを合成して電圧指令ベクトルを生成する第2パターン」、のうち少なくとも一方のパターンを用いてPWM周期毎に出力電圧波形を生成する。
さらにPWM生成部は、複数のPWM周期で第1パターン及び第2パターンの両方を用い、U軸方向、V軸方向、W軸方向の3方向の電圧ベクトルを用いて出力電圧波形を生成する。
断線診断部は、PWM周期において、2相以上の電流センサ(87、88)から取得した各相電流の電流変化量の絶対値の積算値を電圧ベクトル区間毎に算出する。
そして、断線診断部は、少なくとも1相の電流変化量の絶対値の積算値が個別判定値以下のとき、又は、3相の電流変化量の絶対値の和の積算値が合計判定値以下のとき、通電経路の断線と診断する。
本発明は、モータ停止時であっても、正常状態ではPWM1周期での相電流は必ず変化するという点に着目する。そして、電圧ベクトル区間毎の相電流変化量の絶対値を積算し、1相の電流変化量の絶対値の積算値が個別判定値、又は、3相の電流変化量の絶対値の和の積算値を各判定値と比較することで、相電流が正常に変化しているか否かを判定する。したがって、本発明のモータ制御装置は、モータ停止時においても通電経路の断線を診断することができる。
好ましくは、断線診断の開始時にモータの回転数が回転数閾値以下であり、且つトルク指令が0であるとき、電流指令演算部は、電流指令ベクトルの振幅が振幅閾値以上であるd軸電流を断線診断用の電流として設定する。q軸電流を流さずd軸電流のみを流すことで、モータトルクを発生させることなく断線診断を実施することができる。
ところで、三角波比較でのPWM生成において電圧ベクトルがUVWいずれかの軸線上に存在すると、1相のみの断線にもかかわらず3相とも電流が流れず、断線相の特定ができない場合がある。
そこで、本発明のPWM生成部は、空間ベクトル座標において、U軸方向、V軸方向、W軸方向の3方向の電圧ベクトルを用いて出力電圧波形を生成することが好ましい。これにより、電圧ベクトルがUVWいずれかの軸線上に存在する場合にも、常に断線相を特定することができる。
各実施形態によるモータ制御装置が適用されるモータ駆動システムの全体構成図。 モータ停止時における従来技術の問題点を説明する3相電流波形図。 第1実施形態によるモータ制御装置の制御ブロック図。 キャリア1周期における(a)電圧ベクトル区間を示す図、(b)電圧ベクトル区間毎の各相電流の変化を示す図。 電圧ベクトルの表。 図4(b)の電圧ベクトルV1区間のU相電流変化量を定義する拡大図。 第1実施形態による、相電流変化量の絶対値の積算値に基づく断線診断を説明する図。 第1実施形態による全体処理のフローチャート。 第1実施形態による断線相を判別する断線診断処理のフローチャート。 第1実施形態による断線相を判別しない断線診断処理のフローチャート。 第2実施形態による、電圧指令ベクトルが一般領域にある場合の(a)第1パターンのベクトル合成を説明する図、(b)インバータ動作図。 第2実施形態による、電圧指令ベクトルが一般領域にある場合の(a)第2パターンのベクトル合成を説明する図、(b)インバータ動作図。 電圧ベクトルと1相断線との組み合わせを示す表。 空間ベクトル座標における電圧ベクトルV2の(a)正常状態、(b)U相断線状態を示す図。 同上の(c)V相断線状態、(b)W相断線状態を示す図。 第2実施形態による、電圧指令ベクトルが軸線上にある場合の(a)第1パターンのベクトル合成を説明する図、(b)インバータ動作図。 第2実施形態による、電圧指令ベクトルが軸線上にある場合の(a)第2パターンのベクトル合成を説明する図、(b)インバータ動作図。 第3実施形態による3方向のベクトル合成の(a)一例、(b)他の例を説明する空間ベクトル図。 第4実施形態による、3相の電流変化量の絶対値の和の積算値に基づく断線診断を説明する図。 第4実施形態による断線相を判別する断線診断処理のフローチャート。
以下、モータ制御装置の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。第1〜第4実施形態を包括して「本実施形態」という。
本実施形態のモータ制御装置は、ハイブリッド自動車又は電気自動車の動力源である主機モータを駆動するシステムにおいて、モータの通電を制御する装置である。
[システム構成]
まず、各実施形態のモータ制御装置が適用されるモータ駆動システムの全体構成について図1を参照して説明する。
モータ駆動システム90は、充放電可能な二次電池であるバッテリ11の直流電力をインバータ60で3相交流電力に変換してモータ80に供給するシステムである。
なお、モータ制御装置20は、バッテリ11の電圧を昇圧してインバータ60に出力するコンバータを備えたモータ駆動システムに適用されてもよい。
モータ80は、例えば永久磁石式同期型の3相交流モータである。モータ80は、力行動作によりトルクを発生する電動機、及び、駆動輪やハイブリッド自動車のエンジンから伝達されるトルクにより回生電力を発電する発電機として機能する。
モータ80の3相巻線81、82、83のうち2相以上の巻線に接続される通電経路には相電流を検出する電流センサが設けられる。図1の例では、V相巻線82及びW相巻線83に接続される通電経路に、それぞれ相電流iv、iwを検出する電流センサ87、88が設けられており、残るU相の電流iuをキルヒホッフの法則に基づいて推定する。他の実施形態では、どの2相の電流を検出してもよく、3相の電流を検出してもよい。
電気角センサ85は、例えばレゾルバであり、モータ80の電気角θを検出する。
インバータ60は、上下アームの6つのスイッチング素子61−66がブリッジ接続されている。詳しくは、スイッチング素子61、62、63は、それぞれU相、V相、W相の上アームのスイッチング素子であり、スイッチング素子64、65、66は、それぞれU相、V相、W相の下アームのスイッチング素子である。以下、上アームのスイッチング素子を「上アーム素子」、下アームのスイッチング素子を「下アーム素子」と記す。素子61−66は、例えばIGBTで構成され、低電位側から高電位側へ向かう電流を許容する還流ダイオードが並列に接続されている。
インバータ60は、モータ制御装置20から指令されるPWM信号Vu、Vv、Vwに従ってスイッチング素子61−66が動作することで、直流電力を3相交流電力に変換する。そして、インバータ60は、モータ制御装置20からの指令に応じた相電圧Vu、Vv、Vwをモータ80の各相巻線81、82、83に印加する。
なお、インバータ60からモータ80までの通電経路を含め、3相の電気的特性は同等であることを前提とする。
入力電圧センサ14は、インバータの入力部に設けられるコンデンサ15の両端電圧である入力電圧Vinvを検出する。
モータ制御装置20は、マイコン等により構成され、図示しないCPU、ROM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を内部に備えている。マイコンは、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理や、専用の電子回路によるハードウェア処理による制御を実行する。
モータ制御装置20は、入力電圧センサ14から入力電圧Vinvを取得し、電流センサ87、88から2相以上の相電流として例えばV相及びW相電流iv、iwを取得し、電気角センサ85から電気角θを取得する。また、モータ制御装置20には、上位の制御回路からトルク指令Trq*が入力される。モータ制御装置20は、これらの情報に基づく電流フィードバック制御により電圧指令を生成し、さらに電圧指令を三角波キャリアと比較するPWM制御によってインバータ60を駆動する。
ところで、3相交流モータの制御装置において、インバータ60内部のバスバー、インバータ60とモータ80とを接続するハーネス、モータ80の巻線、又はそれらの接続端子等、インバータ60からモータ80までの相電流の通電経路が断線する可能性がある。1相以上の通電経路が断線すると正常なモータ駆動による車両走行ができなくなるため、早期に断線異常を検出し、フェールセーフ処理を実施することが求められる。
このような通電経路の断線検出に関し、特許文献1(特開2014−085286号公報)の従来技術では、相電流の絶対値、及び、相電流の変化速度の絶対値に基づいて断線を検出する。
ここで、3相電流の時間変化について図2を参照する。モータ80の定常回転時には、3相電流は互いに位相が120°ずれた正弦波形を描く。このとき、任意の検出タイミングにおいて、いずれかの相電流の絶対値が規定電流以下であり、且つ、その相電流の変化速度の絶対値が規定速度以下であれば、その相が断線していると判断される。
しかし、モータ回転数が0[rpm]の時、すなわちモータ停止時には、各相電流は、時間変化しない直流電流となる。また、モータ停止位置によっては、V相電流が、ほぼ0[A]になる場合がある。このとき、断線していないにもかかわらず、V相電流の絶対値は規定電流以下であり、且つ、全ての相電流の変化速度の絶対値は規定速度以下である。したがって、正常であるにもかかわらず、断線異常と判断される。
このように、特許文献1の従来技術では、モータ停止時において正常状態と断線状態とを判別することができない。
それに対し、本実施形態のモータ制御装置20は、「PWM1周期での相電流は正常状態では必ず変化する」という点に着目し、電圧ベクトル区間毎の相電流変化量に基づいて断線を診断する断線診断部を備える。この構成により、本実施形態のモータ制御装置20は、モータ停止時においても通電経路の断線を診断可能である。
以下、断線診断部の具体的な構成及び作用について、実施形態毎に説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態について、図3〜図10を参照して説明する。
図3に示すように、モータ制御装置20は、基本的にベクトル制御、電流フィードバック制御及びPWM制御を行うための一般的な構成を有しており、さらに特有の構成として断線診断部28を有している。
ここで、車両の走行中にモータ80が力行動作により回転している時を「通常時」という。断線診断を実施するタイミングとしては、車両を起動(レディオン)した後の走行前のモータ停止時を主に想定し、加えて、通常時に常時実施することも想定する。
以下の説明においてモータ回転数、トルク指令等が「0」であるというとき、厳密な0[rpm]や0[Nm]等に限らず、検出誤差や機器の分解能を考慮して、実質的に0と認められる範囲を含むものとする。
電流指令演算部21は、通常時にトルク指令Trq*に基づき、マップや数式を用いてd軸電流指令Id*及びq軸電流指令Iq*を演算する。また、電流指令演算部21は、取得した電気角θを時間微分してモータ回転数N[rpm]を算出する。そして、電流指令演算部21は、モータ回転数Nが0であり、且つトルク指令Trq*が0であるとき、断線診断用のd軸電流指令Id*を演算する。
3相2相変換部22は、電流センサ87、88から取得した相電流iv、iwを、電気角θを用いてdq軸電流Id、Iqに座標変換し、フィードバックする。
電流減算器231、232は、それぞれ、3相2相変換部22からフィードバックされたd軸電流Id、q軸電流Iqと、d軸電流指令Id*、q軸電流指令Iq*との電流偏差ΔId、ΔIqを算出する。
電圧指令演算部24は、入力電圧Vinvに基づき、d軸電流偏差ΔId及びq軸電流偏差ΔIqを0に収束させるように、比例積分演算によりd軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*を演算する。
第1実施形態のPWM生成部26は、電気角θに基づいて、dq軸電圧指令Vd*、Vq*を3相電圧指令に2相3相変換し、さらに3相電圧指令を三角波キャリアと比較してPWM信号Vu、Vv、Vwにより出力電圧波形を生成する。PWM信号Vu、Vv、Vwは、インバータ60に出力されると共に、断線診断部28に出力される。
断線診断部28は、2相の電流センサ87、88から例えばV相、W相電流iv、iwを取得し、残るU相電流iuをキルヒホッフの法則により推定する。他の実施形態の断線診断部28は、どの2相の電流を取得してもよく、3相の電流センサから3相電流を取得してもよい。
また、断線診断部28は、電流指令演算部21から電流指令ベクトルの振幅Iampを取得し、PWM生成部26からPWM信号Vu、Vv、Vwを取得する。
断線診断部28は、これらの取得情報に基づき、後述の断線診断処理を実施する。
次に、モータ制御装置20の作用について、図4〜図7を参照して説明する。
図4(a)に、PWM制御のキャリア1周期における3相電圧指令と三角波キャリアとの関係を示す。以下、第1及び第4実施形態では、キャリア周期をPWM周期という。
電圧指令がキャリアを上回るとき、インバータ60の上アーム素子がオンする。下アーム素子は、上アーム素子と相補的に動作する。各相の電圧指令とキャリアとの大小関係に基づき、PWM1周期は複数の電圧ベクトル区間に区分される。各電圧ベクトル区間は、キャリアの山又は谷のタイミングに対して対称に、PWM1周期に2回ずつ現れる。
ここで、インバータ60のオン状態の素子と電圧ベクトルV0〜V7との関係は図5の通りである。図5中、上アーム素子及び下アーム素子をそれぞれ「上」、「下」と記す。
ゼロ電圧ベクトルV0、V7の区間では、線間電位差が発生せず、相電流は流れない。有効電圧ベクトルV1〜V6の区間では、少なくとも2相間に線間電位差が発生し、相電流が流れる。断線診断部28は、PWM信号の電圧Vu、Vv、Vwの切り替わり時に3相電流を読み込み、各電圧ベクトル区間での相電流変化量を算出する。
図4(b)には、各相の電圧指令Vu、Vv、Vw、及び、相電流iu、iv、iwの変化量の積算値を示す。矩形パルスのハイレベルは、上アーム素子がオンしている状態を意味し、矩形パルスのローレベルは、下アーム素子がオンしている状態を意味する。
例えば電圧ベクトルV1区間では、U相上、V相下、W相下の素子がオンし、正のU相電流iuと、負のV相電流iv及びW相電流iwとが流れる。キルヒホッフの法則により、U相電流iu、V相電流iv、W相電流iwの比は、「2:−1:−1」となる。
また、電圧ベクトルV2区間では、U相上、V相上、W相下の素子がオンし、正のU相電流iu及びV相電流ivと、負のW相電流iwとが流れる。U相電流iu、V相電流iv、W相電流iwの比は、「1:1:−2」となる。
このように分配された各相電流が時間に連れて累積される。折れ線は、各電圧ベクトル区間に累積された電流変化量の積算値を示す。例えば、図中に梨地模様を付した電圧ベクトルV1区間におけるU相電流の変化量の記号を「ΔiV1u」と記す。つまり、総括的に電圧ベクトルVn区間(n=1〜6)における#相電流(#=u、v、w)の変化量を「ΔiVn#」と記す。
U相の電圧ベクトルV1区間の拡大図である図6に示すように、電圧ベクトルV1区間の開始時刻をt0、終了時刻をt1とすると、電流変化量ΔiV1uは、式(1)で定義される。
ΔiV1u=iV1u(t1)−iV1u(t0) ・・・(1)
このとき、電圧ベクトルV1区間におけるU相電流変化量ΔiV1uは正であるため、折れ線は右上がりとなる。一方、電圧ベクトルV1区間におけるV相及びW相の電流変化量ΔiV1v、ΔiV1wは、いずれも負であるため、折れ線は右下がりとなる。
同様に、電圧ベクトルV2区間におけるU相、V相電流変化量ΔiV2u、ΔiV2vは正であるため、折れ線は右上がりとなり、W相電流変化量ΔiV2wは負であるため、折れ線は右下がりとなる。
要するに、有効電圧ベクトルV1〜V6区間において、通電経路が断線していない正常状態では線間電圧が発生するため、全ての相で相電流が変化する。ただし、図4(b)にてV相電流変化量の積算値は、正常時にも正負の変化が相殺し、PWM1周期で0[A]となるため、断線異常により相電流が流れない場合との判別ができない。
そこで、図7に示すように、断線診断部28は、各電圧ベクトル区間の相電流変化量の絶対値を積算することで負の電流変化量を正側に積算する。図7の例で、PWM1周期における各相電流変化量の絶対値の積算値Σ|Δiu|、Σ|Δiv|、Σ|Δiw|は、式(2.1)〜(2.3)で定義される。したがって、PWM1周期におけるV相電流変化量の絶対値の積算値Σ|Δiv|は、正常時には0[A]より大きい値となり、断線時との判別が可能となる。
Σ|Δiu|=2×(|ΔiV1u|+|ΔiV2u|) ・・・(2.1)
Σ|Δiv|=2×(|ΔiV1v|+|ΔiV2v|) ・・・(2.2)
Σ|Δiw|=2×(|ΔiV1w|+|ΔiV2w|) ・・・(2.3)
そして、断線診断部28は、積算値Σ|Δiu|、Σ|Δiv|、Σ|Δiw|のいずれか1つ以上が個別判定値Keach以下である場合、相電流が正常に変化しておらず、断線異常であると判定する。
ここで、個別判定値Keachは、誤判定を避けるため、電流0[A]時の電流検出誤差の積み上げ値、すなわち、断線異常時に検出される可能性がある最大値よりも大きい値に設定される。例えば、電流0[A]時の電流検出誤差の積み上げ値が5[A]の場合、安全率を2倍とすると、個別判定値Keachは10[A]に設定される。
次に、第1実施形態のモータ制御装置20による断線診断処理について、図8〜図10のフローチャートを参照して説明する。以下のフローチャートの説明で、記号「S」はステップを意味する。なお、他のフローチャートとステップ番号を共用する都合上、各フローチャートのステップ番号には欠番が生じる場合がある。
図8に、断線診断の準備及び診断後の対応を含めた全体の処理を示す。
モータ制御装置20は、S1で、断線診断の前提として、次の項目について判定する。
(1)コンデンサ15の充電が完了している。
(2)入力電圧センサ14による入力電圧Vinvの検出が正常である。
(3)電流センサ87、88による相電流Iv、Iwの検出が正常である。
(4)電気角センサ85による電気角θの検出が正常である。
なお、各項目の具体的な判定方法は任意の周知技術を適用してよい。また、センサ系の判定項目(2)、(3)、(4)における「正常」は、積極的に正常と認められる場合に限らず、「少なくとも異常でない」場合を含んでもよい。
上記項目の条件が全て成立するとき、S1でYESと判断され、S2に移行する。いずれか1つ以上の項目の条件が成立しないとき、S9に移行する。
S2及びS3では、モータ回転数N及びトルク指令Trq*の値が評価される。モータ回転数Nが回転数閾値Nth以下であり、且つ、トルク指令Trq*が0であるとき、S2及びS3でYESと判断され、S4に移行する。
典型的には、車両起動時の走行開始前のように、モータ回転数が0[rpm]であり、トルク指令Trq*が0[Nm]であるときがこの場合に該当する。走行開始前に断線診断を実施する場合、モータトルクを発生させ、運転者の意図に反して車両を駆動することは好ましくない。そこでS4では、電流指令演算部21により、断線診断用の電流指令として振幅Iampが振幅閾値Ith以上であるd軸電流指令が設定される。このように、q軸電流を流さずd軸電流のみを流すことで、モータトルクを発生させることなく断線診断が可能となる。
一方、モータ回転数Nが回転数閾値Nthを超えているか、又は、トルク指令Trq*が実質的に0より大きいとき、つまり、通常走行状態に相当するモータ80の動作状態では、S2又はS3でNOと判断され、S5に移行する。
断線診断部28は、S5で、電流指令演算部21が現に指令している電流指令ベクトルの振幅Iampが振幅閾値Ith以上であり、断線診断可能な大きさであるか否か判定する。電流振幅Iampが振幅閾値Ith以上の場合、S5でYESと判断され、通常走行状態での断線診断を実施するためS6に移行する。
電流振幅Iampが振幅閾値Ith未満の場合、S5でNO、すなわち断線診断を実施不可であると判断され、処理を終了する。
S4を経て、又は、S5でYESと判断されたとき移行するS6では、指令演算が実行され、インバータ60に出力される。この指令演算には、3相2相変換部22、電圧指令算出部24等による電流フィードバック演算から、PWM生成部26によるPWM信号Vu、Vv、Vwの生成演算までの一連の制御演算が含まれる。
断線診断部28は、S7で、PWM1周期から数周期にわたって電流変化量の絶対値を積算する。なお、積算に要するPWM周期数は、断線診断処理の構成、電圧指令ベクトルの方向、断線相の特定要否等によって異なる。最短の場合にはPWM1周期で診断可能であり、処理構成や状況によっては複数周期の積算が必要となる場合もある。
断線診断により、いずれか1相以上の断線が検出されると、S8でYESと判断され、S9に移行する。モータ制御装置20は、S9で、フェールセーフ処理としてモータ駆動を停止するか、又は、退避走行が可能な範囲で駆動条件を制限するフェールセーフモードに切り替える。また、モータ制御装置20は、車両ECU等に異常を通知する。
一方、断線が検出されない場合、S8でNOと判断され、処理を終了する。
続いて、断線診断処理の詳細について図9、図10を参照する。断線診断処理において断線相の判別をする処理例を図9に示し、断線相の判別をせず断線の有無のみを判定する処理例を図10に示す。
図9の処理では、断線診断部28は、各相の電流変化量の絶対値の積算値を個別判定値Keachと比較する。また、各相の正常又は異常をFu、Fv、Fwの値で表す。
S21では、式(3.1)により、U相の断線が判定される。
Σ|Δiu|≦Keach ・・・(3.1)
S21でNOの場合、S23でFu=0(正常)に設定され、S21でYESの場合、S24でFu=1(異常)に設定される。
S31では、式(3.2)により、V相の断線が判定される。
Σ|Δiv|≦Keach ・・・(3.2)
S31でNOの場合、S33でFv=0(正常)に設定され、S31でYESの場合、S34でFv=1(異常)に設定される。
S41では、式(3.3)により、W相の断線が判定される。
Σ|Δiw|≦Keach ・・・(3.3)
S41でNOの場合、S43でFw=0(正常)に設定され、S41でYESの場合、S44でFw=1(異常)に設定される。
S51では、式(4)により、各相のフラグの合計値が2以上であるか判定される。
Fu+Fv+Fw≧2 ・・・(4)
S51でNOの場合、S53でFx=0に設定される。これは、3相とも正常であるか、又は1相のみが断線異常であることを意味する。さらに、下記の場合分けにより、正常であるか、どの相の断線であるかが判別可能である。
Fx=Fu=Fv=Fw=0 ・・・正常
Fx=0 AND Fu=1 ・・・U相断線
Fx=0 AND Fv=1 ・・・V相断線
Fx=0 AND Fw=1 ・・・W相断線
S51でYESの場合、S54でFx=1に設定される。これは、2相又は3相が断線異常であることを意味する。
その後、断線診断部28は、S60で、電流変化量の絶対値の積算値をクリアし、断線診断を終了する。
また、図10の処理では、S55で、式(3.1)、(3.2)、(3.3)のうち少なくともいずれか1つの条件が成立するか否か判定される。S55でNOの場合、S56で、3相とも正常であると判定される。S55でYESの場合、S57で、1相以上が断線異常であると判定される。
以上のように第1実施形態では、電圧ベクトル区間毎の各相電流変化量の絶対値の積算値を個別判定値Keachと比較する。これにより、車両起動後の走行開始前のように、モータ停止時、且つトルク指令が0の状態でも、断線診断用の電流を通電し、通電回路の断線を診断することができる。また、通常走行状態でも、電流指令振幅Iampが振幅閾値Ith以上であれば断線診断可能である。
また、電流指令演算部21は、電流指令振幅Iampが振幅閾値Ith以上であるd軸電流を断線診断用の電流として設定することで、モータ80にトルクを発生させることなく、断線診断を実施することができる。
さらに、本実施形態は、通常のモータ制御装置が備える既存のハードウェア構成に部品を追加することなく実現することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態について、図11〜図17を参照して説明する。
第2実施形態のモータ制御装置20は、第1実施形態に対し、PWM生成部26が空間ベクトル変調により出力電圧波形を生成する点のみが異なる。
空間ベクトル変調では、ゼロ電圧ベクトルV0及びV7を中心とし、有効電圧ベクトルV1〜V6を6つの頂点とする正6角形の空間ベクトル座標において、1つ以上の電圧ベクトルを合成することにより任意の電圧指令ベクトルを生成する。PWM生成部26は、電圧指令Vd*、Vq*及び電気角θに基づいて電圧指令ベクトルを演算する。そして、PWM生成部26は、空間ベクトル変調の処理周期において分配された時間と電圧ベクトルとの積のベクトル和を演算し、インバータ60への出力電圧波形を生成する。以下、第2及び第3実施形態では、空間ベクトル変調の処理周期をPWM周期という。
まず、図11、図12を参照する。
電圧ベクトルV1、V3、V5の方向は、それぞれ、+U軸方向、+V軸方向、+W軸方向に相当し、電圧ベクトルV4、V6、V2の方向は、それぞれ、−U軸方向、−V軸方向、−W軸方向に相当する。中心のゼロ電圧ベクトルV0及びV7は図示を省略する。
空間ベクトル座標は、各60°区間の6個のセクターで構成される。中心から見て右上に位置する、電圧ベクトルV1、V2を境界とする60°区間を第1セクターと定義し、第1セクターから反時計回りに位置する各60°の区間を、順に第2〜第6セクターと定義する。図中、第1〜第6セクターを<1>〜<6>の記号で示す。第nセクターの両側の境界をなす電圧ベクトルは、n=1〜5のとき、Vn及びV(n+1)であり、n=6のとき、V6及びV1である。
図11(a)、図12(a)には、電圧指令ベクトルVxが、UVW軸線上以外の一般領域、すなわち、いずれかのセクター内に存在する場合を示す。ここで、電圧指令ベクトルVxが存在するセクターを「指令セクター」という。また、指令セクターに隣接するセクターを「隣接セクター」という。図11(a)、図12(a)に示す例では、電圧指令ベクトルVxは、第1セクター内に存在する。
第2実施形態では、電圧指令ベクトルVxを図11(a)に示す第1パターン、及び、図12(a)に示す第2パターンの2通りのパターンで合成する。
図11(b)、図12(b)に、それぞれ、図11(a)、図12(a)の電圧ベクトルに対応するインバータ動作を示す。斜線枠の部分は、上アーム素子がオンし電圧が印加される期間を示し、斜線枠の無い部分は、下アーム素子がオンする期間を示す。
各相の時間の記号T0は、ゼロ電圧ベクトルV0又はV7に対応する時間を意味する。また、記号T1、T2は、図毎に独立して用いられ、それぞれ、有効電圧ベクトルV1〜V6に対応する時間を意味する。後述の図16(a)、図17(a)でも同様とする。
図11(a)の第1パターンでは、指令セクターの両側の境界をなす60°間隔の2つの電圧ベクトルV1、V2が用いられる。電圧指令ベクトルVxは、U軸方向の(T1・V1)とW軸方向の(T2・V2)とにより合成される。
図12(a)の第2パターンでは、指令セクター及び隣接セクターの互いに反対側の境界をなす120°間隔の2つの電圧ベクトルV2、V6が用いられる。電圧指令ベクトルVxは、W軸方向の(T1・V2)とV軸方向の(T2・V6)とにより合成される。
このように、第2実施形態のPWM生成部26は、空間ベクトル変調において、2方向の電圧ベクトルを合成して電圧指令ベクトルVxを生成する2通りのパターンを組み合わせ、U軸方向、V軸方向、W軸方向の3方向の電圧ベクトルを用いて出力電圧波形を生成する。断線診断部28は、各パターンにより通電される相電流の変化を検出することで、各相の断線を診断する。
例えば、PWM生成部26が第1パターン及び第2パターンをPWM周期毎に交互に用いて出力電圧波形を生成すれば、断線診断部28は、連続するPWM2周期で断線診断を行い、いずれの1相が断線している場合にも、断線相を特定することができる。
第2実施形態による処理のフローチャートは、図8のS6「指令演算、出力」のステップにおいて、PWM信号Vu、Vv、Vwに代えて空間ベクトル座標で電圧指令ベクトルが生成される点を除き、第1実施形態と同様である。また、判定値の設定思想は第1実施形態に準ずる。
次に、電圧指令ベクトルVxがUVWいずれかの軸線上に存在する場合のベクトル合成について、図13〜図17を参照する。第2実施形態は第1実施形態に対し、特に、電圧指令ベクトルVxが軸線上に存在し、その電圧指令ベクトルVxに対応する1相が断線した場合の断線診断に有利である。
図13に、図5の電圧ベクトル表において「オンの素子が他の2相と異なる1相」が断線した場合の「電圧ベクトルと、対応する断線相との組み合わせ」を示す。例えば、電圧ベクトルV2に対応する断線相はW相である。
図14、図15に、正常状態ではV2方向の電圧ベクトルをUVWの3軸のベクトルで合成する前提のもと、3相のうち1相が断線した場合の合成ベクトルの変化を示す。
図14(a)に示す正常状態では、U軸方向、V軸方向、W軸方向の3方向の電圧ベクトルによりベクトルVxが生成される。
図14(b)に示すU相断線状態では、V軸方向、W軸方向の2方向の電圧ベクトルのU軸直交方向の成分により、合成ベクトルVouが生成される。
同様に、図15(c)に示すV相断線状態では、U軸方向、W軸方向の2方向の電圧ベクトルのV軸直交方向の成分により、合成ベクトルVovが生成される。
一方、図15(d)に示すW相断線状態では、U軸方向、V軸方向の2方向の電圧ベクトルのW軸直交方向の成分は相殺され、W相直交方向にベクトルは生成されない。つまり、W軸方向以外のベクトル成分は全て0となる。
上記の原理をふまえ、電圧指令ベクトルVxがUVWいずれかの軸線上に存在する場合の第1パターン及び第2パターンの設定を示す。この場合、電圧指令ベクトルVxが一般領域、すなわち、いずれかのセクター内に存在しないため、指令セクターを基準とすることができない。
図16(a)に示すように、第1パターンでは、電圧指令ベクトルVxの存在する1つの電圧ベクトルV2のみを用いて、電圧指令ベクトルVxが合成される。なお、「1つのベクトルを合成する」という用例は不自然であるが、ここでは、他の場合との用語統一の都合上、「合成」という用語を、1つのベクトルに対しても拡張して用いることとする。
図16(a)の第1パターンでは、W軸線上にある電圧指令ベクトルVxは、W軸方向の(T2・V2)のみにより合成される。
図16(b)に示すように、第1パターンにより生成された出力電圧波形では、U相及びV相の素子は同じタイミングで動作する。したがって、電圧ベクトルV2区間においてU相及びV相は同電位となり、U相−V相間に線間電圧は発生しない。この場合、W相が断線すると、全ての相電流が変化しないため、2相以上の断線の場合と判別することができない。つまり、1相の断線であるにもかかわらず3相とも電流が流れないため、断線相を特定することができない。
一方、図17(a)に示す第2パターンでは、一般領域における「指令セクター及び隣接セクター」に代えて、「電圧指令ベクトルVxをまたぐ2つのセクター」の互いに反対側の境界をなす120°間隔の2つの電圧ベクトルが用いられる。図17(a)の第2パターンでは、電圧ベクトルV2をまたぐ第1セクター及び第2セクターの互いに反対側の境界をなす120°間隔の電圧ベクトルV1、V3が用いられる。電圧指令ベクトルVxは、U軸方向の(T1・V1)とV軸方向の(T3・V3)とにより合成される。
つまり、電圧指令ベクトルVxがUVWいずれかの軸線上に存在する場合にも、上記のように第1パターン及び第2パターンを組み合わせることで、U軸方向、V軸方向、W軸方向の3方向の電圧ベクトルが用いられる。
図17(b)に示すように、U相は電圧ベクトルV1区間で電圧が印加され、V相は電圧ベクトルV3区間で電圧が印加されるため、電圧ベクトルV1、V3区間でU相−V相間に線間電圧が発生する。したがって、W相が断線したとき、W相以外のU相及びV相の相電流が変化するため、W相の断線であることを特定することができる。
空間ベクトル変調で1つのベクトルのみを用いる構成と同様に、第1実施形態の三角波比較でのPWM生成では、電圧指令ベクトルがUVWいずれかの軸線上に存在するとき、断線相を特定することができない場合がある。
それに対し、第2実施形態では、空間ベクトル変調で2通りのパターンを組み合わせて3方向全ての電圧ベクトルを使用することで、電圧指令ベクトルがUVWいずれかの軸線上に存在する場合にも、常に断線相を特定することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態について、図18を参照して説明する。第3実施形態では、空間ベクトル座標において、U軸方向、V軸方向、W軸方向の3方向のベクトルを合成して電圧指令ベクトルVxを生成する。
図18(a)に示す例では、電圧ベクトルV2方向のW軸線上にある電圧指令ベクトルVxは、第1セクター及び第2セクターの互いに反対側の境界をなす電圧ベクトルV1、V3、及び、電圧ベクトルV2の3方向の電圧ベクトルを用いて合成される。すなわち、電圧指令ベクトルVxは、V軸方向の(T3・V3)とU軸方向の(T1・V1)とW軸方向の(T2・V2)とにより合成される。
ただし、3方向の電圧ベクトルを用いる組み合わせは他にもある。
図18(b)に示す他の例では、+U軸方向の電圧ベクトルV1に代えて逆方向の電圧ベクトルV4を用い、+V軸方向の電圧ベクトルV3に代えて逆方向の電圧ベクトルV6を用いる。すなわち、電圧指令ベクトルVxは、−V軸方向の(T3・V6)と−U軸方向の(T1・V4)とW軸方向の(T2・V2)とにより合成される。このように、「U軸方向、V軸方向、W軸方向の3方向」は、各軸の逆方向を含めて解釈される。
ただし、同じ大きさの電圧指令ベクトルVxを合成するとき、図18(b)におけるW軸方向の(T2・V2)は、図18(a)の(T2・V2)に比べて大きく設定する必要がある。このように、逆方向ベクトルを使用すると電圧のムダが生じるため、基本的には、電圧指令ベクトルVxに対し各軸における近い側のベクトルを用いることが好ましい。
第3実施形態ではPWM1周期で3相の断線を診断することができ、第2実施形態に対し、診断時間を短縮することができる。
(第4実施形態)
第4実施形態について、図19、図20を参照して説明する。第4実施形態は、三角波比較によりPWM生成する第1実施形態に対し、電圧ベクトル区間毎の3相の電流変化量の絶対値の和の積算値に基づいて、相電流の変化が正常であるか否か判定する。
図19に、PWM1周期における1回目の電圧ベクトルV1及びV2区間について、それぞれ、3相の電流変化量の絶対値の和Σ|ΔiV1|、Σ|ΔiV2|を示す。これらの値は式(5.1)、(5.2)で表される。各電圧ベクトル区間V1、V2は、PWM1周期に2回ずつ現れるため、1区間での値の和が2倍される。
Σ|ΔiV1|=2×(|ΔiV1u|+|ΔiV1v|+|ΔiV1w|)
・・・(5.1)
Σ|ΔiV2|=2×(|ΔiV2u|+|ΔiV2v|+|ΔiV2w|)
・・・(5.2)
各相の電流変化量の絶対値は、図7の値に等しい。例えば電圧ベクトルV1区間でのU相、V相、W相の電流変化量の絶対値、及びそれらの合計値の比は「2:1:1:4」となる。また、第4実施形態における判定値の設定思想は、第1実施形態と同様である。
図20に、第4実施形態による断線診断処理において断線相を判別する処理例のフローチャートを示す。図20のフローチャートは、図9のフローチャートに対し、S22、S32、S42が異なり、その他のステップは共通である。
以下の式(6.1)〜(6.3)では、各相について、相補関係にある2つの電圧ベクトル区間(V1とV4、V3とV6、V2とV5)における「3相の電流変化量の絶対値の和の積算値の合計」が合計判定値Ksumと比較される。
S22では、式(6.1)により、U相の断線が判定される。
Σ|ΔiV1|+Σ|ΔiV4|≦Ksum ・・・(6.1)
S22でNOの場合、S23でFu=0(正常)に設定され、S22でYESの場合、S24でFu=1(異常)に設定される。
S32では、式(6.2)により、V相の断線が判定される。
Σ|ΔiV3|+Σ|ΔiV6|≦Ksum ・・・(6.2)
S32でNOの場合、S33でFv=0(正常)に設定され、S32でYESの場合、S34でFv=1(異常)に設定される。
S42では、式(6.3)により、W相の断線が判定される。
Σ|ΔiV2|+Σ|ΔiV5|≦Ksum ・・・(6.3)
S42でNOの場合、S43でFw=0(正常)に設定され、S42でYESの場合、S44でFw=1(異常)に設定される。
S51、S53、S54、S60は、図9と同様である。
第4実施形態では、各相の電流変化量の絶対値の和を用いて判定するため、S/N比が向上する。したがって、電流指令振幅Iampの振幅閾値Ithを小さく設定することが可能となる。その結果、モータ停止時に通電する断線診断用d軸電流を小さくし、電流損失を低減することができる。
(その他の実施形態)
(a)第2実施形態では、PWM生成部26が第1パターン及び第2パターンを組み合わせ、3方向の電圧ベクトルを用いて出力電圧波形を生成することで、断線診断において各相の断線を診断することができる。しかし、一部の相の断線のみを診断すればよい場合には、第1パターン又は第2パターンの少なくとも一方が用いられればよい。
(b)本発明のモータ制御装置は、ハイブリッド自動車や電気自動車の動力源である主機モータに限らず、PWM制御によりインバータから電力供給されるどのような3相交流モータに適用されてもよい。例えば車両以外のモータにおいて、断線診断時にモータトルクが発生しても支障が無い場合、断線診断用電流はd軸電流に限らずq軸電流を用いてもよい。また、モータの用途によっては、1相以上の断線が検出されても、フェールセーフ処理や異常通知を実施しなくてもよい。
(c)断線診断の情報源として、又は、断線診断を実施する前提条件を確保するために用いられる入力電圧センサ、電流センサ、及び電気角センサは、独立した検出機器として構成されるものに限らない。これらのセンサには、1つ以上のハードウェア又はソフトウェアの組み合わせにより、入力電圧、相電流、電気角の情報を直接又は間接的に検出可能な手段全般を含む。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
20・・・モータ制御装置、
14・・・入力電圧センサ、
21・・・電流指令算出部、
24・・・電圧指令算出部、
26・・・PWM生成部、
28・・・断線診断部、
60・・・インバータ、
80・・・モータ、
85・・・電気角センサ、
87、88・・・電流センサ。

Claims (3)

  1. PWM制御によりインバータ(60)を駆動し、3相交流電力をモータ(80)に供給するモータ制御装置であって、
    トルク指令に基づいてdq軸電流指令を演算する電流指令演算部(21)と、
    dq軸電流指令、及び、入力電圧センサ(14)から取得したインバータ入力電圧に基づいてdq軸電圧指令を演算する電圧指令演算部(24)と、
    q軸電圧指令及び、電気角センサ(85)から取得した前記モータの電気角に基づき、空間ベクトル座標で電圧指令ベクトルを生成する空間ベクトル変調により、前記インバータを駆動する出力電圧波形を生成するPWM生成部(26)と、
    前記インバータから前記モータまでの相電流の通電経路の断線診断を行う断線診断部(28)と、
    を備え、
    前記PWM生成部は、各60°区間の6個のセクターで構成される空間ベクトル座標において、1つ以上のベクトルを合成して生成した電圧指令ベクトルにより、空間ベクトル変調の処理周期であるPWM周期毎に出力電圧波形を生成するものであり、
    前記PWM生成部は、
    電圧指令ベクトルがいずれかのセクター内に存在するとき、
    電圧指令ベクトルが存在する指令セクターの両側の境界をなす60°間隔の2つのベクトルを合成して電圧指令ベクトルを生成する第1パターン、又は、前記指令セクター、及び、前記指令セクターと隣接する隣接セクターの互いに反対側の境界をなす120°間隔の2つのベクトルを合成して電圧指令ベクトルを生成する第2パターン、のうち少なくとも一方のパターンを用いてPWM周期毎に出力電圧波形を生成し、
    電圧指令ベクトルがUVWいずれかの軸線上に存在するとき、
    電圧指令ベクトルが存在する軸線方向の1つのベクトルを合成して電圧指令ベクトルを生成する第1パターン、又は、電圧指令ベクトルをまたぐ2つのセクターの互いに反対側の境界をなす120°間隔の2つのベクトルを合成して電圧指令ベクトルを生成する第2パターン、のうち少なくとも一方のパターンを用いてPWM周期毎に出力電圧波形を生成し、
    前記PWM生成部は、
    複数の前記PWM周期で前記第1パターン及び前記第2パターンの両方を用い、U軸方向、V軸方向、W軸方向の3方向の電圧ベクトルを用いて出力電圧波形を生成し、
    前記断線診断部は、
    記PWM周期において、2相以上の電流センサ(87、88)から取得した各相電流の電流変化量の絶対値の積算値を電圧ベクトル区間毎に算出し、
    少なくとも1相の電流変化量の絶対値の積算値が個別判定値以下のとき、又は、3相の電流変化量の絶対値の和の積算値が合計判定値以下のとき、前記通電経路の断線と診断しするモータ制御装置。
  2. 前記断線診断の開始時に前記モータの回転数が回転数閾値以下であり、且つトルク指令が0であるとき、
    前記電流指令演算部は、電流指令ベクトルの振幅が振幅閾値以上であるd軸電流を前記断線診断用の電流として設定する請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記入力電圧センサ、前記電流センサ、及び前記電気角センサが正常であることを判定した後、前記断線診断部による前記断線診断を実行する請求項1または2に記載のモータ制御装置。
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