JP4550148B1 - 銅合金及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電子部品としての強度と伸びを高いレベルでバランスさせるとともに、製造管理も容易にする。
【解決手段】重量比率でZrを0.005%〜0.5%、Bを0.2ppm〜400ppmの範囲で含有する銅合金であって、複数の扁平な結晶粒が面方向に連続してなる結晶粒層が板厚方向に積み重なって構成された層状組織を有し、結晶粒層の厚さが20nm〜550nmの範囲であり、層状組織中の結晶粒層の厚さのヒストグラムにおけるピーク値Pが50nm〜300nmの範囲内でかつ総度数の22%以上の頻度で存在し、その半値幅Lが200nm以下である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電気接続用コネクタ、端子、リードフレーム、導線、箔等に用いられ、導電性とともに機械的強度に優れる銅合金及びその製造方法に関する。
電気接続用コネクタ、端子、リードフレーム、導線、箔等に用いられる銅合金として、Cu−Zr合金がよく知られている。
例えば特許文献1には、圧延法を用いて母材の強度を高めようとする際、圧延率を高くした場合に、銅合金からなる母材の強度を増大させると共に、その伸びも向上させることができ、ひいては良好な曲げ加工性を備え、耐熱クリープ特性にも優れた銅合金として、ジルコニウムを重量%で0.005以上0.5以下の範囲で含有し、微細な結晶粒と大きな結晶粒とを組み合わせた特定の結晶粒径の分布を有するものが記載されている。この銅合金においては、微細な結晶粒と大きな結晶粒とを組み合わせた形態が、結晶粒同士の界面において生じるクロスすべりを抑制するように働き、銅合金に強度と伸びのバランスをもたらすとともに、微細な結晶粒のみで構成された場合に見られる熱クリープ特性の劣化も防止することができ、強度と伸びをバランスよく備えるとともに、良好な曲げ加工性も併せ持つことができるものである。
また、特許文献2には、Cu−Zr元系あるいはCu−Zr−B三元系からなる単純な合金組成において、電子部品の用途に応じて広い範囲で選択することができる強度と導電性を兼備した銅合金として、特定の組成式で表され、Cu母相と、Cu母相とCu−Zr間あるいはCu−Zr−B間のいずれかまたは双方の化合物との共晶相とが互いに層状となす組織で構成され、隣り合うCu母相結晶粒同士が断続的に接する2相組織を呈する銅合金が示されている。
特許第4118832号公報 特開2005−281757号公報
ところで、特許文献1記載の銅合金は、強度と伸びをバランスよく備える、良好な曲げ加工性を有するものであるが、近年の電子部品の小型化、薄肉化の一層の要請に伴い、強度と伸びのバランスのさらなる向上が求められてきており、これらを高いレベルでバランスさせた銅合金が要望されている。
一方、特許文献2記載の銅合金は、溶湯を炉壁に極力接触させないようにして溶解するレビテーション溶解等の無耐火物溶解法によって製造され、また、共晶相を得やすくするために冷間加工の前に熱処理を必要とするなど、複雑な製造管理が必要である。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、電子部品としての強度と伸びを高いレベルでバランスさせるとともに、製造管理も容易にすることができる銅合金及びその製造方法の提供を目的とする。
一般に、強度の向上には結晶粒をナノスケールまで微細化することが有効であるとされているが、単に微細化するだけでは伸びを向上させることはできない。本発明者は、圧延方向(R.D.方向)に沿う縦断面組織の構造に着目し、微細で扁平な結晶粒が層状に連なるとともに、その結晶粒層が積み重なった層状組織を有しており、しかも、その結晶粒層の厚さ(間隔)が各層で均一で層状組織として安定していると、強度と伸びが高いレベルでバランスすることを見出した。
すなわち、本発明の銅合金は、量比率でZrを0.005%〜0.5%、Bを0.2ppm〜400ppmの範囲で含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金であって、複数の扁平な結晶粒が面方向に連続してなる結晶粒層が板厚方向に積み重なって構成された層状組織を有し、前記結晶粒層の厚さが20nm〜550nmの範囲であり、前記層状組織中の前記結晶粒層の厚さのヒストグラムにおけるピーク値が50nm〜300nmの範囲内でかつ総度数の22%以上の頻度で存在し、その半値幅が200nm以下であることを特徴とする。
この銅合金は、層状組織における各結晶粒層の個々の厚さは20nm〜550nmの範囲内とされ、その厚さのヒストグラムにおいて、ピーク値が22%以上の高い頻度で存在し、しかも半値幅が200nm以下と狭く、そのヒストグラム曲線は、幅が狭く鋭利な山形に突出した形状となっている。言い換えれば、層状組織における各結晶粒層の厚さが薄くかつ均一になっているのである。結晶粒層の厚さは、薄くかつ均一である方が強度が大きく、そのピーク値が300nmを超えると、十分な強度が得られない。一方、ピーク値を50nm未満とするのは製造技術的に困難であり、現実的でない。50nm〜250nmの範囲内にピーク値があるのがより好ましい。また、ピーク値の頻度が22%未満の場合も、ヒストグラム曲線がなだらかとなって、結晶粒層の厚さのばらつきが大きくなるため、強度向上を期待できない。
そして、このような層状組織の安定した銅合金とすることにより、強度と伸びのバランスが高いレベルで向上する。
ここで、Zrの添加は強度の向上に有効であるが、その添加量が量比率で0.005%未満であると強度が十分に向上せず、また、0.5%を超えても、それ以上の強度の向上効果は期待できない。また、Zrを0.005%以上含有することで層状組織が発達して安定化する。逆に、0.5%を超えると、伸びが低下して好ましくない。したがって、Zrの含有率は量比率で0.005%〜0.5%とした。
Bを微量に添加することは層状組織が均一で緻密になって安定する効果があり、適切な伸び(延性)を付与するが、その添加量が量比率で0.2ppm未満では、層状組織の各結晶粒層の厚さのばらつきを小さくする効果に乏しく、400ppmを超えても、それ以上の効果は期待できず、逆に、延性が著しく大きくなって引張強さを低下させる不具合がある。したがって、Bの含有率は量比率で0.2ppm〜400ppmとした。
また、本発明の銅合金の製造方法は、量比率でZrを0.005%〜0.5%、Bを0.2ppm〜400ppmの範囲で含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金からなる母材に対して、930℃〜1030℃の温度で圧延するとともに、この温度下での最終パスの圧延率を25%以上とする熱間圧延処理とその後の水冷による急冷処理とからなる溶体化処理を施す第1工程と、該第1工程を経た母材に対して圧延率が90%以上の冷間圧延処理を施す第2工程と、該第2工程を経た母材に対して300℃〜380℃で1時間〜8時間の熱処理を施す第3工程とを備えたことを特徴とする。
所定量のZr、Bを含有する銅合金を930℃〜1030℃の高温で溶体化処理することにより、Zrを母材に十分に固溶させ、後の第3工程での析出硬化作用を有効にする。その温度が930℃に達しないと、Zrを十分に固溶させることができず、後の時効による析出が不十分になる。
また、この熱間圧延のときの熱によって結晶粒が粗大になる傾向があるところ、熱間圧延時の最終圧延パスの圧延率を通常よりも大きい25%以上の強圧下とすることによって、結晶粒の成長を抑制するとともに、その大きな変形によって結晶粒を微細化させつつ圧延方向に扁平な形状とする。そして、この高熱の熱間圧延から急冷することにより、固溶したZrを過飽和状態とする。
そして、続く第2工程の冷間圧延処理によってさらに薄肉化するとともに歪みを付与し、結晶粒をさらに微細化して強度を高める。また、この冷間圧延によって扁平な結晶粒が層状に発達し、その結晶粒層の厚さを小さくし、扁平な結晶粒層が板厚方向に積み重なった層状組織を構成していく。この層状組織においては、結晶粒は板厚方向に圧縮されて面方向に広がるように変形されており、転位に対する粒界が大きくなって強度が向上する。この冷間圧延の圧延率が90%未満であると、層状組織の各結晶粒層の厚さが不均一になる。
次の熱処理によって、過飽和状態に固溶していたZrが析出しつつ一部はBとも反応して、強度と伸びが高いレベルでバランスした銅合金を得ることができる。Zrは、溶体化処理によって母材に固溶していたものが、その後の熱処理によって析出すると、その析出物が合金の強度を向上させる効果があるが、反面、伸びを低下させることになる。一般に高強度化を図ろうとすると伸びが低下する。本発明においては、過飽和状態で固溶していたZrが時効により徐々に析出するのではあるが、その熱処理を比較的低温としたことにより、析出しきれずに結晶粒内に残っているZrがBと反応して化合物を形成し、この化合物が層状組織を発達させるので、強度と伸びを高いレベルでバランスさせるものと想定される。この熱処理温度が380℃を超えると、伸びの向上効果を得ることができない。また、8時間を超えるほどに長過ぎても、再結晶化を招くため好ましくない。
この製造方法により得られる銅合金は、高強度と同時に良好な伸び特性を有し、曲げ加工等の加工性にも優れるものとなる。
本発明によれば、Zr、Bの添加と扁平な結晶粒層による均一な層状組織との複合効果により、強度と伸びが高いレベルでバランスした銅合金を得ることができ、電子部品の小型化、薄肉化に好適に対応することができる。しかも、その製造方法も特別複雑な管理を必要とせず、容易に製造することができる。
本発明に係る銅合金をTEMにより観察した層状組織の模式図である。 図1の層状組織における各結晶粒層の厚さの分布を示すヒストグラム曲線である。
以下、本発明の実施形態を説明する。
この実施形態の銅合金は、量比率でZrを0.005%〜0.5%の範囲で含有しているとともに、Bを量比率で0.2ppm〜400ppmの範囲で含有しており、図1に示すように、複数の扁平な結晶粒1からなる結晶粒層2が板厚方向に積み重なって構成された層状組織3を有している。
Zrは、後述する溶体化処理後の時効処理によって結晶粒表面に析出して強度を向上させる効果がある。その含有量が量比率で0.005%未満であると強度が十分に向上せず、また、0.5%を超えても、強度の向上効果は飽和して、それ以上は期待できない。むしろ、0.5%を超えると伸びの低下を招く。
また、Zrを0.005%以上含有することで層状組織が発達して安定化する。
Bを微量に添加することは層状組織が均一になって安定する効果があり、適切な伸びを付与するが、その添加量が量比率で0.2ppm未満では、層状組織の各結晶粒層の厚さのばらつきを小さくする効果に乏しく、400ppmを超えても、効果が飽和し、逆に強度が低下する不具合がある。
また、この銅合金には、クロム、シリコン、マグネシウム、アルミニウム、鉄、チタニウム、ニッケル、リン、スズ、亜鉛、カルシウム、コバルトのいずれか1種又は2種以上の元素を選択して、量%で、0.001以上3.0以下の範囲で含有してもよい。銅合金にこれらの元素を適宜含有させることにより、さらに強度の向上を図ることができるので好ましい。
さらに、この銅合金には、炭素、酸素、および、クロム、シリコン、マグネシウム、アルミニウム、鉄、チタニウム、ニッケル、リン、スズ、亜鉛、カルシウム、コバルトのいずれか1種又は2種以上の元素の酸化物、のいずれか1つ又は2つ以上を選択して、量%で、0.0005以上0.005以下の範囲で含有しても構わない。銅合金にこれらの元素を適宜含有させることにより、プレス打ち抜き加工時における破断起点として有効に作用し、プレス打ち抜き性を良好にし、ひいては金型摩耗が少なくなることから好ましい。
図1に示すように、層状組織3は、扁平な結晶粒1が面方向に連続してなる結晶粒層2が積み重なって構成されたものである。この図1は、圧延方向(R.D.方向)に沿う縦断面(T.D.方向に見た面)の組織を模式的に表したものであり、図1の紙面上の横方向(左右方向)が圧延方向(R.D.方向)、縦方向(上下方向)が板厚方向(N.D.方向)となっている。そして、その一つの結晶粒1をハッチングして示したように、各結晶粒1はいずれも扁平で圧延方向(R.D.方向)に引き延ばされているとともに、隣の結晶粒1が圧延方向(R.D.方向)に連なるように配置されて、これら連続状態の複数の結晶粒1により層が構成されている。本発明では、結晶粒1が層状に連続してなるものを結晶粒層2と称しており、その結晶粒層2が板厚方向(N.D.方向)に複数積み重なった状態のものを層状組織3と称している。このような層状組織3は、圧延方向(R.D.方向)の縦断面(T.D.方向に見た面)を透過型電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscope)で観察することにより確認することができる。
この層状組織3において、各結晶粒層2の厚さは20nm〜550nmの範囲内とされている。この結晶粒層の厚さの分布をヒストグラム曲線で表すと、図2に示すようになる。このヒストグラムは、TEMで観察した層状組織において、図1に一点鎖線で示したように、圧延方向(R.D.方向)に垂直な板厚方向(N.D.方向)に任意の直線Xを引き、この直線Xと各結晶粒層2間の界面との交点の間の距離(間隔)Tを測定し、その距離Tを結晶粒層2の厚さとして、これを200個測定して分布にしたものである。その測定値をヒストグラムにするときの階級の間隔は、例えば50nmとされる。この図2のヒストグラム曲線において、ピーク値をP、その半値幅をLとすると、ピーク値Pは50nm〜300nmの範囲内にあり、そのピーク値Pの頻度が総度数の22%以上とされ、また、半値幅Lが200nm以下とされる。つまり、ヒストグラム曲線の幅が狭く、上方に突出した鋭利な山形形状となっている。
これを言い換えると、層状組織3における各結晶粒層2の厚さが均一で揃っていることを意味している。結晶粒層2としては薄くて均一な方が強度向上に有利であり、50nm〜200nmの範囲にピーク値Pが存在しているのがより好ましい。半値幅も170nm以下であると、層状組織3がさらに均一になってより好ましい。
次に、このような銅合金を製造する方法について説明する。
この製造方法は、耐火物炉で銅原料を溶解し、その溶銅に少なくとも量比率でZrを0.005%〜0.5%、Bを0.2ppm〜400ppmの範囲で添加して銅合金母材を鋳造した。そして、その鋳造した母材に対して熱間圧延しつつ溶体化処理を施す第1工程、その後冷間圧延する第2工程、冷間圧延後の母材を時効又は焼鈍のための熱処理を施す第3工程の各処理を順次行う。以下、この工程順に説明する。
<第1工程>
第1工程は母材を高温で熱間圧延した後急冷する処理となる。
熱間圧延は、母材を930℃〜1030℃の温度に加熱して赤熱状態とし、これを複数回(5回〜10回)圧延ロールの間に通しながら徐々に圧延ロール間のギャップを小さくして、所定の厚さまで母材を圧延する。このときの圧延率は、最終パスの前までは、22%以上、例えば24%程度とされる。この段階での圧延率を22%以上とすることにより、結晶粒の均一化を図ることができる。この圧延率は、圧延ロールを通す前の母材の板厚に対する圧延ロール通過後の母材の板厚の減少率(又は前回パス時の圧延ロール間のギャップに対する今回パスの圧延ロール間のギャップの減少率)であり、この段階での圧延率は毎回の圧延率の平均である。
そして、この熱間圧延の最終パスにおいて、25%以上の圧延率で加工する。この最終パスの圧延率を25%以上に大きくするのは、加熱による結晶粒の成長を強圧下によって抑制するとともに、その大きな変形力による歪みを付与して結晶粒を微細化させつつ圧延方向に扁平な形状とするためであり、後の冷間圧延後の層状組織における結晶粒層を均一化することができる。より好ましくは、この最終パスを34%以上の圧延率、例えば46%の圧延率とするのが良い。
また、この熱間圧延によって、Zrが母材に十分に固溶される。この熱間圧延終了後の母材は、10mm〜20mm程度の板厚の板材となる。
そして、この熱間圧延後の母材を水冷することにより急冷する。急冷の速度としては10℃/秒以上、好ましくは30℃/秒〜50℃/秒とされる。この急冷により、Zrが過飽和状態に固溶した母材が得られる。
また、この母材に対して面削、粗圧延、研磨等の加工がされ、最終的に板厚が1.2mm〜6.0mm程度となる。
<第2工程>
次に、90%以上の圧延率で冷間圧延する。この冷間圧延でも母材を圧延ロール間に複数回(5回〜20回)通過させるが、そのときの毎回の圧延率は15%〜30%とされる。そして、その複数回の圧延で圧延率が90%以上、例えば98%〜99%の圧延率となり、母材を0.12mm〜0.75mmの板厚にまで減少させる。
この冷間圧延処理を経ることにより、後述の層状組織における各結晶粒層の厚さが均一化し、その厚さの分布をヒストグラムにしたときピーク値が大きくなってくる。
<第3工程>
次に、第2工程を経た母材に対して300℃〜380℃で1時間〜8時間の熱処理を施す。この熱処理は時効処理又は歪み取り焼鈍のための処理である。この熱処理により、過飽和状態で固溶していたZrが時効により徐々に析出するのであるが、その熱処理が比較的低温であることにより、析出しきれずに結晶粒内に残っているZrがBと反応して化合物を形成する。このZrとBとの化合物が母材の伸びを向上させるものと想定され、この第3工程を経た銅合金は、強度と伸びが高いレベルでバランスしている。
この熱処理において、温度が300℃未満では強度向上効果に乏しく、一方、380℃を超えると、強度は大きくなるが伸びは十分でない。また、この熱処理時間が8時間を超えるほどに長過ぎると、再結晶化するため好ましくない。
次に、このように製造した銅合金の性能を確認するために行った試験結果について説明する。
ZrとBを表1に示す比率で添加した銅合金を鋳造し、第1工程から第3工程までの処理を経て製造した。第1工程における熱間圧延条件、第2工程の冷間圧延時の圧延率、第3工程の熱処理条件を表1のように組み合わせた。試料1〜試料14が本実施例、試料15〜試料29が比較例としてZrやBの添加量、熱間圧延、冷間圧延、熱処理の条件が本発明の範囲から外れるものも製作した。最終の板厚はいずれも0.64mmとした。
Figure 0004550148
得られた銅合金の板材を圧延方向に切断して、その断面組織をTEMで観察し、前述したように、圧延方向(R.D.方向)に垂直な板厚方向(N.D.方向)に沿って各結晶粒層の界面間の距離(間隔)を測定し、その距離を結晶粒層の厚さとして、これを200個測定した。その結晶粒層の厚さの測定値のうち、最小値、最大値、ヒストグラムにしたときのピーク値、その頻度、半値をそれぞれ求めた。ヒストグラムは、50nmの幅で階級を決め、その階級毎に各結晶粒層の厚さの測定値の度数(頻度)を求めた。その結果を表2に示す。
Figure 0004550148
この表2の結果より、本実施例は、層状組織の結晶粒層の厚さが均一で、ヒストグラムのピーク値が小さくかつ高い頻度で半値幅も小さく、そのヒストグラム曲線が鋭利な山形に形成されることがわかる。
なお、具体的数値は省略するが、第3工程の熱処理の前後でピーク値は若干変化し、第3工程前の母材に対して、第3工程を経た母材のピーク値は1割程度小さくなる。
次に、これら実施例及び比較例の銅合金の板材について、引張強さ、0.2%耐力、伸び、ビッカース強度、導電率をそれぞれ測定した。
ここで、引張強さ(N/mm)、伸び(%)及び0.2%耐力(N/mm)は、インストロン型万能試験機用いて、JIS(Z2241)に規定される方法により測定した。試験片は、JIS5号試験片とし、試験片の長手方向を圧延方向(R.D.方向)と平行なL.D.試験片とした。また、伸び試験における標点距離は50mmとした。ビッカース硬さ(HV)は、JIS(Z2244)に規定される方法により測定した。導電率(%IACS)は、JIS(H0505)に規定される方法により測定した。
その結果を表3に示す。
Figure 0004550148
この表3からわかるように、実施例の試料は、引張強さが大きく、しかも伸びとも高いレベルでバランスしている。また、同時に測定した0.2%耐力、ビッカース硬さ及び導電率においても、本実施例の銅合金は実用上、十分に満足できる特性を示している。
このように本実施例の銅合金は、機械的特性に優れるので、電子部品の小型化、薄肉化に好適に対応することができる。
なお、第3工程の熱処理後であれば、例えば400℃〜450℃程度で歪み取りのための焼鈍処理を必要に応じて行ってもよい。
1 結晶粒
2 結晶粒層
3 層状組織

Claims (2)

  1. 量比率でZrを0.005%〜0.5%、Bを0.2ppm〜400ppmの範囲で含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金であって、複数の扁平な結晶粒が面方向に連続してなる結晶粒層が板厚方向に積み重なって構成された層状組織を有し、前記結晶粒層の厚さが20nm〜550nmの範囲であり、前記層状組織中の前記結晶粒層の厚さのヒストグラムにおけるピーク値が50nm〜300nmの範囲内でかつ総度数の22%以上の頻度で存在し、その半値幅が200nm以下であることを特徴とする銅合金。
  2. 量比率でZrを0.005%〜0.5%、Bを0.2ppm〜400ppmの範囲で含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金からなる母材に対して、930℃〜1030℃の温度で圧延するとともに、この温度下での最終パスの圧延率を25%以上とする熱間圧延処理とその後の水冷による急冷処理とからなる溶体化処理を施す第1工程と、該第1工程を経た母材に対して圧延率が90%以上の冷間圧延処理を施す第2工程と、該第2工程を経た母材に対して300℃〜380℃で1時間〜8時間の熱処理を施す第3工程とを備えたことを特徴とする銅合金の製造方法。
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