JP2007113098A - 電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】エッチングピットを均一に分散させ、均一性の高いエッチングピット分布を実現し、高い静電容量及び機械的強度が得られる電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔及びその製造方法を提供する。
【解決手段】Si:0.05〜0.50%(質量%、以下同様)、Fe:0.05〜0.60%、Cu:0.05〜0.50%、Mn:0.5〜2.0%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなり、連続鋳造圧延法によるアルミニウム合金板材を素材として形成され、Al−Mn−Fe系化合物として析出するMn量が、Mn総含有量に対して20〜50%としている。
【選択図】なし

Description

本発明は、電解コンデンサ陰極として使用した場合に高い静電容量と高い機械強度を持つ電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔及びその製造方法に関する。
一般にアルミニウム電解コンデンサは、陽極酸化によりその表面に酸化アルミニウムの誘電体皮膜を形成させた陽極用アルミニウム箔と、酸化処理を施していない陰極用アルミニウム箔を、電解質を挟んで対向させた構成とされており、前記陽極用アルミニウム箔としては、通常、純度99.99%程度の高純度アルミニウムが、また、前記陰極用アルミニウム箔としては、通常、純度99.2〜99.8%程度のアルミニウムが使用されていた。
しかし、この種のアルミニウム電解コンデンサにおいて、その静電容量を向上させる目的で、高純度アルミニウム箔によって形成される陽極については、微量の添加元素及び製造プロセスに関し、種々の研究がなされており、近年では高圧用よりも、むしろ、中圧用や低圧用の電解コンデンサの需要が増大するにつれ、前記陰極用の低純度アルミニウム箔についてもそれ自体の静電容量の向上に迫られてきているが、いまだ満足なものは得られていないのが実情である。
アルミニウム合金箔の強度を向上させるため、アルミニウム合金材料に所定量のMnを添加したものが提案されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、特許文献1に記載のアルミニウム合金箔は、Mnを添加することによって機械的強度が向上しているものの、電解コンデンサ陰極用として使用した場合に、充分な静電容量を得ることができない。
特開昭63−282228号公報
ところで、電解コンデンサの電気容量は、その表面積に比例するものであるから、陰極静電容量を大きくするエッチング処理などによってその陰極の表面積を大きくすることがなされている。しかしながら、上述のような従来公知の陰極用アルミニウム箔に対して、コンデンサの静電容量を充分に満足させる程度の表面積を得るための、極めて過激なエッチング処理を施すと、腐食による減量や穴形成により、コンデンサ用アルミニウム合金箔自体の機械的強度が低下してしまい、更に、漏洩電流も増大するという問題があった。従ってエッチング処理によって充分に満足できる程度にその表面積を大きくすることは困難であった。
更に、以上のような背景から本願発明者らは、特開2004−76059号公報に示す如くSiとFeとCuとMnの個々の含有量とFe/Siの割合に着目し、Al−Mn−Fe系化合物の過剰析出状態を制御すること、マトリックスの腐食電位を制御して過溶解を解消することなどにより、高い静電容量と高い機械的強度の両立を図るために材料開発を行ってきている。
しなしながら前記特開2004−76059号に記載の技術を用いたとしても、エッチングピットの均一性は十分ではなく、十分に満足した静電容量が得られ難いという問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、連続鋳造圧延法で得られるアルミニウム板材を素材とし、Al−Mn−Fe系化合物を組織中に適度に分散させることでエッチングピットを均一に分散させ、均一性の高いエッチングピット分布を実現し、高い静電容量及び機械的強度が得られる電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、静電容量及び機械的強度を向上させた電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔を得るべく鋭意研究を重ね、前記特開2004−76059号に記載されたようなAl−Mn−Fe系化合物の分散状態をさらに適度にするため、成分条件と製造条件の組み合わせについて検討した。そして、粗面化処理としてアルミニウム合金箔に施す化学エッチングまたは電解エッチングについて、微細且つ高密度なエッチングピットを面方向、板厚方向に均一に生成させるための検討を行い、以下の構成の電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔及びその製造方法を得るに至った。
(1)請求項1に記載の発明
Si:0.05〜0.50%(質量%、以下同様)、Fe:0.05〜0.60%、Cu:0.05〜0.50%、Mn:0.5〜2.0%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなり、連続鋳造圧延法によるアルミニウム合金板材を素材として形成され、Al−Mn−Fe系化合物として析出するMn量が、Mn総含有量に対して20〜50%であることを特徴とする電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔。
(2)請求項2に記載の発明
Si:0.05〜0.50%(質量%、以下同様)、Fe:0.05〜0.60%、Cu:0.05〜0.50%、Mn:0.5〜2.0%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなる電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔の製造方法であって、連続鋳造圧延法によるアルミニウム合金板材を素材として70〜90%の冷間圧延を行い、次いで、300〜500℃の温度で中間焼鈍を行い、次いで、最終冷間圧延を行うことを特徴とする電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔の製造方法。
本発明者らは、エッチングピットの生成を適切にせしめるには、アルミニウム材料の晶出粒子以外のマトリックス部分において、Al−Mn−Fe系化合物の析出量及び析出粒子の分散サイズ、密度を適度に制御し、ピット生成起点となる晶出物との腐食電位差を適度に保つことが有効であることを見出した。
電位差が大きすぎると、晶出物周囲のマトリックスにピットが集中し、その部分が過溶解となるため、静電容量、機械的強度ともに低下する。また、電位差が小さすぎると、全面溶解傾向が強くなるため、同様に静電容量の低下を招く。
このような、晶出物−マトリックス間の電位差を適切に保つには、通常のDC(Direct Chill)鋳造法に比べて大きな凝固速度(冷却速度)が得られる連続鋳造圧延により、晶出物の均一微細分散化を図るとともに、素材の固溶量を予め多く確保し、さらに中間工程(冷間圧延、中間焼鈍)によって析出量を制御することが、最も有効であり、且つ容易に行うことができる方法であることを見出した。
本発明の電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔は、Si:0.05〜0.50%(質量%、以下同様)、Fe:0.05〜0.60%、Cu:0.05〜0.50%、Mn:0.5〜2.0%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなり、連続鋳造圧延法によるアルミニウム合金板材を素材として形成され、Al−Mn−Fe系化合物として析出するMn量が、Mn総含有量に対して20〜50%として構成している。
凝固速度の大きな連続鋳造圧延法で得られるアルミニウム板材を素材として電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔が形成されることにより、晶出物が均一微細分散化される。また、Al−Mn−Fe系化合物として析出するMn量を、Mn総含有量に対して20〜50%の範囲とすることにより、ピット生成起点となる晶出物とマトリックスとの間の腐食電位差が適切に保たれるようにマトリックス腐食電位が制御される。これにより、化学エッチングまたは電解エッチング処理を施した際、エッチングピットを均一に分散させることができ、均一性の高いエッチングピット分布となる。
従って、高い静電容量及び機械的強度を有する電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔が得られる。
また、本発明の電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔の製造方法では、上述の成分組成を有するアルミニウム合金材料から、連続鋳造圧延法によって得られるアルミニウム合金板材を素材として70〜90%の冷間圧延を行い、次いで、300〜500℃の温度で中間焼鈍を行い、次いで、最終冷間圧延を行う方法としている。
各処理工程を上記の順とし、且つ各製造条件を上記範囲内とすることにより、Al−Mn−Fe系化合物を析出する駆動力が得られ、Al−Mn−Fe系化合物として析出するMn量を適正量とすることができる。これにより、晶出物とマトリックスとの間の腐食電位差が適切に保たれるようにマトリックス腐食電位が制御されるため、化学エッチングまたは電解エッチング処理を施した際、エッチングピットを均一に分散させることができ、均一性の高いエッチングピット分布となる。
従って、高い静電容量及び機械的強度を有する電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔を製造することが可能となる。
以下、本発明に係る電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔(以下、アルミニウム合金箔と略称することがある)の実施の形態について説明する。
本発明のアルミニウム合金箔は、一例として、Si:0.05〜0.50%(質量%、以下同様)、Fe:0.05〜0.60%、Cu:0.05〜0.50%、Mn:0.5〜2.0%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなり、連続鋳造圧延法によるアルミニウム合金板材を素材として形成され、Al−Mn−Fe系化合物として析出するMn量が、Mn総含有量に対して20〜50%として構成されている。
[電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔の成分組成]
以下、本発明のアルミニウム合金箔において限定する成分組成について説明する。
本発明に係るアルミニウム合金箔は、SiとFeとCuとMnを主要構成元素として、個々に規定量含有してなる。なお、以下に記載する各元素の含有量は、特に規定しない限り質量%であり、また、特に規定しない限り上限と下限を含むものとする。従って、例えば0.05〜0.50%は、0.05%以上、0.50%以下を意味する。
「Si」0.05〜0.50%
Siは、本発明に係るアルミニウム合金箔において、Al−Mn−Fe系金属間化合物の過剰な析出を抑える作用がある。
Siの含有量が0.05%未満だと、上述の作用が不十分となり、好ましくない。
また、Siの含有量が0.50%を越えると、Al−Mn−Fe系金属間化合物の過剰析出を抑える作用が過剰となり、純度低下による過溶解が生じて好ましくない。
従って、Siの含有量は、0.05〜0.50%の範囲内とすることが好ましい。
「Fe」0.05〜0.60%
Feは、アルミニウム合金箔の強度向上、Al−Mn−Fe系金属間化合物の析出量増加、及び低純度化(低コスト)に対して最も影響の大きい元素である。
Feの含有量が0.05%未満だと、強度向上効果が不十分となるとともに、Al−Mn−Fe系金属間化合物の析出量が減少し、また、コストメリットが無くなるため、好ましくない。
Feの含有量が0.60%を超えると、純度が低下することにより、エッチングピット形成時に過溶解を生じるため、好ましくない。
従って、Feの含有量は、0.05〜0.60%の範囲内とすることが好ましい。
「Cu」0.05〜0.50%
Cuは、マトリックス中に固溶し易く、マトリックスの腐食電位を高め、化学溶解を促進する作用がある。
Cuの含有量が0.05%未満だと、上述の作用が十分に発揮されず、局部溶解が生じるため、好ましくない。
Cuの含有量が0.50%を越えると、溶解性が高くなりすぎて過溶解を引き起こしたり、コンデンサに組み込んだ際に短絡の危険性が高まるため、好ましくない。
従って、Cuの含有量は、0.05〜0.50%の範囲内とすることが好ましい。
「Mn」0.5〜2.0%
Mnは、Al−Mn−Fe系化合物を形成し、マトリックスとの電位差を生じさせ、エッチングピットの基点となる作用を奏する。
Mnの含有量が0.5%未満だと、Mnの絶対量が少なく、Al−Mn−Fe系化合物の分散晶出が少なくなり、満足なエッチング形態が得られなくなる。
Mnの含有量が2.0%を越えると、マトリックスとの電位差の小さいAl−Mn−Fe系化合物が過剰に析出し、過溶解を生じる。また、分散したAl−Mn−Fe系化合物の粒度が大きくなりすぎるので、粗大かつ不均一なエッチング形態となりやすく、好ましくない。
従って、Mnの含有量は、0.5〜2.0%の範囲内とすることが好ましく、0.8%超2.0%以下の範囲内とすることがより好ましい。
「Mn析出量」20〜50%(Mn総含有量に対して)
本発明のアルミニウム合金箔において、Al−Mn−Fe系化合物として析出するMnは、マトリックスの腐食電位を制御するうえで適当な析出量及び分散状態とする必要がある。
Al−Mn−Fe系化合物として析出するMnの量は、Mn総含有量の20〜50%とすることが好ましい。Mn析出量を上記範囲内とすることにより、マトリックスとの腐食電位差が適切に高められ、エッチングピットを均一に分散させることができ、均一性の高いエッチングピット分布とすることが可能となる。
Mn析出量が20%未満だと、マトリックスとの腐食電位差が大きいため、マトリックスでの局部溶解が発生する。
Mn析出量が50%を超えると、充分な腐食電位差が得られず、全面過溶解となってしまう。
従って、Mn析出量は、Mn総含有量に対して20〜50%の範囲内とすることが好ましく、27〜48%の範囲内とすることがより好ましい。
[電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔の製造方法]
本発明の電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔の製造方法は、Si:0.05〜0.50%(質量%、以下同様)、Fe:0.05〜0.60%、Cu:0.05〜0.50%、Mn:0.5〜2.0%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなる電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔の製造方法であって、連続鋳造圧延法によるアルミニウム合金板材を素材として70〜90%の冷間圧延を行い、次いで、300〜500℃の温度で中間焼鈍を行い、次いで、最終冷間圧延を行って最終的なアルミニウム合金箔の厚さとする方法としている。
そして、これらの工程の後、アルミニウム合金箔に粗面化処理、化成処理を施す。ここで行う粗面化処理と化成処理は、この種の電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔の粗面化並びに化成処理に適用される一般的な条件の処理で差し支えない。
以下、本発明のアルミニウム合金箔の製造方法で限定する各事項について説明する。
「中間焼鈍までの冷間圧延率」70〜90%
本発明のアルミニウム合金箔の製造方法における中間焼鈍までの冷間圧延は、後工程の中間焼鈍でAl−Mn−Fe系化合物を析出させるための駆動力を与える。
中間焼鈍までの冷間圧延率が70%未満だと、駆動力が充分でなく、必要なAl−Mn−Fe系化合物の析出量が得られない。
中間焼鈍までの冷間圧延率が90%を超えると、Al−Mn−Fe系化合物が過剰析出し、過溶解を生じる。
従って、中間焼鈍までの冷間圧延率は、70〜90%の範囲内とすることが好ましい。
「中間焼鈍温度」300〜500℃
本発明のアルミニウム合金箔の製造方法における中間焼鈍は、Al−Mn−Fe系化合物を析出させる。
中間焼鈍温度が300℃未満だと、Al−Mn−Fe系化合物の析出量が充分でなく、好ましくない。
中間焼鈍温度が500℃を超えると、Al−Mn−Fe系化合物が過剰析出し、過溶解を生じる。
従って、中間焼鈍温度は、300〜500℃の範囲内とすることが好ましい。
なお、中間焼鈍処理は、バッチ式でも連続焼鈍炉を用いた方法でも良いが、連続焼鈍炉で行った方が、アルミニウム合金箔が高強度となり、好ましい。
以下、実施例を示して本発明の電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものでは無い。
本実施例では、下記表1に示す成分組成、及び製造条件で、以下の工程で本発明のアルミニウム合金箔(実施例)及び比較例のアルミニウム合金箔、並びに従来例のアルミニウム合金箔(DC鋳造)を作製し、後述の各項目について評価を行った。
[アルミニウム合金箔作製工程]
下記表1に示す成分を含有するアルミニウム合金を溶解鋳造し、連続鋳造圧延法によって板厚6mmのアルミニウム板材に仕上げ、均質化処理を施した。次いで、得られたアルミニウム板材を素材として、表1に示す「中間焼鈍までの冷間圧延率」で冷間圧延処理を行った。次いで、連続焼鈍炉を用い、表1に示す「中間焼鈍温度」で中間焼鈍処理を行った。そして、最終冷間圧延を施し、厚さ50μmのアルミニウム合金箔とした。
これらの工程の後、液温80℃の0.5M硫酸と1.0M塩酸の混酸中に60秒間浸漬させて粗面化処理を行い、さらに85℃のアジピン酸アンモニウム溶液中で3V化成処理を施して、実施例1〜8、及び比較例1〜6のアルミニウム合金箔を得た。
また、下記表1に示す成分を含有するアルミニウム合金を、従来のDC鋳造法によって溶解鋳造し、熱間圧延で板厚6mmの板材とした。次いで、得られた板材を95%の圧延率で冷間圧延を施した後、連続焼鈍炉を用いて350℃の温度で中間焼鈍を行った。次いで、最終冷間圧延を施し、厚さ50μmのアルミニウム合金箔とした。
これらの工程の後、上記実施例及び比較例と同様の粗面化処理及び化成処理を施して、従来例のアルミニウム合金箔を得た。
[Mn析出量の測定]
下記表1に示すMn析出量(%)は、Mn全含有量に対する比で表し、下記(1)式を用いて求めた。
Mn析出量(%)=(A−B−C)/A×100 ・・・(1)
なお、上記(1)式において、
A:Mn全含有量
B:連続鋳造圧延後の観察による晶出物密度、あるいは粒子抽出等により求めた晶出物量
C:電機比抵抗法による固溶量
である。
[静電容量の測定]
下記表1に示す静電容量(%)は、従来例の試料の静電容量を100(%)とした場合の相対比較で表した。
[引張強度の測定]
下記表1に示す引張強度(%)は、強度の指標として最終冷間圧延後の引張強さを測定し、従来例の試料の引張強度を100(%)とした際の相対比較で表した。
各実施例、比較例及び従来例の組成成分、製造条件並びに評価試験結果を表1に示す。
Figure 2007113098
[評価結果]
表1に示す結果より、本発明で規定する成分組成を有し、且つ本発明で規定する製造条件によって得られた実施例1〜8の電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔は、中間焼鈍までの冷間圧延率を75〜89%の範囲、中間焼鈍温度を305〜495℃の範囲として製造され、Mn総含有量に対するMn析出量が27〜48%の範囲となっている。実施例1〜8のアルミニウム合金箔は、静電容量が、従来例に対する相対比で104〜110%の範囲であるとともに、引張強度が、従来例に対する相対比で106〜110%であった。
このように、実施例1〜8に示す本発明のアルミニウム合金箔は、従来例のアルミニウム合金箔に比べ、何れも静電容量及び引張強度が優れた特性となっている。
これに対し、比較例1のアルミニウム合金箔では、Siの含有量が0.04%、Feの含有量が0.61%と本発明の規定範囲外となっており、Mn析出量が57%と本発明の規定上限値である50%を超えている。比較例1のアルミニウム合金箔は、引張強度は106%と良好であるものの、静電容量が96%と、従来例を下回る結果となった。
また、比較例2のアルミニウム合金箔では、Cuの含有量が0.55%と本発明の規定範囲外となっており、また、Mn析出量は41%となっている。比較例2のアルミニウム合金箔は、引張強度は107%と良好であるものの、静電容量が91%と、従来例を下回る結果となった。
また、比較例3のアルミニウム合金箔では、Mnの含有量が0.4%と本発明の規定下限値を下回っており、また、Mn析出量は45%となっている。比較例3のアルミニウム合金箔は、引張強度は104%と良好であるものの、静電容量が89%と、従来例を大幅に下回る結果となった。
また、比較例4のアルミニウム合金箔では、Mnの含有量が2.2%と本発明の規定上限値を超えており、また、Mn析出量は45%となっている。比較例4のアルミニウム合金箔は、引張強度は107%と良好であるものの、静電容量が92%と、従来例を下回る結果となった。
また、比較例5のアルミニウム合金箔では、中間焼鈍までの冷間圧延率が65%であり、また、中間焼鈍温度が290℃と、何れも本発明の規定下限値を下回っている。比較例5のアルミニウム合金箔は、Mn析出量が15%と本発明の規定下限値を下回って、引張強度は106%と良好であるものの、静電容量が88%と、従来例を大幅に下回る結果となった。
また、比較例6のアルミニウム合金箔では、中間焼鈍温度が505℃と本発明の規定上限値を超えており、Mn析出量が67%と本発明の規定上限値を超えている。比較例6のアルミニウム合金箔は、引張強度が105%と良好であるものの、静電容量が87%と、従来例を大幅に下回る結果となった。
以上の結果により、Si:0.05〜0.50%(質量%、以下同様)、Fe:0.05〜0.60%、Cu:0.05〜0.50%、Mn:0.5〜2.0%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなり、連続鋳造圧延法によるアルミニウム板材を素材として形成され、Al−Mn−Fe系化合物として析出するMn量が、Mn総含有量に対して20〜50%とされた本発明の電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔が、高い強度特性及び静電容量を有していることが明らかとなった。

Claims (2)

  1. Si:0.05〜0.50%(質量%、以下同様)、Fe:0.05〜0.60%、Cu:0.05〜0.50%、Mn:0.5〜2.0%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなり、連続鋳造圧延法によるアルミニウム合金板材を素材として形成され、Al−Mn−Fe系化合物として析出するMn量が、Mn総含有量に対して20〜50%であることを特徴とする電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔。
  2. Si:0.05〜0.50%(質量%、以下同様)、Fe:0.05〜0.60%、Cu:0.05〜0.50%、Mn:0.5〜2.0%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなる電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔の製造方法であって、
    連続鋳造圧延法によるアルミニウム合金板材を素材として70〜90%の冷間圧延を行い、
    次いで、300〜500℃の温度で中間焼鈍を行い、
    次いで、最終冷間圧延を行うことを特徴とする電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔の製造方法。

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