JP7000121B2 - 電解コンデンサ用アルミニウム箔及びその製造方法 - Google Patents

電解コンデンサ用アルミニウム箔及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電解コンデンサ用アルミニウム箔及びその製造方法に関する。
アルミニウム箔は、電解コンデンサの電極の素材として使用されることがある。電解コンデンサの電極を作製する場合には、素材としてのアルミニウム箔に電解エッチング処理を施して多数のピットを形成し、拡面率、即ち電極の見掛けの表面積に対する実際の表面積の比率を高くすることが一般的である。
電解コンデンサの静電容量は、電極の表面積が広いほど高くなる。そのため、電極の拡面率を高めることを目的として、Pb等の元素をアルミニウム箔中に添加し、これらの元素を起点として電極に多数のピットを形成する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、Pbを含む結晶性アルミニウム酸化物粒子が箔表面に2.0×10個/mm以上露出しているアルミニウム箔が記載されている。
特開2002-43185号公報
アルミニウム箔の表面には、圧延方向と平行な方向に形成された多数の山状部と、山状部同士の間に介在する谷状部とを備えた圧延痕が形成されている。特許文献1のような従来の電解コンデンサ用アルミニウム箔では、Pbを含む結晶性アルミニウム酸化物粒子や単体Pb粒子が、山状部に存在するクラックなどの核生成サイトとなりやすい部分に生成しやすい。そのため、これらのPbを含む粒子がピット形成の起点となり、電解エッチング処理を施した後に山状部にピットが形成されやすい一方で、谷状部にはピットが形成されにくい。
このように、従来の電解コンデンサ用アルミニウム箔は、電解エッチング処理を施した後に、比較的ピットの数の多い山状部とピットの数の少ない谷状部とが圧延面における圧延方向に直角な方向(以下、圧延直角方向と表記する。)に交互に配置され、ピットの配置に偏りが生じやすいという問題がある。また、従来の電解コンデンサ用アルミニウム箔は、谷状部にピットを形成することにより、電解エッチング処理後の拡面率を高める余地がある。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、電解エッチング処理後の拡面率を高くすることができる電解コンデンサ用アルミニウム箔及びその製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、Pb(鉛):0.50~1.80質量ppm、Cu(銅):15~200質量ppmを含有し、Al(アルミニウム)の純度が99.96質量%以上である高純度アルミニウムからなり、
箔表面に、Pbを含有するPb系粒子を0.50個/μm2以上有しており、
前記箔表面上の任意の位置に、圧延方向の長さが3μmであり、圧延直角方向の長さが5μmである長方形状の単位領域を圧延直角方向に互いに隣接するようにして30か所設定した場合に、前記各単位領域内に1個以上の前記Pb系粒子が含まれている、
電解コンデンサ用アルミニウム箔にある。
本発明の他の態様は、前記の態様の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法であって、
0.50~1.80質量ppmのPbを含有し、Alの純度が99.96質量%以上である高純度アルミニウムからなる板材を準備し、
前記板材に1パス以上の冷間圧延を施し、前記冷間圧延の最終パスにおいて、表面の算術平均粗さRaが0.05~0.3μmである圧延ロールを使用することにより素箔を作製し、
前記素箔を200~350℃の温度で加熱して中間焼鈍を施し、
前記中間焼鈍を施した後の前記素箔に圧下率10~20%の付加圧延を施し、
前記付加圧延を施した後の前記素箔を250~400℃の温度で加熱して予備焼鈍を施すことにより、前記素箔を再結晶させ、
前記予備焼鈍を施した後の前記素箔の表面に1~5%の歪を付与する弱加工を施し、
前記弱加工を施した後の前記素箔を加熱して最終焼鈍を施すことにより、箔表面に前記Pb系粒子を形成する、
電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法にある。
前記電解コンデンサ用アルミニウム箔(以下、単に「アルミニウム箔」と記載する。)は、前記特定の範囲の化学成分を備えた高純度アルミニウムからなり、箔表面に0.50個/μm2以上のPb系粒子を有している。そのため、電解エッチング処理を施した際に、Pb系粒子が起点となり、前記アルミニウム箔の厚さ方向にトンネル状に伸長したピットを形成することができる。
また、前記アルミニウム箔は、箔表面全体のPb系粒子の数密度を前記特定の範囲としただけではなく、圧延直角方向におけるPb系粒子の配置が前述のごとく規定されている。圧延痕における谷状部の幅は、通常、数μm~数十μm程度であるため、圧延直角方向におけるPb系粒子の配置を前述のごとく規定することにより、谷状部に配置されるPb系粒子の数を多くすることができる。
それ故、前記アルミニウム箔によれば、電解エッチング処理を施した後に谷状部に形成されるピットの数を従来のアルミニウム箔よりも多くするとともにピットの分布の偏りを抑制することができる。その結果、電解エッチング処理後の、拡面率を高くすることができる。
前記アルミニウム箔は、例えば、前記の態様の製造方法により作製することができる。前記製造方法においては、冷間圧延後の素箔に中間焼鈍を施すことにより、素箔中にCube方位を備えた結晶粒を生成することができる。そして、予備焼鈍によって素箔内部に残存する歪を一旦除去した後、弱加工により改めて素箔に歪を付与することにより、素箔内部の歪の偏りを軽減することができる。このように歪の偏りを軽減した状態で素箔に最終焼鈍を施すことにより、圧延直角方向におけるPb系粒子の配置の偏りを軽減し、谷状部に配置されるPb系粒子の数を多くすることができる。それ故、前記製造方法によれば、前記アルミニウム箔を容易に作製することができる。
実験例における、アルミニウム箔の表面を示す平面図である。
前記アルミニウム箔を構成する高純度アルミニウム中には、Pb(鉛):0.50~1.80質量ppmが含まれている。Pbの含有量を0.50質量ppm以上とすることにより、箔表面に形成されるPb系粒子の数密度を前記特定の範囲とすることができる。その結果、電解エッチング後のピットの数を増やし、拡面率を高めることができる。Pb系粒子の数密度をより大きくする観点からは、Pbの含有量を0.80質量ppm以上とすることが好ましい。
一方、Pbの含有量が過度に多くなると、電解エッチング処理の際に、アルミニウム箔の表面が溶解しやすくなる。そのため、Cube方位の溶解が始まる前にアルミニウム箔の表面全体が溶解し、ピットの形成が妨げられるおそれがある。前記アルミニウム箔中のPbの含有量を1.80質量ppm以下とすることにより、アルミニウム箔の表面全体の溶解を抑制し、電解エッチング後の拡面率を高くすることができる。アルミニウム箔の表面全体の溶解をより効果的に抑制する観点からは、前記アルミニウム箔中のPbの含有量を1.50質量ppm以下とすることが好ましい。
また、前記アルミニウム箔を構成する高純度アルミニウム中には、Cu:15~200質量ppmが含まれている。Cuの含有量を前記特定の範囲とすることにより、電解エッチング処理におけるエッチング性を向上させることができる。その結果、電解エッチング処理後の拡面率を高くすることができる。
Cuの含有量が15ppm未満の場合、エッチング性の向上に及ぼす効果が不十分であり、拡面率を高くすることが難しい。一方、Cu量が200質量ppmを超える場合、電解エッチング中の前記アルミニウム箔の表面全体の溶解が過剰となり、拡面率の低下を招くおそれがある。アルミニウム箔の表面全体の溶解をより効果的に抑制する観点からは、前記アルミニウム箔中のCuの含有量を150質量ppm以下とすることが好ましい。
また、高純度アルミニウムにおけるAlの純度は99.96質量%以上である。高純度アルミニウム中には、例えば、必須成分としてのPb、Cu以外に、アルミニウム地金に起因する不可避的不純物が含有されている。かかる不純物としては、例えば、Mg、Mn、Ti等がある。高純度アルミニウムにおけるAlの純度を前記特定の範囲とすることにより、前記アルミニウム箔中におけるCube方位(つまり、面指数{001}<100>により特定される結晶方位)の占有率を高くすることができる。
アルミニウム箔中のCube方位は、電解エッチング処理において他の方位よりも先に溶解しやすいため、ピットをアルミニウム箔の厚さ方向に成長させることができる。それ故、前記アルミニウム箔は、電解エッチング処理後のピットの配向性を高め、ひいては拡面率を高くすることができる。電解エッチング処理後の拡面率をより高くする観点からは、前記アルミニウム箔中のAlの純度を99.98質量%以上とすることが好ましい。
Alの純度が前記特定の範囲よりも少ない場合には、前記アルミニウム箔中におけるCube方位の占有率が著しく低下するおそれがある。この場合には、ピットがアルミニウム箔の厚さ方向とは異なる方向に成長しやすくなるため、電解エッチング処理後のピットの配向性の悪化を招くおそれがある。その結果、電解エッチング後の拡面率の低下を招くおそれがある。
前記アルミニウム箔は、箔表面に、Pbを含有するPb系粒子を0.5個/μm2以上有している。Pb系粒子には、例えば、単体Pbからなる粒子やPbを含有する結晶性酸化物からなる粒子が含まれる。前述したように、Pbは、電解エッチング処理を施した際のピット形成の起点となる。そのため、Pb系粒子の数密度を前記特定の範囲とすることにより、電解エッチング処理によって多数のピットを形成し、拡面率を高くすることができる。ピットの数をより多くする観点からは、Pb系粒子の数密度を1.0個/μm2以上とすることが好ましい。
Pb系粒子の数密度が0.5個/μm2未満の場合には、電解エッチング処理後のピットの数が少なくなるため、拡面率の低下を招くおそれがある。なお、ピットの数を多くする観点からは酸化物粒子の数密度に上限はない。
前述したPb系粒子の数密度は、箔表面全体に存在するPb系粒子の数の平均を示す値である。即ち、例えばPb系粒子の数密度が1.0個/μm2である場合には、箔表面全体を平均したときに、単位面積当たり1.0個のPb系粒子が存在していることを示している。
Pb系粒子の数密度は、例えば、以下の方法により算出することができる。まず、走査型電子顕微鏡等を用いて前記アルミニウム箔の表面を観察し、視野中のPb系粒子の数を数える。このときの視野の面積は、箔表面全体におけるPb系粒子の数密度を代表することができる範囲であれば、特に限定されることはない。例えば、視野の面積は、450μm2以上とすることができる。
視野内に存在するPb系粒子の数(個)を視野の面積(μm2)で除することにより、Pb系粒子の数密度(個/μm2)を算出することができる。なお、1回の観察における視野の面積が前記特定の範囲よりも狭い場合には、観察位置を変更して複数の視野について観察を行い、各視野に存在するPb系粒子の数の合計(個)及び視野の面積の合計(μm2)に基づいて数密度を算出してもよい。
また、前記アルミニウム箔は、箔表面上の任意の位置に、圧延方向の長さが3μmであり、圧延直角方向の長さが5μmである長方形状の単位領域を圧延直角方向に30か所隣接して設定した場合に、前記各単位領域内に1個以上のPb系粒子を有している。即ち、前記アルミニウム箔においては、圧延痕における谷状部の幅と同等またはそれ以下の幅を有する前記単位領域内に、ピット形成の起点となるPb系粒子を1個以上有している。
これにより、電解エッチング処理を施した後の、圧延痕の山状部におけるピットの数と谷状部におけるピットの数との差を低減し、圧延直角方向に均一にピットを形成することができる。その結果、従来のアルミニウム箔に比べて電解エッチング処理後の拡面率を高くすることができる。
前述のように設定した30か所の単位領域のうち、1か所以上の単位領域においてPb系粒子の数が0となる場合には、圧延直角方向におけるピットの数の偏りが大きくなるおそれがある。その結果、電解エッチング処理後の拡面率を向上させる効果の低下を招くおそれがある。
前記アルミニウム箔を作製するに当たっては、まず、高純度アルミニウムからなる板材を準備する。板材は、例えば、高純度アルミニウムからなる鋳塊に、熱間圧延、冷間圧延及び熱処理を適宜組み合わせて実施することにより作製することができる。
次いで、板材に1パス以上の冷間圧延を施すことにより、素箔を作製する。冷間圧延の最終パスにおいては、表面の算術平均粗さRaが0.05~0.3μmである圧延ロールを使用して素箔の圧延を行う。前記圧延ロールの表面形状は、冷間圧延の最終パスにおいて箔表面に転写される。これにより、素箔の表面に圧延痕が形成される。
算術平均粗さRaの小さい圧延ロールを用いて冷間圧延の最終パスを行うことにより、素箔の表面に形成される圧延痕の凹凸、即ち山状部と谷状部との高さの差を小さくすることができる。これにより、従来のアルミニウム箔に比べて、山状部に形成されるPb系粒子の数を低減することができる。そして、圧延痕の凹凸の低減による効果と、予備焼鈍及び弱加工による歪の付与の効果とが相乗的に作用することにより、山状部に形成されるPb系粒子の数と谷状部に形成されるPb系粒子の数との差をより低減し、圧延直角方向におけるPb系粒子の配置の偏りをより軽減することができる。
それ故、前記特定の圧延ロールを用いて冷間圧延の最終パスを行うことにより、電解エッチング処理を施した後の拡面率をより高くすることができるアルミニウム箔を作製することができる。
中間焼鈍においては、素箔を200~350℃の温度で加熱する。前記特定の温度域にて中間焼鈍することにより部分再結晶を生じる。次いで、素箔にスキンパス、即ち、圧下率10~20%の付加圧延を施す。
付加圧延の後、素箔を250~400℃の温度で加熱して予備焼鈍を施すことにより、素箔を再結晶させる。予備焼鈍において、前記特定の温度範囲で素箔を加熱することにより、素箔の内部に生じた歪を除去することができる。
予備焼鈍における加熱温度が250℃未満の場合には、素箔内部の歪の除去が不十分となるおそれがある。そのため、この場合には、前記アルミニウム箔において、圧延直角方向におけるPb系粒子の配置の偏りが大きくなるおそれがある。予備焼鈍における加熱温度が400℃を超える場合には、付加圧延の完了までに素箔に付与された歪を起点としてPb系粒子が形成され、Pb系粒子の配置の偏りが大きくなるおそれがある。
予備焼鈍を行った後、素箔を室温まで冷却する。冷却方法としては、例えば、自然空冷、ファン空冷等の公知の方法を採用することができる。冷却が完了した素箔に弱加工を施すことにより、素箔に1~5%の歪を付与する。これにより、素箔の表面全体に均一に歪を付与し、圧延直角方向におけるPb系粒子の配置の偏りを軽減することができる。
弱加工としては、例えば、張力を加えることにより前記素箔に1~5%の歪を付与する加工を行うことができる。張力を加える方向は、例えば、圧延方向であってもよいし、圧延直角方向であってもよい。この場合には、比較的簡素な工程により素箔に歪を付与することができる。また、長尺の素箔を使用してアルミニウム箔を作製する場合には、長手方向に素箔を搬送しながら連続的に張力を付与することができる。そのため、アルミニウム箔を連続的に生産することができるという長尺の素箔のメリットを損なうことなく弱加工を施すことができる。
その後、素箔を加熱して最終焼鈍を施すことにより、箔表面に前記Pb系粒子を形成する。これにより、前記アルミニウム箔を得ることができる。最終焼鈍における加熱温度は、例えば、500~580℃の範囲から適宜設定することができる。また、最終焼鈍における加熱雰囲気は、不活性ガス雰囲気とすることができる。
前記アルミニウム箔及びその製造方法の実施例を、図1を用いて説明する。なお、本発明に係るアルミニウム箔及びその製造方法の具体的な態様は、以下に示す実施例の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
本例においては、まず、表1に示す化学成分を有する板材を準備した。板材の準備に当たっては、まず、半連続鋳造法により、表1に示す化学成分を備えた高純度アルミニウムの鋳塊を作製した。次いで、鋳塊に均質化処理及び熱間圧延を順次施すことにより、板厚5mmの板材を作製した。
この板材に複数パスの冷間圧延を施して素箔を作製した。また、冷間圧延の最終パスにおいては、表1に示す算術平均粗さRaを備えた圧延ロールを使用して板材の圧延を行った。
冷間圧延の後、大気雰囲気下において素箔を230℃まで加熱して中間焼鈍を行った。次いで、素箔に圧下率を15%とした付加圧延(スキンパス)を行い、素箔の厚さを0.13mmにした。
その後、表1に示す条件で素箔に予備焼鈍、冷却、弱加工及び最終焼鈍を順次施すことにより、試験材A1~A3を作製した。また、試験材A1~A3との比較のために、表1に示すように条件を変更して試験材A4~A9を作製した。具体的には、試験材A4については、予備焼鈍及び弱加工を省略した。試験材A5については、予備焼鈍を省略した。
試験材A6については、予備焼鈍及び弱加工を省略した。また、表1に示すように、最終焼鈍において、400℃の温度を5時間保持した後、冷却せずに560℃まで加熱し、560℃の温度を13時間保持する条件を採用した。試験材A7については、冷間圧延の最終パスにおいて使用した圧延ロールの算術平均粗さRaを大きくした。試験材A8及びA9については、Pbの含有量を変更した。
なお、いずれの試験材の作製条件においても、予備焼鈍及び最終焼鈍における雰囲気はアルゴン雰囲気とした。また、弱加工としては、試験材に圧延方向と平行な方向への張力を与え、1~5%の伸びを付与する加工を採用した。
以上により得られた試験材A1~A9について、箔表面に存在するPb系粒子の数密度及び圧延直角方向におけるPb系粒子の分布状態を、以下の方法により評価した。
・Pb系粒子の数密度
電界放出形走査電子顕微鏡(Carl Zeiss社製「Ultra Plus」)を用い、箔表面の反射電子組成像を取得した。反射電子組成像においては、例えば図1に示すように、アルミニウム箔1の箔表面上に点在する複数のPb系粒子2が観察された。この反射電子組成像内から無作為に選択した位置に、圧延方向の長さが3μmであり、圧延直角方向の長さが5μmである長方形状の単位領域U(U1~U30)を圧延直角方向に30か所隣接して設定した。そして、これら30か所の単位領域U1~U30内に存在するPb系粒子2の合計を、単位領域U1~U30の面積の合計で除した値をPb系粒子2の数密度とした。各試験材におけるPb系粒子の数密度は、表2に示した通りであった。
・Pb系粒子の分布状態
前記の方法において、各単位領域U1~U30内に存在するPb系粒子2の数を数えた。その結果は、表3に示した通りであった。また、各単位領域U1~U30内に存在するPb系粒子2の数を数えた結果、30か所の単位領域U1~U30全てに1個以上のPb系粒子2が存在していた場合には、表2の「分布状態」欄に記号「A」を記載し、1個所以上の単位領域U1~U30においてPb系粒子2の数が0となった場合には、同欄に記号「B」を記載した。
次に、以下の方法により、各試験材に電解エッチング処理を施した場合の静電容量の測定を行った。
・静電容量の測定
試験材の電解エッチング処理は、1次電解処理と、2次電解処理との2段階に分けて実施した。1次電解処理においては、電解液の温度を83℃とし、電流密度20A/dmの直流電流を100秒間通電させた。また、1次電解処理における電解液としては、1.0mol/Lの塩酸と3.0mol/Lの硫酸との混合水溶液を使用した。2次電解処理においては、電解液の温度を74℃とし、電流密度10A/dmの直流電流を300秒間通電させた。また、2次電解処理における電解液としては、1.5mol/Lの硝酸水溶液を使用した。
電解エッチング処理が完了した後、試験材をホウ酸アンモニウム水溶液中に浸漬し、500Vの電圧を印加することにより試験材に化成処理を行った。その後、LCRメータを使用して試験材の静電容量を測定した。各試験材の静電容量は、表2に示した通りであった。なお、表2に示した静電容量は、試験材A1の静電容量の値を100.0%とした場合の比率である。
Figure 0007000121000001
Figure 0007000121000002
Figure 0007000121000003
試験材A1~A3は、表1及び表2に示したように、Pbの含有量、Cuの含有量及びAlの純度がいずれも前記特定の範囲内である高純度アルミニウムから構成されている。また、表2及び表3に示すように、試験材A1~A3のPb系粒子は、前記特定の範囲の数密度を有し、かつ、圧延直角方向における配置の偏りが少なくなるように配置された。そのため、これらの試験材は、電解エッチング処理後の拡面率を高くし、静電容量を向上させることができた。
試験材A4及びA6は、表1に示すように、付加圧延の後に予備焼鈍及び弱加工を実施しなかった。また、試験材A5は、付加圧延の後に予備焼鈍を実施しなかった。そのため、これらの試験体は、表3に示すように、圧延直角方向におけるPb系粒子の配置の偏りが大きくなり、1個所以上の単位領域U(図1参照)においてPb系粒子の数が0となった。その結果、電解エッチング処理後の拡面率が試験材A1~A3に比べて低くなり、静電容量の低下を招いた。
試験材A7は、冷間圧延の最終パスにおいて算術平均粗さRaの大きい圧延ロール(表1参照)を使用した結果、圧延痕における山状部と谷状部との高さの差が大きくなった。そのため、表3に示すように、圧延直角方向におけるPb系粒子の配置の偏りが大きくなり、1個所以上の単位領域UにおいてPb系粒子の数が0となった。その結果、電解エッチング処理後の拡面率が試験材A1~A3に比べて低くなり、静電容量の低下を招いた。
試験材A8は、表2に示すように、Pbの含有量及びPb系粒子の数密度が前記特定の範囲よりも少なかったため、ピットの数が少なくなった。その結果、電解エッチング処理後の拡面率が試験材A1~A3に比べて低くなり、静電容量の低下を招いた。
試験材A9は、表2に示すように、Pbの含有量が前記特定の範囲よりも多かった。そのため、電解エッチング処理中の試験材の表面の溶解量が多くなり、ピットの形成に遅れが発生した。その結果、電解エッチング処理後の拡面率が試験材A1~A3に比べて低くなり、静電容量の低下を招いた。
1 アルミニウム箔
2 Pb系粒子
U 単位領域

Claims (4)

  1. Pb:0.50~1.8質量ppm、Cu:15~200質量ppmを含有し、Alの純度が99.96質量%以上である高純度アルミニウムからなり、
    箔表面に、Pbを含有するPb系粒子を0.50個/μm2以上有しており、
    前記箔表面上の任意の位置に、圧延方向の長さが3μmであり、圧延直角方向の長さが5μmである長方形状の単位領域を圧延直角方向に30か所隣接して設定した場合に、前記各単位領域内に1個以上の前記Pb系粒子が含まれている、
    電解コンデンサ用アルミニウム箔。
  2. 圧延直角方向における箔表面の算術平均粗さRaが0.05~0.3μmである、請求項1に記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔。
  3. 請求項1または2に記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法であって、
    Pb:0.50~1.8質量ppm、Cu:15~200質量ppmを含有し、Alの純度が99.96質量%以上である高純度アルミニウムからなる板材を準備し、
    前記板材に1パス以上の冷間圧延を施し、前記冷間圧延の最終パスにおいて、表面の算術平均粗さRaが0.05~0.3μmである圧延ロールを使用することにより素箔を作製し、
    前記素箔を200~350℃の温度で加熱して中間焼鈍を施し、
    前記中間焼鈍を施した後の前記素箔に圧下率10~20%の付加圧延を施し、
    前記付加圧延を施した後の前記素箔を250~400℃の温度で加熱して予備焼鈍を施すことにより、前記素箔を再結晶させ、
    前記予備焼鈍を施した後の前記素箔の表面に1~5%の歪を付与する弱加工を施し、
    前記弱加工を施した後の前記素箔を加熱して最終焼鈍を施すことにより、箔表面に前記Pb系粒子を形成する、
    電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法。
  4. 前記弱加工において、張力を加えることにより前記素箔の表面に1~5%の歪を付与する、請求項3に記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法。
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