JP4021923B1 - 電解コンデンサ電極用アルミニウム箔およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】エッチング性および信頼性に優れ、無電解エッチングが可能な電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を提供する。
【解決手段】質量%で、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Ni:0.0051〜0.05%と、Zn、Sn、Ga、Inの内、少なくとも1種類以上とを合計で0.0030〜0.10%(Zn単独では0.02%超〜0.10%)含有し、さらに所望によりCu:0.0051〜0.10%含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成とする。また該組成のアルミニウム合金に、550℃以上、1時間以上の均質化処理を施して電解コンデンサ電極用アルミニウム箔とする。無電解エッチングにおいても均一なピットを高密度に形成することができ、高静電容量および高信頼性を兼ね備えた電解コンデンサ電極を低コストで製造できる。
【選択図】図1

Description

この発明は、電解コンデンサの電極として用いる際にエッチングが施される電解コンデンサ電極用アルミニウム箔およびその製造方法に関するものであり、特に陰極用のアルミニウム箔への適用に好適である。
電解コンデンサの陰極に用いられるアルミニウム箔としては、純Al系と合金系(主にAl−Cu系、Al−Mn系)が用いられている。このうち純Al系は、不純物が少なく、信頼性は高いが、溶解性が低いため、電解エッチングが採用されており、コストが高いという課題を有している。一方、合金系は不純物が多く信頼性が低いとされている。例えば、Al−Cu系(例えば、特許文献1参照)は、Cuの含有によりエッチング性を向上させるものの、コンデンサに組み込んだ際に、電解液中に溶出したCuが析出し、短絡などの安全上(信頼性)の問題が発生する。また、Al−Mn系(例えば、特許文献2参照)は、Mnの含有によりエッチング性を向上させるものの、エッチング時に溶出したMnを含有するエッチング液の廃液処理上の問題(環境問題)が発生する。ただし、これら合金系は、溶解性が高いため、無電解エッチングが可能であり、コストの低い製造方法の採用が可能である。
したがって、信頼性重視の観点からは純Al系が選定され、コスト重視の観点では合金系が選定されている。
特開2002−80927号公報 特開2004−076059号公報
ところで最近では、コンデンサが使用される製品の全体的な品質レベルの向上に伴い、コンデンサに対しても信頼性が重要視されるようになり、電極に使用されるアルミニウム箔も信頼性の高い純Al系が主流となる傾向にある。しかし、上記したように従来の純Al系アルミニウム箔は電解エッチングが必要なため高コストとなる問題点を有している。このため低コスト化が望める無電解エッチングが可能な純Al系アルミニウム箔の開発要求が強くなっている。
これに対し、本願発明者らは、純Al系ベースにNiなどを添加することにより無電解エッチングを可能にしたアルミニウム箔を提案している。しかし、当該アルミニウム箔は、エッチングが圧延目の凹凸に集中しやすく、結果的に未エッチ領域がスジ状に残存し、均一性不良や外観不良の問題が発生している。
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、無電解エッチングにおいても均一性の高いエッチングが可能であり、したがってコストが安く、且つ信頼性の高いアルミニウム箔およびその製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明のうち、第1の発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔は、質量%で、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Ni:0.0051〜0.05%を含有し、さらにSn、Ga、Inの内少なくとも1種以上を合計0.003〜0.10%含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有することを特徴とする。
第2の発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔は、質量%で、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Ni:0.0051〜0.05%、Zn:0.02%超〜0.10%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有することを特徴とする。
第3の発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔は、質量%で、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Ni:0.0051〜0.05%を含有し、さらにZnと、Sn、Ga、Inの内少なくとも1種以上とを合計0.003〜0.10%含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有することを特徴とする。
第4の発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔は、第1の発明〜第3の発明のいずれかに記載の組成に、さらにCuを0.0051〜0.10%未満含有することを特徴とする。
第5の発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法は、第1の発明〜第4の発明のいずれかに記載の組成を有するアルミニウム合金に、550℃以上で1時間以上均質化処理を実施することを特徴とする。
本発明によれば、純Al系ベースにNiと、Zn、Sn、Ga、Inの内、少なくとも1種類以上と、さらに所望によりCuを添加することで、無電解エッチングが可能になり、微細、且つ均一性の高いピットが形成される電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を提供する。
以下に、本発明で規定するアルミニウム箔の成分限定理由および製造条件について説明する。
Si:0.01〜0.30%
Siはエッチング時の起点となる析出物を形成させる。ただし、0.01%未満では、Siの絶対量が少なく、その作用が十分発揮されない。また、高純度化のためにコストアップとなる。一方、0.30%を超えると、析出が進行し、過溶解となり、エッチング形態が不均一となり、静電容量が低下する。このため、Si含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、Si含有量の下限を0.02%、上限を0.15%とするのが望ましい。
Fe:0.01〜0.30%
Feはエッチングの起点となる析出物を形成させ、また強度を高める作用がある。ただし、0.01%未満ではFeの絶対量が少なく、その作用が十分発揮されない。また、高純度化のためにコストアップとなる。一方、0.30%を超えると、析出が進行し、過溶解となり、エッチング形態が不均一になり、静電容量が低下する。このため、Fe含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、Fe含有量の下限を0.02%、上限を0.15%とするのが望ましい。
Ni:0.0051〜0.05%
NiはAl−(Ni、Fe)系の析出物を形成する。これらは、電位的に貴であり、バルクとの間で局部電池反応を起こし、エッチング性を向上させる。ただし、0.0051%未満では十分な数のAl−(Ni、Fe)系の析出物が得られず、分散が不十分の為、不均一なエッチング形態となる。一方、0.05%超では、大きな析出物が形成され易くなり、エッチングにより粗大なピットが発生し、好ましくない。このため、Ni含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、Ni含有量の下限を0.0075%、上限を0.03%とするのが望ましい。
Zn、Sn、In、Gaの内、少なくとも1種類以上:合計0.0030〜0.10%
これらの元素は上記範囲内ではAl中に固溶した状態で存在し、バルクの電位を卑にし、Al−(Ni、Fe)系析出物との電位差を増大する作用がある。これにより、電気化学的に卑なバルクにおいて溶解が進行し易くなり、表面のエッチング均一性が向上する。上記含有量が0.0030%未満であると、上記効果が不十分となり、0.10%を超えると不純物量が多くなり過ぎ、過溶解となる。このため上記元素の合計含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で下限を0.0050%、上限を0.05%とするのが望ましい。なお、Zn単独の場合には、上記作用を確実に得るために、下限を0.02%超とすることが必要である。
Cu:0.0051〜0.10%
CuはAl中に固溶し、材料強度を高める作用がある。ただし、0.0051%未満ではCuの絶対量が少なく、その作用が十分発揮されない。一方、0.10%を超えると、不純物量が多くなり過ぎ、過溶解または全面溶解が発生する。また、コンデンサに組み込んだ際に、短絡などの安全上(信頼性)の問題が発生したり、エッチング時に液中に溶解したCuが再析出し、その除去の為に後処理が必要となるなどの問題が発生する。このため上記各元素の含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で下限を0.0075%、上限を0.05%未満とするのが望ましい。
均質化処理:550℃以上、1時間以上
熱間圧延前に、上記組成のアルミニウム合金に、均質化処理を施すことにより、Al−(Ni、Fe)系析出物を均一に分散させてエッチング性をより高めて無電解エッチングをより確実に可能にする。ただし、均質化処理温度が550℃未満、または均質化処理時間が1時間未満であると、Al−(Ni、Fe)系析出物の析出が不十分で所望の効果を得ることができない。
以上、説明したように本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔によれば、質量%で、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Ni:0.0051〜0.05%と、Zn、Sn、In、Gaの内、少なくとも1種類以上とを合計0.0030〜0.10%(Zn単独では0.02%超〜0.10%)含有し、さらに所望によりCu:0.0051〜0.10%含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有するので、信頼性を維持したままでエッチング性を向上させることができ、無電解エッチングの採用も可能になり、低コストで信頼性の高い電解コンデンサ電極を提供することが可能になる。
また、本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法によれば、上記組成の合金に、550℃以上で1時間以上の均質化処理を施して、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を製造するものとしたので、表面層に析出物を適度に濃化させることができ、該析出物により均一性の高いエッチングが可能となり、無電解エッチングにおいても未エッチング部が生じない良好なエッチングが可能となる。この結果、コストが低く、且つ信頼性の高い電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得ることができる。
以下に、本発明の一実施形態を図1に基づいて説明する。
本発明の合金組成に調整したアルミニウム合金は、半連続鋳造などによる常法などにより溶製する(工程1)。本発明としては特にその溶製方法が特定されるものではない。得られた合金鋳塊は、550℃以上、1時間以上の均質化処理(工程2)を行う。該均質化処理は、適宜の加熱炉などを用いて行うことができ、加熱方法、加熱手段が特に限定されるものではない。均質化処理後のアルミニウム合金に対しては、常法により熱間圧延を行うことができる。熱間圧延前(工程4)には、アルミニウム合金に対し均熱する(工程3)こともでき、例えば530℃以上に加熱する。本発明としては、熱間圧延における条件は特に限定をされるものではない。熱間処理後に、箔圧延を含む冷間圧延を行う。
冷間圧延に際しては中間焼鈍を行ってもよい。この中間焼鈍前に、75%以上、98%未満の圧下率で冷間圧延(工程5)を行うのが望ましい。中間焼鈍(工程6)は、300〜500℃の加熱温度を条件にして1〜9時間の保持時間を行うことができる。中間焼鈍は、既知の焼鈍炉などを用いて行うことができる。中間焼鈍後は、最終厚さの箔にまで冷間圧延(工程7)を行う。中間焼鈍後の圧下率は本発明としては特に限定をしないが、例えば70〜99%の圧下率とすることができる。
上記冷間圧延によって、例えば数十μmから100μm程度のアルミニウム箔を得ることができるが、本発明としては最終品としてのアルミニウム箔の厚さが特に限定されるものではない。
上記各工程を経て得られたアルミニウム箔には、その後、熱処理を施すことなく、エッチング処理(工程8)がなされる。なお、冷間圧延終了後に熱処理を行うと、回復や再結晶が起こり、強度低下を引き起こすため、冷間圧延後に熱処理を施さないのが望ましい。
エッチング工程は塩酸を主体とする電解液や塩酸を含まない(1000ppm以下)電解液を用いた電解エッチングや無電解エッチングにより行うことができる。コスト面では無電解エッチングが有利である。
エッチング処理においては、ピットが高密度で均一に形成され、未エッチング部が生じることなく高い粗面化率が得られる。この箔を化成処理し、必要な耐電圧を得た後、常法により電解コンデンサに電極として組み込むことにより静電容量の高いコンデンサが得られる。本発明としては化成処理の方法が特に限定されるものではない。
本発明は電解コンデンサの陰極として使用するのが好適であるが、本発明としてはこれに限定されるものではなく、例えば化成電圧の低い電解コンデンサの陽極しても使用することができる。
次に、本発明の実施例を説明する。
表1に示す組成(残部Alおよびその他の不純物)において、常法によりアルミニウム合金鋳塊を溶製し、該アルミニウム合金鋳塊に対し、表1に示す条件において均質化処理を行った。該鋳塊を530℃×4時間で均熱処理した後、熱間圧延で板厚7mmに仕上げた後、圧下率85%で冷間圧延を行い、その後、350℃×4時間で中間焼鈍を行った。その後、最終板厚50μmに冷間圧延をして供試材を得た。
上記供試材を、
第1段階:6M−HCl+0.5M−HPO、50℃×60sec
第2段階:2M−HCl+1.5M−HPO、40℃×180sec
の条件でエッチング処理した後、85℃のアジピン酸アンモニウム溶液中で3V化成後、静電容量を測定した。静電容量は、供試材No.1の静電容量を100とした相対評価により行った。これらの結果を表1に示した。
表1から明らかなように、本発明の供試材では、高い静電容量と高い強度とが得られている。一方、比較例は、組成と、均質化処理の温度条件と時間条件のいずれかが発明の範囲外であることにより、静電容量、強度ともに本発明材より劣っている。
Figure 0004021923
本発明の一実施形態における工程順を示すフロー図である。

Claims (5)

  1. 質量%で、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Ni:0.0051〜0.05%を含有し、さらに、Sn、Ga、Inの内少なくとも1種以上を合計で0.003〜0.10%含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有することを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔。
  2. 質量%で、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Ni:0.0051〜0.05%、Zn:0.02%超〜0.10%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有することを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔。
  3. 質量%で、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Ni:0.0051〜0.05%を含有し、さらにZnと、Sn、Ga、Inの内少なくとも1種以上とを合計で0.003〜0.10%含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有することを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔。
  4. 質量%で、さらにCuを0.0051〜0.10%未満含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔。
  5. 請求項1から請求項4のいずれかに記載の組成を有するアルミニウム合金に、550℃以上で1時間以上の均質化処理を施すことを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
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