JP4102408B2 - 電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法 - Google Patents
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Cu添加材は、Cuの作用によってエッチング性を向上させるものの、多過ぎると、粗大なピットを形成し、過溶解を引き起こす。また、コンデンサに組み込んだ際に、短絡などの安全上(信頼性)の問題が発生したり、エッチング時に液中に溶解したCuが再析出し、それの除去の為に後処理が必要となるなどの問題が発生する。
Siはエッチングの起点となる析出物を形成させる。ただし、0.01%未満では、Siの絶対量が少なく、その作用が十分発揮されない。一方、0.30%を越えると、析出が進行し、過溶解となり、エッテング形態が不均一になり、静電容量が低下する。このため、Si含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、Si含有量の下限を0.02%、上限を0.15%とするのが望ましい。
Feはエッチングの起点となる析出物を形成させ、また、強度を高める作用がある。ただし、0.01%未満ではFe絶対量が少なく、その作用が十分発揮されない。一方、0.30%を越えると析出が進行し、過溶解となり、エッチング形態が不均一になり、静電容量が低下する。このため、Fe含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、Fe含有量の下限を0.02%、上限を0.15%とするのが望ましい。
NiはAl−(Ni、Fe)系の析出物を形成する。これらは、電位的に貴であり、バルクとの間で局部電池反応を起こし、エッチング性を向上させる。ただし、0.0021%未満では十分な数のAl−(Ni、Fe)系の析出物が得られなく、分散が不十分の為、不均一なエッチング形態となる。一方、0.05%を越えると、大きな析出物が形成され易くなり、エッチングにより粗大なピットが発生し、好ましくない。このため、Ni含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、Ni含有量の下限を0.0051%、上限を0.03%とするのが望ましい。
Cuは含有量の増加と共に粗大なピットが形成され易くなり、過溶解を引き起こす。また、コンデンサに組み込まれた際に、漏れ電流の原因となり、短絡による爆発の危険性がある(安全上の問題)。また、エッチングの進行と共に、一度溶解したCuが箔に再析出する為、特殊な後処理が必要となる。これらの問題を回避するため、0.005%以下に規制する。なお、同様の理由でさらに0.003%以下とするのが望ましい。
Mnは0.005%超だと、比較的大きなAl−Mn系晶出物が生じ易く、粗大ピット、過溶解を生じる。さらに、エッチング時に液中に溶出し、廃液処理上の問題が生じるので、0.005%以下に規制する。なお、同様の理由でさらに0.003%以下とするのが望ましい。
Tiは組織を微細かつ均一にする作用があり、これによりNiの均一溶解性を高める作用がある。ただし、0.0016%未満では前記効果が不十分である。一方、0.05%を越えると溶解性が高くなり、過度に表面溶解が進行する為、好ましくない。このため、Ti含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、Ti含有量の下限を0.0050%、上限を0.03%とするのが望ましい。
BはTiと作用し、微細化効果を高める。それによりNiの均一溶解性を高める作用がある。ただし、0.0031%未満では効果が不十分である。一方、0.05%を越えると溶解性が高くなり、過度に表面溶解が進行するため好ましくない。このため、B含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、B含有量の下限を0.0050%、上限を0.03%とするのが望ましい。
Gaは表面へ濃縮し易く、表面の溶解性を高めてエッチング性を向上させる作用がある。ただし、0.005%未満では、効果不十分であり、0.005%超では、過溶解となるので、Ga含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、Ga含有量の下限を0.008%、上限を0.03%とするのが望ましい。
本発明では、アルミニウム箔の製造に際し、該箔の原料となるアルミニウム合金に対し均質化処理を行う。該均質化処理により、Al−(Ni、Fe)系の析出物を均一に分散させることができ、エッチング性の向上を確実なものとする。該均質化処理において、加熱温度が550℃未満または加熱時間が1時間未満であると、Al−(Ni、Fe)系析出物の析出が不十分となるため、均質化条件を上記の通り定める。なお、同様の理由で 570℃以上、4時間以上の条件とするのが望ましい。
本発明の合金組成に調整したアルミニウム合金は、半連続鋳造などによる常法により溶製することができ、本発明としては特にその方法が特定されるものではない。得られた合金鋳塊は、本発明の製造方法にしたがって、550℃以上、1時間以上の均質化処理を行う。該均質化処理は、適宜の加熱炉などを用いて行うことができ、加熱方法、加熱手段が特に限定されるものではない。均質化処理後のアルミニウム合金に対しては、常法により熱間圧延、冷間圧延を行うことができる。熱間圧延前には、アルミニウム合金に対し均熱することもできる。また、冷間圧延に際し、中間焼鈍を行うことも可能である。該中間焼鈍の条件が限定されるものではないが、例えば300〜500℃で1〜24時間の条件で行うことができる。
エッチング処理においては、ピットが高密度で形成され、高い粗面化率が得られる。この箔を化成処理し、必要な耐電圧を得た後、常法により電解コンデンサに電極として組み込むことにより静電容量の高いコンデンサが得られる。本発明としては化成処理の方法が特に限定されるものではない。
表1に示す組成(残部Alおよびその他の不純物)で常法によりアルミニウム合金鋳塊を溶製し、該アルミニウム合金鋳塊に対し、表1に示す条件で均質化処理を行った。該鋳塊を熱間圧延で板厚7mmに仕上げた後、冷間圧延を行い、400℃×4時間の条件で中間焼鈍を行った。その後、最終板厚50μmに冷間圧延をして供試材を得た。
第1段階:6M−HCl+0.5M−H3PO4、50℃×60sec
第2段階:2M−HCl+1.5M−H3PO4、40℃×180sec
の条件でエッチング処理した後、85℃のアジピン酸アンモニウム溶液中で3V化成後、静電容量を測定した。静電容量は、供試材No.1の静電容量を100とした相対評価により行った。また、強度の指標として最終冷延後の引張強さを測定し、供試材No.1の引張強さを100としたときの相対比較で表わした。これらの結果を表1に示した。
表1から明らかなように、本発明の供試材では、Cu、Mnを積極的に添加することなく高い強度と静電容量が得られており、均質化処理を行うことによって静電容量のさらなる向上が確認された。
Claims (1)
- 質量%で、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Ni:0.0021〜0.05%、Ti:0.0016〜0.05%、B:0.0031〜0.05%、Ga:0.005〜0.05%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、かつ該不可避不純物中で、Cu:0.005%以下、Mn:0.005%以下に規制したアルミニウム箔用合金に550℃以上で1時間以上加熱する均質化処理を施し、その後、熱間圧延および冷間圧延を行うことを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
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